(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】ADCC及びADCP活性の改善された定量化のためのシステム及び製品
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20220418BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220418BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20220418BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
G01N33/53 Y
C12N15/85 Z
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020549787
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2019056403
(87)【国際公開番号】W WO2019179871
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519113192
【氏名又は名称】スワール ライフ サイエンス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トービー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン、クリストフ
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/186121(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/040441(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/179833(WO,A1)
【文献】Journal of Immunology Research, 2017, Article ID 3908289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAPlus/Registry (STN)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
Uniprot/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数の共刺激性分子をコードするベクター構築物を含む細胞であって、
前記ベクター構築物が、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列を含み、
前記ベクター構築物が、共刺激性分子CD28、共刺激性分子CD137(4-1BB)、共刺激性分子CD247(T3ゼータ鎖)
及び共刺激性分子CD278(ICOS)から選択される1つ若しくは複数をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、又は共刺激性分子が、CD28、CD137L(4-1BB)及びICOSの1つ又は複数から選択される受容体である、細胞。
【請求項2】
前記1種又は複数の共刺激性分子が前記細胞で構成的に発現しているか又は過剰発現している、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
CD16A又はCD32をさらに発現する、請求項1又は2に記載の細胞。
【請求項4】
CTLA-4(CD152)が特異的に無効化されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項5】
初代細胞又は細胞株である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
ジャーカット、Molt4、Raji、SKBR3、NK92、KHYG-1、HEK293細胞DT-40
及びMSB-1
からなる群から選択される動物細胞株である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項7】
前記ベクター
構築物がエピソームであるか又は前記細胞のゲノム中に組み込まれている、請求項1から6までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
第1のレポータータンパク質をさらに発現する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項9】
前記第1のレポータータンパク質が、
ルシフェラー
ゼ又は蛍光タンパク質である、請求項
8に記載の細胞。
【請求項10】
前記第1のレポータータンパク質と異なる第2のレポータータンパク質をさらに発現する、請求項
8または9に記載の細胞。
【請求項11】
抗体又はFc融合タンパク質によって認識される抗原をさらに発現するか又は過剰発現する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
i) 抗体のFc領域に結合し、1種若しくは複数の共刺激性分子を発現するか又は1種若しくは複数の共刺激性分子を過剰発現することができる、請求項1から11までのいずれか一項に記載する細胞である、エフェクター細胞(E)、
ii) 該抗体が特異的である内在性標的/抗原が無効化されており(突然変異している)、その結果、該標的/抗原が該細胞によって発現されないか又は非機能的形態で発現される、標的細胞(T-)、及び
iii) 該抗体が特異的である該標的の発現が、CD80、CD86、CD137L及び(CD278L)ICOSLを含む1種又は複数の共刺激性分子と一緒に増強されているか又は過剰発現している、標的細胞(T+)
を含む、キット。
【請求項13】
ii)の前記細胞及び前記細胞iii)が、ii)の前記細胞が、アッセイされる前記抗体又は薬物によって認識される特定の抗原を発現しないことを除いては、すべての点で全く同一の同じ細胞である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記標的/抗原がCD20、mTNFα、erbB2、EGFRの1つ又は複数である、請求項12又は13に記載のキット。
【請求項15】
2つのバイアルを含み、i)及びiii)の前記細胞が最適なE:T比で1つの同じバイアル中に存在し、i)の前記エフェクター細胞とiii)の前記標的細胞との間の該比(E:T比)が、約24:1から約2:1の範囲、又は約6:1、若しくは約3:1、若しくは約1.5:1である、請求項12から14までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
治療用抗体の抗体依存性細胞介在細胞傷害(ADCC)活性を定量化するための方法であって、
a) 抗体を含有す
る試料を、請求項12のi)に記載のエフェクター細胞(E
)及び請求項12のiii)に記載の標的細胞
(T+)と接触させるステップと、
b) 請求項12のi)に記載のエフェクター細胞(E
)及び請求項12のii)に記載の
標的細胞(T-)の存在下で得られたシグナルを、
請求項12のi)に記載のエフェクター細胞(E
)及び請求項12のiii)に記載の標的細胞
(T+)の存在下で得られたシグナルから引くステップと、
c) a)及びb)で測定されたシグナル相関に基づいて該ADCC活性を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
治療用抗体の抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)活性を定量化するための方法であって、
a) 抗体を含有す
る試料を、請求項12のi)に記載のエフェクター細胞(E
)及び請求項12のiii)に記載の標的細胞
(T+)と接触させるステップ、
b) 請求項12のi)に記載のエフェクター細胞(E
)及び請求項12のii)に記載の
標的細胞(T-)の存在下で得られたシグナルを、
請求項12のi)に記載のエフェクター細胞
(E)及び請求項12のiii)に記載の標的細胞
(T+)の存在下で得られたシグナルから引くステップ、
c) a)及びb)で測定されたシグナル相関に基づいて該ADCP活性を決定するステップ
を含む方法。
【請求項18】
生物学的アッセイにおける、請求項1から11までのいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項19】
アッセイにおける増強されたダイナミックレンジ及び/又は増大した感度のための、該アッセイにおける請求項1から11までのいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項20】
前記細胞が抗体のADCC及び/又はADCP活性を評価するために使用される、請求項
19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な細胞、及び試料において抗体依存性細胞介在細胞傷害(ADCC)又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)を決定するための方法におけるその使用に関する。本発明による細胞は、診断的状況で使用することができるキット又はキットの部品で使用することができる。重要なことに、本発明による細胞は、例えば抗体又はFc融合タンパク質に基づき治療の有効性を決定するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
いくつかのモノクローナル抗体の活性は、ADCC及び/又はADCPを含む宿主媒介性エフェクター細胞機能によって部分的に媒介されることが周知である。抗体は、腫瘍細胞又は炎症を引き起こすリンパ球などの標的細胞上の特定の抗原に向けられる。一旦標的細胞に結合すると、エフェクター細胞のFc受容体部分は、モノクローナル抗体のFc部分に結合し、それによって、エフェクター細胞による標的細胞の死滅をもたらす。
【0003】
そのようなADCC又はADCPプロセスにおける抗体の有効性を定量化するために、抗体の有効性を決定するために使用される、エフェクター細胞、標的細胞及び対照標的細胞を有することが必要である。従来技術では、内在性エフェクター細胞、ヒト対象由来のナチュラルキラー(NK)細胞、及びヒト対象由来の標的細胞又は確立された腫瘍細胞系を採取し、それらの標的細胞を試験で使用する。古典的なアッセイでは、標的細胞はクロム装填され、その結果、クロムの放出によって細胞の死滅を決定することができる。この方法は、多くの不利益を被り、例えば、使用されるエフェクター細胞をヒト対象から採取しなければならず、それにより、定量化に使用される細胞に大きな変動性がある。さらに、このように細胞を得るのは難しく、費用がかかる。例えば、ドナー間でかなりの変動がある。さらに、この古典的アッセイの陰性対照について、標的受容体、例えば、リツキシマブに対するCD20及びトラスツズマブに対するerbB2を発現しない細胞系が使用されるであろう。したがって、例えば、CD20を発現しないT細胞系が使用されるであろう。そのような陰性対照標的細胞の使用の不利益は、当然ながら、細胞が、標的細胞に対するCD20発現がないことに加えて多くの点で異なり、優れた対照を構成しないことである。
【0004】
別の不利益は、これらは、長い、時間のかかるアッセイであり、一晩インキュベートしなければならないことが多いことである。ダイナミックレンジが制限され、感度が悪い。ダイナミックレンジは、最高濃度の薬物において達成可能な最大シグナルと、対照及びゼロ(薬物がない試料)との間の差異である。感度は、少量の抗体によって生成される活性であり、すなわち、検出可能な活性を生成するのに必要な抗体の量が少ないほど、アッセイの感度は高い。別の不利益は、アッセイは不正確なことが多く、これによって、モノクローナル抗体の異なるバリアント間の小さな差異の検出が難しくなることである。
【0005】
この標準的な定量アッセイに対する1つの改善は、Parekhら(1)によって記載され、改変及び市販された(2)。アッセイでは、ホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子の活性化及びルミノメーターで定量化することができる光放出によってFcγIIIa受容体(CD16)への免疫グロブリンのFc部分の結合に応答するNFAT応答性レポーター遺伝子構築物を含有する、組換えエフェクター細胞系が開発されている。これらのエフェクター細胞は、凍結、解凍及び使用の型式で販売されている(3)。これは、はるかに簡便な型式で、ダイナミックレンジがいくらか大きい、はるかに感度が良い方式で定量化することができる、ADCC機構の代替マーカーを使用し、エフェクター細胞を採取する必要がないが、凍結融解細胞を使用するので、標準的な溶解性アッセイを超える改善である。同様に、ADCP活性は、NFAT応答性ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγIIa(CD32)を発現するエフェクター細胞及び野生型(WT)標的細胞を使用する同様な方式で定量化することもできる。そのようなADCPエフェクター細胞系は市販されている(Promega Corporation Madison WI)。抗体のADCP活性を評価するために、これらの細胞をWT標的細胞と一緒に使用することは、ダイナミックレンジが制限され、感度が限られたアッセイをもたらす。
【0006】
さらに、エフェクター細胞上での抗体のFc部分とFcγRIIIA受容体の相互作用後に活性化される主要転写因子(NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5)に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによってホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子が調節される、新規な組換えエフェクター細胞系が最近記載されており(3)、WO2018/065401に開示されている。さらに、WO2018/065401に開示されているものと同じ合成キメラプロモーターによって調節されるホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD32を発現する新規な組換えエフェクター細胞系が本明細書に開示される。WO2018/065401に開示されているキメラプロモーターによって調節されるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD16又はCD32を発現する組換えエフェクター細胞は、それぞれ、抗体によって認識される高い一定レベルの特定の抗原を過剰発現する操作された標的細胞と一緒にADCC又はADCPアッセイで使用される場合に、NFAT調節性レポーター遺伝子を発現する操作されたエフェクター細胞系と比較して、改善された感度及び改善されたダイナミックレンジを与える。
【0007】
WO2017/186121は、免疫応答細胞の機能を改善するための方法、並びに抗原及びI型インターフェロンに結合することができる少なくとも1つの受容体を発現する免疫応答細胞に関する。該細胞は、腫瘍又は病原体を死滅させる重要な能力を有し、腫瘍及び感染症を治療するのに使用することができる。
【0008】
Lallemand,C.ら、J.Immunol.Res.、2017年号、1~19ページは、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ又はエタネルセプトによって認識される、高い一定レベルの特定の抗原を過剰発現する新規な標的細胞と一緒に、FcyRIIIa(CD16a)のV変異体又はF変異体及びFcyRIIIaシグナル伝達に関与する主要転写因子に対する認識配列を組み込むキメラプロモーターの制御下にあるホタルルシフェラーゼを発現する新規なADCCエフェクター細胞に関し、これらは、NFAT調節性レポーター遺伝子を発現するエフェクター細胞及び野生型標的細胞と比較して、ADCCアッセイにおいて、改善された感度、特異性及びダイナミックレンジを与える。
【0009】
それにもかかわらず、定量的なADCC及びADCPアッセイをさらに改善したいという要求が常に存在する。特にADCP活性の定量化について、ダイナミックレンジが大幅に改善され、感度が改善されたアッセイを有することが望ましいであろう。
【0010】
本発明は、1種又は複数の共刺激性分子のエフェクター及び/又は標的細胞における過剰発現に関し、過剰発現は、前記細胞が抗体のADCC又はADCP活性を評価するのに使用される場合に顕著に増強されたダイナミックレンジ及び増大した感度をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】CD137と同時導入した、又は同時導入していないiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)、並びにERBB2を単独で過剰発現する、又はERBB2及びCD86を過剰発現する、又はERBB2、CD86及びCD137Lを過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図1B】CD3に会合したゼータ膜貫通型シグナリング分子と同時導入した、又は同時導入していないiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)及びCD20を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図2A】iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにCD20を単独で過剰発現するか又はCD20と共刺激性分子CD80若しくはCD86若しくはCD80及びCD86との両方を過剰発現するかのいずれかのRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図2B】iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びCD20を単独で過剰発現するか又はCD20と共刺激性分子CD80若しくはCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図3A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型Raji標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにCD20と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図3B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型Raji標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びCD20と共刺激性分子CD80又はCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図4A】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞V変異体並びにCD20と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用した場合のリツキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図4B】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びCD20と共刺激性分子CD80又はCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用した場合のリツキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図5A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型Raji標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにCD20と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図5B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型Raji標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びCD20と共刺激性分子CD80又はCD86との両方を過剰発現するRaji標的細胞を使用して決定したリツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図6A】iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにerbB2を単独で過剰発現するか又はerbB2と共刺激性分子CD80若しくはCD86若しくはCD80及びCD86との両方を過剰発現するかのいずれかのHEK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図6B】iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びerbB2を単独で過剰発現するか又はerbB2と共刺激性分子CD80又はCD86との両方を過剰発現するかのいずれかのHEK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図7A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型SK-BR-3標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにerbB2と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図7B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型SK-BR-3標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びerbB2と共刺激性分子CD80又はCD86との両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図8A】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにerbB2と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用した場合のトラスツズマブのADCC活性を示す図である。
【
図8B】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びerbB2と共刺激性分子CD86の両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用した場合のトラスツズマブのADCC活性を示す図である。
【
図9A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型SK-BR-3標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにerbB2と共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHERK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図9B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型SK-BR-3標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びerbB2と共刺激性分子CD86の両方を過剰発現するHERK293標的細胞を使用して決定したトラスツズマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図10A】iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにEGFR単独又はEGFRと共刺激性分子CD80若しくはCD86若しくはCD80及びCD86との両方のいずれかを過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図10B】iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びEGFR単独又はEGFRと共刺激性分子CD86の両方のいずれかを過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図11A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型A431標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにEGFRと共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図11B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型A431標的細胞に対する、iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びEGFRと共刺激性分子CD86の両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図12A】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにEGFRと共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用した場合のセツキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図12B】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びEGFRと共刺激性分子CD86の両方を過剰発現するHEK293標的細胞を使用した場合のセツキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図13A】NFAT応答性エフェクター細胞(V変異体)及び野生型A431標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びにEGFRと共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86との両方を過剰発現するHERK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図13B】NFAT応答性エフェクター細胞(F変異体)及び野生型A431標的細胞に対する、CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)及びEGFRと共刺激性分子CD86の両方を過剰発現するHERK293標的細胞を使用して決定したセツキシマブのADCC活性の比較を示す図である。
【
図14A】iLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びに膜結合TNFα単独又は膜結合TNFα並びに共刺激性分子CD80若しくはCD86若しくはCD80及びCD86のいずれかを発現するHEK293標的細胞を使用して決定したインフリキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図14B】iLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)並びに膜結合TNFα単独又は膜結合TNFα並びに共刺激性分子CD80及び若しくはCD86のいずれかを発現するHEK293標的細胞を使用して決定したインフリキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図15A】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(V変異体)並びに膜結合TNFα単独又は膜結合TNFα並びに共刺激性分子CD80若しくはCD86若しくはCD80及びCD86のいずれかを発現するHEK293標的細胞を使用して決定したインフリキシマブのADCC活性を示す図である。
【
図15B】CD28を過剰発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞(F変異体)並びに膜結合TNFα単独又は膜結合TNFα及び共刺激性分子CD80若しくはCD86のいずれかを発現するHEK293標的細胞を使用して決定したインフリキシマブのADCC活性を示す図である。 表1は、4PLプロットの主要なパラメーターとして表される、CD16AのV変異体を発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞と併せて使用されるCD20
++標的細胞における共刺激性分子CD80、CD86及びCD80とCD86との過剰発現のADCCアッセイに対する効果を示す。 表2は、4PLプロットの主要なパラメーターとして表される、CD16AのV変異体を発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞と併せて使用されるERBB2
++標的細胞における共刺激性分子CD80、CD86及びCD80とCD86との過剰発現のADCCアッセイに対する効果を示す。 表3は、4PLプロットの主要なパラメーターとして表される、CD16AのV変異体を発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞と併せて使用されるEGFR
++標的細胞における共刺激性分子CD80、CD86及びCD80とCD86との過剰発現のADCCアッセイに対する効果を示す。 表4は、4PLプロットの主要なパラメーターとして表される、CD16AのV変異体を発現するiLite(登録商標)エフェクター細胞と併せて使用されるmTNFα
++標的細胞における共刺激性分子CD80、CD86及びCD80とCD86との過剰発現のADCCアッセイに対する効果を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の問題を解決し、とりわけ、改善された感度及び/又は改善されたダイナミックレンジを提供するために、従来技術のアッセイの凍結、解凍及び使用のエフェクター細胞及び標的細胞の実質的な改善を提供する。一態様では、問題は、とりわけ、本発明によるベクター及び最終的に細胞中に含まれる操作されたポリヌクレオチド配列の助けによって解決される。
【0013】
一態様では、本発明は、アッセイにおける改善された感度を提供する、ポリヌクレオチド配列、ベクター及び最終的に操作された細胞を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、アッセイにおける改善されたダイナミックレンジを提供する、ポリヌクレオチド配列、ベクター及び最終的に操作された細胞を提供する。
【0015】
なおさらなるの態様では、本発明は、アッセイにおける改善された感度及び同時にアッセイにおける改善されたダイナミックレンジを提供する、ポリヌクレオチド配列、ベクター及び最終的に操作された細胞を提供する。
【0016】
改善された感度は、それ自体、実質的に改善されたEC50及びLLOQ(定量下限)に現れる。特に、本発明は、当技術分野で公知の技法と比較して少なくとも約10倍である、増大した感度(EC50として測定される)又はLLOQのために、細胞系及び最終的にキットにおけるその使用を提供する。したがって、感度又はLLOQは、当技術分野で公知の技法と比較して、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍又は少なくとも約100倍増大する。同様に、本発明は、当技術分野で公知の技法と比較して少なくとも約10倍である増大したダイナミックレンジのために、細胞系及び最終的にキットにおけるその使用を提供する。したがって、ダイナミックレンジは、当技術分野で公知の技法と比較して、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍又は少なくとも約100倍である。当技術分野で公知の技法の例は、Bhavin S.Parekh,B.S.ら、mAbs、2012、4(3)、310~318ページ、又は例えば、Cheng,Z.J.ら、J.Immunol.Methods、2014、414、69~81ぺージに見出すことができる。
【0017】
本発明は細胞に関する。特に、本発明は、本発明による1種又は複数のベクターを含む細胞に関する。ベクターはエピソームでもよく、又は前記細胞のゲノム中に組み込まれていてもよい。細胞は任意の起源のものでもよく、特に哺乳動物細胞でもよい。本発明による細胞は、例えば、ジャーカット、Molt4、Raji、SKBR3、NK92、KHYG-1、HEK293、DT-40及びMSB-1などの当技術分野で公知の任意の細胞系のものでもよい。本発明は、細胞における1種又は複数の共刺激性分子の過剰発現に関し、過剰発現は、前記細胞が抗体のADCC又はADCP活性を評価するのに使用される場合に増強されたダイナミックレンジ及び増大した感度をもたらす。共刺激性分子は、抗体によって認識される特定の抗原を保有する標的細胞で内在的に発現しているか又は過剰発現している場合に、リガンドとして働くことができる。本発明の一実施形態では、標的細胞は、WO2018/065401に開示されているように、治療抗体に認識される高い一定レベルの特定の抗原を過剰発現するように操作されている。共刺激性分子は、エフェクター細胞で内在的に発現しているか又は過剰発現している場合に、共刺激性受容体として働くことができる。本発明の一実施形態では、エフェクター細胞は、以前に記載されているように(1、2)NFAT応答性レポーター遺伝子の活性化によって、又はWO2018/065401に開示されているように、ホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子に操作的に連結された、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターの活性化によって、標的細胞で発現している特定の抗原に結合している抗体のFc部分のライゲーションに応答する、低親和性Fc受容体、FcγRIIIa(CD16A)V若しくはF変異体又はFcγRIIa(CD32)H又はR変異体のいずれかを過剰発現するように操作されている。
【0018】
本発明の別の態様では、エフェクター細胞は、以前に記載されているように(1、2)NFAT応答性レポーター遺伝子の活性化によって、又はWO2018/065401に開示されているように、ホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子に操作的に連結された、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターの活性化によって、標的細胞で発現している特定の抗原に結合している抗体のFc部分のライゲーションに応答する、例えば、高親和性Fc受容体、FcγRI(CD64)又は例えば、低親和性Fc阻害性受容体FcγRIIB1(CD32)又は低親和性Fc阻害性受容体FcγRIIB2(CD32)又は低親和性Fc受容体FcγRIIIB(CD16b)のいずれかを過剰発現するように操作されている。
【0019】
標的細胞で過剰発現している共刺激性分子は、エフェクター細胞で内在的に発現しているか又は過剰発現している共刺激性受容体(単数又は複数)と相互作用し、エフェクター細胞におけるFcγIIIa又はFcγII受容体との抗体のFc部分の相互作用を強め、FcγIIIa又はFcγII受容体に連結したレポーター遺伝子の顕著に増強された発現をもたらす。これは、結果として、WO2018/065401に開示されているように、それぞれ、FcγIIIa受容体応答性レポーター遺伝子を発現するエフェクター細胞を、又はそれぞれ、本明細書に記載の若しくは市販されているFcγII応答性レポーター遺伝子を発現するエフェクター細胞を使用するADCC又はADCPアッセイのダイナミックレンジ及び感度の顕著な増大があり、前記標的細胞は、抗体によって認識される特定の抗原に加えて、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)及びCD137(4-1BB)を含む1種又は複数の共刺激性分子を発現する。
【0020】
ICOS-L(誘導性共刺激物質リガンド)などの他の共刺激性分子も標的細胞で発現させて、エフェクター細胞で内在的に発現しているか又は過剰発現しているICOS受容体とのその相互作用後に、それぞれADCC又はADCPアッセイにおいて、FcγIIIa又はFcγII受容体のいずれかに連結したレポーター遺伝子の発現を強めることができることが理解されたい。本発明のさらなる実施形態では、標的細胞においてCD80及びCD86のダウンレギュレーションを防止するために、CTLA-4(CD152)などの免疫チェックポイント受容体は、ゲノム編集を使用して、エフェクター細胞において特に無効化される。本発明のさらなる実施形態ではFcγRIIIa関連免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)シグナリング、及びFcγIIIa受容体に連結したレポーター遺伝子の増強された発現を強めるために、CD3ゼータ鎖膜貫通型シグナリング分子(CD247)がADCCエフェクター細胞で過剰発現している。
【0021】
一態様では、本発明は、CD28、CD137(4-1BB)、CD247(T3ゼータ鎖)又はCD278(ICOS)の1つ又は複数が、エフェクター細胞で構成的に発現しているか又は過剰発現しているかのいずれかである、エフェクター細胞として示され得る細胞に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、CD80、CD86、CD137L及び/又はCD278Lの1つ又は複数が、標的細胞で構成的に発現しているか又は過剰発現しているかのいずれかである、標的細胞として示され得る細胞に関する。
【0023】
本発明は、キット又はキットの部品にも関する。キットは、
i) ADCC又はADCP機構においてエフェクター細胞として働くことができ、1種又は複数の共刺激性分子が内在的に発現しているか又は過剰発現している、本発明による細胞、
ii) ADCC又はADCP機構において標的細胞として働くことができ、1種又は複数の共刺激性分子の発現が増強されている、本発明による細胞、
iii) 抗体が特異的である内在性標的が無効化されている(突然変異している)、標的細胞を含むことができる。
【0024】
キットは、同じ標的が増強されており、すなわち、その結果、WO2018/065401に開示されているように標的が過剰発現しており、且つ1種又は複数の共刺激性分子の発現が増強されている標的細胞も含む。
【0025】
標的は、原理上は、関連する抗体が結合することができるいかなる標的でもよい。一態様では、標的はCD20、mTNFα、erbB2、EGFRの1つ又は複数でもよい。
【0026】
キットは、1つ又は複数のバイアル、例えば、2つ以上のバイアルなどを含むこともできる。一態様では、キットは、細胞i)の混合物を細胞ii)の混合物とともに含む1つのバイアルを含むことができる。そのような例では、キットは、2つのバイアルを含み、第2のバイアルは前述のiii)の細胞を含む。したがって、一例では、キットは、2つのバイアルを含み、1つのバイアルは、エフェクター細胞i)及び問題の抗体が特異的に増強/過剰発現される標的を有する標的細胞ii)を含む。第2のバイアルは、したがって、標的細胞iii)を含み、標的が無効化されているか、若しくは標的/受容体が欠失しているか、又はさもなければ、非機能性であり得、若しくは任意の手段によって問題の抗体へのその結合能力が失われている。
【0027】
本発明の一態様では、キットの1つのバイアルは、E:T比として本明細書で言及される最適な比で、細胞i)の混合物を細胞ii)の混合物とともに含み、Eは、上記のパラグラフi)の細胞(エフェクター細胞)を示す。Tは、上記のiii)の細胞(標的細胞)を示す。最適なE:T比は、本明細書及び実験部分でさらに記載する。
【0028】
本発明によるキット及び方法では、エフェクター細胞i)と標的細胞ii)との間の関係について見出されたものと同じE:T比が、エフェクター細胞i)及び標的細胞iii)に対して使用される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これらの特色は本発明によって得られ、本発明は、WO2018/065401に開示されているようにホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD16A(V又はF変異体)を発現する組換えエフェクター細胞、又は本明細書に記載のようにホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD32(H又はR変異体)を発現するエフェクター細胞、又はWO2018/065401に開示されているようにホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結された、若しくは本明細書に記載のようにホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的に連結された、高親和性Fc受容体、FcγRI(CD64)、若しくは低親和性Fc阻害性受容体FcγRIIB1(CD32)、若しくは低親和性Fc阻害性受容体FcγRIIB2(CD32)、若しくは低親和性Fc受容体FcγRIIIB(CD16b)のいずれかを過剰発現するように操作されたエフェクター細胞、又はCD28、CD137(4-1BB)及びICOSを含む1種若しくは複数の共刺激性受容体を内在的に発現するか若しくは過剰発現する、市販されているNFAT応答性レポーター遺伝子に機能的に連結されたCD16A若しくはCD32を発現するエフェクター細胞が、抗体によって特異的に認識される抗原を発現し、且つCD80、CD86、CD132L又はICOSLを含む1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する標的細胞と併せて使用され、前記細胞が抗体のADCC又はADCP活性を評価するのに使用される場合に、増強されたダイナミックレンジ及び増大した感度をもたらす。
【0030】
したがって、本発明は、下流のプロモーターに作動可能に連結したcis作用性制御配列を含むポリヌクレオチドに関し、ここで、NF-AT、AP1、NFkB、STAT1、STAT3及びSTAT5の1つ又は複数は、前記cis作用性調節配列に結合することができる。本発明の一態様では、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5はすべて前記cis作用性調節配列に結合することができる。
【0031】
プロモーターは、例えば、ルシフェラーゼでもよい酵素又は蛍光タンパク質などの第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレーム配列に作動可能に連結され得る。
【0032】
本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号1に対して、少なくとも約70%の配列同一性、例えば、少なくとも約75%の配列同一性など、例えば、少なくとも約80%の配列同一性など、例えば、少なくとも約85%の配列同一性など、例えば、少なくとも約90%の配列同一性など、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などの又は配列番号1と同一のDNA配列を有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよく、配列番号1は、
【数1】
である。
【0033】
一態様では、本発明によるポリヌクレオチドは、人工の操作されたポリヌクレオチドである。
【0034】
一態様では、本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約90%の配列同一性、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい。
【0035】
さらなる態様では、本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約95%の配列同一性、例えば、少なくとも約96%の配列同一性など、例えば、少なくとも約97%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性など有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい。
【0036】
本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクター構築物にも関する。ベクター構築物は、プラスミド又はウイルスベクターでもよい。
【0037】
本発明の一態様では、ベクター構築物は、配列番号1に記載のポリヌクレオチド配列を含むことができ、本明細書で開示される1種又は複数の共刺激性分子の発現のためのタンパク質をコードすることができる1種又は複数のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0038】
ベクター構築物は、したがって、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約70%の配列同一性、例えば、少なくとも約75%の配列同一性など、例えば、少なくとも約80%の配列同一性など、例えば、少なくとも約85%の配列同一性など、例えば、少なくとも約90%の配列同一性など、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができ、配列番号1は、
【数2】
である。
【0039】
一態様では、ベクター構築物は、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約90%の配列同一性、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができる。
【0040】
さらなる態様では、ベクター構築物は、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約95%の配列同一性、例えば、少なくとも約96%の配列同一性など、例えば、少なくとも約97%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性など有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができる。
【0041】
さらに、本発明は、本発明によるベクターを含む細胞にも関する。特に、本発明は、本発明によるベクターを含む操作された細胞に関する。ベクターはエピソームでもよく、又は前記細胞のゲノム中に組み込まれていてもよい。本発明の一態様では、細胞は、第1のレポータータンパク質と異なる第2のレポータータンパク質をさらに発現することができる。本発明のなおさらなる態様では、細胞は組換え体でもよい。
【0042】
本発明の一態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(配列番号1)を有するベクターを含む細胞は、エフェクター細胞でもよい。先に言及したように、ベクター又はベクター構築物は、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約70%の配列同一性、例えば、少なくとも約75%の配列同一性など、例えば、少なくとも約80%の配列同一性など、例えば、少なくとも約85%の配列同一性など、例えば、少なくとも約90%の配列同一性など、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができ、配列番号1は、
【数3】
である。
【0043】
一態様では、ベクター構築物は、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約90%の配列同一性、例えば、少なくとも約95%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性などを有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができる。
【0044】
さらなる態様では、ベクター構築物は、配列番号1又は配列番号1と同一のDNA配列に対して、少なくとも約95%の配列同一性、例えば、少なくとも約96%の配列同一性など、例えば、少なくとも約97%の配列同一性など、例えば、少なくとも約98%の配列同一性など、例えば、少なくとも約99%の配列同一性など有するヌクレオチド配列を含むか又はそれらから成ってもよい、ポリヌクレオチドを含むことができる。
【0045】
本発明の一態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(配列番号1)を有するベクターを含む細胞は、エフェクター細胞でもよく、ベクターは、本明細書で開示される1種又は複数の共刺激性分子の発現のためのタンパク質をコードすることができる1種又は複数のヌクレオチド配列をさらに含む。例示的且つ非限定的な例は、CD28、CD137(4-1BB)、CD247(T3ゼータ鎖)又はCD278(ICOS)の1つ又は複数であり、これらは、エフェクター細胞で(例えば、細胞表面で)構成的に発現していてもよく、又は過剰発現していてもよい。
【0046】
したがって、本発明の一態様では、細胞はエフェクター細胞であり、例えば、ルシフェラーゼでもよい酵素又は蛍光タンパク質を発現する遺伝子などのレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD16Aを発現することができる。
【0047】
或いは、本発明による細胞はエフェクター細胞であり、例えば、ルシフェラーゼでもよい酵素又は蛍光タンパク質を発現する遺伝子などのレポーター遺伝子に機能的に連結されたCD32を発現することができる。
【0048】
本発明の一態様では、本発明による細胞、エフェクター細胞は、さらに、1種又は複数の共刺激性受容体を内在的に発現するか又は過剰発現する。原理上は、そのような共刺激性受容体は、任意の適切な受容体でもよく、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、及びICOSの1つ又は複数でもよい。さらに、CD28、CD137(4-1BB)、CD247(T3ゼータ鎖)又はCD278(ICOS)の1つ又は複数は、エフェクター細胞で構成的に発現していてもよく、又は過剰発現していてもよい。
【0049】
本発明は、標的細胞にも関する。さらに、標的細胞は、抗体によって特異的に認識される抗原を発現する。本発明の一態様では、標的細胞は、例えば、CD80、CD86、CD132L、CD137L又はICOSLの1つ又は複数などの1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する。さらに、CD80、CD86、CD137L及び/又はCD278Lの1つ又は複数は、標的細胞で構成的に発現していてもよく、又は過剰発現していてもよい。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、CD28のダウンレギュレーション、ひいては標的細胞に対するCD80及びCD86の過剰発現の効果の打ち消しを防止するために、CTLA-4(CD152)などの免疫チェックポイント受容体は、ゲノム編集を使用して、エフェクター細胞において特に無効化される。本発明のさらなる実施形態では、FcγRIIIa関連ITAMシグナリング及びFcγIIIa受容体に連結したレポーター遺伝子の増強された発現を強めるために、3つの免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有するゼータシグナリング分子(CD247)に会合している膜貫通CD3が、ADCCエフェクター細胞で過剰発現している。好ましい実施形態では、アッセイの正規化をもたらすために、組換えエフェクター細胞は、レポーター遺伝子構築物で使用されるものと異なるルシフェラーゼの構成的生成のための構築物をさらに有する。例えば、レポーター遺伝子構築物がホタルルシフェラーゼを生成する場合は、構成的生成は、第2のルシフェラーゼ、例えば、ウミシイタケルシフェラーゼのものでもよい(4)。第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化される第1のルシフェラーゼの活性は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS2011/0189658に記載されている。アッセイを行う場合、実施例により詳細に記載されるように、レポーター遺伝子ルシフェラーゼを測定した後に、次いで試薬を加えて、その特定のルシフェラーゼをクエンチし、その結果、任意のその後の読み取りは構成的構築物からのルシフェラーゼを読み取るだけであり、これを、次いで正規化の目的に使用することができる。
【0051】
任意のルシフェラーゼの構成的発現を使用する利点は、結果がエフェクター細胞の喪失又はエフェクター細胞による標的細胞の死滅の影響を受けず、結果が血清のマトリックス効果の影響も受けないことである。これらのすべては、他の(第2の)ルシフェラーゼの構成的発現の測定値を使用して得られた正規化によって補正することができる。これらの利点のどれも、そのような正規化を使用しない従来技術のアッセイの手順では得ることができない。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、WO2018/065401に開示されているように、標的細胞は、インビボで測定されるものと同じタイプの標的細胞から生成されるが、一方で抗体が特異的である抗原が無効化されるか(陰性対照)、又は一方でその発現が一定に増強される(陽性対照)。従来技術のアッセイは、陽性対照用に、組換え体ではなく、抗体が特異的である可変量の抗原を発現する野生型標的細胞のみを使用し、陰性対照用に、抗体が特異的である抗原を構成的に発現しない天然細胞を使用する。例えば、CD20アッセイでは、CD20を構成的に発現しないT細胞が陰性対照として使用される。陽性対照については、野生型B細胞が標的として使用される。
【0053】
抗体が特異的である抗原が無効化された組換え標的細胞を使用することによって、T細胞が天然標的細胞と非常に異なり、これらの違いが結果にいくらか影響を及ぼすので、大幅に改善された陰性対照が手に入れられる。例えば、これは、E:T比が変化するにしたがって標的細胞の数が増加するので、異種性エフェクター細胞(E)標的細胞(T)比(E:T比)曲線が完全にゼロになることを防止することができる。この問題は、モノクローナル抗体によって認識される特定の抗原をコードする遺伝子が無効化された組換え標的細胞を使用することによって解決される。
【0054】
本発明のさらに好ましい特色は、WO2018/065401に開示されているように抗体が特異的である抗原の増強された一定の発現を有する組換え標的細胞が、CD80又はCD86などの1種又は複数の共刺激性分子で同時導入され、それによって、ADCC又はADCPアッセイについて得られる、はるかに大きなダイナミックレンジ及び増強された感度を可能にすることである。
【0055】
さらに、共刺激性分子CD80とCD86及び特定の抗原は、野生型細胞の場合のように細胞が増殖するにつれて又は培養条件の機能に応じて変動しない、高い一定レベルで発現し、したがって、改善されたアッセイ精度をもたらす。これによって、測定される候補抗体のADCC又はADCP活性のわずかな差異の検出が可能になる。組換え標的細胞の別の利点は、ヒト対象由来の標的細胞の採取若しくは培養又は研究室における標的細胞系の培養のいずれかよりもはるかに大きな使いやすさのために、凍結、解凍及び使用の型式で提供することができることである。そのような組換え細胞を使用して、正常な個体又はインビトロで培養された細胞から得られた標的細胞中に本質的に存在するであろう変動性を回避し、したがって、野生型細胞は、成熟段階、細胞周期のフェーズ又は培養条件に応じて、目的の抗原の可変的発現を有するであろう。組換え陽性対照の使用は、この変動性を排除する。
【0056】
本発明のさらに好ましい特色は、標準的な技法を使用して別々に凍結したエフェクター細胞のバイアル及び標的細胞のバイアルを含む、解凍及び使用型式である。解凍すると、エフェクター細胞と標的細胞とを最適なE:T比で混合し、解析される漸増濃度の抗体の存在下で、マルチウェル白色側面マイクロタイタープレート中で、適切な時間にわたってインキュベートする。次いで、二重ルシフェラーゼ基質を使用して、ルミノメーターにおいて、抗体誘導性ホタルルシフェラーゼ(FL)活性及び構成的ウミシイタケルシフェラーゼ(RL)発現をマイクロタイタープレートの同じウェル中で順次定量化する。結果は、以下の実施例に示すように、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表され、4-パラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態として提示される。
【0057】
本発明のさら好ましい特色は、リツキシマブなどの特定のモノクローナル抗体に最適なE:T比でエフェクター細胞と標的細胞の両方を含有する単一凍結バイアルであり、その結果、顧客が行わなければならないことは、所望の濃度の薬物を加えること、インキュベートすること、及び読み取りを行うことだけである。特定のモノクローナル抗体に最適なE:T比でエフェクター細胞と陰性対照標的細胞との両方を含有する単一凍結バイアルも供給される。したがって、本発明によれば、E:T比は約24:1から約1:1の範囲である。好ましくは、比は、例えば、約24:1から約2:1、又は約6:1、若しくは約3:1、若しくは例えば約1.5:1、若しくは約1:1である。そのような型式は、キット又は方法の使用者が、特定のモノクローナル抗体に最適なE:T比及び他のアッセイパラメーターを決定する必要性を取り除く。
【0058】
本発明のさらなる実施形態では、CD20に対する抗体のADCC又はADCP活性の定量化を容易にするために、共刺激性分子CD80及び/又はCD86が、CD20を発現する細胞で過剰発現している。本発明の好ましい実施形態では、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86は、WO2018/065401に開示されているもののような、高い一定レベルのCD20発現を示す標的細胞で過剰発現している。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、HER2受容体に対する抗体のADCC又はADCP活性の定量化を容易にするために、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86が、ERBB2を発現する細胞で過剰発現している。本発明の好ましい実施形態では、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86は、WO2018/065401に開示されているもののような、高い一定レベルのERBB2発現を示す標的細胞で過剰発現している。
【0060】
本発明のさらなる実施形態では、EGFR受容体に対する抗体のADCC又はADCP活性の定量化を容易にするために、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86が、EGFRを発現する細胞で過剰発現している。本発明の好ましい実施形態では、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86は、WO2018/065401に開示されているもののような、高い一定レベルのEGFR発現を示す標的細胞で過剰発現している。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、インフリキシマブ又は任意の他の抗TNF-α抗体若しくはFc融合タンパク質、例えばエタネルセプト(Enbrel(登録商標))などのADCC活性の定量化を容易にするために、共刺激性分子CD80、CD86又はCD80及びCD86が、膜結合型TNFα(mTNFα)を発現する、WO2018/065401に開示されているもののような標的細胞で過剰発現しており、これは、TNFαアンタゴニストのADCC活性の定量化が、膜結合型TNFαを発現する標的細胞を必要とするからである。TNFαは最初に膜結合型であるが、その後に、ADAM17(TACE)プロテアーゼによって切断される。したがって、膜結合型の切断不可能なTNFαを発現する細胞系を確立するために、部位特異的変異誘発を使用して、プロテアーゼ切断部位を突然変異させた。しかし、細胞表面上で発現する切断不可能なTNFαは、隣接細胞の表面に存在するTNFαRII受容体に結合し、細胞死をもたらし、永続的細胞系の確立を難しくする。したがって、そのような障害を取り除くために、WO2018/065401に開示されているように、ゲノム編集を使用してTNFαRII受容体を無効化し、陰性対照では、ゲノム編集を使用してTNFαの発現を無効化したが、TNFαRII受容体は無効化しなかった。
【0062】
一態様では、本発明は、操作された細胞における配列番号1の使用に関する。
【0063】
別の態様では、本発明は、生物学的アッセイにおける、本明細書で開示されるような、本発明による細胞の使用に関する。
【0064】
さらに別の態様では、本発明は、診断又は診断法における、本明細書で開示されるような、本発明による細胞の使用に関する。
【0065】
本発明は、アッセイにおける増強されたダイナミックレンジ及び/又は増大した感度のための、アッセイにおける本発明による細胞の使用にも関する。
【0066】
一態様では、本発明は、アッセイにおける増強されたダイナミックレンジ及び/又は増大した感度のための、アッセイにおける本発明による細胞の使用に関し、前記細胞は、抗体のADCC及び/又はADCP活性を評価するために使用される。
【0067】
定義
本明細書で互換的に使用される用語「無効化されている」又は「突然変異している」は、特定の遺伝子をノックアウトして、細胞の表現型を最終的に変化させることを意味する。実際上、該用語は、遺伝子を非機能性にすることを包含することを意味する。一例は、表面細胞受容体の発現を除去するための、ある特定の遺伝子の無効化であり得る。
【0068】
「++細胞」に関する用語「++」は、抗原(薬物標的)が過剰発現している標的細胞を意味することが意図される。この術語は本明細書で「T+」と互換的に使用される。さらに、この表現が、例えばCD20++のように受容体又は抗原と一緒に使用される場合、問題の細胞でCD20が過剰発現していることを意味することが意図される。本発明の範囲を限定することを意図しない一例として、CD20の場合には、WO2018/065401に開示されているように、発現レベルは、野生型CD20+Raji細胞と比較して、CD20++標的細胞でおよそ16倍高まっている。
【0069】
erbB2及びERBB2という用語は互換的であり、例えばトラスツズマブによって認識される抗原を示す。
【0070】
「-/-細胞」に関する用語「-/-」は、抗原(薬物標的)が発現していない、すなわち、問題の抗原/受容体の発現を消すために関連する遺伝子がノックアウトされている(無効化されている)、標的細胞を意味することが意図される。この術語は本明細書で「T-」と互換的に使用される。したがって、細胞は、特定の抗原をコードする遺伝子が非機能的にされているので、抗体によって認識される検出可能レベルの特定の抗原をもはや発現しない。本発明の文脈において、これは対照標的細胞とみなされ得る。
【0071】
用語「E」は、「エフェクター細胞」、特に本発明によるエフェクター細胞を意味することが意図される。用語「エフェクター細胞」は、刺激に活発に応答し、いくらかの変化をもたらす(それを引き起こす)、任意のタイプの任意の細胞を意味することが意図される。そのような一例は、腫瘍細胞を溶解することができる強く生産的な細胞傷害性エフェクター細胞である、サイトカイン誘導性キラー細胞である。さらなる例において、及び本発明の文脈において、エフェクター細胞は、抗体のFc領域に結合するFcガンマ受容体(FcγR又はFCGR)を前記細胞の表面に有する任意の細胞であって、抗体がそれ自体で標的細胞に特異的に結合することができる細胞を意味することが意図される。
【0072】
用語「T」は、「標的細胞」、すなわち、特定のホルモン、抗原、抗体、抗生物質、感作T細胞又は他の物質と反応する特定の受容体/抗原を有する任意の細胞を意味することが意図される。それに関連して、用語「(T+)」は、抗原陽性標的細胞、したがって、その表面で抗原を発現し、抗体の結合を可能にする細胞を意味することが意図される。これに対して、用語「(T-)」は、抗原陰性標的細胞(対照標的細胞)、したがって、その表面で抗原を発現せず、それにより抗体と反応することができない細胞を意味することが意図される。言い換えれば、抗原-/-細胞(又はT-細胞)は、特定の抗原をコードする遺伝子が非機能的にされているので、ADCC活性について試験される抗体によって認識される検出可能レベルの特定の抗原を発現しない。特に、本発明に従って使用される標的細胞は、通常、T+細胞として1つの細胞型を用い、T-細胞として別の細胞型を用いる公知の方法と対照的に、同じタイプの細胞である。言い換えれば、アッセイされる抗体によって認識される特定の抗原を発現しないことを除いては、抗原陽性標的(T+)細胞とすべての点で同一の同じ細胞である対照標的細胞である。前述のように、これは、例えば、CD20発現B細胞標的細胞を使用するリツキシマブ活性の定量化のための対照標的細胞として使用されることが多いT細胞(Tリンパ球)の使用と対照的である。
【実施例】
【0073】
(例1)
共刺激性受容体CD28を過剰発現する、操作されたCD16応答性エフェクター細胞系の確立
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子に機能的に連結された、CD16AのV変異体又はF変異体のいずれかを発現するジャーカット細胞(ATCC(登録商標)TIB-152)に、共刺激性受容体CD28をコードする遺伝子をトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及び抗CD28モノクローナル抗体(ImmunoTools、カタログ番号21270280)と共にFITCヤギ抗マウスIgG(ImmunoTools、カタログ番号22549913)を使用して、陽性クローンを濃縮した。ADCC活性化FL活性がRL活性の構成的発現に対して正規化されることを可能にし、細胞濃度とは関係のない結果を与える、構成的プロモーターの制御下にあるウミシイタケルシフェラーゼ(RL)をコードする遺伝子も細胞にトランスフェクトした。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているCD20を過剰発現するADCC標的細胞及びリツキシマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。安定なサブクローンを単離し、これは、以下の例で例示するように、抗体によって特異的に認識される抗原を発現し、且つCD80及び又はCD86を含む1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する組換え標的細胞と併せて抗体のADCC活性を評価するために使用した場合に、増強されたFLシグナルを発現することを示した。
【0074】
(例2)
共刺激性受容体CD137(4-1BB)を過剰発現する、操作されたCD16応答性エフェクター細胞系の確立
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子に機能的に連結された、CD16AのV変異体又はF変異体のいずれかを発現するジャーカット細胞(ATCC(登録商標)TIB-152)に、共刺激性受容体CD137(4-1BB)をコードする遺伝子をトランスフェクトした。一連の一過的トランスフェクション実験の結果は、WO2018/065401で以前に開示されている、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIIA受容体を発現するジャーカットエフェクター細胞におけるCD137の発現は、ERBB2及び1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて使用した場合に、トラスツズマブを使用するADCCアッセイのFLシグナルを顕著に増大させたことを示す(
図1A)。CD137をコードする遺伝子をWO2018/065401に開示されているエフェクター細胞に安定にトランスフェクトした後、蛍光活性化セルソーティング及びAlexa-488コンジュゲート抗CD137モノクローナル抗体(R& D Systemsカタログ番号FAB838G)を使用して、陽性クローンを濃縮した。ADCC活性化FL活性がRL活性の構成的発現に対して正規化されることを可能にし、細胞濃度とは関係のない結果を与える、構成的プロモーターの制御下にあるウミシイタケルシフェラーゼ(RL)をコードする遺伝子も細胞にトランスフェクトした。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているERBB2を過剰発現するADCC標的細胞及びトラスツズマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。安定なサブクローンを単離し、これは、以下の例で例示するように、抗体によって特異的に認識される抗原を発現し、且つCD80及び又はCD86を含む1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する組換え標的細胞と併せて抗体のADCC活性を評価するために使用した場合に、増強されたFLシグナルを発現することを示した。
【0075】
(例3)
ゼータシグナリング鎖を単独で又は共刺激性受容体CD28と一緒に過剰発現する、操作されたCD16A応答性エフェクター細胞系の確立
FcγRIIIA受容体からのITAMシグナリングを最適化するために、したがって、ADCCアッセイのダイナミックレンジ及び感度を増大させるために、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIIA受容体を発現するジャーカットエフェクター細胞、又は例1に記載されるCD28を過剰発現するエフェクター細胞に、3つのITAM活性化モチーフを含有するCD3に会合した膜貫通ゼータシグナリング分子(CD247)(4)をトランスフェクトした。一連の一過的トランスフェクション実験の結果は、WO2018/065401で以前に開示されているNF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIIA受容体を発現するジャーカットエフェクター細胞における、ゼータ膜貫通型シグナリング分子の単独での(
図1B)、又はCD28との過剰発現は、ERBB2を単独で又はCD86と一緒に過剰発現するHEK293標的細胞と併せて使用した場合に、トラスツズマブを使用するADCCアッセイのFLシグナルを顕著に増大させたことを示す(
図1B)。FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、膜貫通ゼータシグナリング分子(CD247)をWO2018/065401に開示されているエフェクター細胞に安定にトランスフェクトした後、蛍光活性化セルソーティング及びFITC標識化抗CD247モノクローナル抗体(AbCam、カタログ番号H46-968)を使用して、陽性クローンを濃縮した。ADCC活性化FL活性がRL活性の構成的発現に対して正規化されることを可能にし、細胞濃度とは関係のない結果を与える、構成的プロモーターの制御下にあるウミシイタケルシフェラーゼをコードする遺伝子も細胞にトランスフェクトした。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているERBB2を過剰発現するADCC標的細胞及びトラスツズマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。前記細胞の使用によって、抗体によって特異的に認識される抗原を発現し、且つCD80及び/又はCD86を含む1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する組換え標的細胞と併せて抗体のADCC活性を評価するために使用する場合に、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度がもたらされた。
【0076】
(例4)
操作されたCD32応答性エフェクター細胞系の確立
FcγRIIA受容体からのシグナリング、したがって、ADCPアッセイのダイナミックレンジ及び感度を最適化するために、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に対する結合部位を含有する新規な合成キメラプロモーターによって調節されるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIA受容体をジャーカット細胞にトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及びFITC標識化抗CD32モノクローナル抗体(AbCam、カタログ番号ab30356)を使用して、陽性クローンを濃縮した。ADCP活性化FL活性がRL活性の構成的発現に対して正規化されることを可能にし、細胞濃度とは関係のない結果を与える構成的プロモーターの制御下にあるウミシイタケルシフェラーゼ(RL)をコードする遺伝子も細胞にトランスフェクトした。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているCD20を過剰発現する標的細胞及びリツキシマブの存在下でADCP活性について特性評価した。抗体によって特異的に認識される抗原を発現し、且つCD80及び又はCD86を含む1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する組換え標的細胞と併せて、抗体のADCP活性を評価するために前記エフェクター細胞を使用することによって、以下の例で例示するNFATキメラプロモーターの制御下にあるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIAを発現する細胞と比較して、シグナル、ダイナミックレンジ及び感度が増強されたADCPアッセイがもたらされた。
【0077】
(例5)
高い一定レベルのCD20及び1種又は複数の共刺激性分子を細胞表面で発現する、操作された標的細胞系の確立。
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、高い一定レベルのCD20を過剰発現するRaji細胞(ATCC(登録商標)CCL-86)に、共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方をトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及びフィコエリスリン標識化抗CD80(ImmunoTools、カタログ番号21270804)又はFITC標識化抗CD86(ImmunoTools、カタログ番号21480863)モノクローナル抗体を使用して、陽性クローンを濃縮した。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているADCCエフェクター細胞及びリツキシマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特性評価し、増殖させて、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するCD20++標的細胞系を生じさせた。
【0078】
WO2018/065401に開示されているiLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアル及びCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するCD20
++標的細胞のバイアルを標準的な技法を使用して別々に凍結した。解凍すると、エフェクター細胞と標的細胞を3:1のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地+10%ウシ胎仔血清(FBS)中の漸増濃度のリツキシマブの存在下で、96ウェル白色側面マイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で4時間インキュベートした。次いで、Dual Glo(Promega 22920)二重ルシフェラーゼ基質を使用してFL活性を決定し、ルミノメーター(GloMax、Promega)において光放出を定量化し、これを相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。結果は、
図2Aに示すように、4-パラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で提示する。
図2Aに付随する表及び表1は、iLite(登録商標)エフェクター細胞及び所与の標的細胞に対する4PLプロットの主要なパラメーターの概要を述べる。WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現するCD20
++標的細胞を使用した場合、CD80を過剰発現する標的細胞を使用してADCCアッセイの最大FLシグナルは増大したが、CD20を単独で過剰発現する標的細胞の使用と比較して、ダイナミックレンジと感度の両方は低減した。同様に、CD86を単独で又はCD86と一緒に過剰発現させると、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて使用した場合に、ADCCアッセイのダイナミックレンジ及び感度が低減した(
図2A)。
【0079】
WO2018/065401で以前に開示されているCD16AのF変異体を発現するエフェクター細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために共刺激性分子CD80又はCD86を過剰発現するCD20
++標的細胞を使用した場合、最大FLシグナルが増大しないこと及び低減したダイナミックレンジが観察された(
図2B)。さらに、アッセイの感度は、有意に影響を受けなかったか又は低下しなかったかのいずれかであった(
図2B)。
【0080】
CD20を過剰発現するRaji標的細胞における共刺激性分子CD80及びCD86の過剰発現は、CD20を単独で過剰発現するRaji標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、リツキシマブのADCC活性を評価するためのアッセイの感度及びダイナミックレンジを低減させるという観察は、親Raji細胞におけるCD80及びCD86の発現の高い内在レベルとほぼ確実に関係があり(5)、発現レベルをさらにもっと増大させると、エフェクター細胞CD28標的細胞のCD80-CD86相互作用のCTLA-4モジュレーションをほぼ確実に誘導する(5)。
【0081】
CD20を単独で、又はCD80若しくはCD86若しくはCD80とCD86との両方一緒とともに過剰発現する前記Raji標的細胞は、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジ及び感度が顕著に増強されたADCCアッセイをもたらした(
図3A)。しかし、最大FLシグナルは、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を用いて観察されるものよりも低かった(
図3A)。WO2018/065401で以前に開示されているCD16AのF変異体を発現するエフェクター細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために、共刺激性分子CD80又はCD86を過剰発現するCD20
++標的細胞を使用した場合、CD20
++標的細胞を単独で使用して観察されるものと比較して、最大FLシグナルが増大しないこと、並びに低減したダイナミックレンジ及び低減した感度が観察されたが(
図3B)、アッセイのダイナミックレンジと感度の両方は、それにもかかわらず、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用して観察されるものより優れていた(
図3B)。
【0082】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞V変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にCD20を過剰発現するRaji標的細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、FLシグナルが増大したADCCアッセイをもたらした(
図4A、表1)。ADCCアッセイの感度は、わずかに低減したか又は有意に変化しなかったかのいずれかであった(
図4A、表1)が、ADCCアッセイのダイナミックレンジは、未処理の対照試料及びリツキシマブで処理した試料の両方でFLシグナルが全体的に増大したことが理由で、CD20を単独で過剰発現する標的細胞と比較して、CD80又はCD86のいずれかを単独で、又はCD80と一緒に過剰発現する標的細胞を使用する場合に低減した(
図4A、表1)。
【0083】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞F変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD80又はCD86と一緒にCD20を過剰発現するRaji標的細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、CD20を単独で過剰発現する標的細胞の使用と比較して、FLシグナルが増大したADCCアッセイをもたらした(
図4B)。しかし、ADCCアッセイの感度は、CD20を単独で過剰発現する標的細胞の使用と比較して、影響を受けなかったか又はわずかに低減したかのいずれかであった(
図3B及び4B)が、ADCCアッセイのダイナミックレンジは、未処理の対照試料及びリツキシマブで処理した試料の両方でFLシグナルが全体的に増大したことが理由で、CD20を単独で過剰発現する標的細胞と比較して、CD28を過剰発現するエフェクター細胞及びCD80又はCD86のいずれかを過剰発現する標的細胞を使用する場合に低減した(
図3B及び4B)。
【0084】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞V変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD20を単独で、又はCD80若しくはCD86若しくはCD80とCD86との両方と一緒に過剰発現するRaji標的細胞と併せて、リツキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジが増強され、感度が顕著に増強されたADCCアッセイをもたらした(
図3A)。しかし、最大FLシグナルは、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を用いて観察されるものよりも低かった(
図3A)。
【0085】
リツキシマブのADCC活性を評価するために、CD80又はCD86又はCD80及びCD86とともにCD20を過剰発現するRaji標的細胞と一緒に、例1に記載される、CD16AのF変異体を発現し且つCD28を過剰発現するジャーカットエフェクター細胞を使用することによって、CD16AのF変異体を発現するNFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジ及び感度が増大したADCCアッセイがもたらされた(
図3B)。これに対して、アッセイの最大FLシグナルは、CD16AのF変異体を発現するNFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用する場合に、より大きかった(
図5B)。
【0086】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にCD20を過剰発現する組換えRaji標的細胞と併せて、リツキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、前記エフェクター細胞及びCD20を単独で過剰発現する標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0087】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にCD20を過剰発現する組換えRaji標的細胞と併せて、リツキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、NFATキメラプロモーターの制御下にあるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIAを発現するエフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0088】
(例6)
高い一定レベルのerbB2及び1種又は複数の共刺激性分子を細胞表面で発現する、操作された標的細胞系の確立。
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている、高い一定レベルのerbB2を過剰発現するHEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL 1573)に、共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方をトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及びフィコエリスリン標識化抗CD80(ImmunoTools、カタログ番号21270804)又はFITC標識化抗CD86(ImmunoTools、カタログ番号21480863)モノクローナル抗体を使用して、陽性クローンを濃縮した。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているADCCエフェクター細胞及びトラスツズマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特性評価し、増殖させて、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するerbB2++標的細胞系を生じさせた。
【0089】
WO2018/065401に開示されているiLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアル及びCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するerbB2
++標的細胞のバイアルを標準的な技法を使用して別々に凍結した。解凍すると、エフェクター細胞と標的細胞とを4:1のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地+10%ウシ胎仔血清(FBS)中の漸増濃度のトラスツズマブの存在下で、96ウェル白色側面マイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で、6時間インキュベートした。次いで、Dual Glo(Promega 22920)二重ルシフェラーゼ基質を使用してFL活性を決定し、ルミノメーター(GloMax、Promega)において光放出を定量化し、これを相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。結果は、
図6から9に示すように、4-パラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で提示する。図に付随する表及び表2は、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びerbB2
++標的細胞に対する4PLプロットの主要なパラメーターの概要を述べる。
【0090】
erbB2を過剰発現する前記細胞が、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用された場合は、ADCCアッセイの最大FLシグナル及びダイナミックレンジの増大は、erbB2とCD86との両方を過剰発現する標的細胞を使用する場合に最も顕著であった(
図6A)。FLシグナル及びダイナミックレンジの増大は、erbB2を単独で過剰発現する細胞と比較して、erbB2及びCD80又はerbB2及びCD80とCD86とを過剰発現する標的細胞を使用しても観察された(
図A、表1)。共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80及びCD86の過剰発現もアッセイの感度を増大させた。感度の最大の増大は、erbB2及びCD86を過剰発現する標的細胞を使用して観察され、続いてerbB2及びCD80を発現する標的細胞であったが、erbB2及びCD80とCD86との両方を過剰発現する標的細胞をした場合は、感度のわずかな増大しか観察されなかった(
図6A、表2)。
【0091】
WO2018/065401に開示されているCD16AのF変異体を発現するジャーカットエフェクター細胞は、erbB2とCD80との両方又はerbB2及びCD86を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、FLシグナル及びダイナミックレンジが顕著に増大したADCCアッセイをもたらした(
図6B)。ADCCアッセイの感度は、erbB2とCD80との両方を過剰発現する標的細胞を使用しても増大したが、erbB2及びCD86を過剰発現する標的細胞を使用する場合に低下した(
図6B)。
【0092】
erbB2を単独で、又はCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方一緒とともに過剰発現する、前記HEK293標的細胞は、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型SK-BR-3標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジ及び感度が顕著に増強されたADCCアッセイをもたらした(
図7A)。最大FLシグナルは、erbB2及びCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現する標的細胞が、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価することになった場合にも、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型Raji標的細胞を用いて観察されたものと比較して、増大した(
図7A)。
【0093】
WO2018/065401で以前に開示されているADCC F変異体エフェクター細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために、erbB2を単独で、又はCD80若しくはCD86と一緒に過剰発現するHEK293標的細胞を使用することによって、CD16AのF変異体を発現するNFAT応答性エフェクター細胞及び野生型SK-BR-3標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、FLシグナル及びダイナミックレンジが顕著に増強されたADCCアッセイがもたらされた(
図7B)。ADCCアッセイの感度は、erbB2とCD80との両方を過剰発現する標的細胞を使用しても増大したが、erbB2とCD86の両方を発現する標的細胞を使用する場合には増大しなかった(
図7B)。
【0094】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞V変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD80又はCD86又はCD80とCD86とを一緒にerbB2を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、CD28を過剰発現するジャーカットエフェクター細胞及びerbB2を単独で過剰発現する標的細胞の使用と比較して、FLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度が増大したADCCアッセイをもたらした(
図8A、表2)。
【0095】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞F変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD86と一緒にerbB2を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、FLシグナル及びダイナミックレンジが増大したが、感度が低減したADCCアッセイをもたらした(
図8B)。
【0096】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞V変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、
図9Aに示すように、CD86と一緒にerbB2を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、CD16AのV変異体を発現するNFAT応答性エフェクター細胞及び野生型SK-BR-3標的細胞を使用するADCCと比較して、FLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度が増大したADCCアッセイをもたらした。
【0097】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞F変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD86と一緒にerbB2を過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、CD16AのF変異体を発現するNFAT応答性エフェクター細胞及び野生型SK-BR-3標的細胞を使用するADCCと比較して、FLシグナル及びダイナミックレンジが増大したが、感度が低減したADCCアッセイをもたらした(
図9B)。
【0098】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にerbB2を過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、該エフェクター細胞及び標的ERBB2を単独で過剰発現する細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0099】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にerbB2を過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、トラスツズマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、NFATキメラプロモーターの制御下にあるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIAを発現するエフェクター細胞及び野生型SK-BR-3標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0100】
(例7)
高い一定レベルのEGFR及び1種又は複数の共刺激性分子を細胞表面で発現する、操作された標的細胞系の確立。
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている高い一定レベルのEGFRを過剰発現するHEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL 1573)に共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方をトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及びフィコエリスリン標識化抗CD80(ImmunoTools、カタログ番号21270804)又はFITC標識化抗CD86(ImmunoTools、カタログ番号21480863)モノクローナル抗体を使用して、陽性クローンを濃縮した。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているADCCエフェクター細胞及びセツキシマブの存在下でADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特性評価し、増殖させて、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するEGFR
++標的細胞系を生じさせた。WO2018/065401に開示されているiLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアル及びCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するEGFR
++標的細胞のバイアルを標準的な技法を使用して別々に凍結した。解凍すると、エフェクター細胞と標的細胞とを4:1のE:T比で混合し、96ウェル白色側面マイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で、RPMI1640培養培地+10%ウシ胎仔血清(FBS)中の漸増濃度のセツキシマブの存在下で、6時間インキュベートした。次いで、Dual Glo(Promega 22920)二重ルシフェラーゼ基質を使用してFL活性を決定し、ルミノメーター(GloMax、Promega)において光放出を定量化し、これを相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。結果は、
図10から13に示すように、4-パラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態で提示する。図に付随する表及び表3は、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びEGFR
++標的細胞に対する4PLプロットの主要なパラメーターの概要を述べる。
【0101】
WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、前記標的細胞を使用した場合に、ADCCアッセイの最大FLシグナル及びダイナミックレンジは、CD80とCD86との両方を過剰発現する標的細胞を使用する場合に最も顕著であった。FLシグナル及びダイナミックレンジの増大は、EGFRを単独で過剰発現する細胞と比較して、CD80又はCD86を過剰発現する標的細胞を使用しても観察された(
図10A、表3)。共刺激性分子CD80又はCD86の過剰発現もアッセイの感度を増大させたが、CD80とCD86との両方一緒の過剰発現は、アッセイの感度を低下させた(
図10A、表3)。
【0102】
WO2018/065401で以前に開示されているCD16AのF変異体を発現するADCCエフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、EGFRとCD86との両方を過剰発現する標的細胞を使用することによって、EGFRを単独で過剰発現する標的細胞の使用と比較して、FLシグナル及びダイナミックレンジが増大したADCCアッセイがもたらされたが、アッセイの感度は有意に変化しなかった(
図10B)。
【0103】
WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、CD80、CD86又はCD80とCD86との両方一緒とともにEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞を使用することによって、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジが顕著に増強され、感度が増強されたADCCアッセイがもたらされた。これに対して、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を用いて観察される最大FLシグナルは、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞並びにEGFR及び1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する標的細胞を用いて観察されるものより大きかった(
図11A、表3)。
【0104】
WO2018/065401で以前に開示されているCD16AのF変異体を発現するADCCエフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、CD86と一緒にEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞を使用することによって、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、感度が増強されたが、ダイナミックレンジは変化しなかったADCCアッセイがもたらされた。これに対して、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を用いて観察される最大FLシグナルは、WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞並びにEGFR及び1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する標的細胞を用いて観察されるものより大きかった(
図11B)。
【0105】
CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、例1に記載される、CD16AのV変異体を発現し且つ共刺激性受容体CD28を過剰発現する組換えジャーカットエフェクター細胞を使用することによって、WO2018/065401に開示されている内在レベルのCD28を発現するジャーカットエフェクター細胞及びEGFRを単独で過剰発現する標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、FLシグナル及びダイナミックレンジが顕著に増大したADCCアッセイがもたらされた(
図11A及び12A、表3)。ADCCアッセイの感度も、CD80又はCD86を過剰発現する標的細胞を使用する場合に、内在レベルのCD28を発現するエフェクター細胞の使用と比較して増大したが、EGFR及びCD80とCD86との両方を過剰発現する標的細胞を使用する場合は、ほんのわずかしか増大しなかった(
図12A、表3)。
【0106】
CD86と一緒にEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、例1に記載される、CD16AのF変異体を発現し且つ共刺激性受容体CD28を過剰発現するジャーカットエフェクター細胞を使用することによって、EGFRを単独で過剰発現する標的細胞と比較して、FLシグナルが増大し、ダイナミックレンジが増大し、感度が増大したADCCアッセイがもたらされた(
図10B&12B)。
【0107】
例1に記載される、共刺激性受容体CD28を過剰発現するADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、CD86又はCD80とCD86との両方と一緒にEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞を使用することによって、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、ダイナミックレンジが増強されたADCCアッセイがもたらされた。アッセイの感度は、EGFRとCD80、CD86又はCD80とCD86との両方との両方を過剰発現する標的細胞を使用しても増大した(
図13A)。これに対して、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を用いて観察される最大FLシグナルは、EGFR及び1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現するADCC V変異体エフェクター細胞を用いて観察されるものより大きかった(
図13A、表3)。
【0108】
例1に記載される、CD16AのF変異体を発現し且つCD28を過剰発現するADCCエフェクター細胞と併せて、セツキシマブのADCC活性を評価するために、CD86と一緒にEGFRを過剰発現するHEK293標的細胞を使用することによって、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を使用するADCCアッセイと比較して、感度が増大したが、ダイナミックレンジは変化しなかったADCCアッセイがもたらされた。これに対して、NFAT応答性エフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を用いて観察される最大FLシグナルは、例1に記載されるCD28を過剰発現するADCC F変異体エフェクター細胞及びEGFR及びCD86を過剰発現する標的細胞を用いて観察されたものより大きかった(
図11B)。
【0109】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にEGFRを過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、セツキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、前記エフェクター細胞及びEGFRを単独で過剰発現する標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0110】
例3に記載されている、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にEGFRを過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、セツキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、NFATキメラプロモーターの制御下にあるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIAを発現するエフェクター細胞及び野生型A431標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0111】
(例8)
高い一定レベルのmTNFα及び1種又は複数の共刺激性分子を細胞表面で発現する、操作された標的細胞系の確立。
FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega カタログ番号E2311)を使用して、WO2018/065401で以前に開示されている高い一定レベルの膜結合型の切断不可能なTNFα(mTNFα)を過剰発現するHEK293細胞(ATCC(登録商標)CRL 1573)に共刺激性分子CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方をトランスフェクトした。蛍光活性化セルソーティング及びフィコエリスリン標識化抗CD80(ImmunoTools、カタログ番号21270804)又はFITC標識化抗CD86(ImmunoTools、カタログ番号21480863)モノクローナル抗体を使用して、陽性クローンを濃縮した。安定なクローンを単離し、WO2018/065401で以前に開示されているADCCエフェクター細胞及びインフリキシマブの存在下で、ADCC活性について特性評価し、次いでサブクローニングした。適切なサブクローンを単離し、特性評価し、増殖させて、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するmTNFα標的細胞系を生じさせた。WO2018/065401に開示されているiLite(登録商標)エフェクター細胞のバイアル及びCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現するmTNFα
++標的細胞のバイアルを標準的な技法を使用して別々に凍結した。解凍すると、エフェクター細胞と標的細胞とを6:1のE:T比で混合し、RPMI 1640培養培地+10%ウシ胎仔血清(FBS)中の漸増濃度のインフリキシマブの存在下で、96ウェル白色側面マイクロタイタープレート(Perkin Elmer 6005181)中で、6時間インキュベートした。次いで、Dual Glo二重ルシフェラーゼ基質を使用してFL活性を決定し、ルミノメーターにおいて光放出を定量化し、これを相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として表した。結果は、
図6から9に示すように、4-パラメトリックロジスティック(4PL)プロットの形態として提示する。図に付随する表及び表4は、iLite(登録商標)エフェクター細胞及びmTNFα
++標的細胞に対する4PLプロットの主要なパラメーターの概要を述べる。
【0112】
WO2018/065401で以前に開示されているADCC V変異体エフェクター細胞と併せて、インフリキシマブのADCC活性を評価するために、前記標的細胞を使用した場合は、ADCCアッセイの最大FLシグナル及びダイナミックレンジは、CD80及びCD86を過剰発現する標的細胞を使用する場合に最も顕著であった。FLシグナル及びダイナミックレンジの増大は、mTNFαを単独で過剰発現する細胞と比較して、CD80又はCD86を過剰発現する標的細胞を使用しても観察された(
図14A、表4)。共刺激性分子CD80の過剰発現は、アッセイの感度も増大させたが、CD86又はCD80及びCD86同時の過剰発現はこれを増大させなかった(
図14A、表4)。
【0113】
WO2018/065401で以前に開示されているCD16AのF変異体を発現するADCCエフェクター細胞と併せて、インフリキシマブのADCC活性を評価するために、mTNFαを発現し、且つ1種又は複数の共刺激性分子を過剰発現する標的細胞を使用することによって、FLシグナル及びダイナミックレンジが増大したADCCアッセイがもたらされ、この増大は、CD86を過剰発現する標的細胞を使用する場合に最も顕著であった(
図14B)。FLシグナル及びダイナミックレンジの増大は、mTNFαを単独で過剰発現する細胞と比較して、CD80を過剰発現する標的細胞を使用しても観察された(
図14B)。共刺激性分子CD80の過剰発現は、アッセイの感度をわずかに低下させた。感度の低下は、mTNFαとCD86との両方を過剰発現する標的細胞でより顕著であった(
図14B)。
【0114】
例1に記載される組換えジャーカットエフェクター細胞V変異体における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にmTNFαを発現するHEK293標的細胞と併せて、インフリキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、共刺激性分子CD80を過剰発現する標的細胞の場合は、FLシグナルが増大し、感度がわずかに増大したADCCアッセイをもたらしたが、CD86又はCD80とCD86との両方と一緒にmTNFαを過剰発現する標的細胞を使用した場合は、アッセイの感度が低減した(
図17A、表4)。ADCCアッセイのダイナミックレンジは、未処理の対照試料とインフリキシマブで処理した試料との両方でFLシグナルが全体的に増大したことが理由で、CD80、CD86又はCD80とCD86とを過剰発現する標的細胞を使用する場合に、内在レベルのCD28を発現するエフェクター細胞の使用と比較して、mTNFαとCD80との両方を発現する標的細胞を使用した場合に有意に影響を受けなかったか又はmTNFα及びCD86若しくはmTNFα及びCD80とCD86との両方を発現する標的細胞を使用した場合に低下したかのいずれかであった(
図17、表4)。
【0115】
例1に記載される、CD16AのF変異体を発現する組換えジャーカットエフェクター細胞における共刺激性受容体CD28の過剰発現は、CD80又はCD86と一緒にmTNFαを発現するHEK293標的細胞と併せて、インフリキシマブのADCC活性を評価するために使用した場合に、mTNFαを単独で発現する標的細胞の使用と比較して、FLシグナルが増大したADCCアッセイをもたらした(
図17B)。これに対して、アッセイの感度は有意に影響を受けず、ADCCアッセイのダイナミックレンジは、未処理の対照試料とインフリキシマブで処理した試料との両方でFLシグナルが全体的に増大したことが理由で、CD86を過剰発現する標的細胞使用する場合に、内在レベルのCD28を発現するエフェクター細胞の使用と比較して、低下した(
図17B)。
【0116】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、mTNFαを発現し、且つCD80又はCD86又はCD80とCD86との両方を過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、インフリキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、前記エフェクター細胞及びmTNFαを単独で過剰発現する標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0117】
例4に記載される、CD32AのH-131変異体を発現するエフェクター細胞は、CD80又はCD86又はCD80とCD86との両方と一緒にmTNFαを過剰発現する組換えHEK293標的細胞と併せて、インフリキシマブのADCP活性を評価するために使用した場合に、NFATキメラプロモーターの制御下にあるFLレポーター遺伝子に機能的に連結されたFcγRIIAを発現するエフェクター細胞及びmTNFα標的細胞を使用するADCPアッセイと比較して、増強されたFLシグナル、ダイナミックレンジ及び感度を示した。
【0118】
特定の実施形態では、本発明は以下の項目にも関する。
項目:
1.NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子又は構築物を有するエフェクター細胞。
2.抗体が特異的である内在性標的が無効化されている組換え標的細胞。
3.抗体が特異的である標的の発現が増強されている組換え標的細胞。
4.NF-AT、AP1、NFkB、CREB及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子又は構築物を有するエフェクター細胞、
抗体が特異的である内在性標的が無効化されている組換え標的細胞(従属項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3及びHEK293)、EGFR)、
及び
抗体が特異的である標的の発現が増強されている組換え標的細胞。(従属項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3&HEK293)、EGFR)
を含む、キット。
【0119】
特定の実施形態では、本発明は以下の条項にも関する。
条項:
1.NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子又は構築物を有するエフェクター細胞。
2.抗体が特異的である内在性標的が無効化されている組換え標的細胞。
3.抗体が特異的である標的の発現が増強されている組換え標的細胞。
4.配列番号1に開示されているヌクレオチド配列を含む、NF-AT、AP1、NFkB及びSTAT5に結合する制御配列。
5.NF-AT、AP1、NFkB、CREB及びSTAT5によって活性化される組換えレポーター遺伝子又は構築物を有するエフェクター細胞、
抗体が特異的である内在性標的が無効化されている組換え標的細胞(従属項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3及びHEK293)、EGFR)、
及び
抗体が特異的である標的の発現が増強されている組換え標的細胞(従属項、CD20、mTNFα、erbB2(SKBR3及びHEK293)、EGFR)
を含む、キット。
【0120】
さらに、さらに特定の実施形態では、本発明は以下の注記にも関する。
注記:
1.CD28をコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
2.CD137をコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
3.CD247をコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
4.CD80をコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
5.CD86をコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
6.CD137Lをコードするポリヌクレオチドを含むベクター構築物。
7.ポリヌクレオチド配列番号1を含むベクター構築物。
8.プラスミド又はウイルスベクターである、条項1から7までに記載のベクター。
9.注記1から8までのいずれかに記載のベクターの1つ又は複数を含む細胞。
10.哺乳動物細胞である、条項9に記載の細胞。
11.前記ベクターがエピソームであるか又は前記細胞のゲノム中に組み込まれている、注記1から8までに記載の細胞。
12.第1のレポータータンパク質と異なる第2のレポータータンパク質をさらに発現する、注記1から11までのいずれかに記載の細胞。
13.ジャーカット、Molt4、Raji、SKBR3、NK92、KHYG-1、HEK293細胞DT-40又はMSB-1である、注記1から12までのいずれかに記載の細胞。
13.i) 注記9から13までのいずれかに記載の細胞、
ii) 抗体が特異的である内在性標的が無効化されている(突然変異している)細胞、
及び
iii) 抗体が特異的である標的の発現が増強されている細胞
を含む、キット。
14.ii)の標的細胞において無効化されている標的が、CD20、mTNFα、erbB2、EGFRの1つ又は複数を含む、注記14に記載のキット。
15.iii)の標的細胞において増強されている標的が、CD20、mTNFα、erbB2、EGFRの1つ又は複数を含む、注記15に記載のキット。
16.2つのバイアルを含む、注記14から16までのいずれかに記載のキット。
17.i)及びiii)の細胞が最適なE:T比で1つの同じバイアル中に存在する、注記14から16までのいずれかに記載のキット。
18.i)の細胞とiii)の標的細胞との間の比(E:T比)が約24:1から約2:1の範囲、又は例えば約6:1、若しくは例えば約3:1、若しくは例えば約1.5:1である、注記14から16までのいずれかに記載のキット。
【0121】
さらに別の態様では、本発明は以下のパラグラフに関する。
1.1種又は複数の共刺激性分子をコードするベクター構築物を含む細胞。
2.ベクター構築物が、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列の少なくとも約70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、パラグラフ1に記載の細胞。
3.ベクター構築物が共刺激性分子CD28をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、パラグラフ1に記載の細胞。
4.ベクター構築物が共刺激性分子CD137(4-1BB)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、パラグラフ1に記載の細胞。
5.ベクター構築物が共刺激性分子CD247(T3ゼータ鎖)をコードするポリヌクレオチドを含む、パラグラフ1に記載の細胞。
6.ベクター構築物が共刺激性分子CD278(ICOS)をコードするポリヌクレオチドを含む、パラグラフ1に記載の細胞。
7.共刺激性分子が、CD28、CD137L(4-1BB)及びICOSの1つ又は複数から選択される受容体である、パラグラフ1から6までのいずれかに記載の細胞。
8.1種又は複数の共刺激性分子が細胞で構成的に発現しているか又は過剰発現している、パラグラフ1から7までのいずれかに記載の細胞。
9.CD16A又はCD32をさらに発現する、パラグラフ1から8までのいずれかに記載の細胞。
10.CTLA-4(CD152)が特に無効化されている、パラグラフ1から9までのいずれかに記載の細胞。
11.初代細胞又は細胞系である、パラグラフ1から10までのいずれかに記載の細胞。
12.例えば、ジャーカット、Molt4、Raji、SKBR3、NK92、KHYG-1、HEK293細胞DT-40又はMSB-1などの動物細胞系である、パラグラフ1から11までのいずれかに記載の細胞。
13.前記ベクターがエピソームであるか又は前記細胞のゲノム中に組み込まれている、パラグラフ1から12までのいずれかに記載の細胞。
14.第1のレポータータンパク質をさらに発現する、パラグラフ1から13までのいずれかに記載の細胞。
15.第1のレポータータンパク質が、例えばルシフェラーゼなどの酵素又は蛍光タンパク質である、パラグラフ1から14までのいずれかに記載の細胞。
16.第1のレポータータンパク質と異なる第2のレポータータンパク質をさらに発現する、パラグラフ1から15までのいずれかに記載の細胞。
17.抗体又はFc融合タンパク質によって認識される抗原をさらに発現する、パラグラフ1から16までのいずれかに記載の細胞。
18.抗体又はFc融合タンパク質によって認識される抗原をさらに過剰発現する、パラグラフ1から17までのいずれかに記載の細胞。
19.i) 抗体のFc領域に結合し、1種若しくは複数の共刺激性分子を発現するか又は1種若しくは複数の共刺激性分子を過剰発現することができる、パラグラフ1から18までのいずれかに記載のエフェクター細胞(E)、
ii) 前記抗体が特異的である内在性標的/抗原が無効化されている(突然変異している)標的細胞(T-)であって、その結果、標的/抗原が細胞によって発現されないか又は非機能的形態で発現される、標的細胞(T-)、及び
iii) 前記抗体が特異的である標的の発現が、CD80、CD86、CD137L及び(CD278L)ICOSLを含む1種又は複数の共刺激性分子と一緒に増強されているか又は過剰発現している、標的細胞(T+)
を含む、キット。
20.ii)の細胞及び細胞iii)が、ii)の細胞がアッセイされる抗体又は薬物によって認識される特定の抗原を発現しないことを除いては、すべての点で同一の全く同じ細胞である、パラグラフ19に記載のキット。
21.標的/抗原がCD20、mTNFα、erbB2、EGFRの1つ又は複数である、パラグラフ19から20までのいずれか1つに記載のキット。
22.2つのバイアルを含み、i)及びiii)の細胞が最適なE:T比で1つの同じバイアル中に存在する、パラグラフ19から21までのいずれかに記載のキット。
23.i)のエフェクター細胞とiii)の標的細胞との間の比(E:T比)が、約24:1から約2:1の範囲、又は約6:1、若しくは約3:1、若しくは約1.5:1である、パラグラフ19から22までのいずれかに記載のキット。
24.治療用抗体の抗体依存性細胞介在細胞傷害(ADCC)活性を定量化するための方法であって、
a) 抗体を含有する得られた試料を、エフェクター細胞i)及びパラグラフ19のiii)に記載の標的細胞iii)と接触させるステップ、
b) エフェクター細胞i)及び薬物標的が無効化されたパラグラフ19のii)に記載の細胞ii)の存在下で得られたシグナルをパラグラフ1から18までのいずれか1つに記載のエフェクター細胞i)及びパラグラフ19のiii)に記載の標的細胞iii)の存在下で得られたシグナルから引くステップ、
c) a)及びb)で測定されたシグナル相関に基づいてADCC活性を決定するステップ
を含む、方法。
25.治療用抗体の抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)活性を定量化するための方法であって、
a) 抗体を含有する得られた試料をエフェクター細胞i)及びパラグラフ19のiii)に記載の標的細胞iii)と接触させるステップ、
b) エフェクター細胞i)及び薬物標的が無効化されたパラグラフ19のii)に記載の細胞ii)の存在下で得られたシグナルをパラグラフ1から18までのいずれか1つに記載のエフェクター細胞i)及びパラグラフ19のiii)に記載の標的細胞iii)の存在下で得られたシグナルから引くステップ、
c) a)及びb)で測定されたシグナル相関に基づいてADCP活性を決定するステップ
を含む、方法。
【0122】
【配列表フリーテキスト】
【0123】
<223>人工的
【配列表】