(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】積層繊維製品の製造方法、この方法で使用するための一次基布、およびこの一次基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20220419BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220419BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A47G27/02 102
B32B5/24 101
B32B5/26
(21)【出願番号】P 2017538355
(86)(22)【出願日】2016-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2016052643
(87)【国際公開番号】W WO2016128360
(87)【国際公開日】2016-08-18
【審査請求日】2019-02-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】レウテリングスペルガー, クリス
【合議体】
【審判長】金澤 俊郎
【審判官】鈴木 充
【審判官】山本 信平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19506845(DE,A1)
【文献】特表平11-502142(JP,A)
【文献】実開昭57-52522(JP,U)
【文献】実開昭58-152182(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G27/02
B32B 5/24-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の製造方法において、
-表面と裏面を有する第一のシートを提供するステップと、
-前記第一のシートの前記裏面を、空隙率が50%~99%の多孔質層で覆うステップであって、前記多孔質層が熱可塑性材料を含むようなステップと、
-第一のシートの前記表面に、1本または複数の糸を前記第一のシートに通して縫い付けることによってパイルを形成し、それによって中間製品を形成するステップであって、前記1本または複数の糸が前記パイルを形成する自由端と前記多孔質層の中へと延びる固定端を有するようなステップと、
-前記中間製品を、加熱面を有する物体に沿ってこの製品を供給することによって加工するステップであって、前記多孔質層が前記加熱面と接触させられて、前記熱可塑性材料の少なくとも一部が溶融するようなステップと、
-前記熱可塑性材料の前記溶融部分を冷却して加工済み面を形成し、それによって前記1本または複数の糸の前記固定端を前記第一のシートに連結するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
第二のシートが、前記中間製品の前記加工済み面に、前記中間製品の前記加工済み面と前記第二のシートとの間に塗布された接着剤を使って連結される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糸の前記固定端が少なくとも部分的に前記熱可塑性材料と共溶融することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質層の空隙率が少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1本または複数の糸の前記固定端が前記多孔質層を貫通して延び、前記多孔質層の裏面の上方に延びる1つまたは複数のループを形成することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質層は不織布層であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質層は繊維性の層であることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔質層はフェルト層であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質層はニードルフェルト層であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質層は、長さが10cmより短い繊維からなることを特徴とする、請求項7~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質層は、重量が2~12dtexの間の繊維を含むことを特徴とする、請求項7~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質層は炭素繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項7~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質層は、ポリアルキレン繊維、ポリエステル繊維、およびポリアミド繊維からなる群より選択される繊維を含むことを特徴とする、請求項7~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質層の厚さは0.1~5mmの間であることを特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第一のシートは織布であることを特徴とする、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第一のシートは、ポリマテープを織った布地であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記中間製品の加工中に、前記中間製品は前記加熱面に関する相対速度を有することを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記接着剤はホットメルト接着剤であることを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項19】
前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、その混合物、および/またはそのコポリマからなる群より選択されたポリマを少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の一般的分野]
本発明は繊維製品の製造方法に関し、これは、表面と裏面を有する第一のシートであって、通常、一次基布と呼ばれるシートを提供するステップと、このシートの表面上に、1本または複数の糸を第一のシートに通して縫い付けることによってパイルを形成し、それによって中間製品を形成するステップであって、1本または複数の糸が前記パイルを形成する自由端と一次基布に縫い付けられる固定端を有するようなステップと、中間製品を、加熱面を有する物体に沿ってこの製品を供給することによって加工するステップであって、製品の裏が前記加熱面と接触して(例えば、押し付けられて)、1本または複数の糸の固定端が少なくとも部分的に溶融するようにして、固定端の溶融部分を固化した後に第一のシートと連結させるステップと、任意選択により、第二のシートを加工済みの中間製品に、中間製品の加工済み面と第二のシートとの間に塗布された接着剤を使って連結するステップと、を含む。本発明はまた、この方法で使用するための一次基布およびこの一次基布の製造方法にも関する。
【0002】
[発明の背景]
上述の方法は、欧州特許第1598476号明細書(譲渡人はKlieverik)から知られている。同特許には、糸を一次基布に連結する方法が記載されており、糸の固定にラテックスは使われない。基布はシートを含み、複数の熱可塑性糸がシートの厚さを通して縫い付けられ、裏面にループを形成し、その上面から飛び出して、その上にパイルを形成する。この工程は、タフティングと呼ばれる。代替的な実施形態では、製織が施されてもよく、これは、実際には、製品の長さ全体(または、さらには製品全体)を、1本の糸を使って縫い付けることができることを意味する。このようにして形成された中間製品では、糸はまだ一次基布に耐久的に連結されておらず、糸に軽い引張力をかけることによってこれらは簡単に抜ける。糸を一次基布に耐久的に連結するためには、中間製品が加熱されたローラ面に沿って(パイルを上にして)供給され、その下面がローラに押し付けられて、糸が少なくとも部分的に溶融する。欧州特許第1598476号明細書には、冷却および固化後に、糸は相互に、および基布にしっかりと固定され、糸を十分に機械的に固定するためにラテックスポリマを必要としないことが明記されている。1つの実施形態では、熱可塑性接着剤(ホットメルト接着剤等)を粉末として基布の下面に追加で塗布してもよく、そのため、加熱面が糸と接着剤を一緒に溶融させて、パイル、接着剤、および基布の間を良好に接着させることが教示されている。他の実施形態において、加熱後に(例えば圧力ローラによって)基布とパイルに対し、裏面に垂直な方向に(すなわち下から)圧力をかけて、可塑化した糸を相互に擦りつけて、それらの相互接着を増強させ、それによって加熱されたローラをより低温に、糸が熱だけで融合する温度より低く保持することができる。この方法は、中間基布を容易にリサイクルできるという利点を提供するが、これは、糸と基布であるシートを同じポリマから製作できるからである。糸のパイルの中に浸透する不適合のラテックスが存在しない。また、先行技術の方法と比較して、エネルギーと原材料のコストも節約される。しかしながら、この方法にも依然としていくつかの欠点がある。追加の接着剤を使わないと、高負荷の用途に使用するため、例えば自動車、列車、飛行機、オフィス、店舗等の中のカーペットとして使用するために十分な強度で糸を基布に固定することができない。それゆえ、実際に欧州特許第1598476号明細書に記載されている中間基布から織物製品を製作するには、十分な機械的固定を提供するためにパイルと基布によく含浸させるように追加の接着剤またはラテックスを基布の下面に塗布することが依然として必要となる。
【0003】
国際公開第2012/076348号パンフレット(譲受人はNiaga)には、織物製品の他の製造方法が記載されており、熱と圧力を使って第一のシートの裏で糸を少なくとも部分的に溶融させ、溶融した材料を広げて、良好な機械的固定を提供する。理論的には、この方法の使用によって追加の二次的な支持層(第二のシート)は不要となるかもしれないが、この文献には、このような支持層が、特に第二のシートを第一のシートに連結するために反応型接着剤が使用されている場合に、依然として有益であることが教示されているのは確かである。このような反応型接着剤は、第一のシートと第二のシートとの間の界面に存在する反応性分子間の熱的に可逆的な反応に依存する。反応型接着剤は一般的に、他の種類の接着剤、例えばホットメルト接着剤(HMA)により典型的に実現される場合よりはるかに強力な結合を提供する。しかしながら、反応型接着剤の使用によって強力な結合を提供し、容易にリサイクルできる(ラテックスと異なる)が、それを使用すると、やはり、最適な機械的特性を持たない繊維製品につながる。化学的反応型接着剤の使用の別の欠点は、接合されるべき成分と接着剤の両方が共反応基を担持していなければならないことである。それゆえ、一次基布および/またはタフトを製作するために使用されるポリマは、追加のステップにおける化学的改質を必要とする可能性があり、これは、標準的な市販のポリマには、反応型接着剤との使用に適したものとするのに必要な官能基が含まれないかもしれないからである。
【0004】
国際公開第96/29460号パンフレットは、パイル表糸と、基布と、ラテックス材を含まない接着性バインダと、を含むタフテッドカーペットを開示している。このバインダは、溶融してパイルを基布に固定する熱可塑性布地を含む。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、織物製品の改良された製造方法を提供することであり、糸は一次基布に機械的に耐久的に結合される。
【0006】
[発明の概要]
本発明の目的を達成するために、「発明の一般的分野」の項に記載されている方法が考案され、溶融工程が適用される前に、シートの裏面が、空隙率50%~99%の(すなわち、50を超え、100%未満であり、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、および99%の間のあらゆる数値を含む)多孔質層で覆われ、この多孔質層は熱可塑性材料を含み、この熱可塑性材料の少なくとも一部を溶融させ、熱可塑性材料の溶融部分を冷却し、それによって、1本または複数の糸の固定端を第一のシートに連結する。
【0007】
第一のシートの裏面をこのような多孔質層で覆うことにより(例えば、このような多孔質層のシートを裏面に重ねることによるか、または裏面上にそのような多孔質層をその場で構成することによる)、糸と一次基布との間の非常に耐久的な結合が得られることがわかった。これは、多孔質層に含まれる(均等に分散された)熱可塑性材料が、少なくとも部分的に溶融させ、その後冷却した(溶融材料を再硬化させた)後に、糸の端の周囲を把持する(半)連続的層の形態の追加の固定手段が提供されることによる可能性が最も高い。実際、国際公開第2012/076348号パンフレットには、一次基布の共溶融が糸を連結するための改良された方法として記載されているものの、これは、(一般的な)一次基布の共溶融として記載されている。このような一般的な一次基布は典型的に、非常に高密度の素材であるが、これは、それが機械的安定性を提供しなければならないからである。典型的な空隙率が10~30%のこのような高密度の素材は、その溶融部分が容易に流れ、糸と絡みやすくなる程度まで溶融するのは容易ではない。多孔質層は空隙を有し、それによって熱可塑性材料がふわふわした状態で(低密度に)存在し、それゆえ、熱い物体と接触することによって容易に溶融する。さらに、層の中の空隙の割合が高いため、溶融部分が糸の端と絡まりやすい。これは、糸の固定端と第一のシートとの耐久性の高い連結を提供するようである。欧州特許第1598476号明細書に記載されている粉末状のホットメルト接着剤を添加した場合と比較した利点は、多孔性層が(半)連続的であり、それゆえ、層の長さおよび幅方向への固有の機械的強度があることである。欧州特許第1598476号明細書において提案されているように粉末状のホットメルト接着剤が使用された場合、ホットメルト接着剤の粒子(本来的に不連続的)は、糸との局所的な結合しか提供できない。接着剤が完全に溶融し、連続した層として広げられた場合のみ、製品の長さおよび幅方向への機械的強度が生じうる。一次基布の不規則な表面上に接着剤の薄い層でこのような連続した層を提供するためことは、現実的には不可能である。しかしながら、本願の方法は、非常に容易かつ有効な方法でこのような連続した層を提供する。多孔質層内に均等に(平方センチメートルあたりの量が略同じ)分散される熱可塑性材料は、1~100%(質量)の量で存在していてもよく、この量はとりわけ、その溶融特性および硬化後のその強度によって異なる。しかしながら、現実的な量は10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%を超えるか、さらには90%を超える。
【0008】
留意すべき点として、本発明によれば、多孔質層は第一のシートの上に、このシートに糸を取り付ける前に提供できるが、まず糸を第一のシートに縫い付けてから、多孔質層を積層することも有利であるかもしれない。しかしながら、第一の実施形態には、多孔質層を有する一次基布を積層体としてライン外で製造でき、また、糸の固定端が多孔質層の中へと実際に入り込むような現実的な工程を容易に考案できるという利点がある。
【0009】
本発明はまた、積層織物製品の生産に使用するための一次基布にも関し、この基布は機械的に安定な第一のシートを含み、このシートの表面に、空隙率が50%~99%の多孔質層が連結され、この層は熱可塑性材料を含む。本発明はまた、積層織物製品の生産に使用するための一次基布の製造方法にも関し、この方法は、機械的に安定なシートを提供するステップと、シートの表面を、空隙率が50%~99%の多孔質層で覆うステップであって、この層が熱可塑性材料を含むようなステップと、多孔質層をシートに連結するステップと、を含む。
【0010】
[定義]
「積層体」とは、相互に機械的に連結された、積層された複数の層を含む構造である。
【0011】
「シート」とは、実質的に2次元の塊または素材であり、すなわち幅広く、かつ薄く、形状は典型的には長方形であるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0012】
「層」とはシートであるが、シートとは異なり、層は、引張応力を受けた時の固有の機械的安定性が低いかもしれない(参考:原綿の層は綿繊維の2次元シートであるが、引張応力を受けたときに裂けるかもしれない)。
【0013】
「熱可塑性」材料とは、加熱されると軟化または溶融し、冷却されると硬化する材料である。典型的に、熱可塑性材料は、相互に結合しないか、わずかしか結合しないポリマ分子からなる熱可塑性ポリマを含み、すなわち、これらは架橋をまったく、またはほとんど持たない。熱可塑性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリアミド、ポリウレタン、およびセルロース誘導体が含まれる。
【0014】
「繊維性の」とは、基本的に繊維からなることを意味する。「基本的に」とは、基本的な機械的構成要素が繊維から構成されることを意味するが、繊維には非繊維性材料を含浸させ、またはその他、それによって処理され、もしくはそれと結合されて、最終材料が繊維以外の構成要素を含んでいてもよい。典型的な繊維性シートは、織布および不織布製品またはそれらの組合せである。
【0015】
「空隙率」とは、材料内の空虚の(すなわち、「空の」)空間の尺度であり、全体の体積に対する空隙の体積の0~1の、または0~100%のパーセンテージとしての割合である。
【0016】
「縫い付け」とは、ステッチによるか、または例えばタフティング、編組、縫合、製織その他によりステッチを用いたかのようにして、機械的に糸をある物体の一部にする方法である。
【0017】
「フェルト」層とは、任意選択により熱と水分を用いて、機械的衝撃を使って相互にもつれ合ったばらばらの繊維の層である。
【0018】
「ニードルフェルト加工」は、(1本または複数の)針を使ってフリースの繊維の一番上の層を取り、針をフリースの中に刺し込むことによってそれを繊維の内側の層と絡ませるフェルト成形方法である。典型的に、針の複数回の動作を使って、最終的なフェルト製品が製造される。「棘付」針と誤って呼ばれるが、針は実際には、針のシャフトに沿って、繊維を把持する切込みを有する。これらの切込みは針の先端に向かって下向きであるため、針をフリースから抜く際に繊維を引き出さない。
【0019】
「ホットメルト接着剤」とは、溶融するように、すなわち加熱されて固体から液体に変化して、固化後に材料を接着させるように設計された熱可塑性接着剤である。ホットメルト接着剤は典型的に、非反応型、結晶性であり、溶媒をわずかしか、またはまったく含まないため、十分に接着させるために、硬化と乾燥は典型的に不要である。
【0020】
[発明の実施形態]
本発明による方法の第一の実施形態において、糸の固定端は少なくとも部分的に熱可塑性材料と共溶融する。熱可塑性材料と少なくとも部分的に共溶融させることによって、(最終的に)固化した熱可塑性材料と糸との間、およびしたがって第一のシートと糸との間により強力な結合を作り出すことができる。特に、糸の表面部分だけが、熱可塑性材料の溶融部分とのある程度の結合が確実に行われるのに十分であるが、糸の固定端が完全に溶融して多孔質層の中で「溶解」することがない程度に溶融する。この実施形態において、糸材料と多孔質層内の熱可塑性材料のそれぞれの融点の差は好ましくは、20℃以下、例えば19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1℃であるか、さらには同じである。融点の差が小さいと、この溶融方法を実行しやすい。
【0021】
本発明による方法の第二の実施形態において、多孔質層の空隙率は少なくとも90%である。少なくとも90%の空隙率により、非常に溶融しやすい熱可塑性材料が提供され、その一方で、この層の(重要な点として、この層の長さおよび幅方向の)必要な機械的連結が維持されるようである。実際に、層の最終的な機械的強度は、とりわけ、層中に存在する他の材料(もしあれば)、溶融量(0~100%の間、典型的には10~90%の間の何れかの数値とすることができる)、および熱可塑性材料の種類に依存する。本発明による多孔質層の使用に伴う、必要な追加の結合強度に応じて、適切な溶融量と材料の種類は、一般的な実験を通じて見出すことができる。
【0022】
他の実施形態において、1本または複数の糸の固定端は、多孔質層を貫通して延び、任意選択により、多孔質層の上方に延びる1つまたは複数のループを形成する。固定端が多孔質層を貫通して延びることにより、少なくとも部分的に溶融した糸は多孔質層中に存在する少なくとも部分的に溶融した材料と非常によく絡み合う。前述のように、固定端は任意選択により、多孔質層の上方に延びるループを形成する。この実施形態では、糸が第一のシートに取り付けられる前に多孔質層が既にこの第一のシート上に提供されている必要がある。これは、多孔質層がそれゆえ、実際に一次基布と一体化されて、それによって2層の一次基布が形成されることを意味する。このようにして、糸がこの2層の一次基布に縫い付けられると、糸は実際に多孔質層の上方に延びるループを形成できるかもしれない。これは、さらに改善された結合強度を提供するようである。
【0023】
また別の実施形態において、多孔質層は不織布層である。不織布層は、均質であるか、または少なくとも略均質であるという利点を有する(これは、異なる方向に実質的に異なる特性を有する織布層と対照的である)。本発明において、このような均質性は非常な有利であり、これは、それによって最終的な織物製品の使用方向に略関係なく、追加の結合強度が提供されるからである。
【0024】
さらに別の実施形態において、多孔質層は繊維性の層である。繊維性の層、例えばフリース様の層は多孔質層として容易に提供でき、何れの方向にも均質で、非常に空隙率が高く(最高99%)、さらにその長さおよび幅方向への十分な機械的強度を有する。これは、繊維が機械的に絡まり、それゆえ、空隙率が最高99%であっても、十分な機械的強度を有するという事実による。別の実施形態において、多孔質層はフェルト層、任意選択でニードルフェルト層である。
【0025】
また別の実施形態において、多孔質層は繊維性の層であり、多孔質層は基本的に、長さが10cmより短く、典型的に0.1cmより長く、好ましくは1~7cmの繊維からなる。繊維が10cmより長いと、薄く、均一な多孔質層を提供しにくくなることがわかった。0.1cmより短いと、繊維間の絡み合いがほとんど、乃至まったくなく、繊維が一次基布と相互に編み込まれるのに利用できる長さがほとんどない。実現可能ではあるが、1cmより短い繊維を使用することにより、層の長さおよび幅方向への機械的な絡み合いが減少する。典型的に、1~7cmの間の繊維が使用され、そのうち、3~6cmの間、例えば4~5cmの間の繊維が、フリースに組み込みやすいため、好ましい。
【0026】
また別の実施形態において、多孔質層は、重量が2~12dTex、すなわち重量が長さ10メートルあたり2~12mgの繊維を含む。カーペット等の繊維製品のパイルの場合、典型的に、重量が12dTexを超える、例えば20~40dTexの糸が使用される。しかしながら、本願の多孔質層に関しては、当業界で一般的なものより軽い繊維が使用されることが有利であるとわかった。その理由は、これらの非常に細い繊維は溶融しやすく、溶融材料のより均一な層を形成するようであるからであり、これは糸にとっての追加の結合層の役割を果たし、それと同時に、糸が存在しない箇所において(例えば、糸パターンの種類に応じて、糸の行間)、任意選択の二次基布のための固定層を形成する。このような固定効果の増大の理由は明らかではないが、それによって改善された積層特性が得られる可能性がある。
【0027】
再び、他の実施形態において、多孔質層は、典型的に0.1~1質量パーセントの炭素繊維をさらに含む。出願人は、繊維性の多孔質層、特にフェルト層を使用すると、層内に炭素繊維を追加で組み込みやすいことに気付いた。このような繊維は、繊維製品が少なくともある程度まで電流を伝導できるようにしてもよく、これによって繊維製品の静電帯電(これは、多くの繊維製品の実際上の問題として頻繁に遭遇する)が防止され、または少なくとも大幅に減少される。
【0028】
さらにまた別の実施形態において、多孔質層は、ポリアルキレン繊維、ポリエステル繊維、およびポリアミド繊維からなる群より選択される繊維を含む。出願人は、最終製品のリサイクルは、多孔質層が糸および/または第一のシートと同じ種類の材料から製作されていれば、より容易になることに気付いた。
【0029】
他の実施形態において、多孔質層の厚さは0.1~5mmの間である。0.1~5mmの間の厚さであると、多孔質層において、本発明の利点を得るのに十分な固体材料を提供できるようである。一般に、層が薄いほど、空隙率が高いかもしれないが、これは、とりわけ材料の種類(融点)と、多孔質層の中の連続する線(すなわち、実際の材料、例えば繊維)の太さに依存するかもしれない。
【0030】
また別の実施形態において、第一のシートは織布である。織布には、不織布に比べていくつかの利点があり、すなわち、これは強力かつ比較的安価である。織物の一次基布の大きな欠点は、基布が裁断される時に、その切端がほどけ、ほつれる可能性があることである。そのために、カーペットタイル 、ホテル、飛行機およびその他の家庭用以外の用途のカーペットをはじめとする多くのハイエンド用途の場合に、一次基布は、例えばColback(登録商標)(オランダ、アーネムのBonarより入手可能)等の不織布材料である。しかしながら、このような不織布の一次基布は比較的高価であり、したがって、主にハイエンド製品に適用される。しかしながら、本発明によれば、織物の一次基布のほつれは、織物基布の上の、そこに連結された(部分的に)溶融した多孔質層によって防止できる。この(部分的に)溶融した層により、実際に、最終的な織物製品が裁断されるときであっても、織物の完全性が保持される。別の実施形態において、第一のシートはポリマテープから製織された布地である。このような布地は非常に安価に製造でき、(部分的に)溶融した多孔質層と共に、ほつれの問題がまったく(またはほとんど)生じない。
【0031】
さらに他の実施形態において、中間製品の加工中に、中間製品は加熱面に関して相対的速度(ゼロ以外)を有する。この実施形態において、糸と多孔質層の溶融部分は第一のシートの表面に平行な方向に、溶融部分に前記方向の機械的な力を加えることによって広げられる。この機械的な力は艶出し工程につながってもよく、実際上、糸の端と多孔質層を中間製品の裏で統合して1つの連続した滑らかな材料層とする。
【0032】
他の実施形態において、第二のシートを加工済みの中間製品に連結するために使用される接着剤はホットメルト接着剤である。ホットメルト接着剤は、その結晶特性により、低温では比較的脆い。そのため、中間製品の局所的変形により、接着剤が割れ、したがって剥離につながると予想された。これは、当てはまらないようである。別の実施形態において、ホットメルト接着剤は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、その混合物、および/またはそのコポリマからなる群より選択されたポリマを少なくとも50重量%含む。これによって、例えば、シートを構成するために使用されるポリマと同じ種類の接着剤を選択できることになる。これは、繊維製品をリサイクルする際に役立ちうる。
【0033】
留意される点として、本発明による方法の実施形態の上述の特徴の何れも、これらが一次基布そのもの(それゆえ、任意選択で多孔質層が統合された第一のシート)に関するかぎり、有利な点として、本発明による一次基布にも、または積層繊維製品の生産に使用するための一次基布の製造方法にも当てはめることができる。特に、第一のシートがポリマテープから製織された一次基布は、繊維製品の製造に使用するのに非常に有利であり、これは、この基布が製造しやすく、比較的安価であり、多孔質層によって、先行技術のようなほつれの欠点に煩わされなくてよいからである。
【0034】
ここで、以下のような非限定的な例を用いて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
[例]
【
図1】
図1は、先行技術の繊維製品の断面を概略的に示す。
【
図3】
図3は、繊維結合工程を適用するための構成を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明による織物製品の断面を概略的に示す。
【0036】
例1は、本発明による織物製品の試験結果を提供する。
【0037】
[
図1]
図1は、先行技術の織物製品、この場合はカーペットタイルの断面を概略的に示す。タイルは第一のシート2、いわゆる一次基布を含み、これは米国、ダルトンのShaw Industriesから入手した強力な不織密着ナイロンである。ナイロン糸5がこの一次基布にタフティングされ、その端7がこの基布を貫通して延びて、その裏面4でループを形成する。このようにして、端7が一次基布に固定される。糸5の自由端6は、シートの第一の面3から延びて、その上にパイルを形成する。糸5は、固定端7をシートの第二の面4に、
図3に関して説明する繊維結合方法を使って密着させることにより、一次基布に機械的に耐久的に連結される。この第一のシートの重量はm2あたり670gである。機械的安定性を提供するために、タイル1は第二のシート8を含み、これはこの場合、ドイツ、エムスデッテンのTWEのQualitex Nadelvliesとして入手されるポリエステルニードルフェルト基布フリースの基布である。この第二のシートの重量は約800g/m2である。第一および第二のシート間に弾性層10があり、これはこの場合、重量330g/m2のポリエステル膨張フリースで、TWEからAbstandsvliesstofとして入手可能な、ニードルパンチ加工されていない不織布である。この層10の両辺は機械的に固化されている100% PETのメッシュで構成される。この中間層の厚さは約4mmである。これら3つの層(第一および第二シートならびに中間層)は、オランダ、ヘレーンのDSMによるポリエステルホットメルトグルーを使って相互に接着され、約300g/m2の重量で層11および12として塗布される。それゆえ、カーペットタイルの総重量は約2.4kg/m2である。
【0038】
[
図2]
図2は、異なる製造段階における
図1の製品の詳細を概略的に示す。
図2は、中間製品100を示し、これは一次基布2とその中にタフティングされた糸5からなる。図のように、糸5の固定端7は一次基布の裏面4にループを形成する。自由端6は一次基布の表面3から延びる。糸5はこの中間製品から容易に抜くことができるが、これは、糸が単にこの基布にからげられているだけであるからである。手で軽い引張力を加えることによって、糸の各々を容易に一次基布から抜くことができる。糸を一次基布に耐久的に結合するためには、国際公開第2012/076348号パンフレットから知られており、さらに
図3に関して詳しく説明するような繊維結合工程が適用される。この工程で、中間製品100の裏は、それと接触する加熱された物体に沿って引きずられ、それによって糸のループと、おそらくはまたその裏面にある一次基布の材料の一部が少なくとも部分的に溶融し、それと同時に、溶融材料が一次基布の裏面4の上にわずかに押し広げられ、裏面が滑らかにされる。その結果、非常に平坦で滑らかな層が得られ、固定端7の材料の少なくとも一部は、ループの中にもともと存在し、溶融されるかぎり、一次基布の裏面4上に平坦な構成として略広げられる。加工後の中間製品100’が
図2Bに示されている。溶融および拡張動作に関わらず、この繊維製品の通常乃至高負荷での使用中に加えられる引張力に対応するような引張力を用いると、糸は依然として加工済みの製品から(およびそれゆえ、最終的な繊維製品から)抜けるかもしれない。理論に拘束されることなく、これは、糸が一次基布から出る位置51および52において生じる高い張力によると考えられている。生じた高い張力によって、破断し、したがって、糸の、一次基布の裏に固定されていない状態となった自由端ができるかもしれない。また、一次基布と糸の固定端との共溶融を制御することは難しいため(一次基布の実質的な共溶融の結果、特に高い加工速度が採用されているときに、糸材料が「過剰溶融」し、またはおそらく、さらには焼けるかもしれない)、一次基布の共溶融を阻止しなければならないことが多い。これにより、繊維結合工程により糸が一次基布に機械的に連結されるときの強度が低下する。
【0039】
[
図3]
図3は、繊維結合工程、この場合、国際公開第2012/076348号パンフレットから知られている基本工程から考案される工程を適用するための構成を概略的に示す。
図3に示されている構成では、それぞれ加熱ブレードまたは加熱物体505、506としても示されている加熱素子を加熱するための第一の加熱ブロック500と第二の加熱ブロック501が存在する。これらの加熱素子はそれぞれ作業面515および516を有し、これらの面は加工対象の中間製品100、典型的には糸がタフティング等の縫い付け工程を介して取り付けられる一次基布と接触する状態とされる。作業面はどちらも、作業幅が18mmで、中間距離は26mmである。製品の裏面は、加熱素子の作業面と接触させられる。製品を加工できるようにし、そのために適切な圧力を加えるために、テフロン
(登録商標)製支持体520が存在し、これは加熱素子に加えられる押す力に対抗するために使用される。動作中、加熱素子は製品に関して相対的に、表示されている方向Xに移動される。典型的には、加熱素子は静止し、中間製品100製品が作業面とテフロン
(登録商標)製支持体との間で、Xで示されている方向と反対方向に移動される。上述の構成で加工されることになる製品100は、第一のシート(一次基布)からなり、そこにポリマ糸のカットパイルがシート内にタフティングにより提供される。糸の融点は典型的に、約260~280℃である。この製品は、製品を予熱するために、第一の加熱素子の200~220℃の温度を使って加工される。第二の加熱素子は、糸の融点より約15℃高い温度に保持される。温度を必要なレベルに保持するために、加熱ブロックと加熱素子に、それぞれ断熱材の層510、511、512、および513が設けられる。製品は、毎秒12mm(毎分0.72メートル)またはそれ以上の速度で供給され、加熱素子に加えられる圧力は1平方センチメートルあたり約1.35ニュートンである。その結果、艶出し加工された裏面を有し、すなわち、縫い付けられた糸が裏面から延びている部位において滑らかで光沢のある製品100’が得られる。
【0040】
[
図4]
図4は、第二のシート、この場合、寸法が安定な二次基布を、
図3に関連して説明した方法で生産された第一のシートの裏に取り付けるための積層構成を概略的に示す。この図では、第一のローラ600が示され、そのローラに、
図3に関連して説明した方法により製作された加工済み中間製品100’の2メートル幅のウェブが巻き付けられている。この製品はローラ600から、その裏面217が第二のローラ601と接触するように巻き出される。このローラは、ホットメルト接着剤(HMA)219の層を裏面217に塗布するために提供される。このために、ローラ601および602間にHMA 219のバルク量が存在し、で加熱される。この層の厚さは、これら2つのローラ間のギャップを調節することによって調節できる。HMAを塗布する部位の下流に二次基布215があり、この基布はローラ603から巻き出される。この二次基布は、ユニット700において高温で粘着性の接着剤に押し付けられ、冷却される。このユニットは2つのベルト701および702からなり、これは、一方で二次基布215を第一の製品100’に押し付け、他方で、接着剤をその固化温度より低温まで冷却する。その結果得られる最終製品201はその後、ローラ604に巻き取られる。代替的な実施形態において、
図3に関連して説明した繊維結合工程と積層工程はライン内で行われる。その場合、
図3に示される繊維結合装置は、ローラ600とローラ601との間に設置できる。その場合、中間製品100はローラ600に巻き取られ、残りの工程ステップに沿って供給される。
【0041】
典型的に、一次基布の材料自体は、融点が糸のそれよりはるかに高い材料となるように選択され、それによって、基布そのものは、希望に応じて、溶融工程によりまったく影響を受けないままである。これは、繊維結合のために使用される高い加工温度でより寸法的に安定な一次基布を使用できるという利点を提供するが、繊維結合工程では糸があまりしっかりと結合されなくなるという欠点もある。この問題は、本発明によれば、
図5に関して説明するように解決される。
【0042】
[
図5]
図5は、本発明による繊維製品の断面を概略的に示す。この図は
図2に対応する。
図5Aにおいて、第一のシート2は、表面3と裏面4を有するように描かれている。このシートは、ポリマテープを織って製作される。42Texの1.0mm幅のポリエステルテープから製作された縦糸が、10cmあたり糸112本で織られる。86Texの2.0mm幅のポリエステルテープから製作される緯糸が、10cmあたり糸59本で織られる。その結果、機械的に強力なシートが得られ、その重量は約100g/m
2と非常に軽量で、安価に製造できる。先行技術で認識されているように、ポリマテープを織ったこのようなシートの不都合な点は、ほつれやすいことである。このシートの裏面4は多孔質層20、この場合、フェルト繊維性の層で覆われる。この層は、シート2の裏面を長さ約50mmで5dTexの繊維で覆うことによって作られ、その繊維の70%はポリアミド(T
mは約220℃)、繊維の30%は低溶融ポリエステル(T
mは約230℃)である。これらの繊維は、約45g/m
2の量で提供される。この層は、第一のシートにニードルフェルト加工され、それによって新たな2層の一次基布2’が得られる。ニードルフェルト加工工程は、約2mmの最終厚さ(多孔質層に関する)に到達したところで停止される。その結果として得られるこの層の空隙率は約98%である。繊維の異なる混合、異なる開始重量(典型的には30~70g/m2)、および異なるニードルフェルト加工工程(1m
2あたりの異なる針数、異なるフェルティング回数等)を使って、90~99%の間、典型的には95%超の空隙率の多孔質層を製作できる。
【0043】
図5Aに示されているように、糸5、この場合、ポリアミドは、一次基布2’に、固定端7が多孔質層20の裏面4’(これは実際には、新しい一次基布2’の裏面となっている)の上方に延びるループを形成するようにタフティングされ、それによって中間製品110が形成される。この製品に対して、
図3に関して説明した繊維結合工程が行われる。その結果が
図5Bに概略的に示されている。多孔質層は糸5の固定端7の一部と共に部分的に溶融しており、部分的に溶融し、圧縮されたフリースの薄い層20’を形成し、そこに糸の端がしっかりと固定される。この層は、グラスファイバ強化樹脂と最も対照的であり、これは繊維が絡み付けられた略連続する層であり、糸の端はその塊の中にある。このようにして、加工済みの中間製品110’の中の糸5は、多孔質層を設けない場合の結合(
図2参照)と比較して、一次基布とよりよく結合されるように見える。この構成の別の利点は、層20’によって、裁断時の一次基布のほつれが防止されることである。
【0044】
[例1]
この例は、本発明を取り入れた繊維製品と本発明を取り入れていない繊維製品を比較した試験結果を提供する。どちらの繊維製品も、
図5に関連して説明したような、ポリエステルテープを織った一次基布と、そこにタフフィングされたナイロン糸に基づく。本発明による繊維製品は、
図5に関連して説明した追加の多孔質層を有する。機械的安定性を提供するために、どちらの繊維製品にも二次基布、この場合、ドイツ、エムスデッテンのTWOからQualitex Nadelvliesとして入手した、重量約500g/m
2のポリエステルニードルフェルト基布フリースが提供される。これら2つの層は、オランダ、エレーンのDSMによるポリエステルホットメルトグルーを重量約300g/m
2使って相互に接着される。
【0045】
これらの繊維製品に対して、まず、ASTM D1335-12(敷物のパイル糸引き抜き強度に関する標準試験方法(Standard Test Method for Tuft Bind of Pile Yarn Floor Coverings))に準じたパイル引き抜き強度試験を行った。その結果のパイル引き抜き強度は、多孔質層を組み込んだ繊維製品は24.9N、多孔質層を持たない繊維製品は17.9Nであった。明らかに、本発明による多孔質層の存在によって、糸を一次基布によりよく固定することができる。
【0046】
その後、製品に対して、ASTM D3969-05(敷物のパイル糸の二次基布の耐剥離性に関する標準試験方法(Standard Test Method for Resistance to Delamination of the Secondary backing of Pile Yarn Floor Coverng))に準じた剥離試験を行った。本発明による多孔質層を取り入れた繊維製品の剥離強度は80~100N、ピークは124~138Nであることがわかった。多孔質層を持たない繊維製品については、これらの数値はそれぞれ20Nと32~52Nであり、これらは顕著に低い。剥離強度が改善する理由は100%明らかというわけではないが、一次基布にタフト糸がよりよく固定されるからかもしれない。