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▶ オステル アクチボラグの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220418BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20220418BHJP
   G01N 29/12 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61B5/00 101R
A61C19/04 Z
G01N29/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019538739
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2017055969
(87)【国際公開番号】W WO2018060923
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】1616548.2
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519113446
【氏名又は名称】オステル アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】OSSTELL AB
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】メレディス、ニール
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-506371(JP,A)
【文献】特表2006-519642(JP,A)
【文献】特表2003-524475(JP,A)
【文献】特表2006-527627(JP,A)
【文献】特開昭57-020257(JP,A)
【文献】米国特許第04799498(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
G01N 29/00-29/52
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の質と、密度と、強度とのうちの1つ以上を測定する装置の作動方法であって、
前記装置が、測定される前記骨における予め穿孔された開口部に配置されている長尺状のプローブ物理的に振動するように前記長尺状のプローブを励起させる励起工程と、
前記装置が、前記プローブの共振周波数を観測する観測工程と
前記装置が、前記骨の前記質と、前記密度と、前記強度とのうちの1つ以上を決定するように前記共振周波数を解析する解析工程とを備える方法。
【請求項2】
前記励起工程、前記観測工程、および前記解析工程は、インプラントが前記骨に挿入されていない状態で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装置が、得られた出力共振周波数、解析前に増幅るか、フィルタ処理るか、またはその両方う工程をさらに備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記解析は前記装置の中央処理ユニットによって開始され、前記中央処理ユニットは不揮発性メモリをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ルックアップテーブル、較正データ、またはその両方が前記不揮発性メモリ上に提供され、前記不揮発性メモリ上の情報は、前記共振周波数の解析中、前記中央処理ユニットによってアクセスされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記装置が、計算された前記質と、前記密度と、前記強度とのうちの1つ以上のグラフ表示生成する工程をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブには、前記プローブが前記開口部に挿入される深さを示すように前記プローブの長さに沿った印が提供されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブは、ねじ切り加工されているか螺旋状である外側プロファイルを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブの寸法およびプロファイルは、前記開口部を作り出すのに用いられるドリルビットの寸法およびプロファイルに一致する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記長尺状のプローブを励起するための励起手段は、前記プローブに結合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
励起手段は、直接前記プローブに対し作用するコイルを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨質、骨密度および/または骨強度を測定する方法に関し、詳細には、顎および歯科インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラントは、クラウン、ブリッジまたは義歯を固着する手段として顎骨に挿入される金属ねじの形態であることが多い。そうしたインプラントは、通常、ねじ切り加工されており、大抵はチタン、ジルコニアまたはそれらの合金からなり、インプラントの挿入前に骨に準備される穴に挿入される。インプラントの寸法の範囲は広く、典型的には3~10mmの直径および5~20mmの長さである。
【0003】
骨がインプラントの表面へと成長するため、挿入時のインプラントの固定および安定度はインプラントの成功に重要であり、この過程は、安定度が低い、すなわち固定が不十分である場合、またはヒーリング処理中に骨においてインプラントが動く場合には、妨げられる。
【0004】
取付可能な部材の共振周波数を測定することによって骨におけるインプラントの安定度を測定するための技術が存在する(メレディス(Meredith)およびコーリー(Cawley))。この技術は、配置時におけるインプラントの安定度を測定して基準測定値と比較することを、また配置後のヒーリング処理中の安定度の変化を測定することを意図したものである。しかしながら、この処理は骨においてin situであるインプラントについての情報しか与えない。
【0005】
骨質は、質(1~4 4=悪い)と量(A~E E=悪い)との観点から主観的に分類されている(レックホルム(Lekholm)およびザーブ(Zarb))。明らかに、質に関する何らかの決定は、外科手術前にX線透視法によって、また外科手術の時に目視検査によってなされ得る。しかしながら、いずれの時にも、質に関する定量的な情報を取得することは非常に困難である。
【0006】
骨は、異方性の、また時には直行異方性の挙動を有する複雑かつ不均質な構造材料である。特徴として、図1に示されるように、骨には大きく2つの種類、すなわち皮質骨と海綿骨がある。皮質骨は、大抵、骨の外層であり、密度が高く、比較的少数の血管しか有しない。この層の厚さは様々であり、典型的には、上下顎において1mmと10mmとの間であってよい。海綿、すなわち骨の内側部は、はるかに軟質であり、大抵は骨髄空間と血液供給部とを含む。海綿は、皮質の内側の内部空間を占有する。海綿骨は、顔面骨には全く存在しない場合や、20mmまでである場合がある。
【0007】
これら2種類の骨の量、質および相対比率は、挿入されるインプラント、特に歯科インプラントの安定度を決定する。皮質骨の強度および弾性モジュラスは、典型的には、海綿骨の強度および弾性モジュラスよりも10倍大きい。したがって、皮質骨はインプラントの安定に重要であることが明らかである。また、インプラントが出口点において骨に穴を開け、それによって、神経、血管および洞を含む解剖構造を損壊する危険を冒す場合には、損傷の危険があるので、インプラントは骨の内側に配置されることが重要である。
【0008】
現在、インプラントの配置前に骨質を測定および予測する満足な方法はない。X線透視法の検査は、骨量および骨質の定性的な指標を与え、骨密度は、腫瘍を類別するのに用いられるハンスフィールドスケールに基づき、透視法から定量的に測定されることが可能である。しかしながら、この単一の値を潜在的なインプラントの安定度の尺度として解釈することは不可能である。
【0009】
限られた成功を伴って用いられてきた1つの方法は、インプラントの挿入中に用いられる挿入トルクまたはねじ切り荷重の測定である。これは、典型的には、インプラントを配置するために用いられる電動ハンドピースによって流れる逆EMFまたは電流を測定することにより行われる。そのデータは、典型的には、グラフとして提示される。この方法は、多くの重大な欠点を有し、例えば、インプラントが挿入される時にしか測定が行われず、その結果、インプラントの種類、形状または寸法の選択を手助けするために利用可能な情報は存在しない。追加の潜在的な問題は、挿入トルク測定に影響する多くの相関する要因があることであり、そうした要因には、インプラントの寸法および形状と、準備された穴の幅に対するインプラントの幅と、インプラントの進行を停止し得るフランジなどの幾何学的なフィーチャと、切削に由来する骨片および他の要因によって生じる摩擦と、が含まれる。これらの全てが相関し、そうした方法の下において骨質の真の測定を不可能とする。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明は、骨の強度を評価する方法を対象とし、その方法は、
評価される前記骨における予め穿孔された開口部に長尺状のプローブを配置する工程と、
物理的に振動するように前記長尺状のプローブを励起させる工程と、
前記プローブの共振周波数を観測する工程と、を備え、
前記共振周波数は、前記骨の質と、密度と、強度とのうちの1つ以上を決定するように解析が行われる。
【0011】
本発明において、開口部、または穴は、ドリルビットを用いて骨に穿孔されており、プローブは、任意のインプラントが挿入される前に穴に挿入される。これは、従事者が、インプラントの配置前に骨の強度および質を知ることを可能とする。結果として、骨の特性が正確に決定されることが可能であると、市場における利用可能な何千もの種類から、負荷に対する安定度および抵抗を増加するように、最適な設計、形状および寸法のインプラントを選択することが可能である。これは、より予測可能な信頼性のある、インプラントの挿入および保持を可能とする。
【0012】
本発明は、電気機械的に振動する診断プローブを用いる。これによって、プローブが骨における予め穿孔された穴に挿入される時に、その振動は周囲の骨によって機械的に減衰し、これは、振幅における減少、または代わりに部材の共振周波数におけるシフトとして測定されることが可能である。外部変数を制御し、それによって、インプラント部位になる開口部についての骨質および骨強度の真の定量的な測定を与えることが可能である。
【0013】
本発明において、プローブは片持ち梁として振る舞う。そうした片持ち梁の共振周波数は、その片持ち梁のモジュラス、長さおよび断面積の関数である。このようにして、プローブの共振周波数は、穴に挿入される深さと挿入部分の強度とによって決定される。
【0014】
好適には、方法は、前記解析が開始されると、前記骨から前記プローブを取り除く、さらなる工程を備える。骨が解析されると、要求されるインプラントが挿入されることを可能とするべく、プローブは骨における開口部から取り除かれる。プローブは、測定プローブとして用いられることが意図され、永久的または一時的に体内に挿入されることを意図される如何なるインプラント構成要素の一部も形成せず、その構成要素に取付けられることもない。ある状況においてはプローブがインプラントのように用いられることが可能であることも予想されるが、プローブは、より適切なインプラントが用いられることを可能とするように取り除かれることが好ましい。
【0015】
1つの構成では、プローブからの得られた出力信号は、解析される前に増幅されるか、フィルタ処理されるか、またはその両方が行われる。有利には、前記解析は中央処理ユニットによって開始され、前記中央処理ユニットは不揮発性メモリをさらに備え、また1つの構成では、ルックアップテーブル、較正データ、またはその両方が前記不揮発性メモリ上に提供され、前記不揮発性メモリ上の情報は、前記共振周波数の解析中、前記中央処理ユニットによってアクセスされる。較正情報および/またはルックアップテーブルを容易に提供することによって、有意義な結果を提供するように、情報は容易に解釈され処理されることが可能である。
【0016】
骨の解析が開始されると、計算された前記質と、前記密度と、前記強度とのうちの1つ以上のグラフ表示が生成されてよい。これは、操作者が骨構造の特性をより明確に理解することを可能とする。
【0017】
好適な構成では、前記プローブには、プローブが前記開口部に挿入される深さを示すように前記プローブの長さに沿った印が提供されている。プローブが挿入される深さの表示を有することによって、開口部へのインプラントの挿入前に、インプラントの長さが正確に測定されることが可能である。これは、インプラントが挿入される必要がある前に、インプラントが正確に寸法決定されることを可能とする。プローブは、パイロットドリルによって穿孔された深さまでの任意の深さに、パイロット穴へと繰り返し挿入されてよい。
【0018】
前記プローブは、ねじ切り加工されているか螺旋状である外側プロファイルを有することが有利である場合があり、また、前記プローブの寸法およびプロファイルは、前記開口部を作り出すのに用いられるドリルビットの寸法およびプロファイルに一致することがさらに有利である場合がある。プローブは、プローブと測定される周囲の骨との間に一定の強度を有するように設計される。これは、パイロットドリルの直径およびプロファイルをプローブの直径とプロファイルに一致させることによって達成され得る。これに加えて、またはこれに代えて、プローブはその長さに沿って滑らかであってよく、または、押すこと、回転またはその2つの組合せによる挿入を可能とする螺旋もしくはねじ切り加工されているプロファイルを有してよい。
【0019】
本発明は、本発明を実施するための装置とその装置のためのプローブとに及ぶ。
本発明の実施形態が、単に例示の目的で、添付の図面を参照してこれより記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】大きく2つの種類、すなわち皮質骨と海綿骨とがある骨を示す図。
図2】本発明の方法において使用するプローブを示す図。
図3】本発明において使用する構成の概略を示すダイアグラム。
図4】共振周波数と骨質との間の関係を示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2は、長尺状部分12と上部14とを備えるプローブ10を示す。上部には、プローブ10を励起するための活性化手段が提供され、そのプローブ10は、
a)上部16の周りに巻き付けられるか上部16に結合されるコイル16を備える直接的な電磁的接続部であって、そのコイルが励起を生じさせ、さらにプローブの応答を測定する、接続部
b)送信器および受信器として作用するようにプローブ10に取付けられ、また結合され得る圧電結晶を含む、直接的な圧電接続部18
c)上部14cに磁石または鉄材料22を備える間接的な電磁的接続部20であって、それによって、誘導効果を生じるように、プローブ10の極近くにおける遠隔コイル24によりプローブの一部または全部が励起され測定されることを可能とする、接続部
を含む。
【0022】
プローブ10は2つの端部、すなわち、第1の、取付具を有しない受動端部と、プローブ10を電気機械的に励起するように、また得られた共振周波数を測定するように、接続手段16,18および20を有する第2の端部14と、を有する。
【0023】
装置は、プローブ10と、そのプローブ10に直接的にまたは間接的に接続される励起手段とを備える。交流電流信号を励起手段に送る中央処理ユニット30が提供される。この信号の振幅、波形および特性は、励起手段に用いられる特定のトランスデューサの適切な要求に一致する。この信号は、中央処理ユニット30によってデジタル的に合成され、デジタル-アナログコンバータ32を通過する。
【0024】
プローブ10からの得られた出力信号は、フィルタ増幅34によって増幅され、フィルタ処理され、適切な状態になり、次いで中央処理ユニット30によって解析される。中央処理ユニット30は、操作者による解釈のために出力部38により提供される定量値またはグラフ表示を生成するために、測定されたデータと較正データ36とを比較するべく、ルックアップテーブルから情報を取得する。
【0025】
インプラント部位の準備中には、直径および/または長さが増加する複数のドリルビットが典型的には用いられる。これは、準備中の潜在的な位置整合を変更することと、小さい場面における切削による発熱を低減することと、インプラントの寸法および形状についてのドリル穴を形作ることとを含む、多くの目的にかなう。このように、骨にパイロット穴を準備するために、小さい、典型的には2mmの直径のドリルを用いることが非常に一般的であるが、しかしながら、ドリルは要求に応じて1mmから10mmまでに及ぶことが可能である。穴が作られると、プローブは少なくとも部分的にその穴に挿入されることが可能である。
【0026】
プローブの特徴、例えば、プローブの形状および長さは、要求に応じて異なる。したがって、プローブの断面は主として円形であるが、その断面は楕円形、正方形または不規則であってよく、また、プローブは幾何学的なフィーチャを有してよい。プローブの直径は、約2mmが好ましい直径であるが、1mm~10mmの範囲において変化してよい。
【0027】
プローブと骨との間に一定な強度を有するようにプローブが設計されることが重要であり、骨は信頼性のある測定を達成するように測定される。これは、骨質の測定において界面の強度が除去されることを可能とするように、パイロットドリルの直径およびプロファイルをプローブの直径およびプロファイルと一致させることにより対処される。
【0028】
プローブは、骨の機械的性質を模した均質の等方性材料からなる試料における試験穴によって容易に較正されることが可能である。このデータは、共振周波数の関数として骨質および骨量の値を与えるようにプローブが較正されることを可能とする。本技術は、プローブからの減衰測定に応用されることも可能である。
【0029】
プローブは金属、典型的にはアルミニウムかチタン、および/または他の材料を含んでよい。理想的には、プローブは、外科手術環境における、また殺菌中の腐食を阻止することを意図した材料を含む。
【0030】
広範囲の位置整合および配向は、プローブに取付けられたトランスデューサについて存在し、これらは配向に関するさらなるデータを集めるように用いられてよい。
励起した片持ち梁がその振動モードに関する複数の共振周波数を表してよいことが認識される。プローブは、存在する場合には、任意または全てのこれらのモードを測定してよい。
【0031】
本発明は、骨密度または骨質が減少し得る疾病における、例えば、骨粗鬆症、骨軟化症またはビタミン欠乏症における、骨質を測定するように用いられ得る。これに加えて、本発明は、歯科の状況においてだけでなく、骨質および骨強度を知ることに利点がある整形外科の事柄に関しても用いられ得る。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4