(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】引戸錠
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20220419BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20220419BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20220419BHJP
E05C 3/30 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
E05B65/08 G
E05B49/00 J
E05B47/00 J
E05C3/30
(21)【出願番号】P 2017246201
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】598063683
【氏名又は名称】株式会社 ユーシン・ショウワ
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勉
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-030848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸を施錠するための引戸錠であって、
前記引戸錠は、
引戸枠の縦枠部に設けられ、引戸側に突出するストライクと、
前記引戸に設けられ、前記ストライクに係合する錠本体と、を備え、
前記錠本体は、
前記ストライク側となる前方側に付勢され、前記ストライクの押圧に応じて前後動するスライダーと、
前記スライダーの後退に連動して前記ストライクに係合する係合姿勢となるカマレバーと、
前記カマレバーに嵌合し、前記カマレバーの前記係合姿勢の保持を可能とする姿勢保持部材と、
前記姿勢保持部材の前記カマレバーとの嵌合を解除するための解除部材と、
ユーザの操作するハンドルの操作力を前記解除部材の動作のための駆動力として伝達する伝達手段と、を備え、
前記カマレバーは、前記姿勢保持部材が嵌合する嵌合段部を備え、
前記姿勢保持部材は、前記カマレバーの前記嵌合段部に嵌合する嵌合部を備え、
前記解除部材が、動作するときに、前記スライダーを前方側に押圧する押圧部を
前記解除部材に設けたことを特徴とする引戸錠。
【請求項2】
前記伝達手段は、
前記ハンドルの操作によって作動する第1伝達部材と、
前記第1伝達部材の作動に応じて作動し、前記ハンドルの前記操作力を前記解除部材の動作のための駆動力として伝達する第2伝達部材と、を備え、
前記解除部材は、
前記姿勢保持部材に接続され、回転軸を中心として回動する一端と、
前記第2伝達部材が作動するときに付勢され、前記回転軸を中心として回動する他端と、を備え
、
前記押圧部を前記他端で構成したことを特徴とする請求項1に記載の引戸錠。
【請求項3】
前記第2伝達部材は、
前記解除部材の前記回転軸が挿通され、前記解除部材の前記回転軸を基準として回動可能であるとともに前記解除部材の前記回転軸に対して摺動可能とする長孔と、
前記解除部材の前記他端を付勢する付勢部と、を備え、
前記第2伝達部材は、前記解除部材の前記回転軸に対して摺動することで、前記第2伝達部材の前記付勢部が前記解除部材の前記他端を付勢可能な第1位置と、前記第2伝達部材の前記付勢部が前記解除部材の前記他端を付勢不可能な第2位置に変位可能であり、
前記錠本体は、前記第2伝達部材の位置を前記第1位置と前記第2位置とに切り替えるカムを備えていることを特徴とする請求項2に記載の引戸錠。
【請求項4】
前記錠本体は、
前記第2伝達部材の位置を前記第1位置と前記第2位置とに切り替えるために前記カムを回動させるアクチュエータと、
ユーザの所持するキーと通信を行い、正規のキーであるかを認証するとともに、前記アクチュエータを駆動させる信号を送信可能な制御部と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の引戸錠。
【請求項5】
前記錠本体は、さらに、ユーザの所持するキーによる操作で前記カムを回動させることが可能なキーシリンダを備えていることを特徴とする請求項4に記載の引戸錠。
【請求項6】
前記錠本体は、アクチュエータを有していないメカ錠であって、ユーザの所持するキーで前記カムを回動させることが可能なキーシリンダを備えていることを特徴とする請求項3に記載の引戸錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引戸錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅の玄関等に設けられた引戸には、引戸を閉める際のはね返り防止のため、ラッチ機能がついた錠が増えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、断熱性能、機密性能の向上により引戸が大型化し、また、引戸の閉止を補助するクローザが追加されることにより、引戸を開く操作力が大きくなる傾向にある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、引戸を開く力をアシストする機能を有する引戸錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明の引戸錠は、引戸を施錠するための引戸錠であって、前記引戸錠は、引戸枠の縦枠部に設けられ、引戸側に突出するストライクと、前記引戸に設けられ、前記ストライクに係合する錠本体と、を備え、前記錠本体は、前記ストライク側となる前方側に付勢され、前記ストライクの押圧に応じて前後動するスライダーと、前記スライダーの後退に連動して前記ストライクに係合する係合姿勢となるカマレバーと、前記カマレバーに嵌合し、前記カマレバーの前記係合姿勢の保持を可能とする姿勢保持部材と、前記姿勢保持部材の前記カマレバーとの嵌合を解除するための解除部材と、ユーザの操作するハンドルの操作力を前記解除部材の動作のための駆動力として伝達する伝達手段と、を備え、前記カマレバーは、前記姿勢保持部材が嵌合する嵌合段部を備え、前記姿勢保持部材は、前記カマレバーの前記嵌合段部に嵌合する嵌合部を備え、前記解除部材が、動作するときに、前記スライダーを前方側に押圧する押圧部を備えている。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、前記伝達手段は、前記ハンドルの操作によって作動する第1伝達部材と、前記第1伝達部材の作動に応じて作動し、前記ハンドルの前記操作力を前記解除部材の動作のための駆動力として伝達する第2伝達部材と、を備え、前記解除部材は、前記姿勢保持部材に接続され、回転軸を中心として回動する一端と、前記第2伝達部材が作動するときに付勢され、前記回転軸を中心として回動する他端と、を備えている。
【0008】
(3)上記(2)の構成において、前記第2伝達部材は、前記解除部材の前記回転軸が挿通され、前記解除部材の前記回転軸を基準として回動可能であるとともに前記解除部材の前記回転軸に対して摺動可能とする長孔と、前記解除部材の前記他端を付勢する付勢部と、を備え、前記第2伝達部材は、前記解除部材の前記回転軸に対して摺動することで、前記第2伝達部材の前記付勢部が前記解除部材の前記他端を付勢可能な第1位置と、前記第2伝達部材の前記付勢部が前記解除部材の前記他端を付勢不可能な第2位置に変位可能であり、前記錠本体は、前記第2伝達部材の位置を前記第1位置と前記第2位置とに切り替えるカムを備えている。
【0009】
(4)上記(3)の構成において、前記錠本体は、前記第2伝達部材の位置を前記第1位置と前記第2位置とに切り替えるために前記カムを回動させるアクチュエータと、ユーザの所持するキーと通信を行い、正規のキーであるかを認証するとともに、前記アクチュエータを駆動させる信号を送信可能な制御部と、を備えている。
【0010】
(5)上記(4)の構成において、前記錠本体は、さらに、ユーザの所持するキーによる操作で前記カムを回動させることが可能なキーシリンダを備えている。
【0011】
(6)上記(3)の構成において、前記錠本体は、アクチュエータを有していないメカ錠であって、ユーザの所持するキーで前記カムを回動させることが可能なキーシリンダを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引戸を開く力をアシストする機能を有する引戸錠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の引戸錠を説明する断面図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の引戸錠の錠本体の平面図であり、(A)は錠本体の正面図であり、(B)は錠本体の側面図である。
【
図3】本発明に係る第1実施形態のカマレバーがストライクに係合する係合姿勢になった状態を示す断面図である。
【
図4】
図3よりも、更にスライダーが後退した状態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る第1実施形態の第1伝達部材を説明するための図であり、(A)はユーザがハンドルを操作していない場合の第1伝達部材の状態を示す図であり、(B)はユーザがハンドルを操作した場合の第1伝達部材の状態を示す図である。
【
図6】本発明に係る第1実施形態のカムによって第2伝達部材が第2位置に位置するように切り替えられたところを示す図である。
【
図7】本発明に係る第1実施形態のカムの基本的な構造を説明するための図であり、(A)はカムを示す図であり、(B)はカム本体を示す図である。
【
図8】本発明に係る第1実施形態のカマレバーの係合姿勢を解除するときの状態を説明する図である。
【
図9】本発明に係る第2実施形態の錠本体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の引戸錠1を説明する断面図であり、
図2は本発明に係る第1実施形態の引戸錠1の錠本体1Bの平面図であり、
図2(A)は錠本体1Bの正面図であり、
図2(B)は錠本体1Bの側面図である。
【0016】
また、
図3は本発明に係る第1実施形態のカマレバー20がストライクA2に係合する係合姿勢になった状態を示す断面図であり、
図4は
図3よりも、更にスライダー10が後退した状態を示す断面図である。
【0017】
なお、
図1、
図3及び
図4は、住宅等に引戸錠1が設置された状態のときに、
図2(A)のA-A線に対応する位置で切断したときの断面になっている。
また、その他の図においても、
図1、
図3及び
図4と同様の断面図になっている図は、
図2(A)のA-A線に対応する位置で切断したときの断面になっており、各図においては、ユーザが手動で施錠及び解錠を行うためのキーシリンダ及びサムターンの図示を省略している。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態の引戸錠1は、引戸3の設置される引戸枠2の縦枠部2aに設けられ、縦枠部2aから引戸3側にストライクA2の一部が突出するように設置されるストライク板A1と、引戸3に設けられ、ストライクA2に係合する錠本体1Bと、を備えている。
【0019】
ストライクA2は、引戸3側となる先端側に位置し、後述する錠本体1Bのスライダー10の前面壁部11に当接可能な板部A21と、板部A21の左右両端(紙面手前方向及び奥方向の端)に設けられ、ストライク板A1側に、ほぼ90度に折り曲げられた一対の脚部A22と、を備えており、脚部A22がストライク板A1に固定されている。
なお、ストライクA2は、ストライク板A1に一体成形したものであってもよい。
【0020】
そして、一対の脚部A22の間の空間は、
図3に示すように、錠本体1Bのカマレバー20の先端部21が挿入される挿入空間になっており、板部A21は、カマレバー20の先端部21が係合する係合部としての役目を果たす。
【0021】
一方、錠本体1Bは、
図1に示すように、スライダー10と、カマレバー20と、姿勢保持部材30と、解除部材40と、伝達手段50と、カム60と、アクチュエータ70と、を備えており、それらが筐体CS内に収容されている。
【0022】
以下、
図1から
図7を参照しながら、錠本体1Bの各部(スライダー10、カマレバー20、姿勢保持部材30、解除部材40、伝達手段50、カム60及びアクチュエータ70等)について説明するが、そこでの説明の際に併せて説明する各部の動作は簡単なものに留め、各部の説明を終えた後に、より詳細な各部の連携した動作について説明する。
【0023】
(スライダー10)
スライダー10は、左右(紙面手前側及び奥側)に位置する一対の側壁部12(
図1では紙面手前側の側壁部12は見えていない。)と、スライダー10側となる前方側の側壁部12の端部間を繋ぐ前面壁部11と、側壁部12の前後方向のほぼ中間位置に設けられ、側壁部12間を繋ぐ中間壁部13と、後方側の側壁部12の端部間を繋ぐ後面壁部14と、を備えている。
【0024】
そして、スライダー10は、一対の側壁部12、中間壁部13及び前面壁部11で周囲が囲まれた上下方向に貫通する断面長方形状の第1空間部SP1と、一対の側壁部12、中間壁部13及び後面壁部14で周囲が囲まれた上下方向に貫通する断面長方形状の第2空間部SP2を有するものになっている。
【0025】
また、後面壁部14は、若干、厚みが厚くなっており、筐体CSの後方壁CS2に一端が当接し、スライダー10を前方側となるストライクA2側に付勢するスライダーバネS10の他端を受けるバネ受部14aが形成されている。
なお、後面壁部14の厚みを前面壁部11及び中間壁部13と同程度にして、後面壁部14にバネ受部14aを取り付けるようにしてもよい。
【0026】
そして、筐体CSの左右の側壁CS1(
図1及び
図2(B)参照)には、それぞれ、
図2(B)に示すように、スライダー10に対応する位置に前後方向に延在する一対の長孔CS11が形成されている。
【0027】
一方、スライダー10は、それぞれの側壁部12の外面に設けられた一対のガイド突起12aを備えており、そのガイド突起12aが、摺動可能に筐体CSの左右の側壁CS1の長孔CS11に挿入されており、ガタつくことなく、ストライクA2の押圧に応じて、スライダー10が前後動できるようになっている。
【0028】
(カマレバー20)
カマレバー20は、
図1に示すように、基部22と、基部22に一体形成された先端部21と、を備えたほぼL字形状の薄板の部材である。
基部22は、
図1に示すように、一端側(
図1では上側)がスライダー10の第1空間部SP1内でスライダー10の一対の側壁部12の間に設けられる第1軸ピン15で回動可能に軸支されている。
【0029】
そして、先端部21は、ストライクA2の板部A21が、後述するようにスライダー10の前面壁部11に当接する前の
図1に示す状態のときに、基部22の他端側(
図1では下側)から基部22に対して前方側にほぼ90度折れ曲がる方向に延在するように設けられている。
【0030】
また、基部22には、基部22の長手方向に沿った長孔22aが形成されており、筐体CSの左右の側壁CS1の間に設けられる第1規制ピンCS12が挿通できるようになっている。
【0031】
なお、長孔22aは、
図3に示すように、カマレバー20がストライクA2に係合する係合姿勢となったときに、スライダー10の下側に位置し、スライダー10の前後動の方向と平行になるように設けられる。
【0032】
さらに、基部22には、
図1に示す状態からカマレバー20が回動(本例では時計回りに回動)し、
図3に示すように、カマレバー20がストライクA2に係合する係合姿勢となったときに、姿勢保持部材30側となる側端部22bに姿勢保持部材30が嵌合できる嵌合段部22cが形成されている。
また、係合姿勢となったときには基部22が位置規制ピンCS13と当接し、カマレバー20のこれ以上の回動が阻止される。
【0033】
なお、嵌合段部22cは、複数の段部を有し、具体的には、嵌合段部22cは、
図3に示す係合姿勢のときに、後方側に位置する大きなほぼ三角山形状の第1段部と、その第1段部に隣接して前方側に設けられる小さなほぼ三角山形状の第2段部と、第2段部に隣接して前方側に設けられる第2段部と同じ大きさのほぼ三角山形状の第3段部と、を備えている。
【0034】
また、後述するが、基部22には、
図3に示す係合姿勢の状態からスライダー10が、
図4に示すように、更に、後方側に後退したときに、筐体CSの左右の側壁CS1の間に設けられた位置規制ピンCS13が当接しないための受入凹部22dが形成されている。
なお、
図4に示す状態では、引戸枠2の縦枠部2aのフロントプレート2bと引戸3のフロントプレート3aが当接しており、それ以上後方側にスライダー10が後退しないようになっている。
つまり、スライダー10が後退する限界位置では、受入凹部22dと位置規制ピンCS13は当接せず、また、長孔22aと第1規制ピンCS12も当接せず、これらの部品には引戸3を開閉する力がかからないようにされている。
【0035】
(姿勢保持部材30)
姿勢保持部材30は、カマレバー20に嵌合し、カマレバー20のストライクA2に係合する係合姿勢の保持を可能とするための部材であり、
図1に示すように、スライダー10の上側に位置し、カマレバー20の嵌合段部22cに嵌合する嵌合部31を備えている。
【0036】
なお、
図3及び
図4に示すように、スライダー10の一対の側壁部12(
図1参照)の上端は、嵌合部31がカマレバー20の嵌合段部22cに嵌合するときに案内する前方下側に緩やかに傾斜する第1傾斜部と、第1傾斜部の先端から急角度で、更に下側に傾斜する第2傾斜部を有する上側に開口する切欠部を有している。
【0037】
そして、カマレバー20が、
図3及び
図4に示す係合姿勢のときには、カマレバー20の嵌合段部22cが、スライダー10の一対の側壁部12の上端に形成された上側に開口する切欠部内で、スライダー10よりも僅かに上側に位置するように嵌合段部22cは設定されており、嵌合段部22cに嵌合した嵌合部31は、直接、スライダー10に接触しないようになっている。
【0038】
このため、スライダー10の押圧力は、姿勢保持部材30に伝わる前に、第1軸ピン15で受けられるため、スライダー10の押圧力で姿勢保持部材30のカマレバー20との嵌合が解除されることが防止される。
【0039】
また、
図1に示すように、姿勢保持部材30は、筐体CSの左右の側壁CS1の間に設けられた第2軸ピンCS14に回動可能に軸支されている。
【0040】
さらに、姿勢保持部材30は、筐体CSの前方壁CS3に一方のアームが当接し、コイル部に第2軸ピンCS14が挿通されることで支持されるトーションバネS30の他方のアームによって、嵌合部31がカマレバー20の嵌合段部22cに嵌合する側に回動する方向に付勢されている。
【0041】
(解除部材40)
解除部材40は、姿勢保持部材30のカマレバー20との嵌合を解除するための部材である。
具体的には、解除部材40は、
図1に示すように、筐体CSの左右の側壁CS1の間に設けられ、スライダー10よりも上側に位置する第3軸ピンCS15で回動可能に軸支されている。
【0042】
そして、解除部材40は、第3軸ピンCS15を回転軸として、その回転軸を中心として回動する第1アーム41と、同様に、その回転軸を中心として回動し、第1アーム41に対して、ほぼ90度に折れ曲がる方向に延在する第2アーム42と、を備えている。
【0043】
この解除部材40の第1アーム41は、第3軸ピンCS15よりも前方側に位置する姿勢保持部材30に向けて、第3軸ピンCS15側から前方側に延在しており、解除部材40の第1アーム41の一端41aが、姿勢保持部材30の回転中心となる第2軸ピンCS14から離間した位置であって、解除部材40の回動に伴い姿勢保持部材30をカマレバー20との嵌合を解除する方向に回動させることができる位置(本例では、第2軸ピンCS14から、若干、後方側に離間した位置)に接続されている。
【0044】
なお、この接続は、姿勢保持部材30に設けられる軸ピン32に対して回転摺動可能な摺動接続になっており、解除部材40の回動に伴う姿勢保持部材30のカマレバー20との嵌合を解除する方向への回動を阻害しないものになっている。
【0045】
一方、解除部材40の第2アーム42は、スライダー10の第2空間部SP2を通じてスライダー10よりも下側に延在しており、後ほど説明する伝達手段50の第2伝達部材51が
図3及び
図4に示す第1位置に位置するときに、第2アーム42の他端42aが伝達手段50の第2伝達部材51の付勢部51aで前方側に付勢可能な位置に位置するようになっている。
【0046】
そして、解除部材40の第2アーム42の他端42aが伝達手段50の第2伝達部材51の付勢部51aで前方側に付勢されると、第2アーム42の他端42aは、第3軸ピンCS15を回転軸として回動(本例では時計回りに回動)する。
【0047】
そうすると、解除部材40の第1アーム41の一端41aも第3軸ピンCS15を回転軸として回動(本例では時計回りに回動)し、姿勢保持部材30がカマレバー20との嵌合を解除する方向に回動されることになる。
【0048】
(伝達手段50)
伝達手段50は、
図5に示すユーザが操作するハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力を解除部材40の動作のための駆動力として伝達するための構成部分であり、本実施形態では、伝達手段50は、
図1に示すように、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)と、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力を解除部材40の動作のための駆動力として伝達する第2伝達部材51と、を備えている。
【0049】
[第1伝達部材57]
図5は、本実施形態の第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)を説明するための図であり、
図5(A)はユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作していない場合の第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の状態を示す図であり、
図5(B)はユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作した場合の第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の状態を示す図である。
【0050】
図5に示すように、引戸3には、住宅の内側に内ハンドルIHが設けられるとともに、住宅の外側に外ハンドルOHが設けられている。
なお、引戸3が玄関扉としての引戸ではなく、建屋内の部屋扉としての引戸である場合には、内ハンドルIHは部屋の内側のハンドルであり、外ハンドルOHは部屋の外側のハンドルである。
【0051】
これら内ハンドルIH及び外ハンドルOHは、
図5(A)に示すユーザが引戸3を開ける操作をする前の状態に対して、ユーザが引戸3を開けるために操作を行うと、
図5(B)に示すように、所定の角度分、引戸3を開ける側に傾斜するようになっている。
【0052】
そして、内ハンドルIHには、第1伝達部材57としての内ハンドル伝達部材58が連結されており、外ハンドルOHには、第1伝達部材57としての外ハンドル伝達部材59が連結されており、ユーザのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作によってハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)が傾斜するのに伴い、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)も傾斜(作動ともいう。)するようになっている。
【0053】
なお、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)は、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)に連結させたものに限定される必要はなく、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)と一体形成されたものであってもよい。
【0054】
このように、ユーザのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作によって、作動するように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)に連結されている第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)は、
図5に示すように、先端が錠本体1Bの筐体CS内に収容されている。
【0055】
具体的には、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)は、
図1、
図3及び
図4に示すように、
図5(A)に示すユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作していない状態のときに、第2伝達部材51の後方側近傍に、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の先端が位置するとともに、
図5(B)に示すように、ユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作を行い、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)が作動したときには、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の先端が第2伝達部材51を前方側に付勢できる位置に設けられている。
【0056】
[第2伝達部材51]
第2伝達部材51は、先に説明したユーザのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作によって、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)が作動すると、その第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の作動に応じて作動し、先に説明したように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力を解除部材40の動作のための駆動力として解除部材40に伝達する部材である。
【0057】
具体的には、
図1に示すように、第2伝達部材51は、一方側(
図1では上側)となる基端部側に、解除部材40の回転軸としての第3軸ピンCS15が挿通され、解除部材40の回転軸を基準として回動可能であるとともに解除部材40の回転軸に対して摺動可能(上下摺動可能)とする長手方向(
図1では上下方向)に延在する長孔51bを備えたほぼ棒状の部材である。
【0058】
そして、第2伝達部材51は、先に説明した解除部材40の第2アーム42と同様に、第2アーム42に沿って、スライダー10よりも上側に位置する基端部側からスライダー10の第2空間部SP2を通じてスライダー10よりも下側まで延在しており、先端部が先に説明した第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の先端によって前方側に付勢できる位置に位置している。
【0059】
また、第2伝達部材51は、先端部に設けられた付勢部51aを備えており、この付勢部51aは、第2伝達部材51が
図3及び
図4に示す第1位置に位置するときに、解除部材40の第2アーム42の他端42aを前方側に付勢可能な位置に位置するように設けられている。
【0060】
このため、第2伝達部材51が
図3及び
図4に示す第1位置に位置するときに、ユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作を行うと、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)の先端が前方側に変位するように第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)が作動し、その作動によって、第2伝達部材51が第3軸ピンCS15を回転軸として回動するように作動し、解除部材40の第2アーム42の他端42aが第2伝達部材51の付勢部51aによって前方側に付勢される流れで、ユーザが操作するハンドルの操作力は解除部材40の動作のための駆動力として伝達される。
【0061】
なお、後ほど説明するが、第2伝達部材51は、図では見えていない付勢部材(バネ等)によって、上側に付勢されており、常時、第2伝達部材51が
図3及び
図4に示す第1位置に位置する方向に付勢されるようになっている。
このように、第2伝達部材51を
図3及び
図4に示す第1位置に位置する方向に付勢している理由については後ほど説明する。
【0062】
(カム60)
カム60は、第2伝達部材51を解除部材40の回転軸としての第3軸ピンCS15に対して摺動させ、第2伝達部材51を先に説明した第2伝達部材51の付勢部51aが解除部材40の他端42aを付勢可能な第1位置と、これから説明するように、第2伝達部材51の付勢部51aが解除部材40の他端42aを付勢不可能な第2位置とに切り替えるための部材である。
【0063】
図6は、カム60によって第2伝達部材51が第2位置に位置するように切り替えられたところを示す図である。
カム60は、回動可能に錠本体1Bの筐体CS内に設けられており、後述するアクチュエータ70によって、
図6に示す矢印の方向に回動させられると、第2伝達部材51の一方側(
図1では上側)となる基端部を押圧する押圧片61を備えている。
【0064】
そして、先に説明したように、第2伝達部材51は、第3軸ピンCS15が挿通される孔が第3軸ピンCS15に対して摺動可能(上下摺動可能)とする長手方向(
図1では上下方向)に延在する長孔51bとされているため、
図3及び
図4に示す第1位置から第2位置となる下側に変位可能になっている。
【0065】
このため、第2伝達部材51は、カム60の押圧片61によって、下側に押圧されると、第2伝達部材51を
図3及び
図4に示す第1位置に位置させるように付勢している図示しない付勢部材の付勢力に抗して、
図6に示す下側に変位した第2位置に位置が切り替わる。
【0066】
そして、
図6を見るとわかるように、この第2位置に第2伝達部材51が位置するときには、第2伝達部材51の先端部に設けられた付勢部51aが解除部材40の第2アーム42の他端42aよりも、更に下側に位置しており、ユーザのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作によって、第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)が作動して、第2伝達部材51が前方側に付勢され、第2伝達部材51が作動しても、第2伝達部材51の付勢部51aによって、解除部材40の第2アーム42の他端42aが付勢されることがない。
【0067】
このように、第2伝達部材51が第2位置に位置するときには、ユーザのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作による操作力が解除部材40に伝達されないため、カマレバー20がストライクA2に係合する係合姿勢が解除されることがなく、いわゆる施錠状態となる。
【0068】
一方、
図6の状態から
図6に示す矢印と反対方向に、後述するアクチュエータ70によって、カム60が回動させられると、カム60の押圧片61による第2伝達部材51の押圧がなくなるため、第2伝達部材51は、第2伝達部材51を
図3及び
図4に示す第1位置に位置させるように付勢している図示しない付勢部材の付勢力によって第1位置に位置するように位置が切り替わる。
【0069】
なお、後ほど説明するが本実施形態の錠本体1Bは、キーシリンダのキー挿入口が住宅の外側に位置するように設けられ、ユーザの所持するキーによる操作でカム60を回動させるキーシリンダを備えており、ユーザによるキー操作によっても、カム60が第2伝達部材51を第1位置と第2位置に切り替えるように動作させることが可能である。
【0070】
また、後述するが本実施形態の錠本体1Bは、住宅の内側に位置するように設けられ、ユーザが手動でカム60を回動させるための、いわゆるサムターンを備えており、ユーザによるサムターンの操作によっても、カム60が第2伝達部材51を第1位置と第2位置に切り替えるように動作させることが可能である。
【0071】
(アクチュエータ70)
アクチュエータ70は、第2伝達部材51の位置を第1位置と第2位置とに切り替えるためにカム60を回動させる駆動部であり、モータと、そのモータの回転力をカム60に伝達するためのギア71(
図6参照)を含む複数のギアと、を備えている。
【0072】
そして、
図6に示すように、カム60は、アクチュエータ70のギア71に接続されるギア62を備えており、アクチュエータ70によって回動できるようになっている。
【0073】
なお、本実施形態の錠本体1Bは、カム60の回動状態を検出する位置検出部81、アクチュエータ70のモータを制御し、カム60の回動状態を制御するプリント回路基板82(以下、制御部ともいう。)、プリント回路基板82に電気的に接続されている電気配線、及び、ユーザの所持するキーとの間で通信を行う通信部(無線通信部)等も備えている。
【0074】
本実施形態では、位置検出部81は、
図6に示すように、後述するカム60のギア62に設けられるマグネット81aと、そのマグネット81aを検出する一対のホール素子82b(磁気検出センサ)と、後述するカム60のカム本体63に対して回転摺動可能に装着されたギア62を所定量戻し駆動させるための戻し量検出レバー81cと、を備えている。
【0075】
そして、ホール素子82bのうちの1つは、施錠状態とするために、カム60の押圧片61が
図6に示す位置に位置するように、カム本体63が回動したときにマグネット81aを検出するようにプリント回路基板82に搭載されている。
【0076】
また、ホール素子82bのうちのもう一つは、施錠状態から、後述するように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作すれば、引戸3を開くことが可能な解錠状態とするために、カム60の押圧片61が
図3及び
図4に示す位置に位置するように、カム本体63が回動したときにマグネット81aを検出するようにプリント回路基板82に搭載されている。
【0077】
一方、後ほど説明するが、アクチュエータ70によって、後述するカム60のカム本体63を回動させたときには、次の操作が、キーによるキーシリンダの操作又はサムターンの操作である場合に、その操作を阻害しないために、後述するカム60のカム本体63に対して回転摺動可能に装着されたギア62を所定量戻すことが行われる。
【0078】
具体的には、アクチュエータ70によって、後述するカム60のカム本体63を回動させたときには、戻し量検出レバー81cによるカム60のギア62の戻し量の検出に基づく制御部の制御に従って、アクチュエータ70は、カム60のギア62を所定の戻し量分、戻すように戻し駆動する。
ただし、位置検出部81は、上記構成に限らず、別の構成であってもよい。
【0079】
そして、ユーザがキーの操作ボタンを操作して施錠又は解錠の信号をキーに送信させる操作を行うと、制御部は、錠本体1Bに登録されている正規のキーであるかの認証を行い、正規のキーであれば、そのキーから送信された施錠又は解錠の信号に従って、アクチュエータ70にアクチュエータ70を駆動させる信号を送信する。
【0080】
ところで、先に触れたとおり、本実施形態の錠本体1Bは、キーシリンダ及びサムターンを備えており、その構成に関して簡単に説明し、その後、より詳細な各部の連携した動作についての説明を行いながら、引戸3を開く力をアシストする機能のための構成等について詳細に説明することにする。
【0081】
図7は、カム60の基本的な構造を説明するための図であり、
図7(A)はカム60を示す図であり、
図7(B)はカム本体63を示す図である。
なお、
図7では、カム本体63に設けられている押圧片61及びギア62に取り付けられるマグネット81aの図示を省略している。
【0082】
図7(A)に示すように、カム60は、カム本体63と、カム本体63に摺動可能に装着されたギア62と、を備えている。
【0083】
そして、
図7(B)に示すように、カム本体63は、外形円筒状の本体部63aと、本体部63aの中間位置に外側に突出するように形成されたリング状のフランジ部63bと、ギア62(
図7(A)参照)が装着される側にフランジ部63bから本体部63aに沿って突出するように形成された当接部63baと、本体部63aの内周面に設けられ、本体部63aに沿って内周面から内側に突出するように形成された係止部63cと、を備えている。
【0084】
なお、カム本体63の当接部63baは、
図7(B)に示すように、一対設けられており、具体的には、一対の当接部63baは、フランジ部63bの周方向の位置で、ほぼ対向する位置に設けられている。
【0085】
また、カム本体63の係止部63cも、
図1及び
図2(B)に示すように、一対設けられており、具体的には、一対の係止部63cは、本体部63aの内周面の対向する位置に設けられており、
図7(B)に示すように、一対の係止部63cは、周方向で見て、カム本体63の当接部63baとオフセットした位置に位置する。
【0086】
さらに、
図7では図示していないカム本体63に設けられている押圧片61は、フランジ部63bと一体に、フランジ部63bから外側に張り出すように形成されている。
【0087】
一方、
図7(A)に示すように、ギア62は、本体部63aに装着されたときに、フランジ部63bと対向することになるギア部62aの下面からフランジ部63b側に突出するように形成された一対の当接部62bを備えており、この当接部62bも、周方向で見て対向する位置に設けられている。
【0088】
そして、図示しないキーシリンダ及びサムターンは、操作されたときに回動する部分がカム本体63の一対の係止部63cに係止可能に錠本体1Bに装着されるようになっており、直接的に、本体部63aを回動させ、本体部63aに形成されて押圧片61が第2伝達部材51を押圧する位置と、押圧しない位置とに駆動させることができる。
【0089】
一方、アクチュエータ70は、ギア71によってギア62を回動させ、ギア62の一対の当接部62bをカム本体63の当接部63baに当接させることで、ギア62を介して間接的に本体部63aを回動させ、本体部63aに形成された押圧片61(
図1参照)が第2伝達部材51を押圧する位置と、押圧しない位置とに駆動させることができる。
【0090】
なお、上述のように、係止部63cと当接部63baが、周方向で見て、オフセットしていることでキーシリンダまたはサムターンによる手動操作のときに、ギア62の回動を伴わずにカム本体63を時計回り及び反時計回りに回動できる回転方向のギア62の位置(以下、中立位置ともいう。)ができる。
【0091】
そして、アクチュエータ70が、施錠状態となるように、押圧片61が
図6に示す位置に位置するようにカム本体63を駆動した後(回動させた後)、次の操作がアクチュエータ70ではなくキーシリンダまたはサムターンによる手動操作であった場合でも、アクチュエータ70のギア71の抵抗を受けない位置(中立位置)までギア71によってギア62を所定量だけ戻し駆動する。
このようにアクチュエータ70が戻し駆動することにより、アクチュエータ70のギア71の抵抗を受けないため、カム本体63を回動させることが可能である。
なお、このアクチュエータ70による戻し駆動は、先に述べた戻し量検出レバー81cによるギア62の戻し量の検出に基づく制御部の制御によって行われる。
【0092】
同様に、
図6に示す施錠状態からアクチュエータ70がカム本体63を駆動して、後述するように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作すれば、引戸3を開くことが可能な解錠状態となる
図3及び
図4に示す位置に押圧片61が位置するようにしたときにも、次の操作がアクチュエータ70ではなくキーシリンダまたはサムターンによる手動操作であった場合でも、アクチュエータ70のギア71の抵抗を受けない位置(中立位置)までギア71によってギア62を所定量だけ戻し駆動する。
なお、このアクチュエータ70による戻し駆動も、先に述べた戻し量検出レバー81cによるギア62の戻し量の検出に基づく制御部の制御によって行われる。
【0093】
このように、アクチュエータ70によるカム本体63の駆動によって、押圧片61が
図6に示す位置に位置するようにされた場合でも、
図3及び
図4に示す位置に位置するようにされた場合でも、ギア62がキーシリンダまたはサムターンによる手動操作に支障がない中立位置に位置するため、図示しないキーシリンダ及びサムターンによる施錠状態とする操作及び解錠状態とする操作が可能になっている。
【0094】
以上のような構成からなる引戸錠1の動作を説明しつつ、引戸3を開く力をアシストする機能のための構成等について、更に詳細に説明する。
図1に示すように、引戸3が開いている状態から
図5に示すハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を握って、引戸3を閉める側に操作する。
【0095】
このときのハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作方向は、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)が傾斜する方向と逆になるため、その操作力がそのまま引戸3に伝わり、引戸枠2の縦枠部2a側に近づいていく。
【0096】
そうすると、スライダー10の前面壁部11がストライクA2の板部A21に当接し、ストライクA2の押圧に応じて、スライダー10は、前方側に付勢するスライダーバネS10の付勢力に抗して後退する(
図3の矢印F1参照)。
【0097】
このとき、カマレバー20は、
図1を参照して説明したように、第1軸ピン15でスライダー10に回動可能に軸支されているため、スライダー10とともに後退しようとするが、カマレバー20は、筐体CSの左右の側壁CS1の間に設けられる第1規制ピンCS12が長孔22aに挿通されているため、そのまま後退することができず、スライダー10の後退に連動して、第1規制ピンCS12を中心として回転するように、スライダー10に対して第1軸ピン15を中心に回動することになり、
図3に示すように、ストライクA2に係合する係合姿勢となる(
図3の矢印F2参照)。
【0098】
一方、
図1を参照して説明したように、姿勢保持部材30がトーションバネS30で、カマレバー20と嵌合する側に付勢されているので、カマレバー20が回動し、姿勢保持部材30の嵌合部31がカマレバー20の嵌合段部22cに嵌合できる位置までカマレバー20が回動すると、姿勢保持部材30が第2軸ピンCS14を中心に嵌合方向に回動して、
図3に示すように、姿勢保持部材30の嵌合部31がカマレバー20の嵌合段部22cに嵌合する。
【0099】
なお、先に述べたように、スライダー10の上端は、嵌合部31が適切に嵌合段部22cに嵌合できるように案内する第1傾斜部を有しているため、嵌合部31はスムーズに嵌合段部22cに嵌合することができる。
【0100】
そして、
図3に示す状態になると、カマレバー20の係合姿勢を解除する方向にカマレバー20が回動する軌跡上に、姿勢保持部材30が位置するため、カマレバー20の係合姿勢を解除する方向への回動が禁止された状態となる。
【0101】
さらに、引戸3が引戸枠2の縦枠部2a側に近づくと、スライダー10及びカマレバー20が、更に後退するので、
図4に示すように、カマレバー20の嵌合段部22cに設けられた複数の段部のうち前方側の第3段部と姿勢保持部材30の嵌合部31が嵌合した状態となる。
【0102】
このように、引戸枠2の縦枠部2aと引戸3の間の隙間を小さくする隙間追従が行われ、
図4に示す状態になると、引戸枠2の縦枠部2aのフロントプレート2bと引戸3のフロントプレート3aが当接し、スライダー10の後退が停止して、引戸3も停止する。
【0103】
このように姿勢保持部材30の嵌合部31がカマレバー20の嵌合段部22c(第1段部~第3段部のいずれか)と嵌合した状態で、ユーザがキーの操作ボタンを操作してアクチュエータ70を駆動させると、アクチュエータ70によって、カム60が回動して、第2伝達部材51がカム60の押圧片61で押圧され、第2伝達部材51の位置が
図6に示す第2位置に切り替わる。
【0104】
先に説明したように、第2伝達部材51が
図6に示す第2位置に位置するときには、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力が解除部材40に伝達されないため、ユーザがハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作しても、カマレバー20がストライクA2と係合する係合姿勢を維持したままであるため、引戸3を開けることができない、いわゆる施錠状態となる。
【0105】
なお、先にも触れたとおり、第2伝達部材51が
図6に示す第2位置に位置するようにする操作は、ユーザがキーをキーシリンダに差し込んで手動操作で行うことも可能であり、また、ユーザが手動でサムターンを操作することで行うことも可能であり、この場合にはクリック感が得られるようになっている。
【0106】
具体的には、
図4及び
図6に示すように、錠本体1Bは、カム60の押圧片61にリング状の一端が接続されるとともに、リング状の他端が筐体CSの側壁CS1に接続されたトーションバネS60を備えており、カム60の動作によって、
図4及び
図6を見比べるとわかるように、そのトーションバネS60の向きが変わる瞬間がキー及びサムターンのクリック感を生み出すようになっている。
【0107】
一方、引戸3を開けるときには、ユーザがキーの操作ボタンを操作してアクチュエータ70を駆動させることで、
図6の矢印とは反対側にカム60を回動させるようにする。
なお、このようなカム60の回動は、ユーザがキーをキーシリンダに差し込んで手動操作で行うことも可能であり、また、ユーザが手動でサムターンを操作することで行うことも可能である。
【0108】
そうすると、カム60の押圧片61が第2伝達部材51を押圧しない状態になるのに合わせて、第2伝達部材51を第1位置に位置させるように付勢している付勢部材の付勢力で、第2伝達部材51が
図4に示す第1位置に切り替わる。
なお、施錠せずに引戸3を閉めただけの状態のときも
図4に示す状態になっている。
【0109】
図8はカマレバー20の係合姿勢を解除するときの状態を説明する図である。
なお、
図8は、内ハンドルIHが操作され、第1伝達部材57の内ハンドル伝達部材58が作動しているところを示している。
【0110】
図3または
図4に示す状態のときに、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)を操作すると、先に説明したように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)に連結されている第1伝達部材57(内ハンドル伝達部材58、外ハンドル伝達部材59)が作動し、
図8(左側の図及び丸囲みの拡大図参照)に示すように、第2伝達部材51が前方側に付勢される。
【0111】
このようにして、第2伝達部材51が作動すると、先にも説明したように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力が解除部材40の動作のための駆動力として伝達されるように、解除部材40の第2アーム42の他端42aが第2伝達部材51の付勢部51aで前方側に付勢され、解除部材40の回動によって、姿勢保持部材30の嵌合部31のカマレバー20の嵌合段部22cへの嵌合が解除されるように姿勢保持部材30が回動する。
【0112】
なお、先に述べたスライダー10の上端に設けられた嵌合部31が適切に嵌合段部22cに嵌合できるように案内する緩やかな傾斜の第1傾斜部は、このときには、嵌合部31が嵌合段部22cからスライダー10の上端側にスムーズに移動できるようにする役目を果たす。
【0113】
ここで、
図8(左側の図参照)に示すように、解除部材40の第2アーム42の他端42aの近傍、具体的には、解除部材40の第2アーム42のスライダー10の中間壁部13の下側に対応する位置には、前方側に突出するように形成され、スライダー10(より具体的には中間壁部13)を前方側に押圧する押圧部42bが設けられている。
【0114】
このため、
図3または
図4に示す状態で、解除部材40の第2アーム42の他端42aが第2伝達部材51の付勢部51aで前方側に付勢され、動作するときには、解除部材40によって、スライダー10も前方側に押圧されることになり、
図8(右側の図参照)に矢印F3で示すように、スライダー10は、引戸3が開く側に動くように、ストライクA2を押圧する。
【0115】
このように、ハンドル(内ハンドルIH、外ハンドルOH)の操作力は、引戸3を開けるときの引戸3の初動力にも利用され、引戸3を開く力をアシストするので、小さな力で引戸3を開けることができる。
【0116】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の錠本体1Bを示す
図9を参照しながら、第2実施形態の錠本体1Bについて説明する。
【0117】
図9に示すように、第2実施形態でも、錠本体1Bが、スライダー10と、カマレバー20と、姿勢保持部材30と、解除部材40と、伝達手段50と、カム60と、を備えており、それらが筐体CS内に収容されている点は、第1実施形態と同じである。
【0118】
一方、第2実施形態では、第1実施形態で示した電気錠としての構成部分(
図6に示すアクチュエータ70、位置検出部81、プリント回路基板82、プリント回路基板82に電気的に接続されている電気配線、及び、ユーザの所持するキーとの間で通信を行う通信部(無線通信部)等)を省略し、いわゆるメカ錠になっており、このように、本発明の引戸錠1は、アクチュエータ70等を省略したメカ錠であってもよい。
【0119】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、技術的思想を逸脱することのない変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0120】
例えば、第1実施形態では、ユーザが所持するキーの操作ボタンを操作してアクチュエータ70を駆動させ、施錠及び解錠を行える場合について説明したが、施錠及び解錠を行うための操作ボタンを引戸3又は引戸3の近くに設け、キーを所持したユーザが引戸3の近くに来たときに、制御部がキーとの通信で認証を行い、ユーザが引戸3又は引戸3の近くに設けた操作ボタンを操作することで施錠及び解錠を行えるものであってもよい。
【0121】
また、このような場合のキーは、キーシリンダに適用される形状のものでなく、カード型のキーであってもよく、カード型のキーの場合には、カード型のキーをカード読取機に翳すことで施錠及び解錠が行えるようになっていてもよく、スマートフォン等の携帯端末が施錠及び解錠を行うキーを兼ねるものになっていてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 引戸錠
2 引戸枠
2a 縦枠部
3 引戸
A2 ストライク
1B 錠本体
10 スライダー
20 カマレバー
22c 嵌合段部
30 姿勢保持部材
31 嵌合部
40 解除部材
42b 押圧部
50 伝達手段