(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】動力伝達系の耐久寿命管理装置および動力伝達系の耐久寿命管理方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20220419BHJP
F16H 59/14 20060101ALI20220419BHJP
F16H 61/12 20100101ALI20220419BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/14
F16H61/12
(21)【出願番号】P 2018015613
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 一隆
(72)【発明者】
【氏名】板屋 光彦
(72)【発明者】
【氏名】村永 健太
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正成
(72)【発明者】
【氏名】石杜 和希
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-293629(JP,A)
【文献】特開2004-243924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00
59/00
61/00
63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付ける入力部と、
前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する制御部と、
前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力する出力部と、を備え
、
前記制御部は、前記被害度が予め定められた所定値に達した場合に、前記疲労度合いが高いと判断し、
前記制御部は、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記所定値を変更する、
動力伝達系の耐久寿命管理装置。
【請求項2】
駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付ける入力部と、
前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する制御部と、
前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記被害度が予め定められた所定値に達するまでの残時間を推定し、前記残時間が予め定められた余裕時間よりも短い場合に、前記疲労度合いが高いと判断する、
動力伝達系の耐久寿命管理装置。
【請求項3】
駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付けるステップと、
前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する
判断ステップと、
前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力するステップと、を備
え、
前記判断ステップでは、前記被害度が予め定められた所定値に達した場合に、前記疲労度合いが高いと判断し、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記所定値を変更する、
動力伝達系の耐久寿命管理方法。
【請求項4】
駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付けるステップと、
前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する判断ステップと、
前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力するステップと、を備え、
前記判断ステップでは、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記被害度が予め定められた所定値に達するまでの残時間を推定し、前記残時間が予め定められた余裕時間よりも短い場合に、前記疲労度合いが高いと判断する、
動力伝達系の耐久寿命管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達系の耐久寿命管理装置および動力伝達系の耐久寿命管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンやトランスミッションの状態を定量的に判断する技術が記載されている。特許文献1では、エンジンやトランスミッションにかかる負荷状態がトルクセンサや車速センサ等によって検出され、検出された負荷の値が予め定められた閾値よりも大きいときの累積時間等から、エンジンやトランスミッションの状態が定量的に判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、エンジンやトランスミッションの状態の判断結果を車両価格情報等の車両評価情報に用いることを主目的としている。なお、エンジンやトランスミッションの状態の判断結果を車両の点検や整備を行うための判断材料として使用することも記載されているが、具体的にどのように用いるかについては記載されていない。
【0005】
本開示の目的は、動力伝達系の疲労度合いを推定して耐久寿命を適切に管理することができる動力伝達系の耐久寿命管理装置および動力伝達系の耐久寿命管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る動力伝達系の耐久寿命管理装置は、駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付ける入力部と、前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する制御部と、前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力する出力部と、を備え、前記制御部は、前記被害度が予め定められた所定値に達した場合に、前記疲労度合いが高いと判断し、前記制御部は、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記所定値を変更する、動力伝達系の耐久寿命管理装置。
また、本発明の態様に係る動力伝達系の耐久寿命管理装置は、駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付ける入力部と、前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する制御部と、前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力する出力部と、を備え、前記制御部は、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記被害度が予め定められた所定値に達するまでの残時間を推定し、前記残時間が予め定められた余裕時間よりも短い場合に、前記疲労度合いが高いと判断する、動力伝達系の耐久寿命管理装置。
【0007】
本発明の態様に係る動力伝達系の耐久寿命管理方法は、駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付けるステップと、前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断するステップと、前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力するステップと、を備え、前記判断ステップでは、前記被害度が予め定められた所定値に達した場合に、前記疲労度合いが高いと判断し、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記所定値を変更する、動力伝達系の耐久寿命管理方法。
また、本発明の態様に係る動力伝達系の耐久寿命管理方法は、駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付けるステップと、前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する判断ステップと、前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力するステップと、を備え、前記判断ステップでは、所定の走行時間または走行距離に対する前記被害度の変化の度合いに基づいて、前記被害度が予め定められた所定値に達するまでの残時間を推定し、前記残時間が予め定められた余裕時間よりも短い場合に、前記疲労度合いが高いと判断する、動力伝達系の耐久寿命管理方法。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、動力伝達系の耐久寿命を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の実施形態に係る動力伝達系の耐久寿命管理装置の概略を示すブロック図
【
図3】記憶部に記憶されているトルク頻度テーブルの一例を示す図
【
図4】部材に負荷されるトルクと耐久寿命との関係の一例を示す図
【
図5】制御部で行われる処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を参照して、車両1の動力伝達系2の概略について説明する。車両1は、エンジン3と、クラッチ4と、変速機5と、プロペラシャフト6と、終減速機7と、ドライブシャフト8、8と、駆動輪9、9とを有する。以下の説明では、変速機5から終減速機7までを、動力伝達系2という。なお、車両1の駆動源はエンジン3には限定されず、動力伝達系2についても変速機5、プロペラシャフト6および終減速機7には限定されない。
【0012】
次に、
図2を参照して、車両1に搭載される耐久寿命管理装置20の概略について説明する。耐久寿命管理装置20は、入力部21、制御部22、出力部23および記憶部24を有する。
【0013】
入力部21は、エンジン回転センサ11からのエンジン回転速度情報、エンジン出力トルクセンサ12からのエンジン出力トルク情報、計時タイマ13からの時間情報、およびシフトポジションセンサ14からのシフトポジション情報の入力を受け付ける。
【0014】
制御部22は、入力部21に入力されたエンジン回転速度情報、エンジン出力トルク情報、時間情報およびシフトポジション情報に基づいて、動力伝達系2の各部材の疲労度合いを評価する。
【0015】
出力部23は、制御部22における評価結果に基づいて、報知部30に報知信号を出力する。
【0016】
記憶部24は、制御部22において動力伝達系2の各部材の疲労度合いを評価する際に用いられる各種データを記憶する。
【0017】
図3に、記憶部24に記憶されているデータの一例としてのトルク頻度テーブルの一例を示す。
図3に示すトルク頻度テーブルは、変速段ごとに用意されている。
図3に示すように、トルク頻度テーブルでは、エンジン回転速度および軸トルク(エンジン出力トルク)の任意の組み合わせに対して、時間が累積される。すなわち、記憶部24には、車両1が如何なるギヤ段、エンジン出力トルクおよびエンジン回転速度で走行したかが記憶されることになる。なお、
図3では、軸トルクは、エンジン3の最大出力トルクに対する百分率で示されている。
【0018】
図3では、例えば、エンジン回転速度が0~Ne
1(rpm)かつ軸トルクが0~Te
1(%)である状態がS
11(sec)あったことを示している。また、例えば、エンジン回転速度がNe
m-1~Ne
m(rpm)かつ軸トルクがTe
n-1~Te
n(%)である状態がS
mn(sec)あったことを示している。なお、mおよびnは自然数である。
【0019】
図4に、所定の部材に負荷されるトルクと耐久寿命との関係の一例を示す。
図4における縦軸および横軸は共に対数表示である。このような関係は実験により求められる。
図4における黒丸は、所定の部材に対して所定のトルクを負荷して回転させた場合に、当該部材が破断した総回転数をプロットしたものである。実際には、評価対象となる全ての部材に対して、実験により部材に負荷されるトルクと耐久寿命との関係が予め求められている。
【0020】
図4における直線Lは、複数の黒丸(例えば、
図4では6個の黒丸)に基づいて作成されたものであり、部材の耐久寿命の予測値を示す。
図4に示す例では、部材に対する入力トルクがT1であれば、部材の耐久寿命がN1であり、部材に対する入力トルクがT2であれば、部材の耐久寿命がN2であることを示している。なお、
図4における直線Lは、トルクT、回転数N、定数AおよびBを用いて、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】
【0021】
記憶部24には、評価対象となる全ての部品について、上述の式(1)における定数Bが記憶されている。制御部22は、例えば、以下の式(2)を用いて、各部材の被害度(回)を算出する。
【数2】
【0022】
上述の式(2)は、所定の部材に対して様々なトルクが様々な回数負荷されたものを、所定の仮定トルク(一定)が何回負荷されたかに変換する変換式である。式(2)中の軸トルク(%)、エンジン回転速度(rpm)および時間(sec)は、上述の
図3における各パラメータである。
【0023】
なお、
図3では、軸トルクおよびエンジン回転速度として所定の幅をもった値を採用しているため、式(2)に用いる軸トルクおよびエンジン回転数として、当該所定の幅における最大値や平均値を用いるようにすることもできる。
【0024】
エンジン最大トルクは、車両1に搭載されるエンジン3の種類によって異なる値であり、予め記憶部24に記憶されている。仮定トルクについては、予め記憶部24に記憶されていてもよいし、制御部22において被害度を算出する際に決定されてもよい。
【0025】
また、ギヤ比は、エンジン3から評価対象である所定の部材までのギヤ比であり、予め記憶部24に記憶されている。このようなギヤ比は、評価対象である所定の部材によって異なる。さらに、変速機5の機種や仕様、終減速機7の仕様等によっても異なる。
【0026】
また、例えば、終減速機7の構成部品については、変速機5における変速段ごとにエンジン3から評価対象である所定の部材までのギヤ比が異なる。このような部材については、被害度を変速段ごとに算出し、それらを加算することで総被害度を求めることができる。
【0027】
制御部22は、このようにして求めた各部材の被害度のうち、いずれかの部材の被害度が、仮定トルクにおける耐久寿命に近づいたことを示す所定値に達した場合に(換言すれば、仮定トルクにおける耐久寿命に対して所定割合に達した場合に)、動力伝達系2の疲労度合いが高くなったと判断し、出力部23に対して信号を出力する。このような所定値(所定割合)は、車両1の使用態様や安全率等を考慮して定めることができる。
【0028】
報知部30は、例えば車両1のインストルメントパネル等であり、動力伝達系2の疲労度合いが高くなったことを、インストルメントパネル等に表示させる。なお、報知部30はアラーム等でもよい。
【0029】
次に、制御部22において行われる処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
図5に示すフローチャートは、車両1の走行中に所定の周期で繰り返し実行される。
【0030】
まず、ステップS1で、制御部22は、入力部21に入力されたエンジン回転速度情報、エンジン出力トルク情報、時間情報、シフトポジション情報等の、車両1の走行情報を受け取る。
【0031】
続くステップS2で、制御部22は、入力部21から受け取った走行情報を記憶部24に記憶させる。
【0032】
続くステップS3で、制御部22は、記憶部24に記憶された情報に基づいて、動力伝達系2の各部材のそれぞれについて、被害度を算出する。
【0033】
続くステップS4で、制御部22は、動力伝達系2の疲労度合いが高いか否かを判断する。
【0034】
ステップS4で、動力伝達系2の疲労度合いが高いと判断された場合(ステップS4:YES)、処理はステップS5に進む。そして、ステップS5で、制御部22は、出力部23に対して、動力伝達系2の疲労度合いが高いことを示す信号を出力し、処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS4で、動力伝達系2の疲労度合いが高いと判断されなかった場合(ステップS4:NO)、制御部22は、出力部23に対して動力伝達系2の疲労度合いが高いことを示す信号を出力することなく、処理を終了する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動源が発生するトルクを含む車両の走行情報の入力を受け付ける入力部21と、前記走行情報に基づいて動力伝達系の部品の被害度を算出し、前記被害度に基づいて前記動力伝達系の疲労度合いが高いか否かを判断する制御部22と、前記疲労度合いが高いと判断された場合に、前記疲労度合いが高いことを示す信号を出力する出力部23と、を備える耐久寿命管理装置20が提供される。
【0037】
これにより、動力伝達系の各部材の被害度を定量的に算出して、動力伝達系の疲労度合いが高くなったことをドライバ等に対して報知することができる。そのため、動力伝達系の耐久寿命を適切に管理することができる。
【0038】
(報知タイミングの変形例)
報知タイミングの変形例について説明する。報知タイミングとしては、第一に、上述したように、被害度が耐久寿命に近づいたことを示す所定値に達した場合や、被害度が耐久寿命に対して所定割合に達した場合に、動力伝達系の疲労度合いが高いと判断し、報知を行う態様がある。
【0039】
第二に、車両の使用態様に応じて、動力伝達系の疲労度合いが高いと判断する閾値を変更することができる。車両の使用態様は、ドライバによって大きく異なる場合がある。例えば、走行時間t1(または走行距離d1)で被害度が耐久寿命の半分程度に達するような使い方をするドライバもいれば、走行時間t2(>t1)(または走行距離d2(>d1))で被害度が耐久寿命の半分程度に達するような使い方をするドライバもいる。
【0040】
走行時間t1(または走行距離d1)で被害度が耐久寿命の半分程度に達した場合と、走行時間t2(または走行距離d2)で被害度が耐久寿命の半分程度に達した場合とでは、その後、耐久寿命に達するまでの期間が異なる。
【0041】
そのため、走行時間t1(または走行距離d1)で被害度が耐久寿命の半分程度に達した場合には、走行時間t2(または走行距離d2)で被害度が耐久寿命の半分程度に達した場合よりも被害度が低いタイミングで動力伝達系の疲労度合いが高いと判断してもよい。
【0042】
すなわち、所定の走行時間または走行距離に対する被害度の変化の度合いに基づいて、上述の所定値や所定割合を変更してもよい。こうすることで、車両の使用態様の如何にかかわらず、適切なタイミングで報知を行うことができ、耐久寿命を適切に管理することができる。なお、「半分程度」はあくまでも例示に過ぎず、これに限定されない。
【0043】
第三に、残り寿命を考慮して報知タイミングを変更することができる。例えば、直近の車両の使用態様で引き続き使用した場合に、被害度が耐久寿命に近づいたことを示す所定値や耐久寿命に達するまでの残時間(または残距離)が所定の余裕時間(または余裕距離)を下回った場合に、動力伝達系の疲労度合いが高いと判断して報知を行うようにしてもよい。
【0044】
すなわち、所定の走行時間または走行距離に対する被害度の変化の度合いに基づいて、被害度が上述の所定値や所定割合に達するまでの残時間を推定し、当該残時間が予め定められた余裕時間よりも短い場合に、疲労度合いが高いと判断してもよい。こうすることで、車両の使用態様の如何にかかわらず、適切なタイミングで報知を行うことができ、耐久寿命を適切に管理することができる。
【0045】
(報知対象の変形例)
報知対象の変形例について説明する。報知対象としては、第一に、上述したように、車両を運転しているドライバが挙げられる。この場合、動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを、車両を運転しているドライバに直接報知することができる。
【0046】
第二に、車両が管理者によって管理されている場合には、動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを、管理者に対して報知することができる。具体的には、管理者に対して無線通信等を介して動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを報知することができる。こうすることで、管理者が車両の状態を適切に把握することができる。
【0047】
第三に、車両の整備を行うディーラー等に対して、動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを報知することができる。この場合、第二の例と同様に、無線通信等を用いて動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを報知することができる。
【0048】
また、整備を行うタイミングで、所定の装置を耐久寿命管理装置に接続し、耐久寿命管理装置から当該所定の装置に対して動力伝達系の疲労度合いが高くなったことを知らせる信号を出力するようにしてもよい。こうすることで、動力伝達系の部材の交換等を適切なタイミングで行うことができる。
【0049】
(被害度の算出方法の変形例)
被害度の算出方法の変形例について説明する。被害度の算出方法としては、第一に、上述したように、部材に負荷される様々なトルクを所定の仮定トルクに変換する方法が挙げられる。
【0050】
第二に、部材に負荷される様々なトルクのそれぞれについて、当該トルクにおける疲労寿命に対する被害度(回)の割合を算出し、それらを加算することで被害割合を算出する方法が挙げられる。この場合、疲労寿命の実験結果が存在するトルクについては、疲労寿命に対する被害割合をより正確に算出することができ、有用である。
【0051】
(その他の変形例)
上述の実施形態では、エンジン回転速度と時間からエンジンの総回転数を算出する構成としたが、これに限定されない。例えば、エンジンの総回転数を直接検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の動力伝達系の耐久寿命管理装置および動力伝達系の耐久寿命管理方法によれば、動力伝達系の耐久寿命を適切に管理することができ、産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 動力伝達系
3 エンジン
4 クラッチ
5 変速機
6 プロペラシャフト
7 終減速機
8 ドライブシャフト
9 駆動輪
11 エンジン回転センサ
12 エンジン出力トルクセンサ
13 計時タイマ
14 シフトポジションセンサ
20 耐久寿命管理装置
21 入力部
22 制御部
23 出力部
24 記憶部
30 報知部