(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】呼吸圧治療システム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
A61M16/00 305A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020186732
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2017522043の分割
【原出願日】2015-10-23
【審査請求日】2020-12-08
(32)【優先日】2014-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519212484
【氏名又は名称】レスメド・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】アーミットステッド,ジェフリー・ピーター
(72)【発明者】
【氏名】バックリー,マーク・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】コールファックス,マイケル・ワクラウ
(72)【発明者】
【氏名】リンチ,スーザン・ロビン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ディオン・チャールズ・チュウ
(72)【発明者】
【氏名】ピーク,グレゴリー・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ラマナン,ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーベー,ジェイミー・グレアム
(72)【発明者】
【氏名】ゾテロ,ナタリー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/095764(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸圧治療システムであって、
コンピューティング装置および呼吸圧治療機器と通信するように構成されたデータサーバーを含み、前記呼吸圧治療機器は、セッションで呼吸圧治療を患者に与えるように構成され、前記コンピューティング装置は前記患者に紐付いており、さらに前記データサーバーは、
前記セッションに関する使用量データを前記コンピューティング装置から受信し、
前記使用量データから前記セッションの治療品質指標を算出し、前記治療品質指標は前記使用量データ中の前記セッションに関する複数の使用量変数にそれぞれ対応する複数の寄与度から算出された数値であり、また
前記治療品質指標を前記コンピューティング装置に送信するように構成されることを特徴とする、呼吸圧治療システム。
【請求項2】
前記使用量変数は、
前記セッションの利用時間と、
前記セッションの無呼吸・低呼吸指数と、
前記セッションの平均漏れ流量と、
前記セッションの平均マスク圧と、
前記セッション中のサブセッションの数と、
前記セッションが準拠ルールに従う準拠セッションかどうかの判定とからなるグループ内の2つ以上を含む、請求項
1に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項3】
前記計算するステップは、前記複数の寄与度の合計を計算するステップを含む、請求項
2に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項4】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数と該使用量変数のしきい値との比較に基づいて最大又は最小となる、請求項
2又は3に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項5】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を上回る場合に、最大寄与度である、請求項
4に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項6】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を下回る場合に、最小寄与度である、請求項
4に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項7】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を上回る場合に、最小寄与度である、請求項
4に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項8】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を下回る場合に、最大寄与度である、請求項
4に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項9】
前記複数の寄与度は第1の寄与度と第2の寄与度とを含み、
前記第1の寄与度は、前記第2の寄与度の、最大寄与度に対する比率に比例して低減される、請求項
2~8のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項10】
前記データサーバーはさらに、ボーナスまたはペナルティを、前記複数の寄与度の少なくとも1つに対して、対応する使用量変数の直近の履歴に関する該使用量変数の値に基づいて適用する、請求項
2~9のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項11】
前記治療品質指標を送信するステップは、前記治療品質指標を含む電子メールを前記コンピューティング装置に送るステップを含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項12】
前記治療品質指標を送信するステップは、前記治療品質指標を含むSMSメッセージを前記コンピューティング装置に送るステップを含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項13】
前記治療品質指標を送信するステップは、前記治療品質指標を含む通知を前記コンピューティング装置に送るステップを含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項14】
前記治療品質指標を送信するステップは、前記治療品質指標を含むWebページを前記コンピューティング装置に送るステップを含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項15】
前記データサーバーはさらに、前記複数の寄与度を前記コンピューティング装置に送信する、請求項1~
14のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項16】
さらに1つ以上の前記呼吸圧治療機器および前記コンピューティング装置を備える請求項1~
15のいずれか1項に記載の呼吸圧治療システム。
【請求項17】
呼吸圧治療法準拠装置であって、
複数のセッションにおいて呼吸圧治療を患者に与える呼吸圧治療機器の使用量に紐付いたデータにアクセスするように構成された1つ以上のプロセッサを備え、前記1つ以上のプロセッサはさらに、
前記セッションに関する使用量データを前記コンピューティング装置から受信し、
前記複数のセッションのうちの1つのセッションの治療品質指標を
前記使用量データから判定し、前記治療品質指標は、前記使用量データ中の前記セッションに関する複数の使用量変数にそれぞれ対応する複数の寄与度から算出された数値であり、また
前記治療品質指標を提示するように構成されることを特徴とする、呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項18】
前記使用量変数は、
前記セッションの利用時間と、
前記セッションの無呼吸・低呼吸指数と、
前記セッションの平均漏れ流量と、
前記セッションの平均マスク圧と、
前記セッション中のサブセッションの数と、
前記セッションが準拠ルールに従う準拠セッションかどうかの判定とからなるグループ内の2つ以上を含む、請求項
17に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項19】
前記治療品質指標の判定は、前記複数の寄与度の合計を計算するステップを含む、請求項
18に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項20】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数と該使用量変数のしきい値との比較に基づいて最大又は最小となる、請求項
18又は19に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項21】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を上回る場合に、最大寄与度である、請求項
20に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項22】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を下回る場合に、最小寄与度である、請求項
20に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項23】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を上回る場合に、最小寄与度である、請求項
20に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項24】
前記複数の寄与度の少なくとも1つは、対応する使用量変数が該使用量変数のしきい値を下回る場合に、最大寄与度である、請求項
20に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項25】
前記複数の寄与度は第1の寄与度と第2の寄与度とを含み、
前記第1の寄与度は、前記第2の寄与度の、最大寄与度に対する比率に比例して低減される、請求項
18~24のいずれか1項に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項26】
前記1つ以上のプロセッサはさらに、ボーナスまたはペナルティを、前記複数の寄与度の少なくとも1つに対して、対応する使用量変数の直近の履歴に関する該使用量変数の値に基づいて適用する、請求項
18~25のいずれか1項に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項27】
前記1つ以上のプロセッサはさらに、前記治療品質指標に基づいて、前記呼吸圧治療機器の設定を修正する、請求項
17~26のいずれか1項に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項28】
前記1つ以上のプロセッサはさらに、前記治療品質指標に基づいて、前記呼吸圧治療機器の治療モードを変更する、請求項
17~26のいずれか1項に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項29】
前記1つ以上のプロセッサはさらに、前記治療品質指標に基づいてメッセージを前記コンピューティング装置に送る、請求項
17~26のいずれか1項に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【請求項30】
前記メッセージは、前記患者に対し、前記呼吸圧治療を供給する患者インターフェースの取付けを調整するよう促すものである、請求項
29に記載の呼吸圧治療法準拠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、出願日2014年10月24日に出願された米国特許仮申請第62/068
,062号の利益を主張するものであり、その開示全体を引用によってここに組み込む。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
適用外
【0003】
[共同研究開発の当事者名]
適用外
【0004】
[配列表]
適用外
【背景技術】
【0005】
5.1 技術分野
本技術は、呼吸器関連疾患について1つ以上の検出、診断、治療、予防、および改善に
関する。また本技術は、医療機器または医療装置、およびその使用に関する。
【0006】
[従来の技術]
5.2.1 人体呼吸器系およびその疾患
人体の呼吸器系はスムーズにガス交換を行う。鼻面と口腔は、患者の気道の入口を形成
する。
【0007】
該気道は、肺の中に深く侵入するにつれて次第に狭く、短くなり、多岐に枝分かれする
管を備える。肺の主要機能はガス交換であり、空気中の酸素を静脈血に移動させて、二酸
化炭素を運び出すことができる。気管は左右の主気管支に分岐して、該気管支はさらに枝
分かれして最後には終末細気管支となる。気管支は誘導気道を構成するが、ガス交換には
関与しない。気道はさらに分岐して呼吸細気管支となり、最後には肺胞となる。肺の胞状
領域ではガス交換が行われ、呼吸帯と呼ばれる。”Respiratory Physi
ology”,by John B.West,Lippincott William
s & Wilkins,9th edition published 2011を参
照のこと。
【0008】
ある範囲の呼吸器疾患が存在する。一部の疾患は、無呼吸、低呼吸、過呼吸などの特定
事象によって特徴付けられる。
【0009】
睡眠呼吸障害(SDB)の一形態である閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠時に上
通気路が閉鎖、閉塞されるという特徴がある。これは睡眠時に上気道が異常に狭くなるこ
と、舌、軟口蓋、後腔咽頭壁の領域で通常にはあった筋緊張が失われることの組み合わせ
の結果である。この条件により罹患患者は、通常30~120秒の期間、毎夜200~3
00回もの呼吸停止を引き起こす。該条件はしばしば、日中に過度の眠気を引き起こし、
これが循環器疾患および脳損傷を起こし得る。この症候はとりわけ太り過ぎの中高年男性
に共通の疾患であるが、罹患した人間はその障害に気づかない場合がある。米国特許第4
,944,310号(Sullivan)を参照のこと。
【0010】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、睡眠呼吸障害の別の形態である。CSRは患
者の呼吸制御装置の疾患であり、該疾患ではCSRサイクルとして周知の、換気の強弱が
リズミカルに交替する期間がある。CSRは、動脈血の脱酸素化と再酸素化を繰り返すと
いう特徴がある。CSRは低酸素症が繰り返されるために有害であり得る。一部の患者で
は、CSRは睡眠覚醒の繰り返しと関連しており、その結果重大な睡眠中断、交感神経作
用の増加、後負荷の増加を引き起こす。米国特許第6,532,959号(Bertho
n-Jones)を参照のこと。
【0011】
ある範囲の治療法がその病態を治療または改善するために利用されている。しかも、こ
のような症状のない健康な個人は、その治療法を利用して呼吸器疾患の発症を防止し得る
。
【0012】
5.2.2 治療法
持続的気道陽圧(CPAP)療法は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するために
使用されてきた。処置のメカニズムは、持続的気道陽圧が空気圧の添え木という役割を果
たし、軟口蓋と舌を後咽頭壁から離して前方に押し出すことなどで上気道の閉塞を防止す
る。CPAP治療法によるOSAの治療は自発的であるため、したがって患者は、そのよ
うな治療法を提供する機器をつけ心地がよくない、使いにくい、高価、美的に好ましくな
いと感じる場合に、治療法に従わないと決心するかも知れない。
【0013】
圧補助換気法は、患者を上気道を通して換気補助して、呼吸作用の一部またはすべてを
行うことで、患者の十分な呼吸を支援し、および/または身体を適切な酸素レベルに保つ
。換気補助は、患者インターフェースを通して提供される。圧補助換気法は、CSRの治
療に利用されてきた。
【0014】
CPAP治療法および圧補助換気療法は、呼吸圧治療法(RPT)という見出しの元に
グループ化され得る。
【0015】
5.2.3 診断システムおよび治療システム
呼吸圧治療法は、呼吸圧治療システムまたは呼吸圧治療機器によって提供され得る。ま
た治療システムおよび治療機器は、病状を治療せずに、病状を診断するのに利用されてよ
い。
【0016】
呼吸圧治療システムは、呼吸圧治療機器(RPT機器)、エア回路、加湿装置、患者イン
ターフェース、およびデータ管理を備える。
【0017】
5.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば空気流を気道入口に供給することで、呼吸機器と利用
者をインターフェースするために利用される。空気流は、マスクから鼻および/または口
に、チューブから口に、または気管カニューレから利用者の気管に供給される。患者イン
ターフェースは、適用される治療法に基づいて例えば患者の顔領域とシールを形成して、
例えば大気圧に対して約10cmH2Oの陽圧など、治療を達成するために大気圧とは十
分に異なる圧力で、気体をスムーズに送り出す。酸素送出などその他の形態の治療法につ
いては、患者インターフェースは、約10cmH2Oの陽圧で気道に気体をスムーズに送
出するのに十分なシールを備えていない。
【0018】
5.2.3.2 呼吸圧治療機器
空気圧ジェネレータは、例えば工業的規模の空調システムなどのアプリケーションの範
囲において周知である。ただし、医療アプリケーション用の空気圧ジェネレータには、信
頼性、サイズ、重量という医療機器の要件など、より汎用の空気圧ジェネレータによって
は満せない特定の要件がある。加えて、医療向けに設計された機器であっても、快適性、
騒音、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、加工性、コスト、信頼性という1つ以上の欠
点を持つことがある。
【0019】
睡眠呼吸障害の治療に使用される周知のRPT機器の1つは、ResMed社製のS9
睡眠治療システムである。RPT機器の別の実例として換気装置がある。ResMed
StellarTMシリーズの成人・小児用ベンチレータなどの換気装置は、数多くの呼
吸器疾患を治療するため、ある範囲の患者に対して非依存性換気のサポートを提供する。
【0020】
ResMed EliseeTM150ベンチレータおよびResMed VS II
ITMベンチレータは、数多くの呼吸器疾患を治療するため、成人または小児の患者に適
合する依存性換気のサポートを提供する。これらの換気装置は、シングルリム回路または
ダブルリム回路を有する容積換気モードおよび気圧換気モードを備える。
【0021】
RPT機器は、一般に電動ブロワまたは圧縮ガスリザーバなどの圧力ジェネレータを備
え、空気流を患者の気道に供給するように構成される。場合によると空気流は、陽圧で患
者の気道に供給されてもよい。RPT機器の吹出口は、エア回路を介して前述のような患
者インターフェースに結合される。
【0022】
5.2.3.3 加湿装置
加湿しない空気流の送出は、気道を乾燥させる場合がある。RPT機器および患者イン
ターフェースと共に加湿装置を使用することで、加湿された気体を作り出し、該気体は鼻
粘膜の乾燥を最小限に抑え、患者の気道の快適性を向上させる。加えてより涼しい気候で
は、顔面エリアおよび患者インターフェースの周囲に概して加えられた温風は、冷気より
快適である。人工加湿機器およびシステムの範囲は周知であるが、医療用加湿機器の専門
要件を満たさない場合がある。
【0023】
5.2.3.4 データ管理
保険会社その他の補償エンティティは、RPT機器について患者を補償する前に、しば
しば呼吸治療を処方された患者が「準拠している」こと、つまり一定の「準拠ルール」に
従ってRPT機器を使用していたという証拠を要求する。CPAP治療法について準拠ル
ールの1つの実施例は、準拠していると見なされるために、患者は少なくとも連続して2
1~30日の間、毎晩少なくとも4時間、RPT機器を使用する必要がある。医療事業者
などRPT機器のプロバイダは、患者の準拠性を判定するために、RPT機器を使用した
患者の治療を記述したデータを手動で取得して、所定期間にわたって使用量を計算し、準
拠ルールと比較し得る。医療事業者が、患者は準拠ルールに従ってRPT機器を使用して
いたと判定すると、医療事業者は補償エンティティに患者が準拠していることを通知し得
る。本処理は高価で時間がかかり、手動で実施された場合には間違いやすい。それゆえR
PT機器は一般に、データ管理機能を含んでおり、該機能は該機器が治療変数データを保
存して、リモートサーバーに送信して、患者が準拠ルールに従ってRPT機器を使用して
いたかどうかを判定することができる。
【0024】
5.2.4 準拠性の問題
研究によると、呼吸圧治療法を処方された患者のうち最大で90%は、準拠ルールを満
たすための少なくともいくつかの問題を抱えている。RPT機器をセットアップする困難
、患者インターフェースがフィットしない、うまく調整できないことによる不快感、処方
されたレベルの気道陽圧から受ける感覚が我慢できないこと、過度のリークが患者または
ベッドのパートナーに騒音または中断をもたらす、主観的満足度が改善されていないこと
は、そのような問題の具体例である。初期の困難に諦める患者も多く、医療事業者に支援
を求める患者もいる。当初準拠性を満たした患者であっても、主観的に病状が改善しない
ために治療を続けられない場合がある。
【0025】
それゆえ、処方された呼吸圧治療法への準拠を促す呼吸圧治療システムの必要が存在す
る。
【発明の概要】
【0026】
[技術の簡単な説明]
本技術は、快適性、コスト、有効性、使いやすさ、加工性の1つ以上が改善された、呼
吸器疾患の診断、改善、治療、または予防に使用される医療機器の供給に関する。
【0027】
本技術の第1態様は、呼吸器疾患の診断、改善、治療、または予防に使用される装置に
関する。
【0028】
本技術の別の態様は、呼吸器疾患の診断、改善、治療、または予防に使用される方法に
関する。
【0029】
本技術の1態様は、患者が呼吸圧治療法に準拠することを促す方法および/またはシス
テムに関する。これは、受診している治療の品質についての簡単で有意の指標を患者に提
供することで達成される。この指標は、その治療を続行する患者のモティベーションを向
上させ、維持するのに役立つ。
【0030】
オプションとして、治療品質指標の分析は、患者の治療法を改善する基礎を形成し得る
。該改善は、治療モードまたは治療機器設定の変更という形態を取ってもよい。また該改
善は、例えばマスクをフィットするように調整するなど、患者を促してある処置を実施す
る形態を取ってもよい。
【0031】
本技術の一部のバージョンは、呼吸圧治療システムを備え得る。該システムは、コンピューティング装置および呼吸圧治療機器と通信するように構成されたデータサーバーを備え得る。該呼吸圧治療機器は、セッションで呼吸圧治療を患者に与えるように構成され得る。該コンピューティング装置は、患者に紐付いてよい。さらに該データサーバーは、該セッションに関する使用量データからセッションの治療品質指標を算出するように構成され得る。該治療品質指標は、使用量データ中のセッションに関する複数の使用量変数の貢献度(寄与度ともいう)から算出された数値であってよい。該データサーバーはさらに、治療品質指標をコンピューティング装置に送信するように構成され得る。
【0032】
さらに一部のバージョンでは該データサーバーは、呼吸圧治療機器から使用量データを
受信するように構成され得る。該データサーバーはさらに、呼吸圧治療機器からセッショ
ンに関する治療データを受信して、該治療データから使用量データを計算するように構成
され得る。さらに該データサーバーは、患者コンピューティング装置から使用量データを
受信するように構成され得る。該データサーバーはさらに、患者コンピューティング装置
からセッションに関する治療データを受信して、該治療データから使用量データを計算す
るように構成され得る。
【0033】
さらに一部のバージョンでは該データサーバーは、1つ以上のルールを治療品質指標に
適用して、患者の呼吸圧治療法を改善する処置を実施するように構成され得る。該処置は
、呼吸圧治療機器の設定を修正するステップを備え得る。該処置は、呼吸圧治療機器の治
療モードを変更するステップを備え得る。該処置は、メッセージをコンピューティング装
置に送付するステップを備え得る。該メッセージは、患者を促して、該呼吸圧治療を供給
する患者インターフェースの取付部品を調整させてもよい。さらに該データサーバーは、
コンピューティング装置に問い合わせを発行するように構成され得て、この場合該処置は
問い合わせへの応答に基づく。
【0034】
本技術の一部のバージョンは、患者の呼吸圧治療法を提供または監視する方法を備え得
る。該方法は、呼吸圧治療セッションの治療品質指標を該セッションに関する使用量デー
タから計算するステップを備え得る。該治療品質指標は、使用量データ中のセッションに
関する複数の使用量変数の貢献度から算出された数値であってよい。該方法は、治療品質
指標を患者に紐付いたコンピューティング装置に送信するステップを備え得る。一部のバ
ージョンでは該システムはさらに、1つ以上の呼吸圧治療機器およびコンピューティング
装置を含み得る。
【0035】
一部のバージョンでは該方法は、セッションに関する治療データから使用量データを計
算するステップを備え得る。該使用量変数は、以下からなるグループの2つ以上を備え得
る:セッション利用時間、セッションの無呼吸低呼吸指数、セッションの平均漏れ流量、
セッションの平均マスク圧、セッション内のサブセッション数、およびセッションが準拠
ルールに従う準拠セッションかどうかの判定。該計算ステップは、それぞれの使用量変数
の貢献度の合計を計算するステップを含んでもよい。その貢献度は、使用量変数と該使用
量変数のしきい値の差に比例し得る。その貢献度は、使用量変数が該使用量変数の最大し
きい値を上回る場合に、最高貢献度であってよい。その貢献度は、使用量変数が該使用量
変数の最小しきい値を下回る場合に、最低貢献度であってよい。その貢献度は、使用量変
数が該使用量変数の最大しきい値を上回る場合に、最低貢献度であってよい。その貢献度
は、使用量変数が該使用量変数の最小しきい値を下回る場合に、最高貢献度であってよい
。一部のバージョンでは1つを除くすべての使用量変数の貢献度は、他の使用量変数の貢
献度のその使用量変数の最高貢献度に対する比率に比例して低減され得る。オプションと
して、使用量変数の直近の履歴に関する使用量変数の値に基づいて、ボーナスまたはペナ
ルティが使用量変数の貢献度に適用され得る。
【0036】
場合によると、該送信するステップは、治療品質指標を含む電子メールをコンピューテ
ィング装置に送付するステップを含み得る。該送信するステップは、治療品質指標を含む
SMSメッセージをコンピューティング装置に送付するステップを含み得る。該送信する
ステップは、治療品質指標を含む通知をコンピューティング装置に送付するステップを含
み得る。該送信するステップは、治療品質指標を含むWebページをコンピューティング
装置に送付するステップを含み得る。さらに該方法は、それぞれの使用量変数の貢献度を
コンピューティング装置に送信するステップを備え得る。
【0037】
場合によると該方法は、1つ以上のルールを治療品質指標に適用するステップと、患者
の呼吸圧治療法を改善する処置を実施するステップを備え得る。該処置を実施するステッ
プは、呼吸圧治療機器の設定を修正するステップを備え得る。該処置を実施するステップ
は、呼吸圧治療機器の治療モードを変更するステップを備え得る。該処置を実施するステ
ップは、メッセージをコンピューティング装置に送付するステップを備え得る。該メッセ
ージは、患者を促して、該呼吸圧治療を供給する患者インターフェースの取付部品を調整
させてもよい。該方法は、コンピューティング装置に問い合わせを発行するステップを備
え得て、ここで該処置は問い合わせへの応答に基づく。
【0038】
本技術の一部のバージョンは、呼吸圧治療法準拠装置を備え得る。該装置は、複数セッ
ションにおいて呼吸圧治療を患者に与える呼吸圧治療機器の使用量に紐付いたデータにア
クセスするように構成された1つ以上のプロセッサを備え得る。該1つ以上のプロセッサ
はさらに、複数セッション中の1セッションの治療品質指標を、該セッションに関する使
用量データから決定するように構成され得る。該治療品質指標は、使用量データ中のセッ
ションに関する複数の使用量変数の貢献度から算出された数値であってよい。さらに該1
つ以上のプロセッサは、治療品質指標を提示するように構成され得る。
【0039】
一部のバージョンでは該使用量変数は、以下からなるグループの2つ以上を備え得る:
セッション利用時間、セッションの無呼吸低呼吸指数、セッションの平均漏れ流量、セッ
ションの平均マスク圧、セッション内のサブセッション数、およびセッションが準拠ルー
ルに従う準拠セッションかどうかの判定。装置による治療品質指標の該決定は、それぞれ
の使用量変数の貢献度の合計を計算するステップを備え得る。一部の事例では貢献度は、
使用量変数と該使用量変数のしきい値の差に比例し得る。一部の事例では貢献度は、使用
量変数が該使用量変数の最大しきい値を上回る場合には、最高貢献度であってよい。一部
の事例では貢献度は、使用量変数が該使用量変数の最小しきい値を下回る場合に、最低貢
献度であってよい。一部の事例では貢献度は、使用量変数が該使用量変数の最大しきい値
を上回る場合に、最低貢献度であってよい。一部の事例では貢献度は、使用量変数が該使
用量変数の最小しきい値を下回る場合に、最高貢献度であってよい。1つを除くすべての
使用量変数の貢献度は、他の使用量変数の貢献度のその使用量変数の最高貢献度に対する
比率に比例して低減され得る。オプションとして、1つ以上のプロセッサはさらに、使用
量変数の直近の履歴に関する使用量変数の値に基づいて、ボーナスまたはペナルティを使
用量変数の貢献度に適用するように構成され得る。
【0040】
本技術の一部のバージョンは、呼吸圧治療法の準拠情報を提供する方法を備え得る。該
方法は、1つ以上のプロセッサにおいて、セッションに関する使用量データから、呼吸圧
治療セッションの治療品質指標を計算するステップと、1つ以上のプロセッサを用いて治
療品質指標を提示するステップとを含み得て、ここで該治療品質指標は、使用量データ中
のセッションに関する複数の使用量変数からの貢献度から算出された数値であることを特
徴とする。該提示するステップは、患者に表示するため患者に紐付いたコンピューティン
グ装置に治療品質指標を送信するステップを備え得る。
【0041】
もちろん一部の該態様は、本技術の副態様を形成し得る。また様々な副態様および/ま
たは態様は、いろいろな方法で組み合わせてもよく、また本技術の追加態様または副態様
を構成し得る。
【0042】
該技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、摘要、図面、および請求の範囲に示される情報
を考慮することで明白になるであろう。
【0043】
本技術は、制限によってではなく、添付図面での具体例によって図示され、図中、同じ
参照符号は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】[7.1 治療システム] 鼻孔ピロー形式の患者インターフェース3000を装着し、RPT機器4000から陽圧空気の供給を受け入れる患者1000を含むシステムを示す。RPT機器からの空気は加湿装置5000で加湿され、エア回路4170を通過して患者1000にたどり着く。またベッドのパートナー1100も示す。
【
図2】[7.2 呼吸器系および顔面解剖学] 鼻腔と口腔、喉頭、声帯、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓、および隔膜からなる人体の呼吸器系の概要を示す。
【
図3】[7.3 患者インターフェース] 本技術の一実施形態に従って鼻孔マスク形式の患者インターフェースを示す。
【
図4A】[7.4 RPT機器] 本技術の一実施形態に従ってRPT機器を示す。
【
図4B】本技術の一実施形態に従ってRPT機器の空気圧経路の系統図を示す。上流および下流の方向が示される。
【
図4C】本技術の一実施形態に従ってRPT機器の電気部品の系統図を示す。
【
図5A】[7.5 加湿装置]本技術の一実施形態に従って加湿装置の斜視図を示す。
【
図5B】本技術の一実施形態に従って、加湿装置リザーバドック5130から取り出した加湿装置リザーバ5110を示す加湿装置の斜視図を示す。
【
図5C】本技術の一実施形態に従って加湿装置の概略図を示す。
【
図6】[7.6 呼吸波形]人体睡眠時の代表的呼吸波形のモデルを示す。
【
図7A】[7.7 呼吸圧治療システム]本技術の一実装に従って呼吸圧治療システムを図示するブロック図である。
【
図7B】本技術の別の実装に従って呼吸圧治療システムを図示するブロック図である。
【
図8】本技術の一実施形態における
図7Aまたは
図7Bの呼吸圧治療システム内のデータサーバーによって実行される方法を図示するブロック図である。
【
図9】
図8の方法の1実装において治療品質指標および他の情報を図示する実施例のイメージである。
【
図10】
図8の方法の1実装において使用量変数の履歴を図示する実施例のイメージである。
【
図11】
図8の方法の1実装において呼吸圧治療セッションからの治療データを図示する実施例のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本技術をさらに詳細に記述する前に、該技術はここで説明されている変更され得る特定
の実施例に限定されないことが理解されるべきである。また、本開示で使用されている用
語はただここで説明されている特定の実施例を説明するためのみであり、限定を意図して
いないことが理解されるべきである。
【0046】
以下の説明は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有する様々な実施例に関
して提供される。いずれか1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施
例の1つ以上の特徴と組み合わせ得ることが理解されるべきである。加えて、どの実施例
においてもいずれか1つの特徴または複数の特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成
し得る。
【0047】
8.1 治療法
本技術の一実施形態は、陽圧を患者1000の気道入口に加えるステップを含む呼吸器
疾患を治療する方法を含み得る。
【0048】
本技術の一部の実施例では、陽圧空気の供給が1つまたは両方の鼻孔を介して患者の鼻
孔通路に提供される。
【0049】
8.2 治療システム
本技術の一実施形態は、呼吸器疾患を治療する装置または機器を備える。該装置または
機器は、患者インターフェース3000のエア回路4170を介して与圧空気を患者10
00に供給するためのRPT機器4000を備え得る。
【0050】
8.3 患者インターフェース
本技術の一態様に従って非侵襲性患者インターフェース3000は、以下の機能的態様
を備える:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決め・安定化構造
3300、ベント3400、エア回路4170に接続するための1形式の接続ポート36
00、および額サポート3700。機能的態様は一部の実施形態では、1つ以上の物理的
構成部品によって提供され得る。一部の形態では、1つの物理的構成部品が1つ以上の機
能的態様を提供し得る。シール形成構造3100は、使用時に患者の気道入口を囲むよう
に配設されて、陽圧で空気を気道にスムーズに供給し得る。
【0051】
8.4 RPT機器
RPT機器4000は、本技術の一態様に従って機械部品および空圧部品4100、電
気部品4200を備えており、1つ以上のアルゴリズムを実行するように構成される。該
RPT機器は、上部分4012と下部分4014の2部品で形成される外付けハウジング
4010を有し得る。さらに外付けハウジング4010は、1つ以上のパネル4015を
備えてもよい。RPT機器4000は、該RPT装置4000の1つ以上の内部構成部品
を支持するシャーシ4016を備える。該RPT機器4000は、ハンドル4018を備
えてもよい。
【0052】
RPT機器4000の空気圧経路は、例えば吸気口エアフィルタ4112、吸気口マフ
ラ4122、陽圧空気を供給可能な圧力ジェネレータ4140(例えばブロワ4142)
、吹出口マフラ4124、および圧力センサ4272と流量センサ4274など1つ以上
のトランスデューサ4270など、空気経路アイテムを備え得る。
【0053】
1つ以上の空気経路アイテムは、空気圧ブロック4020と呼ばれる着脱可能なユニッ
ト構造内に配置されてよい。該空気圧ブロック4020は、外付けハウジング4010の
内部に配置されてよい。一実施形態では空気圧ブロック4020は、シャーシ4016に
よって支持されるか、シャーシ4016の一部として形成される。
【0054】
該RPT機器4000は、電力供給装置4210、1つ以上の入力機器4220、集中
制御装置4230、治療機器制御装置4240、圧力ジェネレータ4140、1つ以上の
保護回路4250、メモリ4260、トランスデューサ4270、データ通信インターフ
ェース4280、および1つ以上の出力機器4290を備えてもよい。電気部品4200
は、単一のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202に搭載され得る。該RPT
機器4000の別の実施形態では、2つ以上のPCBA4202を備えてもよい。
【0055】
本技術の一部の実施形態では集中制御装置4230は、1つ以上の呼吸圧治療法パラメ
ータを決定するための1つ以上のアルゴリズムを実行する。
【0056】
本技術の一実施形態では該呼吸圧治療法パラメータは、瞬間治療圧Ptである。この実
施形態の1実装では、集中制御装置4230は方程式
【数1】
を使用して治療圧Ptを決定するが、
ここで
Aは振幅であり、
P(Φ)は、呼吸サイクルフェーズの現在値Φの時の圧力フェーズ波形値(1と0の範
囲)、そして
P
0はベース圧である。
【0057】
振幅Aとベース圧P0の値は、以下に説明する方法において選択された呼吸圧治療モー
ドに従って、集中制御装置4230によって設定されてよい。
【0058】
方程式(1)による治療圧の決定は、それぞれ最小限Pminと最大限Pmaxで限定
され得る。
【0059】
8.5 呼吸圧治療モード
様々な呼吸圧治療モードは、本技術の一実施形態において集中制御装置4230によっ
て使用される治療圧方程式(1)中のパラメータAとP0の値に応じて、RPT機器40
00によって実装され得る。
【0060】
8.5.1 CPAP治療法
本技術のこの実施形態の一部の実装では、振幅Aはゼロと同一で、治療圧Ptは呼吸サ
イクル全体にわたってベース圧P0に完全に等しい。一般にそのような実装は、CPAP
治療法という見出しの元にグループ化される。そのような実装では、圧力フェーズ波形P
(Φ)の必要はない。
【0061】
ベース圧P0はCPAP治療モードでは、ハードコードされたり、手動でRPT機器4
000に入力されたりする定数値であり得る。この選択肢は、ときに定数CPAP治療法
と呼ばれる。ベース圧P0の定数値は、滴定として周知の処理を介して所定の患者に対し
て選択されてよい。一般に臨床医は滴定の際に、滴定セッション時の流量制限、無呼吸、
低呼吸、開通性、およびいびきの観察に応じて治療圧Ptを調整する。次に滴定されたベ
ース圧P0は、滴定セッション時の治療圧Ptの統計的サマリとして計算され得る。
【0062】
または集中制御装置4230は、CPAP治療法時にベース圧P0を連続して計算して
もよい。集中制御装置4230はそのような実装の1つでは、ベース圧P0を、1つ以上
の流量制限、無呼吸、低呼吸、開通性、およびいびきなど、睡眠呼吸障害の指数または尺
度の関数として連続して計算する。この選択肢は、ときにAPAP治療法と呼ばれる。ベ
ース圧P0の連続的計算は、臨床医による滴定時の治療圧Ptの手動調整に似ているため
、またAPAP治療法はときに自動滴定CPAPとも呼ばれる。
【0063】
8.5.2 圧補助換気療法
8.5.3 二層治療法
本技術のこの実施形態の他の実装では、方程式(1)中の振幅Aの値は正である。その
ような実装は二層治療法として周知である、これは方程式(1)と正の振幅Aを使用した
治療圧Ptの決定において、集中制御装置4230は患者1000の自発呼吸努力に同期
して2値または2レベル間で治療圧Ptを振動させるからである。つまり集中制御装置4
230は、吸気の開始時または吸気中に治療圧PtをP0+A(IPAPとして周知)に
増加させて、呼気の開始時または呼気中に治療圧Ptをベース圧P0に減少させる。
【0064】
二層治療法の一部の実施形態では、IPAPはCPAP治療モードの治療圧と同じ目的
を持つ治療圧であり、EPAPはIPAPの振幅Aであり、これはときに呼気圧リリーフ
(EPR)と呼ばれる「小さな」値(数cmH2O)である。そのような形態はときにE
PR付きCPAP治療法と呼ばれ、これは一般に、ストレートCPAP治療法より快適で
あると考えられる。EPR付きCPAP治療法では、IPAP、EPAP、EPRのいず
れかまたはすべてはハードコードされたり、手動でRPT機器4000に入力されたりす
る定数値であってよい。または集中制御装置4230は、EPR付きCPAP治療時にI
PAPおよび/またはEPAPを連続して計算してもよい。集中制御装置4230はその
ような1実装では、EPAP、IPAPおよび/またはEPRを、前述したAPAP治療
法におけるベース圧P0の計算に類似の方法で、睡眠呼吸障害の指数または尺度の関数と
して連続して計算してもよい。
【0065】
二層治療法の他の実施形態では、振幅Aは十分に大きいので、RPT機器4000は患
者1000の一部または全部の呼吸動作を行う。圧補助換気療法として周知のそのような
実施形態では、振幅Aは圧力サポートまたはスウィングと呼ばれる。IPAPは圧補助換
気療法では、ベース圧P0+圧力サポートAであり、EPAPはベース圧P0である。
【0066】
固定圧補助換気療法として周知の圧補助換気療法の一部の実施形態では、圧力サポート
Aは例えば10cmH2Oなど所定の値に固定される。所定の圧力サポート値はRPT機
器4000の設定であり、例えばRPT機器4000の構成時にハードコーディングによ
って、あるいは入力機器4220を通じて手動で記入することで設定されてよい。
【0067】
圧補助換気療法の一形態は「ペース呼吸」として周知である。ペース呼吸は、圧補助換
気法を用いて、患者の応答に共感して治療法を十分容認できるようにする方法で患者の呼
吸を遅くして「最適」の呼吸数にする方法を備える。スローペース呼吸は、不眠症患者な
ど、特に過度に共感的な患者を落ち着かせ得ることが証明されている。
【0068】
8.6 加湿装置
本技術の一実施形態では加湿装置5000(例えば
図5Aに示す)が提供されており、
患者に送出するために外気と比較して空気または気体の絶対湿度を変更する。一般に加湿
装置5000は、患者の気道に送出する前に、(外気と比較して)空気流の絶対湿度を増
加させ、温度を増加させるために利用される。
【0069】
加湿装置5000は、加湿装置リザーバ5110、空気流を受け入れる加湿装置吸気口
5002、および加湿された空気流を送出する加湿装置吹出口5004を備え得る。一部
の実施形態では
図5A、
図5Bに示すように、加湿装置リザーバ5110の吸気口および
吹出口は、それぞれ加湿装置吸気口5002および加湿装置吹出口5004であり得る。
さらに加湿装置5000は、加湿装置ベース5006を備え得て、該ベースは加湿装置リ
ザーバ5110を受けるのに適合し、加熱素子5240を備える。
【0070】
8.6.1 加湿装置の機械部品
8.6.1.1 貯水槽
加湿装置5000は1編成によれば、空気流を加湿するために、ある容量の液体(例え
ば水)を気化させるために保持または保存するように構成された貯水槽5110を備え得
る。貯水槽5110は、1晩の睡眠など少なくとも呼吸圧治療セッションの期間のあいだ
、十分な加湿を供給するために、所定の最大容量の水を保持するように構成され得る。一
般に貯水槽5110は、例えば300ミリリットル(ml)、325ml、350ml、
または400mlなど数百ミリリットルの水を保持するように構成される。加湿装置50
00は他の実施形態では、建物の上水道システムなど外部の水源から給水を受け入れるよ
うに構成され得る。
【0071】
貯水槽5110は1態様によれば、RPT機器4000からの空気流がそこを通過する
際に、空気流に湿度を追加するように構成される。貯水槽5110は一実施形態では、あ
る容量の水と接触しながら、貯水槽5110を通る曲がりくねった経路を空気流が通過す
ることを促すように構成され得る。
【0072】
貯水槽5110は一実施形態によれば、例えば
図5A、
図5Bに示すように横方向など
、加湿装置5000から取外し可能であってよい。
【0073】
また貯水槽5110は、貯水槽5110が正常な動作方向からずれたりおよび/または
回転した場合など、開口を通っておよび/またはサブ部品の間などに、液体がそこから出
ることを妨げるように構成され得る。一般に加湿装置5000によって加湿される空気流
は与圧されるため、また貯水槽5110は漏れおよび/またはフローインピーダンスを通
しての空気圧の損失を防止するように構成され得る。
【0074】
8.6.1.2 伝導性部分
貯水槽5110は一編成によれば、加熱素子5240からの熱を貯水槽5110内のあ
る容量の水に効率的に移転できるように構成された伝導性部分5120を含む。伝導性部
分5120は一実施形態では、板として配置され得るが、また他の形状も適合し得る。伝
導性部分5120の全部または一部は、アルミニウム(例えば約2mm、1mm、1.5
mm、2.5mm、または3mmの厚さなど)、別の熱伝導性金属または一部のプラステ
ィックなど、熱伝導性材料で製造されてよい。場合によると適合する熱伝導性は、適合す
るジオメトリで低伝導性の材料で達成され得る。
【0075】
8.6.1.3 加湿装置リザーバドック
加湿装置5000は一実施形態では、加湿装置リザーバ5110を受け入れるように構
成された加湿装置リザーバドック5130(
図5Bに示す)を備え得る。加湿装置リザー
バドック5130は一部の編成では、加湿装置リザーバドック5130内にリザーバ51
10を保持するように構成されたロックレバー5135などロック機能を備え得る。
【0076】
8.6.1.4 給水レベルインジケータ
加湿装置リザーバ5110は、
図5A、
図5Bに示すように給水レベルインジケータ5
150を備え得る。給水レベルインジケータ5150は一部の実施形態では、加湿装置リ
ザーバ5110内の水の容量に関して、患者1000または介護者などの利用者に1つ以
上の指示を提供し得る。給水レベルインジケータ5150によって提供される1つ以上の
指示は、所定の最大水容量、25%、50%、または75%などその一部分または200
ml、300ml、または400mlなど一部容量を含み得る。
【0077】
8.6.2 加湿装置の電気部品および感熱部品
加湿装置5000は、以下に掲げるものなどの多数の電気部品および/または感熱部品
を備え得る。
【0078】
8.6.2.1 加湿装置トランスデューサ
加湿装置5000は、前述のトランスデューサ4270の代わりにまたは前述のトラン
スデューサ4270に加えて、1つ以上の加湿装置トランスデューサ(センサー)521
0を備え得る。加湿装置トランスデューサ5210は、
図5Cに示すように1つ以上の気
圧センサ5212、風量トランスデューサ5214、温度センサ-5216、湿度センサ
-5218を含み得る。加湿装置トランスデューサ5210は,1つ以上の出力信号を生
成し得て、該出力信号は集中制御装置4230および/または加湿制御装置5250など
の制御装置に伝達され得る。加湿装置トランスデューサは一部の実施形態では、制御装置
に出力信号を伝達しながら、加湿装置5000の外部(エア回路4170の中など)に配
置されてよい。
【0079】
8.6.2.1.1 圧力変換器
加湿装置5000には、RPT機器4000の中に備える圧力センサに加えてまたは圧
力センサ4272の代わりに、1つ以上の圧力変換器5212を備え得る。
【0080】
8.6.2.1.2 流量トランスデューサ
加湿装置5000には、RPT機器4000の中に備える流量センサーに加えてまたは
流量センサー4274の代わりに、1つ以上の流量トランスデューサ5214を備え得る
。
【0081】
8.6.2.1.3 温度トランスデューサ
加湿装置5000は、1つ以上の温度トランスデューサ5216を備え得る。1つ以上
の温度トランスデューサ5216は、加熱素子5240および/または加湿装置吹出口5
004の下流の空気流など1つ以上の温度を測定するように構成され得る。さらに加湿装
置5000は一部の実施形態では、外気の温度を検出するための温度センサー5216を
備え得る。
【0082】
8.6.2.1.4 湿度トランスデューサ
加湿装置5000は一実施形態では、外気など気体の湿度を検出するための1つ以上の
湿度センサー5218を備え得る。湿度センサー5218は一部の形態では、加湿装置5
000から送出される気体の湿度を測定するために、加湿装置吹出口5004の向きに配
置され得る。該湿度センサーは、絶対湿度センサーまたは相対湿度センサーであってよい
。
【0083】
8.6.2.2 加熱素子
一部の事例では加湿装置5000は、加湿装置リザーバ5110において1つ以上のあ
る容量の水に、および/または空気流に入熱を供給するため、加熱素子5240を備え得
る。加熱素子5240は、電気抵抗加熱トラックなどの発熱部品を備え得る。加熱素子5
240の1つの適合する実施例は、PCT特許出願公開番号第WO 2012/1710
72号で記述されているような積層加熱素子であり、該特許出願は参照によってその全体
を組み込む。
【0084】
加熱素子5240は一部の実施形態では、加湿装置ベース5006に備えられ得て、こ
こで熱は、
図5Bに示すように主として伝導によって加湿装置リザーバ5110に供給さ
れ得る。
【0085】
8.6.2.3 加湿制御装置
本技術の1編成によれば、加湿装置5000は
図5Cに示すように加湿制御装置525
0を備え得る。加湿制御装置5250は一実施形態では、集中制御装置4230の一部で
ある。加湿制御装置5250は別の実施形態では、集中制御装置4230と通信する別個
の制御装置である。
【0086】
加湿制御装置5250は一実施形態では、例えば空気流の特性、リザーバ5110およ
び/または加湿装置5000内の水の特性など、特性(温度、湿度、圧力、および/また
は流量など)の量を、入力として受信し得る。また加湿制御装置5250は、加湿装置ア
ルゴリズムを実施または実装したり、および/または1つ以上の出力信号を送出するよう
に構成され得る。
【0087】
加湿制御装置5250は
図5Cに示すように、中央加湿制御装置5251、加熱エア回
路4171の温度を制御するように構成された加熱エア回路制御装置5254、および/
または加熱素子5240の温度を制御するように構成された加熱素子制御装置5252な
ど、1つ以上の制御装置を備え得る。
【0088】
8.7 呼吸波形
図6は、人体睡眠時の代表的呼吸波形のモデルを示す。横軸は時間、縦軸は呼吸流量で
ある。パラメータ値は変化し得るが、代表的な呼吸は以下の近似値を持ち得る:一回呼吸
量Vt:0.5L、吸気時間Ti:1.6s、ピーク吸気流量Qpeak:0.4L/s
、呼気時間Te:2.4s、ピーク呼気流量Qpeak:-0.5L/s。総呼吸期間T
totは約4sである。一般に人体は毎分約15呼吸(BPM)の速度、約7.5L/m
inの換気Ventで呼吸する。TiのTtotに対する比率である代表的なデューティ
サイクルは約40%である。
【0089】
8.8 呼吸圧治療システム
8.8.1 システムアーキテクチャ
図7Aは、本技術に従ってRPTシステムの一実装7000を図示するブロック図を含
む。RPTシステム7000は、呼吸圧治療法を患者1000に提供するように構成され
たRPT機器4000、データサーバー7010、患者1000に紐付いた患者コンピュ
ーティング装置7050を備える。患者コンピューティング装置7050は、患者100
0およびRPT機器4000と一緒に配置される。RPT機器4000、患者コンピュー
ティング装置7050およびデータサーバー7010は、
図7Aに示される実装7000
では、インターネットまたはインターネットなどワイドエリアネットワーク7090に接
続される。ワイドエリアネットワークへの該接続は、有線または無線であり得る。ワイド
エリアネットワークは、
図4Cの外部リモート通信ネットワーク4282によって識別さ
れ得て、データサーバー7010は
図4Cの外部リモート機器4286によって識別され
得る。患者コンピューティング装置7050は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タ
ブレットコンピュータ、その他の機器であってよい。患者コンピューティング装置705
0は、ワイドエリアネットワーク7090を通して患者1000とデータサーバー701
0の間を仲介するように構成される。この仲介は1実装では、患者コンピューティング装
置7050で動作するソフトウェアアプリケーションプログラミング7060によって実
行される。患者プログラム7060は、データサーバー7010によってホストされる相
補プロセスと対話する「患者アプリ」と呼ばれる専用アプリケーションであり得る。別の
実装では患者プログラム7060は、データサーバー7010によってホストされるWe
bサイトとセキュアポータルを介して対話するWebブラウザである。さらに別の実装で
は患者プログラム7060は、電子メールクライアントである。
【0090】
図7Bは、本技術に従ってRPTシステムの別の実装7000Bを図示するブロック図
を含む。RPT機器4000は別の実装7000Bでは、ローカルネットワークプロトコ
ル(例えばBluetooth)などローカル(有線または無線)通信プロトコルを介し
て、患者コンピューティング装置7050と通信する。別の実装7000Bでは、ローカ
ルネットワークは、
図4Cの外部ローカル通信ネットワーク4284によって識別され得
て、患者コンピューティング装置7050は
図4Cの外部ローカル機器4288によって
識別され得る。別の実装7000Bでは患者コンピューティング装置7050は、患者プ
ログラム7060を介して、ワイドエリアネットワーク7090を通して患者1000と
データサーバー7010の間を仲介し、またワイドエリアネットワーク7090を通して
RPT機器4000とデータサーバー7010の間を仲介するように構成される。
【0091】
以下、RPTシステム7000についての説明は、明示的にそうでないと記述されてい
る場合を除いて、等しく別の実装7000Bに適用されると理解されてよい。
【0092】
RPTシステム7000は、それぞれが関連するコンピューティング装置を持つところ
のそれぞれの患者に紐付いた他のRPT機器(図示せず)を含み得る。RPTシステム7
000内の全患者は、データサーバー7010によって管理される。
【0093】
RPT機器4000は、メモリ4260内に各RPTセッションから患者1000に送
出された治療データを保管するように構成される。RPTセッションの治療データは、R
PT機器4000の設定と、RPTセッションを通して呼吸圧治療法の1つ以上の変数を
表す治療変数データとを備える。
【0094】
RPT機器設定データは、以下を含み得る:
ベース治療圧P0
治療圧の最大限Pmaxおよび最小限Pmin
振幅A
送出された空気流の湿度
送出された空気流の温度
【0095】
治療変数は、以下を含み得る:
呼吸流量Qr
マスク圧Pm
漏れ流量Ql
一回呼吸量Vt
換気量Vent
呼吸数
【0096】
RPT機器4000は、治療データをデータサーバー7010に送信するように構成さ
れる。データサーバー7010は、RPT機器4000から「プル」モデルに従って治療
データを受信して得て、それによりRPT機器4000はデータサーバー7010からの
問い合わせに応答して治療データを送信する。またはデータサーバー7010は、「プッ
シュ」モデルに従って治療データを受信し得て、それによりRPT機器4000はRPT
セッション後に都合のつき次第治療データをデータサーバー7010に送信する。
【0097】
RPT機器4000から受信した治療データは、データサーバー7010によってイン
デックス付けして保存され、治療データはRPT機器4000に一意に紐付けされて、そ
れゆえRPTシステム7000に参加する他のRPT機器からの治療データと識別できる
ようになる。
【0098】
データサーバー7010は、RPT機器4000から受信された治療データからの各R
PTセッションの使用量データを計算するように構成される。セッションの使用量データ
変数は、治療データの一部を形成する治療変数データから従来の採点方法によって導き出
されたサマリ統計値を含む。使用量データは、次の使用量変数の1つ以上を備え得る。
例えばRPTセッションの総期間などの利用時間
セッションの無呼吸低呼吸指数(AHI)
セッションの平均漏れ流量
セッションの平均マスク圧
RPTセッション内のサブセッションの数、つまり「マスクオン」イベントと「マスク
オフ」イベント間のRPT治療区間の数
例えば95th パーセンタイル圧、メジアン圧、圧力値のヒストグラムなど、治療変数
の他の統計的サマリ
【0099】
使用量変数は、RPT治療法の開始以来のAHIの平均値、メディアン、分散などのマ
ルチセッション統計値を備え得る。
【0100】
RPT機器4000は別の実装として、各セッションの最後にRPT機器4000によ
って保存されている治療データから使用量変数を算出する。次にRPT機器4000は、
前述の「プッシュ」または「プル」モデルに従って使用量変数をデータサーバー7010
に送信する。
【0101】
さらなる実装として、RPT機器4000が各RPTセッションの治療データ/使用量
データを保存するメモリー4260は、SDメモリカードなどのように着脱可能である。
着脱可能メモリ4260は、RPT機器4000から取り外したり、データサーバー70
10と通信するカードリーダーに挿入し得る。次に治療データ/使用量データは、着脱可
能メモリ4260からデータサーバー7010のメモリにコピーされる。
【0102】
さらなる実装では、RPTシステムの別の実装7000Bに適しているが、RPT機器
4000は治療データ/使用量データを、前述のようにBluetoothなど無線通信
プロトコルを介して、患者コンピューティング装置7050に送信するように構成される
。次に患者コンピューティング装置7050は、治療データ/使用量データをデータサー
バー7010に送信する。データサーバー7010は、患者コンピューティング装置70
50から「プル」モデルに従って治療データ/使用量データを受信して得て、それにより
患者コンピューティング装置7050は、データサーバー7010からの問い合わせに応
答して治療データ/使用量データを送信する。またはデータサーバー7010は、「プッ
シュ」モデルに従って治療データ/使用量データを受信し得て、それにより患者コンピュ
ーティング装置7050は、RPTセッション後に利用可能になり次第治療データ/使用
量データをデータサーバー7010に送信する。
【0103】
一部の実装では、データサーバー7010は、データサーバー7010と通信する1つ
以上のプロセッサまたはデータサーバー7010内に含まれる1つ以上のプロセッサを用
いてなどで、使用量データの一部の後処理を実行し得る。そのような後処理の1実施例は
、最新セッションが「準拠セッション」かどうかを判定することである。一部の準拠ルー
ルは、準拠期間内の例えば21日など最小日数について、4時間などセッション毎の機器
使用の最小期間に関して、30日などの準拠期間にまたがってのRPT機器の必須使用量
を指定する。セッションは、その期間が最小期間を上回る場合に準拠していると考えられ
る。使用量データの後処理は、使用期間を準拠ルールの最小期間と比較することで、最新
セッションが準拠セッションであるかどうかの判定であり得る。そのような後処理の結果
は、ブール型準拠変数など使用量データの一部を形成する準拠データである。マルチセッ
ション使用量データのさらなる実施例は、RPT治療法の開始以来の準拠セッションのカ
ウントである。
【0104】
またデータサーバー7010は、患者コンピューティング装置7050からデータを受
信するように構成され得る。そのようなデータは、患者1000によって患者プログラム
7060に入力されたデータ、または前述のように別の実装7000B中の治療データ/
使用量データを含み得る。
【0105】
またデータサーバー7010は、患者コンピューティング装置7050に電子メッセー
ジを送信するように構成され得る。該メッセージは電子メール、SMSメッセージ、自動
化された音声メッセージ、または患者プログラム7060内の通知の形式であってよい。
【0106】
RPT機器4000は、治療モードまたは特定の治療モードの設定は、ワイドエリアネ
ットワーク接続またはローカルエリアネットワーク接続を介して対応する指令を受信する
ことで修正されるように構成され得る。またデータサーバー7010はそのような実装で
は、そのような指令を直接RPT機器4000(実装7000)に、または患者コンピュ
ーティング装置7050(実装7000B)を介してリレーされて間接にRPT機器40
00に送付するように構成され得る。
【0107】
データサーバー7010は、以下で詳細に記述するように、治療を継続する患者のモテ
ィベーションを向上または維持するように構成されたプロセス7020をホストする。大
きく見ると、プロセス7020はRPT機器4000および/または患者コンピューティ
ング装置7050のデータを分析して、最新治療セッションの品質を示す治療品質指標を
算出する。つぎにプロセス7020は、例えば患者コンピューティング装置7050上で
動作中の患者プログラム7060を介して、治療品質指標を患者1000に通信する。
【0108】
患者1000は、治療品質指標を治療法がどのように進行しているかの簡潔な指標とし
て理解する。それによって患者1000は、治療法を我慢強く続けるように動機付けられ
る。性能の追跡および測定は、目的を達成しようとする人物にとって強い動機付けになり
得ることは周知であり、治療品質指標は呼吸圧治療法という状況においてそのような性能
の尺度として役に立つ。
【0109】
また治療品質指標は、以下に説明するように患者の呼吸圧治療法を改善するベースとし
て使用され得る。
【0110】
8.8.2 システム動作
図8は、本技術の一実施形態におけるプロセス7020の一部として、
図7AのRPT
システム7000または
図7BのRPTシステム7000Bにおいて、データサーバー7
010の1つ以上のプロセッサを使って、またはデータサーバー7010と通信すること
で実行される方法8000を図示するブロック図である。本技術の一実施形態では方法8
000は、データサーバー7010が完了した治療セッションの治療データまたは使用量
データを受信することで実行される。
【0111】
方法8000はステップ8010で開始されるが、該ステップでデータサーバー701
0は、治療データを処理して前述のように使用量データを生成する。ステップ8010は
破線で囲んで示されるが、それはステップがオプションであり、データサーバー7010
がRPT機器4000または患者コンピューティング装置7050から使用量データを受
信しない実装でのみ実行されるからである。
【0112】
次のステップ8020でデータサーバー7010は、以下で詳細に説明するように使用
量データから治療品質指標を算出する。
【0113】
ステップ8030でデータサーバー7010は、以下の1つ以上の実装に従って、治療
品質指標を患者コンピューティング装置7050に送信する。
・電子メール(患者プログラム7060が電子メールクライアントの場合)
SMSメッセージ
・患者プログラム7060における「通知」(患者プログラム7060が「患者アプリ
」の場合)
・Webサイトのページ(患者プログラム7060がWebブラウザの場合)
【0114】
ステップ8030における電子メール、患者アプリ、およびWebサイトの実装は、治
療品質指標より詳細な情報を含み得る。以下で、この実装についてさらに詳しく説明する
。
【0115】
またプロセス7020の一部の実装では方法8000は、ステップ8040、8050
を含む(
図8に破線で囲んで示す)。データサーバー7010はステップ8040で、1
つ以上のルールをステップ8020で算出された治療品質指標に適用し、オプションとし
て以前に算出された1つ以上の治療品質指標の値に適用する。データサーバー7010は
、ルール出力に基づいてステップ8050でその後のセッションについて患者の治療法を
改善する処置を実施してもよく、または患者1000にそのような処置を実施するように
促してもよい。以下に該ルールおよび該処置についてより詳細に説明する。
【0116】
データサーバー7010がステップ8050でとる処置は、RPT機器4000の設定
を修正するステップであるか、RPT機器の治療モードを別の治療モードに変更するステ
ップであり得る。
【0117】
ステップ8050で患者1000が処置を実施するように促すために、データサーバー
7010は1つ以上の次の実装に従って、患者コンピューティング装置7050を介して
メッセージを患者1000に送付してもよい。
・電子メール
・SMSメッセージ
・患者プログラム7060における「通知」(患者プログラム7060が「患者アプリ
」の場合)
・Webサイトのページ(患者プログラム7060がWebブラウザの場合)。
【0118】
そのようなメッセージの内容は、例えば患者インターフェース3000の取付部品を調
整することであったり、例えば鼻孔マスクからフルフェースマスクになど患者インターフ
ェースを別のタイプに変更することであってよい。
【0119】
方法8000はさらに別の実装では、データサーバー7010が、例えば2時間など完
了した治療セッションを下回る期間の区間の治療データまたは使用量データを受信するこ
とで実行される。改善処置は(ステップ8050)そのような実装では、治療品質指標が
計算される元になった使用量データと同じセッション内で発生し得る。それゆえ呼吸圧治
療法7000または7000Bは、この別の実装に従ってより「リアルタイム」の性質を
帯びる。
【0120】
8.8.2.1 治療品質指標の計算
ステップ8020の1実装ではデータサーバー7010は、4個などの複数の貢献度の
組み合わせとして治療品質指標を計算するが、該貢献度の各々は異なる使用量変数に対応
する。各々がポイント値として計算される複数の貢献度は、利用時間、漏れ、AHI、お
よびセッションフラグメンテーションのいずれか2つ以上に対応する。この4つの貢献度
の全ては、1バージョンでは合計されて治療品質指標を算出する。
【0121】
利用時間:
・利用時間が最大利用時間しきい値を上回る場合、利用時間貢献度は、最高利用時間貢
献度である。
・利用時間が最小利用時間しきい値を下回る合、利用時間貢献度は、最低利用時間貢献
度である。
・利用時間が最小利用時間しきい値と最大利用時間しきい値の間にある場合、利用時間
貢献度はその利用時間と最小利用時間しきい値の差に比例し、その結果利用時間貢献度は
、利用時間が最大利用時間しきい値に等しい場合に最高利用時間貢献度である。
【0122】
漏れ:
・平均漏れ流量が最大漏れしきい値を上回る場合、漏れ貢献度は最低漏れ貢献度である
。
・平均漏れ流量が最小漏れしきい値を下回る場合、漏れ貢献度は最高漏れ貢献度である
。
・平均漏れ流量が最小漏れしきい値と最大漏れしきい値の間にある場合、漏れ貢献度は
最大漏れしきい値とその平均漏れ流量の差に比例し、その結果漏れ貢献度は、平均漏れ流
量が最小漏れしきい値に等しい場合に最高漏れ貢献度である。
【0123】
AHI貢献度:
・AHIが最大AHIしきい値を上回る場合、AHI貢献度は最低AHI貢献度である
。
・AHIが最小AHIしきい値を下回る場合、AHI貢献度は最高AHI貢献度である
。
・AHIが最小AHIしきい値と最大AHIしきい値の間にある場合、AHI貢献度は
そのAHIと最大AHIしきい値の(マイナスの)差に比例し、その結果AHI貢献度は
、AHIが最小AHIしきい値に等しい場合に最高AHI貢献度である。
【0124】
フラグメンテーション:
・サブセッション数が最大フラグメンテーションしきい値を上回る場合、フラグメンテ
ーション貢献度はゼロである。
・サブセッション数が最小フラグメンテーションしきい値以下の場合、フラグメンテー
ション貢献度は最高フラグメンテーション貢献度である。
・サブセッション数が最小フラグメンテーションしきい値と最大フラグメンテーション
しきい値の間にある場合、フラグメンテーション貢献度は最大フラグメンテーションしき
い値とそのサブセッション数の差に比例し、その結果フラグメンテーション貢献度は、サ
ブセッション数が最小フラグメンテーションしきい値に等しい場合に最高フラグメンテー
ション貢献度である。
【0125】
最高利用時間貢献度、最高漏れ貢献度、最高AHI貢献度、最高フラグメンテーション
貢献度の相対値は、治療品質指標の計算において各使用量変数の相対的「重み付け」を示
す。利用時間は1実装では、もっとも大きく重み付けされる使用量変数であり、平均漏れ
流量、AHI、フラグメンテーションは等しく比較的小さく重み付けされる。
【0126】
最高利用時間貢献度、最高漏れ貢献度、最高AHI貢献度、最高フラグメンテーション
貢献度の合計は、治療品質指標が患者1000にとって理解しやすいスケール(例えば1
00ポイントスケール)に合っていることを保証する所望の目標ポイント数(例えば10
0ポイント)であってよい。
【0127】
各使用量変数の該パラメータは1実装では、以下の通りである。
・最小利用時間しきい値:10分
・最大利用時間しきい値:患者1000と同じ年齢集団の患者の75パーセンタイル利
用時間
・最大利用時間貢献度:70ポイント
・最低利用時間貢献度:0ポイント
・最小漏れしきい値:患者インターフェース3000がフルフェースマスクの場合10
L/min、患者インターフェース3000が鼻孔マスクまたは鼻孔ピローの場合5L/
min
・最大漏れしきい値:30L/min
・最高漏れ貢献度:10ポイント
・最低漏れ貢献度:0ポイント
・最小AHIしきい値:5イベント/時
・最大AHIしきい値:20イベント/時。
・最高AHI貢献度:10ポイント
・最低漏れ貢献度:0ポイント
・最小フラグメンテーションしきい値:1サブセッション
・最大フラグメンテーションしきい値:5サブセッション
・最高フラグメンテーション貢献度:10ポイント
・最低フラグメンテーション貢献度:0ポイント
【0128】
パラメータとして他の値の使用は、ステップ8020の他の実装で使用され得る。
【0129】
前記のステップ8020の実装のバリアントでは、漏れ、AHI、フラグメンテーショ
ンの貢献度はそれぞれ利用時間貢献度の最高利用時間貢献度に対する比率に比例して低減
される。このバリアントは、治療品質指標の相対的オーバースコアリングを減少させ、そ
の結果利用時間が少ない場合には、他の使用量変数がよい場合(低い漏れ、AHI、およ
びフラグメンテーション)でも、治療品質指標は低くなる。また利用時間が最小利用時間
しきい値に向って減少すると治療品質指標を「割引き」する他の方法も、実装され得る。
【0130】
前記のステップ8020の実装の別のバリアントでは、利用時間の直近の履歴との関連
で、利用時間に基づいて、ボーナスまたはペナルティが治療品質指標に適用される。この
バリアントは、治療品質指標の個人化を個々の患者に提供する。ボーナス/ペナルティは
1実装では、利用時間と直近の7回の利用時間の平均値との間の差に比例して計算される
。ボーナス/ペナルティは、最大ポイント数に制限されてよく、治療品質指標は、ボーナ
ス/ペナルティの適用後にゼロと所望の目標ポイント数(例えば100ポイント)の範囲
に制限されてよい。
【0131】
8.8.2.2 治療品質指標の表示
次に治療品質指標は単独で、または関連する貢献度データと共に、患者に提示され得る
。例えば送信ステップ8030の電子メール、Webサイト、および「患者アプリ」の実
装では、データサーバー7010は治療品質指標を超えるデータを送信し得る。
図9は、
ステップ8030の実装において、データサーバー7010によって患者コンピューティ
ング装置7050に送信される、実施例の治療品質指標9010と他の情報を図示する実
施例のイメージ9000であり、ここで患者プログラム7060はブラウザである。患者
プログラム7060がWebブラウザである実装では、イメージ9000はWebページ
である。患者プログラム7060が「患者アプリ」である実装では、イメージ9000は
「患者アプリ」のスクリーンショットである。患者プログラム7060が電子メールクラ
イアントである実装では、イメージ9000は電子メール本文中のイメージである。
【0132】
グラフィックユーザーインターフェースの一部を形成するイメージ9000では、治療
品質指標9010(値:63)は、現在日付9030の下の輪のエリア9020の中に表
示される。視覚的変更や他の色変更で輪のエリアの円周の部分(この場合63%)に比例
して塗りつぶされている輪のエリア9020の割合は、治療品質指標を示す。またこの場
合は100ポイントであるが、所望の目標ポイント数も指標9010の下などに表示され
る。
【0133】
また治療品質指標に対する個別の使用量変数貢献度は、データサーバー7010によっ
て送信されて、イメージ9000のエリア9040に表示され得る。各使用量変数の値(
例えば利用時間3時間31分、9042)はエリア9040に表示される。該値の近くに
は、その使用量変数が治療品質指標に貢献したポイントが、その使用量変数の最高ポイン
ト貢献度の割合で表示される(例えば利用時間は35/70、9045)。この数値表示
と並んで、それぞれの使用量変数(例えばアイコン9047は利用時間)を表すアイコン
がある(例えば、時計の文字盤9047)。また各ポイント貢献度の下に表示されるオプ
ションのプログレス型ラインインジケータは、各ポイント貢献度について達成可能な全ポ
イントに比較して達成済みの全ポイント部分を視覚的に描くために表示され得る。また治
療品質指標の第2インスタンス9050は、エリア9040の中、個別の使用量変数ポイ
ント貢献度の下に合計として表示される。また合計に対するプログレス型ラインインジケ
ータが、達成可能な全ポイント(例えば所望の目標ポイント数)に対して達成済みの全ポ
イント部分を視覚的に描写するために与えられ得る。
【0134】
患者1000は、各治療セッション後に治療品質指標を受信することで、呼吸圧治療法
を我慢強く続けて準拠性を改善することを動機付けされる。別の使用量変数の治療品質指
標に対する貢献度の表示は、患者1000に治療法についての問題点を通知するのに役立
ち、したがって改善すべき領域を識判することを支援し得る。
【0135】
また患者1000は、様々な使用量変数について直近の履歴を表示することを選択して
よい。
図10は、ステップ8030の様々な実装において、データサーバー7010によ
って患者コンピューティング装置7050に送信されるWebページ、スクリーンショッ
ト、または電子メール本文の実施例イメージ10000である。グラフィックユーザーイ
ンターフェースの一部を形成するイメージ10000では、選択された使用量変数(イメ
ージ10000では利用時間、ポイント貢献度は61)のポイント貢献度10010が、
利用時間に対応する日付10030の下の輪のエリア10020の中に表示される。また
使用量変数(イメージ10000では5時間45分の利用時間)の数値10015が、輪
のエリア10020の下に表示される。オプションとして
図10に示すように使用量変数
値10015の下に、プログレス型ラインは特に選択されたポイント貢献度について(例
えば、
図10の実施例のイラストでは利用時間)、達成可能な全ポイントに対する達成済
みのポイントの一部を視覚的に表示する。さらにユーザーインターフェースコントロール
(例えば「進む」10036、「戻る」10033などの「矢印」コントロール)を起動
することで、患者は表示されたポイント貢献度の履歴を一度に1セッションだけ前後に移
動することができる。
【0136】
輪のエリア10020の下には、直近の期間(イメージ10000で期間は14日)に
またがって選択された使用量変数(イメージ10000で、利用時間)のポイント貢献度
の履歴を図示するグラフ10040がある。患者は一部の実装では、ディスプレイのグラ
フィカルユーザーインターフェースとしてタッチスクリーン型ディスプレイに提示された
場合に、グラフ10040を左右に「スワイプする」ことで、治療法の開始迄さかのぼる
使用量変数の履歴を通してグラフ10040を移動することができる。
【0137】
患者はイメージ10000を用いて、いずれかの使用量変数の直近のトレンドを感じ取
ることができる。
【0138】
また患者1000は、最新治療セッションについて治療変数の詳細を表示することがで
きる。
図11は、ステップ8030の様々な実装において、データサーバー7010によ
って患者コンピューティング装置7050に送信されるWebページ、スクリーンショッ
ト、または電子メール本文の実施例イメージ11000である。イメージ11000は、
漏れ流量Qlが少ない場合に高い変数およびその逆の場合の変数である、治療セッション
について「マスクシール」のタイムトレース11020を含む。またイメージ11000
は、治療セッションの際にSDBイベント(無呼吸および低呼吸)が検出された場合に対
応するドットを含むタイムトレース11010を含む。
【0139】
前述されているように、治療品質指標および関連する貢献度データは、データサーバー
7010によって生成され、患者コンピューティング装置7050を介して表示され得る
が、一部のバージョンではそれに加えておよび/またはそれに代わって、生成および/ま
たは表示は、RPT機器4000のプロセッサまたは制御装置において行われ、またはそ
のプロセッサまたは制御装置によって行われ得る。したがって場合によると、RPT機器
の1つ以上のプロセッサは、治療品質指標および/または関連する貢献度データを計算し
て、RPT機器4000のディスプレイまたはグラフィックユーザーインターフェースに
表示するように構成され得る。同様に場合によると、RPT機器4000の1つ以上のプ
ロセッサは、データサーバー7010から受信した治療品質指標および/または関連する
貢献度データを、RPT機器4000のディスプレイまたはグラフィックユーザーインタ
ーフェースに表示するように構成され得る。
【0140】
8.8.2.3 治療法の改善
前述のようにオプションのステップ8040、8050では、データサーバー7010
は1つ以上のルールをステップ8020で計算された治療品質指標とオプションとして以
前に計算した治療品質指標の値とに適用し、そして患者の治療法を改善する処置を実施し
、または患者1000にそのような処置を実施するように促す。
【0141】
ルール/処置のペアの1実施例では、治療品質指標が直近治療セッションにまたがって
永続的に高い漏れ流量を示す場合、データサーバー7010は患者1000を促して患者
インターフェース3000の取付部品を調整させるか、患者インターフェース3000の
種類を交換させ得る。
【0142】
ルール/処置ペアの別の実施例では、治療品質指標が直近治療セッションにまたがって
利用時間の減少傾向を示し、シーズンは鼻詰まりにつながる場合(例えば冬)、データサ
ーバー7010は送出される空気流の湿度を増加させて鼻詰まりの量を減少させ得る。
【0143】
ルール/処置ペアの別の実施例では、治療品質指標が直近治療セッションにまたがって
着実に高い場合、データサーバー7010は患者に、治療を「夜オフ」にするなどの褒美
があるメッセージを送付し得る。
【0144】
データサーバー7010は方法8000の別の実装では、ステップ8040の後に直接
処置を実施したり処置を促したりせず、患者1000に問い合わせを発行する。データサ
ーバー7010は、1つ以上の次の実装に従って患者コンピューティング装置7050お
よび/またはRPT機器4000を介して患者1000に問い合わせを発行し得る:
・電子メール
・SMSメッセージ
・患者プログラム7060における「通知」(患者プログラム7060が「患者アプリ
」の場合)
・Webサイトのページ(患者プログラム7060がWebブラウザの場合)。
【0145】
次にデータサーバーは、前述のようにステップ8050で処置を実施したり処置を促す
前に、問い合わせ(はい/いいえの応答を引き出すように作られている)に対する応答を
考慮する。
【0146】
そのようなルール/問い合わせ/処置シーケンスの1実施例では、治療品質指標が直近
治療セッションにまたがって永続的に高い漏れ流量を示す場合、データサーバー7010
は「目ざめる時、口が乾いていますか」という問い合わせを発行し得る。該問い合わせに
対して受信した回答がはいの場合、データサーバー7010は患者1000にフルフェー
スマスクの使用を促したり、口での漏れを低減させるため鼻孔マスクにあごひもを付ける
よう促し得る。
【0147】
そのようなルール/問い合わせ/処置シーケンスの別の実施例では、治療品質指標が直
近治療セッションにまたがって利用時間の減少傾向を示したり、オン/オフイベントの増
加を示す場合、データサーバー7010は「寝付けなくてお困りですか」という問い合わ
せを発行し得る。該問い合わせに対して受信した回答がはいの場合、データサーバー70
10は治療モードを変更して治療セッションの先頭部分にペース呼吸治療を与えて、患者
の通常の治療モードに切りかえる前に患者をリラックスさせて落ち着かせ得る。
【0148】
ルール/問い合わせ/処置シーケンスのさらに別の実施例では、治療品質指標が直近治
療セッションにまたがって利用時間の減少傾向を示し、シーズンは鼻詰まりにつながる場
合(例えば冬)、データサーバー7010は「鼻詰まりになっていますか」という問い合
わせを発行し得る。該問い合わせに対して受信した回答がはいの場合、データサーバー7
010は送出される空気流の湿度を増加させて鼻詰まりの量を減少させ得る。
【0149】
SDBが心不全と併存する患者に適合するそのようなルール/問い合わせ/処置シーケ
ンスのなお別の実施例では、治療品質指標が直近治療セッションにまたがって利用時間の
減少傾向を示したり、オン/オフイベントの増加、またはAHIの増加を示す場合、デー
タサーバー7010は「呼吸が短くなっていますか」という問い合わせを発行し得る。該
問い合わせに対して受信した回答がはいの場合、データサーバー7010は、患者の心不
全状態は悪化しており、医者の診察を受けたほうがよいという警告を患者に発行し得る。
【0150】
8.9 用語集
本技術の一部の態様において本技術を開示するために、1つ以上の以下の定義が適用さ
れてよい。本技術の他の態様においては、代替の定義が適用されてよい。
【0151】
8.9.1 一般
空気(Air):本技術の一定の実施形態では、空気は大気を意味すると考えてもよく
、本技術の別の実施形態では、空気は例えば酸素量を増やした大気などの呼吸用気体のあ
る他の組み合わせを意味すると考えられ得る。
【0152】
呼吸圧治療法(Respiratory Pressure Therapy(RPT
)):大気に対してたえず正の治療圧で空気供給を気道入口に適用すること。
【0153】
持続的気道陽圧治療法(Continuous Positive Airway P
ressure(CPAP) therapy):治療圧が患者の呼吸サイクル通じてほ
ぼ一定であるような呼吸圧治療法。一部の形態では気道入口の圧力は、呼気時にわずかに
高く吸入時にわずかに低い場合がある。一部の形態では該圧力は、例えば部分的上気道閉
塞の兆候検出に応答して加圧され、部分的上気道閉塞の兆候欠如で減圧されるなど、患者
の様々な呼吸サイクル間で変化する場合がある。
【0154】
患者(Patient):呼吸器疾患に苦しんでいるかどうかに拘わらず人体を指す。
【0155】
自動気道陽圧治療法(Automatic Positive Airway Pre
ssure (APAP) therapy):SDBの兆候の有無に応じて例えば呼吸
毎など、治療圧を最小限と最大限の間で自動的に調整可能であるようなCPAP治療法。
【0156】
8.9.2 呼吸サイクル
無呼吸(Apnea):無呼吸は一部の定義によると、たとえば10秒間などの一定期
間、流量が所定のしきい値を下回ると生ずると言われる。閉塞性無呼吸は、患者の努力に
もかかわらず気道の閉塞により空気流を止めると生ずると言われる。中枢性無呼吸は、気
道が明確であるにもかかわらず呼吸努力の低下または呼吸努力の非存在により無呼吸が検
出された時に生ずると言われる。混合型無呼吸は、呼吸努力の低下または非存在が閉塞性
気道と同時に起こる時に生ずる。
【0157】
呼吸数(Breathing rate):患者の自発的呼吸率、通例は1分当たりの
呼吸数で測定される。
【0158】
デューティサイクル(Duty cycle):吸気時間Tiの総呼吸時間Ttotに
対する比。
【0159】
呼吸努力(Effort (breathing)):呼吸努力は自発的に呼吸する人体
が呼吸しようとする動作であると言われる。
【0160】
呼吸サイクルの呼気部分(Expiratory portion of a brea
thing cycle):呼気流の開始から吸気流の開始までの期間。
【0161】
流量制限(Flow limitation):流量制限は、患者による努力の増加が
対応する流制の増加を起こさない患者の呼吸状況と見なされる。流量制限が呼吸サイクル
の吸気部分で生ずると、吸気流量制限と呼ばれる。流量制限が呼吸サイクルの呼気部分で
生ずると、呼気流量制限と呼ばれる。
【0162】
低呼吸(Hypopnea):一部の定義によると、低呼吸は流量の低下であるが流れ
の停止ではない状態と見なされる。一形態では低呼吸は、しきい値割合を下回る流量の低
下が一定期間ある時に生ずると言われる。中枢性低呼吸は、呼吸努力の低下による低呼吸
が検出される時に生ずると見なされる。成人の一形態では、以下のいずれかが低呼吸と見
なされ得る:
(i)患者の呼吸が少なくとも10秒間、30%低下し、さらに関連する4%の飽和度
低下を示す、
(ii)患者の呼吸が少なくとも10秒間、(50%未満)低下し、それに関連する少
なくとも3%の飽和度低下または覚醒を伴う。
【0163】
過呼吸(Hyperpnea):流量が正常の流量より高いレベルに増加すること。
【0164】
呼吸サイクルの吸気部分(Inspiratory portion of a br
eathing cycle):吸気流の開始から呼気流の開始までの期間は呼吸サイク
ルの吸気部分と見なされる。
【0165】
気道開通性(Patency (airway)):開いている気道の程度、気道が開
いている範囲。気道が明確に開いていること。気道開通性は、例えば明確である(1)の
値および閉じている(閉鎖)(0)の値によって定量化され得る。
【0166】
終末呼気陽圧(Positive End-Expiratory Pressure
(PEEP)):呼気の終りに存在する大気を上回る肺中の圧力。
【0167】
ピーク流量(Peak flow rate(Qpeak)):呼吸流波形の吸気部分
での流量の最大値。
【0168】
呼吸流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸空気流量(Respiratory fl
ow rate, airflow rate, patient airflow r
ate, respiratory airflow rate(Qr)):この用語は
、「真の呼吸空気流量」とは違いRPT機器の推定呼吸空気流量を指すと理解され得るが
、これは患者が経験する実際の呼吸空気流量であり、通例L/分で表わされる。
【0169】
一回呼吸量(Tidal volume(Vt)):特別な努力を行っていない場合の
通常の呼吸時の吸空気または呼空気の容量。
【0170】
吸気時間((Inhalation) Time (Ti)):呼吸流量波形の吸気部
分の期間。
【0171】
呼気時間((Exhalation) Time (Te)):呼吸流量波形の呼気部
分の期間。
【0172】
総呼吸時間((Total) Time (Ttot)):1呼吸流量波形の吸気部分
の開始から次の呼吸流量波形の吸気部分の開始までの総期間。
【0173】
標準直近換気(Typical recent ventilation):直近値が
所定の時間尺度にまたがって、その周辺にクラスターとしてまとまるような換気の値、つ
まり換気の直近値の中心傾向の量。
【0174】
上気道閉塞(Upper airway obstruction(UAO)):部分
上気道閉塞および総上気道閉塞の両方を含む。これは、流量レベルがわずかに増加するの
みの場合、または上気道にまたがる圧力差が増加すると流量が減少する場合もあるような
、流量制限状態に関連付けられてよい。
【0175】
換気(Ventilation(Vent)):患者の呼吸器系によって交換される気
体割合の量。換気量は、単位時間当たりの吸気流量と呼気流量の一方または両方を含み得
る。毎分の容量として表される場合、この量はしばしば「分換気量」と呼ばれる。分換気
量はときに単に容量と呼ばれるが、毎分の容量と理解される。
【0176】
8.9.3 RPT機器のパラメータ
流量(Flow rate):単位時間当たりで送出される空気の瞬間的容量(質量)
。流量と換気は単位時間当たりの容量または質量と同じ次元であるが、流量はより短い期
間にわたって測定される。場合によると、流量への参照がスカラ量、つまり大きさだけの
量への参照の場合がある。他の場合では、流量への参照がベクトル量、つまり大きさと方
向の両方を持つ量への参照の場合がある。符号付き量として参照された場合、患者の呼吸
サイクルの吸気部分に関して、流量は名目上正であり、患者の呼吸サイクルの吸気部分に
関しては負である。流量は記号Qで与えられる。「flow rate」はときに「fl
ow」と短縮される。総流量Qtは、RPT機器から流出する空気の流量である。ベント
流量Qvは、排気口から流出して呼気ガスを排出させる空気の流量。漏れ流量Qlは、患
者インターフェースから漏れる流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系に流入する
空気の流量である。
【0177】
漏れ(Leak):意図しない空気流。ある例では、漏れはマスクと患者の顔面の間の
不完全なシールの結果として発生し得る。別の例では、漏れは大気圧へのスイベルエルボ
で起き得る。
【0178】
8.10 その他の備考
本特許文献の開示部分には、著作権保護されている資料が含まれる。著作権の所有者は
、特許局の特許ファイルまたは特許レコードで表示されているので、特許文献または特許
開示のいずれかのファクシミリによる複製には反対しないが、それ以外ではすべてのあら
ゆる著作権を留保する。
【0179】
明らかに別段に解すべき事情がない限り、値範囲が与えられている場合、各中間値は下
限値の単位の1/10までその範囲の上下限の間にあり、他のすべての記載値またはその
記載範囲内の中間値は、該技術内に含まれると理解される。このような中間範囲の上下限
は、そのまま中間範囲に含まれ得るが、また該技術内に含まれ、記載範囲において明確に
除外された限度の適用を受けると理解される。記載範囲が限度の一方または両方を含む場
合、またその含まれる限度の一方または両方を除外する範囲は該技術内に含まれる。
【0180】
さらに、本書である値または複数値が該技術の一部として実装されていると記載されて
いる場合、別途記述のない限り、その値は近似され、その値は、実用的技術実装が許可ま
たは必要とする範囲で、適切な有効桁で利用されると理解される。
【0181】
別途規定のない限り、本書で使用されている技術的科学的用語はすべて、本技術が属す
るところの分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を持つ。本書に記載のも
のと同じまたは同等の方法または材料は実際にまたは本技術のテストのために使用され得
るが、限られた数の例示的方法および材料も本書で説明されている。
【0182】
特定材料が構成部品の構築に使用されると識別された場合、同様の特性を持つ明白に代
替的な材料は、代替品として使用され得る。さらに、別途それと反対の指定がない限り、
ここで説明する任意のおよびすべての構成部品は加工可能であり、したがってまとめてま
たは個別に加工可能であると理解される。
【0183】
本書および特許請求の範囲で使用されてるように、明らかに別段に解すべき事情がない
限り、単数「a」、「an」、および「the」は複数の等価物を含むということに留意
する必要がある。
【0184】
本書でその全体を言及されたすべての出版物は、参照によって組み込まれて、その出版
物の対象であった方法および/または材料を開示し、説明する。本書で言及された出版物
は、本出願の出願日に先立ってそれだけで開示のために提供される。このことは、本技術
が先願発明によるかかる公開に先行する資格がないということを承認したと解釈してはな
らない。さらに、公開期日は実際の公開日と異っている場合があるが、これは別途確認さ
れる必要がある。
【0185】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成部
品、またはステップを非排他的な方法で言及し、言及された要素、構成部品、またはステ
ップは、明示的に言及されていない他の要素、構成部品、またはステップと共に提示され
、利用され、組み合わされることを示すと解釈される必要がある。
【0186】
詳細な記述で使用されているテーマ見出しは、もっぱら読者が参照しやすいように付与
されており、本開示または本請求の全体にわたって明らかな主題を制限するために使用さ
れてはならない。該テーマ見出しは、本請求の範囲を解釈したり、本請求を制限するため
に使用されてはならない。
【0187】
本書の技術は特定の実施例を参照して説明されているが、当該実施例は単に原理の例示
であり、該技術の適用であると理解されるべきである。一部の適用例では、用語と記号は
、該技術の実行に必須ではない特定の詳細を示唆することがある。例えば「first」
と「second」という用語が使用された場合、別途指定のない限り、なんら順序を示
す意図はなく、異なる要素を識別するために利用されている。さらに方法論におけるプロ
セスステップは、ある順序で説明、図示されているが、そのような順序は必須ではない。
当業者は、そのような順序が変更され得て、および/またはその態様は同時にまたは同調
して実施し得ることを認めるであろう。
【0188】
それゆえ、例示的実施例に対して多数の変更が実行され得ること、および該技術の趣旨
とスコープを逸脱することなく他の編成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0189】
患者 1000
ベッドのパートナー 1100
患者インターフェース 3000
シール形成部 3100
プレナムチャンバ 3200
構造 3300
ベント 3400
接続ポート 3600
額サポート 3700
RPT機器 4000
外付けハウジング 4010
上部分 4012
部分 4014
パネル 4015
シャーシ 4016
ハンドル 4018
空気圧ブロック 4020
空圧部品 4100
吸気口エアフィルタ 4112
吸気口マフラ 4122
吹出口マフラ 4124
圧力ジェネレータ 4140
ブロア 4142
エア回路 4170
エア回路 4171
電気部品 4200
プリント回路基板アセンブリ 4202
電力供給装置 4210
入力機器 4220
集中制御装置 4230
治療機器制御装置 4240
保護回路 4250
着脱可能メモリ 4260
トランスデューサ 4270
圧力センサー 4272
流量センサー 4274
データ通信インターフェース 4280
外部リモート通信ネットワーク 4282
外部ローカル通信ネットワーク 4284
外部リモート機器 4286
外部ローカル機器 4288
出力機器 4290
加湿装置 5000
加湿装置吸気口 5002
加湿装置吹出口 5004
加湿装置ベース 5006
リザーバ 5110
伝導性部分 5120
加湿装置リザーバドック 5130
ロックレバー 5135
給水レベルインジケータ 5150
加湿装置トランスデューサ 5210
圧力変換器 5212
流量トランスデューサ 5214
温度トランスデューサ 5216
湿度センサ 5218
加熱素子 5240
加湿制御装置 5250
中央加湿制御装置 5251
加熱素子制御装置 5252
エア回路制御装置 5254
RPTシステム 7000
実装 7000B
データサーバー 7010
プロセス 7020
患者コンピューティング装置 7050
患者プログラム 7060
ワイドエリアネットワーク 7090
方法 8000
ステップ 8010
ステップ 8020
ステップ 8030
ステップ 8040
ステップ 8050
イメージ 9000
治療品質指標 9010
輪のエリア 9020
現在日付 9030
エリア 9040
値 9042
割合 9045
時計の文字盤 9047
第2インスタンス 9050
イメージ 10000
値 10010
輪のエリア 10020
日付 10030
矢印 10033
矢印 10036
グラフ 10040
イメージ 11000
タイムトレース 11010
タイムトレース 11020