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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】ピッチを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/02 20060101AFI20220418BHJP
   C10C 3/04 20060101ALI20220418BHJP
   B01D 11/00 20060101ALI20220418BHJP
   D01F 9/15 20060101ALI20220418BHJP
   C10C 3/08 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C10B57/02
C10C3/04 F
B01D11/00
D01F9/15
C10C3/08
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019555633
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018027110
(87)【国際公開番号】W WO2018191378
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】62/508,333
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/484,292
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッチ,ベンジャミン,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ジョシュア シー.
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/043651(WO,A1)
【文献】特開平04-316615(JP,A)
【文献】特表2016-522836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083538(US,A1)
【文献】特開平04-351694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 57/02
C10C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチを生成する方法であって、
炭素質供給原料の組み合わせを第1温度および第1圧力で第1期間の間、熱分解してC-Cガスを生成することと、
前記組み合わせを前記第1温度よりも高い第2温度に増加させることと、
前記第2温度で第2期間の間、前記組み合わせを熱分解してピッチを生成することと、
前記組み合わせからピッチを抽出することと、
を含
熱分解雰囲気中の1つ以上のC -C ガスの濃度を監視することをさらに含み、前記第1期間は、ある所定の期間にわたって、監視された1つ以上のガスの濃度がある閾値量未満増加したことが観察された場合に、終了される、方法。
【請求項2】
前記ピッチから炭素繊維を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1温度が150~350℃であり、前記第1圧力が7~30MPaである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2温度が350~550℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1期間は、1~120分の長さである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値量は2%または100ppmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2期間は、1分~24時間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1温度および第1圧力で炭素質供給原料を熱分解することは、第1熱分解反応チャンバ内で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記第2温度で前記炭素質供給原料を熱分解することは、前記第1熱分解反応チャンバ内で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2温度で炭素質供給原料を熱分解することは、前記第1熱分解反応チャンバとは異なる第2熱分解反応チャンバ内で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1温度および第1圧力で炭素質供給原料を熱分解することは、二酸化炭素雰囲気中で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の期間は、10秒、1分または5分である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記ピッチを抽出することは、前記二酸化炭素雰囲気を分離システムに移送することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ピッチを抽出することは、前記二酸化炭素雰囲気の温度または圧力のうちの少なくとも1つを低下させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ピッチから炭素繊維を製造することは、前記ピッチを押し出すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記ピッチから炭素繊維を製造することは、前記ピッチの繊維を製造することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
石炭からピッチを生成する方法であって、
二酸化炭素雰囲気中で石炭の組み合わせを含む反応チャンバを第1温度および第1圧力に加熱することと、
前記二酸化炭素雰囲気中でC-Cガスを生成するのに十分な第1期間の間、前記反応チャンバを前記第1温度および第1圧力に維持することと、
前記反応チャンバの温度を前記第1温度よりも高い第2温度に増加させることと、
前記反応チャンバを前記第2温度に第2期間の間、維持し、それによって少なくともいくらかのピッチを生成することと、
前記第2期間の後に、二酸化炭素およびその中に溶解したピッチを前記反応チャンバから除去することと、
前記反応チャンバから除去された二酸化炭素からピッチを分離することと、
を含
二酸化炭素雰囲気中の1つ以上のC -C ガスの濃度を監視することをさらに含み、前記第1期間は、ある所定の期間にわたって、監視された1つ以上のガスの濃度がある閾値量未満増加したことが観察された場合に、終了される、方法。
【請求項18】
前記ピッチから繊維を製造することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1温度が150~350℃であり、前記第1圧力が7~30MPaである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2温度が350~550℃である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1期間は、1~120分の長さである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項22】
前記閾値量は2%または100ppmである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2期間は、1分~24時間である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項24】
前記所定の期間は、10秒、1分または5分である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項25】
反応チャンバから二酸化炭素およびその中に溶解したピッチを除去することは、前記二酸化炭素雰囲気を分離システムに移送することを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項26】
前記ピッチを前記二酸化炭素から分離することは、二酸化炭素の温度、圧力、またはその両方を低下させることを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項27】
前記ピッチを使って炭素繊維を生成することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項28】
前記ピッチを使用して炭素繊維を生成することは、前記ピッチを押し出して繊維にすることを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、番号:62/484,292、名称:”Method of Pyrolysis Optimized for Production of Pitch and Subsequent Use in Making Carbon Fiber”、出願日:2017年4月11日、および、番号:62/508,333、名称:”Flexible Pyrolysis System and Method”、出願日:2017年5月18日、の米国仮特許出願番号の利益を主張し、この結果、これらの出願は参照によってここに導入される。
【0002】
〔序論〕
熱分解は、無酸素下での高温での有機物質(材料)の熱化学的分解を指す。熱分解装置がどのように構成され、動作されるかに応じて、異なる熱分解反応生成物を得ることができる。
【0003】
〔柔軟な熱分解システムおよび方法〕
超臨界二酸化炭素(CO)などの超臨界流体中で石炭の組み合わせを熱分解することができる少なくとも1つの反応チャンバを含む柔軟な(flexible)熱分解システムの例を以下に記載する。このシステムは、超臨界流体から溶解(溶解した、溶存態の)熱分解反応生成物を除去し、次いで、反応チャンバ内で再利用(再使用)するために流体を回収する回復(復熱、換熱、再生)(recuperation)および凝縮(復水)(condensing)回路を含む。回復および凝縮回路は、熱分解反応生成物を選択的に分画(分別、分留)するために独立して制御されることができる複数段階(複数段、多段階、多段)の(multiple stages)回復器(レキュペレーター、復熱器、換熱器、再生器)(recuperator)およびコレクタ(捕集(収集)器)を含む。さらに、熱分解反応は、生成される熱分解反応生成物を変化させるように制御されてもよい。
【0004】
〔図面の簡単な説明〕
本出願の一部を構成する以下の図面は説明された技術を示すものであり、本明細書に添付された請求の範囲を基礎とする、任意の方法でクレームされた本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0005】
図1は、高レベルで、所与の供給原料から生成されるピッチの相対量を改善する熱分解方法の簡略化された実施形態を示す。
【0006】
図2は、図1の熱分解方法のより詳細な実施形態を示す。
【0007】
図3は、上述のピッチ製造方法に適したシステムの一例である。
【0008】
図4は、所与の供給原料から得られる熱分解反応生成物を変化させるように調整することができる柔軟な熱分解システムのバッチ実施形態のプロセスフロー図を示す。
【0009】
図5A~5Cは、図4に示すシステムの実施形態の実験性能を示す。
【0010】
図6は、COを用いて炭素質供給原料を熱分解して、反応生成物を得るための広範な方法の実施形態を示す。
【0011】
図7は、超臨界COを用いて石炭を熱分解する方法のより詳細な実施形態である。
【0012】
〔詳細な説明〕
柔軟な熱分解方法およびシステムが開示され、説明される前に、本開示は本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されず、当業者によって認識されるように、それらの等価物に拡張されることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図しないことも理解されるべきである。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈がそわないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「一つの(「a」)水酸化リチウム」への言及は定量的または供給源限定として解釈されるべきではなく、「一つの(「a」)ステップ」への言及は複数のステップ(工程)を含むことができ、反応の「生成」または「生成物(products)」への言及は反応生成物のすべてであると解釈されるべきではなく、「反応」への言及はそのような反応ステップの1つまたは複数への言及を含むことができる。そのようなものとして、反応する工程は同定された反応生成物を生成するために、類似の物質の複数または反復反応を含み得る。
【0013】
ピッチは、石炭、木材および他の有機物質から製造することができる多芳香族(polyaromatic)炭化水素を含む炭化水素の集合体を指す。ピッチは高い(>80重量%)元素炭素組成物、高濃度の多環式芳香族炭化水素(PAH)、および軟化温度を有することを特徴とし、軟化温度は100℃~250℃を超える範囲であり得る(Vicat法ASTM-D 1525を使用して測定)。一般に、炭素繊維に適したピッチは、高濃度の異方性中間相ピッチを形成することができる。これは、コーティングおよび塗料のための基材として、屋根および舗装において、ならびにアスファルト製品中のバインダーとして使用することができる。ピッチはまた、以下により詳細に議論されるように、炭素繊維を生成するために使用され得る。
【0014】
以下のシステムおよび方法は超臨界二酸化炭素の実施形態に関して提示されるが、水、メタン、亜酸化窒素などの任意の超臨界流体を使用することができる。
【0015】
図1は、高レベルで、所与の供給原料(原料油)から生成されるピッチの相対量を改善する熱分解方法の簡略化された実施形態を示す。図示の方法100では、炭素質供給原料物質および水を2段階熱分解にかける。水は、供給原料内の水分含有量として存在してもよい。あるいは、追加の水を、熱分解の前または熱分解中のある箇所で供給原料に添加してもよい。
【0016】
第1段階は、供給原料からC-Cガスを除去するための低温熱分解動作(操作、工程、作業、運転)102である。この段階102では、熱分解がより低い温度(例えば、7~30MPaで150~350℃)で行われる。供給原料は第1段階温度に加熱され、その温度に保持されて、供給原料からC-Cガスを生成され、除去される。一実施形態では、熱分解反応チャンバ内のガスが監視され、オペレータ(操作者)の基準に基づいてC-Cガス濃度が横ばいになり始めたと判定されると、高温熱分解動作104が実行される。
【0017】
第1段階温度は、供給原料の特性の事前知識に基づいて選択されてもよく、または熱分解反応および生成される生成物のリアルタイム分析に基づいて自動的に決定されてもよい。実施形態に応じて、第1段階温度は、150℃、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、および325℃から選択される、より低い範囲(lower range)を有してもよく、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、325℃、および350℃から選択される、より高い範囲(upper range)を有してもよく、その結果、前述のより低い範囲およびより高い範囲の任意の組み合わせが使用されてもよい。
【0018】
第2段階熱分解動作104では、7~30MPa、例えば7~12MPaで温度を350~550℃に上昇させ、ピッチを生成させるのに十分な時間その温度に保持する。第1段階と同様に、システムが平衡になると、生成される熱分解反応生成物の量は時間の経過と共に横ばいになり、第2熱分解動作104の長さはオペレータの裁量である。
【0019】
第2段階温度は、供給原料の特性の事前知識に基づいて選択されてもよく、または熱分解反応および生成される生成物のリアルタイム分析に基づいて自動的に決定されてもよい。実施形態に応じて、第2段階温度は、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃、および480℃から選択される、より低い範囲(lower range)を有してもよく、375℃、400℃、425℃、450℃、450℃、480℃、500℃、525℃、および550℃から選択される、より高い範囲(upper range)を有してもよく、その結果、前述のより低い範囲およびより高い範囲の任意の組み合わせが使用されてもよい。
【0020】
次に、ピッチは、抽出および分離動作106において得られる。抽出および分離動作106において、ピッチは超臨界二酸化炭素(sCO)などの溶媒を使用して抽出され、溶媒および溶解したピッチは反応チャンバから除去され、次いで、分離されて、ピッチ生成物を生成する。
【0021】
ピッチから炭素繊維を得るために、任意の(随意的な)(図面において破線で示される)押し出し動作108が行われ得、ここで、ピッチは、所望の断面プロファイルの繊維となるように押し出され、そして冷却され得る。ピッチは、不要な生成物を除去してピッチをさらに精製するために、最初に、例えば、トルエンまたは他の溶媒によって洗浄されてもされなくてもよい。
【0022】
図1の2段階プロセスについての実験データは、このやり方ではなくて、より高い温度での単一段階熱分解を使用して同じ供給原料から得られる量よりも、所与の供給原料について生成されるピッチの量が多いことを示している。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、上記の2段階プロセスは第1段階において供給原料から、より軽質の炭化水素を除去するように思われ、このことは、第2段階中に、このより軽質の炭化水素がより大きな炭化水素鎖および芳香族と反応するのを利用不可能にし、これは生成されるピッチの相対量を改善する。
【0023】
供給原料物質は、当技術分野で知られている任意の炭質(炭素質物質)を含むことができる。例えば、供給原料は石炭、バイオマス、混合源バイオマテリアル、ピート、タール、プラスチック、ごみ、および埋立廃棄物を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、石炭の場合、供給原料は、瀝青炭、亜瀝青炭、亜炭、無煙炭などを含むことができるが、これらに限定されない。別の例として、バイオマスの場合、供給原料は、針葉樹または広葉樹のような木材材料を含むことができるが、これらに限定されない。本明細書中で議論される詳細な実施形態の実験において、供給原料は石炭として提示される。しかしながら、ピッチは、任意の他のタイプの供給原料から等しく生成され、その後、石炭で説明したのと同じ方法で炭素繊維を生成するために使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0024】
石炭などの任意の炭素質供給原料は、いくらかの量の水を含み得ることに留意されたい。さらに、反応によって生成される生成物を改質するために、本明細書で論じられる方法およびシステムの任意のものにおいて、熱分解の前または熱分解中に、水を供給原料に添加してもよい。同様に、供給原料は、熱分解動作中に利用可能な水の量を低下させるために、熱分解の前に乾燥されてもよく、このような乾燥動作は、本明細書に記載される方法およびシステムの任意のものの一部であってもよい。
【0025】
図2は、図1の熱分解方法のより詳細な実施形態を示す。方法200は、装填(積込み)動作202において、熱分解反応チャンバ内に供給原料および水を配置することによって開始する。一実施形態では、供給原料および/または水は、熱分解反応チャンバ内に配置する前に予熱することができる。使用する水の量は、乾燥供給原料の重量の1%~1000%とすることができる。一実施形態では、水の量は、下端の乾燥供給原料の重量の10%、20%、30%、40%、または50%から、上端の100%、200%、または500%までとすることができる。水は、別途添加されてもよく、または供給原料中に既に存在してもよい。例えば、一実施形態では、使用される供給原料は、供給原料の重量の10%超が水であり、石炭中の水が装填動作202のための水として使用されるように、水で半飽和された石炭である。
【0026】
装填動作はまた、熱分解反応チャンバを動作圧力(例えば、7~12MPa)に加圧するステップを含み得る。一実施形態では、これは、酸素を除去するステップと、加圧されたCOを反応チャンバに加えるステップとを含むことができる。この実施形態では、加圧されたCOは、後に、チャンバからピッチおよび他の可溶性生成物を抽出および除去するための溶媒として使用することができる。
【0027】
方法200はまた、初期加熱動作204において、7~12MPaで熱分解反応チャンバを150~350℃の中間温度まで加熱するステップを含む。より狭い温度範囲、例えば、範囲の下端の160、170、180、190、200、210、220、230、または240から、範囲の上端の250、260、270、280、290、300、310、320、330、または340までを使用することができる。初期加熱動作204は、装填動作202の前または後に実行されてもよい。一実施形態では、動作204は、中間温度より低い温度での反応が低減されるように、所与の装置で実行可能な限り速く温度を上昇させるように実行することができる。
【0028】
次いで、中間温度は、第1温度保持動作206において、ある期間維持される。保持時間は、10分、15分、30分、60分、120分、または240分のように予め選択されてもよい。例えば、予め選択された保持時間は、以前の実験に基づくことができる。あるいは、保持時間は、熱分解反応チャンバ内のガスを監視することによって決定されてもよい。例えば、一実施形態では、メタン、エタン、ブタン、プロパン、または任意の他の軽質ガス反応生成物などの1つ以上の熱分解反応生成物ガスの濃度が監視される。監視される1つ以上のガスの濃度は最初に上昇し、最終的には、指数曲線に従ってほぼ横ばいになり始める。保持時間は、経時的な1つ以上のガスの濃度の監視された変化に基づくことができる。例えば、一実施形態では、第1温度保持動作206は、ある所定の期間(例えば、10秒、1分、5分など)にわたって、監視された1つ以上のガスの濃度がある閾値量(例えば、2%または100ppm)未満増加したことが観察された場合に、終了されてもよい。さらに別の実施形態では、熱分解温度、または供給原料物質の視覚的または物理的条件などの任意の他のパラメータを維持するためにチャンバに入力されるエネルギーの量を監視して、反応がオペレータの満足まで進行したことを判定することもできる。
【0029】
次に、第2加熱動作208が実行される。第2加熱動作208では、熱分解チャンバおよび供給原料物質の温度を300~550℃の熱分解温度に上昇させる。例えば、第2加熱動作208は、範囲の下端の325℃、350℃、375℃、または400℃から、範囲の上端の425℃、450℃、475℃、500℃、525℃、または550℃まで、反応チャンバを加熱するステップを含むことができる。
【0030】
ピッチ生成温度とも呼ばれる熱分解温度は、その後、第2温度保持動作210において、1分~24時間の第2期間維持される。さらに、第2保持時間は例えば、以前の実験に基づいて予め選択されてもよい。あるいは、保持時間は、熱分解反応チャンバ内の第1温度保持動作206の間に監視されるのと同じ1つ以上のガスであってもそうでなくてもよい1つ以上のガスを監視することによって決定されてもよい。さらに別の実施形態では、熱分解温度、または供給原料物質の視覚的または物理的条件などの任意の他のパラメータを維持するためにチャンバに入力されるエネルギーの量を監視して、反応がオペレータの満足まで進行したことを判定することもできる。
【0031】
第2保持時間の終端に、ピッチは、抽出動作212において、抽出され、熱分解チャンバから除去されてもよい。
【0032】
次いで、分離動作214を行って、抽出されたピッチを溶媒から分離することができる。一実施形態では、溶媒がsCOである場合、分離動作214は、チャンバからsCOおよび溶解熱分解反応生成物を除去するステップと、溶媒の温度および圧力を、ピッチが得られるまで低下させるステップとを含むことができる。例えば、二酸化炭素中で異なる溶解度を有する、ピッチを含む反応生成物の成分を分画的に除去するために、sCOを、それぞれ異なる圧力・温度の組み合わせで、連続する捕集チャンバに通すことができる。分離チャンバの1つは、溶媒からのピッチの凝縮に特有の温度および圧力に維持され得る。例えば、一実施形態では、ピッチは、350℃以上の温度および7.39MPa以上の圧力に維持されたチャンバ内のCO溶媒から得られる。
【0033】
ピッチから炭素繊維を得るために、任意の(図面において破線で示される)押し出し動作216が行われ得、ここで、ピッチは、所望の断面プロファイルの繊維となるように押し出され、そして冷却され得る。ピッチは、不要な生成物を除去するために最初に洗浄されてもされなくてもよく、押出前または押出後にピッチをさらに精製する。さらに、押し出されたピッチは、延伸され、乾燥され、冷却され、ベークされ、(酸化的または不活性環境において)熱処理され、または他の方法で後処理されて、繊維糸(strand)の特性を改善することができる。
【0034】
上述の方法200は、単一の熱分解反応チャンバにおけるバッチプロセスに関して説明された。代替実施形態では、この方法は、1つまたは複数の熱分解反応チャンバを使用する連続プロセスまたは半連続プロセスとして実施することができる。例えば、一実施形態では初期加熱動作204および第1温度保持動作206が第1反応チャンバ内で実行されてもよく、次いで、内容物は第2加熱動作208および第2温度保持動作210のために第2チャンバに移送されてもよい。
【0035】
図3は、上述のピッチ生成方法に適したシステム300の一例である。図3は、炭質を1つ以上の反応生成物に変換するためのシステム300のブロック図を示す。一実施形態では、システム300は熱化学変換システム302を含む。一実施形態では、熱化学変換システム302は、ある体積の供給原料305(例えば、炭質)および水を収容し、供給原料を、ピッチを含む1つまたは複数の反応生成物に変換するのに適した、熱分解反応チャンバなどの熱化学反応チャンバ304を含む。
【0036】
図示の実施形態では、システム300は、1つまたは複数の熱源308と、熱エネルギーを1つまたは複数の熱源308から、熱化学反応チャンバ304内に含まれる上述のある体積の供給原料305に移送(伝達、転写)するための熱エネルギー移送システム306とを含む。熱エネルギー移送システム306は、熱移送要素307を含む。例えば、熱移送要素307は熱移送ループ、熱移送ラインなどを含むことができるが、これらに限定されない。例えば、熱移送要素307は、1つまたは複数の熱源308の1つまたは複数の部分と(例えば、直接的または間接的に)熱的連通して配置された超臨界流体(例えば、sCO)で満たされた熱移送ループを含むことができるが、これに限定されない。
【0037】
一実施形態では、熱エネルギー移送システムは、ある体積の超臨界流体を、熱化学反応チャンバ内に含まれるある体積の供給原料と熱的連通するように選択的に配置するように構成される。この点に関して、熱エネルギー移送システム306は、1つ以上の熱源308からの熱エネルギーを、少なくとも1つの熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料305に選択的に移送することができる。別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、超臨界流体を介して供給原料に運ばれる熱エネルギーを使用して、供給原料305の少なくとも一部を熱分解して、1つまたは複数の反応生成物を得ることができる。
【0038】
システム300の超臨界流体は、1つまたは複数の熱源308から熱化学反応チャンバ304に含まれる供給原料305にエネルギーを移送するのに適した、当技術分野で知られている任意の超臨界流体を含むことができる。一実施形態では超臨界流体はsCOを含むが、これに限定されない。別の実施形態では超臨界流体は水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトンを含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、超臨界流体は、熱移送要素307および熱化学反応チャンバ304のうちの少なくとも1つの内部で高圧に加圧される。
【0039】
COのような(ただし、これに限定されない)システム300の超臨界流体は低い粘性および表面張力を有することができ、そのような超臨界流体が有機物質(例えば、石炭)に容易に浸透することを可能にすることに、本明細書では留意されたい。超臨界流体の供給原料305への浸透は、熱化学反応の前に供給原料305を微粒子に変換する必要性を低減し、それによって供給原料物質の調製におけるエネルギーを節約する。一実施形態では、超臨界流体が超臨界COであるケースでは、超臨界流体は、その臨界圧(7.39MPa)および臨界温度(31℃)を超えて加圧されてもよい。これらの条件下では、COは、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、およびトルエンのような有機溶媒と同様に、独特の溶解特性を示すことに留意されたい。超臨界二酸化炭素の非極性の性質は、水系環境で一般に起こる望ましくないイオン性二次反応の制御を容易にすることができる。さらに、システムが臨界状態より下で減圧されると、COは揮発し、低含水量の油の回収を容易にする。再び、これは、熱分解後の、本明細書にさらに記載される、反応生成物-超臨界流体分離の間のエネルギー消費を有意に減少させ得る。システム300の超臨界流体は、加熱され加圧されたCOを供給原料物質305に加え、反応条件(例えば、時間、圧力、および温度)のより良好な制御を提供し、それによって、高価値の目標とされる化合物または燃料中間体のより良好な選択性を可能にすることに、本明細書でさらに留意されたい。
【0040】
別の実施形態では、超臨界COなどの超臨界流体が、反応を和らげるための熱化学反応チャンバ304へのより低温の超臨界流体の注入、または、反応を加速するためのより高温の超臨界流体の注入を介して、強い温度および反応時間制御を提供することができる。さらに、超臨界COのような多数の超臨界流体を効率的に圧縮することができるので、熱化学反応チャンバ304内の加圧状態を使用して、熱化学反応チャンバ304内の熱化学反応を制御することもできることが理解される。
【0041】
別の実施形態では、超臨界流体中の1つ以上の反応生成物(例えば、ピッチ)の溶解度は、超臨界流体中に極性物質を添加または除去することによって制御され得る。例えば、超臨界二酸化炭素中の1つ以上の油の溶解度は、限定されるものではないが、HO、エタノール、メタノール、高級アルコールなどの極性分子を含む1つ以上の物質の添加/除去によって制御することができる。別の例として、供給原料物質が石炭を含む場合、sCO中の1つ以上の油の溶解度は、H、HO、ギ酸、テトラリン、および当技術分野で公知の任意の他の水素供与溶媒のような、しかしこれらに限定されない、水素供与分子を含む1つ以上の物質を添加/除去することによって制御されてもよい。
【0042】
本明細書において、熱化学反応チャンバ304内に含まれる供給原料305は、超臨界流体中に1つ以上の反応生成物(例えば、バイオオイル)を適切に溶解するのに十分な水分および極性を含み得ることが認識される。本明細書中でさらに議論されるように、供給原料の「乾燥度」は熱化学変換システム302によって制御され得(例えば、乾燥機134を介して制御される)、熱化学変換システム302が、供給原料305内の水分含量レベルを、超臨界流体中に1つ以上の反応生成物を適切に溶解するのに十分なレベルに維持することを可能にする。
【0043】
別の実施形態では、超臨界流体は、システム300内の1つまたは複数の物理的または熱化学的反応を促進するための1つまたは複数の物質を含むことができる。例えば、超臨界流体は、限定されないが、金属、金属塩および有機物などの1つ以上の触媒を含有することができる。別の例として、超臨界流体は、アルコール、油、水素、および炭化水素などの1つまたは複数の溶質を含むことができるが、これらに限定されない。
【0044】
1つまたは複数の熱源308は、供給原料305を熱分解の2つの段階で使用される選択された温度まで加熱するのに十分な熱エネルギーを提供するのに適した、当技術分野で知られている任意の熱源を含むことができる。
【0045】
一実施形態では、1つまたは複数の熱源308は、非CO放出熱源を含む。一実施形態では、1つ以上の熱源308は、1つ以上の原子炉を含む。1つまたは複数の熱源308は、当技術分野で知られている任意の原子炉を含むことができる。例えば、1つ以上の熱源308は、液体金属冷却原子炉、溶融塩冷却原子炉、高温水冷却原子炉、ガス冷却原子炉等を含むことができる。別の例として、1つまたは複数の熱源308は、プール反応器を含むことができる。別の例として、1つまたは複数の熱源308は、モジュール炉を含むことができる。
【0046】
本明細書において、原子炉は供給原料305の熱分解(例えば、迅速熱分解)を実施するのに十分な温度を生成し得ることが認識される。例えば、原子炉熱源は、350~600℃を超える温度を生成することができる。この点に関して、原子炉は、(例えば、350~600℃を超える温度で)熱エネルギーを超臨界流体に移送するために使用され得る。次に、超臨界流体は、原子炉で生成された熱エネルギーを、熱化学反応チャンバ304内に含まれる供給原料305に移送することができる。
【0047】
さらに、本明細書では、システム300の熱化学反応温度が多くの原子炉の動作温度の範囲内にあるので、原子炉熱源がシステム300に関連して熱源として特に有利であり得ることに留意されたい。原子炉が熱化学変換のための反応温度で動作している(すなわち、熱化学反応温度で加えられた熱が必要な反応エンタルピーを供給する)ので、原子炉熱は、高効率で熱化学反応チャンバ304にて反応生成物(例えば、ピッチ)を生成するために使用することができる。
【0048】
一実施形態では、図3に示すように、熱エネルギー移送システム306は、熱エネルギーを1つまたは複数の熱源308から熱移送要素307のある体積の超臨界流体に直接移送するように構成された直接熱交換システムを含む。例えば、熱移送要素307は、1つまたは複数の熱源308の部分と直接的に熱的連通するように配置することができる。例えば、1つ以上の熱源308が原子炉を含む場合、原子炉の1つ以上の冷却材システムは、熱エネルギー移送システム306と一体化されてもよい。この点に関して、原子炉は1つまたは複数の冷却材システム内の超臨界流体を利用することができ、次いで、この超臨界流体は、熱化学反応チャンバ304に直接結合することができる。例えば、原子炉の一次または中間冷却材ループは、超臨界COなどの超臨界流体からなる冷却材流体を含むことができる。さらに、原子炉の冷却材ループは、原子炉の冷却材ループの超臨界流体を熱化学反応チャンバ304内に含まれる供給原料305と混合するように、熱エネルギー移送装置306を介して熱化学反応チャンバ304に直接結合されてもよい。次に、原子炉から供給原料305に熱エネルギーを移送すると、熱エネルギー移送システム306は、超臨界流体冷却材を、戻り経路318を介して原子炉に戻すように循環させることができる。熱エネルギー移送装置306は、原子炉の冷却材システムへの供給原料および/または反応生成物の移送を回避するために、任意の数の濾過要素を含むことができることが、本明細書でさらに企図される。
【0049】
別の実施形態(図示せず)では、熱エネルギー移送システム306は、間接熱交換システムを含む。一実施形態では、間接熱交換システムは、1つまたは複数の熱源308から熱移送要素307内に含まれるある体積の超臨界流体に熱エネルギーを間接的に移送するように構成される。一実施形態では、間接熱交換システムは、1つまたは複数の熱源308から中間熱移送素子に熱エネルギーを移送するように構成された中間熱移送素子(図示せず)を含む。次に、中間熱移送素子は、中間熱移送素子から熱移送要素307内に含まれるある体積の超臨界流体に熱エネルギーを移送することができる。
【0050】
一実施形態では、中間熱移送素子は、中間熱移送ループおよび1つまたは複数の熱交換器を含むことができる。中間熱移送ループは、熱エネルギーを移送するのに適した当技術分野で知られている任意の作動流体を含むことができる。例えば、中間熱移送ループの作動流体は、液体塩、液体金属、ガス、超臨界流体(例えば、超臨界CO)または水を含むことができるが、これらに限定されない。
【0051】
さらに、本明細書で前述したように、熱移送システム306の熱移送要素307は、熱移送要素307内に含まれる超臨界流体を、熱化学反応チャンバ304内に含まれる供給原料305と混合することができる。次に、熱源308から熱移送要素307を介して供給原料305に熱エネルギーを移送すると、熱エネルギー移送システム306は、戻り経路318を介して超臨界流体冷却材を再循環させることができる。
【0052】
1つまたは複数の熱源308と供給原料305との間の直接的および間接的な結合に関する上記の説明は、限定的なものではなく、単に例示目的のために提供されたものであることに本明細書で留意されたい。本明細書では、概して、1つ以上の熱源(例えば、原子炉)と熱化学反応チャンバ304との間の一体化(統合)は、1つ以上の熱源308の一次、中間、または三次熱移送システム(例えば、冷却材システム)から熱化学変換システム302の超臨界COなどの作動流体に熱を移送することによって生じ得ることが認識される。この一体化は、1つ以上の熱移送回路、1つ以上のヒートシンク、1つ以上の熱交換器等のような(ただし、これらに限定されない)当技術分野で知られている任意の熱移送システムまたは装置を使用して実行されてもよいことが、本明細書でさらに認識される。
【0053】
一実施形態では、熱エネルギー移送システム306は、流量制御システム310を含む。流量制御システム310は、超臨界流体を、熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料と熱的連通するように選択的に配置するように構成することができる。この点に関して、流量制御システム310は、1つ以上の熱源308からの熱エネルギーを、熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料に選択的に移送することができる。例えば、流量制御システム310は、熱移送要素307を通る超臨界流体の流れ(流量)を制御するために、熱移送要素307(例えば、熱移送ループ)に沿って配置することができる。この点に関して、流量制御システム310は、ある体積の供給原料305への超臨界流体の流れ(流量)を制御することができ、それによって、供給原料305への熱エネルギーの移送を制御することができる。
【0054】
流量制御システム310は、第1位置から第2位置への超臨界流体の流れ/(流量)を制御するのに適した、当技術分野で知られている任意の流量制御システムを含むことができる。例えば、流量制御システム310は、熱移送要素307に動作可能に結合され、熱移送要素307を通る流れ/(流量)を確立し、またその流れを停止するのに適した、1つまたは複数の制御バルブ(弁)を含むことができるが、これに限定されない。例えば、流量制御システム310は、手動制御バルブ、バルブ/バルブアクチュエータなどを含むことができる。
【0055】
別の実施形態では、流量制御システム310は、1つまたは複数の熱源308からの熱エネルギーを発電システム(図示せず)に結合することができる。例えば、流量制御システム310は、タービン電気システムおよび熱化学変換システム302への、熱源308で生成した熱の並列結合を確立することができる。一実施形態では、熱化学変換システム302は、1つまたは複数の熱源308(例えば、原子炉)から熱を受け取ることができる複数の(多くの)(multiple)バッチ型反応システムを含むことができる。このようにして、複数のバッチ処理を、同時に、または連続して実行することが可能であり、これは、全体的な熱および供給原料の変換の必要性に対処する。別の実施形態では、熱は、1つまたは複数のタービン電気システムに並列に結合されている1つまたは複数の連続熱化学反応器に移送されることができる。
【0056】
一実施形態では、システム300は、供給原料供給システム312を含む。一実施形態では、供給原料供給システム312は、熱化学変換システム302の熱化学反応チャンバ304に動作可能に結合される。別の実施形態では、供給原料供給システム312は、熱化学反応チャンバ304の内部に、ある体積の供給原料305および水を提供する。供給原料供給システム312は、固体物質、粒状物質、または液体物質などの選択された量の供給原料物質を、1つまたは複数の供給原料源から熱化学反応チャンバ304の内部に移送するのに適した、当技術分野で知られている任意の供給システムを含むことができる。例えば、供給原料供給システム312は、コンベヤシステム、流体移送システムなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0057】
供給原料供給システム312は、供給原料を移送し、所望の反応に必要な量の追加の水を移送するための、別個のシステムを含むことができる。代替の実施形態では、供給原料を反応チャンバ304に移送する前に、供給原料に水を添加することができる。これは、供給原料供給システム312において、または供給原料供給システム312によって受け取られる前に、行われてもよい。
【0058】
水分制御システム(図示せず)を設けて、供給原料の水分を測定し、必要に応じて水を加えることができる。そのようなシステムは、供給原料の水分を連続的または周期的に測定し、水分を目標水分含量範囲と比較し、水分が目標範囲未満である場合に水を加える水分検出器を含むことができる。水分が供給原料305を乾燥させるための目標範囲を上回る場合には、乾燥機を設けることもできる。
【0059】
供給原料物質305は、当技術分野で知られている任意の炭質を含むことができる。例えば、供給原料物質305は、石炭、バイオマス、混合源バイオマテリアル、ピート、タール、プラスチック、ごみ、および埋立廃棄物を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、石炭の場合、供給原料は、瀝青炭、亜瀝青炭、亜炭、無煙炭などを含むことができるが、これらに限定されない。別の例として、バイオマスの場合、別の例として、バイオマスの場合、供給原料は、針葉樹または広葉樹のような木材材料を含むことができるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書では、温度、圧力、反応時間、前処理オプション、および有機生成物生成後オプションを制御する能力により、システム300内で複数の種類の炭素質供給原料を利用することができることに留意されたい。加えて、供給原料の種類を同時利用または切り替える能力は、利用可能な資源の利用を改善し、全体的なピッチ生成経済性を改善することができる。再び図3を参照すると、熱化学変換システム302は、熱分解を実施するのに適した任意の熱化学反応チャンバ304を含む。一実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、供給原料305に対して熱分解反応を実施するように構成される。別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、熱分解チャンバを含む。別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、非燃焼または低燃焼熱分解チャンバを含む。システム300の熱分解チャンバは、無酸素下または低酸素環境下で有機分子の熱化学分解を実施するのに適した任意の熱化学反応チャンバを包含することができる。
【0061】
一実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、石炭などの供給原料305を、ピッチを含む反応生成物に変換するのに適した迅速熱分解反応器を含む。迅速熱分解反応器は、約2秒以内に無酸素下(または低酸素環境下)で有機分子の熱化学分解を実施することができる任意の熱化学反応チャンバを含むことができる。迅速熱分解は一般に、Roel J.M.Westerhofらによって、「Effect of Temperature in Fluidized Bed Fast Pyrolysis of Biomass: Oil Quality Assessment in Test Units」、Industrial & Engineering Chemistry Research、第49巻、第3号(2010年)、1160~1168頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。熱分解および迅速熱分解はまた、Ayhan Demirbasらによって、「An Overview of Biomass pyrolysis」、Energy Sources、第24巻、第3号(2002)、471~482頁に一般的に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0062】
別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、石炭またはバイオマスなどの供給原料305をピッチなどの反応生成物に変換するのに適した超臨界熱分解反応器を含む。本開示の目的のために、「超臨界熱分解反応器」は、超臨界流体から供給される熱エネルギーを使用して供給原料物質の熱分解反応を実施するのに適した任意の反応器、反応容器または反応チャンバを包含すると解釈される。別の実施形態では熱化学反応チャンバ304は流動床反応器を含むことができるが、これに限定されない。
【0063】
別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、供給原料に対して1つまたは複数の抽出プロセスを実行することができる。別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304に動作可能に結合された抽出チャンバが、熱分解の第1段階(第1熱分解段階)または熱分解の第2段階(第2熱分解段階)のいずれかの後に、供給原料に対して1つまたは複数の抽出プロセスを実行することができる。一実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、熱分解の前に供給原料物質から追加の化合物を除去するように構成される。例えば、熱化学反応チャンバ304は、油および脂質、糖、または他の酸素化(酸化)化合物のうちの少なくとも1つを除去するように構成されてもよい。別の実施形態において、抽出された化合物は、さらなる生物由来生成物の開発のために捕集され、貯蔵(保存、蓄積)され得る。
【0064】
供給原料物質305から糖を除去することが有利であり得る。ここで、糖は高温でカラメル化し、超臨界COのような超臨界流体が供給原料物質305のセルロース構造に入るのを妨害するように作用し得ることが認識される。さらに、熱化学変換システム302中に存在する糖はまた、下流の触媒床(もしあれば)を害するように作用し得る。糖の除去は、フルフラール、ヒドロキシメタルフルフラール、バニリンなどのような、しかしこれらに限定されない、酸素化化合物の形成を回避するのに役立つことが、本明細書中で注目される。
【0065】
一実施形態では、熱化学変換システム302は、200℃未満の温度で供給原料305から物質を抽出することができる。ここで、フルクトース、スクロースおよびマルトースはそれぞれ約180℃未満の温度でカラメル化するので、200℃未満の温度で糖を抽出することが有益であることに留意されたい。この点に関して、超臨界流体は、セルロース物質の分解および糖の掃き出しによって、熱分解中の温度上昇の前に供給原料305から糖を抽出するのに役立ち得る。
【0066】
別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、熱分解の前に供給原料305を予熱するように構成される。別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304に動作可能に結合された予熱チャンバが、熱分解の前に供給原料305を予熱するように構成される。例えば、熱化学反応チャンバ304(または予熱チャンバ)は、液化および/または熱分解に必要な温度またはその付近の温度まで供給原料物質を予熱することができる。
【0067】
別の実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、熱分解の前に供給原料305を前処理するように構成される。例えば、熱化学反応チャンバ304は、液化および/または熱分解の前に、供給原料物質を水素で予備水素化(pre-hydrotreat)処理することができる。例えば、供給原料物質を水素で前処理することは、硫黄のような(ただし、これに限定されない)物質を除去すること、ならびに、反応種(species)に水素を供与する(すなわち、フリーラジカルを安定化する)のに役立つことを助けることができる。
【0068】
図示されていない代替の実施形態では、熱化学変換システム302は、システム300の複数段階の熱化学プロセスの様々なステップを実行するために、複数のプロセスチャンバに分離される。例えば、一実施形態では、中間温度での熱分解の第1段階のために第1チャンバが設けられ、熱分解温度での熱分解の第2段階のために第2段階が設けられ、溶媒と接触させてその溶媒で所望のピッチ生成物を抽出するために抽出チャンバが設けられる。供給原料305は連続的に、またはバッチプロセスとして、チャンバ間で移送されてもよい。
【0069】
上記の説明は、いくつかの実施形態において、熱分解反応チャンバおよび抽出チャンバが別個のチャンバとして存在し得ることを指摘しているが、これは限定として解釈されるべきではないことに出願人は留意する。むしろ、本明細書では、熱化学ステップのうちの2つ以上がそれぞれ、単一の反応チャンバ内で実行されてもよいことが企図される。
【0070】
一実施形態では、熱化学反応チャンバ304は、複数段階の単一熱化学反応チャンバを含む。一実施形態では、熱化学変換システム306は、複数の温度範囲にわたって超臨界流体の複数の部分を、複数段階の単一熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料305に移送して、ある体積の供給原料305の少なくとも一部に対して熱化学反応プロセスのセット(1組)を実行するように構成される。
【0071】
別の実施形態では、熱エネルギー移送システム306は、第2温度範囲の超臨界流体の第1部分を、単一の熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料305に移送して、ある体積の供給原料の少なくとも一部に対して予熱プロセスを実行するように構成される。
【0072】
別の実施形態では、熱エネルギー移送システム306は、第1温度範囲の超臨界流体の第2部分を、単一の熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料305に移送して、ある体積の供給原料の少なくとも一部に対して熱分解の第1段階を実施するように構成される。
【0073】
別の実施形態では、熱エネルギー移送システム306は、第2温度範囲の超臨界流体の第3の部分を、単一の熱化学反応チャンバ304内に含まれるある体積の供給原料305に移送して、ある体積の供給原料の少なくとも一部分に対して熱分解の第2段階を実施するように構成される。
【0074】
一実施形態では、超臨界流体の流れ(流量)および温度が熱化学反応チャンバ304を横切って空間的に変化する。例えば、反応チャンバ304を横切って流れおよび/または温度を変化させるために、単一の反応チャンバに入る前に、それぞれ異なる温度の超臨界流体の複数の流れを確立することができる。この点に関して、垂直反応チャンバでは、様々な熱化学段階に対応して、いくつかの空間位置での流れおよび温度を変化させることができる。別の例として、超臨界流体の温度は、熱化学反応チャンバ304の長さに沿って超臨界流体を流すことによって、熱化学反応チャンバ304の長さに沿って変化させることができる。例えば、低温超臨界COの流れを、より高い温度(例えば、70~150℃)のCOの流れと組み合わせて、糖を溶解することができる。下流の別の箇所(例えば、0.25~4m/sの平均流速で1~3メートル下流)で、熱分解温度以上の超臨界COがチャンバに混合される。長さに従って種々の熱化学反応ステップの温度を段階化することによって、流速を使用して反応時間を制御することができる。
【0075】
さらに、熱分解、抽出および分離のような2つ以上の熱化学ステップが熱化学チャンバ304内で実行され、一方、乾燥および予熱のような追加のステップが、熱化学反応チャンバ304に動作可能に結合された専用チャンバ内で実行されることが企図される。
【0076】
反応チャンバは、システム300の1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の出口319を含み得る。図3に図示の実施形態では、反応チャンバ304には、熱分解の第2段階後に残っている供給原料残留物(残渣)を除去するための出口と、ピッチおよび他の溶解熱分解反応生成物を含む溶媒を除去するための別の出口とが設けられている。一実施形態では、熱分解の第2段階が完了した後に残っている供給原料残留物のための出口が、残留物を除去してそれを残留物貯蔵システム314に移送するように配置される。一実施形態では、残留物貯蔵システム314は、ドラム、鉄道車両、Conexボックス、または他のポータブルコンテナのような単純なものとすることができる。代替の実施形態では、残留物は、後の輸送のために重ねて貯蔵されてもよい。
【0077】
溶媒出口319は、この実施形態ではsCOである溶媒を分離システム320に移送する。一実施形態では、出口は、反応チャンバ304から分離システム320へのガスの流れを制御するバルブを含む。
【0078】
一実施形態では、分離システム320は、連続するステップで、温度および/または圧力を低下させて、異なる溶解成分を得る。例えば、任意選択で、分離システム320の前または後に、熱除去熱交換器を使用することができる。これらのステップの1つにおいて、ピッチは凝縮され、ピッチ押出機326に移送される。ピッチは、保持容器内に中間的に貯蔵されてもよい。あるいは、ピッチは、sCOから凝縮するとすぐに押出機326に送ってもよい。
【0079】
一実施形態では、各ステップは、溶解生成物を溶媒から凝縮させることができる温度および圧力の異なる状態に維持された捕集チャンバに対応する。次に、各チャンバは、そのチャンバの温度および圧力で凝縮する生成物を捕集する。一実施形態では、ピッチは、温度が350℃以上、圧力が7.39MPa以上に維持されたチャンバから得られる。
【0080】
ピッチ押出機は上述のように、ピッチを押し出して繊維にし、次いで、この繊維は、炭素繊維として直接的または間接的に使用するために冷却される。
【0081】
反応チャンバ304から除去された溶媒流中の他の化合物は、生成物捕集システム322においてさらなる処理または販売のために捕集される。一実施形態では、揮発性ガスの分離器および貯蔵システムが、生成物捕集システム322または分離システム320の一部として提供されてもよい。揮発性ガスの分離器は、1つ以上の反応生成物の残りから1つ以上の揮発性ガスを分離することができる。例えば、揮発性ガスの分離器は、CH、C、C、CO、CO、H、および/またはHOなどの揮発性ガスを固体または液体の反応生成物から分離することができるが、これらに限定されない。本明細書では、揮発性ガスの分離器は、当技術分野で知られている任意の揮発性ガスの分離装置またはプロセスを含むことができることに留意されたい。さらに、これらのガスは、将来の利用のために、冷却され、洗浄され、捕集され、貯蔵されてもよいことが認識される。揮発性ガスは、水素源を提供するために生成されてもよい。
【0082】
図示の実施形態では、溶解生成物が閉ループシステムで除去された後、COは再利用のために熱源308に戻される(318)。代替の実施形態では、COは単に排気される。
【0083】
別の実施形態(図示せず)では、システム300は、熱回収システムを含む。回収のケースでは、システムは、分離システム320(またはシステム300の任意の他の適切なサブシステム)の前に、またはその一部として、sCOと熱回収システムとを熱的に結合するように作用する熱移送ループを介して、sCOから熱を回収することができる。一実施形態では、回収された熱は、回復器または再生器(蓄熱器)として働くことができる。別の実施形態では、チャンバ304によって実行される熱化学プロセスに続いて、エネルギーを回収することができる。別の実施形態では、回収されたエネルギーは、熱化学処理の前に供給原料物質を予熱するために使用されてもよい。別の実施形態では、回収されたエネルギーを使用して、システム300の1つまたは複数のサブシステムに補助的な力(例えば、機械力または電力)を生成することができる。
【0084】
図4は、所与の供給原料から得られる熱分解反応生成物を変化させるように調整することができる柔軟な熱分解システムのバッチ実施形態のプロセスフロー図を示す。図示の実施形態では、供給原料は石炭として提供される。しかしながら、読者は、バイオマスのような任意の炭素質供給原料を使用することができることを理解するであろう。
【0085】
図4は、上述したものと動作が類似した閉ループCO熱分解システムを示す。図4に示す実施形態では、熱分解チャンバは石炭404で満たされた円柱(カラム、塔)402である。sCOのような超臨界流体の入口流が円柱の頂部に入り、石炭404を通って流れる。sCOの流速を制御することにより、sCOと石炭との滞留または接触時間は、チャンバの出口流中で観察されるsCO中の溶解反応生成物の量を制御するために当技術分野で知られているように制御することができる。一実施形態では、熱分解チャンバ402に入るsCOは、温度が300~600℃であり、圧力が7.39~12MPaであることができ、その結果、熱分解は超臨界状態のCO雰囲気で起こる。より高い温度および圧力を使用することもできる。
【0086】
バッチシステムでは、熱分解チャンバは、石炭を適所に維持するための篩以外の内部部品を全く有さない単純な円筒形チャンバであってもよい。複数のチャンバが並列に設けられてもよく、その結果、一方が使用中であってもよく、他方から炭化物が除去され、新たな石炭が再充填される。代替の実施形態では、チャンバは、熱分解中に石炭を移動させるための攪拌機またはスクリューを備えることができる。
【0087】
石炭404を接触させ、熱分解した後、sCOは、上記のように溶解熱分解反応生成物と共に円柱402の底部から出る。次いで、出力されたsCOは、溶解熱分解反応生成物を除去して次いで熱分解チャンバ402内で再利用するためにCOを回復する、回復および凝縮回路を通過する。回復および凝縮回路は、チャンバ402に供給される(生成物の大部分が流れ(ストリーム)から凝縮された)COの入口流/戻り流を予熱しながら、熱分解チャンバ402によって出力されたCO流を同時に冷却する、直列の1つ以上の回復器406を含む。図示のシステム400では、4つの回復器406、第1段階回復器406a、第2段階回復器406b、第3段階回復器406c、および第4段階回復器406dが示されている。以下に説明するように、必要に応じて、より多くのまたはより少ない回復器406を使用することができる。
【0088】
回復器406は、現在知られている、または今後開発される任意のタイプの熱交換器とすることができる。一実施形態では、例えば、回復器406はそれぞれ、管内熱交換器であり、外側管内に出力COがあり、内側管を通る、より低温の入口CO流がある。しかし、有益または所望であると判断される任意の構成で、任意のタイプの熱交換器を使用することができる。
【0089】
回復器406に加えて、任意の最終冷却熱交換器408段階を回復および凝縮回路の一部として設けて、COの温度を回路の所望の低温まで最終的に低下させることができる。これは、出力流の最終冷却を行うために、図示のような冷却水システム424からの冷却水などの冷却材を使用して達成される。回復器406と同様に、最終冷却熱交換器408は、利用される場合、任意のタイプの熱交換器であってもよい。
【0090】
上述したように、COの超臨界条件は31.1℃以上であり、圧力は7.39MPa以上である。システムを説明する際に、COは、システム内のいくつかの箇所において、状態が温度または気圧のいずれかにおいて臨界点未満に低下し得るにもかかわらず、超臨界と呼ばれる。これらの箇所において、COは、温度および圧力の条件に応じて、気体または液体状態であってもよいことが理解されるべきである。このような状態は例えば、第4の回復器406または最終冷却熱交換器408のような、熱分解器402の下流で起こり得る。
【0091】
例えば、一実施形態では低sCO回路温度は室温(20℃)などの50℃未満とすることができ、低圧は6~8MPaとすることができる。より低い温度および圧力を使用することもできる。この実施形態では、できるだけ多くの熱分解反応生成物を除去するために、COを亜臨界にすることができる。別の実施形態では、回路(循環路)の温度および圧力は、COがシステム400の全体にわたって超臨界状態のままであるように維持される。
【0092】
図示の実施形態では、回路内の各熱交換器の後に、凝縮捕集容器410がある。各容器は、その後、左から右へ、より低い温度にある。凝縮容器410は、任意の種類の能動または受動凝縮装置であってもよい。例えば、図示の実施形態では、凝縮容器410は、COが流れる温度制御面を提供するコールドフィンガー(cold finger)凝縮器である。これにより、制御された温度以上で凝縮可能な任意の熱分解反応生成物が凝縮容器410に捕集される。代替の実施形態では、コールドフィンガー凝縮器の代わりに、サイクロン分離器を使用することができる。他の可能な凝縮容器には、ほんの数例を挙げると、リービッヒ凝縮器、グラハム凝縮器、コイル凝縮器、およびアリーン凝縮器が含まれる。
【0093】
適宜、用語「プロセス流」は、熱分解チャンバ402から最後の凝縮捕集容器410を通って流れるCOを有するCO回路の部分におけるCO流を指すために使用され、一方、「戻り流」または「入口流/戻り流」は、最後の凝縮容器から回路を通り、ポンプ420を通って流れ、最終的に熱分解チャンバ402に戻るCO流を指すために使用される。戻り流は完全に純粋なCOでなくてもよいが、少なくとも痕跡量の反応生成物、水、または凝縮容器内に完全に捕集されない他の化合物を含有する可能性が高いことに留意されたい。他方、プロセス流は、回路内の位置に応じて、種々の凝縮容器410によって連続的に除去される熱分解反応生成物の少なくともいくらか、場合によっては非常に多量を含有する。
【0094】
図示の実施形態では、異なる回復器は異なる温度で動作することができる。例えば、一実施形態では、第1回復器406aは約550℃でCOおよび溶解反応生成物のプロセス流を受け取り、それを450℃で放出(排出)することができる。第2回復器406bは450℃のプロセス流を受け取り、それを300℃で放出することができる。第3の回復器406cは300℃のプロセス流を受け取り、それを150℃で放出することができる。第4の回復器406dは150℃のプロセス流を受け取り、それを50℃で出力することができる。
【0095】
COの戻り流は、COを動作圧(例えば、約10MPa)に戻すポンプ/コンプレッサ420と、COに追加の熱を与えてそれを所望の熱分解温度にするヒーター422とによって部分的に再調整される。例えば、一実施形態では、ポンプ/コンプレッサ420は、約10MPaでCOを受け取り、流れを約12MPaに圧縮し、これは追加のポンプなしでCO回路全体を通る流れを維持するのに十分な圧力を提供する。ヒーター422は、オペレータの好みに応じて、単一の加熱ユニットであってもよいし、並列および/または直列の複数のユニットであってもよい。例えば、一実施形態では、第1回復器406aから、回復されたCO流を受け取り、約450℃~約550℃の温度の入口からその流れを加熱する3つの別個のヒーターが直列に設けられる。同様に、図示のように、単一のポンプ420があってもよいし、或いは、CO回路全体に分配された複数のポンプがあってもよい。例えば、回路の一部が超臨界条件未満である実施形態では、単にCOを超臨界に再調整するだけのために、専用のヒーターおよび/またはコンプレッサ(圧縮器)(図示せず)を設けてもよい。
【0096】
熱交換器406、408の複数段階のペアを設け、続いて凝縮容器410を設けることによって、熱分解反応生成物を分画し、凝縮温度によって捕集することができる。これにより、所望の特定の画分を回復処理の一部として容易に分離することができる。より多いまたはより少ない段階を提供することによって、画分のより多いまたはより少ない分化が達成され得、ならびに各画分の構成を制御し得る。
【0097】
複数段階の熱交換器406、408と、それに続く凝縮容器410とを有することに加えて、回路の出力CO部分および回路の入口/戻りCO部分に多数のバイパスバルブ412によって形成されるバイパス回路を使用することによって、さらなる柔軟性が得られる。一実施形態では、熱交換器のうちの1つまたは複数は、熱分解出力流および入口流/戻り流のいずれかまたは両方によって、その交換器を完全にまたは部分的にバイパスすることを可能にするバイパス能力を備える。図示の実施形態では、様々なバイパスバルブ412が設けられており、これにより、オペレータが望むように、異なる段階の各々を完全にまたは部分的にバイパスすることができる。任意のバイパスバルブ412において、オペレータは、どのくらいの量の入力流がバルブのいずれかの出口に向けられるかを選択することができる。このレベルの流量制御は、システム400の動作に著しい柔軟性を提供し、熱分解反応生成物の様々な画分がシステム内のどこで捕集されるかについてのさらなる動作制御を可能にする。
【0098】
熱分解システム400は、熱分解チャンバ402への供給の前に、CO入口/戻り流に添加剤を注入するための添加剤注入システムをさらに備えてもよい。図示の実施形態では、2つの添加剤注入システムが示されており、各々が注入ポンプ414および添加剤供給部416を含む。上記により詳細に記載される添加剤の例には、H、HO、ギ酸、およびテトラリンが含まれる。一実施形態では、注入ポンプ414はHPLC注入ポンプである。
【0099】
さらに別の実施形態(図示せず)では、1つまたは複数の凝縮容器410をバイパスできるように、バイパスバルブ412を設けることができる。これにより、反応生成物の捕集を、所望に応じて、より少ない容器に組み合わせることが可能になり、したがって、システム400の柔軟性がさらに増大する。
【0100】
コントローラ430が図4に示されている。一実施形態では、コントローラ430は、所望の結果を達成するために熱分解システム400を監視および制御するように構成されたプログラマブルロジックコントローラである。コントローラは、目的構築ハードウェアコントローラから、制御ソフトウェアを実行する汎用演算装置まで、多くの異なる方法で実装することができる。プロセスコントローラは当技術分野で周知であり、現在知られている、または今後開発される任意の適切なコントローラ設計または設計の組み合わせを使用することができる。
【0101】
コントローラ430は、回復器の様々な段階を通るプロセス流および戻り流の流れの分配を制御する。このようにして、各段階における流れの入口および出口の温度を変えることができる。熱交換器内の高温流と低温流との間の熱交換を支配する熱移送方程式は周知であり、これらの方程式の任意の形態をコントローラによって使用して、段階間の流れの分配を測定し、CO回路内の特定の位置で特定の温度を得ることができる。例えば、使用することができる1つの基本的な熱交換器方程式は、aを横切る熱の移送を記述する一般的な向流熱交換方程式である:
pa(Ta1-Ta2)=mpb(Tb2-Tb1
ここで、mはプロセス流の質量流速であり、cpaはプロセス流の比熱であり、Ta1は回復器段階に入るプロセス流の入口(高)温度であり、Ta2はプロセス流の出口(低)温度であり、mは戻り流の質量流速であり、cpbは戻り流の比熱であり、Tb1は回復器段階に入る戻り流の入口(低)温度であり、Tb2は戻り流の出口(高)温度である。上記の式から、当技術分野で知られているように、回復器の性能を、多くの場合、その寸法および特性に基づいて回復器の全体的な熱移送係数に関して数学的に記述する追加の式を導出することができる。多くの場合、熱交換器の性能方程式は、製造業者によって提供されてもよい。このような方程式は、必要に応じて、オペレータによって設定された目標を達成するために、回復器段階を通る流れの流量をどのように分配するかを決定するために、コントローラによって解かれ、その例が以下に提供される。
【0102】
一実施形態では、コントローラ430は、バイパスバルブ412、ヒーター422、冷却水システム424、添加剤ポンプ414、およびシステム400の他の構成要素に接続され、それらを制御することができる。さらに、コントローラ430は1つ以上の監視装置426に接続されてもよく、あるいは監視装置426から情報または信号を受信してもよく、そこからコントローラ430はシステム400の状態に関するデータを受信する。
【0103】
図4は、システム400全体の様々な位置にあるいくつかの監視装置426を示している。監視装置426は、いくつか例を挙げると、任意の種類の処理モニター、分析器、またはセンサ、例えば、流量センサ、温度センサ、圧力センサ、重量計、pHセンサ、分光計、光イオン化検出器、ガスクロマトグラフ、触媒センサ、赤外線センサ、および火炎イオン化検出器であってもよい。監視装置426は、必要に応じて、システム400内の任意の場所に配置することができる。例えば、一実施形態では、ガスクロマトグラフを使用して、反応チャンバ402を出るsCO中の反応生成物中の様々な化合物およびそれらの相対量を定期的または連続的に監視し、測定することができる。あるいは、各凝縮容器上の液面センサを設け、そこから各回復器段階の凝縮物の相対生成速度(割合)を測定することができる。
【0104】
監視装置426から受け取った情報に基づいて、コントローラ430は、1つ以上のバイパスバルブを通る流量および1つ以上の流れの温度を変化させて、1つ以上の凝縮容器内の所望の炭化水素凝縮物画分(すなわち、分子量の範囲)を得ることができる。例えば、一実施形態では、コントローラは、300~350℃の沸点を有する炭化水素を分離して回収するように指示されてもよい。この実施形態では、様々なバイパスバルブを通る流れは、プロセス流が350℃の温度で第1回復器406aから放出され(上述の450℃とは対照的に)、300℃の温度で第2回復器406bから放出されるように、調整することができる。これは、第2回復器406bの周りの戻り流の一部をバイパスして、比較的大きくて冷たい戻り流が第1回復器406aを通って駆動され、第1段階によって行われる冷却の相対量を増大させることによって達成することができる。このようにして、350℃を超える沸点を有する反応生成物は第1回復器406aと第2回復器406bとの間の凝縮物容器410に捕集され、300~350℃の沸点を有する反応生成物は第2回復器406bに続く凝縮物容器410に捕集される。
【0105】
上記の例から分かるように、コントローラ430の使用およびシステムの設計によって達成される柔軟性を介して、システム400の動作構成をリアルタイムで変更して、異なる目標を達成することができる。さらに、システム400の制御を、センサおよび監視装置によって報告されるリアルタイム知識に基づくことによって、システム400は、供給原料品質の変化などの変化する状態に応答して、経時的に調整することができる。この態様では、コントローラ430と、複数段階の回復器および凝縮容器とを介して、システム400は、炭化水素の異なる画分を分離し、異なる凝縮容器に捕集するように容易に構成することができる。より多くの段階を提供することによって、必要に応じてさらに多くの分化を提供することができる。コントローラ430はバイパスバルブ412を容易に再構成することができるので、システム400は、異なる出力要件または供給原料特性の変化を独自に処理することができる。
【0106】
さらに、コントローラ430は、熱分解反応から得られる反応生成物を制御して最適化するために使用することもできる。例えば、一実施形態では、コントローラ430は、反応チャンバ402内の温度および/または圧力を直接的または間接的に制御して、異なる反応生成物の相対量を変化させることができる。一実施形態では、反応チャンバ内の温度または圧力の変化は、センサおよび監視装置から受け取った監視情報に基づいてリアルタイムで行うことができる。例えば、反応チャンバ402を出るsCO中の種々の反応生成物の種類および量を示す監視データを、コントローラ430に提供することができる。反応生成物のサブセットを最適化する(例えば、沸点が250~350℃の反応生成物の生成を最大化する)といった、予め設定された目標に応じて、コントローラ430は次に、反応生成物の最適化されたプロファイルがシステム400の現行の目標に基づいて得られるまで、反応チャンバ内の温度および/または圧力を反復的に変化させることができる。
【0107】
図5A~5Cは、図4に示すシステムの実施形態の実験性能を示す。図において、システムは、複数段階の超臨界液化システムと交互に呼称される。実験では、図4に示されるシステムの実施形態が、図示されるように4つの回復器および1つの最終冷却水熱交換器を使用して、ベンチスケールで生成された。1kgのPower River Basinの亜瀝青炭試料を円柱に入れ、上記のようにsCOを用いて熱分解した。微細メッシュスクリーンを円柱の底部に設けて、固体がチャンバから出るのを防止した。
【0108】
始動のために、バイパス回路を使用して、システムが所望の熱状態に達するまで熱分解チャンバを隔離(孤立化)(isolate)した。ループが試験温度に達した後、バイパスを無効にし、熱分解チャンバをループ内に配置した。熱分解チャンバを出るsCOの出口温度は約490℃であり、熱分解チャンバに供給されるsCOの入口温度は約500℃であった。実験中、熱分解チャンバ内のsCOの圧力は約10MPaであり、回路を循環するsCOの質量流速は4.5~10kg/分であった。このシステムは、COの全流量がそれぞれの交換器/凝縮容器段階を通過するように、5つの熱交換器のいずれもバイパスしないで動作した。凝縮器容器はコールドフィンガーであり、図5に示す温度に維持されたボトル1~5と名付けられた。システムをある期間動作し、次いで、凝縮容器からの凝縮熱分解反応生成物を分析した。
【0109】
図5Aは、凝縮容器温度によって石炭のバッチを熱分解することから得られる代表的な液体収率(収量)を示す。凝縮器容器はコールドフィンガーであり、図5Aに示す温度に維持されたボトル1~5と名付けられた。
【0110】
ボトル2および5から得られた凝縮物画分について質量分析を行った。図5Bはボトル2についての結果を示し、図5Bはボトル5についての結果を示す。予想されたように、結果は、低温度ボトル5で得られたよりも、高温ボトル2で実質的により高い分子量の生成物分配が凝縮されたことを示す。これは、複数段階の分離システムが炭素質供給原料から異なる熱分解反応生成物を生成して分画するのに成功していることを示している。
【0111】
図6は、COを用いて炭素質供給原料を熱分解して反応生成物を得るための広範な方法の実施形態を示す。図示の実施形態は、閉ループで再利用するためにCOを再調整し、再循環する進行中の処理に関して説明される。図6のプロセスは、接触動作602から始まるものとして示されている。接触動作602において、炭素質供給原料は、COを超臨界状態に維持するのに十分な熱分解温度および圧力で、および熱分解が起こる接触時間の間、超臨界二酸化炭素と接触した状態に維持される。得られた熱分解は、供給原料の少なくともいくらかを炭化物に変換し、COに溶解されるいくらかの熱分解反応生成物を生成する。
【0112】
使用される接触期間または滞留時間は、オペレータによって選択されてもよい。接触は、COが、熱分解中に接触チャンバを通って流れないという点で、静的であってもよい。むしろ、チャンバはCOおよび供給原料を充填され、次いで、内的撹拌または他の混合を伴って、または伴わずに、反応させられる。このケースでは、接触時間は、COが超臨界であって供給原料と共に接触チャンバ内にある時間である。あるいは、接触は、COが、供給原料を含むチャンバを通って絶えず流れているという点で、動的であってもよい。動的接触では、滞留時間は、COの流速および接触チャンバの体積から計算される。
【0113】
熱分解反応生成物の化学的構成は、熱分解条件を変えることによってある程度変化させることができる。例えば、接触動作602で使用される比較的高い温度および圧力は、いくつかの反応生成物(例えば、油などのより重い炭化水素)の生成を他のもの(例えば、中重量油またはより軽い炭化水素ガス)よりも有利にすることができる。さらに、水、ギ酸、水素、または何らかの他の水素供与体などの添加剤を使用して、熱分解の間の水素の利用可能性を増加させてもよく、これはまた、反応生成物の化学的構成を変化させる。熱分解反応に影響を及ぼし、反応生成物の化学的構成を変化させるために、他の添加剤を使用することもできる。
【0114】
接触後、分離動作604において、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COが炭化物から分離される。分離動作は、COから炭化物を除去するか、または炭化物からCOを除去する形態をとることができる。
【0115】
分離動作604の後、超臨界COは、次いで、第1冷却運転606において、第1温度および第1圧力に冷却される。例えば、一実施形態では熱分解温度および圧力がそれぞれ540℃および11MPaであり、第1温度および第1圧力は450℃および10.9MPaである。第1冷却動作606は、接触動作602で使用される熱分解温度および圧力から、COの温度または温度および圧力を低下させることを含むことができる。さらに、一実施形態では、冷却動作606と呼ばれるが、「冷却」は、温度を熱分解温度またはそれに近い温度に維持しながら、COの圧力を低下させることのみからなってもよい。温度、圧力、またはその両方が低下するかどうかにかかわらず、冷却動作606は、溶解反応生成物の溶解度を変化させ、第1の温度および圧力でCOにもはや溶解しない任意の反応生成物は凝縮物としてCOから凝縮する。
【0116】
第1冷却動作606の一部または後に、第1冷却動作606によって生成された凝縮物を捕集し、後の使用のために貯蔵することができる。この凝縮物の含有量は、熱分解反応によって生成される反応生成物、ならびに第1冷却動作606の第1の温度および圧力によって決定される。したがって、上述のように、第1の温度および圧力を選択することによって、第1冷却動作606によって生成される凝縮物の化学的構成を制御して、熱分解反応生成物の特定の画分を得ることができる。一旦温度が分かると、一実施形態では、熱交換器方程式を使用して、これらの温度を達成、およびそれゆえ所望の凝縮物を達成するのに必要な、異なる回復器を通る戻り流およびプロセス流の相対流速を決定することができる。次いで、この情報から、コントローラは、決定された流速を得るために必要に応じてバイパスバルブの位置を設定することができる。
【0117】
残りの反応生成物を含むCOは次に、第2冷却動作608にかけられる。第1冷却動作606と同様に、第2冷却動作608は、COを第1の温度および圧力から第2の温度および圧力に低下させる。さらに、これは、COの温度、圧力、または両方を低下させることを含んでもよい。第2冷却動作は、第1冷却運動作606と同じ装置を使用して、または、第2冷却動作が実行される第2組の装置(例えば、熱交換器、冷却容器など)にCOを送ることによって実行することができる。
【0118】
第2冷却動作608の一部または後に、第2冷却動作608によって生成された凝縮物を捕集し、後の使用のために貯蔵することができる。この第2凝縮物の含有量は、熱分解反応によって生成される反応生成物、第1冷却動作606で使用される第1の温度および圧力、ならびに第2冷却動作608の第2の温度および圧力によって決定される。したがって、上述のように、第1および第2の温度および圧力を選択することによって、第2冷却動作606によって生成される凝縮物の化学的構成を制御して、熱分解反応生成物の特定の画分を得ることができる。一旦温度が分かると、一実施形態では、熱交換器方程式を使用して、これらの温度を達成、およびそれゆえ所望の凝縮物を達成するのに必要な、異なる回復器を通る戻り流およびプロセス流の相対流速を決定することができる。次いで、この情報から、コントローラは、決定された流速を得るために必要に応じてバイパスバルブの位置を設定することができる。
【0119】
追加の冷却動作(図示せず)を行うことができる。追加の冷却動作を使用することによって、反応生成物の分画(分留)および捕集を厳密に制御することができる。例えば、25回の冷却動作を用いて、非常に微細に分画された凝縮物を得ることができる。オペレータの目標に応じて、任意の数の冷却動作を所望に応じて使用することができる。5つの冷却動作の可能性を有するシステムを示す図4を参照すると、5つの段階各々の凝縮物の化学的構成は、動作の相対温度および圧力を変化させることによって変化させることができる。例えば、1つの構成では、最初の4つの冷却動作が非常に狭い温度および/または圧力差で行われてもよく、例えば、第1温度は熱分解温度より10℃低く、第2温度は20℃低く、第3温度は30℃低く、第4温度は40℃低くてもよく、一方、最後の温度は30℃でもよく、より高い温度の反応生成物(すなわち、より高い温度でCOから凝縮する反応生成物)を分画する構成である。別の構成では、段階間で温度差がより均一であってもよく、さらに別の構成では、温度が、より低い温度の生成物を分画するように集中されてもよい。したがって、この方法の一部として、異なる冷却動作の温度および圧力を制御して、反応生成物の特定の所望の画分を得ることができる。
【0120】
最後に、COは再循環され、再利用動作610で追加の熱分解のために再利用される。再利用は、図4に示すような回路をCOが連続的に流れている連続システムで行うことができる。あるいは、COは、後にバッチまたはセミバッチシステムで再利用するために貯蔵されてもよい。
【0121】
方法600の一部として、COは、方法全体を通して超臨界状態に維持されてもよい。あるいは、COが再利用動作610において超臨界状態に戻される前に、できるだけ多くの反応生成物を凝縮して除去するために、例えば最終冷却動作において、亜臨界状態にされてもよい。
【0122】
図7は、超臨界COによる石炭の熱分解法のより詳細な実施形態である。図6の方法600は任意のバッチ式、半バッチ式、または連続式熱分解処理を包含するように、より広く記載されているが、図7の方法700は、石炭から熱分解反応生成物を分画(分留)し、連続的に流れるループ内でCOを再循環させる連続式熱分解処理に、より特有である。
【0123】
図7に示される実施形態では、該方法700は、超臨界CO注入動作702において、石炭を含む反応チャンバ内に二酸化炭素(CO)の入口流を流すことから始まる。一実施形態によると、入口CO流の温度は300~600℃であり、圧力は7~12MPaである。
【0124】
反応チャンバは、反応チャンバ内のCOを超臨界状態に維持するのに十分な熱分解温度および圧力に維持される。これは、熱分解動作704によって図7に示されている。熱分解動作704は、反応チャンバの温度および圧力を能動的に制御することを含んでもよい。例えば、内部または外部ヒーターを使用して、反応チャンバに直接熱を加えて、その温度を制御してもよい。同様に、圧力は、入口および出口CO流の流速を調節することによって制御することができる。あるいは、反応チャンバの温度および圧力は、単に入口流の温度および流速を制御することによって、間接的に制御されてもよい。したがって、石炭は、熱分解動作704において、炭化物と、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COとを得るために熱分解される。図6を参照して上述したように、反応生成物の化学的構成は、反応チャンバ内の温度および圧力を変化させることによって、また、特定の添加剤を使用することによって、ある程度まで制御することができる。
【0125】
反応チャンバを通るCO流速およびチャンバ内のCOの体積(量)によって決定される接触期間の後、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COは、次いで、反応チャンバから、出口流放出動作706において出口を介して反応器出口流として流れる。
【0126】
次いで、この出口流は、第1回復および捕集動作706aにおいて第1回復器に通される。この動作706aでは、反応器の出口流は、反応チャンバに戻る途中でCOの戻り流に熱を移送することによって第1回復器内で冷却される。出口流は、第1回復器を通過する2つのCO流、すなわち出口流および戻り流の温度および流速に基づいて、熱分解反応温度未満の第1温度に冷却される。
【0127】
出口流を冷却する行為は、出口流中の第1温度よりも高い温度で凝縮する溶解反応生成物がもしあればそれを、COから凝縮させる。第1回復および捕集動作706aは、図4に示すような捕集容器のようなコレクタ内にこの第1段階凝縮物を捕集することを含む。それはまた、第1段階凝縮物として除去されなかった任意の溶解反応生成物を含有する第1段階CO流出流(流出物流)を放出することを含む。
【0128】
出口流の必ずしも全てが第1回復および捕集動作706aで処理されなくてもよいことが指摘されるべきである。一実施形態では、出口流の一部を後の段階の回復器に送り、後の回復および捕集動作で処理することができる。出口流の一部のこの迂回(分岐)(diversion)は、異なる段階から得られる凝縮物の化学的構成を制御するために行われてもよい。
【0129】
次いで、第1段階CO流出流は、第2回復および捕集動作706bにおいて第2回復器に通される。この動作706bでは、反応器の第1段階CO流出流は、反応チャンバに戻る途中でCOの戻り流に熱を移送することによって第2回復器内で冷却される。第1段階CO流出流は、第2回復器を通過する2つのCO流、すなわち第1段階CO流出流および戻り流の温度および流速に基づいて、第1温度未満の第2温度に冷却される。
【0130】
さらに、出口流を冷却する行為は、第2温度よりも高い温度で凝縮する、第1段階CO流出流中に残存している溶解反応生成物がもしあればそれを、COから凝縮させる。第2回復および捕集動作706bは、図4に示すような捕集容器のようなコレクタ内にこの第2段階凝縮物を捕集することを含む。それはまた、第2段階凝縮物として除去されなかった任意の残りの溶解反応生成物を含有する第2段階CO流出流を放出することを含む。
【0131】
この場合も、第1段階CO流出流の必ずしも全てを第2回復器に通す必要はなく、後の段階の凝縮物の化学的構成を変更するために、第1段階CO流出流の一部を後の回復および捕集動作に迂回させることができる。
【0132】
方法700では、任意の数の追加の回復および捕集動作を実行することができる。これは、省略記号およびn段階回復および捕集動作706nによって図7に示されている。回復および捕集動作706a~nの各々は、含まれる2つのCO流の動作温度および圧力を除いて、同一であってもよい。種々の動作706a~nを避けて(よけて)およびそれらへ、プロセス流および/または戻り流の一部を迂回させることによって、動作706a~nの各々から回収される凝縮物を制御することができ、所望の凝縮物が得られる。異なる回復および捕集動作706a~nを通る流れの分配は、上記のように異なる段階で異なる画分を捕集するために、手動で制御され得るか、またはコントローラによって自動的に制御され得る。
【0133】
例えば、図4のような最終回復および捕集動作706nのような動作706a~nの1つ以上は、プロセス流から熱を回復することを含まなくてもよいことに留意されたい。すなわち、熱をCOの戻り流に送ってそのエネルギーを効果的に再循環させるのではなく、熱を冷水流に移送することなどによって単に除去し、廃棄するかまたは別の用途に再循環させてもよい。
【0134】
さらに、回復および捕集動作706a~nの必ずしも全てが、別個の容器中の凝縮物の捕集を含む必要はない。むしろ、いくらかの凝縮物は、下流の回復および捕集動作における後の捕集のために、次の段階回復器に導かれ得る。
【0135】
最後の回復および捕集動作706nの後、最終段階CO流出流は、次いで、それを戻り流として、再調整動作708における種々の回復段階を通過させることによって再調整される。再調整動作708は、システムのCO戻り回路の1つ以上の箇所で、戻り流を圧縮すること、および/または、加熱することを含んでもよい。例えば、図4では、戻り流は、5回目の回復および捕集動作の直後にポンプ420によって圧縮され(その場合、冷水流を使用して熱が除去されるので真の回復ではない)、反応チャンバ402に注入される直前にヒーター422によって加熱される。
【0136】
なお、再調整動作708は、残存する反応生成物をCOから除去してもよいし、除去しなくてもよい。一実施形態では、微量の反応生成物および/または水などの他の化合物は、反応チャンバ内に注入されるときにCO戻り流内に残存している。
【0137】
再調整後、CO戻り流は、注入動作402において、入口流として反応チャンバに注入される。これは、再調整動作708から注入動作702への戻り矢印によって図7に示されている。
【0138】
添付の特許請求の範囲にもかかわらず、本開示はまた、以下の番号付けされた条項によって定義される:
条項1.
炭素質供給原料の組み合わせを第1温度および第1圧力で第1期間の間、熱分解してC-Cガスを生成することと、
前記組み合わせを前記第1温度よりも高い第2温度に増加させることと、
前記第2温度で第2期間の間、前記組み合わせを熱分解してピッチを生成することと、
前記組み合わせからピッチを抽出することと、
を含む、方法。
条項2.
前記ピッチから炭素繊維を製造することをさらに含む、条項1に記載の方法。
条項3.
前記第1温度が150~350℃であり、前記第1圧力が7~30MPaである、条項1または2に記載の方法。
条項4.
前記第2温度が350~550℃である、条項1、2または3に記載の方法。
条項5.
前記第1期間は、1~120分の長さである、条項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
条項6.
前記第1期間は、前記炭素質供給原料から前記第1温度で生成される少なくとも1つのC-Cガスの量に基づいて決定される、条項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
条項7.
前記第2期間は、1分~24時間である、条項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
条項8.
前記第1温度および第1圧力で炭素質供給原料を熱分解することは、第1熱分解反応チャンバ内で行われる、条項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
条項9.
前記第2温度で前記炭素質供給原料を熱分解することは、前記第1熱分解反応チャンバ内で行われる、条項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
条項10.
前記第2温度で炭素質供給原料を熱分解することは、前記第1熱分解反応チャンバとは異なる第2熱分解反応チャンバ内で行われる、条項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
条項11.
前記第1温度および第1圧力で炭素質供給原料を熱分解することは、二酸化炭素雰囲気中で行われる、条項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
条項12.
熱分解雰囲気中の1つ以上のC-Cガスの濃度を監視することをさらに含む、条項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
条項13.
前記ピッチを抽出することは、前記二酸化炭素雰囲気を分離システムに移送することを含む、条項12に記載の方法。
条項14.
前記ピッチを抽出することは、前記二酸化炭素雰囲気の温度または圧力のうちの少なくとも1つを低下させることを含む、条項12または13に記載の方法。
条項15.
前記ピッチから炭素繊維を製造することは、前記ピッチを押し出すことを含む、条項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
条項16.
前記ピッチから炭素繊維を製造することは、前記ピッチの繊維を製造することを含む、条項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
条項17.
石炭からピッチを生成する方法であって、
二酸化炭素雰囲気中で石炭の組み合わせを含む反応チャンバを第1温度および第1圧力に加熱することと、
前記二酸化炭素雰囲気中でC-Cガスを生成するのに十分な第1期間の間、前記反応チャンバを前記第1温度および第1圧力に維持することと、
前記反応チャンバの温度を前記第1温度よりも高い第2温度に増加させることと、
前記反応チャンバを前記第2温度に第2期間の間、維持し、それによって少なくともいくらかのピッチを生成することと、
前記第2期間の後に、二酸化炭素およびその中に溶解したピッチを前記反応チャンバから除去することと、
前記反応チャンバから除去された二酸化炭素からピッチを分離することと、
を含む、方法。
条項18.
前記ピッチから繊維を製造することをさらに含む、条項17に記載の方法。
条項19.
前記第1温度が150~350℃であり、前記第1圧力が7~30MPaである、条項17または18に記載の方法。
条項20.
前記第2温度が380~550℃である、条項17ないし19のいずれか1項に記載の方法。
条項21.
前記第1期間は、1~120分の長さである、条項17ないし20のいずれか1項に記載の方法。
条項22.
前記第1期間は、前記炭素質供給原料から前記第1温度で生成される少なくとも1つのC-Cガスの量に基づいて決定される、条項17ないし21のいずれか1項に記載の方法。
条項23.
前記第2期間は、1分~24時間である、条項17ないし22のいずれか1項に記載の方法。
条項24.
二酸化炭素雰囲気中の1つ以上のガスの濃度を監視することをさらに含む、条項17ないし23のいずれか1項に記載の方法。
条項25.
反応チャンバから二酸化炭素およびその中に溶解したピッチを除去することは、前記二酸化炭素雰囲気を分離システムに移送することを含む、条項17ないし24のいずれか1項に記載の方法。
条項26.
前記ピッチを前記二酸化炭素から分離することは、二酸化炭素の温度、圧力、またはその両方を低下させることを含む、条項17ないし25のいずれか1項に記載の方法。
条項27.
前記ピッチを使って炭素繊維を生成することをさらに含む、条項17ないし26のいずれか1項に記載の方法。
条項28.
前記ピッチを使用して炭素繊維を生成することは、前記ピッチを押し出して繊維にすることを含む、条項27のいずれか1項に記載の方法。
条項29.
石炭から繊維を製造するためのシステムであって、
二酸化炭素雰囲気中で石炭の組み合わせを熱分解することができる少なくとも1つの反応チャンバと、
石炭の熱分解後に前記反応チャンバから前記二酸化炭素雰囲気を受け取り、前記二酸化炭素からピッチ容器にピッチを凝縮するように構成された分離システムと、
前記分離システムによって凝縮された前記ピッチを受け取って押し出すように構成された、前記分離システムに接続された押出機と、
を含む、システム。
条項30.
前記反応チャンバは、7~30MPaまでの圧力で少なくとも550℃まで前記組み合わせを加熱することができる、条項29に記載のシステム。
条項31.
前記反応チャンバに熱エネルギーを供給する熱源をさらに含む、条項29または30に記載のシステム。
条項32.
前記反応チャンバに熱エネルギーを供給する原子炉をさらに含む、条項29ないし31のいずれか1項に記載のシステム。
条項33.
前記反応チャンバは、前記二酸化炭素を超臨界状態にまで加熱することができる、条項29ないし32のいずれか1項に記載のシステム。
条項34.
前記反応チャンバの前記二酸化炭素雰囲気中の1つ以上のガスの濃度を監視することができるガスモニターをさらに含む、条項29ないし33のいずれか1項に記載のシステム。
条項35.
前記反応チャンバから前記分離システムへの二酸化炭素の流れを制御するバルブをさらに含む、条項29ないし34のいずれか1項に記載のシステム。
条項36.
前記分離システムは、前記二酸化炭素からピッチを凝縮するように構成可能な少なくともピッチ捕集チャンバを含む、条項29ないし35のいずれか1項に記載のシステム。
条項37.
前記ピッチ捕集チャンバは、前記押出機に接続される、条項29ないし36のいずれか1項に記載のシステム。
条項38.
熱分解温度および圧力で,接触期間の間、炭素質供給原料を超臨界状態の二酸化炭素(CO)と接触させ、それによって前記炭素質供給原料を熱分解して、炭化物と、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COとを得ることと、
前記溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COの少なくとも一部を前記炭化物から分離することと、
前記溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COを、前記熱分解温度および圧力とは異なる第1段階温度および圧力に冷却して、第1段階CO生成物ガスおよび第1段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることと、
前記第1段階CO生成物ガスを前記第1段階温度および圧力とは異なる第2段階温度および圧力に冷却して、第2段階CO生成物ガスおよび第2段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることと、
前記第2段階CO生成物ガスからのCOの少なくとも一部を後続の熱分解反応で再利用することと、
を含む、方法。
条項39.
前記第1段階温度および圧力を制御して、前記第1段階熱分解反応生成物凝縮物中に第1熱分解反応生成物を得ることをさらに含む、条項38に記載の方法。
条項40.
前記第1段階温度を制御することは、
1つ以上の第1バイパスバルブの位置を設定し、それによって、第1回復器へのCO流の流速を選択することをさらに含む、条項39に記載の方法。
条項41.
前記第2段階温度および圧力を制御して、前記第2段階熱分解反応生成物凝縮物中に第2熱分解反応生成物を得て、前記第2熱分解反応生成物は前記第1熱分解反応生成物とは異なることをさらに含む、条項38~40のいずれかに記載の方法。
条項42.
前記第2段階温度を制御することは、
1つ以上の第2バイパスバルブの位置を設定し、それによって、第2回復器へのCO流の流速を選択することをさらに含む、条項41に記載の方法。
条項43.
石炭を含む反応チャンバに超臨界状態の二酸化炭素(CO)の入口流を流すことと、
接触期間の後、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COを出口流として前記反応チャンバから除去することと、
前記出口流の第1部分を、前記出口流が前記反応チャンバへの経路内のCOの戻り流によって冷却される第1回復器/コレクタ段階に導き、前記第1回復器/コレクタ段階は回復器と、それに続く凝縮物コレクタとを含み、第1段階CO流出流および第1段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることと、
前記第1段階CO流出流の少なくとも一部を第2回復器/コレクタ段階に導き、第2段階CO流出流および第2段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることと、
前記第1回復器/コレクタ段階に前記戻り流として少なくともいくらかのCOを通すことによって、前記第1段階CO流出流および/または前記第2段階CO流出流から少なくともいくらかのCOを再調整して、入口CO流を得ることと、
を含む、方法。
条項44.
前記出口流の第2部分を前記第2回復器/コレクタ段階に導くことをさらに含む、条項43に記載の方法。
条項45.
前記反応チャンバ内のCOを超臨界状態に維持するのに十分な熱分解温度および圧力に前記反応チャンバを維持し、それによって石炭を熱分解して、炭化物と、溶解熱分解反応生成物を含む超臨界COとを得ることをさらに含む、条項43または44に記載の方法。
条項46.
前記入口CO流の温度が300~600℃であり、圧力が7~30MPaである、条項43ないし45のいずれか1項に記載の方法。
条項47.
COおよび溶解熱分解反応生成物流の少なくとも一部を第3回復器/コレクタ段階に通して流し、第3段階CO流出流および第3段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることをさらに含む、条項43ないし46のいずれか1項に記載の方法。
条項48.
COおよび溶解熱分解反応生成物流の少なくとも一部を第4回復器/コレクタ段階に通して流し、第4段階CO流出流および第4段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることをさらに含む、条項47に記載の方法。
条項49.
COおよび溶解熱分解反応生成物流の少なくとも一部を第5回復器/コレクタ段階に通して流し、第5段階CO流出流および第5段階熱分解反応生成物凝縮物を得ることをさらに含む、条項48に記載の方法。
条項50.
前記第1、第2、第3、第4および第5回復器/コレクタ段階は、全て異なる温度で動作する、条項49に記載の方法。
条項51.
1つ以上のバイパスバルブの位置を設定することによって、前記回復器/コレクタ段階の異なる温度を制御することをさらに含む、条項43ないし50のいずれか1項に記載の方法。
条項52.
石炭を熱分解するためのシステムであって、
超臨界二酸化炭素(CO)雰囲気中で石炭の組み合わせを熱分解することができる少なくとも1つの反応チャンバと、
溶解熱分解反応生成物の少なくとも一部を超臨界CO雰囲気から除去し、次いで前記反応チャンバ内での再利用のためにCOを回収する回復および凝縮回路と、
を含む、システム。
条項53.
前記反応チャンバは、7~30MPaまでの圧力で少なくとも350℃まで前記組み合わせを加熱することができる、条項52に記載のシステム。
条項54.
前記CO雰囲気を前記反応チャンバに供給する前に、前記CO雰囲気に熱エネルギーを供給する熱源をさらに含む、条項52または53に記載のシステム。
条項55.
前記熱源は原子炉である、条項54に記載のシステム。
条項56.
前記回復および凝縮回路が1つ以上の回復器/コレクタ段階を含み、各々の回復器/コレクタ段階が、
COプロセス流として前記反応チャンバから前記CO雰囲気を受け取り、
前記COプロセス流からCO戻り流に熱を移送し、
冷却された前記COプロセス流から熱分解反応生成物を凝縮および捕集する、
ように接続された熱交換器および凝縮物コレクタを有する、条項52ないし55のいずれか1項に記載のシステム。
条項57.
1つ以上の添加剤を前記CO戻り流および/または前記反応チャンバに注入する添加剤注入システムをさらに含む、条項52ないし56のいずれか1項に記載のシステム。
条項58.
前記COプロセス流の流れを1つ以上の前記回復器/コレクタ段階に分配する複数のプロセス流バイパスバルブを含むバイパスシステムと、
前記複数のプロセス流バイパスバルブを制御し、それによって、1つ以上の前記回復器/コレクタ段階への前記COプロセス流の流れを制御するコントローラとをさらに含む、条項56または57に記載のシステム。
条項59.
前記バイパスシステムは、前記CO戻り流の流れを1つ以上の前記回復器/コレクタ段階に分配する複数の戻り流バイパスバルブをさらに含み、
前記コントローラは、前記複数の戻り流バイパスバルブを制御し、それによって、1つ以上の前記回復器/コレクタ段階への前記CO戻り流の流れを制御する、条項56ないし58のいずれか1項に記載のシステム。
条項60.
前記コントローラは、前記バイパスシステムを介して、前記回復器/コレクタ段階を通る前記COプロセス流および前記CO戻り流の流れを制御することによって、前記回復器/コレクタ段階のうちの少なくとも1つによって捕集される凝縮物画分を決定する、条項56ないし59のいずれか1項に記載のシステム。
条項61.
前記コントローラは、所定の目標に基づいて、前記回復器/コレクタ段階のうちの前記少なくとも1つによって捕集される前記凝縮物画分を決定する、条項60に記載のシステム。
条項62.
前記コントローラは、前記回復および凝縮回路内の1つ以上の箇所における温度を監視する1つ以上の温度センサから受け取った情報に基づいて、前記回復器/コレクタ段階のうちの前記少なくとも1つによって捕集される前記凝縮物画分を制御する、条項60に記載のシステム。
【0139】
本明細書に記載されたシステムおよび方法は、記載された端部および利点、ならびにそこに固有の端部および利点を達成するように十分に適合されていることは明らかであろう。当業者であれば、本明細書内の方法およびシステムは多くの方法で実施することができ、そのような方法は前述の例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを認識するであろう。この点に関して、本明細書に記載される異なる実施形態の任意の数の特徴は、1つの単一の実施形態に組み合わされてもよく、本明細書に記載される特徴の全てよりも少ないか、またはそれよりも多くを有する代替の実施形態が可能である。
【0140】
本開示の目的のために様々な実施形態を説明してきたが、本開示によって十分に意図される範囲内にある様々な変更および修正を行うことができる。例えば、一実施形態では、2段階熱分解法の雰囲気は、上記のsCO雰囲気とは異なっていてもよく、その一方で、本方法の抽出およびピッチ回収動作において溶媒としてsCOを依然として使用する。この実施形態では、抽出動作の一部として、熱分解雰囲気を除去してsCOで置き換えてもよい。
【0141】
当業者に容易に示唆され、本開示の精神に包含される多数の他の変化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1
【0143】
高レベルで、所与の供給原料から生成されるピッチの相対量を改善する熱分解方法の簡略化された実施形態を示す。
図2
【0144】
図1の熱分解方法のより詳細な実施形態を示す。
図3
【0145】
上述のピッチ製造方法に適したシステムの一例である。
図4
【0146】
所与の供給原料から得られる熱分解反応生成物を変化させるように調整することができる柔軟な熱分解システムのバッチ実施形態のプロセスフロー図を示す。
図5A
【0147】
図4に示すシステムの実施形態の実験性能を示す。
図5B
【0148】
図4に示すシステムの実施形態の実験性能を示す。
図5C
【0149】
図4に示すシステムの実施形態の実験性能を示す。
図6
【0150】
COを用いて炭素質供給原料を熱分解して、反応生成物を得るための広範な方法の実施形態を示す。
図7
【0151】
超臨界COを用いて石炭を熱分解する方法のより詳細な実施形態である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7