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  • 特許-信号伝送回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】信号伝送回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/52 20060101AFI20220419BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H04L25/52 A
H04L7/033 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017151208
(22)【出願日】2017-08-04
(65)【公開番号】P2019029977
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】森 文彦
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-062908(JP,A)
【文献】特開平07-030570(JP,A)
【文献】特開2017-068796(JP,A)
【文献】特開2003-218891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/52
H04L 7/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の信号伝送回路が接続される複数のコネクタの間でのデータ信号の巡回的な伝送が可能なシステムバスと、
このシステムバスにて直列に接続される前記コネクタの間に実装されて当該コネクタの入力信号と出力信号の位相差に基づき当該出力信号の位相を補正する位相同期回路と、
前記コネクタに前記外部の信号伝送回路が接続されない場合に当該コネクタと直列に接続された前記位相同期回路から出力された信号を当該コネクタに供することなく当該コネクタと直列に接続された他の前記位相同期回路に出力するバイパス回路と、
を備え、
前記位相同期回路は、前記バイパス回路の遅延特性により生じる位相差に基づき前記位相を補正することを特徴とする信号伝送回路。
【請求項2】
前記コネクタに対する前記外部の信号伝送回路の接続の有無に基づき当該コネクタから前記位相同期回路を介してデータ信号を伝送するマルチプレクサをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の信号伝送回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み込みシステムにおける信号伝送回路、特に、ビット同期のシリアル伝送に適用される信号伝送回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力データからノイズを除去し、この入力データから同期したクロックを生成できるようにした位相同期回路として例えば特許文献1に開示のデジタル位相同期回路が挙げられる。この位相同期回路は例えば組み込みシステムにて互いに伝送可能な複数の信号伝送回路内に実装される。また、特許文献2に開示の位相同期回路は、例えば、個々の伝送回路間にデータが巡回することにより、複数の伝送回路間のデータ伝送が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-199792号公報
【文献】特開2010-183307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組み込みシステムにおける物理的な伝送媒体には、複数の外部の信号伝送回路が実装可能なベースボードが使用される。例えば、特許文献2の伝送システムにおいて、外部の信号伝送回路が不実装のスロットでは、データはベースボード上のIC(集積回路)を通過し、バイパスする。データがICを通過する際、ICの遅延特性によりデータ信号のパルス幅が歪むことがある。特に、通過するICが多段であると、前記パルス幅の歪みは増大し、実装ボードでの受信ができなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、集積回路が多段に実装される信号伝送回路におけるデータ信号の歪みの抑制を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、波形整形機能を有する位相同期回路を信号伝送回路のコネクタ間に実装することによりデータ信号の歪みを抑制する。
【0007】
すなわち、本発明の一態様は、信号伝送回路であって、外部の信号伝送回路が接続される複数のコネクタの間でのデータ信号の巡回的な伝送が可能なシステムバスと、このシステムバスにて直列に接続される前記コネクタの間に実装されて当該コネクタの入力信号と出力信号の位相差に基づき当該出力信号の位相を補正する位相同期回路とを備える。
【0008】
前記信号伝送回路の一態様は、前記コネクタに前記外部の信号伝送回路が接続されない場合に当該コネクタと直列に接続された前記位相同期回路から出力された信号を当該コネクタに供することなく当該コネクタと直列に接続された他の前記位相同期回路に出力するバイパス回路をさらに備える。
【0009】
前記信号伝送回路の一態様は、前記コネクタに対する前記外部の信号伝送回路の接続の有無に基づき当該コネクタから前記位相同期回路を介してデータ信号を伝送するマルチプレクサをさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、信号伝送回路において集積回路が多段に実装されてもデータ信号の歪みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における信号伝送回路のシステムバスを例示する回路構成図。
図2】(a)は前記信号伝送回路に具備された集積回路の入力信号のパルス波形図、(b)は当該集積回路の出力信号のパルス波形図。
図3】前記信号伝送回路におけるマルチプレクサの適用例を示す回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1に示されたベースボード100は、本発明の信号伝送回路の一態様であって、DPLL回路111~115とシステムバス119とを備える。
【0014】
システムバス119は、ベースボード100の信号伝送路であって、外部の信号伝送回路としてボード116~118が任意に接続される複数のコネクタとしてコネクタ101~105を実装する。システムバス119においては、コネクタ101~105の間でのデータ信号の巡回的な伝送が可能となっている。
【0015】
DPLL回路111~115は、システムバス119にて直列接続されるコネクタ101~105の間に実装される位相同期回路であって、コネクタ101~105の入力信号と出力信号の位相差に基づき当該出力信号の位相を補正する。
【0016】
また、システムバス119には、コネクタ101~105と各々並列接続されるバイパスIC106~110が実装されている。バイパスIC106~110は、コネクタ101~105に外部の信号伝送回路が接続されない場合にDPLL回路115,111~114から出力された信号をコネクタ101~105に供することなくDPLL回路111~115に各々出力するバイパス回路である。
【0017】
以上のベースボード100には、5つの外部の信号伝送回路としてボード116~118が実装されているが、本発明における外部の信号伝送回路の実装数はこの態様に限定されるものではない。
【0018】
図1~3を参照して本実施形態のベースボード100の動作及び作用を説明する。
【0019】
ベースボード100においてはスロット1~5を介してデータ信号が巡回するようになっている。本態様は、スロット1のボード116とスロット2のボード117とスロット5のボード118との間でデータ伝送が行われる。スロット1,2,5に各々実装されたボード116,117,118は、コネクタ101,102,105を介してベースボード100との間でデータの送受信を行う。
【0020】
例えば図示のようにコネクタ101,102,105対してボード116,117,118が各々接続されると、コネクタ101,102,105に対応したバイパスIC106,107,110は出力ディセーブルとなる。そして、データはボード116,117,118を介してベースボード100内を巡回する。
【0021】
一方、例えば、外部の信号伝送回路が実装されていないスロット3,4のコネクタ103,104に対応したバイパスIC108,109はイネーブルとなりデータはコネクタ102からコネクタ105に転送される。
【0022】
したがって、スロットのボードの有無に関わらず、ベースボード100内をデータが巡回することができる。
【0023】
但し、ボード116,117,118を実装するスロット1,2,5では、データがボード116~118の内部を通過するので、このボード116~118に実装されているDPLL回路により当該データの信号は波形整形されその品質の改善が可能となる。
【0024】
しかしながら、外部の信号伝送回路が未実装のスロット3,4ではデータ信号がバイパスIC108,109を通過するだけなので当該データ信号の波形が整形されない。このことから、図2に示したように、バイパスIC106~110の立ち上がり伝搬遅延時間tpLHと立ち下がり伝搬遅延時間tpHLの遅延時間の差からパルス幅の歪みが生じる。
【0025】
同図では、立ち上がり伝搬遅延時間tpLH>立ち下がり伝搬遅延時間tpHLなのでHのパルス幅tWH<Lのパルス幅tWLとなっている。ベースボード100において外部の信号伝送回路が実装されないスロットが連続するとパルスの歪みが積算され、当該外部の信号伝送回路が許容するパルス幅の歪みを超えて受信できなくなる可能性がある。
【0026】
これに対して、ベースボード100は、コネクタ101~105間にDPLL回路111~115が実装されたことにより、コネクタ101~105の入力信号と出力信号の位相差に基づき当該出力信号の位相が補正される。したがって、図1に例示の外部の信号伝送回路が接続されていないスロットが連続した状況であってもシステムバス119において伝送されるデータ信号のパルス幅の歪みを解消できる。
【0027】
また、図3に例示したようにDPLL回路111~115においてマルチプレクサ120を適用するとよい。マルチプレクサ120は、システムバス119においてDPLL回路111~115の出力側にDPLL回路111~115と直列に各々接続されている。
【0028】
マルチプレクサ120は、コネクタ101~105に対するボード116~118の接続の有無に基づきコネクタ101~105からDPLL回路111~115を介してデータ信号を伝送する。
【0029】
より具体的には、マルチプレクサ120は、任意のコネクタ101~105に外部の信号伝送回路が接続されたことを検出すると、当該任意のコネクタ101~105からのデータ信号を入力部AINで受けてコネクタ102~105,101に出力する。
【0030】
一方、前記外部の信号伝送回路が接続されていないことを検出すると、DPLL回路111~115を介して当該任意のコネクタ101~105からのデータ信号を入力部BINで受けてコネクタ102~105,101に出力する。
【0031】
以上のマルチプレクサ120によれば、ベースボード100に実装される外部の信号伝送回路の有無により特定のスロットにおける波形整形機能の要否の切換が可能となる。
【0032】
さらに、ボード116~118内におけるデータ信号の波形整形機能をベースボード100に具備すれば、当該波形整形機能をボード116~118に備える必要がなくなる。
【0033】
以上のように、本実施形態のベースボード100によれば、ベースボード100内でのデータ信号を巡回させる伝送形態のシステムバス119において、ボード116~118が任意に未実装であっても、データ信号のパルス幅の歪みが補正される。したがって、前記パルス幅の歪みに依るベースボード100におけるスロット数の制限が解消される。
【0034】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲内で様々な態様で実施が可能である。
【符号の説明】
【0035】
100…ベースボード
111~115…DPLL回路(位相同期回路)
101~105…コネクタ
116~118…ボード(外部の信号伝送回路)
106~110…バイパスIC(バイパス回路)
119…システムバス
120…マルチプレクサ
図1
図2
図3