IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図1
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図2
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図3
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図4
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図5
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図6
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図7
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図8
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図9
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図10
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図11
  • -流体解析装置、方法およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】流体解析装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550443
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2019038704
(87)【国際公開番号】W WO2020075571
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018191129
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広貴
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-121735(JP,A)
【文献】特表2016-513530(JP,A)
【文献】特開2015-097759(JP,A)
【文献】特開2015-008775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 5/02-5/03
A61B 6/00-6/14
A61B 8/00-8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出する第1解析部と、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出する第2解析部と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出する一致度導出部と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する表示制御部とを備えた流体解析装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記一致度が小さいほど前記他方の結果を強調表示する請求項1に記載の流体解析装置。
【請求項3】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出する第1解析部と、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出する第2解析部と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出する一致度導出部と、
前記一致度が予め定められたしきい値以上となる位置において、前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度が前記しきい値未満となる位置において、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する表示制御部とを備えた流体解析装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、記一致度に応じて、表示された前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方の表示態様を変更する請求項1から3のいずれか1項に記載の流体解析装置。
【請求項5】
前記画像は、3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって前記被写体を撮影することにより取得された3次元画像であり、
前記第1解析部は、前記3次元画像を解析することにより取得される前記流体の流速ベクトルを、前記第1の結果として導出する請求項1からのいずれか1項に記載の流体解析装置。
【請求項6】
前記第2解析部は、数値流体力学を用いた解析により前記流体の流れをシミュレーションすることにより取得される前記流体の流速ベクトルを、前記第2の結果として導出する請求項1からのいずれか1項に記載の流体解析装置。
【請求項7】
前記構造物が血管であり、前記流体が血液である請求項1からのいずれか1項に記載の流体解析装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記表示部に前記構造物の形態画像を表示し、該形態画像上において、前記一致度に応じて前記第1の結果および前記第2の結果の少なくとも一方を表示する請求項1からのいずれか1項に記載の流体解析装置。
【請求項9】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出し、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出し、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出し、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する流体解析方法。
【請求項10】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出し、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出し、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出し、
前記一致度が予め定められたしきい値以上となる位置において、前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度が前記しきい値未満となる位置において、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する流体解析方法。
【請求項11】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出する手順と、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出する手順と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出する手順と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する手順とをコンピュータに実行させる流体解析プログラム。
【請求項12】
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、前記構造物内の各位置における前記流体の流れに関する第1の結果を導出する手順と、
前記構造物内の各位置における前記流体の流れをシミュレーションして、前記流体の流れに関する第2の結果を導出する手順と、
前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を基準とした、前記第1の結果と前記第2の結果との対応する位置における一致度を導出する手順と、
前記一致度が予め定められたしきい値以上となる位置において、前記第1の結果および前記第2の結果のいずれか一方を表示部に表示し、前記一致度が前記しきい値未満となる位置において、前記一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに前記表示部に表示する手順とをコンピュータに実行させる流体解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の流れを解析して表示する流体解析装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心臓および脳等を撮影した医用画像を用いて、血管内の血流を解析することが行われている。このような医用画像を用いた血流解析方法としては、例えば、実際の血流を4次元的に測定する4Dフローの手法が用いられている。4Dフローは、例えば3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって撮影された3次元のMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像を用いて、ボクセル毎、ピクセル毎または領域毎に流速ベクトルを導出し、これを時間の流れと合わせて動的に表示する手法である。また、数値流体力学を用いた血流解析(CFD:Computational Fluid Dynamics)により、血液の流れをシミュレーションにより把握する手法も用いられている。
【0003】
ところで、4Dフローは実際の血流が表現されたMRI画像に基づいて導出されるが、空間分解能および時間分解能に制約がある。また、乱流等が起こっている部分は血流が過小評価されるため、その部分においてはMRI画像に速度情報が現れてこない場合がある。一方、CFDは空間分解能および時間分解能を任意に設定可能であるが、あくまでもシミュレーションであるため、その結果が妥当であるかを十分に見極める必要がある。
【0004】
このため、4Dフローにより導出された結果である流速ベクトルと、CFDにより導出された結果である流速ベクトルとを組み合わせて、血流を分析する手法が提案されている(特開2016-135265号公報参照)。また、4Dフローにより導出された結果と、CFDにより導出された結果とを表示して、ユーザに確認させるための手法も提案されている(van Ooij P, et al., "3D cine phase-contrast MRI at 3T in intracranial aneurysms compared with patient-specific computational fluid dynamics", AJNR Am J Neuroradiol. 2013 Sep;34(9):1785-91)。特開2016-135265号公報およびOoijPらの文献に記載された手法によれば、4Dフローにより導出された結果と、CFDにより取得された結果との双方を用いて、両者の長所を生かしつつ、診断および治療を行うことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、OoijPらの文献に記載された手法は、4Dフローのように画像を解析することにより導出された結果と、CFDのようにシミュレーションにより導出された結果とが別々に表示される。このため、画像を解析することにより導出された結果とシミュレーションにより導出された結果とを同時に確認することができず、両者の相違が分かりにくい。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、画像を解析することにより導出された結果とシミュレーションにより導出された結果との相違を容易に認識できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による流体解析装置は、内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、構造物内の各位置における流体の流れに関する第1の結果を導出する第1解析部と、
構造物内の各位置における流体の流れをシミュレーションして、流体の流れに関する第2の結果を導出する第2解析部と、
【0008】
第1の結果および第2の結果のいずれか一方を基準とした、第1の結果と第2の結果との対応する位置における一致度を導出する一致度導出部と、
一致度に応じて第1の結果および第2の結果の少なくとも一方を表示部に表示する表示制御部とを備える。
【0009】
「各位置」とは画像のピクセル位置およびボクセル位置のみならず、複数ピクセル(ボクセル)からなる領域の位置をも含む。
【0010】
「流体の流れに関する結果」としては、流速ベクトル、流体の圧力、壁面せん断応力(WSS(Wall Shear Stress))、渦度およびヘリシティ等が挙げられる。
【0011】
なお、本開示による流体解析装置においては、表示制御部は、第1の結果および第2の結果のいずれか一方を表示し、一致度に応じて、表示された第1の結果および第2の結果のいずれか一方の表示態様を変更するものであってもよい。
【0012】
また、本開示による流体解析装置においては、表示制御部は、第1の結果および第2の結果のいずれか一方を表示し、一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに表示するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による流体解析装置においては、表示制御部は、一致度が小さいほど他方の結果を強調表示するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による流体解析装置においては、表示制御部は、一致度が予め定められたしきい値以上となる位置において、第1の結果および第2の結果のいずれか一方を表示し、一致度がしきい値未満となる位置において、一致度に応じた表示態様により、他方の結果をさらに表示するものであってもよい。
【0015】
また、本開示による流体解析装置においては、画像は、3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって被写体を撮影することにより取得された3次元画像であり、
第1解析部は、3次元画像を解析することにより取得される流体の流速ベクトルを、第1の結果として導出するものであってもよい。
【0016】
また、本開示による流体解析装置においては、第2解析部は、数値流体力学を用いた解析により流体の流れをシミュレーションすることにより取得される流体の流速ベクトルを、第2の結果として導出するものであってもよい。
【0017】
また、本開示による流体解析装置においては、構造物が血管であり、流体が血液であってもよい。
【0018】
また、本開示による流体解析装置においては、表示制御部は、表示部に構造物の形態画像を表示し、形態画像上において、一致度に応じて第1の結果および第2の結果の少なくとも一方を表示するものであってもよい。
【0019】
本開示による流体解析方法は、内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、構造物内の各位置における流体の流れに関する第1の結果を導出し、
構造物内の各位置における流体の流れをシミュレーションして、流体の流れに関する第2の結果を導出し、
第1の結果および第2の結果のいずれか一方を基準とした、第1の結果と第2の結果との対応する位置における一致度を導出し、
一致度に応じて第1の結果および第2の結果の少なくとも一方を表示部に表示する。
【0020】
なお、本開示による流体解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0021】
本開示による他の流体解析装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
内部に流体が流れる構造物を含む被写体を撮影することにより取得した画像を解析して、構造物内の各位置における流体の流れに関する第1の結果を導出し、
構造物内の各位置における流体の流れをシミュレーションして、流体の流れに関する第2の結果を導出し、
第1の結果および第2の結果のいずれか一方を基準とした、第1の結果と第2の結果との対応する位置における一致度を導出し、
一致度に応じて第1の結果および第2の結果の少なくとも一方を表示部に表示する処理を実行する。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、画像を解析することにより導出された結果とシミュレーションにより導出された結果との相違を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態による流体解析装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図
図2】本開示の実施形態による流体解析装置の概略構成を示す図
図3】3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって撮影された第1の3次元画像を示す図
図4】同一の血管領域における第1の結果および第2の結果を示す図
図5】補間演算により第2の結果と空間分解能を一致させた第1の結果を示す図
図6】一致度に応じた第1の結果および第2の結果の少なくとも一方の表示画面を示す図
図7】血管の形態画像において、第1の結果および第2の結果の少なくとも一方が表示された状態を示す図
図8】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図9】一致度に応じた第1の結果および第2の結果の少なくとも一方の表示画面の他の例を示す図
図10】一致度に応じた第1の結果および第2の結果の少なくとも一方の表示画面の他の例を示す図
図11】一致度に応じた第1の結果および第2の結果の少なくとも一方の表示画面の他の例を示す図
図12】一致度に応じた第1の結果および第2の結果の少なくとも一方の表示画面の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施形態による流体解析装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図である。図1に示すように、診断支援システムでは、本実施形態による流体解析装置1、3次元画像撮影装置2、および画像保管サーバ3が、ネットワーク4を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0025】
3次元画像撮影装置2は、被検体の診断対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography)装置等である。3次元画像撮影装置2により生成された3次元画像は画像保管サーバ3に送信され、保存される。なお、本実施形態では、患者の心臓(本開示の被写体に相当する)の3次元画像を取得する場合について説明するが、これに限らず、肺、肝臓および頭部等その他の臓器でもよい。とくに、本実施形態においては、複数種類の3次元画像を取得するものとする。具体的には、MRI装置において3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって被写体を撮影したMRI画像を第1の3次元画像G1として取得し、CT装置において造影剤を用いて被写体を撮影した造影CT画像を第2の3次元画像G2として取得するものとする。しかしながら、取得される3次元画像の種類はこれらに限定されるものではない。また、心臓の血管が本開示の構造物に、血液が本開示の流体にそれぞれ対応する。
【0026】
画像保管サーバ3は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ3は、有線あるいは無線のネットワーク4を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には3次元画像撮影装置2で生成された3次元画像の画像データを含む各種データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式およびネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0027】
流体解析装置1は、1台のコンピュータに、本開示の流体解析プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションまたはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。流体解析プログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。または、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、もしくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0028】
図2は、コンピュータに流体解析プログラムをインストールすることにより実現される流体解析装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、流体解析装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12およびストレージ13を備えている。また、流体解析装置1には、液晶ディスプレイ等の表示部14、並びにキーボードおよびマウス等の入力部15が接続されている。
【0029】
ストレージ13は、ハードディスクドライブ等からなり、ネットワーク4を経由して画像保管サーバ3から取得した3次元画像、並びに処理に必要な情報を含む各種情報が記憶されている。
【0030】
また、メモリ12には、流体解析プログラムが記憶されている。流体解析プログラムは、CPU11に実行させる処理として、被写体の第1および第2の3次元画像G1,G2を取得する画像取得処理、第1の3次元画像G1を解析して、血管内の各位置における血液の流れに関する第1の結果を導出する第1解析処理、第2の3次元画像G2を用いて血管内の各位置における血液の流れをシミュレーションして、血液の流れに関する第2の結果を導出する第2解析処理、第1の結果および第2の結果のいずれか一方を基準とした、第1の結果と第2の結果との対応する位置における一致度を導出する一致度導出処理、並びに一致度に応じて第1の結果および第2の結果の少なくとも一方を表示部14に表示する表示制御処理を規定する。
【0031】
そして、CPU11がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンピュータは、画像取得部20、第1解析部21、第2解析部22、一致度導出部23および表示制御部24として機能する。
【0032】
画像取得部20は、第1および第2の3次元画像G1,G2を画像保管サーバ3から取得する。なお、第1および第2の3次元画像G1,G2が既にストレージ13に記憶されている場合には、画像取得部20は、ストレージ13から第1および第2の3次元画像G1,G2を取得するようにしてもよい。
【0033】
第1解析部21は、第1の3次元画像G1を解析して、血管内の各位置における血液の流れに関する第1の結果R1を導出する。本実施形態においては、第1解析部21は、まず、第1の3次元画像G1から血管領域を抽出する。具体的には、第1解析部21は、第1の3次元画像G1に対して多重解像度変換を行い、各解像度の画像に対してヘッセ行列の固有値解析を行い、各解像度の画像における解析結果を統合することによって、第1の3次元画像G1に含まれる心臓領域中の様々なサイズの線構造(血管)の集合体として、冠動脈の領域を血管領域として抽出する(例えばY Sato, et al.、「Three-dimensional multi-scale line filter for segmentation and visualization of curvilinear structures in medical images.」、Medical Image Analysis、1998年6月、Vol.2、No.2、p.p.143-168等参照)。また、さらに最小全域木アルゴリズム等を用いて、抽出された各線構造の中心点を連結することにより、冠動脈を表す木構造のデータを生成し、抽出された冠動脈の中心点を結ぶ芯線上の各点(木構造データの各ノード)において、芯線に直交する断面を求め、各断面において、グラフカット法等の公知のセグメンテーション手法を用いて冠動脈の輪郭を認識し、その輪郭を表す情報を木構造データの各ノードに関連づけることによって、冠動脈の領域を血管領域として抽出するようにしてもよい。
【0034】
なお、血管領域の抽出方法としては上記の方法に限らず、領域拡張法等のその他の公知の手法を用いるようにしてもよい。
【0035】
そして、第1解析部21は、第1の3次元画像G1から抽出された血管領域内の速度情報を用いて、血管内の各ボクセル位置における流速ベクトルを第1の結果R1として導出する。図3は、3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって撮影された第1の3次元画像G1を示す図である。図3に示すように、3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法によって撮影された第1の3次元画像G1の画像データは、マグニチュードデータM、X方向の位相データPhx、Y軸方向の位相データPhy、およびZ軸方向の位相データPhzを、時間tに沿って所定の周期(例えば心周期)で得た3次元データを含む。X方向の位相データPhx、Y軸方向の位相データPhy、およびZ軸方向の位相データPhzは、マグニチュードデータMをX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向にエンコード(VENC:velocity encoding)することにより生成される。X方向の位相データPhx、Y軸方向の位相データPhy、およびZ軸方向の位相データPhzは各軸方向の流速を表すデータである。第1解析部21は、3つの位相データから第1の3次元画像G1の各ボクセル位置の3次元流速ベクトル(以下、流速ベクトルとする)を第1の結果R1として導出する。なお、流速ベクトルは、第1の3次元画像G1の各ボクセル位置において導出しているが、これに限定されるものではなく、予め定められたボクセル間隔(例えば5ボクセル、10ボクセル等)にて導出してもよい。また、複数ボクセルからなる領域において1つの流速ベクトルを導出するようにしてもよい。
【0036】
なお、画像取得部20において、ドップラー計測によって時系列に撮影された3次元の超音波画像を取得し、その超音波画像に基づいて取得された血管領域内の速度情報を用いて流速ベクトルを取得して、第1の結果R1を導出するようにしてもよい。
【0037】
第2解析部22は、第2の3次元画像G2を用いて、血管内の各位置における血液の流れをシミュレーションして、血液の流れに関する第2の結果R2を導出する。このために、第2解析部22は、まず第2の3次元画像G2から血管領域を抽出する。血管領域の抽出は、上述した第1解析部21と同様に行えばよい。そして、第2解析部22は、抽出された血管領域を用いてCFD(Computational Fluid Dynamics)による血流解析を行うことにより、第2の3次元画像G2の各ボクセル位置における流速ベクトルを第2の結果R2として取得する。なお、第2の結果R2についても、第2の3次元画像G2における予め定められたボクセル間隔にて導出してもよく、複数ボクセルからなる領域において1つの流速ベクトルを導出するようにしてもよい。
【0038】
なお、第1の3次元画像G1は、MRI装置における制約により、第2の3次元画像G2よりも空間分解能および時間分解能が低い。このため、空間的に見ると、第1の結果R1は第2の結果R2よりも大きい間隔にて導出される。図4は同一の血管領域における第1の結果および第2の結果を示す図である。図4に示すように、第1の結果R1の流速ベクトルは、第2の結果R2の流速ベクトルと比較すると、その間隔は第1の結果R1の方が空間的に広いものとなる。
【0039】
一致度導出部23は、第1の結果R1および第2の結果R2のいずれか一方を基準とした、第1の結果R1と第2の結果R2との対応するボクセル位置における一致度C0を導出する。なお、本実施形態においては、第2の結果R2を基準とした一致度C0を導出するものとするが、これに限定されるものではない。ここで、上述したように、第1の結果R1の流速ベクトルの空間分解能は、第2の結果R2の流速ベクトルの空間分解能よりも低い。このため、一致度導出部23は、第1の結果R1について第2の結果R2と同一の空間分解能となるように、第1の結果R1と第2の結果R2との空間分解能を一致させる。具体的には、第2の結果R2において流速ベクトルが導出されたすべてのボクセル位置における第1の結果R1の流速ベクトルを、第1解析部21が導出した第1の結果R1の流速ベクトルを補間することにより導出する。図5は補間演算により第2の結果R2と空間分解能を一致させた第1の結果R1を示す図である。
【0040】
そして、一致度導出部23は、第1の結果R1と第2の結果R2との対応するボクセル位置における流速ベクトルの内積を一致度C0として導出する。なお、一致度C0は、対応するボクセル位置における流速ベクトル同士で導出してもよいが、各ボクセル位置を基準として予め定められた範囲内の流速ベクトルの平均値を各ボクセル位置の流速ベクトルとして算出し、算出した流速ベクトルを用いて一致度C0を導出してもよい。なお、平均値は、注目するボクセル位置から離れるほど重み付けを小さくする重み付け平均値としてもよい。
【0041】
表示制御部24は、一致度導出部23が導出した一致度C0に応じて、第1の結果R1および第2の結果R2の少なくとも一方を表示部14に表示する。本実施形態においては、第2の結果R2を表示するものとし、表示された第2の結果R2の表示態様を一致度C0に応じて変更する。なお、第1の結果R1を表示し、表示された第1の結果R1の表示態様を一致度C0に応じて変更してもよい。図6は一致度C0に応じた第1の結果および第2の結果の表示画面を示す図である。図6に示すように、表示画面30においては、第2の結果R2は、第1の結果R1との一致度C0が大きいほど、流速ベクトルの濃度が大きいものとなっている。表示画面30においては、右側ほど第1の結果R1と第2の結果R2との一致度C0が大きく、左に向かうほど一致度C0が小さいものとなっている。
【0042】
なお、実際には、図7に示すように、表示部14に表示された血管の形態画像31を表示した表示画面30Aにおいて、第2の結果R2の流速ベクトルが、一致度C0に応じた表示態様で表示されることとなる。ここで、図7においては、説明のために流速ベクトルの間隔を大きくしているが、実際には第1の結果R1および第2の結果R2を取得したボクセル位置毎または複数のボクセルからなる領域毎に、流速ベクトルが表示されることとなる。
【0043】
また、図6においては、一致度C0に応じて流速ベクトルの濃度を変えているが、色を変えるようにしてもよく、透明度を変えるようにしてもよく、流速ベクトルの線の種類(破線および実線等)を変えるようにしてもよい。また、これらを組み合わせて表示態様を変更してもよい。
【0044】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図8は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部20が第1および第2の3次元画像G1,G2を画像保管サーバ3から取得する(画像取得;ステップST1)。そして、第1解析部21が、第1の3次元画像G1を解析して、血管内の各位置における血液の流れに関する第1の結果R1を導出する(ステップST2)。また、第2解析部22が、血管内の各位置における血液の流れをシミュレーションして、血液の流れに関する第2の結果R2を導出する(ステップST3)。なお、ステップST3の処理を先に行ってもよく、ステップST2の処理とステップST3の処理とを並列に行ってもよい。
【0045】
次いで、一致度導出部23が、第1の結果および第2の結果のいずれか一方を基準とした、第1の結果R1と第2の結果R2との対応する位置における一致度C0を導出する(ステップST4)。そして、表示制御部24が、一致度C0に応じて第1の結果R1および第2の結果R2の少なくとも一方を表示部14に表示し(結果表示;ステップST5)、処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、第1の結果R1および第2の結果R2のいずれか一方を基準とした、第1の結果R1と第2の結果R2との対応する位置における一致度C0を導出し、一致度C0に応じて第1の結果R1および第2の結果R2の少なくとも一方を表示するようにした。このため、ユーザは、表示された第1の結果R1および第2の結果R2の少なくとも一方を見ることにより、血管内の各位置において、第1の結果R1と第2の結果R2とがどの程度一致しているかを認識できる。したがって、本実施形態によれば、第1の結果R1と第2の結果R2との相違、すなわち、第1の3次元画像G1画像を解析することにより導出された結果とシミュレーションにより導出された結果との相違を容易に認識することができる。
【0047】
なお、上記実施形態においては、図6に示すように一致度C0に応じて表示態様が変更された第2の結果R2の表示画面30を表示部14に表示しているが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、表示制御部24は、第1の結果R1および第2の結果R2のいずれを表示するかを切り替えるためのバー40を含む表示画面32を表示部14に表示してもよい。図9に示す表示画面32においては、CFDにより導出した第2の結果R2を表示するようにバー40が切り替えられている。バー40を4Dフローである第1の結果R1を表示するように切り替えた場合、図10の表示画面33に示すように、第1の結果R1が表示され、第2の結果R2との一致度C0が大きいほど流速ベクトルの濃度が濃いものとなる。
【0048】
また、表示制御部24は、第1の結果R1および第2の結果R2のいずれか一方を表示し、一致度C0に応じた表示態様により、他方の結果をさらに表示するようにしてもよい。例えば、図11の表示画面34に示すように、第2の結果R2を表示し、一致度C0に応じた表示態様により第1の結果R1をさらに表示してもよい。なお、第1の結果R1を表示し、一致度C0に応じた表示態様により第2の結果R2を表示してもよい。図11に示す表示画面34おいては、図6と同様に、第2の結果R2である流速ベクトルが一致度C0に応じた表示態様により表示され、さらに、一致度C0が小さいほど、第1の結果R1である流速ベクトルが一致度C0に応じた表示態様にて表示されている。なお、図11に示す表示画面34において、第1の結果R1の流速ベクトルは、一致度C0が小さいほど太い破線により強調表示されている。したがって、表示画面34には、徐々に一致度C0が小さくなることを認識可能に、第2の結果R2と併せて第1の結果R1が表示されることとなる。
【0049】
なお、第1の結果R1の流速ベクトルの表示態様の変更については、一致度C0に応じて破線の太さを変えているが、色を変えるようにしてもよく、透明度を変えるようにしてもよい。また、これらを組み合わせて表示態様を変更してもよい。
【0050】
また、図12の表示画面35に示すように、一致度C0が小さい位置については、第1の結果R1および第2の結果R2のいずれを表示するかを選択するためのバー45を表示するようにしてもよい。図12においては、バー45において4Dフロー、すなわち第1の結果R1が選択されているため、例えば一致度C0が予め定められたしきい値Th1以下であるように、一致度C0が小さい位置については、第2の結果R2に代えて第1の結果R1の流速ベクトルが表示される。なお、図12に示す表示画面35おいては、第1の結果R1の流速ベクトルを破線の矢印により示している。なお、図12に示す表示画面35おいて、バー45をCFDの側に切り替えれば、図6と同様に第2の結果R2のみが表示される。なお、しきい値Th1は、入力部15からの入力により、任意の値に変更できるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、血管内の各位置における流速ベクトルを第1の結果R1および第2の結果R2として導出しているが、これに限定されるものではない。流速ベクトルの他、例えば流体の圧力、壁面せん断応力(WSS(Wall Shear Stress))、渦度およびヘリシティ等を第1の結果R1および第2の結果R2として用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、内部に流体が流れる構造物として血管を用いているがこれに限定されるものではない。例えば、脳脊髄液の流れを可視化することを考えた場合、内部に髄液が流れる構造物として、頭蓋内での脳室、とくにくも膜下腔を、脊柱管内では脊髄くも膜下腔を、内部に流体が流れる構造物として用いてもよい。また、内部にリンパ液が流れるリンパ管を用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、人体を対象とした画像を対象としているが、これに限定されるものではない。例えば、配管内を流れる流体の流れを解析する際にも、本開示を適用できることはもちろんである。
【0054】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部20、第1解析部21、第2解析部22、一致度導出部23および表示制御部24といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0055】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0056】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0057】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 流体解析装置
2 3次元画像撮影装置
3 画像保管サーバ
4 ネットワーク
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
14 表示部
15 入力部
20 画像取得部
21 第1解析部
22 第2解析部
23 一致度導出部
24 表示制御部
30,30A,32~35 表示画面
31 形態画像
40,45 バー
M マグニチュードデータ
Phx 位相データ
Phy 位相データ
Phz 位相データ
R1 第1の結果
R2 第2の結果
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12