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特許7059608高分子電解質組成物、それを用いた高分子電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置および電気化学式水素圧縮装置、ならびに高分子電解質組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】高分子電解質組成物、それを用いた高分子電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置および電気化学式水素圧縮装置、ならびに高分子電解質組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1032 20160101AFI20220419BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220419BHJP
   H01M 8/1081 20160101ALI20220419BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20220419BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20220419BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20220419BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20220419BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20220419BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220419BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M8/1032
H01M8/04 N
H01M8/0656
H01M8/10 101
H01M8/1081
B01J23/42 M
C08L81/02
C08L101/12
C25B1/02
C25B9/23
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017237371
(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公開番号】P2018110108
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2016240067
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 純平
(72)【発明者】
【氏名】梅田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】出原 大輔
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070213(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157389(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133594(WO,A1)
【文献】特開2012-072222(JP,A)
【文献】特開昭61-120833(JP,A)
【文献】特開2013-080701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
C08L 101/12
C08L 81/02
H01B 1/06
H01B 13/00
C25B 1/02
C25B 9/23
B01J 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性基含有パーフルオロ系ポリマーおよびイオン性基含有炭化水素系ポリマーから選ばれる高分子電解質(A)と、
下記一般式(B1)で表される直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)および下記一般式(C1)で表される環状ポリアリーレンスルフィド(C)からなる群より選択されるポリアリーレンスルフィドと、
を含有する高分子電解質組成物であって、
膜厚15μmに製膜した状態において、透過型電子顕微鏡観察により前記ポリアリーレンスルフィドを主成分とする2nm以上の相分離部分が観察されない高分子電解質組成物。
【化1】
(一般式(B1)中、nは3以上の整数を表し、Arはアリーレン基を表す。)
【化2】
(一般式(C1)中、nは3以上の整数を表し、Ar10はアリーレン基を表す。)
【請求項2】
前記ポリアリーレンスルフィドとして、前記一般式(C1)中のnが異なる複数種の環状ポリアリーレンスルフィド(C)を含む、請求項1に記載の高分子電解質組成物。
【請求項3】
前記環状ポリアリーレンスルフィド(C)中、前記一般式(C1)中n=6である環状ポリアリーレンスルフィドの含有量が50重量%未満である、請求項2に記載の高分子電解質組成物。
【請求項4】
前記ポリアリーレンスルフィドとして、下記一般式(C9)で表される環状ポリフェニレンスルフィドを含む、請求項1~3のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【化3】
(一般式(C9)中、nは3以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)が、下記式(B9)で表される直鎖ポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の高分子電解質組成物。
【化4】
(式(B9)中、nは3以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記ポリアリーレンスルフィドの含有量合計が高分子電解質(A)に対して0.002重量%以上、15重量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項7】
前記高分子電解質(A)がイオン性基含有炭化水素系ポリマーである、請求項1~6のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜。
【請求項9】
請求項8に記載の高分子電解質膜に触媒層を積層した触媒層付電解質膜。
【請求項10】
請求項8に記載の高分子電解質膜を用いて構成された膜電極複合体。
【請求項11】
請求項8に記載の高分子電解質膜を用いて構成された固体高分子型燃料電池。
【請求項12】
請求項8に記載の高分子電解質膜を用いて構成された固体高分子型水電解式水素発生装置。
【請求項13】
請求項8に記載の高分子電解質膜を用いて構成された電気化学式水素圧縮装置。
【請求項14】
イオン性基含有パーフルオロ系ポリマーおよびイオン性基含有炭化水素系ポリマーから選ばれる高分子電解質(A)と下記化学式(B1)で表される直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)を、これらの両方を溶解可能な有機溶媒中で、該有機溶媒の沸点以上、かつ200℃以上の温度に加熱することを特徴とする高分子電解質組成物の製造方法。
【化5】
(一般式(B1)中、nは任意の3以上の整数を表し、Arはアリーレン基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子電解質組成物、それを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置および電気化学式水素圧縮装置、ならびに高分子電解質組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子形燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
【0003】
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly;以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は、イオン性基含有ポリマー(高分子電解質材料)を製膜して得られる膜であるが、通常、耐久性を高めるために添加剤等を配合した組成物高分子電解質組成物を製膜することにより作製される。
【0004】
これまで高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(デュポン社製)が広く用いられてきた。一方、高価なナフィオン代替し得る高分子電解質膜として、炭化水素系電解質膜の開発も近年活発化してきている。
【0005】
しかしながら、これらの高分子電解質膜はいずれも、使用中の化学劣化が課題であった。化学劣化の要因としては、様々の原因が推定されている。その1つとして、発電時に主に電極にて発生する過酸化物(例えば過酸化水素)や、前記過酸化物から発生するラジカル(例えばヒドロキシラジカル)による膜の劣化が挙げられる。ポリマー鎖や側鎖が切断されることにより、フッ素系高分子電解質膜であれば、排水中に含まれるフッ素イオンの溶出量、炭化水素系高分子電解質膜であれば、高分子電解質の分子量の低下として観察されることがある。
【0006】
こうした状況において、パーフルオロ系電解質膜や炭化水素系電解質膜に酸化防止剤として硫黄化合物を配合することにより、化学的安定性を向上し、耐久性を改善する検討が行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、芳香族炭化水素系電解質とポリフェニレンスルフィド樹脂を含有する高分子電解質組成物が提案されている。また、特許文献2には、パーフルオロ系電解質とポリフェニレンスルフィド樹脂を含有する高分子電解質組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-67686号公報
【文献】特開2013-95757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および2では、電解質膜製膜前のろ過によってポリフェニレンスルフィド樹脂が取り除かれてしまったり、ポリフェニレンスルフィドの粗大粒子が電解質膜に残存したりする場合があるため、十分な酸化劣化防止効果および機械強度を得られなかった。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、長時間に渡る燃料電池や水電解装置の運転中においても酸化劣化防止効果の低下が少なく、化学的安定性の高い高分子電解質組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を克服すべく鋭意検討を重ねた結果、高分子電解質にポリアリーレンスルフィドを均一に配合することにより優れた化学的安定性を維持できることを究明し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の高分子電解質組成物は、高分子電解質(A)と、後述する一般式(B1)で表される直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)および後述する一般式(C1)で表される環状ポリアリーレンスルフィド(C)からなる群より選択されるポリアリーレンスルフィドと、を含有する高分子電解質組成物であって、膜厚15μmに製膜した状態において、透過型電子顕微鏡観察により前記ポリアリーレンスルフィドを主成分とする2nm以上の相分離部分が観察されない高分子電解質組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強い酸化雰囲気に耐えうる優れた化学的安定性が維持される高分子電解質組成物、およびそれを用いた高分子電解質膜等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[高分子電解質(A)]
本発明において、高分子電解質(A)とはイオン性基を含有することによりプロトン伝導性を示す高分子を指す。代表的な高分子電解質としては、イオン性基含有パーフルオロ系ポリマーとイオン性基含有炭化水素系ポリマーが挙げられるが、本発明における高分子電解質(A)はこれらのいずれであってもよい。
【0015】
ここで、パーフルオロ系ポリマーとは、ポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素原子の大部分または全部がフッ素原子に置換されたものを意味し、典型的にはポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素原子の85%以上がフッ素原子で置換されたポリマーである。イオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーの代表例としては、Nafion(登録商標)(デュポン社製)、フレミオン(登録商標)(旭硝子社製)およびアシプレックス(登録商標)(旭化成社製)などの市販品を挙げることができる。これらのイオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーの構造は下記一般式(N1)で表すことができる。ただし、本発明で使用するパーフルオロ系ポリマーはこれらに限定されるものではない。
【0016】
【化1】
【0017】
(一般式(N1)中、n1、n2はそれぞれ独立に自然数を表す。k1およびk2はそれぞれ独立に0~5の整数を表す。)
また、炭化水素系ポリマーとは、ポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素原子の大部分または全部が、ハロゲン基および/またはハロゲン化アルキル基に置換されずに残存するものを意味し、典型的にはポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基のハロゲン基および/またはハロゲン化アルキル基数に対する水素原子数の比が5以上であるポリマーである。
【0018】
パーフルオロ系ポリマーは、非常に高価であり、ガスクロスオーバーが大きいという課題があるため、本発明で使用する高分子電解質(A)としては、機械強度、物理的耐久性、化学的安定性などの点から、炭化水素系ポリマーが好ましく、特に主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系ポリマーがより好ましい。この場合、芳香環は炭化水素系芳香環だけでなく、ヘテロ環を含んでいても良い。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもかまわない。芳香族ユニットは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基等の炭化水素系基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、ホスホン酸基、水酸基等、任意の置換基を有していても良い。
【0019】
芳香族炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン等のポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、特定のポリマー構造を限定するものではない。
【0020】
これらの芳香族炭化水素系ポリマーのなかでも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド等のポリマーが、機械強度、物理的耐久性、加工性および耐加水分解性の面からより好ましい。
【0021】
なかでも、主鎖骨格構造のパッキングの良さおよび極めて強い分子間凝集力から結晶性を示し、一般的な溶剤に全く溶解しない性質を有する点から、また引張強伸度、引裂強度および耐疲労性の点から、その分子鎖に少なくともエーテル結合およびケトン結合を有している、芳香族ポリエーテルケトン(PEK)系ポリマーが特に好ましい。
【0022】
高分子電解質(A)のイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基または硫酸基を有することがより好ましく、原料コストの点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
【0023】
高分子電解質(A)がスルホン酸基を有する場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1meq/g以上5meq/g以下が好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、最も好ましくは2meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは3meq/g以下である。イオン交換容量が0.1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、5meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。なお、本明細書において、イオン交換容量は中和滴定法により求めた値と定義し、イオン交換容量の算出は、実施例に記載の方法で行うものとする。
【0024】
また、イオン性基は、塩となっている場合を含むものとする。このような塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。好ましい金属カチオンの具体例としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等のカチオンが挙げられる。
【0025】
高分子電解質(A)の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万~500万であることが好ましく、1万~50万であることがより好ましい。重量平均分子量が0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分な場合がある一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になる場合がある。
【0026】
本発明に使用する高分子電解質(A)としては、燃料電池性能、水電解装置性能の点から、イオン性セグメント(A1)と非イオン性セグメント(A2)を有するブロックポリマーを用いることが好ましい。イオン性セグメント(A1)とは、イオン性基を含有するセグメントのことであり、非イオン性セグメント(A2)とは、イオン性基を実質的に含有しないセグメントのことである。なお、イオン性基を実質的に含有しない、とは、電解質膜としての性能に決定的に悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基が少量含まれているセグメントであってもよいことを意味する。
【0027】
イオン性セグメント(A1)、非イオン性セグメント(A2)の数平均分子量は、燃料電池性能、水電解装置性能と物理的耐久性のバランスから、それぞれ0.5万以上が好ましく、より好ましくは1万以上、さらに好ましくは1.5万以上である。また、5万以下が好ましく、より好ましくは、4万以下、さらに好ましくは3万以下である。
【0028】
イオン性セグメント(A1)と、非イオン性セグメント(A2)のモル組成比(A1/A2)は、0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。モル組成比A1/A2が、0.2未満あるいは5を越える場合には、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足したり、耐熱水性や物理的耐久性が不足したりする傾向がある。
【0029】
このようなブロックポリマーとしては、イオン性セグメント(A1)が下記一般式(S1)で、非イオン性セグメント(A2)が下記一般式(S2)で表される構成単位を含有するものがさらに好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
(一般式(S1)中、Ar~Arは任意のアリーレン基を表し、ArおよびArの少なくとも1つは置換基としてイオン性基を有している。ArおよびArは置換基としてイオン性基を有しても有しなくても良い。Ar~Arはイオン性基以外の基で任意に置換されていても良い。Ar~Arは構成単位ごとに同じでも異なっていてもよい。*は一般式(S1)または他の構成単位との結合部位を表す。)
【0032】
【化3】
【0033】
(一般式(S2)中、Ar~Arは任意のアリーレン基を表し、任意に置換されていても良いが、イオン性基を有しない。Ar~Arは構成単位ごとに同じでも異なっていてもよい。*は一般式(S2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
上記一般式(S1)および(S2)において、Ar~Arとしては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基が挙げられ、好ましくはフェニレン基であり、最も好ましくはp-フェニレン基である。
【0034】
イオン性セグメント(A1)中に含まれる一般式(S1)で表される構成単位の含有量は、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0035】
非イオン性セグメント(A2)中に含まれる一般式(S2)で表される構成単位の含有量は、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。イオン性基を含有しないセグメント(A2)中に含まれる一般式(S2)の含有量が20モル%未満である場合には、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性が低下する傾向がある。
【0036】
上記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位を含有するブロックポリマーは、電子吸引性のケトン基で全てのアリーレン基が化学的に安定化されており、なおかつ、結晶性付与による強靱化、ガラス転移温度低下による柔軟化によって物理的耐久性が高くなる。
【0037】
また、高分子電解質(A)としては、ナノまたはミクロ相分離構造を形成し得るブロックポリマーを用いることが好ましい。すなわち、高分子電解質膜等に成形した際に、イオン性セグメント(A1)と、非イオン性セグメント(A2)がそれぞれ集合し、ナノまたはミクロンオーダーのドメインに相分離し、各ドメインが特定の秩序を持って配置し得るものを用いることが好ましい。ここで、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。このような相分離構造の様態としては、共連続、ラメラ、シリンダー、海島が挙げられるが、本発明における高分子電解質(A)は、共連続様の相分離構造を形成し得るものであることが特に好適である。
【0038】
[ポリアリーレンスルフィド]
本発明の高分子電解質組成物は、後述する一般式(B1)で表される直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)および後述する一般式(C1)で表される環状ポリアリーレンスルフィド(C)からなる群より選択されるポリアリーレンスルフィドを含有する。本発明の高分子電解質組成物は、これらの両方を含有していてもよい。以降、本明細書において、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)および環状ポリアリーレンスルフィド(C)を総称して、「ポリアリーレンスルフィド(BC)」という場合がある。
【0039】
燃料電池におけるポリアリーレンスルフィドによる化学的耐久性向上のメカニズムは十分に解明されていない。しかし、本発明をメカニズムにより限定する趣旨ではないが、発明者らは、ポリアリーレンスルフィド中の2価および/または4価の硫黄原子が4価および/または6価の硫黄酸化物に酸化されることで、過酸化物分解剤として機能するとともに、ポリアリーレンスルフィドが、触媒層中の金属溶出によって発生したイオン(Fe2+、Pt2+など)に配位し、不活性化する金属不活性化剤としても機能するものと考えている。また、水電解装置における化学的耐久性向上のメカニズムも十分に解明されていない。発明者らは、高電位となる陽極触媒層から溶出する金属(Ir3+など)不活性化剤としての機能が大きいのではないかと考えている。
【0040】
そのため、化学的耐久性向上のためには、ポリアリーレンスルフィド内における2価および/または4価の硫黄原子の含有量が重要であり、2価の硫黄原子の含有量がさらに重要である。そのため、本発明においては、2価硫黄原子を20重量%以上有するポリアリーレンスルフィド(BC)が好ましい。
【0041】
ポリアリーレンスルフィド(BC)としては、膜外に溶出することなく効果を維持できる観点から、強酸性水溶液に溶解しないものが好適である。ポリアリーレンスルフィド(BC)としては、60℃の10%硫酸に対する溶解度が100mg/L以下のものが好ましく、20mg/L以下のものがより好ましく、4mg/L以下のものが一層に好ましい。
【0042】
ポリアリーレンスルフィド(BC)の含有量は、発電性能、水電解性能と耐久性のバランスを考慮して適宜選択することができ、限定されるものではないが、高分子電解質(A)に対して0.002重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、ポリアリーレンスルフィドの含有量は、高分子電解質(A)に対して15重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。0.002重量%未満である場合は、燃料電池、水電解装置とした際の耐久性向上効果が十分に得られない場合がある。また、15重量%を越える場合は、高分子電解質膜とした際にプロトン伝導性が不足する場合がある。
【0043】
[直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)]
本発明における直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)は、下記一般式(B1)で表される化合物である。
【0044】
【化4】
【0045】
(一般式(B1)中、nは3以上の整数を表し、Arはアリーレン基を表し、置換基としてイオン性基を有さない。)
一般式(B1)中のArとしては下記一般式(B2)~(B7)または式(B8)で表されるアリーレン基を例示できる。
【0046】
【化5】
【0047】
(一般式(B2)~(B7)中のR、Rは水素または炭素数1から4のアルキル基である。)
Arが一般式(B2)~(B4)で表されるアリーレン基であると、化学的耐久性向上に寄与する2価硫黄原子の含有量が大きくなるため、好ましい。また、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)内の共有電子対が非局在化されることにより、含有する2価硫黄原子の過酸化物分解効果が大きくなるという観点からは、Arが一般式(B2)または(B5)で表される基であることが好ましい。
【0048】
さらに、2価硫黄原子の含有量が大きくなる観点から、前記一般式(B2)~(B7)におけるR、Rは水素原子であることが好ましい。
【0049】
以上を総合的に考えると、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)として最も好適な例は、下記式(B9)であらわされる直鎖ポリフェニレンスルフィドである。
【0050】
【化6】
【0051】
(式(B9)中、nは3以上の整数を表す。)
一般的に、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)は、主鎖骨格構造のパッキングの良さおよび極めて強い分子間凝集力から結晶性を示し、室温では一般的な溶剤にほとんど溶解しない。そのため、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)を混合した電解質組成物からなる高分子電解質膜においては、高分子電解質ポリマーと直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)の相分離が生じ、燃料電池や水電解装置運転中における高分子電解質膜の膨潤・収縮により、相分離構造の界面部分において破断し、物理的耐久性が低下することがある。加えて、相分離構造の界面部分のみにおいて高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)とが接触している状態であるため、前記ポリアリーレンスルフィドによる化学的耐久性向上の効果が低くなる。そのため、後述する方法を用いて直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)を溶解することにより、2nm以上の相分離部分が観察されない状態とすることが好ましい。
【0052】
直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)に含まれる前記一般式(B1)式中の繰り返し数nは、3以上であれば特に制限はないが、10~150が好ましい範囲として例示できる。繰り返し数nが小さい場合、燃料電池や水電解装置作動中に、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)が高分子電解質膜外へ溶出しやすくなる傾向がある。また、繰り返し数nが大きい場合、高分子電解質と混合した際の分散性が悪くなる傾向がある。
【0053】
[環状ポリアリーレンスルフィド(C)]
本発明における環状ポリアリーレンスルフィドは、下記一般式(C1)で表される化合物である。
【0054】
【化7】
【0055】
(一般式(C1)中、nは3以上の整数を表し、Ar10は置換基としてイオン性基を有しても有しなくても良いアリーレン基を表す。)
一般式(C1)中のAr10としては下記一般式(C2)~(C7)または式(C8)で表されるアリーレン基を例示できる。
【0056】
【化8】
【0057】
(一般式(C2)~(C7)中のR、Rは水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、炭素数1から4のハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基から選ばれた置換基である。)
ここで、Ar10が一般式(C2)~(C4)であらわされるアリーレン基であると、化学的耐久性向上に寄与する2価硫黄原子の含有量が大きくなるため、好ましい。また、環状ポリアリーレンスルフィド(C)内の共有電子対が非局在化されることにより、含有する2価硫黄原子の過酸化物分解効果が大きくなるという観点からは、一般式(C2)または(C5)で表される基であることが好ましい。
【0058】
さらに、2価硫黄原子の含有量が大きくなる観点から、前記一般式(C2)~(C7)内におけるR、Rは水素原子であることが好ましい。
【0059】
以上を総合的に考えると、環状ポリアリーレンスルフィド(C)として最も好適な例は、下記式(C9)であらわされる環状ポリフェニレンスルフィドである。
【0060】
【化9】
【0061】
(式(C9)中、nは3以上の整数を表す。)
直鎖ポリアリーレンスルフィドとは異なり、環状ポリアリーレンスルフィド(C)は、分子鎖同士が絡まり難く、強固な結晶を形成しないため、高分子電解質(A)と環状ポリアリーレンスルフィド(C)を混合した均一な電解質組成物を容易に得ることが可能となる。また、高分子電解質(A)との相分離が生じにくいため、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)の場合のような処理を行わなくとも2nm以上の相分離部分が観察されない高分子電解質組成物を得ることができる。
【0062】
環状ポリアリーレンスルフィド(C)の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2013-241590に記載された製造方法を例示できる。具体的には、例えば、アルカリ金属硫化物等のスルフィド化剤と、パラジクロロベンゼンなどのジハロゲン化芳香族化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン等の有機極性溶媒中で接触させることによって得ることができる。
【0063】
環状ポリアリーレンスルフィド(C)に含まれる前記一般式(C1)式中の繰り返し数nは、3以上であれば特に制限はないが、3~25が好ましく、4~15がより好ましい範囲として例示できる。繰り返し数nが小さい場合、燃料電池や水電解装置作動中に、環状ポリアリーレンスルフィド(C)が高分子電解質膜外へ溶出しやすくなる傾向がある。また、繰り返し数nが大きい場合、高分子電解質と混合した際の分散性が悪くなる傾向がある。
【0064】
なお、環状ポリアリーレンスルフィド(C)における一般式(C1)式中の繰り返し数nは、UV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーによって各ピークを分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルによって各ピークを定性すると共に、質量分析によって分子量測定を行うことで可能である。
【0065】
また、環状ポリアリーレンスルフィド(C)としては、前記一般式(C1)式中の繰り返し数nが異なる複数種の環状ポリアリーレンスルフィドの混合物であることが好ましい。前記(C1)式中の繰り返し数nが単一の環状ポリアリーレンスルフィドは単結晶として得られるため、高分子電解質と混合した際の分散性が悪くなる場合がある。環状ポリアリーレンスルフィド(C)として異なるn数を有する化合物の混合物を用いる場合、その混合比率に特に制限はないが、本発明の効果を発現させるためには、配合する全ての環状ポリアリーレンスルフィド(C)中において、環状ポリアリーレンスルフィドの中で、最も融点が高く、結晶化しやすいn=6の環状ポリアリーレンスルフィドの含有量が50重量%未満であることが好ましく、30重量%未満であることがより好ましく、10重量%未満であることがさらに好ましい。
【0066】
[高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)とを含有する高分子電解質組成物の製造方法]
上述したとおり、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)は、室温では一般的な溶媒にほとんど溶解しない。そのため、高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)とを含有する高分子電解質組成物を得るためには、高分子電解質(A)と下記化学式(B1)で表される直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)を、これらの両方を溶解可能な有機溶媒中で、該有機溶媒の沸点以上の温度に加熱することにより溶解することが好ましい。
【0067】
前記高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)の両方を溶解可能な有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、クロロホルム等のアルキルハロゲン化物、o-ジクロロベンゼンや1-クロロナフタレン等の芳香族ハロゲン化物、N-メチル-2-ピロリドン等のN-アルキルピロリドン類、N-メチル-ε-カプロラクタム等のN-アルキルカプロラクタム類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N、N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等の極性溶媒の中から少なくとも一種選ばれる溶媒が挙げられる。この中でも、直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)の溶解度から特にN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
【0068】
溶解温度は使用する溶媒の種類や直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)の濃度によって異なるが、常圧下における溶媒の還流温度以上であることが好ましい。通常は200℃以上、好ましくは210℃以上である。また、通常は300℃以下、好ましくは220℃以下である。溶解温度が300℃より高いと高分子電解質(A)が分解することがある。また、200℃未満では直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)を溶解するために大量の溶媒が必要となることがある。ここで、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、還流温度とは溶媒が沸騰と凝縮を繰り返している状態の温度である。前記高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)と両方を溶解可能な有機溶媒の沸点以上の温度に加熱する方法としては、例えば常圧を超える圧力環境下で加熱する方法が挙げられる。この高圧環境を簡易に構築する方法として、前記高分子電解質(A)と直鎖ポリアリーレンスルフィド(B)と両方を溶解可能な有機溶媒とを、密閉した反応器内で加熱する方法が例示できる。
【0069】
[高分子電解質(A)と環状ポリアリーレンスルフィド(C)とを含有する高分子電解質組成物の製造方法]
高分子電解質(A)と環状ポリアリーレンスルフィド(C)とを含有する高分子電解質組成物を得るためには、高分子電解質(A)と環状ポリアリーレンスルフィド(C)の両方を溶解可能な有機溶媒とを所定の割合で混合し、従来公知の方法、例えばホモミキサー、ホモディスパー、ウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、ボールミル、マグネチックスターラー、メカニカルスターラーなどの混合機を用いて混合することが好ましい。
【0070】
回転式混合機の回転速度には、均一な電解質組成物溶液を調製することができれば特に制限は無いが、製造効率の観点から50回/分以上が好ましく、100回/分以上がより好ましく、200回/分以上がさらに好ましい。回転数に特に上限値は無いが、現実的には、20,000回/分または30,000回/分が混合機の性能上の限界となる場合が多い。また、混合機による混合時間は、均一な電解質組成物溶液を調整することができれば特に制限は無いが、1分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。混合時の回転数や混合時間が不十分である場合、均一な電解質組成物溶液を得ることができないことがある。
【0071】
高分子電解質(A)と環状ポリアリーレンスルフィド(C)の両方を溶解可能な有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのN-アルキルピロリドン類、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。
【0072】
[高分子電解質(A)とポリアリーレンスルフィド(BC)とを含有する高分子電解質組成物]
本発明の高分子電解質組成物には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内でさらに添加することができる。
【0073】
本発明の高分子電解質組成物は、特に、高分子電解質成型体として好適に用いられる。高分子電解質成型体は、膜状の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、発泡体状など、使用用途によって様々な形態で有り得る。また、特に、膜状の高分子電解質成形体(高分子電解質膜)とした上で、触媒層付き電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、および固体高分子形水電解式水素発生装置の部材として用いるために最適である。
【0074】
高分子電解質組成物を膜状に成形する、すなわち本発明の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜を得る方法としては、特に限定されるものではない。好適には高分子電解質組成物をポリエチレンテレフタレート、ガラス基板等の支持体上に流延塗布した後、加熱等の方法により有機溶媒を除去する方法が例示される。
【0075】
高分子電解質組成物を支持体上に流延する方法としては、公知の方法を用いることができるが、一定の濃度の溶液を一定の厚みになるように流延することが好ましい。例えば、ドクターブレード、アプリケーター、バーコーターなど、一定のギャップの空隙に溶液を押しこんで流延厚みを一定にする方法や、スリットダイなどを用いて、高分子電解質組成物を一定速度で供給して流延する方法、グラビアロールを用いて一定量の高分子電解質組成物を支持体上に転写する方法が挙げられる。
【0076】
本発明の高分子電解質組成物は、膜厚15μmに製膜した状態において、透過型電子顕微鏡観察(以下「TEM」と略称することがある)によりポリアリーレンスルフィド(BC)を主成分とする2nm以上の相分離部分が観察されないものである。膜厚15μmに製膜する方法としては、高分子電解質組成物の組成などによって適宜選択可能だが、アプリケーターを用いてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理する方法を例示できる。ポリアリーレンスルフィドを主成分とする2nm以上の相分離部分が観察される場合、燃料電池、水電解装置運転中における高分子電解質膜の膨潤・収縮により、相分離構造の界面部分において破断しやすくなるため、耐久性が低下する傾向がある。加えて、相分離の界面部分のみにおいてポリアリーレンスルフィドと高分子電解質とが接触している状態であるため、高分子電解質中の過酸化物を分解する効果が充分に得られない場合がある。
【0077】
高分子電解質(A)とポリアリーレンスルフィド(BC)との相分離構造の有無は、高分子電解質膜の厚み方向の断面について、15μm×15μmの領域をTEMで観察し、相分離構造が観察されるか否かによって確認することができる。高分子電解質(A)とポリアリーレンスルフィド(BC)が均一に混合せず相分離構造を形成している場合、染色処理を施さずにTEM観察を行った場合のTEM像に、黒い島状の粒子(島相、或いは島粒子)が、灰色又は白色の海相(連続相)に分散した状態が観察される。島相(島粒子)の形状は、円形、楕円形、多角形、不定形等、特に限定されない。海/島構造において、黒い島粒子のコントラストは主にポリアリーレンスルフィドに起因し、白色の海(連続相)の部分は主に高分子電解質(A)に起因するものと考えられる。
【0078】
なお、島相を構成する物質の同定の方法としては、高分子電解質膜を全量溶解し、UV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーによって同定する方法が挙げられる。この場合、TEM-EDXを用いて島相の成分分析を実施し、結果から類推される物質を高速液体クロマトグラフィーのリファレンスとして用いることで、同定が可能となる。なお、海相に関しては、ポリマーの構造やTEM観察のコントラストによっては白色と灰色の共連続様またはラメラ様の相分離構造を形成していることがあるが、特に限定されるものではない。ポリアリーレンスルフィドを主成分とする相分離構造のサイズは、実施例に記載の方法により観察された島粒子の算術平均粒子径を計測することで求められる。
【0079】
[固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置および電気化学式水素圧縮装置]
本発明の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池、レドックスフロー電池、固体高分子形水電解式水素発生装置、クロロアルカリ電解装置、電気化学式水素圧縮装置等に用いることができ、中でも固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置に好適に用いることができる。
【0080】
固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解式水素発生装置はいずれも、プロトン伝導性高分子電解質膜の両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された構造となっている。このうち、電解質膜の両面に触媒層を積層させたもの(即ち触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は触媒層付電解質膜(Catalyst Coated Membrane;CCM)と称され、さらに電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)と称されている。
【0081】
CCMは、高分子電解質膜表面に、触媒層を形成するための触媒層ペースト組成物を塗布及び乾燥させることで作製することができる。あるいは、予め触媒層のみを基材上に作製し、この基材上の触媒層を高分子電解質膜に転写する方法(転写法)によっても作製することができる。
【0082】
MEAを作製する場合は、特に制限はなく公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
【実施例
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
【0084】
(1)数平均分子量、重量平均分子量
高分子電解質(A)の数平均分子量、重量平均分子量はGPC法により測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC-8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM-H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N-メチル-2-ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN-メチル-2-ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/min、温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
【0085】
(2)イオン交換容量
高分子電解質膜のイオン交換容量は、中和滴定法により測定した。測定は3回行って、その平均値を取った。
(i)プロトン置換し、純水で十分に洗浄した膜状試料の表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
(ii)膜状試料に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換した。
(iii)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
(iv)イオン交換容量は下記の式により求めた。
【0086】
イオン交換容量(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/膜状試料の乾燥重量(g)
(3)膜厚
高分子電解質膜の膜厚は、ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG-20にセットしたミツトヨ製ID-C112型を用いて測定した。
【0087】
(4)相分離構造の観察
高分子電解質膜における硫黄含有添加剤に由来する島状の相分離構造の有無は、透過電子顕微鏡(H7100FA;日立製作所社製)により確認した。作成した高分子電解質膜の中央部から採取した試料片を可視硬化樹脂で包埋し、可視光を30秒照射し固定した。ウルトラミクロトームを用いて室温下で薄片100nmを切削し、得られた薄片をCuグリッド上に回収しTEM観察に供した。観察は加速電圧100kVで実施し、撮影は、写真倍率として×40,000になるように撮影を実施した。硫黄含有添加剤に由来する相分離構造が確認された場合、得られた8bit画像に対し、シェーディング、空間フィルター等の補正処理を実行したのち、2値化処理を実施し、濃色部位の算術平均粒子径を求めた。相分離構造部位を任意に3点撮影し、求めた算術平均粒子径の平均を相分離のサイズとした。2値化処理の閾値は、観察した膜によって適宜調節した。
【0088】
また、2wt%酢酸鉛水溶液中に膜状の試料片を浸漬させ、25℃下で24時間放置する染色工程を経て、同様のTEM観察を実行することで、高分子電解質(A)に由来する海島状の相分離構造の有無を確認した。高分子電解質(A)に由来する相分離構造が確認された場合、上記硫黄含有添加剤に由来する島状の相分離構造部位を避けて撮影を実施した。得られた8bit画像に対し、シェーディング、空間フィルター等の補正処理を実行したのち、二値化処理を実施し、(A1)を含むドメインと(A2)を含むドメインを色分けし、各ドメイン間距離を計測した上で、その平均値を相分離のサイズとした。二値化処理の閾値は、観察した膜によって適宜調節した。
【0089】
(5)高分子電解質膜を使用した膜電極複合体(MEA)の作製
BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として高分子電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、評価用MEAを作製した。
【0090】
(6)低加湿発電性能
上記(5)で作製したMEAを英和(株)製JARI標準セル“Ex-1”(電極面積25cm2)にセットし、セル温度90℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件;アノード側30%RH/カソード30%RH、背圧0.1MPa(両極)において電流-電圧(I-V)測定した。1A/cm時の電圧を読み取り評価した。
【0091】
(7)化学的安定性
(7-1)分子量保持率
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に可溶な電解質膜については、以下の方法にて電解質膜を劣化させ、劣化試験前後の分子量保持率により化学安定性を評価した。
【0092】
まず、(5)により作製したMEAを英和(株)製 JARI標準セル“Ex-1”(電極面積25cm)にセットし、80℃に保ちながら、低加湿状態の水素(70mL/分、背圧0.1MPaG)と空気(174mL/分、背圧0.05MPaG)をセルに導入し、開回路での劣化加速試験を行った。この条件で燃料電池セルを200時間作動させた後、膜-電極接合体を取り出してエタノール/水の混合溶液に投入し、さらに超音波処理することで触媒層を取り除いた。そして、残った高分子電解質膜の分子量を測定し、分子量保持率を求めた。
【0093】
(7-2)開回路保持時間
NMPに溶解不可能な電解質膜については、以下の方法にて電解質膜を劣化させ、開回路電圧の保持時間を比較することで化学安定性を評価した。
【0094】
まず、(5)で作製したMEAを、評価用セルにセットし、上記と同様の条件にて、開回路での劣化加速試験を行った。開回路電圧が0.7V以下まで低下するまでの時間を開回路保持時間として評価した。
【0095】
(7-3)電圧保持率
上記(7-2)の開回路保持時間評価を行っても3000時間以上、0.7V以上を維持できる場合には、そこで評価を打ち切り初期電圧と3000時間後の電圧を比較し電圧保持率として化学耐久性を評価した。
【0096】
[合成例1] ブロックコポリマーb1の合成
(下記一般式(G1)で表される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン(K-DHBP)の合成)
【0097】
【化10】
【0098】
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mLフラスコに、4,4′-ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp-トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78~82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mLを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン52.0gを得た。
【0099】
(下記一般式(G2)で表されるジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの合成)
【0100】
【化11】
【0101】
4,4’-ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを得た。
【0102】
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、K-DHBP25.8g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、93mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中にて160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は10000であった。
【0103】
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値10400と求められた。
【0104】
【化12】
【0105】
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、K-DHBP12.9g(50mmol)および4,4’-ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、ジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18-クラウン-6、17.9g(和光純薬82mmol)を入れ、窒素置換後、NMP300mL、トルエン100mL中にて170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16000であった。
【0106】
【化13】
【0107】
(式(G4)において、Mは、NaまたはKを表す。)
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックポリマーb1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーb1を得た。重量平均分子量は34万であった。
【0108】
[合成例2] ブロックコポリマーb2の合成
(下記式(G6)で表されるセグメントと下記式(G7)で表されるセグメントからなるポリエーテルスルホン(PES)系ブロックコポリマー前駆体b2’の合成)
無水塩化ニッケル1.62gとジメチルスルホキシド15mLとを混合し、70℃に調整した。これに、2,2’-ビピリジル2.15gを加え、同温度で10分撹拌し、ニッケル含有溶液を調製した。
【0109】
ここに、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2-ジメチルプロピル)1.49gと下記式(G5)で示される、スミカエクセル(登録商標)PES5200P(住友化学社製、Mn=40,000、Mw=94,000)0.50gとを、ジメチルスルホキシド5mLに溶解させて得られた溶液に、亜鉛粉末1.23gを加え、70℃に調整した。これに前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、70℃で4時間重合反応を行った。反応混合物をメタノール60mL中に加え、次いで、6mol/L塩酸60mLを加え1時間攪拌した。析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の下記式(G6)と下記式(G7)で表されるセグメントを含むポリアリーレン1.62gを収率99%で得た。重量平均分子量は20万であった。
【0110】
【化14】
【0111】
(式(G7)で表されるセグメントと下記式(G8)で表されるセグメントからなるPES系ブロックコポリマーb2の合成)
前述のブロックコポリマー前駆体b2’ 0.23gを、臭化リチウム1水和物0.16gとNMP8mLとの混合溶液に加え、120℃で24時間反応させた。反応混合物を、6mol/L塩酸80mL中に注ぎ込み、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離した。分離した固体を乾燥し、灰白色の式(G7)で示されるセグメントと下記式(G8)で表されるセグメントからなるブロックコポリマーb2を得た。得られたポリアリーレンの重量平均分子量は18万であった。
【0112】
【化15】
【0113】
[合成例3] ブロックコポリマーb3の合成
(下記式(G9)で表される疎水性オリゴマ-a3の合成)
【0114】
【化16】
【0115】
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三口フラスコに、2,6-ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26mol)、炭酸カリウム47.3g(0.34mol)をはかりとった。
【0116】
窒素置換後、スルホラン346mL、トルエン173mLを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃に加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6-ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072mol)を加え、さらに5時間反応した。
【0117】
得られた反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解した。これをメタノール2Lに再沈殿し、目的のオリゴマーa3 107gを得た。オリゴマーa3の数平均分子量は7,600であった。
【0118】
(下記式(G10)で表される3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルa4の合成)
【0119】
【化17】
【0120】
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、クロロスルホン酸233.0g(2mol)を加え、続いて2,5-ジクロロベンゾフェノン100.4g(400mmol)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷1000gにゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリドを得た。粗結晶は精製せず、そのまま次工程に用いた。
【0121】
2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)38.8g(440mmol)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに上記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1000mL中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、上記構造式(G10)で表される3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルa4の白色結晶を得た。
【0122】
(下記式(G11)で表されるポリアリーレン系ブロックコポリマーb3の合成)
【0123】
【化18】
【0124】
撹拌機、温度計、窒素導入管を接続した1Lの3口フラスコに、乾燥したN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)166mLを前述の疎水性オリゴマー13.4g(1.8mmol)、3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル37.6g(93.7mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.62g(4.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.5g(40.1mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、亜鉛15.7g(240.5mmol)の混合物中に窒素下で加えた。
【0125】
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には82℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。重合反応溶液をDMAc175mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い濾過した。撹拌機を取り付けた1Lの3つ口で、この濾液に臭化リチウム24.4g(281mmol)を1/3ずつ3回に分け1時間間隔で加え、120℃で5時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4Lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N硫酸1500mLで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物は洗浄液のpHが5以上となるまで、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的のブロックコポリマーb3 38.0gを得た。このブロックコポリマーの重量平均分子量は18万であった。
【0126】
[合成例4] 環状ポリフェニレンスルフィドc1の合成
(環状ポリフェニレンスルフィドの合成)
撹拌機付きの5Lオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム203.5g、96%水酸化ナトリウム73.7g、NMP284.9g、酢酸ナトリウム42.8g、及びイオン交換水261.5gを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水368.6g及びNMP7.0gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。
【0127】
次に、p-ジクロロベンゼン256.6g、NMP224.2gを加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水31.4gを15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した後、500gのNMPで希釈しスラリー(c)を得た。
【0128】
(環状ポリフェニレンスルフィドの精製)
合成例11で得たスラリー(c)1500gを80℃に加熱し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、濾液成分としてスラリーを約1100g得た。
【0129】
得られたスラリー1000gを乾燥処理して得た固形物に、イオン交換水1200gを加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。フィルター上にラジオライト#800S(昭和化学工業株式会社製)を積層した目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、スラリーを固液分離した。得られた褐色のケークにイオン交換水1200gを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥して固形混合物を14.0g得た。
【0130】
得られた固形混合物とクロロホルム240gを、浴温約80℃でソックスレー抽出法により5時間接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液からエバポレーターを用いて約200gのクロロホルムを留去した後、これをメタノール500gに撹拌しながら約10分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、約15分間攪拌を継続した。沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過して回収し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を4.2g得た。
【0131】
赤外分光分析における吸収スペクトル、および、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC-10、カラム;C18、検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報により、この白色粉末は前記(B9)式で示される環状ポリフェニレンスルフィド(繰り返し単位数nが4~12)であり、繰り返し単位数nが6の環状ポリフェニレンスルフィドの重量分率は6重量%であることがわかった。以下合成例4で得られた環状ポリフェニレンスルフィドをc1と称する。
【0132】
[実施例1]
合成例1にて得た20gのブロックコポリマーb1を80gのNMPに溶解した。この溶液に、合成例4にて得た環状ポリフェニレンスルフィドc1を200mg添加し、撹拌機で20,000rpm、1時間撹拌しポリマー濃度20質量%の透明な高分子電解質組成物を調整した。
【0133】
得られた高分子電解質組成物を、ガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、アプリケーターを用いてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、膜厚15μmの高分子電解質膜を得た。
【0134】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造が確認されず、ブロックコポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)が確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であり、開回路保持時間評価も3000時間以内に終了しなかったので、電解質膜の化学安定性を電圧保持率で評価した。
【0135】
[実施例2]
c1の添加量を1gにした以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0136】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認されず、ブロックポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であり、開回路保持時間評価も3000時間以内に終了しなかったので、電解質膜の化学安定性を電圧保持率で評価した。
【0137】
[実施例3]
2Lのガラス製ナス型フラスコに、Nafion(登録商標)分散溶液(DE2021:シグマアルドリッチ社製)500gとNMP500gを加え、ロータリーエバポレータを用いて40℃で減圧蒸留し、溶液が500gになるまで溶媒を留去した。NMPの追加と減圧蒸留の作業をさらに2回行い、500gのNafion(登録商標)-NMP分散溶液500gを得た。
【0138】
ブロックコポリマーb1溶液の代わりにこのNafion(登録商標)-NMP分散溶液100gを使用した以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を製造した。
【0139】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認できなかった。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0140】
[実施例4]
ブロックコポリマーb1の代わりに合成例2で得たブロックコポリマーb2を使用した以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0141】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認されず、ブロックコポリマーb2由来の相分離構造(周期長60nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。
【0142】
[実施例5]
ブロックコポリマーb1の代わりに合成例3で得たブロックコポリマーb3を使用した以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0143】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認されず、ブロックコポリマーb3由来の相分離構造(周期長100nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。
【0144】
[実施例6]
容量200mLの攪拌機付オートクレーブに、合成例1にて得た20gのブロックコポリマーb1、200mgの直鎖状ポリ(1,4-フェニレンスルフィド)(シグマアルドリッチ社製、310℃での溶融粘度275ポイズ)、80gのNMPを仕込み、窒素置換して密封した。撹拌しながら内温を220℃まで上昇させたのち、さらに5時間撹拌を継続した。このときの内圧(ゲージ圧)は0.3MPaであった。3時間かけて除冷し、ポリマー濃度20質量%の透明な高分子電解質組成物を調整した。
【0145】
得られた高分子電解質組成物を、アプリケーターを用いてガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、膜厚15μmの高分子電解質膜を得た。
【0146】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造が確認されず、ブロックコポリマーb1由来の相分離構造(周期長20nmの共連続様)が確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であり、開回路保持時間評価も3000時間以内に終了しなかったので、電解質膜の化学安定性を電圧保持率で評価した。
【0147】
[実施例7]
溶解温度を250℃にした以外は実施例6と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0148】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認されず、ブロックポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であり、開回路保持時間評価も3000時間以内に終了しなかったので、電解質膜の化学安定性を電圧保持率で評価した。
【0149】
[実施例8]
ブロックコポリマーb1溶液の代わりに実施例3に記載の方法で調製したNafion(登録商標)-NMP分散溶液を使用した以外は実施例6と同様にして高分子電解質膜を製造した。
【0150】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認できなかった。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0151】
[実施例9]
ブロックコポリマーb1の代わりに合成例2で得たブロックコポリマーb2を使用した以外は実施例6と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0152】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ポリフェニレンスルフィド由来の相分離構造は確認されず、ブロックコポリマーb2由来の相分離構造(周期長50nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。
【0153】
[比較例1]
環状ポリフェニレンスルフィドc1を添加しなかった以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0154】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、ブロックポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0155】
[比較例2]
環状ポリフェニレンスルフィドc1を添加しなかった以外は実施例3と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0156】
得られた高分子電解質膜はNMPに不溶であり、分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0157】
[比較例3]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりに、直鎖状のポリ(1,4-フェニレンスルフィド)(シグマアルドリッチ社製、310℃での溶融粘度275ポイズ)を用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0158】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、算術平均粒子径20nmのポリフェニレンスルフィド由来の粒子が観察され、ブロックポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)も確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0159】
[比較例4]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりに、直鎖状のポリ(1,4-フェニレンスルフィド)(シグマアルドリッチ社製、310℃での溶融粘度275ポイズ)を用いた以外は実施例3と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0160】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、算術平均粒子径20nmのポリフェニレンスルフィド由来の粒子が観察され、高分子電解質由来の相分離構造は確認できなかった。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0161】
[比較例5]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりに、直鎖状のポリ(1,4-フェニレンスルフィド)(シグマアルドリッチ社製、310℃での溶融粘度275ポイズ)を用いた以外は実施例4と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0162】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、算術平均粒子径20nmのポリフェニレンスルフィド由来の粒子が観察され、ブロックコポリマーb2由来の相分離構造(周期長60nmの共連続様)も確認できた。また、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。
【0163】
[比較例6]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりに、直鎖状のポリ(1,4-フェニレンスルフィド)(シグマアルドリッチ社製、310℃での溶融粘度275ポイズ)を用いた以外は実施例5と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0164】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、算術平均粒子径30nmのポリフェニレンスルフィド由来の粒子が観察され、ブロックコポリマーb3由来の相分離構造(周期長100nmの共連続様)も確認できた。また、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。
【0165】
[比較例7]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりにチアントレン(シグマアルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0166】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、チアントレン由来の相分離構造は確認されず、ブロックポリマーb1由来の相分離構造(周期長30nmの共連続様)のみが確認できた。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0167】
[比較例8]
環状ポリフェニレンスルフィドc1の代わりにチアントレン(シグマアルドリッチ社製)を用いた以外は実施例3と同様にして高分子電解質膜を作製した。
【0168】
得られた高分子電解質膜は、TEM観察において、相分離構造が確認できなかった。また、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、電解質膜の化学安定性を開回路保持時間で評価した。
【0169】
各実施例、比較例で用いた高分子電解質組成物の組成、および高分子電解質膜とした場合の物性、低加湿発電性能等を表1に示す。
【0170】
【表1】