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特許7059265(1R,3R)-および(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】(1R,3R)-および(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/487 20060101AFI20220418BHJP
   C07C 61/40 20060101ALI20220418BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
C07C51/487
C07C61/40
C07B57/00 346
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019519378
(86)(22)【出願日】2017-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017055699
(87)【国際公開番号】W WO2018071320
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】62/406,972
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ナキエン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ファンチェン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182670(JP,A)
【文献】特開平8-59517(JP,A)
【文献】特開平9-143101(JP,A)
【文献】Tetrahedron,2009年,Vol. 65,pp. 10552-10564
【文献】西郷和彦,光学分割機構の解明とそれに 基づく非天然型光学活性体の 開発・応用,有機合成化学協会誌,2006年,Vol. 64, No. 12,pp. 1240-1250
【文献】酒井健一、櫻井ルミ子,キラル医薬品製造技術の進歩 ―― 分子認識を制御する新しい光学分割技術――,群馬パース大学紀要,No. 23,2018年,pp. 3-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/487
C07C 61/40
C07B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-2Aまたは式1-2B
【化5】
[式中、
(A) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(B) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(C) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(D) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(E) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、そして
(G) Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される]
の(1R,3R)-または(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法であって、
a) 式1-1
【化1】
[式中、R 、R 、R 、R 、R およびX は、上記に定義されているとおりであり、以下の式についても同義である]
のトランス-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパン-カルボン酸のラセミ混合物を、式2-1または2-2
【化2】
[式中、XはC-Cアルキルおよびベンジルからなる群から選択される]
のエナンチオマーアミンで処理して、混合物を形成する工程、
b) 前記混合物から、式3-1Aまたは式3-1B、
【化3】
あるいは式3-2Aまたは式3-2B、
【化4】
のジアステレオマーアミン塩を単離する工程、および
c) 式3-1Aまたは3-1B、あるいは式3-2Aまたは3-2Bの前記の単離されたジアステレオマーアミン塩を酸で処理して、式1-2Aまたは式1-2Bの前記(1R,3R)-または前記(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸を提供する工程:
を含む、方法
【請求項2】
0.4ないし0.7モル当量の、式2-1または2-2の前記エナンチオマーアミンは、式1-1の前記トランス-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパン-カルボン酸の前記ラセミ混合物と混合される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式3-1Aまたは式3-1B、あるいは式3-2Aまたは式3-2Bの前記ジアステレオマーアミン塩を単離する工程は、瀘過または遠心分離により、前記の粗反応混合物から前記ジアステレオマーアミン塩を分離する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
およびRはHである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
はH、FおよびClからなる群から選択され、RはFまたはClであり、そしてRはF、Clおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式2-2の前記エナンチオマーアミンは(L)-ロイシンアミドである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
式2-1の前記エナンチオマーアミンは(D)-フェニルアラニンアミドである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
式2-2の前記エナンチオマーアミンは、(L)-フェニルアラニンアミドである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
a) 式4-2
【化6】
のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-カルボン酸のラセミ混合物を、式2-2A
【化7】
のエナンチオマーアミンで処理して、混合物を形成する工程、
b) 前記混合物から、式4-3
【化8】
のジアステレオマーアミン塩を単離する工程、および
c) 式4-3の前記の単離されたジアステレオマーアミン塩を酸で処理して、式4-1の(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸を提供する工程:
を含む、式4-1
【化9】
の(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2016年10月12日に出願された、米国仮特許出願第62/406972号の優先権の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本願は、(1R,3R)-および(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法に関する。より具体的には、本願は、ラセミ体のトランス-2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸を、その(1R,3R)-および(1S,3S)-エナンチオマーに化学的に分割する方法に関する。本方法は前記ラセミ酸をキラルアミンで処理して結晶質のジアステレオマーアミン塩を形成し、次いで前記ジアステレオマーアミン塩を酸で処理して、分割された(1R,3R)-または(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸を生成する工程を伴う。
【発明の概要】
【0003】
本開示の定義
以下の定義は、特記されない限り、特定の事例に限定された、本明細書全体に使用されるとおりの用語に適用される。
【0004】
本明細書で使用される用語「フェニル」は、本明細書ではPhとも呼ばれる、6個の炭素原子の芳香族炭素環式基を表わす。前記フェニル上の好ましい置換基は、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、C-C-ハロアルキルを含む。
【0005】
本明細書で使用される用語「ベンジル」は、前記フェニル基上に置換基をもたない、PhCH-基を表わす。
【0006】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、分枝または非分枝炭化水素鎖を意味する。
【0007】
本明細書で単独に、または別の基の一部として使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素(Cl)、臭素(Br)、フッ素(F)およびヨウ素(I)を表わす。
【0008】
本明細書で使用される用語「エナンチオマー過剰(ee)」は、キラル物質に対して使用される純度の指標である。それは、あるサンプルが他方のサンプルより多量の、一方のエナンチオマーを含む度合いを示す。ラセミ混合物は0%のeeを有し、他方、単一の完全に純粋なエナンチオマーは100%のeeを有する。
【0009】
本明細書で使用される用語「分割する」および「分割」は立体異性体のラセミ混合物が個々のエナンチオマーに分離される化学的工程またはプロセスを表わす。
【0010】
本開示の詳細な説明
本願の方法は以下に詳細に説明される。
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、
(A) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(B) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(C) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(D) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(E) Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、SF、(C-C)アルキルおよび(C-C)ハロアルキルからなる群から選択され、
(F) Xは、C-Cアルキルまたはベンジルからなる群から選択され、そして
(G) Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される]。
【0013】
スキーム1において、式1-1の前記(±)トランス-ラセミ体[すなわち、トランス-2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の(R,R)および(S,S)エナンチオマーの混合物]は、適当な溶媒中で、式2-1または式2-2の前記エナンチオマーアミンのいずれかである分割剤と混合されて、生成される混合物から選択的に結晶化または沈殿する、式3-1Aまたは式3-1B、
【0014】
【化2】
【0015】
あるいは式3-2Aまたは式3-2B、
【0016】
【化3】
【0017】
の前記ジアステレオマーアミン塩を提供する(前記方法の工程1)。次に、式3-1Aまたは式3-1B、あるいは式3-2Aまたは式3-2Bの前記ジアステレオマーアミン塩は、前記混合物から単離され、酸で処理されて、式1-2Aまたは式1-2Bそれぞれの前記(1R,3R)-または前記(1S,3S)-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸を提供する場合がある(前記方法の工程2)。
【0018】
その結果、上記に照らして、以下の実施態様(D)が想定される。
【0019】
1D. 前記ラセミ混合物を、式2-1の前記(R)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から、式1-2Aの前記2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1R,3R)-エナンチオマーを調製するプロセス。前記ラセミ混合物を、式2-1の前記(R)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から式1-2Aの前記2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1R,3R)-エナンチオマーを調製するプロセス。前記ラセミ混合物を、式2-1の前記(R)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から、その前記2,2-ジハロの前記ハロが同一ではない、式1-2Aの前記2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1R,3R)-エナンチオマーを調製するプロセス。
【0020】
2D. 前記ラセミ混合物を、式2-2の前記(S)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から、式1-2Aの前記2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1R,3R)-エナンチオマーを調製するプロセス。
【0021】
3D. 前記ラセミ混合物を、式2-1の前記(R)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から式1-2Bの前記2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1S,3S)エナンチオマーを調製するプロセス。
【0022】
4D. 前記ラセミ混合物を式2-2の前記(S)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から式1-2Bの前記2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1S,3S)エナンチオマーを調製するプロセス。前記ラセミ混合物を式2-2の前記(S)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から式1-2Bの前記2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1S,
3S)エナンチオマーを調製するプロセス。前記ラセミ混合物を、式2-2の前記(S)-エナンチオマーアミンである分割剤で処理する工程を含む、式1-1の前記ラセミ混合物から、その前記2,2-ジハロの前記ハロが同一ではない、式1-2Bの前記2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸の前記(1S,3S)エナンチオマーを調製するプロセス。
【0023】
5D. 式1-1の前記ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパンカルボン酸に対する前記プロセスの工程1において使用される式2-1または式2-2の前記分割剤のモル当量は、約0.4ないし約0.8、好ましくは約0.5ないし約0.7の範囲にある場合がある。
【0024】
6D. 前記プロセスの工程1に使用のための溶媒は、それらに限定はされないが、アセトニトリル(CHCN)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール(EtOH)、酢酸エチル(EtOAc)およびそれらの混合物のようなプロトン性および非プロトン性溶媒を含む場合がある。更に、例えば、EtOAc-ヘプタン、IPA-ヘプタン、等のような極性および非極性溶媒を含む溶媒系もまた使用される場合がある。
【0025】
7D. 前記プロセスの工程1における式1-1の前記(±)-トランス-ラセミ混合物の濃度は、約0.05モルないし約1.00モル、好ましくは約0.25ないし約0.60モルの範囲にある場合がある。
【0026】
8D. 前記プロセスの工程1は、室温(RT)より上で開始し、次にRTに、またはRTより下に冷却する工程を含む、約20ないし約100℃または約10ないし約80℃の範囲の温度で実施される場合がある。前記プロセスは約1時間ないし約20時間の期間にわたり実施される場合がある。
【0027】
9D. 前記プロセスの工程1は通常、大気圧下で実施されるが、約1気圧ないし約10気圧の範囲の気圧下で実施される場合がある。
【0028】
10D. 前記プロセスの工程2において、前記の酸は塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)および硝酸(HNO)を含む群から選択される場合がある。
【0029】
11D. 前記プロセスの工程1において、式2-2の前記エナンチオマーアミンである分割剤は、式2-2Aの化合物、(L)-ロイシンアミド:
【0030】
【化4】
【0031】
である。
【0032】
12D. 前記プロセスの工程1において、式2-1の前記エナンチオマーアミンであ
る分割剤は、式2-1Aの化合物、(D)-フェニルアラニンアミド:
【0033】
【化5】
【0034】
である。
【0035】
13D. 前記プロセスの工程1において、式2-2の前記エナンチオマーアミンである分割剤は、式2-2Aの前記化合物、(L)-フェニルアラニンアミド:
【0036】
【化6】
【0037】
である。
【0038】
14D. a)式4-2
【0039】
【化7】
【0040】
のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-カルボン酸のラセミ混合物を、式2-2A
【0041】
【化8】
【0042】
のエナンチオマーアミンで処理して、混合物を形成し、
b) 前記混合物から、式4-3
【0043】
【化9】
【0044】
のジアステレオマーのアミン塩を単離し、そして
c) 式4-3の、前記の単離されたジアステレオマーのアミン塩を酸で処理して、式4-1の前記(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸を提供する工程:
を含む、式4-1
【0045】
【化10】
【0046】
の(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸の製造方法。
【0047】
実施態様1Dないし14Dはどんな組み合わせで使用されてもよい。
【実施例
【0048】
以下の実施例は説明の目的のためのものであり、本開示を、これらの実施例中に開示される実施態様のみに限定するものと解釈してはならない。
【0049】
発売元から得られた出発材料、試薬および溶媒は、更に精製せずに使用された。融点は補正されていない。「室温」を使用する実施例は、約20℃ないし約24℃の範囲の温度を有する気候調節実験室内で実施された。分子は、Accelrys Draw,ChemDrawまたはACD Name Pro内の命名プログラムに従って命名された、それらの知られた名称を与えられる。これらのプログラムが、ある分子を命名することができない場合は、そのような分子は従来の命名法を使用して命名される。別記されない限り、1H NMRスペクトルデータはppm(δ)で表され、300,400,500または600MHzにおいて記録され、13C NMRスペクトルデータはppm(δ)で表され、75、100または150MHzにおいて記録され、そして19F NMRスペクトルデータはppm(δ)で表わされ、そして376MHzにおいて記録された。
【0050】
エナンチオマー過剰値(ee%)は以下の通りのキラルHPLC法により決定された:カラム:CHIRALPAKZWIX(+)、粒度3μm、寸法3mm×150mm、DAIC 511584、500mLのアセトニトリル、500mLのメタノール、20mLの水、1.9mLのギ酸および2.6mLのジエチルアミンの混合物である移動相、流速:0.5mL/分、時間:9分、温度:25℃。
【0051】
前記の分割された(1R,3R)-および(1S,3S)-2,2-ジクロロ-3-(置換フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の単離収率は、前記の分割に使用された出発ラセミ混合物のトランス-2,2-ジハロ-3-(置換フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸混合物の総重量に基づく。
【実施例1】
【0052】
(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の、(L)-ロイシンアミドによる分割
【0053】
【化11】
【0054】
アセトニトリル(20mL)中の(L)-ロイシンアミド(163mg、1.25ミリモル)とラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル
)シクロプロパン-1-カルボン酸(750mg、2.5ミリモル)との混合物を、60℃で0.5時間撹拌した。固体が堆積を開始した後に、前記混合物を室温に4時間放置した。前記白色固体を回収し、最少量のアセトニトリルで洗浄し、乾燥した:H NMR(400MHz、DMSO-d)δ7.81(s,1H),7.53(t,J=1.9Hz,1H),7.43(d,J=1.9Hz,2H),7.31(s,1H),3.58-3.44(m,1H),3.27(d,J=8.6Hz,1H),3.08(d,J=8.6Hz,1H),1.68(dt,J=13.3,6.6Hz,1H),1.49(dt,J=10.1,6.8Hz,2H),0.89(t,J=6.7Hz,6H)。
【0055】
前記白色固体の塩をEtOAcで希釈し、1NのHClおよび生理食塩水で洗浄した。その有機層をNaSO上で乾燥し、瀘過し、濃縮すると白色固体として前記主題生成物を与えた:(202mg、91%ee、27%収率);H NMR(300MHz,CDCl)δ7.36(t,J=1.9Hz,1H),7.17(dd,J=1.9,0.7Hz,2H),3.48-3.37(m,1H),2.87(d,J=8.3Hz,1H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d)δ166.28,136.40,133.39,127.27,127.04,61.36,37.10,35.98.LCMS m/z=298.9[M+H]。
【実施例2】
【0056】
(R,R)-トランス-2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を提供するためのラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の(L)-ロイシンアミドによる分割
【0057】
【化12】
【0058】
アセトニトリル(20mL)中の(L)-ロイシンアミド(0.45g、3.5ミリモル)とラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-カルボン酸(1.41g、5ミリモル)との混合物を、60℃で0.5時間撹拌した。固体が堆積し始めた後に、前記混合物を室温に4時間放置した。前記白色固体を回収し、最少量のアセトニトリルで洗浄し、乾燥した:1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.81(s,1H),7.53(t,J=1.9Hz,1H),7.43(d,J=1.9Hz,2H),7.31(s,1H),3,58-3.44(m,1H),3.27(d,J=8.6Hz,1H),3.08(d,J=8.6Hz,1H),1.68(dt,J=13.3,6.6Hz,1H),1.49(dt,J=10.1,6.8Hz,2H),0.89(t,J=6.7Hz,6H)。
【0059】
前記白色固体の塩をEtOAcで希釈し、1NのHClおよび生理食塩水で洗浄した。前記有機層をNaSO上で乾燥し、瀘過し、濃縮すると、白色固体として前記主題生成物を与えた:(640mg,91%ee、45%収率);1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.29(s,1H),7.72(dd,J=7.1,2.1Hz,1H),7.56-7.32(m,2H),3.46(d,J=1.0Hz,2H);19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ-117.35。
【実施例3】
【0060】
(R,R)-トランス-2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の、(L)-ロイシンアミドによる分割
【0061】
【化13】
【0062】
アセトニトリル(20mL)中、(L)ロイシンアミド(326mg、2.5ミリモル)とラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-カルボン酸(1.5g、5ミリモル)との混合物を60℃で0.5時間撹拌した。固体が堆積し始めた後に、前記混合物を室温に4時間放置した。前記固体を回収し、最少のアセトニトリルで洗浄し、乾燥した:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.72(s,1H),7.64(d,J=2.1Hz,1H),7.60(d,J=8.3Hz,1H),7.34(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),7.31-7.26(m,1H),3.48(dd,J=8.2,6.2Hz,1H)3.26(d,J=8.6Hz,1H),3.03(d,J=8.7Hz,1H),1.74-1.57(m,1H),1.47(ddd,J=14.6,7.7,6.1Hz,2H),0.89(t,J=6.9Hz,6H)。
【0063】
前記白色固体の塩をEtOAcで希釈し、1NのHClおよび生理食塩水で洗浄した。前記有機層をNaSO上で乾燥し、瀘過し、濃縮すると白色固体として前記主題生成物を与えた:(560mg、96%ee、36%収率);H NMR(500MHz,DMSO-d)δ13.39(s,1H),7.76(d,J=2.1Hz,1H),7.64(d,J=8.3Hz,1H),7.44(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),3.49(s,2H)。13C NMR(126MHz,DMSO)δ166.34,133.35,130.47,130.33,130.09,129.77,128.81,61.43,37.00,36.06.LCMS m/z=298.9[M+H]。
【実施例4】
【0064】
(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の、(L)-ロイシンアミドによる分割
【0065】
【化14】
【0066】
アセトニトリル(800mL)中の、(L)-ロイシンアミド(15.6g、120ミリモル)とラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(63.4g、200ミリモル)との混合物を60℃で1時間撹拌した。固体が堆積し始めた後に、前記混合物を室温に4時間放置した。前記固体を回収し、最少量のアセトニトリルで洗浄し、乾燥すると、白色固体として(L)ロイシンアミドとトランス-(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレートとの塩を与えた:(38.9g、95%ee、43%);H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.80(s,1H),7.73(m,Hz,2H),7.49(dd,J=10.7,8.6Hz,1H),7.31(s,1H),3.53(dd,J=7.9,6.4Hz,1H),3.34(d,J=8.6Hz,1H),3.07(d,J=8.6Hz,1H),1.77-1.60(m,1H),1.60-1.40(m,2H),0.89(t,J=6.7Hz,6H);19F NMR(376MHz,DMSO)δ-59.88,-117.93。
【0067】
前記白色固体の塩をEtOAcで希釈し、1.5NのHClおよび水で洗浄した。前記有機層をNaSO上で乾燥し、瀘過し、濃縮すると白色固体として前記主題生成物を与えた:(27.3g、95%ee、43%収率);H NMR(400MHz,DMSO-d)δ13.24(s,1H),8.03-7.71(m,2H),7.54(dd,J=10.6,8.7Hz,1H),3.65-3.51(m,2H);19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ-59.93,-117.06;LCMS m/z=316[M-H]。
【実施例5】
【0068】
(R)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレートを提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸
の(R)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド((D)-フェニルアラニン)による分割
【0069】
【化15】
【0070】
磁石撹拌機付きフラスコ中のアセトニトリル(20mnL)中、2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(1.58g、5.0ミリモル)と(R)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(411mg、2.5ミリモル)との混合物を60℃に加熱した。生成された懸濁物を60℃で10分間撹拌し、次に室温に冷却した。前記混合物を1晩撹拌した。前記生成物を瀘過し、アセトニトリルで洗浄し、次に大気中、そして35℃の真空オーブン内で乾燥すると、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(710mg、1.475ミリモル、29.5%収率)を白色固体として与えた。キラルHPLC分析は、SS/RRの前記比率が6/93(86%ee)であることを示した。
【実施例6】
【0071】
(S)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(1S,3S)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレートを提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の(S)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミドによる分割
【0072】
【化16】
【0073】
磁石撹拌機付きフラスコ中のアセトニトリル(ACN、20mL)中、ラセミ混合物の2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(1.58g、5.0ミリモル)と(S)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(411mg、2.5ミリモル)との混合物を60℃に加熱した。生成された懸濁物を60℃で10分間撹拌し、次に室温に冷却した。前記混合物を1晩撹拌した。前記生成物を瀘過し、ACNで洗浄し、次に大気中、そして35℃の真空オーブン内で乾燥すると、(S)-2-アミノ-3-フェニルプロパンアミド(1S,3S)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(669mg、1.390ミリモル、27.8%収率)を白色固体として与えた。前記キラルHPLCは、SS/RRの前記比率が96/3(93%ee)であることを示した。
【0074】
比較例(CE)
[実施例CE-1]
(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル-)フェニル)シクロプロパンカルボン-1-カルボキシレートを提供するための、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸の、(S)-1-フェニルエタン-1-アミンによる分割
【0075】
【化17】
【0076】
手順A: 磁石撹拌機付きフラスコ中の、アセトニトリル(20mL)中の2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(1.58g、5ミリモル)と(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(303mg、2.5ミリモル)との混合物を60℃に加熱した。前記の生成された懸濁物を60℃で10分間撹拌し、次にRTに冷却した。前記混合物を1晩撹拌した。前記生成物を瀘過し、アセトニトリルで洗浄し、次に大気中、そして次に35℃の真空オーブン内で乾燥すると、(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(649mg、1.481ミリモル、29.6%収率)を白色固体として与えた。キラルHPLC分析は、SS/RRエナンチオマーの前記比率が45/54(9%ee)であることを示した。
【0077】
手順B: 磁石撹拌機付きフラスコ中の、アセトン(6mL)中の、ラセミ混合物の2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(0.95g、3ミリモル)と(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(195mg、1.5ミリモル)との混合物を50℃に加熱した。前記の生成された懸濁物を50℃で10分間撹拌し、次にRTに冷却した。前記混合物を1晩撹拌した
。前記生成物を瀘過し、アセトンで洗浄し、次に大気中、そして次に35℃の真空オーブン内で乾燥すると、(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(228mg、0.5ミリモル、16.6%収率)を白色固体として与えた。キラルHPLC分析は、SS/RRの前記比率(28/71:43%ee)を示した。
【0078】
実施例CE-1(手順AおよびB)は、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸から前記(1R,3R)-エナンチオマーを分割するために、アセトニトリルおよびアセトン溶媒それぞれ中の前記分割剤(S)-1-フェニルエタンアミンの使用を示す比較例を説明する。この分割剤は、Tetrahedron:Asymmetry 2011,22,pages26-30中に記載された通りに使用されて、シクロプロパンカルボン酸化合物、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-メチルシクロプロパンカルボン酸、式CE-2の化合物、のラセミ混合物から前記(1S,3R)エナンチオマーを順調に分割した。2回の再結晶化の後に、CE-2の前記の分割(1S,3R)エナンチオマーは92%のeeを伴って23%の収率で調製された。
【0079】
【化18】
【0080】
実施例CE-1(手順AおよびB)に記載の通りに、ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を、前記(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレートに分割するために、分割剤(S)-1-フェニルエタンアミンが使用された場合、それぞれ9%および43%のみのeeを伴うサンプルを提供する、それぞれ29.6%および16.6%の収率の前記(1R,3R)-エナンチオマーが得られた。
【0081】
唯一回の分割サイクルを使用し、そして更なる精製を伴わずに、分割剤(L)-ロイシンアミドにより(実施例4)ラセミ混合物のトランス-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を分割するための本願の方法を使用すると、43%の収率で、非常に高いエナンチオマー過剰(95%ee)における(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸が得られた。
【0082】
本発明は、本明細書に詳細に示された特定の実施態様に関して説明されてきたが、このような実施態様は、本発明の一般的原則の説明により提示されており、そして本発明はそれらに限定されないことは理解されなければならない。あらゆる与えられた材料、製造工程または化学式、における特定の改変物およびバリエーションは、本発明の真意(true spirit)および範囲から逸脱せずに当業者に対して容易に明白であると考えられ、そしてすべてのこのような改変物およびバリエーションは、以下の請求項の範囲内に
入ると考えられなければならない。