(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】半結晶性熱可塑性ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 297/00 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
C08F297/00
(21)【出願番号】P 2019503510
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(86)【国際出願番号】 US2017042732
(87)【国際公開番号】W WO2018022366
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エンドレ・シュローミ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・エム・バージリ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エフ・ウェンデル
(72)【発明者】
【氏名】キム・エル・ウォルトン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・シー・マンロー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・アール・マーチャンド
(72)【発明者】
【氏名】エドモンド・エム・カーナハン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507583(JP,A)
【文献】特表2010-523793(JP,A)
【文献】特開平05-320468(JP,A)
【文献】特開平05-280735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 297/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第1のポリオレフィンAブロックと、
(B)
1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマーおよび1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーからなる群から選択されるポリオレフィンBブロックと、
(C)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第2のポリオレフィンAブロックと、を含む、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
AおよびBブロックは互いに結合してポリマーを形成し、前記ポリマーにおいて、前記第1および第2のポリオレフィンAブロックは、ポリオレフィンBブロックに結合されていて、かつポリオレフィンBブロックによって分離されて
おり、但しα-オレフィンはエチレンでなく1-ブテンでない、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマー。
【請求項2】
(A)
1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマーおよび1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーからなる群から選択される第1のポリオレフィンBブロックと、
(B)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含むポリオレフィンAブロックと、
(C)
1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマーおよび1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーからなる群から選択される第2のポリオレフィンBブロックと、を含む、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
BおよびAブロックは互いに結合してポリマーを形成し、前記ポリマーにおいて、前記第1および第2のポリオレフィンBブロックはポリオレフィンAブロックに結合されていて、かつポリオレフィンAブロックによって分離されて
おり、但しα-オレフィンはエチレンでなく1-ブテンでない、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマー。
【請求項3】
前記ポリオレフィンBブロックが、
-20℃未満のガラス転移温度(T
g)を有する、請求項1または2に記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマー。
【請求項4】
前記ポリオレフィンBブロックが、エチレンおよび1-ブテンを含む、請求項1または2に記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマーを含む組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物を含む物品。
【請求項7】
射出成形品、またはキャストフィルムもしくはブローフィルムの形態の請求項6に記載の物品。
【請求項8】
半結晶性熱可塑性ポリオレフィンABAブロックコポリマーを作製するためのプロセスであって、前記プロセスが以下のステップ:
(A)重合条件下で1-ブテンを高圧反応器に供給して、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)の第1のAブロックを製造するステップと、
(B)共重合条件下で前記反応器にエチレンおよび/または第2の
α-オレフィンを加えて、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/
α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/
α-オレフィンターポリマーのBブロックを形成し、それは前記第1のAブロックに結合されて、ABブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)エチレンおよび/または第2の
α-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを反応器に供給し続けて、iPBの第2のAブロックを形成し、それがBブロックに結合されて、ABAブロックコポリマーを形成するステップと、
を含
み、但しα-オレフィンはエチレンでなく1-ブテンでない、プロセス。
【請求項9】
半結晶性熱可塑性ポリオレフィンBABブロックコポリマーを作製するためのプロセスであって、前記プロセスが以下のステップ:
(A)共重合条件下で反応器に1-ブテンおよびエチレンおよび/または第2の
α-オレフィンを供給して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/
α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーの第1のBブロックを形成するステップと、
(B)エチレンおよび第2のα-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを前記反応器に供給し続けて、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)のAブロックを形成し、それは
Bブロックに結合されて、BAブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)共重合条件下で前記反応器にエチレンおよび/または第2の
α-オレフィンの添加を再開して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/
α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/
α-オレフィンターポリマーの第2のBブロックを形成し、それは前記Aブロックと結合されて、前記BABブロックコポリマーを形成するステップと、
を含
み、但しα-オレフィンはエチレンでなく1-ブテンでない、プロセス。
【請求項10】
前記ポリオレフィンBブロックが、
-20℃未満のガラス転移温度(T
g)を有する、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリオレフィンBブロックが、エチレンおよび1-ブテンを含む請求項8~10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ブロックコポリマーと、かかるコポリマーを含む組成物と、かかるコポリマーを作製するためのプロセスとに関する。
【背景技術】
【0002】
US2010/0063213(A1)は、低分子量希釈剤とブレンドされた、狭い分子量分布のホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、およびグラフトコポリマーを含むゲル繊維およびフィルム組成物を記載している。しかしながら、より良好な弾性ヒステリシスを有するポリオレフィンエラストマーは依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、本発明は、高い引張強度と他の望ましい物理的性質、例えば高い破断点伸びおよび/または高い弾性回復とを兼ね備えている半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーである。半結晶性コポリマー内では、結晶性ドメインはアイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)、Aまたはハードブロックから構成され、一方、非晶質または半結晶性セグメント、Bまたはソフトブロックは1-ブテンおよびエチレンまたは第2のアルファ-のコポリマー、または1-ブテン、エチレン、および第2のアルファ-オレフィンのターポリマーから構成される。一実施形態では、2つのAブロックは、Bブロックに結合されているか、またBブロックによってお互いから分離されており、すなわちABAブロックターポリマーまたはより高次のポリマー、例えばABABテトラブロックコポリマーまたはABABAペンタブロックコポリマーである。一実施形態では、2つのBブロックは、Aブロック、すなわちBABブロックターポリマーまたはBABAテトラブロックコポリマーまたはBABABペンタブロックコポリマーなどの高次ポリマーによって互いに結合され、互いに分離されている。得られるセグメント化コポリマーの望ましい性質は、個々のブロックのブレンドから得られるものよりも優れている。
【0004】
一実施形態では、本発明は:
(A)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第1のポリオレフィンAブロックと、
(B)エチレンおよび/もしくはアルファ-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含むポリオレフィンBブロックと、
(C)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第2のポリオレフィンAブロックと、含む、半結晶性の熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
AおよびBブロックは互いに結合してポリマーを形成し、そのポリマーにおいて、第1および第2のポリオレフィンAブロックは、ポリオレフィンBブロックに結合されていて、かつポリオレフィンBブロックによって分離されている、半結晶性の熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーである。
【0005】
一実施形態では、本発明は、
(A)エチレンおよび/もしくはアルファ-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含む第1のポリオレフィンBブロックと、
(B)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含むポリオレフィンAブロックと、
(C)エチレンおよび/もしくはアルファ-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含む第2のポリオレフィンBブロックと、を含む、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
BおよびAブロックは互いに結合してポリマーを形成し、そのポリマーにおいて、第1および第2のポリオレフィンBブロックは、ポリオレフィンAブロックに結合されていて、かつポリオレフィンAブロックによって分離されている、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーである。
【0006】
一実施形態では、本発明は、ABAまたはBABのいずれかの最小ブロック配列を含む半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーを含む組成物である。
【0007】
一実施形態では、本発明は、半結晶性の熱可塑性ポリオレフィンABAブロックコポリマーを作製するためのプロセスであり、そのプロセスは以下のステップ:
(A)重合条件下で1-ブテンを高圧反応器に供給して、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)の第1のAブロックを製造するステップと、
(B)共重合条件下で反応器にエチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンを加えて、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/アルファ-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/アルファ-オレフィンターポリマーを形成し、それは第1のAブロックに結合されて、ABブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)エチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを反応器に供給し続けて、iPBの第2のAブロックを形成し、それはBブロックに結合されて、ABAブロックコポリマーを形成するステップと、を含む。
【0008】
一実施形態では、本発明は、半結晶性の熱可塑性ポリオレフィンBABブロックコポリマーを作製するためのプロセスであり、そのプロセスは以下のステップ:
(A)共重合条件下で反応器に1-ブテンおよびエチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンを供給して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/アルファ-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/アルファ-オレフィンターポリマーの第1のBブロックを形成するステップと、
(B)エチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを反応器に供給し続けて、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)のAブロックを形成し、それはBブロックに結合されて、BAブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)共重合条件下で反応器にエチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンの添加を再開して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/アルファ-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/アルファ-オレフィンターポリマーの第2のBブロックを形成し、それはAブロックと結合されて、BABブロックコポリマーを形成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】主にアイソタクチックなポリ(1-ブテン)の分岐CH
2領域の例示の
13CNMRスペクトルである。このスペクトルは、低レベルのトライアドをメソッド開発のために明確に観察できるようにするために2560スキャンで取得された。これは、例の中の典型的な試料の分析に使用されるスキャン数の8倍である。
【
図2】主にアイソタクチックなポリ(1-ブテン)の分岐CH
2領域の例示の
13C NMRスペクトルである(Tetsuo,A.;Demura,M.;Yamamoto,K.;Chujo,R.“Polymerization Mechanism and Conformation of Poly(1-butene),”Polymer 1987,28,1037-1040から採用した)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
反対に記述されない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは重量を基準とし、全ての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のため、任意の参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるあらゆる定義と矛盾しない程度に)および当該技術分野における一般的知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0011】
本明細書に開示されている数値範囲は、下限値および上限値を含む下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値(例えば、1もしくは2、または3~5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6等)。
【0012】
「重合条件」、「共重合条件」、および類似の用語は、適切な活性剤を使用して反応器領域に入るプロ触媒を活性化するプロセスパラメータを指しており、それは、金属中心において開放配位部位をもたらし、それにより配位重合または共重合が開始される。これらの条件としては、例えば、圧力、温度、試薬およびポリマーの濃度、滞留時間および分布が挙げられ、組成、分子量、分子量分布(多分散指数、PDIとしても知られている)、およびポリマー構造に影響を与える。
【0013】
「ポリマー」は、同一の種類または異なる種類であるかに関わらず、重合モノマーによって調製される化合物であり、重合形態で、ポリマーを成す複数ならびに/または反復「単位」もしくは「構造単位」を提供する。したがって、一般的なポリマーという用語は、用語ホモポリマーを含み、通常は、ただ1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために使用し、コポリマーという用語は、通常は、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために使用し、ターポリマーという用語は、通常は、3つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために使用した。さらに、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーも包含する。
【0014】
「ブロックコポリマー」、「ブロックポリマー」および類似の用語は、類似のモノマー基から誘導された単位がポリマー鎖中で一緒になって、例えば、モノマーAおよびB基から誘導された単位が一緒になってAAAABBBB、またはABA、またはBAB等の立体配置を有するポリマーを形成するポリマーを意味している。ブロックコポリマーの各ブロックは、単一のモノマー、例えばエチレン、もしくは1-ブテン等から誘導された単量体単位を含むことができ、またはブロックは、2つ以上のモノマー、例えば1-ブテンおよびエチレン、または1-ブテンおよび1-ヘキサンおよび/または1-オクテンから誘導された単量体単位を含むことができる。
【0015】
硬質(結晶性)ブロックA
ブロックAはアイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)であり、それは、(>)90%を超えるメソトライアドパーセント(mm%)のアイソタクチシティを有する。Aブロックの融解温度(Tm)は変化し得るが、典型的には60~120℃、または70~110℃、または75~100℃である。Aブロックの融解エンタルピー(ΔHm)は変化し得るが、典型的には、室温(23℃)でのエージング1週間後に測定すると5~120J/g、または8~90J/g、または10~40J/gである。Aブロックの重量平均分子量(Mw)は広範に変動し得るが、典型的には1モル当たり8,000~90,000グラム(g/mol)、または15,000~70,000g/mol、または25,000~60,000g/molである。Aブロックの数平均分子量(Mn)も広範に変動し得るが、典型的には1モル当たり5,000~50,000グラム(g/mol)、または8,000~40,000g/mol、または10,000~30,000g/molである。Aブロックの多分散指数(PDI、すなわちMw/Mn)もまた広範に変動し得るが、典型的には1~3、または1.1~2、または1.3~1.8である。一実施形態では、本発明の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは、Bブロックによって分離されかつBブロックに結合された少なくとも2つのAブロックを有し、各Aブロックは、分子量および/またはPDIが同じでも異なっている場合がある。一実施形態では、本発明の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは、2つのBブロックを分離しているただ1つのAブロックを有する。
【0016】
軟質(非晶質または半結晶性)ブロックB
ブロックBは、1-ブテンと1つ以上のエチレンおよび/もしくは1つ以上の第2のアルファ-オレフィンのコポリマーまたはターポリマーを含む。第2のアルファ-オレフィンは、典型的には3~12個の炭素原子、より典型的には3~10個の炭素原子、さらにより典型的には3~8個の炭素原子を有する。代表的な第2のアルファ-オレフィンとしては、プロピレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。一実施形態では、Bブロックは1-ブテンとエチレンとからなる。一実施形態では、Bブロックは、1-ブテンとエチレンとからなり、以下の特性:非晶質-0℃未満、好ましくは-20℃未満、より好ましくは-40℃未満のガラス転移温度(Tg)、半結晶性-(<)25%のエチレン結晶化度(Tm<80℃)、好ましくは<20%のエチレン結晶化度(Tm<70℃)、より好ましくは<15%のエチレン結晶化度(Tm<50℃)を有する。一実施形態では、Bブロックは1-ブテンと第2のアルファ-オレフィンとからなる。一実施形態では、Bブロックは、1-ブテン、エチレン、および第2のアルファ-オレフィンからなる。
【0017】
Bブロック中の1-ブテンの量は広範に変動し得るが、典型的にはBブロックは、15~90重量%(wt%)、より典型的には30~80重量%、さらにより典型的には40~65重量%の1-ブテンを含む。
【0018】
Bブロックの重量平均分子量(Mw)は広範に変動し得るが、典型的には20,000~300,000g/mol、または30,000~200,000g/mol、または65,000~120,000g/molである。Bブロックの数平均分子量(Mn)も広範に変動し得るが、典型的には1モル当たり10,000~250,000グラム(g/mol)、または20,000~150,000g/mol、または40,000~75,000g/molである。BブロックのPDIもまた広範に変動し得るが、典型的には1~3、または1~2、または1~1.5である。
【0019】
Bブロックのブテン結晶化度は常にAブロックのブテン結晶化度よりも低い。一実施形態では、Bブロックは、-20℃未満、より典型的には-40℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質である。
【0020】
一実施形態では、本発明の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは、2つのAブロックに結合され、かつ2つのAブロックを分離する少なくとも1つのBブロックを含有する。一実施形態では、本発明の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは、Aブロックによって分離されかつAブロックに結合された少なくとも2つのBブロックを有し、各Bブロックは、分子量および/またはPDIが同じでも異なっている場合がある。一実施形態では、本発明の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは2つ以上のBブロックを含有し、BブロックはAブロックと交互になっていてABABまたはBABA立体配置を有するブロックポリマーを形成する。各Bブロックは、分子量および/またはPDIが同じでも異なっている場合がある。
【0021】
半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマー
本発明のポリオレフィンブロックコポリマーは、ABAまたはBABブロック構造を含む。一実施形態では、ブロックコポリマーはABAブロック構造を有するターポリマーである。一実施形態では、ブロックコポリマーは、BABブロック構造を有するターポリマーである。一実施形態では、ブロックコポリマーは、ABABまたはBABAブロック構造を有するテトラブロックコポリマーである。一実施形態では、ブロックコポリマーは、ABABAまたはBABABブロック構造を有するペンタブロックコポリマーである。
【0022】
本発明のブロックコポリマーの重量平均分子量(Mw)は広範に変動し得るが、典型的には40,000~500,000g/mol、または50,000~350,000g/mol、または100,000~250,000g/molである。ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)も広範に変動し得るが、典型的には1モル当たり20,000~350,000グラム(g/mol)、または30,000~250,000g/mol、または70,000~160,000g/molである。ブロックコポリマーのPDIもまた広範に変動し得るが、典型的には1~3、または1~2、または1.3~2である。
【0023】
本発明のブロックコポリマー中のAブロック対Bブロックの相対量は広範に変動し得るが、典型的にはAブロック対Bブロックの重量比は、ブロックコポリマーの重量に基づいて4:96~70:30、または15:85~60:40、または30:70~45:55である。
【0024】
ポリオレフィンブロックコポリマーを作製するためのプロセス
一実施形態では、ABAブロックターポリマーは三段階プロセスで作製され、その第1のステップは、1-ブテンを重合条件下で高圧反応器に供給して、所望のMw、Mn、および/またはPDIで第1のAブロック(iPB)を製造することを含む。第2のステップは、エチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンを共重合条件下で反応器に添加して(1-ブテンはなお反応器内に存在しているか、かつ/または追加の1-ブテンを反応器に供給しながら)、第1のAブロックの活性末端からの鎖延長によりBブロックを成長させることを含む。第3のステップは、反応器へのエチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィン供給の添加を停止することと、必要ならば、未反応のエチレンおよび/または第2のアルファ-オレフィンを反応器からパージすることと、を含むが、重合条件下で1-ブテンの供給を続けて、Bブロックの活性末端から第2のAブロックを成長させることと、を含む。最終ブロックポリマーは従来の装置およびプロトコルを使用して回収する。BABブロックコポリマーを製造するための方法は、第1のBブロックを最初に作製し、続いてAブロックを作製し、続いて、すなわち必要な変更を加えて、第2のブロックを作製する。
【0025】
本発明のコポリマーは、適切な触媒(例えば、メタロセン、サレン型等)を使用して低温(<0℃)で溶液リビング重合によって製造することができ、その触媒は、高いタクチシティ(mm%>90%、好ましくは>96%)を有するiPB(Aブロック)およびエチレンまたは第2のアルファオレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマー(Bブロック)を、Parr反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、またはループ型反応器中でリビング様式で製造することができる。これは実施例で例示する方法である。
【0026】
あるいは、本発明のブロックコポリマーは、2つの触媒と鎖シャトリング剤との組み合わせを使用して高温溶液プロセス(>120℃)で製造することができる。両方の触媒は鎖シャトリングすることができ、一方はiPB(Aブロック)を製造し、他方はBブロックを製造する。AおよびBブロックは別々の反応器で製造される。トリブロックについては、一連の3つの反応器(Parr反応器、CSTR、またはループ型反応器)を使用することができる。
【0027】
高温溶液重合を使用する他の可能な方法は、適切な触媒(例えばCGC触媒)を使用して高いアイソタクチシティおよび高い鎖末端不飽和を有するiPBの合成を含み、続いて、二重結合を官能化し(例えばアミン官能基を導入し)、得られたポリマーを適切な官能化軟質コポリマー(例えば無水マレイン酸-グラフト化エチレン-オクテン(EO)コポリマー)とカップリングさせる一連のステップを含む。
【0028】
用途
本発明の熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーは、そのままで、または射出成形部品、キャストフィルムもしくはブローフィルムにおける配合ブレンドとして使用することができる。得られるセグメント化コポリマーの望ましい性質は、個々のブロックのブレンドから得られるものよりも優れている。代表的な最終用途としては、エアベッド、医療用クッション、人工皮革(スポーツバッグ、室内装飾品)、キャップライナー、医療用および他のチューブ、グリップ、蓋、おもちゃ、歯ブラシ、弾性フィルム(おむつ等)が挙げられるが、それらに限定されない。追加の用途は、米国特許第7,858,706号および米国特許第7,893,166号に記載されている。
【0029】
具体的な実施形態
試験方法
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
試料調製および試料注入のためのロボットアシスタントデリバリー(RAD)システムを備えた高温三重検出器ゲル透過クロマトグラフィー(3D-GPC)システムを使用した。濃度検出器は、赤外線濃度検出器(Polymer Char Inc.,Valencia,Spainから入手したIR4)であった。他の2つの検出器は、1)Agilentから入手したPrecision Detectors 2-アングルレーザー光散乱検出器、Model 2040、および2)Viscotek(Houston、TX)から入手した4-キャピラリー示差粘度計検出器、Model 150Rであった。光散乱検出器の15度の角度を絶対分子量計算のために使用した。
【0030】
データ収集は、Polymer Char DM100データ収集ボックスを使用して実行した。クロマトグラフィーおよび試料調製の溶媒は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)であった。TCBを窒素でスパージした。カラムは4つのOlexis 13ミクロンカラムまたは4つのMixed A LS 20umカラムであった。注入量は200μlであり、流量は1.0mL/分であった。カラム区画は150℃で運転された。固体試料はTCB中1~2mg/mLの濃度で作製し、溶液試料を1~2mg/mLを標的にしてTCBで希釈した。HT GPCを実行する前に、全ての試料をパーライト層を通して熱時ろ過して、色および/または触媒残留物を除去した。
【0031】
GPCカラムセットの較正は、21の狭い分子量分布、580~8,400,000g/molの範囲の分子量を有するポリスチレン標準物で行った。ポリスチレン標準ピーク分子量を、以下の式を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams,T.and Ward,I.M.“The Construction of a Polyethylene Calibration Curve for Gel Permeation Chromatography Using Polystyrene Fractions”J.Polym.Sci.,Polym.Let.1968,6,621.)
Mpe=A(Mps)B(等式1)
式中、B=1.0であり、Aの実験的に決定された値は約0.38である。
【0032】
5次多項式を使用して、等式1から得られたそれぞれのポリエチレン当量較正点を、各ポリスチレン標準についてそれらの観察された溶出体積に適合させた。数平均分子量および重量平均分子量(それぞれMnおよびMw)を以下の式に従って計算した。
【0033】
【0034】
WfiおよびMiは、それぞれ溶出成分iの重量分率および分子量である。正確なA値は、等式3を使用して計算された線状PEホモポリマー標準(Dow 53494-38-4)のMwが115,000g/molのその既知のMwと一致するまで等式1におけるその値を調整することによって決定された。多分散指数(PDI)はMw/Mnとして表した。従来のGPC結果はこの方法で決定した。
【0035】
絶対分子量は、以下の式を使用して、LSおよびIR4濃度検出器によって決定した。
【0036】
【0037】
【0038】
はLS検出器の応答面積、
【0039】
【0040】
はIR4検出器の応答面積、KLSは機器定数であり、既知の濃度の標準(NBS 1475)と、重量平均分子量の証明された値(52,000g/mol)とを使用して決定した。
【0041】
組成検出器(IR5)は、重合された1-ブテンコモノマー由来のメチル基、および重合されたエチレンおよび1-ブテンコモノマーの両方由来のメチレン/メチン基の炭素-水素結合伸縮の赤外応答を測定する。メチルおよびメチレンの赤外応答の比を使用して、各溶出体積におけるブテン含有量を決定した。IR5検出器組成モードは、13C NMR分光法によって測定された既知の1-ブテン含有量を有するモーダルポリ(エチレン-コ-1-ブテン)ランダムコポリマーで較正した。検量線は、ピーク位置でのメチル対メチレンの応答比を各試料についての1-ブテンの重量パーセントに一次フィッティングすることによって作成した。
【0042】
特徴付けられた各試料の各溶出成分におけるコモノマーの重量%は、メチル対メチレン応答の測定された比と、確立された検量線とを使用して計算し、同じ溶出成分の分子量は先に考察したようにして計算した。各溶出成分における分子量およびコモノマー含有量を二次元プロットとしてプロットした。
【0043】
炭素13核磁気共鳴(13C NMR)
試料調製
試料は、0.025MのCr(acac)3を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50(重量基準)混合物約2.7gを、NMRチューブ内のポリマー試料0.10~0.25gに添加することによって調製した。加熱ブロックおよびヒートガンを使用して、チューブおよびその内容物を約145℃まで加熱することによって、試料を溶解し均質化させた。各試料を目視検査して、均質性を確実にした。
【0044】
データ取得パラメータ
データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えた、Bruker 400MHz分光計を用いて収集した。320スキャン、6秒のパルス繰り返し遅延(1.3秒および4.7秒 D1)、90度のフリップ角、および120℃の試料温度での逆ゲートデカップリングを使用してデータを取得した。すべての測定を、固定様式の非回転試料に対して行った。試料を、データ取得前に7分間熱平衡化した。13C NMR化学シフトを、11.0ppmにおけるmmmm+mmmrCH3(iPBホモポリマーの場合)または30.0ppmにおけるEEEトライアド(EBおよびブロックポリマーの場合)の内部標準とした。
【0045】
iPBホモポリマーの立体規則性に関するデータ分析
iPBホモポリマーについての立体規則性は、表1に示すように、13C NMRスペクトル(~26.5から28ppm)のC2分岐CH2領域から決めた(Tetsuo,A.;Demura,M.;Yamamoto,K.;Chujo,R.“Polymerization Mechanism and Conformation of Poly(1-butene),”Polymer 1987,28,1037-1040.)。データのフーリエ変換の前に、1.0Hzの線幅拡大を適用した。公称値を確立するために、~26.5から28ppmの全分岐CH2領域に関する積分値を100に設定した。次いで、以下の領域を積分した:mmmm=27.8~28.3ppm、mm=27.4~28.3ppm。
【0046】
【0047】
EBブロック中のコモノマー含有量に関するデータ分析
EBランダムコポリマーの1-ブテン含有量は、全ポリマー積分値(~40から10ppm)を値1000に設定し、全てのブテンメチルを~12から10ppmまで積分する簡便な方法を使用して決定した。次いで、1-ブテンの重量%およびモル%の値をこれら2つの積分値から直接計算した。この方法は、50モル%近くのコモノマー含有量を有するこれらの例における典型的なEB組成物に関しては正確である。いずれかのモノマーの量が5~10モル%未満であるときは、他の方法がより適する。
【0048】
ブロックコポリマーに関するデータ分析
ジブロック、トリブロック、およびテトラブロックコポリマーのスペクトルを、総重量%および総モル%の1-ブテンについて上記の方法を使用して分析した。存在するiPBの量は、27.9ppmでのmm分岐CH2の積分を使用して決定された。このピークはほとんどの試料で明確に十分に分離された。EB成分のエチレン含有量が高いために、アイソタクチックmmトライアドを作り出すのに必要な3単位以上の1-ブテン配列の数は非常に少なく、ゼロとして処理することができた。これら2つの積分から、完全なポリマー積分を1000に設定すると、EB値における重量%EB、重量%iPB、および重量%Bを容易に計算することができる。
【0049】
示差走査熱量測定(DSC)
ガラス転移温度(Tg)、融解エンタルピー(ΔHm )、および融解温度(Tm)をDSCによって測定した。ポリマーを製造してから約1週間後に、TA Instruments Q2000 DSCを使用して試料を分析した。試料を圧縮成形されたフィルムから切断した。約5mgのポリマーをアルミニウム皿に置き、アルミニウム蓋でキャップした。試料を10℃/分で-100℃に冷却し、次いで10℃/分で180℃に加熱し、10℃/分で-100℃に冷却し、そして10℃/分で180℃に加熱することによって分析した。そのデータをTA Universal Analysisソフトウェアを使用して分析した。Tgは、変曲法を用いて、第1の熱サイクルデータを使用して測定した。融解エンタルピー(ΔHm)および融解温度(Tm)は、第1のヒートサイクルデータを使用して測定した。
【0050】
引っ張り測定は、2インチ/分の伸長速度でタイプVの試料形状を有するASTM D638を使用してINSTRON(商標)4201で測定した。報告されている値はすべて、2~3の試料バーの平均を表しており、特に記載のない限り、工学的応力および歪みに関して記録してある。試料を約150℃で圧縮成形し、試験前に約7日間周囲条件でエージングさせた。引っ張りヒステリシス測定は、同じ試料形状を用いて2インチ/分の速度でロード/アンロードサイクル間に緩和期間なしで300%の伸びで実施した。最初のロード/アンロードサイクル中に観察されたエネルギー損失率と引張セットは、[{(第1の応力-歪み伸張曲線下の面積)-(第1応力-歪み収縮曲線下の面積)}/(第1の応力-歪み伸張曲線)で決定した。報告された値はすべて3つの試料バーの平均である。INSTRON(商標)試料ホルダーにロードして荷重をゼロにした後の試験片における残留「たるみ」から生じる応力応答のわずかな遅延(典型的には<10%歪み)は、報告されている引張セット値で補正された。圧縮永久歪みはASTM D395Bに準拠して測定した。試料の量が限られていたため、4つの1インチ×1/16インチ(直径×厚さ)の試料を重ねて得られた約1インチ×0.25インチ(直径×厚さ)の試験片を利用するように手順を変更した。試験片を、24時間、23℃および70℃において、それらの初期厚さの25%だけ圧縮した。報告値はすべて単一の試験片から得られた。引張セットは、第1の収縮サイクルの際に応力がゼロの値に戻ったときの歪み%として報告した。
【0051】
極限引張強度は、ASTM D638(Type V)に準拠して測定した。
【0052】
破断点伸びは、ASTM D638(Type V)に準拠して測定した。
【0053】
ヤング率は、ASTM D638(Type V)に準拠して測定した。
【0054】
100%での引張強度は、ASTM D638(Type V)に準拠して測定した。
【0055】
300%での引張強度は、ASTM D638(Type V)に準拠して測定した。
【0056】
材料
クロロベンゼン(HPLCグレード、99.9%)およびトルエンをAldrichから入手し、乾燥窒素でスパージすることによって脱気し、使用前にモレキュラーシーブおよび活性アルミナビーズ上で乾燥させた。活性アルミナビーズ(F-200、1/8インチビーズサイズ、BASF製)をCoastal Chemicalから入手し、250℃で数日間乾燥させ、次いで使用前に乾燥窒素雰囲気下で貯蔵した。メタノールはAldrichから購入し、そのまま使用した。トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(FAB)、トリチルテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボレート、および配位子1の合成のための試薬は、商業的供給源から入手し、そのまま使用した。配位子1は、報告されている手順に従って合成した(Cohen,A.;Kopilov,J.;Lamberti,M.;Venditto,V.;Kol,M.Macromolecules 2010,43,1689-1691)。
【0057】
プロ触媒2は、各重合運転の直前に配位子1とテトラベンジルチタンとを混合することによってその場で調製した。比較例においてポリマーブレンドを調製するために使用されるiPBサンプルの合成のために使用されるプロ触媒3は、Kissounko,D.A.;Fettinger,J.C.;Sita,L.R.“Structure/Activity Relationships for the Living Ziegler-Natta Polymerization of 1-Hexene by the Series of Cationic Monocyclopentadienyl Zirconium Acetamidinate Complexes”Inorg.Chim.Acta 2003,345,121-129において記載されている一般的な合成法を使用して、合成した。プロ触媒2に関する1H NMRデータは、Jayaratne,K.C.;Sita,L.R.“Stereospecific Living Ziegler-Natta Polymerization of 1-Hexene”J.Am.Chem.Soc.2000,122,958-959において見出すことができる。
【0058】
空気に敏感な化合物は、グローブボックス内で乾燥窒素雰囲気下で操作し、-30℃で保存した。モノマーはAirgasから入手した(エチレン:99.9%、1-ブテン:99.95%、グレード3.5)。1-ブテンモノマーを、使用前に窒素下で250℃で両方とも乾燥させたモレキュラーシーブおよびSELEXSORB(商標)CD(BASFから入手可能な、含酸素炭化水素、メルカプタン、および窒素ベースの分子を含む、いくつかの極性有機化合物に最適な吸着を提供するようにカスタマイズされた滑らかで球形の吸着剤)の両方を含有する精製床に通した。触媒の空気および湿気に敏感な性質を考えると、乾燥溶媒および試薬は加圧窒素を使用して重合反応器に供給し、反応器内容物が常に酸素および水分にさらされないように特別な注意を払った。
【0059】
【0060】
テトラベンジルチタンの合成(TiBn4)
窒素が充填されたドライボックス中でBnMgCl(120mL、91.2mmol、Et2O中0.76M)を琥珀色の瓶において-30℃に冷却した。TiCl4(4.325g、22.8mmol)を40mLのペンタン中に溶解し、その溶液を-30℃に冷却した。撹拌しながら、冷TiCl4溶液を冷BnMgCl溶液にゆっくり加えた。冷ペンタン(40mL)を加え、深紅色の混合物を-30℃で2時間撹拌した。その反応混合物を濾過し、フィルターケーキを冷ペンタンですすいだ。合わせた濾液をポンプで汲み出してやや粘着性の赤色物質を得、それを20mLのペンタンと一緒に粉砕し、-30℃に冷却し、濾過し、真空乾燥した。粉砕した固体は1H NMRにより不純な生成物を示した。ペンタンとの粉砕をさらに2回繰り返し、純粋な所望の生成物を収率30%で得た。
【0061】
1H NMR(400MHz,C6D6)δ7.08(m,8H),6.95(m,4H),6.61(m,8H),2.81(s,8H).
【0062】
反応器のセットアップ
高圧Parr反応器をこれらの実施例に使用した。主要な反応器の仕様は以下の通りである:
600mLのParr反応器
Siemens PCS-7制御システム
溶媒充填シリンダー(600mL)
触媒充填シリンダー(60mL)
モノマー特異的質量流量制御
圧力制御
内部冷却コイル
グリコール冷却器/バンドヒーター制御(-20~200℃)
ガラス製ケトルダンプタンク(Glass kettle dump tank)
2000psigラプチャーディスクとノックアウトポット
【0063】
内部冷却コイルおよび撹拌機が総反応器容量のいくらかを占めていたという事実により、重合溶液は250mLに制限され、高温洗浄は運転間で400mLに制限された。運転および洗浄のために使用された溶媒を乾燥状態に保ち、かつ酸素を含まないように保つために、各溶媒を窒素でパージされたグローブボックスの内側のシリンダーに充填し、加圧窒素を使用してシリンダーから反応器に加えた。
【0064】
プロ触媒2を使用するポリマー合成-一般的な手順
iPBブロックの合成
重合は、Siemensプロセス制御システムによって制御され、内部冷却コイルを備えた600ミリリットル(mL)のParr反応器内で行った。窒素で加圧された溶媒シリンダーから反応器にクロロベンゼン(200mL)を加えた。撹拌機を700回転毎分(rpm)で回転させ、反応器を冷却器を使用して約-7℃に冷却した。1-ブテンモノマーを毎分1800ミリグラム(mg/分)で加えた。FAB活性化剤を10mLのクロロベンゼン中に溶解し、窒素で加圧された小型ボンベを介して反応器に加えた。20mLのクロロベンゼン中TiBn4と混合された配位子1の新鮮な溶液を、窒素で加圧された同じ小型ボンベを介して反応器に加えた。ボンベは20mLのクロロベンゼンでフラッシュした。反応器内容物は特定の時間撹拌してiPBブロックを製造した。
【0065】
エチレン/1-ブテン(EB)ブロックの合成
EBブロックの添加による鎖延長を達成するために、反応器をエチレンで迅速に設定圧力まで加圧し、次いでエチレンを毎分0.2グラム(g/分)で流すことによって圧力を維持することにより、エチレンも反応器に加えた。目標圧力を維持するために設定値を超える圧力上昇があった場合にはベントバルブを開くように制御した。特定のブロック長を有するEBブロックの合成が完了したら、エチレン流を止め、反応器を窒素で迅速にパージして溶液から残留エチレンを除去した。これは、反応器を迅速にベントし、次いで反応器の底部に達するまでチューブを通して窒素で約50ポンド/平方インチ(psig)(344.74キロパスカル(kPa))まで反応器を加圧し、再び迅速にベントした。
【0066】
第3ブロック(iPB)の合成
エチレン流を遮断し、溶液を窒素で迅速にパージした後、一般に、重合中に消費され、かつ窒素パージ中に失われた量を補うために追加の1-ブテンを加えた。反応を特定の時間進行させることにより、第3ブロック(iPB)の成長による鎖延長が促進された。
【0067】
GPC分析のための反応器からのサンプリング
サンプルのターンアラウンドを加速するために、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析のためのサンプルを調製する次の方法を開発した。各重合反応混合物を、200パーツパーミリオン(ppm)のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)抑制剤を含有する1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)30mL中に直接サンプリングした。より高いポリマー濃度に起因するより高い変換率では、より少ない試料体積が必要とされた。次に、触媒分解生成物に起因するオレンジ色を除去するために、TCB溶液を少量のシリカゲル(約100~200mg)と混合し、撹拌しながら30分間90℃に加熱した。次いで撹拌を停止し、シリカゲルを沈殿させた。得られた無色の液相を1ミクロンのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターを備えたシリンジ中へデカントし、迅速にバイアル中へ濾過した。このようにして得られた溶液は、さらに濾過することなくGPC分析に適しており、それによりGPCターンアラウンドタイムは劇的に加速した。ポリマー全体が溶液相状態であることを確実にするために、溶液をGPCバイアルに移す前に試料は加熱することが必要であった。
【0068】
最終ポリマー生成物の単離
反応器を600mLのメタノール中にドレーンすることによって最終ポリマー生成物を単離した。そのポリマー沈殿物を濾過し、真空下130℃で一晩乾燥させた。各重合の後に、乾燥した脱気トルエン(400mL)を使用して170℃で約50psig(344.74kPa)の圧力下で最低4時間高温洗浄した。
【0069】
本発明の実施例1~3
3つ全ての本発明の実施例(IE)は、上記の一般的方法に従って調製されたiPB-EB-iPBトリブロックコポリマーであった。全ての試料は、機械的試験の前に25℃で4週間エージングした。特定の運転の詳細およびポリマー特性決定データを表2に報告する。
【0070】
【0071】
比較例(CE)1~3
プロ触媒2を使用するランダムポリ(エチレン-コ-1-ブテン)コポリマー(EB)の合成
窒素で加圧された溶媒シリンダーからクロロベンゼン(200mL)を反応器に加えた。撹拌機を700rpmで回転させ、反応器を冷却器を使用して約-7℃に冷却した。1-ブテンモノマーを1800mg/分で加えた。FAB活性化剤を、10mLのクロロベンゼン中に溶解し、窒素で加圧された小型ボンベを介して反応器に加えた。20mLのクロロベンゼン中TiBn4と混合された配位子1の新鮮な溶液を、窒素で加圧された同じ小型ボンベを介して反応器に加えた。ボンベは20mLのクロロベンゼンでフラッシュした。反応器をエチレンで50psig(344.74kPa)まで迅速に加圧した。圧力を維持するためにエチレン流を0.2g/分に設定した。目標圧力を維持するために設定値を超える圧力上昇があった場合にはベントバルブを開くように制御した。反応器内容物を90分間撹拌してEB試料を製造した。特定の運転の詳細およびポリマー特性決定データを表3に報告する。
【0072】
【0073】
プロ触媒3を使用したiPBホモポリマーの合成
重合は、Siemensプロセス制御システムによって制御され、内部冷却コイルを備えた600mLのParr反応器内で行った。220mLのクロロベンゼン中トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート活性化剤の溶液を、窒素で加圧された溶媒シリンダーから反応器に加えた。撹拌機を700rpmで回転させ、反応器を冷却器を使用して約-6℃に冷却した。1-ブテンモノマーを1800mg/分で加えた。15mLのクロロベンゼン中プロ触媒3溶液を、窒素で加圧された小型ボンベを介して反応器に加えた。ボンベは15mLのクロロベンゼンでフラッシュした。反応器内容物を25時間撹拌してiPBホモポリマーを製造した。特定の運転の詳細およびポリマー特性決定データを表4に報告する。
【0074】
【0075】
比較例1(CE-1)(iPB/EBの20/80 w/wブレンド)
iPBホモポリマー(20kg/mol、2.38PDI、96%[mm]、85%[4m])と、ランダムポリ(エチレン-コ-1-ブテン)(EB)コポリマー(189kg/mol、1.56PDI、57重量%1-ブテン)との20/80ブレンドを、2つのポリマーを熱トルエン中に溶解させ、メタノール中で沈殿させ、真空下で乾燥させることによって調製した。そのブレンドは、65重量%の総1-ブテン組成を有する(13C NMR)。引張試験片を圧縮成形によって調製し、その試料を、室温で28日間エージングした後、2インチ/分の伸張速度でASTM D638(Type V)に準拠して測定した。試料を300%まで伸張させた後、ヒステリシスおよび引張セットを記録した。データを表5に報告する。
【0076】
比較例2(CE-2)(iPB/EBの25/75 w/wブレンド)
iPBホモポリマー(20kg/mol、2.38PDI、96%[mm]、85%[4m])と、ランダムポリ(エチレン-コ-1-ブテン)(EB)コポリマー(189kg/mol、1.56PDI、57重量%1-ブテン)との25/75ブレンドを、2つのポリマーを熱トルエン中に溶解させ、メタノール中で沈殿させ、真空下で乾燥させることによって調製した。そのブレンドは67重量%の総1-ブテン組成を有する(13C NMR)。引張試験片を圧縮成形によって調製し、その試料を、室温で28日間エージングした後、2インチ/分の伸張速度でASTM D638(Type V)に準拠して測定した。試料を300%まで伸張させた後、ヒステリシスおよび引張セットを記録した。データを表5に報告する。
【0077】
比較例3(CE-3)(iPB/EBの40/60 w/wブレンド)
iPBホモポリマー(20kg/mol、2.38PDI、96%[mm]、85%[4m])と、ランダムポリ(エチレン-コ-1-ブテン)(EB)コポリマー(189kg/mol、1.56PDI、57重量%1-ブテン)との40/60ブレンドを、 2つのポリマーを熱トルエン中に溶解させ、メタノール中で沈殿させ、真空下で乾燥させることによって調製した。そのブレンドは74重量%の総1-ブテン組成を有する(13C NMR)。引張試験片を圧縮成形によって調製し、その試料を、室温で28日間エージングした後、2インチ/分の伸張速度でASTM D638(Type V)に準拠して測定した。試料を300%まで伸張させた後、ヒステリシスおよび引張セットを記録した。データを表5に報告する。
【0078】
【0079】
結果の考察
表5は、実施例1~3および比較例1~3に関する機械的試験データを示している。iPB-EB-iPBトリブロックコポリマー(実施例1~3)は、ホモポリマーのブレンド(比較例1~3)よりも著しく高い伸びを示し、それは、ブレンドよりもはるかに伸張性があることを示している。この弾性により、表5に示したヒステリシスおよび引張セット値が得られ、それらは良好な弾性回復を意味している。比較例は、脆すぎて弾性ヒステリシス試験中に破損した。
【0080】
この理論に束縛されるものではないが、本発明の実施例の弾性結果は、部分的には、iPBブロックの低いクリープ特性から導かれると考えられる。当業者に知られているように、iPBは、他の半結晶性ポリオレフィンと比較して良好な耐クリープ性を有し得るが、その良好な耐クリープ性は高いアイソタクチシティを必要とする。
本出願は、例えば以下の発明もまた提供する。
[1] (A)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第1のポリオレフィンAブロックと、
(B)エチレンおよび/もしくはα-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含むポリオレフィンBブロックと、
(C)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含む第2のポリオレフィンAブロックと、を含む、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
AおよびBブロックは互いに結合してポリマーを形成し、前記ポリマーにおいて、前記第1および第2のポリオレフィンAブロックは、ポリオレフィンBブロックに結合されていて、かつポリオレフィンBブロックによって分離されている、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマー。
[2] (A)エチレンおよび/もしくはα-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含む第1のポリオレフィンBブロックと、
(B)アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)を含むポリオレフィンAブロックと、
(C)エチレンおよび/もしくはα-オレフィン/1-ブテンコポリマーまたはターポリマーを含む第2のポリオレフィンBブロックと、を含む、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマーであって、
BおよびAブロックは互いに結合してポリマーを形成し、前記ポリマーにおいて、前記第1および第2のポリオレフィンBブロックはポリオレフィンAブロックに結合されていて、かつポリオレフィンAブロックによって分離されている、半結晶性熱可塑性ポリオレフィンブロックコポリマー。
[3] 前記ポリオレフィンBブロックが、20℃未満のガラス転移温度(T
g
)を有する、[1]または[2]に記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマー。
[4] 前記ポリオレフィンBブロックが、エチレンおよび1-ブテンを含む、[1]または[2]に記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマー。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の半結晶性熱可塑性ポリオレフィンポリマーを含む組成物。
[6] [5]に記載の組成物を含む物品。
[7] 射出成形品、またはキャストフィルムもしくはブローフィルムの形態の[6]に記載の物品。
[8] 半結晶性熱可塑性ポリオレフィンABAブロックコポリマーを作製するためのプロセスであって、前記プロセスが以下のステップ:
(A)重合条件下で1-ブテンを高圧反応器に供給して、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)の第1のAブロックを製造するステップと、
(B)共重合条件下で前記反応器にエチレンおよび/または第2のα-オレフィンを加えて、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーのBブロックを形成し、それは前記第1のAブロックに結合されて、ABブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)エチレンおよび/または第2のα-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを反応器に供給し続けて、iPBの第2のAブロックを形成し、それがBブロックに結合されて、ABAブロックコポリマーを形成するステップと、を含む、プロセス。
[9] 前記半結晶性熱可塑性ポリオレフィンBABブロックコポリマーを作製するためのプロセスであって、前記プロセスが以下のステップ:
(A)共重合条件下で反応器に1-ブテンおよびエチレンおよび/または第2のα-オレフィンを供給して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーの第1のBブロックを形成するステップと、
(B)エチレンおよび第2のα-オレフィンの添加を停止し、重合条件下で1-ブテンを前記反応器に供給し続けて、アイソタクチックポリ(1-ブテン)(iPB)のAブロックを形成し、それはAブロックに結合されて、BAブロックコポリマーを形成するステップと、
(C)共重合条件下で前記反応器にエチレンおよび/または第2のα-オレフィンの添加を再開して、1-ブテン/エチレンコポリマー、1-ブテン/α-オレフィンコポリマー、または1-ブテン/エチレン/α-オレフィンターポリマーの第2のBブロックを形成し、それは前記Aブロックと結合されて、前記BABブロックコポリマーを形成するステップと、を含む、プロセス。
[10] 前記ポリオレフィンBブロックが、20℃未満のガラス転移温度(T
g
)を有する、[8]または[9]に記載のプロセス。
[11] 前記ポリオレフィンBブロックが、エチレンおよび1-ブテンを含む[8]~[10]に記載のプロセス。