IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 惠州市華泓新材料股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7059384ジブチルフルオレニル誘導体及びその光開始剤としての使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】ジブチルフルオレニル誘導体及びその光開始剤としての使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20220418BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220418BHJP
   C07D 295/108 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F290/06
C07D295/108 CSP
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020545844
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2018116999
(87)【国際公開番号】W WO2019101142
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-06-21
(31)【優先権主張番号】201711175135.1
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520178917
【氏名又は名称】惠州市華泓新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUIZHOU HUAHONG NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】First Industrial Park, West Disrict, Daya Bay Huizhou, Guangdong 516083, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】林 剣雄
(72)【発明者】
【氏名】陳 傳文
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/149370(WO,A1)
【文献】特表2019-507108(JP,A)
【文献】特表2018-532851(JP,A)
【文献】特開2017-149914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329662(US,A1)
【文献】特表2006-512458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0049425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、283/01、
290/00-290/14、299/00-299/08
C07D 295/108
C07B 61/00
G02B 5/20
G03F 7/004、7/031
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下式で表される光開始剤化合物と、
【化1】
(b)光重合性炭素-炭素二重結合不飽和化合物と、
を含む、光硬化性組成物であって、
前記組成物に対して重量比で
エポキシアクリレート 35%
反応性アミン共開始剤 7%
トリメチロールプロパントリアクリレート 55%
光開始剤化合物 3%
を含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
着色又は非着色のペイント、着色又は非着色のワニス、粉末塗料、印刷インキ、プリント基板、粘着剤、歯科用組成物、ゲル塗料、エレクトロニクス用フォトレジスト、メッキレジスト、液体膜及びドライ膜、ソルダーレジスト、表示用カラーフィルタ用のレジストの製造;
プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネセントディスプレイ、又はLCDの製造過程において構造を形成するためのレジストの製造;
LCDスペーサ、ホログラフィックデータストレージ、又は電気及び電子部品をパッケージする組成物の製造;
磁気記録材料、マイクロ機械部品、光学スイッチ、メッキマスク、エッチングマスク、色校正システム、グラスファイバーケーブル塗料、又はスクリーン印刷テンプレートの製造;
ステレオリソグラフィー技術による三次元オブジェクトの製造;
画像記録材料、ホログラフィック記録、マイクロエレクトロニクス回路、脱色材料、又はマイクロカプセルを用いる画像記録材料、
における、請求項1に記載の光硬化性組成物の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の光硬化性組成物を基材上に塗布し、波長が150-600nmの範囲の光で照射することを含む、光硬化性組成物の硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射光照射硬化の分野に関する。具体的には、本発明は、新しいジブチルフルオレニル誘導体である2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン及びその製造方法、並びに2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンの光開始剤としての使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
放射硬化技術は、紫外線(UV)、電子ビーム(EB)、赤外線、可視光、レーザー、化学蛍光などの放射光により照射してポリマーを硬化させる新しい技術であり、高効率、経済、省エネ、環境に優しいという特徴を有し、新しい省エネ・環境保護技術に属する。
【0003】
光開始剤は、塗料、インキの業界で幅広く使用されている。人々の生活水準が向上するにつれて、環境と食品の安全性の問題により多くの注意が払われる。包装業界、特に食品および化粧品の包装業界におけるカラー印刷では、ベンゼン、四塩化炭素、クロロホルムなどの有害な揮発性有機化合物(VOC)に対する制限がますます厳しくなっている。例えば、食品包装の印刷では、ベンゼンの放出量の上限が3mg/mであり、たばこ包装では0.01mg/mであることが厳密に規定されている。米国およびヨーロッパ諸国の関連基準はより厳しい。中国は工業大国であり、包装業界では欧米への輸出量が増加しており、包装材中の有害な揮発性有機化合物の検出限界は、欧米の基準を満たす必要がある。
【0004】
ベンゾフェノン、ベンゾフェノンなどの一般的に使用される光開始剤は、使用過程において光開始を受けて揮発性有機化合物を生成するので、現在、食品および化粧品包装の分野での検出基準を満たすことができない。カルバゾールおよびジベンゾフラン化合物などの既存の光開始剤は、保管および使用中の安定性が低い。また、カルバゾールやジベンゾフランなどの原材料が高価であるので、光開始剤のコストが高く、性能に特別な利点がない。
【0005】
従来技術の光開始剤は、光開始効率が低く、特に、開始光源の波長に対する要求が制限されており、特定の波長範囲で光開始効率が低いという欠陥を有する。
【0006】
従って、光重合技術の分野では、より環境に優しく、活性がより高く、調製が容易で、扱いやすいなどの利点を有する光開始剤および光硬化法も必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光開始剤となる新しい化合物を提供する。本発明は、上記新しい化合物を含む光硬化性組成物、並びに上記新しい化合物及び光硬化性組成物を用いる硬化方法をさらに提供する。本発明で提供される化合物、硬化組成物及び光硬化方法は、波長範囲内で光重合反応をより効果的に開始することができ、また、本発明で提供される化合物は、より高い安定性を有し、製造と処理がより容易であり、環境により優しいなどの特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明は、
(a)下式で表される光開始剤化合物と、
【化1】
(b)光重合性炭素-炭素二重結合不飽和化合物と、
を含む、光硬化性組成物を提供する。
【0009】
本発明の一態様では、本発明の光開始剤化合物は、前記組成物の重量の0.5-10%、好ましくは約3%を占める
【0010】
本発明の光硬化性組成物における成分(b)の上記光重合性炭素-炭素二重結合不飽和化合物は、1つ又は複数のエチレン性二重結合を有する化合物を含む。光重合性化合物モノマーの例には、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ヒドロキシアルキルエステル、エポキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、不飽和カルボン酸無水物、不飽和エステル、ビニルエーテル、イソシアヌレート、N-ビニル複素環式化合物などが含まれる。
【0011】
本発明の一態様では、上記エチレン性不飽和光重合性化合物は、エチレン性不飽和カルボン酸とポリオール又はポリエポキシドとのエステルである。上記不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和脂肪酸(例えば、リノレン酸又はオレイン酸)が含まれる。好ましくは、上記不飽和カルボン酸は、アクリル酸及びメタクリル酸である。上記ポリオールは、芳香族、脂肪族、脂環式ポリオールであってもよい。芳香族ポリオールの例は、キノール、4,4-ジヒドロキシビフェニル、2,2-二(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、線状フェノール樹脂及びフェノール樹脂Aである。本発明の別の態様では、上記エチレン性不飽和光重合性化合物は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル酸アルキル、アルコキシアクリレート又はそれらの混合物であり、最も好ましくはエポキシアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート又はその混合物である。
【0012】
成分(b)の上記エチレン性不飽和光重合性化合物は、その内の1種、2種の混合物、又は2種以上の混合物であってもよい。
【0013】
本発明の光重合性組成物において、成分(b)のエチレン性不飽和光重合性化合物は、一般的な使用量が約10%-約70%、好ましくは約25%-約60%である。
【0014】
本発明で提供される光重合性組成物は、例えば、早期重合を防止するための熱抑制剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)などの他の添加剤を含んでもよい。使用可能な光安定剤は、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノンなどである。
【0015】
本発明の別の態様では、本発明の光硬化性組成物は、反応性アミン共開始剤(例えば、水溶性第三級アミン類)をさらに含む。上記アミン共開始剤は、上記組成物の重量の0.5-10%、好ましくは約7%を占める。
【0016】
本発明の別の態様では、本発明の光硬化性組成物は、当該組成物に対して重量比で
エポキシアクリレート 約35%
反応性アミン共開始剤 約7%
トリメチロールプロパントリアクリレート 約55%
光開始剤化合物 約3%
を含む。
【0017】
本発明は、上記光硬化性組成物を基材に塗布し、波長が150-600nmの光で照射することを含む光硬化性組成物の硬化方法を提供する。本発明の一態様では、本発明の光硬化性組成物は、波長320-420nm、好ましくは340-400nmの光の照射による硬化に適している。本発明の硬化方法に適用可能な光源又は放射の例には、波長域がUV-可視領域である水銀蒸気ランプまたはレーザーランプが含まれる。
【0018】
本発明は、着色及び非着色のペイント及びワニス、粉末塗料、印刷インキ、プリント基板、粘着剤、歯科用組成物、ゲル塗料、エレクトロニクス用フォトレジスト、メッキレジスト、液体膜及びドライ膜、ソルダーレジスト、表示用カラーフィルタ用のレジスト、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネセントディスプレイ及びLCDの製造過程において構造を形成するためのレジスト、LCDスペーサの製造;ホログラフィックデータストレージ、電気及び電子部品をパッケージする組成物;磁気記録材料、マイクロ機械部品、光学スイッチ、メッキマスク、エッチングマスク、色校正システム、グラスファイバーケーブル塗料、スクリーン印刷テンプレートの製造;ステレオリソグラフィー技術による三次元オブジェクトの製造;画像記録材料、ホログラフィック記録、マイクロエレクトロニクス回路、脱色材料、マイクロカプセルを用いる画像記録材料における、上記本発明の光硬化性組成物の使用を提供する。
【0019】
本発明は、少なくとも1つの表面に上記本発明の光硬化性組成物が塗布された塗布基材を提供する。
【0020】
本発明の一態様では、下式で表される光開始剤化合物を提供する。
【化2】
【0021】
本発明の一態様では、下式で表される化合物の製造方法を提供する。
【化3】
この方法は、以下のステップ(1)から(5)を含む。
【化4】
【0022】
本発明の一態様では、ステップ(5)は、2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレンとモルホリンとを混合し、約20時間撹拌還流して反応させ、過剰なモルホリンを減圧留去し、メタノールを加えて残留物を溶解し、加熱して溶解した後、静置し、冷却することを含む。本発明の上記化合物の製造方法は、収率が高く、原材料が節約され、コストが低いなどの特徴を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光開始剤化合物及び上記光開始剤化合物を含む光硬化組成物は、以下の有益な効果を有する。
【0024】
1.上記光開始剤化合物分子は、光吸収波長が長く、開始に用いるランプの波長も長いため、短波長、高エネルギーが要求される他の光開始剤に比べて、光エネルギーの要求が低くなり、利用可能な光源の範囲がより広く、光の利用効率が高く、使用がより便利である。
【0025】
2.上記光開始剤化合物分子は、その分子構造により有機溶媒での溶解度がより高いので実用に便利である。
【0026】
3.上記光開始剤化合物分子は、他のヘテロ原子を有する光開始剤に対して安定性が高く、本発明の化合物の製造方法に使用される原料のコストは、他のヘテロ原子を有する光開始剤よりも低いので、コストと性能の面で有利である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は、本発明を制限するものではない。
【0028】
<実施例1>
2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンの合成
2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンの合成経路は以下の通りである。
【化5】
【0029】
ステップ(1):9,9-ジブチルフルオレンの合成
100mLの三口フラスコに12mmol(1.99g)のフルオレン、0.5mmol(0.16g)の相間移動触媒である臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、4.5mLの50%水酸化ナトリウム水溶液、29mmol(3.1mL)のn-ブロモブタン及び50mLのブタノンを入れた。3-4時間加熱還流し、反応終了まで薄層クロマトグラフィーにより反応を追跡した。溶媒であるブタノンを留去した後、塩化メチレンで抽出した(10mLx3回)。有機層を合わせた後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発により溶媒を除去した後、目標生成物を得た。
【0030】
ステップ(2):2-(2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンの合成
250mLの三口フラスコに0.01mol(1.0mL)のイソブチリルクロリド、0.01 mol(2.78g)の9,9-ジブチルフルオレン及び40mLの塩化メチレンを入れた。磁気撹拌により均一に混合し、氷浴で冷却した。磁気撹拌しながら10℃以下で合計0.012mol(1.58g)の三塩化アルミニウムを2バッチで添加した後、室温に昇温し、3時間撹拌し、さらに40℃に昇温し、引き続き1時間撹拌した。撹拌しながら、反応混合物を100gの氷水にゆっくりと入れた。静置して二層に分けた後、水層を分離して除去し、有機層を氷水で洗浄(30mLx3回)した後、基本的に中性になった。乾燥させた後、塩化メチレンを除去して目標生成物を得た。
【0031】
ステップ(3):2-(2-ブロモ-2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンの合成
250 mL的三口フラスコに50mLの塩化メチレン、15 mLの80%硫酸、0.20molの過酸化水素及び0.10mol(34.85g)の2-(2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンを入れた。温度を25-30℃に制御し、1.0-1.5時間内に0.07mol(3.6mL)の臭素を滴下した。臭素滴下終了の20分間後、HPLCにより2-(2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンが完全に反応したことが確認された。冷却下で撹拌しながら30%の水酸化ナトリウム溶液を滴下し、上記反応混合物をpHが中性になるまで中和した後、静置して二層に分けた。水層を塩化メチレンで抽出(20mLx2回)した。有機層を合わせ、乾燥させ、回転蒸留により溶媒である塩化メチレンを除去し、目標生成物を得た。
【0032】
ステップ(4):2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレンの合成
250mLの三口フラスコに50mLの無水メタノール及び0.12mol(2.76g)の金属ナトリウムを入れ、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を調製した。温度を25-30℃に制御し、1.5-2.0時間内に0.10mol(4.27g)の2-(2-ブロモ-2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンを3バッチで添加した。添加終了後、引き続き1時間反応させた。HPLCにより2-(2-ブロモ-2-メチルプロピオニル)-9,9-ジブチルフルオレンが完全に反応したことが確認された後、60℃で回転蒸留によりを溶媒であるメタノールを除去し、冷却し、白色固体を得た。生成物を生成せず、そのまま次の反応に供した。
【0033】
ステップ(5):2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンの合成
方法1:ステップ(4)の反応生成物2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレン3.67g(10.0mmol)を取り、100mL反応フラスコに入れ、モルホリン2.61g(30.0mmol)を添加し、120-130℃で20時間撹拌しながら反応させた。薄層クロマトグラフィーにより反応を追跡した後、過剰なモルホリンなどの溶媒を減圧留去し、次に、カラムクロマトグラフィー(移動相:石油エーテル-酢酸エチル)により分離して精製し、目標化合物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン3.63gを得た。収率は83.7%出会った。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:8.74(d,J=0.8Hz,1H),8.48(dd,J1=8.0Hz,J2=0.8Hz,1H),7.78-7.73(m,2H),7.39-7.37(m,3H),3.74(t,J=4.8Hz,4H),2.66-2.64(m,4H),2.05-2.00(m,4H),1.59(s,6H),1.13-1.06(m,4H),0.69-0.60(m,10H);13CNMR(100MHz,CDCl3)δ:202.9,151.9,149.8,145.2,140.0,129.6,128.1,127.0,125.0,123.0,120.6,119.0,76.9,67.4,55.0,47.1,40.1,26.0,23.0,20.4,13.8.ESRMsm/z=434.3[M+H]+。
【0034】
NMRスペクトル(水素スペクトル、炭素スペクトル)及び質量分析の結果に基づいて、目標生成物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンであることが確定された。
【0035】
方法2:ステップ(4)の反応生成物2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレン7.33g(20.0mmol)を取り、100mLの反応フラスコに入れ、モルホリン4.35g(50.0mmol)を添加し、20時間撹拌還流して反応させた。薄層クロマトグラフィーにより反応を追跡し、過剰なモルホリンを減圧留去した後、メタノールを加えて残留物を溶解し、加熱して完全に溶解させた後、静置し、冷却し、目標生成物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン7.14gを得た。収率は82.3%であった。
【0036】
NMRスペクトル(水素スペクトル、炭素スペクトル)及び質量分析の結果に基づいて、合成方法1と同様に目標生成物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンであることが確定された。
【0037】
方法3:ステップ(4)の反応生成物2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレン7.33g(20.0mmol)を取り、100mLの反応フラスコに入れ、モルホリン1.74g(20.0mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド10mLを添加し、20時間撹拌還流して反応させた。合成方法2と同様に後処理し、目標生成物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン5.04gを得た。収率は58.1%であった。
【0038】
方法4:ステップ(4)の反応生成物2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレン7.33g(20.0mmol)を取り、100mLの反応フラスコに入れ、モルホリン1.74g(100.0mmol)を添加し、20時間撹拌還流して反応させた。合成方法2と同様に後処理し、目標生成物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン7.32gを得た。収率は4.4%であった。
【0039】
方法1の収率(83.7%)は、方法2の収率(82.3%)よりもやや高い。方法2は、カラムクロマトグラフィーにより生成物を分離して精製する必要がなく、工業生産により適している。
【0040】
方法3では、反応原料2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレンとモルホリンとのモル比が1:1である場合、収率が低く、58.1%のみである。また、2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレンが常温下で固体であるので、この2つの反応原料の相互溶解性はやや劣っている。
【0041】
方法4では、原料2-メチル-1-メトキシ[2-(9,9-ジブチルフルオレニル)]酸化プロピレンとモルホリンとのモル比が1:5である場合、生成物の収率(84.4%)は合成方法2の収率(82.3%)に比べて顕著に向上していないが、モルホリンのモル量が2.5から5.0に上がるので、モルホリンの使用量は顕著に増加した。
【0042】
<実施例2>
光硬化ワニス製品の調製
以下の処方に従って光硬化ワニス製品を調製した。
具体的な処方は以下の通りである。
成分 組成物の合計重量の重量%
エポキシアクリレート 35%
活性アミンP115 7%
トリメチロールプロパントリアクリレート 55%
光開始剤 3%
上記処方に従って、2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンを光開始剤として本発明の製品を製造した。
【0043】
光開始剤の含有量が異なり、他の成分が同じ光硬化ワニス製品を調製することにより、他の光開始剤で調製した対照製品を調製、試験した。
【0044】
対照製品は、
2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルホリニル-1-アセトンを光開始剤で調製した対照製品1、
2-メチル-1-(4-ビフェニル)-2-モルホリニル-1-アセトンを光開始剤で調製した対照製品2、
を含む。
【0045】
<実施例3>
硬化効果試験
実施例2で調製したワニス製品を印刷適性試験機により白紙に約15μmの厚さで塗布し、電力が50W/CMの調整可能なフィルタ付きのUVランプを用いて360-420の波長範囲下、100m/分間の速度で硬化し、良好な表面が形成されかつ完全に硬化するために必要なランプ下での通過回数を記録した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<実施例4>
VOC放出分析
ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより実施例3で本発明の光開始剤により調製した硬化膜におけるVOC放出量を測定した。
【0048】
結果を表2に示す。
【表2】
【0049】
<実施例5>
溶解度、黄変及びにおい分析
固体の光開始剤(本発明の化合物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトン、対照光開始剤2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルホリニル-1-アセトン及び2-メチル-1-(4-ビフェニル)-2-モルホリニル-1-アセトン)
【化6】
を液体重合性モノマー(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)又はトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)に溶解し、50~60℃に加熱して均一に混合した。溶解した液体を室温で保存しなければならない。その溶解度を測定した。黄変の度合いを観察し、においを人工で評価した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
<実施例6>
安定性分析
実施例2で調製したワニス製品を15μmワイヤーバーコータにより12×12cm板紙に塗布し、電力が80W/cmの中圧水銀アークランプを用いて20m/分間の速度で硬化した。板紙を10×10cmの大きさに切り出し、100mlの蒸留水、3%酢酸水溶液の2種類の模擬液に完全に浸漬し、密封した後40℃の条件下で10日間静置した。印刷物を取り出し、静置した後、そのままHPLCにより模擬液中の開始剤化合物の含有量を分析した。600cm2の印刷面積で1kgの食品を包むことで計算し、遷移率測定結果をg/Kg食品で示し、その結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明では、新しい化合物2-メチル-1-(2-(9,9-ジブチルフルオレニル))-2-(N-モルホリニル)-1-アセトンは、光重合反応において良好な性能を有し、例えば、紫外(UV)光の照射により重合開始剤を効果的に生成できることが発見された。また、本発明で提供される光開始剤化合物及び硬化組成物は、生産コストが低く、生産プロセスが簡単で、後処理が簡単で、環境保護の要求を満たす。本発明で提供される光開始剤は、製品中のベンゼン又はトルエンを含む様々なVOCを効果的に低減することができ、食品、たばこ、化粧品などの包装印刷業界に適用できる。