(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】電池の電解液用の添加剤、リチウムイオン電池の電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20220418BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20220418BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220418BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20220418BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220418BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220418BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220418BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220418BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220418BHJP
【FI】
H01M10/0567
C07F7/10 M
C07F7/10 T
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
H01M10/052
H01M10/0569
(21)【出願番号】P 2020562808
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 CN2018101585
(87)【国際公開番号】W WO2020037504
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520274356
【氏名又は名称】深▲セン▼市比克▲動▼力▲電▼池有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】林 建
(72)【発明者】
【氏名】占 孝云
(72)【発明者】
【氏名】安 ▲偉▼峰
(72)【発明者】
【氏名】苗 露
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2008-0110404(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
C07F 7/10
H01M 4/38
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/587
H01M 10/052
H01M 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電解液用の添加剤であって、前記添加剤は少なくとも以下の式Iに示される構造または以下の式IIに示される構造を含み、
【化1】
式Iにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択され、
式IIにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、X
1、X
2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択され
、
前記X
1
、前記X
2
は、互いに独立して炭素原子数が1~5のアルキル基、炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基、フェニル基、トリル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基から選択され、ただし、前記X
1
及び前記X
2
の両方は、同時に炭素原子数1~5のアルキル基ではないことを特徴とする電池の電解液用の添加剤。
【請求項2】
前記R
1、R
2は、互いに独立してトリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基から選択されることを特徴とする請求項1に記載の電池の電解液用の添加剤。
【請求項3】
前記Xは、炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基、炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基、炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基、炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基から選択されることを特徴とする請求項1に記載の電池の電解液用の添加剤。
【請求項4】
前記Xは、-(CH
2)
n-、-C(CH
3)
2CO-、-C(Ph)
2-、-CH
2CH=CHCH
2-、-(CH
2)
nCO-、-PhCO-、-Ph(CH
2)
nCO-、-C(C
2H
5)
2CO-、-COC(C
3H
7)(C
3H
5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH
3)
2]CO-、-COC(C
3H
7)(C
2H
5)CO-、-COC(C
4H
9)(C
3H
5)CO-、-COC(C
5H
11)(C
2H
5)CO-、-COC(Ph)(C
2H
5)CO-から選択され、nのとりうる範囲は1~6の正の整数であることを特徴とする請求項3に記載の電池の電解液用の添加剤。
【請求項5】
前記式Iは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである、
【化2】
ことを特徴とする請求項1に記載の電池の電解液用の添加剤。
【請求項6】
前記式IIは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである、
【化3】
ことを特徴とする請求項1に記載の電池の電解液用の添加剤。
【請求項7】
リチウムイオン電池の電解液であって、前記電解液は非水有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含み、前記添加剤は、請求項1から
6のいずれか一項に記載の電池の電解液用の添加剤であることを特徴とするリチウムイオン電池の電解液。
【請求項8】
前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記式I、式IIの含有量の質量百分率の和は0.05%~2%であることを特徴とする請求項
7に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項9】
前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、硫酸プロピレンのうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項10】
前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の和は15%以下であることを特徴とする請求項
9に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項11】
前記非水有機溶剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
7から
10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項12】
前記電解液の全品質を100%として計算すると、前記非水有機溶剤の含有量の質量百分率の和は55%~75%であることを特徴とする請求項
11に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項13】
リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ前記電解液は、請求項
7から
12のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の電解液であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記正極の活物質は遷移金属酸化物であり、前記負極の活物質は黒鉛、Siを含む複合材料またはチタン酸リチウムであることを特徴とする請求項
13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記遷移金属酸化物はLiNi
xCo
yMn
zL
(1-x-y-z)O
2であり、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Feのうちの1つであり、x、y、zのとりうる範囲は、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1で、且つ0<x+y+z≦1であることを満たすことを特徴とする請求項
14に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、特に電池の電解液用の添加剤、リチウムイオン電池の電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、新世代で最も競争力のある電池であり、「グリーンなエコエネルギー」と呼ばれ、現代の環境汚染問題とエネルギー問題を解決するための第一選択技術である。近年、高エネルギー電池分野においてリチウムイオン二次電池は大きな成功を収めるが、消費者は依然として総合性能がより高い電池を望んでいるが、これは新規な電極材料と電解質体系の研究と開発に依存する。現在、スマートフォン、タブレットパソコンなどの電子デジタル製品は電池のエネルギー密度に対する要求がますます高くなり、商用リチウムイオン二次電池がこの要求を満たすことは難しい。電池のエネルギー密度を高めるには、2つの方法があり、1つには高容量と高圧密の正負極材を選択することで、2つには電池の動作電圧を上げることである。
【0003】
純シリコン負極の理論上のグラムごとの容量は4200mAh/gに達するが、リチウムイオン二次電池の負極として使用されると、体積効果により電池の膨らみと電極シートの粉体化が深刻で、サイクル性能が悪い。また、シリコン基材料の導電性が悪いことにより、電池の低温性能が低下する。シリコン材料と炭素材料を複合し、シリコン炭素複合材料を形成することが考えられ、これにより、材料の比容量と導電性が大幅に高まれ、一定程度でシリコン基材料の体積効果を低減することができる。シリコン炭素複合材料は高容量の高ニッケル正極と組み合わせると、エネルギー密度は300Wh/Kg以上に達することができ、これに適用する電解液も生まれて、リチウムイオン二次電池の電解液に関する研究のホットスポットになっている。
【0004】
フルオロエチレンカーボネートは、シリコン炭素負極の表面に均一で安定的なSEI膜を形成でき、シリコン炭素負極材料の特殊性(電池の膨らみと電極シートの粉体化が深刻である)のため、その電解液システムは、往々にして黒鉛負極システムよりも多くの成膜添加剤が必要となり、通常はフルオロエチレンカーボネートを大量に使用することを必要とする。しかし、フルオロエチレンカーボネートは、高温環境や高ニッケルの正極の電池システムで分解しやすく、電池の高温での使用要件を満たすことができないことなどで、フルオロエチレンカーボネートだけ使用されると様々な弊害がある。フルオロエチレンカーボネートを含むリチウムイオン二次電池の高温貯蔵過程における膨らみ問題を解決するために、CN201110157665では、電解液に有機ニトリル類物質(NC-(CH2)n-CN、ここで、n=2~4)を添加することにより、膨らみを抑制する。US2008/0311481Alは、2つのニトリル基を含むエーテル/アリール基化合物を公開し、電池の高電圧と高温条件下での膨らみを改善でき、高温貯蔵性能が改善される。しかし、ニトリル類化合物は三元系高ニッケル正極システムに応用されると、電池の分極を促進し、サイクル性能と低温特性を大幅に劣化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施例は、電池の電解液用の添加剤、リチウムイオン電池の電解液及びリチウムイオン電池を提供し、従来のリチウムイオン電池は高温条件で電解液が酸化分解することにより、電池の高温貯蔵性能と低温性能が両立できないという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の発明の目的を実現するために、本発明で採用された技術的解決手段は下記の通りである。
電池の電解液用の添加剤であって、前記添加剤は少なくとも以下の式Iに示される構造または以下の式IIに示される構造を含み、
【化1】
式Iにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択され、
式IIにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、X
1、X
2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択される。
好ましくは、前記R
1、R
2は、互いに独立してトリメチルシリル基、tert‐ブチルジメチルシリル基から選択される。
【0007】
好ましくは、前記Xは、炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基、炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基、炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基、炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基から選択される。
好ましくは、前記Xは、-(CH2)n-、-C(CH3)2CO-、-C(Ph)2-、-CH2CH=CHCH2-、-(CH2)nCO-、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(C2H5)2CO-、-COC(C3H7)(C3H5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(C3H7)(C2H5)CO-、-COC(C4H9)(C3H5)CO-、-COC(C5H11)(C2H5)CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-から選択され、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。
【0008】
好ましくは、前記X1、前記X2は、互いに独立して炭素原子数が1~5のアルキル基、炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基、フェニル基、トリル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基から選択される。
【0009】
好ましくは、前記式Iは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化2】
【0010】
好ましくは、前記式IIは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化3】
【0011】
また、リチウムイオン電池の電解液であって、前記電解液は非水有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含み、ここで前記添加剤は、本発明に記載される電池の電解液用の添加剤である。
【0012】
好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記式I、式IIの含有量の質量百分率の和は0.05%~2%である。
【0013】
好ましくは、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、硫酸プロピレンのうち少なくとも1つをさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の和は15%以下である。
【0015】
好ましくは、前記非水有機溶剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのうち少なくとも1つを含む。
【0016】
好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記非水有機溶剤の含有量の質量百分率の和は55%~75%である。
【0017】
また、リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ前記電解液は、本発明に記載されるリチウムイオン電池の電解液である。
【0018】
好ましくは、前記正極活物質は遷移金属酸化物であり、前記負極活物質は黒鉛、Siを含む複合材料またはチタン酸リチウムである。
好ましくは、前記遷移金属酸化物はLiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2であり、ここで、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Feのうちの1つであり、x、y、zのとりうる範囲は、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1で、且つ0<x+y+z≦1であることを満たす。
【発明の効果】
【0019】
本発明により提供されるリチウムイオン電池の電解液は、少なくとも式Iまたは式IIに示される構造の添加剤を含む。式I、式IIに示される構造には、イミダゾリジノン構造(カルボニル基の炭素の両側にはそれぞれ1つの窒素原子がつながる)が含まれる。前記イミダゾリジノン構造におけるカルボニル基は、PF5(LiPF6の分解産物)と反応でき、電池負極において優先的に還元されて低インピーダンスのSEI膜を形成し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善することができる一方、前記イミダゾリジノン構造における窒素原子は孤立電子対を含み、電池正極において電子を失いて酸化されて保護膜を形成しやすく、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。また、R1、R2にはケイ素含有基を含み、前記ケイ素含有基は電解液中の活性プロトン性水素を含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させ、電池の高温性能を向上させる。以上に述べたように、本発明によって提供される少なくとも式IまたはIIに示される構造の添加剤を含む電池の電解液用の添加剤は、電極(正極と負極)の表面で低インピーダンスの保護膜を形成でき、電極と電解液の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、高低温性能(良好な低温放電性能、及び良好なサイクル性能と高温貯蔵性能を備える)を両立でき、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させる。
【0020】
本発明により提供される電池の電解液用の添加剤は、本発明による電池の電解液用の添加剤を含み、電極(正極と負極)の表面に低インピーダンスの保護膜が形成でき、電極と電解液の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、高低温性能(良好な低温放電性能、及び良好なサイクル性能と高温貯蔵性能を備える)を両立でき、リチウムイオン電池の全体出力性能を向上させる。
【0021】
本発明により提供されるリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池の電解液を含むため、リチウムイオン電池のサイクル性能と低温放電性能を著しく向上させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1、比較例1によって提供されるリニアスイープボルタンメトリー(LSV)曲線図である。
【
図2】本発明の実施例1、比較例1によって提供されるdQ/dV曲線(dQ/dV-V)分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が解決しようとする技術的問題、技術的解決手段および発明の効果をより分かりやすくするために、以下に実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
本発明の説明において、「第1」、「第2」という用語は説明の目的だけに用いられ、比較的重要性を指示または暗示するか、あるいは示された技術的特徴の数を黙示的に指示するためのものと理解してはいけない。したがって、「第1」、「第2」などで限定された特徴は、1つまたは複数の該特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、別途明確かつ具体的な限定がない限り、「複数」とは、二つ以上を意味する。
本発明の実施例は電池の電解液用の添加剤を提供し、前記添加剤は少なくとも以下の式Iに示される構造または以下の式IIに示される構造を含む。
【化4】
式Iにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択され、
式IIにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、X
1、X
2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択される。
【0024】
本発明により提供されるリチウムイオン電池の電解液は、少なくとも式Iまたは式IIに示される構造の添加剤を含む。式I、式IIに示される構造には、イミダゾリジノン構造(カルボニル基の炭素の両側はそれぞれ1つの窒素原子とつながれる)が含まれる。前記イミダゾリジノン構造におけるカルボニル基は、PF5(LiPF6の分解産物)と反応でき、電池負極において優先的に還元されて低インピーダンスのSEI膜を形成し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善することができる一方、前記イミダゾリジノン構造における窒素原子は孤立電子対を含み、電池正極において電子を失いて酸化されて保護膜を形成しやすく、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。また、R1、R2にはケイ素含有基を含み、前記ケイ素含有基は電解液中の活性水素イオンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させ、電池の高温性能を向上させる。以上に述べたように、本発明によって提供される少なくとも式IまたはIIに示される構造を含む電池の電解液用の添加剤は、電極(正極と負極)の表面で低インピーダンスの保護膜を形成でき、電極と電解液の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、高低温性能(良好な低温放電性能、及び良好なサイクル性能と高温貯蔵性能を備える)を両立でき、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させる。
【0025】
本発明の実施例において、前記添加剤は主に最初の充放電の時に成膜性能を向上させるために用いられる。
【0026】
式Iは環状構造であり、式IIは線状構造であるが、両者は共にイミダゾールケトン構造を含む。また、式Iと式IIに示される構造において、R1とR2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、上記の技術効果の実現を保証する。
好ましくは、前記ケイ素含有基はシラン基である。具体的に好ましくは、前記R1、R2は、互いに独立してトリメチルシリル基、tert‐ブチルジメチルシリル基から選択される。R1、R2がトリメチルシリル基、tert‐ブチルジメチルシリル基から選択される添加剤は、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善により優れた効果がある。
【0027】
本発明の実施例の式Iにおいて、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択される。一方は、Xは活性プロトンを発生しない有機基であり、それによりプロトンの電池性能に対する影響を低減する。他方は、炭素原子数が2~20の有機基は、分子構造の大きさが適切であり、非水有機溶剤などとの相溶性が良い。Xの炭素原子の数が多すぎると、その溶解性能を低下させるだけでなく、立体障害が大きすぎるため、部分の反応部位が覆い隠され、反応の困難性が上向され、反応の活性が低下され、最終的に電極表面の保護膜(SEI)の形成に影響が与えられる。
【0028】
好ましくは、前記Xは、炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基、炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基、炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基、炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基から選択される。好ましいX基は、空間構造の大きさが適切であり、正負極と比較的に良い反応性を備え、正負極で低インピーダンスのSEI膜の形成に有利し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善し、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。前記炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基は、-(CH2)n-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基は、-C(CH3)2CO-、-(CH2)nCO-、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(C2H5)2CO-、-COC(C3H7)(C3H5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(C3H7)(C2H5)CO-、-COC(C4H9)(C3H5)CO-、-COC(C5H11)(C2H5)CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基は、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基は、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、またはN、S、Oなどの原子を含むが、これらに限定されない。ここで、シリコン原子の導入は、「電解液電解液中の活性プロトンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させる」という効果を強化できる。好ましくは、前記Xは、-(CH2)n-、-C(CH3)2CO-、-C(Ph)2-、-CH2CH=CHCH2-、-(CH2)nCO-、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(C2H5)2CO-、-COC(C3H7)(C3H5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(C3H7)(C2H5)CO-、-COC(C4H9)(C3H5)CO-、-COC(C5H11)(C2H5)CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-から選択され、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。
【0029】
具体的に好ましくは、前記式Iは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化5】
【0030】
好ましくは、式Iに示される化合物は、リチウムイオン電池の電解液の添加剤として、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善にはより優れた効果がある。
【0031】
本発明の実施例の式IIにおいて、前記X1、前記X2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択される。一方は、前記X1、前記X2は活性プロトンを発生しない有機基であり、それにより電池性能に対するプロトンの影響を低減させることを避ける。他方は、炭素原子数は2~20の有機基は、分子構造の大きさが適切であり、非水有機溶剤などとの相溶性が良い。前記X1、前記X2の炭素原子の数が多すぎると、その溶解性能を低下させるだけでなく、立体障害が大きすぎるため、部分の反応部位が覆い隠され、反応の困難性が上向され、反応の活性が低下され、最終的に電極表面の保護膜(SEI)の形成に影響が与えられる。
【0032】
好ましくは、前記X1、前記X2は、互いに独立して炭素原子数が1~5のアルキル基、炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基、フェニル基、トリル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基から選択される。好ましいX1、X2は、空間構造の大きさが適切であり、正負極と比較的に良い反応性を備え、正負極で低インピーダンスのSEI膜の形成に有利し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善し、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。この上、前記X1、前記X2に、ヘテロ原子を導入しでもよく、前記は、Si、N、S、Oなどの原子の有機基を含むが、これら限定されない。ここで、シリコン原子の導入は、「電解液電解液中の活性プロトンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させる」という効果を強化できる。
【0033】
前記炭素原子数が1~5のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を含むが、これらに限定されない。立体障害が大きすぎることを避けるために、X1とX2は共に炭素原子数が3以上のアルキル基である場合、好ましくは分岐度の低い直鎖アルキル基である。
【0034】
前記炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基は、フッ素を含むメチル基、フッ素を含むエチル基、フッ素を含むプロピル基、フッ素を含むブチル基、フッ素を含むペンチル基を含むが、これらに限定されなく、具体的にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基であってもよい。立体障害が大きすぎることを避けるために、X1とX2は炭素原子数が3以上のフッ素を含むアルキル基である場合、好ましくは分岐度の低い直鎖フッ素を含むアルキル基である。
【0035】
具体的に好ましくは、前記式IIは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化6】
【0036】
好ましくは、式IIに示される化合物は、リチウムイオン電池の電解液の添加剤として、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善にはより優れた効果がある。
【0037】
対応的に、本発明の実施例は、リチウムイオン電池の電解液を提供し、前記電解液は非水有機溶剤、リチウム塩及び添加剤を含み、ここで前記添加剤は、前記電池の電解液用の添加剤である。具体的には、前記電池の電解液用の添加剤は少なくとも以下の式Iに示される構造または以下の式IIに示される構造を含み、
【化7】
式Iにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択され、
式IIにおいて、R
1、R
2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、X
1、X
2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択される。
【0038】
本発明の実施例により提供されるリチウムイオン電池の電解液は、少なくとも式Iまたは式IIに示される構造の添加剤を含む。式I、式IIに示される構造には、イミダゾリジノン構造(カルボニル基の炭素の両方はそれぞれ1つの窒素原子とつながれる)が含まれる。一方は、前記イミダゾリジノン構造におけるカルボニル基は、PF5(LiPF6の分解産物)と反応でき、電池負極において優先的に還元されて低インピーダンスのSEI膜を形成し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善することができる。他方は、前記イミダゾリジノン構造における窒素原子は孤立電子対を含み、電池正極において電子を失いて酸化されて保護膜を形成しやすく、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。また、R1、R2にはケイ素含有基を含み、前記ケイ素含有基は電解液中の活性水素イオンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させ、電池の高温性能を向上させる。以上より、本発明によって提供される少なくとも式IまたはIIに示される構造を含む電池の電解液用の添加剤は、電極(正極と負極)の表面で低インピーダンスの保護膜を形成でき、電極と電解液の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、高低温性能(良好な低温放電性能、及び良好なサイクル性能と高温貯蔵性能を備える)を両立でき、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させる。
【0039】
以下、上記のリチウムイオン電池の電解液の各成分について詳しく説明する。
非水有機溶剤
水はリチウムイオン電池SEIの形成と電池性能に一定の影響があり、具体的には電池容量が小さくなったり、放電時間が短くなったり、内部抵抗が増加したり、サイクルによって容量が減衰したり、電池が膨らみしたりなどと表現される。本発明の実施例では、非水有機溶剤を電解液の溶媒成分として採用する。
【0040】
好ましくは、前記非水有機溶剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのうち少なくとも1つを含む。好ましくは、非水有機溶剤の添加は、リチウムイオン二次電池の総合性能を向上させることができる。
さらに好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記非水有機溶剤の含有量の質量百分率の和は55%~75%である。
【0041】
リチウム塩
本発明の実施例において、前記リチウム塩は、リチウムイオン電池でよく使用されるリチウム塩から選択されてもよく、ヘキサフルオロりん酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロほう酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの一つまたは複数を含む。さらに、前記リチウム塩の用量はリチウムイオン二次電池の電解液の含有量の質量百分率の10%~18%である。
【0042】
添加剤
本発明の実施例において、前記添加剤は主に最初の充放電の時に成膜性能を向上させるために用いられる。
【0043】
式Iは環状構造であり、式IIは線状構造であるが、両者は共にイミダゾールケトン構造を含む。また、式Iと式IIに示される構造において、R1とR2が互いに独立してケイ素含有基から選択され、上記の技術効果の実現を保証する。
【0044】
好ましくは、前記ケイ素含有基はシラン基である。具体的に好ましくは、前記R1、R2は、互いに独立してトリメチルシリル基、tert‐ブチルジメチルシリル基から選択される。R1、R2がトリメチルシリル基、tert‐ブチルジメチルシリル基から選択される添加剤は、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善により優れた効果がある。
【0045】
本発明の実施例の式Iにおいて、Xは炭素原子数が2~20の有機基から選択される。一方は、Xは活性プロトンを発生しない有機基であり、それによりプロトンの電池性能に対する影響を低減する。他方は、炭素原子数が2~20の有機基は、分子構造の大きさが適切であり、非水有機溶剤などとの相溶性が良い。Xの炭素原子の数が多すぎると、その溶解性能を低下させるだけでなく、立体障害が大きすぎるため、部分の反応部位が覆い隠され、反応の困難性が上向され、反応の活性が低下され、最終的に電極表面の保護膜(SEI)の形成に影響が与えられる。
【0046】
好ましくは、前記Xは、炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基、炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基、炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基、炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基から選択される。好ましいX基は、空間構造の大きさが適切であり、正負極と比較的に良い反応性を備え、正負極で低インピーダンスのSEI膜の形成に有利し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善し、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。前記炭素原子数が2~6のメチレン基を含む有機基は、-(CH2)n-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が2~20のカルボニル基を含む有機基は、-C(CH3)2CO-、-(CH2)nCO-、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(C2H5)2CO-、-COC(C3H7)(C3H5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(C3H7)(C2H5)CO-、-COC(C4H9)(C3H5)CO-、-COC(C5H11)(C2H5)CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が6~20のフェニル基を含む有機基は、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-を含むが、これらに限定されなく、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。前記炭素原子数が2~20のヘテロ原子を含む有機基は、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、またはN、S、Oなどの原子を含むが、これらに限定されない。ここで、シリコン原子の導入は、「電解液電解液中の活性プロトンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させる」という効果を強化できる。好ましくは、前記Xは、-(CH2)n-、-C(CH3)2CO-、-C(Ph)2-、-CH2CH=CHCH2-、-(CH2)nCO-、-PhCO-、-Ph(CH2)nCO-、-C(C2H5)2CO-、-COC(C3H7)(C3H5)CO-、-C(Ph)[PhOSi(CH3)2]CO-、-COC(C3H7)(C2H5)CO-、-COC(C4H9)(C3H5)CO-、-COC(C5H11)(C2H5)CO-、-COC(Ph)(C2H5)CO-から選択され、ここでnのとりうる範囲は1~6の正の整数である。
【0047】
具体的に好ましくは、前記式Iは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化8】
【0048】
好ましくは、式Iに示される化合物は、リチウムイオン電池の電解液の添加剤として、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善にはより優れた効果がある。
【0049】
本発明の実施例の式IIにおいて、前記X1、前記X2が互いに独立して炭素原子数が2~20の有機基から選択される。一方は、前記X1、前記X2は活性プロトンを発生しない有機基であり、それにより電池性能に対するプロトンの影響を低減させることを避ける。他方は、炭素原子数は2~20の有機基は、分子構造の大きさが適切であり、非水有機溶剤などとの相溶性が良い。前記X1、前記X2の炭素原子の数が多すぎると、その溶解性能を低下させるだけでなく、立体障害が大きすぎるため、部分の反応部位が覆い隠され、反応の困難性が上向され、反応の活性が低下され、最終的に電極表面の保護膜(SEI)の形成に影響が与えられる。
【0050】
好ましくは、前記X1、前記X2は、互いに独立して炭素原子数が1~5のアルキル基、炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基、フェニル基、トリル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基から選択される。好ましいX1、X2は、空間構造の大きさが適切であり、正負極と比較的に良い反応性を備え、正負極で低インピーダンスのSEI膜の形成に有利し、リチウムイオン電池の低温特性と電力特性を改善し、電解液の電池正極での酸化分解を抑制し、リチウムイオン電池の高温貯蔵性能を向上させる。この上、前記X1、前記X2に、ヘテロ原子を導入しでもよく、前記ヘテロ原子の有機基は、Si、N、S、Oなどの原子の有機基を含むが、これら限定されない。ここで、シリコン原子の導入は、「電解液電解液中の活性プロトンを含むHF、及びH2Oと加水分解、または重合反応が起こられ、H2Oの除去とHFの抑制のような目的を達成し、さらにLiPF6の熱安定性を向上させる」という効果を強化できる。
【0051】
前記炭素原子数が1~5のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を含むが、これらに限定されない。立体障害が大きすぎることを避けるために、X1とX2は共に炭素原子数が3以上のアルキル基である場合、好ましくは分岐度の低い直鎖アルキル基である。
【0052】
前記炭素原子数が1~5のフッ素を含むアルキル基は、フッ素を含むメチル基、フッ素を含むエチル基、フッ素を含むプロピル基、フッ素を含むブチル基、フッ素を含むペンチル基を含むが、これらに限定されなく、具体的にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基であってもよい。立体障害が大きすぎることを避けるために、X1とX2は炭素原子数が3以上のフッ素を含むアルキル基である場合、好ましくは分岐度の低い直鎖フッ素含有アルキル基である。
【0053】
具体的に好ましくは、前記式IIは以下の構造により示される化学物のうちから選択される少なくとも一つである。
【化9】
【0054】
好ましくは、式IIに示される化合物は、リチウムイオン電池の電解液の添加剤として、リチウムイオン電池のサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能の改善にはより優れた効果がある。
【0055】
上述した実施例に基づき、さらに好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記式I、式IIの含有量の質量百分率の和は0.05%~2%である。前記式I、式IIに示される化合物の含有量の質量百分率は0.05%以下である場合、電極表面に安定した保護膜を形成できず、「電極と電解液の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させる」という改善効果に達することができなく、さらに、高ニッケル正極とシリコン炭素と組み合わせるシステムの低温放電性能を改善できない。前記式I、式IIに示す化合物の含有量の質量百分率は2%より高い場合、電極表面に形成される保護膜が厚すぎ、電池の分極が促進され、電池性能が劣化する。
【0056】
本発明の実施例において、式I、式IIに示される化合物を添加剤とする上に、他の添加剤をさらに添加することによって、リチウムイオン電池の性能を最適化させることができる。好ましくは、前記添加剤はさらに、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、硫酸プロピレンのうちの少なくとも一つを含む。
【0057】
さらに好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の和は15%以下である。この上、いずれかの好ましい添加剤(フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、硫酸プロピレン)の含有量の質量百分率は単独で前記電解液の全質量の0.1%~10%を占める。
【0058】
また、本発明の実施例は、リチウムイオン電池を提供し、前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ前記電解液は、本発明に記載されるリチウムイオン電池の電解液である。
【0059】
本発明の実施例により提供されるリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池の電解液を含むため、リチウムイオン電池のサイクル性能と低温放電性能を著しく向上させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させることができる。
【0060】
本発明の実施例において、前記電解液の構成、各成分の選択、含有量、好ましいタイプ及び選択根拠は上記のように決められ、紙幅の都合上、ここで再び説明しない。
【0061】
前記正極は正極活物質を含み、本発明の実施例では、リチウムイオン電池に従来から使用されている正極活物質のいずれも使用することができる。しかし、好ましくは、前記正極活物質は遷移金属酸化物を選択する。
【0062】
具体的に好ましくは、前記遷移金属酸化物はLiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2であり、ここで、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Feのうちの1つであり、x、y、zのとりうる範囲は、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1で、且つ0<x+y+z≦1であることを満たす。
【0063】
前記負極は負極活物質を含み、本発明の実施例では、リチウムイオン電池に従来から使用されている負極活物質のいずれも使用することができる。好ましくは、前記負極活物質は黒鉛、Siを含む複合材料またはチタン酸リチウムである。
前記セパレータの選択は、単層ポリエチレン(PE)、単層ポリプロピレン(PP)、二層PP/PE、三層PP/PE/PP、又はセラミックのセパレータを含むが、これらに限定されない。
【0064】
以下、具体的な実施例と併せて説明する。
各実施例において、英語略語の説明は以下のとおりである。
EC:炭酸エチレン
EMC:炭酸エチルメチル
DMC:炭酸ジメチル
LiPF6:ヘキサフルオロりん酸リチウム
FEC:フルオロエチレンカーボネート
DTD:硫酸エチレン
PS:1,3-プロパンスルトン
PST:1,3-プロペンスルトン
【0065】
各実施例において、使用される添加剤構造およびそれに関連付けるアルファベット番号は、下表1に示される。
【表1-1】
【表1-2】
【0066】
実施例1
リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、ここで、正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM811)であり、負極活物質はシリコン炭素複合材料(Si/C)であり、前記リチウムイオン電池の製造方法は以下のステップを含む。
【0067】
正極活性材料NCM811は、96.8:2.0:1.2で混合され、導電性カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの接着剤はN-メチル2-ピロリドンに分散され、正極スラリーが得られ、正極スラリーがアルミ箔の両面に均一に塗布され、乾燥、圧延および真空乾燥を経て、そしてアルミニウムリード線が超音波溶着機によって溶接された後、正極板(正極シート)が取得され、極板の厚さは100~115μmの間である。
【0068】
シリコン炭素複合材料、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの接着剤は、96:1:1.2:1.8の質量比に従って混合され、脱イオン水に分散され、負極スラリーが取得され、負極スラリーが銅箔の両面に塗布され、乾燥、圧延および真空乾燥を経て、そしてニッケルリード線が超音波溶着機によって溶接された後、負極板(負極シート)が取得され、極板の厚さは115~135μmの間である。
【0069】
炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジメチル(DMC)は、質量比2:1:7の質量比に従って混合し、混合された後に電解液全質量の12.5%を占めるヘキサフルオロりん酸リチウムが添加され、電解液全質量の1%を占めるP1がてんかされ、電解液が得られる。
【0070】
Al2O3が片面で塗布されて得られるセラミックのセパレータが採用される。
製得された正極片、セパレータ、負極片が自動捲回機に置きられ、巻きされてベアセルが取得される。ベアセルは円筒状の鋼制のケースに置きられ、負極タブと電極端子が溶接され、上記の製得された電解液が乾燥された後のベアセルに注入され、封止、静置、予備充電、エージング及び容量ランク選別が行われ、リチウムイオン二次電池の製造は完成される(18650-3.0Ah)。
【0071】
実施例2~実施例35
実施例2~実施例26において、電解液の成分が異なる以外、ほかの正極、負極、セパレータ、リチウムイオン二次電池の製造は、実施例1と同じであり、各実施例における構造式Iに示される化合物の選択及び含有量は表2に示すとおりである。
実施例27~実施例35において、電池の総合的な出力性能をさらに向上させるため、上記の実施例1~26の上に成膜添加剤を加え、各成分の選択及び含有量は表2に示すとおりである。
【0072】
比較例1~比較例5
比較例1~比較例5において、電解液中の非水有機溶剤、添加剤の種類と含有量(電解液の全質量に基づく)が異なる以外、ほかの正極、負極、セパレータ、リチウムイオン二次電池の製造は、実施例1と同じであり、比較例1における非水有機溶剤、添加剤の種類と含有量は表2に示すとおりであり、比較例2~4における非水有機溶剤、添加剤の種類と含有量は表3に示すとおりである。
【0073】
実施例1~実施例35、比較例1~比較例5で製造されるリチウムイオン二次電池に対して性能測定を行い、測定方法は以下の通りである。
1)リニアスイープボルタンメトリー(LSV)
Ptを作用電極として、Liを対電極として、および参照電極を三電極装置に組み立てて電気化学ワークステーションでリニアスイープを行う。
2)サイクル性能測定:25±2℃/45℃±2℃で、容量ランク選別が行われた後の電池を0.5Cの定電流、定電圧で4.2Vまで充電し(遮断電流は0.01Cである)、その後、1Cの定電流で2.75Vまで放電させる。充/放電がN回サイクルした後、第Nサイクル後の容量維持率を計算する。計算式は以下の通りである。
第N回サイクルした後の容量維持率(%)=(第N回サイクルした後の放電容量/第1回サイクルした後の放電容量)×100%
3)高温貯蔵性能:容量ランク選別が行われた後の電池を0.5Cの定電流、定電圧で4.2Vまで充電し(遮断電流は0.01Cである)、電池の初期の放電容量を測定し、そして60℃で7日間貯蔵した後、0.5Cで2.75Vまで放電させ、電池の維持容量と回復容量を測定する。計算式は以下の通りである。
電池容量維持率(%)=維持容量/初期容量×100%
電池容量回復率(%)=回復容量/初期容量×100%
4)低温放電:室温で0.5Cの定電流、定電圧で4.2Vまで充電し、5分間放置し、0.2Cで2.75Vまで放電させ、電池の初期容量を測定する。5分間放置し、0.5Cの定電流、定電圧で4.2Vまで充電する(遮断電流は0.01Cである)。電池を‐20℃の低温槽で6h放置させ、そしてこの条件で0.2Cで2.75Vまで放電させ、低温での放電容量を測定する。
低温放電維持率(%)=低温放電容量/初期容量×100%
【0074】
測定結果は表2、表3に示す通りである。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0075】
NCM811とシリコン炭素複合材料を組み合わせる電池システムの実施例1~26と、比較例1とを比較分析する。表2から分かるように、本発明の技術的解決手段を採用する実施例1~実施例26は、良好なサイクル性能、高温貯蔵性能、及び低温放電性能を有している。しかし、比較例1の電解液を採用するリチウムイオン電池の出力性能が悪く、高低温性能とサイクル性能を両立できない。
【0076】
具体的には、各実施例と比較例1を比較し、構造式I/式IIの化合物を含む実施例1から実施例26において、各実施例の低温放電性能、高温サイクル、常温サイクル及び高温貯蔵性能のいずれも、比較例1より著しく優れている。P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15、P1+P11、P2+P14の存在は、電池の総合的な出力性能を効率的に向上させることができる。
【0077】
比較例1と実施例1の電解液を採用してLSVの測定とdQ/dV曲線(dQ/dV-V)の分析を行い、結果は
図1、
図2に示される。
図1から分かるように、P1を含むサンプルの酸化ピークは前倒しとなり、この添加剤は他の溶剤より優先的に酸化されることがわかる。さらに、P1は正極で酸化されて保護膜を形成しやすく、電解液と高ニッケル材料の副反応が抑制できる。
図2から分かるように、P1を含むサンプルの負極は優先的にEC還元され、P1を含むサンプルのEC還元分解が抑制され、ピーク強度が弱くなるように表現される。dQ/dV-V及びLSVの構造により、P1は正負極でも膜が形成できることを判定できる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0078】
表3の実施例27~実施例35において、電池の総合的な出力性能を向上させるため、上記の実施例1~実施例26の上に成膜添加剤を加え、成膜添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレンを含む。
【0079】
表3から分かるように、本発明の技術的解決手段に示される構造式I/IIの化合物を含む実施例27~実施例35は、同様に良いサイクル性能、高温貯蔵及び低温放電性能を有している。しかし、比較例2~比較例5の電解液を採用した電池の一部の出力性能が悪く、高低温性能とサイクル性能を両立できない。
【0080】
以上より、各実施例と比較例を比較することにより、本発明の実施例は、構造式I、式IIに示される化合物を添加することによって、正負極で保護膜を形成でき、該非水電解液を含むリチウムイオン二次電池が良好な電池出力性能を得られる。該技術的解決手段は、高ニッケル正極系とシリコン炭素複合負極を組み合わせるシステムに適用され、大幅な改善効果を有している。
【0081】
以上の記載は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の精神および原則の範疇においてなされたあらゆる修正、同等物による置換及び改良などは、本発明の保護範囲に含まれるはずである。