IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗物用シート及びその構成部材 図1
  • 特許-乗物用シート及びその構成部材 図2
  • 特許-乗物用シート及びその構成部材 図3
  • 特許-乗物用シート及びその構成部材 図4
  • 特許-乗物用シート及びその構成部材 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】乗物用シート及びその構成部材
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20220419BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20220419BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/80
A47C7/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017199235
(22)【出願日】2017-10-13
(65)【公開番号】P2019073095
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 将弘
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052309(JP,A)
【文献】特開2010-018196(JP,A)
【文献】実開平02-141238(JP,U)
【文献】特開2005-153647(JP,A)
【文献】実公平07-014059(JP,Y2)
【文献】特開2009-220752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後席の前方に配設される前席用の乗物用シートであって、
シートクッションと、ヘッドレストが着脱可能又は前方に倒伏可能に取付けられたシートバックと、を有し、
該シートバックは骨格をなすバックフレームと、該バックフレームに被せつけられたクッション材としてのバックパッドと、前記バックフレームに取付けられ前記ヘッドレストを保持するとともに外部に露出する上面部を有するヘッドレストサポートと、を有し、
前記バックパッドは、発泡合成樹脂よりなる本体と該本体にインサートされた前記本体より硬質な樹脂発泡成形体を有するとともに、前記シートバックの後面側上方において、前記ヘッドレストサポートの前記上面部より後方かつ上方に突出した突出部が形成され、
該突出部には前記樹脂発泡成形体が、上方に突出した突起部の上端部が前記ヘッドレストサポートの前記上面部より上方に位置するようにインサートされており、
前記樹脂発泡成形体は、前記シートバックの骨格をなすバックフレームに上方から当接可能に前記本体から露出してインサートされており、
前記バックフレームは上部にアッパフレームを有し、該アッパフレームは、横断面が後方に開口を有する略U字状で、シート幅方向に延びて形成された前面部と、該前面部の上端部から後方に延びる上面部と、前記前面部の下端部から後方に延びる下面部と、を有しており、
前記上面部の後端部は上方から前方に向けて断面R状に折り返された上R部として形成され、前記下面部の後端部は下方から前方に向けて断面R状に折り返された下R部として形成されており、
前記樹脂発泡成形体には、前記上R部に面状に当接する上段部と、前記下R部に面状に当接する下段部と、前記前面部の前面に当接する前壁部と、が形成されている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、前記樹脂発泡成形体は、左右の前記ヘッドレストサポートに対応して、それぞれ1つずつ配設されている乗物用シート。
【請求項3】
請求項2において、前記ヘッドレストは前方に倒伏可能であって、前記樹脂発泡成形体は、それぞれ、左右方向に分割された2つの分割体で形成されている乗物用シート。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記突出部は、前記シートバックを前記シートクッションに対して起立させた設計標準位置に配置したとき、水平方向に対して略45度傾く後上方に向かって突出している乗物用シート。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項の乗物用シートを実現する樹脂発泡成形体であって、オレフィン系樹脂のビーズ発泡成形体である乗物用シートの構成部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート及びその構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後席の前方に配設される前席の自動車用シートにおいて、乗員が着座していないときに、後席の着座乗員の前方視界確保のためにヘッドレストを前倒ししたり(例えば、特許文献1参照)、ヘッドレストをシートバックから外したりする場合がある。かかる場合に、車両前突時の後席の着座乗員の保護を図ろうとした場合、特許文献2に記載されるような衝撃吸収機構をバックフレームに設けたり、シートバックのクッション材であるバックパッドをシートバックの上部後方において厚いものとする等の手段がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-73833号公報
【文献】特開2008-230397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、衝撃吸収機構をバックフレームに設けると、バックフレームの構造が複雑化してコスト増につながるという問題がある。また、バックパッドの厚みをシートバックの上部後方において厚いものとすると、シートバックの厚みが局部的に増大して外観意匠を損なうとともにスペース効率的にも問題がある。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明の課題は、前倒れするヘッドレスト等を備えた乗物用シートにおいて、簡潔な構造で意匠性を損なわずに、前突時において後席の着座乗員の保護を図ることができる乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、後席の前方に配設される前席用の乗物用シートであって、シートクッションと、ヘッドレストが着脱可能又は前方に倒伏可能に取付けられたシートバックと、を有し、該シートバックは骨格をなすバックフレームと、該バックフレームに被せつけられたクッション材としてのバックパッドと、前記バックフレームに取付けられ前記ヘッドレストを保持するとともに外部に露出する上面部を有するヘッドレストサポートと、を有し、前記バックパッドは、発泡合成樹脂よりなる本体と該本体にインサートされた前記本体より硬質な樹脂発泡成形体を有するとともに、前記シートバックの後面側上方において、前記ヘッドレストサポートの前記上面部より後方かつ上方に突出した突出部が形成され、該突出部には前記樹脂発泡成形体がインサートされていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、ヘッドレストがヘッドレストから取り外されたり、前倒しされてシートバックの上部に存在しない場合に、乗物が前突等で衝撃を受けたとき後席の乗員の頭部を保護することができる。具体的には、後席の乗員の頭部がヘッドレストサポート等の硬質部材に当接する前に突出部におけるバックパッドの本体及び突出部にインサートされた樹脂発泡成形体によって衝撃吸収されることができる。このとき、樹脂発泡成形体はバックパッドの本体より硬質で衝撃吸収性能が高いのでバックパッドの厚みを増大させる必要が少なく外観意匠を損なったりスペース効率を悪化させたりすることを抑制できる。また、樹脂発泡成形体はバックパッドの中にインサートされているので構造が簡潔でコスト増加も抑制できる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記樹脂発泡成形体は、前記シートバックの骨格をなすバックフレームに上方から当接可能に前記本体から露出してインサートされていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、樹脂発泡成形体がバックフレームに上方から当接可能に本体から露出してインサートされているので、突出部に衝撃が加えられたとき、バックフレームに当接してしっかり保持され効率よく衝撃吸収することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記バックフレームは上部にアッパフレームを有し、該アッパフレームは横断面が後方に開口を有する略U字状でシート幅方向に延びて形成されており、前記樹脂発泡成形体は、前記アッパフレームの下方の開口端部に当接可能に配設されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、樹脂発泡成形体に衝撃が加えられたとき、樹脂発泡成形体を下方の開口端部によって着実に支持することができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第2発明において、前記バックフレームは上部にアッパフレームを有し、該アッパフレームは横断面が後方に開口を有する略U字状でシート幅方向に延びて形成されており、前記樹脂発泡成形体は、前記アッパフレームの上方の開口端部に当接可能に配設されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、樹脂発泡成形体に衝撃が加えられたとき、樹脂発泡成形体を上方の開口端部によって着実に支持することができる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第1発明ないし上記第4発明のいずれかにおいて、前記樹脂発泡成形体は、左右の前記ヘッドレストサポートに対応して、それぞれ1つずつ配設されていることを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、バックパッドの本体に対して樹脂発泡成形体を離脱するおそれを抑制して取付けることができる。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第5発明において、前記ヘッドレストは前方に倒伏可能であって、前記樹脂発泡成形体は、それぞれ、左右方向に分割された2つの分割体で形成されていることを特徴とする。
【0017】
第6発明によれば、ヘッドレストが前方に倒伏可能な乗物用シートにおいて、樹脂発泡成形体を容易に成形することができる。
【0018】
本発明の第7発明は、上記第1発明ないし上記第6発明のいずれかにおいて、前記突出部は、前記シートバックを前記シートクッションに対して起立させた設計標準位置に配置したとき、水平方向に対して略45度傾く後上方に向かって突出していることを特徴とする。
【0019】
第7発明によれば、乗物の前突時に後席乗員の頭部がシートバックの上部に対し当接しやすい方向の逆方向に向かって突出部が突出して配設されているので、後席乗員の頭部に印加される衝撃を効率よく吸収することができる。
【0020】
本発明の第8発明は、上記第1発明ないし上記第7発明のいずれかの乗物用シートを実現する樹脂発泡成形体であって、オレフィン系樹脂のビーズ発泡成形体であることを特徴とする。
【0021】
第8発明によれば、上記第1発明ないし上記第7発明のいずれかの乗物用シートを実現することができる。また、オレフィン系樹脂のビーズ発泡成形体は軽量で衝撃吸収性に優れるので、バックパッドの厚みを増大させる必要がさらに少なく外観意匠を損なったりスペース効率を悪化させたりすることをさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態である自動車用シートを斜め前方から見た斜視図である。
図2】上記実施形態における自動車用シートのシートバックの正面図である。
図3図2のIII-III線で切断して示す断面図である。
図4】上記実施形態における自動車用シートの樹脂発泡成形体を斜め前方から見た斜視図である。
図5】上記実施形態における樹脂発泡成形体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図5に、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、後席の前方に配設される前席用の自動車用シート1に本発明を適用した場合の例である。各図中、矢印により自動車用シート1を自動車に取付けたときの自動車及び自動車用シート1の各方向を示す。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。ここで、自動車用シート1が、特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
【0024】
図1及び図2に示すように、自動車用シート1は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、腰部及び背部を支持するシートバック3と、を備える。シートバック3の上部には、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト4が配設されている。シートクッション2は、図示しないスライドレールを介してフロアFに対して前後動自在に取付けられている。ヘッドレスト4は、シートバック3の上端部側に取付けられており、上下動可能かつ前倒れ可能に形成された、いわゆる前倒れヘッドレストである。
【0025】
図2及び図3に示すように、シートバック3は、前面視で略矩形状のバックフレーム31と、バックフレーム31に被せつけられるクッション材としてのバックパッド32と、バックパッド32を被覆する表皮材としてのバックカバー33と、を備える。バックフレーム31は、左右両端部において上下方向に延びる一対のサイドフレーム31aと、サイドフレーム31aの上端部側を連結するアッパフレーム31bと、サイドフレーム31aの下端部側を連結するロアフレーム31cと、を有する。各サイドフレーム31aは、それらの前縁部と後縁部とがシート内側に折り曲げられた形状とされて、曲げやねじりに対する強度が高められている。アッパフレーム31bは、横断面がシート後側方向に開口した略U字状で左右方向に延びて配設されている。図3に示すように、アッパフレーム31bは、前面部31b1と、前面部31b1の上端部から後方に延びる上面部31b2と、前面部31b1の下端部から後方に延びる下面部31b3と、を有する。上面部31b2の後端部は上方から前方に向けて断面R状に折り返され上R部31b21が形成されている。また、下面部31b3の後端部は下方から前方に向けて断面R状に折り返され下R部31b31が形成されている。上R部31b21と下R部31b31は、後述するビーズ発泡成形体32bに対するアッパフレーム31bの当接面の面積を大きくして当接圧を下げビーズ発泡成形体32bの損傷を防止するためのものである。バックフレーム31の左右下端部は、リクライニング装置5を介してシートクッション2のクッションフレーム(図示せず)の左右後端部に取付けられ、シートクッションに対するシートバック3の傾き角度の調整が可能とされている。ここで、上R部31b21と下R部31b31が、それぞれ、特許請求の範囲の「上方の開口端部」と「下方の開口端部」に相当する。
【0026】
図2及び図3に示すように、ヘッドレスト4は、円形断面のパイプ材を前面視で下方に開口した略逆U字状に形成されたステー41と、ステー41の開口側と反対側である上端部側に固着された乗員の頭部を後方から支持するパッド体42と、を有する。ステー41の一方である右側のステー41には、シートバック3に対してヘッドレスト4の上下高さを調整するための複数の溝41aが設けられている(図1参照)。パッド体42は、発泡ウレタン樹脂製でステー41に対して一体発泡により取付けられるときに、表面にカバー材も同時に一体発泡で取付けられている。
【0027】
図2及び図3に示すように、アッパフレーム31bの上面部31b2と下面部31b3の間には左右一対の角筒状のホルダー31dが、バックフレーム31の左右方向中央面に関して対称な位置に配設されている。具体的には、ホルダー31dは、横断面が四角形の筒状の部材で、その内筒部分に後述するヘッドレストサポート50の筒状部51aが挿入されて支持可能とされている。上面部31b2と下面部31b3には、それぞれ、ホルダー31dの横断面外形よりわずかに大きい角孔31b22と角孔31b32が設けられ、角孔31b22と角孔31b32に対してホルダー31dが上下方向に架け渡し状に挿通されて固定されている。なお、左右一対のホルダー31dの角筒中心線間の長さは、ヘッドレスト4のステー41の中心線間の長さに対応したものとされている。
【0028】
図1図3に示すように、ヘッドレストサポート50は、ホルダー31dに一部が挿入されて支持される樹脂製の本体部51と、本体部51の上部に左右方向に延びる回動軸52aで回動可能に支持された樹脂製の可動部52と、を有する。本体部51は、ヘッドレスト4のステー41が軸方向に内挿される筒状部51aと、筒状部51aの上端部に連結されて設けられた可動部支持部51bと、を有する。可動部支持部51bは、概略上方が開口した箱形状の前面の壁をステー41を前方に倒し込み可能なように切り欠いて形成されている。具体的には、可動部支持部51bは、左右一対の側壁51b1と、左右一対の側壁51b1の後端部を左右に連結する後壁51b2と、前面視で略U字状の切り欠き51b31を設けた前壁51b3と、を有する。また、可動部支持部51bは、左右一対の側壁51b1と後壁51b2と前壁51b3の下端部を連結し中央に筒状部51aに連通する連通孔51b41を設けた下壁51b4と、を有する。左右一対の側壁51b1と後壁51b2と前壁51b3の上端部には、筒状部51aに対して垂直かつ径方向に延びるフランジ部51b5が形成されている。切り欠き51b31部分の前側外周部にもフランジ部51b5から連続するフランジ延設部51b6が形成されている。可動部52は、ステー41を内挿可能な挿通孔52bを有する。可動部52は、回動軸52aを中心に図3において可動部支持部51bに対して時計回りに回動させられて挿通孔52bと筒状部51aの内筒部が上下方向に一致したときステー41が挿通孔52bと筒状部51aの内筒部の双方に挿入されてヘッドレスト4の上下位置の調整が可能となる。この状態が、図3に二点鎖線で示す着座状態4Aである。また、ステー41の下端部が挿通孔52bのみに挿入された状態で、可動部52を回動軸52aを中心に図3において可動部支持部51bに対して反時計回りに回動させるとヘッドレスト4が前倒れして実線で示す前倒れ状態4Bとなる。
【0029】
図1図3に示すように、バックパッド32は、バックフレーム31の前面、左右側面、上面及び後面上部を覆ってバックフレーム31に被せつけられている。そして、バックパッド32の表面側がバックカバー33で被覆されてシートバック3の外形を形成している。図3に示すように、バックパッド32は、本体32aがポリウレタン樹脂を発泡成形したウレタン発泡体から形成されており、その密度は例えば0.045±0.005g/cm3程度である。バックパッド32のホルダー31dの外周部に対応する部分には、本体32aの中に左右一対のビーズ発泡成形体32bがインサート成形されている。ビーズ発泡成形体32bは、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂のビーズ発泡成形体であり、その密度は0.03g/cm3程度である。ビーズ発泡成形体32bは、本体32aより密度が小さく、弾性率が高く硬質なものであり、衝撃吸収能力も高い。図4に示すように、ビーズ発泡成形体32bは、後壁部32b1と、上壁部32b2と、前壁部32b3と、を有する。後壁部32b1は、図3に示すように、その横断面が上部において前後方向に厚く下部において前後方向に薄い形状をしており、上端部に上壁部32b2の上面より上方に突出する突起部32b11を有する。また、後壁部32b1の前面側下部には、アッパフレーム31bの下R部31b31に当接する下段部32b12が形成され、後壁部32b1の前面側上部には、アッパフレーム31bの上R部31b21に当接する上段部32b13が形成されている。上壁部32b2は、その上面がヘッドレストサポート50のフランジ部51b5の下面に沿って延びるように形成され、中央部分にヘッドレストサポート50の可動部支持部51bを通す切り欠き孔32b21が設けられている。前壁部32b3は、上壁部32b2の左右の前端部を連結して可動部支持部51bのフランジ延設部51b6に沿うように下方に湾曲して形成されている。ビーズ発泡成形体32bは、図5に示すように、左右方向に2つに分割された第1部材32b4と第2部材32b5が接着により一体化されて形成されている。これは、ビーズ発泡成形体32bをビーズ発泡成形する際の便宜によるものである。一対のビーズ発泡成形体32bは、バックパッド32の本体32aを成形する成形型のキャビティ内に配置された状態で発泡ウレタン樹脂材料がキャビティ内に投入され発泡成形されることで本体32aに対し一体化される。このとき、本体32aの裏面側にはバックフレーム31との干渉による破れ等を防止するための補強材としての不織布32a1も一体成形される。ここで、ビーズ発泡成形体32bが、特許請求の範囲の「樹脂発泡成形体」に相当する。
【0030】
図1図3に示すように、バックパッド32の後面側上方にはヘッドレストサポート50のフランジ部51b5の上面より後上方に突出した突出部32cが形成されている。突出部32cは、内部に配置されたビーズ発泡成形体32bの突起部32b11を本体32aの一部が覆った状態で形成されている。突起部32b11の上端部の位置は、フランジ部51b5の上面より上方に配置されている。そして、突出部32cは、シートバック3をシートクッション2に対して起立させた設計標準位置に配置した状態で、フランジ部51b5の上面後端から水平方向に対して略45度傾く後上方に向かって突出している。ビーズ発泡成形体32bの上段部32b13と下段部32b12は、それぞれ、アッパフレーム31bの上R部31b21と下R部31b31に当接して下方への移動を規制された状態でバックフレーム31に対し取付けられている。また、ビーズ発泡成形体32bの前壁部32b3の後面はアッパフレーム31bの前面部31b1の前面に当接して後方への移動を規制された状態でバックフレーム31に対し取付けられている。
【0031】
以上のように構成される上記実施形態は、以下のような作用効果を奏する。バックパッド32の後面側上方にはヘッドレストサポート50のフランジ部51b5の上面より後上方に突出した突出部32cが形成されているので、自動車の前突時に後席の乗員の頭部がヘッドレストサポート50に当接する前に突出部32cによって衝撃吸収される。突出部32cには、バックパッド32の本体32aより硬質で衝撃吸収性能が高いビーズ発泡成形体32bの突起部32b11がインサートされているのでバックパッド32の厚みを増大させる必要が少なく外観意匠を損なったりスペース効率を悪化させたりすることを抑制できる。また、ビーズ発泡成形体32bはバックパッド32の本体32aの中にインサートされているので構造が簡潔でコスト増加も抑制できる。
【0032】
また、ビーズ発泡成形体32bはポリプロピレン樹脂のビーズ発泡成形体であるので、軽量で衝撃吸収性能に優れる。これによって、バックパッド32の厚みを増大させる必要がさらに少なく外観意匠を損なったりスペース効率を悪化させたりすることをさらに抑制できる。さらに、突出部32cは、シートバック3をシートクッション2に対して起立させた設計標準位置に配置した状態で、フランジ部51b5の上面後端から水平方向に対して略45度傾く後上方に向かって突出している。これによって、自動車の前突時に後席乗員の頭部がシートバック3の上部に対し当接しやすい方向の逆方向に向かって突出部32cが突出して配設されていることになり、後席乗員の頭部に印加される衝撃を効率よく吸収することができる。
【0033】
また、ビーズ発泡成形体32bは、バックフレーム31に上方から当接可能にバックパッド32の本体32aから露出してインサートされている。これによって、突出部32cに衝撃が加えられたとき、ビーズ発泡成形体32bは、バックフレーム31に当接してしっかり保持され効率よく衝撃吸収することができる。ビーズ発泡成形体32bの上段部32b13はアッパフレーム31bの上R部31b21に当接し、下段部32b12は下R部31b31に当接しているので、ビーズ発泡成形体32bを着実に支持することができる。さらに、ビーズ発泡成形体32bは、左右のヘッドレストサポート50に対応して、それぞれ1つずつ配設されている。これによって、左右のビーズ発泡成形体32bの間には本体32aが介在し、バックパッド32の本体32aに対してビーズ発泡成形体32bを離脱するおそれを抑制して取付けることができる。加えて、ビーズ発泡成形体32bは、第1部材32b4と第2部材32b5が接着により一体化されて形成されている。これによって、ヘッドレスト4のステー41が前方に倒伏可能なように前壁部32b3が下方に湾曲して形成されているビーズ発泡成形体32bを容易に成形することができる。
【0034】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0035】
1.上記実施形態では、バックパッド32の突出部32cはビーズ発泡成形体32bの突起部32b11を本体32aの一部が覆った状態で形成した。しかし、これに限らず、突起部32b11がバックパッド32の表面に露出して突出部32cを形成していてもよい。この場合には、さらに突出部32cの体積を小さくして所望の衝撃吸収性能を発揮させうる。
【0036】
2.上記実施形態においては、ビーズ発泡成形体32bをバックパッド32の本体32aの成形時に一体発泡することにより取付けたが、これに限らず、接着や機械的な連結手段で取付けてもよい。
【0037】
3.上記実施形態においては、ビーズ発泡成形体32bを第1部材32b4と第2部材32b5の2つに分けて成形し接着により一体化して形成した。しかし、ビーズ発泡成形上支障がなければ一体品として形成してもよい。さらに、上記実施形態においては、ビーズ発泡成形体32bを左右一対のものとして形成したが一体化して1つの部品とすることもできる。
【0038】
4.上記実施形態においては、ビーズ発泡成形体32bの上段部32b13はアッパフレーム31bの上R部31b21に当接し、下段部32b12は下R部31b31に当接しているものとした。しかし、これに限らず、通常時は若干の隙間を有して離隔しており、突出部32cに衝撃が加えられたとき当接するようにしてもよい。
【0039】
5.上記実施形態においては、自動車用シート1は前席用シートとのみ説明したが、2列シート使用の自動車における前席のみならず、3列シート使用の自動車において2列目シートを前席とし、3列目シートを後席としてもよい。
【0040】
6.上記実施形態においては、本発明を自動車用のシートに適用したが、鉄道車両、飛行機、船等のシートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 自動車用シート(乗物用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
4 ヘッドレスト
31 バックフレーム
32 バックパッド
32a 本体
32b ビーズ発泡成形体(樹脂発泡成形体)
32b11 突起部
32c 突出部
50 ヘッドレストサポート

図1
図2
図3
図4
図5