(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】検出値決定システム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20220418BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220418BHJP
G01T 1/24 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
G01T1/17 A
A61B6/03 373
A61B6/03 350K
G01T1/24
(21)【出願番号】P 2018526076
(86)(22)【出願日】2016-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2016078216
(87)【国際公開番号】W WO2017085304
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-18
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】レッスル エワルド
(72)【発明者】
【氏名】ステッドマン ブッカー ロジャー
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180713(JP,A)
【文献】特表2013-516609(JP,A)
【文献】特開2011-106887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0175347(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0175299(US,A1)
【文献】国際公開第2015/087663(WO,A1)
【文献】J. Hong et al.,CZT imaging detectors for ProtoEXIST,PROCEEDUNGS of SPIE,Vol. 6319,米国,SPIE,2006年,63190S-1 ~ 63190S-11
【文献】KIM,Jaecheon et al.,Three-Dimensional Signal Correction on UltraPeRL CZT Detectors,IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record,N24-128,米国,IEEE,2007年,p.1289-1293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/17
A61B 6/03
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の検出ピクセルの異なるクラスタ同士の間の電荷共有を抑えるための電荷共有防止グリッドを備えた、前記一連の検出ピクセルに対する検出パルスを提供する検出パルス提供ユニットであって、前記検出パルスが、前記検出ピクセルに入射する光子のエネルギーを示す、検出パルス提供ユニットと、
提供された前記検出パルスに基づいて電荷共有が補正された検出値を決定するための検出値決定ユニットであって、それぞれの前記電荷共有が補正された検出値は、各検出ピクセルに対応し、且つ隣接する検出ピクセル同士の間の電荷共有に対して補正されており、前記検出値決定ユニットが、あるクラスタの検出ピクセルについて前記電荷共有が補正された検出値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみを考慮する、検出値決定ユニットとを備える、
検出値決定システム。
【請求項2】
前記検出パルス提供ユニットは、各検出ピクセルに対してサブ検出パルス提供ユニットを備え、前記検出値決定ユニットは、クラスタの各検出ピクセルに対して、
a)前記検出ピクセルの前記サブ検出パルス提供ユニットから受けた検出パルスに、同じクラスタの1つ若しくは複数の他の検出ピクセルの前記サブ検出パルス提供ユニットから受けた1つ若しくは複数の検出パルスを加算し、その結果得られる合計された検出パルスを前記検出ピクセルの弁別器に提供する
加算器であって、b)
同じクラスタの1つ若しくは複数の他の検出ピクセルの他のサブ検出パルス提供ユニットから検出パルスを受けない場合は、前記検出ピクセルの前記サブ検出パルス提供ユニットから受けた前記検出パルスを前記弁別器に提供する加算器と、
前記受けた検出パルスを少なくとも1つの信号閾値と比較する前記弁別器と、
前記検出パルスと前記少なくとも1つの閾値との前記比較に応じて、少なくとも1つの検出値を生成する計数器とを備え、
前記検出値決定ユニットは、
前記同じクラスタのある検出ピクセルの弁別器が、最低の信号閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの
前記他の検出ピクセルには割り当てられていない場合、前記ある検出ピクセルに割り当てられ、
前記他の検出ピクセルの弁別器が、前記最低の信号閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、前記同じクラスタの
前記ある検出ピクセルに割り当てられ、前記プライオリティを
前記ある検出ピクセルに割り当ててからの時間が、時間閾値より短い場合、前記
他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、前記
ある検出ピクセルの
前記加算器に接続されるように、
同じクラスタの前記検出ピクセルを制御するための制御器をさらに備える、
請求項1に記載の検出値決定システム。
【請求項3】
前記制御器は、前記プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの前記信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットを、前記プライオリティを有する検出ピクセルの
前記加算器から切断し、当該検出ピクセルから前記プライオリティを解除する、請求項2に記載の検出値決定システム。
【請求項4】
前記制御器は、前記プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器、及び/又は前記サブ検出パルス提供ユニットが前記プライオリティを有する検出ピクセルの
前記加算器に接続されている同じクラスタの他の検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットを、前記プライオリティを有する検出ピクセルの
前記加算器から切断し、当該
プライオリティを有する検出ピクセルから前記プライオリティを解除する、請求項2に記載の検出値決定システム。
【請求項5】
前記制御器は、
前記他の検出ピクセルの弁別器が、前記最低の信号閾値が、検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、前記プライオリティが、同じクラスタの
前記ある検出ピクセルに割り当てられ、前記プライオリティを
前記ある検出ピクセルに割り当ててからの時間が、ある時間閾値より短い場合、
前記他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが
前記ある検出ピクセルの加算器に接続され、前記
他の検出ピクセルの計数器が無効になり、
前記プライオリティを有する
前記ある検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの
前記他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットを、前記プライオリティを有する
前記ある検出ピクセルの
前記加算器から切断し、同じクラスタの
前記他の検出ピクセルの計数器が有効になり、
前記ある検出ピクセルから前記プライオリティを解除する、
請求項2に記載の検出値決定システム。
【請求項6】
前記検出値決定ユニットは、ある検出ピクセルの前記弁別器によって前記信号閾値の遷移が検出されることと、前記検出ピクセルの前記計数器によってこの遷移が考慮されることとの間に十分な遅延があるように適合され、前記十分な遅延により、前記計数器が前記遷移を考慮する前に、前記信号閾値の検出された遷移に応答して、前記計数器が無効にされることが可能になる、請求項5に記載の検出値決定システム。
【請求項7】
前記制御器は、
前記他の検出ピクセルの弁別器が、前記最低の信号閾値が、検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、前記プライオリティが、同じクラスタの
前記ある検出ピクセルに割り当てられ、前記プライオリティを
前記ある検出ピクセルに割り当ててからの時間が、時間閾値より短い場合、前記
他の検出ピクセルの前記サブ検出パルス提供ユニットが、
前記ある検出ピクセルの
前記加算器に接続され、前記
他の検出ピクセルの前記弁別器は、検出パルスを受けることができないように切断され、
前記プライオリティを有する前記
ある検出ピクセルの前記弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの
前記他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、前記プライオリティを有する前記
ある検出ピクセルの前記加算器から切断され、同じクラスタの
前記他の検出ピクセルの前記弁別器が、検出パルスを受けることができるように接続され、前記
ある検出ピクセルから前記プライオリティが解除される、
請求項2に記載の検出値決定システム。
【請求項8】
前記制御器は、同じクラスタの2つ以上の異なる検出ピクセルの前記弁別器が、各信号の最低閾値が各検出パルスによって上向き方向に横切られたことを同時に検出し、前記プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられない場合、前記プライオリティは、既定の割当て規則に従って、前記これらの2つ以上の異なる検出ピクセルのうちの1つに割り当てられる、請求項2に記載の検出値決定システム。
【請求項9】
前記検出値決定システムは、前記検出ピクセルの所望のクラスタリングを定めるクラスタリング入力を受けるための入力ユニットをさらに備え、前記検出値決定ユニットは、ある検出ピクセルについて前記電荷共有が補正された検出値を決定する一方、前記クラスタリング入力によって定められる前記所望のクラスタリングを考慮する、請求項1に記載の検出値決定システム。
【請求項10】
前記検出値決定ユニットは、前記クラスタの検出ピクセルについて
出力される前記検出パルスのレートが既定の閾値より
小さい場合にのみ、クラスタの検出ピクセルについての前記電荷共有が補正された検出値を決定する、請求項1に記載の検出値決定システム。
【請求項11】
前記検出値決定ユニットは、
前記提供された検出パルスに基づいて、検出ピクセルごとに電荷共有非補正光子計数値を決定し、それぞれの前記電荷共有非補正光子計数値は、各検出ピクセルで検出される、ある一定のエネルギー幅の範囲内の光子の数を示し、
電荷共有効果をモデリングするためのモデルを提供し、前記モデルは、同じクラスタの検出ピクセル間の電荷共有のみを考慮し、
提供された前記モデル及び決定された前記電荷共有非補正光子計数値を使用して、前記電荷共有が補正された検出値を決定する、
請求項1に記載の検出値決定システム。
【請求項12】
前記検出値決定ユニットは、
同じクラスタの前記検出ピクセルの前記電荷共有非補正光子計数値と同じクラスタの前記検出ピクセルの電荷共有が補正された分解検出値との間の関係を形成するようなモデルを提供し、前記電荷共有が補正された分解検出値は、異なる材料及び/又は異なる物理的効果に対応し、
前記提供されたモデル及び前記決定された電荷共有非補正光子計数値を使用して、検出値として、電荷共有が補正された分解検出値を決定する、
請求項11に記載の検出値決定システム。
【請求項13】
目的物の画像を生成するための撮像システムであって、前記撮像システムは、
電荷共有が補正された検出値を決定するための請求項1に記載の検出値決定システムであって、前記検出パルス提供ユニットが、目的物を横切ってきて検出ピクセルに入射した光子を示す検出パルスを提供する、検出値決定システムと、
決定された前記電荷共有が補正された検出値に基づいて前記目的物の画像を生成するための画像生成ユニットとを備える、
撮像システム。
【請求項14】
一連の検出ピクセルの異なるクラスタ同士の間の電荷共有を抑えるための電荷共有防止グリッドが備えられた一連の検出ピクセルについて、検出パルス提供ユニットによって検出パルスを提供するステップであって、前記検出パルスが、検出ピクセルに入射する光子のエネルギーを示すステップと、
検出値決定ユニットによって電荷共有が補正された検出値を決定するステップであって、それぞれの前記電荷共有が補正された検出値が、各検出ピクセルに対応し、隣接する検出ピクセル間の電荷共有に対して補正されており、前記検出値決定ユニットが、あるクラスタの検出ピクセルについて前記電荷共有が補正された検出値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみを考慮するステップとを有する、
検出値決定方法。
【請求項15】
請求項1に記載の検出値決定システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、請求項14に記載の検出値決定方法を制御するコンピュータで前記コンピュータプログラムが動作するとき、前記検出値決定システムに前記検出値決定方法のステップを実行させるためのコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的物の画像を生成するための撮像システムで使用される、検出値決定システム及び電荷共有が補正された検出値を決定する方法に関する。本発明はさらに、撮像システム、及び検出値決定システムを制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検出値決定システムは、たとえば光子計数型コンピュータ断層撮影システムで使用される。光子計数型コンピュータ断層撮影システムで使用される検出値決定システムのスペクトル性能は、単一の光子によって生じる電荷が検出値決定システムの隣接する検出ピクセル同士の間で共有される、いわゆる電荷共有効果によってしばしば制限され、これは元の光子のエネルギー情報の完全な喪失を伴う。たとえば、検出値決定システムは、光子を電気パルスに変換するための変換材料を備え、この変換材料は、カソードと一連のアノードパッドによって形成されるピクセル化されたアノードとの間に配置される。光子が2つの隣接するアノードパッドの間の領域に入射する場合、光子によって生成される電荷が、これらの2つの隣接するアノードパッド間で共有され、総電荷の確率的な分布は、電荷を生じさせた光電イベントの正確な位置に主として依存するので、光子は、2つの検出パルスを生じる。光電イベントが、単一のアノードパッドに属する変換材料内の感知領域内でうまく起きるときは、全電荷がこのアノードパッドで集められ、スペクトル性能の低下は認められない。しかし、そうでない場合には電荷共有が発生し、決定検出値の質の低下が生じる。
【0003】
電荷共有効果を軽減するために、散乱X線除去用グリッドが提供される場合があり、これは、アノードパッド同士の間の領域を覆うように取り付けられる。検出面の一部をこのように覆うことには、検出量子効率(DQE)の著しい低下を引き起こすという欠点があり、その結果、決定検出値の質はさらに低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの目的は、検出値決定システム、及び質を向上させた検出値を実現する方法を提供することである。本発明の別の目的は、検出値決定システムを備える目的物の画像を生成するための撮像システムと、検出値決定システムを制御するためのコンピュータプログラムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、
一連の検出ピクセルの異なるクラスタ同士の間の電荷共有を抑えるための電荷共有防止グリッドが備えられた一連の検出ピクセルについて検出パルスを提供する、検出パルス提供ユニットであって、検出パルスが、検出ピクセルに入射する光子のエネルギーを示す、検出パルス提供ユニットと、
提供された検出パルスに基づいて電荷共有が補正された検出値を決定するための検出値決定ユニットであって、それぞれの電荷共有が補正された検出値が、各検出ピクセルに対応し、且つ隣接する検出ピクセル同士の間の電荷共有に対して補正されており、検出値決定ユニットが、あるクラスタの検出ピクセルについて電荷共有が補正された検出値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみを考慮するように構成される、検出値決定ユニットとを備える検出値決定システムが提示される。
【0006】
この電荷共有防止グリッドは、すべての検出ピクセル間の電荷共有を抑えるわけではなく、検出ピクセルの異なるクラスタ間の電荷共有のみを抑えるので、隣接する検出ピクセル同士の間の、電荷共有が起こりやすいすべての領域を覆う電荷共有防止グリッドを使用することに比べると、この電荷共有防止グリッドによって覆われる検出面の区域は比較的小さい。したがって、DQEは比較的高い。残りの、クラスタ内の電荷共有、すなわち同じクラスタの隣接する検出ピクセル同士の間の残りの電荷共有は、検出値決定ユニットで補正され、この電荷共有の補正では同じクラスタの検出ピクセルのみが考慮されるので、この電荷共有の補正を実現するための技術的労力は比較的小さい。したがって、この検出値決定システムにより、質を向上させた電荷共有が補正された検出値が、比較的小さい技術的労力で実現される。
【0007】
電荷共有が補正された検出値は、電荷共有が補正された光子計数値でもよく、それぞれの電荷共有が補正された光子計数値は、各検出ピクセルで検出される、各エネルギー幅の範囲内の光子の数を示すものであり、すなわち各検出ピクセルについて、異なるエネルギー幅に対応するいくつかの電荷共有が補正された光子計数値が決定される。電荷共有が補正された検出値は、他の種類の検出値である場合もある。たとえば、電荷共有が補正された検出値は、異なる材料、並びに/又はコンプトン効果、光電効果及び/若しくはK端効果のような異なる物理的効果に対応する分解検出値でもよく、すなわち、各検出ピクセルについて、電荷共有が補正された成分値であるともみなされ、異なる材料及び/又は異なる物理的効果に対応する、いくつかの電荷共有が補正された分解検出値が決定される。
【0008】
検出パルス提供ユニットは、一連の検出ピクセルを備える。さらに、検出パルス提供ユニットは、一連の検出ピクセルが提供される電荷共有防止グリッドも備える。たとえば、検出パルス提供ユニットは、いくつかの検出ピクセルを備え、それぞれの検出ピクセルは、a)たとえば、カソードとアノードパッドとの間の変換材料によって形成される、入射光子に基づく電気的検出パルスを生成するための検出パルス生成ユニットと、b)検出パルスを増幅するための任意選択の増幅器、たとえば電荷感応型増幅器と、c)任意選択で増幅された検出パルスを整形するための整形器とを備える。1つの検出ピクセルの検出パルス生成ユニット、任意選択の増幅器及び整形器は、検出パルス提供ユニットのサブ検出パルス提供ユニットを形成しているとみなされる。整形器からの出力は、検出値決定ユニットに与えられて、検出値決定ユニットが電荷共有が補正された検出値を決定することを可能にする。
【0009】
検出値決定ユニットは、クラスタの検出ピクセルごとに、アナログ加算器、弁別器及び計数器を備える。加算器は、a)その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットから受けた検出パルスに、同じクラスタの1つ又は複数の他の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットから受けた1つ又は複数の検出パルスを加算し、その結果得られる合計された検出パルスをその検出ピクセルの弁別器に提供する、又はb)その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットから受けた検出パルスを弁別器に提供するように構成される。弁別器は、受けた検出パルスを少なくとも1つの信号閾値と比較するように構成され、計数器は、検出パルスと少なくとも1つの閾値の比較に応じて、少なくとも1つの検出値を生成するように構成される。弁別器が、受けた検出パルスをいくつかの信号閾値と比較するように構成される場合、弁別器は、それぞれが各閾値を有する、いくつかのサブ弁別器で形成され、それぞれのサブ弁別器は、受けた検出パルスを各閾値と比較するように構成される。さらに、弁別器が、受けた検出パルスをいくつかの信号閾値と比較するように構成される場合、計数器は、対応するサブ弁別器の各閾値と検出パルスの比較に応じてそれぞれが検出値を生成する、いくつかのサブ計数器で形成される。検出値決定ユニットは、好ましくは、a)同じクラスタのある検出ピクセルの弁別器が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルには割り当てられず、その検出ピクセルに割り当てられ、且つb)ある検出ピクセルの弁別器が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が、時間閾値より短い場合、その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、他方の検出ピクセルの加算器に接続されるように、同じクラスタの検出ピクセルを制御するための制御器をさらに備える。これにより、同じクラスタの検出ピクセル間で共有された電荷が、共有された電荷を生じた光子を最初に検出した検出ピクセルに割り当てられることが確実となる。
【0010】
時間閾値は、既定されていてもよく、サブ検出パルス提供ユニットの実際の性能に基づいて能動的に決定されてもよい。時間閾値は、好ましくは、各サブ検出パルス提供ユニットによって提供される検出パルスの推定ピーキング時間に対応し、すなわち、好ましくは、各検出パルスがその最大値に到達するのに必要とする推定時間に対応する。ピーキング時間は、知られたサブ検出パルス提供ユニットの構成に基づくシミュレーションによって推定され、このシミュレーションは、変換材料の過渡応答を特に考慮し、この変換材料は、カソードとピクセル化されたアノードの間に配置され、たとえばテルル化亜鉛カドミウム(CZT)変換材料である。ピーキング時間は、サブ検出パルス提供ユニットの実際の性能を考慮するためにも測定される。
【0011】
一実施形態では、制御器は、プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットを、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器から切断し、その検出ピクセルからプライオリティを解除するように構成される。制御器は、プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器、及び/又はサブ検出パルス提供ユニットがプライオリティを有する検出ピクセルの加算器に接続されている同じクラスタの他方の検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットを、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器から切断し、その検出ピクセルからプライオリティを解除するように構成されることも可能である。一実施形態では、制御器は、a)ある検出ピクセルの弁別器が、信号の最低閾値が、検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が、既定されている時間閾値より短い場合、その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが他方の検出ピクセルの加算器に接続され、その検出ピクセルの計数器が無効になる、且つb)プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器から切断され、同じクラスタの他方の検出ピクセルの計数器が有効になり、その検出ピクセルからプライオリティが解除されるように構成される。これにより、もうその電荷共有効果を正確に考慮するために必要とされていないときには、検出ピクセルが、その電荷を、プライオリティを有する同じクラスタの別の検出ピクセルに提供することが確実となる。具体的には、これにより、この加算機能が、パイルアップが多い状態において無効にされないことが確実となる。
【0012】
検出値決定ユニットは、ある検出ピクセルの弁別器によって信号閾値の遷移が検出されることと、この検出ピクセルの計数器によってこの遷移が考慮されることとの間に十分な遅延があるように構成され、これにより、計数器がこの遷移を考慮する前に、信号閾値の検出された遷移に応答して、計数器が無効にされることが可能になる。これにより、各電荷は、同じクラスタの別の検出ピクセルに提供されるべきであるので、この遷移は計数されるべきではないが、計数器が、弁別器で検出された遷移を計数しないことが確実となり、これにより、決定された電荷共有が補正された検出値の質がさらに向上する。
【0013】
一実施形態では、制御器は、a)ある検出ピクセルの弁別器が、信号の最低閾値が、検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が、既定されている時間閾値より短い場合、その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、他方の検出ピクセルの加算器に接続され、その検出ピクセルの弁別器は、検出パルスを受けることができないように切断される、且つb)プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニットが、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器から切断され、同じクラスタの他方の検出ピクセルの弁別器が、検出パルスを受けることができるように接続され、この検出ピクセルからプライオリティが解除されるように構成される。また、これにより、プライオリティを有さない検出ピクセルの電荷が、同じクラスタの、プライオリティを有する検出ピクセルに提供されることを確実となり、この電荷は、プライオリティを有する検出ピクセルの計数値にのみ寄与し、プライオリティを有さない検出ピクセルの計数値には寄与しない。これにより、決定される電荷共有が補正された検出値の質を向上させることも可能になる。
【0014】
一実施形態では、制御器は、同じクラスタの2つ以上の異なる検出ピクセルの弁別器が、各信号の最低閾値が各検出パルスによって上向き方向に横切られたことを同時に検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられない場合、プライオリティは、既定の割当て規則に従って、これらの2つ以上の異なる検出ピクセルのうちの1つに割り当てられるように構成される。これにより、一般的に発生した電荷が同じクラスタの2つ以上の検出ピクセル間でほぼ同様に分布する場合に起こる、準安定状態が防止される。既定の割当て規則は、たとえば同じクラスタの検出ピクセルの順位を定め、同じクラスタの2つ以上の異なる検出ピクセルの弁別器が、各信号の最低閾値が各検出パルスによって上向き方向に横切られたことを同時に検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられない場合、この順位に従って、これらの2つ以上の異なる検出ピクセルのうちの1つにプライオリティが割り当てられる。
【0015】
検出ピクセルの弁別器は、単一の信号閾値を有しても、異なるエネルギーを識別するためにいくつかの信号閾値を有してもよい。具体的には、検出値決定システムが、スペクトル電荷共有が補正された検出値を決定するように、2つの隣接する信号閾値の間の領域によって定められる異なるエネルギービンについて、異なる検出値が決定される。
【0016】
電荷共有防止グリッドは、好ましくは、電荷共有を軽減するためにピクセル化されたアノードのアノードパッド同士の間に配置された薄板(lamellae)を備える。一実施形態では、電荷共有防止グリッドは、散乱X線除去用グリッドである。
【0017】
一実施形態では、検出値決定システムは、検出ピクセルの所望のクラスタリングを定めるクラスタリング入力を受けるための入力ユニットをさらに備え、検出値決定ユニットは、ある検出ピクセルについて電荷共有が補正された検出値を決定するとき、クラスタリング入力によって定められる所望のクラスタリングを考慮するように構成される。これにより、異なるクラスタのサイズ及び/又はクラスタ構成で、この検出値決定ユニットを使用することが可能になる。たとえば、電荷共有防止グリッドを修正することによって検出ピクセルのクラスタリングが修正される場合、検出値決定ユニットは、たとえば、単に使用者に新たなクラスタリング方式を入力させることにより、修正されたクラスタリングに簡単に合わせられる。
【0018】
一実施形態では、検出値決定ユニットは、あるクラスタの検出ピクセルについての検出パルスを提供するレートが既定の閾値より小さい場合にのみ、そのクラスタの検出ピクセルについての電荷共有が補正された検出値を決定するように構成される。検出パルスのレートが大きい場合、電荷共有の補正は、パイルアップ効果による悪影響を受ける。したがって、この状態では、検出値は、好ましくは電荷共有が補正されない。
【0019】
別の実施形態では、検出値決定ユニットは、提供された検出パルスに基づいて、検出ピクセルごとに電荷共有非補正光子計数値を決定するように構成され、それぞれの電荷共有非補正光子計数値は、各検出ピクセルで検出される、ある一定のエネルギー幅の範囲内の光子の数を示して、電荷共有効果をモデリングするためのモデルを提供し、このモデルは、同じクラスタの検出ピクセル間の電荷共有のみを考慮し、この提供されたモデル及び決定された電荷共有非補正光子計数値を使用して、電荷共有が補正された検出値を決定するように構成される。一実施形態では、検出値決定ユニットは、電荷共有が補正された光子計数値を決定するために、この提供されたモデルを使用して、電荷共有非補正光子計数値を電荷共有に対して補正するように構成される。この実施形態では、それぞれの検出ピクセルは、検出パルス生成ユニット、任意選択の増幅器及び整形器に加えて、いくつかの信号閾値を有する弁別器と、検出パルスによる信号閾値の遷移に応じて電荷共有非補正光子計数値を生成する計数器とを備え、その結果、検出ピクセルごとに、スペクトル電荷共有非補正光子計数値が提供される。この実施形態では、上記のような加算器は必ずしも必要ではなく、すなわち、検出パルス生成ユニット、任意選択の増幅器、整形器、弁別器及び計数器という比較的単純な系統を使用して、提供されたモデルを使用して後で電荷共有に対して補正される電荷共有非補正光子計数値を生成する。
【0020】
一実施形態では、検出値決定ユニットは、a)同じクラスタの検出ピクセルの電荷共有非補正光子計数値と同じクラスタのこれらの検出ピクセルの電荷共有が補正された分解検出値との間の関係を形成するようなモデルを提供し、電荷共有が補正された分解検出値は、異なる材料及び/又は異なる物理的効果に対応し、且つ提供されたモデル及び決定された電荷共有非補正光子計数値を使用して、検出値として、電荷共有が補正された分解検出値を決定するように構成される。
【0021】
本発明の別の態様では、
請求項1に定められるように電荷共有が補正された検出値を決定するための検出値決定システムであって、検出パルス提供ユニットが、目的物を横切ってきて検出ピクセルに入射した光子を示す検出パルスを提供する、検出値決定システムと、
決定された電荷共有が補正された検出値に基づいて目的物の画像を生成するための画像生成ユニットとを備える、目的物の画像を生成するための撮像システムが提示される。
本発明の別の態様では、
一連の検出ピクセルの異なるクラスタ同士の間の電荷共有を抑えるための電荷共有防止グリッドが備えられた一連の検出ピクセルについて、検出パルス提供ユニットによって検出パルスを提供するステップであって、検出パルスが、検出ピクセルに入射する光子のエネルギーを示すステップと、
検出値決定ユニットによって電荷共有が補正された検出値を決定するステップであって、それぞれの電荷共有が補正された検出値が、各検出ピクセルに対応し、隣接する検出ピクセル間の電荷共有に対して補正されており、検出値決定ユニットが、あるクラスタの検出ピクセルについて電荷共有が補正された検出値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみを考慮するステップとを有する、検出値決定方法が提示される。
【0022】
本発明の別の態様では、検出値決定システムを制御するためのコンピュータプログラムが提示され、このコンピュータプログラムは、請求項14に定められる検出値決定方法を制御するコンピュータでコンピュータプログラムが動作しているとき、検出値決定システムに検出値決定方法のステップを実行させるためのコード手段を備える。
【0023】
請求項1に記載の検出値決定システム、請求項13に記載の撮像システム、請求項14に記載の検出値決定方法及び請求項15に記載のコンピュータプログラムは、具体的には従属請求項に定めるように、同様の且つ/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は各独立請求項を有する上記の実施形態の任意の組合せであってもよいことを理解されたい。
【0025】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に述べられる実施形態を参照して明らかにされ、且つそれらの実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】目的物の画像を生成するための撮像システムの一実施形態を、概略的且つ例示的に示す図である。
【
図2】撮像システムの検出装置の検出ピクセルの一実施形態のいくつかの構成要素を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図3】検出装置の検出ピクセルのクラスタリングを概略的に示す図である。
【
図4】検出ピクセルの別の実施形態のいくつかの構成要素を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図5】目的物の画像を生成するための撮像方法の一実施形態を例示的に示すフローチャートである。
【
図6】電荷共有の補正中に考慮される検出ピクセルを概略的に示す図である。
【
図7】共有された電荷を表す検出パルス及び対応する弁別器からの出力を概略的且つ例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、目的物の画像を生成するための撮像システムの一実施形態を、概略的且つ例示的に示す。この実施形態では、撮像システムは、コンピュータ断層撮影システム40である。コンピュータ断層撮影システム40は、z方向に平行に延びる回転軸Rを中心に回転できるガントリ1を備える。放射線源2は、この実施形態ではX線管であるが、ガントリ1に取り付けられ、放射線源2によって発生した放射線から円錐の放射線ビーム4を形成するコリメータ3が提供される。この放射線は、この実施形態では、円筒形の検査ゾーン5内部の人間の患者である目的物を横切る。放射線ビーム4は、検査ゾーン5、したがって患者を横切った後、2次元の検出面を備える検出装置6に入射する。また、検出装置6は、ガントリ1に取り付けられる。
【0028】
コンピュータ断層撮影システム40は、2つのモータ7、8を備える。ガントリ1は、モータ7により、好ましくは、一定であるが調節可能な角速度で駆動される。モータ8は、回転軸R又はz軸の方向に平行な検査ゾーン5内の、患者台に配置された患者を変位させるために提供される。これらのモータ7、8は、たとえば、放射線源2と検査ゾーン5内部の患者が、らせん軌道に沿って互いに対して動くように、制御ユニット9によって制御される。しかし、放射線源2と患者が、別の軌道に沿って互いに対して動くことも可能である。たとえば、一実施形態では、放射線源2は、円形の軌道に沿って患者の周りを動く。
【0029】
検出装置6は、一連の検出ピクセルを備え、それぞれの検出ピクセルは、
図2に概略的且つ例示的に示されるように、検出パルス生成ユニット20、増幅器21、整形器22、アナログ加算器23、弁別器24及び計数器25を備える。検出装置6は、2つの電極と、その中間にある光子を電荷に変換するための変換材料とを備え、2つの電極のうちの少なくとも1つはピクセル化される。好ましくは、2つの電極は、アノード及びカソードであり、アノードはピクセル化され、いくつかのアノードパッドで形成される。変換材料は、好ましくは、CZT又は入射光子に基づいて電荷を発生させることができる、テルル化カドミウム(CdTe)のような別の材料である。検出パルス生成ユニット20は、好ましくは、カソード、各アノードパッド、及びカソードと各アノードパッドの間の変換材料の一部によって形成され、この検出パルス生成ユニット20は、入射光子に基づく電気的検出パルスを生成し、生成された検出パルスを増幅器21に提供する。増幅器21は、受けた検出パルスを増幅し、検出パルスを整形するための整形器22に、この増幅された検出パルスを提供する。整形された検出パルスは、電圧パルスや電流パルスでもよく、これは、電荷共有が存在しない場合は、対応する入射光子のエネルギーを示す高さ、すなわち振幅ピークを有する。検出パルス生成ユニット20、増幅器21及び整形器22は、サブ検出パルス提供ユニット29を形成するとみなされ、すべての検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29により、検出パルス提供ユニット全体が形成される。
【0030】
検出装置6の検出ピクセルは、この実施形態では散乱X線除去用グリッドである、電荷共有防止グリッドを使用してクラスタ化される。検出ピクセルは、電荷共有防止グリッドを使用してクラスタ化されるので、これらのクラスタはオーバーラップしない、すなわち、同じ検出ピクセルは異なるクラスタに属しない。このクラスタリングは、以下で
図3を参照して示される。
【0031】
図3は、検出ピクセル17を有する検出装置6の部分13を示し、検出ピクセル17は、散乱X線除去用グリッド15を使用してクラスタ化される。散乱X線除去用グリッド15は、検出ピクセル17同士の間の電荷共有感応区域16に取り付けられる。しかし、散乱X線除去用グリッド15は、検出ピクセル17同士の間のすべての電荷共有感応領域を覆うわけではなく、この実施形態では、2つの電荷共有感応領域16ごとにのみ覆う(すなわち散乱X線除去用グリッドのピッチ19は、検出ピクセル17のピッチ18の2倍である)。散乱X線除去用グリッド15は検出ピクセル17のクラスタを形成し、参照番号14で示される、4つの検出ピクセル17からなるこれらのクラスタのうちの1つが、
図3に示されている。
【0032】
異なるクラスタ間の電荷共有は、散乱X線除去用グリッド15によって抑えられる。しかし、電荷共有は、同じクラスタの検出ピクセル間では依然として存在する。この理由から、あるクラスタの検出ピクセル17の加算器23は、a)その検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29から受けた検出パルスに、同じクラスタの1つ又は複数の他の検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29から受けた1つ又は複数の検出パルスを加算し、その結果得られる合計された検出パルスを、その検出ピクセル17の弁別器24に提供する、又はb)その検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29から受けた検出パルスを弁別器24に提供するように構成される。各検出ピクセル17の弁別器24は、いくつかの信号閾値を有し、受けた検出パルスを信号閾値と比較するように構成され、制御器33は、同じクラスタのある検出ピクセル17の弁別器24が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが同じクラスタの別の検出ピクセル17に割り当てられず、プライオリティがその検出ピクセル17に割り当てられ、且つ、ある検出ピクセル17の弁別器24が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが同じクラスタの別の検出ピクセル17に割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が既定の時間閾値より短い場合、この検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29が、他方の検出ピクセル17の加算器23に接続されるように、同じクラスタの検出ピクセルを制御するように構成される。すなわち、電荷共有が発生した場合、共有された電荷は、その電荷を最初に検出した検出ピクセルに提供される。
【0033】
各検出ピクセル17の弁別器24は、入ってくる検出パルスを信号閾値に基づいてエネルギー弁別するために、受けた検出パルスを、エネルギー閾値であるともみなされるいくつかの信号閾値と比較する。計数器25は、受けた検出パルスといくつかの信号閾値の比較に応じて、いくつかの計数値を生成するように構成される。具体的には、計数器25は、隣接する信号閾値のペアごとに光子計数値を与える、すなわち対応するエネルギービンごとに光子計数値を与えるように構成され、検出パルスが、対応する信号閾値のペアのうちの低い方は超えるが、信号閾値のこのペアのうちの高い方は超えない場合、あるエネルギービンについての光子計数値が増やされる。光子計数値は、最も高い信号閾値を超えた検出パルスにも与えられる。別の実施形態では、計数器25は、閾値との比較に基づき、別のやり方で、受けた検出パルスの数を計数するように構成される。たとえば、計数器は、単に各閾値を超えた、受けた検出パルスの数を計数し、すなわち、検出パルスが第1の閾値を超えた場合、第1の閾値についての第1の光子計数値が増やされ、検出パルスが第2の閾値を超えた場合、第2の閾値についての第2の光子計数値が増やされ、検出パルスが第3の閾値を超えた場合、第3の閾値についての第3の光子計数値が増やされる、などである。
【0034】
したがって、検出ピクセル17の計数器25は、スペクトル光子計数値、すなわちエネルギービン依存型(energy-bin-dependent)光子計数値を提供する。共有された電荷は、再結合され、上記のように各検出ピクセルの加算器23を使用して各検出ピクセルに割り当てられているので、これらのスペクトル光子計数値は、電荷共有が補正されている。したがって、加算器23、弁別器24、計数器25及び制御器33は、検出値決定ユニット、特に与えられた検出パルスに基づいて電荷共有が補正された光子計数値を決定するための光子計数値決定ユニットを形成するとみなされ、それぞれの電荷共有が補正された光子計数値は、各検出ピクセル17で検出される、既定のエネルギー幅の範囲内の光子の数を示し、且つ隣接する検出ピクセル17同士の間の電荷共有に対して補正され、光子計数値決定ユニットは、あるクラスタの検出ピクセル17について電荷共有が補正された光子計数値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセル17のみを考慮するように構成される。
【0035】
制御器33は、プライオリティを有する検出ピクセル17の弁別器24が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、プライオリティを有する検出ピクセル17の加算器23から同じクラスタの他方の検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29(すなわちこの実施形態では整形器22)を切断し、この検出ピクセル17からプライオリティを解除するように構成される。さらに、一実施形態では、制御器33は、プライオリティを有する検出ピクセル17の弁別器24、及び/又はサブ検出パルス提供ユニット29(すなわちこの実施形態では整形器22)がプライオリティを有する検出ピクセル17の加算器23に接続される、同じクラスタの別の検出ピクセル17の弁別器24が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、プライオリティを有する検出ピクセル17の加算器23から同じクラスタの他方の検出ピクセル17のサブ検出パルス提供ユニット29を切断し、その検出ピクセル17のプライオリティを解除するように構成される。
【0036】
一実施形態では、制御器33は、検出ピクセルの弁別器24が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が、既定の時間閾値よりも短い場合、その検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29が、他方の検出ピクセルの加算器23に接続され、その検出ピクセルの計数器25が無効になるように構成される。さらに、この実施形態では、制御器33は、プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器24が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29が、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器23から切断され、同じクラスタの他方の検出ピクセルの計数器25が有効にされ、この検出ピクセルからプライオリティが解除されるように構成される。この場合、好ましくは、ある検出ピクセルの弁別器24によって信号閾値の遷移が検出されることと、この遷移がその検出ピクセルの計数器25によって考慮されることとの間に、十分な遅延が存在し、これにより、計数器25がこの遷移を考慮する前に、検出された信号閾値の遷移に応答して、計数器25が無効にされることが可能になる。
【0037】
別の実施形態では、制御器33は、検出ピクセルの弁別器24が、信号の最低閾値が検出パルスによって上向き方向に横切られたことを検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられ、プライオリティを他方の検出ピクセルに割り当ててからの時間が、既定の時間閾値より短い場合、この検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29が、他方の検出ピクセルの加算器23に接続され、この検出ピクセルの弁別器24が、検出パルスを受けることができないように切断されるように構成される。さらに、この実施形態では、制御器33は、プライオリティを有する検出ピクセルの弁別器24が、少なくとも1つの信号閾値が下向き方向に横切られたことを検出した場合、同じクラスタの他方の検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29が、プライオリティを有する検出ピクセルの加算器23から切断され、同じクラスタの他方の検出ピクセルの弁別器24が、検出パルスを受けることができるように接続され、その検出ピクセルからプライオリティが解除されるように構成される。
【0038】
制御器33は、好ましくは、同じクラスタの2つ以上の異なる検出ピクセルの弁別器24が、各検出パルスによって各信号の最低閾値が上向き方向に横切られたことを同時に検出し、プライオリティが、同じクラスタの別の検出ピクセルに割り当てられない場合、プライオリティが、既定の割当て規則に従って、これらの2つ以上の異なる検出ピクセルのうちの1つに割り当てられるようにも構成される。さらに、検出システムは、あるクラスタの検出ピクセルについての検出パルスの提供速度が既定の閾値より遅い場合にのみ、このクラスタの検出ピクセルについての電荷共有が補正された光子計数値が決定されるように構成され、この閾値は、検出パルスのどの速度まで、電荷共有の補正が確実に実施されるかを示す、較正測定値(calibration measurements)に基づいて既定される。制御器33は、検出パルスの提供速度が既定の閾値より速い場合は、加算器23によって提供される加算機能を使用しないように構成される。検出パルスが高速であるこの状態では、整形器22の出力は、加算機能を使用せずに、同じ検出ピクセルの各弁別器24に提供される。
【0039】
加算器23、弁別器24及び計数器25は、電荷共有が補正された検出値を決定するための検出値決定ユニット31の構成要素であるとみなされる。
【0040】
検出値決定ユニットの別の実施形態が、以下で
図4を参照して示される。
【0041】
図4は、検出ピクセルのサブ検出パルス提供ユニット29を概略的に示し、サブ検出パルス提供ユニット29は、
図2を参照して上に述べられたように、検出パルス生成ユニット20、増幅器21及び整形器22を含む。さらに、各検出ピクセルは、弁別器26及び計数器27を含み、弁別器26は、整形器22から受けた各検出パルスをいくつかの信号閾値と比較し、計数器27は、検出パルスと信号閾値の比較に応じて、光子計数値を生成、特に修正する。具体的には、それぞれの検出パルスは、検出パルスごとに各検出パルスが属するエネルギービンを決定するためにこれらの信号閾値と比較され、光子計数値は、エネルギービン及び検出ピクセルごとに存在し、この光子計数値は、各検出パルスが各エネルギービンに属する場合に増やされる。
【0042】
この実施形態では、検出ピクセルは、
図2を参照して上に述べられた加算器23を備えず、その結果、各計数器27によって生成された光子計数値は、電荷共有に対して補正されない。すべての検出ピクセルの電荷共有非補正光子計数値は、好ましくは、電荷共有の補正を実施するように構成された計算装置である電荷共有が補正されたユニット28に与えられる。具体的には、電荷共有が補正されたユニット28は、電荷共有効果をモデリングするためのモデルを提供するように構成され、このモデルは、同じクラスタの検出ピクセル同士の間の電荷共有のみを考慮し、提供されたモデルを使用して、電荷共有非補正光子計数値を電荷共有に対して補正するように構成される。光子が検出装置6の検出面に入射するとき、このモデルは、放射線源2の知られたX線源スペクトル、患者減衰(patient attenuation)及び検出装置6の知られた動作に基づく。このモデルは、特に、光子の検出面上の入射位置に応じて、電荷がどのように同じクラスタの異なる検出ピクセル間で共有されるかということに関する知見を含む。このモデルは、好ましくは検出装置6の分光応答(spectral respnse)も考慮する。このモデルによって考慮される患者減衰は推定患者減衰でもよく、これは、電荷共有非補正光子計数値を使用する患者の画像の再構成に基づく場合もあり、各大きさ、重さ、性別及び年齢の患者を検査するとき一般的に存在する、検査ゾーン5内部の想定される減衰分布に基づく場合もある。このモデルを使用することによって、シミュレーションで電荷共有効果が決まり、これらの決定された電荷共有効果を使用して、電荷共有非補正光子計数値が補正される。たとえばこのシミュレーションは、電荷共有が原因で、どの光子計数値が大きすぎ、どの光子計数値が小さすぎるかを明らかにし、これは、それに応じて光子計数値を修正することによって補正される。たとえば、このシミュレーションにより、光子計数値のうちのいくつかのエネルギー依存部分(energy dependent fraction)が、ある検出ピクセルから同じクラスタの別の検出ピクセルに移される必要があること、及び/又はいくつかの検出パルスが、2つの検出パルスに分割される必要があることが明らかにされ、これらの要素のうちの1つは、確率的に、同じクラスタの隣接する検出ピクセルの検出パルスに加算される必要がある。このモデルは、スペクトル順モデルであるとみなされるが、これは単に各クラスタ内の隣接する検出ピクセルを考慮すればよく、これにより、比較的少ない計算量で電荷共有を補正することが可能になる。この実施形態では、すべての検出ピクセルの弁別器26及び計数器27並びに電荷共有が補正されたユニット28により、検出値決定ユニット32、特に光子計数値決定ユニット32が形成されるとみなされる。電荷共有が補正されたユニット28は、独立したユニットでもよく、別のユニット、たとえばコンピュータ断層撮影システム40の画像生成ユニット10に組み込まれてもよい。
【0043】
電荷共有が補正されたユニット28は、電荷共有非補正光子計数値及び別のやり方のモデルに基づいて、電荷共有が補正された検出値を決定するようにも構成される。具体的には、電荷共有が補正されたユニット28は、a)同じクラスタの検出ピクセルの電荷共有非補正光子計数値と、同じクラスタのこれらの検出ピクセルの電荷共有が補正された分解検出値の間の関係を形成するようなモデルを提供し、電荷共有が補正された分解検出値は、異なる材料及び/又は異なる物理的効果に対応し、且つb)提供されたモデル及び決定された電荷共有非補正光子計数値を使用して、検出値として、電荷共有が補正された分解検出値を決定するように構成される。分解検出値は、成分値であるともみなされる。このモデルは、あるクラスタの検出ピクセルについての電荷共有が補正された成分値
【数2】
に依存する、同じクラスタのi番目の検出ピクセルについての期待電荷共有非補正光子計数値
【数1】
を表す解析形式における順モデルであり、ここで、添え字bは各エネルギー幅を指し、添え字jは同じクラスタの各検出ピクセルを指し、添え字mは各成分を指す。この順モデルは、同じクラスタの検出ピクセル同士の間の電荷共有のみを考慮するように構成され、電荷共有が補正されたユニット28は、期待電荷共有非補正光子計数値
【数4】
が、計数器27から受ける、測定された電荷共有非補正光子計数値に可能な限り近くなるように、電荷共有が補正された成分値
【数3】
を推定するように構成される。電荷共有が補正されたユニット28は、推定量として、最小二乗推定量、最尤推定量などを使用してもよい。
【0044】
一例として、この順モデルは以下の式で定義され、
【数5】
ここでΦ(E)は放射線源2のスペクトルを指し、
【数6】
はあるクラスタのj番目の検出ピクセルについて生成された計数に対する同じクラスタのi番目の検出ピクセルの感応性を指し、μ
m(E)はm成分のスペクトル減衰を指す。放射線スペクトルΦ(E)、感応性
【数7】
及びスペクトル減衰μ
m(E)は、たとえば初期の較正測定値から知られており、その結果、電荷共有が補正されたユニットは、同じクラスタの検出ピクセルについてのモデル化された電荷共有非補正光子計数値
【数9】
が、計数器27から受けた測定された電荷共有非補正光子計数値と同様、又は概ね同等になるように、同じクラスタの検出ピクセルについての成分
【数8】
を決定する。
【0045】
撮像システム40は、キーボード、コンピュータマウス、タッチパッドなどのような入力ユニット11とディスプレイ装置12とをさらに備える。入力ユニット11は、使用者が検出ピクセルの所望のクラスタリングを定めるクラスタリング入力を入力できるように構成され、光子計数値決定ユニットは、ある検出ピクセルについて電荷共有が補正された光子計数値を決定するとき、クラスタリング入力によって定められた所望のクラスタリングを考慮するように構成される。入力ユニットは、クラスタリング、特にクラスタの大きさを修正するために、ソフトウェア及び/又はハードウェア構成の変更を可能にするように構成される。これにより、電荷共有防止グリッドによって定められる検出ピクセルの様々なクラスタリングで、この検出値決定システムを使用することが可能になる。このように、別のクラスタリングを有する別の電荷共有防止グリッドが使用される場合、検出値決定システムに新たなクラスタリングを入力することにより、同じ検出値決定ユニット、特に同じ電荷共有が補正されたユニット28が使用される。クラスタリング入力は、入力ユニット11が使用される、検出値決定システムへの入力であるので、この入力ユニット11は、検出値決定システムの入力ユニットであるともみなされる。
【0046】
放射線源2と患者との相対運動中、検出装置6は、検出装置6の検出面に入射する光子に応じて検出パルスを生成する。これらの検出パルスは、上記のように電荷共有が補正された光子計数値を決定するために使用され、これらの電荷共有が補正された光子計数値は、患者のコンピュータ断層撮影画像を生成するために、画像生成ユニット10で使用される。画像生成ユニット10は、生成された光子計数値に基づいてコンピュータ断層撮影画像を再構成するための、フィルタ補正逆投影アルゴリズムやラドン逆変換(Radon inversion)アルゴリズムのような知られた再構成アルゴリズムを使用するように構成される。たとえば、画像生成ユニット10は、エネルギービンごとに各コンピュータ断層撮影画像を再構成してもよく、又は異なるエネルギービンの光子計数値が組み合わされて、対応する組み合わせられたコンピュータ断層撮影画像を再構成してもよい。画像生成ユニット10は、分解アルゴリズムを適用し、異なる材料及び/又は異なる物理的効果について画像を再構成するために、スペクトル光子計数値を、異なる材料、又はコンプトン効果、光電効果、また任意選択でK端効果のような異なる物理的効果に分解するように構成される。最後に、これらの1つ又はいくつかの再構成されたコンピュータ断層撮影画像は、ディスプレイ装置12に示される。
【0047】
検出パルスは、放射線源2と患者の相対運動中に検出装置6の検出面に入射する光子に応じて生成されるが、これは、電荷共有非補正光子計数値と決定される電荷共有が補正された成分値との間の関係を形成する解析モデルを使用することによって、上記のような電荷共有が補正された成分値を決定することにも使用される。これらの電荷共有が補正された成分値は、異なる材料及び/又は異なる物理的効果に対応し、患者のコンピュータ断層撮影画像を生成するために、画像生成ユニット10で使用される。またこの例では、画像生成ユニット10は、生成された成分値に基づいてコンピュータ断層撮影画像を再構成するための、フィルタ補正逆投影アルゴリズム又はラドン逆変換アルゴリズムのような知られた再構成アルゴリズムを使用するように構成される。たとえば、画像生成ユニット10は、成分ごとに各コンピュータ断層撮影画像を再構成してもよく、又は異なる成分の成分値が組み合わせられて、対応する組み合わせられたコンピュータ断層撮影画像を再構成してもよい。
【0048】
以下では、患者のコンピュータ断層撮影画像を生成するためのコンピュータ断層撮影方法の一実施形態が、
図5に示されるフローチャートを参照して例示的に示される。
【0049】
ステップ101では、放射線源2がらせん軌道に沿って患者に対して動くように、放射線源2は回転軸Rを中心に回転し、患者は回転軸Rに沿って動かされる。別の実施形態では、放射線源2と患者は、別のやり方(たとえばステップアンドシュート取得方式で、且つ/又は円形の軌道のような別の軌道に沿って)で、互いに対して相対的に動かされる。放射線源2は、患者を横切る光子を放射し、検出装置6は、患者を横切ってきたこの光子を検出し、検出面に入射した光子のエネルギーを示す検出パルスを生成する。この検出パルスの生成には、検出装置6の検出ピクセルの異なるクラスタ間の電荷共有を抑えるために、散乱X線除去用グリッド15が使用される。
【0050】
ステップ102では、電荷共有が補正された光子計数値が決定され、それぞれの電荷共有が補正された光子計数値は、各検出ピクセルで検出された、ある一定のエネルギーを有する光子の数を示し、隣接する検出ピクセル間の電荷共有に対して補正されており、あるクラスタのある検出ピクセルについて電荷共有が補正された光子計数値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみが考慮される。ステップ103では、電荷共有が補正された光子計数値は、画像生成ユニット10によって使用されて、ステップ104でディスプレイ装置に示される1つ又はいくつかのコンピュータ断層撮影画像を生成する。ステップ101及び102は、光子計数値決定方法のステップであるとみなされる。
【0051】
上記の同じクラスタ内の電荷共有の補正、特に
図2を参照して上で述べた電荷共有が補正されたは、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実施される。
【0052】
検出ピクセルのクラスタリング、したがって電荷共有のクラスタリングにより、電荷共有を補正し、評価するのに必要とされる電子装置が、著しく単純化される。電荷共有防止グリッド、特に散乱X線除去用グリッドなしの一般の電荷共有回路は、2次元の電荷共有を完全に考慮する必要があるが、検出ピクセルのクラスタリングは、たとえば
図3に示されるような2x2のクラスタリング状態では、それぞれの検出ピクセルが、最も近い2つの検出ピクセル、又は
図6に示されるように、電荷共有検出回路において斜めに隣接するピクセルも考慮されるべきである場合は次の2つの(next-two)最も近い3つの検出ピクセルを「聞く(listen)」だけでよいという利点を有する。
【0053】
図6は、4つの検出ピクセル17から構成されるクラスタ14を例示的且つ概略的に示し、数「1」で示される検出ピクセルについて電荷共有が補正された光子計数値を決定するためには、矢印42で示されるように、電荷41が、同じクラスタの2つ又は3つの隣接する検出ピクセルと共有されているかどうかが考慮されるだけでよい。好ましくは、この観察も、これらの境界を越えるアナログ信号を反映する必要がない、各クラスタの検出ピクセル、たとえば同じクラスタの4つの検出ピクセルに限定、すなわちハードワイヤードされる。ここではクラスタ当たり4つの検出ピクセルが例示的に言及されているが、クラスタの大きさは当然異なってもよいことに留意されたい。
【0054】
ASICを使用して電荷共有が補正された光子計数値を決定する場合、ASICは、好ましくは、共に使用されるように設計される電荷共有防止グリッドと同じクラスタ構造を備え、すなわち、ASICの設計は、好ましくは所与の電荷共有防止グリッドの形状に合わせられ、逆の場合も同様である。ASICは、複数の検出ピクセルを有する大規模(large area)ASICであるとみなされ、それぞれの検出ピクセルは、光子計数型電子装置、すなわち好ましくは電荷感応型増幅器(CSA)のような増幅器、整形器、いくつかの信号閾値を有する弁別器、及びいくつかの光子計数値を生成すための計数器を含み、さらに任意選択で検出ピクセル特有電子装置を補助する。ASICは、好ましくは、クラスタを形成する限定された数の検出ピクセルに特有の、追加的な電子装置をさらに備え、この追加的な電子装置は、特に
図2を参照して上で述べられたように、たとえば単一のクラスタ内で電荷加算(電荷加算とも名付けられる)にプライオリティを設定するように構成され、その結果、ASIC内のクラスタ同士の間では、通信が必要とされない。したがって好ましくは、ASIC電子装置は、それぞれのクラスタの範囲内でのみ情報を交換する。ここで、共有は、1つのクラスタの壁の内部に限定されるので、クラスタ同士の間の通信及びルーティングのオーバーヘッドは完全になくされ、すなわちイベントは、クラスタの境界を越えて反映される必要がない。これにより、調停回路の数及び複雑さが著しく軽減される。たとえば、一実施形態では、同じクラスタのすべての検出ピクセルに対して、単一の加算器(加算ノードとも名付けられる)のみが使用され、この単一の加算器は、同じクラスタのいくつかの検出ピクセルの検出パルスを加算し、その結果得られる合計された検出パルスをこれらの検出ピクセルのうちの1つの弁別器に与えるように構成され、クラスタ当たり単一のこの加算器すなわち加算ノードは、
図2を参照して上で述べられたように、制御器によって制御される。
【0055】
電荷共有イベントは、一般に同時、たとえばピコ秒以内に起こり、すなわち、2つ以上の検出ピクセル間で電荷を共有するイベント、言い換えれば2つ以上の検出ピクセル間で電荷を発生させる入射光子は、概ね同じ時点で、フロントエンド電子装置、すなわち検出装置で示される。
図7は、2つの検出ピクセル間の、起こり得る電荷共有イベントを概略的且つ例示的に示し、100keVのエネルギーを有する入射光子に起因して、第1の検出ピクセルは、第1のグラフ50に示されるように70keVを示し、第2の検出ピクセルは、第2のグラフ51に示されるように30keVを示す。これらの2つのグラフ50、グラフ51では、各整形器によって与えられた検出パルスが53、55で表され、参照番号54は信号閾値を示す。検出パルスはエネルギーを表し、その結果、グラフ50、グラフ51の縦軸で、単位がkeVである各エネルギーEが示される。
【0056】
検出パルスダイナミクス及びタイムオーバー閾値(time-over-threshold)により、最大電荷を有する検出ピクセルは、好ましくはすべての検出ピクセルについて同じである所与の信号閾値54を先に通過し、第3のグラフ52に示されるように、その弁別器の出力は最も長い間アクティブであり、参照番号56は第1の検出ピクセルの弁別器のレベルLを指し、参照番号57は第2の検出ピクセルの弁別器のレベルLを指す。光子計数値決定システム、すなわち検出装置6は、検出ピクセルが、弁別器出力の立上りで、すなわち弁別器の信号閾値が上向き方向に横切られる場合にイベントを示す場合、検出ピクセルは、プライオリティの要求が可能な場合は直ちにそうするように構成される。
図7に示されるように、最大電荷を有する検出ピクセルは、最初に信号閾値をトリガもする。好ましくは、その時点でイベント観察窓が開始し、この時間窓は、好ましくは、たとえば10nsである整形器の出力の推定ピーキング時間に対応する。プライオリティは別の検出ピクセルに先に与えられているので、その最低の閾値の立上りを示す、同じクラスタの任意の他の検出ピクセルは、そのプライオリティを直ちに拒絶し、その整形器の出力は、プライオリティが与えられた検出ピクセルの加算器に接続される。同時に、対応する「共有された」検出ピクセルの計数器は、好ましくは無効にされる。加算は、弁別器の前に実施され、すなわち、プライオリティを要求した検出ピクセルは、まったく同じピーキング時間窓でトリガした同じクラスタの検出ピクセルからの追加的な信号によってその振幅が増加したことを「認識する」。この検出ピクセルは、好ましくは、関係する検出ピクセルのうちのいずれかが、その弁別器の下向きの遷移を示し次第、加算器から切断される。この時点で、電荷共有を生じさせたイベントは、完全に処理されたと想定される。整形器は、依然として裾を引いているが、既に最大値に到達したので、加算はそれ以上要求されない。この切断により、パイルアップが多い状態において、加算機能が無効にされないことが確実となる。
【0057】
ピーキング時間は、サブ検出パルス提供ユニットの知られた構造に基づくシミュレーションによって推定され、このシミュレーションは、カソードとピクセル化されたアノードとの間に配置され、たとえばCZT変換材料であってもよい変換材料の過渡応答を特に考慮する。ピーキング時間は、サブ検出パルス提供ユニットの実際の性能を決定するためにも測定される。たとえば、変換材料は、生産/スクリーニング中に特性が明らかにされる。過渡時間は、ガンマ線源を使用し、整形器を使用するときのピーキング時間に対応する、たとえば10~90パーセントである立上り時間を有する電荷感応型増幅器を用いてサブ検出パルス提供ユニットの過渡応答を観察することよって測定される。これにより、時間閾値である統計的マージンが提供され、時間閾値は、異常値を除外して、最悪の場合に設定される。さらに、整形器のピーキング時間は、シミュレーションによって、又は試験的に電荷を注入してその過渡応答を観察することによって知られる。これは、スキャナに組み込む前に、テストベンチで行われる。これは、変換材料及び放射線源と共に行うこともできる。さらに、最適時間閾値は、較正ステップ中に、最小の低エネルギー側の裾(low energy tail)が観察されるように調節され、すなわち、電荷共有なし、又は期待される程度の電荷共有で、期待されるスペクトルに最も適合するものを見つけるために、放射線源又はX線源を用いて、複数の閾値スキャン(threshold scan)が実施される。
【0058】
通常は、光子計数値が計数、すなわち増やされるのに、閾値の上向きの遷移が使用される。あるイベントが、各計数器によって本当に計数されるべきかどうかを決めるための時間をもつために、弁別器と計数器との間に、遅延線が存在する。各イベントが電荷共有によって生じ、その結果、各整形器が別の検出ピクセルの加算器に接続されなければならない場合、計数器は、遅延線が経過する前に無効にされる。遅延線は、信号の最低閾値で、弁別器の出力幅より長くなるように定められる。これは単なる待ち時間であるので、遅延線は性能に影響を及ぼさないことに留意されたい。
【0059】
ある検出ピクセルにプライオリティが与えられた場合、それが観察される時間は、好ましくはピーキング時間のみに限定され、すなわち、この窓の外側で別の検出ピクセルがイベントを示す場合、この検出ピクセルは、独自にその検出パルスを処理することができる。実際、この他の検出ピクセルは、独自のプライオリティ処理を開始する。これは、異なる時点で信号閾値の横断が示された場合、それらが各ピーキング時間窓の外にあるかどうかに応じて、たとえば2x2のクラスタでは、2つの検出ピクセルはあるイベントを共有し、他方の2つの検出ピクセルは別のイベントを共有できることを意味する。したがって、電荷共有なしの2x2の実施と比較したとき、最大計数速度は維持される。
【0060】
整形器を加算器又は加算ノードに接続及び切断するために、スイッチが使用される。具体的には、記載された補正処理は、スイッチ位置を制御するフリップフロップ又はステートマシンを用いて、デジタルの手段で実施される。
【0061】
図7では、25keVである信号閾値54が例示的に示されている。実質的には、これは、25keV未満の示された共有されたイベントは、加算ノードに含まれないことを意味する。したがって、電荷共有の補正に使用される弁別器内の最低の閾値は、好ましい実施形態ではより低く、具体的には2~5keVの範囲内である。
【0062】
上記の実施形態では、電荷共有の補正のために「1番目総取り」方式が使用されてきたが、他の実施形態では、他の電荷割当て方式が使用されてもよい。たとえば、検出ピクセルが概ね同時に電荷を検出する場合、最大の検出パルス振幅を有する検出ピクセルが、同じクラスタの隣接する検出ピクセルからのこの電荷も受ける方式が使用されてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、撮像システムは、コンピュータ断層撮影システムであるが、他の実施形態では、撮像システムは、別の撮像システム、特に、CアームX線撮像システムのような別のX線撮像システムでもよい。
【0064】
開示された実施形態の他の変形形態は、当業者が特許請求された発明を実践する際に、図面、明細書及び添付の特許請求の範囲の検討から理解され、実施される場合がある。
【0065】
特許請求の範囲において、「備える」という語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数のものを除外するものではない。
【0066】
単一のユニット又は装置は、特許請求の範囲に記載されるいくつかの細目の機能を果たす。いくつかの方策が単に互いに異なる従属請求項に記載されているということは、これらの方策の組合せが有利に使用できないということを示すものではない。
【0067】
1つ又はいくつかのユニット又は装置によって実施される、増幅、整形、加算、弁別、計数、電荷共有を補正するためのモデルの適用などのような手順は、任意の他の数のユニット又は装置によって実施されてもよい。これらの手順、及び/又は撮像方法に従った撮像システムの制御、及び/又は光子計数値決定方法に従った光子計数値決定システムの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段及び/又は専用のハードウェアとして実施されてもよい。
【0068】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、又はその一部として与えられる光学式記憶媒体やソリッドステート媒体などの適当な媒体に格納/配信されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介してなど、他の形態でも配信されてよい。
【0069】
特許請求の範囲に記載の任意の参照符号は、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0070】
本発明は、検出ピクセルの異なるクラスタ同士の間の電荷共有を抑えるための電荷共有防止グリッドが備えられた一連の検出ピクセルについて、検出パルスを提供するための検出パルス提供ユニットを備える、特に光子計数型CTスキャナ用の検出値決定システムに関し、この検出パルスは、検出ピクセルに入射する光子のエネルギーを示す。電荷共有が補正された検出値は、提供された検出パルスに基づいて決定され、あるクラスタの検出ピクセルについて電荷共有が補正された検出値を決定するために、同じクラスタの検出ピクセルのみが考慮される。これにより、比較的高いDQEが可能になり、電荷共有の補正を可能にするための技術的労力は比較的小さい。