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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】集合継手及び配管構造、建物
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20220418BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20220418BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220418BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20220418BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20220418BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20220418BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20220418BHJP
   F16L 41/03 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
E04B1/94 F
E04B1/82 R
F16L1/00 D
F16L5/04
F16L5/00 A
F16L5/00 N
F16L41/03
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021180395
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2020217500の分割
【原出願日】2020-12-25
【審査請求日】2021-11-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069974(JP,A)
【文献】特開2001-011917(JP,A)
【文献】特開2015-086613(JP,A)
【文献】特開平03-177692(JP,A)
【文献】特開2003-227157(JP,A)
【文献】特開2017-061857(JP,A)
【文献】特開2020-204255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/126
E04B 1/94
E04B 1/82
F16L 1/00
F16L 5/04
F16L 5/00
F16L 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の最下階に設けられた床スラブの貫通孔に設置され、立管と脚部継手とを接続するための集合継手であって、
上方に設けられた立管接続部と、側方に設けられた横管接続部と、下方に設けられた直管接続部と、を備える集合部と、
前記直管接続部に接続される直管部と、
を備え、
前記集合部と前記直管部はポリ塩化ビニル系樹脂で形成され、
前記直管部は、上端に受口部が一体に成形された円筒であり、
前記受口部の開口端部から前記直管部の下端までの長さが500mm以下であり、
前記受口部と前記直管部との間に環状の突起が設けられ、
前記突起は、前記直管部の外面に設けられた凹みに対応して前記直管部の内側に設けられ、
前記突起と管軸方向に重なる位置に耐火材が設けられ、
前記突起および前記耐火材は前記貫通孔に位置し、
前記円筒の内径は、前記立管の内径より大きく、かつ、前記直管接続部の内径より小さく、
前記直管接続部は、前記受口部に挿入され、前記受口部と接着されて前記直管部と接続される、
集合継手。
【請求項2】
前記耐火材として複数の前記耐火材が積層されている、
請求項1に記載の集合継手。
【請求項3】
建物の最下階に設けられた床スラブの貫通孔に設置され、立管と脚部継手とを接続するための集合継手であって、
上方に設けられた立管接続部と、側方に設けられた横管接続部と、下方に設けられた直管接続部と、を備える集合部と、
前記直管接続部に接続される直管部と、
を備え、
前記集合部と前記直管部はポリ塩化ビニル系樹脂で形成され、
前記集合部の内側かつ前記横管接続部よりも上側に偏流板が設けられ、
前記直管部は、上端に受口部が一体に成形された円筒であり、
前記受口部の開口端部から前記直管部の下端までの長さが500mm以下であり、
前記受口部と前記直管部との間に環状の突起が設けられ、
前記円筒の内径は、前記立管の内径より大きく、かつ、前記直管接続部の内径より小さく、
前記直管接続部は、前記受口部に挿入され、前記受口部と接着されて前記直管部と接続される、
集合継手。
【請求項4】
建物の最下層部に用いられる配管構造であって、
立管と、
横枝管と、
脚部継手と、
請求項1からのいずれか1項に記載の集合継手と、
を備え、
前記集合継手の前記集合部には前記立管及び前記横枝管が接続され、
前記集合継手の前記直管部の下端は前記脚部継手に接続されている、
配管構造。
【請求項5】
請求項4に記載の配管構造を備えている、建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合継手及び配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅などの多層建物には、各階居室部の衛生機器等からの排水を導入する横枝管が設けられている。横枝管により運搬された排水は、集合継手により集約される。集約された排水は、集合継手の下部に接続された脚部継手を介して下水路に流される。
建物の最下層部(床下)における集合継手と脚部継手との接続について、排水管が占める空間を少なくするために、集合継手の下部を受口として、前記受口に挿入する立管の長さを調整する構造が開示されている(特許文献1)。
また、建物における床スラブの厚さに対応して、床スラブ集合継手と脚部継手との間の立管の長さを変更可能とする構造が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-69974号公報
【文献】特開2016-204837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の構造について、特許文献1の構造は上側に位置する集合継手側を受口としている。このため、受口と立管との間に隙間が生じたとき、その隙間から排水が漏れ出し、止水性が低下することがある。
また、特許文献2の構造は集合継手と、接続部材と、立管と、がそれぞれ別部材であることから部材が多く、コストが高くなる課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、接続部から排水が漏れ出しにくく、かつコストの低い集合継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る集合継手は、上方に設けられた立管接続部と、側方に設けられた横管接続部と、下方に設けられた直管接続部と、を備える集合部と、前記直管接続部に接続される直管部と、を備え、前記直管部の上端は拡径された受口部であり、前記直管接続部が前記受口部の内側に配置される。
【0007】
この発明によれば、直管接続部が受口部の内側に配置される。ここで、上側に位置する集合部が受口である場合と、下側に位置する直管部が受口である場合とについて比較する。
上側に位置する集合部が受口であるとき、受口と直管部との間に隙間が生じると、隙間に移動した排水は、重力に伴い下側に移動する。このとき、下側に位置する直管部よりも上側に位置する受口の方が外側に位置しているため、直管部によって排水をせき止めることができない。その結果、隙間から排水が漏れ出す。
【0008】
これに対し、下側に位置する直管部が受口であると、上述のように隙間に排水が移動しても、重力に逆らって上側に移動することはない。つまり、集合部の直管接続部が受口部の内側に挿入される構造とすることで、直管接続部と受口部との間に隙間が生じた場合でも、隙間から排水が漏れ出すことを防ぐことができる。よって、上側に位置する集合部を受口にする場合と比較して、止水性を確保することができる。
【0009】
更に、直管部の上端は拡径された受口部である。つまり、受口部は直管部の上端に一体に成形されている。これにより、集合継手の構成を集合部と直管部のみとすることができる。よって、部材の数を少なくすることによって、低コストとすることができる。
【0010】
また、前記受口部と前記直管部との間にテーパ部が設けられていてもよい。
【0011】
この発明によれば、受口部と直管部との間にテーパ部が設けられている。これにより、集合継手内を流れる排水が拡径部に接触したとき、流れが乱れることを防ぐことができる。よって、より排水性を向上することができる。
【0012】
また、前記直管部の内側に突起が設けられていてもよい。
【0013】
この種の集合継手では、多量の排水が一度に集合継手に流入したとき、集合継手および配管内を流れる排水の流速が増加し、結果として配管内が負圧となることがある。これにより、建物の設備によって設けられているトラップ封水が引き込まれる等の問題が発生し、十分な排水性能が得られないことがある。
この発明によれば、拡径部の内側に突起が設けられている。よって、直管部の内部に突起が設けられた分、排水の流速を減速することができる。これにより、上述の問題が発生することを防ぐことができる。
【0014】
また、前記直管接続部及び前記直管部の外側に遮音カバーが設けられていてもよい。
【0015】
この発明によれば、直管接続部及び直管部の外側に遮音カバーが設けられている。これにより、集合継手の内部に排水が流れたときに生じる排水音が、外部に伝播することを防ぐことができる。よって、集合継手の遮音性を確保することができる。
【0016】
また、本発明に係る配管構造は、建物の最下層部に用いられる配管構造であって、立管と、横枝管と、脚部継手と、前記の集合継手と、を備え前記集合継手の前記集合部には前記立管及び前記横枝管が接続され、前記集合継手の前記直管部の下端は前記脚部継手に接続されている。
【0017】
この発明によれば、本発明に係る集合継手の直管部の下端は脚部継手に接続されている。これにより、床下の空間や床スラブの厚さといった施工現場に合わせて調整可能な集合継手を備えた配管構造を、止水性を向上した上で更に低コストとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接続部から排水が漏れ出すことがなく、かつコストの低い集合継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る配管構造が施工された箇所を示す概要図である。
図2】本発明の一実施形態に係る集合継手の施工場所を示す断面図である。
図3図2の集合継手の直管部にテーパ部が設けられた場合を示す断面図である。
図4図2の集合継手の直管部に突起が設けられた場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る集合継手200及び配管構造1000を説明する。
図1に示すように、本実施形態の配管構造1000は、高層マンションや商業ビル等の多層階建物(建物)に適用された一例である。この種の建物においては、各階の便器、化粧台、流し台等の衛生機器(排水設備)から排出される排水が、排水路を構成する立管100に図示略の横枝管300を介し流入される。本実施形態における配管構造1000は、特に建物の最下層部に配置されるものとする。
図1に示すように、配管構造1000は、立管100と、集合継手200と、横枝管300と、脚部継手400と、横主管500と、を備える。
【0021】
立管100は、建物において上下方向に設けられている。各排水設備からの排水は、立管100に沿って建物の最下層まで流下し、立管100の下端部に接続された集合継手200と脚部継手400を介し横主管500に流れ込み、最終的に下水本管や浄化槽等に送られる。配管構造1000は、各階の排水設備からの排水を建物の外部に排出する。
立管100は、各階に設けられた排水設備からの排水を集合させて下方に導く。建物の最下階に設けられた立管100の下端部は、集合継手200に接続されている。
【0022】
集合継手200は、建物の最下階に設けられ、立管100から流入した排水と、横枝管300から流入した排水とを集合させる。集合継手200によって集合した排水は、脚部継手400に流下する。また、集合継手200の周囲には、遮音カバー240及び耐火材250が設けられている(詳細は後述する)。
【0023】
横枝管300は、建物において水平方向に設けられている。横枝管300は、建物に設けられた各排水部材に接続される。これにより、建物の各階で生じた排水を集合させる。本実施形態における横枝管300は、建物の最下階に設けられた集合継手200に接続されている。
【0024】
脚部継手400は、建物の床下に設けられている。脚部継手400は、L字型の形状を有し、上方から流下した排水を水平方向への移動に変換する。本実施形態において、脚部継手400の一方の端部には集合継手200の直管部220(後述する)が接続されている。脚部継手400の他方の端部には、横主管500が接続されている。脚部継手400の曲管部の中央付近には支持脚410が形成され、この支持脚410が図示略の支持金具等により支持される。横主管500は建物の床下に設けられ、不図示の下水本管や浄化槽等に接続されている。
【0025】
集合継手200は、集合部210と、直管部220と、を備える。上述の立管100及び横枝管300は集合部210に接続されている。集合部210に流入した排水は直管部220へと移動し、直管部220に接続された脚部継手400へと移動する。
集合部210は、本体部211と、立管接続部212と、横管接続部213と、を備える。
【0026】
本体部211は、集合部210に備えられた各構成品の中央に位置している。本実施形態において、本体部211の上方には立管接続部212が、側方には横管接続部213が設けられている。また、本体部211の内側には偏流板211Aが、本体部211の下部には直管接続部211Bが一体に成形されている。直管接続部211Bは、直管部220に向かって内径が徐々に拡径するように成形されている。
【0027】
偏流板211Aは、本体部211の内側に一体に成形された突起状の部位である。偏流板211Aは、本体部211において、横管接続部213が設けられている部位よりも上側に設けられる。
ここで、集合部210内に多量の排水が流入したとき、集合継手200および配管内を流れる排水の流速が増加し、結果として配管内が負圧となることがある。これに対し、立管100から本体部211内に流入した排水が偏流板211Aに接触すると、集合継手200内を流れる排水が偏流する。これにより、集合継手200及び立管100内において通気を取りやすくし、配管構造1000内における圧力変動を減らす役割を有する。
本体部211に設けられる偏流板211Aの数は任意に選択可能である。例えば、1箇所のみに設けられてもよいし、本体部211の内周面において間隔をあけて複数設けられていてもよい。また、偏流板211Aは後述する立管接続部212の取付部212Aの内部に設けられていてもよい。
【0028】
直管接続部211Bは、直管部220に挿入することで本体部211と直管部220とを接続する。直管接続部211Bは、本体部211の下部に一体に成形されている。本実施形態において、直管接続部211Bと直管部220との取付には、接着が好適に用いられる。
【0029】
ここで、本体部211の成形には、ポリ塩化ビニル系樹脂を用いた射出成型が好適に用いられる。このとき、射出成型の際に必要となるゲートが直管接続部211Bに設けられると、ゲート痕が直管接続部211Bと直管部220との接着に支障をきたすおそれがある。このため、本体部211における射出成型のゲートは、直管接続部211Bを避けて設けることが好ましい。なお、本体部211は透明としてもよい。この場合は、立管接続部212や横管接続部213との接合状態を容易に確認することができる。
直管接続部211Bの内径は、直管部220(後述する)の内径と同じか、より大きいことが好ましい。また、直管接続部211Bの外径は、直管部220の外径と同じか、より大きいことが好ましい。
【0030】
立管接続部212は、本体部211の上方に配置されている。本実施形態において、立管接続部212は、取付部212Aと、カバー部212Bと、ゴム輪212Cと、を備える。
取付部212Aは、立管接続部212と本体部211とを接続する筒状の部材である。取付部212Aには、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。立管接続部212と本体部211との取付は、例えば、接着が好適に用いられる。また、取付部212Aの内周面には、ゴム輪212Cが設けられている。
【0031】
ゴム輪212Cは、取付部212Aの内周面に設けられ、立管接続部212に接続された立管100と直接接する環状の部品である。これにより立管接続部212に接続された立管100との隙間をなくし、排水が漏れ出すことを防ぐ役割を有する。ゴム輪212Cには、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料が好適に用いられる。
【0032】
カバー部212Bは、取付部212A及びゴム輪212Cの端部を覆うように設けられた環状の部材である。これにより、取付部212Aからゴム輪212Cが脱落することを防ぐ役割を有する。カバー部212Bには、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。
【0033】
立管接続部212と立管100との接続は、立管100の下端部を縦管接続部内に挿入することで行う。このため、ゴム輪212Cの内径は、立管100の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、立管100が挿入されることで生じるゴム輪212Cの有する弾性力によって立管100を締め付け、立管接続部212と立管100とを固定する。 または、挿入された立管100と立管接続部212とを接着により固定してもよい。この場合、ゴム輪212Cは設けられていなくてもよい。
【0034】
立管接続部212への立管100の挿入量の確認には、任意の方法が用いられる。例えば、立管100に規定の挿入代を示すマーキングを施し、挿入時にマーキングの位置を目視する方法が挙げられる。
あるいは、立管接続部212の各構成部品を透明にすることで、立管接続部212の内部における立管100の挿入代を目視で確認してもよい。この場合は、挿入代の確認をより容易に行うことができる。
【0035】
横管接続部213は、本体部211の側方に配置されている。集合継手200に設けられる横管接続部213の数は、施工現場の条件や集合継手200の大きさ等に合わせて任意に設定可能である。
本実施形態において、横管接続部213は、取付部213Aと、カバー部213Bと、ゴム輪213Cと、を備える。
なお、横管接続部213は、横枝管300の挿入を規制するストッパーを設けていてもよい。このとき、ストッパーは本体部211の内部、または外部に位置するように設けられる。ストッパーが本体部211の外部にあり、横管接続部213が透明な場合には、横枝管300の挿入を外部から容易に確認できる。また、ストッパーが本体部211の内部にある場合、横枝管300を長くできるため適切な排水勾配にしやすい。
【0036】
取付部213Aは、横管接続部213と本体部211とを接続する筒状の部材である。取付部213Aには、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。横管接続部213と本体部211との取付は、例えば、接着が好適に用いられる。また、取付部213Aの内周面には、ゴム輪213Cが設けられている。
【0037】
ゴム輪213Cは、取付部213Aの内周面に設けられ、横管接続部213に接続された横管と直接接する環状の部品である。これにより横管接続部213に接続された横管との隙間をなくし、排水が漏れ出すことを防ぐ役割を有する。ゴム輪213Cには、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料が好適に用いられる。
【0038】
カバー部213Bは、取付部213A及びゴム輪213Cの端部を覆うように設けられた環状の部材である。これにより、取付部213Aからゴム輪213Cが脱落することを防ぐ役割を有する。カバー部213Bには、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。
【0039】
横管接続部213と横管との接続は、横管の下端部を縦管接続部内に挿入することで行う。このため、ゴム輪213Cの内径は、横管の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、横管が挿入されることで生じるゴム輪213Cの有する弾性力によって横管を締め付け、横管接続部213と横管とを固定する。
または、挿入された横管と横管接続部213とを接着により固定してもよい。この場合、ゴム輪213Cは設けられていなくてもよい。
【0040】
横管接続部213への横枝管300の挿入量の確認には、任意の方法が用いられる。例えば、横枝管300に規定の挿入代を示すマーキングを施し、挿入時にマーキングの位置を目視する方法が挙げられる。
あるいは、横管接続部213の各構成部品を透明にすることで、横管接続部213の内部における横枝管300の挿入代を目視で確認してもよい。この場合は、挿入代の確認をより容易に行うことができる。
【0041】
直管部220は、集合継手200の下方に設けられる部材である。直管部220の上端には上述の直管接続部211Bが接続される。また、直管部220の下端は脚部継手400に接続される。
直管部220は直線状の円筒であり、受口部220Aが一体に成形されている。直管接続部211Bは、受口部220Aに挿入されることで直管部220に接続される。直管接続部211Bと受口部220Aとの取付は、例えば、接着が好適に用いられるが、受口部220A内にゴム輪を設け、受口部220Aに直管接続部211Bを挿入することによってゴム輪を介して接続してもよい。
【0042】
直管部220及び受口部220Aの成形方法には、押出成形した管を受口加工(拡径)する方法や、射出成型による方法が挙げられる。また、直管部220にはポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。ここで、押出成形によると直管部220の内外径がどの部位においても一定になるのに対し、射出成型によると直管部220の管軸方向に抜き勾配による肉厚差や内外径差が生じる。このため、押出成形した管を受口加工することによる成形が好適に用いられる。
【0043】
図2に示すように、直管部220と受口部220Aとの境界は段差状(平坦な段差面)となっていてもよいが、図3に示すように、受口部220Aと直管部220との間にテーパ部220Bが設けられていることがより好ましい。特に、直管部220の内径が集合継手200の直管接続部211Bの内径よりも小さい場合、受口部220Aから直管部220にかけて排水の流れが乱れることを防ぐことができる。よって、排水性を向上することができる。
【0044】
また、図4に示すように、直管部220と受口部220Aとの境界に環状の突起部220Cを設けてもよい。ここで、図2および図3に示すような集合継手200では、多量の排水が一度に集合継手200に流入したとき、集合継手200および配管内を流れる排水の流速が増加し、結果として配管構造1000の内部が負圧となることがある。このとき、排水が突起部220Cを通過すると、通過後の排水の流速が低下する。つまり、配管構造1000内部を流れる排水の流速を減速し、配管内が負圧となることを防ぐことができる。なお、突起部220Cを設ける際は、直管部220の外面に凹みを設け、それに対応して直管部220の内面に突起部220Cが形成されるようにしてもよい。
【0045】
突起部220Cを設ける際には、射出成型が好適に用いられる。このとき、射出成型によるゲート痕が直管部220の外面、特に、脚部継手400に直管部220を挿入したとき、脚部継手400の受口と接触する部位にあると、ゲート痕と脚部継手400の受口との間に隙間が生じ、止水性が低下することがある。このため、射出成型のゲートは、直管部220の外面を避けて設けることが好ましい。また、排水性及び直管接続部との接続への影響を避けるため、ゲートは直管部及び受口部の内面を避けて設けることが好ましい。
【0046】
上記を鑑み、直管部220を射出成型する場合におけるゲートの設定部位には、下記が挙げられる。すなわち、例えば、脚部継手400の受口と直管部220の外面との間に隙間を生じさせることがないことから、直管部220の下端の端面、または下端の周辺にゲートを設けてもよい。
また、上述のように、脚部継手400に直管部220を接続する際、直管部220の下端を適宜切断することから、直管部220の下端部のみであればゲートを設けてもよい。
【0047】
また、脚部継手400が接続されないことから、直管部220の上端付近の外面であればゲートを設けてもよい。同様の理由で、直管部220における耐火材250が取付けられる箇所にゲートを設けてもよい。また、受口部220Aの外面にゲートを設けてもよい。
また、ゲートは複数設けてもよく、複数のゲート痕が直管部220の外面に形成されていてもよい。
【0048】
直管部220の大きさは施工現場の条件によって任意に選択可能であるが、特に呼び径100(外径114mm)や125(外径140mm)のもの、または150(外径165mm)のものが好適に用いられる。また、受口部220Aの内径は直管接続部211Bの外径と同じとすることが好ましく、直管部220の外径と同じか、より大きくすることがより好ましい。
また、直管部220の内径は立管100の内径と同じか、より大きいことが好ましい。 よって、集合継手200の一実施形態として、集合継手200を構成する各部の内径について、内径の小さい順に立管100、直管部220、直管接続部211B、受口部220Aとなる。これにより、立管100および横管接続部213からの排水が合流する集合部210の下部にある直管接続部211Bで排水が詰まりにくく、直管接続部211Bから下流側への排水をスムーズにできる。
【0049】
また、受口部220Aの開口端部から直管部下端までの長さは、600mm以下であることが好ましい。更に、500mm以下とすることがより好ましく、400mm以下とすることが最適である。
また、直管部220を脚部継手400に接続する際は、施工現場の寸法に合わせて直管部220を切断することで適宜長さを調整可能である。
【0050】
図2に示すように、直管接続部211Bと受口部220Aとの接続部は、建物におけるスラブSの貫通孔の内部に位置するよう配置される。このように集合継手200を設置した後、スラブSの貫通孔はモルタルMやロックウールなどの充填剤で埋設される。受口部220Aの上端は、スラブSの上面を超えないことが好ましい。このことで、集合継手200における横管接続部213とスラブSとの距離を小さくする。これにより、集合継手200に接続される横枝管300の排水勾配を取りやすくする。なお、本実施形態において、集合継手200の外側には、遮音カバー240及び耐火材250が設けられている。
【0051】
遮音カバー240は、集合継手200の内部を排水が流れることによって生じる音が、外部に伝播することを防ぐ役割を有する。また、直管接続部211Bと直管部220との接続部の周囲に密着して設けられることで、接続部の止水性を補完する役割も同時に有している。
遮音カバー240は、内層側に設けられる吸音材と、外層に設けられる遮音材とを備える構造が好適に用いられる(不図示)。
図2に示すように、遮音カバー240の上端は受口部220Aよりも上に設けられ、下端部はスラブSの下面部よりも下側に設けられることが好ましい。
【0052】
耐火材250は、集合継手200がスラブSに埋設されている部位において、直管部220の周囲に設けられる部材である。なお、耐火材250は、直管部220の全周囲に環状に設けられていてもよいし、間隔をあけて複数設けられていてもよいし、複数の耐火材250が積層されていてもよい。
耐火材250は、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性耐火材とバインダー樹脂とをシートに加工した耐火シートやバインダー樹脂と無機材料を混合したパテ状の耐火パテ、または環状に成形された耐火部材が好適に用いられる。耐火材250は、建物の火災時に熱膨張することで集合継手200の直管部220を変形させ、配管構造1000を閉塞する。これにより、配管構造1000の内部から火災時の煙が上層階へ移動することを防ぐ役割を有する。
【0053】
上述のように、耐火材250はスラブSに埋設されている部位に設けられる。このとき、耐火材250を受口部220Aの外面に設けると、スラブSの開口径を受口部220Aの外径に耐火材250の厚さを加えた径に合わせる必要があることから、スラブSの開口径が必要以上に大きくなる。このため、耐火材250は、直管部220における受口部220Aの下部に設けられることが好ましく、直管部220に設けられた耐火材250の外径は受口部220Aの外径を超えないことが好ましい。
なお、図2に示すように、受口部220Aと直管部220との境界にテーパ部220B又は突起部220Cが設けられている場合は、耐火材250は受口外面のテーパ部220B又は突起部220Cと重なってもよい。
また、上述のように、直管部220は、脚部継手400との接続部の位置に合わせて適宜切断される。このため、切断可能な直管部220の範囲をより大きくするため、耐火材250の高さ(スラブSの厚さ方向の長さ)は、20mm以上80mm以下の範囲とすることが好ましい。
耐火材250は少なくともスラブSに埋設される部位に設けられていればよく、耐火材250の一部がスラブSの貫通孔の外部に位置していてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る集合継手200によれば、直管接続部211Bが受口部220Aの内側に配置される。ここで、上側に位置する集合部210が受口である場合と、下側に位置する直管部220が受口である場合とについて比較する。
上側に位置する集合部210が受口であるとき、受口と直管部220との間に隙間が生じると、隙間に移動した排水は、重力に伴い下側に移動する。このとき、下側に位置する直管部220よりも上側に位置する受口の方が外側に位置しているため、直管部220によって排水をせき止めることができない。その結果、隙間から排水が漏れ出すおそれがある。
【0055】
これに対し、下側に位置する直管部220が受口であると、上述のように隙間に排水が移動しても、重力に逆らって上側に移動することはない。つまり、集合部210の直管接続部211Bが受口部220Aの内側に挿入される構造とすることで、直管接続部211Bと受口部220Aとの間に隙間が生じた場合でも、隙間から排水が漏れ出すことを防ぐことができる。よって、上側に位置する集合部210を受口にする場合と比較して、止水性を確保することができる。
【0056】
更に、直管部220の上端は拡径された受口部220Aである。つまり、受口部220Aは直管部220の上端に一体に成形されている。これにより、集合継手200の構成を集合部210と直管部220のみとすることができる。よって、部材の数を少なくすることによって、低コストとすることができる。
【0057】
また、受口部220Aと直管部220との間にテーパ部220Bが設けられている。これにより、集合継手200内を流れる排水が拡径部に接触したとき、流れが乱れることを防ぐことができる。よって、より排水性を向上することができる。
【0058】
この種の集合継手200では、多量の排水が一度に集合継手200に流入したとき、集合継手200および配管内を流れる排水の流速が増加し、結果として配管内が負圧となることがある。これにより、建物の設備によって設けられているトラップ封水が引き込まれる等の問題が発生し、十分な排水性能が得られないことがある。
また、拡径部の内側に突起が設けられている。よって、直管部220の内部に突起が設けられた分、排水の流速を減速することができる。これにより、上述の問題が発生することを防ぐことができる。
【0059】
また、直管接続部211B及び直管部220の外側に遮音カバー240が設けられている。これにより、集合継手200の内部に排水が流れたときに生じる排水音が、外部に伝播することを防ぐことができる。よって、集合継手200の遮音性を確保することができる。
【0060】
また、本発明に係る集合継手200の直管部220の下端は脚部継手400に接続されている。これにより、床下の空間や床スラブの厚さといった施工現場に合わせて調整可能な集合継手200を備えた配管構造1000を、止水性を向上した上で更に低コストとすることができる。
【0061】
本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、立管接続部212の取付部212A及び横管接続部213の取付部213Aは、本体部211に一体に成形されてもよい。
また、直管部220の材質には、熱膨張性耐火材(熱膨張性黒鉛)を含んでいてもよい。
また、集合部210や本体部211の周囲に着脱可能な遮音カバーを設けてもよい。これにより、集合継手200をスラブSの貫通孔に設置した後でも集合部210や本体部211に遮音カバーを設置することができる。
また、横管接続部213の周囲に遮音カバーを設けてもよく、横管接続部213がスラブSの上面と対向する位置に防振材を設けてもよい。これにより、横管接続部213で生じた音や振動をスラブSに伝搬させるのを防ぐことができる。
また、直管部220ではなく、集合部210の直管接続部211Bを長尺に形成し、長尺の直管接続部211Bを切断することで適宜長さを調整可能としてもよい。この場合、直管接続部211Bは直管部220以上の長さまたはスラブSの厚さ以上に成形されていてもよい。
また、耐火材250は直管部220の周囲ではなく、集合部210の直管接続部211Bの周囲に設けられていても良い。
また、直管接続部211Bと受口部220Aとの接続部は、建物におけるスラブS及びモルタルMの外部に位置するよう配置されていてもよい。例えば、横枝管300が高い位置にある場合には受口部220Aの上端をスラブSの上面よりも上側に配置し、高い位置にある横枝管300と横管接続部213とが接続できるようにしてもよいし、直管接続部211Bが長い場合には直管接続部211Bと受口部220Aとの接続部がスラブSの下面より下側に位置していてもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 立管
200 集合継手
210 集合部
211B 直管接続部
212 立管接続部
213 横管接続部
220 直管部
220A 受口部
220B テーパ部
240 遮音カバー
300 横枝管
400 脚部継手
1000 配管構造
【要約】
【課題】接続部から排水が漏れ出すことがなく、かつコストの低い集合継手を提供する。
【解決手段】集合継手200は、上方に設けられた立管接続部212と、側方に設けられた横管接続部213と、下方に設けられた直管接続部211Bと、を備える集合部210と、直管接続部211Bに接続される直管部220と、を備え、直管部220の上端は拡径された受口部220Aであり、直管接続部211Bが受口部220Aの内側に配置される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4