(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】中枢神経系における悪性腫瘍の検出及び治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220419BHJP
A61K 35/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61K39/395 E ZNA
A61K39/395 T
A61K35/00
(21)【出願番号】P 2017542879
(86)(22)【出願日】2016-02-16
(86)【国際出願番号】 SE2016050116
(87)【国際公開番号】W WO2016133449
(87)【国際公開日】2016-08-25
【審査請求日】2019-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-21
(32)【優先日】2015-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521550482
【氏名又は名称】タージンタ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Targinta AB
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ラングレン アカーランド, エヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ギスラー, ラミロ
(72)【発明者】
【氏名】タルツ, ジャン
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】大久保 元浩
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/107774(WO,A2)
【文献】特表2006-512924(JP,A)
【文献】特許第5064025(JP,B2)
【文献】Cell Oncol.,2007,29(5),p.373-386
【文献】Semin.Oncol.,2014,41(5),p.623-636
【文献】信州医誌,2010年,Vol.58, No.5,pp.189-200
【文献】日大医誌,2013年,Vol.72,No. 1,pp.43-51
【文献】脳外誌,1996年,Vol.5, No. 6,pp.425-430
【文献】Neurol Med Chir (Tokyo),1978年,Vol.18, Part II,pp.545-550
【文献】日本臨牀,2010年,68巻 増刊号10,第127-131頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む、中枢神経系における悪性新生物の治療剤
であって、前記悪性新生物が膠芽腫である、治療剤(但し、前記悪性新生物が悪性黒色腫である前記治療剤を除く)。
【請求項2】
前記抗体が、細胞毒性部分、例えば、毒素、化学療法剤、及び放射性物質から選択される細胞毒性部分に共有結合している、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記毒素が、志賀及び志賀様毒素からなる群から選択されるリボソーム不活性化タンパク質;トリコサンチン及びルフィンなどのI型リボソーム不活性化タンパク質;リシン、凝集素、及びアブリンなどのII型リボソーム不活性化タンパク質;及びサポリンなどのリボソーム不活性化タンパク質である、請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
前記抗体が、サイトカイン、リンホカイン、またはインターフェロンなどの生体応答調節物質に共有結合している、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項5】
前記インテグリンα10サブユニットが、インテグリンα10サブユニットの天然に存在する変異体、インテグリンα10サブユニットのアイソフォーム、またはインテグリンα10サブユニットのスプライス変異体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項6】
前記抗体が、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の細胞死を誘発することができ、及び/または、該細胞の成長及び/または増殖及び/又は移動を阻害することができる、請求項1~5のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項7】
前記細胞が、悪性細胞または腫瘍関連細胞であり、前記悪性細胞または腫瘍関連細胞が、グリア細
胞を含む、請求項6に記載の治療剤。
【請求項8】
前記インテグリンα10サブユニットが、インテグリンα10β1ヘテロ二量体の一部である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項9】
インテグリンα10サブユニットの検出される対象用の、請求項1~
8のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項10】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、及び単鎖抗体からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項11】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項12】
前記抗体が、非ヒト抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項13】
少なくとも1つの抗体が、検出可能部分、例えば、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサ、または放射性同位体からなる群から選択される検出可能部分に共有結合している、請求項1~
12のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項14】
前記抗体が、IgA、IgD、IgG、及びIgMからなる群から選択されるアイソタイプを有する、請求項1~
13のいずれか1項に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリンα10サブユニット発現に基づいて、中枢神経系における悪性腫瘍を検出し、治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原発性脳腫瘍は、脳組織内で生じる。原発性脳腫瘍にはいくつかのタイプがある。診断される悪性原発性脳腫瘍の最も一般的なタイプは、神経膠腫の群に属する。神経膠腫は、いくつかのタイプのグリア細胞、例えば、星状細胞、乏突起膠細胞、及び上衣細胞から発達し得る。神経膠腫は、成長の可能性、及び腫瘍の悪性度を反映して、悪性度の低いもの(I)から悪性度の高いもの(IV)に格付けされる。
【0003】
膠芽腫(多形性膠芽腫、GBMとしても知られる)は、神経膠腫の群に属し、悪性度の高い神経膠腫として格付けされる。これは、最も一般的で最も悪性度の高いタイプの原発性脳腫瘍である。世界保健機関の分類に記載されているように、膠芽腫腫瘍は、未分化細胞に囲まれた壊死性組織の小さな領域の存在により特徴付けられる。この特徴、並びに過形成性血管の存在により、この腫瘍は、これらの特徴を有していないグレードIII星細胞腫から区別される。形態のみに基づいていない新興分類スキームは、これらの腫瘍をさらに区別する分子差を組み込む可能性がある。従って、膠芽腫は、それらの分子発現パターンに応じて、4つの異なるサブタイプでさらに特徴付けることができる(Verhaak et al,2010;Dunn et al,2012)。古典的、間葉系、前神経、及び神経サブタイプは、上皮成長因子受容体(EGFR)、神経線維腫症(NF1)、血小板由来成長因子受容体A(PDGFRA)、及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH1)の異常及び遺伝子発現によって定義される。
【0004】
膠芽腫は、異なる種類の細胞を含有する非常に異質な腫瘍であり、患者間の細胞含有物には大きな変動がある。発達している細胞型は、例えば、星状細胞、乏突起膠細胞、及び線維芽細胞である。腫瘍細胞は、隣接組織に非常に急速に広がって浸潤し、放射線及び化学療法の両方に強い耐性を呈する。この疾患の約28,000件の新しい症例が、米国及び欧州連合で毎年診断されている(情報源:米国国立癌記録所)。
【0005】
膠芽腫は、最も致命的な脳腫瘍である。治療しないと、平均生存期間は、4ヵ月であり、可能な治療をしても、約15ヵ月である。多くの患者は、診断から6ヵ月よりも長く生存せず、ほとんどは、2年以内に死亡する。5年も生存するのは、ほんのわずかである。
【0006】
今日現在、具体的な手術前の臨床検査は、GBMの診断に役立たない。コンピュータ断層撮影、核磁気共鳴画像(コントラスト有無)、陽電子放出断層撮影、及び磁気共鳴分光法を含む、脳のイメージング検査は、診断を行うために不可欠である。診断を確かめるため、脳組織の病理学的検査を行う必要がある。腫瘍遺伝学は、アジュバント療法への応答を予測するのに有用である。しかしながら、今日、異なるタイプの膠芽腫間の治療計画には違いがない。
【0007】
膠芽腫は、最も一般的かつ最も悪性度の高い、中枢神経系の悪性新生物である。発症率は、2~3症例/100000個体である。今日の治療には、手術、化学療法、及び放射線を伴う。標準治療は、脳圧を下げるための最大限の外科的切除、放射線療法、及びテモゾロミドによる併用療法及びアジュバント化学療法からなる。治療しないと、平均生存期間は、4.5ヵ月であり、利用可能な現在の治療により、これは、15ヵ月に延ばすことができる。疾患の重篤度のため、脳の膠芽腫及び他の悪性新生物を治療する新薬を見つけることが試みられている。しかしながら、これらも従来の療法のいずれも、膠芽腫患者の任意の著しい改善、または生存率の増加をもたらさない。
【0008】
従って、神経膠腫を含む、中枢神経系の悪性新生物を検出し、診断し、治療するより効果的な方法を見つけることが急務である。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、タンパク質インテグリンα10β1が、中枢神経系の悪性新生物から得られた組織中で発現されることを見出した。この知見に基づいて、本発明者らは、中枢神経系の悪性新生物を診断し、治療することを目的として、インテグリンα10サブユニットを検出するための方法及びツールを開発した。
【0010】
従って、本発明の目的は、患者の中枢神経系における悪性新生物の存在を判断し、これらを治療する方法を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む、中枢神経系における悪性新生物の治療に使用するための組成物に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象の中枢神経系における悪性新生物を治療する方法であって、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、中枢神経系における悪性新生物に罹患している対象の治療方法であって、a)本明細書に記載された方法に従って、対象が中枢神経系の悪性新生物に罹患しているかどうかを判断すること;及びb)前述の実施形態のいずれか1つで定義されたように、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体の治療的に有効な量を、中枢神経系の悪性新生物と診断された対象に投与することを含む方法に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、中枢神経系における悪性新生物の治療のための治療薬の製造のための、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む組成物の使用に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、哺乳類における腫瘍関連の血管新生の阻害方法であって、前述の態様のいずれか1つに従って、抗インテグリンα10サブユニット抗体の治療的に有効な量を前記哺乳類に投与することを含む方法に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、放射性トレーサまたは細胞毒性部分に共有結合したインテグリンα10特異的抗体を含む抗体薬物複合体に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、インテグリンα10特異的抗体、及び放射性トレーサを含むナノ粒子に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するためのキットであって、インテグリンα10サブユニットに特異的な抗体、インテグリンα10サブユニット抗原に特異的に結合することができるペプチド、またはインテグリンα10サブユニット転写産物またはその相補体に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブ、及び任意に、取扱説明書を含むキットに関する。
【0019】
本発明のさらなる目的は、神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物の検出、診断、及び有効かつ標的治療に使用することができる生成物を提供することである。
【0020】
第1態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
i)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原、または
ii)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の前記抗原及び/またはb)の前記ポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す方法に関する。
【0021】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブを哺乳類に投与する工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程
を含み、
前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を診断するためのインビトロ診断方法であって、
a)インビトロ試料を、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブに接触させる工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、試料の画像を形成する工程
を含み、
前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0023】
別の態様では、本発明は、単離された試料におけるインテグリンα10サブユニットを検出するためのインビトロ方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原、または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物、
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原及び/またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用に関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、ハイブリダイゼーション反応においてインテグリンα10サブユニットmRNAまたはcDNAに結合するインテグリンα10サブユニット核酸プローブの使用に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製におけるインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製における、インテグリンα10サブユニットに結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用に関する。
【0028】
別の態様では、本発明は、対象が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のためのインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用であって、前記診断剤は、生体試料中のインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在を測定するために製造され、前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在は、前記対象の中枢神経系の悪性新生物を示す、使用に関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、哺乳類が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のための、インテグリンα10サブユニットに結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用であって、前記診断剤は、試料中のインテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在を測定するために製造され、前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在は、前記哺乳類の中枢神経系の悪性新生物を示す、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】脳の悪性新生物、及びそれらの進行の概略図である。悪性新生物は、それらの見かけ上の形態に従って表現型的に分類され、腫瘍の組織学的特徴に基づいて、それらの重篤度に従って格付けされる。この図に示すものは、神経膠腫の主要な分類、及び正常細胞から膠芽腫への推定の腫瘍進行経路である。
【
図2】インテグリンα10は、膠芽腫腫瘍組織から単離された細胞によって発現される。インテグリンα10に対して指向された抗体を使用することで、免疫蛍光染色で視覚化した膠芽腫細胞株中の膠芽腫細胞でインテグリンα10が特異的かつ強力に発現されることが示された。
【
図3】インテグリンα10は、膠芽腫組織中の細胞によって発現される。インテグリンα10に対して指向された抗体を使用することで、免疫蛍光染色で視覚化した膠芽腫組織試料からなる患者の評価材料(patient material)中の膠芽腫細胞でインテグリンα10が特異的かつ強力に発現されることが示された。
【
図4】インテグリンα10は、膠芽腫組織中で検出されるが、影響を受けていない脳組織中では検出されない。
図4Aは、典型的な脳形態を有する患者試料の一部を示すが、
図4Bは、悪性脳組織(多形性膠芽腫)を有する同じ試料の別の一部を示す。インテグリンα10サブユニットに対して指向されたポリクローナル抗体(Camper et al(1998)J Biol Chem.273(32):20383-9)を用いて、膠芽腫細胞でインテグリンα10サブユニットが特異的かつ強力に発現されるが、形態学的に影響を受けていない脳組織ではインテグリンα10サブユニットの発現は無視できるほどであったことが示された。
【
図5】インテグリンα10の発現は、異なるグレードの神経膠腫で差次的に検出される。インテグリンα10に対して指向された抗体を使用することで、免疫組織化学染色で視覚化した、グレードII星細胞腫(少数の細胞;矢印を参照)(A)、グレードIII星細胞腫(B)、グレードIV星細胞腫としても知られる多形性膠芽腫(C)からなる患者の脳腫瘍組織試料中の細胞でインテグリンα10が特異的に発現されることが示された。インテグリンα10の発現は、グレードと共に増加し、グレードIII及びIVの星細胞腫で強力に発現される。血管中の細胞の陽性染色は、全てのグレードの神経膠腫(D)で見ることができる。
【
図6】神経芽細胞腫及び髄芽腫中のインテグリンα10の発現。インテグリンα10に対して指向された抗体を使用することで、免疫組織化学で視覚化したように、患者由来の神経芽細胞腫腫瘍組織(A)、及び髄芽腫腫瘍組織(B)中の細胞でインテグリンα10が特異的かつ強力に発現されることが示された。
【
図7】インテグリンα10は、いくつかの脳腫瘍組織中で検出される。差次的遺伝子発現分析、及び患者の脳腫瘍組織材料中の遺伝子発現の検証のために脳癌cDNAアレイを用いた。病理学者が検証した組織の高品質の全RNAから各アレイのcDNAを合成し、正規化し、2回連続したqPCR分析においてベータアクチンで検証し、臨床情報と一緒に分析した。図は、2つのランの平均相対定量(RQ)値を示す。図から分かるように、インテグリンα10サブユニットのmRNAは、星細胞腫、退形成性星細胞腫、線維性星細胞腫、多形性膠芽腫、脳の血管周囲細胞腫、髄膜腫、血管腫髄膜腫、異型性髄膜腫、線維性髄膜腫、髄膜皮性髄膜腫、小嚢胞性髄膜腫、分泌性髄膜腫、乏突起膠星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、及び退形成性乏突起神経膠腫で検出することができる。
【
図8】膠芽腫組織中の細胞のCD163及びCD206によるインテグリンα10の共局在化。
図8Aは、DAPIでDNAを標識した脳腫瘍膠芽腫組織の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図8Bは、位相差顕微鏡で視覚化した組織の顕微鏡イメージングを示す。
図8Cは、抗CD163抗体を用いた腫瘍組織中のCD163発現の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図8Dは、抗インテグリンα10サブユニット抗体を用いた腫瘍組織中のインテグリンα10サブユニット発現の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図8Eは、組織中の抗CD206抗体を用いた腫瘍組織中のCD206発現の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図8Fは、
図8A~Eの複合体を示し、CD163、インテグリンα10サブユニット、及びCD206の共局在化を示す。
【
図9】膠芽腫組織中の細胞のEGFRvIIIによるインテグリンα10の共局在化。
図9Aは、DAPIでDNAを標識した脳腫瘍膠芽腫組織の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図9Bは、位相差顕微鏡で視覚化した組織の顕微鏡イメージングを示す。
図9Cは、抗EGFRvIII抗体を用いた腫瘍組織中のEGFRvIII発現の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図9Dは、抗インテグリンα10サブユニット抗体を用いた腫瘍組織中のインテグリンα10サブユニット発現の共焦点顕微鏡イメージングを示す。
図9Eは、
図9A~Dの複合体を示し、EGFRvIII、及びインテグリンα10サブユニットの共局在化を示す。
【
図10】インテグリンα10サブユニットに対する抗体は、膠芽腫細胞の球形成を阻害する。この図は、膠芽腫細胞のインテグリンα10サブユニットに結合しているモノクローナル抗体が、未処理細胞と比較して球形成能を減少させることができたことを示す。この効果は、IgG対照抗体で処置した細胞では見られなかった。
【
図11】インテグリンα10サブユニットに対する抗体は、膠芽腫細胞の生存性及び/または成長を減少させる。この図は、神経膠腫(GBM)細胞が、WST-1アッセイを用いて、インテグリンα10サブユニットに対して非抱合型モノクローナル抗体による治療に敏感であることを示す。抗インテグリンα10抗体による治療は、未処理細胞と比較して、膠芽腫細胞の細胞生存性及び/または成長を減少させた。
【
図12】インテグリンα10サブユニットに対する抗体は、膠芽腫細胞の細胞生存及び/または増殖を減少させる。この図は、α10に対するモノクローナル抗体による膠芽腫細胞の治療後、サポリンに抱合された(α10抗体に結合している)二次抗体を添加することで、対照抗体による治療と比較して、膠芽腫細胞の生存及び/または増殖が減少したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
本明細書で使用する場合、「抗インテグリンα10抗体」または「抗インテグリンα10サブユニット抗体」は、ヘテロ二量体タンパク質であるインテグリンα10β1の少なくともα10サブユニットを認識し、それに結合することができる抗体を指す。これらの抗体は、ヘテロ二量体タンパク質であるインテグリンα10β1のエピトープを認識する抗体であってもよく、エピトープは、α10及びβ1サブユニットの両方のアミノ酸残基を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「インテグリンα10」または「インテグリンα10サブユニット」は、ヘテロ二量体タンパク質であるインテグリンα10β1のα10サブユニットを指す。この表示は、α10サブユニットに結合したβ1サブユニットの存在を除外しないため、インテグリンα10β1ヘテロ二量体の四次構造を形成する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「二重特異性抗体」は、各々が異なる抗原に結合する2つの異なる可変ドメイン結合部位(Fv)を有する抗体を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「対象」は、齧歯類、ネコ科、イヌ科、及び霊長類などの哺乳類を指す。好ましくは、本発明による対象は、ヒトである。
【0035】
本明細書で使用する場合、単数形態「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうではないと明確に述べない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「抗体」への参照には、複数のそのような抗体が含まれる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「生体試料」は、任意の対象、及び任意の対象から得られた種々の試料タイプを包含する。開示された方法で有用な生体試料の例としては、対象、液体組織試料、例えば、血液、または固体組織試料、例えば、生検材料または組織培養またはそれ由来の細胞及びその子孫が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、生体試料には、対象から収集した組織試料から得られた細胞が含まれる。従って、生体試料は、臨床試料、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、及び組織試料、例えば、成人脳などの脳由来の組織試料、脳由来の腫瘍試料を含む中枢神経系由来の組織試料などを包含する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「検出」、「を検出する」、「を検出すること」は、対照を参照して、または参照無しでの(レベルを測定する)定性的及び/または定量的検出が含まれ、所与の標的、具体的には、インテグリンα10サブユニットという標的の存在、不在、または量の同定をさらに指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「を分析すること」は、対照を参照して、または参照無しでの(レベルを測定する)定性的及び/または定量的検出が含まれ、所与の標的、具体的には、インテグリンα10サブユニットという標的の存在、不在、または量の同定をさらに指す。
【0039】
「放射性トレーサ」または「放射性標識」は、1つ以上の原子が放射性同位体によって置換されており、その放射性崩壊のおかげで、放射性同位体が反応物質から生成物へと辿る経路を追跡することによって、化学反応のメカニズムを探るために使用することができる化学化合物である。
【0040】
水素、炭素、リン、硫黄、及びヨウ素の放射性同位体は、生化学反応の経路を追跡するのに広く使用されている。放射性トレーサは、細胞または組織などの神経系内の物質の分布を追跡するために使用することもできる。放射性トレーサは、PETスキャン、SPECTスキャン、及びテクネチウムスキャンなどの種々のイメージングシステムの基礎を形成している。用語「放射性トレーサ」には、131ヨウ素などの治療用量の放射線を放出する放射性同位体が含まれる。
【0041】
詳細な説明
本発明者らは驚くべきことに、遺伝子ITGA10によってコードされるインテグリンα10サブユニット(ユニプロット:O75578)が、特に、脳の悪性新生物由来の中枢神経系組織の生検から得られた組織で発現されることを見出した。この知見に基づいて、本発明者らは、インテグリンα10サブユニットを検出する方法及びツールを開発し、中枢神経系の悪性新生物、及び神経膠腫などのサブタイプを診断及び/または治療することができることを実証した。
【0042】
I.中枢神経系の悪性新生物の治療
一態様では、本発明は、1つ以上の中枢神経系の悪性新生物の治療に関する。好ましい実施形態では、治療は、本明細書に記載されるように、特異的な抗インテグリンα10サブユニット抗体を用いて行われる。抗体は、以下に概説するように、医薬組成物中に含まれるように調製されるのが好ましい。
【0043】
医薬組成物、及びその投与
一実施形態では、本発明は、本発明による抗体及びその機能的等価物を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、抗体を含む臨床状態を治療するための薬物、前記抗体の投与を含む、中枢神経系の悪性新生物を治療する方法、または臨床状態を治療するための薬物を調製するための前記抗体の使用に関する。
【0044】
臨床状態は、本明細書で言及される状態のいずれであってもよい。抗インテグリンα10サブユニット抗体を投与する必要がある個体は、前記状態に罹患しているかまたは前記臨床状態を獲得するリスクのある任意の個体である。好ましくは、個体は、ヒトである。
【0045】
治療は、治癒、苦痛緩和、改善的治療、及び/または予防的治療であってもよい。
【0046】
本発明の医薬組成物は、インテグリンα10サブユニットの細胞外ドメイン内のエピトープ特異的に認識する少なくとも1つの抗体またはその機能的等価物(本明細書の上記及び下記では、「抗インテグリンα10抗体」または「抗インテグリンα10サブユニット抗体」と呼ばれる)の医薬有効量を含むのが好ましい。例えば、血液または組織試料中のインテグリンα10β1を検出するインビトロ目的のために、インテグリンα10β1の細胞質ドメインを認識することができる抗体を使用してもよい。
【0047】
本明細書で言及される医薬有効量は、典型的には、前記医薬組成物を受けた個体で所望の反応を誘発する抗インテグリンα10サブユニット抗体の量である。
【0048】
抗インテグリンα10サブユニット抗体の医薬有効量は、投与すべき個体、特に、前記個体のサイズ、並びに臨床状態、及び具体的な投与モードに依る。しかしながら、一般に、1mg~5000mgの範囲で、好ましくは、10mg~3000mgの範囲で、より好ましくは、50mg~1000mgの範囲で、例えば、100mg~750mgの範囲で、例えば、150mg~500mgの範囲で、例えば、200mg~400mgの範囲で、例えば、250mg~350mgの範囲で、例えば、約300mgのインテグリンα10サブユニット抗体を1回投与当たり成人のヒトに投与すべきである。
【0049】
本発明の組成物は、非経口投与に適した医薬組成物であってもよい。そのような組成物は、湿潤剤または乳化剤、抗酸化剤、pH緩衝剤、静菌化合物、及び製剤を個体の体液、好ましくは、血液と等張にさせる溶質を含み得る水性及び非水性の滅菌注射溶液;及び懸濁剤または増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含むのが好ましい。医薬組成物は、単回投与用または多回投与用容器、例えば、密封アンプル、及びバイアルで提示してもよく、使用直前に滅菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保管してもよい。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、細胞、組織、または有機体で使用するために非滅菌または滅菌であってもよい1つ以上の適切な医薬賦形剤、例えば、個体への投与に適した医薬賦形剤を含む。そのような賦形剤としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの賦形剤の種々の量の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。製剤は、投与モードに適合すべきである。本発明はさらに、本発明の上述の組成物の成分の1つ以上で充填された1つ以上の容器を含むパーツの医薬キットに関する。非水性賦形剤の例は、プロピレングリコール、プロエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。
【0051】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能な形態で調製され;さらに、注射前に溶液または液体中の懸濁液に適した固体形態も本発明の範囲内である。調製物は、乳化してもよく、またはリポソームに封入されてもよい。
【0052】
抗インテグリンα10サブユニット抗体は、単体で、または他の化合物と組み合わせて、同時または任意の順序で順次に投与してもよい。
【0053】
投与は、例えば、注射または輸液を介して非経口であってもよい。非経口注射は、例えば、脳室内、腫瘍内、静脈内、筋肉内、皮内、または皮下注射であってもよい。好ましくは、前記投与は、注射または輸液による非経口である。
【0054】
抗インテグリンα10サブユニット抗体は、できるだけ頻繁に投与すべきであるため、抗インテグリンα10サブユニット抗体は、1回以上、例えば、少なくとも2回、例えば、少なくとも3回、例えば、少なくとも4回、例えば、少なくとも5回、例えば、1~100回の範囲、例えば、1~50回の範囲、1~25回の範囲、例えば、1~10回の範囲で投与してもよい。
【0055】
好ましくは、2回の投与間は少なくとも1日、例えば、少なくとも2日、例えば、少なくとも3日、例えば、少なくとも5日、例えば、少なくとも1週、例えば、少なくとも2週、例えば、少なくとも1ヵ月、例えば、少なくとも6ヵ月、例えば、少なくとも1年、例えば、少なくとも2年、例えば、少なくとも3年、例えば、少なくとも5年、例えば、少なくとも10年である。
【0056】
化学療法剤は、抗インテグリンα10抗体などのインテグリンα10結合タンパク質を用いて、神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物を標的にすることができる。他の実施形態では、神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物は、適当なエフェクター機能、例えば、補体を活性化する能力をもつ抗インテグリンα10サブユニット抗体で治療することができる。
【0057】
一態様では、本発明は、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む、中枢神経系における悪性新生物の治療に使用するための組成物に関する。
【0058】
一実施形態では、抗体は、配列番号2(インテグリンα10の細胞外ドメイン)を含むかまたはからなるポリペプチドに特異的に結合し、別の実施形態では、抗体は、配列番号3(インテグリンα10の細胞外Iドメイン)を含むかまたはからなるポリペプチドに特異的に結合する。
【0059】
一実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及び、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、例えば、単鎖可変断片(scFv)、及び単ドメイン抗体からなる群から選択される抗体断片などの抗体断片からなる群から選択される。
【0060】
治療用途に使用される抗体は、好ましくは、ヒト定常領域をもつ、好ましくは、キメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体である。
【0061】
一実施形態では、抗体が、非ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または二重特異性抗体などのヘテロ特異的抗体である。
【0062】
抗体は、IgA、IgD、IgG、及びIgMからなる群から選択されるアイソタイプを有してもよい。IgGアイソタイプは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択されてもよい。
【0063】
特定の実施形態では、抗体は、
a.ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマまたはその抗原結合性断片によって産生されたモノクローナル抗体であり、該抗体または抗原結合性断片は、インテグリンα10鎖の細胞外Iドメインに特異的に結合する;または
b.ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体によって結合したエピトープと同じエピトープへの結合を競合する抗体;または
c.a)またはb)の断片であり、該断片は、インテグリンα10サブユニット鎖の細胞外Iドメインに特異的に結合することができる、である。
【0064】
一実施形態では、本発明の抗α10抗体は、インテグリンα10β1を介して細胞機能を遮断することができる抗体である。
【0065】
抗体は、細胞毒性部分、例えば、毒素、化学療法剤、及び放射性物質から選択される細胞毒性部分に共有結合してもよい。
【0066】
一実施形態では、毒素は、トリコサンチン及びルフィン;リシン、凝集素、及びアブリンなどのII型リボソーム不活性化タンパク質;及びサポリンからなる群から選択されるリボソーム不活性化タンパク質などのリボソーム不活性化タンパク質である。
【0067】
一実施形態では、毒素は、サポリンである。サポリンは、28SリボソームRNA中の特異的ヌクレオチドを脱プリン化し、タンパク質合成を不可逆的に遮断するN-グリコシダーゼ活性をもつ30kDタンパク質の植物酵素である。リボソーム不活性化タンパク質(RIP)のよく特徴付けられたファミリーに属する。標的SAP抱合体は、分子手術法として知られる技術で使用される強力かつ特異的な損傷剤である。サポリン(植物であるサポナリア・オフィシナリスの種子由来)は、標的化剤、この場合には、抗インテグリンα抗体に結合し、(インビトロまたはインビボで)細胞に投与してもよい。標的化剤は、細胞表面上のその標的を探し出し、それに結合する。抱合体が内面化し、サポリンは、標的化剤から離脱し、リボソームを不活性化し、タンパク質の阻害、最終的には、細胞死を引き起こす。細胞表面マーカーを有さない細胞は影響を受けない。
【0068】
一実施形態では、化学療法剤は、抗体に共有結合している。他の実施形態では、化学療法剤は、リポソームなどのナノ粒子に封入され、粒子は、それらの表面に結合した抗インテグリンα10サブユニット抗体を有することによって神経膠腫を標的にする。
【0069】
サポリンに複合した抗インテグリンα10サブユニット抗体などの抗体薬物複合体(ADC)は、例えば、Bidard and Tredan(2014)Targ Oncol 9:1-8またはAgarwal and Bertozzi(2015)Bioconjugate Chem.26:176-192に例示されているように、当業者によって調製してもよい。
【0070】
一実施形態では、中枢神経系の悪性新生物の治療に使用するための組成物は、サイトカイン、例えば、リンホカイン及びインターフェロンから選択されるサイトカインなどの生体応答調節物質に共有結合している抗体を含む。
【0071】
治療に使用するための組成物は、1つ以上の化学療法剤などの有効成分、及び任意に、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含んでもよい。
【0072】
本発明の抗体は、一実施形態では、インテグリンα10サブユニットに特異的であるように設計され、別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットの天然に存在する変異体、例えば、インテグリンα10サブユニットのアイソフォーム、またはインテグリンα10サブユニットのスプライス変異体に特異的であるように設計される。
【0073】
一実施形態では、本発明は、インテグリンα10β1ヘテロ二量体のα10及びβ1サブユニットの両方に結合する抗体に関する。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、インテグリンα10β1ヘテロ二量体のα10サブユニットに結合するが、β1サブユニットに結合しない抗体に関する。
【0075】
一実施形態では、抗体は、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の細胞死を誘発することができ、及び/または、該細胞の成長及び/または増殖を阻害することができる。
【0076】
一実施形態では、抗体は、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の細胞死を誘発することができる。一実施形態では、抗体は、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の成長を阻害することができる。一実施形態では、抗体は、インテグリンα10を発現する細胞の増殖を阻害することができる。一実施形態では、抗体は、インテグリンα10を発現する細胞の移動を阻害することができる。
【0077】
一実施形態では、細胞はさらに、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及び/またはCD206の1つ以上を発現する。
【0078】
一実施形態では、細胞はさらに、EGFRvIIIを発現する。一実施形態では、細胞はさらに、ネスチンを発現する。一実施形態では、細胞はさらに、PSA-NCAMを発現する。
【0079】
一実施形態では、細胞はさらに、GFAPを発現する。一実施形態では、細胞はさらに、PDGFRb(CD140b)を発現する。一実施形態では、細胞はさらに、PECAM-1(CD31)を発現する。一実施形態では、細胞はさらに、CD45を発現する。一実施形態では、細胞はさらに、CD68を発現する。一実施形態では、細胞はさらに、CD163を発現する。一実施形態では、細胞はさらに、CD206を発現する。
【0080】
従って、一実施形態では、本発明は、中枢神経系における悪性新生物に関連付けられた細胞の細胞死を誘発し、及び/または、該細胞の成長及び/または増殖を阻害する方法に関し、該細胞は、インテグリンα10サブユニット、及び任意に、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及び/またはCD206の1つ以上を発現する。
【0081】
一実施形態では、中枢神経系における悪性新生物に関連付けられた細胞は、悪性細胞または腫瘍関連細胞である。
【0082】
悪性細胞または腫瘍関連細胞の例としては、グリア細胞;星状細胞;周皮細胞;内皮細胞;造血細胞;及び小膠細胞が挙げられる。
【0083】
一実施形態では、細胞は、グリア細胞である。
【0084】
造血細胞は、例えば、造血幹細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、及び単球からなる群から選択されてもよい。
【0085】
一実施形態では、マクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である。
【0086】
臨床状態
本発明による臨床状態は、本発明の抗インテグリンα10サブユニット抗体の投与によって治癒的治療、改善的治療、または予防的治療を含む、本明細書で定義される中枢神経系の悪性新生物のいずれか1つの治療であってもよい。
【0087】
本明細書の上で定義した組成物は、以下のものからなる群から選択される悪性新生物の治療に使用する:
a)以下のものから選択される神経上皮組織の腫瘍
i)毛様細胞性星細胞腫(ICD-O 9421/1、WHOグレードI)、毛様類粘液性星細胞腫(ICD-O 9425/3、WHOグレードII)、上衣下巨細胞性星細胞腫(ICD-O 9384/1、WHOグレードI)、多形性黄色星状膠細胞腫(ICD-O 9424/3、WHOグレードII)、びまん性星細胞腫(ICD-O 9400/3、WHOグレードII)、退形成性星細胞腫(ICD-O 9401/3、WHOグレードIII)、膠芽腫(ICD-O 9440/3、WHOグレードIV)、巨細胞性膠芽腫(ICD-O 9441/3、WHOグレードIV)、膠肉腫(ICD-O 9442/3、WHOグレードIV)、膠腫脳腫瘍(ICD-O 9381/3、WHOグレードIII)から選択される星細胞系腫瘍、及び
ii)乏突起膠腫(ICD-O 9450/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起膠腫(ICD-O 9451/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起神経膠腫瘍、及び
iii)乏突起膠星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起膠細胞系腫瘍、及び
iv)上衣下腫(ICD-O 9383/1、WHOグレードI)、粘液乳頭状上衣腫(ICD-O 9394/1、WHOグレードI)、上衣腫(ICD-O 9391/3、WHOグレードII)、退形成性上衣腫(ICD-O 9392/3、WHOグレードIII)から選択される上衣腫瘍、及び
v)脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/0、WHOグレードI)、非定型脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/1、WHOグレードII)、及び脈絡叢乳頭癌(ICD-O 9390/3、WHOグレードIII)から選択される脈絡叢腫瘍、及び
vi)星芽細胞腫(ICD-O 9430/3、WHOグレードI)、第3脳室脊索腫様膠腫(ICD-O 9444/1、WHOグレードII)、及び血管中心性膠腫(ICD-O 9431/1、WHOグレードI)から選択される他の神経上皮性腫瘍、及び
vii)小脳異形成性神経節細胞腫(レーミッテ・ダクロス病)(ICD-O 9493/0)、線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫(ICD-O 9412/1、WHOグレードI)、胚芽異形成性神経上皮腫瘍(ICD-O 9413/0、WHOグレードI)、神経節細胞腫(ICD-O 9492/0、WHOグレードI)、神経節膠腫(ICD-O 9505/1、WHOグレードI)、退形成性神経節膠腫(ICD-O 9505/3、WHOグレードIII)、中枢性神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、脳室外神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、小脳脂肪神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、乳頭状グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、第4脳室ロゼット形成性グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、及び傍神経節腫(ICD-O 8680/1、WHOグレードI)から選択される神経細胞と混合性神経膠腫、及び
viii)松果体細胞腫(ICD-O 9361/1、WHOグレードI)、中間型松果体実質腫瘍(ICD-O 9362/3、WHOグレードII、III)松果体芽腫(ICD-O 9362/3、WHOグレードIV)、松果体部乳頭状腫瘍(ICD-O 9395/3、WHOグレードIII)から選択される松果体領域の腫瘍、及び
ix)髄芽腫(ICD-O 9470/3、WHOグレードIV)、大規模な球状髄芽腫(ICD-O 9471/3、WHOグレードIV)、退形成性髄芽腫(ICD-O 9474/3、WHOグレードIV)、中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(ICD-O 9473/3、WHOグレードIV)、中枢神経系神経芽細胞腫(ICD-O 9500/3、WHOグレードIV)、及び非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ICD-O 9508/3、WHOグレードIV)から選択される胚芽腫瘍、及び
b)以下のものから選択される脳神経と傍脊椎神経の腫瘍
i)神経鞘腫(ICD-O 9560/0、WHOグレードI)、
ii)神経線維腫(ICD-O 9540/0、WHOグレードI)、
iii)神経周膜腫(ICD-O 9571/0、9571/3、WHOグレードI、II、III)、及び
iv)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)(ICD-O 9540/3、WHOグレードII、III、IV)、及び
c)以下のものから選択される髄膜腫腫瘍
i)髄膜腫(ICD-O 9530/0、WHOグレードI)、異型性髄膜腫(ICD-O 9539/1、WHOグレードII)、退形成性髄膜腫(ICD-O 9530/3、WHOグレードIII)から選択される髄膜細胞腫、及び
ii)脂肪腫(ICD-O 8850/0)、血管脂肪腫(ICD-O 8861/0)、褐色脂肪腫(ICD-O 8880/0)、脂肪肉腫(ICD-O 8850/3)、孤立性線維性腫瘍(ICD-O 8815/0)、線維肉腫(ICD-O 8810/3)、悪性線維性組織球腫(ICD-O 8830/3)、平滑筋腫(ICD-O 8890/0)、平滑筋肉腫(ICD-O 8890/3)、横紋筋腫(ICD-O 8900/0)、横紋筋肉腫(ICD-O 8900/3)、軟骨腫(ICD-O 9220/0)、軟骨肉腫(ICD-O 9220/3)、骨腫(ICD-O 9180/0)、骨肉腫(ICD-O 9180/3)、骨軟骨腫(ICD-O 9210/0)、血管腫(ICD-O 9120/0)、類上皮血管内皮腫(ICD-O 9133/1)、血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/1、WHOグレードII)、退形成性血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/3、WHOグレードIII)、及び血管肉腫(ICD-O 9120/3)3.2.22、カポジ肉腫(ICD-O 9140/3)、ユーイング肉腫-PNET(ICD-O 9364/3)から選択される間葉腫瘍、及び
iii)拡散黒色症(ICD-O 8728/0)、褐色細胞腫(ICD-O 8728/1)、悪性黒色腫(ICD-O 8720/3)、髄膜黒色腫(ICD-O 8728/3)から選択される原発性黒色腫病変、及び
iv)血管芽腫(ICD-O 9161/1、WHOグレードI)などのその他の脳脊髄膜病変、及び
d)以下のものから選択される造血系腫瘍
i)悪性リンパ腫(ICD-O 9590/3)4.2、形質細胞腫(ICD-O 9731/3)、及び
ii)顆粒球性肉腫(ICD-O 9930/3)、及び
e)以下のものから選択されるトルコ鞍部腫瘍
i)頭蓋咽頭腫(ICD-O 9350/1、WHOグレードI)
ii)顆粒細胞腫瘍(ICD-O 9582/0、WHOグレードI)
iii)下垂体細胞腫(ICD-O 9432/1、WHOグレードI)、及び
iv)腺下垂体の紡錘形膨大細胞腫(ICD-O 8991/0、WHOグレードI)。
【0088】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される悪性新生物は、神経膠腫である。
【0089】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される悪性新生物は、グレードII、III、またはIVの神経膠腫である。
【0090】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される悪性新生物は、グレードII星細胞腫、グレードIII星細胞腫またはグレードIV星細胞腫などの星細胞腫である。
【0091】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される神経膠腫は、膠芽腫である。
【0092】
一実施形態では、神経膠腫は、一次性膠芽腫である。
【0093】
一実施形態では、神経膠腫は、二次性膠芽腫である。
【0094】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される悪性新生物は、髄芽腫である。
【0095】
一実施形態では、抗インテグリンα10抗体または本発明の抗インテグリンα10抗体を含む組成物によって治療される悪性新生物は、神経芽細胞腫である。
【0096】
一実施形態では、本発明の組成物によって治療される悪性新生物は、星細胞腫、退形成性星細胞腫、脳の血管周囲細胞腫、髄膜腫、血管腫髄膜腫、異型性髄膜腫、線維性髄膜腫、髄膜皮性髄膜腫、分泌性髄膜腫、乏突起膠星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、及び退形成性乏突起神経膠腫からなる群から選択される。
【0097】
一実施形態では、本発明の組成物によって治療される悪性新生物は、 星細胞系腫瘍、乏突起神経膠腫瘍、上衣細胞腫瘍、混合膠腫、原因不明の神経上皮腫瘍、脈絡叢腫瘍、神経細胞と混合性神経膠腫、松果体実質腫瘍、及び神経芽または膠芽腫エレメントをもつ腫瘍(胎児性腫瘍)、上衣腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、乏突起膠星細胞腫、神経上皮腫瘍、及び神経細胞性腫瘍並びに混合型神経細胞-膠細胞腫瘍からなる群から選択される。
【0098】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象の中枢神経系における悪性新生物を治療する方法であって、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を前記対象に投与することを含む方法に関する。前記治療は、予防、改善、または治癒であってもよい。
【0099】
本明細書の上で定義した治療は、前記対象中のインテグリンα10サブユニットの検出時に開始されてもよい。
【0100】
一態様では、本発明は、中枢神経系における悪性新生物に罹患している対象の治療方法であって、
a)本明細書で定義された検出方法によって、対象が中枢神経系の悪性新生物に罹患しているかどうかを判断すること;及び
b)インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体の治療的に有効な量を、中枢神経系の悪性新生物と診断された対象に投与することを含む、方法に関する。
【0101】
一態様では、本発明は、中枢神経系における悪性新生物の治療のための治療薬の製造のための、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む組成物の使用に関する。
【0102】
別の態様では、本発明は、哺乳類における腫瘍関連の血管新生の阻害方法であって、抗インテグリンα10サブユニット抗体の治療的に有効な量を前記哺乳類に投与することを含む方法に関する。
【0103】
一実施形態では、本発明は、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の成長及び/または増殖を阻害する方法であって、抗インテグリンα10サブユニット抗体の有効量を前記細胞に投与することを含む方法に関する。細胞は、本明細書で定義される1つ以上のさらなるマーカーを発現してもよい。特に好ましい実施形態では、前記細胞は、神経膠腫細胞である。前記方法は、インビトロまたはインビボで行ってもよい。
【0104】
一実施形態では、本発明は、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の腫瘍形成または転移の可能性を減少させる方法であって、抗インテグリンα10サブユニット抗体の有効量を前記細胞に投与することを含む方法に関する。細胞は、本明細書で定義される1つ以上のさらなるマーカーを発現してもよい。特に好ましい実施形態では、前記細胞は、神経膠腫細胞である。前記方法は、インビトロまたはインビボで行ってもよい。本明細書で提示されたデータは、インテグリンα10サブユニットを発現する神経膠腫(GBM)細胞を抗インテグリンα10サブユニット抗体で治療することが球形成能を著しく減少させることで、抗インテグリンα10サブユニット抗体による治療が、インテグリンα10サブユニット発現細胞が腫瘍を形成する能力を阻害または少なくとも減少させることを示していることが示される。
【0105】
さらなる実施形態では、治療方法には、本明細書に記載された方法を用いて、中枢神経系の画像を取得して、神経膠腫の位置を検出することを伴い、好ましくは、位置は、3D空間で検出され、位置についての情報を用いて、次の放射線療法をガイドし、神経膠腫を治療する。
【0106】
さらに別の実施形態では、外科医は、インテグリンα10サブユニット特異的分子プローブを使用して、手術中に神経膠腫の存在を検出することができる。
【0107】
II.中枢神経系の悪性新生物の検出及び診断
本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原、または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法にも関する。
【0108】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブを哺乳類に投与する工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程
を含み、前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0109】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を診断するためのインビトロ診断方法であって、
a)インビトロ試料を、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブに接触させる工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、試料の画像を形成する工程、前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0110】
別の態様では、本発明は、単離された試料におけるインテグリンα10サブユニットを検出するためのインビトロ方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原、または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記単離された試料中の悪性新生物を示す、方法に関する。
【0111】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系の悪性新生物に関連付けられた細胞を検出するのに使用される、インテグリンα10サブユニットに特異性を有する抗体を含むかまたはからなる薬剤に関し、細胞は、インテグリンα10サブユニットを発現する。
【0112】
別の態様では、本発明は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を診断するためのインビトロ診断方法であって、
a)前記哺乳類から得られたインビトロ試料を、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブに接触させる工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、試料の画像を形成する工程、前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0113】
別の態様では、本発明は、哺乳類から得られた単離された試料におけるインテグリンα10サブユニットを検出するためのインビトロ方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原及び/またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0114】
別の態様では、本発明は、生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用に関する。
【0115】
別の態様では、本発明は、生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、ハイブリダイゼーション反応においてインテグリンα10サブユニットmRNAまたはcDNAに結合するインテグリンα10サブユニット核酸プローブの使用に関する。
【0116】
別の態様では、本発明は、中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製におけるインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用に関する。
【0117】
別の態様では、本発明は、中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製における、インテグリンα10サブユニットに結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用に関する。
【0118】
別の態様では、本発明は、対象が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のためのインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用に関し、前記診断剤は、生体試料中のインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在を測定するために製造され、前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在は、前記対象の中枢神経系の悪性新生物を示す。
【0119】
別の態様では、本発明は、哺乳類が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のための、インテグリンα10サブユニットに結合する抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用に関し、前記診断剤は、試料中のインテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在を測定するために製造され、前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在は、前記哺乳類の中枢神経系の悪性新生物を示す。
【0120】
別の態様では、本発明は、悪性または腫瘍関連哺乳類細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む第1抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第1ポリヌクレオチド転写産物;及び
c)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドを含む第2抗原;及び/または
d)ポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第2ポリヌクレオチド転写産物、前記ポリペプチドは、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択される、
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含む方法に関する。
【0121】
c)の第2抗原及び/またはd)の第2転写産物と共に、a)の第1抗原及び/またはb)の第1ポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類細胞が悪性細胞または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0122】
別の態様では、本発明は、哺乳類の悪性または腫瘍関連細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチド及び/またはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第1分子プローブを哺乳類に投与する工程;前記第1プローブは、光子を発することができる第1部分に共有結合している;及び
b)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチド;及び/またはEGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第2分子プローブを哺乳類に投与する工程;前記第2プローブは、光子を発することができる第2部分に共有結合している;
c)前記第1及び前記第2部分から発した光子を検出することによって、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程を含む、方法を関する。
【0123】
前記第1及び前記第2部分からの光子の局在発光は、前記哺乳類の悪性または腫瘍関連細胞を示す。
【0124】
中枢神経系の悪性新生物
悪性新生物は、二通りに分類される。それらは、それらの見かけ上の形態に従って表現型的に分類され、それらの重篤度に従って格付けされる。この格付けは、腫瘍の組織学的特徴にも基づいている。
【0125】
神経膠腫では、例えば、悪性新生物は、形態学的に星状細胞様と思われる場合には星細胞腫と命名され、悪性細胞が形態学的に乏突起膠細胞様と思われる場合には乏突起神経膠腫と命名される。混合形態の神経膠腫もあり、その場合には、乏突起膠星細胞腫と命名される。
【0126】
腫瘍グレードは、腫瘍がどれだけ速く成長し、広がるかの指標である。腫瘍の細胞、及び腫瘍の組織の構成が、正常な細胞及び組織のものに近い場合、腫瘍は、高分化(悪性度は低い)と呼ばれる。これらの腫瘍は、低分化または未分化である腫瘍(見た目が異常な細胞を有し、より速く成長する(悪性度は高い))よりも遅い速度で成長し、広がる傾向がある。神経膠腫分類例については
図1を参照されたい。
【0127】
中枢神経系腫瘍のWHOグレード分類は、腫瘍の組織学的特徴に基づいて悪性度スケールを確立している。組織学的グレードは、以下の通りである:WHOグレードIには、増殖能が低く、頻繁に離散する性質をもち、及び外科的切除のみの後に治癒の可能性がある病変が含まれる。WHOグレードIIには、一般的に浸潤し、有糸分裂活性が低いが、局所療法後にグレードI悪性腫瘍よりも頻繁に再発する病変が含まれる。いくつかの腫瘍型は、より高いグレードの悪性に進行する傾向がある。WHOグレードIIIには、核異型、及び有糸分裂活性の増加を含む、悪性の組織学的証拠をもつ病変が含まれる。これらの病変は、退形成性組織学及び浸潤能を有する。これらは、通常、積極的なアジュバント療法で治療される。WHOグレードIVには、有糸分裂が活発で、壊死を起こしやすく、一般的に、術前及び術後の急速な進行及び致命的な結果に関連付けられる病変が含まれる。病変は、通常、積極的なアジュバント療法で治療される。
【0128】
完全かつ現在の分類について、1999年の神経病理学者の国際的なコンセンサス会議で現れ、2000年に公開された神経系腫瘍の新しい世界保健機関(WHO)分類を参照されたい(Kleihues and Cavanee,Eds.,2000: Pathology and Genetics of Tumours of the Nervous System.Lyon,France:International Agency for Research on Cancer.;Kleihues et al.(2002)The WHO Classification of Tumours of the Nervous System.Journal of Neuropathology & Experimental Neurology 61:215-225)。実際の分類は、分子遺伝学特徴、予測因子、及び遺伝性腫瘍症候群の別の章を含む、各腫瘍型の臨床病理学的特徴の広範な説明及び例示によって達成される。
【0129】
本開示は、インテグリンα10サブユニット発現によって特徴付けられる中枢神経系における悪性新生物の検出及び/または治療に関する。従って、一実施形態では、中枢神経系の悪性新生物は、以下のものからなる群から選択される:
a)以下のものから選択される神経上皮組織の腫瘍
i)毛様細胞性星細胞腫(ICD-O 9421/1、WHOグレードI)、毛様類粘液性星細胞腫(ICD-O 9425/3、WHOグレードII)、上衣下巨細胞性星細胞腫(ICD-O 9384/1、WHOグレードI)、多形性黄色星状膠細胞腫(ICD-O 9424/3、WHOグレードII)、びまん性星細胞腫(ICD-O 9400/3、WHOグレードII)、退形成性星細胞腫(ICD-O 9401/3、WHOグレードIII)、膠芽腫(ICD-O 9440/3、WHOグレードIV)、巨細胞性膠芽腫(ICD-O 9441/3、WHOグレードIV)、膠肉腫(ICD-O 9442/3、WHOグレードIV)、膠腫脳腫瘍(ICD-O 9381/3、WHOグレードIII)から選択される星細胞系腫瘍、及び
ii)乏突起膠腫(ICD-O 9450/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起膠腫(ICD-O 9451/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起神経膠腫瘍、及び
iii)乏突起膠星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードIII) から選択される乏突起膠細胞系腫瘍、及び
iv)上衣下腫(ICD-O 9383/1、WHOグレードI)、粘液乳頭状上衣腫(ICD-O 9394/1、WHOグレードI)、上衣腫(ICD-O 9391/3、WHOグレードII)、退形成性上衣腫(ICD-O 9392/3、WHOグレードIII)から選択される上衣腫瘍、及び
v)脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/0、WHOグレードI)、非定型脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/1、WHOグレードII)、及び脈絡叢乳頭癌(ICD-O 9390/3、WHOグレードIII)から選択される脈絡叢腫瘍、及び
vi)星芽細胞腫(ICD-O 9430/3、WHOグレードI)、第3脳室脊索腫様膠腫(ICD-O 9444/1、WHOグレードII)、及び血管中心性膠腫(ICD-O 9431/1、WHOグレードI)から選択される他の神経上皮性腫瘍、及び
vii)小脳異形成性神経節細胞腫(レーミッテ・ダクロス病)(ICD-O 9493/0)、線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫(ICD-O 9412/1、WHOグレードI)、胚芽異形成性神経上皮腫瘍(ICD-O 9413/0、WHOグレードI)、神経節細胞腫(ICD-O 9492/0、WHOグレードI)、神経節膠腫(ICD-O 9505/1、WHOグレードI)、退形成性神経節膠腫(ICD-O 9505/3、WHOグレードIII)、中枢性神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、脳室外神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、小脳脂肪神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、乳頭状グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、第4脳室ロゼット形成性グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、及び傍神経節腫(ICD-O 8680/1、WHOグレードI)から選択される神経細胞と混合性神経膠腫、及び
viii)松果体細胞腫(ICD-O 9361/1、WHOグレードI)、中間型松果体実質腫瘍(ICD-O 9362/3、WHOグレードII、III)松果体芽腫(ICD-O 9362/3、WHOグレードIV)、松果体部乳頭状腫瘍(ICD-O 9395/3、WHOグレードII、III)から選択される松果体領域の腫瘍、及び
ix)髄芽腫(ICD-O 9470/3、WHOグレードIV)、大規模な球状髄芽腫(ICD-O 9471/3、WHOグレードIV)、退形成性髄芽腫(ICD-O 9474/3、WHOグレードIV)、中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(ICD-O 9473/3、WHOグレードIV)、中枢神経系神経芽細胞腫(ICD-O 9500/3、WHOグレードIV)、及び非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ICD-O 9508/3、WHOグレードIV)から選択される胚芽腫瘍、及び
b)以下のものから選択される脳神経と傍脊椎神経の腫瘍
i)神経鞘腫(ICD-O 9560/0、WHOグレードI)、
ii)神経線維腫(ICD-O 9540/0、WHOグレードI)、
iii)神経周膜腫(ICD-O 9571/0、9571/3、WHOグレードI、II、III)、及び
iv)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)(ICD-O 9540/3、WHOグレードII、III、IV)、及び
c)以下のものから選択される髄膜腫腫瘍
i)髄膜腫(ICD-O 9530/0、WHOグレードI)、異型性髄膜腫(ICD-O 9539/1、WHOグレードII)、退形成性髄膜腫(ICD-O 9530/3、WHOグレードIII)から選択される髄膜細胞腫、及び
ii)脂肪腫(ICD-O 8850/0)、血管脂肪腫(ICD-O 8861/0)、褐色脂肪腫(ICD-O 8880/0)、脂肪肉腫(ICD-O 8850/3)、孤立性線維性腫瘍(ICD-O 8815/0)、線維肉腫(ICD-O 8810/3)、悪性線維性組織球腫(ICD-O 8830/3)、平滑筋腫(ICD-O 8890/0)、平滑筋肉腫(ICD-O 8890/3)、横紋筋腫(ICD-O 8900/0)、横紋筋肉腫(ICD-O 8900/3)、軟骨腫(ICD-O 9220/0)、軟骨肉腫(ICD-O 9220/3)、骨腫(ICD-O 9180/0)、骨肉腫(ICD-O 9180/3)、骨軟骨腫(ICD-O 9210/0)、血管腫(ICD-O 9120/0)、類上皮血管内皮腫(ICD-O 9133/1)、血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/1、WHOグレードII)、退形成性血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/3、WHOグレードIII)、及び血管肉腫(ICD-O 9120/3)3.2.22、カポジ肉腫(ICD-O 9140/3)、ユーイング肉腫-PNET(ICD-O 9364/3)から選択される間葉腫瘍、及び
iii)拡散黒色症(ICD-O 8728/0)、褐色細胞腫(ICD-O 8728/1)、悪性黒色腫(ICD-O 8720/3)、髄膜黒色腫(ICD-O 8728/3)から選択される原発性黒色腫病変、及び
iv)血管芽腫(ICD-O 9161/1、WHOグレードI)などのその他の脳脊髄膜病変、及び
d)以下のものから選択される造血系腫瘍
i)悪性リンパ腫(ICD-O 9590/3)4.2、形質細胞腫(ICD-O 9731/3)、及び
ii)顆粒球性肉腫(ICD-O 9930/3)、及び
e)以下のものから選択されるトルコ鞍部腫瘍
i)頭蓋咽頭腫(ICD-O 9350/1、WHOグレードI)
ii)顆粒細胞腫瘍(ICD-O 9582/0、WHOグレードI)
iii)下垂体細胞腫(ICD-O 9432/1、WHOグレードI)、及び
iv)腺下垂体の紡錘形膨大細胞腫(ICD-O 8991/0、WHOグレードI)からなる群から選択される。
【0130】
一実施形態では、本発明の方法によって検出及び/または治療される悪性新生物は、グレードII、III、またはIVの神経膠腫などの神経膠腫である。別の実施形態では、本発明の方法によって検出及び/または治療される悪性新生物は、星細胞腫である。
【0131】
ある特定の実施形態では、悪性新生物は、膠芽腫などの神経膠腫である。本発明によって検出される膠芽腫腫瘍は、星細胞系腫瘍、乏突起神経膠腫瘍、上衣細胞腫瘍、混合膠腫、原因不明の神経上皮腫瘍、脈絡叢腫瘍、神経細胞と混合性神経膠腫、松果体実質腫瘍、及び神経芽または膠芽腫エレメントをもつ腫瘍(胎児性腫瘍)、上衣腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、乏突起膠星細胞腫、神経上皮腫瘍、及び神経細胞性腫瘍並びに混合型神経細胞-膠細胞腫瘍からなる群から選択されてもよい。
【0132】
III.インテグリンα10サブユニット
インテグリンは、α及びβサブユニットからなるヘテロ二量体である。インテグリンα10β1ヘテロ二量体は、抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体、及びインテグリンα10サブユニット結合ペプチド、及びタンパク質によって検出されてもよい。インテグリンα10β1は、軟骨組織中で最も豊富なコラーゲン結合性インテグリンであり、その発現パターンは、他のコラーゲン結合性インテグリンのものとは異なる。インビトロ及びインビボ研究により、インテグリンα10β1は、軟骨細胞分化の固有の表現型マーカー、及び適切な軟骨発達に必要な細胞マトリックス相互作用の重要な仲介物質として同定されている(Lundgren Akerlund and Aszodi(2014)Adv Exp Med Biol.819:61-71)。
【0133】
インテグリンα10β1は、1998年に、軟骨細胞上のコラーゲンII型結合性受容体として同定された(Camper et al.,1998)。発達中、及び成人組織中の免疫組織化学的分析により、マーカーが軟骨含有組織に制限されて局在化することが実証された(Camper et al.1998,Camper et al.,2001)。マーカーが欠如しているノックアウトマウスは、成長板の組織を壊し、マトリックス中のコラーゲン、及びより短い長骨を減少させ、その細胞構造の重要性をさらに支持している(Bengtsson et al.,2005)。アミノ酸配列、変異体、アイソフォーム、及び配列アノテーションは、ユニプロット受託番号O75578-ITA10_HUMANに見ることができる。
【0134】
さらに、インテグリンα10β1は、間葉系幹細胞(MSC)上に存在し、凝集培養におけるインビトロ軟骨形成中に増加する。MSCの広範囲の培養は、インテグリンα10β1を下方調節するが、培養された間葉系幹細胞を線維芽細胞増殖因子2で処理することで、コラーゲンII型及びアグリカンなどの軟骨特異的分子と共にインテグリンα10β1の発現を増加させる。これにより、α10β1は、軟骨形成能をもつMSCの細胞表面バイオマーカーであることが示される(Varas et al.,2007)。
【0135】
全脳を含むいくつかの異なるマウス脳構造は、インテグリンα10サブユニット発現について以前に分析されており、分析した健康な脳構造のいずれにおいてもインテグリンα10サブユニットは発現されないことが示されている(WO99/51639)。
【0136】
従って、インテグリンα10サブユニットは、疾患の優れたバイオマーカーである。従って、本発明は、抗原であるインテグリンα10サブユニットポリペプチドを、例えば、配列番号1(インテグリンα10サブユニット)、配列番号2(インテグリンα10の細胞外ドメイン)、または配列番号3(インテグリンα10の細胞外Iドメイン)に特異的に指向した抗体で検出することに関する。さらに、抗原は、インテグリンα10サブユニットのアイソフォーム、スプライス変異体、または天然に存在する変異体である抗原である。
【0137】
一実施形態では、中枢神経系の悪性新生物は、インテグリンα10サブユニットの変異体である抗原の存在または不在を検出することによって検出または診断され、前記変異体は、配列番号1、2、または3に少なくとも70%同一であり、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも75%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも80%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも85%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも90%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも95%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも96%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも97%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも98%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも99%同一である変異体、例えば、配列番号1、2、または3に少なくとも99.5%同一である変異体である。
【0138】
一実施形態では、中枢神経系の悪性新生物は、インテグリンα10サブユニットの断片である抗原の存在または不在を検出することによって検出または診断され、前記断片は、配列番号1の少なくとも100の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも200の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも300の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも400の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも500の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも600の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも700の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも800の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも900の連続したアミノ酸、好ましくは、配列番号1の少なくとも1000の連続したアミノ酸を含む。
【0139】
インテグリンα10サブユニットは、例えば、翻訳時に、本明細書の上で定義したようにインテグリンα10サブユニット抗原を生成するmRNA転写産物の存在について試料を分析することによって、ヌクレオチドレベルを検出することもできる。
【0140】
インテグリンα10サブユニットに対して指向された抗体
一実施形態では、典型的には、生体試料中のインテグリンα10β1ヘテロ二量体タンパク質の一部としてのインテグリンα10サブユニットの存在は、免疫反応においてインテグリンα10サブユニットに結合する抗インテグリンα10特異的抗体を用いることによって検出される。好ましくは、抗体は、インテグリンα10サブユニット細胞外ドメインに結合するが、ある特定の実施形態では、抗インテグリンα10サブユニット抗体は、完全なインテグリンα10β1ヘテロ二量体複合体に対して重複特異性を有する。これは、本発明の抗体が、α10及びβ1サブユニットの両方を覆うエピトープに結合することを意味する。
【0141】
抗体及びその機能的等価物は、当業者に知られている任意の適当な方法によって産生されてもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、ハイブリドーマ細胞株(例えば、ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託されたmAb365ハイブリドーマ細胞株)中で産生されることで、細胞外α10β1ドメインに結合する抗体を産生する。前記ハイブリドーマの産生では、インテグリンα10及びβ1の遺伝子ノックアウトマウスを使用してもよい。ノックアウトマウスは、WO03/101497に記載されており、参照により本明細書に含まれる。
【0142】
インテグリンα10サブユニットの細胞外ドメインまたはIドメイン内のエピトープを特異的に認識し、それに結合する抗体を産生する1つの方法は、インテグリンα10サブユニットまたはその断片またはその機能的ホモログの細胞外ドメインまたはIドメインを哺乳類に投与する工程を含む。インテグリンα10サブユニットまたはその断片またはその機能的ホモログの前記細胞外ドメインまたはIドメインは、本明細書に記載されたインテグリンα10サブユニット断片及びペプチドのいずれであってもよい。前記哺乳類に投与されたインテグリンα10サブユニットまたはその断片またはその機能的ホモログの細胞外ドメインまたはIドメインは、本明細書では、「インテグリンα10サブユニット抗原」または「インテグリンα10抗原」と指定される。
【0143】
一実施形態では、本発明は、インテグリンα10サブユニットの活性を阻害することができる抗体を産生する方法に関し、前記抗体は、インテグリンα10サブユニットの細胞外ドメインまたはIドメイン内のエピトープを特異的に認識する。
【0144】
インテグリンα10サブユニット抗原は、前記哺乳類に1回以上、例えば、2回、例えば、3回、例えば、3~5回、例えば、5~10回、例えば、10~20回、例えば、20~50回、例えば、50回以上投与してもよい。異なるインテグリンα10サブユニット抗原を、同じ哺乳類に同時または任意の順序で順次投与することも可能である。
【0145】
一般に、インテグリンα10サブユニット抗原は、投与前に水溶液または懸濁液であるだろう。さらに、インテグリンα10サブユニット抗原を1つ以上の他の化合物と混合してもよい。例えば、インテグリンα10サブユニット抗原を1つ以上の適切なアジュバント及び/または1つ以上の担体と混合してもよい。
【0146】
アジュバントは、投与された抗原との混和剤が前記抗原への免疫応答を増加させるかあるいは改変させる任意の物質である。適切なアジュバントは、当業者に周知である。
【0147】
担体は、足場構造、例えば、抗原が関連することができるポリペプチドまたは多糖である。担体は、アジュバントと独立して存在してもよい。適切な担体は、当業者に周知である。
【0148】
モノクローナル抗体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の混合物を調製する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,By Ed Harlow,and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載されている。
【0149】
一実施形態では、本発明の抗インテグリンα10サブユニットは、インテグリンα10サブユニットの生物活性を阻害することができる抗体である。
【0150】
一実施形態では、本発明の抗体は、IgA、IgD、IgG、及びIgMからなる群から選択されるアイソタイプを有する。さらなる実施形態では、抗体が、IgG1、IgG2(例えば、IgG2a)、IgG3、及びIgG4からなる群から選択されるIgGアイソタイプなどのIgGアイソタイプである。
【0151】
本発明は、インテグリンα10サブユニットに結合することができるモノクローナル及びポリクローナル抗体の両方、及びそれらの断片、抗原結合断片、及びそれらの組み換えタンパク質を包含する。
【0152】
一実施形態では、生体試料中のインテグリンα10サブユニットの存在を検出するために使用される抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0153】
一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原を検出するために使用される抗体は、抗体断片である。抗体の抗原結合断片は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片である。本発明の抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、例えば、単鎖可変断片(scFv)、及び単ドメイン抗体からなる群から選択される抗体断片が挙げられる。
【0154】
本発明による抗体は、キメラ抗体、すなわち、異なる種由来の領域を含む抗体であってもよい。キメラ抗体は、例えば、ある種の動物由来の可変領域、別の種の動物由来の定常領域を含んでもよい。例えば、キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域とヒト由来の定常領域とを有する抗体であってもよい。そのような抗体は、ヒト化抗体と呼ばれることもある。
【0155】
一実施形態では、抗体が、異なる特異性をもつ2つの異なる抗原結合部位を含む、タンパク質、またはポリペプチドである二重特異性抗体などのヘテロ特異的抗体である。例えば、二重特異性抗体は、(a)インテグリンα10サブユニット上のエピトープ、及び(b)インテグリンα10サブユニット上の別のエピトープを認識し、それに結合してもよい。従って、同じ抗原内の2つの異なるエピトープを認識し、それに結合してもよい。用語「ヘテロ特異的抗体」は、異なる特異性をもつ2つ以上の異なる抗原結合部位を有する任意のタンパク質、またはポリペプチドを含むことを意図する。従って、本発明には、インテグリンα10サブユニットに指向される二重特異性、三重特異性、四重特異性、及び他の多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
一実施形態では、インテグリンα10サブユニットに特異的な抗体は、
a)ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体;または
b)ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託された前記ハイブリドーマによって産生された前記モノクローナル抗体によって結合したエピトープと同じエピトープへの結合を競合する抗体;または
c)a)またはb)の断片、前記断片は、前記インテグリンα10サブユニット鎖の細胞外Iドメインに特異的に結合することができる、である。
【0157】
抗インテグリンα10サブユニット抗体を検出する際に良好な信号対雑音比を得るため、部分を抗体に複合させて、検出を容易にすることが必要な場合がある。
【0158】
一実施形態では、抗体は、検出可能部分、例えば、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサからなる群から選択される検出可能部分に共有結合している。インテグリンα10サブユニット抗原は、インテグリンα10サブユニット以外のペプチド、タンパク質、またはポリペプチドを検出することによって検出されてもよく、前記他のペプチド、タンパク質、またはポリペプチドは、インテグリンα10サブユニット抗原に特異的に結合することができる。一実施形態では、前記ペプチド、タンパク質、またはポリペプチドは、酵素、フルオロフォア、または放射性トレーサに連結している。放射性トレーサは、例えば、陽電子放出体またはガンマ放出体から選択されてもよい。
【0159】
当業者は、状況及び試料の物理的状態に応じて、抗インテグリンα10サブユニット抗体を検出するための標準的な実験機器を選択することができる。
【0160】
一実施形態では、当業者は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などのフローサイトメトリーを用いて、検出工程を実施する。
【0161】
当該技術分野で周知の典型的な免疫学的方法としては、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光分析が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
インテグリンα10サブユニットを検出することは、検出及びイメージング、例えば、臨床イメージングの当該技術分野で周知の方法、例えば、従来の蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、2光子顕微鏡、誘導放出抑(STED)などを用いて達成してもよい。
【0163】
インテグリンα10サブユニットを検出するための分子プローブ
インテグリンα10サブユニット抗原またはインテグリンα10サブユニットをコードするポリヌクレオチドの存在についての生体試料の分析は、インテグリンα10サブユニットmRNA、cDNA、またはタンパク質に結合またはハイブリダイズして、生体試料中の発現を検出することができる分子プローブ(タンパク質またはポリヌクレオチド)、またはPCR、好ましくは、Q-PCRを用いることによって、実施することもできる。
【0164】
一実施形態では、インテグリンα10サブユニット特異的ポリヌクレオチドプローブは、光子を任意に発することができる検出可能部分に連結している。この実施形態を使用することで、診断または調査される対象に、前記検出可能部分、例えば、フルオロフォアを励起することができる光源を用いて照射してもよい。光子を検出する方法としては、PETスキャン、及びSPECTスキャンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
ある特定の実施形態では、検出可能部分は、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサからなる群から選択される。
【0166】
ポリヌクレオチド転写産物は、PCR、好ましくは、Q-PCRを用いて検出してもよい。
【0167】
さらなる実施形態では、生体試料中のインテグリンα10サブユニットの存在は、ハイブリダイゼーション反応において、インテグリンα10サブユニットRNAまたはcDNAに結合するインテグリンα10サブユニット核酸プローブを用いることによって検出される。
【0168】
核酸インテグリンα10特異的標的化成分の例としては、マイクロRNA、短干渉RNA(siRNA)、及び短ヘアピンRNA(shRNA)などのDNAプローブ、アンチセンスRNA、またはRNAiが挙げられる。
【0169】
当該技術分野で周知の核酸を検出する典型的な方法としては、ノーザンブロット法、サザンブロット法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マイクロアレイ、インサイチュハイブリダイゼーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
さらなる実施形態では、生体試料中のインテグリンα10サブユニットの存在は、インテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質を用いることによって検出される。そのようなペプチドまたはタンパク質は、組み換え、化学合成、または天然源から精製してもよい。
【0171】
さらなる実施形態では、生体試料中のインテグリンα10サブユニットの存在は、ハイブリダイゼーション反応において、インテグリンα10サブユニットRNAまたはcDNAに結合するインテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブを用いることによってインビボで検出される。
【0172】
細胞表面抗原及びポリヌクレオチドをインビボで検出する典型的な方法は、当該技術分野で周知であり、陽電子放出断層撮影法、X線コンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、及び機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、超音波、及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の細胞表面抗原では、抗体または他の特異的結合タンパク質に結合した放射性トレーサによる免疫標識を用いてインビボイメージングすることができる。
【0173】
好ましくは、インビボイメージングに使用される抗体は、小さいサイズ及びエフェクター機能の不在により、Fab断片及び単鎖抗体などの抗体断片である。
【0174】
方法のさらなる工程は、陽性及び/または陰性対照と検出されたインテグリンα10サブユニットの量とを比較することで、中枢神経系の悪性新生物を検出することを包含してもよい。これは、陽性染色を陰性から区別することができる特定の実験設定において染色のバックグラウンドレベルを設定し、方法が予想通りに行われたこと、及び陽性染色が前記新生物の真の検出であるかを評価することによって行うことができる。
【0175】
さらに、陽性対照は、インテグリンα10サブユニットを発現することが知られている細胞株または組織を含んでもよい。対照試料の例としては、膠芽腫細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
さらに、陰性対照は、インテグリンα10サブユニットを発現しないことが知られている細胞株または組織を含んでもよい。対照試料の例としては、脳、例えば、ヒト脳由来の正常細胞、組織、または細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
IV.インテグリンα10サブユニットと共発現するマーカー
悪性腫瘍細胞は、癌細胞とも呼ばれ、疾患として癌の礎である。これらの細胞は、腫瘍を開始し、腫瘍の進行を推進し、癌を遺伝性疾患として定義する発癌性及び腫瘍抑圧突然変異を有する(Hanahan and Weinberg(2011)Cell 144(5):646-74))。
【0178】
悪性腫瘍細胞の具体的な特徴は、隣接組織に侵入し、血管に入り、及び遠位部位に転移することである。悪性細胞に加えて、腫瘍微小環境には、非悪性細胞(例えば、線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞、周皮細胞、及び炎症性細胞)、及び腫瘍を取り囲み、腫瘍の成長を支持する分泌タンパク質も含まれる。腫瘍細胞と微小環境間のクロストークは、微小環境の組成物を一方向に変化させ、逆に、微小環境は、腫瘍細胞がどのように成長し、広がるかに影響を及ぼす(Ansell and Vonderheide(2013)Ansell SM,Vonderheide RH(2013)Cellular composition of the tumour microenvironment.Am Soc Clin Oncol Educ Book)。
【0179】
腫瘍微小環境組成物は、腫瘍部位に応じて変化する。脳は、特に、小膠細胞、星状細胞、及び脳内皮細胞などの多くの特殊化した細胞型からなる。脳常駐細胞に加えて、脳腫瘍は、異なる集団の造血細胞によって浸潤することも示されている(Lorger(2012)Cancers 4:218-243)。
【0180】
多くの異なる細胞型が、癌治療の可能なターゲットである。例えば、脳の血管は、神経膠腫、周皮細胞における癌幹細胞集団の拡張及びメンテナンスに重要であることが示されており、腫瘍血管系とのそれらの相互作用は、動物モデルにおける脳内腫瘍成長に重要であることが示されており、腫瘍への内皮前駆細胞動員を阻害することは、治療的価値がある場合がある。
【0181】
血管が、癌細胞に栄養や酸素を供給することで腫瘍成長を促すことが良く認められている。加えて、腫瘍細胞は、血管を使用して、内皮細胞間の反管腔側管部位と星状細胞の終足過程に沿って移動することによって、脳実質を介して広がる。一次性脳腫瘍における癌幹細胞(CSC)集団のメンテナンスは、いわゆる血管周囲のニッチの存在にも依る。
【0182】
単球系の細胞は、成熟状況に基づいて分類され、それらの子孫には、マクロファージ、及び樹状細胞が含まれる。これらの細胞の分化は、CD11c、CD14、及びCD68などの種々の細胞表面マーカーによって定義される。
【0183】
単球細胞は、先天性免疫応答に必要不可欠であり、病原体に対する最初の抵抗線として作用しながら、適応免疫応答も活性化する。刺激の種類に応じて、マクロファージは、古典的なM1活性化(リポ多糖及びIFN-γによって刺激)、またはあるいはM2活性化(IL-4及びIL-13によって刺激)を被る場合がある。得られたM1及びM2マクロファージは、異なるサイトカインを産生し、先天性免疫応答において異なる機能的役割を有する。例えば、M1マクロファージは、IL-12を分泌し、TH1細胞発達を促進するが、M2マクロファージは、IL-10を産生し、TH2細胞の発達を容易にする(Schmieder et al.(2012)Semin Cancer Biol.22:289-297)。M1マクロファージは、初期段階の腫瘍に動員され、炎症シグナルに応答して、腫瘍微小環境に浸潤する。その後、M1マクロファージは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインを放出し、T細胞及びNK細胞の発達及び分化を促進する。後期段階では、マクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)と呼ばれる亜集団に分化する。TAMは、M2細胞に分裂して、TH2分化及び動員を促すサイトカインを放出する。さらに、TAMは、TGF-などの抑制性サイトカインを分泌することで抗腫瘍免疫を阻害し、腫瘍成長の支援に関与している成長因子の血管新生及び発現の増加をもたらす。腫瘍内マクロファージの数または密度の増加は、大多数の悪性腫瘍の進行及び予後の両方と相関していることが、臨床観察により示唆されている(Bingle et al.(2002)Bingle L,Brown NJ,Lewis CE.(2002)。腫瘍進行における腫瘍関連マクロファージの役割は、Bingle et al(2002) J Pathol.196:254-265に記載されている。
【0184】
実施例7及び
図8~9に示すように、本発明者らは、多くのマーカーが、様々な度合いでインテグリンα10サブユニットと共発現することを見出した。これらのマーカーとしては、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206が挙げられる。これらの知見に基づいて、本発明者らは、哺乳類の中枢神経系の悪性新生物を含む細胞を検出し、治療する多次元方法を提供する。
【0185】
従って、一態様では、本発明は、悪性または腫瘍関連哺乳類細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む第1抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第1ポリヌクレオチド転写産物;及び
c)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドを含む第2抗原;及び/または
d)ポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第2ポリヌクレオチド転写産物で、前記ポリペプチドは、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択される;
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
c)の第2抗原及び/またはd)の第2転写産物と共に、a)の第1抗原及び/またはb)の第1ポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類細胞が悪性細胞または腫瘍関連細胞であることを示す、方法に関する。
【0186】
一態様では、本発明は、哺乳類の悪性または腫瘍関連細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチド及び/またはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第1分子プローブを哺乳類に投与する工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチド、及び/またはEGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第2分子プローブを対象に投与する工程、前記第2プローブは、第2光子を発することができる部分に共有結合している;
c)前記第1及び前記第2部分から発した光子を検出することによって、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程
を含み、
前記第1及び前記第2部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法に関する。
【0187】
EGFRvIII
上皮成長因子受容体(EGFR)は、多くの場合、遺伝子増幅の結果として、種々のヒト上皮腫瘍で過剰発現される。EGFR遺伝子増幅のある腫瘍は、EGFR遺伝子再編成を含むことが多く、最も一般的な細胞外ドメイン突然変異は、EGFRvIIIである。異常なEGFRvIIIシグナル伝達は、腫瘍進行の推進に重要であることが示されており、予後不良と相関していることが多い。EGFRvIIIは、多形性膠芽腫(GBM)をもつ患者のかなりの割合で発現されることが明らかである。しかしながら、他の腫瘍型におけるEGFRvIIIの存在は、論争中のままである(Gan et al(2013)FEBS J 280(21):5350-5370)。本発明者らは、EGFRvIIIが、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと非常に高い程度に共発現することを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とEGFRvIII抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びEGFRvIIIポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性細胞であることを示す。
【0188】
ネスチン
ネスチンは、VI型の中間フィラメント(IF)タンパク質である。これらの中間フィラメントタンパク質は、軸索の肥大成長に関与している神経細胞で主に発現される。ネスチンは、発達中の神経系の種々の領域内、及びインビトロ培養細胞中でCNS幹細胞を同定するのに最も広く使用されているマーカーである。本発明者らは、ネスチンが、いくつかのCNS細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とネスチン抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びネスチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0189】
PSA-NCAM
ポリシアル酸化された神経細胞接着分子(PSA-NCAM)は、神経細胞を発達させて、移動し、未成熟な脊椎動物の神経系のシナプス形成をするマーカーである。本発明者らは、PSA-NCAMが、悪性または腫瘍関連細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とPSA-NCAM抗原を共発現する細胞の検出は、、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0190】
別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びPSA-NCAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0191】
GFAP
グリア線維酸性タンパク質(GFAP)は、星状細胞及び上衣細胞を含む、多数の細胞型の中枢神経系(CNS)によって発現される中間フィラメント(IF)タンパク質である。GFAPは、星状細胞の機械的強度のみならず、細胞の形状の維持に役立つと考えられるが、その正確な機能は、それを細胞マーカーとして用いた多くの研究にもかかわらず、あまり理解されていないままである。本発明者らは、GFAPが、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とGFAP抗原を共発現する細胞の検出は、、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びGFAPポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0192】
PDGFRb(CD140b)
β型血小板由来成長因子受容体は、PDGFRB遺伝子によってコードされるヒト中のタンパク質である。この遺伝子は、血小板由来成長因子ファミリーのメンバーのための細胞表面チロシンキナーゼ受容体をコードする。これらの成長因子は、間葉起源の細胞の分裂促進因子である。本発明者らは、PDGFRb/CD140bが、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とPDGFRb/CD140b抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びPDGFRb/CD140bポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0193】
PECAM-1(CD31)
CD分類31(CD31)としても知られる血小板内皮細胞接着分子(PECAM-1)は、ヒト身体からの老人好中球の除去において重要な役割を果たす。PECAM-1は、通常、内皮細胞、血小板、マクロファージ、及びクッパー細胞、顆粒球、T/NK細胞、リンパ球、巨核球、破骨細胞、好中球で見られる。CD31は、類上皮血管内皮腫、類上皮肉腫のような血管内皮腫、他の血管腫瘍、組織球悪性腫瘍、及び形質細胞腫を含む、ある特定の腫瘍でも発現される。カポジ肉腫及び癌腫などのいくつかの肉腫で極めてまれに見られる。本発明者らは、PECAM-1(CD31)が、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とPECAM-1(CD31)抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びPECAM-1(CD31)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0194】
CD45
C型タンパク質チロシンホスファターゼ受容体(PTPRC)としても知られるCD45は、PTPRC遺伝子によってコードされるヒト中の酵素である。CD45は、これらの細胞の活性化を支援する赤血球及び形質細胞以外の全ての分化造血細胞で種々の形態で存在するI型の膜貫通タンパク質である。CD45は、リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、及び急性非リンパ球性白血病で発現される。本発明者らは、CD45が、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと高度に共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とCD45抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0195】
別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びCD45ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0196】
CD68
CD68(CD分類68)は、低密度リポタンパク質に結合する糖タンパク質である。CD68は、広範囲の異なる血液細胞及び筋細胞の細胞質顆粒で見られる。単球、組織球、巨細胞、クッパー細胞、及び破骨細胞を含む、マクロファージ系の種々の細胞のマーカーとして特に有用であると考えられる。マクロファージ中の存在は、これらの細胞の増殖または異常に関連する病態、例えば、悪性組織球症、組織球リンパ腫、及びゴーシェ病の診断にも有用にさせる。本発明者らは、CD68が、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと非常に高い程度に共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とCD68抗原を共発現する細胞の検出は、、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びCD68ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0197】
CD163
CD163(CD分類163)は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のスカベンジャー受容体である。単球/マクロファージ系の細胞をマークすることも示されている。本発明者らは、CD163が、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とCD163抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びCD163ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0198】
CD206
マンノース受容体とも呼ばれるCD206(CD分類206)は、マクロファージ及び未成熟な樹状細胞の表面に主に存在するが、ヒト皮膚線維芽細胞、及びケラチノサイトなどの皮膚細胞の表面にも発現される。本発明者らは、CD206が、悪性細胞中でインテグリンα10サブユニットと共発現されることを見出した。従って、本発明の一実施形態では、インテグリンα10サブユニット抗原とCD206抗原を共発現する細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。別の実施形態では、インテグリンα10サブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物;及びCD206ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物を含む細胞の検出は、前記細胞が、中枢神経系の悪性新生物の細胞、例えば、前記試料が得られる哺乳類中の神経膠腫の細胞などの悪性または腫瘍関連細胞であることを示す。
【0199】
本発明のデータと文献証拠に基づいて、本発明者らは、インテグリンα10サブユニットと、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるさらなるポリペプチドとを発現する細胞ポリペプチドを同定する方法を提供する。発現パターンに応じて、細胞は、表1に示すように同定することができる。
【0200】
本発明に従って分析された試料は、悪性細胞または腫瘍関連細胞を含有する。一実施形態では、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞は、悪性細胞である。一実施形態では、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞は、腫瘍関連細胞である。一実施形態では、悪性細胞または腫瘍-関連細胞は、グリア細胞;幹細胞;前駆細胞;星状細胞;周皮細胞;内皮細胞;造血細胞;及び小膠細胞からなる群から選択される細胞を含む。
【0201】
造血細胞は、例えば、造血幹細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、及び単球からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、マクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である。
【0202】
一実施形態では、細胞は、EGFRvIII+細胞、ネスチン+細胞、PSA-NCAM+細胞、GFAP+細胞、PDGFRb+細胞(CD140b+細胞)、PECAM-1+細胞(CD31+細胞)、CD45+細胞、CD68+細胞、CD163+細胞、及びCD206+細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0203】
V.試料
試料は、中枢神経系由来またはから得られる任意の試料であってよい。組織または血液試料を得る方法は、当業者にはルーチンである。ある特定の実施形態では、生体試料は、脳組織試料または脊髄組織試料である。さらなる実施形態では、生体試料は、脳腫瘍組織試料または脊髄腫瘍組織試料である。さらなる実施形態では、生体試料は、血液試料である。
【0204】
実施例4及び
図5に示すように、全血または血漿などの血液に存在する細胞中でインテグリンα10サブユニットを検出することも可能である。従って、一実施形態では、中枢神経系の悪性新生物の検出または診断は、血液試料を採取し、前記血液試料中に存在する細胞上または細胞中のインテグリンα10サブユニットまたはその断片(例えば、配列番号2または3を含む断片)の存在または不在を分析することによって行われる。
【0205】
さらなる実施形態では、生体試料は、対象であり、すなわち、インテグリンα10サブユニット発現の試験は、インビボまたはインサイチュで行われる。手術によって対象から中枢神経系の悪性新生物を除去した後、インテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブを使用して、腫瘍から残渣細胞を検出してもよい。これは、脳腫瘍を除去した空間に接触させて、インテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブを、腫瘍除去後に現れる空洞に塗布することで行われる。従って、塗布されたインテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブは、腫瘍の除去後の空洞に残された神経膠腫腫瘍から任意の残渣細胞を検出する。
【0206】
さらなる実施形態では、インテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブは、ブラシングまたは噴霧によって、腫瘍除去後に現れる空洞に塗布してもよい。
【0207】
インビボで組織または細胞を検出する多くの検出方法が、当業者に知られている。そのようなイメージング方法としては、陽電子放出断層撮影法(PET)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、X線コンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、及び超音波が挙げられる。
【0208】
本発明のさらなる態様は、生体試料中の神経膠腫をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、インテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット結合ペプチドまたはタンパク質、またはインテグリンα10サブユニット核酸プローブの使用である。
【0209】
VI.キット
本開示のさらなる態様は、神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物を生体試料中で検出するためのキットであって、
a)インテグリンα10サブユニットに特異的な抗体、インテグリンα10サブユニット抗原に結合するペプチド、インテグリンα10サブユニット転写産物にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブ;または
b)インテグリンα10サブユニット転写産物を増幅する一対のプライマー;及び
c)任意に、取扱説明書を含む、キットを提供する。
【0210】
さらに、前記キットは、インテグリンα10サブユニットを発現するかまたは発現しないことが知られている細胞株または組織などの陽性及び/または陰性対照試料を含んでもよい。対照試料の例としては、脳、例えば、ヒト脳由来の膠芽腫細胞株、正常細胞、組織、または細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、脳細胞または細胞株は、成人起源である。
【0211】
いくつかの実施形態では、キットは、例えば、抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体、またはインテグリンα10サブユニット抗原に結合しているペプチド、またはインテグリンα10サブユニットまたはその相補体をコードする核酸プローブを使用する手段を開示している指示書を含む。指示書は、電子形態で書かれていてもよく、または視覚であってもよい。
【0212】
いくつかの実施形態では、キットは、キットが設計される特定の用途を容易にするさらなる成分も含んでよい。従って、例えば、キットは、開示された方法の実施のために日常的に使用される緩衝液及び他の試薬を含み得る。そのようなキット及び適当な内容物は、当業者に周知である。
【0213】
ある特定の実施形態では、キットは、本明細書の他の箇所に記載されるように、インテグリンα10サブユニットと共発現または共局在化することが知られている1つ以上のさらなるマーカーを検出するための抗体などのさらなる試薬を含む。
【0214】
VII.検出可能部分
本発明の抗インテグリンα10サブユニット抗体は、検出可能部分を含んでもよく、例えば、抗体は、検出可能部分に共有結合してもよい。
【0215】
一実施形態では、抗体は、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサ、または放射性同位体からなる群から選択される検出可能部分に共有結合している。一実施形態では、検出可能部分は、陽電子放出体、及びガンマ放出体から選択される放射性トレーサである。一実施形態では、放射性同位体は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I、及び201TIからなる群から選択される。一実施形態では、抗体は、86y/90yまたは124I/211Atなどの一対の検出可能な核種と細胞毒性放射性核種を含む。
【0216】
一実施形態では、放射性同位体は、検出可能部分として、かつ、細胞毒性部分としてマルチモーダル方式で同時に作用することができる。
【0217】
一実施形態では、検出可能部分は、常磁性同位体、例えば、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、及び56Feからなる群から選択されるものを含むかまたはからなる。一実施形態では、検出可能部分は、SPECT、PET、MRI、光学または超音波イメージングなどのイメージング技術によって検出可能である。
【0218】
一実施形態では、細胞毒性部分及び/または検出可能部分は、結合部分を介して抗体またはその抗原結合性断片に間接的に連結している。結合部分は、例えば、キレート剤、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸(DOTA)、デフェロキサミン(DFO)の誘導体、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択されるキレート剤であってもよい。
【0219】
項目
[項目1]
インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む、中枢神経系における悪性新生物の治療に使用するための組成物。
[項目2]
抗体が、細胞毒性部分に共有結合している、項目1に記載の使用のための組成物。
[項目3]
細胞毒性部分が、毒素、化学療法剤、及び放射性物質から選択される、項目1~2のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目4]
毒素が、リボソーム不活性化タンパク質である、項目1~3のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目5]
リボソーム不活性化タンパク質が、志賀及び志賀様毒素;トリコサンチン及びルフィンなどのI型リボソーム不活性化タンパク質;リシン、凝集素、及びアブリンなどのII型リボソーム不活性化タンパク質;及びサポリンからなる群から選択される、項目1~4のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目6]
リボソーム不活性化タンパク質が、サポリンである、項目1~5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目7]
抗体が、生体応答調節物質に共有結合している、項目1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目8]
生体応答調節物質が、リンホカインまたはインターフェロンなどのサイトカインである、項目1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目9]
組成物が、1つ以上の化学療法剤をさらに含む、項目1~8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目10]
組成物が、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含む、項目1~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目11]
インテグリンα10サブユニットが、インテグリンα10サブユニットの天然に存在する変異体、インテグリンα10サブユニットのアイソフォーム、またはインテグリンα10サブユニットのスプライス変異体である、項目1~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目12]
抗体が、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞の細胞死を誘発することができ、及び/または、該細胞の成長及び/または増殖を阻害することができる、項目1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目13]
細胞が、悪性細胞または腫瘍関連細胞である、項目1~12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目14]
悪性細胞または腫瘍関連細胞が、グリア細胞;周皮細胞;内皮細胞;造血細胞;小膠細胞、及び幹細胞からなる群から選択される細胞を含む、項目1~13のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目15]
造血細胞が、造血幹細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、及び単球からなる群から選択される、項目1~14のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目16]
マクロファージが、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、項目1~15のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目17]
中枢神経系における悪性新生物が、インテグリンα10サブユニットを発現する細胞に関連付けられている、項目1~16のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目18]
インテグリンα10サブユニットが、インテグリンα10β1ヘテロ二量体の一部である、項目1~17のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
[項目19]
それを必要とする対象の中枢神経系における悪性新生物を治療する方法であって、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体の臨床的に有効な量を前記対象に投与することを含む、方法。
[項目20]
前記治療が、予防、改善、または治癒である、項目1~19のいずれか1項に記載の治療方法。
[項目21]
前記治療が、対象中でインテグリンα10サブユニットの検出時に開始される、項目1~20のいずれか1項に記載の治療方法。
[項目22]
中枢神経系における悪性新生物に関連付けられた細胞の細胞死を誘発する、及び/または、該細胞の成長及び/または増殖を阻害する方法であって、細胞が、インテグリンα10サブユニットを発現する、方法。
[項目23]
哺乳類の中枢神経系の悪性新生物に関連付けられた細胞を検出するのに使用されるインテグリンα10サブユニットに特異性を有する抗体を含むかまたはからなる薬剤であって、細胞が、インテグリンα10サブユニットを発現する、薬剤。
[項目24]
哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチド及び/またはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブを哺乳類に投与する工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程
を含み、
前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法。
[項目25]
哺乳類の中枢神経系における悪性新生物の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原及び/またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法。
[項目26]
哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を診断するためのインビトロ診断方法であって、
a)インビトロ試料を、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる分子プローブに接触させる工程、前記プローブは、光子を発することができる部分に共有結合している、及び
b)前記部分から発した光子を検出し、試料の画像を形成する工程
を含み、
前記部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法。
[項目27]
単離された試料におけるインテグリンα10サブユニットを検出するためのインビトロ方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物、
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
a)の抗原及び/またはb)のポリヌクレオチド転写産物の存在は、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示す、方法。
[項目28]
生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、インテグリンα10サブユニットポリペプチドに特異的に結合することができる抗インテグリンα10サブユニット抗体の使用。
[項目29]
生体試料中の中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するための、ハイブリダイゼーション反応においてインテグリンα10サブユニットmRNAまたはcDNAに特異的に結合することができるインテグリンα10サブユニット核酸プローブの使用。
[項目30]
中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製におけるインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用。
[項目31]
中枢神経系の悪性新生物を診断するためのキットの調製における抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用。
[項目32]
哺乳類が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のためのインテグリンα10サブユニット核酸プローブ化合物の使用であって、前記診断剤は、生体試料中のインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在を測定するために製造され、
前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリヌクレオチドの存在は、前記哺乳類の中枢神経系の悪性新生物を示す、使用。
[項目33]
哺乳類が中枢神経系の悪性新生物を有するかどうかを診断、監視、または判断するための診断剤の製造のための抗インテグリンα10サブユニット特異的抗体の使用であって、前記診断剤は、試料中のインテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在を測定するために製造され、前記試料中の前記インテグリンα10サブユニットポリペプチドの存在は、前記哺乳類の中枢神経系の悪性新生物を示す、使用。
[項目34]
悪性または腫瘍関連哺乳類細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチドを含む第1抗原;及び/または
b)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第1ポリヌクレオチド転写産物;及び
c)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドを含む第2抗原;及び/または
d)ポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする第2ポリヌクレオチド転写産物で、前記ポリペプチドは、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択される;
の存在または不在について、単離された試料中で分析することを含み、
c)の第2抗原及び/またはd)の第2転写産物と共に、a)の第1抗原及び/またはb)の第1ポリヌクレオチド転写産物の存在は、哺乳類細胞が悪性細胞または腫瘍関連細胞であることを示す、方法。
[項目35]
哺乳類の悪性または腫瘍関連細胞の検出方法であって、
a)インテグリンα10サブユニットポリペプチド及び/またはインテグリンα10サブユニットポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第1分子プローブを哺乳類に投与する工程;前記第1プローブは、光子を発することができる第1部分に共有結合している;及び
b)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチド;及び/またはEGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド転写産物に特異的に結合することができる第2分子プローブを哺乳類に投与する工程;前記第2プローブは、第2光子を発することができる部分に共有結合している;
c)前記第1及び前記第2部分から発した光子を検出することによって、中枢神経系またはその一部の画像を形成する工程、前記第1及び前記第2部分からの光子の局在発光が、前記哺乳類の悪性または腫瘍関連細胞を示す
を含む、方法。
[項目36]
前記試料が、悪性細胞または腫瘍関連細胞を含む、項目1~35のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目37]
悪性細胞または腫瘍関連細胞が、グリア細胞;星状細胞;周皮細胞;内皮細胞;造血細胞;小膠細胞、及び幹細胞からなる群から選択される細胞を含む、項目1~36のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目38]
造血細胞が、造血幹細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、及び単球からなる群から選択される、項目1~37のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目39]
マクロファージが、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、項目1~38のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目40]
前記細胞が、EGFRvIII+細胞、ネスチン+細胞、PSA-NCAM+細胞、GFAP+細胞、PDGFRb+細胞(CD140b+細胞)、PECAM-1+細胞(CD31+細胞)、CD45+細胞、CD68+細胞、CD163+細胞、及びCD206+細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、項目1~39のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目41]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びEGFRvIII+細胞である、項目1~40のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目42]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びネスチン+細胞である、項目1~41のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目43]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びPSA-NCAM+細胞である、項目1~42のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目44]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びGFAP+細胞である、項目1~43のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目45]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びPDGFRb+細胞(CD140b+細胞)である、項目1~44のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目46]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びPECAM-1+細胞(CD31+細胞)である、項目1~45のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目47]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びCD45+細胞である、項目1~46のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目48]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びCD68+細胞である、項目1~47のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目49]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びCD163+細胞である、項目1~48のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目50]
前記細胞が、インテグリンα10サブユニット+及びCD206+細胞である、項目1~49のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目51]
a)EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択されるポリペプチドを含む抗原;及び/または
b)ポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物、前記ポリペプチドは、EGFRvIII、ネスチン、PSA-NCAM、GFAP、PDGFRb(CD140b)、PECAM-1(CD31)、CD45、CD68、CD163、及びCD206からなる群から選択される
の少なくとも1つを検出することをさらに含む、項目1~50のいずれか1項に記載の薬剤、方法、または使用。
[項目52]
悪性新生物が、
a)以下のものから選択される神経上皮組織の腫瘍
i)毛様細胞性星細胞腫(ICD-O 9421/1、WHOグレードI)、毛様類粘液性星細胞腫(ICD-O 9425/3、WHOグレードII)、上衣下巨細胞性星細胞腫(ICD-O 9384/1、WHOグレードI)、多形性黄色星状膠細胞腫(ICD-O 9424/3、WHOグレードII)、びまん性星細胞腫(ICD-O 9400/3、WHOグレードII)、退形成性星細胞腫(ICD-O 9401/3、WHOグレードIII)、膠芽腫(ICD-O 9440/3、WHOグレードIV)、巨細胞性膠芽腫(ICD-O 9441/3、WHOグレードIV)、膠肉腫(ICD-O 9442/3、WHOグレードIV)、膠腫脳腫瘍(ICD-O 9381/3、WHOグレードIII)から選択される星細胞系腫瘍、及び
ii)乏突起膠腫(ICD-O 9450/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起膠腫(ICD-O 9451/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起神経膠腫瘍、及び
iii)乏突起膠星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起膠細胞系腫瘍、及び
iv)上衣下腫(ICD-O 9383/1、WHOグレードI)、粘液乳頭状上衣腫(ICD-O 9394/1、WHOグレードI)、上衣腫(ICD-O 9391/3、WHOグレードII)、退形成性上衣腫(ICD-O 9392/3、WHOグレードIII)から選択される上衣腫瘍、及び
v)脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/0、WHOグレードI)、非定型脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/1、WHOグレードII)、及び脈絡叢乳頭癌(ICD-O 9390/3、WHOグレードIII)から選択される脈絡叢腫瘍、及び
vi)星芽細胞腫(ICD-O 9430/3、WHOグレードI)、第3脳室脊索腫様膠腫(ICD-O 9444/1、WHOグレードII)、及び血管中心性膠腫(ICD-O 9431/1、WHOグレードI)から選択される他の神経上皮性腫瘍、及び
vii)小脳異形成性神経節細胞腫(レーミッテ・ダクロス病)(ICD-O 9493/0)、線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫(ICD-O 9412/1、WHOグレードI)、胚芽異形成性神経上皮腫瘍(ICD-O 9413/0、WHOグレードI)、神経節細胞腫(ICD-O 9492/0、WHOグレードI)、神経節膠腫(ICD-O 9505/1、WHOグレードI)、退形成性神経節膠腫(ICD-O 9505/3、WHOグレードIII)、中枢性神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、脳室外神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、小脳脂肪神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、乳頭状グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、第4脳室ロゼット形成性グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、及び傍神経節腫(ICD-O 8680/1、WHOグレードI)から選択される神経細胞と混合性神経膠腫、及び
viii)松果体細胞腫(ICD-O 9361/1、WHOグレードI)、中間型松果体実質腫瘍(ICD-O 9362/3、WHOグレードII、III)松果体芽腫(ICD-O 9362/3、WHOグレードIV)、松果体部乳頭状腫瘍(ICD-O 9395/3、WHOグレードIII)から選択される松果体領域の腫瘍、及び
ix)髄芽腫(ICD-O 9470/3、WHOグレードIV)、大規模な球状髄芽腫(ICD-O 9471/3、WHOグレードIV)、退形成性髄芽腫(ICD-O 9474/3、WHOグレードIV)、中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(ICD-O 9473/3、WHOグレードIV)、中枢神経系神経芽細胞腫(ICD-O 9500/3、WHOグレードIV)、及び非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ICD-O 9508/3、WHOグレードIV)から選択される胚芽腫瘍、及び
b)以下のものから選択される脳神経と傍脊椎神経の腫瘍
i)神経鞘腫(ICD-O 9560/0、WHOグレードI)、
ii)神経線維腫(ICD-O 9540/0、WHOグレードI)、
iii)神経周膜腫(ICD-O 9571/0、9571/3、WHOグレードI、II、III)、及び
iv)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)(ICD-O 9540/3、WHOグレードII、III、IV)、及び
c)以下のものから選択される髄膜腫腫瘍
i)髄膜腫(ICD-O 9530/0、WHOグレードI)、異型性髄膜腫(ICD-O 9539/1、WHOグレードII)、退形成性髄膜腫(ICD-O 9530/3、WHOグレードIII)から選択される髄膜細胞腫、及び
ii)脂肪腫(ICD-O 8850/0)、血管脂肪腫(ICD-O 8861/0)、褐色脂肪腫(ICD-O 8880/0)、脂肪肉腫(ICD-O 8850/3)、孤立性線維性腫瘍(ICD-O 8815/0)、線維肉腫(ICD-O 8810/3)、悪性線維性組織球腫(ICD-O 8830/3)、平滑筋腫(ICD-O 8890/0)、平滑筋肉腫(ICD-O 8890/3)、横紋筋腫(ICD-O 8900/0)、横紋筋肉腫(ICD-O 8900/3)、軟骨腫(ICD-O 9220/0)、軟骨肉腫(ICD-O 9220/3)、骨腫(ICD-O 9180/0)、骨肉腫(ICD-O 9180/3)、骨軟骨腫(ICD-O 9210/0)、血管腫(ICD-O 9120/0)、類上皮血管内皮腫(ICD-O 9133/1)、血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/1、WHOグレードII)、退形成性血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/3、WHOグレードIII)、及び血管肉腫(ICD-O 9120/3)3.2.22、カポジ肉腫(ICD-O 9140/3)、ユーイング肉腫-PNET(ICD-O 9364/3)から選択される間葉腫瘍、及び
iii)拡散黒色症(ICD-O 8728/0)、褐色細胞腫(ICD-O 8728/1)、悪性黒色腫(ICD-O 8720/3)、髄膜黒色腫(ICD-O 8728/3)から選択される原発性黒色腫病変、及び
iv)血管芽腫(ICD-O 9161/1、WHOグレードI)などのその他の脳脊髄膜病変、及び
d)以下のものから選択される造血系腫瘍
i)悪性リンパ腫(ICD-O 9590/3)4.2、形質細胞腫(ICD-O 9731/3)、及び
ii)顆粒球性肉腫(ICD-O 9930/3)、及び
e)以下のものから選択されるトルコ鞍部腫瘍
i)頭蓋咽頭腫(ICD-O 9350/1、WHOグレードI)、
ii)顆粒細胞腫瘍(ICD-O 9582/0、WHOグレードI)、
iii)下垂体細胞腫(ICD-O 9432/1、WHOグレードI)、及び
iv)腺下垂体の紡錘形膨大細胞腫(ICD-O 8991/0、WHOグレードI)
からなる群から選択される、項目1~51のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目53]
悪性新生物が、
a)以下のものから選択される神経上皮組織の腫瘍
i)毛様細胞性星細胞腫(ICD-O 9421/1、WHOグレードI)、毛様類粘液性星細胞腫(ICD-O 9425/3、WHOグレードII)、上衣下巨細胞性星細胞腫(ICD-O 9384/1、WHOグレードI)、多形性黄色星状膠細胞腫(ICD-O 9424/3、WHOグレードII)、びまん性星細胞腫(ICD-O 9400/3、WHOグレードII)、退形成性星細胞腫(ICD-O 9401/3、WHOグレードIII)、膠芽腫(ICD-O 9440/3、WHOグレードIV)、巨細胞性膠芽腫(ICD-O 9441/3、WHOグレードIV)、膠肉腫(ICD-O 9442/3、WHOグレードIV)、膠腫脳腫瘍(ICD-O 9381/3、WHOグレードIII)から選択される星細胞系腫瘍、及び
ii)乏突起膠腫(ICD-O 9450/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起膠腫(ICD-O 9451/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起神経膠腫瘍、及び
iii)乏突起膠星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードII)、及び退形成性乏突起星細胞腫(ICD-O 9382/3、WHOグレードIII)から選択される乏突起膠細胞系腫瘍、及び
iv)上衣下腫(ICD-O 9383/1、WHOグレードI)、粘液乳頭状上衣腫(ICD-O 9394/1、WHOグレードI)、上衣腫(ICD-O 9391/3、WHOグレードII)、退形成性上衣腫(ICD-O 9392/3、WHOグレードIII)から選択される上衣腫瘍、及び
v)脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/0、WHOグレードI)、非定型脈絡叢乳頭腫(ICD-O 9390/1、WHOグレードII)、及び脈絡叢乳頭癌(ICD-O 9390/3、WHOグレードIII)から選択される脈絡叢腫瘍、及び
vi)星芽細胞腫(ICD-O 9430/3、WHOグレードI)、第3脳室脊索腫様膠腫(ICD-O 9444/1、WHOグレードII)、及び血管中心性膠腫(ICD-O 9431/1、WHOグレードI)から選択される他の神経上皮性腫瘍、及び
vii)小脳異形成性神経節細胞腫(レーミッテ・ダクロス病)(ICD-O 9493/0)、線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫(ICD-O 9412/1、WHOグレードI)、胚芽異形成性神経上皮腫瘍(ICD-O 9413/0、WHOグレードI)、神経節細胞腫(ICD-O 9492/0、WHOグレードI)、神経節膠腫(ICD-O 9505/1、WHOグレードI)、退形成性神経節膠腫(ICD-O 9505/3、WHOグレードIII)、中枢性神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、脳室外神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、小脳脂肪神経細胞腫(ICD-O 9506/1、WHOグレードII)、乳頭状グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、第4脳室ロゼット形成性グリア神経細胞性腫瘍(ICD-O 9509/1、WHOグレードI)、及び傍神経節腫(ICD-O 8680/1、WHOグレードI)から選択される神経細胞と混合性神経膠腫、及び
viii)松果体細胞腫(ICD-O 9361/1、WHOグレードI)、中間型松果体実質腫瘍(ICD-O 9362/3、WHOグレードII、III)松果体芽腫(ICD-O 9362/3、WHOグレードIV)、松果体部乳頭状腫瘍(ICD-O 9395/3、WHOグレードIII)から選択される松果体領域の腫瘍、及び
ix)髄芽腫(ICD-O 9470/3、WHOグレードIV)、大規模な球状髄芽腫(ICD-O 9471/3、WHOグレードIV)、退形成性髄芽腫(ICD-O 9474/3、WHOグレードIV)、中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(ICD-O 9473/3、WHOグレードIV)、中枢神経系神経芽細胞腫(ICD-O 9500/3、WHOグレードIV)、及び非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ICD-O 9508/3、WHOグレードIV)から選択される胚芽腫瘍、及び
b)以下のものから選択される脳神経と傍脊椎神経の腫瘍
i)神経鞘腫(ICD-O 9560/0、WHOグレードI)、
ii)神経線維腫(ICD-O 9540/0、WHOグレードI)、
iii)神経周膜腫(ICD-O 9571/0、9571/3、WHOグレードI、II、III)、及び
iv)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)(ICD-O 9540/3、WHOグレードII、III、IV)、及び
c)以下のものから選択される髄膜腫腫瘍
i)髄膜腫(ICD-O 9530/0、WHOグレードI)、異型性髄膜腫(ICD-O 9539/1、WHOグレードII)、退形成性髄膜腫(ICD-O 9530/3、WHOグレードIII)から選択される髄膜細胞腫、及び
ii)脂肪腫(ICD-O 8850/0)、血管脂肪腫(ICD-O 8861/0)、褐色脂肪腫(ICD-O 8880/0)、脂肪肉腫(ICD-O 8850/3)、孤立性線維性腫瘍(ICD-O 8815/0)、線維肉腫(ICD-O 8810/3)、悪性線維性組織球腫(ICD-O 8830/3)、平滑筋腫(ICD-O 8890/0)、平滑筋肉腫(ICD-O 8890/3)、横紋筋腫(ICD-O 8900/0)、横紋筋肉腫(ICD-O 8900/3)、軟骨腫(ICD-O 9220/0)、軟骨肉腫(ICD-O 9220/3)、骨腫(ICD-O 9180/0)、骨肉腫(ICD-O 9180/3)、骨軟骨腫(ICD-O 9210/0)、血管腫(ICD-O 9120/0)、類上皮血管内皮腫(ICD-O 9133/1)、血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/1、WHOグレードII)、退形成性血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/3、WHOグレードIII)、及び血管肉腫(ICD-O 9120/3)3.2.22、カポジ肉腫(ICD-O 9140/3)、ユーイング肉腫-PNET(ICD-O 9364/3)から選択される間葉腫瘍、及び
iii)拡散黒色症(ICD-O 8728/0)、褐色細胞腫(ICD-O 8728/1)、悪性黒色腫(ICD-O 8720/3)、髄膜黒色腫(ICD-O 8728/3)から選択される原発性黒色腫病変、及び
iv)血管芽腫(ICD-O 9161/1、WHOグレードI)などのその他の脳脊髄膜病変
からなる群から選択される、項目1~52のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目54]
悪性新生物が、
a)以下のものから選択される神経上皮組織の腫瘍
i)毛様細胞性星細胞腫(ICD-O 9421/1、WHOグレードI)、毛様類粘液性星細胞腫(ICD-O 9425/3、WHOグレードII)、上衣下巨細胞性星細胞腫(ICD-O 9384/1、WHOグレードI)、多形性黄色星状膠細胞腫(ICD-O 9424/3、WHOグレードII)、びまん性星細胞腫(ICD-O 9400/3、WHOグレードII)、退形成性星細胞腫(ICD-O 9401/3、WHOグレードIII)、膠芽腫(ICD-O 9440/3、WHOグレードIV)、巨細胞性膠芽腫(ICD-O 9441/3、WHOグレードIV)、膠肉腫(ICD-O 9442/3、WHOグレードIV)、膠腫脳腫瘍(ICD-O 9381/3、WHOグレードIII)から選択される星細胞系腫瘍、及び
ii)髄芽腫(ICD-O 9470/3、WHOグレードIV)、大規模な球状髄芽腫(ICD-O 9471/3、WHOグレードIV)、退形成性髄芽腫(ICD-O 9474/3、WHOグレードIV)、中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍(ICD-O 9473/3、WHOグレードIV)、中枢神経系神経芽細胞腫(ICD-O 9500/3、WHOグレードIV)、及び非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ICD-O 9508/3、WHOグレードIV)から選択される胚芽腫瘍、及び
b)以下のものから選択される髄膜腫腫瘍
i)髄膜腫(ICD-O 9530/0、WHOグレードI)、異型性髄膜腫(ICD-O 9539/1、WHOグレードII)、退形成性髄膜腫(ICD-O 9530/3、WHOグレードIII)から選択される髄膜細胞腫、及び
ii)脂肪腫(ICD-O 8850/0)、血管脂肪腫(ICD-O 8861/0)、褐色脂肪腫(ICD-O 8880/0)、脂肪肉腫(ICD-O 8850/3)、孤立性線維性腫瘍(ICD-O 8815/0)、線維肉腫(ICD-O 8810/3)、悪性線維性組織球腫(ICD-O 8830/3)、平滑筋腫(ICD-O 8890/0)、平滑筋肉腫(ICD-O 8890/3)、横紋筋腫(ICD-O 8900/0)、横紋筋肉腫(ICD-O 8900/3)、軟骨腫(ICD-O 9220/0)、軟骨肉腫(ICD-O 9220/3)、骨腫(ICD-O 9180/0)、骨肉腫(ICD-O 9180/3)、骨軟骨腫(ICD-O 9210/0)、血管腫(ICD-O 9120/0)、類上皮血管内皮腫(ICD-O 9133/1)、血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/1、WHOグレードII)、退形成性血管周皮細胞腫(ICD-O 9150/3、WHOグレードIII)、及び血管肉腫(ICD-O 9120/3)3.2.22、カポジ肉腫(ICD-O 9140/3)、ユーイング肉腫-PNET(ICD-O 9364/3)から選択される間葉腫瘍、及び
iii)拡散黒色症(ICD-O 8728/0)、褐色細胞腫(ICD-O 8728/1)、悪性黒色腫(ICD-O 8720/3)、髄膜黒色腫(ICD-O 8728/3)から選択される原発性黒色腫病変、及び
iv)血管芽腫(ICD-O 9161/1、WHOグレードI)などのその他の脳脊髄膜病変
からなる群から選択される、項目1~53のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目55]
悪性新生物が、神経膠腫である、項目1~54のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目56]
悪性新生物が、グレードII、III、またはIVの神経膠腫である、項目1~55のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目57]
悪性新生物が、星細胞腫である、項目1~56のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目58]
悪性新生物が、膠芽腫である、項目1~57のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目59]
脳の悪性新生物が、膠芽腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、脳の血管周囲細胞腫、髄膜腫、血管腫髄膜腫、異型性髄膜腫、線維性髄膜腫、髄膜皮性髄膜腫、分泌性髄膜腫、乏突起膠星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、及び退形成性乏突起神経膠腫からなる群から選択される、項目1~58のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目60]
膠芽腫腫瘍が、星細胞系腫瘍、乏突起神経膠腫瘍、上衣細胞腫瘍、混合膠腫、原因不明の神経上皮腫瘍、脈絡叢腫瘍、神経細胞と混合性神経膠腫、松果体実質腫瘍、及び神経芽または膠芽腫エレメントをもつ腫瘍(胎児性腫瘍)、上衣腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、乏突起膠星細胞腫、神経上皮腫瘍、及び神経細胞性腫瘍並びに混合型神経細胞-膠細胞腫瘍からなる群から選択される、項目1~59のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目61]
前記試料が、脳組織または脊髄組織試料である、項目1~60のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目62]
前記試料が、脳腫瘍組織試料である、項目1~61のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目63]
前記試料が、血液試料である、項目1~62のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目64]
前記検出または診断が、全血試料または血漿試料などの血液試料中に存在する細胞に基づいている、項目1~63のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目65]
前記方法または使用が、インテグリンα10サブユニットに特異的な1つ以上の抗体を用いることによって行われる、項目1~64のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目66]
前記抗原が、アイソフォーム、インテグリンα10サブユニットのスプライス変異体または天然に存在する変異体である、項目1~65のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目67]
前記抗原が、インテグリンα10サブユニット(配列番号1)を含む、項目1~66のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目68]
前記抗原が、インテグリンα10サブユニット(配列番号2)の細胞外ドメインを含む、項目1~67のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目69]
前記抗原が、インテグリンα10サブユニット(配列番号3)のIドメインを含む、項目1~68のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目70]
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、または単鎖抗体からなる群から選択される、項目1~69のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目71]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目1~70のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目72]
前記抗体が、ポリクローナル抗体である、項目1~71のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目73]
抗体が、非ヒト抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、項目1~72のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目74]
抗体が、配列番号1(インテグリンα10サブユニット)に特異的に結合する、項目1~73のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目75]
抗体が、配列番号2(インテグリンα10の細胞外ドメイン)に特異的に結合する、項目1~74のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目76]
抗体が、配列番号3(インテグリンα10の細胞外Iドメイン)に特異的に結合する、項目1~75のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目77]
少なくとも1つの抗体が、検出可能部分に共有結合している、項目1~76のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目78]
少なくとも1つの抗体が、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサ、または放射性同位体からなる群から選択される検出可能部分に共有結合している、項目1~77のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目79]
前記抗体が、陽電子放出体、またはガンマ放出体から選択される放射性トレーサに連結している、項目1~78のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目80]
放射性同位体が、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I、及び201TIからなる群から選択される、項目1~79のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目81]
抗体が、86y/90yまたは124I/211Atなどの一対の検出可能な放射性核種と細胞毒性放射性核種を含む、項目1~80のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目82]
放射性同位体が、検出可能部分として、かつ、細胞毒性部分としてマルチモーダル方式で同時に作用することができる、項目1~81のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目83]
前記検出可能部分が、常磁性同位体を含むかまたはからなる、項目1~82のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目84]
常磁性同位体が、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、及び56Feからなる群から選択される、項目1~83のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目85]
検出可能部分が、SPECT、PET、MRI、光学または超音波イメージングなどのイメージング技術によって検出可能である、項目1~84のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目86]
細胞毒性部分及び/または検出可能部分が、結合部分を介して抗体またはその抗原結合性断片に間接的に連結している、項目1~85のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目87]
結合部分が、キレート剤である、項目86に記載の使用のための組成物、薬剤、方法または使用。
[項目88]
キレート剤が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸(DOTA)、デフェロキサミン(DFO)の誘導体、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、項目1~87のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目89]
抗体が、IgA、IgD、IgG、及びIgMからなる群から選択されるアイソタイプを有する、項目1~88のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目90]
抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択されるIgGアイソタイプなどのIgGアイソタイプである、項目1~89のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目91]
抗体断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、例えば、単鎖可変断片(scFv)、及び単ドメイン抗体からなる群から選択される、項目1~90のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目92]
インテグリンα10サブユニットに特異的な前記抗体が、
a)ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体;または
b)ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツングに受託番号DSM ACC2583で寄託された前記ハイブリドーマによって産生された前記モノクローナル抗体によって結合したエピトープと同じエピトープへの結合を競合する抗体;または
c)a)またはb)の断片、前記断片は、前記インテグリンα10サブユニット鎖の細胞外Iドメインに特異的に結合することができる、
である、項目1~91のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目93]
前記抗原が、インテグリンα10サブユニット抗原に特異的に結合することができるペプチドの結合を検出することによって検出される、項目1~92のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目94]
前記検出が、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などのフローサイトメトリーを用いて行われる、項目1~93のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目95]
前記方法が、光子を発することができる部分に連結した1つ以上のインテグリンα10サブユニット特異的ポリヌクレオチドプローブを用いることによって行われる、項目1~94のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目96]
ポリヌクレオチド転写産物が、PCR、好ましくは、Q-PCRによって検出される、項目1~95のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目97]
検出可能部分が、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサからなる群から選択される、項目1~96のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目98]
光子を発することができる部分が、フルオロフォアである、項目1~97のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目99]
前記フルオロフォアを励起することができる光源で哺乳類を照射する、項目1~98のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目100]
PETスキャンまたはSPECTスキャンを用いて光子を検出する、項目1~99のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目101]
哺乳類が、ヒトである、項目1~100のいずれか1項に記載の使用のための組成物、薬剤、方法、または使用。
[項目102]
放射性トレーサに共有結合したインテグリンα10特異的抗体を含む、抗体薬物複合体。
[項目103]
神経膠腫、神経芽細胞腫、または髄芽腫などの中枢神経系の悪性新生物の診断に使用される、項目1~102のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
[項目104]
インテグリンα10特異的抗体、及び放射性トレーサを含む、ナノ粒子。
[項目105]
神経膠腫などの中枢神経系の悪性新生物をインビトロ、インサイチュ、またはインビボで検出するためのキットであって、キットは、インテグリンα10サブユニットに特異的な抗体、インテグリンα10サブユニット抗原に特異的に結合することができるペプチド、またはインテグリンα10サブユニット転写産物またはその相補体に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブ、及び任意に、取扱説明書を含む、キット。
[項目106]
中枢神経系における悪性新生物に罹患している対象の治療方法であって、
a)対象が、項目1~105のいずれか1項に記載の中枢神経系の悪性新生物に罹患しているかどうかを判断すること;及び
b)項目1~105のいずれか1項に記載のインテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体の治療的に有効な量を、中枢神経系の悪性新生物と診断された対象に投与すること
を含む、方法。
[項目107]
インテグリンα10サブユニットの検出が、
a.前記対象から生体試料を得る工程、
b.i)またはii)の存在または不在について、前記試料中で分析する工程、
i)インテグリンα10サブユニットポリペプチド、または
ii)インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチド転写産物、
を含み、
インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはポリヌクレオチド転写産物の存在が、前記哺乳類の中枢神経系における悪性新生物を示し、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはポリヌクレオチド転写産物の不在が、中枢神経系の悪性新生物の不在を示す、項目1~106のいずれか1項に記載の方法。
[項目108]
検出が、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を用いて行われる、項目1~107のいずれか1項に記載の方法。
[項目109]
抗体が、検出可能部分に結合している、項目1~108のいずれか1項に記載の方法。
[項目110]
検出可能部分が、フルオロフォア、酵素、または放射性トレーサからなる群から選択される、項目1~109のいずれか1項に記載の方法。
[項目111]
インテグリンα10サブユニットの検出が、分子プローブまたは抗体が、インテグリンα10サブユニットポリペプチドまたはポリヌクレオチドに特異的に結合することができるペプチドに結合していることを検出することによって達成される、項目1~110のいずれか1項に記載の方法。
[項目112]
試料が、脳組織試料である、項目1~111のいずれか1項に記載の方法。
[項目113]
試料が、脳腫瘍組織試料である、項目1~112のいずれか1項に記載の方法。
[項目114]
試料が、血液試料である、項目1~113のいずれか1項に記載の方法。
[項目115]
前記検出が、項目1~114のいずれか1項で定義されるように行われる、項目1~114のいずれか1項に記載の方法。
[項目116]
対象が、ヒトなどの哺乳類である、項目1~115のいずれか1項に記載の方法、または使用のための組成物。
[項目117]
中枢神経系における悪性新生物の治療のための治療薬の製造のための、インテグリンα10サブユニットに特異的に結合する抗体を含む、組成物の使用。
[項目118]
哺乳類における腫瘍関連の血管新生の阻害方法であって、
項目1~117のいずれか1項に記載の抗インテグリンα10サブユニット抗体の治療的に有効な量を前記哺乳類に投与することを含む、方法。
[項目119]
リボソーム不活性化タンパク質に共有結合したインテグリンα10サブユニット特異的抗体を含む、抗体薬物複合体。
[項目120]
リボソーム不活性化タンパク質が、志賀及び志賀様毒素;トリコサンチン及びルフィンなどのI型リボソーム不活性化タンパク質;リシン、凝集素、及びアブリンなどのII型リボソーム不活性化タンパク質;及びサポリンからなる群から選択される、項目1~119のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
[項目121]
リボソーム不活性化タンパク質が、サポリンである、項目1~120のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
[項目122]
インテグリンα10サブユニットが、インテグリンα10β1ヘテロ二量体の一部である、項目1~121のいずれか1項に記載の組成物、薬剤、方法、使用、または抗体薬物複合体。
【実施例】
【0220】
実施例1:膠芽腫脳腫瘍から単離された細胞上のインテグリンα10サブユニット発現
ルンド大学病院で外科生検として収集した脳腫瘍組織試料から得られた、患者材料から得られた細胞株を、10%FBS及び1%Pen Strepが補充されたDMEM培地中で37℃、5%CO2で培養した。細胞を70~90%コンフルエンスに成長させた。細胞をPBS(0.1M、pH7.4)で洗浄し、トリプシン処理後、専門的な顕微鏡スライド(Ibidi、Germany)の底に移動した。細胞を50~100%コンフルエンスに成長させた後に、固定し、免疫蛍光標識を行った。
【0221】
細胞の免疫蛍光標識を以下のプロトコルで行った:
1.細胞培地を除去/吸引した。細胞を冷却(<10℃)4%PFA中で10~20分間固定した。
2.PBS(0.1M、pH7.4)中で細胞を2×5分間すすいだ。
3.ブロッキング溶液(0.02%TritonX-100を含有するPBS)で細胞を20分間インキュベートした。
4.0.001%(0.1~0.001%*)TritonX-100及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS(0.1M、pH7.4)で細胞を20分間インキュベートした。
5.0.001%(0.1~0.001%*)TritonX-100及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS(0.1M、pH7.4)で希釈した原発性抗体、1μg/ml α10MAb(1~2μg)で細胞を90分間インキュベートした。
6.PBS(pH7.4)で細胞を2×10分間すすいだ後、0.001%(0.1~0.001%*)TritonX-100及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS(0.1M、pH7.4)で希釈した二次抗体、1:150(ヤギ中で作製した抗マウスAlexaFluor488及び抗ウサギAlexaFluor568、Invitrogen、USA)で30分間インキュベートした。
7.PBS(0.1M、pH7.4)で細胞を1+2×7分間すすいだ。
8.DAPI(PBS中0.1μM)で細胞を>10分間インキュベートした。
【0222】
ここで使用されるように、倒立顕微鏡を介した分析には取り付けを必要としなかった。イメージング及び分析については、共焦点顕微鏡を使用した。
【0223】
結論として、インテグリンα10に対して指向された抗体(mAb365、(WO99/51639))を用いることで、驚くべきことに、インテグリンα10が、神経膠腫の攻撃的な形態である膠芽腫(神経膠腫グレードIV、多形性膠芽腫)由来の膠芽腫細胞上で特異的かつ強力に発現されることが示された(
図2)。
【0224】
実施例2:免疫蛍光で視覚化した、膠芽腫患者由来の脳腫瘍組織中のインテグリンα10サブユニット発現
脳腫瘍組織試料を、ルンド大学病院で、患者から外科生検として収集した。
組織を5μm(MICROM HM 360ミクロトーム)切片にし、スーパーフロストプラススライド(Menzel-Glaser、GmbH)上に収集した。切片を直接またはアセトンで固定した後に免疫標識に使用した(-20℃で100%、10分間、以下参照)。新鮮凍結組織をTissueTek(Sakura、Jpn)に埋め込んだ。(MICROM HM 500 OMクライオスタットで作製した)切片10μmをスーパーフロストプラススライド上に収集した。アセトンで固定した後に、切片を免疫標識に使用した(-20℃で100%、10分間、以下参照)。
【0225】
抗原賦活化後、以下のプロトコルに従った:
1.PBS中で、5分間室温ですすぐ/緩衝する。
2.1%BSAを含有するPBSで、20分間室温で遮断する。
3.PBS(PBS-TritonX-100)で、5分間室温ですすぐ。
4.0.03%H2O2(PBS中)で切片を10分間室温でインキュベートする(内因性ペルオキシダーゼ活性のために急冷)。
5.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
6.1%BSA 0.05%TritonX-100を含有するPBS)で希釈した原発性抗体、α10PAb 1μg/ml(0.6~1.2μg/ml)で切片をインキュベートする。
-一晩(約16~18時間)4℃にて。
7.PBSで5分間×2回(スライド/切片と同じ温度)すすぐ。
8.抱合型二次抗体を30分(抗ウサギ)間室温で塗布する(1%BSA 0.05%TritonX-100を含有するPBSで希釈)。
9.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
10.DAB/0.03%H2O2溶液中で1~10分間室温でインキュベート/反応させる。
11.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
【0226】
免疫標識切片の対比染色:
1.ヘマトキシリン(Mayers)で2分間室温でインキュベートする。
2.PBSで3分間室温ですすぐ。
3.PBSで2分間室温で洗浄する。
【0227】
取り付け:
以下の浸漬を介して切片を脱水する
1.エタノール70%、96%、100%×2回、各濃度で2分間。
2.キシレン≧3分間×2回。
3.Pertex(登録商標)(Histolab、Sweden)中にスライドを取り付け、ガラススライド(22×30~50mm)でスリップを覆う。
【0228】
分析及び書類作成:明視野顕微鏡は、細胞関連、特に、パラフィン薄切片(5μm)での全体標識分布の良好な検出をもたらす。
【0229】
機器:10×/0.3及び20×/0.5のプランアポクロマート対物レンズを用いたライカDMRE顕微鏡。デジタル画像(1360×1024ピクセル)は、ライカDCF500 CCDカメラ、及び画像取得ソフトウェアLAS(ライカ・アプリケーション・スイート)v4.4で取得した。
【0230】
結論として、ポリクローナルインテグリンα10に対して指向された抗体を用いることで、驚くべきことに、インテグリンα10サブユニットが、ルンド大学病院で患者から外科生検として収集した腫瘍組織試料中の膠芽腫細胞上で特異的かつ強力に発現されることが示された(
図3)。
【0231】
実施例3:免疫組織化学で視覚化した、罹患していない脳組織中の発現と比較した、膠芽腫患者由来の脳腫瘍組織中のインテグリンα10サブユニットの発現
一見罹患していない領域由来、及び(2名の独立した病理学者によって診断された)悪性脳組織をもつ領域由来の患者脳組織試料をルンド大学病院で患者から外科生検として収集した。
パラフィン切片を脱パラフィン化し、キシレン、次いで、標準プロトコルに従ってエタノール系、及び水中でスライドの浸漬を介して再水和した。
パラフィン切片をアセトンで後固定した後、PBSで5分間×2回すすいだ。
スライドを酸性緩衝溶液-クエン酸緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム、0.05%Tween20、pH6.0)に浸漬することによる抗原賦活化、及び加熱処理によって、パラフィン切片を処理した。抗原賦活化後、以下のプロトコルに従った:
1.PBS中で、5分間室温ですすぐ/緩衝する。
2.1%BSAを含有するPBSで、20分間室温で遮断する。
3.PBS(PBS-TritonX100)で、5分間室温ですすぐ。
4.0.03%H2O2(PBS中)で切片を10分間室温でインキュベートする(内因性ペルオキシダーゼ活性のために急冷)。
5.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
6.1%BSA 0.05%TritonX-100を含有するPBS)で希釈した原発性抗体、α10PAb 1μg/ml(0.6~1.2μg/ml)で切片をインキュベートする。
-一晩(約16~18時間)4℃にて。
7.PBSで5分間×2回(スライド/切片と同じ温度)すすぐ。
8.抱合型二次抗体を30分(抗ウサギ)間室温で塗布する(1%BSA 0.05%TritonX100を含有するPBSで希釈)。
9.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
10.DAB/0.03%H2O2溶液中で1~10分間室温でインキュベート/反応させる。
11.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
【0232】
免疫標識切片の対比染色:
1.ヘマトキシリン(Mayers)で2分間室温でインキュベートする。
2.PBSで3分間室温ですすぐ。
3.PBSで2分間室温で洗浄する。
【0233】
取り付け:
以下の浸漬を介して切片を脱水する
1.エタノール70%、96%、100%×2回、各濃度で2分間。
2.キシレン≧3分間×2回。
3.Pertex(登録商標)(Histolab、Sweden)中にスライドを取り付け、ガラススライド(22×30~50mm)でスリップを覆う。
【0234】
分析及び書類作成:明視野顕微鏡は、細胞関連、特に、パラフィン薄切片(5μm)での全体標識分布の良好な検出をもたらす。
【0235】
機器:10×/0.3及び20×/0.5のプランアポクロマート対物レンズを用いたライカDMRE顕微鏡。デジタル画像(1360×1024ピクセル)は、ライカDCF500 CCDカメラ、及び画像取得ソフトウェアLAS(ライカ・アプリケーション・スイート)v4.4で取得した。
【0236】
図4Aは、一見罹患していない脳形態を有する患者試料の一部を示すが、
図4Bは、悪性脳組織(多形性膠芽腫)を有する同じ試料の別の一部を示す。結論として、インテグリンα10サブユニットに対して指向されたポリクローナル抗体(Camper et al(1998)J Biol Chem.273(32):20383-9)を用いることで、インテグリンα10サブユニットが、膠芽腫細胞上で特異的かつ強力に発現されるが、形態学的に罹患していない脳組織ではインテグリンα10サブユニットの発現は無視できるほどであったことが示された。
【0237】
実施例4:異なるグレードの神経膠腫を有する患者由来の脳腫瘍組織試料中のインテグリンα10サブユニット発現
大学病院から外科生検としてまたは死後に収集した脳腫瘍組織試料からなる患者材料を使用した。
組織を5μm(MICROM HM 360ミクロトーム)切片にし、スーパーフロストプラススライド(Menzel-Glaser、GmbH)上に収集した。切片を直接またはアセトンで後固定した後に免疫標識に使用した(-20℃で100%、10分間、以下参照)。
【0238】
新鮮凍結組織をTissueTek(Sakura、Jpn)に埋め込んだ。(MICROM HM 500 OMクライオスタットで作製した)切片10μmをスーパーフロストプラススライド上に収集した。アセトンで後固定した後に、切片を免疫標識に使用した(-20℃で100%、10分間、以下参照)。
【0239】
1.凍結切片(切りたてまたは深冷凍結):切片を37℃で約20分間空気乾燥し、切片を室温に到達させる。
2.PBSで>5分間×2回すすぐ。
3.アセトンで切片を後固定した後、PBSで5分間×2回すすぐ。
4.シリコーンバリア(「PAPペン」)を切片の周りに塗布する。
5.0.05%(0.1~0.001)TritonX-100及び1%BSAを含有するPBSで30分間室温でインキュベート/遮断する。
6.PBSで1回×2分間すすぐ。
7.他の抗原(特異性についてまず個々に評価、及び最適な作業希釈)に対して作製した抗体と混合した原発性抗体(「カクテル」)、α10 PAb 1.2μg/ml(0.6~1.2μg/ml)(0.05%TritonX-100及び1%BSAを含有するPBSで希釈)で16~18時間、4~8℃でインキュベートする。
8.同時の蛍光可視化では、2つのエピトープ、原発性及び二次抗体をそれぞれ、混合物、「カクテル」として塗布する。
9.PBSで1分間すすいだ後、2回×5分間すすぐ。
10.1:150に希釈した(異なる宿主動物の原発性抗体に対する)混合物中のフルオロフォア抱合型二次Ab/Ab(以下参照)で切片を30~45分間、室温でインキュベートする。
【0240】
多重標識(高アフィニティ精製された、主にFab2断片)用の二次抗体は、ウサギ、マウス、またはヤギIgGに対してまたはニワトリIgYに対してロバまたはヤギ中で作製した(Jackson、USAまたはInvitrogen、USA)。1%BSAを含有するPBS中で希釈した。同時の蛍光可視化では、2つのエピトープ、原発性及び二次抗体を混合物、「カクテル」として塗布する。
11.PBS-TritonX-100で2分間すすぐ。
12.PBSで1回×5分間すすぐ。
13.PBSで希釈した細胞小器官(核)染色DAPI、0.1 μMで15分間インキュベートする。
14.PBSで2回×5分間すすぐ。
15.「抗退色溶液」:ProLong Gold(Invitrogen、USA)中で取り付け、カバーガラスを載せる。
【0241】
分析-免疫蛍光-共焦点レーザー走査顕微鏡:
共焦点顕微鏡は、高分解能、標識の高信号対雑音比、及び特定の波長信号検出をもたらした。共焦点顕微鏡画像の分析のみが、(Zスタック光学切片、及び三次元再構築を介して)標識の構造局在化、細胞外/細胞内局在化、及び共局在化を解像することができる。
【0242】
機器:
305~633nm間の励起用レーザー、及び420~650nm間の放射検出用レーザーを利用したZeiss LSM 510 META共焦点顕微鏡で検体を検査した。3つの免疫蛍光チャネル、1つのDAPIチャネル、及び1つの明視野DICチャネルを有する、20×/0.8プランアポクロマート、及び40×/1.3油浸漬プランアポクロマート対物レンズで画像を取得した。
【0243】
1024×1024のピクセルフレームサイズ(ピクセル幅0.22μm)または「ズーム」(より小さい領域を走査)のいずれかの40×/1.3対物レンズ、及び最大解像度のためのナイキスト最適サンプリング周波数(ピクセル幅0.115μm)で、連続した共焦点面のZスタック(DIC無)を得た。連続した共焦点面間のステップサイズは、ナイキスト最適サンプリング周波数(0.48μm)に従った。
【0244】
結論として、インテグリンα10に対して指向された抗体(Camper et al(1998)J Biol Chem.273(32):20383-9)を用いることで、驚くべきことに、インテグリンα10が、(少数の細胞上で)グレードII星細胞腫、グレードIII星細胞腫、多形性膠芽腫としても知られるグレードIV星細胞腫からなる患者材料、脳腫瘍組織試料上で特異的に発現されることが示された(
図5A~C)。興味深いことに、インテグリンα10の発現は、グレードと共に増加し、グレードIII及びIVの星細胞腫で強力に発現される。
【0245】
全グレードの星細胞腫における血管または血液充満領域中の細胞は陽性染色であることに留意されたい(
図5D)。
【0246】
実施例5:免疫組織化学で視覚化した、神経芽細胞腫及び髄芽腫由来の患者腫瘍組織試料中のインテグリンα10サブユニットの発現
ルンド大学及びウプサラ大学病院から外科試料として収集した神経芽細胞腫及び髄芽腫組織の検体からなる患者材料を使用した。パラフィン切片を脱パラフィン化し、キシレン、次いで、標準プロトコルに従ってエタノール系、及び水中でスライドの浸漬を介して再水和した。パラフィン切片をアセトンで後固定した後、PBSで5分間×2回すすいだ。スライドを酸性緩衝溶液-クエン酸緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム、0.05%Tween20、pH6.0)に浸漬することによる抗原賦活化、及び加熱処理によって、パラフィン切片を処理した。抗原賦活化後、以下のプロトコルに従った:
1.PBS中で、5分間室温ですすぐ/緩衝する。
2.1%BSAを含有するPBSで、20分間室温で遮断する。
3.PBS(PBS-TritonX100)で、5分間室温ですすぐ。
4.0.03%H2O2(PBS中)で切片を10分間室温でインキュベートする(内因性ペルオキシダーゼ活性のために急冷)。
5.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
6.1%BSA 0.05%TritonX100を含有するPBS)で希釈した原発性抗体、α10PAb 1μg/ml(0.6~1.2μg/ml)で切片をインキュベートする。
-一晩(約16~18時間)4℃にて。
7.PBSで5分間×2回(スライド/切片と同じ温度)すすぐ。
8.抱合型二次抗体を30分(抗ウサギ)間室温で塗布する(1%BSA 0.05%TritonX100を含有するPBSで希釈)。
9.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
10.DAB/0.03%H2O2溶液中で1~10分間室温でインキュベート/反応させる。
11.PBSで5分間×2回室温ですすぐ。
【0247】
免疫標識切片の対比染色:
1.ヘマトキシリン(Mayers)で2分間室温でインキュベートする。
2.PBSで3分間室温ですすぐ。
3.PBSで2分間室温で洗浄する。
【0248】
取り付け:
以下の浸漬を介して切片を脱水する
1.エタノール70%、96%、100%×2回、各濃度で2分間。
2.キシレン≧3分間×2回。
3.Pertex(登録商標)(Histolab、Sweden)中にスライドを取り付け、ガラススライド(22×30~50mm)でスリップを覆う。
【0249】
機器:10×/0.3及び20×/0.5のプランアポクロマート対物レンズを用いたライカDMRE顕微鏡。デジタル画像(1360×1024ピクセル)は、ライカDCF500 CCDカメラ、及び画像取得ソフトウェアLAS(ライカ・アプリケーション・スイート)v4.4で取得した。
分析及び書類作成:明視野顕微鏡は、細胞関連、特に、パラフィン薄切片(5μm)での全体標識分布の良好な検出をもたらす。
【0250】
結論として、インテグリンα10サブユニットが、悪性神経芽細胞腫及び髄芽腫由来の患者腫瘍組織試料中の細胞で特異的かつ強力に発現されることを見出す(
図6)。
【0251】
実施例6:定量的PCRによる患者由来の脳腫瘍中のα10 RNA発現の分析
ルンド大学病院で患者から外科生検として収集した脳腫瘍組織試料の定量的PCRは、インテグリンα10サブユニットを検出するためのプライマーを用いて行った。差次的遺伝子発現分析、及び異なる脳腫瘍由来の患者組織材料中の遺伝子発現の検証のために脳癌cDNAアレイ(OriGene Technologies Inc.)を使用した。病理学者が検証した組織の高品質の全RNAから各アレイのcDNAを合成し、正規化し、2回連続したqPCR分析においてベータアクチンで検証し、臨床情報と一緒に分析した。インテグリンα10サブユニットのリアルタイムPCR検出は、遺伝子特異的プライマーとTaqManプローブ(遺伝子発現アッセイHS00174623_m1、Life Technology)を用いて行われ、製造者が推奨するように実行した。使用した検出システムは、ICycler(Bio-Rad)であった。脳癌組織インテグリンα10サブユニット発現を健康な脳組織に対して正規化し、インテグリンα10サブユニットの相対定量値(RQ)を算出した。
図7は、2つのランの平均相対定量値を示す。RQは、2
-ΔΔCtとして定義し、ΔΔCt=ΔCt
腫瘍試料-ΔCt
正常脳組織であり、ΔCtは、Ct
ITGA10-Ct
ベータ-アクチンから得られる。
【0252】
図7から分かるように、インテグリンα10サブユニットは、驚くべきことに、星細胞腫、退形成性星細胞腫、線維性星細胞腫、多形性膠芽腫、脳の血管周囲細胞腫、髄膜腫、血管腫髄膜腫、異型性髄膜腫、線維性髄膜腫、髄膜皮性髄膜腫、小嚢胞性髄膜腫、分泌性髄膜腫、乏突起膠星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、及び退形成性乏突起神経膠腫を含むいくつかの脳腫瘍で検出される。
【0253】
実施例7:インテグリンα10サブユニットと他のマーカーの共発現の分析
腫瘍は、異種性であり、多くの異なる細胞型からなる。神経膠腫(GBM)中のインテグリンα10サブユニット発現に対して陽性である異なるタイプの細胞を示すため、ルンド大学病院から外科生検としてまたは死後に収集した脳腫瘍の膠芽腫組織試料中で、異なる細胞型を典型的かつ特異的に免疫標識するいくつかのマーカーを使用した。
【0254】
試料調製
新鮮凍結組織をTissueTek(Sakura、Jpn)に埋め込んだ。(MICROM HM 500 OMクライオスタットで作製した)切片10μmをスーパーフロストプラススライド上に収集した。アセトンで後固定した後に、切片を免疫標識に使用した(-20℃で100%、10分間)。
【0255】
凍結切片(切りたてまたは深冷凍結)を37℃で約20分間空気乾燥された。切片を室温に到達させると、PBSで5分間×2回すすいだ。アセトンで切片を後固定した後、PBSですすぎ2回を行った(5分間×2回)。シリコーンバリア(「PAPペン」)を切片の周りに塗布した。0.05%(0.1~0.001)TritonX-100及び1%BSAを含有するPBSで30分間室温で切片をインキュベートした後、PBSで1回×2分間すすいだ。他の抗原(特異性についてまず個々に評価、及び最適な作業希釈)に対して作製した抗体と混合した原発性抗体、α10 PAb 1.2μg/ml(0.6~1.2μg/ml)(0.05%TritonX-100及び1%BSAを含有するPBSで希釈)で16~18時間、4~8℃で切片をインキュベートした。同時の蛍光可視化では、2つのエピトープ、原発性及び二次抗体をそれぞれ、混合物(「カクテル」)として塗布した。切片をPBSで1分間すすいだ後、2回×5分間すすぎ、1:150に希釈した混合物中のフルオロフォア抱合型二次Ab/Abで30~45分間、室温でインキュベートした。
【0256】
多重標識(高アフィニティ精製された、主にFab2断片)用の二次抗体は、ウサギ、マウス、またはヤギIgGに対してまたはニワトリIgYに対してロバまたはヤギ中で作製した(Jackson、USAまたはInvitrogen、USA)。1%BSAを含有するPBS中で希釈した。同時の蛍光可視化では、2つのエピトープ、原発性及び二次抗体を混合物、「カクテル」として塗布した。切片をPBS-TritonX-100で2分間すすぎ、PBSで1回×5分間すすいだ。PBSで希釈した細胞小器官(核)染色DAPI、0.1μMで切片を15分間インキュベートし、PBSで2回×5分間すすいだ。「抗退色溶液」:ProLong Gold(Invitrogen、USA)中で切片を取り付け、カバーガラスを載せた。
【0257】
【0258】
分析:
分析は、共焦点レーザー走査顕微鏡で行った。共焦点顕微鏡は、高分解能、標識の高信号対雑音比、及び特定の波長信号検出をもたらした。共焦点顕微鏡画像の分析のみが、(Zスタック光学切片、及び三次元再構築を介して)標識の構造局在化、細胞外/細胞内局在化、及び共局在化を解像することができる。
【0259】
305~633nm間の励起用レーザー、及び420~650nm間の放射検出用レーザーを利用したZeiss LSM 510 META共焦点顕微鏡で検体を検査した。3つの免疫蛍光チャネル、1つのDAPIチャネル、及び1つの明視野DICチャネルを有する、20×/0.8プランアポクロマート、及び40×/1.3油浸漬プランアポクロマート対物レンズで画像を取得した。
【0260】
1024×1024のピクセルフレームサイズ(ピクセル幅0.22μm)または「ズーム」(より小さい領域を走査)のいずれかの40×/1.3対物レンズ、及び最大解像度のためのナイキスト最適サンプリング周波数(ピクセル幅0.115μm)で、連続した共焦点面のZスタック(DIC無)を得た。連続した共焦点面間のステップサイズは、ナイキスト最適サンプリング周波数(0.48μm)に従った。
【0261】
異なるマーカーと共存するインテグリンα10の定量的分析は、デジタル化画像データを用いて行った。データは、異なる標識を表す単一チャネルから分析した。細胞核の同定を通じて関心領域(ROI)をまず同定した。核の周り1マイクロメートルの領域には、マーカーの共発現の分析を使用した。陽性染色の閾値は、経験豊富な顕微鏡オペレータによる肉眼検査によって決定され、5%に設定された。
【0262】
結果:以下の表1は、インテグリンα10サブユニットと共発現するマーカーの発現パターンを示す。抗原に対して指向された抗体は、左手の列に示す。抗原(免疫表現型)を発現すると予想される異なる細胞型は、真ん中の列に示す。インテグリンα10による各マーカーの共発現の程度は、右の列に示す。
【0263】
【0264】
CD163、CD206、及びインテグリンα10サブユニットの共発現と共局在化を
図8に示し、EGFRvIII、及びインテグリンα10サブユニットの共発現と共局在化を
図9に示す。
【0265】
実施例8:移動アッセイ
悪性細胞は、広がって転移する移動に依る。インテグリンα10がこの細胞プロセスに重要であるかを解明するために、移動アッセイが行われる。
【0266】
移動アッセイは、CytoSelect細胞移動アッセイキット(Cell Biolabs’、US)を用いて行われる。これは、細胞を上部チャンバから下部区画に移動させる2チャンバシステムであり、化学誘引物質培地で充填されている。チャンバは、積極的に移動している細胞だけを通過させる膜で分離される。例えば、一次培養または樹立細胞株から得られた神経膠腫細胞(GBM)を、アキュターゼを用いて採取し、ウシ胎児血清(FCS)がない培地中に再懸濁し、CytoSelectインサートの上部区画に移した。インテグリンα10サブユニットに対するモノクローナル非抱合型及び/または抗体薬物抱合体(ADC)抗体、またはIgG対照抗体を用いて、移動アッセイを行う。37℃で24~48時間インキュベーション後、インサートを収集し、下面に付着している細胞を固定し、染色し、定量化する。
【0267】
インテグリンα10サブユニットに対する抗体でインキュベートした神経膠腫細胞は、移動能の減少を示す。
【0268】
実施例9:アポトーシス-細胞形態、及びフローサイトメトリーの分析
細胞は、生存するために細胞外マトリックスへのインテグリン接着に依存している。これらのインテグリン-マトリックス結合が破壊されると、細胞はアポトーシスに入り得る。インテグリンα10結合が破壊された場合に、神経膠腫(GBM)細胞でアポトーシスの誘発が生じるかどうかを明らかにするために、アポトーシスアッセイを行う。
【0269】
神経膠腫細胞(GBM)を6ウェルプレートで培養し、一晩インキュベートし、アポトーシスを決定する。インテグリンα10サブユニットに対する非抱合型またはADCモノクローナル抗体、またはIgG対照抗体を翌日に添加する。倒立顕微鏡を用いて形態変化を観察し、処理の72時間後にフローサイトメトリー分析用に細胞を採取し、早期及び後期アポトーシスを観察する。インテグリンα10サブユニット抗体によって誘発されたアポトーシスの程度は、7-AAD(Biolegend)によるFITCアネキシンVアポトーシス検出キットなどの市販のアポトーシス検出キットで決定し、フローサイトメトリーでデータを分析する。フローサイトメトリー分析では、アネキシンV-FITC単陽性細胞は、早期アポトーシス細胞を表す。アネキシンV-FITC、及び7-AAD(7-アミノ-アクチノマイシンD)二重陽性染色細胞は、後期アポトーシス細胞を表す。7-AADの陽性染色は、細胞の壊死集団のみを表す。
【0270】
インテグリンα10サブユニットに対する抗体でインキュベートした神経膠腫細胞は、アポトーシスの強化を示す。
【0271】
実施例10:インテグリンα10サブユニット対するモノクローナル抗体で処理した神経膠腫細胞(GBM)の球形成能
細胞集団の自己複製能を決定することで、異種移植の際に腫瘍をインビボで誘発する能力を決定する通常のインビトロアッセイは、球形成アッセイである。
【0272】
ウプサラ大学のヒト神経膠腫細胞培養(HGCC)バイオバンク由来の神経膠腫細胞株(GBM)をこのアッセイで使用し、これらの細胞は、Xie et al.2015(EBioMedicine.15;2(10):1351-63)に記載されるように、外科生検として収集した脳腫瘍組織試料から得られた患者材料由来である。50X B27、100X N2、1% Pen Strep、bFGF(10ng/ml)、及びEGF(10ng/ml)が補充されたDMEM/F12 w/Glutamax及びNeurobasal培地(1:1)中で37℃、5%CO2で細胞を培養した。
【0273】
球形成能を評価するため、細胞をアキュターゼで処理し、収集し、4分間300xgで遠心分離した後、培地中に再懸濁した。アッセイを96ウェルプレートで行い、ウェル当たり5000個の細胞を播種した。インテグリンα10サブユニットに対するモノクローナル抗体またはIgG対照抗体の濃度を変えながら細胞を処理した。全ての処理は、三つ組みで行った。37℃、5%CO2でインキュベーションした7日後、各ウェルの顕微鏡画像を撮影し、100μmの直径に到達した球をカウントした。
【0274】
結論として、インテグリンα10サブユニットに対するモノクローナル抗体を用いることで、神経膠腫細胞は、未処理細胞と比較して、球形成能の減少を示す。この効果は、IgG対照抗体で処理した細胞には見られなかった(
図10)。
【0275】
実施例11:インテグリンα10サブユニットに対する抗体で処理した神経膠腫細胞(GBM)の生存性及び成長
癌の特徴の1つは、悪性細胞中の持続的な増殖シグナルである。抗インテグリンα10サブユニット抗体が神経膠腫細胞の生存性及び増殖を阻害することができるかを明らかにするために、WST-1(Roche、DE)及びXTTなどの比色細胞生存性アッセイを行った。比色細胞生存性アッセイは、代謝的に活性な細胞中で着色ホルマザン化合物に還元されるテトラゾリウム塩を含む。従って、ホルマザン染料の量は、生細胞の数と相関する。
【0276】
細胞生存性アッセイでは、一次培養から得られた神経膠腫細胞をアキュターゼで処理し、収集し、4分間300xgで遠心分離した後、培地中で再懸濁した。いくつかの神経膠腫(GBM)細胞株を使用した。ルンド大学からの1つは、10%FBSと1%Pen Strepが補充されたDMEM培地中で培養したが、HGCC細胞株は、50X B27、100X N2、1%Pen Strep、bFGF(10ng/ml)、及びEGF(10ng/ml)が補充されたDMEM/F12 w/Glutamax及びNeurobasal培地(1:1)中で37℃、5%CO2で培養した。ウェル当たりの5000個の細胞の密度を使用し、96ウェルプレートをラミニン(Cultrex(登録商標)マウスラミニンI、R&D systems)で被覆し、HGCC細胞を良好にプラスチック接着した。翌日、インテグリンα10サブユニットに対する非抱合型モノクローナル抗体の濃度を変えながら添加した。インテグリンα10サブユニットに対する非抱合型モノクローナル抗体とサポリンに抱合された二次抗体との組み合わせで細胞を処理した(ATSbio、US)。これは、良好なインビトロモデルシステムである。対照として、未処理細胞、並びに対照抗体を使用した。全ての処理は、三つ組みで行った。細胞を37℃、5%CO2でさらに72時間培養した。10~50μlテトラゾリウム塩試薬を各ウェルに添加した後、37℃で1~4時間インキュベーションすることで、細胞生存性を評価した。プレートを穏やかに振動させ、450~500ナノメートルの波長で分光光度計(SpectraMax i3)を用いて、試料の吸光度を測定した。
【0277】
図11で分かるように、インテグリンα10サブユニットのみに対する非抱合型モノクローナル抗体による処理は、未処理の神経膠腫(GBM)細胞と比較して、細胞生存性及び/または増殖を著しく減少させた。
図12は、対照抗体と比較して、サポリンに抱合された二次抗体と組み合わせて、インテグリンα10サブユニットに対するモノクローナル抗体で処理した神経膠腫(GBM)細胞の生存及び/または成長が減少したことを示す。
【0278】
実施例12:中枢神経系(中枢神経系)における悪性腫瘍の治療のための候補標的としてインテグリンα10β1の機能評価のインビボネズミモデル
抗癌剤として抗インテグリンα10抗体を含む非抱合型インテグリンα10抗体または抱合型インテグリンα10抗体(抗体薬物複合体、ADC)の抗腫瘍効果を実証するために、免疫不全マウスの同所定位脳腫瘍異種移植モデルを使用する。ヒト腫瘍細胞は、免疫不全マウスの脳に移植する。癌細胞を同所に注入する方法は、Joo KM et al.2013(Cell Rep.3,260~73)で本質的に記載されるように行われる。
【0279】
インテグリンα10に対する非抱合型/ADCモノクローナル抗体、または対照抗体の異なる用量を、悪性細胞移植時、及び新生物の誘導後の異なる時点でモデル動物に投与する。抗体は、静脈内、腫瘍内、または脳室内注射で導入される。インテグリンα10特異的抗体の治療効果は、抗インテグリンα10で処理した動物を対照抗体で処理した動物と比較することで評価する。
【0280】
試薬の治療的価値の評価は、臓器、細胞、及び分子の分析、並びに生存に基づいた多数の病理学的比較によって行われる。病理学的特色、及びマーカーの例は、
-腫瘍サイズ
-腫瘍成長速度
-形態学的、分子、及び病理組織学的特徴
-侵襲性
-悪性マーカーの遺伝子発現
-細胞周期ステータス
-アポトーシス
【0281】
本実験の目標の1つは、毒性反応を引き起こすかまたは誘発することなく試薬の最も効果的な用量を決定することである。より詳細な実験計画を含む、インビボの戦略的セットアップの主要で一般的な工程を以下に紹介する:
【0282】
詳細な実験計画
一般に、開始日(0日目)、すなわち、正常な移植宿主への新生物細胞の注射から、宿主動物中で腫瘍が完全に発症するまでの神経膠腫の発症は、選ばれた異種移植モデルに応じて約2~20週間である。研究は、3つの異なるステージに分割する:
1.開始
2.進行
3.終結
【0283】
ステージ1、開始:
悪性細胞の注射前、以下の工程を0日目に行う。
移植用細胞の調製:
a)腫瘍細胞株、または
b)原発性悪性細胞懸濁液を得るために腫瘍解離
【0284】
マウス脳への同所移植では、定位装置を製造者の指示に従って準備する。
【0285】
外科手順:
少なくとも5匹の動物を各注射条件、及び各時点で使用する。
a)術前動物の準備(動物の麻酔、消毒、固定)
b)術前細胞の準備(細胞洗浄、及び計数)
c)手順ケア(麻酔及び外科手順のメンテナンス)
d)細胞の注入
e)動物のケア、及びモニタリング
【0286】
ステージ2、進行:
実験動物は、治療レジメンに基づいて4つの群に分割する。
群は、
1.1群:未処理群。抗体による処理無し。
2.2群:対照群。対照抗体による処理。
3.3群:ITGA10群。インテグリンα10サブユニットに対する非抱合型/ADC抗体による処理。
【0287】
ステージ3、終結:
動物は、確立されたプロトコルに従って犠牲にし、形態学的、分子、及び病理組織学的特徴、侵襲性、悪性マーカーの遺伝子発現データ、細胞周期ステータス、及びアポトーシスに関する必要な全ての情報を取得するために、脳腫瘍を単離する。
【0288】
実施例13:配列の概要
配列番号1:ヒトインテグリンα10サブユニット
配列番号2:ヒトインテグリンα10サブユニットの細胞外ドメイン
配列番号3:ヒトインテグリンα10サブユニットのIドメイン
配列番号4:ホモサピエンスインテグリンサブユニット α10前駆体、mRNA、完全cds
【配列表】