(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】骨欠損の補填用の合成ブロック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20220418BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20220418BHJP
A61L 27/10 20060101ALI20220418BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20220418BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20220418BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61F2/28
A61L27/10
A61L27/56
A61L27/12
A61L27/58
(21)【出願番号】P 2019084876
(22)【出願日】2019-04-26
(62)【分割の表示】P 2017538465の分割
【原出願日】2015-10-12
【審査請求日】2019-04-26
(32)【優先日】2014-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518249937
【氏名又は名称】エス.ア.エス. スリーディーセラム - シントー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイニョン、リシャール
(72)【発明者】
【氏名】シャプ、クリストフ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531694(JP,A)
【文献】特表2005-516878(JP,A)
【文献】特開2008-104866(JP,A)
【文献】特表2007-530202(JP,A)
【文献】国際公開第2013/181375(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0085922(US,A1)
【文献】角熊 雅彦,下顎骨骨欠損へのヒドロキシアパタイト補填時における微細血管構築について,歯科医学,日本,1995年,Vol. 58, No. 6,pp. 401-421
【文献】山崎 安晴, 外4名,人工骨としての多孔質アパタイト-1.脛骨埋入実験-,口病誌,日本,1982年,Vol. 49, No. 2,pp. 251-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61F 2/28
A61L 27/10
A61L 27/56
A61L 27/12
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の表面の骨欠損(10;18)を補填することを意図されたセラミックブロック(11)を製造する、コンピュータにより実行される方法において、該方法がコンピュータにより実行される以下のステップを含み、該ステップが、
-補填する対象の骨欠損(10;18)を有する、患者の骨の3次元画像を、前記コンピュータが取得するステップと、
-前記骨欠損(10;18)に対応する形状を有
し、且つ、前記セラミックブロックを製造する際のセラミックの収縮を考慮して前記骨欠損(10;18)より僅かに大きいサイズを有するセラミックブロック
(11)であっ
て、
少なくとも1つの安定化ネジ(26)を通すために、少なくとも1つの貫通穴(25)が、前記セラミックブロック(11)を、前記骨欠損(10;18)の範囲を定める骨に接触するようになっている表面から、前記骨欠損(10;18)の内部に配置された前記セラミックブロック(11)の位置を考慮した場合に開放側になる表面へと貫通し、
前記セラミックブロックが、芯部(11A)と、患者の骨に接触するようになっている部分(11B)と、前記骨欠損(10;18)内に配置される位置を考慮した表面部(11C)、および前記貫通穴(25)を囲む領域を有し、
前記芯部(11A)および前記部分(11B)は、前記骨欠損から、血管再生を可能にする流体及び細胞を通過させる互いに連通する血管成長チャネルの3次元ネットワークを有し、
前記部分(11B)の血管成長チャネルは、前記芯部(11A)の血管成長チャネルよりも断面が大きく、
前記表面部(11C)および前記貫通穴(25)を囲む領域には血管成長チャネルが形成されていない、
セラミックブロックの計算モデルを、前記コンピュータが設計するステップと、
-前記コンピュータが、前記骨欠損(10;18)内に前記セラミックブロックの安定性を確実にするために、前記セラミックブロックの前記計算モデルを変更するステップと、
-前記コンピュータが、ステレオリソグラフィプリント装置に
、所望の前記セラミックブロックを製造させるステップ
であって、ステレオリソグラフィは、
・プラットフォーム上に少なくとも1つのセラミック材料と光硬化モノマーを含む第1の熱硬化組成の層を形成するステップと、
・前記第1の熱硬化組成の層に規定されたパターンに従ってレーザー走査によって照射して硬化させ、第1のステージを形成する、ステップと、
・前記第1のステージ上に第2の熱硬化組成の層を形成するステップと、
・前記第2の熱硬化組成の層に規定されたパターンに従ってレーザー走査によって照射して硬化させ、第2のステージを形成する、ステップと、
・前記ステップを繰り返して前記セラミックブロックのグリーン体を形成するステップと、
・硬化されていない成分を除くために前記グリーン体を洗浄するステップと、
・洗浄された前記グリーン体に脱バインダ処理を行うステップと、
・任意に洗浄および脱バインダ処理された前記グリーン体を焼結するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セラミック材料が、少なくとも部分的に吸収性のセラミック材料、又は、非吸収性セラミック材料であることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記セラミック材料が、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト、及びそれらの任意の割合の混合物から選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記セラミック材料が、100重量%に対して、40~100重量%のヒドロキシアパタイト、及び0~60重量%のβ-TCPから構成されていることを特徴とする請求項3に記載された方法。
【請求項5】
前記
セラミックブロック(11)を構成する前記セラミック材料が、体積比5~30%の粒間微小多孔質を有し、微小孔の大きさが0.1~10μmであることを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記芯部(11A)の前記血管再生チャネルが、1辺が250~350μmで許容差が200μmの正方形断面を有し、
前記部分(11B)の血管成長チャネルは、前記芯部(11A)の血管成長チャネルよりも断面が大きい正方形断面を有し、1辺が400~600μmで許容差が200μmであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の表面の骨欠損を補填するための合成ブロック、及びその合成ブロックの製造方法に関するものである。
【0002】
具体的には、本発明によって治療される骨欠損は、下顎骨又は上顎骨に生じた骨欠損である。しかし、本発明はこれらの骨欠損に限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
上顎骨の骨量は、インプラント、すなわち失った歯を置き換えるための人工歯根を装着するための重要な情報である。
【0004】
現在、骨量が十分でない場合、それが小さな体積の場合には、合成の(β-リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト)、または人間若しくは動物(ウシ、ブタ、ウマ)由来のペレット又はペーストとしての補填物を使用することが可能である。骨誘導再生法(GBR)は、これらの適用によって構成される。
大きな体積の場合には、人間(骨バンクの骨)、動物、又は合成由来のブロックを使って、又は、結合部(symphyseal)、枝部(ramic)、又は頭頂骨を採取することによって自家移植される、手術を受ける患者の骨ブロックを使って、付加的な移植を行う必要がある。
【0005】
これらの既知の技術は、上記ブロックの形状や量が問題となるため困難を呈する。実際、それらの技術には標準のサイズがあるため、(手術中に)最善の方法でサイズを変更して骨欠損に合わせる必要がある。
【0006】
それによって以下の結果がもたらされる。
-ブロックと骨欠損とが完璧に一致しないことによる安定性の問題。
-骨接合(ネジ装着)の時にブロックが傾くことによる破損のリスク。
-骨結合の問題(骨細胞によるブロックのコロニー化、及び新生血管の形成)及び、その結果ブロックに対して生じる拒絶反応。
-軟組織(被覆組織、歯肉、上皮、結合組織)を損傷するリスクを伴う、過度に鋭利なエッジの問題。その結果、極めて重要であるにもかかわらず不十分な組織治癒。軟組織の縫合は、ブロックの骨結合を期待して、張力を発生させずに、完全な密封ができる必要がある。
-自家移植の場合、2つ目の手術箇所によって追加される問題及びそれに起因する結果(下顎枝、下顎骨の結合線、若しくは全身麻酔下での頭頂骨又は股関節部における採取)。
-自家移植の場合、採取できる量の問題。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/004070号
【文献】米国特許第5496682号明細書
【文献】欧州特許第1472081号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの欠点を克服することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明では、ステレオリソグラフィ又は3Dプリントとも呼ばれる付加製造方法の技術によって、セラミック材料で作製した患者の骨欠損に完璧に一致する合成ブロックを実現することを提案し、それによって、現行の技術で遭遇する様々な困難を解決することができる。
【0010】
実際、患者のスキャンデータ(STLファイル)からの3Dプリント(ステレオリソグラフィ)を実施することによって、ブロックが欠損に完璧に一致するため、
-ブロックにとって困難及びリスクのある、手術中の調整状態が無くなる。
-ブロックを骨欠損に合わせる調整の問題が無くなる。
-より良質な接合を提供することにより、ブロックと血液の骨細胞との間の密接な接触が可能になる。
-ブロック本体に十分な「多孔質部」を設けることにより、骨細胞によるコロニー化、及び血管新生(新しい血管の生成)を可能にする。
-1つ以上の安定化ネジ(骨接合)を通すための窪みが正確な位置に設けられる。すなわち、ブロックを固定する際にブロックに張力又は破損が発生することを避けるために、ブロックのネジ頭の支持部を強化する必要があり、これらの穴の面取り部及び直径はネジの直径に対して調整される。
-セラミック材料で作られたブロックの組成は、ブロックが、予定どおり全体として、又は部分的に吸収され、新たに形成された患者の骨によって、全体として、又は部分的に充填されるために、極めて重要である。実際、手術者は、下顎骨又は上顎骨の骨量の増加を必要とした1つ以上のインプラントを装着するには、骨の治癒が完了した後に再度手術部位に介入する必要がある。
-自家移植の場合に遭遇する問題(第2の手術部位および採取量)は、明らかに完全に無くなる。
【0011】
このように、本発明は、まず、骨の表面における骨欠損を補填するための合成ブロックにおいて、合成ブロックが、骨欠損を補填することが可能な形状を有し、骨欠損内に配置されたときに固定できるセラミック材料の部品によって構成され、骨欠損に部品が配置されると、細胞増殖のための血管再生を可能にする流体及び細胞が通ることができるように互いに連通するチャネルの3次元ネットワークが部品内に少なくとも部分的に形成され、骨欠損にこの部品が配置すされると、部品に接触する骨欠損の各表面上にチャネルが開口するようになっていることを特徴とする合成ブロックに関する。
【0012】
このチャネルの3次元ネットワークは、整然としたネットワークであって、特許文献1に記載されているような、開放相互連結細孔の群とは異なる。この整然としたネットワークはステレオリソグラフィ又は3Dプリント又は付加製造方法の技術によって得られるためネットワーク構造を制御できるが、開放相互連結細孔の群はランダムであるため制御は不可能である。このように、部品は所望の血管再生に従って作製できる。更に、この部品は、異なる密度(平方センチメートル又は立方センチメートルあたりのチャネル数)のチャネルネットワークを含むことができる。
【0013】
セラミック材料は、少なくとも部分的に吸収性セラミック材料であることが有利であるが、セラミック材料は、非吸収性セラミック材料であってもよい。
【0014】
すなわち、セラミック材料は、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト、及びそれらの任意の割合の混合物から選択され、特に、100重量%に対して、40~100重量%のヒドロキシアパタイト、及び0~60重量%のβ-TCPで構成される。一般的な混合物は、60重量%のヒドロキシアパタイト及び40重量%のβ-TCPで構成される。β-TCPは吸収性であるが、ヒドロキシアパタイトは吸収性ではない。
【0015】
チャネルの3次元ネットワークは、血管再生に必要な流体及び細胞が浸入することによって血管再生が可能であれば、任意の形状でよく、特に、ネットワークの各稜線に沿ってチャネルが延びる、立方体メッシュネットワークでもよい。
【0016】
セラミック部品は、その外側に、セラミック部品と一体で、骨欠損の外側の、修復する対象の骨の表面に当接するようになっている、少なくとも1つの安定化アイレットを有してよい。安定化アイレットには、血管再生チャネルが設けられておらず、少なくとも1本の安定化ネジを通すために、少なくとも1つの穴が貫通し、及び/又は、少なくとも1つの安定化ネジを通すために、少なくとも1つの貫通穴が、セラミック部品を、骨欠損の範囲を定める骨に接触するようになっている表面から、骨欠損の内部に配置された部品の位置を考慮した場合に開放側になる表面へと貫通してよく、部品には、少なくとも解放側表面の周辺部において、穴を囲む領域内に血管再生チャネルが設けられていない。
【0017】
部品には、骨欠損内に配置される部品の位置を考慮した場合に開放側になる表面の領域に血管再生チャネルが設けられていないことが有利である。
【0018】
血管再生系を形成するチャネルは、例えば円形、正方形、三角形、菱形など、任意の断面を有してよく、最大数の角をもつ形状(例えば十字形)を有してよい。特に、血管再生系を形成するチャネルは、1辺が250~600μmで許容差が200μmの正方形断面を有することができる。
【0019】
これらのチャネル構造は制御されるため、一般に、血管再生チャネルが、変化する断面を有することができ、直線状又は非直線状の形状も可能であり、骨欠損に接触するようになっている部品の表面の反対側が開口すること又は開口しないことも可能である。
【0020】
有利には、血管再生系を形成するチャネルが、骨欠損の範囲を定める骨に接触するようになっている部品の領域では、より大きな断面を有し、すなわち、1辺が400~600μmで許容差が200μmの正方形断面のチャネルであり、部品の芯部チャネルが、1辺がより小さい正方形断面チャネルであり、又は、骨欠損に接触するようになっている部品の1つ以上の領域では、血管再生系を形成するチャネルの密度がより高くできる。
【0021】
具体的には、部品を構成するセラミック材料が、水銀ポロシメータで測定して、体積比5~30%の粒間の微小多孔質を有し、微小孔の大きさが0.1~10μmである。この微小多孔質が、製造されるセラミック材料に適している。
【0022】
以下の点が興味深い。
-部品の芯部が、「多孔質」及び軟質の小柱骨に可能な限り近い構造を有する。
-(骨欠損内に配置される位置を考慮して)部品の外周部は、皮質骨の特性と可能な限り近い構造を有する、すなわち高密度で硬い。
-部品の、患者の骨に接触するようになっている部分は、可能な限り早く血管再生が可能になるように、極めて「多孔質」である。
【0023】
上記の「多孔質」という用語は、上記に定義したようなチャネルのネットワークが存在することを表す。実際、部品の外周部は、その他の部分と同様に、製造方法に固有の微小多孔質構造を有する。
【0024】
本発明はまた、上記に定義した合成ブロックの製造方法に関し、この製造方法は、
-補填する対象の骨欠損を有する、患者の骨の3次元画像を取得するステップと、
-コンピュータ支援設計を用いて、骨欠損に対応する形状を有し、血管再生チャネルを有し、合成ブロックを製造する際のセラミックの収縮を考慮して骨欠損より僅かに大きいサイズを有する合成ブロックの計算モデルを設計するステップと、
-骨欠損内に合成ブロックを確実に固定するために、合成ブロックのこの計算モデルを、コンピュータ支援設計によって変更するステップと、
ステレオリソグラフィ、又は3Dプリント、又は付加製造方法の技術によって、所望の合成ブロックを製造するステップとを含むことを特徴とする。
【0025】
上に定義したセラミック材料部品を製造する方法は、一般に、以下のステップを含む。
-剛性支持体又は製造されている部品上に、少なくとも1つのセラミック材料と光硬化性モノマーとを備えた第1の熱硬化性組成物層を形成するステップ。
-第1の光硬化性組成物層を、この層に定義されたパターンに従って照射することによって硬化させ、第1の段を形成するステップ。
-第1の段の上に、第2の光硬化性組成物層を形成するステップ。
-第2の光硬化性組成物層を、この層に定義されたパターンに従って照射することによって硬化させ、第2の段を形成するステップ。
-任意選択でこれらのステップを繰り返し、圧粉部品を形成するステップ。
-硬化していない組成物を除去するために、圧粉部品を洗浄するステップ。
-任意選択的に、洗浄された圧粉部品に脱バインダ処理を行うステップ。
-任意選択的に脱バインダ処理及び洗浄を行った圧粉部品に焼結処理を行い、完成部品とするステップ。
【0026】
本方法の特定の例では、光硬化性組成物が液体で、剛性支持体が光硬化性組成物槽に浸されたプラットフォームである、液体のステレオリソグラフィにより部品が製造される。光硬化性組成物の各層は、製造される部品の上段が、光硬化性組成物の開放側表面の下に下がるように、プラットフォームを光硬化性組成物槽内で下げていくことによって形成され、光硬化性組成物の各層は、その層に定義されたパターンに従って、この開放側表面をレーザー走査することによって硬化される。
【0027】
本方法の他の特定の例では、多孔質構造は、光硬化性組成物がペースト状で、光硬化性組成物が、製造されている部品の上段に供給される、ペーストのステレオリソグラフィにより製造される。光硬化性組成物が広げられて各光硬化性組成物の各層が形成され、光硬化性組成物の各層は、その層に定義されたパターンに従って、層をレーザー走査することによって硬化される。
【0028】
本発明は、更に、下顎骨又は上顎骨の骨欠損を補填するための合成ブロックとして、上で定義された、又は上に定義された方法で製造された合成ブロックの使用法に関する。
【0029】
本発明の目的をよりわかりやすく示すため、以下の添付図面を参照して、例示的且つ非限定な目的で、幾つかの具体例を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】本発明の第1の具体例による、この骨欠損を補填するためのブロックの側面概略図。
【
図5】本発明の第1の具体例に係る合成ブロックを配置、固定した後の、
図2に対応する図。
【
図6】合成ブロックの材料が吸収され、合成ブロックが患者の骨に置き換わり、人工歯根が配置された後の、
図5に対応する図。
【
図8】切歯のブロックを失った後の上顎骨の正面図。
【
図9】本発明の第1の具体例に係る合成ブロックを配置した後の上顎骨の正面図。
【
図10】骨が完全に治癒して歯科インプラントを装着した後の上顎骨の正面図。
【
図11】本発明の第2の具体例によって実施された合成ブロックを示す、
図3に対応する図であり、この第2の具体例に使用される安定化ネジが示されている図。
【
図12】本発明の第2の具体例によって実施された合成ブロックを示す、
図4に対応する図であり、この第2の具体例に使用される安定化ネジが示されている図。
【
図13】第1又は第2の具体例に係る合成ブロックの、可能な構造を説明するための断面図。
【
図14】本発明の第2の具体例による合成ブロックで補填した骨欠損を備えた、下顎骨の一部の上面図。
【
図15】
図14の合成ブロックの、構造を示すために拡大した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面の解剖学的概略図では、わかりやすくするために、歯肉、筋肉及び頬、並びに血管系等の軟組織は除き、骨及び歯等の硬組織のみを残している。
【0032】
図1を参照すると、人間の成人の下顎骨1が、その体部2及び2つの枝部3と共に示されていることがわかる。体部2は、下顎骨体部の柔らかい歯槽縁部内の穴の開いた槽内に埋め込まれた、下歯列弓の歯4を保持している。本発明の目的は、骨欠損を補填するための合成ブロック及びその骨欠損内での位置決めを提供することである。図面では、歯は厳密には描かれていない。ここで説明する歯は、下顎骨の中央を基準にして、それぞれの位置によって番号が付されている。すなわち、5は第2小臼歯、6は第1大臼歯、7は第2大臼歯、8は第3大臼歯又は親知らずである。
【0033】
図2は、歯6、7及び8並びに付随する歯槽骨が失われた下顎骨体部を示す。
【0034】
このように形成された骨欠損10は、片側の下顎骨体部側壁からもう一方まで延びる桶型をしている。
【0035】
この欠損10を補填するためのセラミック材料部品11を
図3及び
図4に示す。
【0036】
セラミック材料部品11は、欠損10に完璧に嵌め込むことが可能な形状を有する本体12を備え、本体12は、図示の例では、外側に3つのアイレット13、すなわち、片側に2つのアイレット及び反対側に1つのアイレットを有する。
【0037】
アイレット13は、
図5に示すように、下顎骨のそれぞれ対応する側壁部に当接するようになっている。各アイレット13は、部品11を欠損10内に配置したときに安定させるように、骨接合用ネジを通す穴14を備えている。アイレット13を安定させることによって部品11が完全に安定するように、穴14の軸線は骨接合用ネジが所望の向きになるような方向に向いている。また、アイレット13は、部品11の本体12上に、こうした安定性が確実となるように配置される。
【0038】
図6には、部品11のセラミック材料が吸収され、それが患者の骨に置き換わった後の下顎骨1を示す。治癒後、歯科インプラント15の配置が可能になる。
【0039】
【0040】
図7~
図10は、上顎骨16の場合の、それぞれ
図1、
図2、
図5及び
図6に対応する図である。
図7は、上歯列弓の歯17を有する上顎骨16の正面図を示す。
図8は、これに対応する正面図であるが、4本の切歯の喪失及び骨の損失を伴い、骨欠損18が生じている。
図9は、本発明に係るセラミック材料部品19を示し、その本体20が骨欠損に補填され、アイレット22が上顎骨の前壁に当接することで、骨接合用ネジが対応する穴22を通ることができるようになっている。
図10は、骨の治癒が完了し、4つの歯科インプラントを装着し、それに新しい歯24を装着した後の上顎骨の正面図を示す。
【0041】
図11及び
図12は、それぞれ
図3及び
図4に対応するが、部品11を固定する手段の他の具体例の図である。
【0042】
この具体例では、骨欠損10によって区切られた患者の骨の中を突き抜ける(
図11及び
図12に示す)骨接合用ネジ26を通すために、貫通穴、すなわちボア25が部品11を貫通している(図示の例では2つのボア25)。反対側では、各ボア25は、対応するネジ頭28を収容するために、面取り部27に沿って広がっている。ネジ26の軸線の位置及び向きは、部品11が確実に良好に固定されて、血管再生が成功するように選択される。
【0043】
図11を参照すると、部品11は、2種類の「多孔質」を有することができる。すなわち、
-血管再生チャネルの3次元ネットワークが、例えば、1辺が250~600μm+/-200μmの正方形断面のチャネルから構成される主要部11aと、
-血管再生ネットワークを備えておらず、従ってより良好な耐性のために(微小多孔質のみを有し)チャネルを有さない表面部11bである。
【0044】
上記のように、部分11aは、血管再生を加速させるために、患者の骨と接触する領域に、より高密度の、又はより大きなチャネル断面を有するネットワークを有することができる。
【0045】
図14及び
図15は、その「多孔質」に関して3つの異なる領域を有する、第2の具体例による部品11を示す。
-血管再生チャネルの3次元ネットワークが、例えば、1辺が250~350μm+/-200μmの正方形断面のチャネルから構成される芯部11Aと、
-血管成長チャネルの3次元ネットワークがより高密度か、又は部分11Aのチャネルより大きな断面、例えば、1辺が400~600μm+/-200μmの断面をもつ正方形断面チャネルから構成され、患者の骨に接触するようになっている部分11Bと、
-血管再生ネットワークを備えず、従ってより良好な耐性のために(微小多孔質のみを有し)チャネルを有さない、ボア25を囲む表面部11Cである。
【0046】
本発明に係る構造は、セラミック材料を層毎に作る任意の製造方法により得ることができる。
【0047】
ラピッドプロトタイピング、特にステレオリソグラフィが、その方法の例である。この方法は、当業者に知られており、詳細な説明は、特許文献2及び特許文献3を参照することができる。
【0048】
簡単に説明すると、ペーストのステレオリソグラフィでは、例えば、以下の組成(全質量の%)を有するようにペーストが調製される。
セラミック 80
光硬化性バインダ 11.51
光開始剤 0.09
分散剤 1.1
可塑剤 7.3
【0049】
ここで、セラミックは、ヒドロキシアパタイト又はβ-TCP又はそれらの混合物である。光硬化性バインダは、ジエトキシル化Aビスフェノールジメタクリレート又は1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの、アクリレート樹脂であってよい。光開始剤は、アクリレートの重合に一般的に使用される光開始剤の中から選択される。特に、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンが注目される。有利には、分散剤はリン酸エステルである。可塑剤としては、グリコール類(例えば、ポリエチレングリコール)、フタル酸類(例えば、ジブチルフタレート)、及びグリセロールによって構成される群から1つ以上の薬剤を選択することができる。
【0050】
ペーストのステレオリソグラフィ装置では、まずプラットフォーム上にペーストを広げて均一な厚さの第1の層を形成する。この第1の層は、この層に定義されたパターンに従ってレーザー走査によって照射される。第1のペースト層は、レーザーによって照射されない、チャネルに相当する領域以外は、ペーストの光重合によって硬化する。その後、第2のペースト層が、第1の硬化した層の上に広げられる。この第2の層は、この層に定義されたパターンに従ってレーザー走査によって照射される。次いで、第2のペースト層は、チャネルに対応する領域を除いて、ペーストの光重合によって硬化する。次々に段を形成するために、これらの操作が繰り返される。
【0051】
形成された各層の厚さは25~100μm、すなわち50μmであり、層の数は製造される部品によることは明らかである。
【0052】
最後の層が光重合された後、こうして形成された圧粉部品を洗浄し、非重合の組成物を除去する。洗浄された圧粉部品は、熱処理(脱バインダ処理)し、次に焼結処理を施す。
【0053】
上記の具体例は、例示及び非限定の目的で提供されており、本発明の範囲から逸脱することなく変更が可能であることは明らかである。
【0054】
本発明の具体例を以下に示す。
[具体例1]
骨の表面の骨欠損(10;18)を補填するための合成ブロックにおいて、
前記合成ブロックが、前記骨欠損(10;18)を補填することが可能な形状を有し、前記骨欠損(10;18)に配置されたときに固定できる、セラミック材料の部品(11)によって構成され、
前記骨欠損(10;18)に前記部品(11)が配置されると細胞増殖のための血管再生を可能にする流体及び細胞が通ることができるように互いに連通するチャネルの3次元ネットワークが前記部品(11)内に少なくとも部分的に形成され、
前記骨欠損(10;18)に前記部品(11)が配置すされると、前記部品(11)に接触する前記骨欠損(10;18)の各表面上に前記チャネルが開口するようになっていることを特徴とする合成ブロック。
[具体例2]
前記セラミック材料が、少なくとも部分的に吸収性のセラミック材料、又は、非吸収性セラミック材料であることを特徴とする具体例1に記載された合成ブロック。
[具体例3]
前記セラミック材料が、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト、及びそれらの任意の割合の混合物から選択され、特に、100重量%に対して、40~100重量%のヒドロキシアパタイト、及び0~60重量%のβ-TCPから構成されていることを特徴とする具体例1又は具体例2に記載された合成ブロック。
[具体例4]
前記セラミック部品(11)は、その外側に、前記セラミック部品(11)と一体で、前記骨欠損(10;18)の外側の、修復する対象の骨の表面に当接するようになっている、少なくとも1つの安定化アイレット(13)を有し、
前記安定化アイレット(13)には、血管再生チャネルが設けられておらず、少なくとも1本の安定化ネジを通すために、少なくとも1つの穴(14)が貫通し、及び/又は、
少なくとも1つの安定化ネジ(26)を通すために、少なくとも1つの貫通穴(25)が、前記セラミック部品(11)を、前記骨欠損(10;18)の範囲を定める骨に接触するようになっている表面から、前記骨欠損(10;18)の内部に配置された前記部品(11)の位置を考慮した場合に開放側になる表面へと貫通し、
前記部品(11)には、少なくとも前記解放側表面の周辺部において、前記穴(25)を囲む領域に血管再生チャネルが設けられていないことを特徴とする、具体例1から具体例3までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例5]
前記部品(11)には、前記骨欠損(10;18)内に配置された前記部品(11)の位置を考慮した場合に開放側になる表面の領域に血管再生チャネルが設けられていないことを特徴とする具体例1から具体例4までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例6]
血管再生チャネルが、変化する断面を有し、直線状又は非直線状であり、前記骨欠損(10;18)に接触するようになっている前記部品(11)の表面の反対側が開口しているか又は開口していないことを特徴とする具体例1から具体例5までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例7]
血管再生系を形成する前記チャネルが、1辺が250~600μmで許容差が200μmの正方形断面を有することを特徴とする具体例1から具体例6までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例8]
血管再生系を形成する前記チャネルが、前記骨欠損(10;18)を定める骨に接触するようになっている前記部品(11)の領域では、より大きな断面を有し、すなわち、1辺が400~600μmで許容差が200μmの正方形断面のチャネルであり、前記部品の芯部チャネルが、1辺がより小さい正方形断面チャネルであり、
又は、前記骨欠損(10;18)に接触するようになっている前記部品(11)の1つ以上の領域内では、前記血管再生系を形成する前記チャネルの密度がより高いことを特徴とする具体例1から具体例7までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例9]
前記部品(11)を構成する前記セラミック材料が、体積比5~30%の粒間微小多孔質を有し、微小孔の大きさが0.1~10μmであることを特徴とする具体例1から具体例8までのいずれか一項に記載された合成ブロック。
[具体例10]
具体例1から具体例9までのいずれか一項に記載されたような合成ブロックを製造する方法において、
-補填する対象の骨欠損(10;18)を有する、患者の骨の3次元画像を取得するステップと、
-コンピュータ支援設計を用いて、前記骨欠損(10;18)に対応する形状を有し、血管再生チャネルを有し、且つ、前記合成ブロックを製造する際のセラミックの収縮を考慮して前記骨欠損(10;18)より僅かに大きいサイズを有する合成ブロックの計算モデルを設計するステップと、
-前記骨欠損(10;18)内に前記合成ブロックの安定性を確実にするために、前記合成ブロックの前記計算モデルを、コンピュータ支援設計によって変更するステップと、
ステレオリソグラフィ、又は3Dプリント、又は付加製造方法の技術によって、所望の前記合成ブロックを製造するステップとを含むことを特徴とする方法。