(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】人間信頼性評価システム、人間信頼性評価方法、及び人間信頼性評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220418BHJP
G06F 16/90 20190101ALI20220418BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06F16/90
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2018226572
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 伸久
(72)【発明者】
【氏名】西 優弥
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206438(JP,A)
【文献】特開2004-234536(JP,A)
【文献】特開2004-287649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0307293(US,A1)
【文献】特開2002-56148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
G16Z 99/00
G05B 19/418
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の分解点検のためのタスクを評価する人間信頼性評価システムであって、
複数の人的過誤から前記機器の故障原因につながる特定人的過誤を抽出し、前記タスクを構成するサブタスクに前記特定人的過誤を関連付ける関連付け手段と、
前記特定人的過誤に基づいて人間信頼性解析イベントツリーを設定し、前記人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を設定する設定手段と、
前記基準エラー率に基づいて、前記特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を評価値として算出する算出手段と、
を有することを特徴とする人間信頼性評価システム。
【請求項2】
前記算出手段は、前記特定人的過誤をもつ複数のサブタスクの人的過誤確率を総和することで、前記タスクの人的過誤確率を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の人間信頼性評価システム。
【請求項3】
前記タスクの人的過誤確率が閾値以上である場合に、前記人間信頼性解析イベントツリーを変更する変更手段をさらに有し、
前記設定手段は、変更後の人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を再度設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の人間信頼性評価システム。
【請求項4】
前記設定手段は、前記特定人的過誤をもつサブタスクに、行動形成因子をさらに設定し、
前記算出手段は、前記基準エラー率に加え前記行動形成因子に基づいて、前記特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人間信頼性評価システム。
【請求項5】
前記設定手段は、前記特定人的過誤をもつサブタスクに、サブタスク間の従属性をさらに設定し、
前記算出手段は、前記基準エラー率に加え前記サブタスク間の従属性に基づいて、前記特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人間信頼性評価システム。
【請求項6】
前記評価値を表示部又はプリンタから出力させる出力手段、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人間信頼性評価システム。
【請求項7】
機器の分解点検のためのタスクを評価する人間信頼性評価方法であって、
コンピュータが、複数の人的過誤から前記機器の故障原因につながる特定人的過誤を抽出
するとともに、前記タスクを構成するサブタスクに前記特定人的過誤を関連付ける関連付けステップと、
前記コンピュータが、前記特定人的過誤に基づいて人間信頼性解析イベントツリーを設定
するとともに、前記人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を設定する設定ステップと、
前記コンピュータが、前記基準エラー率に基づいて、前記特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を評価値として算出する算出ステップと、
を有することを特徴とする人間信頼性評価方法。
【請求項8】
前記コンピュータが行う前記算出ステップ
において、前記特定人的過誤をもつ複数のサブタスクの人的過誤確率を総和することで、前記タスクの人的過誤確率を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の人間信頼性評価方法。
【請求項9】
前記タスクの人的過誤確率が閾値以上である場合に、
前記コンピュータが、前記人間信頼性解析イベントツリーを変更する変更ステップをさらに有し、
前記コンピュータが行う前記設定ステップ
において、変更後の人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を再度設定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の人間信頼性評価方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数の人的過誤から機器の故障原因につながる特定人的過誤を抽出し、前記機器の分解点検のためのタスクを構成するサブタスクに前記特定人的過誤を関連付ける関連付け機能と、
前記特定人的過誤に基づいて人間信頼性解析イベントツリーを設定し、前記人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を設定する設定機能と、
前記基準エラー率に基づいて、前記特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を評価値として算出する算出機能と、
を実現させることを特徴とする人間信頼性評価プログラム。
【請求項11】
前記算出機能は、前記特定人的過誤をもつ複数のサブタスクの人的過誤確率を総和することで、前記タスクの人的過誤確率を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする請求項10に記載の人間信頼性評価プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、前記タスクの人的過誤確率が閾値以上である場合に、前記人間信頼性解析イベントツリーを変更する変更機能をさらに実現させ、
前記設定機能は、変更後の人間信頼性解析イベントツリーの前記特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を再度設定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の人間信頼性評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の分解点検における人間信頼性評価システム、人間信頼性評価方法、及び人間信頼性評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1にあるように、原子力発電所等の確率論的リスク評価(PRA: Probabilistic Risk Assessment)において機器の破損確率を取得する際、人間信頼性評価システムが用いられる。
【0003】
図12は、従来の人間信頼性評価システムの動作をフローチャートとして示す図である。
【0004】
図12に示すように、まず、人間信頼性評価システムは、分解点検における評価対象の機器について、人間信頼性評価に必要なタスクの情報を収集して表示部に表示させる(ステップST101)。次に、人間信頼性評価システムがサブタスク設定画面を表示部に表示させると(ステップST102)、人間信頼性評価システムの使用者は、ステップST101によって表示された情報を参照し、連絡、指令、運転、及び操作等のサブタスクを考慮してサブタスク設定画面上で所定のサブタスクを指定する。人間信頼性評価システムは、使用者により指定されたサブタスクを設定して表示部に表示させる(ステップST103)。
【0005】
次に、人間信頼性評価システムがツリー設定画面を表示部に表示させると(ステップST104)、使用者は、ステップST103によって表示されたサブタスクの人的過誤を参照し、ツリー設定画面上で人間信頼性解析(HRA:Human Reliability Analysis)イベントツリーを構築する。人間信頼性評価システムは、使用者により構築されたHRAイベントツリーを設定して表示部に表示させる(ステップST105)。
【0006】
次に、人間信頼性評価システムが率設定画面を表示部に表示させると(ステップST106)、使用者は、記憶部に記憶されたエラーモードによる基準エラー率のデータの中から所定の基準エラー率データを率設定画面上で選択する。人間信頼性評価システムは、使用者により選択された基準エラー率を設定して表示部に表示させる(ステップST107)。
【0007】
次に、人間信頼性評価システムが、ステップST107によって設定されたエラー率を含む因子設定画面を表示部に表示させると(ステップST108)、使用者は、記憶部に記憶された行動形成因子のデータの中から所定の因子データを因子設定画面上で選択する。人間信頼性評価システムは、使用者により選択された行動形成因子を設定して表示部に表示させる(ステップST109)。
【0008】
次に、人間信頼性評価システムが、ステップST107,ST109によって設定されたエラー率及び行動形成因子を含む従属性設定画面を表示部に表示させると(ステップST110)、使用者は、記憶部に記憶されたサブタスク間の従属性のデータの中から所定の従属性データを従属性設定画面上で選択する。人間信頼性評価システムは、使用者により選択されたサブタスク間の従属性を設定して表示部に表示させる(ステップST111)。
【0009】
次に、人間信頼性評価システムは、ステップST105によって設定されたHRAイベントツリーと、ステップST107によって設定されたエラーモードによる基準エラー率と、ステップST109によって設定された行動形成因子と、ステップST111によって設定されたサブタスク間の従属性とを用いて、タスクの人的過誤確率を算出して表示部に表示させる(ステップST112)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】(社)日本原子力学会、原子力学会標準「原子力発電所の出力状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):1013」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
機器の分解点検時に人的過誤による機器の故障原因が入り込むことで、機器の分解点検後の機器故障率がかえって増加してしまうという、いわゆる「いじり壊し」が発生する。いじり壊しによる機器故障率を低減するには、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率を評価することが必要である。しかしながら、従来の人間信頼性評価ではいじり壊しに関する人的過誤確率の評価方法が確立されていないという課題がある。
【0012】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率の評価を支援することができる人間信頼性評価システム、人間信頼性評価方法、及び人間信頼性評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係る、機器の分解点検のためのタスクを評価する人間信頼性評価システムは、関連付け手段と、設定手段と、算出手段とを有する。関連付け手段は、複数の人的過誤から機器の故障原因につながる特定人的過誤を抽出し、タスクを構成するサブタスクに特定人的過誤を関連付ける。設定手段は、特定人的過誤に基づいて人間信頼性解析イベントツリーを設定し、人間信頼性解析イベントツリーの特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を設定する。算出手段は、基準エラー率に基づいて、特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を評価値として算出する。
【発明の効果】
【0014】
実施形態により、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率の評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る人間信頼性評価システムの構成を示す概略図。
【
図2】実施形態に係る人間信頼性評価システムの動作をフローチャートとして示す図。
【
図3】実施形態に係る人間信頼性評価システムの動作をフローチャートとして示す図。
【
図4】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、第1の関連付けデータの表示画面の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、第2の関連付けデータの表示画面の一例を示す図。
【
図6】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、ツリー設定画面の一例を示す図。
【
図7】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、率設定画面の一例を示す図。
【
図8】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、各サブタスクの特定人的過誤確率における他の表示例を示す図。
【
図9】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、変更後の第2の関連付けデータの表示画面の一例を示す図。
【
図10】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、変更後のツリー設定画面の一例を示す図。
【
図11】実施形態に係る人間信頼性評価システムにおいて、変更後の率設定画面の一例を示す図。
【
図12】従来の人間信頼性評価システムの動作をフローチャートとして示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、人間信頼性評価システム、人間信頼性評価方法、及び人間信頼性評価プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係る人間信頼性評価システムの構成を示す概略図である。
【0018】
図1は、実施形態に係る人間信頼性評価システム1を示す。人間信頼性評価システム1は、機器の分解点検におけるいじり壊しの人的過誤確率の評価を支援するものである。
【0019】
人間信頼性評価システム1は、コンピュータとしての構成を備える。人間信頼性評価システム1は、情報処理部11、プログラム記憶部12、評価データ記憶部13、過去データ記憶部14、入力部15、通信部16、表示部17、及びプリンタ18を備える。
【0020】
情報処理部11は、人間信頼性評価システム1の全体の動作を制御する。情報処理部11は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0021】
また、情報処理部11は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、プログラム記憶部12は処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のプログラム記憶部12が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0022】
プログラム記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。プログラム記憶部12は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。プログラム記憶部12は、情報処理部11において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、使用者に対する表示部17への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力部15によって行うことができるGUI(Graphic User Interface)を含めることもできる。
【0023】
評価データ記憶部13は、プログラム記憶部12と同等の構成を備える。評価データ記憶部13は、人間信頼性評価に用いられるデータ、例えば、後述する基準エラー率、行動形成因子、及びサブタスク間の従属性等に関するデータを記憶する。
【0024】
過去データ記憶部14は、プログラム記憶部12と同等の構成を備える。過去データ記憶部14は、過去に評価を行った各種データを記憶する。
【0025】
入力部15は、使用者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力デバイスが使用者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して情報処理部11に出力する。また、入力部15は、人間信頼性評価システム1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。使用者は、入力部15を介して、人間信頼性評価システム1に各種入力データを入力する。
【0026】
通信部16は、ネットワークNの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。通信部16は、この各種プロトコルに従って、人間信頼性評価システム1と、外部装置とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。
【0027】
表示部17は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、表示部17は、デスクトップ型でもよいし、人間信頼性評価システム1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしてもよい。表示部17は、後述する表示画面や設定画面等を表示する。
【0028】
プリンタ18は、後述する表示画面や設定画面等をプリントアウトする。
【0029】
なお、情報処理部11への各種入力データは、通信部16を介して他のコンピュータから入力されるものであってもよい。また、入力データが入力されると評価データ記憶部13に記憶される。そして、入力データに基づいて算出された出力データも評価データ記憶部13に記憶される。また、一連の評価処理が完了すると、これらの処理が行われた日時に対応付けて入力データおよび出力データが過去データ記憶部14に記憶される。なお、各使用者を識別可能なユーザ名に対応付けて各種データを過去データ記憶部14に記憶してもよい。
【0030】
ここで、情報処理部11は、プログラム記憶部12に記憶された、又は、情報処理部11内に直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、取得手段21、関連付け手段22、設定手段23、設定手段23、算出手段24、出力手段25、及び変更手段26を実現する。以下、手段21~26がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、手段21~26の全部又は一部の機能は、人間信頼性評価システム1にASIC等の回路等の機能として設けられるものであってもよい。
【0031】
つまり、人間信頼性評価システム1は、情報処理部11、各種記憶部12~14等のハードウェア資源を有し、情報処理部11が各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。
【0032】
取得手段21は、入力部15や通信部16を介して、後述する基準エラー率、行動形成因子、及びサブタスク間の従属性等に関する入力データを取得する機能を有する。
【0033】
関連付け手段22は、複数の人的過誤から、機器の故障原因につながる(と予想される)人的過誤(以下、「特定人的過誤」という)を抽出し、タスクを構成するサブタスクに特定人的過誤を関連付ける機能を有する。
【0034】
設定手段23は、関連付け手段22による特定人的過誤に基づいて人間信頼性解析(HRA:Human Reliability Analysis)イベントツリーを設定する機能を有する。HRAは、人間信頼性評価を意味し、プラント全体の挙動を人間との関係を見ながら評価するリスク評価の一手法である。適切なHRAなしに適切なPRAを評価することは困難である。
【0035】
また、設定手段23は、設定されたHRAイベントツリーの特定人的過誤をもつサブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を設定する機能を有する。
【0036】
算出手段24は、設定手段23によって設定された基準エラー率に基づいて、特定人的過誤をもつサブタスクの人的過誤確率を評価値として算出する機能を有する。また、算出手段24は、評価値として、特定人的過誤をもつ複数のサブタスクの人的過誤確率を総和することで、タスクの人的過誤確率を算出することもできる。この評価値が、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率となる。
【0037】
出力手段25は、算出手段24によって算出された評価値を表示部17又はプリンタ18から出力させる機能を有する。また、出力手段25は、複数のサブタスクの人的過誤確率の総和を評価値として表示部17又はプリンタ18から出力させることもできる。
【0038】
変更手段26は、算出手段24によって算出されたタスクの人的過誤確率が閾値(目標値)以上である場合に、設定手段23によって設定されたHRAイベントツリーを変更する機能を有する。その場合、設定手段23は、変更後のHRAイベントツリーの特定人的過誤をもつ各サブタスクに、エラーモードによる基準エラー率を再度設定する。
【0039】
図1に示す手段21~26の詳細については、
図2~
図11を用いて説明する。
【0040】
図2及び
図3は、人間信頼性評価システム1の動作をフローチャートとして示す図である。
図2及び
図3において、「ST」に数字を付した符号フローチャートの各ステップを示す。
【0041】
まず、
図2に示すように、取得手段21は、入力部15又は通信部16から分解点検における評価対象の所定の機器Mについての人間信頼性評価に必要なタスク(作業や操作)の情報を収集し、その情報を表示部17に表示させる(ステップST1)。各種機器の機器ごとに、必要なタスクを予め登録しておけばよい。関連付け手段22は、所定の機器Mについて、故障現象(例えば、故障の種別)と故障原因とを関係付けた第1の関連付けデータを生成し、出力手段25は、第1の関連付けデータを表示部17に表示させる(ステップST2)。なお、出力手段25は、ステップST2によって生成された第1の関連付けデータ(例えば、
図4に示す第1の関連付けデータの表示画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0042】
図4は、第1の関連付けデータの表示画面の一例を示す図である。
【0043】
図4に示す表示画面は、故障現象と故障原因とが関連付けられて成る第1の関連付けデータを示す。また、1つの故障現象に対して複数の故障原因が対応付けられる場合もある。
【0044】
図2の説明に戻って、関連付け手段22は、複数の人的過誤から、タスクを構成するサブタスクの故障原因につながる特定人的過誤を抽出する。ここで、関連付け手段22は、入力部15からの入力データに従って特定人的過誤を抽出する。
【0045】
又は、この抽出処理には、サブタスクと、特定人的過誤の有無又は種別とを関連付けたルックアップテーブル(LUT)が用いられてもよい。また、この処理には、機械学習が用いられてもよい。その場合、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)や畳み込み深層信念ネットワーク(CDBN:Convolutional Deep Belief Network)などの、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習が用いられてもよい。
【0046】
また、関連付け手段22は、サブタスクと特定人的過誤とを関係付けた第2の関連付けデータを生成し、出力手段25は、生成された第2の関連付けデータを表示部17に表示させる(ステップST3)。人間信頼性評価システム1の使用者は、ステップST1によって表示された情報と、ステップST2によって表示された第1の関連付けデータとを参照し、連絡、指令、運転、及び操作等のサブタスクを考慮して所定のサブタスクと、特定人的過誤とを指定する。
【0047】
なお、出力手段25は、ステップST3によって生成された第2の関連付けデータ(例えば、
図5に示す第2の関連付けデータの表示画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0048】
図5は、第2の関連付けデータの表示画面の一例を示す図である。
【0049】
図5に示す表示画面は、タスク1を構成する複数のサブタスクと特定人的過誤とが関連付けられて成る第2の関連付けデータを示す。
図5に示す例では、第2、第5、第7、第8のサブタスクは、特定人的過誤を有する。第2のサブタスクは、特定人的過誤1に対応し、第5のサブタスクは、特定人的過誤2に対応し、第7のサブタスクは、特定人的過誤3に対応し、第8のサブタスクは、特定人的過誤4に対応する。
【0050】
一方で、特定人的過誤を有しないサブタスクには、特定人的過誤「なし」が関連付けられる。
図5に示す例では、第1、第3、第4、第6、第9のサブタスクは、特定人的過誤を有しない。この表示画面により、使用者は、機器に関するタスクを構成する複数のサブタスクについて、特定人的過誤とその他の人的過誤とを区別して認識することができる。
【0051】
図2の説明に戻って、設定手段23は、HRAイベントツリーを設定するためのツリー設定画面を生成して表示部17に表示させる(ステップST4)。使用者は、ステップST3によって表示された特定人的過誤を参照し、ツリー設定画面上でHRAイベントツリーを構築する。設定手段23は、使用者により構築されたHRAイベントツリーを設定し、出力手段25は、設定されたHRAイベントツリーを表示部17に表示させる(ステップST5)。なお、出力手段25は、ステップST5によって設定されたHRAイベントツリー(例えば、
図6に示すツリー設定画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0052】
【0053】
図6に示すツリー設定画面上で、ステップST3によって表示された特定人的過誤に基づいて、使用者によりHRAイベントツリーが構築される。HRAイベントツリーの構築により、HRAイベントツリーの構造と特定人的過誤とが関連付けられる。
【0054】
図2の説明に戻って、設定手段23は、抽出された各特定人的過誤に関し、エラーモードによる基準エラー率を設定するための率設定画面を生成して表示部17に表示させる(ステップST6)。使用者は、評価データ記憶部13に記憶された、エラーモードによる基準エラー率のデータの中から所定の基準エラー率データを率設定画面上で選択する。つまり、使用者は、複数の人的過誤のうち、特定人的過誤率のみを含む率設定画面上で、サブタスクごとに基準エラー率を選択する。設定手段23は、使用者により選択された基準エラー率を設定し、出力手段25は、設定された基準エラー率を表示部17に表示させる(ステップST7)。なお、出力手段25は、ステップST7によって設定された基準エラー率(例えば、
図7に示す率設定画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0055】
【0056】
図7に示す率設定画面上で、ステップST5によって表示されたHRAイベントツリーに基づいて、使用者により基準エラー率が選択される。
図7は、故障原因につながる各特定人的過誤に、基準エラー率が割り当てられた画面を示す。
【0057】
図2の説明に戻って、設定手段23は、抽出された各特定人的過誤に関し、行動形成因子を設定するための因子設定画面を生成して表示部17に表示させる(ステップST8)。因子設定画面は、
図7に示す率設定画面の内容を含む。使用者は、評価データ記憶部13に記憶された行動形成因子のデータの中から所定の因子データを因子設定画面上で選択する。つまり、使用者は、複数の人的過誤のうち、特定人的過誤率のみを含む因子設定画面上で、サブタスクごとに行動形成因子を選択する。設定手段23は、使用者により選択された行動形成因子を設定し、出力手段25は、設定された行動形成因子を表示部17に表示させる(ステップST9)。なお、出力手段25は、ステップST9によって設定された行動形成因子(例えば、
図7に示す因子設定画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0058】
表示部17に表示される因子設定画面は、
図7に示される。因子定画面上で、ステップST5によって表示されたHRAイベントツリーに基づいて、使用者により行動形成因子が選択される。
図7に示すように、行動形成因子は、0以上1以下の値で設定される。
【0059】
図2の説明に戻って、設定手段23は、抽出された各特定人的過誤に関し、サブタスク間の従属性を設定するための従属性設定画面を生成して表示部17に表示させる(ステップST10)。従属性設定画面は、
図8に示す因子設定画面の内容を含む。使用者は、評価データ記憶部13に記憶されたサブタスク間の従属性のデータの中から所定の従属性データを因子設定画面上で選択する。
【0060】
つまり、使用者は、複数の人的過誤のうち、特定人的過誤率のみを含む従属性設定画面上で、サブタスクごとにサブタスク間の従属性を選択する。設定手段23は、使用者により選択された従属性を設定し、出力手段25は、設定された従属性を表示部17に表示させる(ステップST11)。なお、出力手段25は、ステップST11によって設定されたサブタスク間の従属性(例えば、
図7に示す従属性設定画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0061】
表示部17に表示される従属性設定画面は、
図7に示される。故障原因につながる各特定人的過誤に、サブタスク間の従属性が割り当てられる。なお、
図7において、サブタスク間の従属性の表示位置には、そのレベルに応じて、ZD(Zero Dependence)、LD(Low Dependence)、MD(Moderate Dependence)、HD(High Dependence)、又はCD(Complete Dependence)が割り当てられる。
【0062】
図3の説明に進み、算出手段24は、ステップST7によって設定された基準エラー率と、ステップST9によって設定された行動形成因子と、ステップST11によって設定されたサブタスク間の従属性とに基づいて、特定人的過誤を有する各サブタスクの確率(以下、「特定人的過誤確率」という)を算出し、出力手段25は、算出された各サブタスクの特定人的過誤確率を評価値として表示部17に表示させる(ステップST12)。人的過誤確率は、失敗確率とも呼ばれる。この評価値が、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率の1つである。なお、出力手段25は、ステップST12によって算出された各サブタスクの特定人的過誤確率を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0063】
表示部17に表示される各サブタスクの特定人的過誤確率は、
図7に示される。
【0064】
図8は、各サブタスクの特定人的過誤確率における他の表示例を示す図である。
【0065】
図8は、特定人的過誤を有する各サブタスクの、特定人的過誤確率の大きさを表したグラフである。このグラフの表示により、使用者は、各サブタスクの特定人的過誤確率の大きさの差を一目で把握することができる。
【0066】
図3の説明に戻って、算出手段24は、ステップST12によって算出された各サブタスクの特定人的過誤確率を総和することで、タスクの特定人的過誤確率を算出し、出力手段25は、算出されたタスクの特定人的過誤確率を評価値として表示部17に表示させる(ステップST13)。なお、出力手段25は、ステップST13によって算出されたタスクの特定人的過誤確率を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。この評価値が、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率の1つである。
【0067】
表示部17に表示されるタスクの特定人的過誤確率は、
図7に示される。
【0068】
図3の説明に戻って、変更手段26は、ステップST13によって算出されたタスクの特定人的過誤確率が閾値以下であるか否かを判断する(ステップST14)。ステップST14の判断にてYES、すなわち、ステップST13によって算出されたタスクの特定人的過誤確率が閾値以下(又は未満)であると判断される場合、人間信頼性評価システム1は、評価処理を終了する。
【0069】
一方で、ステップST14の判断にてNO、すなわち、ステップST13によって算出されたタスクの特定人的過誤確率が閾値を超える(又は以上)であると判断される場合、変更手段26は、ステップST12によって算出された各サブタスクの特定人的過誤確率の中で最も大きな確率をもつサブタスクに対応するサブタスクの特定人的過誤を抽出する。そして、変更手段26は、抽出されたサブタスクの特定人的過誤に基づいて、ステップST3によって生成された第2の関連付けデータ(
図5に図示)を変更し、出力手段25は、変更後の第2の関連付けデータを表示部17に表示させる(ステップST15)。
【0070】
人間信頼性評価システム1の使用者は、ステップST1によって表示された情報と、ステップST2によって表示された第1の関連付けデータとを参照し、連絡、指令、運転、及び操作等のサブタスクを考慮して変更後のサブタスクと、特定人的過誤とを指定する。例えば、
図8では特定人的過誤4に対応するサブタスクの特定人的過誤確率が最も大きいので、変更手段26は、
図5に示す第8のサブタスクを第11のサブタスク(
図9に図示)に変更(修正)する。
【0071】
なお、出力手段25は、ステップST15によって変更後の第2の関連付けデータ(例えば、
図9に示す第2の関連付けデータの表示画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。
【0072】
図9は、変更後の第2の関連付けデータの表示画面の一例を示す図である。
【0073】
図9は、
図5と同様に、各サブタスクと特定人的過誤とが関連付けられて成る第2の関連付けデータを示す。具体的に言えば、例えば、第8のサブタスクとしては、各部の間隙寸法の確認が挙げられ、第11のサブタスクとしては、作業監督者による各部の間隙寸法の確認の確認が挙げられる。また、第8のサブタスクに対応する特定人的過誤4としては、間隙寸法の確認忘れと間隙寸法の確認間違いが挙げられ、第11のサブタスクに対応する特定人的過誤5としては、間隙寸法の確認の確認忘れが挙げられる。
【0074】
図3の説明に戻って、変更手段26は、ステップST15によって表示された変更後の第2の関連付けデータに基づいて、ステップST5によって設定されたHRAイベントツリーを変更し、出力手段25は、変更後のHRAイベントツリーを表示部17に表示させる(ステップST16)。なお、出力手段25は、ステップST16によって変更後のHRAイベントツリー(例えば、
図10に示すツリー設定画面)を、プリンタ18を用いてプリントアウトさせてもよい。そして、人間信頼性評価システム1は、変更後の特定人的過誤について、
図2のステップST6の動作に戻る。
【0075】
図10は、変更後のツリー設定画面の一例を示す図である。
【0076】
図10に示すツリー画面上で、ステップST15によって表示された特定人的過誤に基づいて、使用者によりHRAイベントツリーが再構築される。具体的は、ステップST3の特定人的過誤に基づいてされたHRAイベントツリー(
図6に図示)の、第8のサブタスクに対応する特定人的過誤4が、第11のサブタスクに対応する特定人的過誤5に変更される。
【0077】
図11は、変更後の率設定画面の一例を示す図である。
【0078】
図11に示す率設定画面上で、ステップST14によって表示されたHRAイベントツリーに基づいて、使用者により基準エラー率が選択される。なお、第8のサブタスクに対応する特定人的過誤4が、第11のサブタスクに対応する特定人的過誤5に変更されているので、
図11において、タスクの特定人的過誤確率の値が、
図7に示すものより小さくなっている。
【0079】
図2及び
図3に示すように、ステップST14において、タスクの特定人的過誤確率が閾値以下になるまで、人間信頼性評価システム1は、ステップST15~ST16、ステップST6~ST14を繰り返す。
【0080】
なお、評価対象の機器は、原子力発電所を含む原子力プラントに設けられているものを想定しているが、火力発電所を含む火力プラントや、化学プラントや、その他に設けられる機器にも適用できる。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、機器の分解点検におけるいじり壊しに関する人的過誤確率(特定の人的過誤に関する人的過誤確率)の評価を支援することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…人間信頼性評価システム、11…情報処理部、21…取得手段、22…関連付け手段、23…設定手段、24…算出手段、25…出力手段、26…変更手段。