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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】センサ機能を有する侵襲性器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20220418BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61B5/0215 B
G01L9/00 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019553199
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057395
(87)【国際公開番号】W WO2018177906
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】17163533.7
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン レンズ アントニア コルネリア
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0201906(US,A1)
【文献】特開2013-206471(JP,A)
【文献】特開2009-022579(JP,A)
【文献】特開2015-121485(JP,A)
【文献】特開平09-044782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0215
G01L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある信号周波数を有する変調されたセンサ信号を作るセンサを備えるセンサチップ及び前記センサに関するデータを記憶し、前記変調されたセンサ信号に応じて前記データの少なくとも一部分を含むメモリ出力信号を生成する不揮発性メモリを含む器具先端部と、
前記センサチップをグランドに接続するための第1の供給ワイヤと、
前記センサチップに供給電圧を提供するために前記センサチップを電源装置に接続するための第2の供給ワイヤと、
前記変調されたセンサ信号と前記メモリ出力信号とを結合して結合信号とし、前記結合信号を変調信号として前記供給電圧に重畳する回路構成部と
を備える、侵襲性器具。
【請求項2】
前記回路構成部は、前記第2の供給ワイヤに結合された出力部を有し、前記変調されたセンサ信号を第1の入力として、前記メモリ出力信号を第2の入力として受信し、前記変調されたセンサ信号と前記メモリ出力信号との乗算結果として前記結合信号を作る乗算器を備える、請求項1に記載の侵襲性器具。
【請求項3】
前記変調されたセンサ信号は可変的信号周波数を有し、前記可変的信号周波数は前記変調を定めるか、又は、前記変調されたセンサ信号は固定的信号周波数を有し、埋込クロック信号を有するデジタル変調された信号を備える、請求項1又は2に記載の侵襲性器具。
【請求項4】
前記不揮発性メモリは、一回しか書き込めないメモリである、請求項1から3のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項5】
前記電源装置と前記センサとの間にフィルタを更に備え、前記フィルタは、前記センサに提供される前記供給電圧から前記変調信号を取り除く、請求項1から4のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項6】
前記不揮発性メモリは、
乗算器に結合されるとともに、前記センサに関する前記データを記憶するための複数のレジスタ要素を備えるデータシフトレジスタと、
前記変調されたセンサ信号に応答するとともに、前記データシフトレジスタのそれぞれのレジスタ要素に対する複数のアドレスポインタ含むアドレスシフトレジスタと
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項7】
前記データシフトレジスタは、エンコードされたフォーマットにおいて前記センサに関する前記データがプログラムされる、請求項6に記載の侵襲性器具。
【請求項8】
前記エンコードされたフォーマットは、DCフリーエンコードであり、8b/10b符号化である、請求項7に記載の侵襲性器具。
【請求項9】
前記データシフトレジスタは、センサ識別情報及び前記データシフトレジスタのプログラム可能部の開始点を定める識別情報を記憶するハードコード領域を備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項10】
前記データシフトレジスタ又は前記データシフトレジスタに結合されたプログラミングワイヤに結合されたプローブパッド又はワイヤ接着パッドを更に備える、請求項6から9のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項11】
ガイドワイヤ又はカテーテルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項12】
前記センサは圧力センサである、請求項1から11のいずれか一項に記載の侵襲性器具。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の侵襲性器具と、
制御モジュールであって、
前記第1の供給ワイヤに接続するための接地端子及び前記第2の供給ワイヤに接続するための供給電圧端子を有する電源装置モジュールと、
前記供給電圧への前記変調信号から前記変調されたセンサ信号及び前記メモリ出力信号を抽出する読み出しモジュールと
を含む制御モジュールと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定められた周波数を有するセンサ信号を作るように適合されたセンサを備えるセンサチップを含む器具先端部と、前記センサに関するデータを記憶するための不揮発性メモリとを備える侵襲性器具に関する。
【0002】
本発明は更に、このような侵襲性器具を含むシステム、及びこのようなシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
侵襲性器具は、医療において、患者の身体内の異常を検査及び/又は治療するために、一般的に普及している。このようなデバイスの例としては、カテーテル及びガイドワイヤがあるが、これらに限定されるものではない。例えば圧力センサなどの1つ又は複数のセンサを有するこのような侵襲性器具を延伸することが望ましく、これにより、患者の身体内における侵襲性器具の正確な適用を支援し、例えば、センサデータを監視することによって異常に印加される圧力が不十分な又は過度の量になることを避け、及び/又はセンサデータが、中間的な診断上の妥当性の一次データを補完するので、侵襲性器具の診断能力を向上させる。このセンサデータは、侵襲性器具が1つ又は複数の超音波トランスデューサを具備する場合には超音波データなどであり、侵襲性器具が1つ又は複数の画像センサ又はカメラを具備する場合には、光学データなどである。
【0004】
侵襲性器具にこのようなセンサが含まれる場合、デバイスは、典型的には、センサ較正データ、センサIDコード及び侵襲性器具による処置中に集められたデータのうちの少なくとも1つを記憶するためのメモリモジュールも必要とし、このメモリモジュールは、典型的には、メモリモジュールとリーダーとの間の有線接続を通じて読み出される。このため、このようなメモリモジュールは、しばしば、侵襲性器具のためのコネクタ、例えばプラグ内に位置する。というのは、このようなコネクタは、デバイス自体と同じサイズ上の制約に苦しむことはなく、メモリモジュールを収容するためのより大きな空間がコネクタ内にあるからであり、それによって、標準的なサイズの産業コンポーネントの使用を促進することができる。
【0005】
このような機構において使用される一般的な構成は、一方の側の制御モジュールと他方の側の侵襲性器具のセンサ及びメモリモジュールとの間のデータ通信が、Dallas Semiconductor Corporationによって開発された1-ワイヤバスを使用して実施されることであり、そこでは、メモリモジュールのための供給ワイヤがセンサによって共有される。しかしながら、これは、組み付けプロセス全体において、このプロセス中に集められるメモリモジュールにおける較正データの記憶を促進するために、メモリモジュール及びセンサがペアにならなければならないという欠点を有する。このようなペアリングは、間違いを生みやすく、このような侵襲性器具の製造歩留まりを減少させる。このようなデバイスは典型的にはかなり高価であることを考えると、このような歩留まり損失は大変望ましくない。
【0006】
このため、一般的に使用される代替的な手法は、侵襲性器具の先端部のセンサチップにメモリモジュールを組み込むことである。上に説明されたように、器具先端部は患者の身体内に挿入されてその中の対象となる場所へ到達するために十分な程度に小さくなければならないため、このような器具先端部は許容可能な寸法(フォームファクター)に関して制約があるので、それ自体の課題がある。このため、器具先端部と侵襲性器具のコネクタとの間のインターフェースワイヤの数について明白な設計制約がある。
【0007】
米国特許第9,050,001B2号は、有線インターフェースを介してプローブに電気的に接続された読み取りデバイスを含む監視システムを開示している。プローブは、ホイートストン抵抗ブリッジ平衡回路として構成された生理学的センサ/トランスデューサを有する。センサと並列に配置されたメモリデバイスが、ユーザによる使用中の分離を禁ずるためにプローブの筐体内に一体化される。読み取りデバイスとプローブとの間の通信は、メモリデバイスがない場合に必要となるのと同数の、読み取りデバイスとホイートストンとの間の電気的ワイヤを利用した有線インターフェースを介して行われる。制御回路は、センサによって検知されたデータ又はメモリデバイスにアクセスするために2つのモードのうちの1つを選択する。このシステムは、読み取りデバイスとプローブとの間に、4-ワイヤインターフェースを利用している。しかしながら、例えば侵襲性器具の一層の小型化を促進するために、インターフェースワイヤの数を更に減少させる需要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定の周波数を有するセンサ信号を作るように適合されたセンサを備えるセンサチップを含む器具先端部と、前記センサに関するデータを記憶するための不揮発性メモリとを備える侵襲性器具であって、デバイスからセンサデータ及びメモリデータを抽出するために必要とするインターフェースワイヤの数がより少ない侵襲性器具を提供しようとするものである。
【0009】
本発明は更に、このような侵襲性器具を含むシステムを提供しようとするものである。
【0010】
本発明はなおも更に、このようなシステムを動作させる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によると、ある信号周波数を有する変調されたセンサ信号を作るように適合されたセンサを備えるセンサチップ及び前記センサに関するデータを記憶し、前記変調されたセンサ信号に応じて前記データの少なくとも一部分を含むメモリ出力信号を生成するように適合された不揮発性メモリを含む器具先端部と、センサチップをグランドに接続するための第1の供給ワイヤと、センサチップに供給電圧を提供するためにセンサチップを電源装置に接続するための第2の供給ワイヤと、前記変調されたセンサ信号と前記メモリ出力信号とを結合して結合信号とし、前記結合信号を変調信号として供給電圧に重畳するように構成される回路構成部とを備える侵襲性器具が提供される。
【0012】
こうして、本発明の実施形態による侵襲性器具は、一対の供給ワイヤのうちの1つを介してセンサデータ及びメモリモジュールデータを同時に送達する機能を提供すると同時に、一方側のセンサ及びメモリモジュールと他方側の侵襲性器具の制御モジュールとの間のデータ通信を促進するために必要とするインターフェースワイヤの数を低減する。一実施形態によると、回路構成部は、第2の供給ワイヤに結合された出力部を有し、変調されたセンサ信号を第1の入力として、メモリ出力信号を第2の入力として受信し、前記変調されたセンサ信号と前記メモリ出力信号との乗算結果として結合信号を作るように構成された乗算器を備える。
【0013】
センサ信号の変調は、センサによって作られるデータを定める。このような変調は、任意の適切なやり方によって提供される。好ましくは、変調されたセンサ信号は可変的信号周波数を有し、前記可変的信号周波数は変調を定め、すなわち、周波数変調されるが、代替的に、変調されたセンサ信号は固定的信号周波数を有してもよく、これはセンサデータを定めるためにデジタル変調法によって変調される。選ばれる変調法は、例えば、メモリからのデータ抽出を制御可能で、データの読み取りを可能にするためにシステムにおいて検知可能な埋込クロック信号を含む。
【0014】
好ましくは、不揮発性メモリは、一回しか書き込めないメモリであり、それによって、正確な動作及びセンサデータ、例えばセンサ較正データの解釈のために不可欠な不揮発性メモリに記憶されたデータは、侵襲性器具の使用中に偶発的に上書きされることから保護され、それによって、このような偶発的な上書きによって動作不能とされることからデバイスを保護する。
【0015】
侵襲性器具は、第2の供給ワイヤに沿って乗算器と電源装置との間に位置するフィルタを更に備え、前記フィルタは、センサチップが安定的な供給電圧を提供されることを保証するために、センサチップに提供される供給電圧から前記変調を取り除くように構成される。
【0016】
不揮発性メモリは、好ましくは、マルチプレクサーに結合されるとともに、前記センサに関するデータを記憶するための複数のレジスタ要素を備えるデータシフトレジスタと、変調されたセンサ信号に応答するとともに、データシフトレジスタのそれぞれのレジスタ要素に対する複数のアドレスポインタ含むアドレスシフトレジスタとを備える。このような不揮発性メモリは、センサ信号によって黙示的にアドレス付けされるという恩恵を受け、メモリは、センサ信号の周波数においてデータシフトレジスタ要素を循環する。
【0017】
一実施形態において、データシフトレジスタは、供給電圧の変調を、例えば侵襲性器具の制御モジュールの読み出しモジュールによって解釈する際に、センサ信号とメモリデータとの間の区別を容易にするために、エンコードされたフォーマットにおいて前記センサに関するデータがプログラムされる。このようなエンコードフォーマットは、好ましくは、センサチップに供給される供給電圧を供給電圧変調におけるDCオフセットに起因するDC変動から保護するために、8b/10b符号化などのDCフリーエンコードフォーマットである。8b/10b符号化の符号化フォーマットは、本発明によってメモリアドレス認識に利用されるフレーム同期の形態を達成するために固有のいわゆる「Kコード」を使用するので、特に適切であり、これによって明示的なメモリアドレスプログラミングの必要がなくなる。
【0018】
データシフトレジスタは、センサ識別情報を記憶するためのハードコード領域を備え、それによって、センサ識別情報は、例えば較正中にデータシフトレジスタにプログラムされることを必要としなくなる。ハードコード領域は、データシフトレジスタのプログラム可能部の開始点を定める識別情報も含む。
【0019】
不揮発性メモリは、センサチップによって自律的にプログラムされ、この場合、不揮発性メモリによるプログラミングデータの受信を促進するための制御モジュールと侵襲性器具との間の追加的なワイヤリングは必要ない。代替的に、侵襲性器具は、データシフトレジスタに結合されたプローブパッド又はワイヤ接着パッドを更に備え、侵襲性器具の一体化中、すなわち一体化プロセス中にプローブパッドがいまだにアクセス可能である間のセンサ関連データのアップロードを促進し、又は、侵襲性器具は、データシフトレジスタに結合されたプログラミングインターフェースワイヤを更に備え、デバイスの一体化の完了時のこのようなデータのアップロードを促進する(この場合、センサチップのプローブパッドはもはやアクセス不能である)。
【0020】
例示的な実施形態において、侵襲性器具は、ガイドワイヤ又はカテーテルである。このようなデバイスは、意図されたとおりにそれらを使用すること可能にするために小型の器具先端部を特に必要とし、従って、本発明の教示から特に恩恵を受け、上に説明されたように、センサ及び不揮発性メモリからのデータの同時的な通信が供給ワイヤだけを必要とするという事実によって器具先端部のフォームファクタの減少を支援する。侵襲性器具は、診断目的及び/又は外科手術目的のために設計される。典型的には、侵襲性器具は、哺乳類、最も顕著には人間の患者への侵襲性処置のために設計される。
【0021】
例示的な実施形態において、センサは圧力センサであるが、他のタイプのセンサも同様に想定される。このような圧力センサは、いわゆるFFR(血流予備量比)処置などの処置において使用され、この処置中に、(冠状)動脈の狭窄領域(病変)に対する近位及び遠位の位置で血圧が測定される。2つの圧力の比率は、病変の影響を反映し、ステントが動脈に挿入されるべきかについて、及びこのステントがどこに置かれるべきかについての決定への決定的な入力を提供する。
【0022】
別の態様によると、本明細書において説明されたいずれかの実施形態の侵襲性器具と、制御モジュールであって、第1の供給ワイヤに接続するための接地端子及び第2の供給ワイヤに接続するための供給電圧端子を有する電源装置と、変調された供給電圧から変調されたセンサ信号及びメモリ出力信号を抽出するように適合された読み出しモジュールとを含む制御モジュールとを備えるシステムが提供される。このようなシステムは、センサ及び不揮発性メモリからのデータを同時に読み出すと同時に、このような同時的な読み出しを促進するために2つの供給ワイヤだけしか必要としないという機能から恩恵を受ける。
【0023】
なおも別の態様によると、このようなシステムを動作させる方法であって、方法は、接地端子が第1の供給ワイヤに接続され、供給電圧端子が第2の供給ワイヤに接続されるように侵襲性器具を制御モジュールに接続するステップと、電源装置によって、供給電圧を第2の供給ワイヤに供給することによって、侵襲性器具を制御するステップと、前記変調されたセンサ信号と前記メモリ出力信号との結合信号によって変調された供給電圧を、第2の供給ワイヤを介して受け取るステップと、変調された供給電圧から読み出しモジュールによって前記変調されたセンサ信号及びメモリ出力を抽出するステップとを有する方法が提供される。このような方法によって、センサデータ及び不揮発性メモリデータは、2つの供給ワイヤだけを使用して侵襲性器具から同時に読み出され得、それによって、侵襲性器具の読み出し時間及びサイズの観点から、このようなデータを取得する効率的な方法が提供される。
【0024】
方法は、変調された供給電圧から取り出されたときに、メモリからのデータがセンサデータからより容易に区別され得るように、エンコードされたフォーマットにおいて前記センサに関するデータを不揮発性メモリにプログラムするステップを更に有する。
【0025】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照して、非限定的な例示としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態による侵襲性診断ツールの一態様を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施形態による侵襲性診断ツールによって生成されるデータ信号の例示的なセットを概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態による侵襲性診断ツールによって生成されるデータ信号の別の例示的なセットを概略的に示す図である。
図4】別の実施形態による侵襲性診断ツールの一態様を概略的に示す図である。
図5】なおも別の実施形態による侵襲性診断ツールの一態様を概略的に示す図である。
図6】本発明の実施形態による侵襲性診断ツールを含むシステムを動作させる方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は単なる概略であり、縮尺通りでないことを理解されたい。同一の参照番号は図面全体を通じて同一の又は類似の部分を示すために使用されることも理解されたい。
【0028】
図1は、本発明の実施形態による侵襲性処置のためのシステムを概略的に示す。システムは、カテーテル又はガイドワイヤなどの侵襲性器具1を備え、このデバイス1は、例えば患者内に挿入されたとき、侵襲性器具1の動作を制御するために制御モジュール50に結合される。このような結合は、任意の適切なやり方で達成される。例えば、結合は、プラグアンドソケットタイプの結合であり、侵襲性器具1は、例えばコネクタケーブルの端部にプラグを備え、このプラグは、制御モジュール50のソケットと噛み合わさる。他の適切な結合機構は、当業者には即座に明らかであろう。
【0029】
侵襲性器具1は、センサ20を備えるセンサチップ10を備える。センサチップ10は、特定用途向け集積回路(ASIC)であり、任意の適切な半導体技術を使用して製造される。センサ20は、侵襲性器具1の機能を拡張するために適切な任意のタイプのセンサである。特定の実施形態において、センサ20は、侵襲性器具1が接触する組織における圧力を感知するように適合された圧力センサである。センサチップ10は、典型的には、侵襲性器具1の先端部に位置する。本出願のコンテキストにおいて、器具先端部は、診断に関連する侵襲性器具1の部分、すなわち、臨床医が診断上の発見の基礎を置くデータの収集のために使用されるデバイスの部分であると定義される。
【0030】
センサチップ10は制御モジュール50の電源装置モジュール61によって動力供給され、この動力供給は、センサチップ10を制御モジュール50の接地端子65に接続する第1の供給ワイヤ11、及び、制御モジュール50の供給端子67を通じ、電源装置モジュール61がこれを介してセンサチップ10に供給電圧を提供する第2の供給ワイヤ13を介して行われる。第2の供給ワイヤ13は、制御モジュール50の読み出しモジュール63に、センサ20によって生成されるセンサ信号を提供するためにセンサ20によって利用され、例示的な実施形態においては、このセンサ信号は、供給電圧の変調信号としてセンサ20によって、センサチップ10のセンサ出力接続15を通じて、供給電圧に付加されるが、センサ20は、センサデータを変調信号として含む任意の適切な出力信号を生んでよいことを理解されたい。このような変調は、いくつものやり方によって達成される。好ましい実施形態において、変調は周波数変調である。本出願のコンテキストにおいて、このような周波数変調は、(圧力)センサ信号が周波数fによって表され、fが圧力センサ20によって感知される圧力の関数として変化する変調である。このような「擬似デジタル」信号は供給ワイヤ11、13にわたる干渉に対して堅牢性を有するので、このような周波数変調された出力信号は魅力的である。
【0031】
代替的に、センサ信号は、センサ20の固定的クロック周波数に重畳されるデジタル符号として変調され、それによって、この変調は、埋込クロック信号によるデジタル変調方法を実施する。埋込クロック信号は、その後、データを復号するために使用される。
【0032】
第1の供給ワイヤ11及び第2の供給ワイヤ13は、典型的には、センサチップ10と制御モジュール50との間のインターフェースを定めるものであり、本発明の少なくともいくつかの実施形態においては、センサチップ10の一部を形成するものと理解されるべきでない。
【0033】
センサチップ10は、センサ20に関するデータが記憶され得る不揮発性メモリ30を更に備える。このようなデータは、例えば、センサ20のための識別コード、センサ20のための較正データ、及び/又は侵襲性器具1によって実施される(診断)処置中に収集されたデータを含む。PROM、EEPROMなどの任意の適切な不揮発性メモリ30が、この目的のために使用される。センサ20のための識別情報及び較正データが記憶される場合には、不揮発性メモリ30は、好ましくは、センサ20を識別不能に又は他の理由で使用不能にしてしまうことがあるこのようなデータの偶発的な上書きを防止するために、一回しか書き込めないメモリである。当業者には容易に理解されるように、不揮発性メモリ30は、典型的には、侵襲性器具1の先端部に適用可能なサイズ要件を満たすような寸法とされる。
【0034】
好ましい実施形態における不揮発性メモリ30は、センサ20に関するデータが記憶され得る複数のシフトレジスタ要素又はセル34を備えるデータシフトレジスタ33を備える。不揮発性メモリ30は、データシフトレジスタ33の対応するシフトレジスタ要素34に対するアドレスポインタが記憶される複数のシフトレジスタ要素又はセル32を備えるアドレスシフトレジスタ31を更に備える。アドレスシフトレジスタ31は、センサ20によって作り出されるセンサ信号の周波数、例えばその埋込クロック信号に応答し、それによって、センサ20のセンサ信号の各周期に、アドレスシフトレジスタ31は隣接するアドレスシフトレジスタ要素32にシフトし、それによって、アドレス付けされた(選択された)アドレスシフトレジスタ要素32に記憶されたアドレスポインタによって示された隣接するデータシフトレジスタ要素34を選択する。前記のことから分かるように、これは周波数変調されたセンサ信号の場合は可変的周波数信号であり、デジタル変調方法によって変調されたセンサ信号の場合は固定的周波数信号である。
【0035】
選択されたデータシフトレジスタ要素34は、内部に記憶されたデータをメモリ出力17に出力する。一実施形態において、データシフトレジスタ33は、データシフトレジスタ33の1つ又は複数のデータシフトレジスタ要素34からなるハードコード領域35を備え、このハードコード領域35は、センサ20の識別コード又はセンサ20についての他の情報を記憶するために使用されるとともに、前に説明されたように、プログラム可能なデータシフトレジスタ33の部分の開始を定める。
【0036】
例示的な実施形態において、侵襲性器具1は、乗算器回路要素40を含む回路構成部41を更に備え、これは、センサ出力15からの変調されたセンサ出力信号を第1の入力として、不揮発性メモリ出力17からのメモリデータ信号を第2の入力として受信し、センサ信号を更に変調して、この更に変調された電圧供給信号をその出力18に作り出すために、センサ20の(周波数)変調された出力信号を、メモリ出力17を介して提供された不揮発性メモリ30からのデータで乗算する。
【0037】
結果として、乗算器40の出力18は、2つのデータストリームを搬送する結合信号を含む。1つ目はセンサからの出力信号であり、この例においては、出力18における信号の周波数で表され、2つ目は不揮発性メモリからのビットシーケンスである。こうして、この例においては、ビットシーケンスを形成するパルスのシーケンスが存在するが、ビット周波数は可変的であり、可変的周波数がセンサ情報をエンコードする。故に、信号は、不揮発性メモリ30からエンコードされたビットパターンに関わらず、ビット周波数を決定可能とするように設計される。
【0038】
本質的には、2つの直交的な変調スキーム、すなわち、独立的に復調される2つの独立した変調がある。上述の例は、周波数変調を含み、それに続いてビットシーケンスが形成される。しかしながら、任意の変調技術のペアが使用されてよい。復調は、メモリからのビットシーケンスの解釈を可能にするためにクロック信号を抽出可能であるとともに、センサ信号を抽出可能である必要がある。センサ信号は、アナログ変調信号又はデジタル変調信号として提供される。二重の変調に関する可能な選択肢は、信号処理分野の当業者には明らかであろう。
【0039】
乗算器回路要素40を含む回路構成部41は、好ましくは、センサチップ10の一部を形成するが、乗算器回路要素40は、代替的に、センサチップ10とは別個に、例えばセンサチップ10と制御モジュール50との間の別個のチップ位置に設けられてよいことを理解されたい。メモリデータからの変調されたセンサ信号の抽出を容易にするため、すなわち変調されたセンサ信号とメモリデータとの間の干渉を防止するために、メモリデータは、好ましくは、データシフトレジスタ33において、ライン符号化方式の任意の適切な形態を使用してエンコードされたフォーマットで記憶される。このようなエンコードフォーマットは、好ましくは、DCフリーエンコードフォーマットであり、そこでは、センサチップ10と制御モジュール50すなわち電源装置61との間の第2の供給ワイヤ13上でのDCバランスを達成するために、定められた期間の間、バイナリ1s及び0sの数は等しく、又は1以上異なることはない。特に適切なエンコードフォーマットは8b/10bエンコードであり、というのは、このようなライン符号は、DCバランス及び制限されたディスパリティ(bounded disparity)を達成可能でありつつ、妥当なクロック復元、同期のための予約符号、データスティッチング、及び誤差補正などを可能にする十分な状態変化(データ遷移)をなおも提供することがよく知られているからである。このようなライン符号、特には8b/10bエンコードは、周波数変調されたセンサ信号とメモリデータとが互いに影響を与えることなく乗算器回路要素40によって結合されることを可能にする。
【0040】
8b/10bエンコードの更なる利点は、いわゆるKコードを含むことであり、Kコードは、フレーム同期の形態を達成するために利用される固有のコードであり、メモリアドレス認識に利用される。第2の供給ワイヤ13上のこのように更に変調された供給電圧は、更に変調された供給電圧からセンサ信号及びメモリデータ信号を抽出するために、制御モジュール50の読み出しモジュール63によって処理される。周波数変調され、ライン符号化された信号の処理はそれ自体がよく知られているので、読み出しモジュール63の機能は、単純化のみを目的として、更には説明されない。
【0041】
図2及び図3は、乗算器回路要素40の機能の例、特には、乗算器回路要素40が、どのようにセンサ出力15からの変調された電圧供給信号、すなわちセンサ信号をメモリ出力17からのメモリデータ信号と結合して乗算器回路要素40の出力18上に更に変調された電圧供給信号を作るかを概略的に示す。
【0042】
乗算器出力18における信号は、回路構成部41の加算器45によって供給端子67の供給電圧に重畳され、重畳された信号は制御モジュールにおいて抽出されて2つのデータストリーム(センサ信号及びメモリデータ)の復調を可能にする。加算器45は、乗算器40と制御モジュール50(すなわち、電源装置61)との間に配置される。供給電圧は、例えばDC電圧であり、より大きさの小さいAC変調信号がそこに重畳される。上述のように、このAC信号は固定的又は可変的周波数を有する。
【0043】
センサ20は、電源供給における変動、例えば電源供給信号に付与される変調に起因する変動に対してセンサが堅牢であるように設計され、というのは、このような変調は、典型的には、電源供給信号自体よりも少なくとも一桁小さいからである。しかしながら、センサ20がこのような堅牢性を欠いている場合、センサ20などのセンサチップ10の様々なコンポーネントが、前述の変調なしに供給電圧を提供されることを保証するために、侵襲性器具1は、任意選択的に、例えば加算器45とセンサ20との間に位置し、乗算器回路要素40によって作り出される更なる変調を、センサ20に提供されるべき供給電圧から減算するフィルタ47を更に備える。当業者には容易に理解されるように、このことは、センサ20に届く供給電圧が、センサ20によって供給電圧に付与される変調と干渉する可能性のある任意の変調を既に呈していることがないことを保証する。フィルタ47は、好ましくは、センサチップ10に位置するが、代替的な実施形態において、フィルタ47はセンサチップ10とは別個に、例えばセンサチップ10と制御モジュール50との間の別個のチップに位置する。
【0044】
この点において、上記の実施形態において、非限定的な例として、結合され、変調された信号の供給電圧への重畳を行うための回路構成部41は、乗算器回路40と加算器回路45とを備えることが留意される。信号処理分野の当業者には明らかであろうように、このような結合信号の生成及びその供給電圧への重畳のための任意の他の適切な回路構成部が使用される。
【0045】
図1において、センサ20は更に、センサ20に関連するデータ、例えばその較正データ又は侵襲性器具1による侵襲性処置中に取得されたデータを不揮発性メモリ30にプログラムするために、不揮発性メモリ30のデータシフトレジスタ33を自己プログラムするように構成される。当御者には容易に理解されるように、これは任意の適切なやり方で、例えばセンサチップ10の適当なワイヤリングを通じて達成される。しかしながら、図4において概略的に示される代替的な実施形態において、センサチップ10は、センサ20に関するにデータをデータシフトレジスタ33にプログラムするように適合され、不揮発性メモリ30に結合されたプログラミングモジュール37を含む。このようなプログラミングモジュール37は、例えば、センサチップ10の専用の接着パッド、例えばプローブパッド又はワイヤ接着パッドを通じて、(センサチップ10のこの専用の接着パッドが未だアクセス可能であるうちに)侵襲性器具1内へのセンサチップ10の一体化に先立って作動される。代替的に、プログラミングモジュール37は省略されて、不揮発性メモリ30は、このような専用の接着パッドを通じて、侵襲性器具1内へのセンサチップ10の一体化に先立って直接的にプログラムされる。
【0046】
不揮発性メモリ30へのセンサ20に関するデータのプログラミングが侵襲性器具1内へのセンサチップ10のこのような一体化の後に実施されることが望ましいシナリオにおいて、図5において概略的に示されるように、センサチップ10と制御モジュール50との間のインターフェースは、追加的なインターフェースワイヤ19を備え、これを通じて不揮発性メモリ30はプログラムされる。これは、侵襲性器具1内へのセンサチップ10の一体化の完了の際に、センサ20の較正を容易にするという観点から望ましく、較正データの正確性を向上させるが、センサチップ10と制御モジュール50との間に、すなわち、前に説明されたインターフェースワイヤ11及び13からなる2-ワイヤ式の実施態様に加えて、追加的なインターフェースワイヤが設けられるという代償がある。
【0047】
侵襲性器具1と制御モジュール50とを含むシステムの実施形態を動作させる典型的な方法100のフローチャートが、図6に示される。動作101において、不揮発性メモリ30に、較正データなどセンサ20に関するデータが、好ましくは、前に説明されたようにエンコードされたフォーマットでプログラムされる。このようなプログラミングは、センサ20に関連する識別情報を不揮発性メモリ30にプログラムすることを更に含むが、前に説明されたように、このような識別情報は、好ましくは、不揮発性メモリ30のデータシフトレジスタ33の領域35にハードコードされる。例えば一回しか書き込めないメモリ30の場合、メモリ内に記憶されたデータの上書きを防止するために、動作101は一回だけ実施されることが更に好ましい。プログラミング動作101は、上述の例示的なプログラミングオプションのうちの任意のものに従って実施される。
【0048】
動作103において、侵襲性器具1は、侵襲性処置、例えば侵襲性外科処置及び/又は侵襲性診断処置の実施のために制御モジュール50に接続され、制御モジュール50の接地端子65は、制御モジュール50をセンサチップ10にインターフェースする第1の供給ワイヤ11に接続され、供給電圧端子67は、制御モジュール50をセンサチップ10にインターフェースする第2の供給ワイヤ13に接続される。当業者には容易に理解されるように、このような接続は、任意の適切なやり方で、例えば、侵襲性器具1に装着されたプラグを制御モジュール50の対応するソケットに挿入することによって確立される。
【0049】
この接続の確立に際して、動作105において、侵襲性器具1は、供給電圧端子67を通じて、電源装置モジュール61によって第2の供給ワイヤ13に供給電圧を供給することによって制御され、この供給電圧は、センサ20とマルチプレクサー40を含む回路構成部とによって変調されて、前に説明されたように、結合されたセンサデータ及びメモリデータの変調を供給電圧に重畳し、動作107において、この変調された供給電圧は、第2の供給ワイヤ13を介して読み出しモジュール63によって受信され、動作109において、読み出しモジュール63は、センサ20によって作り出されたセンサ信号と、不揮発性メモリ30からのデータとを、この更に変調された供給電圧から抽出する。
【0050】
上に述べられた実施形態は、本発明を限定するものではなく、むしろ説明するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、多くの代替的な実施形態を設計できるであろうことに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に置かれる任意の参照符号は、請求項を限定するものと解釈されるべきではない。「備える(comprising)」という語は、請求項に列挙されたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。ある要素に先行する「1つの」(「a」又は「an」)という語は、このような要素の複数の存在を排除するものではない。本発明は、いくつかの別個の要素を備えるハードウェアによって実現され得る。いくつかの手段を列挙するデバイスの請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、1つの同一のハードウェアアイテムによって具現化され得る。特定の手段が互いに異なる従属請求項において記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6