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特許7059346プラントシミュレーション装置およびプラントシミュレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】プラントシミュレーション装置およびプラントシミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
G05B23/02 H
G05B23/02 302V
G05B23/02 301Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020212857
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】持地 繁
(72)【発明者】
【氏名】山口 典也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】楠畑 淳一郎
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197714(JP,A)
【文献】特開2008-146371(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151744(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/021688(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
G05B 1/00-7/04;11/00-13/04;17/00-17/02;21/00
F22B 1/18;35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納部と、
前記データ格納部から前記運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、前記第1プロセス値に基いて演算した結果を示す第1操作量を算出し、前記データ格納部に第1プロセス値が格納されていない場合には前記第1プロセス値に基づかずに演算した第2操作量を算出する制御部と、
前記制御部から入力された前記第1操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションするとともに、前記制御部から第2操作量が入力されると、前記第2操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を示す第2プロセス値を前記制御部へフィードバックするシミュレータと、
前記第1プロセス値または前記第2プロセス値のいずれか一方を前記制御部に入力させるスイッチと、
を備えるプラントシミュレーション装置。
【請求項2】
プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納部と、
前記データ格納部から前記運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、前記第1プロセス値に基づいて演算した結果を示す第1操作量を算出し、前記データ格納部に第1プロセス値が格納されていない場合には前記第1プロセス値に基づかずに演算した第2操作量を算出する制御部と、
前記制御部から入力された前記第1操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションするとともに、前記制御部から第2操作量が入力されると、前記第2操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を示す第2プロセス値を前記制御部へフィードバックするシミュレータと、
前記制御部に設けられた複数の制御ロジックから前記第1操作量または前記第2操作量の算出に用いる制御ロジックを抽出するロジック抽出回路と、
を備えるプラントシミュレーション装置。
【請求項3】
プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納部と、
前記データ格納部から前記運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、前記第1プロセス値に基づいて演算した結果を示す第1操作量を算出し、前記データ格納部に第1プロセス値が格納されていない場合には制御ロジックを用いて第2操作量を算出する制御部と、
前記制御部から入力された前記第1操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションするとともに、前記制御部から第2操作量が入力されると、前記第2操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を示す第2プロセス値を前記制御部へフィードバックするシミュレータと、
前記第1プロセス値または前記第2プロセス値のいずれか一方を前記制御部に入力させるスイッチと、
前記制御部に設けられた複数の制御ロジックから前記第1操作量または前記第2操作量の算出に用いる制御ロジックを抽出するロジック抽出回路と、
を備えるプラントシミュレーション装置。
【請求項4】
前記データ格納部は、前記運転履歴データの一部を前記第1プロセス値として抽出するデータ抽出回路をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項5】
前記シミュレータは、シミュレーション結果から前記第2プロセス値として前記制御部へ伝送する範囲を抽出する、請求項1から4のいずれか1項に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項6】
前記データ格納部は、前記制御部の演算周期と同期させて前記第1プロセス値を前記制御部へ伝送する伝送回路をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項7】
前記シミュレータは、前記制御部の演算周期と同期させて前記第2プロセス値を前記制御部へ伝送する、請求項1から6のいずれか1項に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項8】
前記制御ロジックの改善前後のシミュレーション結果を比較したグラフを表示する表示部をさらに備える、請求項2または3に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項9】
前記グラフに基づいて、前記制御ロジックの改善結果を判定する判定部をさらに備える、請求項に記載のプラントシミュレーション装置。
【請求項10】
プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納装置と、
前記データ格納装置から前記運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、前記第1プロセス値に基いて演算した結果を示す第1操作量を算出し、前記データ格納装置に第1プロセス値が格納されていない場合には前記第1プロセス値に基づかずに演算した第2操作量を算出する制御装置と、
前記制御装置から入力された前記第1操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションするとともに、前記制御装置から第2操作量が入力されると、前記第2操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を示す第2プロセス値を前記制御装置へフィードバックするシミュレータ装置と、
前記第1プロセス値または前記第2プロセス値のいずれか一方を前記制御装置に入力させるスイッチと、
を備えるプラントシミュレーションシステム。
【請求項11】
プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納装置と、
前記データ格納装置から前記運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、前記第1プロセス値に基づいて演算した結果を示す第1操作量を算出し、前記データ格納装置に前記第1プロセス値が格納されていない場合には前記第1プロセス値に基づかずに演算した第2操作量を算出する制御装置と、
前記制御装置から入力された前記第1操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションするとともに、前記制御装置から第2操作量が入力されると、前記第2操作量に基づいて前記プラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を示す第2プロセス値を前記制御装置へフィードバックするシミュレータ装置と、
前記制御装置に設けられた複数の制御ロジックから前記第1操作量または前記第2操作量の算出に用いる制御ロジックを抽出するロジック抽出回路と、
を備えるプラントシミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントシミュレーション装置およびプラントシミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等のプラントでは、DCS(Distributed Control System:分散型制御システム)のHMI(Human Machine Interface)という操作用PC(Personal Computer)の画面と制御ロジックを有する制御装置経由でプラントの弁やモータを操作することが一般的である。
【0003】
上記のような制御システムを実際に使用する前には、シミュレーションが求められる。そのため、試運転フェーズにおける制御ロジックの検証は、プラントシミュレータを用いて事前に実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-10915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラントが実際に運転し始めると、プラントの運転状況に応じて制御装置の制御ロジックを改善する必要が生じる場合がある。この場合、改善後の制御ロジックをプラントシミュレータで事前に検証する。この事前検証では、制御ロジックの信頼性を向上させるために、プラントの実際の動特性により近いシミュレーションが求められる。
【0006】
しかし、プラントは数多くの機器を有しているので、その動特性は複雑になる。そのため、十分なシミュレーション精度を得ることが困難である。
【0007】
本発明は、シミュレーション精度を向上させることが可能なプラントシミュレーション装置およびプラントシミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るプラントシミュレーション装置は、プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納部と、データ格納部から運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、第1プロセス値に基いて演算した結果を示す第1操作量を算出する制御部と、制御部から入力された第1操作量に基づいてプラントの運転をシミュレーションするシミュレータと、を備える。
【0009】
一実施形態に係るプラントシミュレーションシステムは、プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納装置と、データ格納装置から運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、第1プロセス値に基いて演算した結果を示す第1操作量を算出する制御装置と、制御装置から入力された第1操作量に基づいてプラントの運転をシミュレーションするシミュレータ装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るプラントシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
図2】運転履歴データの一構造例を示す図である。
図3】プラントの監視制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図4】プラントの一部の構成を示すブロック図である。
図5】表示部の表示画像の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係るプラントシミュレーションシステムの概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るプラントシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。図1に示すプラントシミュレーション装置1は、例えばノート型PC等の端末装置であり、データ格納部10と、制御部20と、シミュレータ30と、スイッチ40と、ロジック抽出回路50と、表示部60と、判定部70と、入力部80と、を備える。プラントシミュレーション装置1において、データ格納部10、制御部20、シミュレータ30、スイッチ40、およびロジック抽出回路50は、ハードウェアとして構成されてもよいし、ソフトウェアとして仮想的に構成されていてもよい。
【0014】
データ格納部10には、プラントで実測された運転履歴データ11が格納されている。図2は、運転履歴データ11の一構造例を示す図である。図2に示すように、運転履歴データ11には、プラントで実際に計測された計測データ(A、B、C)が、計測日時とともに示されている。また、運転履歴データ11は、計測日時ごとにデータ識別子で識別することができるとともに、計測項目ごとにTAG番号で識別することができる。計測項目には、例えば、ガス圧力、ガス流量、蒸気温度、給水流量、タービン回転数、発電機の出力電力などが含まれる。
【0015】
また、データ格納部10は、データ抽出回路12および伝送回路13を有する。データ抽出回路12は、運転履歴データ11の一部を第1プロセス値PV1として抽出する。本実施形態では、作業者H1による入力部80の操作によって、運転履歴データ11の各計測データには有効フラグまたは無効フラグが設定されている。データ抽出回路12は、運転履歴データ11のうち、有効フラグに設定されている計測データを抽出して伝送回路13へ伝送する。なお、有効フラグおよび無効フラグは、入力部80の操作によって、適宜変更することができる。
【0016】
伝送回路13は、データ抽出回路12によって抽出された計測データを第1プロセス値PV1として制御部20へ伝送する。このとき、伝送回路13は、制御部20の単位時間当たりの演算回数に相当する演算周期と同期させて第1プロセス値PV1を制御部20へ伝送する。
【0017】
制御部20は、複数の制御ロジック21を有する。複数の制御ロジック21には、プラントで計測される物理量(圧力、流量)に応じて種々の演算式がプログラミングされている。制御部20は、第1プロセス値PV1を複数の制御ロジック21のいずれかで演算し、演算結果を第1操作量MV1としてシミュレータ30へ伝送する。また、第1プロセス値PV1が取得されていないとき、制御部20は所定値を複数の制御ロジック21のいずれかで演算した結果を示す第2操作量MV2をシミュレータ30へ伝送する。
【0018】
シミュレータ30は、プラントの実際の動特性を模擬するものであり、シミュレーションモデル31と、伝送抽出回路32と、模擬IO(Input Output)基板33と、を有する。
【0019】
シミュレーションモデル31は、物理モデル、アクチュエータモデル、およびセンサモデルで構成される。物理モデルは、プラントの蒸気温度、給水流量、タービン回転数、発電機の出力電力等の物理的過渡特性を模擬する動特性モデルである。アクチュエータモデルは、制御装置からの操作指令を受けて動作するバルブに加えて、ポンプ、ダンパ、ファン、遮断機等の補機Mや、操作端などを模擬するためのモデルである。センサモデルは、圧力計PX、流量計FX、レベルスイッチ等のプラント配管に接続され、計測データを上記制御装置へ送信するセンサを模擬するためのモデルである。
【0020】
伝送抽出回路32は、シミュレーションモデル31が第2操作量MV2に基づいてシミュレーションしたときに、シミュレーション結果から第2プロセス値PV2として制御部20へ伝送する範囲を抽出する。伝送抽出回路32は、入力部80の操作内容に従って、この抽出動作を行う。
【0021】
模擬IO基板33は、制御部20とシミュレータ30との間における信号データの入出力回路を模擬したものである。模擬IO基板33は、例えば、各操作量をアナログ信号からデジタル信号へ変換する回路や、シミュレーション結果をデジタル信号からアナログ信号に変換する回路等を有する。
【0022】
スイッチ40は、第1プロセス値PV1の伝送路と第2プロセス値PV2の伝送路の交点に設置されている。スイッチ40は、入力部80の操作内容に基づいて、上記2つの伝送路のいずれか一方を制御部20へ接続する。スイッチ40によって、制御部20へ入力されるプロセス値を第1プロセス値PV1または第2プロセス値PV2に切り替えることができる。
【0023】
ロジック抽出回路50は、入力部80の操作内容に基づいて、制御部20に設けられた複数の制御ロジック21から、第1操作量MV1または第2操作量MV2の算出に用いる制御ロジックを抽出する。
【0024】
表示部60は、制御ロジック21や、シミュレータ30のシミュレーション結果等の種々のデータを表示する。判定部70は、表示部60に表示されたシミュレーション結果に基づいて、制御ロジック21の改善結果を判定する。入力部80は、例えばキーボード等で構成され、作業者H1の操作を受け付ける。
【0025】
ここで、図3を参照して、プラントの監視制御システムについて説明する。図3は、プラントの監視制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【0026】
図3に示す監視制御システムでは、プラント300の運転は、DCSの一例である制御装置200に設けられた制御ロジック21によって制御される。制御ロジック21は、上述したプラントシミュレーション装置1のシミュレーション結果に基づいて設定されている。また、プラント300の運転は、監視端末500を介して監視員H2によって監視されている。
【0027】
プラント300には、バルブV、補機M(ポンプ、ダンパ、ファン、遮断機等)といったアクチュエータや、圧力計PXや流量計FXといったセンサが設置されている。アクチュエータは、制御装置200からIO基板400を介して入力された操作量MVに基づいて動作する。また、センサの計測データは、プロセス値PVとしてIO基板400を介して制御装置200へフィードバックされるとともに、運転履歴データ11としてデータ格納部10に蓄積される。
【0028】
プラント300が新規に建設される場合、データ格納部10には、運転履歴データ11は格納されていない。そのため、上述したプラントシミュレーション装置1を用いて制御ロジック21を設定する必要がある。
【0029】
そこで、以下、プラントシミュレーション装置1のシミュレーション動作について説明する。
【0030】
まず、スイッチ40が、入力部80の操作に基づいて第2プロセス値PV2の伝送路を制御部20に接続する。
【0031】
続いて、制御部20が、ロジック抽出回路50で抽出された制御ロジック21を用いて第2操作量MV2を算出してシミュレータ30へ伝送する。続いて、シミュレータ30が、第2操作量MV2に基づいてプラントの運転をシミュレーションし、シミュレーション結果を第2プロセス値PV2として制御ロジック21へフィードバックする。このフィードバックを繰り返して、制御ロジック21が設定される。設定された制御ロジック21を用いて、プラント300が実際に運転を開始する。これにより、データ格納部10には、運転履歴データ11が蓄積される。
【0032】
その後、図4に示すように、プラント300において、例えば蒸気弁V1の開放により高温になった蒸気ライン301を冷却するために、冷却水供給弁V2の開弁速度を高くする必要が生じたとする。この場合、プラントシミュレーション装置1において、作業者H1が入力部80を操作して制御部20の制御ロジック21を改善する。このとき、改善後の制御ロジック21の検証が必要になる。
【0033】
改善後の制御ロジック21を検証する場合、まず、スイッチ40が、入力部80の操作に基づいて、制御部20に接続する伝送路を第2プロセス値PV2から第1プロセス値PV1に切り替える。
【0034】
続いて、データ抽出回路12が、入力部80の操作に基づいて運転履歴データ11の一部を抽出して伝送回路13へ伝送する。続いて、伝送回路13が、抽出された運転履歴データ11を、制御部20の演算周期と同期させた第1プロセス値PV1として制御部20へ伝送する。
【0035】
続いて、制御部20が、ロジック抽出回路50で抽出された制御ロジック21を用いて第1プロセス値PV1を演算して第1操作量MV1を算出し、算出した第1操作量MV1をシミュレータ30へ伝送する。続いて、シミュレータ30が、第1操作量MV1に基づいてプラントの運転をシミュレーションする。
【0036】
続いて、表示部60がシミュレーション結果を表示する。図5は、表示部60の表示画像の一例を示す図である。図5には、制御ロジック21の改善前後のシミュレーション結果を比較したグラフが図示されている。このグラフでは、横軸は時間を示し、縦軸は弁開度を示す。また、線L1は、蒸気弁V1の弁開度の変化を示す。線L2は、改善前の冷却水供給弁V2の弁開度の変化を示す。線L3は、改善後の冷却水供給弁V2の弁開度の変化を示す。図5に示すように、制御ロジック21を改善することによって、冷却水供給弁V2の開弁速度が蒸気弁V1の開弁速度と同等になっている。
【0037】
続いて、判定部70が、制御ロジック21の改善結果を良否判定する。例えば、判定部70は、表示部60の表示画像から改善前後の冷却水供給弁V2の立ち上がり時間差Δtを算出し、この時間差Δtが予め設定された許容範囲内であれば改善結果を良好と判定する。
【0038】
その後、改善後の制御ロジック21は、制御装置200にインストールされる。これにより、プラント300は、改善後の制御ロジック21で運転する。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、制御部20は、プラントで実際に計測されたデータをプロセス値として用いて操作量を算出している。そのため、シミュレータ30は、実際のプラントの動特性を反映させた操作量に基づいてシミュレーションを行うことができるので、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。上述した第1実施形態では、データ格納部10、制御部20、およびシミュレータ30、スイッチ40等のシミュレーションに必要な構成要素が、1台のプラントシミュレーション装置1内に集約されている。
【0041】
一方、本実施形態では、上述した各構成要素に相当する装置が、分散して設けられている。例えば、図に示すプラントシミュレーションシステム2は、データ格納装置110と、制御装置120と、シミュレータ装置130と、スイッチ機器140と、制御端末150と、を備える。
【0042】
データ格納装置110、制御装置120、シミュレータ装置130、スイッチ機器140は、第1実施形態で説明したデータ格納部10、制御部20、シミュレータ30、およびスイッチ40にそれぞれ相当する。また、本実施形態では、第1実施形態で説明したロジック抽出回路50、表示部60、判定部70、および入力部80が制御端末150内に集約されている。制御端末150は、例えば作業者H1によって操作されるPC端末である。
【0043】
本実施形態でも、制御装置120の制御ロジック21を改善した場合には、第1実施形態と同様に、スイッチ機器140が、第1プロセス値PV1の伝送路を制御装置120に接続する。これにより、シミュレータ装置130は、データ格納装置110に格納されている運転履歴データ11に基づくシミュレーションを行うことができる。また、シミュレーション結果は制御端末150の表示部60に表示され、改善結果は判定部70によって判定される。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、実際のプラントの動特性を反映させた操作量に基づいてシミュレーションを行うことができるので、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。
【0045】
以上、いくつかの実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要ことに含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0046】
1:プラントシミュレーション装置、2:プラントシミュレーションシステム、10:データ格納部、11:運転履歴データ、12:データ抽出回路、13:伝送回路、20:制御部、30:シミュレータ、40:スイッチ、50:ロジック抽出回路、60:表示部、70:判定部、110:データ格納装置、120:制御装置、130:シミュレータ装置
【要約】      (修正有)
【課題】シミュレーション精度を向上させることが可能なプラントシミュレーション装置を提供する。
【解決手段】プラントシミュレーション装置1は、プラントで実測された運転履歴データを格納するデータ格納部10と、データ格納部から運転履歴データが第1プロセス値として入力されると、第1プロセス値に基いて演算した結果を示す第1操作量を算出する制御部と、制御部から入力された第1操作量に基づいてプラントの運転をシミュレーションするシミュレータ30と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6