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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】倍力ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/569 20060101AFI20220419BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B60T13/569
B60T7/06 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019109588
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199963
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】太田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】須賀 裕介
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-127906(JP,A)
【文献】実開平01-158269(JP,U)
【文献】特開2004-017709(JP,A)
【文献】特開2019-023789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0227289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T1/00-7/10
13/00-13/74
G05G1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる第1軸を有し、かつ隔壁部材の車両後方側に支持されたペダルブラケットと、
前記車幅方向に延び、かつ前記第1軸よりも車両下方に位置する第2軸を有するとともに、上端が前記第1軸の回りに回転可能となるように前記ペダルブラケットに吊り下げ支持されたブレーキペダルと、
マスタシリンダに収容されたピストンを作動させる出力軸、前記出力軸を収容する殻部、前記殻部の後端に支持されたブースタピストン、前記ブースタピストンに収容され、かつ前記出力軸よりも前記車両後方に位置するプランジャ、および前端が前記プランジャに支持され、かつ後端が前記第2軸の回りに回転可能となるように前記ブレーキペダルに支持された入力軸を有するとともに、前記殻部が前記隔壁部材の車両前方側に支持されたブレーキブースタと、を備え、
前記ブレーキブースタには、外部からの衝撃力を受けることにより、前記入力軸を前記車幅方向の回りに回転させる回転許容手段が設けられており
前記回転許容手段は、前記ブースタピストンおよび前記プランジャにより構成されており、
前記衝撃力を受けることにより、前記隔壁部材よりも前記車両後方に位置する案内部材に前記ペダルブラケットが接触すると、前記案内部材に沿って前記ペダルブラケットが下垂するとともに、前記入力軸が前記ブースタピストンの後端に位置する内周縁に接触し、かつ前記入力軸の前端が前記プランジャから脱落することによって、
前記車幅方向視て、前記プランジャの軸心上かつ最後端に位置する第1仮想点と、前記ブースタピストンの後縁かつ最下位に位置する第2仮想点と、を結ぶ仮想線よりも、前記第2軸の軸心が前記回転許容手段により前記車両下方に変位する倍力ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルに連結されたブレーキブースタを備える倍力ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキペダルに連結されたブレーキブースタを備える倍力ブレーキ装置が知られている。ブレーキブースタは、ブレーキペダルからの入力を増幅させる機能を果たす。これにより、ブレーキペダルからの入力が比較的小であっても、マスタシリンダに収容されたピストンをより強く押し出すことが可能となる。
【0003】
特許文献1には、ブレーキブースタの一例が開示されている。ブレーキペダルは、ブレーキブースタの後方に位置する入力軸の後端に連結されている。車両衝突の際、車体が外部から衝撃力を受けるとブレーキペダルは、ブレーキブースタとともに車両方向に後退する。この際、入力軸がブレーキペダルに対して相対変位が生じなければ、ブレーキペダルの後退がより大きくなる。このため、ブレーキペダルが乗員に接触する可能性がより高くなり、乗員に対する安全性の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-230840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の事情に鑑み、車両衝突の際、ブレーキペダルの後退を抑制することが可能な倍力ブレーキ装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される倍力ブレーキ装置は、車幅方向に延びる第1軸を有し、かつ隔壁部材の車両後方側に支持されたペダルブラケットと、前記車幅方向に延び、かつ前記第1軸よりも車両下方に位置する第2軸を有するとともに、上端が前記第1軸の回りに回転可能となるように前記ペダルブラケットに吊り下げ支持されたブレーキペダルと、マスタシリンダに収容されたピストンを作動させる出力軸、前記出力軸を収容する殻部、前記殻部の後端に支持されたブースタピストン、前記ブースタピストンに収容され、かつ前記出力軸よりも前記車両後方に位置するプランジャ、および前端が前記プランジャに支持され、かつ後端が前記第2軸の回りに回転可能となるように前記ブレーキペダルに支持された入力軸を有するとともに、前記殻部が前記隔壁部材の車両前方側に支持されたブレーキブースタと、を備え、前記ブレーキブースタには、外部からの衝撃力を受けることにより、前記入力軸を前記車幅方向の回りに回転させる回転許容手段が設けられ、前記衝撃力を受けることにより、前記隔壁部材よりも前記車両後方に位置する案内部材に前記ペダルブラケットが接触すると、前記案内部材に沿って前記ペダルブラケットが下垂するとともに、前記車幅方向に沿って視て、前記プランジャの軸心上かつ最後端に位置する第1仮想点と、前記ブースタピストンの後縁かつ最下位に位置する第2仮想点と、を結ぶ仮想線よりも、前記第2軸の軸心が前記回転許容手段により前記車両下方に変位することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって提供される倍力ブレーキ装置によれば、車両衝突の際、ブレーキペダルの後退を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態にかかる倍力ブレーキ装置の側面図(車幅方向の左側から視た図)であり、ブレーキブースタの一部を断面図として示している。
図2図1の部分拡大図である。
図3図1に示す倍力ブレーキ装置の他の実施例にかかる部分拡大断面図である。
図4図1に示す倍力ブレーキ装置の作用効果を説明する側面図であり、ブレーキブースタの一部を断面図として示している。
図5】本発明の第2実施形態にかかる倍力ブレーキ装置の側面図(車幅方向の左側から視た図)であり、ブレーキブースタの一部を断面図として示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1図4に基づき、本発明の第1実施形態にかかる倍力ブレーキ装置A10について説明する。倍力ブレーキ装置A10は、ペダルブラケット21、ブレーキペダル22およびブレーキブースタ30を備える。ここで、図1および図4は、理解の便宜上、ブレーキブースタ30の一部をプランジャ34(詳細は後述)の軸心Nに沿った断面図として示している。当該断面図は、ブレーキブースタ30の要部のみを示している。図3の断面位置は、図2の断面位置と同一である。
【0012】
ここで、説明の便宜上、これらの図において示すuprは車両上方向を、dwnは車両下方向を、frは車両前方向を、rrは車両後方向をそれぞれ指す。また、以下の説明で特記なく上下を用いる場合は、倍力ブレーキ装置A10の車両上下を指すものとし、特記なく前後を用いる場合は倍力ブレーキ装置A10の車両前後を指すものとする。なお、車幅方向は車両左右方向を指す。
【0013】
ペダルブラケット21は、図1に示すように、隔壁部材11の車両後方側に支持されている。倍力ブレーキ装置A10においては、隔壁部材11は、車両前後方向においてエンジンルームと車室とを隔てるダッシュパネルである。ペダルブラケット21は、第1軸211およびベースプレート212を有する。第1軸211は、車幅方向に延び、かつペダルブラケット21の本体に固定されている。ベースプレート212は、ペダルブラケット21の前端に位置する。ベースプレート212は、隔壁部材11の車両後方を向く面に接している。ベースプレート212は、ペダルブラケット21を隔壁部材11に支持させるために利用される。
【0014】
ブレーキペダル22は、図1に示すように、ペダルブラケット21に吊り下げ支持されている。ブレーキペダル22の上端は、ペダルブラケット21の第1軸211の回りに回転可能となるようにされている。ブレーキペダル22は、第2軸221およびペダル部222を有する。第2軸221は、第1軸211よりも車両下方に位置する。第2軸221は、車幅方向に延び、かつブレーキペダル22を貫通している。ペダル部222は、ブレーキペダル22の下端に位置する。乗員がペダル部222を踏むと、ブレーキペダル22は、第1軸211の回りに回転する。
【0015】
ブレーキブースタ30は、図1に示すように、隔壁部材11の車両前方側に支持されている。ブレーキブースタ30は、出力軸31、殻部32、ブースタピストン33、プランジャ34および入力軸35を有する。
【0016】
図1に示すように、出力軸31は、マスタシリンダ40に収容されたピストン(図示略)を作動させる。マスタシリンダ40は、ブレーキ液で満たされている。出力軸31がピストンを作動させることにより、ブレーキ液が各車輪のホイールシリンダに供給される。
【0017】
図1に示すように、殻部32は、出力軸31を収容する中空部材である。倍力ブレーキ装置A10が示す例においては、殻部32は、2つの部材が車両前後方向に突き合わされた構成となっている。殻部32は、エンジンルームに位置する。殻部32には、複数のスタッドボルト321が設けられている。複数のスタッドボルト321は、殻部32の後端から車両後方に向けて突出している。隔壁部材11には、車両前後方向に貫通し、かつ複数のスタッドボルト321の配置に対応した複数の第1孔(図示略)が設けられている。複数のスタッドボルト321は、隔壁部材11の車両前方側から複数の第1孔に個別に挿入される。また、ペダルブラケット21のベースプレート212には、車両前後方向に貫通し、かつ複数の第1孔の配置に対応した複数の第2孔(図示略)が設けられている。これにより、複数のスタッドボルト321は、複数の第1孔に加え、複数の第2孔にも個別に挿入される。この状態で、複数のスタッドボルト321の各々にナットを取付け、当該ナットで隔壁部材11およびベースプレート212を締め付けることにより、殻部32が隔壁部材11の車両前方側に支持される。同時に、ペダルブラケット21が隔壁部材11の車両後方側に支持される。
【0018】
図1に示すように、ブースタピストン33は、殻部32の後端に支持されている。ブースタピストン33は、殻部32の後端から隔壁部材11、およびペダルブラケット21のベースプレート212を貫通して車両後方に向けて突出する円筒状である。このため、ブースタピストン33の一部は、車室(運転席)に位置する。ブースタピストン33は、合成樹脂製である。図2に示すように、ブースタピストン33は、内周面331および脆弱部332を有する。内周面331は、ブースタピストン33の内方に位置し、かつブースタピストン33の周方向(入力軸35の軸方向の回りの方向)に沿っている。脆弱部332は、内周面331からブースタピストン33の径方向(入力軸35の軸方向に対して直交する方向)に凹んでいる。脆弱部332は、プランジャ34よりも車両後方に位置し、かつブースタピストン33の後縁につながっている。図2に示す実施例においては、脆弱部332は、ブースタピストン33において比較的薄肉とされた部分である。当該部分は、ブースタピストン33の周方向全体にわたって形成されている。
【0019】
図3は、ブースタピストン33の脆弱部332の他の実施例を示している。脆弱部332は、入力軸35の軸方向に延びる複数の溝である。当該複数の溝は、入力軸35よりも車両下方に形成されている。
【0020】
図1に示すように、プランジャ34は、ブースタピストン33の内方部材に収容されている。プランジャ34は、出力軸31よりも車両後方に位置する。プランジャ34は、図2に示す軸心Nに沿って可動する。図2に示すように、プランジャ34は、第1支持部341を有する。第1支持部341は、プランジャ34の後端に位置する。第1支持部341は、プランジャ34の後端から車両前方に向けて凹んでいる。
【0021】
図2に示すように、入力軸35は、その前端がプランジャ34の第1支持部341に支持されている。入力軸35の前端は、球体状である。入力軸35の前端は、第1支持部341に嵌め込まれ、かつ締め付けられている。ただし、車両衝突の際に外部からの衝撃力を受けると、入力軸35の前端には、第1支持部341に対して回転変位が生じるようになっている。入力軸35は、第2支持部351を有する。第2支持部351は、入力軸35の後端に位置する。第2支持部351は、クレビスである。第2支持部351は、ブレーキペダル22の第2軸221の周辺を車幅方向の両側から挟んでいる。第2軸221は、第2支持部351を車幅方向に貫通している。第2支持部351は、第2軸221の回りに回転可能となるようにブレーキペダル22に支持されている。
【0022】
図2および図3に示すように、仮想線Vは、車幅方向に沿って視て、第1仮想点30Aと第2仮想点30Bとを結ぶ直線である。第1仮想点30Aは、車幅方向に沿って視て、プランジャ34の軸心N上かつ最後端に位置する。第2仮想点30Bは、車幅方向に沿って視て、ブースタピストン33の後縁かつ最下位に位置する。通常時においては、車幅方向に沿って視て、ブレーキペダル22の第2軸221の軸心Cは、仮想線Vよりも車両上方に位置する。
【0023】
次に、倍力ブレーキ装置A10の機構の概要を説明する。
【0024】
ブレーキブースタ30の殻部32の内部は、弾性体であるダイアフラム(図示略)により車両前後方向に2つの部屋(図示略)に区画されている。説明の便宜上、この2つの部屋のうち車両前方に位置する部屋を第1室、第1室よりも車両後方に位置する部屋を第2室と呼ぶ。殻部32の前端には吸引口(図示略)が設けられ、第1室は吸引口に通じている。吸引口は、エンジンのインテークマニホールドにつながっている。これにより、エンジンが駆動している間は、第1室の空気の圧力が大気圧に対して負圧となっている。一方、ブレーキブースタ30のブースタピストン33の内方は、第1室および第2室の各々につながっている。さらに、ブースタピストン33の内方には、第1室の空気と、第2室の空気とを流通させるための連絡通路(図示略)が設けられている。倍力ブレーキ装置A10を作動させていないときは、当該連絡通路は開いている。このため、第2室の空気の圧力が、第1室の空気の圧力と等圧となる。したがって、第1室の空気の圧力と、第2室の空気の圧力とは、ともに大気圧に対して負圧となっている。
【0025】
乗員がブレーキペダル22のペダル部222を踏むと、ブレーキペダル22は、ペダルブラケット21の第1軸211の回りに回転するとともに、ブレーキブースタ30の入力軸35を出力軸31の軸心Nに沿って車両前方に押し込む。そして、入力軸35によりプランジャ34が軸心Nに沿って車両前方に押し込まれ、かつプランジャ34がブースタピストン33に設けられた連絡通路を塞ぐ。これにより、殻部32の第1室と第2室との空気の流通が遮断され、かつ第2室にブースタピストン33の後端から大気が流れ込む。すなわち、第1室の空気の圧力は、大気圧に対して常に負圧を保持しているものの、第2室の空気の圧力が大気圧となるため、第2室の空気の圧力は、第1室の空気の圧力よりも大となる。したがって、殻部32の内部には、空気の圧力差が生じる。この圧力差を動力として利用することにより、マスタシリンダ40のピストンを押し込む出力軸31の力を増幅させることができる。
【0026】
次に、倍力ブレーキ装置A10の作用効果について説明する。
【0027】
倍力ブレーキ装置A10のブレーキブースタ30には、車両衝突の際に外部からの衝撃力を受けることにより、入力軸35を車幅方向の回りに回転させる回転許容手段が設けられている。倍力ブレーキ装置A10においては、回転許容手段は、プランジャ34の第1支持部341と、ブースタピストン33の脆弱部332とにより構成される。図4に示すように、車両衝突の際に車体が車両前方から衝撃力を受けると、隔壁部材11が車両後方に後退する。このため、倍力ブレーキ装置A10も車両後方に後退する。ここで、車体において、隔壁部材11の車両後方には、案内部材12および支持部材13が位置する。支持部材13は、車幅方向に延び、かつ車幅方向の両端が車両側方部材に支持された車体の補強部材である。支持部材13は、ステアリングコラムを吊り下げ支持している。案内部材12は、支持部材13に吊り下げ支持されたブラケットである。
【0028】
倍力ブレーキ装置A10が車両後方に後退すると、ペダルブラケット21の上端が案内部材12に接触し、案内部材12に沿ってペダルブラケット21が下垂する。このとき、回転許容手段を構成するプランジャ34の第1支持部341が衝撃力を受けることにより、入力軸35は、図4に示す点Bを回転中心として車幅方向の回りに回転可能となる。入力軸35が回転すると、入力軸35が回転許容手段を構成するブースタピストン33の脆弱部332に接触し、脆弱部332が破断する。これにより、入力軸35がさらに回転するため、図4に示すように、車幅方向に沿って視てブレーキペダル22の第2軸221の軸心Cが、第1仮想点30Aと第2仮想点30Bとを結ぶ仮想線Vよりも車両下方に変位する。この結果、ブレーキペダル22の後退は、長さΔL1の分が抑制される。したがって、倍力ブレーキ装置A10によれば、車両衝突の際、ブレーキペダル22の後退を抑制することが可能となる。
【0029】
〔第2実施形態〕
図5に基づき、本発明の第2実施形態にかかる倍力ブレーキ装置A20について説明する。図5において、先述した倍力ブレーキ装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図5は、理解の便宜上、ブレーキブースタ30の一部をプランジャ34の軸心Nに沿った断面図として示している。当該断面図は、ブレーキブースタ30の要部のみを示している。
【0030】
倍力ブレーキ装置A20においては、ブースタピストン33の構成と、回転許容手段の構成とが、先述した倍力ブレーキ装置A10におけるこれらの構成と異なる。
【0031】
倍力ブレーキ装置A20においては、ブースタピストン33には、脆弱部332が形成されていない。ブースタピストン33の材質は、倍力ブレーキ装置A10のブースタピストン33の材質よりも衝撃に対する機械的強度が大であることが好ましい。
【0032】
次に、倍力ブレーキ装置A20の作用効果について説明する。
【0033】
倍力ブレーキ装置A20のブレーキブースタ30には、車両衝突の際に外部からの衝撃力を受けることにより、入力軸35を車幅方向の回りに回転させる回転許容手段が設けられている。倍力ブレーキ装置A20においては、回転許容手段は、プランジャ34の第1支持部341と、ブースタピストン33により構成される。
【0034】
図5に示すように、車両衝突の際に車体が車両前方から衝撃力を受けると、隔壁部材11とともに倍力ブレーキ装置A20が車両後方に後退する。これにより、ペダルブラケット21の上端が案内部材12に接触し、案内部材12に沿ってペダルブラケット21が下垂する。このとき、回転許容手段を構成するプランジャ34の第1支持部341が衝撃力を受けることにより、入力軸35は、倍力ブレーキ装置A10の場合と同じく、図4に示す点Bを回転中心として車幅方向の回りに回転する。当該回転が進み、入力軸35がブースタピストン33の後端に位置する内周縁上の点D(図5参照)に接触すると、点Dを支点、かつブレーキペダル22の第2軸221の軸心Cを力点としたテコの原理により、入力軸35の前端が第1支持部341の締め付けを緩める。これにより、入力軸35の前端が第1支持部341から脱落して入力軸35がさらに回転するため、図5に示すように、車幅方向に沿って視て第2軸221の軸心Cが、第1仮想点30Aと第2仮想点30Bとを結ぶ仮想線Vよりも車両下方に変位する。この結果、ブレーキペダル22の後退は、長さΔL2の分が抑制される。したがって、倍力ブレーキ装置A20によっても、車両衝突の際、ブレーキペダル22の後退を抑制することが可能となる。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0036】
A10,A20:倍力ブレーキ装置
11:隔壁部材
12:案内部材
13:支持部材
21:ペダルブラケット
211:第1軸
212:ベースプレート
22:ブレーキペダル
221:第2軸
222:ペダル部
30:ブレーキブースタ
30A:第1仮想点
30B:第2仮想点
31:出力軸
321:スタッドボルト
33:ブースタピストン
331:内周面
332:脆弱部
34:プランジャ
341:第1支持部
35:入力軸
351:第2支持部
40:マスタシリンダ
N,C:軸心
V:仮想線
図1
図2
図3
図4
図5