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特許7059177適応型の表現型を示すNK細胞ならびにその製造方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】適応型の表現型を示すNK細胞ならびにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220418BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/76
A61P35/00
A61P31/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018513478
(86)(22)【出願日】2016-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 US2016051685
(87)【国際公開番号】W WO2017048809
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-10
(31)【優先権主張番号】62/295,708
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/218,366
(32)【優先日】2015-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】チチョッキ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブライセソン,イエナン
(72)【発明者】
【氏名】シュルムス,ハインリッヒ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/039545(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0186380(US,A1)
【文献】国際公開第2014/037422(WO,A1)
【文献】米国特許第8518397(US,B2)
【文献】Immunity, 2015.03.17, Vol.42, pp.443-456
【文献】Eur. J. Immunol., 2012, Vol.42, pp.447-457
【文献】Curr. Top. Microbiol. Immunol., 2015.06.03, Vol.395, pp.225-243
【文献】J. Immunol., 2003, Vol.170, pp.5464-5469
【文献】J. Virol., 2013, Vol.87, No.13, pp.7717-7725
【文献】PLOS ONE, 2013, Vol.8, Issue 3, e60144 (pp.1-10)
【文献】Blood, 2007, Vol.110, No.7, pp.2696-2703
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-15及びラパマイシンを含み、任意にIL-21およびCD16シグナル伝達の活性化因子のうちの1つ以上を含んでなる培地で、対象から得られた血液サンプルのNK細胞集団を培養して適応型NK細胞をインビトロで得ること、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dim かつNKG2 ある、前記方法。
【請求項2】
対象から得られた血液サンプルのNK細胞集団をCMVペプチド補充成熟樹状細胞と共に培養して適応型NK細胞をインビトロで得ること、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記方法。
【請求項3】
前記適応型NK細胞が、IL-15の存在下でさらに培養され、前記適応型NK細胞が、CD56dimかつ、NKG2Cである、請求項記載の方法。
【請求項4】
CMV血清陽性である対象から得られた血液サンプルのNK細胞集団を自家単球およびIL-15と共に培養して適応型NK細胞をインビトロで得ること、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記方法。
【請求項5】
前記適応型NK細胞が、IL-15の存在下でさらに培養され、前記適応型NK細胞が、CD56dimかつ、NKG2Cである、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記培養が、前記NK細胞をTIGIT阻害剤と接触させることをさらに含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記TIGIT阻害剤が、TIGITに対する抗体を含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養が、前記血液サンプルの前記NK細胞をPLZF、TIGIT、またはPD-1のうちの1つ以上の阻害剤と接触させることをさらに含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PLZF、TIGIT、またはPD-1のうちの1つ以上を遺伝子ノックダウンすることをさらに含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記適応型NK細胞が、SYK、FcεRγ-、EAT-2、CD45RO、およびCD45RAのうちの1つ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記適応型NK細胞が、下記(i)~(iii)の1つ以上を示す、
(i) 培養前の前記NK細胞集団と比較して、PLZFの発現の減少を示す、
(ii) 培養前の前記NK細胞集団と比較して、抗腫瘍免疫活性が増強している、
(iii) 培養前の前記NK細胞集団と比較して、細胞傷害性の増加、サイトカイン産生の増加、およびT調節細胞に対する抵抗性の増加のうちの1つ以上を示す、
請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記NK細胞集団を培養することが、細胞増殖もしくは細胞表現型スキューイングまたはそれらの両方を含んでなる、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
適応型NK細胞を単離することをさらに含んでなる、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
適応型NK細胞の誘導剤であって、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチン及び不活化CMVを含み、前記適応型NK細胞が、CD3、CD56であり、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの1つ以上であり、前記適応型NK細胞は対象中でインビボで生産され、前記適応型NK細胞は対象におけるがん、前がん状態、又はウイルス疾患の治療用又は予防に有効である、
前記誘導剤。
【請求項15】
(i) 前記適応型NK細胞中における骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)転写因子が、標準NK細胞と比較して減少しており、
(ii) 前記適応型NK細胞が抗腫瘍活性を示し、
(iii) 前記適応型NK細胞が、サイトメガロウイルス(CMV)ナイーブ源由来の細胞に由来し、
(iv) 前記適応型NK細胞は、血液、多官能性幹細胞、誘導された多官能性幹細胞、胎児性幹細胞または臍帯血から単離された細胞から単離され、
(v) 前記適応型NK細胞は、IL-15、IL-21、IL-18、IL-12、IL-2、IFN-α及びIFN-βのうちの1つ以上を含む培地中で培養された細胞に由来し、
(vi) 前記適応型NK細胞は、ラパマイシン、NKG2C受容体アゴニスト、単球、抗原提示細胞、樹状細胞及びCMVペプチドのうちの1つ以上を含む培地中で培養された細胞に由来し、並びに/又は
(vii) 前記対象がCMV血清陽性である、
請求項14記載の誘導剤。
【請求項16】
前記対象が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む、請求項15記載の誘導剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
継続的出願データ
本出願は、2015年9月14日に出願された米国仮出願第62/218,366号および2016年2月16日に出願された米国仮出願第62/295,708号の利益を主張し、それぞれ、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0002】
政府の資金提供
本発明は、国立衛生研究所から与えられた認可第CA111412号、第CA65493号、第CA197292号、および第HL122216号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、適応型の表現型を示すNK細胞、適応型NK細胞を含む組成物、単離された適応型NK細胞集団、ならびに前記組成物および前記単離された集団の製造方法および使用方法を記載する。適応型NK細胞は、普通型NK細胞と比較して機能的に異なる能力を有するため、適応型NK細胞は、普通型NK細胞と比較してさらなる抗腫瘍能または抗ウイルス能を与えることが可能であるので、記載された組成物、集団、ならびに前記組成物および前記集団の製造方法および使用方法は、癌、前癌状態、またはウイルス感染の治療または予防に使用され得る。
【0004】
一態様において、本開示は、適応型NK細胞を含む組成物を記載する。適応型NK細胞は、普通型NK細胞と比較して機能的に異なる能力を有し、普通型NK細胞と比較して、さらなる抗腫瘍能または抗ウイルス能を与えることができる。
【0005】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD3、CD56であり、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は長命である。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの2つ以上である。例えば、適応型NK細胞はCD57およびNKG2Cであり得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの3つ以上である。例えば、適応型NK細胞はSYK、FcεRγ、およびEAT-2であり得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)転写因子の発現は、普通型NK細胞と比較して適応型NK細胞において減少する。例えば、PLZF発現は90%以上減少され得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、転写因子前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)を発現しない。
【0007】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は抗腫瘍活性を示す。腫瘍は、造血組織および/またはリンパ組織の腫瘍を含み得る。腫瘍は固形腫瘍であり得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、IL-15、IL-21、IL-18、IL-12、IL-2、IFN-α、もしくはIFN-βのうちの1つ以上を含んでなる培地で培養された細胞;ラパマイシンを含んでなる培地で培養された細胞;Notchリガンドを含んでなる培地で培養された細胞;および/またはNKG2C受容体アゴニストを含んでなる培地で培養された細胞に由来する。
【0009】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞をインビボで製造する。いくつかの実施形態において、製造には、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを対象に投与すること、不活性化サイトメガロウイルス(CMV)を対象に投与すること、サイトカインを対象に投与すること、および/またはNotchリガンドを対象に投与することが含まれる。サイトカインには、例えば、IL-15、IL-21、IL-12、IL-18、およびGM-CSFのうちの少なくとも1つ以上が含まれ得る。いくつかの実施形態において、サイトカインまたは組み合わせまたはサイトカインは、高用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、製造は、対象においてNotchリガンドの発現を誘導することを含んでなる。いくつかの実施形態において、対象はCMV血清陽性である。
【0010】
本開示はまた、対象における癌、前癌状態、またはウイルスを治療または予防する方法であって、適応型NK細胞を含んでなる組成物を対象に投与することを含む前記方法を記載する。いくつかの実施形態において、癌には、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊髄癌、胃癌、子宮癌、造血器癌、またはリンパ系癌が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は転移性癌である。
【0011】
また、本開示によって、対象における腫瘍の増殖を阻害する方法が記載される。方法は、適応型NKを含んでなる組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍は固形腫瘍を含んでなる。いくつかの実施形態において、ウイルスはレンチウイルスまたはヘルペスウイルスを含んでなる。いくつかの実施形態において、組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む。
【0012】
本開示はまた、対象における癌または前癌状態を治療または予防する方法であって、適応型NK細胞のインビボでの製造を含む前記方法を記載する。いくつかの実施形態において、癌には、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊髄癌、胃癌、子宮癌、造血器癌、またはリンパ系癌が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は転移性癌である。
【0013】
本開示はまた、対象における腫瘍の増殖を阻害する方法であって、適応型NK細胞のインビボでの製造を含む前記方法を記載する。いくつかの実施形態において、腫瘍は固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、方法は、治療剤を含んでなる組成物を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、自然に発生しないものであることができ、かつ/または自然に発生しない量で投与することができる。治療剤は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、治療用抗体、アジュバント、抗酸化剤、または化学療法剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0014】
本開示は、適応型NK細胞の製造方法をさらに記載する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞をインビトロで製造する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、サイトメガロウイルス(CMV)ナイーブ源由来の細胞、血液から単離された細胞、多能性幹細胞、胚性幹細胞、臍帯血から単離された細胞、および/または誘導多能性幹細胞(iPSC)に由来する。
【0015】
他の態様において、本開示は、適応型NK細胞を得る方法を記載する。方法は、対象から血液サンプルを得ることと、血液サンプルのNK細胞集団を培養することとを含む。いくつかの実施形態において、NK細胞集団を、IL-15、IL-21、およびNotchリガンドのうちの1つ以上を含む培地で培養する。いくつかの実施形態において、NK細胞集団を、CMVペプチド補充成熟樹状細胞と共に培養する。いくつかの実施形態において、NK細胞集団を、自家単球およびIL-15と共に培養する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である。
【0016】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の方法によって得られる適応型NK細胞を含む組成物を記載する。他の態様において、本開示は、本明細書に記載の方法によって得られる適応型NK細胞について富化されているNK細胞集団を含む組成物を記載する。
【0017】
別の態様において、本開示は、単離されたNK細胞集団であって、前記細胞が、CD56dim、ならびにNKG2C、CD57、およびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記単離されたNK細胞集団を記載する。他の態様において、本開示は、単離されたNK細胞集団であって、CD56dimおよびNKG2CであるNK細胞について富化されている、前記単離された集団を記載する。本開示はまた、本明細書に記載の単離された集団を含む組成物を記載する。
【0018】
用語「好ましい」および「好ましくは」は、特定の状況下で一定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況の下で、他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用ではないことを意味せず、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図しない。
【0019】
用語「含んでなる」およびその変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有しない。
【0020】
別段の定めがない限り、「a」、「an」、「the」、および「1つ以上(at least one)」は交換可能に使用され、1つまたは複数を意味する。
【0021】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0022】
別個のステップを含む本明細書に開示されている方法では、ステップは任意の可能な順序で実施され得る。そして、必要に応じて、2つ以上のステップの任意の組み合わせを同時に行い得る。
【0023】
本発明の上記概要は、本発明の各開示された実施形態または全ての実施形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。出願書類全体のいくつかの箇所では、様々な組み合わせで使用できる例のリストによってガイダンスが与えられている。それぞれの例において、列挙されたリストは代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】サイトメガロウイルス(CMV)再活性化が、骨髄機能廃絶(MA)造血幹細胞(HCT)レシピエントではなく、強度軽減前治療(RIC)レシピエントにおける再発リスクの減少および無病生存率の向上と関連することを示す。RICレシピエントにおけるCMV状態によって階層化された、再発率(図1A)および無病生存率(DFS)のカプラン-マイヤー曲線(図1B)。MAレシピエントにおけるCMV状態によって階層化された再発率(図1C)およびDFS(図1D)。破線は、CMV血清陰性レシピエントについて算出された傾向を表す。点線は、ウイルス再活性化を経験しなかったCMV血清陽性レシピエントについて算出された傾向を表す。実線は、ウイルス再活性化を経験したCMV血清陽性レシピエントについて算出された傾向を表す。各プロットで示されたp値を傾向について計算した。
【0025】
図2】CMV再活性化を経験するRIC HCTレシピエントにおけるCD56dimCD57NKG2C適応型NK細胞の優先的な増殖を示す。適応型CD56dimCD57NKG2C表現型のCD56NK細胞の平均パーセンテージ(図2A)および絶対数(細胞/血液μl)(図2B)が示されている。移植後100日目(RIC n=44、MA n=32)、6ヶ月目(RIC n=35、MA n=23)、および1年目(RIC=31、MA=21)でのCMV血清陰性レシピエントの値は、左パネルに示されている。移植後100日目(RIC n=22、MA n=12)、6ヶ月目(RIC=13、MA=14)、および1年目(RIC=11、MA=8)でのCMV再活性化を伴わないCMV血清陽性レシピエントの値は、中央パネルに示されている。ウイルス診断時(RIC n=28、MA n=18)、診断後2週間(RIC n=26、MA n=14)、診断後4週間(RIC n=29、MA n=23)、診断後8週間(RIC n=24、MA n=15)、移植後6ヶ月(RIC n=29、MA n=17)、および移植後1年(RIC n=26、MA n=10)でのCMVを再活性化したCMV血清陽性レシピエントの値は、右パネルに示されている。*=RICとMAとを比較するp≦0.05。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を表す。
【0026】
図3-1】CD56dimCD57NKG2CNK細胞増殖と関連するCMV再活性化時の絶対単球数を示す。ウイルス再活性化時の28のCMV血清陽性レシピエントからの絶対単球数を、6ヶ月または1年のいずれかでのこれらのレシピエントからの末梢血サンプル中のCD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数(図3A)またはパーセンテージ(図3B)のいずれかに対してプロットした。同じレシピエントからのウイルス診断時の絶対リンパ球数も、6ヶ月または1年のいずれかでの末梢血試料中のCD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数(図3C)またはパーセンテージ(図3D)のいずれかに対してプロットした。
図3-2】同上。
【0027】
図4-1】CD56dimCD57NKG2CNK細胞が、他のNK細胞サブセットと比較して高頻度でTNFおよびIFN-γを産生することを示す。CMV血清陽性ドナー由来のPBMCを、K562標的細胞有りまたは無しで2:1の比で培養し、機能的反応をCD56dimNK細胞のサブセットで分析した。図4A.代表的なドナーについて単独で培養したエフェクター細胞(網掛けの灰色の線)と比較した、K562標的で培養したNK細胞におけるTNF発現(白抜きの黒色の線)および細胞内IFN-γ発現(白抜きの黒色の線)のヒストグラム。図4B.5人のドナーからのK562標的で培養したNK細胞における累積TNFおよびIFN-γ発現データ。2つの独立した実験を行った。*=p≦0.05,**=p≦0.005。有意性を判定するために、両側の対応のあるt検定を使用した。エラーバーはSEMを表す。
図4-2】同上。
【0028】
図5-1】高用量IL-15、IL-21、およびNotchシグナル伝達が、最終分化CD57適応型NK細胞およびSYK適応型NK細胞の増殖を支持することを示す。臍帯血から単離した単核細胞を、CD3/CD16を欠失させ、天然またはDL1形質導入OP9間質細胞上の示されたサイトカインと共に14日間培養した。図5A.代表的なドナーからの各培養条件における7日目および14日目のCD56dimNK細胞によるCD57およびSYK発現の蛍光活性化細胞選別(FACS)プロット。培養後14日目に6人の臍帯血ドナーからの表面CD57を発現する(図5B)および細胞内SYKを欠く(図5C)CD56dimNK細胞のパーセンテージの累積データも示す。2つの独立した実験を行った。エラーバーはSEMを表す。
図5-2】同上。
【0029】
図6-1】IL-21と共に培養されたCD56dimSYKNK細胞において、転写因子前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)がダウンレギュレートされることを示す。図6A.示された培養条件下で14日後、代表的なドナーからの臍帯血由来CD56dimNK細胞における細胞内PLZF発現のFACSプロット。図6B.6人のドナーからの各培養条件での14日後のPLZFNK細胞のパーセンテージを示す累積データ。2つの独立した実験を行った。エラーバーはSEMを表す。
図6-2】同上。
【0030】
図7-1】ラパマイシンが適応型NK細胞分化を促進し、NK細胞機能を増強することを示す。健常なCMV血清陽性ドナーからのCD3/CD19欠失PBMCを、DMSOまたは10マイクロモル(μM)ラパマイシンと共に4日間培養した。図7A.代表的なドナーからのCD57およびNKG2C発現のFACSプロット。図7B.単離直後および培養後の4人のドナーからのCD57NKG2C適応型NK細胞のパーセンテージを示す累積データ。上記の条件下で培養された細胞を、FACSにより、CD16刺激有りまたは無しで、脱顆粒(CD107a)およびTNF産生について分析した。図7C.代表的なドナーからのFACSプロット。図7D.4人のドナーからの累積脱顆粒データ。*=p<0.05,**=p≦0.01。
図7-2】同上。
【0031】
図8-1】成人CMV血清陽性ドナーの末梢血由来の適応型NK細胞が、高用量のIL-15、IL-2、およびCD16刺激によりインビトロで増殖され得ることを示す。図8A.代表的なCMV血清陽性ドナー由来のCD57対NKG2C、SYK、およびCellTraceのFACSプロット。4人のCMV血清陽性ドナー由来のNKG2Cを発現するNK細胞のパーセンテージ(図8B)およびSYKを欠くNK細胞のパーセンテージ(図8C)の累積データ。*=p<0.05。
図8-2】同上。
【0032】
図9-1】T細胞およびNK細胞の増殖およびNK細胞の機能を抑制する骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を示す。図9A.健常な給血者由来の精製T細胞およびNK細胞をCellTrace Violetで標識し、T細胞についてはCD3/CD28ビーズ(40ビーズ/1×10細胞)およびIL-15(1ナノグラム毎ミリリットル(ng/mL))の存在下で、NK細胞についてはIL-15(10ng/mL)のみ存在下で、様々な比率でサイトカイン誘導性自家MDSCまたは新鮮な単離単球と共培養した。3日目または4日目に増殖を評価し、6つの独立した実験の代表的なデータを示す。図9B.精製NK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下、単球またはMDSCと2:1の比で共培養した。細胞をアゴニスト性CD16(抗CD16;1マイクログラム毎ミリリットル(μg/mL))で6時間刺激し、その後、染色し、脱顆粒(CD107a)およびIFN-γ産生について評価した。1つの代表的な等高線図および累積(n=8)データを平均±SEMとして示す。スチューデントのt検定を統計解析に使用した。
図9-2】同上。
【0033】
図10-1】適応型NK細胞がMDSC抑制に抵抗することを示す。健常な給血者由来の精製NK細胞を、細胞接触(図10A)または可溶性因子交換のみを可能にするトランスウェル(図10B)で、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と共培養した。細胞を、染色の6時間前に抗CD16で刺激し、脱顆粒、IFN-γ(図10A図10B)、およびTNF-産生(図10A)、および増殖(Ki67)(図10A)をそれぞれフローサイトメトリーによって評価した。普通型(Conv)NK細胞は、CD56CD3CD57NKG2Cとして、適応型NK細胞は、CD56CD3CD57NKG2CFcεRγとして同定される。5~7回の独立した実験のプールされたデータを平均±SEMとして示し、統計解析をスチューデントのt検定を用いて行った。
図10-2】同上。
【0034】
図11-1】普通型NK細胞が、適応型NK細胞と比較してより高いTIGITを発現することを示す。図11A.健常な供血者由来の精製NK細胞を、IL-15(10ng/mL)単独の存在下もしくは非存在下で、または18時間のIL-12(10ng/mL)およびIL-18(100ng/mL)の追加刺激とともに、または6時間の抗CD16(1μg/mL)の刺激とともに、染色前に培養した。4つの独立した実験のうちの1つが示されている。NK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比率で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と共に培養した。細胞を、分析の6時間前に抗CD16で刺激した。DNAM-1(図11B)およびTIGIT発現(図11C)の代表的なヒストグラムならびにTIGIT発現の集計データ(n=8)を、平均蛍光強度(MFI)±SEMとして示す。統計解析には2元ANOVAを用いた。図11D.単球またはMDSCとの共培養の前後のNK細胞を、DNAM-1およびTIGITの共発現について分析した。3つの独立した実験および7つの反復の代表的なデータを示す。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
【0035】
図12-1】普通型NK細胞MDSCのTIGIT依存性抑制を示す。図12A.単球、MDSC、およびNK細胞を、CellTracker Blueで標識し、一晩スライド上で共培養した後、抗CD16で刺激し、その後、抗CD155(緑色)および抗TIGIT(赤色)で染色し、次いで共焦点顕微鏡法を行った。共培養したときの個々の細胞型が上部パネルまたは下部パネルに示されている。2つの独立した実験および6人のドナーの代表的なデータが示されている。NK細胞を、5日間、IL-15およびIgG対照(10μg/ml)、またはTIGITに対する遮断抗体(10μg/ml)の存在下で、単球またはMDSCと共に培養した。脱顆粒(n=9)およびIFN-γ産生(n=8)を、ポリクローナルNK細胞(図12B)、普通型NK細胞(n=8)(図12C)、および適応型NK細胞(n=9)(図12D)で評価した。図12E.あるいは、細胞を抗TIGITおよび抗DNAM-1(10μg/ml)によって同時遮断した(n=6)。プールされたデータを、反復数nの平均±SEMとして示し、統計解析のために2元および1元ANOVAを使用した。
図12-2】同上。
図12-3】同上。
【0036】
図13】反応性酸素種(ROS)がMDSC上でCD155発現を誘導することを示す。MDSCは、7日間IL-6(10ng/mL)およびGM-CSF(10ng/mL)を受けた健常な給血者PBMCから誘導され、HLA-DRについてビーズ欠失(bead-depleted)を受け、CD33について富化された。図13A.示された抗原について、MDSCおよび新鮮な単離単球を染色した。10の独立した実験からの1つの代表的な例が示されている。図13B.誘導されたMDSCを、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD、200IU/mL)、アルギナーゼ阻害剤(a-ARG、アルギナーゼ阻害剤N(ω)-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン、500μM)、ROSスカベンジャー(カタラーゼ、200国際単位毎ミリリットル(IU/mL))、TGF-βに対する遮断抗体(10μ/mL)、iNOS阻害剤(aiNOS、NG-モノメチル-l-アルギニン、500マイクロモル(μM))を用いて一夜処理後、または未処理のまま、CD155で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。プールされた(n=4)データを平均±SEMとして示し、統計解析をスチューデントのt検定を用いて行った。図13C.非刺激単球およびMDSCを全ROSについて染色し、フローサイトメトリーによって分析した。図13D.非刺激またはH(250μM)単球および非刺激MDSCを全ROS、CD112、およびCD155について染色し、フローサイトメトリーにより分析した。ROSおよびCD112またはCD155に対して二重陽性の細胞が示されている。6人のうちの代表的なドナー1名が示されている。個々の対照が条件間で類似していたので、簡略化のために、1つの代表的なアイソタイプ対照が、全ての群について示されている。
【0037】
図14】TIGITの関与が、pZAP70/SykおよびpERK1/2を阻害し、NK細胞の細胞障害性の阻害をもたらすことを示す。健常な供血者由来の精製NK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下、TIGITに対する遮断抗体(10μg/mL)またはカタラーゼ(200IU/mL)の存在下または非存在下で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と2:1の比率で共培養した。次いで、細胞を洗浄し、4時間休止させ、抗CD16で10分間および30分間刺激し、pZAP/SykまたはpERK1/2についてそれぞれ染色した。代表的(図14A)または累積的(図14B)データが、3つの独立した実験から平均±SEMとして示されている。統計解析をスチューデントのt検定を用いて行った。図14C.抗TIGITまたはカタラーゼの存在下または非存在下での単球およびMDSC共培養からのNK細胞を洗浄し、51Cr標識K562と4時間インキュベートして、NK細胞の細胞傷害性を評価した。3回の独立した実験からの代表的なデータが平均±SEMとして示されている。
【0038】
図15-1】骨髄異形成症候群(MDS)MDSCによる普通型NK細胞のTIGIT依存性抑制を示す。図15A.MDS患者および健常なドナー(n=6)からのPBMC(n=15)を一晩休止させ、染色し、MDSC頻度をフローサイトメトリーによって測定した。単球型MDSC(mMDSC)をCD45LinCD11bCD33HLA-DR-/lowCD14として、顆粒球型MDSC(gMDSC)をCD45LinCD11bCD33CD15として定義した。図15B.MDS-PBMCをCD155について染色し、mMDSCおよび単球をゲーティングした。代表的なヒストグラムが15で示されている。図15C.MDS患者由来のPBMC(n=10)を一晩休止させ、フローサイトメトリーによりTIGIT発現について評価した。図15D.健常なドナー(HD、n=6)またはMDS患者(n=13)からのPBMCを、IgG対照または抗TIGITおよび抗CD16(1μg/ml)の存在下で、IL-15(10ng/ml)で6時間刺激し、NK細胞脱顆粒およびIFN-γ産生について評価した。図15E.健常な給血者由来の精製NK細胞(n=6)を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比で、自家単球またはMDS患者の血液から濃縮された同種異系MDSCと共培養した。抗CD16による6時間の刺激の後、脱顆粒およびIFN-γ産生を、フローサイトメトリーによって普通型および適応型NK細胞で評価した。図15F.健常な供血者由来の精製NK細胞(n=6)を、IL-15(10ng/mL)の存在下で、および抗TIGIT(10μg/mL)の存在下または非存在下で、MDS患者の血液から濃縮された同種異系MDSCと2:1の比率で5日間共培養した。染色の6時間前に、細胞を抗CD16で刺激し、脱顆粒およびIFN-γ産生を、フローサイトメトリーによって、普通型および適応型NK細胞において評価した。代表的なデータを平均±SDとして示し、プールされたデータに対し、(図15A)、(図15C)、(図15D)ではスチューデントのt検定を用いて、(図15E)および(図15F)ではマンホイットニー検定を用いて、統計解析を行った。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
【0039】
図16図16Aはインビトロで誘導されたMDSCおよび新鮮な単離単球の代表的な表現型。図16BはNK細胞をIL-15(10ng/ml)の存在下で5日間培養し、代表的なヒストグラムは、普通型対適応型NK細胞におけるCD16の発現を示している。平均蛍光強度(MFI)が示されている。図16CはNK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比率で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と共に培養した。染色の6時間前に、細胞を抗CD16で刺激し、細胞をフローサイトメトリーで分析した。代表的なヒストグラムが平均蛍光強度(MFI)として示されている。図16Dは健常な給血者由来の精製NK細胞(n=6)を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比で、自家単球またはMDS患者の血液から濃縮された同種異系MDSCと共培養した。抗CD16による6時間の刺激の後、IFN-γ産生を、フローサイトメトリーによって普通型および適応型NK細胞で評価した。代表的および累積的データが、8つの独立した実験から平均±SEMとして示されている。統計解析をスチューデントのt検定を用いて行った。
【0040】
図17】実施例7で使用されたゲーティング法を示す。図17A.健常な供血者における適応型および普通型NK細胞に対するゲーティング法。図17B.MDS患者における適応型および普通型NK細胞に対するゲーティング法。プロットに表された細胞パーセンテージは、全NK細胞の普通型および適応型NK細胞の頻度を表す。
【0041】
図18】NK細胞機能が抗TIGITの存在下では影響を受けなかったことを示す。図18A.健常ドナーポリクローナル-NK(n=4)細胞の細胞傷害性を、抗TIGIT(10μg/ml)またはアゴニスト性抗CD158b(10μg/ml)の存在下で、p815に対する51Cr放出アッセイ(4時間)によって分析した。累積データを平均±SDとして示し、統計解析をマンホイットニー検定を用いてプールされたデータに対して行った。図18B.NK細胞を、IL-15およびIgG(10μg/ml)またはTIGITに対する遮断抗体(10μg/ml)の存在下で単球またはMDSCと共に5日間培養するか、あるいは、細胞を抗TIGITおよび抗DNAM-1(10μg/ml)で同時遮断した(n=6)。プールされたデータを、平均±SEMとして示し、統計解析のために1元ANOVAを使用した。図18C.健常な給血者由来の精製NK細胞(n=6)を、5日間、IL-15(10ng/ml)の存在下で、2:1の比で、自家単球またはMDS患者の血液から濃縮された同種異系MDSCと共培養した。抗CD16による6時間の刺激の後、TFN-α産生を、フローサイトメトリーによって普通型および適応型NK細胞で評価した。代表的データを平均±SDとして示し、統計解析をマンホイットニー検定を用いてプールされたデータに対して行った。
【0042】
図19】成熟樹状細胞のCMVペプチドのプールによるパルス化が、適応型NK細胞の増殖を誘導することを示す。健常なCMV血清陽性ドナーからの末梢血単核細胞から、NK細胞、未分画の単球、未成熟樹状細胞(imDC)、および成熟樹状細胞(mDC)を単離した。次いで、NK細胞を10ng/mLのIL-15で培養するか、または示された自家細胞型および10ng/mLのIL-15と共培養した。選択した成熟樹状細胞培養物に、CMV pp65ペプチドプールまたはHIV PTE Gagペプチドプールをさらに補充した。細胞を12~14日後に採取し、FACSを用いて、各培養条件での適応型NK細胞(CD3CD56CD57FcεR1γとして定義される)の頻度(左パネル)および活発に増殖する適応型NK細胞のパーセンテージ(右パネル)を求めた。1つの実験からの5人のドナーの累積的データが示されている。
【0043】
図20】自家単球およびIL-15の存在下で培養した場合、CMV血清陽性ドナーからのNK細胞が、CD45RACD45RO表現型に偏っていることを示す。類別された健常なCMV血清陰性および血清陽性ドナー由来のCD3/CD19欠失末梢血単核細胞を10ng/mLのIL-15で培養した。7日後、細胞を採取し、FACSにより分析した。示されているのは、1人のCMV血清陽性ドナーおよび1人のCMV血清陰性ドナーからの培養の前後の両方における代表的な表現型である(上)。5人のCMV血清陰性ドナーおよび8人のCMV血清陽性ドナー由来の培養前および培養後のCD3CD56CD45RACD45RONK細胞のパーセンテージを示す累積データが示されている(下)。データは、2つの独立した実験の代表例である。対応のあるスチューデントのt検定を用いて群内の統計的有意性を決定し、対応のないスチューデントのt検定を用いて群(CMV血清陽性およびCMV血清陰性)間の統計的有意性を決定した。*p≦0.05,**p≦0.01,***p≦0.001。
【0044】
図21-1】適応型NK細胞がTreg媒介性抑制に抵抗性であることを示す。12人のCMV血清陽性ドナー由来のCellTrace標識CD56NK細胞を、単独で培養するか、または示された比率でTregと6日間共培養した。図21A.FACSを用いて、普通型(CD56CD57FcεRγNKG2C)および適応型(CD56CD57FcεRγNKG2C)NK細胞サブセットの増殖を分析した。示されているのは、各培養条件においてCellTrace色素希釈を示したNK細胞のパーセンテージである。図21B.抗CD16アゴニスト抗体、IL-12、およびIL-18で刺激した後の培養NK細胞に関する脱顆粒(CD107a発現によって測定)およびIFN-γ産生をFACSによって測定した。図21C.FACSを用いて培養NK細胞のPD1およびTIM-3の発現を測定した。結果は2つの独立した実験からのものである。p値は対応のあるスチューデントのt検定から生成した。
図21-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示は、適応表現型を示すNK細胞、適応型ナチュラルキラー(NK)細胞の単離集団;適応型NK細胞を含む組成物;適応型NK細胞、適応型NK細胞集団、または適応型NK細胞を含む組成物のインビトロおよび/またはインビボでの製造または産生方法;ならびに適応型NK細胞、適応型NK細胞集団、または適応型NK細胞を含む組成物の使用方法を与える。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、ウイルス感染、癌、および/または腫瘍を治療するために使用され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造には、細胞または細胞集団の単離が含まれる。いくつかの実施形態において、製造には、細胞の分化および/または増殖が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「NK細胞」は、CD56およびCD3の両方である細胞を指す。ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルス感染および腫瘍に対する免疫において必須の役割を果たすサイトカイン産生細胞傷害性リンパ球である。本明細書で使用される場合、「普通型NK細胞」とも呼ばれる「標準NK細胞」は、SYK、EAT-2、FcεRγ、PLZFであるNK細胞を指す。いくつかの実施形態において、普通型NK細胞はNKG2Cである。いくつかの実施形態において、普通型NK細胞はCD57である。いくつかの実施形態において、適応型NKは、SYK、EAT-2、FcεRγ、およびPLZFのうちの1つ以上の発現低下または発現欠失を示すNK細胞であり得る。
【0048】
適応型NK細胞は、普通型NK細胞と比較して機能的に異なる能力を有する。これらの機能の差異は、適応型NK細胞が普通型NK細胞と比較して、さらなる抗腫瘍能または抗ウイルス能を与えることを可能にする。適応型NK細胞は、普通型NK細胞とは区別されるいくつかの特有のサブセットのうちの1つに属し得る。以下にさらに記載するように、適応型NK細胞は、例えば、ヒトCD8T細胞上の最終分化のマーカーであるCD57を発現し得る;普通型NK細胞によって発現されるPLZFのレベルと比較して、転写因子前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)をコードする遺伝子の転写サイレンシングを示し得る;低親和性Fc受容体CD16によって誘発された場合に機能の増強を示し得る;SYK、EAT-2、およびFcεRγをコードする1つ以上の遺伝子の転写サイレンシングを示し得る;NKG2Cを発現し得る:CD45ROを発現し得る;CD45RAの発現低下または発現欠失を示し得る;長命であり得る;記憶細胞表現型を示し得る;普通型NK細胞と比較して抗腫瘍活性の増強を示し得る;かつ/または普通型NK細胞と比較して抗ウイルス活性の増強を示し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、NK細胞および/または適応型NK細胞は、CD56brightNK細胞であり得る。末梢血から単離されたCD56brightNK細胞は、IL-2またはIL-15刺激の際に急速に増殖し、IL-12およびIL-18刺激に応答して高レベルのインターフェロン(IFN)-γを産生し、高レベルの抑制性受容体NKG2Aを発現し、低親和性Fc受容体CD16およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)の発現を欠く。CD56brightNK細胞は、非常に低いレベルのパーフォリンおよびグランザイムを発現するので、細胞傷害性が限られている。CD56brightNK細胞は、全末梢血NK細胞のわずかな部分しか構成しないが、CD56dimNK細胞に分化する場所と推定される二次リンパ組織において顕著に多く含まれている。
【0050】
他の実施形態において、NK細胞および/または適応型NK細胞は、CD56dimNK細胞であり得る。標準CD56dimNK細胞は、非常に高レベルのパーフォリンおよびグランザイムを発現し、ウイルス感染細胞、新生細胞、および自家活性化免疫細胞に応答して容易に脱顆粒する、表現型が多様なNK細胞のサブセットを表す。標準CD56dimNK細胞は、CD16発現レベルが高いため、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の強力なメディエーターであり、KIRを活性化することによって容易に刺激され得る。標準CD56dimNK細胞による脱顆粒は、自己MHCクラスI分子を認識する教育抑制性KIRの発現によって促進される。したがって、標準CD56dimNK細胞は、活性化されたリンパ球の細胞傷害性免疫調整および感染細胞または形質転換細胞の早期免疫監視を効率的に媒介することができる。CD56brightNK細胞と比較して、標準CD56dimNK細胞は、IL-12およびIL-18に応答してより少ないIFN-γを産生する。
【0051】
CMV血清陽性および再活性化
サイトメガロウイルス(CMV)は、一般に生後間もなくに獲得され、永続的で生涯にわたる感染を確立するβヘルペスウイルスである。CMV血清陽性率は米国成人の約50%であり、健常人のCD8T細胞およびNK細胞によってよく制御されるため、感染症は通常無症候性である。CMV血清陽性は、ヘテロ二量体活性化受容体CD94-NKG2Cを発現するNK細胞の割合の増加、および健常成人におけるNKG2ChighCD57NK細胞の増加と関連する(Lopez-Verges et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(36):14725-14732)。CMVに曝露されていない個体はCMV「ナイーブ」である。
【0052】
一次感染後、CMVは通常は根絶されないが、その宿主で生涯にわたる感染を確立する。CMVは、分散され、複数の末端器官で休眠状態になるが、後に、免疫抑制および炎症などを含む多くの様々な刺激によって再活性化され得る。
【0053】
実施例1および図1に示されるように、CMV再活性化は、強度軽減前治療(RIC)および造血幹細胞移植(HCT)(30~40%の再発率につながることが知られているレジメン)で治療された血液悪性腫瘍を有する患者における白血病再発の減少および無病生存率の改善と関連する。実施例1および図2は、特にRICを受けている患者において、インビボでのCMV再活性化と適応型NK細胞増殖との間の新規な関係を確証する。
【0054】
適応型NK細胞
本明細書で使用される場合、「適応型NK細胞」は、単一の適応型NK細胞、複数の適応型NK細胞、および/または適応型NK細胞を含む単離細胞集団を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞はCD57である。平均して、成人由来のCD56dimNK細胞の40%がCD57を発現し、個人間の有意な差は、5%~70%に亘る。パーフォリンを発現するNK細胞の大部分はCD57である。機能的には、CD56dimCD57NK細胞は、IL-2またはIL-15に応答してCD56dimCD57NK細胞と比較して増殖が不十分であり、IL-12およびIL-18による刺激に対して応答性が低い(Bjorkstrom et al., Blood.2010; 116(19):3853-3864)。しかし、CD56dimCD57NK細胞は、より多くのIFN-γを産生し、CD16により刺激した場合により強力な溶解活性を示す(Lopez-Verges et al., Blood.2010;116(19):3865-3874)。本明細書に記載されているように、CD57は、活性化受容体を介した誘発に応答してロバストな細胞障害性および炎症性サイトカイン産生を示す最終分化標準NK細胞のマーカーであり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞はNKG2Cである。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD45RO、CD45RA、および/またはTIGITlowである。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞はTIGITである。
【0057】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの2つ以上である。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は長命である。例えば、適応型NK細胞は、CD57およびNKG2CまたはCD56dimおよびTIGITlowまたはCD56dimおよびNKG2Cであり得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、CD57、NKG2C、SYK、FcεRγ、EAT-2、CD56dim、TIGITlow、CD45RO、およびCD45RAのうちの3つ以上である。例えば、適応型NK細胞は、SYK、FcεRγ、およびEAT-2、またはCD56dim、NKG2C、およびTIGITlowであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)転写因子の発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞において減少する。いくつかの実施形態において、前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)転写因子の発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞において、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上減少している。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞はPLZFを発現しない。いくつかの実施形態において、マーカーまたはタンパク質を発現しないことは、FACSを用いて検出可能でないマーカーまたはタンパク質の発現レベルを有することとして定義されることが好ましく、マーカーもしくはタンパク質に対して陽性であること、またはマーカーもしくはタンパク質を発現することは、FACSを用いて検出可能であるマーカーまたはタンパク質の発現レベルを有することとして定義される。
【0059】
いくつかの実施形態において、PD-1の発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞で減少している。いくつかの実施形態において、PD-1の発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞において、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上減少している。いくつかの実施形態において、PD-1(抑制性受容体)のレベル低下は、適応型NK細胞が多くの腫瘍細胞が発現するPDL1に抵抗することを可能にする。
【0060】
いくつかの実施形態において、TIGITの発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞で減少している。いくつかの実施形態において、TIGITの発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞において、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上減少している。
【0061】
いくつかの実施形態において、PLZF、PD-1、およびTIGITの発現は、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞で減少している。
【0062】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は抗腫瘍活性を有する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、造血組織および/またはリンパ組織の腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍は固形腫瘍である。
【0063】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、細胞傷害性受容体2B4、低親和性Fc受容体CD16、および/またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)を発現する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は抑制性受容体NKG2Aの発現を欠失している。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、高レベルのグランザイムおよび/またはパーフォリンを発現し、ウイルス感染細胞、新生細胞、および/または自家活性化免疫細胞に応答して脱顆粒する能力を示す。
【0064】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は長命NK細胞であり、かつ/または記憶NK細胞である。いくつかの実施形態において、長命NK細胞は、感染後21日以上、30日以上、60日以上、80日以上、または100日以上持続する。これと比較して、標準NK細胞は、通常7~14日未満のより低い持続性を示す。
【0065】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、標準NK細胞と比較して抗腫瘍免疫活性が増強している。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、標準NK細胞と比較して、免疫応答のMDSC誘導性抑制を克服する能力が強化されている。いくつかの実施形態において、MDSCの存在下で、適応型NK細胞が、MDSCの存在下の標準NKと比較して増殖の増強を示すとき、適応型NK細胞は、MDSC誘導性抑制を克服する能力の強化を示す。
【0066】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、標準NK細胞と比較して、免疫応答の調節性T細胞(Treg)誘導性抑制を克服する能力が強化されている。いくつかの実施形態において、Tregの存在下で、適応型NK細胞が、Tregの存在下でのNK標準NKと比較して、(例えば、CD107a発現によって測定される)脱顆粒および/またはIFN-γ産生の増強を示す場合、適応型NK細胞は、Treg誘発性抑制を克服する能力の強化を示す。
【0067】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、単離細胞集団および/またはNK細胞集団などを含む細胞集団に含まれ得る。いくつかの実施形態において、細胞集団が、10%以上の適応型NK細胞、20%以上の適応型NK細胞、30%以上の適応型NK細胞、40%以上の適応型NK細胞、50%以上の適応型NK細胞、60%以上の適応型NK細胞、70%以上の適応型NK細胞、80%以上の適応型NK細胞、90%以上の適応型NK細胞、または95%以上の適応型NK細胞を含む場合、細胞の集団は、適応型NK細胞について「富化されている」と考えられる。
【0068】
適応型NK細胞のインビトロ製造
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の産生および/または製造をインビトロで行う。インビトロでの製造には、細胞分化、増殖、濃縮、および/または単離が含まれ得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞を、対象からの血液サンプル、または血液サンプルから単離された細胞集団から製造し得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造および/または産生方法は、対象から血液サンプルを得ることと、血液サンプルのNK細胞集団を培養することとを含む。いくつかの実施形態において、NK細胞集団を培養する前に、血液サンプルからのNK細胞集団を単離する。いくつかの実施形態において、血液サンプルのNK細胞集団を、培地中で培養すること;成熟樹状細胞、CMVペプチド補充成熟樹状細胞、もしくはその両方などを含む樹状細胞と培養すること;および/または単球と培養することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞を、サイトメガロウイルス(CMV)ナイーブおよび/またはCMV血清陰性源から製造し得る。例えば、適応型NK細胞を、CMV血清陰性ドナーの血液から単離した細胞から製造し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞を、CMV血清陽性源から製造し得る。例えば、適応型NK細胞を、CMV血清陽性ドナーの血液から単離した細胞から、またはCMV血清陽性ドナーの血液から単離した細胞集団から製造し得る。いくつかの実施形態において、対象から血液サンプルを得ることを含む適応型NK細胞の製造および/または産生方法は、対象にサイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを投与することをさらに含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞を、多能性幹細胞から、胚性幹細胞から、臍帯血から単離された細胞から、誘導多能性幹細胞(iPSC)から、造血性内皮から、造血幹細胞または前駆細胞から、iPSC由来の造血幹細胞から、分化転換による造血幹細胞から、標準NK細胞から、および/またはNK細胞前駆体から製造し得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造および/または産生方法は、細胞または細胞集団、例えば、NK細胞集団を培地で培養することを含む。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、培地で培養された細胞に由来する。
【0074】
いくつかの実施形態において、培地は、1種以上のサイトカインを含む。培地は、例えば、IL-15、IL-21、IL-18、IL-12、IL-2、IFN-α、またはIFN-β、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、サイトカインは、例えば、Denman et al., PLOS One.2012 7(1):e.30264に記載されているように、膜結合型であり得る。いくつかの実施形態において、培地は、Notchリガンドを含み得る。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、ラパマイシンを含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、フィーダーを含まない。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、CD16シグナル伝達の活性化因子、例えば、抗CD16抗体、Fc受容体のリガンド、CD16のリガンド、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、および/または三重特異性キラーエンゲージャー(TriKE)を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、培地は、TIGIT阻害剤、TIGITブロッカー、TIGITアンタゴニスト、TIGITリガンドブロッカー、および/またはTIGITリガンドアンタゴニストを含み得る。いくつかの実施形態において、TIGIT阻害剤は、TIGITに対する抗体を含む。いくつかの実施形態において、TIGITリガンドは、例えば、CD155またはCD112を含み得る。いくつかの実施形態において、ブロッカーまたはアンタゴニストは、例えば、遮断抗体を含み得る。いくつかの実施形態において、培地は、反応性酸素種(ROS)の産生の阻害剤、例えば、カタラーゼなどを含み得る。実施例7に示すように、TIGITの遮断またはROSの阻害は、NK細胞の細胞障害性を活性化するシグナル伝達カスケードを増加させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造方法は、血液サンプルのNK細胞をTIGIT阻害剤、PLZF阻害剤、および/またはPD-1阻害剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、TIGIT阻害剤は、TIGITに対する抗体を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造方法は、血液サンプルのNK細胞または適応型NK細胞においてPLZF、TIGIT、および/またはPD-1の発現を抑制することを含む。いくつかの実施形態において、発現を、PLZF、TIGIT、および/またはPD-1をコードする核酸の遺伝子ノックダウンによって抑制し得る。いくつかの実施形態において、発現を、siRNAの使用によって抑制し得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、例えば、適応型NK細胞の製造および/または産生方法が、対象から血液サンプルを得ることと、血液サンプルのNK細胞集団を培養することとを含む場合、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して、特徴または機能が変化していることがある。例えば、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して増強した抗腫瘍免疫活性を有し得る。抗腫瘍免疫活性の増強は、細胞傷害性の増加、サイトカイン産生の増加、およびT調節(Treg)細胞に対する抵抗性の増加のうちの1つ以上などを含み得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して、細胞傷害性の増加;サイトカイン産生の増加;インビボおよび/またはインビトロでの持続性の増加;ならびにT調節細胞に対する抵抗性の増加のうちの1つ以上を有し得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して、PLZF、TIGIT、および/またはPD-1の発現が減少し得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して、免疫応答のMDSC誘導性抑制を克服する能力が強化されていることがあり得る。いくつかの実施形態において、MDSCの存在下で、適応型NK細胞が、MDSCの存在下の培養前のNK細胞集団のNK細胞と比較して増殖の増強を示すとき、適応型NK細胞は、MDSC誘導性抑制を克服する能力の強化を示す。
【0080】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、培養前のNK細胞集団と比較して、免疫応答の調節性T細胞(Treg)誘導性抑制を克服する能力が強化されている。いくつかの実施形態において、Tregの存在下で、適応型NK細胞が、Tregの存在下での培養前のNK細胞集団のNK細胞と比較して、(例えば、CD107a発現によって測定される)脱顆粒および/またはIFN-γ産生の増強を示す場合、適応型NK細胞は、Treg誘導性抑制を克服する能力の強化を示す。
【0081】
いくつかの実施形態において、例えば、適応型NK細胞の製造または産生方法が、対象から血液サンプルを得ることと、血液サンプルのNK細胞集団を培養することとを含む場合、方法は細胞増殖を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造または産生方法は、適応型NK細胞を単離することを含む。いくつかの実施形態において、NK細胞を、1つ以上の表面マーカーの発現または発現の欠如を用いて単離し得る。有用な表面マーカーとして、例えば、CD56、CD3、CD57、NKG2C、TIGIT、CD45RO、およびCD45RAを挙げ得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造または産生方法により、適応型NK細胞について富化されているNK細胞集団が得られる。いくつかの実施形態において、NK細胞集団が、10%以上の適応型NK細胞、20%以上の適応型NK細胞、30%以上の適応型NK細胞、40%以上の適応型NK細胞、50%以上の適応型NK細胞、60%以上の適応型NK細胞、70%以上の適応型NK細胞、80%以上の適応型NK細胞、90%以上の適応型NK細胞、または95%以上の適応型NK細胞を含む場合、NK細胞集団は、適応型NK細胞について「富化されている」と考えられる。いくつかの実施形態において、NK細胞集団から適応型NK細胞を製造または産生する方法により、当該方法を実施した後のNK細胞集団が、当該方法を実施する前に見られたNK細胞の割合よりも高い割合の適応型NK細胞を含む場合に、適応型NK細胞について「富化されている」集団が得られる。いくつかの実施形態において、対象から血液サンプルを得ることと、血液サンプルのNK細胞集団を培養することとを含む適応型NK細胞を製造または産生する方法により、当該方法を実施した後のNK細胞集団が、血液サンプルのNK細胞集団で見られたNK細胞の割合よりも高い割合の適応型NK細胞を含む場合に、適応型NK細胞について「富化されている」集団が得られる。
【0084】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、フィーダー細胞と共培養した細胞に由来する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、フィーダーのない細胞培養培地で培養した細胞に由来する。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は付着細胞である。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は照射細胞である。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は間質細胞である。いくつかの実施形態において、間質細胞はOP9細胞であり得る。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は、適応型NK細胞を刺激および/または分化させるリガンド、例えば、Notchリガンド、例えばデルタ様1(DL-1);膜結合型サイトカイン;ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子(古典的または非古典的HLA、例えば、HLA-Eなど);またはそれらの組み合わせを発現し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、単球と共培養した細胞に由来する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造および/または産生方法は、細胞または細胞集団、例えば、NK細胞集団を単球と培養することを含む。いくつかの実施形態において、単球には、CD14単球、マクロファージ;樹状細胞、例えば成熟樹状細胞;抗原提示細胞;および/または別の骨髄系細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、単球は、抗原、例えば、CMV由来の抗原などを提示し得る。いくつかの実施形態において、抗原はCMVペプチドであることが好ましい。いくつかの実施形態において、培地は、抗原提示細胞および/または単球を刺激するサイトカイン、例えば、炎症性サイトカインもしくはGM-CSF、またはその両方を含み得る。いくつかの実施形態において、培地は、単球の成熟を誘導するサイトカイン、例えばIL-15などを含み得る。いくつかの実施形態において、単球は、自家単球であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、1つ以上の活性化受容体、例えば、限定されるものではないが、CD16、NKG2C、DNAM-1、および2B4のアゴニストを含んでなる培地で培養された細胞に由来する。いくつかの実施形態において、アゴニストは、1つ以上の活性化受容体を刺激する単一のモノクローナル抗体またはモノクローナルもしくはポリクローナル抗体の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、アゴニストは受容体の天然リガンドであり得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、活性化受容体の刺激因子、例えばNKG2C受容体の天然リガンドであるHLA-Eと共に培養された細胞に由来する。いくつかの実施形態では、適応型NK細胞は、NKG2CNK細胞を得るための国際公開第2014/037422号に記載の培養方法に従って培養され得る。
【0087】
実施例2に示すように、高用量IL-15(10ng/mL)およびIL-21(50ng/mL)を用いるOP9デルタ様1(DL1)間質細胞系での臍帯血由来NK細胞のインビトロ培養は、CD57を発現する最終分化細胞の分化および増殖を促進する。さらに、これらの培養条件は、臍帯血由来CD56SYKPLZF適応型NK細胞の増殖を支持する。したがって、本明細書に記載の培養系を用いて、癌および/またはウイルス感染を有する対象への養子移入のための生体外でのNK細胞の高度に機能的なサブセットの成熟および増殖を促進することができる。実施例1に示すように、CD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖は、HCT強度の減少後の白血病再発の減少と関連し、最終NK細胞成熟および適応型NK細胞増殖がインビボでの抗腫瘍効果と関連するという考えを支持する。
【0088】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、TIGITの発現をダウンレギュレートするため、またはTIGITを発現しないため、選択された細胞に由来する。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞を含む細胞集団は、TIGITlowおよび/またはTIGIT細胞についてさらに富化され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、樹状細胞と共に培養した細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、樹状細胞は成熟樹状細胞であり得る。いくつかの実施形態において、樹状細胞をCMVペプチドと共に培養し得る。いくつかの実施形態において、CMVペプチドには、複数のCMVペプチドおよび/またはCMVペプチドのプールが含まれ得る。例えば、実施例8に示すように、CD3CD56NK細胞およびCD14単球をCMVペプチド補充成熟樹状細胞と共にインキュベートすることにより、適応型NK細胞の増殖を誘導することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、単球と共に培養した細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、単球は、自家単球であり得る。いくつかの実施形態において、適応型NK細胞は、IL-15の存在下で単球と共に培養された細胞に由来し得る。例えば、実施例9に示すように、自家単球およびIL-15の存在下で培養した場合、CMV血清陽性ドナーからのNK細胞は、CD45RACD45RO表現型に偏っている。
【0091】
適応型NK細胞のインビボでの製造
いくつかの実施形態において、適応型NK細胞の製造をインビボで行う。インビボで製造した適応型NK細胞を、それを製造した同じ対象において、または異なる対象において、例えば適応型NK細胞製剤の同種異系適用で使用し得る。いくつかの実施形態において、インビボで製造した適応型NK細胞を、対象から取り出し、その後対象に再投与し得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、製造には、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチン、例えば弱毒化CMVワクチン、組換えCMVワクチン、および/または不活性化CMVを対象に投与することが含まれ得る。いくつかの実施形態において、対象はワクチンおよび/または不活性化CMVの投与前にCMV血清陽性である。
【0093】
いくつかの実施形態において、製造には、対象にサイトカイン、例えば、IL-15、IL-21、IL-18、IL-12、IL-2、IFN-α、IFN-β、およびGM-CSFのうちの1つ以上を投与することが含まれる。いくつかの実施形態において、サイトカインは膜結合型であり得る。いくつかの実施形態において、製造には、対象にNotchリガンドを投与すること、および/または対象においてNotchリガンドの発現を誘導することが含まれる。いくつかの実施形態において、製造には、ラパマイシンを投与することがさらに含まれる。
【0094】
実施例1に示すように、CMV血清陽性強度軽減前治療(RIC)レシピエントは、骨髄機能廃絶(MA)前治療レシピエントと比較して、ウイルス再活性化時にやや高い絶対単球数(AMC)を有した。さらに、ウイルス診断時のAMCは、その後のCD56dimCD57NKG2CNK細胞増殖と相関した。単球が適応型NK細胞の分化および増殖を促進する可能性のある1つの方法は、IL-12の産生によるものである。単球由来樹状細胞によって産生されるIL-18ならびにI型IFN(IFN-αおよびIFN-β)などの他の炎症性サイトカインは、NK細胞機能を増強することができ、適応型NK細胞の分化または成熟に寄与し得る。いくつかの実施形態において、単球には、CD14単球、マクロファージ;樹状細胞、例えば成熟樹状細胞;抗原提示細胞;および/または別の骨髄系細胞が含まれる。
【0095】
CD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖はCMV感染または移植後の再活性化に関連するが、細胞はCMV抗原に対して厳密な特異性を有するようには見えない。実際、インビトロ実験は、他のNK細胞サブセットと比較して、CD56dimCD57NKG2CNK細胞が、K562骨髄性白血病細胞に応答して、TNFおよびIFN-γ産生の著しい上昇を示すことを実証した。ウイルス感染細胞と同様に、癌細胞は、HLA-Eの発現を保持しながら、古典的クラスI HLA分子をダウンレギュレートすることができる。主に阻害性NKG2Aから活性化NKG2CへのHLA-E認識のための受容体の使用の切り替えは、適応型NK細胞が移植片対白血病効果を媒介するメカニズムであり得る。
【0096】
造血細胞移植(HCT)を受ける白血病患者では、CMVの再活性化は、NKG2ChighCD57NK細胞の増殖と関連している。これらの細胞は、移植後1年以上の間は高頻度で持続し、教育抑制性KIRの発現について富化され、K562骨髄性白血病細胞による刺激に応答して高頻度でインターフェロン(IFN)-γを産生した(Foley et al., Blood.2011;118(10):2784-2792; Foley et al., J Immunol.2012;189(10):5082-5088)。
【0097】
投与
インビトロまたはインビボで製造した適応型NK細胞を、対象に単独で、または追加の活性剤および/または薬剤的に許容できる担体を含有する医薬組成物で投与し得る。適応型NK細胞を、所望の効果を生じさせるのに有効な量で、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与し得る。適応型NK細胞を、様々な経路により、例えば、静脈内、腫瘍内、動脈内、経皮的、カテーテルまたはステントによる局所送達により、腫瘍内投与用の針または他の装置により、皮下などにより投与し得る。適応型NK細胞を1回または複数回投与し得る。当該技術分野の通常の技術を有する医師は、適応型NK細胞、場合によっては、必要とされる医薬組成物の有効量および投与量を決定および処方することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、組成物を対象に投与し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、適応型NK細胞または適応型NK細胞を含む単離されたNK細胞集団を含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、反応性酸素種(ROS)産生の阻害剤、例えば、カタラーゼ;CD155阻害剤;および/またはTIGIT阻害剤を含み得る。いくつかの実施形態において、ROS産生阻害剤および/またはCD155阻害剤は、インビボおよび/またはインビトロでMDSC上のCD155の発現を低下させるのに十分な量で存在する。
【0099】
治療方法
一態様において、適応型NK細胞を使用して、対象の癌、前癌状態、またはウイルスを治療または予防し得る。別の態様において、癌、前癌状態、またはウイルスを治療するために、癌、前癌状態、またはウイルスに罹患している対象において適応型NK細胞をインビボで製造し得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、対象において、例えば、対象の血液中に見られ得る。いくつかの実施形態において、MDSCのレベルは、癌、前癌状態、またはウイルスのない対象におけるMDSCのレベルと比較して上昇し得る。いくつかの実施形態において、MDSCは、CD11b、CD33を発現し、HLA-DRは低いかまたは全く発現しない。いくつかの実施形態において、MDSCは、CD14+(単球性MDSC[mMDSC])またはCD15+CD66b+(顆粒球性MDSC[gMDSC])のいずれかである(Marvel et al.The Journal of Clinical Investigation.2015;125(9):3356-64参照)。
【0101】
癌には、例えば、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊髄癌、胃癌、子宮癌、造血器癌、および/またはリンパ系癌が含まれ得る。造血器癌および/またはリンパ系癌には、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキン病、および/または多発性骨髄腫が含まれ得る。癌は転移性癌であり得る。
【0102】
ウイルスには、例えば、ヘルペスウイルス、例えばCMV、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)もしくはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV);またはレンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)が含まれ得る。
【0103】
他の態様において、適応型NK細胞を対象に投与して、または対象において製造して、対象における腫瘍の増殖を阻害し得る。いくつかの実施形態において、腫瘍は固形腫瘍を含み得る。
【0104】
適応型NK細胞を、他の処置の前、最中、および/または後に、対象に投与または対象において製造し得る。このような併用療法は、治療剤、抗癌剤、および/または抗ウイルス剤の使用前、使用中、および/または使用後の適応型NK細胞の投与または製造を含み得る。他の治療剤、抗癌剤、および抗ウイルス剤には、例えば、サイトカイン;ケモカイン;治療用抗体、例えば、高親和性抗CMV IgG抗体;NK細胞受容体リガンド、例えばBiKEもしくはTRiKE;アジュバント;抗酸化剤;化学療法剤;および/または放射線が含まれ得る。投与または製造は、他の抗癌剤および/または抗ウイルス剤の投与から数時間、数日、または数週間、時間的に分離され得る。追加的に、または代替的に、投与または製造を、他の生物学的に活性な薬剤または様式、例えば、限定されるものではないが、抗悪性腫瘍剤、および非薬物療法、例えば、限定されるものではないが、手術と組み合わせ得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗腫瘍免疫応答を増強するための方法を与える。いくつかの実施形態において、方法は、適応型NK細胞または適応型NK細胞を含む単離細胞集団の使用を含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、抑制性受容体、例えば、TIGITまたはPD-1の制御を改変することをさらに含み得る。
【0106】
他の態様において、本開示は、普通型NK細胞を調節する方法を与える。いくつかの実施形態において、方法は、普通型NK細胞の機能的低反応性を救済または逆転させるためのMDSCの抑制能力の遮断を含む。いくつかの実施形態において、調節方法は、TIGIT発現の阻害を含む。いくつかの実施形態において、方法は、反応性酸素種(ROS)産生の阻害剤、例えば、カタラーゼ;CD155阻害剤;および/またはTIGIT阻害剤を含有する組成物の投与を含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、ROS産生阻害剤および/またはCD155阻害剤は、MDSC上のCD155の発現を低下させるのに十分な量で存在する。
例示的な実施形態
【0108】
実施形態1.適応型NK細胞を含んでなる組成物。
【0109】
実施形態2.前記適応型NK細胞がCD3およびCD56である、実施形態1に記載の組成物。
【0110】
実施形態3.前記適応型NK細胞がCD57である、実施形態1または2のいずれかに記載の組成物。
【0111】
実施形態4.前記適応型NK細胞がNKG2Cである、実施形態1~3のいずれかに記載の組成物。
【0112】
実施形態5.前記適応型NK細胞がSYKである、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物。
【0113】
実施形態6.前記適応型NK細胞がFcεRγである、実施形態1~5のいずれかに記載の組成物。
【0114】
実施形態7.前記適応型NK細胞がEAT-2である、実施形態1~6のいずれかに記載の組成物。
【0115】
実施形態8.前記適応型NK細胞がCD56dimである、実施形態1~7のいずれかに記載の組成物。
【0116】
実施形態9.前記適応型NK細胞がTIGITlowである、実施形態1~8のいずれかに記載の組成物。
【0117】
実施形態10.前記適応型NK細胞がCD45ROである、実施形態1~9のいずれかに記載の組成物。
【0118】
実施形態11.前記適応型NK細胞がCD45RAである、実施形態1~10のいずれかに記載の組成物。
【0119】
実施形態12.前記適応型NK細胞が長命である、実施形態1~11のいずれかに記載の組成物。
【0120】
実施形態13.PD-1の発現または前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)転写因子の発現が、標準NK細胞と比較して適応型NK細胞において減少する、実施形態1~12のいずれかに記載の組成物。
【0121】
実施形態14.PLZFの発現が90%以上減少する、実施形態13に記載の組成物。
【0122】
実施形態15.前記適応型NK細胞が、転写因子前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)を発現しない、実施形態1~14のいずれかに記載の組成物。
【0123】
実施形態16.前記適応型NK細胞が抗腫瘍活性を示す、実施形態1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【0124】
実施形態17.腫瘍が、造血組織および/またはリンパ組織の腫瘍を含んでなる、実施形態16に記載の組成物。
【0125】
実施形態18.腫瘍が固形腫瘍である、実施形態16に記載の組成物。
【0126】
実施形態19.前記組成物が薬剤的に許容できる担体を含んでなる、実施形態1~18のいずれかに記載の組成物。
【0127】
実施形態20.実施形態1~18のいずれかに記載の適応型NK細胞を製造する方法。
【0128】
実施形態21.前記適応型NK細胞をインビトロで製造する、実施形態20に記載の方法。
【0129】
実施形態22.前記適応型NK細胞が、サイトメガロウイルス(CMV)ナイーブ源由来の細胞に由来する、実施形態20または21のいずれかに記載の方法。
【0130】
実施形態23.前記適応型NK細胞が、血液から単離された細胞に由来する、実施形態20~22のいずれかに記載の方法。
【0131】
実施形態24.前記適応型NK細胞が、多能性幹細胞に由来する、実施形態20~23のいずれかに記載の方法。
【0132】
実施形態25.前記多能性幹細胞が、誘導多能性幹細胞である、実施形態24に記載の方法。
【0133】
実施形態26.前記適応型NK細胞が、胚性幹細胞に由来する、実施形態20~25のいずれかに記載の方法。
【0134】
実施形態27.前記適応型NK細胞が、臍帯血から単離された細胞に由来する、実施形態20~26のいずれかに記載の方法。
【0135】
実施形態28.前記適応型NK細胞が、IL-15、IL-21、IL-18、IL-12、IL-2、IFN-α、またはIFN-βのうちの1つ以上を含んでなる培地で培養された細胞に由来する、実施形態20~27のいずれかに記載の方法。
【0136】
実施形態29.前記適応型NK細胞が、ラパマイシンを含んでなる培地で培養された細胞に由来する、実施形態20~28のいずれかに記載の方法。
【0137】
実施形態30.前記適応型NK細胞が、Notchリガンドを含んでなる培地で培養された細胞に由来する、実施形態20~29のいずれかに記載の方法。
【0138】
実施形態31.前記適応型NK細胞が、NKG2C受容体アゴニストを含んでなる培地で培養された細胞に由来する、実施形態20~30のいずれかに記載の方法。
【0139】
実施形態32.前記適応型NK細胞が、抗原提示細胞と共培養された細胞に由来する、実施形態20~31のいずれかに記載の方法。
【0140】
実施形態33.前記抗原提示細胞が樹状細胞を含んでなる、実施形態32に記載の方法。
【0141】
実施形態34.前記適応型NK細胞が、CMVペプチドを含んでなる培地で培養された細胞、または抗原提示細胞と共培養された細胞に由来し、前記抗原提示細胞が、CMVペプチドを含む培地で培養される、実施形態20~33のいずれかに記載の方法。
【0142】
実施形態35.前記適応型NK細胞をインビボで製造する、実施形態20に記載の方法。
【0143】
実施形態36.サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを対象に投与することを含んでなる、実施形態35に記載の方法。
【0144】
実施形態37.不活性化サイトメガロウイルス(CMV)を対象に投与することを含んでなる、実施形態35または実施形態36のいずれかに記載の方法。
【0145】
実施形態38.サイトカインを対象に投与することを含んでなる、実施形態35~37のいずれかに記載の方法。
【0146】
実施形態39.前記サイトカインが、IL-15、IL-21、IL-12、IL-18、およびGM-CSFのうちの1つ以上を含んでなる、実施形態38に記載の方法。
【0147】
実施形態40.Notchリガンドを対象に投与することを含んでなる、実施形態35~39のいずれかに記載の方法。
【0148】
実施形態41.対象においてNotchリガンドの発現を誘導することを含んでなる、実施形態35~40のいずれかに記載の方法。
【0149】
実施形態42.前記対象がCMV血清陽性である、実施形態35~41のいずれかに記載の方法。
【0150】
実施形態43.対象における癌、前癌状態、またはウイルスを治療または予防するための方法であって、
実施形態1~18のいずれかに記載の適応型NK細胞を前記対象に投与すること、
を含んでなる前記方法。
【0151】
実施形態44.前記癌が、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊髄癌、胃癌、子宮癌、造血器癌、またはリンパ系癌を含んでなる、実施形態43に記載の方法。
【0152】
実施形態45.前記癌が転移性癌である、実施形態43または44のいずれかに記載の方法。
【0153】
実施形態46.対象における腫瘍の増殖を阻害する方法であって、実施形態1~18のいずれかに記載の適応型NK細胞を含んでなる組成物を前記対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【0154】
実施形態47.前記腫瘍が固形腫瘍を含んでなる、実施形態46に記載の方法。
【0155】
実施形態48.前記ウイルスがレンチウイルスまたはヘルペスウイルスを含んでなる、実施形態43に記載の方法。
【0156】
実施形態49.対象における癌または前癌状態を治療または予防するための方法であって、実施形態35~42のいずれかに記載のインビボ調製物を前記対象に投与することを含んでなる、前記方法。
【0157】
実施形態50.前記癌が、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊髄癌、胃癌、子宮癌、造血器癌、またはリンパ系癌を含んでなる、実施形態49に記載の方法。
【0158】
実施形態51.前記癌が転移性癌である、実施形態49または50のいずれかに記載の方法。
【0159】
実施形態52.対象における腫瘍の増殖を阻害する方法であって、実施形態35~42のインビボでの製造を含んでなる、前記方法。
【0160】
実施形態53.前記腫瘍が固形腫瘍を含んでなる、実施形態52に記載の方法。
【0161】
実施形態54.治療剤を含んでなる組成物を投与することをさらに含んでなる、実施形態43~53のいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態55.前記治療剤が、サイトカイン、ケモカイン、治療用抗体、アジュバント、抗酸化剤、または化学療法剤のうちの1つ以上を含んでなる、実施形態54に記載の方法。
【0163】
実施形態56.前記対象が骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含んでなる、実施形態43~55のいずれかに記載の方法。
【0164】
実施形態57.前記対象が造血細胞移植を受けている、実施形態43~56のいずれかに記載の方法。
【0165】
実施形態58.対象における癌、前癌状態、またはウイルスを治療または予防するための方法であって、前記対象において適応型NK細胞を製造することを含んでなる、前記方法。
【0166】
実施形態59.サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを対象に投与することを含んでなる、実施形態58に記載の方法。
【0167】
実施形態60.不活性化サイトメガロウイルス(CMV)を対象に投与することを含んでなる、実施形態58または実施形態59のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態61.サイトカインを対象に投与することを含んでなる、実施形態58~60のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態62.前記サイトカインが、IL-15、IL-21、IL-12、IL-18、およびGM-CSFのうちの1つ以上を含んでなる、実施形態61に記載の方法。
【0170】
実施形態63.Notchリガンドを対象に投与することを含んでなる、実施形態58~62のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態64.対象においてNotchリガンドの発現を誘導することを含んでなる、実施形態58~63のいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態65.前記対象がCMV血清陽性である、実施形態58~64のいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態66.前記対象が造血細胞移植を受けている、実施形態58~65のいずれかに記載の方法。
【0174】
実施形態67.前記対象が白血病と診断されている、実施形態58~66のいずれかに記載の方法。
【0175】
実施形態68.前記対象が骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含んでなる、実施形態58~67のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態69.
(a)対象から血液サンプルを得ることと、
(b)IL-15、IL-21、およびNotchリガンドのうちの1つ以上を含んでなる培地中で血液サンプルのNK細胞集団を培養して適応型NK細胞を得ることと、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記方法。
【0177】
実施形態70.ステップ(b)の前記培地が、ラパマイシンおよびCD16シグナル伝達の活性化因子のうちの1つ以上をさらに含んでなる、実施形態69に記載の方法。
【0178】
実施形態71.
(a)対象から血液サンプルを得ることと、
(b)前記血液サンプルのNK細胞集団をCMVペプチド補充成熟樹状細胞と共に培養して適応型NK細胞を得ることと、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記方法。
【0179】
実施形態72.
(a)対象から血液サンプルを得ることであって、前記対象がCMV血清陽性であることと、
(b)前記血液サンプルのNK細胞集団を自家単球およびIL-15と共に培養して適応型NK細胞を得ることと、
を含んでなる方法であって、
前記適応型NK細胞が、CD56dimであり、NKG2CおよびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記方法。
【0180】
実施形態73.ステップ(b)が、前記血液サンプルの前記NK細胞をTIGIT阻害剤と接触させることをさらに含んでなる、実施形態69~72のいずれかに記載の方法。
【0181】
実施形態74.前記TIGIT阻害剤が、TIGITに対する抗体を含んでなる、実施形態73に記載の方法。
【0182】
実施形態75.ステップ(b)が、前記血液サンプルの前記NK細胞をPLZF、TIGIT、またはPD-1のうちの1つ以上の阻害剤と接触させることをさらに含んでなる、実施形態69~74のいずれかに記載の方法。
【0183】
実施形態76.前記血液サンプルの前記NK細胞もしくは前記適応型NK細胞またはその両方においてPLZF、TIGIT、またはPD-1のうちの1つ以上を遺伝子ノックダウンすることをさらに含んでなる、実施形態69~75のいずれかに記載の方法。
【0184】
実施形態77.前記適応型NK細胞が、CD57、SYK、FcεRγ-、EAT-2、CD45RO、およびCD45RAのうちの1つ以上である、実施形態69~76のいずれかに記載の方法。
【0185】
実施形態78.前記適応型NK細胞が、培養前の前記NK細胞集団と比較してPLZFの発現の減少を示す、実施形態69~77のいずれかに記載の方法。
【0186】
実施形態79.前記適応型NK細胞が、培養前の前記NK細胞集団と比較して抗腫瘍免疫活性の増強を示す、実施形態69~78のいずれかに記載の方法。
【0187】
実施形態80.前記適応型NK細胞が、培養前の前記NK細胞集団と比較して、細胞傷害性の増加、サイトカイン産生の増加、持続性の増加、およびT調節細胞に対する抵抗性の増加のうちの1つ以上を示す、実施形態69~79のいずれかに記載の方法。
【0188】
実施形態81.サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを前記対象に投与することをさらに含んでなる、実施形態69~80のいずれかに記載の方法。
【0189】
実施形態82.前記NK細胞集団を培養することが、細胞増殖もしくは細胞表現型スキューイングまたはそれらの両方を含んでなる、実施形態69~81のいずれかに記載の方法。
【0190】
実施形態83.
(c)適応型NK細胞を単離すること
をさらに含んでなる、実施形態69~82のいずれかに記載の方法。
【0191】
実施形態84.実施形態69~83のいずれかに記載の方法によって得られた適応型NK細胞を含んでなる組成物。
【0192】
実施形態85.NK細胞集団を含んでなる組成物であって、前記NK細胞集団が、実施形態69~83のいずれかに記載の方法によって得られる適応型NK細胞について富化されている、前記組成物。
【0193】
実施形態86.単離されたNK細胞集団であって、前記細胞が、CD56dim、ならびにNKG2C、CD57、およびTIGITlowのうちの1つ以上である、前記単離されたNK細胞集団。
【0194】
実施形態87.前記細胞が、標準NK細胞と比較して、PLZFおよびPD-1のうちの1つ以上の発現の減少を示す、実施形態86に記載の単離されたNK細胞集団。
【0195】
実施形態88.CD56dimおよびNKG2CであるNK細胞について富化されている、単離されたNK細胞集団。
【0196】
実施形態89.前記単離された集団が、標準NK細胞と比較してPLZF、TIGIT、およびPD-1のうちの1つ以上の発現の減少を示すNK細胞について富化されている、実施形態88に記載の単離されたNK細胞集団。
【0197】
実施形態90.前記NK細胞集団が、標準NK細胞と比較して抗腫瘍免疫活性の増強を示す、実施形態86~89のいずれかに記載の単離されたNK細胞集団。
【0198】
実施形態91.前記NK細胞集団が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が誘発する免疫応答の抑制を克服することができる、実施形態86~90のいずれかに記載の単離されたNK細胞集団。
【0199】
実施形態92.前記NK細胞集団が、Tregが誘発する免疫応答の抑制を克服することができる、実施形態86~91のいずれかに記載の単離されたNK細胞集団。
【0200】
実施形態93.実施形態86~92のいずれかに記載の単離されたNK細胞集団を含んでなる組成物。
【0201】
実施形態94.CD155阻害剤、TIGIT阻害剤、および反応性酸素種(ROS)産生阻害剤のうちの1つ以上をさらに含んでなる、実施形態93に記載の組成物。
【0202】
実施形態95.前記ROS産生阻害剤がカタラーゼを含んでなる、実施形態94に記載の組成物。
【0203】
実施形態96.前記ROS産生阻害剤またはCD155阻害剤が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)上のCD155の発現を減少させるのに十分な量で存在する、実施形態94または95のいずれかに記載の組成物。
【0204】
本発明を以下の実施例により説明する。特定の実施例、材料、量、および手順は、本明細書に記載された本発明の範囲および精神に従って広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【実施例
【0205】
実施例1
CD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖は、強度軽減HCT後の白血病再発の減少と関連する。
前書き
ナチュラルキラー(NK)細胞は、造血細胞移植(HCT)後に早期に再構成し、HCT後の転帰に影響を及ぼす可能性がある主要リンパ球集団である。しかし、NK細胞の移植片対白血病(GvL)活性は、HCT後の最初の1年を通してNK細胞の機能的成熟が遅延されることによって制限される。再構成ドナーNK細胞の未成熟表現型は、生体外での腫瘍細胞株および原発性急性骨髄性白血病(AML)芽球に応答したNK細胞媒介性細胞障害性およびインターフェロン(IFN)-γ産生における有意な障害に関連する。全体的に見て、HCT後早期に再構成するドナーNK細胞の表現型および機能の未熟性は、それらの臨床的有用性を制限する。
【0206】
高レベルの活性化受容体NKG2Cを発現するNK細胞は、CMV再活性化後のHCTレシピエントにおいてロバストに増殖し、成熟マーカーCD57を優先的に獲得し、HCT後1年間以上の間持続する。多くの点で、CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、ネズミCMV(MCMV)感染の消失に関与するLy49H記憶NK細胞のヒトアナログを表すようである。したがって、CMV再活性化は、HCTレシピエントにおいて強力な効果を有し、高められたエフェクター機能を有するNK細胞の成熟を促進する。CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、本明細書において適応型と称される。
【0207】
いくつかの最近の研究では、CMVの再活性化とHCT後の再発リスクの低下との関連性が報告されているが、この知見に関する特異的メカニズムは記載されていない。CMV誘導性CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、向上した機能と長期間の持続性を有し、移植レシピエントにおいて癌制圧を促進し得る。本研究では、CMV再活性化が再発に及ぼす防止効果に影響を与える関連する移植関連変数を定義することと、CD56dimCD57NKG2CNK細胞がHCT後の臨床転帰と直接関連するかどうかを決定することとを試みた。
【0208】
患者および方法
移植手順
骨髄機能廃絶(MA)前治療は、悪性血液疾患の患者366人に使用され、シクロホスファミド(60mg/kg×2)および全身照射(13.2Gy、165cGy、1日2回×4日)からなった。一部の患者では、このレジメンは、フルダラビン(-8日目~-6日目に25mg/m/日)、およびミコフェノール酸モフェチル(-3日目~+30日目に12時間ごとに1g)も含んだ。全ての患者はまた、-3日目に開始し、HCT後180日まで継続してシクロスポリンAも受けた。強度軽減前治療(RIC)は、308人の患者に使用され、シクロホスファミド(50mg/kg)およびフルダラビン(200mg/m)および全身照射(2Gy)からなった。前治療後、骨髄、末梢血、または臍帯血由来の幹細胞(単一または二重)を注入した。表Iは、レシピエントCMV状態(血清陰性、再活性化を伴わない血清陽性、および再活性化を伴う血清陽性)によって層別化されたHCT患者の人口統計を記載する。
【0209】
【表1】
*治療間の比較のためのp値。連続変数は、一般化ウィルコクソン検定によって分析した。分類変数は、カイ二乗によって分析した。
【0210】
CMVスクリーニングおよび治療
前治療の前に、全てのレシピエントを、酵素結合免疫吸着法を用いる血清学的検査によってCMV曝露について評価した。CMV IgG抗体レベルが10.0 ELISA単位毎ミリリットル(EU/mL)より大きい(>)ことは血清陽性とみなした。移植後、全てのレシピエントは、移植後+100日まで、pp65抗原血症(2006年以前)または定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(2006年以降)のいずれかにより、毎週CMV再活性化についてのスクリーニングを受けた。CMV予防は、100日までの高用量のアシクロビル(静脈内へ8時間ごとに500mg/m[10~12mg/kg]、または経口で1日5回の800mg[18mg/kg小児])を含んだ。CMV再活性化は、CMV抗原血症(≧2 pp65陽性細胞/50,000)、DNAemia(定量的リアルタイムPCRによる≧500コピー)、または血液、体液、または組織からのCMVの培養として定義され、ガンシクロビルまたはフォスカーネットで治療された。
【0211】
データ収集
ミネソタ大学の血液および骨髄移植プログラムでは、患者の特性および転帰に関する全てのデータが前向きに収集された。ミネソタ大学の施設審査委員会は全てのプロトコルを承認し、全ての患者(および/またはその法定後見人)はヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを提供した。
【0212】
HCTレシピエントにおけるNK細胞の再構成の表現型解析
HCTレシピエント由来の末梢血単核細胞(PBMC)を末梢血サンプルから密度勾配遠心分離によって単離し、LSR II(カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences)を用いて蛍光標識細胞分取(FACS)により分析した。CMVを再活性化したレシピエント由来のPBMCを、ウイルス診断時、抗ウイルス療法の2週間後、4週間後、および8週間後、ならびに移植後6ヶ月および1年に収集した。CMV血清陰性であるか、またはウイルス再活性化を伴わないCMV血清陽性であったレシピエントでは、移植後100日目、6ヶ月目、および1年目にPBMCを収集した。表現型分析のために、以下の蛍光コンジュゲート抗体を使用した:エネルギー結合色素(Energy Coupled Dye)(ECD)-コンジュゲート抗CD3(カリフォルニア州ブレアのBeckman Coulter, Inc.;IM2705U)、PECy7結合コンジュゲート抗CD56(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;318318)、パシフィックブルー(Pacific Blue)コンジュゲート抗CD57(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;322316)、およびPEコンジュゲートNKG2C(ミネソタ州ミネアポリスのR&D Systems;FAB138P-025)。RICレシピエントとMAレシピエントの間の適応型NK細胞のパーセンテージおよび絶対計数の統計的比較のために、GraphPadを用いて計算した対応のない両側t検定を用いた。エラーバーはSEMを表す。GraphPadを使用して、28人のCMV血清陽性レシピエントにおける絶対単球数およびリンパ球数と適応型NK細胞増殖との間の相関に関するR値および関連するp値を算出した。
【0213】
HCTコホートにおける臨床的関連性の統計分析
カプラン-マイヤー曲線を用いて、HCT後1年間の無病生存(DFS)の確率を推定し(Kaplan et al.J. Am. Stat.Assoc.1958; 53:457-481.)、比較のためにログランク検定を用いた。調整した生存曲線を、層別コックスモデルに基づいて計算した(Chang et al.J. Chronic Dis.1982; 35:669-674)。コックス回帰を用いて因子のDFSに対する独立した効果を調べ、比例ハザードをマルチンゲール残差を用いて調べた。再発の累積発生率を、非再発死亡率(NRM)を競合リスクとして扱って評価した。ファインアンドグレイ比例ハザードモデル(The Fine and Gray proportional hazards model)(Fine et al.J. Am. Stat.Assoc.1999; 94:496-509)を使用して、再発に対するCMV再活性化の独立した効果を求め、調整再発曲線を算出した。対象の主要な共変量は、時間依存性共変量として扱ったHCT後のCMV再活性化、および前治療レジメンの強度であった。潜在的交絡因子には、ドナータイプ、診断、移植年(<2008年対≧2008年)、移植片対宿主病(GvHD)予防、性別、疾患リスク、および以前の自家移植が含まれた。HCT時の疾患リスクを、ASBMT RFI 2006リスクスコアリングスキーマ(ASBMT RFI 2006 risk scoring schema)(asbmt.orgでワールドワイドウェブで入手可能)に基づいて標準リスクまたは高リスクに分類した。分散は、比較しているグループ間で類似していた。再帰的分割を用いて、再発と関連する適応型CD56dimCD57NKG2CNK細胞のパーセンテージおよび絶対数の最適カットポイントを決定した。全ての臨床分析は、SASバージョン9.3(ノースカロライナ州ケーリーのSAS Institute)を使用して実施した。
【0214】
NK細胞機能アッセイ
5人の健常なCMV血清陽性ドナーから収集したバフィーコートをMemorial Blood Bank(ミネソタ州ミネアポリス)から得た。末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll-Paque(イギリスのバッキンガムシャーのリトル・チャルフォントのGE Healthcare)を用いて密度勾配遠心分離によって単離し、10%ウシ胎児血清(マサチューセッツ州ウォルサムのGibco, LifeTechnologies, Thermo Fisher Scientific Inc.)を補充したRPMI培地で5時間2:1(エフェクター:標的)比でK562細胞と共に培養した。GolgiStopおよびGolgiPlugタンパク質輸送阻害剤(カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences)をアッセイに1時間加えた。NK細胞サブセットの機能解析には以下の抗体を使用した:BV785コンジュゲート抗CD3(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;318318)、PECy7コンジュゲート抗CD56(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;359620)、PE-CF594コンジュゲート抗CD57(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;359620)、PEコンジュゲートNKG2C(ミネソタ州ミネアポリスのR&D Systems;FAB138P-025)、PerCP-Cy5.5コンジュゲート抗CD107a(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;328616)、およびBV605コンジュゲートIFN-γ(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend;502536)。K562細胞株は、ATCC(バージニア州マナサス)から購入し、マイコプラズマ汚染について毎月スクリーニングした。実験は2回独立して行った。有意性を判定するために、GraphPadで両側の対応のあるt検定を使用した。エラーバーはSEMを表す。
【0215】
結果
CMVを再活性化するRICレシピエントでHCT後の再発リスクが低い。
2001年から2013年の間にミネソタ大学で治療された急性骨髄性白血病(AML)(n=313)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(n=187)、骨髄異形成症候群(MDS)(n=85)、非ホジキンリンパ腫(NHL)(n=42)、慢性骨髄性白血病(CML)(n=28)、ホジキン病(n=14)、および多発性骨髄腫(n=5)を有する674人の同種異系HCTレシピエントで1年の再発リスクおよびDFSを分析した。516人の患者が標準リスクとして分類され、148人の患者が高リスクとして分類され、36人の患者が以前の自家移植を受けていた。37人の患者が骨髄を受け、166人の患者が末梢血幹細胞を受け、471人の患者が臍帯血移植を受けた。コホート全体を、レシピエントCMV血清状態(CMV血清陰性[n=270]対再活性化を伴わないCMV血清陽性[n=214]対再活性化を伴うCMV血清陽性[n=190])によって、および前治療レジメン(強度軽減[n=308]対骨髄機能廃絶[n=366])によって層別化した。疾患タイプおよび治療関連変数は、CMV血清状態によって層別化された群間でバランスがとれていた(表I)。
【0216】
RIC後(n=308)、CMV再活性化は、再活性化を伴わないCMV血清陽性レシピエント(30%[20~40%])またはCMV血清陰性レシピエント(35%[27~43%])と比較して、HCT後1年の再発リスクの低下(26%[17~35%]、p=0.05)と関連していた(図1A)。同様に、RIC移植では、CMV再活性化は、再活性化を伴わないCMV血清陽性レシピエント(45%[35~55%])またはCMV血清陰性レシピエント(46%[38~54%])と比較して、DFSの改善(55%[45~65%]、p=0.04)と関連していた(図1B)。骨髄機能廃絶前治療後(n=366)、CMV血清状態または再活性化は、HCT後の再発またはDFSのいずれにも影響しなかった(図1C、1D)。
【0217】
回帰分析では、RICレシピエントでは、再活性化を伴わない血清陽性ではなく、CMV再活性化は、再発リスクの低下の傾向がみられ(RR=0.6[0.4~1.0]、p=0.06)、有意に良好なDFSと関連していた(RR=0.7[0.6~1.0]、p=0.04)。RIC群内の多変数モデルでは、移植片対宿主病(GvHD)および年齢の再発および非再発死亡率(NRM)に対する統計的に有意な効果はなかった(表II)。対照的に、MAコホートでは、グレードII~IVの急性GVHDおよび低年齢が、再発防止およびNRMの高い割合の両方に関連していた。MAコホートではCMVの再活性化またはレシピエントの血清陽性は再発に影響を及ぼさなかったが、CMV陽性であったが再活性化しなかった患者は、無病生存率が低かった。骨髄(AMLおよびMDS)および他の診断(ALL、CML、NHL、ホジキン、および多発性骨髄腫)についても回帰分析を別々に実施した。これらのデータのこのさらなるサブセット化により、検出力が低下し、それにより信頼区間が広がったが、CMV再活性化を伴うRICレシピエントにおける再発リスクの低下に対する同様の傾向が、全ての疾患群において観察された(データは示されていない)。
【0218】
遅い再発では防止効果があまり明らかでないため、CMVの再活性化の主な有益な効果は、(最も頻繁に検出される)早期に起こる。初期のCMV再活性化を有する生存者において、(100日目以降に生じる)後期再発に対する防止は観察されなかった(RR=1.0[0.5~1.9]、p=0.98)。同様に、100日を超えた生存者における以前のCMV再活性化とDFSとの間に関連性はなかった。HCT後100日目以降のCMV再活性化は稀であり、無症状の再活性化は日常的モニタリングの範囲を越えて起こるので、検出される頻度が低いため、後期のCMVの再活性化と後期の再発との関連性を充分に評価するのに充分な事象はなかった。まとめると、これらの結果は、HCTセッティングにおけるCMV再活性化の有益な効果は、移植後早期に観察され、RIC HCTのレシピエントにおいてのみ明らかであることを示す。
【0219】
【表2】
検定された共変量には、ドナータイプ(同胞対UCB)、診断(AML対その他)、移植年(<2008年対≧2008年)、前治療(MA対RIC)、GvHD予防(MTX対MMF対その他)、性別(男性対女性)、疾患リスク(標準対高)、年齢(<21歳対≧21歳)、時間依存性変数としてのグレードII~IV aGvHD(あり対なし)、および以前の自家移植(あり対なし)が含まれた。
【0220】
CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、CMV再活性化後にRIC HCTレシピエントにおいて優先的に増殖する。
RIC HCT後のCMV再活性化、再発防止、およびDFS改善との間の関連性をさらに評価するために、HCT後のドナー由来末梢血NK細胞の表現型を分析した。CMV血清陰性レシピエントではなくCMV血清陽性レシピエントにおけるCD56dimCD57NKG2CNK細胞の頻度の増加は、6ヶ月および1年で観察された(図2A、左パネルおよび中央パネル)。CMVを再活性化したレシピエントは、最も高い割合のCD56dimCD57NKG2CNK細胞を示した。さらなる分析により、CD56dimCD57NKG2CNK細胞の頻度が、再活性化後4週間(8.58%対4.64%、p=0.02)、8週間(7.77%対3.84%、p=0.02)、および6ヶ月(14.80%対6.29%、p=0.01)でMAレシピエントに対してRICレシピエントで有意に高かったことが明らかになった(図2A、右パネル)。同様に、CMV血清陰性レシピエントと比較してCMV血清陽性レシピエントにおけるCD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数がより大きいことに対する関連性が、6ヶ月および1年で観察された(図2B、左パネルおよび中央パネル)。CD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数は、CMVを再活性化したCMV血清陽性レシピエントにおいて最高であり、また、移植後6ヶ月ではMAレシピエントに対してRICレシピエントで有意に高かった(22.2対10.44細胞/μl、p=0.04)。絶対数において同様の傾向が1年目に認められた。RICレシピエントにおいてCD56dimCD57NKG2CNK細胞増殖率がより高かったことは、100日目の急性GvHD率の差によって説明されなかった。なぜなら、これらの比率は、RIC前処置レジメン(43%[38~43%])とMA前処置レジメン(42%[36~48%])との間で有意差がなかったからである(p=0.46)。生存者の91%が100日目に≧90%のドナーキメラ現象を有し、6カ月目の生存者の93%が≧90%のドナーキメラ現象を有したため、100日目以降に増殖したCD56dimCD57NKG2CNK細胞は、ドナー起源の細胞から分化した可能性が高い。したがって、CMV再活性化に応答するドナー由来CD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖は、RICレシピエントの間でのみ、再発リスクの低下およびDFSの改善と相関していた。
【0221】
HCT後6ヶ月でのCD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖は、2年再発率の低下と直接関連している。
HCT後6ヶ月(n=68)に、レシピエントにおける絶対CD56dimCD57NKG2CNK細胞数をCMV血清状態または再活性化とは独立して分析した。この時点で、ほぼ全ての患者が、移植された90%のドナーより大きい(>)。CD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数に対する最適カットポイントを決定するために、再帰的分割を用いた。CD56dimCD57NKG2CNK細胞数(>2.5細胞/μl、n=54)に基づく増殖群のレシピエントは、2年再発率がより高い(46%[10~82%])非増殖群(0.1~2.5細胞/μl、n=14)と比較して2年再発率が低い(16%[6~26%]、p=0.06)傾向にあった。(表III)。したがって、これらのデータは、移植後早期にCMV再活性化に応答して増殖するCD56dimCD57NKG2CNK細胞が再発を防ぐことを示唆している。
【0222】
【表3】
再帰的分割を用いて、2年再発率と関連する移植後6ヶ月におけるCD56dimCD57+NKG2C+NK細胞の絶対数(細胞/血液のμl)の最適カットポイントを決定した。
【0223】
ウイルス診断時におけるより高い絶対単球数は、その後のCD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖に関連する。
CMV感染を模倣するインビトロ研究は、単球がNKG2Cを発現するNK細胞の増殖を促進する役割を果たすことを示している(Rolle et al.J Clin Invest.2014; 124:5305-5316)。したがって、RICレシピエントは、MAレシピエントと比較して、CD56dimCD57NKG2CNK細胞の優先的増殖を説明する、ウイルス診断時におけるより高い絶対単球数(AMC)を有し得る(図2)。HCTコホート内には、CMVの再活性化を経験した28人のレシピエント(16人のRICおよび12人のMA)が存在し、これらのレシピエントについて、ウイルス診断時のAMCおよび絶対リンパ球数(ALC)ならびに6ヶ月および/または1年でのNK細胞表現型データが利用可能であった。ウイルス診断時では、平均AMCは、MAレシピエントと比較してRICにおいてより高い傾向があった(0.71対0.54×10細胞/L、p=0.08)。対照的に、平均ALCは、RICレシピエントとMAレシピエントとの間で類似していた(0.65対0.61×10細胞/L、p=0.39)。CMV再活性化の時点でレシピエントの血液中に存在する単球の数とその後の適応型NK細胞の増殖との間に関連性が存在するかどうかを判断するために、各レシピエントのウイルス診断時におけるAMC値を、6ヶ月(1年での表現型が利用できなかった場合)または1年のいずれかでのCD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数およびパーセンテージに対してプロットした。ウイルス診断時におけるAMCと、6ヶ月または1年でのCD56dimCD57NKG2CNK細胞の絶対数(図3A、p=0.02)および相対パーセンテージ(図3B、p=0.01)の両方との間の有意な正の相関が観察された。このような相関は、ウイルス診断時のALCとCD56dimCD57NKG2CNK細胞の増殖との間には観察されなかった(図3C図D)。したがって、CMV再活性化の時点で単球数がより大きいことは、RICレシピエントにおけるCD56dimCD57NKG2CNK細胞の優先的増殖を説明し得る。
【0224】
CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、K562骨髄性白血病細胞株に対して高度に機能的である。
CD56dimCD57NKG2CNK細胞が、他のNK細胞サブセットと比較して白血病標的に対する高められたエフェクター機能を媒介するかどうかを決定するために、健常なCMV血清陽性血液ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、K562骨髄性白血病細胞と共に2:1の比で培養した。腫瘍壊死因子(TNF)およびIFN-γ産生を、未成熟CD56brightNK細胞、初期成熟CD56dimCD57NKG2CNK細胞、後期成熟CD56dimCD57NKG2CNK細胞、および適応型CD56dimCD57NKG2CNK細胞において分析した。分析した全ての他のサブセットと比較して、CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、K562細胞に応答してTNFおよびIFN-γ産生の両方の頻度が高かった(図4A図4B)。CD107a表面発現によって測定されるNK細胞脱顆粒については、有意な差異は観察されなかった(図示せず)。したがって、CD56dimCD57NKG2CNK細胞は、腫瘍標的の直接的な認識の際に炎症性サイトカイン産生の増強を介して直接HCT後の再発防止に寄与する可能性が高い。
【0225】
本研究以前では、CMV再活性化と再発防止との間の関連性の根底にあるメカニズムは不明瞭なままであった。本研究では、CD56dimCD57NKG2CNK細胞が、CMV再活性化後に強度軽減レシピエントにおいて優先的に増殖し、これらの細胞の増殖は白血病再発の低下と直接的に関連するということが示されている。
【0226】
実施例2
方法
OP9ネイティブおよびOP9-DL1細胞
空のMigR1レトロウイルスベクター(OP9ネイティブ)またはデルタ様1遺伝子を含むMigR1レトロウイルスベクター(OP9-DL1)のいずれかを形質導入したOP9間質細胞(Schmitt et al.Immunity.2002;17(6):749-756)を、MEMα培地+20%ウシ胎児血清(FBS)中で、24ウェルプレート中4×10細胞/ウェルの濃度で2日間培養して細胞接着させた。次いでプレートを2,000cGyで照射して細胞増殖を停止させた。
【0227】
OP9細胞での臍帯血由来NK細胞培養
単核細胞を密度勾配遠心分離によって全臍帯血から単離した。T細胞およびB細胞は、それぞれ抗CD3および抗CD19マイクロビーズを用いた正の磁気選別によって除去した。次いで、CD3/CD19欠失細胞を、照射したOP9細胞に5×10細胞/ウェルの濃度で加え、RPMI培地+10%FBS中で、1ng/mL IL-15または10ng/mL IL-15のいずれかを補充し、50ng/mL IL-21有りまたは無しで、14日間培養した。
【0228】
培養前および培養後のNK細胞の表現型解析
臍帯血由来NK細胞を、培養前、ならびに培養の7日後および14日後に、以下の細胞外抗体および細胞内抗体を用いる蛍光標識細胞分取(FACS)によって分析した:BV785コンジュゲート抗CD3(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend)、PE-Cy7コンジュゲート抗CD56(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend)、BV605コンジュゲート抗CD57(カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend)、APCコンジュゲートSYK(カリフォルニア州サンディエゴのeBioscience)、およびPEコンジュゲート抗PLZF(カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences)。
【0229】
結果
最終分化標準CD56dimCD57NK細胞および適応型CD56dimSYKNK細胞の増殖を支持するインビトロ培養系の確立
Notchシグナル伝達経路は、エフェクターCD8T細胞の分化に必須の役割を果たし、エフェクター機能の獲得を制御する(Backer et al.Nat Immunol.2014;15(12):1143-1151)。Notchシグナル伝達が、最終分化および適応型NK細胞サブセットの分化および増殖を促進する役割を果たし得るかどうかを決定するために、CD3/CD19欠失単核細胞を、低用量(1ng/mL)のIL-15または高用量(10ng/mL)のIL-15の存在下で、IL-21(50ng/mL)有りまたは無しで、ネイティブOP9間質細胞またはNotchリガンドDL1を安定に形質導入されたOP9間質細胞上で臍帯血から培養した。細胞を7日目および14日目に採取し、CD56NK細胞を、CD57およびSYKの発現について蛍光標識細胞分取(FACS)によって分析した。培養前に、平均2.13%±0.44のCD56NK細胞がCD57を発現した。低用量IL-15(0.59%±0.19)または高用量IL-15(0.70%±0.23)のいずれかでの7日目のOP9ネイティブ培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。同様に、低用量IL-15(0.24%±0.11)または高用量IL-15(0.22%±0.10)のいずれかでの14日目のOP9ネイティブ培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。低用量IL-15(0.91%±0.34)または高用量IL-15(1.30%±0.31)のいずれかでの7日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。同様に、低用量IL-15(0.93%±0.40)または高用量IL-15(0.86%±0.44)のいずれかでの14日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。低用量IL-15プラスIL-21(0.71%±0.24)または高用量IL-15プラスIL-21(1.05%±0.29)のいずれかでの7日目のOP9ネイティブ培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。同様に、低用量IL-15プラスIL-21(0.18%±0.06)または高用量IL-15プラスIL-21(2.74%±1.90)のいずれかでの14日目のOP9ネイティブ培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。低用量IL-15プラスIL-21(2.06%±0.66)での7日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。高用量IL-15プラスIL-21(5.31%±2.10)での7日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞の中程度の増殖が観察された。低用量IL-15プラスIL-21(1.38%±0.56)での14日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞の増殖は観察されなかった。高用量IL-15プラスIL-21(12.67%±5.11)での14日目のOP9-DL1培養物でCD57NK細胞のロバストな増殖が観察された。
【0230】
培養前に、平均3.09%±0.91のCD56NK細胞がSYKの発現を欠いていた。SYKNK細胞は、低用量IL-15(0.18%±0.06)または高用量IL-15(0.21%±0.05)のいずれかでの7日目のOP9ネイティブ培養物で増殖しなかった。同様に、SYKNK細胞は、低用量IL-15(0.07%±0.03)または高用量IL-15(0.43%±0.15)のいずれかでの14日目のOP9ネイティブ培養物で増殖しなかった。SYKNK細胞は、低用量IL-15(0.25%±0.06)または高用量IL-15(0.34%±0.04)のいずれかでの7日目のOP9-DL1培養物で維持されなかった。同様に、SYKNK細胞は、低用量IL-15(0.17%±0.08)または高用量IL-15(0.43%±0.15)のいずれかでの14日目のOP9-DL1培養物で増殖しなかった。SYKNK細胞は、低用量IL-15プラスIL-21(0.39%±0.08)または高用量IL-15プラスIL-21(0.31%±0.06)のいずれかでの7日目のOP9ネイティブ培養物で増殖しなかった。同様に、SYKNK細胞は、低用量IL-15プラスIL-21(0.16%±0.03)または高用量IL-15プラスIL-21(0.60%±0.32)のいずれかでの14日目のOP9ネイティブ培養物で増殖しなかった。SYKNK細胞は、低用量IL-15プラスIL-21(0.77%±0.25)または高用量IL-15(0.67%±0.10)での7日目のOP9-DL1培養物で増殖しなかった。SYKNK細胞は、低用量IL-15プラスIL-21(0.39%±0.10)での14日目のOP9-DL1培養物で増殖しなかった。高用量IL-15プラスIL-21(3.31%±1.32)での14日目のOP9-DL1培養物でSYKNK細胞の増殖が観察された。まとめると、これらの結果は、インビトロでCD56dimCD57およびCD56dimSYKNK細胞の増殖にIL-21およびNotchリガンドと共に高用量IL-15が必要であることを示す(図5)。
【0231】
臍帯血由来CD56dimSYKNK細胞は、IL-21に応答してPLZFをダウンレギュレートする。
転写因子前骨髄球性白血病ジンクフィンガー(PLZF)の転写サイレンシングは、CMV感染に応答して増殖する適応型NK細胞の特徴である(Schlums et al.Immunity.2015;42(3):443-456)。単離直後の単核細胞由来およびインビトロで14日間培養された細胞由来のNK細胞において、PLZFの細胞内染色を行った。臍帯血からの単離直後のCD56dimSYKNK細胞は、主にPLZF陽性であった(99.3%±0.10)。高用量IL-15を用いた培養は、CD56dimCD57SYKNK細胞(9.93%±0.75)、CD56dimCD57SYKNK細胞(11.47%±2.18)、CD56dimCD57SYKNK細胞(7.05%±1.31)、およびCD56dimCD57SYKNK細胞(6.67±1.05)におけるPLZF発現の中程度の低下をもたらした。しかし、IL-21の添加は、CD56dimCD57SYKNK細胞(14.92%±1.80)およびCD56dimCD57SYKNK細胞(12.13%±2.43)と比較して、CD56dimCD57SYKNK細胞(35.82%±7.02)およびCD56dimCD57SYKNK細胞(66.0%±8.86)におけるPLZF発現の顕著な低下をもたらした。したがって、IL-21は、CD56dimSYKNK細胞におけるPLZF発現を抑制し、それにより、これらの細胞は適応特性を獲得するようになる(図6)。
【0232】
実施例3
実施例2に記載のように培養した臍帯血由来NK細胞は、細胞傷害性受容体2B4、低親和性Fc受容体CD16、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)の発現によって示されるように、細胞傷害性のコンピテントである。追加のデータ(図示せず)は、これらの細胞が、ウイルス感染細胞、新生細胞、および/または自家活性化免疫細胞に応答して脱顆粒する能力を示す、高レベルのグランザイムおよびパーフォリンを発現することを示す。
【0233】
実施例4
インビトロで培養したCMV血清陽性ドナー由来NK細胞へのラパマイシンの添加は、適応型NK細胞の分化プログラムを促進した(図7A図7B)。機能アッセイにおいて、ラパマイシンで処理したNK細胞は、脱顆粒および腫瘍壊死因子(TNF)産生の増強を示した(図7C図7D)。したがって、エクスビボNK細胞増殖方法へのラパマイシンの添加は、養子免疫療法の前にNK細胞分化を増強し、固有の代謝特性を有する成熟NK細胞サブセットについて富化し、NK細胞の細胞障害性およびサイトカイン産生を増強する新規な戦略を示唆する。
【0234】
実施例5
成人CMV血清陽性ドナーの末梢血由来の適応型NK細胞は、高用量のIL-15、IL-21、およびCD16刺激によりインビトロで増殖され得る。健常なCMV血清陽性ドナーからのCD3/CD19欠失PBMCをCellTrace色素で標識し、高用量IL-15(10ng/mL)のみ、IL-15プラスIL-21(50ng/mL)、またはIL-15プラスIL-21プラス抗CD16抗体(1:1000)と共に10日間培養した。図8Aは、代表的なCMV血清陽性ドナーからのCD57、NKG2C、SYK、およびCellTraceの発現を示す。図8Bは、NKG2Cを発現するNK細胞のパーセンテージの累積データを示す。図8Cは、4人のCMV血清陽性ドナーからのSYK欠失NK細胞のパーセンテージを示す。
【0235】
実施例6
NKG2C発現を誘導するために、NK細胞を、実施例2に記載のように、可溶性および/または膜結合性炎症性サイトカイン、例えば、IL-1、TNF-α、IL-6、IL-8、およびIFN-γ;膜結合性HLA-E;および膜結合性HLA-E提示CMVペプチドのうちの1つ以上と共に、7日間および14日間培養する。
【0236】
実施例7
TIGIT発現が低い適応型NK細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞に抵抗性である。
前書き
ナチュラルキラー細胞は自然免疫系のリンパ球である。T細胞およびB細胞とは異なり、これらはクローン様式で生殖系列再構成抗原特異的受容体を発現しない。これらは細胞傷害性T細胞と同様の殺滅メカニズムを共有しているが、NK細胞は活性化受容体および抑制性受容体のファミリーを介して標的を認識する。これらの受容体の間のバランスは、NK細胞の最終的な機能を決定する。NK細胞が健康な細胞と形質転換された細胞または感染した細胞を区別する主なパラダイムは、「自己喪失」仮説によって説明される。損傷した細胞に対するMHCクラスIのダウンレギュレーション、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)の抑制性サブグループと自己細胞上のそれぞれのヒト白血球抗原(HLA)リガンドとの間のミスマッチは、標的細胞をNK細胞殺滅に感受性にする。NK細胞はまた、以前の抗原曝露を必要とすることなく、腫瘍細胞を認識し殺す能力を有し、これは、癌治療のためのエフェクターとしてのNK細胞の開発を容易にする性質である。しかし、T細胞と同様に、NK細胞の抗腫瘍活性は、腫瘍内微小環境に存在する抑制性因子によって制限され、これにより、免疫機能が弱められ、予後不良となる。新興の研究は、T細胞およびNK細胞上の抑制性受容体、例えば細胞傷害性Tリンパ球関連4(CTLA-4)、プログラム細胞死1(PD-1)、およびT細胞IgおよびITIMドメイン(TIGIT)が抗腫瘍反応を抑制できることを示す。
【0237】
本研究では、適応型NK細胞と骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)との間の相互作用を調べた。MDSCは、骨髄前駆細胞および未成熟骨髄細胞の不均一な集団である。ヒトでは、MDSCは、通常、CD11b、CD33を発現し、HLA-DRの発現は低いか無く、CD14+(単球性MDSCs[mMDSC])またはCD15+CD66b+(顆粒球性MDSC[gMDSC]のいずれかである(Marvel et al.The Journal of Clinical Investigation.2015;125(9):3356-64)。これらの細胞は、腫瘍によって誘導され、TGF-β、IL-10、反応性酸素種(ROS)、およびアルギナーゼを産生することによって、先天性および適応性抗腫瘍免疫の両方の阻害に寄与する(Ostrand-Rosenberg et al.Journal of Immunology.2009;182(8):4499-506)。しかし、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて単離および/または製造され得るNK細胞のサブセット、適応型NK細胞は、癌患者由来MDSCによる機能的抑制に対する抵抗性を示す。普通型NK細胞と比較して、適応型NK細胞は、エフェクターT細胞応答の直接調節で知られている抑制性受容体であるTIGITの発現レベルが低い。
【0238】
結果
MDSCは、T細胞およびNK細胞の増殖およびNK細胞の機能を抑制する。
MDSCとNK細胞サブセットとの間の相互作用を調べるために、健常ドナーからの末梢血単核細胞をIL-6およびGM-CSFと共に1週間培養し、続いてCD33細胞を富化させることによってMDSCを作製した(図16A)。新鮮な単球をこれらの実験の骨髄細胞対照として用いた。精製したT細胞およびNK細胞を、単球またはMDSCと様々な比率で共培養し、3~4日間の培養後に増殖について評価した。単球は増殖にほとんど影響しなかったが、MDSCは、2.7±1.6倍のT細胞の増殖の抑制(p=0.005)を誘導し、NK細胞に対して同様の効果(1.5±0.27倍抑制、p=0.006)を有した(図9A)。同様に、CD16の関与は、新鮮な単球で培養したNK細胞と比較してMDSCによって有意に抑制されたNK細胞脱顆粒およびIFN-γ産生を刺激した(それぞれ、2.4±1.4倍の抑制、p=0.0001、および2.6±1.5倍の抑制、p=0.003)(図9B)。
【0239】
適応型NK細胞はMDSC抑制に抵抗する。
適応型NK細胞が普通型NK細胞と比較してMDSC抑制に抵抗し得るかどうかを調べるために、精製ポリクローナルNK細胞を単球またはMDSCと2:1の比で5日間共培養し、CD16刺激後の脱顆粒、増殖、およびサイトカイン産生について調べた。普通型および適応型NK細胞は、同様の量のCD16を発現し(図16B)、適応型NK細胞を、CD57NKG2CFcεRγであるCMV血清陽性ドナー由来NK細胞として定義した(Schlums et al.Immunity.2015;42(3):443-56)。IL-15の存在下で単独で、または単球との共培養で培養した場合、同様のNK細胞活性が観察された(脱顆粒:44±14%対49±12,IFNγ:28±14.0%対27±9.0%)(図10A)。単球対照と比較して、MDSCは、普通型NK細胞の集団内で、CD107a(52.4±2.4%対33.5±3.1%、p=0.0007)、IFN-γ(31.3±3.8%対13.8±3.0%、p=0.009)、TNF(29.1±2.1%対13.6±3.3%、p=0.007)、および増殖(49.0±2.9%対23.0±3.5%、p=0.001)(Ki67によって測定)の有意な抑制を媒介した。しかし、適応型NK細胞は、同じMDSC集団に対して抵抗性であった(図10A)。さらに、MDSCの存在下での普通型NK細胞の脱顆粒およびIFNγは、トランスウェルによって分離されたときに完全に回復した(図10B)。したがって、CMV感染は、MDSC抑制に抵抗性である適応型NK細胞の集団を生じる。
【0240】
MDSC抑制に対する適応型NK細胞の抵抗性は、TIGITの発現の低下と相関する。
健常な供血者由来の精製NK細胞を、IL-15(10ng/mL)単独の存在下もしくは非存在下で、またはIL-12(10ng/mL)およびIL-18(100ng/mL)または抗CD16(1μg/mL)の追加刺激とともに、染色前に一晩培養した。TIGIT発現は刺激なしでは低く、IL-15単独ではわずかにアップレギュレートされた。抗CD16による追加刺激は、TIGIT発現をさらに増加させた。しかし、DNAM-1は、ベースラインの発現レベルが高いために、さらに増加させることができなかった(図11A)。これらのポリクローナル活性化NK細胞上のTIGITに対する染色パターンは、二峰性の発現を示した(図11A)。この現象をさらに調べるために、TIGITおよび他の抑制性受容体の適応型および普通型NK細胞での発現を調べた。DNAM-1、CD96、NKp44、NKp46、PD-1、Tim3、またはNKG2Aでは、適応型NK細胞と普通型NK細胞との間に発現の差はなかった(図11B図16C)。対照的に、TIGIT発現は、単球(TIGIT MFI:1595±407対2196±461、p=0.008)またはMDSC(TIGIT MFI:1680±336対2556±403、p=0.008)と共培養したかどうかにかかわらず、普通型NK細胞に対して適応型NK細胞で有意に少なかった。(図11C)。普通型および適応型NK細胞は、単球またはMDSCとの共培養の前後で同様のレベルでTIGITおよびDNAM-1を共発現したが(NK単独:18%±10%対14%±11.5%、NK+単球:86%±8%対83%±9%、NK+MDSC:84%±9%対82%±6%、図11D)、適応型NK細胞のTIGITの発現は依然として低かった。
【0241】
MDSCによる普通型NK細胞のTIGIT依存性抑制
単球、MDSC、およびNK細胞をCellTracker Blueで標識し、一晩チャンバースライドで共培養した。細胞を抗CD155(緑色)および抗TIGIT(赤色)で染色し、サイズによって区別した。予想通り、NK細胞上のTIGITは、MDSC上のCD155と共存した(図12A)。TIGITがNK細胞のMDSC依存性調節に関与するかどうかを評価するために、健常な給血者由来のポリクローナルNK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下で、2:1の比率で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と共培養した。IFN-γ産生を、CD16刺激の6時間後に、低いTIGIT発現に対する高いTIGIT発現の差異に基づいて、MDSCと共培養した普通型NK細胞において評価した。これらのデータは、低いTIGIT発現を有するNK細胞が、高いTIGIT発現を有するNK細胞と比較して有意により多くのIFN-γを産生することを示す(36.2%対19.9%、p=0.0005、図16D)。次に、TIGITの関与がNK細胞のMDSC抑制を引き起こす原因であるかどうかを調べた。抗TIGIT抗体の機能を、これまでに記載されているように(Warren et al.Int Immunol.2001;13(8):1043-52)正常なNK細胞を用いるP815アッセイで試験した。抗CD158b対照の存在がNK細胞の細胞障害性を阻害したが、NK細胞機能は抗TIGITの存在下で影響を受けず(図18A)、アゴニスト機能の欠如を示した。
【0242】
TIGITに対する遮断抗体の存在下または非存在下で、NK細胞を単球またはMDSCと5日間共培養した。ポリクローナルNK細胞機能のMDSC誘導性抑制は、TIGITを遮断することによって完全に抑止された(図12C)。TIGIT遮断が適応型NK細胞にほとんど影響を及ぼさないので、この効果は、大きな普通型NK細胞集団に完全に基づく(図12C図12D)。MDSCと共培養した普通型NK細胞におけるTIGITおよびDNAM-1の同時遮断は、TIGIT遮断の効果を逆転させ、適応型NK細胞の脱顆粒およびIFN-γを阻害し(図12E図18B)、DNAM-1シグナル伝達のTIGIT依存性阻害を示した。
【0243】
MDSCの表面上のROS誘導CD155発現
単球およびMDSC単独におけるTIGITリガンドCD155およびCD112の発現をさらに調べた。MDSCは、単球でほとんど発現しないのと比較して高レベルのCD155を発現した(MFI:675±124対107±23、p=0.015)。さらに、CD112発現は、単球と比較してMDSCにおいて有意に高かった(MFI:1714±331対865±196、p=0.015)(図13A)。MDSC誘導性の普通型NK細胞の抑制のメカニズムをさらに調べるために、スーパーオキシド、アルギナーゼ、ROS、TGF-β、およびiNOSを含むMDSCによって利用される経路を、MDSC生成の終わりに一晩遮断した。スーパーオキシド、アルギナーゼ、TGF-β、またはiNOSを遮断したとき、CD155の発現に実質的な差は見られなかったが、カタラーゼによるROS産生の阻害は、MDSC上のCD155の発現の有意な減少をもたらした(55%±23減少、p=0.03)(図13B)。
【0244】
いくつかの研究は、MDSCにおけるROS産生の増加がT細胞機能の抑制と相関することを示した。さらに、ROS産生は、NADPHオキシダーゼ活性(NOX2)の増強により増加する(Corzo et al.Journal of Immunology.2009;182(9):5693-701)。ここで、MDSCにおけるROS産生レベルを、新鮮な単離単球のレベルと比較した。単球はほとんどROSを発現せず、主にCD155陰性であった。対照的に、MDSCは、高い基礎レベルのROSを産生し、均一にCD155陽性であった(図13C)。さらに、H処理によって単球でROS産生を誘導することにより、ROS単球におけるCD155の発現を誘導することができた(図13D)。
【0245】
TIGITの関与は、pZAP70/SykおよびpERK1/2を阻害し、NK細胞の細胞障害性の阻害をもたらす。
普通型NK細胞の機能および増殖に対するTIGITの関与の強力な抑制効果を考慮して、MDSCと共培養したNK細胞におけるTIGITとのCD16誘導性シグナル伝達相互作用を分析した。対照単球と共培養した場合と比較して、MDSCと共培養したNK細胞は、ERK1/2(MFI:1356±143対696±202、p=0.03)およびZAP70/Syk(MFI:159±14対109±14、p=0.03)のリン酸化の低下を示した。さらに、TIGITの遮断またはROSの阻害は、ZAP70/SykおよびERK1/2のリン酸化を増加させた(p=0.03、図14A図14B)。TIGITまたはROSを遮断することがMDSCと培養されたNK細胞の機能を回復できるかどうかを細胞障害性アッセイにおいて調べるために、単球またはMDSCのいずれかと共に培養したNK細胞を、TIGIT遮断またはカタラーゼで前処理し、洗浄した後、51Cr標識K562細胞とインキュベートした。NK細胞の細胞傷害性は、単球との共培養と比較して、MDSCとの共培養の後に有意に減少した(図14C)。抗TIGITもカタラーゼも単独で培養したNK細胞には何ら影響を及ぼさなかったが、TIGIT遮断およびROS阻害の両方は、MDSCによって媒介される抑制効果を完全に逆転させた(図14C)。さらに、NK細胞およびMDSC共培養物におけるカタラーゼ処理と組み合わされたTIGITの遮断は、pZAP70/SykおよびpERK1/2またはNK細胞の細胞傷害性のいずれに対しても相加効果を有しなかった。
【0246】
骨髄異形成症候群(MDS)患者のMDSCによる普通型NK細胞のTIGIT依存性抑制
サイトカインによって生じたMDSCの接触を介した抑制メカニズムを同定し、このメカニズムがインビボでの生理的セッティングにおいてオペラントであったかどうかを調べた。CMV血清陽性MDS患者および健常ドナー(HD)からのPBMCを、適応型NK細胞およびMDSCの頻度について分析した。CMV+MDS患者の血液中で適応型NK細胞の頻度が高かったが(n=10,17%±15%対7%±5%)、総NK細胞頻度はHDと比較して有意に低かった(n=8、1.3%±1.2対8%±7%)。単球型MDSC(mMDSC)をCD45LinCD11bCD33HLA-DR-/lowCD14として、顆粒球型MDSC(gMDSC)をCD45LinCD11bCD33CD15として定義した。健常な給血者と比較して、MDS患者の血液中で、mMDSC(1.6±0.2対11.4±9.2、p=0.02)およびgMDSC(0.02±0.02対1.84±1.6、p=0.01)の両方の頻度の有意な増加が観察された(図15A)。さらに、MDS-MDSCは、MDS-単球と比較してCD155の発現を増加させた(図15B)。MDS患者由来のPBMCを、普通型および適応型NK細胞上のTIGITの発現について評価した。MDS患者において、TIGITの発現は、普通型NK細胞と比較して適応型NK細胞で有意に低かった(MFI:347±189対660±311、p=0.002;図15C)。MDS患者のCMV誘導性適応型NK細胞は、MDS-普通型NK細胞と比較して、IL-15およびCD16刺激による活性化後に有意により優れた機能を示した。さらに、適応型NK細胞は、健常ドナーのNK細胞と同様の脱顆粒およびIFNγ産生を示した(図15D)。普通型NK細胞におけるTIGITシグナル伝達の遮断は、普通型NK細胞の機能的低反応性を救済したが、低レベルのTIGIT発現を有する適応型NK細胞に対しては相加的効果はほとんどなかった(図15D)。
【0247】
健常志願者からの同種異系NK細胞に対するMDS患者の血液中を循環するMDSCの抑制能力を評価した。IL-15およびCD16刺激の存在下での5日間の共培養の後、同種異系の普通型NK細胞の機能の顕著な減少が、同じサンプル中の適応型NK細胞の機能と比較して観察された(図15E図18C)。TIGIT遮断は、普通型NK細胞でMDS患者からの原発性MDSCの抑制機能を完全に逆転させたが、この抑制メカニズムに本質的に抵抗性であったCMV誘導性適応型NK細胞では影響は見られなかった(図15F)。したがって、これらのデータは、正常ドナーからのサイトカインによって生じたMDSCで観察されたMDSC抑制メカニズムが、MDS患者からの原発性MDSCのメカニズムと同一であることを明確に示している。
【0248】
議論
進行中の癌を有する患者におけるNK細胞およびT細胞免疫療法の潜在的な治療効果を記載する免疫療法の文献が急増している。この急増は、T細胞PD-1/PD-L1および/またはCTLA-4経路に対するチェックポイント遮断による予期しないほど強力な臨床結果によるものである。まとめると、癌治療に対する新規アプローチは、抗原特異的応答およびチェックポイント遮断に重点を置いて、戦略的変化を経ている。標的に対するNK細胞応答は、活性化受容体および抑制性受容体を介したシグナルの釣り合いによって決定されるが、同様のチェックポイント遮断メカニズムはあまり理解されていない。本研究において、TIGIT/CD155は、普通型NK細胞のMDSC誘導性抑制の根底にある重要な軸であると同定された。CMV誘導性適応型NK細胞は、低レベルのTIGITを発現し、MDSC抑制に感受性ではなかった。サイトカイン曝露による正常血液から生じたMDSCの機能は、癌(MDS)患者で誘導されたMDSCの機能と同等であり、これらの知見の生理学的関連性および潜在的なトランスレーショナルな役割を強調する。本開示によって与えられるように、そして理論に拘束されることを望むものではないが、NK細胞のTIGIT誘導性免疫抑制を克服するための少なくとも2つの方法がある。第1に、普通型NK細胞のCD16シグナル伝達を正常レベルに回復させるTIGIT遮断である。第2に、CMV曝露後のTIGIT抵抗性適応型NK細胞の増殖である。ここでは、NK細胞のサブセットを、単離して、または単離せず、増殖させ、必要に応じて調整して、TIGITの発現レベルを低く維持することにより腫瘍誘導性免疫抑制に対する抵抗性を発揮し得ることが示されている。
【0249】
MDSCを含む免疫抑制性細胞型は、腫瘍の微小環境に蓄積し、CTLおよびNK細胞などのエフェクター細胞に抑制的な圧力を及ぼし、腫瘍消失の能力を低下させる。サイトカイン誘導性MDSCは、ポリクローナルNK細胞の増殖、脱顆粒、およびIFN-γ産生を抑制する。しかし、予期せぬことに、MDSC抑制を遮断するのに適しているNK細胞の亜集団を得るために適応型および普通型NK細胞を分離することによって、NK細胞がMDSC抑制に対する抵抗性を発揮できるようになることが分かった。MDSC抑制に対する適応型NK細胞の抵抗性に基づいて、正常単球と比較してMDSCと共培養した場合に、普通型NK細胞に対して適応型NK細胞で顕著な表現型変化があったかどうかを調べた。TIGIT発現は、普通型NK細胞と比較して適応型NK細胞において有意に低いことが分かった。
【0250】
CD112およびCD155は、細胞ストレスによって調節され、それぞれ低親和性および高親和性でTIGITに結合する。両方の受容体は、形質転換細胞上で発現が高い。本明細書で示すように、単球のMDSCへの変換は、CD112の増加およびCD155の発現の誘導に関連する。CD155の発現は、反応性酸素種(ROS)産生に依存し、MDSCは高レベルのROSを産生した。
【0251】
MDSCとの共培養後のNK細胞に対するTIGITの関与により、CD155単球と共培養したNK細胞と比較して、ZAP70/SykおよびERK1/2のリン酸化が実質的に低下した。TIGITの遮断またはROS産生の阻害は、近位シグナル伝達におけるこの欠点を逆転させた。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書の発見は、NK細胞シグナル伝達の免疫チェックポイント調節性MDSC媒介性サプレッサーとしてのTIGITの役割を明らかにする。本明細書に示されるように、TIGITの遮断、またはROSの阻害により、K562に対するNK細胞の細胞傷害性が増強された。注目すべきことに、MDSを有する患者からの血液循環MDSCは、抗TIGITの存在下で普通型NK細胞を抑制することができなかった。これらの結果は、MDSによって誘導される表現型のMDSCが機能的に抑制性であることを示し、これは、当該疾患の臨床的進展に寄与し得る知見である。
【0252】
これらのデータは、TIGITの遮断が癌免疫療法においてNK細胞の抗腫瘍性の役割を増強することを意味する。あるいは、癌患者における適応型NK細胞のクローン性増殖は、腫瘍微小環境の最小限の抑制により腫瘍標的化を改善することができた。このような増殖は、免疫抑制患者のCMV再活性化の後に見られ(Davis et al.Biology of Blood and Marrow Transplantation: Journal of the American Society for Blood and Marrow Transplantation.2015;21(9):1653-62; Foley et al.Journal of Immunology.2012;189(10):5082-8)、適応型NK細胞の注入によって、またはCMVワクチンによって促進され得る。CMVエンベロープ糖タンパク質Bによる処理および樹状細胞CMVワクチンによる遺伝子免疫化は、安全かつ実行可能であることが示されている(Pass et al.The New England Journal of Medicine.2009;360(12):1191-9; Garu et al.Molecular Therapy.2015; doi:10.1038/mt.2015.215)。要約すると、これらの新規データは、MDSCによる様々なNK細胞サブセットの抑制に関する新たな見解を与える。
【0253】
材料および方法
患者および健常ドナー
健常な対象から正常末梢血を得た。骨髄異形成症候群患者(MDS、n=15)からの凍結末梢血単核細胞(PBMC)を、International Blood and Marrow Transplant ResearchのNational Marrow Donor Program (NMDP)/Centerから得た。全ての健常およびMDS患者ドナーは、CMV血清陽性であった。全てのサンプルは識別を取り消され、使用はヘルシンキ宣言に従ってミネソタ大学とNMDP施設審査委員会によって承認された。
【0254】
細胞単離
Ficoll勾配遠心分離(Ficoll-Paque Plus,イギリスのリトル・チャルフォントのGE Healthcare)後に、MDS患者および健常な給血者からのPBMCを採取した。その後、10%熱不活性化FBS、IL-6(10ng/mL、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)、およびGM-CSF(10ng/mL、R&D Systems)を含有するRPMI培地中に2×10/mLの運命で1週間細胞を播種し、培養3日目に新しくして、MDSCを得た(Koehn et al.Blood.2015;126(13):1621-8)。次に、HLA-DR細胞を抗ヒトHLA-DRマイクロビーズ(ドイツのベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyi Biotech)を用いて単離し、その後、抗CD33マイクロビーズ(ドイツのベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyi Biotech)を用いてHLA-DR画分からMDSCを精製した。単球のMDSCを全ての示された実験で使用した(≧85%CD14HLA-DR)。NK細胞およびT細胞を、負の欠失(EasySep Human NK Cell Enrichment Kit,カナダのバンクーバーのStemcell Technologies)またはCD3マイクロビーズ(ドイツのベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyi Biotech)によって一晩休止させたPBMCから単離した。対照単球を、抗CD33マイクロビーズを用いて一晩休止させたPBMCから単離した。
【0255】
増殖分析
精製単球またはサイトカイン誘導性MDSCを、10%FBSを補充したRPMI培地(ミネソタ州ミネアポリスのGibco)(以下、培地と称する)でCellTraceバイオレット色素(5μM、カリフォルニア州カールスバッドのInvitrogen)で標識された自家T細胞またはNK細胞(1×10個)と1:1~1:16の比率で96穴U底プレートに2連で播種した。T細胞を抗CD3/CD28活性化ビーズ(40ビーズ/ウェル)およびIL-15(1ng/mL)で刺激し、またはNK細胞についてはIL-15(10ng/mL)単独で刺激し、3~5日間培養した。細胞をLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)により得、データをFlowJo(オレゴン州アシュランドのTree Star)により分析した。
【0256】
フローサイトメトリー分析
様々な時点について単球またはMDSCと培養され、様々な刺激を受けた精製NK細胞またはMDS PBMC(図17)を染色緩衝液(0.5%ヒトAB血清含有PBS)に再懸濁し、蛍光色素結合抗体で染色した(表IV)。培養NK細胞によるCD107a、Ki67、IFN-γ、およびTNFα産生の検出は、製造業者の指示書に従ってFoxp3/転写因子固定/浸透化キット(Foxp3/Transcription Factor Fixation/Permeabilization kit)(カリフォルニア州サンディエゴのeBioscience, Inc.)を用いて行った。固定および細胞外染色の前に、NK細胞をブレフェルジンAおよびモネンシン(GolgiPlugおよびGolgiStop;ニュージャージー州フランクリンレイクのBD Bioscience)で37℃で6時間処理した。以下の抗原に対する抗体でMDSCを染色して、NK細胞との共培養の前の純度および表現型を決定した:CD11b、HLA-DR、CD33、CD14、CD15、CD66b、CD56、CD3、CD19(lin-)、および固定可能死細胞マーカー(fixabale dead cell marker)(表IV)。染色前のいくつかの実験において、MDSCを、10μg/mLのTGFβ用中和抗体(R&D systems)、200IU/mLのROSスカベンジャーカタラーゼ(ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)またはスーパーオキシドジスムターゼ(Sigma-Aldrich)、500μmol/Lのアルギナーゼ阻害剤N(ω)-ヒドロキシ-ノル-l-アルギニン(nor-NOHA;Calbiochem)、またはiNOS阻害剤NG-モノメチル-l-アルギニン(L-NMMA;ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)を含有する、MDSCの様々な抑制メカニズムを標的とする試薬の存在下で一晩単独で培養し、CD155(PVR)について染色した。全ての細胞をLSRIIによって得、FlowJoによって分析した。適応型および普通型NK細胞をゲーティングし、図17のゲーティング戦略に従って同定した。
【0257】
トランスウェルアッセイ
健常な給血者由来の精製NK細胞を、IL-15(10ng/mL)の存在下で2:1の比率で自家MDSCまたは新鮮な単離単球と5日間共培養し、24ウェルプレートに、接触させて、またはトランスウェルインサート(0.4μmの孔)(ニューヨーク州コーニングのCorning)で分離して可溶性因子交換のみを可能にして、播種した。細胞を抗CD16で6時間刺激した後、脱顆粒およびIFNγ産生について、上記のように染色した。
【0258】
共焦点顕微鏡法
MDSCおよび単球を、20分間、CellTracker Blue(14μM、カリフォルニア州カールスバッドのInvitrogen)で予め標識した。その後、それらをIL-15(10ng/mL)で一晩予備活性化したNK細胞と共に40分間共培養した。混合した細胞をポリリシンで前処理したカバーガラス上に30分間載せ、3%BSAでブロックし、2%パラホルムアルデヒド中で37℃で30分間固定した。固定後、細胞を抗TIGITおよび抗PVR(CD155)で室温で2時間染色し、次いで共焦点顕微鏡法の前に蛍光標識した二次抗体で1時間染色した。
【0259】
【表4】
【0260】
Phosflow
健常な供血者由来の精製NK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下、TIGITに対する遮断抗体(10μg/mL)またはカタラーゼ(200IU/mL)の存在下または非存在下で、自家MDSCまたは新鮮な単離単球と2:1の比率で共培養した。次いで、細胞を洗浄し、4時間休止させ、抗CD16アゴニスト抗体で10分間および30分間刺激した。その後、それぞれZap-70およびERK1/2リン酸化の分析を行った。細胞をBD固定緩衝液および透過緩衝液IIIで固定して透過性にし、製造業者(ニュージャージー州フランクリンレイクのBD Bioscience)の指示書に従ってpZap-70(pY319)/Syk(pY352)およびpERK1/2(pT202/pY204)について染色した。
【0261】
クロム放出アッセイ
TIGITに対する遮断抗体(10μg/mL)またはROSスカベンジャーカタラーゼ(200IU/mL)の存在下または非存在下での単球またはMDSCとの5日間の共培養の後、NK細胞の細胞傷害性を、K562(バージニア州マナサスのATCC)細胞に対する5:1~2.5:1のエフェクター:標的比でのクロム(51Cr)放出アッセイ(4時間)により分析した。51Cr放出をγシンチレーションカウンター(マサチューセッツ州ウォルサムのPerkin Elmer)によって測定し、特異的標的溶解を測定した。
【0262】
MDSC抑制の生体外分析
MDS患者および健常ドナーからのPBMCを一晩休止させ、MDSCを上記のように単離した。NK細胞および単球を、以前に記載されているように、一晩休止させた健常なPBMCから単離した。NK細胞を、5日間、IL-15(10ng/mL)の存在下、単球または同種異系MDS MDSCと2:1の比率で共培養した。抗CD16で6時間刺激した後、TIGITに対する遮断抗体の存在下または非存在下で脱顆粒、増殖、ならびにIFN-γおよびTNFα産生についてNK細胞を評価した。
【0263】
統計解析
全てのデータを、上記のソフトウェアで最初に分析し、Prism Version 6ソフトウェア(カリフォルニア州ラホヤのGraphPad Software)によって要約した。全てのデータを最初に正規分布について検定した。その後、(図の凡例に示されているように)スチューデントのt検定またはノンパラメトリックなマンホイットニーU検定によって群間の差異を分析した。インビトロアッセイについては、平均およびSEMとして、MDS患者由来の細胞を用いて行った実験については、平均およびSDとして、データを提示した。代表的なヒストグラムまたは画像を、平均値に基づいて選択した。
【0264】
実施例8
成熟樹状細胞のCMVペプチドのプールによるパルス化が、適応型NK細胞の増殖を誘導する。
100ng/mLのGM-CSFおよび20ng/mLのIL-4を補充したCellGro培地(2.5%ヒトAB血清)中で単球(2×10/mL)を培養して、未成熟樹状細胞への単球の成熟を誘導した。培養5日後、未成熟樹状細胞を回収し、スピンダウンし、GM-CSF(100ng/mL)およびIL-4(20ng/mL)(未成熟樹状細胞の場合)、またはGM-CSF(100ng/mL)、IL-4(20ng/mL)、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(Poly I:C)(20μg/mL)、リポ多糖(LPS)(10ng/mL)、およびIFN-γ(1000IU/mL)(成熟樹状細胞の場合)を補充した新鮮なCellGro培地(2.5%ヒトAB血清)に1×10細胞/mLで播種した。選択した成熟樹状細胞培養物に、CMV pp65ペプチドプール(10μg/mL)(カタログ番号11549、メリーランド州ジャーマンタウンのNational Institutes of Health AIDS Reagent Program;プール中のペプチドのリストは、aidsreagent.org/pdfs/11549_TAB_002.pdfでワールドワイドウェブで入手できる)またはHIV PTE Gagペプチドプール(10μg/mL)(カタログ番号12437、メリーランド州ジャーマンタウンのNational Institutes of Health AIDS Reagent Program;プール中のペプチドのリストは、aidsreagent.org/support_docs/11554_Lot21164_Solubility-MW-Purity.docxでワールドワイドウェブで入手できる)をさらに補充したか、または補充しなかった。自家PBMCを5日目に解凍し、37℃で10%FBSを補充したRPMI中で一晩休止させた。
【0265】
6日目に、CD3CD56NK細胞およびCD14単球を、一晩休止させたPBMCからビーズ選別によって単離した。次いで、NK細胞、および新鮮な単球、培養未成熟樹状細胞、培養成熟樹状細胞、培養CMVペプチド補充成熟樹状細胞、または培養HIVペプチド補充成熟樹状細胞のいずれかを用いて、IL-15(10ng/mL)の存在下で、1:1の比率で24穴プレートに自家共培養物を作製した。NK細胞単独の培養条件も作製した。次いで、細胞をFACS分析の前に12~14日間培養した。
【0266】
結果が図19に示されており、成熟樹状細胞のCMVペプチドのプールによるパルス化が、適応型NK細胞の増殖を誘導することを示されている。
【0267】
実施例9
自家単球およびIL-15の存在下で培養した場合、CMV血清陽性ドナーからのNK細胞は、CD45RA-CD45RO+表現型に偏っている。
類別された健常なCMV血清陰性および血清陽性ドナー由来のCD3/CD19欠失末梢血単核細胞を10ng/mLのIL-15と培養した。CMV血清陰性およびCMV血清陽性ドナー由来の培養前および培養後のCD3CD56CD45RACD45RONK細胞のパーセンテージを、FACSを使用して測定した。
【0268】
図20に示されているように、自家単球およびIL-15の存在下で培養した場合、CMV血清陽性ドナーからのNK細胞は、CD45RACD45RO表現型に偏っている。
【0269】
実施例10
適応型NK細胞はTreg媒介性抑制に抵抗性である。
調節性T細胞(Treg)を以下の方法を用いてインビトロで作製した:CMV血清陽性ドナーから密度勾配遠心分離によってPBMCを単離した。次に、CD4T細胞を磁気ビーズ分離によって全PBMCから単離した。次いで、CD4T細胞を選別して、CD4CD25hiCD127lowTreg集団を単離した。次いで、選別したTregを、照射したK562-mbIL-21フィーダー株、抗CD3/CD28ビーズ、および300U/ml IL-2と共に21日間培養液中で増殖させた。次いで、50U/mlのIL-2を補充した培地中で6日間、自家または同種異系NK細胞およびHLA-DR抗原提示細胞と1:1、1:2、1:4、または1:8の比率で増殖させたTregを培養した。機能的実験のために、NK細胞を、1μg/mlの抗CD16アゴニスト抗体、5ng/mlのIL-12、および50ng/mlのIL-18で5時間刺激した。
【0270】
フローサイトメトリーを用いて、普通型(CD56CD57FcεRγNKG2C)および適応型(CD56CD57FcεRγNKG2C)NK細胞サブセットの増殖を分析した。図21に示されているように、適応型NK細胞はTreg媒介性抑制に抵抗性である。図21Aは、各培養条件においてCellTrace色素希釈を示したNK細胞のパーセンテージを示す。図21Bは、抗CD16アゴニスト抗体、IL-12、およびIL-18で刺激した後の培養NK細胞に関する脱顆粒(CD107a発現によって測定)およびIFN-γ産生を示す。図21Cは、抗PD1(クローンMIH4;色:APC;カリフォルニア州サンディエゴのeBioscience Inc.)および抗TIM3(クローン:F382E2;色: BV650,カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend)を用いてFACSにより測定した、培養NK細胞上のPD1およびTIM-3の発現を示す。結果は2つの独立した実験からのものである。p値は対応のあるスチューデントのt検定から得た。
【0271】
本明細書に挙げられている全ての特許、特許出願、および刊行物、および電子的に利用可能な材料(例えば、GenBankおよびRefSeqなどにおける塩基配列の投稿、ならびにSwissProt、PIR、PRF、PDBなどにおけるアミノ酸配列の投稿、ならびにGenBankおよびRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示が、本明細書の一部を構成するものとして援用される。本出願の開示と、本明細書の一部を構成するものとして援用される文献の開示との間に矛盾が存在する場合、本出願の開示が適用される。前述の詳細な説明および実施例は、理解を明確にするためにのみ示したものである。そこから不必要な制限が理解されるべきではない。本発明は、図示され説明された正確な詳細に限定されず、当業者に自明の変形が特許請求の範囲によって定義される本発明に含まれる。
【0272】
別段の定めがない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、別段の定めがない限り、明細書および特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、また、特許請求の範囲に均等論を限定しようとするものではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効けたの数を考慮して、通常の丸め方を適用することにより、解釈されるべきである。
【0273】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる範囲を本質的に含む。
【0274】
全ての見出しは読者の便宜のためのものであり、指定されていない限り、見出しに続くテキストの意味を限定するために使用されているものではない。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
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図6-1】
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図8-1】
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図9-1】
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図10-1】
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図11-1】
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