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特許7059704シート位置決め構造及び、シート位置決め方法
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  • 特許-シート位置決め構造及び、シート位置決め方法 図1
  • 特許-シート位置決め構造及び、シート位置決め方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】シート位置決め構造及び、シート位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/005 20060101AFI20220419BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220419BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220419BHJP
【FI】
B60N2/005
B60N2/06
B60N2/90
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018044195
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019156103
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰典
(72)【発明者】
【氏名】森川 豪貴
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-97310(JP,U)
【文献】特開2000-127808(JP,A)
【文献】特開2002-154460(JP,A)
【文献】特開平11-20518(JP,A)
【文献】特開2007-91093(JP,A)
【文献】特開2015-85837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシート下部のうち、車体幅方向内側の前端、車体幅方向外側の後端及び、車体幅方向外側の前端の少なくとも何れか2カ所から垂下された第1及び第2位置決めピンと、
前記シート下部の車体幅方向内側の後端から垂下された第3位置決めピンと、を備え、
前記第3位置決めピンの軸方向長さが、前記第1及び前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成されている
ことを特徴とするシート位置決め構造。
【請求項2】
前記第1位置決めピンが前記シート下部の車体幅方向内側の前端から垂下されると共に、前記第2位置決めピンが前記シート下部の車体幅方向外側の後端から垂下されており、前記第1位置決めピンの軸方向長さが、前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも長く形成されている
請求項1に記載のシート位置決め構造。
【請求項3】
シート下部の車体幅方向内側の前端から垂下された第1位置決めピンと、前記シート下部の車体幅方向外側の後端から垂下されると共に、その軸方向長さを前記第1位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成された第2位置決めピンと、前記シート下部の車体幅方向内側の後端から垂下されると共に、その軸方向長さを前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成された第3位置決めピンとを備えるシート位置決め構造を用いたシート位置決め方法であって、
前記第1位置決めピンをフロアパネルの対応する第1ピン差込み孔に挿入する第1工程と、
前記第2位置決めピンをフロアパネルの対応する第2ピン差込み孔に挿入する第2工程と、
前記第3位置決めピンをフロアパネルの対応する第3ピン差込み孔に挿入する第3工程と、を含む
ことを特徴とするシート位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート位置決め構造及び、シート位置決め方法に関し、特に、車両用シートの位置決め構造及び位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートの位置決め構造として、例えば、特許文献1,2には、シート下部から2本の位置決めピンを垂下させ、シート組み付け時には、これら2本の位置決めピンを対応するフロアパネルの差込み孔に挿入することにより、シートの位置決めを行えるようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-85837号公報
【文献】特開2007-91093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートの位置決め精度を向上させるには、例えば、シート下部の四隅のうち、少なくとも計3カ所に位置決めピンを設けることが好ましい。しかしながら、車両用シートの組み付け作業は、作業者が車室外から上半身のみを車室内に乗り入れて行われるのが一般的である。このため、位置決めピンを計3カ所に設けると、特に、組付け作業時に作業者から最も離れる車体幅方向内側の位置決めピン(右シートの場合は左後ピン、左シートの場合は右後ピン)の目視が困難となり、作業性の悪化を招くといった課題がある。
【0005】
本開示の技術は、シートの位置決め作業性を効果的に向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の構造は、車両用シートのシート下部のうち、車体幅方向内側の前端、車体幅方向外側の後端及び、車体幅方向外側の前端の少なくとも何れか2カ所から垂下された第1及び第2位置決めピンと、前記シート下部の車体幅方向内側の後端から垂下された第3位置決めピンとを備え、前記第3位置決めピンの軸方向長さが、前記第1及び前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記第1位置決めピンが前記シート下部の車体幅方向内側の前端から垂下されると共に、前記第2位置決めピンが前記シート下部の車体幅方向外側の後端から垂下されており、前記第1位置決めピンの軸方向長さが、前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも長く形成されていることが好ましい。
【0008】
本開示の方法は、シート下部の車体幅方向内側の前端から垂下された第1位置決めピンと、前記シート下部の車体幅方向外側の後端から垂下されると共に、その軸方向長さを前記第1位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成された第2位置決めピンと、前記シート下部の車体幅方向内側の後端から垂下されると共に、その軸方向長さを前記第2位置決めピンの軸方向長さよりも短く形成された第3位置決めピンとを備えるシート位置決め構造を用いたシート位置決め方法であって、前記第1位置決めピンをフロアパネルの対応する第1ピン差込み孔に挿入する第1工程と、前記第2位置決めピンをフロアパネルの対応する第2ピン差込み孔に挿入する第2工程と、前記第3位置決めピンをフロアパネルの対応する第3ピン差込み孔に挿入する第3工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、シートの位置決め作業性を効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る車両用シートを示す模式的な斜視図である。
図2】本実施形態に係る車両用シートの位置決め作業工程を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係るシート位置決め構造及び、シート位置決め方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0012】
図1(A)は、本実施形態に係る車両用シート10を右斜め前方から視た模式的な斜視図であり、図1(B)は、本実施形態に係る車両用シート10を左斜め前方から視た模式的な斜視図である。同図に示すように、車両用シート10は、シートクッション11と、シートバック12とを備えている。車両用シート10は、そのシート幅方向が車体幅方向と一致するように、フロアパネル50に組み付けられる。
【0013】
なお、以下において、車両用シート10は、フロアパネル50の車体幅方向右側に組み付けられる右シート(右ハンドル車であれば運転席用シート、左ハンドル車であれば助手席用シート)を一例に説明する。左シートについては、後述する各構成要素の配置位置を左右反転させればよいため、詳細な説明は省略する。
【0014】
シートクッション11は、何れも不図示の車体前後方向に延びる一対のフレーム材及び、これらを連結する車体幅方向のフレーム材等をクッション材で覆うことにより構成されている。シートバック12は、何れも不図示の車体上下方向に延びる一対のフレーム材及び、これらを連結する車体幅方向のフレーム材等をクッション材で覆うことにより構成されている。これらシートクッション11及び、シートバック12は、不図示のリクライニング機構を介して傾動可能に連結されている。
【0015】
シートクッション11の車体幅方向の左右両端には、車両用シート10を車体前後方向にスライド移動可能に支持する左右のスライド機構20A,20Bがそれぞれ設けられている。
【0016】
左スライド機構20Aは、主として、車体前後方向に延びる左ガイドレール本体部21Aと、左ガイドレール本体部21Aに対して摺動可能に係合する左スライダ22Aとを備えている。右スライド機構20Bは、主として、車体前後方向に延びる右ガイドレール本体部21Bと、右ガイドレール本体部21Bに対して摺動可能に係合する右スライダ22Bとを備えている。左右のスライダ22A,22Bは、その上端側をシートクッション11の不図示のフレーム材等にそれぞれ接合されている。
【0017】
左ガイドレール本体部21Aには、フロアパネル50に固定される一対のブラケット31,32が設けられている。左前ブラケット31は、左ガイドレール本体部21Aの車体前後方向の前端部に固定されており、シートクッション11の下面に対して車体幅方向内側の前端に位置される。左後ブラケット32は、左ガイドレール本体部21Aの車体前後方向の後端部に固定されており、シートクッション11の下面に対して車体幅方向内側の後端に位置される。
【0018】
右ガイドレール本体部21Bには、フロアパネル50に固定される一対のブラケット33,34が設けられている。右前ブラケット33は、右ガイドレール本体部21Bの車体前後方向の前端部に固定されており、シートクッション11の下面に対して車体幅方向外側の前端に位置される。右後ブラケット34は、右ガイドレール本体部21Bの車体前後方向の後端部に固定されており、シートクッション11の下面に対して車体幅方向外側の後端に位置される。
【0019】
左前ブラケット31には、左前ボルト挿通孔31Aが貫通形成されている。左前ボルト挿通孔31Aは、フロアパネル50に形成された左前ボルト差込み孔51に対応する。また、左前ブラケット31には、下方に向けて垂下された左前位置決めピン41(第1位置決めピン)が設けられている。左前位置決めピン41は、フロアパネル50の左前ピン差込み孔52(第1ピン差込み孔)に挿入される。
【0020】
左後ブラケット32には、左後ボルト挿通孔32Aが貫通形成されている。左後ボルト挿通孔32Aは、フロアパネル50に形成された左後ボルト差込み孔53に対応する。また、左後ブラケット32には、下方に向けて垂下された左後位置決めピン43(第3位置決めピン)が設けられている。左後位置決めピン43は、フロアパネル50の左後ピン差込み孔54(第3ピン差込み孔)に挿入される。
【0021】
右前ブラケット33には、右前ボルト挿通孔33Aが貫通形成されている。右前ボルト挿通孔33Aは、フロアパネル50に形成された右前ボルト差込み孔55に対応する。
【0022】
右後ブラケット34には、右後ボルト挿通孔34Aが貫通形成されている。右後ボルト挿通孔34Aは、フロアパネル50に形成された右後ボルト差込み孔56に対応する。また、右後ブラケット34には、下方に向けて垂下された右後位置決めピン42(第2位置決めピン)が設けられている。右後位置決めピン42は、フロアパネル50の右後ピン差込み孔57(第2ピン差込み孔)に挿入される。
【0023】
本実施形態において、各位置決めピン41,42,43のピン軸方向の長さL1,L2,L3は、左前位置決めピン41の長さL1が右後位置決めピン42の長さL2よりも長く、且つ、右後位置決めピン42の長さL2が左後位置決めピン43の長さL3よりも長くなるように形成されている(L1>L2>L3)。
【0024】
次に、図2に基づいて、本実施形態に係る車両用シート10の位置決め作業手順について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る車両用シート10の位置決め作業工程を模式的に示す側面図である。まず、作業者は、不図示のハンガー等により持ち上げた車両用シート10を車室内に入れ、フロアパネル50(取付フロア)の上方にセットする。
【0026】
次いで、図2(A)に示すように、作業者は、左前位置決めピン41と左前ピン差込み孔52との軸心を合わせながら、車両用シート10を下方に降ろすことにより、左前位置決めピン41の下端側の一部を左前ピン差込み孔52に挿入する。この際、作業者は、左前位置決めピン41を直接的に目視しながら作業を行えるため、左前位置決めピン41を左前ピン差込み孔52に容易に挿入することができる。
【0027】
左前位置決めピン41の少なくとも下端側が左前ピン差込み孔52に挿入されると、車両用シート10は、左前位置決めピン41によって前後左右への移動を規制されつつ、左前位置決めピン41を支点に回動可能な状態でフロアパネル50に仮保持される。
【0028】
次いで、図2(B)に示すように、作業者は、右後位置決めピン42と右後ピン差込み孔57との軸心を合わせながら、車両用シート10を図2(A)の状態から下方に降ろすことにより、右後位置決めピン42の下端側の一部を右後ピン差込み孔57に挿入する。この際、作業者は、右後位置決めピン42を直接的に目視しながら作業を行えるため、右後位置決めピン42を右後ピン差込み孔57に容易に挿入することができる。
【0029】
右後位置決めピン42の少なくとも下端側が右後ピン差込み孔57に挿入されると、車両用シート10は、2本の位置決めピン41,42を介してフロアパネル50に仮保持される。すなわち、2本の位置決めピン41,42によって車両用シート10の回転及び前後左右方向の移動が規制されるようになる。なお、図2(A)及び(B)に示す工程は順不同である。
【0030】
次いで、図2(C)に示すように、作業者は、車両用シート10を図2(B)の状態からさらに下方に降ろすことにより、左後位置決めピン43を左後ピン差込み孔54に挿入する。この際、左後位置決めピン43よりも長い2本の位置決めピン41,42の下端側は、既に各ピン差込み孔52,57に部分的に挿入されている。この状態で車両用シート10を降下させると、2本の位置決めピン41,42が各ピン差込み孔52,57にガイドされることで、残り1本の左後位置決めピン43の軸心は、作業者が軸心合わせ等を行わなくても、左後ピン差込み孔54の軸心と正確に一致されるようになる。
【0031】
すなわち、作業者は、最も離れた左後位置決めピン43を目視することなく、車両用シート10を降下させるのみで、左後位置決めピン43を左後ピン差込み孔54に極めて容易に挿入することができる。これにより、車両用シート10の位置決め作業性を確実に向上することが可能になる。
【0032】
3本の位置決めピン41,42,43を対応する各ピン差込み孔52,57,54に挿入したならば、図1に示すボルト挿通孔31A,32A,33A,34A及び、ボルト差込み孔51,53,55,56に不図示のボルトを挿入して締結することにより、車両用シート10の組み付け作業を終了する。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、シート下部の左前から垂下された左前位置決めピン41と、シート下部の右後から垂下された右後位置決めピン42と、シート下部の左後から垂下された左後位置決めピン43とを備え、組み付け作業時に作業者から最も離れる左後位置決めピン43の軸方向長さが、作業者による目視が容易な左前位置決めピン41及び右後位置決めピン42の軸方向長さよりも短く形成されている。そして、位置決め作業時には、最も長い左前位置決めピン41→次に長い右後位置決めピン42→最も短い左後位置決めピン43の順に挿入することで、最後の左後位置決めピン43を挿入する際は、2本の位置決めピン41,42が各ピン差込み孔52,57にガイドされるように構成されている。
【0034】
これにより、作業者は、最も離れた左後位置決めピン43を目視することなく、車両用シート10を降下させるのみで、左後位置決めピン43を左後ピン差込み孔54に極めて容易に挿入することが可能となり、車両用シート10の位置決め作業性を確実に向上することができる。
【0035】
また、シート下部の四隅の少なくとも3カ所に計3本の位置決めピン41、42,43を設けることで、ボルト挿通孔31A,32A,33A,34Aとボルト差込み孔51,53,55,56との位置決め精度が向上されるようになる。これにより、ボルトの締結作業性を効果的に向上することが可能になる。また、ボルト挿通孔31A,32A,33A,34Aとボルト差込み孔51,53,55,56との位置決め精度が向上することで、ボルト挿通孔31A,32A,33A,34Aの開口径を必要以上に大きくする必要がなくなり、ブラケット31,32,33,34の小型化等も図ることが可能になる。
【0036】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変形して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態において、右後位置決めピン42は左前位置決めピン41よりも短く形成されるものとして説明したが、これらを略同等の長さで形成してもよい。また、位置決めピン41,42,43の本数は3本に限定されず、4本以上であってもよい。また、車両用シート10は、フロントシートを一例に説明したが、リヤシート、或は車両用シート以外の他のシートの位置決め構造にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 車両用シート
11 シートクッション
12 シートバック
20A 左スライド機構
21A 左ガイドレール本体部
22A 左スライダ
20B 右スライド機構
21B 右ガイドレール本体部
22B 右スライダ
31 左前ブラケット
32 左後ブラケット
33 右前ブラケット
34 右後ブラケット
41 左前位置決めピン(第1位置決めピン)
42 右後位置決めピン(第2位置決めピン)
43 左後位置決めピン(第3位置決めピン)
52 左前ピン差込み孔(第1ピン差込み孔)
54 左後ピン差込み孔(第3ピン差込み孔)
57 右後ピン差込み孔(第2ピン差込み孔)
図1
図2