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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】心筋CT灌流画像合成
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
A61B6/03 360G
A61B6/03 375
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019551659
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018057025
(87)【国際公開番号】W WO2018172359
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】17162716.9
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フレイマン モルデカイ ピンカス
(72)【発明者】
【氏名】ゴシェン リラン
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0243761(US,A1)
【文献】国際公開第2015/032647(WO,A1)
【文献】特開2008-173236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の命令を記憶するメモリと、
前記メモリに結合されるプロセッサ回路と、
を有する、画像処理装置であって、前記プロセッサ回路は、
ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信し、前記ボリューム画像データは被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有し、該基準ボリューム画像は前記被検者の基準生体構造情報を伝達する一方、前記造影ボリューム画像が該被検者の冠動脈生体構造に関する生体構造情報を伝達し、
前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成し、又は入力として受信し、
前記三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションし、
異なる時点における組織内の血液分布を表す灌流画像の時間系列を、前記冠動脈血流のシミュレーションによって、且つ、前記基準ボリューム画像を灌流合成のための参照として使用して生成するための前記複数の命令を実行するように構成され
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサ回路は更に、前記基準ボリューム画像を前記心臓領域の仮想非造影ボリューム画像の形で有する前記ボリューム画像データを受信するように構成され、前記造影ボリューム画像及び前記仮想非造影ボリューム画像が、単一のスペクトラルCT取得シーケンスにおいて得られる同一のスペクトラル心臓CTデータセットに基づくものである、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサ回路は更に、前記三次元冠動脈ツリーモデルを少なくとも前記ボリューム画像データにおける前記造影ボリューム画像に基づいて生成するように構成される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサ回路は更に、前記冠動脈血流を、前記三次元冠動脈ツリーモデルと非画像化接続血管構造との間の境界をモデル化するための境界条件モデルを考慮に入れることによりシミュレーションするように構成される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサ回路は更に、前記境界条件モデルを各冠動脈出口の断面積に基づくものである前記非画像化接続血管構造の流体力学的抵抗を考慮に入れて決定するように構成される、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサ回路は更に、前記ボリューム画像データにおける心筋給血領域を前記三次元冠動脈ツリーモデルにおける各冠動脈に関して決定するように構成される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサ回路は更に、各冠動脈に関する前記心筋給血領域を、前記ボリューム画像データを前記三次元冠動脈ツリーモデルに関係付けるボロノイ図を計算することにより決定するように構成される、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサ回路は更に、各冠動脈に関する前記心筋給血領域を、前記三次元冠動脈ツリーモデル及び/又は前記ボリューム画像データを用いて汎用給血モデルを特定の被検者に位置合わせすることにより決定するように構成される、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサ回路は更に、前記少なくとも1つの時点における心筋の少なくとも1つのボクセルにおける造影剤の量を、該少なくとも1つのボクセルが属する前記心筋給血領域に対応する冠動脈における前記冠動脈血流のシミュレーションによる血流に基づいて、且つ、血液拡散モデルに基づいて計算するように構成される、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサ回路は更に、前記少なくとも1つのボクセル及び前記少なくとも1つの時点に関して、画像ボクセル値を、該少なくとも1つの時点における前記少なくとも1つのボクセル内の造影剤の量を示すボクセル値を前記基準ボリューム画像の画像ボクセル値に加算することにより計算するように構成される、請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサ回路は更に、前記灌流画像を、該灌流画像と前記少なくとも1つの計算されたボクセルを有する画像との間の画像距離尺度、及び、前記灌流画像の画像品質尺度を表す正則化項の結合を反復的に最小化することにより合成するように構成される、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するステップであって、前記ボリューム画像データは被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有し、前記造影ボリューム画像が前記被検者の冠動脈生体構造に関する生体構造情報を伝達するステップと、
前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する又は入力として受信するステップと、
前記三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションするステップと、
異なる時点における組織内の血液分布を表す灌流画像の時間系列を、前記冠動脈血流のシミュレーションによって、且つ、前記基準ボリューム画像を灌流合成のための参照として使用して生成するステップと、
を有する、ボリューム画像処理のための方法。
【請求項13】
1以上の実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合に、該少なくとも1つのプロセッサに、
ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するステップであって、前記ボリューム画像データは被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有し、前記造影ボリューム画像が前記被検者の冠動脈生体構造に関する生体構造情報を伝達するステップと、
前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する又は入力として受信するステップと、
前記三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションするステップと、
異なる時点における組織内の血液分布を表す灌流画像の時間系列を、前記冠動脈血流のシミュレーションによって、且つ、前記基準ボリューム画像を灌流合成のための参照として使用して生成するステップと、
を有する、ボリューム画像処理のための方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記仮想非造影ボリューム画像は、静脈内造影剤が血流内に導入された前記被検者のスキャンに基づく、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記受信するステップは、前記基準ボリューム画像を前記心臓領域の仮想非造影ボリューム画像の形で有する前記ボリューム画像データを受信するステップを有し、
前記造影ボリューム画像及び前記仮想非造影ボリューム画像が、単一のスペクトラルCT取得シーケンスにおいて得られる同一のスペクトラル心臓CTデータセットに基づくものであり、
前記仮想非造影ボリューム画像は、静脈内造影剤が血流内に導入された前記被検者のスキャンに基づく、請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像処理の分野に関する。更に詳細には、本発明は、例えば冠動脈CT血管造影データ等のスペクトラルCTデータに基づく心筋コンピュータトモグラフィ(CT)灌流画像合成に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD)は世界的に死亡の重大な原因である。CADにおいては、冠動脈内のプラーク物質の蓄積が心筋への酸素の供給を制限し、結果として心筋虚血となる。
【0003】
心筋生存能を評価するための当業技術において既知の非侵襲的撮像技術は、SPECT及びPET等の核イメージング方式が用いられる心筋灌流撮像(MPI)並びに心磁気共鳴撮像(CMR)を含む。しかしながら、このような従来技術の方法の欠点は、これらの撮像技術が冠動脈及び下流側の心筋領域の機能的評価の組み合わされた詳細な解剖学的評価を可能にするには余り適していないことであり得る。
【0004】
コンピュータトモグラフィ(CT)において、調査下の物体の内部構造を表す画像は、侵入する電離放射線により得ることができる。このような画像(例えば、三次元ボリューム画像データ)は、検出器により取得されると共に侵入する電離放射線源及び当該物体に対する該検出器の異なる向きに対応する(例えば、当該物体を介して投射する放射線の異なる方向に対応する)投影画像に対して従来既知の再構成技術を適用することにより得ることができる。再構成される画像データは、三次元座標系に対する当該物体内の異なる位置を表すボクセルで構成することができ、各ボクセルは、当該ボクセルに対応する位置におけるスキャンされた物体の減衰特性を示す(例えば、相対放射線濃度の放射線濃度を示す)関連付けられた値(例えば、ハウンズフィールド単位で表される値等のグレイスケール値)を有する。
【0005】
従来知られている冠動脈コンピュータトモグラフィ血管造影(CCTA)を用いれば、冠動脈疾患(CAD)の非侵襲的評価を、冠動脈狭窄を評価することにより実行することができる。CCTA画像データセットにより伝達される詳細な解剖学的情報及びCAD検出における高度な否定的予測値は、有利にも、CADが低~中程度の予備検査疾患確率の症候性患者において除外されることを可能にする。しかしながら、CCTAデータの評価により検出される冠動脈狭窄は、心筋虚血の間接的目安である。従って、当業技術で既知のCCTA方法は、不利にも、冠動脈病変の血行力学的重大性(有意性)の詳細な評価を可能にすることが限定され得る。
【0006】
FFR-CTは、病変の遠端側圧力と該病変の前側の圧力との間の比を示す血流予備量比(FFR)を評価することにより冠動脈病変の血行力学的重大性の評価をCCTAデータに基づいて可能にする当業技術において知られた方法である。従って、FFR-CTは血行力学的に重大なCADを判定する際にCCTAの特異性を潜在的に改善することができる。このアプローチは、FFR計測量を推定するためにCCTAデータに基づく数値的流量(血流)シミュレーションを使用する。このような血流シミュレーションのためには、冠動脈の三次元ツリーモデル及び撮像されない血管構造との境界をモデル化するための正確な境界条件が必要とされ得る。従って、FFR-CTのための正確な血流シミュレーションモデルを構築するために、CCTA画像データに基づく冠動脈の正確なセグメンテーション(分割)が必要とされ得る。
【0007】
FFR-CTにおいて、病変の血行力学的重大性は、例えば図1に示されるように、当該病変における(例えば、狭窄が観察される血管の領域における)局部的FFR-CT値により、又はFFR-CT値を表すようにカラーコード化された冠動脈ツリーの三次元メッシュモデルの形態で通知することができる。従って、ユーザは、心筋の生存能を直接評価するための手段が提供されるというより、冠動脈病変の評価に制限される。
【0008】
当業技術においては、CCTA分析から得られる血流シミュレーション結果を“ブルズアイ”ビュー(例えば、心臓核イメージングにおけるビュー等の)を用いて提示することも知られている。しかしながら、このようなビューは、全体のCTボリュームにわたる灌流の三次元評価を可能にするというより、左心室の二次元表現に限定されるということが欠点となる。
【0009】
動的心筋CT灌流法は、心筋の生存性を直接特徴付けることを可能にするCT画像データに基づく他の既知の技術である。心筋灌流のCT評価は、静的又は動的の何れかのものであり得る。更に、データは安息及び/又はストレス状態において取得することができる。ユーザは、灌流CT画像を視覚的に評価することができるか、又は一層客観的な評価のために量的灌流マップを生成すべくソフトウェアを使用することもできる。このようなアプローチにより心筋生存能を直接視覚化又は評価することができるが、少なくとも1つの追加のCT灌流スキャンを実行することの欠点は、これが、例えばCCTAスキャンを実行するために使用される造影剤の量及び放射線暴露に加えて、患者の電離放射線及び毒性造影剤に対する追加の暴露を意味するということである。更に、CCTAスキャンとCT灌流スキャンとの間において、体内のCCTAスキャンのために使用された残留造影剤を十分に減少させるために時間遅延が必要とされ得、このことは、診療の実施を制限し得る。また、物理的に取得されたデータから導出される量的マップは、該マップを生成するために使用される灌流モデルの複雑さと比較して、例えばデータ取得の物理的制限に起因する及び/又は放射線線量の管理の観点での限られた数の時点により雑音性で信頼性が低いものであり得る。
【0010】
国際特許出願公開第2015/092588号は、冠動脈デュアルエネルギCTにおいて使用するための方法を開示している。該方法は、管状構造の造影スペクトラル画像データを取得するステップ、該取得された造影スペクトラル画像データに基づいてコントラストマップを生成するステップ、及びスペクトラルモデルに基づいて更新されたコントラストマップを生成するステップを有している。該方法は、更に、上記の更新されたコントラストマップに基づいて管状構造を領域分割するステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施態様の目的は、コンピュータトモグラフィ技術を用いて心筋の機能及び/又は心筋の解剖学的構造の良好且つ効率的な分析、画像合成及び/又は視覚化を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、本発明による方法及び装置により達成される。
【0013】
本発明の実施態様の利点は、冠動脈病変の詳細な評価がコンピュータトモグラフィデータを用いて可能にされ得ることである。
【0014】
本発明の実施態様の利点は、心筋CTにおける良好な機能的評価が可能とされ得、例えば、冠動脈病変の血行力学的重大さが判定されることを可能にする(例えば、心筋虚血状態の良好な評価を可能にする)ことである。
【0015】
本発明の実施態様の利点は、ユーザが、分析されるCTデータを用いて冠動脈病変の(例えば、心筋の生存能の)直接的機能評価を実行することができることである。
【0016】
本発明の実施態様の利点は、被検者における冠動脈病変の良好な評価を、CT技術を用いて被検者の許容可能な(例えば、低い)放射線暴露で達成することができることである。
【0017】
本発明の実施態様の利点は、被検者における冠動脈病変の良好な評価を得るための造影剤の量を、制限する(例えば、有利にも低くする)ことができることである。
【0018】
本発明の実施態様の利点は、被検者における冠動脈病変の良好な評価を迅速且つ効率的なスキャニング手順で達成することができることである。
【0019】
本発明の実施態様の利点は、灌流の低ノイズの、正確な、ロバストな及び/又は信頼性のある量的マップを提供することができることである。
【0020】
第1態様において、本発明の実施態様は画像処理装置に関するもので、該画像処理装置は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するためのデータ入力部を有し、該ボリューム画像データは被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像(例えば、被検者の心臓領域の基準生体構造を表すボリューム画像)を有する。該基準ボリューム画像は、例えば、当該血管構造の自身の局部的近傍に対する(例えば、周囲の組織に対する)画像コントラストが、該被検者が静脈内造影剤の無い状態で撮像されるとした場合(例えば、更には、当該基準ボリューム画像が基づく生データが、例えば、静脈内造影剤が血流内に導入された被検者のスキャンに基づく仮想非造影ボリューム画像を用いることによる等のように、当該血管構造内に斯様な造影剤が存在する状態で取得された場合)とは大幅に相違しないような前記被検者の基準生体構造情報を伝達する。
【0021】
前記造影ボリューム画像は、該被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報(例えば、前記基準ボリューム画像内に存在(例えば、識別可能に存在)しない冠動脈生体構造に関する特定の解剖学的情報)を伝達する。当該画像処理装置は、前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する又は入力として受信すると共に、該三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションする血液シミュレータを有する。該画像処理装置は、少なくとも1つの時点における組織内の血液分布を表す灌流画像を、少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレーションを考慮に入れて生成する灌流合成ユニットを有する。例えば、時点とは時間的瞬間を指すことができ、又は所定の時間間隔、例えば、0ms~2sの範囲内、10ms~1sの範囲内、50ms~500msの範囲内の時間長等の所定の時間長を持つ期間(短い期間)を指すこともできる。
【0022】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記データ入力部は、前記基準ボリューム画像を有するボリューム画像データを受信するように構成することができ、その場合、前記基準ボリューム画像は前記心臓領域の仮想非造影ボリューム画像の形を有し、前記造影ボリューム画像及び該仮想非造影ボリューム画像は単一のスペクトラルCT取得シーケンスにおいて得られる同一のスペクトラル心臓CTデータセットに基づくものとなる。例えば、上記仮想非造影ボリューム画像とは、撮像領域に存在する静脈内造影剤の画像コントラストに対する影響が低減され又は、好ましくは、実質的に除去されるような(例えば、当業技術において既知の仮想非造影(VNC)画像再構成のための方法により得られるような)、前記スペクトラル心臓CTデータセットの操作により得られるボリューム画像を指すことができる。
【0023】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記血流シミュレータは、前記三次元冠動脈ツリーモデルを前記ボリューム画像データに基づいて生成するための冠動脈ツリーセグメンテーション(分割)ユニット14を有することができる。
【0024】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記血流シミュレータは、前記冠動脈血流を、前記三次元冠動脈ツリーモデルと非画像化接続血管構造(例えば、画像化される冠動脈ツリーの局部的近傍における及び/又は該冠動脈ツリーに隣接する画像化されない血管構造)との間の境界をモデル化するための境界条件モデルを考慮に入れることによりシミュレーションするよう構成することができる。
【0025】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記血流シミュレータは、前記境界条件モデルを各冠動脈出口の断面積に基づくものである前記非画像化血管構造の流体力学的抵抗を考慮に入れて決定する境界条件プロセッサを有することができる。
【0026】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、前記ボリューム画像データにおける心筋給血領域(myocardium feeding territory)を前記三次元冠動脈ツリーモデルにおける各冠動脈(例えば、各セグメント)に関して決定するよう構成することができる。例えば、心筋給血領域とは、心筋における前記冠動脈ツリーモデルの対応する部分(該冠動脈ツリーモデルの該部分から当該心筋領域は主に栄養及び/又は酸素を供給される)、例えば特定の冠動脈枝路、に割り当てられる領域を指すことができる。又は、言い換えると、該心筋給血領域とは、当該心筋のうちの、対応する冠動脈ツリーの部分により給血される又は少なくとも主に給血されると推測される領域を指すことができる。
【0027】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、各冠動脈に関する前記心筋給血領域を、前記ボリューム画像データを前記冠動脈ツリーモデルに関係付けるボロノイ図及び/又はドロネー三角形分割を計算することにより決定するよう構成することができる。しかしながら、本発明の実施態様は、このような心筋給血領域を計算する方法に必ずしも限定されるものではなく、加えて又は代わりに、例えば血管系の血流領域マッピングのための当業技術において既知の他の方法を実施することもできる。
【0028】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、各冠動脈に関する前記心筋給血領域を、前記冠動脈ツリーモデル及び/又は前記ボリューム画像データを用いて汎用給血モデルを特定の被検者に位置合わせすることにより決定するよう構成することができる。
【0029】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、前記少なくとも1つの時点における当該心筋の少なくとも1つのボクセルにおける造影剤の量を、該少なくとも1つのボクセルが属する前記心筋給血領域に対応する冠動脈における前記冠動脈血流シミュレーションによる(例えば、該冠動脈血流シミュレーションから得られる)血流に基づいて、且つ、血液拡散モデルに基づいて計算するよう構成することができる。
【0030】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、前記(又は各)少なくとも1つのボクセル及び前記(又は各)少なくとも1つの時点に関して、画像ボクセル値を、該少なくとも1つの時点における前記少なくとも1つのボクセル内の造影剤の量を示すボクセル値を前記基準ボリューム画像の画像ボクセル値に加算することにより計算するよう構成することができる。
【0031】
本発明の実施態様による画像処理装置において、前記灌流合成ユニットは、前記灌流画像を、該灌流画像と前記少なくとも1つの計算されたボクセルを有する画像との間の画像距離尺度及び前記灌流画像の画像品質尺度を表す正則化項(regularization term)の結合(combination)を反復的に最小化することにより合成するよう構成することができる。
【0032】
第2態様において、本発明の実施態様は、本発明の第1態様の実施態様による画像処理装置を有するコンピュータトモグラフィワークステーションに関するものである。
【0033】
第3態様において、本発明の実施態様は、本発明の第1態様の実施態様による画像処理装置を有するスペクトラルコンピュータトモグラフィシステムに関するものである。
【0034】
第4態様において、本発明の実施態様は、ボリューム画像処理のための方法に関するものである。該方法は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するステップを有し、前記ボリューム画像データは被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有する。前記造影ボリューム画像は、前記被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報を伝達する。当該方法は、前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する又は入力として受信するステップを有する。該方法は、前記三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションするステップを有する。該方法は、少なくとも1つの時点における組織内の血液分布を表す灌流画像を、少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレーションを考慮に入れて生成するステップを有する。
【0035】
更に他の態様において、本発明の実施態様は、計算システムのプロセッサにより実行された場合に、該計算システムに本発明の実施態様による方法を実行させる1以上のコンピュータ実行可能な命令によりエンコードされたコンピュータ読取可能な記憶媒体に関するものである。
【0036】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付する独立及び従属請求項に記載されている。従属請求項のフィーチャは、請求項に明示的に記載されているようにだけではなく適切に、独立請求項のフィーチャと及び他の従属請求項のフィーチャと組み合わせることができる。
【0037】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様を参照して解説されるであろう。
【0038】
尚、図面の各図は概略的なものに過ぎず、限定するものではない。また、各図において、構成要素の幾つかの寸法は、解説目的で誇張されており、実寸通りには描かれていない。
【0039】
また、請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0040】
また、異なる図において、同一の符号は同一の又は同様の構成要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、当業技術において既知の血流予備量比コンピュータトモグラフィ(FFR-CT)シミュレーションにより得ることが可能な例示的視覚化を示すもので、このような従来の視覚化において、FFT情報は、色勾配バー及び矢印ポインタにより示されるように、グレイスケールの解剖構造背景画像上の血管のカラーコード化オーバーレイにより提示することができる。
図2図2は、本発明の実施態様による画像処理装置を有する撮像システムを概略的に示す。
図3図3は、本発明の実施態様による画像処理装置を概略的に示す。
図4図4は、本発明の実施態様による方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を特定の実施態様に関して及び特定の図面を参照して説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定されるものである。描かれた図面は、概略的なものに過ぎず、限定するものではない。また、各図において、構成要素の幾つかの寸法は、解説目的で誇張されており、実寸通りには描かれていない。また、寸法及び相対寸法は、本発明の実際の実施化に対応するものではない。
【0043】
更に、当該説明及び請求項において第1及び第2等の用語は、同様の要素の間を区別するために用いられるものであり、時間的、空間的、順位付け又は如何なる他の態様での順序を必ずしも記述するためのものではない。また、そのように使用される用語は適切な環境下では入れ替え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施態様は、本明細書で記載又は図示されるもの以外の順序で動作することができると理解されるべきである。
【0044】
更に、当該説明及び請求項における上及び下等の用語は、説明目的で使用されるもので、必ずしも相対位置を記述するために使用されるものではない。また、そのように使用される用語は適切な環境下では入れ替え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施態様は、本明細書で記載又は図示されるもの以外の向きで動作することができると理解されるべきである。
【0045】
請求項で使用される“有する”なる用語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではないことに注意されたい。即ち、該用語は他の要素又はステップを排除するものではない。このように、該用語は、参照される記載されたフィーチャ、インテジャ、ステップ又は構成要素の存在を指定するが、1以上の他のフィーチャ、インテジャ、ステップ若しくは構成要素又はこれらのグループの存在若しくは追加を排除するものではないと解釈されるべきである。このように、“手段A及びBを有する装置”なる表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。該表現は、本発明に関し、該装置の関連のある構成要素はA及びBのみであることを意味する。
【0046】
本明細書を通して“一実施態様”又は“実施態様”に対する言及は、該実施態様に関連して記載される特定のフィーチャ、構成又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。このように、本明細書を通して種々の箇所における“一実施態様において”又は“実施態様において”なる語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施態様を指すものではないが、そうでもあり得る。更に、上記特定のフィーチャ、構成又は特徴は、1以上の実施態様において、当業者にとり本開示から明らかなように、任意の好適な態様で組み合わせることができる。
【0047】
同様に、本発明の例示的実施態様の説明において、本発明のフィーチャは、当該開示を効率化すると共に種々の発明的態様の1以上の理解を助けるために、時には、単一の実施態様、図又はこれらの説明に一緒にグループ化されると理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求項に記載される発明が各請求項に明示的に記載されるものより多くのフィーチャを必要とするという意図を反映すると解釈されるべきでない。むしろ、後の請求項が反映するように、発明的態様は、単一の先行する開示された実施態様の全フィーチャより少ないものに存する。このように、詳細な説明に続く請求項は、これにより、本詳細な説明に明示的に組み込まれるものであり、各請求項は本発明の別個の実施態様として自立する。
【0048】
更に、本明細書に記載される幾つかの実施態様は、他の実施態様に含まれる他のフィーチャでない幾つかのフィーチャを含むが、異なる実施態様のフィーチャの組み合わせは、当業者により理解されるように、本発明の範囲内に入ることが意図されると共に異なる実施態様を形成する。例えば、後述の請求項において、請求項に記載される実施態様の何れも任意の組み合わせで使用することができる。
【0049】
本明細書で提供される説明においては、多数の固有の細部が記載される。しかしながら、本発明の実施態様は、これらの固有の細部を伴わずに実施化することができると理解される。他の事例において、良く知られた方法、構造及び技術は、本説明の理解を不明瞭にさせないように詳細には示されていない。
【0050】
第1態様において、本発明の実施態様は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するためのデータ入力部を有する画像処理装置に関するものである。このボリューム画像データは、被検者身体内の心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有する。上記造影ボリューム画像は、当該被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報、例えば前記基準ボリューム画像によっては伝達されない解剖学的情報(例えば、血管内使用のためのヨウ素系造影剤の使用によりコントラスト強調された解剖学的情報)を伝達する。当該画像処理装置は、前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成又は入力として受信すると共に該三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流シミュレーションをシミュレーションするための血流シミュレータも有する。該画像処理装置は、更に、少なくとも1つの時点における組織内の血液分布を表す少なくとも1つの灌流画像(例えば、少なくとも1つの仮想灌流画像)を、少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレータを考慮に入れて生成するための灌流合成ユニットを有する。
【0051】
図3は、本発明の実施態様による例示的画像処理装置10を示す。該画像処理装置は、以下に記載されるような機能を適用するようプログラムされたコンピュータ等の、計算装置を有することができる。該計算装置は、意図する機能を提供するように構成された例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ等の構成可能なハードウェア装置を有することができるか、又は意図する機能を提供するように特別に設計された特定用途向け回路を有することができる。該計算装置は、設計されたハードウェア、構成されたハードウェア及び/又は汎用ハードウェア上で実行するためのソフトウェアの任意の組み合わせを有することができる。
【0052】
このように、データ入力部11、血流シミュレータ12及び/又は灌流合成ユニット13等の本発明の実施態様による画像処理装置10の構成部品は、必ずしも斯様な装置の物理的に別個の主体に対応する必要は無く、汎用コンピュータ上で実行するためのコンピュータコードで実施化されるソフトウェア構成を指すこともできる。
【0053】
画像処理装置10は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィ(CT)ボリューム画像データを受信するためのデータ入力部11を有する。特に、該データ入力部は、スペクトラルCTスキャナ又はスペクトラルCTスキャナにより供給されたCT画像を再構成するための再構成器等の外部ソースからデータを受信するためのコンピュータネットワークインターフェース、無線伝送インターフェース又はデジタルデータバスインターフェース等のデジタル通信回路を有することができる。該データ入力部は、共有ハードウェアプラットフォーム上で実施化された他のソフトウェア要素から(例えば、スペクトラルCT画像データを再構成するためのソフトウェア要素等の同一のコンピュータ上で実行する他のソフトウェア要素から)当該データを受信するための仮想インターフェースを有することができる。このような仮想インターフェースは、例えば、アプリケーションプログラミングインターフェース、共有メモリ資源又はデータ担体上にファイルシステム標準を用いて記憶されたファイルを有することができる。該データ入力部は、光ディスクリーダ、USBデータ記憶媒体にアクセスするための汎用直列バス(USB)接続部、磁気ディスクリーダ又は携帯フラッシュドライブリーダ等の、データ担体にアクセスするためのインターフェースを有することができる。該データ入力部は、上述した手段の何れかの組み合わせ、及び/又はデジタルボリューム画像データを受信するのに適した当業技術において既知の他の装置を有することができる。
【0054】
当該スペクトラルCTボリューム画像データは、例えば、スキャンされた物体(例えば、スキャンされた被検者)における対応するボクセル位置にリンクされた複数のデータ値を有するボクセルで構成される。このように、該スペクトラルCTボリューム画像データは、例えば、スキャンされた物体における三次元座標系対して異なる位置を表す、ボクセルで構成された再構成画像データを有することができる。該スペクトラルCT画像データは、ボクセルで構成された斯様な再構成画像データから導出(例えば、計算)されたボリューム画像データも有することができる。
【0055】
各ボクセルは、当該ボクセルに対応する位置におけるスキャンされた物体の減衰特性を示す(例えば、相対放射線濃度等の放射線濃度を示す)関連付けられた値(例えば、ハウンズフィールド単位で表される値等のグレイスケール値)を有することができる。当該ボリューム画像データは、例えば心臓領域における各ボクセル位置に関して、同一のボクセル位置に関連付けられた少なくとも2つの異なるグレイスケール値を有することができる。このように、上記少なくとも2つの異なるグレイスケール値の各々は、例えば侵入する電離放射線の異なる特質に対して、対応するボクセル位置における異なる減衰特性を示すことができる。該異なる特質の侵入する電離放射線は平均及び/又はピーク光子エネルギが十分に相違することができ、かくして、前記異なる減衰特性が識別可能な異なる光電効果及びコンプトン効果の寄与(例えば、被検者における異なる組織及び/又は組織特性を示す)を受け得るようにする。しかしながら、前記異なるグレイスケール値は、当該画像データを取得するために被検者が暴露された侵入電離放射線の特質に直接関係する減衰特性に対応する(又は限定される)必要はない。例えば、該異なるグレイスケール値(例えば、各ボクセルに関する)のうちの少なくとも1つは、直接観察されなかったが、直接取得若しくは再構成された画像を組み合わせる及び/又は操作することにより推定される抽出された材料特性を表すことができる。例えば、ボクセル当たりの異なるスカラ値は、幾つかの実施態様では、電離放射線の物理的エネルギスペクトル及び/又は当該物体をスキャンする際に使用された検出器の特性に対応するのとは反して、任意の分解に対応し得る。例えば、このようなスカラ値は80kVp及び/又は120kVp成分画像、水物質、骨物質及び/又はヨウ素画像、及び/又はモノクロ仮想画像を形成し得る。
【0056】
当該スペクトラルCTボリューム画像データは、例えば、3以上の異なる撮像放射線特質に基づくスペクトラルCTボリューム画像データ又はデュアルエネルギ(DE)CTボリューム画像データを有することができ、又は、これらから導出可能であり得る。該画像データは、例えば、デュアルソース若しくは多ソース構成を持つスキャナ、スキャン中の高速kVpスイッチングに適合されたスキャナ及び/又はデュアルレイヤ若しくは多レイヤ検出器構成を持つスキャナを使用する取得等の、当業技術において既知のスペクトラルCTスキャニング技術(例えば、当業技術において既知のデュアルエネルギスキャン方法)を用いて取得(例えば、事前記録)することができる。
【0057】
当該スペクトラルCTボリューム画像データは、例えば、心血管造影に関して当業技術で既知の標準スペクトラルCT取得プロトコルによるコンピュータトモグラフィ心血管造影データを有し、又は斯かるデータからなることができる。
【0058】
当該ボリューム画像データは、被検者身体における心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有する。上記造影ボリューム画像は、当該被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報(例えば、上記基準ボリューム画像によっては伝達されない追加情報)を伝達する。
【0059】
例えば、当該ボリューム画像データは、上記造影ボリューム画像及び/又は基準ボリューム画像として、組み合わされた及び/又は単エネルギ的画像を有することができる。例えば、該ボリューム画像データは、ヨウ素マップ、例えば、当該スペクトラルCT画像から算出された当該画像におけるボクセル値が当該撮像領域における対応するボクセル位置に存在するヨウ素の量を示すようなボリューム画像を有することができる。
【0060】
本発明の実施態様によれば、データ入力部11は、前記基準ボリューム画像を当該心臓領域の仮想非造影ボリューム画像の形で有するボリューム画像データを受信するように構成することができる。このように、当該造影ボリューム画像及び仮想非造影ボリューム画像は、単一のスペクトラルCTボリューム取得において得られた同一のスペクトラル心臓CTデータセットに基づくものとすることができる。スペクトラルCTの利点は、撮像領域において造影剤の存在の寄与を殆ど又は全く示さない画像並びに斯かる造影剤の存在の寄与を強く強調及び/又は分離させる画像の両方を提供するために単一のボリューム取得を用いる(又は、処理する)ことができることである。例えば、被検者に対する一層高い放射線線量を意味し得る反復的スキャン処理を有利にも低減又は回避することができると共に、位置合わせ及び/又は誤位置合わせアーチファクトを低減又は防止することができる。スペクトラルCTの利点は、ヨウ素を同様の減衰特性を有する他の物質から(例えば、カルシウムから)区別することができることである。このように、血管表現構造を、例えば、特に斯かる表面構造が例えば骨物質に隣接している場合に、一層容易に検出することができる。
【0061】
例えば、例えば冠動脈生体構造が強調された解剖構造背景を示す若しくは代わりに周囲の組織の解剖構造背景情報を伴わない実質的に冠動脈生体構造のみを示す造影ボリューム画像は冠動脈セグメンテーション及び血流シミュレーションのために使用することができる一方、例えば仮想非造影ボリューム画像等の基準ボリューム画像は本発明の実施態様による灌流合成のための基準参照として使用することができる。
【0062】
画像処理装置10は、上記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する(又は、入力として受信する)と共に該三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流を、例えば前記造影ボリューム画像を考慮に入れて(例えば、該造影ボリューム画像に基づいて)、シミュレーションする(例えば、冠動脈血流シミュレーションを生成する)ための血流シミュレータ12も有する。
【0063】
例えば、上記冠動脈ツリーモデルは、当業技術において知られているように、このようなモデルを生成する能力を持つ心臓CT読取ワークステーションから入力として得ることができる。例えば、冠動脈ツリーモデルは、中心線抽出及び冠動脈管腔セグメンテーションアルゴリズム、及び/又は対話型セグメンテーション及び/又はツリーモデル化ツールを備えた、フィリップス・インテリスペース・ポータル(Philips Intellispace Portal)で商用的に利用可能な統合型心臓アプリケーションからの入力として得ることができる。
【0064】
血流シミュレータ12は、前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを、例えば前記造影ボリューム画像を考慮に入れて(例えば、該造影ボリューム画像に基づいて)生成するための冠動脈ツリーセグメンテーションユニット14を有することができる。該セグメンテーションユニットは、例えば、冠動脈管腔のセグメンテーションを行い、血管中心線を抽出し及び/又は斯かる分岐する中心線構造からツリーモデルを構築するように構成することができる。
【0065】
血流シミュレータ12は、冠動脈血流を、境界条件モデルを考慮に入れることによりシミュレーションするように構成することができる。この境界条件モデルは、上記三次元冠動脈ツリーモデルと非画像化血管構造との間の境界をモデル化することができる。
【0066】
血流シミュレータ12は、上記境界条件モデルを上記非画像化血管構造の流体力学的抵抗を考慮に入れて決定するための境界条件プロセッサ15を有することができ、この流体力学的抵抗は各冠動脈出口の断面積に基づくものとすることができる。
【0067】
例えば、当該境界条件モデルは、非画像化血管構造の全抵抗を異なる冠動脈出口の間に、これら出口の断面積に基づいて分布させるよう構成することができる。例えば、上記全抵抗は、当該血管及び該血管の枝路における血流の、これらの直径に関する関係、例えば:
【数1】
に従って分布させることができる。
【0068】
上記式において、Rは血管内の抵抗を示し、Rは当該ツリー構造における該血管の元における抵抗を示し、rinは該親の半径を示し、rout,iは枝路の半径を示し、ρbloodは血液の質量密度を示す。血管の直径及び/又は断面積は、当該冠動脈ツリーモデルに基づいて、又は該モデルにより決定することができる。
【0069】
しかしながら、本発明の実施態様は、この特定の抵抗モデルの選択に限定されるものではなく、当業技術において既知の何れの好適な冠動脈血流シミュレーションのための境界モデルを用いて実施化することもできる。
【0070】
当該血流シミュレーションは、当業技術において既知の方法に従って、例えば3D数値流体力学(CFD)アプローチ又は(例えば、FFR-CT分析に関する当業技術において既知の)低減次数アプローチを用いて実行することができる。
【0071】
画像処理装置10は、少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレーションを考慮に入れて、少なくとも1つの時点における組織内の血液分布を表す灌流画像を生成するための(例えば、異なる時点における灌流を表す灌流画像の時間系列を生成するための)灌流合成ユニット13も有する。
【0072】
灌流合成ユニット13は、前記ボリューム画像データにおける心筋給血領域を前記三次元冠動脈ツリーモデルにおける各冠動脈に関して決定するように構成することができる。このようにして、例えば、基準ボリューム画像内の各ボクセルを、3D冠動脈ツリーモデルにおける単一の冠動脈の給血領域に割り当てることができる。
【0073】
灌流合成ユニット13は、各冠動脈に関する心筋給血領域を、前記ボリューム画像データを前記冠動脈ツリーモデルに関係付けるボロノイ図又はドロネー三角形分割を計算することにより(例えば、前記3D冠動脈ツリーモデルのボロノイ分割又はドロネー三角形分割を計算することにより)、決定するよう構成することができる。
【0074】
当該灌流合成ユニット13は、各冠動脈に関する心筋給血領域を、前記冠動脈ツリーモデル及び/又は前記ボリューム画像データを用いて汎用給血モデルを特定の被検者に位置合わせすることにより決定するよう構成することができる。例えば、前記造影ボリューム画像の当該冠動脈系の解剖学的基準ボリューム画像に対する非剛性位置合わせを実行することができるか、又は当該冠動脈ツリーモデルの解剖学的基準冠動脈ツリーモデルに対する位置合わせ(例えば、線分ベース又はメッシュベースの位置合わせ)を実行することができる。
【0075】
例えば、米国心臓協会(AHA)の17セグメントモデルを特定の患者に対して(例えば、当該被検者に関して得られた冠動脈ツリーモデルに対して)位置合わせすることができる。
【0076】
しかしながら、本発明の実施態様は、この特定の基準モデルに限定されるものではなく、当業技術において既知の汎用冠動脈構造の任意の好適な基準モデルを用いて実施化することができる。更に、本発明の実施態様は、各冠動脈に関する心筋給血領域を決定する斯かる特定の例に限定されるものではなく、心筋給血領域を決定するための当業技術で既知の任意の好適な方法と組み合わせて用いることができる。
【0077】
当該灌流合成ユニット13は、少なくとも1つの時点における(例えば、複数の時点の系列で)当該心筋の少なくとも1つのボクセルにおける造影剤の量を計算するように構成することができる。この計算は、当該少なくとも1つのボクセルが属する(例えば、割り当てられた)心筋給血領域に対応する冠動脈における血流(前記冠動脈血流シミュレーションによる)に基づくと共に、血液拡散モデルに基づくものとすることができる。
【0078】
例えば、1つの斯様なモデルは、Yipintsoi他による文献“Nonlinear model for capillary-tissue oxygen transport and metabolism”Ann. Biomed. Eng. 25(4), pp. 604-25 619, 1997に開示されている。しかしながら、本発明の実施態様は斯かる例示的モデルに限定されるものではない。
【0079】
当該灌流合成ユニット13は、前記少なくとも1つの時点における前記少なくとも1つのボクセルの画像ボクセル値を、該少なくとも1つの時点(又は斯かる時点の各々)における前記少なくとも1つのボクセル(又は斯かるボクセルの各々)における造影剤の量を示すボクセル値を前記基準ボリューム画像の画像ボクセル値に加算することにより計算するよう構成することができる。
【0080】
例えば、各時点における各ボクセルのハウンズフィールド単位(HU)値は、前記基準画像(例えば、前記仮想非造影画像)から得られる組織の基準HUの、所与の時点で当該ボクセルに到来する造影剤に関連するHUとの和:
【数2】
により計算することができ、ここで、pは時点tにおけるHU値を推定するためのピクセルの座標を示し、vncは基準画像(例えば、仮想非造影画像)を示し、perは灌流モデル(例えば、前述したような)に従って伝搬した冠動脈内の血流による当該組織内のHUの増加を示す。
【0081】
当該灌流合成ユニット13は、当該灌流画像(例えば、当該最適化処理における一連の反復に対応する一連の灌流画像における現灌流画像)と前記少なくとも1つの計算されたボクセル(又は斯かるボクセルの各々)を有する画像との間の画像距離尺度、及び当該灌流画像の画像品質尺度(滑らかさ、均一さ、エッジのシャープさ及び/又は当業技術において既知の他の画像尺度等を示す尺度のような)を表す正則化項の結合(例えば、和)を反復的に最小化することにより灌流画像を合成するように構成することができる。
【0082】
例えば、滑らかな画像を得るために正則化項制約を全変動最小化オプティマイザにおいて:
【数3】
に従って使用することができ、ここで、y(t)は時点tにおける合成灌流画像であり、x(t)は当該式を上記x(t)に関して全ボリュームに対し適用することにより得られるようなモデル推定灌流画像であり、TVは正則化項であり、λは適用されるべき正則化の量を制御する重みパラメータである。
【0083】
更に、このような正則化される最小化法には、スペクトラル画像からの追加の灌流関係情報を組み込むことができる。例えば、灌流不足領域を強調するためにヨウ素マップを使用することができる。
【0084】
当該装置は、灌流合成ユニット13により生成される灌流画像の系列(例えば、時間系列)から量的灌流マップを計算する灌流マップ生成器を有することもできる。このような灌流マップ生成器は、当業技術において既知の通常の動的心灌流CT画像に基づいて量的灌流マップを計算する方法、例えば物理的に取得された動的心灌流CT画像を処理する従来方法を適用することができる。しかしながら、本発明の実施態様において、このような時間系列は一連の動的心灌流CT画像の物理的な取得を要せずに正確にシミュレーションすることができ、このことは、被検者の放射線被曝を制限するために、時間効率のために、及び当該灌流時間系列の高い時間分解能を得るために(例えば、多数の時点をシミュレーションするために)有利であり得、これは、量的灌流マップを計算する場合の数値的安定性及び精度を改善し得る。
【0085】
第2態様において、本発明の実施態様は、本発明の第1態様の実施態様による画像処理装置を有するコンピュータトモグラフィワークステーションに関するものである。
【0086】
第3態様において、本発明の実施態様は、本発明の第1態様の実施態様による画像処理装置を有するスペクトラルコンピュータトモグラフィシステムに関するものである。例えば、本発明の実施態様は、図2に関連して以下に説明する撮像システム100等のスペクトラルコンピュータトモグラフィシステムに関係するものであり得る。
【0087】
図2は、スペクトラルコンピュータトモグラフィ(スペクトラルCT)スキャナを有する撮像システム100を示す。撮像システム100は、概ね静止したガントリ102及び回転するガントリ104を有することができる。回転するガントリ104は、静止ガントリ102により回転可能に支持され、検査領域106の周囲で長軸Zの回りに回転することができる。
【0088】
X線管等の放射線源108は、回転ガントリ104により例えば該回転ガントリ104と共に回転するように回転可能に支持され、検査領域106を横切る多エネルギ放射線を放出するように構成することができる。放射線源108は、単一の広域スペクトルX線管を有し、又は斯かる広域スペクトルX線管からなることができる。代わりに、該放射線源は、スキャニングの間において少なくとも2つの異なる光子放出スペクトル間で制御可能に切り換わる(例えば、80kVp、140kVp等の少なくとも2つの異なるピーク放出電圧の間で切り換わる)ように構成することもできる。他の変形例において、放射線源108は、放射線を異なる平均スペクトルで放出するように構成された2以上のX線管を有することができる。他の変形例において、放射線源108は上記の組み合わせを有することができる。
【0089】
放射線感受性検出器アレイ110は、検査領域106を跨いで放射線源108の反対側の弧に対応することができる。アレイ110は、Z軸方向に沿って互いに対して配置された1以上の列の検出器を含むことができる。該アレイ110は、異なるX線エネルギ感受性を持つ少なくとも2つの放射線感受性検出器エレメント(例えば、少なくとも2つのシンチレータ及び対応する光感受性を有する少なくとも2つの対応する光センサ)を備えたデュアルエネルギ検出器を有することができる。該放射線感受性検出器アレイ110は、代わりに又は加えて、CdTe、CdZnTe又は当業技術で既知の他の直接変換検出器等の直接変換検出器を有することもできる。
【0090】
当該システムは、検出器アレイ110により出力された信号を再構成する再構成器112を有することができる。これは、上記信号を種々のエネルギ依存成分へ分解することを含むことができる。再構成器112は、上記エネルギ依存成分を再構成すると共に、1以上の異なるエネルギに対応する1以上の画像を生成するように構成することができる。該再構成器112は、上記エネルギ依存成分を組み合わせて、非スペクトラル画像データを生成することもできる。
【0091】
当該システムは、検査領域における物体又は被検者を支持するための寝椅子等の被検者支持体113を有することができる。該システムは、オペレータコンソール114、例えば当該システム100を制御若しくは監視し及び/又は操作者のためのユーザインターフェースを提供するようプログラムされた汎用コンピュータを有することもできる。該コンソール114は、モニタ若しくはディスプレイ等の人が読み取ることができる出力装置、並びにキーボード及びマウス等の入力装置を含むことができる。コンソール114に存在するソフトウェアは、操作者がスキャナ100とグラフィックユーザインターフェース(GUI)又はそれ以外を介して対話することを可能にすることができる。この対話は、スペクトラル撮像プロトコル又は非スペクトラル撮像プロトコルを選択すること、スキャニングを開始すること、等を含むことができる。
【0092】
当該撮像システム100は、ワークステーション、例えばコンピュータ等の計算システム116に動作的に接続することができ、該計算システムは当該スペクトラルCTスキャナとの通信を容易にするための入力/出力(I/O)インターフェース118を有することができる。該撮像システム100は計算システム116をシステムレベルでの統合構成要素として有することができ、又は該撮像システム100は、例えば画像データを計算システム116に伝送するために、独立型の計算システム116と通信するように構成することができる。
【0093】
計算システム116は、出力装置120を更に有することができる。該出力装置又は複数の出力装置は、例えば、表示モニタ、フィルムプリンタ、紙プリンタ及び/又はオーディオフィードバックのためのオーディオ出力を有することができる。該計算システムは、マウス、キーボード、タッチインターフェース及び/又は音声認識インターフェース等の入力装置122又は複数の入力装置も有することができる。計算システム116は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、処理のための専用の特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ等の適切に構成されたプログラマブルハードウェアプロセッサ等の、少なくとも1つのプロセッサ124も有することができる。該計算システムは、例えば、物理的デジタルメモリのような非一時的メモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体126を有することができる。該コンピュータ読取可能な記憶媒体126は、コンピュータ読取可能な命令128及びデータ130を記憶することができる。前記少なくとも1つのプロセッサ124は、コンピュータ読取可能な命令128を実行するように構成することができる。該少なくとも1つのプロセッサ124は、信号、搬送波又は他の一時的媒体により伝送されるコンピュータ読取可能な命令を実行することもできる。代わりに又は加えて、該少なくとも1つのプロセッサは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイの構成又は当該命令の少なくとも一部を実行するように特別に設計されたASICにより、これらの命令のメモリ記憶を必ずしも必要とせずに、斯かる命令128を具現化する(例えば、全体として又は部分的に)ように物理的に構成することもできる。
【0094】
当該計算システムは、本発明の第1態様の実施態様による画像処理装置10を実施化するために、例えば前述したコンピュータ読取可能な命令に従ってプログラムすることができる。
【0095】
命令128は、本発明の第4態様の実施態様による方法を実行するための画像処理アルゴリズム132を有することができる。
【0096】
更なる態様において、本発明の実施態様は、画像処理のための(例えば、スペクトラルCTボリューム画像処理のための)方法に関するものである。
【0097】
該方法は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信するステップを有する。該ボリューム画像データは、被検者身体における心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有し、上記造影ボリューム画像は、当該被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報(例えば、上記基準ボリューム画像によっては伝達されない冠動脈生体構造に関する追加の解剖学的情報)を伝達する。当該方法は、上記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する(又は、入力として受信する)ステップを有する。該方法は、該三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈血流をシミュレーションするステップを有する。該方法は、少なくとも1つの時点における組織内の血液分布を表す灌流画像を、少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレーションを考慮に入れて生成するステップを有する。
【0098】
本発明の実施態様による方法の詳細は、本発明の第1態様の実施態様に関する前述した説明との関連で明らかであろう。特に、本発明の実施態様による装置の前記データ入力部、血流シミュレータ及び/又は灌流合成ユニットにより果たされる機能は、本発明の実施態様による方法の対応するステップ及び/又はフィーチャを構成すると理解されるべきである。
【0099】
図4は、本発明の実施態様による例示的方法300を示す。
【0100】
該方法300は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データを受信する(取得する)ステップ301を有する。
【0101】
方法300は、ボクセルで構成されたスペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データ、例えば、スペクトラルCTシステム又はデータプロセッサから取得されるコンピュータトモグラフィ血管造影画像(例えば、スペクトラル冠動脈CT血管造影(CCTA)データ)、を取得するステップ301を有する。例えば、このステップは、例えば当業技術において既知の及び/又は図2に示された撮像システムに関して一層詳細に説明されたスペクトラル取得及びトモグラフィック再構成を有することができる。
【0102】
上記ボリューム画像データは、被検者身体における心臓領域の造影ボリューム画像及び該心臓領域の基準ボリューム画像を有し、上記造影ボリューム画像は、当該被検者の冠動脈生体構造に関する解剖学的情報を伝達する。
【0103】
例えば、スペクトラルCTボリューム画像データを取得するステップ301は、当業技術において既知のスペクトラル処理技術を適用して(302)、血管造影ボリューム画像及び基準ボリューム画像、例えば仮想非造影ボリューム画像及びヨウ素ボリューム画像を供給する(303)ステップを有することができる。代わりに、造影ボリューム画像及び非造影基準ボリューム画像は、外部ソースから直接取得する(301)こともできる。
【0104】
当該方法は、前記ボリューム画像データに基づいて三次元冠動脈ツリーモデルを生成する(又は、入力として受信する)ステップ304を有する。例えば、当該方法は、当該冠動脈を、前記スペクトラルコンピュータトモグラフィボリューム画像データ(例えば、前記造影ボリューム画像等の十分な動脈固有のコントラストを持つボリュームスペクトラル画像)に基づいて分割する(例えば、数値セグメンテーション、ユーザインターフェースを介して実行される誘導手動セグメンテーション又は混成数値/手動セグメンテーションを用いて)ステップ305を有することができる。
【0105】
当該方法は、前記三次元冠動脈ツリーモデルに基づいて冠動脈(流体的)血流をシミュレーションするステップ306を有する。
【0106】
該方法は、境界条件モデルを決定し、この境界条件モデルを冠動脈血流シミュレーション306に使用するステップ307も有することができる。
【0107】
該方法は、灌流画像、例えば灌流画像の時間系列(例えば、仮想動的CTP画像又は斯かる画像の時間系列)を生成するステップ308を有する。この灌流画像は、少なくとも1つの時点における血液分布を少なくとも前記基準ボリューム画像及び前記冠動脈血流シミュレーションを考慮に入れて表すものである。
【0108】
例えば、当該方法は、冠動脈内の造影剤の灌流及び/又は冠動脈内の血流を介して供給される組織内への血液拡散を表す動的灌流合成モデルを使用するステップ309を有することができる。
【0109】
当該方法は、更に、量的灌流マップ及び/又は当該灌流の自動化された若しくは誘導された分析を生成する(例えば、関心領域における灌流に関する量の要約を提供する)ステップ310を有することができる。例えば、灌流画像の時間系列を生成する(308)ために、時間系列において多数の時点を用いることができるので、量的灌流分析(例えば、量的灌流マップ)から得られる結果は、有利にも、低いノイズレベルを有し及び/又は実質的に撮像アーチファクトを有さない。このように、更なる臨床的分析のために高品質の量的マップを得ることができる。
【0110】
更に他の態様において、本発明の実施態様は、コンピュータシステムのプロセッサにより実行された場合に、該コンピュータシステムに本発明の実施態様による方法を実行させるような1以上のコンピュータ実行可能な命令によりエンコードされたコンピュータ読取可能な記憶媒体にも関するものである。
図1
図2
図3
図4