(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220419BHJP
【FI】
A63B53/04 F
A63B53/04 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017199725
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・リップ
(72)【発明者】
【氏名】ダン・ニバン
(72)【発明者】
【氏名】ミカ・ベクター
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー・サックマン
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073263(JP,A)
【文献】特開2009-148538(JP,A)
【文献】特表2012-527310(JP,A)
【文献】特開2010-057679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303303(US,A1)
【文献】米国特許第07927230(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴルフクラブヘッドの打撃フェースにおいて、A
1/P
1>0.0030インチとなるような第1の断面積(A
1)および第1のピッチ(P
1)を有する複数の初期溝を形成するステップであって、該打撃フェースは、第1の硬さを有する第1の材料から形成される、ステップと、
(b)該第1の硬さより低い第2の硬さを有する第2の材料を該複数の初期溝の各々の中に少なくとも配置することによって、該第1の材料と該第2の材料とが、A
2/P
2<0.0030インチとなるような第2の断面積(A
2)および第2のピッチ(P
2)をそれぞれ有する複数の最終溝を形成するように、該初期溝を修正するステップと、
を含
み、
ステップ(a)は、前記打撃フェースをトウ-ヒール方向に横切るアンダーカット部分を含む初期溝を形成するステップである、
方法。
【請求項2】
ステップ(b)における該配置は、該初期溝を該第2の材料で充填し、該第2の材料をフライス加工して該複数の最終溝を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該充填は、該第2の材料を注入するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該初期溝は、0.020インチより大きい深さと、0.035インチ未満の幅とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該最終溝は、0.020インチ未満の深さと、0.035インチ未満の幅とを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)は、該初期溝を該第2の材料で充填し、続いて該初期溝および該第2の材料をフライス加工して該最終溝を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前に、該複数の初期溝の各々の中に配置されることになる該第2の材料から弾性インサートを作製するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)は、該複数の最終溝の各々が、該第2の材料を含む基部と、該第1の材料および該第2の材料を含む側壁と、該側壁が該第1の材料を含む該打撃フェースと出合う縁部と、該第1の材料と該第2の材料とが出合う該側壁の各々における接合部とを有するように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該接合部の各々は、連続的な側壁が形成されるように実質的に滑らかである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
トウ部分と、
ヒール部分と、
ソール部分と、
トップ部分と、
リア部分と、
第1の材料で形成され、A
1/P
1>0.0030インチとなるような第1のピッチP
1および第1の断面積A
1をそれぞれ有する複数の凹部を含む打撃フェースであって、該複数の凹部の各々は、第2の材料で部分的に充填されて、A
2/P
2<0.0030インチとなるような第2のピッチP
2および第2の断面積A
2をそれぞれ有する複数の開口溝を形成する、打撃フェースと、
を備え
、
前記第2の材料は、前記打撃フェースの中央領域ではより柔らかい材料を含み、前記打撃フェースの中央領域の周囲ではより硬い材料を含む、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
該複数の凹部の各々の深さは、0.020インチよりも大きい、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
該複数の開口溝の各々の深さは、0.020インチ未満である、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
該開口溝の基部は、該第2の材料を含み、該複数の開口溝の側壁が該打撃フェースと出合う該複数の開口溝の縁部は、該第1の材料を含む、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
該複数の開口溝の該側壁の各々は、該第1の材料が始まり、該第2の材料が終端する接合部を含む、請求項13に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
該第2の材料は、該第1の材料よりも低い硬さを有する、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
該第1の材料は金属材料であり、該第2の材料はポリマー、発泡体、ゴム、または樹脂材料のうちの1つである、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
トウ部分と、
ヒール部分と、
ソール部分と、
トップ部分と、
リア部分と、
第1の材料で形成され、0.020インチより大きい第1の深さD1をそれぞれ有する複数の凹部を含む打撃フェースであって、該複数の凹部の各々は、少なくとも部分的に第2の材料で充填されて、0.020インチ未満の第2の深さD2をそれぞれ有する複数の開口溝を形成する、打撃フェースと、
を備えるゴルフクラブヘッドであって、
該開口溝の基部は、該第2の材料で形成され、該開口溝が該打撃フェースと出合う該開口溝の縁部は、該第1の材料で形成され
、
前記複数の凹部の基部と前記開口溝の基部との間の距離は、前記打撃フェースの中央領域でより大きく、前記打撃フェースの中央領域の周囲ではより小さい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
トウ部分と、
ヒール部分と、
ソール部分と、
トップ部分と、
リア部分と、
第1の材料で形成され、0.020インチより大きい第1の深さD1をそれぞれ有する複数の凹部を含む打撃フェースであって、該複数の凹部の各々は、第2の材料で形成される第1の層で少なくとも部分的に充填されるとともに、第3の材料で形成され、前記第1の層に積層される第2の層で少なくとも部分的に充填されて、0.020インチ未満の第2の深さD2をそれぞれ有する複数の開口溝を形成する、打撃フェースと、
を備えるゴルフクラブヘッドであって、
該開口溝の基部は、該第2の材料で形成され、該開口溝の側壁は、前記第2の層を少なくとも部分的に含み、該開口溝が該打撃フェースと出合う該開口溝の縁部は、該第1の材料で形成される、ゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
該第2の材料は、該第1の材料よりも低い硬さを有する、請求項17
または18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
該第1の材料は金属材料であり、該第2の材料はポリマー、発泡体、ゴム、または樹脂材料のうちの1つである、請求項17
または18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項21】
該複数の凹部の各々は、A1/P1>0.0030インチとなるような第1のピッチP1および第1の断面積A1を有し、該複数の開口溝の各々は、A2/P2<0.0030インチとなるような第2のピッチP2および第2の断面積A2を有する、請求項17
または18に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
バックスピンの量を増やし、ゴルフショット時のフィーリングを改善することは、ゴルフクラブ設計における長年の目標である。ゴルフクラブのスピンを増加させる最も一般的な方法の1つは、スコアラインを使用する方法である。スコアラインは、多くの異なる型のクラブヘッドに適用されてきた。しかしながら、アイアン型およびウェッジ型のゴルフクラブは、スコアラインが最も有益であるクラブの種類である。クラブの設計者がスピンを増加させる方法を絶えず開発してきたので、公式に認可されたツアーイベントで使用されるゴルフ用品を管理する規則を公布する規制機関である全米ゴルフ協会(USGA:United States Golf Association)は、公平な競技の場を提供するために、スコアラインのサイズ、形状、特性、および寸法に制限を課した。これに対応して、クラブヘッドのスピン効果をさらに高めるために、またはこれらの認可された制限が設けられたスピンの一定レベルを最低限維持するために、USGA規則の範囲内の新しく興味深いスコアライン設計方法が努力により登場した。さらに、これらの規則が設けられたことにより、クラブヘッドの打撃フェース全体の均一性/意図的な変化や異なる環境条件や芝生の状態における均一性などの他の方法でのスピンの向上にも注意が向けられている。例えば、スコアラインの異なる形状、材料、およびサイズが利用されている。しかしながら、これらの努力はまだ目標には達していない。低コストで質量効率の高いプロセスおよび材料に依存して適切にスピンを操作し、フィーリングを改善することの両方を可能にする、USGA規則の範囲内でのさらに効果的な構造が依然として必要である。
【発明の概要】
【0002】
以下に、本開示の基本的な理解を提供するために、本開示の態様の概要を示す。この概要は、本開示の広範な概観ではない。この概要は、本開示の重要な要素または必須の要素を特定すること、または本開示の範囲を明確にすることを意図するものではない。以下の概要は、後述されるより詳細な説明の前置きとして、一般的な形態での本開示のいくつかの概念を提示するに過ぎない。
【0003】
本開示は、一実施形態では、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースにおいて、A1/P1>0.0030インチとなるような第1の断面積(A1)および第1のピッチ(P1)を有する複数の初期溝を形成するステップであって、打撃フェースが、第1の硬さを有する第1の材料で形成される、ステップを含む方法を示している。この方法は、その後、複数の初期溝の各々の中に第1の硬さよりも低い第2の硬さを有する第2の材料を少なくとも配置することによって、第1の材料と第2の材料とがA2/P2<0.0030インチとなるような第2の断面積(A2)および第2のピッチ(P2)をそれぞれ有する複数の最終溝を形成するように、初期溝を修正するステップに進む。
別の実施形態では、本開示は、トゥ部分、ヒール部分、ソール部分、トップ部分、リア部分、および打撃フェースを備えるゴルフクラブヘッドを含む。打撃フェースは、第1の材料で形成され、それぞれがA1/P1>0.0030インチとなるような第1のピッチP1および第1の断面積A1を有する複数の凹部を含み、複数の凹部はそれぞれ、少なくとも部分的に第2の材料で充填されて、A2/P2<0.0030インチとなるような第2のピッチP2および第2の断面積A2をそれぞれ有する複数の開口溝が形成される。
本開示のさらに別の実施形態では、トゥ部分、ヒール部分、ソール部分、トップ部分、リア部分、および打撃フェースを備えるゴルフクラブヘッドが提供される。打撃フェースは、第1の材料で形成され、それぞれが0.020インチより大きい第1の深さD1を有する複数の凹部を含み、複数の凹部はそれぞれ、少なくとも部分的に第2の材料で充填されて、それぞれが0.020インチ未満の第2の深さD2を有する開口溝が形成される。開口溝の基部は、第2の材料で形成され、開口溝が打撃フェースと出合う開口溝の縁部は、第1の材料で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、例として示されており、添付の図面に限定されるものではない。同様の参照符号は、図面全体を通して同様の要素を示す。
【0005】
【
図1A】先行技術のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【0006】
【0007】
【
図1C】
図1Bのゴルフクラブヘッドの一部の断面の一部の拡大斜視図である。
【0008】
【
図2A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
【0009】
【0010】
【
図2C】
図2Bのゴルフクラブヘッドの一部の断面の一部の拡大斜視図である。
【0011】
【0012】
【
図3A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド用のスコアラインの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【0013】
【
図3B】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図3Aのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0014】
【
図3C】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図3Aのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0015】
【
図3D】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図3Aのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0016】
【
図3E】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図3Aのフローチャートのステップに対応する最終クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0017】
【
図4A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド用のスコアラインの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【0018】
【
図4B】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図4Aのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0019】
【
図4C】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図4Aのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0020】
【
図4D】ゴルフクラブヘッドのスコアラインを製造するための
図4Aのフローチャートのステップに対応する最終クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0021】
【
図5A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
【0022】
【0023】
【
図5C】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドのスコアラインの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【0024】
【
図5D】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0025】
【
図5E】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0026】
【
図5F】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する中間クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0027】
【
図5G】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する最終クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0028】
【
図5H】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する最終クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0029】
【
図5I】ゴルフクラブヘッド用のスコアラインを製造するための
図5Cのフローチャートのステップに対応する最終クラブヘッド本体の一部の断面図である。
【0030】
【
図6A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解図である。
【0031】
【0032】
【0033】
【
図6D】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【0034】
【0035】
【
図6F】
図6Cのゴルフクラブヘッドの一部の別の断面図である。
【0036】
【
図7A】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解図である。
【0037】
【0038】
【0039】
【
図7D】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【0040】
【0041】
【0042】
【
図8A】本開示の1つまたは複数の態様に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【
図8G】本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの製造プロセスを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面に示されているように、本開示の主題の好適な実施形態を説明するにあたり、明確にするために特定の用語を使用する。しかしながら、特許請求される主題は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図しておらず、各々の特定の要素は、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことを理解されたい。本開示は、主としてアイアン型ゴルフクラブおよびウェッジ型ゴルフクラブを対象としているが、本開示はそのような実施形態に限定されることを意図するものではないことに留意されたい。したがって、記載されているものに加えて、任意の型のゴルフクラブヘッド(ドライバ型、ウッド型、ハイブリッド型、またはパター型を含むが、これらに限定されない)が、本開示に記載されている実施形態から利益を得ることができる。
【0050】
本開示の目的のために、さらに、用語「スコアライン」、「最終スコアライン」、および「最終溝」の使用は、交換可能に使用され得ることに留意されたい。
【0051】
ここで
図1Aを参照すると、
図1Aは先行技術のゴルフクラブヘッドの正面図である。
図1Aのクラブヘッド100は、スコアライン104を含む打撃フェース102を含む。スコアライン104は、例えば、スコアライン104aおよびスコアライン104bを含む。クラブヘッド100は、トゥ部分114、ヒール部分116、トップ部分110、打撃フェース102に対向するリア部分(図示せず)、およびソール部分112をさらに含む。クラブヘッド100は、クラブヘッド100をシャフト108に固定するためのホーゼル106をさらに含む。
【0052】
クラブヘッド100のスコアライン104は、トゥ部分114とヒール部分116との間で互いに平行に延びる。クラブヘッド100のような典型的なクラブヘッドでは、打撃フェース102は単一の均質な金属材料の一体要素を備え、その結果、スコアライン104は打撃フェース102を部分的に画定する一体構造の打撃フェース102内に形成される。例えば、打撃フェース102がステンレス鋼を含む場合、スコアラインは、打撃フェース102に機械加工され、したがって、打撃フェース102と同じステンレス鋼のスコアライン面を含む。
【0053】
さらに、従来認められている規制機関(例えば、USGA)は、スコアラインの形状および寸法を含むゴルフ用品の設計を管理している。したがって、ほとんどのスコアラインは、USGA規則の範囲内にある寸法および特性を有する。スコアラインの寸法および特性に関するUSGA規則は、USGA発行の「ゴルフ規則」の付属規則II、第5条に記載されている。「ゴルフ規則」、全米ゴルフ協会、2012年1月1日より有効、<http://www.usga.org/content/dam/usga/pdf/CompleteROGbook.pdf>(以下「ゴルフ規則」と呼ぶ)。スコアラインの寸法および特性、ならびにスコアラインの寸法および特性、特に本明細書で言及される特性および寸法に関する測定のガイドラインについての説明は、ゴルフ規則の155ページ~158ページに記載されている。
【0054】
ここで
図1Bを参照すると、
図1Bは、
図1Aのゴルフクラブヘッドの一部の断面図である。より具体的には、
図1Bは、
図1Aのクラブヘッド100の断面図である。クラブヘッド100は、トップ部分110、ソール部分112、打撃フェース102、およびスコアライン104(具体的には、スコアライン104a、104b)を含む。
図1Bから分かるように、打撃フェース102は単一の均質な金属材料の一体要素を備え、その結果、スコアライン104は一体構造の打撃フェース102内に形成され、打撃フェース102を部分的に画定する。さらに、
図1Bのゴルフクラブヘッドの一部の断面の一部の拡大斜視図を示す
図1Cは、この概念をさらに明確に示している。
【0055】
ここで
図2Aを参照すると、
図2Aは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
図2Aのクラブヘッド200は、スコアライン204を含む打撃フェース202を含む。スコアライン204は、例えば、スコアライン204aおよびスコアライン204bを含む。クラブヘッド200は、トゥ部分214、ヒール部分216、トップ部分210、打撃フェース面202に対向するリア部分217(図示せず)、およびソール部分212をさらに含む。クラブヘッド200は、シャフト(図示せず)にクラブヘッド200を固定するためのホーゼル206をさらに含む。
【0056】
ここで
図2Bを参照すると、
図2Bは、
図2Aのゴルフクラブヘッドの一部の断面図である。より具体的には、
図2Bは、
図2Aのクラブヘッド200の平面2B-2Bに沿った断面図である。
図2Bは、スコアライン204a、204bを含むスコアライン204、ソール部212、打撃フェース202、打撃フェース202に対向するリア部分217、およびクラブヘッド本体211を含む。スコアライン204の各々は、弾性インサート218を含む。打撃フェース202は、平面292を画定する。
【0057】
クラブヘッド本体211は、金属材料、複合材料、ポリマー材料、炭素繊維材料、またはクラブヘッド200での使用に適した任意の他の材料を含む任意の数の異なる材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、クラブヘッド本体211は、打撃フェース202およびスコアライン204a、204bの少なくとも一部と同じ材料で形成されてよい。例えば、クラブヘッド本体211がステンレス鋼などの金属材料で形成される場合、打撃フェースに加えてスコアライン204の側壁の少なくとも一部も同じ金属材料で形成されてもよい。
【0058】
スコアライン204は、例えば、フライス加工、掘削、またはブラスト加工によって打撃フェース202に機械加工されてよく、または打撃フェース202の作製時に電鋳もしくは鋳造されてよい。様々な異なる製造方法について、
図3A~
図5Dを参照しながらより詳細に以下に説明する。
【0059】
ここで
図2Cおよび
図2Dを参照すると、
図2Cおよび
図2Dは、
図2Bのゴルフクラブヘッドの一部の断面の一部の拡大斜視図を含む。より具体的には、
図2Cおよび
図2Dは、
図2Bの断面の同じ拡大部分を示す。
図2Cおよび
図2Dは、側壁224a、基部222a、移行部分220a、および縁部226aを含むスコアライン204aを含む。スコアライン204bは、弾性インサート218b、側壁224b、基部222b、移行部分220b、および縁部226bを含む。
【0060】
スコアライン204は、対称断面を有することに留意されたい。結果として、例えば、スコアライン204aは、側壁224aに対向する実質的に鏡像の側壁と、縁部226aに対向する実質的に鏡像の縁部と、移行領域220aに対向する実質的に鏡像の移行領域とを含む。
図2Aおよび
図2Bの打撃フェース202上のスコアライン204の各々の追加のスコアラインは、同様の構造を含む。このような対称構造が好ましいが、他の構成も可能である。例えば、移行領域220a、220bは、打撃フェース202の平面292に対して異なる深さに位置してよい。代替的に、または追加的に、スコアライン204は、その長さに沿って、および/または打撃フェース202上のスコアラインごとに、および/または、例えば、アイアン型クラブヘッドの同じセットの段階的にロフト角が付けられたクラブヘッド上の同様に位置決めされたスコアライン間で、深さ、幅断面積、または他の寸法が異なってよい。
【0061】
スコアライン224a、224bは、弾性インサート218a、218bをそれぞれ含む。弾性インサート218a、218b(以下、弾性インサート218と総称する)は、注入してその後にフライス加工、予め作製して挿入などを含む様々な方法によってスコアライン204内に設置されてよい。様々な異なる方法について、
図3A~
図5Dを参照しながらに以下でより詳細に説明する。弾性インサート218は、例えば、ポリマー、発泡体、ゴム、ゴム発泡体、樹脂、または任意の他の適切な材料を含んでよい。例えば、以下に説明するように、弾性インサート218は、サーリン(Surlyn)材料または熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含んでよい。弾性インサート218は、好ましくは10ショアD~80ショアD、より好ましくは30ショアD~75ショアD、さらにより好ましくは50ショアD~70ショアD、最も好ましくは約66ショアDのデュロメータ硬さを有する。ほとんどのゴルファーにとっては、バックスピンの増加およびより柔らかなフィーリングは、ウェッジ型ゴルフクラブのようなより大きいロフト角付きのクラブ(すなわち、ロフト角46度~64度)の一般に望ましい特性であるが、大きいロフト角付きのクラブに比べて少ないバックスピンおよび柔らかくないフィーリングは、例えば、従来のアイアン型のゴルフクラブセットのロフト角のようなより小さいロフト角付きのクラブ(すなわち、20度~45度のロフト角)の一般に望ましい特性である。したがって、46度~64度のロフト角を有するゴルフクラブ用の弾性インサート218は、好ましくは70ショアD未満、より好ましくは20ショアD~70ショアD、さらにより好ましくは30ショアD~65ショアDのデュロメータ硬さを有する。20度~45度のロフト角を有するゴルフクラブ用の弾性インサート218は、好ましくは40ショアDをより高いデュロメータ硬さ、より好ましくは40ショアD~90ショアD、さらにより好ましくは50ショアD~80ショアDのデュロメータ硬さを有する。
【0062】
さらに、弾性インサート218のフォームは、様々な色を含んでよい。例えば、弾性インサート218の各々は、同一の色を含んでよい。いくつかの実施形態では、色は、例えば、打撃フェース202およびスコアライン204の金属色のような弾性インサート218と周囲の材料とのコントラストを形成するように選択されてよい。色の一例は、Srixon(登録商標)ボールで使用されているのと同様のツアーイエロー、ネオングリーン、ネオンオレンジ、またはダークブルーとしてよい。コントラストを形成する色を利用することにより、スコアライン204は、より大きく、そしてより見やすくなり、スピンの増加およびより柔らかなフィーリングを含むクラブヘッド潜在的な特性をゴルファーに示す。しかしながら、他の実施形態では、弾性インサート218の色は、より伝統的なクラブヘッド外観を作り出すために、周囲の材料の色と同様の色としてよい。このような弾性インサート218の色の選択は、クラブヘッド300,400,500,600,700、800のインサートを含む本開示の全ての弾性インサートに適用されることに留意されたい。
【0063】
弾性インサート218は、スコアライン204の少なくとも一部を形成する。例えば、弾性インサート218aは、側壁224aの一部およびスコアライン204aの基部222a全体を形成する。
図2Bにおいて、弾性インサート218aは、側壁224aの下部を形成し、弾性インサート218aが終端し、かつ打撃フェース202の金属材料を含む側壁224aの上部が始まる移行領域220aまで延びる。したがって、スコアライン204は、打撃フェース202の材料から形成された第1材料と、弾性インサート218から形成された第2材料との少なくとも2つの材料を含む。
【0064】
移行部分220a、220b(以下、移行部分220と総称する)は、側壁224の弾性インサート218部分と側壁224の残りの上部との間で滑らかで均一な移行部を形成する。移行部分220は、側壁224上の任意の点で始まってよい。例えば、以下でより詳細に説明するように、弾性インサート218は、側壁224の全高の25%を形成してよく、打撃フェース202の材料は、側壁224の残りの75%を形成してよい。
【0065】
本開示は、スコアライン204を2つの材料のみに限定することを意図するものではなく、任意の数の材料がスコアライン204に利用され得ることに留意されたい。例えば、スコアライン204aを参照すると、基部222aは、弾性インサート218aによって形成される第1の材料を含んでよく、側壁224aの下部は、第1の材料とは異なる第2の弾性インサート(図示せず)によって形成される第2の材料を含んでよく、側壁224aの上部は、打撃フェース202の材料を含んでよい。結果として、スコアライン204の各々は、クラブヘッド200を使用したゴルフショット時に所望のスピンを生成するために、いくつかの異なる材料を含む層状構造を有し得る。さらに、スコアライン204の異なるスコアラインは、スコアラインがトップからソール方向のどこに配置されるか、スコアラインのどの部分がヒールからトウ方向にあると見なされるかに応じて、異なる材料組成および/または特性を有してよい。例えば、打撃フェース202のトップ部分210、トゥ部分214、およびヒール部分216の近くのスコアラインは、ミスショットに対してスピンを減少させるために弾性インサート218用により弾性のある材料を含んでよく、打撃フェース202の中心部およびソール部分212の近くのスコアラインは、打撃フェース202の芯の近くで打たれたショットに対してスピンを増加させるために、弾性インサート218用に弾力の低い材料を含んでよい。代替的に、または追加的に、同じように位置決めされたスコアライン204の材料特性および/または組成は、例えば、アイアン型クラブヘッドのセットの段階的にロフト角が付けられたクラブヘッド間で異なってよい。例えば、より高い弾性のある材料は、バックスピンがより望ましい特徴であり得るアイロン型クラブヘッドの相関セットのより大きいロフト角付きのクラブヘッドに適用されてよい。
【0066】
ここで
図2Cをより詳細に参照すると、
図2Cは、クラブヘッド200の打撃フェース202およびスコアライン204の様々な特徴に対する様々な寸法および特性を含む。
【0067】
幅w1は、初期溝の基部の幅を画定する。
図3B~3Eの少なくとも特徴部330a、330bならびに
図4B~4Dの特徴部430a、430bを参照しながら、初期溝について、より詳細に後述する。幅w1は、好ましくは0.36mm~1.01mm(0.014インチ~0.040インチ)、より好ましくは0.41mm~0.89mm(0.016インチ~0.035インチ)、最も好ましくは0.46mm~0.61mm(0.018インチ~0.024インチ)である。弾性インサート318は、スコアライン204の基部を形成するので、初期溝の基部の幅w1の幅は、スコアライン204の基部222の幅w2以上であることが好ましい。さらに、スコアライン204の側壁224は収束壁としてはならないと規定したゴルフ規則の側壁形状要件のために、幅w1は、スコアライン204の幅w3に以下であることが好ましい。スコアライン204の幅w3は、ゴルフ規則に概説されているように、30度測定法を用いて測定されるが、これについては以下でさらに説明する。しかしながら、本開示の実施形態に応じて、幅w1は幅w2未満としてよく、幅w3は幅w1未満としてよい。そのような実施形態では、弾性インサート218を含むスコアライン204の全体的な設計は、ゴルフ規則に概説されているスコアラインの寸法および特性に確実に適合するように変更され得る。
【0068】
幅w2は、スコアライン204の基部222の幅として定義される。上述したゴルフ規則に概説されているような収束側壁224に関する同じ規則により、スコアライン204の基部222の幅w2はスコアライン204の幅w3以下であることが好ましい。しかしながら、さらに、幅w2は、ゴルフ規則に概説されている溝の形状規則に従うために、0.89mm(0.035インチ)未満であることが好ましい。このように、幅w2は、好ましくは0.36mm~0.89mm(0.014インチ~0.035インチ)、より好ましくは0.41mm~0.76mm(0.016インチ~0.030インチ)、最も好ましくは0.46mm~0.61mm(0.018インチ~0.024インチ)である。この幅w2の寸法範囲は、スコアライン204の断面に沿った任意の点におけるスコアライン204の最大幅がゴルフ規則に概説されている要件に適合すると同時に、インパクト時にスピンを増加させるのを助ける発散側壁224を可能にするので、好ましい。さらに、この寸法範囲は、ゴルフ規則に概説されているスコアライン204間の間隔に関する要件も考慮に入れており、インパクト時にゴルフボール上の好ましいスピン量およびゴルファーにとっての好ましいフィーリングを生成するスコアライン204の幾何学的形状と打撃フェース202の表面積との好ましい比率を生成する。
【0069】
弾性インサート218の距離d1は、スコアライン204の基部222を構成する弾性インサート218の一部と弾性インサート218の基部自体(
図2Dの実施形態では、初期溝の基部に位置する)との間の距離として定義される。弾性インサート218の距離d1および材料は、ゴルフボールとのインパクト時の変形特性を要因の1つとしてとして決まる。より具体的には、弾性インサート218の変形、特に、圧縮変形が大きいほど、ゴルフボールとのインパクト時の湿度および異物との相互作用に対する全体的な反応性が高まり、したがって、インパクト時のスピン量の増加およびより柔らかいフィーリングを生み出す。したがって、距離d1は、ゴルフボールとのインパクト時にゴルフボールに付与される所望のスピン量およびゴルファーにとっての所望のフィーリングと組み合わせて、弾性インサート218を作成する際に使用される材料の硬さおよび弾性を含む様々な要因に基づいて異なり得る。上述したように、バックスピンの増加およびより柔らかいフィーリングは、例えば、ウェッジ型ゴルフクラブのようなより大きいロフト角付きのクラブ(すなわち、46度~64度のロフト角)の一般に望ましい特性であるが、大きいロフト角のクラブに比べて少ないバックスピンおよび柔らかくないフィーリングは、例えば、従来のアイアン型ゴルフクラブセットのロフト角のように、より小さいロフト角付きのクラブ(すなわち、20~45度のロフト角)の一般に望ましい特性である。
【0070】
したがって、異なるロフト角のゴルフクラブにわたって所望のスピン量およびフィーリングを生み出すために、弾性インサート218に使用される材料の弾性の調整および弾性インサート218の距離d1の調整が行われ得る。一般に、距離d1は、好ましくは0.23mm~0.61mm(0.009インチ~0.025インチ)、より好ましくは0.30mm~0.56mm(0.012インチ~0.022インチ)、最も好ましくは0.36mm~0.51mm(0.014インチ~0.020インチ)である。インパクト時により多くのスピンが望まれる実施形態では、距離d1は、弾性インサート218の変形能力が大きくなるように、上記範囲の上端とし得る。例えば、そのような実施形態では、距離d1は、好ましくは0.38~0.61mm(0.015インチ~0.025インチ)、より好ましくは0.51mm~0.61mm(0.02インチ~0.025インチ)、最も好ましくは約0.53mm~0.58mm(0.21インチ~0.023インチ)である。しかし、より少ないスピンが望まれる実施形態では、距離d1は、弾性インサート218の変形能力が小さくなるように、上記の範囲の下端のとし得る。例えば、そのような実施形態では、距離d1は、好ましくは0.21mm~0.38mm(0.009インチ~0.015インチ)、より好ましくは0.25mm~0.36mm(0.01インチ~0.014インチ)、最も好ましくは0.28mm~0.33mm(0.011インチ~0.013インチ)である。
【0071】
さらに、弾性インサート218の材料の弾性は、距離d1を要因の1つとして決まる。弾性インサート218の材料がより柔らかい材料である場合、例えば、材料がより硬い材料である場合と同じ変形を生成するために距離d1を大きくする必要はない。このような例では、弾性インサート218が40ショアD~60ショアDのデュロメータ硬さを有する場合、距離d1は、0.38mm~0.53mm(0.015インチ~0.021インチ)であることが好ましい。弾性インサート218の材料がより硬い材料である場合、例えば、材料がより柔らかい材料である場合よりも所要の変形を生成するために、距離d1をより大きくする必要があり得る。例えば、弾性インサート218が70ショアD~80ショアDのデュロメータ硬さを有する場合、距離d1は、0.51mm~0.61mm(0.02インチ~0.025インチ)であることが好ましい。上述の範囲は、弾性インサート218の十分な耐久性を提供すると同時に、さらに弾性インサート218の所望の弾性が上述したゴルファーのフィーリングおよびスピンの要求を達成することを可能にする。
【0072】
さらに、距離d1は、打撃フェース202上の異なる位置ごとの所望のスピンおよびフィーリングの特性に応じて、クラブヘッド200の打撃フェース202上の異なる位置で異なり得る。例えば、距離d1は、より少ないスピンが望まれる打撃フェース202上の位置ではより小さく、より多くのスピンが望まれる打撃フェース202上の位置ではより大きくしてよい。ミスショットは、打撃フェース202のトゥ側、ヒール側、ソール側、またはトップライン側で打撃されることが多いので、打撃フェース202上のこれらの位置の1つまたは複数の位置における距離d1を小さくすることが望ましい場合がある。同時に、ミスショットが頻繁に発生する場合に、より柔らかいフィーリングを作り出し、ミスショット時にゴルファーが感じる「ちくりとした痛み(sting)」の一部を除去するために、材料の弾性が高められる場合がある。距離d1が個々のスコアライン204または異なるスコアライン204内の異なる位置で異なる実施形態では、w1、w2、d2、d3、およびw3の値は一貫して同じでなければならず、d1の値および結果としてd4の値のみが変化しなければならない。すなわち、初期溝(
図3B~
図3Eおよび4B~
図4Dを参照しながらより詳細に後述する)はあまり深くないが、ゴルフ規則に概説されているスコアラインの特性および寸法に適合するために、スコアライン204の断面は、打撃フェース202上の各スコアライン204に対して均一のままとなる。
【0073】
上述したように、スコアライン204の側壁224は、異なる材料で形成されてよい。例えば、側壁224は、部分的に弾性インサート218によって形成されてよく、部分的に打撃フェース202の金属材料によって形成されてよい。したがって、スコアライン204の全高は、側壁224の弾性インサート218部分の距離d2と、側壁224の金属打撃フェース202の材料部分の距離d3との組み合わせとして定義される。距離d2は、スコアライン204の基部222から弾性インサート218の最上部までの距離として定義される。距離d3は、弾性インサート218の最上部から打撃フェース202の平面292までの距離として定義される。ゴルフ規則では側壁224の全高が0.51mm(0.020インチ)未満であることが必要であることから、側壁の全高(d2+d3)は、好ましくは0.30mm~0.51mm(0.012インチ~0.020インチ)、より好ましくは0.33mm~0.46mm(0.013インチ~0.018インチ)、最も好ましくは0.36mm~0.43mm(0.014インチ~0.017インチ)である。
【0074】
個々の距離d2、d3の決定は、クラブヘッド200の所望の性能特性に依存する。例えば、上述したように、いくつかの実施形態では、ゴルフボール上のより多くのスピンが望まれる。そのような実施態様では、側壁224の弾性インサート218部分の距離d2は、打撃フェース202の金属材料および側壁224の金属材料部分と比較してインパクト時の圧縮変形を増加させるために大きくされてよい。しかし、より少ないスピンが望まれる実施形態では、距離d2は、インパクト時の圧縮変形を減少させるために小さくされてよい。スピンを増加させるための弾性インサート218の変形に加えて、弾性インサート218の材料もまた、インパクト時に生成されるスピンを要因の1つとして定められてもよい。例えば、弾性インサート218の材料は、打撃フェース202の材料よりも高い静摩擦係数を有し、それによりゴルフボールにより大きなスピンを付与することができる。したがって、スピンの増加が望まれる場合、側壁224の弾性インサート218部分の距離d2は、側壁224のより大きな部分がこの増加した静摩擦係数を有するように大きくされてよい。このような例では、弾性インサート218の圧縮変形特性に加えて、弾性インサート218の摩擦の増加は、インパクト時のゴルフボールの所望のスピンを増加させるために同時に作用し得る。
【0075】
距離d2は、好ましくは側壁224の全高の10%~75%、より好ましくは側壁224の全高の20%~65%、最も好ましくは側壁224の全高の30%~50%を含んでよい。上記で特定された範囲は、スコアライン204がクラブヘッド200の寿命にわたって耐久性を維持することを可能にすると同時に、インパクト時に所望の性能利点(例えば、スピン量およびフィーリング)を提供する。例えば、距離d2が上記の特定の範囲外である場合、スコアライン204の静的寸法がゴルフ規則に概説されているスコアラインの寸法および特性の範囲外にある点に対する反復インパクトの後に、スコアライン204は永久的に変形し得る。距離d2に対する上記の特定の範囲の結果として、側壁224の打撃フェース202の金属材料部分の距離d3は、スコアライン204の形状および構造がクラブヘッド200の寿命にわたって維持されるように十分に大きくなる。距離d3によって画定される側壁224の上部が適切な寸法になるためには、ゴルフボールとの最初のインパクトが主に打撃フェース202とスコアライン204の側壁224の上部とによって吸収されることが必要である。
【0076】
いくつかの実施形態では、側壁224の弾性インサート218部分の距離d2は、スコアライン204の全高、またはスコアライン204の実質的に全高に等しくてされてよいことに留意されたい。そのような実施形態では、距離d3はゼロまたは無視できるほど小さい値であり、距離d2は側壁224の全高を占め得る。これらの実施態様は、フルスイングからのインパクトを受けないクラブヘッドにとっては好ましいが、例えば、スピンの増加が望ましく、インパクト時にスコアライン204および打撃フェース202にあまり力が付与されない、50度より大きいロフト角を有するウェッジ型クラブヘッドにとって好ましい場合がある。
【0077】
反対に、いくつかの実施形態では、側壁224の打撃フェース部分の距離d3は、スコアライン204の全高、またはスコアライン204の実質的に全高を占め得ることに留意されたい。そのような実施形態では、距離d2はゼロまたは無視できるほど小さくなり得る。例えば、この種の実施形態は、クラブヘッド200が、ドライビングアイアンのような反復フルスイングを受けるより小さいロフト角(例えば、30度未満)を有する場合に利用されてよい。そのような実施形態では、弾性インサート218は、弾性インサート218がスコアライン204の基部222のみを形成するように、初期溝内に設置されてよい。
【0078】
距離d4は、初期溝の全高、すなわち初期溝の深さとして定義される。距離d4は、d1、d2、およびd3の所望の寸法からの直接求められたものである。距離d4は、好ましくは0.51mm~1.02mm(0.02インチ~0.04インチ)、より好ましくは0.64mm~0.91mm(0.025インチ~0.036インチ)、最も好ましくは0.71mm~0.86mm(0.028インチ~0.034インチ)である。
【0079】
抜き勾配αは、側壁224と、打撃フェースの平面292に垂直に延びる仮想垂直線との間の角度として定義される。ゴルフ規則では、スコアライン204の断面積AのピッチP(w3+S)に対する比が0.76mm2(0030インチ2)未満でなければならない。さらに、側壁224は収束壁としてはならないというゴルフの規則の要件に従うために、抜き勾配αは0度以上でなければならない。勾配αは、好ましくは0度~35度、より好ましくは10度~25度、最も好ましくは14度~19度である。抜き勾配αの上述の範囲は、スコアライン204のピッチP(w3+S)を減少させると同時に、スコアライン204の所望の横断面積Aを可能にし、それと同時にゴルフ規則への適合性を維持する。さらに、0度より大きな勾配を含むことにより、スコアライン204の側壁224のより大きな表面積がインパクト時にゴルフボールに接触し、最終的に、より多くのスピンを生成することが可能になる。
【0080】
各側壁224は、それぞれが有効半径rを含む2つの縁部226を有し、縁部226のそれぞれは、ゴルフ規則で定義されているように、実質的に円形の形状である。さらに、スコアライン204の縁部226の有効半径rは、ゴルフ規則の157ページに概説されている定義に準拠して測定される。ゴルフ規則を要約すると、有効半径は0.25mm(0.010インチ)より大きく、0.51mm(0.020インチ)未満でなければならず、0.025mm(0.001インチ)のずれは許容し得る。このことを念頭において、ロフト角が25度以上のクラブヘッドのみが、ゴルフ規則に概説されている有効半径基準に従う。
【0081】
設計の観点から、有効半径rを増加させることにより、多くの場合、以下でより詳細に説明するように、スコアライン204の幅w3が増加する。このことは、スコアライン204の縁部226と基部222との間の幅が増加したスコアライン204を形成する設計者の能力に悪影響を与え得る。したがって、スコアライン204の有効半径rは、好ましくは0.23mm~0.53mm(0.009インチ~0.021インチ)、より好ましくは0.23mm~0.38mm(0.009インチ~0.015インチ)、最も好ましくは0.23mm~0.28mm(0.009インチ~0.011インチ)である。いくつかの実施形態では、最も鋭い縁部226を形成して、そのことによりインパクト時にゴルフボールに付与されるスピンの量を増加させるために、可能な限り0.25mm(0.010インチ)に近い有効半径rを有するように縁部226を設計することが好ましい。しかしながら、特定のクラブヘッド200がインパクト時にゴルフボールにより少ないスピンを付与するように意図されている場合、有効半径rは0.51mm(0.020インチ)の限界に向かって増加され得る。
【0082】
スコアライン204の幅w3は、ゴルフ規則に概説され、USGAのファイルに記録されている30度測定法に準拠して定義される。幅w3は、縁部226の幅w2、抜き勾配α、および有効半径rに基づく。スコアライン204の幅w3は、ゴルフ規則の要件に基づいて0.89mm(0.035インチ)を超えてはならない。したがって、幅w3は、好ましくは0.51mm~0.89mm(0.02インチ~0.035インチ)、より好ましくは0.56mm~0.86mm(0.022インチ~0.034インチ)、最も好ましくは0.64mm~0.79mm(0.025インチ~0.031インチ)である。上記の範囲は、好ましい断面積A対ピッチP比を達成するスコアライン204を形成したいとの要望に基づいて決定される。さらに、打撃フェース202上に最大断面積のスコアライン204をできる限り多く含みたいと要望される場合があり、またゴルフ規則では、ゴルフ規則に概説されているように、隣接するスコアライン204の縁部間の距離Sはスコアライン204の幅w3の3倍より大きくする必要があるので、距離Sが不必要に大きくならないように幅w3を寸法決めする必要がある。有利な断面積A対ピッチP比が達成されるように幅w3および距離Sを寸法決めすることにより、様々な芝条件にわたって、より多くの量のスピンがゴルフボールに付与され得る。
【0083】
打撃フェース202は、打撃フェース202上の隣接するスコアライン204の縁部226間の距離を画定する距離Sを含む。距離Sは、打撃フェース202上のスコアライン204のピッチP全体を要因の1つとして定まる。ゴルフ規則では、距離Sがスコアライン204の幅w3の3倍より大きく、少なくとも0.075インチであることが必要である。いくつかの実施形態では、より大きい断面積Aのスコアライン204を形成したい(これはw3の値の増加を必要とし得る)との要望により、また距離Sの値はゴルフ規則に従うw3値に基づいて少なくとも部分的に決定されることから、距離Sを最小1.91mm(0.075インチ)にすることは常に望ましいとは限らない。好ましくは、距離Sは、1.91mm~2.80mm(0.075インチ~0.110インチ)、より好ましくは2.03mm~2.54mm(0.080インチ~0.100インチ)、最も好ましくは2.26mm~2.46mm(0.089インチ~0.097インチ)である。
【0084】
スコアライン204は、
図2Dのスコアライン204bに示されているように、打撃フェースの平面292、スコアライン204の側壁224、および基部222によって区切られた面積として定義された断面積Aを含む。スコアライン204は、スコアライン204の断面積Aが、ゴルフクラブのための所望のスピン条件を作成するのに必要な大きさであり、それと同時にゴルフ規則のスコアライン寸法要件に適合するように、設計される。ゴルフ規則では、A/P比が0.076mm
2(0.0030インチ
2)未満である必要があり、Aはスコアライン204の断面積であり、P(w3+S)は打撃フェース202上のスコアライン204のピッチである。A/P比を最大にすることにより、インパクト時のゴルファーによる所望のフィーリング体験に加えて、インパクト時にゴルフボールに付与される所望のスピンを達成することができる。このように、0.076mm
2(0.0030インチ
2)に近いA/P比を生み出すのが望ましい。いくつかの実施形態では、0.076mm
2(0.0030インチ
2)の閾値への到達は、断面積Aを最大化することによって達成され得るが、他の実施形態は、ピッチPを最小化する場合がある。例えば、ゴルフクラブが多くの異物を含む湿潤状態で使用される場合、ピッチPを最小化するより、断面積Aを最大化する方が好ましい場合がある。異物がゴルフショットに影響を与えにくい乾燥状態では、断面積Aを最小化すると同時にピッチPを最小化して、打撃フェース202上のスコアライン204の総数を増やすことが望ましい場合がある。しかし、いずれの例においても、A/P比を最大化することが好ましい。
【0085】
ここで
図3Aを参照すると、
図3Aは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドのスコアラインを製造するステップを示すフローチャートである。フローチャート390によって示されているアプローチおよび技術は、本開示の少なくとも1つの実施形態を説明するのに十分である。しかし、本開示の他の実施形態は、フローチャート390に示されているものとは異なるアプローチおよび技術を利用してよい。さらに、フローチャート390は
図3B~
図3Eに関して説明されているが、開示されている発明概念は、
図3B~
図3Eに関して示され説明されている特定の特徴によって限定されることを意図するものではない。さらに、
図3Aに示されている方法に関して、本出願における発明の特徴の議論を不明瞭にしないために、特定の詳細および特徴が省略されている場合があることに留意されたい。
【0086】
上述したように
図2C~
図2Dの拡大断面図の寸法および特性ならびに付随する理論的根拠は、
図3Eおよび
図4Dの拡大断面図にも適用されることに留意されたい。言い換えれば、
図2Cおよび
図2Dは、
図3Eおよび4Dと実質的に同一である。したがって、
図2Cおよび
図2Dに関して説明した寸法および特性、例えば、これらに限定されないが、初期溝寸法、最終溝寸法、および弾性インサート寸法および特性(例えば、硬さ)は、
図3Eおよび
図4Dにも適用される。
【0087】
フローチャート390は(392において)、クラブヘッドの打撃フェースを作製するステップを含む。例えば、
図3Bを参照すると、打撃フェース302は、
図2Aのクラブヘッド200のようなクラブヘッドに作製される。打撃フェース302は、例えば、これらに限定されないが、フライス加工、スタンピング、鋳造、サンドブラスト加工、電鋳、または当技術分野で周知の他の作製方法を含む様々な方法を用いて作製されてよい。
【0088】
フローチャート390は(394において)、複数の初期溝をクラブヘッドの打撃フェースに機械加工するステップを含む。例えば、
図3Cを参照すると、
図2Aのクラブヘッド200のようなクラブヘッドの打撃フェース302に初期溝330a、330b(以下、初期溝330と総称する)が機械加工される。初期溝330は、フライス加工、掘削、パンチング、ブラスト加工、または当該技術分野で知られている他の適切な方法によって機械加工され得る。初期溝330は、側壁334a、334b(以下、側壁334と総称する)を有する。初期溝330の各々は、2つの側壁を有し、各々の初期溝の第2の側壁は、初期溝330a、330bそれぞれの基部332a、332b(以下、基部332と総称する)を介して鏡像であることに留意すべきである。さらに、初期溝330a、330bは、基部332a、332bそれぞれを有する。
【0089】
側壁334は、距離d4によって画定される仰角を有する。距離d4は、
図2Dに関して定義された距離d2、d3と同様に、最終溝304a、304b(以下、最終溝304と総称する)の所望の仰角に基づいて決定される。さらに、距離d4は、
図2Dの弾性インサート218の距離d1と同様に、弾性インサート318a、318b(以下、弾性インサート318と総称する)の所望の深さに基づいて決定される。したがって、距離d4は、好ましくは0.51mm~1.01mm(0.020インチ~0.040インチ)、より好ましくは0.64mm~0.91mm(0.025インチ~0.036インチ)、最も好ましくは0.71mm~0.86mm(0.028インチ~0.034インチ)である。
【0090】
初期溝330の側壁334は、
図2Bの打撃フェース202の平面292のような打撃フェースの平面に垂直な仮想線に対して測定された抜き勾配βを有する。いくつかの実施形態では、初期溝330の側壁334は、角度βが0度になるように打撃フェース302の平面に垂直としてよいが、他の実施例では、側壁334の抜き勾配βは0度より大きくしてもよい。いくつかの実施形態では、抜き勾配βが負である場合もあるが、側壁334が収束壁である場合、製造難易度が増すため、角度βは0度以上であることが好ましい。
【0091】
いくつかの実施形態では、初期溝330の側壁334の角度βはそれぞれ、最終溝304の側壁324の抜き勾配αと同じか、または実質的に同じである場合がある。そのような実施形態では、初期溝330の側壁334の少なくとも一部は、最終溝304の側壁324の少なくとも一部として機能し得る。しかし、角度βが角度αと同じでないような実施形態では、側壁334は最終溝304の側壁324の一部を構成しない。そのような実施形態では、最終溝304の側壁324は、
図3Eに関して以下でより詳細に説明する側壁334の場合とは異なる追加のステップで製造される可能性がある。
【0092】
再び
図3Cを参照すると、幅w5は、
図2Dの幅w3を測定するために使用されたのと同じ方法である、ゴルフ規則に概説されている30度測定法に従って測定された初期溝330の幅である。幅w3は最終溝304の最終幅である(最終溝304の幅は、初期溝330の製造後の製造ステップ、例えば、材料除去ステップの結果として、初期溝330と等しい幅であるか、またはそれより広い幅のいずれかである)ので、幅w5は最終溝304の幅w3以下であることが好ましい。最終的には、初期溝330の幅w5が最終溝304の幅w3以下となるように、初期溝330の基部332の抜き勾配βおよび幅w1が決定されなければならない(
図3E)。このように、幅w5は、好ましくは0.51mm~0.89mm(0.020インチ~0.035インチ)、より好ましくは0.56mm~0.86mm(0.022インチ~0.034インチ)、最も好ましくは0.64mm~0.79mm(0.025インチ~0.031インチ)である。
【0093】
距離S2は、初期溝330の隣接する縁部間の距離として定義される。距離S2は、幅w5と共に、初期溝330のピッチP2を画定する。いくつかの実施形態では、初期溝330のピッチP2は、最終溝304のピッチPと同じであり、最終溝304のピッチPについては、以下でより詳細に説明される。好ましくは、距離S2は、1.91mm~2.79mm(0.075インチ~0.110インチ)、より好ましくは2.03mm~2.54mm(0.080インチ~0.100インチ)、最も好ましくは2.26mm~2.46mm(0.089インチ~0.097インチ)である。
【0094】
側壁334の抜き勾配βが側壁324の抜き勾配αと同じであるようないくつかの実施形態では、幅w3および幅w5(
図2D参照)は実質的に同じであり、距離S2および距離Sは実質的に同じである。しかしながら、他の実施形態では、幅w3とw5とは異なり、および/または距離S2と距離Sとは異なる。いずれの場合も、幅w5の値の範囲は、幅w3の値の範囲とほぼ一致することが好ましく、距離S2の値の範囲は、距離Sの値の範囲とほぼ一致することが好ましい。しかしながら、これは、それぞれの実施形態について、幅w3と幅w5ならびに距離S2と距離Sが同じであることを意味するものではない。幅w5および距離S2に関して上述したように、これらの値は、所望の幅w1、抜き勾配β、および弾性インサート318ならびに最終溝304の所望の寸法および特性を含む様々な要因に依存する。
【0095】
初期溝の断面積A2は、基部332と、側壁334と、
図2Bの打撃フェース202の平面292のような打撃フェース302の平面とによって画定される面積として定義される。初期溝の断面積A2は、
図3Cの初期溝330aを充填するパターンによっても示される。例えば、初期溝330aは、打撃フェース302の平面と、側壁334aおよび側壁334aに対向する鏡像の側壁と、基部332aとによって画定される。したがって、距離d4、抜き勾配β、幅w1、および幅w5は、初期溝の断面積A2の設計の決定に役立つ。
図2Dに関して上述したように、ゴルフ規則では、打撃フェース上のスコアライン(すなわち、最終溝304)の断面積AのピッチP(A/P)に対する比が0.076mm
2未満(0.0030インチ
2)となる必要がある。本開示で説明されているように、最終溝/スコアラインは、ゴルフ規則に概説されている寸法および特性の要件に適合するように設計される。しかしながら、初期溝330は最終溝304ではないので、ゴルフ規則に概説されている寸法および特性の制約に拘束されない。従って、初期溝は、弾性インサート318を収容するために、P2=w5+S2の場合、0.076mm
2(0.0030インチ
2)より大きいA2/P2比を有するように設計されるので、最終溝304は、0.076mm
2(0.0030インチ
2)より大きいA2/P2比を有するように設計され得る。この初期溝330と弾性インサート318との組み合わせを形成する際に、最終溝304の1つまたは複数の表面は、弾性材料で形成される。この種の構造は、ゴルフボールとのインパクト時の流体および異物の取り込みを改善して、インパクト時にゴルファーにとってより良いフィーリングを与えることに加えて、インパクト時のスピン量を増加させることができ、それと同時にゴルフ規則の要件に依然として適合する。
【0096】
再び
図3Aを参照すると、フローチャート390は(396において)、複数の初期溝の各々の中に弾性インサートを設置するステップを含む。例えば、
図3Dを参照すると、弾性インサート318は初期溝330内に設置される。設置は、打ち込み、充填、注入、挿入、または当技術分野で周知の他の方法によって行われてよい。いくつかの実施形態では、弾性インサート318は、
図3Dに示されているような未完成の形態の初期溝330内に設置されてよい。しかしながら、他の実施形態では、弾性インサート318は、所望の形状および寸法に予め作製され、その後、初期溝330内に設置されてもよい。そのような実施形態では、弾性インサート318は、
図3Eに図示されているものと同様の寸法になるように予め作製されてもよいし、または最終溝304のゴルフ規則の要件に依然として適合する所望の任意の形状に適合するように予め作製されてもよい。
【0097】
弾性インサート318は、任意の適切な材料で作製されてよく、材料の選択は、様々な要因(例えば、弾性インサート318を初期溝330内に設置する方法を含むが、これに限定されない)に依存し得る。例えば、材料が注入されるように意図されている場合、弾性インサート318は、材料が溶融され、初期溝に注入され、その後、硬化することができるように、金属、プラスチック、または熱可塑性ポリウレタン(TPU)タイプの材料を含んでよい。このような場合、材料が金属材料である場合に、注入プロセスの間に打撃フェース302が決して溶融または変形しないように、打撃フェース302を構成する周囲の任意の金属材料の融点より低い融点を有する金属が選択されることが好ましい。別の例では、材料が挿入されるように意図されている場合、弾性インサート318は、予め作製されて初期溝330に挿入され得るように、ポリマーから作製されてもよい。このようなポリマー材料は、より高い静摩擦係数を提供し、そのことによりゴルフボールとのインパクト時の流体および異物をより多く取り込むことを可能にし得る、ポリウレタン、TPU、樹脂、ポリアミド、合成ゴムおよび/またはエラストマーを含み得る。弾性インサート318に利用され得る他の材料は、発泡体、ゴム発泡体、複合材、硬化プラスチック、または当技術分野で周知の任意の他の材料を含む。インサート材料の設置が固体の予め作製された部品の挿入によるものである場合、部品は、例えば、両面テープ、接着剤、または化学接着剤を用いて初期溝330内に固定されてよい。あるいは、圧入装置などの機械的締結具を使用してもよい。固定は、永久的なものでもよく、または、例えば、摩耗時の部品の交換を容易にするために一時的なものでもよい。
【0098】
弾性インサート318は、
図3Dでは単一の材料として示されているが、
図3Dの実施形態は、この点に関して限定的であることを意図するものではない。例えば、いくつかの実施形態では、弾性インサート318は、垂直に、横並びに、または任意の他の所望の組み合わせで、任意の数の材料を含んでよい。一例では、弾性インサート318はそれぞれ、硬化プラスチック材料が、上記で距離d4として定義された初期溝330の全高の25%を埋めるように、初期溝330内に設置される硬化プラスチック材料の第1の層を含んでよい。その後、初期溝330の全高の50%まで埋めるようにゴム材料の第2の層が初期溝330内に配置されてよい。そのような例では、最終溝304が機械加工された後、弾性インサート318は、硬化プラスチックの第1の層を含むベース322と、ゴム材料の第2の層を少なくとも部分的に含む側壁324とを有し得る。
【0099】
弾性インサート318を含む各々の最終溝304内の弾性インサートは、それぞれ異なる材料を含んでよい。弾性インサート318の材料および/または特性(例えば、硬さ)は、打撃フェース302上のどこに最終溝304が配置されるかに応じて異なり得る。例えば、打撃フェース302の中央領域のように、より多くのスピンが望まれる打撃フェース302の領域では、弾性インサートは、インパクト時に異物および流体をより多く取り込むことができ、そのことによりゴルフボール上のスピンを増加させる、より柔らかい材料(例えば、30ショアD~70ショアDのデュロメータ硬さ)を含んでよい。あるいは、打撃フェース302のトップ部分、ソール部分、ヒール部分、およびトゥ部分の近くのように、より少ないスピンが望まれる打撃フェース302の領域では、弾性インサートは、例えば、インパクト時の力の影響下での変形をより少なくすることによって、インパクト時にゴルフボールに付与されるスピンを減少させるように設計された、より硬い材料(例えば、50ショアD~70ショアDのデュロメータ硬さ)を含んでよい。
【0100】
異なる特性に加えて、最終溝304内の各々の弾性インサート318に異なる材料が使用されてよい。弾性インサート318の材料は、弾性インサート318が設置される最終溝304の部分に応じて異なり得る。例えば、最終溝304a内の弾性インサート318aは、典型的にミスショットが発生し、少ないスピンが望まれる場所である最終溝304aのトウ側とヒール側に硬化プラスチックを含んでよいが、典型的に正確なショットが発生し、より多くのスピンが望まれる場所である最終溝304aのトウ側とヒール側との間にゴムを含んでよい。特定の硬さおよび材料組成は、
図2A~
図2Dに関してより詳細に上述されている。
【0101】
したがって、打撃フェース302の中央領域に近接する弾性インサート318は、より柔らかい材料を含んでよいが、打撃フェース302のトゥ部分、ヒール部分、トップ部分、およびソール部分の周囲の弾性インサート318は、広範囲のインパクト領域にわたってゴルフボールに付与される所望のスピン量に対応するために、より硬い材料を含んでよい。しかしながら、これは限定的であることを意図したものではなく、具体的な実施形態および対象消費者に応じて、弾性インサート318の材料と特性と異なる関係が実現され得る。したがって、例えば、高ハンディキャップゴルファー(例えば、18+ハンディキャップ)向けのクラブヘッドとしては、より当たりが良くて柔らかいフィーリングを提供するために、ミスショットがより頻繁に発生するフェースの領域上の非常に柔らかい材料(例えば20ショアD~40ショアDのデュロメータ硬さ)の弾性インサート318が実現され得る。特定の硬さおよび材料組成は、
図2A~
図2Dに関してより詳細に上述されている。
【0102】
弾性インサート318は、
図3Dに示されているように、弾性インサート318が初期溝330に充填される、または過剰充填されるように、初期溝330内に設置されてよい。他の実施形態では、弾性インサート318は、打撃フェース302と同一面になるように初期溝330内に設置されてよい。さらに別の実施形態では、弾性インサート318は、弾性インサート318がゴルフ規則に従った寸法および特性を有する最終溝304を形成することができるのであれば、初期溝330内の任意の所望の寸法を有するように初期溝330内に設置されてよい。
【0103】
上述したように、弾性インサート318は、初期溝330内に設置される前に予め作製されてよい。そのような例では、弾性インサート318は、
図3Eに示されているような最終溝304用の弾性インサート318の最終寸法、または
図3Dに示されているような初期溝330に過剰充填した未完成の寸法を含む任意の初期寸法を有するように予め作製されてよい。
【0104】
フローチャート390は(398において)、打撃フェースに最終溝を形成するステップを含む。例えば、
図3Eを参照すると、打撃フェース302に最終溝304が形成される。最終溝304は、少なくとも弾性インサート318を最終寸法および形状に機械加工することによって形成されてよい。いくつかの実施形態では、上述したように、弾性インサート318は予め作製されてよい。そのような実施形態では、最終溝304は、打撃フェースおよび/または初期溝330を機械加工して、最終溝304の側壁324を形成することによって形成され得る。さらに、いくつかの実施形態では、初期溝330は、最終溝304の所望の寸法を有するように機械加工されてよい。そのような実施形態では、弾性インサート318が予め作製されていない場合、最終溝304を形成するステップは、弾性インサート318をその最終寸法および形状に機械加工するステップのみが必要であり得る。弾性インサート318が予め作製されている場合、弾性インサートを複数の初期溝のそれぞれに設置するステップを含むフローチャート300のステップ394は、追加の製造工程を必要とせずに最終溝304の形成ステップを構成し得る。
【0105】
最終溝304は、
図2A~
図2Dのスコアライン204にそれぞれ対応することに留意されたい。つまり、
図2A~
図2Dの打撃フェース202、縁部226、側壁224、基部222、移行部分220、および弾性インサート218はそれぞれ、
図3Eの打撃フェース302、縁部326、側壁324、基部322、移行部分320、および弾性インサート318に対応する。さらに、
図2A~
図2Dのスコアライン204の寸法および特性は、
図3Eの最終溝304の寸法および特性と一致する。
【0106】
ここで
図4Aを参照すると、
図4Aは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドのスコアラインを製造するステップを示すフローチャートである。フローチャート490によって示されているアプローチおよび技術は、本開示の少なくとも1つの実施形態を説明するのに十分である。しかしながら、本開示の他の実施形態は、フローチャート490に示されているものとは異なるアプローチおよび技術を利用する場合がある。さらに、フローチャート490は
図4B~
図4Dに関して説明されているが、開示されている発明概念は、
図4B~
図4Dに関して示され説明されている特定の特徴によって制限されることを意図するものではない。さらに、
図4Aに示されている方法に関して、本出願における発明的特徴の議論を不明瞭にしないために、特定の詳細および特徴が省略されている場合があることに留意されたい。
【0107】
上述したように、上述した
図2C~
図2Dの拡大断面図の寸法および特性ならびにそれに付随する理論的根拠は、
図4Dの拡大断面図に適用されることに留意されたい。言い換えれば、
図2Cおよび
図2Dは
図4Dと実質的に同一である。
【0108】
フローチャート490は(492において)、クラブヘッド内に複数の初期溝を含む打撃フェースを作製するステップを含む。例えば、
図4Bを参照すると、打撃フェース402は、初期溝430を含むように、
図2Aのクラブヘッド200のようなクラブヘッドに作製される。
図3A~
図3Eの実施形態とは異なり、初期溝430は、打撃フェース402と同時に作製される。打撃フェース402および初期溝430の作製は、例えば、鋳造、スタンピング、または電鋳によって行われてよい。
【0109】
打撃フェース402および初期溝430の寸法および特性の値の範囲は、上述した
図3Cの打撃フェース302および初期溝330のものに同様に適用されることに留意されたい。そのため、残りのステップ、例えば、フローチャート490のステップ494およびステップ496は、フローチャート390のステップ396およびステップ398とそれぞれ同一である。したがって、
図4B~
図4Dの打撃フェース402、縁部426、側壁424、基部422、移行部分420、弾性インサート418、最終溝404、初期溝430、基部432、および側壁434は、
図3C~
図3Eの打撃フェース302、縁部326、側壁324、基部322、移行部分320、弾性インサート318、最終溝304、初期溝330、基部332、および側壁334にそれぞれ対応する。さらに、
図2A~
図2Dのスコアライン204の寸法および特性は、
図4Dの最終溝404の寸法および特性と一致する。
【0110】
ここで
図5Aを参照すると、
図5Aは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
図5Aのクラブヘッド500は、最終溝504を含む打撃フェース502を含む。最終溝504は、例えば、最終溝504aおよび最終溝504bならびに入口穴538を含む。クラブヘッド500は、トゥ部分514、ヒール部分516、トップ部分510、打撃フェース502に対向するリア部分517(図示せず)、およびソール部分512をさらに含む。クラブヘッド500は、クラブヘッド500をシャフト508に固定するためのホーゼル506をさらに含む。
【0111】
入口穴538は、以下でさらに詳細に説明するアンダーカット溝530を機械加工するために、ドリルまたはミルビットが所望の深さまで入ることができるように構成される。より具体的には、いくつかの実施形態では、ドリルまたはミルビットの最大幅は、アンダーカット溝530のアンダーカット部分570を形成するビット部分の結果であり得るアンダーカット溝530および/または最終溝504の幅より広くしてよい。この幅の不一致に対応するために、ドリルまたはミルビットの入口点を形成するために、入口穴538が打撃フェース502に掘削またはフライス加工により形成されてよい。入口穴538は、打撃フェース502上の溝のトゥ部分514の近くに示されているが、いくつかの実施形態では、打撃フェース502上の溝のヒール部分516の近くに配置されてよい。溝のトウ部分514側またはヒール部分516側のいずれかに入口穴538を含むことによって、ミルビットは、打撃フェース502上に1つの出入口点のみを有する。したがって、例えば、入口穴538が溝のトウ部分514側に位置する場合、ミルビットは、ビットのアンダーカット部分が所定の距離だけ打撃フェースの下に沈むように下向きの入口穴538に入り、溝の所望の長さまで打撃フェース502を横切ってトゥからヒール方向に第1の通路を完成させ、その後、打撃フェース502を横切ってトゥからヒール方向に入口穴538に戻り、最後に、打撃フェース502から出る。
【0112】
あるいは、いくつかの実施形態では、入口穴538は、溝のトゥ部分514およびヒール部分516の両方に配置されてよい。そのような実施形態では、ミルビットは、トウ側またはヒール側のいずれかの入口穴538に入り、ヒールからトウ方向に打撃フェースを横切る単一の通路を形成し、次に、入口点として打撃フェース502の反対側の入口穴538から出てよい。
【0113】
アンダーカット溝530および最終溝504は、打撃フェースを横切ってトゥからヒール方向とは異なる方向に延び得ることに留意されたい。例えば、アンダーカット溝530および最終溝504は、クラブヘッド500のソールからトップ部分方向に打撃フェースに垂直に延びてよく、あるいは、所望のスピン特性およびクラブの型に応じて打撃フェース502を横切って任意の角度で延びてよい。したがって、フライス加工および/または掘削の経路は、アンダーカット溝530および最終溝504の所望のレイアウトに適合するように変化し得る。
【0114】
さらに別の実施形態では、入口穴538は必要でない場合がある。例えば、ドリルまたはミルビットが初期溝530または最終溝504の幅よりも広くない場合、入口穴538は必要ではない場合がある。例えば、最終溝504の断面を見たときに、ミルビットは、最小幅を有する最終溝504の断面の一部よりも狭い幅を有する場合があり、そのため最終溝504内に収まる、および/または通り抜ける。したがって、このような実施形態では、入口穴538は不要である。このような実施形態では、ミルビットは、例えば、ヒールからトウ方向に打撃フェース502に沿って第1の通路を形成し、その後、最終溝504と初期溝530とが、
図5D~
図5Gに関して以下に説明する最終溝504および初期溝530の寸法および特性のような所望の寸法および特性を有するように、第1の通路からオフセットされた第2の通路を形成する。
【0115】
さらに、
図5Aの実施形態は、ヒールからトゥまで延びる溝を含むが、この実施形態は限定的であることを意図するものではないことに留意されたい。したがって、最終溝504は、打撃フェース502上の任意の方向に延びてよい。例えば、最終溝504は、ゴルフボールとのインパクト時の所望のスピン特性に応じて、打撃フェース502にわたって、垂直方向に、またはある角度で延びてよい。
【0116】
ここで
図5Bを参照すると、
図5Bは、
図5Aのゴルフクラブヘッドの一部の断面図である。より具体的には、
図5Bは、平面5B-5Bに沿った
図5Aのクラブヘッド500の断面図である。
図5Bは、最終溝504a、504bを含む最終溝504と、ソール部分512と、打撃フェース502と、打撃フェース502に対向するリア部分517と、およびクラブヘッド本体511とを含む。最終溝504の各々は、弾性インサート518を含む。打撃フェース502は平面592を画定する。
【0117】
クラブヘッド本体511は、
図2A~
図2Dのクラブヘッド200と同様の材料である、金属材料、複合材料、ポリマー材料、炭素繊維材料、またはクラブヘッド500での使用に適した任意の他の材料を含む任意の数の異なる材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、クラブヘッド本体511は、打撃フェース502と同じ材料、および最終溝504a、504bの少なくとも一部と同じ材料で形成されてよい。例えば、クラブヘッド本体511がステンレス鋼などの金属材料で形成される場合、打撃フェース502の他に、最終溝504の側壁の少なくとも一部も同じ金属材料で形成されてよい。しかしながら、
図5Gに図示されるようないくつかの実施形態では、最終溝504は、全体に打撃フェース502と同じ金属材料で形成された側壁を有してよく、最終溝504の基部のみが弾性インサート518の材料で形成される。
【0118】
この実施形態では、スコアライン504は、例えば、フライス加工または掘削によって、打撃フェース502内に機械加工されことが好ましい。様々な異なる製造方法について、
図5C~
図5Gを参照してより詳細に以下に説明する。
【0119】
ここで
図5Cを参照すると、
図5Cは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドのスコアラインを製造するプロセスを例示するフローチャートである。フローチャート590によって示されているアプローチおよび技術は、本開示の少なくとも1つの実施形態を説明するのに十分である。しかし、本開示の他の実施形態は、フローチャート590に示されたものとは異なるアプローチおよび技術を利用してもよい。さらに、フローチャート590は
図5D~
図5Gに関して説明されているが、開示されてい発明概念は、
図5D~
図5Gに示され説明されている特定の特徴によって限定されることを意図するものではない。さらに、
図5Cに示される方法に関して、本出願における発明の特徴の議論を不明瞭にしないために、特定の詳細および特徴が省略されている場合があることに留意されたい。
【0120】
フローチャート590は(592において)、クラブヘッド内に打撃フェースを作製するステップを含む。例えば、
図5Dを参照すると、打撃フェース502は、
図5Aのクラブヘッド500のようなクラブヘッドに作製される。打撃フェース502は、フライス加工、スタンピング、鋳造、サンドブラスト加工、電鋳、または当技術分野で周知の他の作製方法を含むが、これに限定されない様々な方法を用いて作製されてよい。
【0121】
フローチャート590は(594において)、クラブヘッドの打撃フェースに複数のアンダーカット溝を機械加工するステップを含む。例えば、
図5Eを参照すると、アンダーカット溝530a、530b(以下、アンダーカット溝530と総称する)は、
図5Aのクラブヘッド500のようなクラブヘッドの打撃フェース502に機械加工される。アンダーカット溝530は、フライス加工、掘削、パンチング、ブラスト加工、または当技術分野で周知の他の適切な方法によって機械加工されてよい。アンダーカット溝530は、側壁534a、534b(以下、側壁534と総称する)をそれぞれ有する。各々の側壁534は、アンダーカット部分570を有する。アンダーカット溝530の各々は、2つの側壁と2つのアンダーカット部分570とを有し、各々のアンダーカット溝の第2の側壁534と第2のアンダーカット部分570とは、アンダーカット溝530a、530bのそれぞれ基部532a、532b(以下、基部532と総称する)を介して鏡像である。さらに、アンダーカット溝530a、530bは、基部532a、532bをそれぞれ有する。
【0122】
アンダーカット部分570は、好ましくは、フライス加工時にミルビットによって形成され、その形状は、ミルビットの形状およびフライス加工時のミルビットの経路の両方に基づいた形状となる。
図5Hおよび
図5Iのミルビット572a、572b(以下、ミルビット572と総称する)を参照すると、以下により詳細に説明するように、実施形態に応じて異なるタイプのミルビットが利用されてよい。
【0123】
第1の例では、
図5Hのミルビット572aは、アンダーカット溝530の形状と実質的に同一の形状を有するものとして示されている。
図5Aに関して上述したように、アンダーカット溝530の幅より広い幅を有するミルビット572を収容するために、ミルビット572は、入口穴538の1つを通って打撃フェース502に入る必要がある。このように、ミルビット572aがアンダーカット溝530よりも広い
図5Hのような実施形態では、アンダーカット溝530を形成するためにミルビット572aを利用する前に、打撃フェース502に入口穴538が掘削またはフライス加工により形成されることが好ましい。そのような実施形態では、
図5Aに示されているように、アンダーカット溝530および最終溝504が機械加工された後であっても、入口穴538はまだ見える可能性がある。
【0124】
第2の例では、
図5Iのミルビット572bは、アンダーカット溝530の断面幅よりも小さい幅の形状を有するものとして示されており、ミルビット572bは、アンダーカット溝530の側壁534により妨げられることなく、アンダーカット溝530から出ることができる。
図5Iのアンダーカット溝530a内のミルビット572bは、この概念を説明するものである。ミルビット572の幅がアンダーカット溝530の断面幅よりも小さい実施形態では、アンダーカット溝530を形成するためのフライス加工が完了した後には、入口穴538は見えなくなり得る。
【0125】
例えば、アンダーカット溝530がトウからヒール方向に延びると仮定すると、ミルビット572bは、打撃フェース502のトウ部分の入口穴538に入り、その後、クラブヘッド500のトップ部分510に向かう第1の方向に入口穴538の側壁に向かって切削し、アンダーカット部分570の始まりを形成し得る。次に、ミルビット572bは、アンダーカット溝530の所望の長さに達するまで打撃フェース502を横切ってトウからヒール方向に第1の通路を形成し得る。次に、ミルビット572bは、
図5D~
図5Iのそれぞれに示されているように、第1のアンダーカット部分570とは反対側のアンダーカット部分570を形成するために、クラブヘッド500のソール部分512に向かう方向にオフセットされ得る。次に、ミルビット572bは、打撃フェース502を横切ってヒールからトウ方向に、ミルビット572bが入口穴538を通って入った開始位置まで、第2の通路を形成し得る。最後に、ミルビット572bは、
図5Iのアンダーカット溝530a内のミルビット572bによって示されているように、アンダーカット溝530からミルビット572bが出ることができるように、作製された後のアンダーカット溝530の中央にオフセットされ得る。このプロセスは、入口穴538の元の寸法がアンダーカット溝530の寸法の範囲内であるので、入口穴538を効果的に見えなくなるようにすることが好ましい。
【0126】
特に
図5Eを参照すると、アンダーカット溝530は、以下により詳細に説明するように、クラブヘッドの所望の性能およびフィーリングに基づいて決定される様々な寸法および特性を有する。まず、幅w5および距離S2は、それぞれ
図3Cおよび
図4Bに詳述されている初期溝330、430の幅w5および距離S2と同様の値を有することが好ましい。さらに、アンダーカット溝530の面積A3は、上述したように、
図3Cおよび
図4Bの面積A1、A2と同様の値であることが好ましい。このように、アンダーカット溝530のピッチ(w5+S2)対面積A3比は、
図3Cおよび
図4Bの初期溝330、430のピッチ(w5+S2)対面積A2比と同様の値であることが好ましい。最終的に、
図3Cおよび
図4Bの初期溝330、430それぞれに関してより詳細に上述したように、ピッチ対面積A3比は、0.076mm
2(0.0030インチ
2)より大きいことが好ましい。
【0127】
幅w1は、
図2C~
図2D、
図3C、および
図4Bに関して上記で説明した初期溝230、330、430の幅w1の値と同様の値である、好ましくは0.36mm~1.02mm(0.014インチ~0.040インチ)、より好ましくは0.41mm~0.89mm(0.016インチ~0.035インチ)、最も好ましくは0.46mm~0.61mm(0.018インチ~0.024インチ)である。さらに、スコアライン204の側壁224は収束壁としてはならないと規定したゴルフ規則の側壁形状要件のために、幅w1は最終溝504の幅w5以下であることが好ましい。最終溝504の幅w5は、ゴルフ規則に概説されているように30度測定法を用いて測定される。
【0128】
アンダーカット溝530の全高を画定する距離d4は、
図2C~
図2D、
図3C、および
図4Bの初期溝230、330、430それぞれの距離d4と同様の値であることが好ましい。
【0129】
距離d5は、アンダーカット溝530のアンダーカット部分570の下のアンダーカット溝530の側壁534の高さとして定義される。距離d6は、アンダーカット溝530のアンダーカット部分570の厚さとして定義される。距離d5と距離d6との合計は、
図2C~
図2Dの距離d1に等しいのが好ましい。すなわち、距離d5と距離d6との合計は、好ましくは0.23~0.64mm(0.009インチ~0.025インチ)、より好ましくは0.30mm~0.56mm(0.012インチ~0.022インチ)、最も好ましくは0.36mm~0.51mm(0.014インチ~0.020インチ)である。上述の範囲は、弾性インサート518に十分な耐久性を付与するための少なくともd5およびd6によって画定された面積を占める弾性インサート518の十分な深さを示すと同時に、ゴルフクラブの望ましいフィーリングおよびスピン特性を達成するために必要な弾性インサート518の望ましい弾性を可能にする。
【0130】
距離d5は
図5Eの図で定義されているが、いくつかの実施形態では、距離d5は、可能な限りゼロに近い値とし得る。すなわち、そのような実施形態では、アンダーカット部分570の基部576は、アンダーカット溝530の基部532をも画定する。しかしながら、
図5Eに示されているような他の実施形態では、ミルビットの形状は、アンダーカット部分570の下に延びるアンダーカット溝530の一部を形成し、ゼロより大きな距離d5を生成し得る。しかしながら、距離d5および距離d6に関して上述したように、距離d5と距離d6との合計は、距離d5がゼロである実施形態であっても、記載されている範囲内にある。
【0131】
最後に、距離d7は、アンダーカット溝530の側壁534の全高として定義される。距離d7は、
図2C~
図2Dのスコアライン204の側壁224の距離d2と距離d3の合計と実質的に同じであることが好ましい。フローチャート590は(596において)、複数のアンダーカット溝のそれぞれの中に弾性インサートを設置するステップを含む。例えば、
図5Fを参照すると、弾性インサート518は、アンダーカット溝530内に設置される。
【0132】
フローチャート590は(596において)、複数のアンダーカット溝のそれぞれの中に弾性インサートを設置するステップを含む。例えば、
図5Fを参照すると、弾性インサート518a、518b(以下、弾性インサート518と総称する)は、アンダーカット溝530a、530b内にそれぞれ設置される。設置は、打ち込み、充填、注入、挿入、または当技術分野で周知の他の方法によって行われてよい。設置に使用されるプロセスおよび方法は、
図3A~
図3Eに関して上述したものと同様に行われてよい。弾性インサート518がアンダーカット溝530内に設置される前にその最終寸法に作製される実施形態では、弾性インサート518は、アンダーカット溝530のアンダーカット部分570に収まるように寸法決めされた弾性インサート518の一部が所定位置にはめ込まれるようにアンダーカット溝530内に圧入されてよい。
【0133】
フローチャート590は(598において)、打撃フェースに最終溝を形成するステップを含む。例えば、最終溝504a、504b(以下、最終溝504と総称する)が打撃フェース502に形成される。最終溝504は、
図3A~
図3Eおよび
図4A~
図4Dに関して上記で列挙したものを含む、当技術分野で周知の任意の方法によって形成されてよい。
【0134】
さらに、
図2A~
図2Dのスコアライン204の寸法および特性は、
図5Gの最終溝504の寸法および特性と一致する。したがって、打撃フェース502、最終溝504の縁部526、側壁524、基部522、抜き勾配、および移行部分520の寸法および特性の値の範囲は、
図2A~
図2Dの打撃フェース202、スコアライン204の縁部226、側壁224、基部222、抜き勾配、および移行部分220にそれぞれ対応する。
【0135】
さらに、
図5Gの図は、基部522が側壁524と出合う点にある移行部分520を有する最終溝504を示しているが、移行部分520は、
図2A~
図2Dに関して上述したものと同様の側壁524に沿った任意の場所とし得ることに留意されたい。例えば、側壁524は、打撃フェースの材料を含む部分と、弾性インサート518の材料を含む部分とを含んでよい。
【0136】
最終溝504の寸法および特性は
図2A~
図2Dのスコアライン204の寸法および特性と同様であるため、ゴルフクラブヘッド500とゴルフクラブヘッド200との主な違いは、インパクト時にゴルフボールに付与されるスピンを最終的に増加させる側壁のさらなる柔軟性を可能にする最終溝504のアンダーカット部分570である。
【0137】
図6A~
図6Fを参照すると、1つまたは複数の実施形態において、ゴルフクラブヘッド600は、打撃フェース602、弾性インサート682、および本体684を含む打撃フェースインサート680を含んでよい。そのような実施形態では、打撃フェースインサート680は電鋳によって形成される。弾性インサート682は、打撃フェースインサート680と本体684との間に設置される。弾性インサート682および打撃フェースインサート680は、クラブヘッド本体684に固定するか、またはクラブヘッド本体684に貼り付けることによって、クラブヘッド本体684に結合されてよい。クラブヘッド600は、複数の最終スコアライン604、トゥ部分614、ヒール部分616、トップ部分610、打撃フェース602に対向するリア部分617、およびソール部分612をさらに含む。クラブヘッド600は、クラブヘッド600をシャフト608に固定するためのホーゼル606をさらに含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、以下により詳細に説明するように、弾性インサート682は、打撃フェース602上に最終スコアラインの基部を形成してよい。そのような実施形態では、打撃フェースインサート680は、打撃フェースインサート680が打撃フェース602および最終スコアラインの側壁のみを形成し、弾性インサート682が最終スコアラインの基部を形成するように、スコアラインの基部に貫通孔を有してよい。他の実施形態では、打撃フェースインサート680は、弾性インサート682が見えない、および/または打撃フェース602とのインパクト時にゴルフボールに接触しないように、最終スコアライン全体を形成してよい。
【0139】
ここで
図6Bを参照すると、
図6Bは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
図6Bのクラブヘッド600は、最終スコアライン604を有する打撃フェース602を含む打撃フェースインサート680を含む。最終スコアライン604は、例えば、最終スコアライン604aおよび最終スコアライン604bを含む。クラブヘッド600は、トゥ部分614、ヒール部分616、トップ部分610、打撃フェース602に対向するリア部分617(図示せず)、およびソール部分612をさらに含む。クラブヘッド600は、クラブヘッド600をシャフト608に固定するためのホーゼル606をさらに含む。
【0140】
図6Cを参照すると、
図6Cは、
図6Bのゴルフクラブヘッドの一部の断面図である。より具体的には、
図6Cは、平面6C-6Cに沿った
図6Bのクラブヘッド600の断面図である。
図6Cは、最終スコアライン604aおよび604bを含む最終スコアライン604と、ソール部分612と、打撃フェース602を含む打撃フェースインサート680と、打撃フェース602に対向するリア部分617と、クラブヘッド本体684と、弾性インサート682とを含む。打撃フェース602は、平面692を画定する。
【0141】
ここで
図6Dを参照すると、
図6Dは、本開示の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドを製造するプロセスを例示するフローチャートである。フローチャート690によって示されるアプローチおよび技術は、本開示の少なくとも1つの実施形態を説明するのに十分である。しかし、本開示の他の実施形態は、フローチャート690に示されたものとは異なるアプローチおよび技術を利用してよい。さらに、フローチャート690は
図6A~
図6Bおよび
図6E~
図6Fに関して説明されているが、開示されている発明概念は、
図6A~
図6Cおよび
図6E~
図6Fに関して示され説明されている特定の特徴によって限定されることを意図するものではない。さらに、
図6Dに示されている方法に関して、本出願における発明の特徴の議論を不明瞭にしないために、特定の詳細および特徴が省略されている場合があることに留意されたい。
【0142】
フローチャート690は(693において)、打撃フェースインサートを作製するステップを含む。例えば、
図6Aを参照すると、打撃フェースインサート680は、当技術分における任意の周知の方法を利用して作製される。いくつかの実施形態では、
図6Aの打撃フェースインサート680は、当業者に周知の電鋳プロセスによって形成されることが好ましい。電鋳の例示的な方法は、米国特許第9,033,819号の中で、特に
図6に関して、本文の第6欄第58行目から第7欄第53行目に記載されている。好ましくは、最終スコアライン604の底部の貫通孔は、電鋳プロセス中に形成される。そうすることで、最終スコアライン604に貫通孔を形成するために追加のステップが必要でないので、不均一な貫通孔形成、溝のへこみ、および不均一なフェースステクスチャのような製造上の欠陥のリスクを最小限に抑える。電鋳プロセス中に貫通孔が形成されない実施態様については、以下でより詳細に説明する。
【0143】
電鋳プロセスを利用して打撃フェースインサート680を作製することは、当技術分野で周知の他の方法より優れた利点、すなわち製造誤差の少ないより均一な作製を提供することに留意されたい。さらに、電鋳プロセス中に打撃フェースインサート680に、表面テクスチャリングのようなより微細な細部を含めることができるが、従来の方法では、打撃フェースインサート680の形成後に打撃フェース602に対して追加の表面処理が必要である。しかしながら、打撃フェースインサート680は、いくつかの実施形態では、鋳造、成型、または当技術分野で周知の別の方法によって形成されてもよい。さらに、打撃フェースインサート680が電鋳によって形成されるか、または別の方法で形成されるかにかかわらず、打撃フェースインサート680が作製された後に、打撃フェースインサート680に対して、フライス加工、レーザ加工、研磨、サンドブラスト加工などの追加の表面処理が行われてよい。
【0144】
最終スコアライン604の貫通孔が電鋳プロセス中に作製されない実施形態では、貫通孔は、電鋳プロセスの後に打撃フェースインサート680に機械加工により形成されてもよい。一実施形態では、貫通孔は、打撃フェースインサート680の裏側(打撃フェース602の反対側)からスコアラインの底部を機械加工することによって形成されてよい。機械加工は、フライス加工、掘削、切断、または当技術分野で周知の任意の方法を含んでよい。別の実施形態では、貫通孔は、スコアラインの底部が打撃フェースインサート680の裏側から切り取られるようにレーザ切断によって形成されてよい。レーザ切断は、例えば、ファイバレーザ切断を使用して行われてよい。このような例では、ファイバレーザ切断プロセス中の極度に高温の熱による打撃フェースインサート680の変形を防止するために、打撃フェースインサート680にアニール熱処理を施す必要があり得る。
【0145】
また、貫通孔はスコアラインの基部全体を含む必要はなく、スコアラインの基部の一部のみが貫通孔形成プロセス中に除去され得ることにも留意されたい。そのような例では、弾性インサート682は、最終的に、最終スコアライン604の基部の一部を形成するだけでよい。
【0146】
打撃フェースインサート680が弾性インサート682で形成された側壁624の一部を有する最終スコアライン604を含む実施態様では、打撃フェースインサート680は、
図3Cの初期溝330の寸法と同様の寸法を有する初期溝で形成されてよい。したがって、弾性インサート682が形成されると、初期溝および弾性インサート682は、
図3Eの最終溝304の寸法と同様の寸法を有する最終溝604を形成するように機械加工され得る。
【0147】
打撃フェースインサート680は、少なくとも
図6Eに示されているように、厚さd36を有する。打撃フェースインサート680の厚さd36は、打撃フェースインサート680全体にわたって均一である必要はない。例えば、打撃フェースインサート680の側壁624部分は、打撃フェース602と同じレベルのインパクトを受けないので、打撃フェース602部分よりも薄くてよい。他の実施形態では、打撃フェースインサート680は全体にわたって均一な厚さを有してよい。
【0148】
好ましくは、厚さd36は、0.2mm~0.8mm(0.008インチ~0.031インチ)、より好ましくは0.3mm~0.7mm(0.012インチ~0.023インチ)、さらにより好ましくは0.4mm~0.6mm(0.016インチ~0.024インチ)、最も好ましくは約0.5mm(0.020インチ)である。さらに、厚さd36は、弾性インサート682の硬さに依存し得る。例えば、弾性インサート682が70ショアD~80ショアDのデュロメータ硬さを有する場合、厚さd36は0.3mm~0.4mm(0.012インチ~0.016インチ)としてよい。弾性インサート682が60ショアD~70ショアDのデュロメータ硬さを有する場合、厚さd36は0.4mm~0.5mm(0.016インチ~0.020インチ)としてよい。弾性インサート682が50ショアD~60ショアDのデュロメータ硬さの値を有する場合、厚さd36は0.5mm~0.6mm(0.020インチ~0.024インチ)としてよい。
【0149】
フローチャート690は(694において)、弾性インサートを作製するステップを含む。例えば、
図6Aを参照すると、弾性インサート682は、当技術分野における任意の周知の方法に従って作製される。いくつかの実施形態では、好ましくは、弾性インサート682は、例えば、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)を含むポリウレタン材料のような樹脂材料を含む弾性材料で形成される。弾性インサート682の弾性材料に適したTPUの一例は、ゴルフボールに見られるアイオノマー樹脂エチレン共重合体であるサーリンである。しかしながら、他の実施形態では、弾性インサート682は、弾性インサートに関して本出願で説明されている材料を含む、当技術分野で周知の任意の材料から形成されてよい。
【0150】
弾性材料は、好ましくは30ショアD~80ショアD、より好ましくは50ショアD~75ショアD、さらにより好ましくは55ショアD~70ショアD、最も好ましくは約66ショアDのデュロメータ硬さを有する。上述されているように、硬さは打撃フェースインサート680の厚さd36に基づいて決定されてよい。
【0151】
弾性インサート682はさらに、
図6Fに示されているように、弾性インサート682の底部分687から弾性インサート682のトップ部分689まで測定された厚さd20を有する。厚さd20は、好ましくは約1.0mm~2.5mm(0.04インチ~0.01インチ)、より好ましくは約1.2mm~2.0mm(0.047インチ~0.079インチ)、さらにより好ましくは約1.4mm~1.7mm(0.06インチ~0.067インチ)、最も好ましくは約1.6mm(0.06インチ)である。
【0152】
弾性インサート682はさらに、
図6E~6Fに示されているように、弾性インサート682の底部分687からスコアライン604の基部622まで測定された厚さd34を有する。厚さd34は、好ましくは約0.5mm~1.8mm(0.020インチ~0.071インチ)、より好ましくは約0.75mm~1.5mm(0.030インチ~0.060インチ)、さらにより好ましくは約0.9mm~1.2mm(0.035インチ~0.047インチ)、最も好ましくは約1.1mm(0.043インチ)である。
【0153】
厚さd34、d20は、打撃フェースインサート680の厚さd36および弾性インサート682の硬さに基づいて選択されてよい。例えば、弾性インサート682のデュロメータ硬さが70ショアD~80ショアDである場合、厚さd20は1.0mm~1.2mm(0.04インチ~0.047インチ)としてよく、厚さd34は0.6mm~0.8mm(0.023インチ~0.031インチ)としてよい。弾性インサート682が60ショアD~70ショアDのデュロメータ硬さを有する場合、厚さd20は1.2mm~1.7mm(0.047インチ~0.067インチ)としてよく、厚さd34は0.8mm~1.3mm(0.031インチ~0.051インチ)としてよい。弾性インサート682が50ショアD~60ショアDのデュロメータ硬さの値を有する場合、厚さd20は1.7mm~2.5mm(0.067インチ~0.098インチ)としてよく、厚さd34は約1.3mm~2.1mm(0.051インチ~0.083インチ)としてよい。
【0154】
いくつかの実施形態では、弾性インサート682は、弾性材料を加熱し、打撃フェースインサート680の裏側に押し付けることによって形成される。そのような実施形態では、弾性インサート682は、打撃フェースインサート680に接着される。弾性インサート682は、弾性インサート682が最終スコアライン604の基部622を形成するように、打撃フェースインサート680に結合される。弾性インサート682がこのように結合される場合、最終スコアライン604は、
図6Eおよび
図6Fに関して後述する設計を有してよく、この場合、最終スコアライン604の基部622のみが弾性インサート682によって形成される。
【0155】
しかしながら、いくつかの実施形態では、弾性インサート682の作製時および/または弾性インサート682と打撃フェースインサート680との結合時に、弾性材料は、弾性インサート682がスコアラインを少なくとも部分的に埋めるように、打撃フェースインサート680の背面部からスコアラインの貫通孔に溢れ出てよい。そのような実施形態では、弾性インサート682は、弾性インサート682が基部のみを形成する場合、最終スコアライン604を形成するためにさらに機械加工されてよい。スコアラインに溢れ出た弾性材料がフライス加工、掘削、または別の機械加工方法によってスコアラインから除去される実施形態のように、弾性インサート682のみが基部を形成する実施形態では、最終スコアライン604は、
図6Eおよび
図6Fに関して後述するものと同様の特性および寸法を有してよく、この場合、最終スコアライン604の基部622のみが弾性インサート682によって形成される。
【0156】
弾性材料がスコアラインの貫通孔に溢れ出る他の実施形態では、弾性インサート682は、最終スコアライン604の基部だけではなくそれ以外も形成してよい。例えば、貫通孔に溢れ出た弾性材料の一部のみが機械加工で除去されてよい。上述の
図2A~
図2D、
図3A~
図3E、および
図4A~
図4Dの実施形態と同様に、弾性インサート682は、最終スコアライン604の側壁624の一部を形成してもよい。より具体的には、そのような実施形態では、
図2A~
図2Dのスコアライン204の寸法および特性は、最終スコアライン604の寸法および特性と一致する。さらに、弾性インサート682が最終スコアライン604の基部622だけでなくそれ以外も形成する実施形態では、打撃フェースインサート680は、例えば、
図4Bの初期溝430と同様の寸法および特性を有する初期溝を含むように作製されてよい。そのような実施形態では、所望の寸法および特性を有する最終スコアライン604を形成するために、弾性インサート682は初期溝内に設置されて、随意にさらに機械加工される。
【0157】
図6Eに示されているように、打撃フェースインサート680と弾性インサート682との結合後の合計厚さd38は、好ましくは1.0mm~3.0mm(0.040インチ~0.12インチ)、より好ましくは約1.5mm~2.5mm(0.060インチ~0.98インチ)、さらにより好ましくは約1.75mm~2.25mm(0.069インチ~0.089インチ)、最も好ましくは約2.0mm(0.079インチ)である。
【0158】
上記のように弾性インサート682の全厚d38、厚さd36、厚さd20、および硬さの寸法決めを行うことは、弾性インサート682を有することに伴う肯定的な性能特性の実現を可能にすると同時に、ゴルフクラブヘッドの全質量および質量分布特性に劇的な影響を与えることはない。例えば、全厚d38が5.0mmよりも大きい場合には、打撃フェースインサート680のサイズのために、また、代替となる金属材料ほど大きな質量を有さない弾性インサート682の弾性材料のために、過度の質量損失が生じ得る。このような大きな質量損失を補償するために、ゴルフクラブの全体的な外観およびフィーリング(例えば、CG位置、MOI値などの結果として)が変更され、最終的には、ゴルファーが慣れている外観およびフィーリングとは異なり得る。また、全厚d38が1.0mm未満のように薄すぎると、性能への影響が小さすぎる可能性があるため、弾性インサート682の性能上の利益が失われ得る。この同じ論理は、打撃フェースインサート680および弾性インサート682の他の寸法および特性にも適用され得る。
【0159】
フローチャート690は(696において)、弾性インサートと打撃フェースインサートを本体に結合するステップを含む。例えば、
図6Aおよび
図6Bを参照すると、弾性インサート682および打撃フェースインサート680は、本体684の挿入領域688に結合される。いくつかの実施形態では、弾性インサート682および打撃フェースインサート680は、2つの別個の部品として本体684に結合される。そのような実施形態では、弾性インサート682は、接合、接着、または当技術分野における任意の他の周知の方法によって本体684の挿入領域688に結合され得る。例えば、打撃フェース680と本体684との結合の前に、弾性インサート682は加熱されて、本体684に接合されてよい。弾性インサート682が本体684に結合された後に、打撃フェースインサート680が本体684に結合されてよい。打撃フェースインサート684は、溶接、ろう付け、接合、はんだ付け、または当技術分野における任意の他の周知の方法によって本体684に結合されてよい。さらに、打撃フェースインサート680は、弾性インサート682に接合されてもよい。例えば、打撃フェースインサート680は、本体684に溶接されて、弾性インサート682と接着結合されてよい。
【0160】
他の実施形態では、ステップ694に関して上述したように、弾性インサート682と打撃フェースインサート680とを本体684に結合する前に、弾性インサート682が打撃フェースインサート680に結合されてよい。そのような実施形態では、弾性インサート682は、本体684に結合される前に、打撃フェースインサート680に接合されるか、接着剤で取り付けられるか、または同様に結合され得る。そのような実施形態では、打撃フェースインサート680と弾性インサート682との対が、溶接、ろう付け、接合、はんだ付け、または当技術分野における別の周知の方法によって、本体684に結合され得る。
【0161】
好ましくは、打撃フェースインサート680および弾性インサート682と本体684との結合は、本体684と打撃フェースインサート680ならびに弾性インサート682との間の滑らかな移行部分を形成する。これを達成するために、本体684は、打撃フェースインサート680および弾性インサート682を受容するように適合された本体684の挿入領域688に少なくとも部分的に接するオフセット686を有することが好ましい。オフセット686は、
図6Aに示されているように、打撃フェースインサート680および弾性インサート682を受容するように適合された挿入領域688のヒール部分に少なくとも接し得る。しかしながら、オフセット686はさらに、挿入領域688のトゥ部分、トップ部分、およびソール部分に接し得る。いくつかの実施形態では、打撃フェースインサート680および/または弾性インサート682は、クラブヘッドのソール部分および/またはトップ部分を見たときに、打撃フェースインサート680および/または弾力インサート682が見えるように、本体のトップ部分および/または底部分に延びてよい。他の実施形態では、オフセット686は、ゴルフクラブヘッドのトウ部分、ヒール部分、トップ部分、およびソール部分の少なくとも2つの部分の周囲に延びて、本体684がその少なくとも2つの部分の周囲でオフセット686に隣接した打撃フェース602の少なくとも一部分を形成するようにしてよい。例えば、オフセット686は、打撃フェースインサート680および弾性インサート682が本体684に完全に接するように、インサート領域688全体に接してよい。
【0162】
打撃フェースインサート680および弾性インサート682が本体684に結合された後、打撃フェースインサート680と弾性インサート682と本体684との間が滑らかな移行し、しっかりと結合されるように、さらなる機械加工が行われ得る。例えば、打撃フェースインサート680および/または弾性インサート682と本体684との間の移行部分(すなわち、打撃フェースインサート680および/または弾性インサート682に直接隣接する本体684の部分)は、ブラスト加工、フライス加工、サンディング、レーザ加工、またはクラブヘッドの所望の外観を作り出すために当技術分野における任意の他の周知の方法で処理されてよい。いくつかの実施形態では、所望の外観は、打撃フェースインサート680と本体との間の同様の表面仕上げを有する連続的で滑らかな移行部分を含み得る。しかしながら、他の実施形態では、所望の外観は、打撃フェースインサート680と本体684との間の完成したオフセットを含んでよく、または本体684と打撃フェースインサート680との間の仕上げのコントラスト(例えば、ブラスト加工対研磨)を含んでよい。打撃フェースインサート680、弾性インサート682、および/または本体684の間の仕上げのコントラストを有することにより、クラブヘッドの潜在的特性、例えば、これらに限定されないが、弾性インサート682の存在、打撃フェースインサート680の存在、またはクラブヘッド600上の最適なインパクト位置(例えば、打撃フェースのスコアライン領域)が示される。
【0163】
このように、オフセット686は、上述の滑らかな移行部分を可能にするように寸法決めされるのが好ましい。このように、オフセット686は、上述の全厚d38と実質的に等しい距離d30を有する。したがって、距離d30は、全厚d38に応じて、好ましくは1.0mm~3.0mm(0.039インチ~0.012インチ)、より好ましくは約1.5mm~2.5mm(0.059インチ~0.098インチ)、さらにより好ましくは約1.75mm~2.25mm(0.069インチ~0.089インチ)、最も好ましくは約2.0mm(0.079インチ)である。いくつかの実施形態では、打撃フェースインサート580、弾性インサート682、および本体584に対して施される表面処理および接合処理に応じて、距離d30および全厚d38は、0.05mm~0.2mm(0.002インチ~0.008インチ)だけ異なり得る。この差異により、本体684、打撃フェースインサート680、および弾性インサート682のうちの少なくとも1つが、上述したように、本体684、打撃フェースインサート680、および弾性インサート682の間の所望の移行領域を形成するために、フライス加工、掘削、サンディング、ブラスト加工、レーザ加工、または当技術分野で周知の任意の他の処理によって除去される材料を有することができる。
【0164】
フローチャート690は(698において)、最終スコアラインを形成するステップを含む。例えば、
図6E~
図6Fを参照すると、最終スコアライン604が形成される。打撃フェースインサート680が電鋳される実施形態では、最終スコアライン604は、主に電鋳プロセス中に形成される。ステップ694に関して上述したように、弾性インサート682を形成するステップは、最終スコアライン604を形成するための最終プロセスである。例えば、上述したように、弾性インサート682は、最終スコアライン604の基部622のみを形成するように作製されてもよいし、または最終スコアライン604の基部622および側壁624の一部を形成するように作製されてもよい。関連する実施形態では、弾性インサート682によって形成された側壁624の一部の寸法を含む最終スコアライン604の寸法は、
図2A~2Dのスコアライン204に関して上述した寸法および特性と同様である。さらに、最終スコアライン604の好ましい寸法および特性について、さらに以下で概説する。
【0165】
最終スコアライン604は、USGA規則に従って設計され得る。したがって、これらの最終スコアライン604の平均幅d22は、好ましくは、0.6mm~0.9mm(0.024インチ~0.035インチ)、より好ましくは0.65mm~0.8mm(0.026インチ~0.031インチ)、さらにより好ましくは0.68mm~0.75mm(0.027インチ~0.030インチ)としてよい。本明細書における全ての目的のために、また当業者に理解されるように、スコアラインの幅は、現在のUSGAゴルフ規則(以下、「ゴルフ規則」)の付属規則IIに記載されている「30度測定法」を使用して決定される。ゴルフ規則に従って測定された最終スコアライン604の平均幅d24は、0.10mm(0.004インチ)以上、好ましくは0.25mm~0.60mm(0.010インチ~0.024インチ)、より好ましくは0.30mm~0.55mm(0.012インチ~0.002インチ)、最も好ましくは0.36mm~0.44mm(0.014インチ~0.017インチ)としてよい。USGA規則をさらに遵守するために、当業者によって解釈される最終スコアライン604の抜き勾配αは、0度~25度、より好ましくは10度~20度、最も好ましくは13度~19度とし得る。そして、ゴルフ規則に概説されているように、最終スコアライン604の溝縁部の有効半径は、0.150mm~0.30mm(0.006インチ~0.012インチ)、より好ましくは0.150mm~0.25mmの間(0.006インチ~0.010インチ)、最も好ましくは0.150mm~0.23mm(0.006インチ~0.009インチ)とし得る。最終的に、最終スコアライン604の寸法は、以下のように計算され得る。
A5/d22+S3≦0.076mm2(0.0030インチ2)
ここで、ゴルフ規則に概説されるように、A5は最終スコアライン604の断面積であり、d22は最終スコアライン604の幅であり、Sは隣接する最終スコアライン604の縁部間の距離である。
【0166】
図7A~
図7Fを参照すると、1つまたは複数の実施形態において、ゴルフクラブヘッド700は、打撃フェース702を含む打撃フェースインサート780、弾性インサート782、および中空領域785を画定する本体784を含んでよい。そのような実施形態では、打撃フェースインサート780は、電鋳、鋳造、成型、フライス加工、または当技術分野における任意の周知の方法によって形成されてよい。弾性インサート782は、打撃フェースインサート780と本体784との間に設置される。弾性インサート782は、以下により詳細に説明するように、弾性材料を中空領域785に注入することによって形成される。弾性インサート782および/または打撃フェースインサート780は、クラブヘッド本体784に固定されるか、またはクラブヘッド本体784に貼り付けることによって、クラブヘッド本体784に結合されてよい。クラブヘッド700は、複数の最終スコアライン704と、トゥ部分714と、ヒール部分716と、トップ部分710と、打撃フェース702に対向するリア部分717と、ソール部分712とをさらに含む。クラブヘッド700は、クラブヘッド700をシャフト708に固定するためのホーゼル706をさらに含む。
【0167】
図7Aを参照すると、
図7Aは、本開示の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解図である。より具体的には、
図7Aの分解図は、中空領域785をより明確に示すために、弾性インサート782を含まない状態のゴルフクラブヘッド700を含む。打撃フェースインサート780は、本体784から取り外されて示されており、本体784は、リア部分717と、トゥ部分714と、ヒール部分716と、トップ部分710と、ソール部分712とによって画定される中空領域785を有する。中空領域785は、打撃フェースインサート780が本体784に結合されたときに、打撃フェースインサート780の背面によって画定される。最終クラブヘッドでは、中空領域785は、弾性材料によって少なくとも部分的に充填されて、弾性インサート782を形成する。
【0168】
図7Cを参照すると、
図7Cは、
図7Bのゴルフクラブヘッドの断面図である。
図7Cに示されている実施形態では、ゴルフクラブヘッド700は、弾性インサート782で完全に充填された中空領域785を有する。さらに、弾性インサート782は、部分的に最終スコアライン704まで延びて、最終スコアライン704の側壁の一部を形成する。そのような実施形態では、最終スコアライン704の寸法および間隔は、
図2C~
図2Dのスコアライン204の寸法および間隔と同様である。
【0169】
しかしながら、
図7Cの実施形態は限定的なものであると意図するものではない。いくつかの実施形態では、弾性インサート782は、中空領域785全体を充填しなくてもよい。例えば、弾性インサート782は、クラブヘッド700のマッスル部分またはブレード部分を充填するだけでよい。別の例では、弾性インサート782は、中空部分785の中に部分的にのみ延びてよい。そのような例では、弾性インサート782は、打撃フェースインサート780の背面に結合され、打撃フェースインサート780の背面から中空領域785までの距離だけ延びて、中空領域がいかなる材料も存在しない部分を維持するようにしてよい。そのような例の弾性インサート782は、弾性インサート782が中空領域785内に部分的にのみ延びるように、上述したようなクラブヘッド600の弾性インサート682の厚さd38の厚さと同様の厚さを有してよい。
【0170】
さらに、いくつかの実施形態では、弾性インサート782は、最終スコアライン704の側壁724の一部を形成しなくてもよい。そのような実施形態では、弾性インサート782は、最終スコアライン704の基部722のみを形成してよい。そのような実施形態では、最終スコアライン704は、上述したクラブヘッド600の最終スコアライン604と同様の寸法および特性を有してよい。
【0171】
打撃フェースインサート780が最終スコアライン704に貫通孔を含まないさらに別の実施形態では、弾性インサート782は最終スコアライン704の一部を形成しなくてもよい。
【0172】
ここで
図7Dを参照すると、
図7Dは、本開示の実施形態に係るゴルフクラブヘッドを製造するプロセスを例示するフローチャートである。フローチャート790によって示されるアプローチおよび技術は、本開示の少なくとも1つの実施形態を説明するのに十分である。しかし、本開示の他の実施形態は、フローチャート790に示されたものとは異なるアプローチおよび技術を利用してよい。さらに、フローチャート790は、
図7A~
図7Cおよび
図7E~
図7Fに関して説明されているが、開示されている発明概念は、
図7A~
図7Cおよび
図7E~
図7Fに示され説明されている特定の特徴によって限定されることを意図するものではない。さらに、
図7Dに示されている方法に関して、本出願の発明の特徴の議論を不明瞭にしないために、特定の詳細および特徴が省略されている場合があることに留意されたい。
【0173】
フローチャート790は(793において)、中空領域を有するクラブヘッド本体を作製するステップを含む。例えば、クラブヘッド700の本体784は、中空領域785を有するように作製される。中空領域785は、クラブヘッド700のマッスル部分および/またはブレード部分を含むクラブヘッドの任意の部分に延び得る。
【0174】
フローチャート790は(794において)、打撃フェースインサートを作製するステップを含む。例えば、打撃フェースインサート780は、電鋳(
図6A~
図6Fに関して上述したような方法)、鋳造、成型、フライス加工などのような当技術分野で周知の任意の方法によって作製される。打撃フェースインサート780は、最終スコアライン704の基部に貫通孔を含むことにより、最終スコアライン704の少なくとも一部、例えば、側壁724および/または基部722が弾性インサート782によって形成され得るように作製されることが好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態では、打撃フェースインサート780の最終スコアライン704は、貫通孔を有さなくてもよい。
【0175】
打撃フェースインサート780は、打撃フェースインサート680の厚さd36と同じ厚さを有するように形成されてよい。
【0176】
打撃フェースインサート780が、弾性インサート782で形成された側壁724の一部を有する最終スコアライン704を含む実施形態では、打撃フェースインサート780は、
図3Cの初期溝330の寸法と同様の寸法を有する初期溝で形成されてよい。したがって、弾性インサート782が形成された後、初期溝および弾性インサート782は、
図3Eの最終溝304の寸法と同様の寸法を有する最終溝704を形成するように機械加工され得る。
【0177】
フローチャート790は(796において)、弾性インサートを中空領域内に配置するステップを含む。例えば、弾性インサート782は、クラブヘッド700の中空領域785内に配置される。さらに、上述したように、弾性インサート782は、弾性インサート782の配置が打撃フェースインサート780のスコアライン内の配置をさらに含むように、最終スコアライン704の一部を形成してもよい。
【0178】
弾性インサート782は、TPU、樹脂、プラスチック、ゴム、金属などを含む、弾性インサートに関して上述した材料のいずれかを含む、様々な材料のいずれかを含んでよい。上述したように、材料の特性は、クラブヘッド700の所望のフィーリングに応じて変化し得る。
【0179】
弾性インサート782は、様々な方法によって配置されてよい。いくつかの実施形態では、弾性インサート782を形成するために、弾性材料が溶融され、中空領域785に注入されてよい。これは、例えば、ホーゼルが中空領域785内に延びる中空開口部を含む場合に限り、ホーゼルを介して行われてよい。
【0180】
別の実施形態では、打撃フェースインサート780が本体784に結合された後、弾性材料が溶融され、打撃フェースインサート780のスコアライン704を通して注入されてよい。そのような実施形態では、弾性材料は、溶融されて、中空領域785が所望のレベルまで充填されるまで、スコアラインを通して注入されてよい。
【0181】
さらに別の実施形態では、打撃フェースインサート780を本体784に結合する前に、弾性材料が溶融され、中空領域785に注入されてよい。そのような実施形態では、打撃フェースインサート780は、弾性材料が中空領域785に注入された後に、本体784と結合されてよい。この実施形態では、弾性インサート782は、中空領域785内に配置される前に形成されてよく、打撃フェースインサート780を本体784に結合する前に非液体状態で中空領域785内に配置されてよい。
【0182】
フローチャート790は(798において)、打撃フェースインサートを本体に結合するステップを含む。例えば、打撃フェースインサート780は、接合、溶接、ろう付け、はんだ付け、または当業者に周知の任意の他の金属結合方法によって、本体784に結合される。ステップ798とステップ796とは切り替えられ得ることに留意されたい。例えば、打撃フェース780が本体784に結合され、その後、弾性インサート782が、上述されているように、溶融され、ホーゼルを介して、またはスコアラインを介して注入されることによって、中空領域785内に配置されてよい。別の例では、弾性インサート782は、打撃フェースインサート780が本体784に結合される前に、中空領域785内に配置されてよい。そのような例では、弾性インサート782は、予め作製されて中空領域785内に配置されてもよいし、または打撃フェースインサート780を本体784に結合する前に溶融されて中空領域785に注入されてもよい。
【0183】
打撃フェースインサート780および弾性インサート782が本体784に結合された後、クラブヘッド700の所望の外観を作り出すために、クラブヘッド700に、サンディング、ブラスト加工、フライス加工、研磨、または他の任意の処理を含む追加の表面処理が施されてよい。例えば、追加の表面処理は、打撃フェースインサート780と本体784との間の滑らかな移行部を形成し得、所望の表面コントラストを生成するために利用され得る。
【0184】
フローチャート790は(799において)、最終スコアラインを形成するステップを含む。最終スコアライン704は、
図6A~
図6Cおよび
図6E~
図6Fの最終スコアライン604と同様に形成されてよい。例えば、弾性インサート782がスコアラインの底部の貫通孔に入り込む場合、スコアラインは、所望の最終スコアライン704を形成するために、フライス加工され、掘削され、または別の方法で機械加工され得る。所望の最終スコアライン704は、弾性インサート782で形成された基部722および側壁724の一部を有するように形成された最終スコアライン704を含んでよく、または弾性インサート782で形成された基部722のみを有するように形成された最終スコアライン704を含んでよく、または弾性インサート782が最終スコアライン704のいずれの部分も形成しないような場所に最終スコアラインが形成されてよい。したがって、最終スコアライン704は、上述したように、
図2C~
図2Dのスコアライン204または
図6E~
図6Fの最終スコアライン604のものと同様の寸法および特性を有してよい。打撃フェースインサート780上の最終スコアライン704の間隔は、
図2C~
図2Dのスコアライン204の間隔と同様であることにも留意されたい。
【0185】
クラブヘッド200,300,400,500,600,700、および800の各々は、クラブヘッドとのインパクト時にゴルフボール上に所望のスピンを生成するように設計される。上述したように、弾性インサートの弾性材料、特にスコアラインの一部またはその周囲の弾性インサートの存在により、スコアラインは標準的な金属製のスコアラインよりも変形することができる。この変形の増加は、インパクト時のゴルフボールの外側シェルとスコアラインとの接触時間をより長くし、さらにゴルフボールのより広い表面積とスコアラインとが接触して、ゴルフボール上のスピンを増加させることができる。さらに、弾性インサートを利用することにより、標準的な金属材料よりも高い静摩擦係数が得られ、そのことによりゴルフボールとのインパクト時に流体および異物をより多く取り込むことができ、最終的にゴルフボールに付与されるスピンが増加する。
【0186】
本開示全体を通してさらに説明されているように、ゴルファーは、所望のスピンを有することに加えて、ゴルフクラブからの一定のフィーリングを期待する。インパクト時にゴルファーが求める所望のフィーリングを有すると同時に、先行技術のクラブヘッドよりも多くのスピンをゴルフボールに付与するクラブヘッドを作製するために、弾性インサートの適切な材料、寸法、特性、および実施形態を決定するのに、非常に多くの試験が実施された。これらの材料、寸法、特性、および実施形態については、クラブヘッド200、300、400、500、600、700、および800に関して上述されている。
【0187】
図8A~
図8Gを参照すると、1つまたは複数の実施形態において、ゴルフクラブヘッド800は、トップ部分802、底部分804、ヒール部分806、およびトゥ部分808を含む。ホーゼル810は、トップ部分802から延び、従来のゴルフシャフト812をゴルフクラブヘッド800に固定して、ゴルフクラブを形成するように設計される。ゴルフクラブヘッド800は、略平面状であり、その中に複数の溝(またはスコアライン)816が形成された打撃フェース814をさらに含む。好ましくは、溝816は、互いに平行に延び、より好ましくは、ヒールからトウ方向に延びて細長い。図示されているゴルフクラブヘッド800は、パター型ゴルフクラブヘッドを備える。しかしながら、以下でさらに詳細に説明するような打撃フェース816の特徴は、代替として、他のタイプのゴルフクラブヘッド(例えば、アイアン型、ウェッジ型、ウッド型、またはハイブリッド型)に組み込まれた打撃フェースと同じように適用され得る。
【0188】
特に
図8Aおよび
図8Bを参照すると、溝816はそれぞれ、底面818と、対向する側壁820、822とを含む。側壁820は、1つまたは複数の凹部824を含む。凹部824の各々は、好ましくは、側壁および/または打撃フェースの隣接部分を構成する第2の材料とは異なる第1の材料で充填される。好ましくは、第1の材料は、第2の材料の硬さよりも低い硬さ(例えば、デュロメータ)を有する材料を含む。より具体的には、第1の材料は、好ましくは150ロックウェルR未満の硬さ、より好ましくは20ショアA以上90ショアD以下、より好ましくは約45ショアD~75ショアD硬さを有する。好ましくは、第2の材料は、打撃フェースインパクト領域の大部分を構成し、約10ロックウェルB以上、より好ましくは約50ロックウェルB以上、最も好ましくは約70ロックウェルB~90ロックウェルBの硬さを有する。第1の材料は、好ましくは、ポリマー材料、例えば、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、合成ゴム、合成樹脂、またはポリアミドを含む。好ましくは、第2の材料は、金属材料、例えば、銅、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、またはそれらの合金および組み合わせを含む。しかし、代替の実施形態では、第1の材料および第2の材料の両方は、金属または金属合金を含むが、硬さのような異なる材料特性を有するのが好ましい。同様に、他の代替の実施形態では、第1および第2の材料はそれぞれ、ポリマー材料を含むが、異なる特性(例えば、硬さ)を有するのが好ましい。
【0189】
図8Cに示されているように、複数の溝816に形成された凹部824は、打撃フェース814中に分散される。いくつかの態様では、複数の凹部824は、ランダムなパターンで分散される。他の態様では、複数の凹部は、互いに実質的に等間隔で配置され、幾何学的配列を形成する。いくつかのこのような態様では、複数の凹部は、複数の垂直な列に整列され、横方向にも整列される場合もあれば、隣接するこれらの凹部824が横方向に(またはヒールからトゥ方向に)おいて垂直にオフセットされるように交互に配列される場合もある。凹部824は、一般に、打撃フェース814の中央領域に集中しているのが好ましい。例えば、好ましくは、より多くの(またはより密度の高い)これらの凹部824は、打撃フェース814上に描かれた、フェース中心830を中心とし、従来のゴルフボールの半径(例えば、21.35mm)に等しい半径を有する仮想円832内の打撃フェース814上の全ての点によって画定された打撃フェース814の中央領域834内に配置される。いくつかのそのような態様では、複数の凹部824の各々は、そのような中央領域834内に配置される。
【0190】
追加的に、または代替的に、任意の特定の溝816に対して、複数の凹部824が溝816内に形成される、例えば、その側壁(例えば、側壁820(a)および820(b))に形成される。いくつかのそのような態様では、このような凹部824は、凹部824の組が溝816の対応する上部側壁820(a)および下部側壁820(b)に対して垂直に整列するように、上部側壁およびそれぞれの下部側壁に均一に分散される。しかし、代替的な態様では、ヒールからトウ方向において、凹部824は、上部側壁820(a)から下部側壁820(b)に交互に、(例えば、
図8Cに示されるように)ジグザグ状に形成される。他のパターンも考えられる。例えば、いくつかの態様では、凹部824の度数は、トゥ部分、ヒール部分、またはトゥ部分とヒール部分の両方から中心に向かって徐々に増加する。
【0191】
特に、
図8Bおよび
図8Eに示されているように、凹部824の各々は、側壁(例えば、側壁820)および打撃フェース814と交差し、側壁(例えば、側壁820)および打撃フェース814に向かって開口する。好ましくは、凹部824は、溝816の全深さの一部のみに延び、その結果、凹部824と溝816のそれぞれの底面818との間に段付き領域を形成する。しかし、代替的な実施形態では、1つまたは複数の凹部824は溝816の全深さまで延び、その結果、溝816の底面818と実質的に同一平面の凹部底面を有する。このような構成は、例えば、上述したような弾性材料および/または振動吸収材料などの別個の材料を含むことができる体積を最大化し得る。さらに別の態様では、凹部824は、打撃フェース814から溝816よりも深い深さまで延びる。いくつかのそのような態様では、凹部824のいくつかは打撃フェース814を完全に貫通し、その結果、貫通孔を構成する。
【0192】
代替的に、または追加的に、凹部824の深さは、凹部によって異なる。例えば、いくつかの態様では、深さは、フェース中心830に向かうほど深くなる。このような構成は、プレー中の打撃フェースのゴルフボールとの反復インパクトにより、より大きな平均応力を受ける位置の振動減衰を増大させ得る。代替的に、または追加的に、凹部824の深さは、上から下方向または下から上方向のいずれかに変化する。好ましくは、このような凹部が弾性材料で充填される場合、上から下方向に深さが深くなることで、打撃フェース814上の比較的低い位置(例えば、フェース中心830の下)において、打撃フェース814とゴルフボールとの接触による潜在的なオーバロフトに対抗するデロフト効果が生じ得る。
【0193】
図8Eを参照すると、複数の凹部824の例示的な凹部824が断面
図8Dに示されている(
図8C参照)。溝(またはスコアライン)816は、打撃フェース814から深さd8まで延びる。溝816は、上部側壁820(a)、上部側壁820(a)に対向する下部側壁820(b)、および底面818によって画定される。深さd8は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.1mm~4mmである。側壁820(a)、820(b)は、好ましくは、底面818に対して傾斜しており、好ましくは、各々は、打撃フェース814の一般平面に対して60°~95°、より好ましくは75°~90°の内側抜き勾配を形成する。しかしながら、いくつかの態様では、側壁820a(a)、820(b)は、打撃フェース814の一般平面に対して実質的に垂直である。
【0194】
凹部824は、好ましくは、打撃フェース814の一般平面に対して垂直に測定された深さd10だけ延びる。好ましくは、深さd10は、溝d8の深さよりも浅い。より具体的には、凹部824の深さd10は、好ましくは0.80×d8以下であり、より好ましくは0.50×d8以下であり、さらにより好ましくは0.10×d8~0.50×d8である。
【0195】
このような構成は、例えば、有益なゴルフボール/打撃フェース相互作用関連特性を生成するための弾性材料(例えば、弾性充填材料836)を収容するのに十分な体積を確保する。例えば、上述のパラメータによって特徴付けられる体積を占めるそのような弾性材料836は、インパクト時のより優れた方法を提供することができ、そのことにより、そのようなインパクト時に異物や水をより十分に取り込むことができ、結果として、(例えば、エラストマー被覆タイプの)ゴルフボールと、凹部824の周囲および/または溝816の縁部および輪郭を形成する打撃フェース814の金属(または、それ以外のより硬い)表面領域との純粋な相互作用が増大する。追加的に、または代替的に、そのような構成は、単位インパクト面積当たりの金属縁部の範囲を増大させ、その縁部は、(ゴルフボールが略平面状の金属部分に接触するのに対して)、適切なスピンを誘発するためにゴルフボールと係合するのに特に有効であると考えられる。深さd10の変化は、例えば、充填材料836を取り囲む金属材料と比較して、インパクトが充填材料836のように作用する程度に関連し得る。例えば、深さd10が深くなるほど、通常のインパクト(打撃フェース814とゴルフボール)が有するインパクト特性が充填材料836の既知のインパクト特性(例えば、振動減衰特性および/または振動波伝搬特性)により近くなるという相関関係が存在し得る。
【0196】
深さd9は、溝816の側壁820(a)および凹部836の輪郭によって画定される段差の深さに対応する。深さd9は、好ましくは0.20×d8以上、より好ましくは0.50×d8以上、さらに好ましくは0.50×d8~0.90×d8である。
【0197】
図8Fを参照すると、
図8Aに示されている打撃フェース814の部分8Fがより詳細に示されている。図示されているように、正面図で見ると、凹部824(および対応する充填材料836)は、円838の一部の形状を有する。好ましくは、凹部824は、そのような円838の仮想中心840が溝816の外周の外側に(すなわち、好ましくは、凹部824が溝816の上部側壁820(a)と交差する場合には溝816の上に、凹部824が溝816の下部側壁820(b)と交差する場合には溝816の下に)位置するように構成される。
【0198】
好ましくは、溝816は溝幅d12を含む。いくつかの実施形態では、溝幅d12は、溝816の長さにわたって概ね一定であることが好ましい。さらに、溝幅d12は、(特に
図8Cに示されているように)複数の溝816のそれぞれを通る溝から溝まで一定であることが好ましい。しかしながら、代替の実施形態では、溝の深さd12は、溝816の長さに沿って、および/または複数の溝816全体にわたって溝ごとに変化する。複数の溝816の各々はまた、距離d13だけ互いに間隔を置いて配置されることが好ましく、その距離d13は、複数の溝816の各々の隣接対の溝816間で一定であるのが好ましい。しかし、代替の実施形態では、間隔d13は異なってよい。
【0199】
円838の中心840は、溝816の側壁820から距離d11だけ、すなわち、0.05×d12以上、より好ましくは0.10×d12以上、さらにより好ましくは0.25×d12以上の距離だけ離間される。また、距離d11は、0.50×d13以下であり、より好ましくは0.25×d13以下である。凹部824の半径Rは、d11未満であることが好ましい。Rは、0.10×d11以上、および/または0.50×d11以下であることが好ましい。
【0200】
追加的に、または代替的に、円838の円周は上部側壁820(a)と交差して内角φ、すなわち90°以下、より好ましくは2°~90°、より好ましくは40°~85°、さらに好ましくは45°~85°を形成する。
【0201】
上記の特性は、充填材料836を凹部824内で元の状態のまま保ち、例えば、典型的な使用時の剪断によって、容易に除去されないようにするなどの利点をもたらすと考えられる。その結果、後で塗布される(または予め塗布された)接着剤、または比較的高い硬さの材料の必要性が低減される。より高い弾性(または可撓性または延性)を有する材料が、「飛び出す」心配のない充填材料836として実現され得る。加えて、上述したのと同様に、これらの特性は、単位インパクト面積当たりの溝縁部の範囲を増加させ、その結果、ゴルフボールと打撃フェース814との間の改善され、より純粋な相互作用が得られる。しかしながら、このような特性により、角度φが大きすぎると製造が困難になり、および/または損傷しやすく、摩耗しやすく、または怪我を引き起こし得る鋭い角部が生じ得ることも考えられる。
【0202】
図8Gを参照すると、
図8A~
図8Fに示されている様々なゴルフクラブヘッドの態様を製造するための例示的なプロセスが記載されている。ステップ902において、中間段階のゴルフクラブヘッド本体が提供される。好ましくは、中間本体は、略平面状の打撃フェースを含んでよく、打撃フェースは、研磨、メディアブラスト加工、表面フライス加工、レーザーエッチング、化学エッチング、物理蒸着、陽極酸化処理、めっき、塗装、または性能上の利益を付与し得る任意の他の周知の仕上げ処理を含んでも含まなくてもよい。
【0203】
ステップ904において、中間クラブヘッドの打撃フェースに複数の凹部(例えば、凹部824)が形成される。好ましくは、そのような形成は、手で、またはコンピュータ数値制御(CNC)機械と組み合わせて操作されるドリルプレスによるものである。しかしながら、代替として、パンチング、スタンピング、化学的またはレーザによる材料除去プロセスがこの目的のために使用される場合もある。
【0204】
任意で、ステップ904に続いて、打撃フェース814に対して追加のまたは第1の仕上げプロセスが実行される。例えば、ステップ906は、研磨、メディアブラスト加工、表面フライス加工、レーザーエッチング、化学エッチング、物理蒸着、陽極酸化処理、めっき、塗装、または性能上の利益を付与し得る任意の他の周知の仕上げ処理のいずれかを打撃フェースに適用するステップを含んでよい。このようにして、比較的柔らかい材料を含み、仕上げ処理に一般的に使用される研磨剤および化学物質に敏感であり得る充填材料を導入する前に、凹部824の作製で形成されたあらゆるバリまたは他の異形物が除去または最小化され得る。
【0205】
ステップ908において、凹部824は充填材料で充填される。好ましくは、例えば、ポリマー材料の形態の充填材料が、適切な位置に注入され、そのまま硬化される。あるいは、予め形成された複数のインサートが凹部824内に配置されてもよい。そのような場合、化学的接着剤がさらに導入されてよく、および/または、そのように後で取り付けられるインサートを打撃フェースに固定するために機械的手段が使用されてよい。そのような機械的手段は、ねじ、クランプ、磁石、締まり嵌め部品、または係止可能な向きに変形するように構成された変形可能な部品を含んでよい。いくつかの態様では、そのようなインサートまたは充填材料は取り外し可能/交換可能としてよく、そのことにより摩耗した材料を交換することができ、または異なる材料特性(例えば、質量、密度、またはデュロメータ)を有するインサートが複数の凹部824間で交換されてよい。
【0206】
ステップ910において、溝816は、凹部824と交差するように打撃フェース814内に形成される。好ましくは、溝816は、フライス盤が打撃フェースの一般平面に垂直な軸を中心として回転するフライス加工によって形成される。しかしながら、他の態様では、溝816は、フライス盤が打撃フェース814の一般平面に平行な軸を中心として回転する「スピンフライス加工」によって形成される。
【0207】
ステップ912において、溝816および/または充填材料836は、それらの面を後続の仕上げプロセス(例えば、ステップ914に関して以下に説明する処理)から保護するために、固体マスク(例えば、耐久性のあるテープ)および/または液体マスクを用いて覆われる。
【0208】
任意で、ステップ914において、さらなる仕上げプロセスが実行される。このようなプロセスは、研磨、メディアブラスト加工、表面フライス加工、レーザーエッチング、化学エッチング、物理蒸着、陽極酸化処理、めっき、塗装、または性能上の利益を付与し得る任意の他の周知の仕上げ処理などの処理を含んでよい。そのようなプロセスは、溝816のフライス加工から形成されたバリまたは他の異形物を除去するのに役立ち得る。
【0209】
図8A~
図8Gに関連して説明した上記の態様およびその形成プロセス方法は、同様の性能に関連する利益を提供するために、例えば、ドライバ型、ウッド型、ハイブリッド型、アイアン型、またはウェッジ型のような他の型のゴルフクラブに適用され得る。本開示の精神または範囲から逸脱することなく、変形形態(例えば、1つまたは複数の規則公布団体(例えば、USGA)の規則に適合した変形形態)が作成されてもよい。任意の製造方法に関して説明されているプロセス、例えば、
図8Gに関して説明されているプロセスは、別段の指示がない限り、時間的に記載されている順序で実施される必要はない。
【0210】
この記述されている説明は、本発明を開示するための例を使用し、当業者が、任意のデバイスまたはシステムの作成および使用、および任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実施を可能にする。本発明の特許を受ける範囲は、請求項によって定義され、当業者が考え得る他の例を含み得る。そのような他の例は、請求項の文言と異ならない構造的要素を有する場合に、または請求項の文言と非実質的に異なる等価の構造要素を含む場合に、請求項の範囲内にあるものとする。