(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】CTスキャンパラメータの最適化
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
A61B6/03 330Z
(21)【出願番号】P 2020570199
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066144
(87)【国際公開番号】W WO2019243396
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ネイ ヤエル ハヤ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラヴスキー イダン
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン サレシュ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143659(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270053(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0016484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を最適化するコンピュータ断層撮影装置であって、該コンピュータ断層撮影装置は、
被写体固有露光時間を、前記被写体のz軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流の最大要求値及び該被写体のスキャンに使用される管の最大利用可能管電流値に基づいて決定する露光時間決定ユニットと、
前記被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を、前記被写体固有露光時間に基づいて決定するスキャンパラメータ決定ユニットと、
を有し、
前記最大利用可能管電流値は、管電圧および所与の焦点スポット領域における前記管の最大電力に依存し、
前記露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流は、前記被写体のスキャンのための線量指標値又はピクセルノイズ指標値、前記管電圧及び前記z軸に沿ったz軸依存被写体サイズに基づくものであり、
前記スキャンパラメータ決定ユニットは、性能指数=(table speed)
a/((exposure time)
b・(dose length product)
c)として定義され
(ここで、a、b及びcは定数である
)、当該性能指数を最大化することに基づいて、前記スキャンパラメータの値を決定する、
コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
現在の管状態を決定する管状態決定ユニットを有し、該管状態決定ユニットが、前記管が前記被写体のスキャンを前記スキャンパラメータの前記決定された値及び前記現在の管状態に基づいて実行できるかを決定する、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記管状態決定ユニットは、前記スキャンパラメータの前記決定された値を用いた前記被写体のスキャンの間に発生される熱が前記管にとって許容可能であるかを、前記現在の管状態及び前記スキャンパラメータの前記決定された値に基づいて判定する熱計算器ユニットである、請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記スキャンパラメータ決定ユニットは、前記スキャンパラメータの1以上の値を終了条件が発生するまで反復的に適応させる、請求項1から3の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記スキャンパラメータが、コリメーション開口、回転時間及びピッチを含む、請求項1から4の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記スキャンパラメータ決定ユニットは、前記スキャンパラメータの値を露光時間に依存したスキャンパラメータの値を有するルックアップテーブルに基づいて決定するか、又は前記スキャンパラメータ決定ユニットは、前記スキャンパラメータの値を露光時間に依存したスキャンパラメータの値を供給するスキャンパラメータ関数に基づいて決定する、請求項1から5の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
z軸に沿った前記被写体のz軸依存被写体サイズを該被写体の二次元X線投影画像に基づいて決定する被写体サイズ決定ユニットを有する、請求項1から6の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
時間依存管電流プロファイルを前記被写体固有露光時間、露光時間積によるz軸依存管電流及び前記スキャンパラメータの前記決定された値に基づいて生成すると共に、時間依存電力プロファイルを前記時間依存管電流プロファイル及び前記被写体のスキャンに使用される前記管電圧に基づいて決定する管電力プロファイル生成ユニットを有する、請求項1から7の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置と、
X線を放出する管と、
当該スパイラルコンピュータ断層撮影システムを通るz軸に沿って被写体を平行移動させるテーブルと、
前記X線を受ける検出器と、
を有するスパイラルコンピュータ断層撮影システムであって、
前記テーブルは、前記管から放出されたX線が前記被写体を貫通すると共に該X線が前記検出器によって受信されるように、前記管と前記検出器との間に配置される、
スパイラルコンピュータ断層撮影システム。
【請求項10】
被写体固有露光時間が被写体のz軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流の最大要求値及び該被写体のスキャンに使用される管の最大利用可能管電流値に基づいて決定され、前記最大利用可能管電流値は管電圧および所与の焦点スポット領域における前記管の最大電力に依存し、前記露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流は前記被写体のスキャンのための線量指標値又はピクセルノイズ指標値、前記管電圧及び前記z軸に沿ったz軸依存被写体サイズに基づくものであり、前記被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値は前記被写体固有露光時間に基づいて決定され、性能指数= (table speed)
a/((exposure time)
b・(dose length product)
c)として定義され
(ここで、a、b及びcは定数である
)、当該性能指数を最大化することに基づいて、前記スキャンパラメータの値が決定される、請求項1から8の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置を動作させる方法。
【請求項11】
前記zに沿った前記被写体のz軸依存被写体サイズ、前記被写体のスキャンのための前記線量指標値又はピクセルノイズ指標値、前記所与の焦点スポット領域における前記管の最大電力及び前記被写体のスキャンのために前記管に印加される前記管電圧を供給するステップ、
前記管の最大利用可能管電流値を、前記管電圧及び前記所与の焦点スポット領域における前記管の最大電力に基づいて計算するステップ、
前記z軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流を前記線量指標値又は前記ピクセルノイズ指標値、前記管電圧及び前記z軸に沿ったz軸依存被写体サイズに基づいて計算するステップ、
前記z軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流の最大要求値を抽出するステップ、
前記z軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流の最大要求値及び前記最大利用可能管電流値に基づいて、前記被写体固有露光時間を計算するステップ、
前記被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を前記被写体固有露光時間に基づいて決定するステップ、
前記被写体固有露光時間、前記z軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流及び前記スキャンパラメータの前記決定された値に基づいて、時間依存管電流プロファイルを生成するステップ、及び
前記時間依存管電流プロファイル及び前記被写体のスキャンのために前記管に印加される前記管電圧に基づいて、時間依存管電力プロファイルを生成するステップ、
を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記管の現在の管状態を決定するステップ、及び
前記管が前記被写体のスキャンを実行できるかを、前記時間依存管電力プロファイル及び前記現在の管状態に基づいて決定するステップ、
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサ上で実行された場合に、該プロセッサに請求項10に記載の方法を実施させるためのプログラムコード手段を有する、請求項1から8の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影装置を動作させるためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ断層撮影(コンピュータトモグラフィ:CT)装置、CTシステム、CT装置を動作させる方法、及びCT装置を動作させるコンピュータプログラムに関する。特に、本発明は、スキャンパラメータ最適化のためのCT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
US 2014/0270053 A1は、臨床設定におけるCT放射線量を最適化するためのシステムを示している。数学的モデルが、デジタル画像データ及び放射線科医の好みに基づいて、患者サイズ(患者の寸法)、画像ノイズ、サイズ固有放射線量、及び画像品質目標を推定するために使用される。予測モデルは、スキャナの管電流変調を推定し、一連の患者サイズにわたる画像ノイズおよびサイズ固有の放射線量を予測する。最適化モデルは、可能な最小放射線量で目標画像品質を達成するために必要とされる特定のスキャナ設定を計算する。自動化されたシステムは、前記数学的モデルに従って画像及び線量データを処理し、情報を記憶及び表示し、一貫した線量最適化の検証及び進行中の監視を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を最適化することを可能にするCT装置、CTシステム、CT装置を動作させる方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読取可能な媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様では、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を最適化するCT装置が提供される。該CT装置は、露光時間決定ユニットと、スキャンパラメータ決定ユニットとを備える。上記露光時間決定ユニットは、被写体のz軸に沿った露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流の最大要求値(max(mAs))と、被写体のスキャンに使用される管(チューブ)の最大利用可能管電流(max(mA))値とに基づいて、被写体固有の露光時間(ET)を決定するように構成される。利用可能な最大管電流値は、所与の焦点領域における管の最大電力および管電圧に依存する。露光時間積(mAs(z))プロファイルによるz軸依存管電流は、被写体のスキャンに対する線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿ったz軸依存被写体サイズ(object size(z))に基づくものである。前記スキャンパラメータ決定ユニットは、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を被写体固有ETに基づいて決定するように構成される。
【0005】
当該CT装置の露光時間決定ユニットはz軸に沿ったmax(mAs)及びmax(mA)に基づいて被写体固有ETを決定するように構成されているので、例えば、臨床上の問題に答えるために、被写体を分析するのに十分な被写体のスキャンの画像から被写体の関心のある詳細を導出することを可能にする画質を達成することを可能にするスキャンパラメータの値を決定することを可能にする、低減されたETを達成できる。当該CT装置は、適切なピクセルノイズを達成すると共に、動きアーチファクト(モーションアーチファクト)、特に患者の胸部及び腹部スキャンにおける、及びCT血管造影(CTA)における動きアーチファクトを低減することを可能にする。被写体特有のETが被写体のスキャンのために決定されるので、長すぎるETが回避され、このことは動きアーチファクトを低減する。さらに、被写体のスキャンのために被写体固有のETが決定されるので、短すぎるETが回避される。ETが短すぎると、クリップしたmAs(z)プロファイルにつながる可能性があり、その結果、画質の悪い画像、すなわち信号対雑音比の悪い画像が生成される可能性がある。
【0006】
当該スキャンパラメータは、コリメーション開口、回転時間(RT)、ピッチ、線量、管の時間依存管電流(mA(t))プロファイル、管の時間依存電力(電力(t))プロファイル、および/または管の管電圧を含み得る。管は当該CT装置の一部であってもよいし、当該CT装置に接続されていてもよい。当該スキャンパラメータは、更に、ノイズ低減ツール、ノイズ低減レベル、再構成カーネル、及び/又はスライス厚に関する値を含み得る。当該スキャンパラメータのうちの1つ以上は、被写体のスキャン中に、例えば、コリメーション開口、RT、及び/又はピッチのように一定であり得る。当該スキャンパラメータのうちの1つまたは複数は、被写体のスキャン中に、例えば、mA(t)プロファイルおよび/または電力(t)プロファイルのように、時間に依存し得る。当該スキャンパラメータは、例えば、コリメーション開口、RT、及びピッチであり得る。該スキャンパラメータは、例えば、コリメーション開口、RT、ピッチ、および線量であってもよい。当該被写体は、例えば、患者の身体の一部であってもよい。
【0007】
ETは、被写体のアイソセンタが照射される時間である。ETはET = RT/pitch = collimation/table speedとして表すことができ、ここで、RTは被写体の周りの管の回転時間(秒)であり、pitchは1回転におけるコリメーション開口に正規化したテーブル送りであり、collimationはアイソセンタレベルにおけるmm単位でのコリメーション開口であり、table speedはスキャンのために被写体が載置されるテーブルのmm/s単位での平行移動速度である。テーブルは、CT装置の一部であってもよいし、CT装置が接続されるCTシステムの一部であってもよい。テーブル速度は、table speed = collimation・pitch/RTとして計算できる。被写体固有ETは、ET = max(tube current by exposure time product)/max(tube current) = max(mAs)/max(mA)に基づいて決定できる。max(mA)は、管電圧および被写体のスキャンに使用される所与の焦点スポット面積における管の最大電力の関数である。また、max(mA)は、管の最大電力、管電圧、および焦点スポット面積を含む管の仕様の関数とすることができる。
【0008】
露光時間積(mAs)による管電流は、mAを管電流(mA)とすると、mAs = mA・RT/pitch = mA・ETのように表すことができる。被写体のz軸に沿ったmAsは、mAs(z)プロファイルとして表される。mAs(z)プロファイル及びmax(mAs)は、例えば、サーバ等の外部装置から無線又は有線接続を介して露光時間決定ユニットに供給でき、又はユーザからの入力として供給できる。mAs(z)プロファイルは、例えば、自動電流選択(ACS)、縦方向線量変調、および/または角度線量変調に基づいて、例えば、被写体のz軸に沿った被写体減衰および管電圧を考慮に入れた線量正当指標(DRI)、z軸線量変調(Z‐DOM)、および/または三次元線量変調(3D‐DOM)を使用して、当技術分野から知られている方法に基づいて生成できる。代替的に又は付加的に、露光時間決定ユニットは被写体のスキャンに対する線量指標値又はピクセルノイズ指標値、管電圧、及び被写体のz軸に沿った被写体サイズ(z)に基づいてmAs(z)プロファイル及びmax(mAs)を決定するように構成できる。線量指標値またはピクセルノイズ値、管電圧、および被写体のz軸に沿った被写体サイズ(z)は、例えば、サーバなどの外部装置から無線または有線接続を介して露光時間決定ユニットに供給でき、またはユーザからの入力として供給できる。被写体サイズ(z)は、被写体のz軸依存減衰プロファイルに対応する。
【0009】
動作時において、CT装置は、mAs(z)プロファイルに従って被写体のスキャンを実行するための入力として、時間依存mA(mA(t))プロファイルおよび被写体固有ETを使用する。同じmAs(z)プロファイルに従って被写体をスキャンすることを可能にするmA(t)プロファイルおよびETの多数の組み合わせが存在し、例えば、より短いスキャン時間、従ってより短いETおよびより高いmAを持つmA(t)プロファイル、並びにより長いスキャン時間、より長いET、およびより低いmAを有する別のmA(t)プロファイルが、同じmAs(z)プロファイルに従う被写体のスキャンにつながり得る。スキャン時間は、scan time = scan length/table speedと定義される。より短いスキャン時間と組み合わせたmA(t)プロファイルは、より長いスキャン時間を持つmA(t)プロファイルより短いETを持つ。スキャンに使用されるmA(t)プロファイルは、mAs(z)プロファイル、スキャンパラメータの決定された値、および被写体固有ETに基づいて生成できる。
【0010】
当該CT装置は、CTA、肺疾患、腹部疾患、外傷、脳卒中、または心臓緊急事態などにおいて、患者の身体の一部の画像を取得するための様々なシナリオで使用できる。取得された画像は、患者の身体の動き、または例えば肺、心臓、および腸などの器官のような患者の身体の一部に由来するモーションアーチファクトを有し得る。当該CT装置は、短いETが被写体のスキャンから生成された画像におけるより少ない動きアーチファクトをもたらすので、適切なピクセルノイズと減少した動きアーチファクトにより、十分な画質を達成することを可能にする。当該CT装置は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値の改善された決定を可能にする。該CT装置を使用して決定されるスキャンパラメータの値は、改善された画質、すなわち、改善された信号対雑音比を有する画像を達成することを可能にする。
【0011】
スキャンパラメータ決定ユニットは、a,b及びcが一定であるとしてFOM = (table speed)a/((exposure time)b・(dose length product)c)として定義される性能指数(FOM)を最大化することに基づいてスキャンパラメータの値を決定するように構成できる。被写体が患者の身体または患者の身体の一部である場合、当該CT装置のユーザは、スキャン中に患者が息を止めることを可能にするために、スキャンをできるだけ速く完了することに興味がある。テーブル速度は、コリメーション開口、ピッチ、およびRTに依存する。すなわち、table speed = collimation・pitch/RTである。より速いテーブル速度は、患者がより短い期間の間しか呼吸を保持する必要がないので、患者がより容易に呼吸を保持することを可能にし、このことは、スキャンから取得された画像におけるモーションアーチファクトを低減することを可能にする。コリメーション開口を増やすとテーブル速度は上がるが、ETも増加させる(即ち、ET = collimation/(table speed)であるからである)。FOMを最大化すると、コリメーション開口、ピッチ、RTなどのスキャンパラメータの最適化された値を見つけることができる。FOMを使用することにより、被写体の特定のスキャンのためのスキャンパラメータの最適化された値を決定するための最適化された被写体固有ETを見つけることができる。FOMは、a = 1, b =1, c = 0とすると、FOM = (table speed)/ETとなり得る。より高いFOM値は、より高いFOM値に対して動きアーチファクトを低減できるので、より良好な画質で被写体のスキャンから画像を取得することを可能にする。スキャンパラメータ決定ユニットは、スキャンされるべき被写体に応じて定数a、b、およびcを設定するように構成できる。例えば、CTA頸動脈検査では、b値よりも大きいa値を選択できる。この場合、頸部汚染を避けるために非常に速いスキャンが必要であり、また、頸動脈生体構造は動きアーチファクトに対する感応度が低いからである。例えば、肺スキャンについては値よりも大きいb値を選択できる。該スキャンから取得される画像には心臓運動に起因する動きアーチファクトが存在し、該動きアーチファクトはより短いETについて低減され得るからである。例えば、対象が乳児である場合、低いb及びc値が選択され、乳児の線量及びETを低減するために小児科スキャンが実行される。
【0012】
当該CT装置は、管態決定ユニットを備え得る。該管状態決定ユニットは、現在の管の状態を決定するように構成できる。現在の管状態は、例えば、管の現在の温度、管の現在の最大電力、または現在の最大管電圧を含み得る。管状態決定ユニットは、さらに、スキャンパラメータの決定された値および現在の管状態に基づいて、該管が被写体のスキャンを実行できるかどうかを決定するように構成できる。管は、スキャンパラメータの決定された値に基づいて該管が被写体のスキャンを実行できる場合にのみ、被写体のスキャンを実行するように構成できる。このことは、管の機能性を保証することを可能にする。現在の管能力がスキャンパラメータの値を使用してスキャンを実行することを可能にするときにのみ、被写体のスキャンが実行されるからである。さらに、このことは、潜在的に管を損傷し得るスキャンを防止することを可能にする。露光時間決定ユニットは、管がスキャンパラメータの決定された値に基づいてスキャンを実行できない場合に、被写体固有ETを増加させるように構成できる。スキャンパラメータ決定ユニットは、管がスキャンパラメータの決定された値に基づいてスキャンを実行できない場合に、mAs(z)プロファイルをクリップするように構成できる。このことは、たとえ管がスキャンパラメータの元々決定された値に基づいてスキャンを実行できなくても、被写体のスキャンを実行することを可能にする。被写体固有ETが増加される場合、スキャンパラメータ決定ユニットは、増加された被写体固有ETに基づいて、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの適合値を決定できる。これにより、スキャンパラメータの調整された値に基づいて被写体のスキャンを実行できる。
【0013】
前記管状態決定ユニットは、熱計算器ユニットとすることができる。該熱計算器ユニットは、スキャンパラメータの決定された値を使用した被写体のスキャン中に生成された熱が、現在の管状態およびスキャンパラメータの決定された値に基づいて、該管について許容可能であるかどうかを決定するように構成され得る。現在の管状態は、該管の現在の温度、または該管の1つ以上の部分、例えば、焦点領域、陽極本体、および/または管ハウジングの現在の温度を含み得る。このことは、管または管の1つ以上の部分を潜在的に損傷し得るスキャンの実行を防止することを可能にする。さらに、被写体のスキャンを当該管で行うことができるかどうかを決定するために、管温度に関する仮定は必要とされない。被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値は、スキャンパラメータの値を過大評価または過小評価する危険なしに決定できる。これにより、最適化されたmA(t)プロファイルを決定し、スキャンパラメータの最適化された値を提供できる。
【0014】
当該管状態決定ユニットは、スキャンパラメータの決定された値に基づいてスキャンを実行できるまでの期間を決定するように構成できる。例えば、管状態決定ユニットが熱計算器ユニットである場合、該熱計算器ユニットは、管が、被写体のスキャンがスキャンパラメータの決定された値に基づいて実行され得る温度まで冷却する期間を決定するように構成できる。これにより、ユーザは所定の待ち時間の後に、スキャンパラメータの決定された値に基づいて被写体のスキャンを実行できる。被写体のスキャンをより適切に計画するために、ユーザには待機時間について通知できる。
【0015】
前記スキャンパラメータ決定ユニットは、終了条件が生じるまで、スキャンパラメータの1つ以上の値を反復的に適応させるように構成できる。1つの終了条件は、例えば、管がスキャンパラメータの適合された値に基づいて被写体のスキャンを実行できることであり得る。別の終了条件は、2つの連続する反復ステップの間のスキャンパラメータの値の差が或る閾値未満であり得る。さらに別の終了条件は、ユーザが現在の反復ステップで決定されたスキャンパラメータの値に基づいてスキャンを実行するために手動で選択することであり得る。スキャンパラメータの値を反復的に適応させることにより、スキャンパラメータの改善された値を見つけることができる。
【0016】
当該スキャンパラメータ決定ユニットは、例えば、被写体固有ETを増加させることによって、各反復ステップにおいて被写体固有ETを適応させるように構成できる。スキャンパラメータ決定ユニットは、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの適合された値を、各反復ステップにおける適合された被写体固有ETに基づいて決定するように構成でき、管状態決定ユニットは、各反復ステップにおける現在の管状態を決定するように構成できると共に、管が被写体のスキャンを各反復ステップにおけるスキャンパラメータの適合値および現在の管状態に基づいて実行できるかどうかを決定するように構成できる。被写体特有のETを適合させることは、スキャンパラメータの適合された値につながる。スキャンパラメータの値は被写体特有のETに基づいて決定されるからである。
【0017】
スキャンパラメータには、コリメーション開口、RT、およびピッチを含み得る。スキャンパラメータは、コリメーション開口、RT、ピッチ、テーブル速度、及び/又は管電圧を含み得る。スキャンパラメータの適応された1つ以上の値は、例えば、コリメーション開口、RT、ピッチ、テーブル速度、及び/又は管電圧の値であり得る。被写体固有ETはコリメーション開口、RT、ピッチ、及びテーブル速度に依存するので、該被写体固有ETはスキャンパラメータの値を適応させることによっても適応させ得る。スキャンパラメータおよび被写体固有ETの値を反復的に適応させることにより、スキャンパラメータの改善された値を見つけることができ、より良好な画質がもたらされる。さらに、スキャンのための最大FOM値を有するが、現在の管の状態に基づいて管にとっては受け入れられないスキャンパラメータの決定された値を使用する代わりに、管が被写体のスキャンを実行することを可能にするようなスキャンパラメータの適合された値を使用できる。これにより、現在の管の状態に応じて、FOMに最適化されたスキャンパラメータの適合された値を用いて被写体のスキャンを実行することが可能になる。
【0018】
当該スキャンパラメータ決定ユニットは、キロボルトピーク(kVp)を、被写体固有のETを最小化する一方FOMを最大化する管電圧として選択するように構成できる。管電圧は、例えば、定電圧信号であり得る。kVpは、例えば、80、100、120または140 kVなどの、80~140kVの間の値とすることができる。スキャンパラメータ決定ユニットは、現在のkVpに対して、例えば、初期kVp又は現在の反復ステップのkVpに対して、管がサポートできる最大mAに達したときに管電圧を適応させるように構成できる。管電圧を上げることにより、より短い被写体固有のETを達成できる。スキャンパラメータ決定ユニットは、CT線量指標(CTDI)値が一定に保たれるように管電圧を適応させるよう構成できる。CTDIは、管電圧、mAs、およびコリメーション開口の関数である。スキャンパラメータ決定ユニットは、管電圧が増加されるとmAsが低下され、管電圧が低下されるとmAsが増加されるようにmAsを適合させることによりCTDIを一定に保つよう構成できる。これにより、ピクセルノイズをほぼ一定に保つことができる。一定のmAsにおけるCTDI値は、kVpの関数としてCTDI~kVpdと近似でき、ここで、定数dは管仕様に依存し、例えば、CTDI~kVp2.9である。kVpを変化させるためのmAs比は、線量がmAsに比例するので、kVp2.9に反比例する。即ち、(mAs1/mAs2) = (kVp2/kVp1)2.9である。mAs = mA・ETを使用すると、((mA1・ET1)/(mA2・ET2)) = (kVp2/kVp1)2.9が得られる。電力は、P = U・I = kVp・mAとして定義される。管の最大電力がkVp不変である場合、max(P1) = kVp1・max(mA1) = kVp2・max(mA2) = max(P2)及びmax(mA1)/max(mA2) = kVp2/kVp1が成り立つ。これは、最大mAの場合に((mA1・ET1)/(mA2・ET2)) = (kVp2/kVp1)2.9に挿入でき、(ET1/ET2) = (kVp2/kVp1)1.9となる。CTDI値を一定に保ちながら管電圧をkVp1からkVp2に増加させることにより、被写体固有ETを最大限(kVp2/kVp1)1.9に減少させ得る。
【0019】
当該スキャンパラメータ決定ユニットは、ETに依存したスキャンパラメータの値を含むルックアップテーブルに基づいてスキャンパラメータの値を決定するように構成できる。該ルックアップテーブルは、例えば、特定のETに関連付けられたコリメーション開口、RT、およびピッチなどのスキャンパラメータの値を含み得る。スキャンパラメータの値は、被写体のスキャンを実行するために使用されるCTシステムから利用可能な値のみを考慮する際にスキャンパラメータの値がFOMを最大化するように、ルックアップテーブルに設けることができる。このことは、被写体のスキャンのために当該CTシステムによって使用できると共に、被写体固有であり、且つ、該スキャンを実行するために使用されるCTシステムに特有であるスキャンパラメータの値を決定することを可能にする。例えば、40mm、60mm、及び80mmのアイソセンタレベルにおけるコリメーション開口を提供するようなCTシステムのためにルックアップテーブルが提供される場合、スキャンパラメータの値は、コリメーション開口が40mm、60mm、又は80mmのみとなり得るように最適化される。当該スキャンパラメータ決定ユニットは、スキャンパラメータの値を、ETに依存したスキャンパラメータの値を提供するスキャンパラメータ関数に基づいて決定するように構成することもできる。上記ルックアップテーブルおよびスキャンパラメータ関数は、被写体固有ETに依存してスキャンパラメータの値を容易に決定することを可能にする。
【0020】
当該CT装置は、被写体サイズ決定ユニットを備え得る。該被写体サイズ決定ユニットは、z軸に沿った被写体の被写体サイズ(z)を決定するように構成できる。該被写体サイズ決定ユニットは、被写体の2次元X線投影画像に基づいて、z軸に沿った被写体の被写体サイズ(z)を決定するように構成できる。被写体の2次元X線投影画像は、CT装置によって取得でき、又はCT装置に供給できる。
【0021】
当該CT装置は、管電力プロファイル生成ユニットを備え得る。該管電力プロファイル生成ユニットは、電力(t)プロファイルを生成するように構成される。該管電力プロファイル生成ユニットは、被写体固有ET、スキャンパラメータの決定された値、およびmAs(z)プロファイルに基づいてmA(t)プロファイルを生成するように構成できる。さらに、該管電力プロファイル生成ユニットは、mA(t)プロファイルおよび被写体のスキャンに使用される管電圧に基づいて、電力(t)プロファイルを決定するように構成できる。
【0022】
前記管状態決定ユニットは、当該管が電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できるかどうかを決定するように構成できる。電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値を、被写体のスキャンを実行するために使用できる。
【0023】
前記熱計算器ユニットは、電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンを実行するときに温度閾値を超えるかどうかを判定するように構成できる。該温度閾値は、スキャンパラメータの決定された値に基づいて被写体のスキャンが行われるときに管の少なくとも1つの部分が損傷される温度値と関連付けることができる。
【0024】
該熱計算器ユニットは、スキャンが特定の電力(t)プロファイルに対して実行され得る温度まで当該管が冷却する期間を、被写体のスキャンを実行できるまで、該電力(t)プロファイルの開始時における時間遅延をゼロ電力で反復的に加算することによって決定するように構成され得る。スキャンパラメータの決定された値を使用して管がスキャンを実行できるまでの期間は、加算された時間遅延に対応する。
【0025】
本発明のさらなる態様では、スパイラル(螺旋)CTシステムが提供される。該スパイラルCTシステムは、請求項1~9のいずれか1項に記載のCT装置又は該CT装置のいずれかの実施形態と、X線を放出するための管と、該スパイラルCTシステムを介しz軸に沿って被写体を平行移動させるように構成されたテーブルと、X線を受け取るための検出器とを備える。上記テーブルは、管から放射されたX線がテーブル上の被写体を透過し、且つ、X線が前記検出器により受け取られるように、管と検出器との間に配置される。スパイラルCTシステムは、管と検出器とを含む回転可能なガントリを備え、該ガントリは、スパイラルCTスキャンを行うためにテーブルがz軸に沿って平行移動されるときに、テーブル上の被写体の周りで管及び検出器を螺旋運動で回転させるように構成される。該スパイラルCTシステムは、被写体のスキャンを実行することによってCT画像を生成するように構成される。該CTシステムは、より少ない動きアーチファクトおよび適切なピクセルノイズで、改善された画質を達成することを可能にする。
【0026】
代替の実施形態では、上記CT装置は、X線を放出するための管と、当該スパイラルCTシステムを介しz軸に沿って被写体を平行移動させるように構成されたテーブルと、X線を受け取るための検出器とを備えるスパイラルCTシステムに接続できる。すなわち、該代替の実施形態では、CT装置はスパイラルCTシステムの一部ではない。
【0027】
本発明のさらなる態様では、請求項1~9のうちの1つまたは前記CT装置の任意の実施形態によるCT装置を動作させるための方法が提供される。この方法では、被写体固有ETが、被写体のz軸に沿ったmax(mAs)値と、該被写体のスキャンに使用される管のmax(mA)値とに基づいて決定される。該max(mA)値は、管電圧及び所与の焦点領域における管の最大電力に依存する。mAs(z)プロファイルは、被写体のスキャン対する線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿った被写体サイズ(z)に基づいている。被写体のスキャンのスキャンパラメータの値は、被写体固有のETに基づいて決定される。
【0028】
この方法は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値の改善された決定を可能にする。この方法を用いて決定されたスキャンパラメータの値は、改善された画質を達成することを可能にする。
【0029】
本方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含み得る:
- スキャンされるべき被写体のz軸に沿った被写体サイズ(z)、該被写体のスキャンのための線量指標値またはピクセルノイズ指標値、所与の焦点領域における管の最大電力、および被写体のスキャンのために管に印加される管電圧を供給するステップ;
- 管のmax(mA)値を管電圧および所与の焦点領域における管の最大電力に基づいて計算するステップ;
- z軸に沿ったmAs(z)プロファイルを、線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧およびz軸に沿った被写体サイズ(z)に基づいて計算するステップ;
- z軸に沿ったmax(mAs)を抽出するステップ;
- z軸に沿ったmax(mAs)値およびmax(mA)値に基づいて被写体固有ETを計算するステップ;
- 被写体固有ETに基づいて被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を決定するステップ;
- mA(t)プロファイルを、被写体固有ET、z軸に沿ったmAs(z)プロファイル、およびスキャンパラメータの決定された値に基づいて生成するステップ;及び/又は
- mA(t)プロファイルおよび被写体のスキャンのために管に印加される管電圧に基づいて電力(t)プロファイルを生成するステップ。
【0030】
前記管および該管が統合されたそれに従うCTシステムは、電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値に基づいて動作させ得る。
【0031】
z軸に沿った被写体サイズ(z)は、被写体の画像に基づいて計算できる。z軸に沿った被写体サイズ(z)は、被写体の2次元投影画像、例えば、被写体の2次元X線投影画像に基づいて決定することもできる。z軸に沿った被写体サイズ(z)は、例えば、被写体のCT画像に基づいて計算できる。被写体は例えば、患者の身体の一部であってもよい。
【0032】
前記管電圧は、ユーザがkVp値として供給できる。管電圧は、例えばFOMを最大化する及び/又は被写体固有ETを最小化するkVp値を供給して、被写体のスキャンに対し最適化できる。
【0033】
被写体固有のETを計算するためのmax(mA)値は、被写体のスキャンに使用される管の最大電力、焦点面積、及び管電圧を含む管のタイプの関数とすることができる。
【0034】
スキャンパラメータの値は、スキャンパラメータのそれぞれの値が特定のETに関連付けられるように、ETの値およびスキャンパラメータの値を含むルックアップテーブル内のスキャンパラメータの値をルックアップすることによって決定できる。スキャンパラメータの値を決定するために、被写体固有のETを入力として使用できる。代わりに、ETに依存すると共に、ETに依存して1つ以上のスキャンパラメータの値を供給するスキャンパラメータ関数を設けることができる。
【0035】
スキャンパラメータは、コリメーション開口、RT、ピッチ、線量、および/または管電圧を含み得る。スキャンパラメータは、例えば、コリメーション、RT、及びピッチであってもよい。スキャンパラメータは、コリメーション、RT、ピッチ、および線量であってもよい。
【0036】
この方法は、さらに、
- 管の現在の管状態を決定するステップ、
を有することができる。
【0037】
現在の管状態は、例えば、管の現在の温度、管の現在の最大電力、または現在の最大管電圧を含み得る。現在の管状態は、例えば、管の1つ以上の部分、例えば、焦点領域、陽極体、及び/又は管ハウジングの現在の温度を含み得る。
【0038】
この方法は、さらに、
- 管が電力(t)プロファイルおよび管の現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できるかどうかを判定するステップ、
を含み得る。
【0039】
管が電力(t)プロファイルおよび管の現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できるかどうかを判定するステップは、熱計算器ユニットによって実行できる。熱計算器ユニットは、管のまたは管の部分の温度を現在の管状態として決定できる。熱計算器ユニットは電力(t)プロファイルおよび現在の管状態を入力として使用し、管が被写体のスキャンを実行できるかどうかを電力(t)プロファイルに基づいて判定できる。管は、動作が熱計算器ユニットによって承認された場合、電力(t)プロファイル及びスキャンパラメータの決定された値に基づいて動作させ得る。この方法は、電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンを実行するときに温度閾値を超えるかどうかを判定するステップを含み得る。この温度閾値は、スキャンパラメータの決定された値に基づいてスキャンが実行されるときに、管の少なくとも1つの部分が損傷される温度値と関連付けることができる。
【0040】
この方法は、以下のステップを含み得る:
- 管が電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できる場合には電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値に基づいて管を動作させるステップ、又は
- 管が電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できない場合にはスキャンパラメータの値を適応させるステップ。
【0041】
管が電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できない場合にスキャンパラメータの値を適応させる上記ステップは、被写体固有ETを増加させるステップ、またはmAs(z)プロファイルをクリッピングするステップを含み得る。スキャンパラメータの値は、増加された被写体固有ETに基づいて、例えば、増加された被写体固有ETに関連するルックアップテーブル内のスキャンパラメータの値を選択することによって、適応させ得る。管が電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて被写体のスキャンを実行できない場合に被写体固有ETが増加されるか、または、mAs(z)プロファイルがクリップされるかは、被写体のスキャンが実行されるタスク、例えば、被写体のスキャンを実行することによって答えられるべき臨床的な問題に基づいて決定され得る。
【0042】
この方法は、以下のステップを含み得る:
- スキャンパラメータの決定された値を有する特定の電力(t)プロファイルに基づいて、被写体のスキャンを実行できる温度まで管が冷却する期間を決定するステップ。
【0043】
管が冷却する期間は、適応された電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいてスキャンを実行できるまで、電力(t)プロファイルの開始時における時間遅延をゼロ電力で反復的に加算することによって決定できる。管が特定の電力(t)プロファイルを使用してスキャンを実行できるまでの期間は、加算された時間遅延に対応する。
【0044】
スキャンパラメータの値は、管、CT装置、またはCTシステムを動作させるために使用でき、又は管の現在の管状態に応じてさらに最適化できる。
【0045】
この方法は、終了条件が生じるまで、スキャンパラメータの値を反復的に適応させるステップを含み得る。1つの終了条件は、例えば、管がスキャンパラメータの適応された値に基づいて被写体のスキャンを実行できることであり得る。別の終了条件は、2つの連続する反復ステップの間のスキャンパラメータの値の差が閾値未満であり得る。さらに別の終了条件は、ユーザが現在の反復ステップで決定されたスキャンパラメータの値に基づいて、スキャンを実行するように手動で選択することであり得る。スキャンパラメータの値を反復的に適応させることにより、スキャンパラメータの改善された値を見つけることができる。
【0046】
本発明のさらなる態様では、請求項1~9のうちの1つまたはCT装置の任意の実施形態によるCT装置を動作させるためのコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、該コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、該プロセッサに、請求項11に記載の方法または該方法の任意の実施形態を実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0047】
さらなる態様では、請求項14のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な媒体が提供される。代替的にまたは追加的に、該コンピュータ読取可能な媒体は、上記コンピュータプログラムの任意の実施形態に係るコンピュータプログラムを記憶させ得る。
【0048】
請求項1に記載のCT装置、請求項11に記載の方法、請求項14に記載のコンピュータプログラム、および請求項15に記載のコンピュータ読取可能な媒体は、特に従属請求項に規定されるような、類似および/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0049】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項または上記の実施形態と、それぞれの独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。
【0050】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、CT装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【
図2A】
図2Aは、被写体のスキャンのための第1のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。
【
図2B】
図2Bは、第1のmAs(z)プロファイルを生成するために使用できる第1のmA(t)プロファイルを概略的に示す。
【
図2C】
図2Cは、第1のmAs(z)プロファイルを生成するために使用できる第2のmA(t)プロファイルを概略的に示す。
【
図3】
図3は、縦軸にアーチファクト指標を、横軸にETを有するグラフを示す。
【
図4A】
図4Aは、被写体のスキャンのための第2のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。
【
図4B】
図4Bは、第2のmAs(z)プロファイルを生成するために使用できるmA(t)プロファイルのクリッピングを概略的かつ例示的に示す。
【
図4C】
図4Cは、クリップされた第2のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。
【
図6】
図6は、CT装置を動作させるための方法の第1の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、CT装置を動作させるための方法の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、CT装置10の一実施形態を概略的かつ例示的に示す。CT装置10は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を最適化するために使用できる。被写体は、患者の身体の一部であってもよい。CT装置10は、例えば、患者の身体の画像又は患者の身体の部分の画像を取得するためにCTAにおいて使用できる。
【0053】
CT装置10は、プロセッサ12を備え、該プロセッサ12は、この実施形態では、被写体サイズ決定ユニット14と、露出時間決定ユニット16と、スキャンパラメータ決定ユニット18と、管電力プロファイル生成ユニット20と、熱計算器ユニット22の形態の管状態決定ユニットと、メモリ24の形態のコンピュータ読取可能な媒体とを含む。他の実施形態において、上記露光時間決定ユニット、スキャンパラメータ決定ユニット、管状態決定ユニット、被写体サイズ決定ユニット、管電力プロファイル生成ユニットは、集積回路として実施化できる。さらに他の実施形態では、CT装置が露光時間決定ユニットおよびスキャンパラメータ決定ユニットのみを含む。管状態決定ユニット、被写体サイズ決定ユニット、管電力プロファイル生成ユニット、およびコンピュータ読取可能な媒体は任意選択的である。
【0054】
被写体サイズ決定ユニット14は、被写体の2次元X線投影画像に基づいて、z軸に沿った被写体サイズ(z)を決定する。被写体サイズ(z)は、被写体のz軸に沿った減衰プロファイルに対応する。この実施形態における被写体の2次元X線投影画像は、CT装置10を統合できるCTシステムによって供給される(
図5参照)。他の実施形態では、画像は当該CT装置によって取得でき、又はサーバ(図示せず)から該CT装置に供給できる。
【0055】
露光時間決定ユニット16は、被写体固有ETを決定するために使用される。本実施形態において被写体固有のETを決定するために、露光時間決定ユニット16は、まず、被写体のスキャンの線量指標値又はピクセルノイズ指標値、被写体のスキャンに用いられる管に印加される管電圧及びz軸に沿った被写体の大きさ(z)に基づいて、被写体のz軸に沿ったmAs(z)プロファイル及びmax(mAs)値を決定する。この実施形態では、線量指標値またはピクセルノイズ指標値および管電圧は、ユーザインターフェース(図示せず)を介してユーザによって提供される。z軸に沿った被写体サイズ(z)は、被写体サイズ決定ユニット14から露光時間決定ユニット16に供給される。他の実施形態では、線量指標値、ピクセルノイズ指標値、管電圧およびz軸に沿った被写体サイズ(z)は、ユーザが提供でき、または自動的に受信できる。
【0056】
次いで、露光時間決定ユニット16は、管の仕様及び管電圧に基づいて、max(mA)値を決定する。管の仕様は、管の種類によって決まり、管の種類には焦点面積、最大管電圧、所定の焦点面積における最大電力が含まれる。露光時間決定ユニット16は、最終的に、被写体のz軸に沿ったmax(mAs)値およびmax(mA)値に基づいて被写体固有ETを決定する。すなわち、この実施形態では、被写体固ET = max(mAs)/max(mA)となる。このことは、モーションアーチファクトを最小化することを可能にする。モーションアーチファクトは可能な限り短い被写体固有ETに対して、すなわち、mAが最大化されるときに最小化されるからである。被写体固有ETは、被写体のスキャンに使用されるRTおよびピッチに依存し、コリメーション開口およびテーブル速度に基づいて定義することもできる。すなわち、ET = RT/pitch = collimation/(table speed)である。該テーブル速度は、(table speed) = collimation・(pitch/RT)と定義することができる。
【0057】
スキャンパラメータ決定ユニット18は、スキャンパラメータの値を決定する。スキャンパラメータの値は、テーブル速度、コリメーション開口、RT、ピッチ、線量、mA(t)プロファイル、電力(t)プロファイル、および/または管電圧を含み得る。スキャンパラメータは、更に、ノイズ低減ツール、ノイズ低減レベル、再構成カーネル、及び/又はスライス厚に対する値を含み得る。スライス厚の適応された値は、例えば、クリップされたmAs(z)プロファイルの場合、すなわち、スキャンを実行するために使用される管がmAs(z)プロファイルをサポートしない場合、ピクセルノイズの増加を補償するために使用できる。本実施形態では、コリメーション開口、RT、ピッチは、スキャンパラメータ決定ユニット18によって被写体固有ETに基づいて決定される。スキャンパラメータの他の値、特にmA(t)プロファイルおよび電力(t)プロファイルは、管電力プロファイル生成ユニット20によって生成される。
【0058】
コリメーション開口、RTおよびピッチの値を決定するために、スキャンパラメータ決定ユニット18はFOMを最大化する。この実施形態では、FOMはFOM = (table speed)/ETと定義される。他の実施形態では、FOMは、FOM = (table speed)
a/((exposure time)
b・(dose length product)
c)とすることができ、ここで、a,b及びcは一定である。すなわち、
図1の実施形態では、aおよびbは1に等しく、cは0に等しい。a、b、およびcの値は、スキャンされるべき被写体および該スキャンに関連する臨床上の問題に依存する。例えば、CTA頸動脈の検査では、b値よりも大きいa値を選択できる。この場合、頸部汚染を避けるために非常に速いスキャンが必要であり、また、頸動脈生体構造は動きアーチファクトに対する感度が低いからである。例えば、肺スキャンについてはa値よりも大きいb値が選択され得る。心臓運動に起因する動きアーチファクトが該スキャンから取得される画像に存在し、動きアーチファクトはより短いETについて低減され得るからである。例えば、対象が乳児であり、乳児の線量及びETを低減するために小児科スキャンが実行される場合、低いb及びc値が選択される。
【0059】
この実施形態では、スキャンパラメータ決定ユニット18は、入力として被写体固有ETを使用し、ETに依存したスキャンパラメータの値を含むルックアップテーブルに基づいてスキャンパラメータの値を決定する。この実施形態において、該ルックアップテーブルは以下の形式を有する:
【0060】
【0061】
ET、ピッチ、およびFOM値は各行において異なるが、3つのスキャンパラメータ値のうちの2つ、例えばコリメーション開口およびRTは、2つ以上の行について等しくすることができる。該ルックアップテーブルは、最大化されたFOMに従ってソートされる。すなわち、FOM1が最大値を持ち、続くFOM値,FOM2,…,FOMn-3,FOMn-2,FOMn-1,FOMnが、それぞれ、先行するFOMより小さい値を持つ。FOM値の各々は、ET、コリメーション開口、RT、およびピッチの値を含むパラメータ値の組に関連付けられる。FOM値は、他のタスクに対して相違し得る。例えば、他の臨床上の問題の場合、FOMを計算するために異なる式が使用されるので、パラメータ値組は、異なるFOM値をもたらす。FOMは定数a、b、およびcに依存し、その結果、臨床的問題に応じて、ルックアップテーブルは、例えば、低減されたピクセルノイズまたは低減された線量のためのスキャンパラメータの値を提供するためにソートされ得る。他の実施形態では、ルックアップテーブルは、他の及び/又はより多くの又はより少ないエントリ、例えば、より多くのETのためにより多くの行を有する。ルックアップテーブルは、例えば、ET、コリメーション、RT、及びピッチの列のみを有することもできる。この場合、テーブル速度およびFOMなどの他のパラメータは、ルックアップテーブルに含まれるパラメータの値に基づいて計算される。
【0062】
さらに他の実施形態では、当該スキャンパラメータ決定ユニットは、ETに依存したスキャンパラメータの値を供給するスキャンパラメータ関数への入力として被写体固有ETを使用する。
【0063】
ルックアップテーブル内のパラメータの値、およびスキャンパラメータ関数に基づいて決定できるパラメータの値は、スキャンされるべき被写体および該被写体のスキャンを実行するために使用されるスパイラルCTシステムに固有である。すなわち、ルックアップテーブルおよびスキャンパラメータ関数は、スパイラルCTシステムの制限を含む。該スパイラルCTシステムの制限には、テーブル速度、コリメーション開口、RT、ピッチ、およびmax(mA)に対する制限が含まれる。このため、例えば当該スパイラルCTシステムがコリメーション開口に対して限られた数の値しか提供しない場合、該ルックアップテーブルには、コリメーション開口に対するこれらの値のみが含まれるであろう。これにより、被写体のスキャンに使用でき、スキャンを実行するために使用されるスパイラルCTシステムに特有であるだけでなく、被写体に特有であるスキャンパラメータの値を決定することが可能になる。
【0064】
管電力プロファイル生成ユニット20は、電力(t)プロファイルを生成するために使用される。第1のステップにおいて、管電力プロファイル生成ユニット20は、被写体固有ET、mAs(z)プロファイル、およびスキャンパラメータの決定された値に基づいてmA(t)プロファイルを生成する。第2のステップにおいて、管電力プロファイル生成ユニット20は、該mA(t)プロファイルと、被写体のスキャンに使用される管電圧とに基づいて、電力(t)プロファイルを決定する。該電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値は、被写体のスキャンを実行するために使用できる。
【0065】
この実施形態では、被写体のスキャンが実行される前に、管が被写体のスキャンを実行できるかどうかが判定される。すなわち、管がスキャンを現在サポートしているかどうかが判定される。これは、熱計算器ユニット22によって行われる。
【0066】
熱計算器ユニット22は、現在の管状態を決定する。この実施形態における現在の管の状態は、管の焦点領域の現在の温度である。他の実施形態では、現在の管状態は、管の現在の温度、または管の1つまたは複数の部分、例えば、焦点領域、陽極本体、および/または管ハウジングの現在の温度を含み得る。
【0067】
熱計算器ユニット22は、スキャンパラメータの決定された値および現在の管状態(すなわち、焦点領域の現在の温度)に基づいて、管が被写体のスキャンを実行できるかどうかを決定する。これは、スキャンパラメータの決定された値を使用した被写体のスキャン中に生成される熱が当該管にとり許容可能であるかどうかを、現在の管状態およびスキャンパラメータの決定された値に基づいて判定することによって行われる。特に、熱計算器ユニット22は、管が被写体のスキャンを実行できるかどうかを、現在の管状態および管電力プロファイル生成ユニット20によって生成される電力(t)プロファイルに基づいて判断する。したがって、熱計算器ユニット22は、電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンを行うときに温度閾値を超えるか否かを判断する。該温度閾値は、電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンが実行されるときに焦点スポット領域が損傷される温度値に関連付けることができる。該温度閾値は、電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンが実行されるときに、管の任意の他の部分が損傷される温度に関連付けることもできる。
【0068】
この実施形態における熱計算器ユニット22は、管がスキャンパラメータの決定された値に基づいて被写体のスキャンを実行できるときのみ、該管に被写体のスキャンを実行させる。すなわち、熱計算器ユニット22は、管が当該スキャンをサポートする場合にスキャンを承認するか、または管が当該スキャンをサポートしない場合にスキャンを承認しないかのいずれかである。このことは、管の機能性を保証することを可能にする。被写体のスキャンは、現在の管能力がスキャンパラメータの決定された値を使用してスキャンを実行することを許容するときにのみ、実行されるからである。さらに、このことは、管、特に焦点領域を潜在的に損傷し得るスキャンを防止することを可能にする。他の実施形態では、熱計算器ユニット22は、スキャンパラメータの決定された値を使用した被写体のスキャンに関し、温度閾値の超過に関する警告をユーザに提供するだけであってもよい。
【0069】
熱計算器ユニット22がスキャンパラメータの決定された値および現在の管状態に基づいて、管が被写体のスキャンを実行できないと決定した場合、スキャンパラメータ決定ユニット18は、終了条件が生じるまで、スキャンパラメータの1つまたは複数の値を反復的に適応させ得る。この実施形態では、終了条件は、管がスキャンパラメータの適応された値に基づいて被写体のスキャンを実行できることである。他の実施形態では、終了条件は、例えば、2つの連続する反復ステップの間のスキャンパラメータの値の差が閾値未満であり得る。該閾値は、例えば、ユーザが設定できる。ユーザは閾値を、パーセンテージとして、および/または各スキャンパラメータに対して個別に設定することもできる。別の終了条件は、例えば、最大反復回数に達したこと、または所定の期間、例えば管の冷却期間、が経過したことであり得る。
【0070】
この実施形態では、スキャンパラメータ決定ユニット18は、被写体固有ETを適応させ、mA(t)プロファイルをクリップし(
図4B参照)、またはスキャンがスキャンパラメータの現在決定された値で実行され得るまで待機する。スキャンパラメータ決定ユニット18が被写体固有ETを適応させるか、mA(t)プロファイルをクリップするか、または待機するかは、スキャンされるべき被写体、および何の情報をユーザが取得することを望むかに依存する。すなわち、このことは、特に、臨床上の問題に依存する。
【0071】
この実施形態において、スキャンパラメータ決定ユニット18は、被写体固有ETが適応された反復回数をカウントする反復カウンタを含む。スキャンパラメータ決定ユニット18は、反復カウンタが所定の数未満、例えば6未満である場合にのみ、被写体固有ETを適応させる。この実施形態におけるスキャンパラメータ決定ユニット18は、さらに、クリップされたmA(t)プロファイルのmax(mA)値が、元のmA(t)プロファイル(すなわち、管電力プロファイル生成ユニット20によって元々決定されたmA(t)プロファイル)のmax(mA)値の所定の閾値パーセンテージ(例えば30%)を下回っている場合には、mA(t)プロファイルをクリップしない。上記所定の数および所定の閾値パーセンテージは、スキャンされるべき被写体、および当該スキャンによって回答されることが意図される臨床上の問題に依存する。
【0072】
スキャンパラメータ決定ユニット18は、被写体固有ETを、該被写体固有ETを増加させる、すなわち該被写体固有ETを延長することによって適応させる。この実施形態では、ルックアップテーブルの次の行のスキャンパラメータの値が適応された値として使用される。例えば、ET1に関連するスキャンパラメータの決定された値を使用する代わりに、ET2に関連するスキャンパラメータの値が第1の反復ステップにおいて使用される。このことは、スキャンパラメータ決定ユニット18が、元々決定された値Coll1、RT1、およびPitch1の代わりに、値Coll1、RT1、およびPitch2を、現在の第1の反復ステップのスキャンパラメータの適応値として決定することを意味する。したがって、ET2も、ET1の代わりに対象固有のETとして使用される。スキャンパラメータのこれらの値及び増大された被写体固有ETは、次いで、管電力プロファイル生成ユニット20によって使用されて、適応された電力(t)プロファイルを生成する。熱計算器ユニット22は、現在の管状態を決定する。現在の管状態、すなわち管の温度は、管状態が決定されてからある時間が経過するにつれて、2つの反復ステップの間で変化する。次いで、熱計算器ユニット22は、現在の管の状態および電力(t)プロファイルに基づいて、被写体のスキャンを実行できるかどうかを判定する。このことは、たとえ管がスキャンパラメータの元々決定された値に基づいてスキャンを実行できなくても、被写体のスキャンを実行することを可能にする。何故なら、電力(t)プロファイルは、被写体のスキャンを実行できるまで反復的に適応され得るからである。これにより、スキャンパラメータの適応された値に基づいて被写体のスキャンを実行できる。
【0073】
スキャンパラメータ決定ユニット18は、管から得られるmax(mA)を制限することによりmA(t)プロファイルをクリップする。したがって、クリップされたmA(t)プロファイルは、被写体固有ETと組み合わせてクリップされたmAs(z)プロファイルを生成するmax(mA)を有する。クリップされたmA(t)プロファイルは、適応された電力(t)プロファイルを生成する管電力プロファイル生成ユニット20に供給される。熱計算器ユニット22は、管が現在の管状態および適応された電力(t)プロファイルに基づいて被写体のスキャンを実行できるかどうかを判定する。
【0074】
熱状態計算器ユニット22がスキャンパラメータの決定された値および現在の管状態に基づいて管が被写体のスキャンを実行できると決定した場合、被写体のスキャンを実行できる。この実施形態では、ディスプレイがスキャンに使用できるスキャンパラメータの値をユーザに知らせる。さらに、該ディスプレイは、スキャンに使用可能なスキャンパラメータの値がスキャンパラメータの元々決定された値であるか、又はそれらが適応されているかどうかをユーザに知らせる。当該値が適応されていた場合、ユーザには、元々決定されたスキャンパラメータの値を用いてスキャンを実行するために管が冷却するのを待つ、またはスキャンパラメータの値を適応させるオプションが提供される。
【0075】
この実施形態では、上記ディスプレイは、スキャンパラメータの元々決定された値を使用するために管が冷却するのに必要な期間を追加的に表示する。管が冷却する期間は、熱計算器ユニット22により、スキャンが熱計算器ユニット22によって承認されるまで電力(t)プロファイルの開始時における時間遅延をゼロ電力で反復的に加算することによって決定される。スキャンパラメータの元々決定された値を使用して管がスキャンを実行できるまでの期間は、該加算された時間遅延に対応する。
【0076】
他の実施形態では、前記ディスプレイは、スキャンパラメータの値の反復的適応の間に決定されたスキャンパラメータの決定された値の全組と、被写体のスキャンを実行するためにスキャンパラメータの決定された値の各組を使用できるまでの対応する期間とを掲載できる。熱計算器ユニット22は、例えば臨床的な質問に答えるのに十分な特定の画質を達成することを可能にするスキャンパラメータの決定された値の組のうちの1つを使用できるように、所定の期間にわたり待機するための提案を提供するように構成することもできる。上記特定の画質は、例えば、臨床的な質問に応じて予め決定されてもよく、ユーザによって入力されてもよい。
【0077】
メモリ24には、当該CT装置を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、該コンピュータプログラムがプロセッサ12上で実行されるときに、該プロセッサ12に
図6および
図7に示すような方法の実施形態を実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0078】
図2Aは、被写体のスキャンのための第1のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。この実施形態における被写体は、患者の身体の一部である。特定のETと組み合わせて、第1のmAs(z)プロファイルを生成することを可能にする多数のmA(t)プロファイルが存在する。
【0079】
図2Bは、第1の被写体固有ETと組み合わせて第1のmAs(z)プロファイルを生成するために使用できる第1のmA(t)プロファイルを概略的に示す。
【0080】
図2Cは、第2の被写体固有ETと組み合わせて第1のmAs(z)プロファイルを生成するために使用できる第2のmA(t)プロファイルを概略的に示す。
【0081】
図3は、縦軸にアーチファクト指標AIをmm単位で、横軸にETを秒単位で示したグラフである。各データポイントは、それぞれの患者の胸部CTスキャンの臨床データセットに関連している。各データポイントは、(artifact index) = amplitude(number of slices with an artifact)と定義されるアーチファクト指標AIの値に対応する。すなわち、当該臨床データは、各患者の胸部CTスキャンの画像における、心臓二重壁アーチファクトが現れる各スキャンの各画像の数および該心臓二重壁アーチファクトの最大振幅に基づいて定義されるアーチファクト指標を表す。上記アーチファクトの最大振幅はmmでの最大アーチファクトサイズであり、全てのスライスは同一のスライス厚を有する。各胸部CTスキャンのアーチファクト指標AIは、ETの増加とともに増加する。ETを減少させることは、アーチファクト指標AIを減少させることを可能にする。
【0082】
図4Aは、被写体のスキャンのための第2のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。被写体のスキャンが、被写体固有ETに基づけば当該管を動作させ得る最大mA値を超えるmA値を必要とするようなmax(mAs)値を必要とするとき、該mAs値は、mA = mAs/ETから以下のようにクリップされる(
図4C参照)。
【0083】
図4Bは、mA(t)プロファイルのクリッピングを概略的かつ例示的に示す。使用されるETに対して、被写体のスキャンに使用される管は、第2のmAs(z)プロファイルを生成するのに必要なものよりも低いmax(mA)しか生成できない。
【0084】
図4Cは、当該ETと
図4BのクリップされたmA(t)プロファイルとの組み合わせによって生成された、クリップされた第2のmAs(z)プロファイルを概略的かつ例示的に示す。
【0085】
上記クリップされたmAs(z)プロファイルは、短いETが特定の臨床ニーズに不可欠であるため、特定の臨床問題に答えるのに十分な画質を有する画像を生成するのに有用であり得る。他の場合には、異なる臨床的な問題に答えることを可能にする一層良好な画質を有する画像を生成するために、ETを延長できる。
【0086】
図5は、スパイラルCTシステム30の一実施形態を示す。スパイラルCTシステム30は、CT装置10と、管32と、テーブル34と、検出器36とを含む。テーブル34は管32と検出器36との間に配置されており、管32から放射されたX線がテーブル34上に置かれた被写体を透過でき、X線が検出器36によって受け取られるようになっている。該スパイラルCTシステムの様々な特徴、例えば、静止ガントリ及び回転ガントリ、は当業者に知られており、詳細には示されていない。
【0087】
CT装置10は、テーブル34上に置かれた被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を供給する。管32は、テーブル34上に置かれた被写体を通って管32から検出器36に進むX線を放出する。テーブル34はテーブル速度でCTシステム30を通ってz軸に沿って平行移動する一方、管32および検出器36はX線投影画像を取得するために被写体の周りを螺旋運動で回転する。該X線投影画像は、被写体の3次元CT画像を生成するために処理できる。該3次元CT画像は、被写体を分析することを可能にする。被写体は例えば、患者または患者の身体の一部であり得る。患者または患者の身体の一部をスキャンして、臨床上の疑問に答えることができる。
【0088】
図6は、当該CT装置を動作させるための方法の第1の実施形態を示す。この方法を用いて動作されるCT装置は、例えば、
図1に示すようなCT装置の実施形態とすることができる。該CT装置は、スパイラルCTシステム、例えば
図5に示すスパイラルCTシステムに組み込むことができる。
【0089】
この方法では、被写体固有ETが、被写体のz軸に沿ったmax(mAs)値と、該被写体のスキャンに使用される管のmax(mA)値とに基づいて決定される。該max(mA)値は、管電圧と所与の焦点における管の最大電力とに依存する。当該mAs(z)プロファイルは、被写体のスキャンに対する線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿った被写体サイズ(z)に基づいている。被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値は、被写体固有のETに基づいて決定される。この方法は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値の改善された決定を可能にする。この方法を用いて決定されたスキャンパラメータの値は、改善された画質を達成することを可能にする。この実施形態では、患者の身体の一部がスキャンされる。他の実施形態では、他の被写体をスキャンできる。
【0090】
ステップ100において、スキャンされるべき患者の身体の部分のz軸に沿った患者サイズ(z) の形態の被写体サイズ(z)、スキャンされるべき身体の部分のスキャンのための線量指標値又はピクセルノイズ指標値、所与の焦点領域における管の最大電力、及びスキャンされるべき身体の部分のスキャンのために管に印加される管電圧が供給される。上記管電圧は、ユーザが選択したkVp値である。他の実施形態では、患者サイズ(z)の代わりに、被写体の被写体サイズ(z)を供給できる。この実施形態では、z軸に沿った患者サイズ(z)が、スキャンされるべき身体の部分の2次元X線投影画像に基づいて計算される。この実施形態における該2次元X線投影画像は、患者の初期スキャンから受信される。z軸に沿った患者サイズ(z)は、z軸に沿った減衰プロファイルに対応する。この実施形態では、z軸に沿った患者サイズ(z)は、患者の断面減衰特性を提供する円形の水ファントムの大きさを表す水相当直径によって表される。他の実施形態では、二次元X線投影画像をサーバから供給でき、又はz軸に沿った患者サイズ(z)を、他の方法で計算するか、または供給できる。
【0091】
ステップ110では、管のmax(mA)値が、管の電圧および所与の焦点における管の最大電力に基づいて計算される。
【0092】
ステップ120において、z軸に沿ったmAs(z)プロファイルが、線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿った患者サイズ(z)に基づいて計算される。
【0093】
ステップ130において、z軸に沿ったmax(mAs)が抽出される。
【0094】
ステップ140において、被写体固有ETが、z軸に沿ったmax(mAs)値およびmax(mA)値に基づいて計算される。
【0095】
ステップ150において、スキャンされるべき身体の部分のスキャンのためのスキャンパラメータの値が、被写体固有ETに基づいて決定される。この実施形態では、スキャンパラメータの値は、スキャンパラメータの各々の値が特定のETに関連付けられるようにしてETの値およびスキャンパラメータの値を含むルックアップテーブル内のスキャンパラメータの値をルックアップすることによって決定される。他の実施形態では、ETに依存し、且つ、ETに依存して1つまたは複数のスキャンパラメータの値を供給するようなスキャンパラメータ関数を設けることができる。この実施形態におけるスキャンパラメータは、コリメーション開口、RTおよびピッチである。他の実施形態では、スキャンパラメータがコリメーション開口、RT、ピッチ、線量、及び/又は管電圧を含み得る。上記ルックアップテーブルは、特定のFOMを最大化することに基づいて生成される。この実施形態では、FOMは、FOM = (table speed)/ETとして定義される。他の実施形態では、FOMは、FOM = (table speed)a/((exposure time)b・(dose length product)c)とすることができ、ここで、a,b及びcは一定である。当該ルックアップテーブルは、任意の他の方法で生成でき、例えば、当該値は、経験のあるユーザによって手動で選択できる。
【0096】
ステップ160においては、mA(t)プロファイルが、被写体固有ET、z軸に沿ったmAs(z)プロファイル、およびスキャンパラメータの決定された値に基づいて生成される。
【0097】
ステップ170では、上記mA(t)プロファイルおよび身体の一部のスキャンのために管に印加される管電圧に基づいて電力(t)プロファイルが生成される。
【0098】
ステップ180においては、当該管が上記電力(t)プロファイルおよび管の現在の管状態に基づいて身体の一部のスキャンを実行できるかを判断する。この実施形態では、管の陽極の焦点領域の現在の温度の形での現在の管状態が決定され、身体の部分のスキャンを行うことによって発生する熱が決定される。他の実施形態では、別の管状態および/または管の他の部分、例えば管ハウジングまたはアノードの温度を決定できる。現在の管の状況および身体の一部のスキャンによって発生された熱は、管が電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを実行できるかどうかを判断するために使用される。この実施形態では、スキャンパラメータの決定された値を用いて身体の一部のスキャン中に発生される熱が当該管に対して許容可能であるかどうかを、現在の管の状態およびスキャンパラメータの決定された値に基づいて判定する。これは、電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを実行するときに温度閾値を超えるかどうかを判定することによって行われる。該温度閾値は、スキャンパラメータの決定された値に基づいてスキャンが行われるときに、陽極の焦点領域が損傷を受ける温度値に関連付けられる。他の実施形態では、該温度閾値は管の他の部分の温度値に関連付けることもできる。
【0099】
管が、電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを実行できる場合、ステップ190が実行され、そうでない場合、ステップ200が実行される。
【0100】
この実施形態のステップ190では、ユーザは、スキャンに使用できるスキャンパラメータの値について通知される。ユーザは、ステップ220において、スキャンを実行するために、スキャンパラメータの決定された値に基づいて身体の一部のスキャンを実行するためのオプションを提供される。さらに、ユーザは、スキャンに使用可能なスキャンパラメータの値が本来決定されたパラメータではない場合に、本方法によって決定されたスキャンパラメータの値の他の組について知らされる。スキャンパラメータの適応値がある場合、ユーザは、スキャンパラメータの元々決定されたまたは特定の適応された値を用いてスキャンを実行するためにステップ230において管が冷却するのを待つための、またはステップ240においてスキャンパラメータの値を適応させるためのオプションを与えられる。この実施形態では、スキャンパラメータの値の特定の組をスキャンに使用できるようなレベルまで管が冷却する期間が決定され、本方法によって決定されたスキャンパラメータの値のすべての組についてユーザに表示される。他の実施形態では、該期間は、例えば、スキャンパラメータの元々決定された値について、ユーザによって要求されたときにのみ決定できる。管が冷却する期間は、ステップ180で実行される処理によって当該スキャンが承認されるまで、電力(t)プロファイルの始めの時間遅延をゼロ電力で反復的に加算することによって決定される。スキャンパラメータの値の特定のセットを使用して管がスキャンを実行できるまでの該期間は、加算された時間遅延に対応する。
【0101】
ステップ190において、ユーザがスキャンを実行することを決定した場合、ステップ220において、身体の一部のスキャンがスキャンパラメータの決定された値に基づいて実行される。この実施形態では、管が電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを行うことができれば、該管は電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値に基づいて動作される。
【0102】
ステップ190において、ユーザが、管が冷却されるのを待つことを決定した場合、ステップ230が実行され、本方法は管が冷却されるのを待つ。管がスキャンパラメータの元々決定されたまたは特定の適応された値に基づいてスキャンを実行することを可能にする温度まで冷却した後、ステップ220がスキャンパラメータの上記元々決定されたまたは特定の適応された値を使用して実行される。他の実施形態では、ステップ230に続いて、ステップ180を実行でき、このステップでは、現在の管状態と、スキャンパラメータの元々決定された値または特定の適応値とに基づいてスキャンを実行できるかどうかが決定される。スキャンパラメータの元々決定された値をスキャンに使用できる場合、ユーザは、ステップ190において、スキャンパラメータの元々決定された値に基づいてスキャンを実行するように提案され、次いで、ステップ220において、スキャンパラメータの該元々決定された値に基づいてスキャンを実行できる。
【0103】
ステップ190において、ユーザがスキャンパラメータの値を適応させることを決定した場合、ユーザはスキャンパラメータの値のいずれかを、すなわち、この実施形態ではコリメーション開口、RT、またはピッチを適応させ得る。他の実施形態では、他のスキャンパラメータ値を適応させるために利用できる。次いで、被写体固有ETがスキャンパラメータの該適応された値について計算され、ステップ150から始まる以前のステップが、適応された被写体固有ETに基づいて繰り返される。これは、スキャンパラメータの値を反復的に適応させることを可能にする。
【0104】
他の実施形態において、ステップ190は、終了条件が発生した場合にのみ身体の一部のスキャンが許可されるという制限を含み得る。該終了条件は、例えば、2つの連続する反復ステップの間のスキャンパラメータの値の差が閾値未満であり得る。該閾値は、ユーザが設定してもよいし、予め設定しておいてもよい。さらに他の実施形態では、ステップ190が、ユーザからのフィードバックなしに、またはユーザがフィードバックを与えることができる所定の時間の後に、スキャンを開始できる。
【0105】
ステップ200は、管が電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを実行できない場合、スキャンパラメータの値を適応させる。ステップ200は、サブステップ202、204、および206を含む。
【0106】
ステップ202では、ステップ204でmA(t)プロファイルがクリップされるかどうか、ステップ206でスキャンおよび被写体固有ETが延長されるかどうか、またはステップ208で管が冷却する期間が計算されるかどうかが判定される。対象固有ETが増加されるかどうか、mA(t)プロファイルがクリップされるかどうか、または管が冷却する期間が計算されるかどうかは、当該管が電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを実行できない場合、身体の一部のスキャンが実行される臨床的問題に基づいて決定され得る。臨床的問題の代わりに、他のあらゆるタスクを考慮してもよい。
【0107】
この実施形態では、被写体固有ETが延長される反復の回数が反復カウンタによってカウントされる。ステップ208は、この実施形態においては、被写体固有のETが延長された反復の回数が所定の閾値、例えば、6を超える、およびクリップされたmA(t)プロファイルのmax(mA)値が元のmA(t)プロファイルのmax(mA)値の所定の閾値パーセンテージ、例えば、25%を下回る、という条件下でのみ実行される。
【0108】
ステップ204において、mA(t)プロファイルは、時間軸に沿ってmax(mA)を制限することによってクリップされる。この実施形態では、時間軸に沿ったmax(mA)の該制限は、元のmA(t)プロファイルの所定の閾値パーセンテージ、例えば30%に制限される。他の実施形態では、所定の閾値パーセンテージがなくてもよく、または閾値パーセンテージはユーザによって入力されてもよい。クリップされたmA(t)プロファイルは、ステップ170において、適応された電力(t)プロファイルを生成するために使用される。
【0109】
ステップ206において、被写体固有ETは増加される。この実施形態では、被写体固有ETを増加させることは、スキャンパラメータの適応値を決定するために、ステップ150においてルックアップテーブルの次の行に移動することに対応する。ステップ150に続くステップが繰り返される。ステップ200は、管が適応された電力(t)プロファイルに基づいて身体の一部のスキャンを行うことができる場合に終了する反復サイクルをもたらし得る。
【0110】
ステップ208では、現在の電力(t)プロファイルに基づいてスキャンが実行され得る温度まで管が冷却する期間が決定される。すなわち、現在の電力(t)プロファイルに基づいて管が身体の一部のスキャンを実行できるまでに、どのくらいの時間を要するかが決定される。他の実施形態では、ステップ208が、元の電力(t)プロファイルまたは任意の他の適応された電力(t)プロファイルに基づいてスキャンを実行できる温度まで管が冷却するための期間の決定を含み得る。管が冷却する期間は表示され、ユーザに、スキャンパラメータのそれぞれの値を用いてスキャンを実行するためにステップ210において管が冷却するのを待つための、ステップ212においてスキャンパラメータの値を適応させるための、またはステップ180を実行するためのオプションが提供される。他の実施形態において、前記反復カウンタはステップ208が実行されるときにリセットできる。
【0111】
図7は、当該CT装置を動作させるための方法の第2の実施形態を示す。本方法のこの実施形態では、被写体固有のETを最適化するために管電圧を反復的に適応させ得る。
【0112】
所与の管電圧において、管を動作させ得るmax(mA)値に達した場合、管電圧を変化させることにより、被写体固有のETを減少させ得る。管電圧を変化させる場合に、ピクセルノイズを少なくともほぼ一定に保持できるように、CTDIを一定に保つ。この実施形態では、このことはETを最大で((kVp2)/(kVp1))1.9により低減することを可能にし、ここで、kVp2は管電圧の適応されたキロボルトピークであり、kVp1は管電圧の以前のキロボルトピークである。管電圧を適応させることは、高い管電圧のコントラストへの影響があまり関係なく、ETを減少させ得るスキャンにおいて動きアーチファクトを減少させるために使用できる。
【0113】
ステップ100~180およびステップ200~212は、
図6に示した方法の実施形態について提示されるようなステップに対応するが、ステップ100においてkVp
1値が現在の管電圧適応反復ステップの管電圧のkVp値として供給されるという相違点を有する。
【0114】
ステップ250では、ステップ206による1つ以上の反復が実行されたかどうか、すなわち、管がスキャンパラメータの適応値に基づいてスキャンを実行することを可能にするために、被写体固有ETが変更されたかどうかが判定される。
【0115】
ステップ206に従った1つ以上の反復が実行された場合、反復カウンタはゼロに設定され、ステップ260において管電圧はkVp2に増加される。スキャンパラメータの決定された値及びkVp2は、本方法のステップ110への入力として供給される。すなわち、kVp2が現在の管電圧適応反復ステップの管電圧となってkVp1を意味し、以下のステップは該適応された管電圧に基づいて繰り返される。
【0116】
反復が実行されていない場合、ステップ270において、max(mA)が絶対max(mA)、すなわち、管が現kVp1でサポートできる最大管電流に対応するかどうかが判定される。max(mA)が絶対max(mA)である場合、ステップ260で管電圧がkVp2に増加される。スキャンパラメータの決定された値及びkVp2は、本方法のステップ110へ入力として供給され、以下のステップが繰り返される。mAが絶対max(mA)でない場合、ステップ220において、身体の一部のスキャンがスキャンパラメータの決定された値に基づいて実行される。この実施形態において、管は電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定された値に基づいて動作される。
【0117】
本発明は図面および前述の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は図解的または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0118】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。
【0119】
特許請求の範囲において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。
【0120】
単一のユニット、プロセッサ、または装置は、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0121】
スキャンされるべき被写体のz軸に沿った被写体サイズ(z)、被写体のスキャンのための線量指標値またはピクセルノイズ指標値、所与の焦点領域に対する管の最大電力、および被写体のスキャンのために管に印加される管電圧を供給するステップ;管の最大利用可能管電流値を管電圧及び所与の焦点領域における管の最大電力に基づいて計算するステップ;線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿った被写体サイズ(z)に基づいて、z軸に沿ったmAs(z)プロファイルを計算するステップ;z軸に沿ったmax(mAs)値を抽出するステップ;z軸に沿ったmax(mAs)値およびmax(mA)値に基づいて被写体固有ETを計算するステップ;被写体固有ETに基づいて被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を決定するステップ;被写体固有ET、z軸に沿ったmA(t)プロファイル、およびスキャンパラメータの決定値に基づいてmA(t)プロファイルを生成するステップ;mA(t)プロファイル及び被写体のスキャンのために管に印加される管電圧に基づいて電力(t)プロファイルを生成するステップ;管の現在の管状体を決定するステップ;管が被写体のスキャンを実行できるかどうかを電力(t)プロファイルおよび現在の管状態に基づいて決定するステップ;電力(t)プロファイルに基づいて管が被写体のスキャンを実行できる場合に、電力(t)プロファイルおよびスキャンパラメータの決定値に基づいて管を動作させるステップ;被写体のスキャンをスキャンパラメータの決定値による特定の電力(t)プロファイルに基づいて実行できる温度まで管が冷却する期間を決定するステップ;管が被写体のスキャンを電力(t)プロファイルに基づいて実行できない場合に、スキャンパラメータの値を適応させるステップ;等の、1つ若しくはいくつかのユニットまたは装置によって実行される処理は、任意の他の数のユニットまたは装置によって実行することもできる。これらの処理および/または方法は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、および/または専用のハードウェアとして実現できる。
【0122】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体または他のハードウェアと一緒に、もしくはその一部として供給されるソリッドステート媒体などの適切な媒体上に格納/配布されてもよいが、インターネット、イーサネット、または他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して他の形態で配布されてもよい。
【0123】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0124】
本発明は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を最適化することに関する。被写体特有の露光時間は、被写体のz軸に沿った露光時間積によるz軸依存管電流の最大要求値と、被写体のスキャンに使用される管の最大利用可能管電流値とに基づいて決定される。利用可能な最大管電流値は、管電圧および所与の焦点スポット面積における管の最大電力に依存し、露光時間積プロファイルによるz軸依存管電流は、被写体のスキャンに対する線量指標値またはピクセルノイズ指標値、管電圧、およびz軸に沿ったz軸依存被写体サイズに基づく。被写体特有の露光時間は、被写体のスキャンのためのスキャンパラメータの値を決定するために使用される。スキャンにおいて使用されるとき、スキャンパラメータの値は、改善された画質を有する、すなわち改善された信号対雑音比を有する画像の取得を可能にする。