(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】発毛剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20220419BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20220419BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/49
A61K31/506
A61K31/201
A61Q7/00
A61P17/14
(21)【出願番号】P 2018020679
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 敬子
(72)【発明者】
【氏名】槙原 史朗
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524684(JP,A)
【文献】特開2005-200357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/00-33/44
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミノキシジル並びに、ウンデシレン酸、及びウンデシレン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のウンデシレン酸類を組み合わせたことを特徴とする発毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミノキシジルを有効成分とする発毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミノキシジルは化学名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、育毛剤としての適応が報告されている(特許文献1)他、発毛、育毛、養毛作用について多数の報告がある。
ミノキシジル製剤は優れた発毛効果を有するものの、さらに優れたものが求められていた。
従来、ウンデシレン酸トレハロースには育毛効果を有することが報告されているが、ウンデシレン酸の毛成長促進効果は低いことが報告されている(特許文献2)。今までにウンデシレン酸類とミノキシジルとの併用により発毛効果が増強されることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4,139,619号
【文献】特開平8-53326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ミノキシジルの優れた発毛効果をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ミノキシジルの優れた発毛効果をさらに向上させるために種々検討した結果、ミノキシジルと特定のウンデシレン酸類を組み合わせると、それぞれの成分単独の効果からは予測できない優れた発毛効果を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)ミノキシジル並びに、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸塩、及びウンデシレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のウンデシレン酸類を組み合わせたことを特徴とする発毛剤、
である。
【発明の効果】
【0006】
後述の試験例から明らかな通り、ミノキシジルと、特定のウンデシレン酸類を組み合わせることにより、単独の場合と比較して優れた発毛効果が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の発毛剤は、必須成分および必要があれば他の配合成分を配合して、通常の方法でローション剤、エアゾール剤、トニック剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などの適当な外用製剤にして使用することができる。
本発明で配合するミノキシジルの配合量は、発毛効果の点から製剤全体(エアゾール剤のときは原液中)の0.1~5W/V%(以下「W/V%」は、単に「%」で示すことがある)が好ましい。
【0008】
本発明のウンデシレン酸類としては、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸塩、ウンデシレン酸エステルである。
【0009】
ウンデシレン酸塩としては、ウンデシレン酸亜鉛、ウンデシレン酸カリウム、ウンデシレン酸トリエタノールアミド、ウンデシレン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸モノエタノールアミド等が挙げられ、ウンデシレン酸エステルとしては、ウンデシレン酸グリセリル、ウンデシレン酸ポリグリセリル、ウンデシレン酸メチル、ウンデシレン酸エチル、ウンデシレン酸ビニル等が挙げられる。
本発明で配合するウンデシレン酸類の配合量は、発毛促進効果の点から製剤全体の0.01~20%が好ましく、0.1~10%の範囲がより好ましい。
本発明の発毛剤の溶媒としては、エタノール、水またはそれらの混合液が好ましい。この場合の配合量は、製剤全体に対してエタノールは40~80%程度の範囲、水は5~30%程度の範囲が好ましい。特にエタノールを配合すると塗布直後のエタノール揮発による良好な使用感が得られることから好ましい。
本発明の発毛剤には、さらに必要に応じ、一般の外用剤に使用される種々の活性成分や補助成分、例えば、賦形剤、血管拡張剤(塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェンヒドラミンなど)、抗炎症剤(グアイアズレンなど)、角質溶解剤(尿素、サリチル酸など)、殺菌剤(グルコン酸クロルへキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ピロクトンオラミン、ヒノキチオール、グリチルレチン酸など)、保湿剤(ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸など)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタなど)の抽出物、ビタミン類(酢酸レチノール、塩酸ピリドキシン、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、ビタミンEアセテート、パントテニールエチルエーテルなど)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレートなど)、溶解補助剤(アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類など)、代謝賦活剤、ゲル化剤(水溶性高分子など)、多価アルコール類(グリセリン、1,3-ブチレングリコールなど)、粘着剤、香料、清涼化剤(ハッカ油、カンフル、メントールなど)、染料などの通常使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
これら選択成分の添加量は、特に制約はなく、使用感やミノキシジル、ウンデシレン酸の安定性あるいは溶剤系組成等を考慮しながら実験的に定めることができる。
【0010】
さらに、本発明の発毛剤は、他の脱毛症予防剤又は治療剤の有効成分と併用することも可能である。併用可能な薬剤として、フィナステリド、デュタステリド、塩化カルプロニウム、アデノシン、ペンタデカン酸グリセリド、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、他の発毛剤/育毛剤、血管拡張剤、抗アンドロゲン剤、シクロスポリン誘導体、抗菌剤、抗炎症剤、甲状腺ホルモン誘導体、プロスタグランジン作用物質又は拮抗物質、レチノイド、トリテルペン等の薬剤との併用も可能である。本発明の発毛剤組成物と他の脱毛症予防剤又は治療剤の有効成分は、別々の製剤として使用しても良く、1つの配合剤として使用しても良い。
【実施例】
【0011】
以下、試験例により、本発明をさらに具体的に説明する。
試験例1
<マウス刈毛モデルにおける発毛作用>
C57BLマウス(雌、7週齢)の背部体毛を刈毛し、刈毛3日後より溶媒(1,3-ブチレングリコール/エタノール/精製水)、ミノキシジル5%(溶媒は同左)、ミノキシジル5%およびウンデシレン酸10%(溶媒は同左)、ウンデシレン酸10%(溶媒は同左)のいずれかを1日1回、1匹あたり0.1mLを、45日間連続塗布した。投与開始日(1日目)、8日目、その後は2日或いは3日毎に刈毛部の発毛状態を以下の発毛スコア基準を用いて採点した。
発毛スコア基準
1 = 刈毛部の5%未満に発毛
2 = 刈毛部の5%以上、30%未満に発毛
3 = 刈毛部の30%以上、60%未満に発毛
4 = 刈毛部の60%以上、90%未満に発毛
5 = 刈毛部の90%以上に発毛
投与開始20日目のスコアを表1に示した。
表中、「*」はp<0.05で、「**」はp<0.01で基剤群に対して有意差あり(Steelの多重比較)、「#」はp<0.05でミノキシジル5%群に対して有意差あり(Studentのt検定)を示す。
【0012】
【0013】
本試験例の結果から、ミノキシジルとウンデシレン酸を組み合わせた発毛剤は毛の成長を促進する発毛・育毛効果を有し、その効果はミノキシジルのみを含む被験液よりも有意に優れていることがわかった。
この結果から、ミノキシジルとウンデシレン酸類とを組み合わせることによって、ミノキシジルの発毛効果をさらに向上させることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、ミノキシジルの発毛効果をさらに向上させることができたので、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用可能である。