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特許7059444アリピプラゾールを有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】アリピプラゾールを有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20220418BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220418BHJP
   A61K 31/4515 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K31/496
A23L33/10
A61K31/4515
A61K31/5415
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021512344
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2019004900
(87)【国際公開番号】W WO2019212185
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051702
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028720
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520424179
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ レディオロジカル アンド メディカル サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF RADIOLOGICAL & MEDICAL SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】リム ヤン ビン
(72)【発明者】
【氏名】パク ミュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒョン ジ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0026115(KR,A)
【文献】特表2003-525854(JP,A)
【文献】Oncotarget,Vol.9, No.5,2018年,pp.5979-5992,Published: 2017.12.08
【文献】Med Sci Monit,2016年,Vol.22,pp.2624-2634
【文献】Radiation Oncology,2015年,Vol.10,Article No.158
【文献】Cancer Research,2002年,Vol.62,pp.313-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A23L 33/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びチオリダジンまたはハロペリドールから選択されるドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する、癌に対するアリピプラゾールの放射線敏感性増進用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、放射線照射による癌細胞のアポトーシスを誘導することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、癌細胞のPARP切断またはDNA断片化を誘導することを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、癌治療時に、放射線照射と併用して投与されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記癌は、乳癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、口腔癌、口腔咽頭癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌腫、膣癌腫、小腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、大腸癌または脳腫瘍であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項6】
アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びチオリダジンまたはハロペリドールから選択されるドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用薬学組成物。
【請求項7】
アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びチオリダジンまたはハロペリドールから選択されるドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリピプラゾールを有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物であって、より具体的には、放射線との併用治療時に、アリピプラゾールが放射線敏感剤として作用して癌を治療することができる放射線敏感性増進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療法は、手術、放射線治療法、及び抗癌化学療法に大きく分けられるが、全世界的に放射線治療を受ける癌患者の数が毎年増加している趨勢において、癌治療における放射線治療の重要性も高くなっているが、癌細胞の放射線耐性の獲得、高線量放射線治療時に、正常組織の損傷などが治療の効率を落とす副作用を伴う。放射線の副作用を減らし、耐性を克服するために、放射線と併用して投与する時、放射線の抗癌効果を増加させる放射線敏感剤に関する研究開発が行われている。
【0003】
アリピプラゾールは、その化学名7-{4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]-ブトキシ}-3,4-ジヒドロカルボスチリルまたは7-{4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]-ブトキシ}-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンである。アリピプラゾールは、ドーパミンD2受容体の強力な部分アゴニスト(partial agonist)であって、抗精神病治療剤として精神分裂症(schizophrenia)、双極性障害(bipolar disorder)、臨床的うつ病(clinical depression)などの治療に有用であると知られている。今まで、アリピプラゾールに対する薬理作用としては、中枢神経系及び神経疾患についてのみ限定されて研究されており、その技術も、薬物の溶解度及び吸収率を高めるためにのみ焦点を合わせて研究されているだけであり、アリピプラゾールの放射線敏感化の効果については全く知られておらず、これについての研究も全くない状態である。したがって、アリピプラゾールの放射線敏感化の効果についての研究及び開発の必要性が切実に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物を提供するところにある。
【0005】
また、本発明の目的は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物;を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすために、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物、癌に対する放射線治療補助用薬学組成物または癌に対する放射線治療補助用健康機能食品組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物、癌に対する放射線治療補助用薬学組成物または癌に対する放射線治療補助用健康機能食品組成物;を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、アリピプラゾールを有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物であって、より具体的には、放射線との併用治療時に、アリピプラゾールが放射線敏感剤として作用して癌を治療することができる放射線敏感性増進用組成物に関するものである。本発明による有効量のアリピプラゾールを放射線照射に併用して投与することにより、癌細胞の生存度を減少させ、癌細胞のアポトーシスを誘導するなど、放射線敏感性増進の効果に優れているので、放射線敏感性増進剤として有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】MCF-7細胞内で321種類の薬物単独または放射線と併用処理が細胞生存率に及ぼす影響を示す図面である。
図2】MCF-7細胞内で多様な濃度のアリピプラゾール単独または放射線と併用処理が細胞生存率に及ぼす影響を示す図面である。
図3】MCF-7細胞内でアリピプラゾール単独または放射線と併用処理がPARP切断(cleavage)に及ぼす影響を示す図面である。
図4】MCF-7またはU251細胞内でアリピプラゾール単独または放射線と併用処理がDNA断片化(fragmentation)に及ぼす影響を示す図面である。
図5】MCF-7細胞内でチオリダジンまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した後、PARP切断を評価した結果を示す図面である。
図6】MCF-7またはBT-474細胞内でチオリダジンまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した後、DNA断片化を評価した結果を示す図面である。
図7】MCF-7細胞内でハロペリドールまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した後、PARP切断を評価した結果を示す図面である。
図8】MCF-7またはBT-474細胞内でハロペリドールまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した後、DNA断片化を評価した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する放射線敏感性増進用組成物;を提供する。望ましくは、前記ドーパミン受容体阻害剤は、チオリダジンまたはハロペリドールであるが、これに制限されるものではない。
【0012】
望ましくは、前記組成物は、放射線照射による癌細胞のアポトーシス(apoptosis)を誘導し、より望ましくは、前記組成物は、癌細胞のPARP切断またはDNA断片化を誘導することができる。
【0013】
望ましくは、前記組成物は、癌治療時に、放射線照射と併用して投与される。より望ましくは、前記癌は、乳癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、口腔癌、口腔咽頭癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌腫、膣癌腫、小腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、大腸癌または脳腫瘍であるが、これらに制限されるものではない。
【0014】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用薬学組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用薬学組成物;を提供する。望ましくは、前記ドーパミン受容体阻害剤は、チオリダジンまたはハロペリドールであるが、これに制限されるものではない。
【0016】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用健康機能食品組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、アリピプラゾールまたはその薬学的に許容可能な塩;及びドーパミン受容体阻害剤を有効成分として含有する癌に対する放射線治療補助用健康機能食品組成物;を提供する。望ましくは、前記ドーパミン受容体阻害剤は、チオリダジンまたはハロペリドールであるが、これに制限されるものではない。
【0018】
本発明において、用語、「薬学的に許容可能な塩」は、ヒトに投与するのに適した安全性及び効能プロファイルを有する塩を意味する。具体的には、アリピプラゾールの製薬上許容される塩であって、具体的な形態としては、無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸、及びこれらの混合物から誘導された塩だけではなく、有機酸、例えば、脂肪族モノ-及びジカルボン酸、フェニル-置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、及び脂肪族及び芳香族スルホン酸から誘導された塩を含みうるが、これらに制限されるものではない。
【0019】
本発明において、用語、「放射線敏感性」は、放射線容量に基づいた生存する細胞数を意味する。本発明では、放射線敏感性を測定するために、放射線を容量別に照射した後、形成されたコロニー数を測定する方法を使用して確認した。
【0020】
本発明において、用語、「増進」は、所定の放射線容量で生存する細胞数の減少、致死量に必要な放射線容量の減少、またはこれらの組み合わせを意味するが、他の通常意味する増進も含む。具体的に、本発明において、前記放射線の敏感性が増進するということは、放射線を容量別に照射した後、形成されたコロニー数を測定した時、放射線の濃度によって、そのコロニー数が減少するか、前記作成された線形モデルの傾きの値が増加することを意味する。
【0021】
本発明において、用語、「放射線照射」は、悪性細胞のDNAを損傷させる局所治療方法を意味する。正常細胞は、腫瘍細胞に比べて、このような損傷を修繕する能力がさらに大きい。放射線照射は、このような差を用いる治療を意味し、通常意味する放射線を用いて治療する方法を含む。
【0022】
放射線照射は、局所療法の形態なので、一般的に、副作用は、治療された部位に制限される。しかし、共通した全身症状として疲労感がある。多くの遺伝的要因が一部の患者で二次癌の素因となることが事実であるが、放射線も、関連危険の増加に寄与する。本発明による放射線敏感性増加用組成物は、放射線の必要量を減少させることにより、このような副作用を減らしうる。また、放射線に敏感な癌細胞だけではなく、放射線に抵抗性がある癌細胞でも、放射線敏感度を増加させることができる。
【0023】
本発明において、用語、「併用して投与」は、多種の癌細胞を治療する抗癌過程で放射線照射を共に投与することを意味する。具体的には、肺癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌、頭頸部癌、脳癌などの固形癌のような癌細胞を治療する抗癌過程で放射線照射治療法を併用処理されるものである。
【0024】
本発明の組成物が薬学組成物である場合、前記薬学的組成物は、アリピプラゾールの以外に、薬剤学的に許容される担体を含みうるが、このような薬学的に許容される担体は、薬品製剤時に通用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどを含みうるが、これらに限定されるものではない。また、前記薬学的組成物は、添加剤として、潤滑剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0025】
前記薬学的組成物は、症状程度によって投与方法が決定されるが、通常は、局所投与方式が望ましい。また、前記薬学的組成物のうち、有効成分の投与量は、投与経路、疾患の程度、患者の年齢、性別、体重などによって変わり、一日1回~数回投与することができる。
【0026】
前記薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与される。投与のあらゆる方式は予想されるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与される。
【0027】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態で製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造可能である。この際、剤型は、溶液、懸濁液または乳液の形態であるか、エリキシル剤、エクストラクト剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、硬膏剤、ローション剤、軟膏剤などの形態である。
【0028】
また、本発明の組成物が健康機能食品組成物である場合、前記健康機能食品組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ、飲料または丸剤で提供され、前記健康機能食品組成物は、有効成分である本発明のアリピプラゾールの以外に、他の食品や食品添加物と共に使われ、通常の方法によって適切に使われる。有効成分の混合量は、その使用目的、例えば、予防、健康または治療的処置によって適するように決定されうる。
【0029】
前記健康機能食品組成物に含有されたアリピプラゾールの有効容量は、前記薬学組成物の有効容量に準じて使用することができるが、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記範囲以下であり、有効成分は安全性面で何の問題がないために、前記範囲以上の量でも使われうるということは確実である。
【0030】
前記健康機能食品の種類には、特別な制限がなく、例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などが挙げられる。
【0031】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0032】
<実施例1>乳癌細胞内で放射線敏感剤の検索
【0033】
放射線抵抗性を有した乳癌細胞内での単独処理では、細胞毒性が観察されていないが、放射線との併用処理によって放射線敏感度を増強させる放射線敏感剤の候補薬物をエンゾ社の薬物ライブラリーから検索した。
【0034】
ヒト乳癌細胞株であるMCF-7細胞を5000cells/wellの濃度に調節した後、96ウェルプレートに接種し、24時間前培養した。以後、培地を除去し、エンゾ社の薬物ライブラリーの各薬物を5mMの濃度で単独処理するか、放射線と併用処理した。96時間後、ドウゼン社のEZ-Cytox Cell Viability Assayキットで細胞の生存率を測定した。
【0035】
図1に示されたように、薬物単独処理では、細胞の生存率に影響はないが、放射線との併用処理時に放射線抵抗性細胞の生存率を落とす放射線敏感剤としてアリピプラゾールを掘り出した。
【0036】
<実施例2>アリピプラゾールが癌細胞の放射線敏感度に及ぼす影響
【0037】
癌細胞内でアリピプラゾールが放射線敏感度に及ぼす影響を確認するために、放射線抵抗性を有した乳癌細胞内でMTTアッセイを用いて細胞生存率の測定実験を下記のように行った。
【0038】
MCF-7細胞を5000cells/wellの濃度に調節した後、96ウェルプレートに接種し、24時間前培養した。以後、培地を除去し、アリピプラゾール(5、10、20μM)を単独処理するか、放射線と併用処理した。96時間後、ドウゼン社のEZ-Cytox Cell Viability Assayキットで細胞の生存率を測定した。
【0039】
図2に示されたように、アリピプラゾール単独処理による生存率の低減効果よりも、放射線との併用処理時にさらに優れた生存率の低減効果を示した。アリピプラゾールは、濃度依存的に放射線敏感化の効果に優れていると明かになった。
【0040】
<実施例3>癌細胞内でアリピプラゾールが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響
【0041】
癌細胞内でアリピプラゾールは、アポトーシスを誘導することができると最近報告されたが、癌細胞でアリピプラゾールが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響を確認するために、癌細胞内でPARP切断及びDNA断片化の測定実験を下記のように行った。
【0042】
MCF-7細胞にアリピプラゾール(1、5、10、20μM)を単独処理するか、放射線と併用処理した。24時間後、PBSで洗浄した後、細胞からタンパク質を抽出して、ウェスタンブロットでPARP切断程度を確認した。
【0043】
図3に示されたように、アリピプラゾール単独処理によるPARP切断誘導効果よりも、放射線との併用処理時にさらに優れたPARP切断誘導効果を示した。アリピプラゾールは、濃度依存的に放射線処理された癌細胞でアポトーシスを誘導すると明かになった。
【0044】
MCF-7細胞またはU251細胞を5000cells/wellの濃度に調節した後、96ウェルプレートに接種し、24時間前培養した。以後、培地を除去し、アリピプラゾールを単独処理するか、放射線と併用処理した。24時間後、ロシュ社のCell Death Detection ELISA plusキットを用いてDNA断片化程度を確認した。
【0045】
図4に示されたように、アリピプラゾールと放射線とを並行して処理する時に、それぞれの処理を加えた効果よりも優れたDNA断片化誘導効果を示した。単独処理によるDNA断片化誘導効果よりも2つの処理を同時併用した時、さらに優れたアポトーシス誘導効果を示した。
【0046】
<実施例4>癌細胞内でドーパミン受容体阻害剤であるチオリダジンとアリピプラゾールとが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響
【0047】
癌細胞内でドーパミン受容体阻害剤とアリピプラゾールとが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響を確認するために、MCF-7細胞にチオリダジンまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した。24時間後、PBSで洗浄した後、細胞からタンパク質を抽出して、ウェスタンブロットでPARP切断程度を確認した。
【0048】
図5に示されたように、「チオリダジンと放射線併用処理」または「アリピプラゾールと放射線併用処理」のそれぞれの処理によるPARP切断誘導効果よりも、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理する時にさらに優れたPARP切断誘導効果を示した。
【0049】
MCF-7細胞またはBT-474細胞を5000cells/wellの濃度に調節した後、96ウェルプレートに接種し、24時間前培養した。以後、培地を除去し、チオリダジンまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した。24時間後、ロシュ社のCell Death Detection ELISA plusキットを用いてDNA断片化程度を確認した。
【0050】
図6に示されたように、チオリダジンとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理する時に「チオリダジンと放射線併用処理」または「アリピプラゾールと放射線併用処理」のそれぞれの処理を加えた効果よりも優れたDNA断片化誘導効果を示した。
【0051】
<実施例5>癌細胞内でドーパミン受容体阻害剤であるハロペリドールとアリピプラゾールとが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響
【0052】
癌細胞内でドーパミン受容体阻害剤とアリピプラゾールとが放射線誘導アポトーシスに及ぼす影響を確認するために、MCF-7細胞にハロペリドールまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した。24時間後、PBSで洗浄した後、細胞からタンパク質を抽出して、ウェスタンブロットでPARP切断程度を確認した。
【0053】
図7に示されたように、「ハロペリドールと放射線併用処理」または「アリピプラゾールと放射線併用処理」のそれぞれの処理によるPARP切断誘導効果よりも、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理する時にさらに優れたPARP切断誘導効果を示した。
【0054】
MCF-7細胞またはBT-474細胞を5000cells/wellの濃度に調節した後、96ウェルプレートに接種し、24時間前培養した。以後、培地を除去し、ハロペリドールまたはアリピプラゾールをそれぞれ放射線と併用処理するか、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理した。24時間後、ロシュ社のCell Death Detection ELISA plusキットを用いてDNA断片化程度を確認した。
【0055】
図8に示されたように、ハロペリドールとアリピプラゾールとを同時に放射線と併用処理する時に「ハロペリドールと放射線併用処理」または「アリピプラゾールと放射線併用処理」のそれぞれの処理を加えた効果よりも優れたDNA断片化誘導効果を示した。
【0056】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8