(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220419BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20220419BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220419BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20220419BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/18
(21)【出願番号】P 2018051095
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】竹内 清
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240142(JP,A)
【文献】特開2015-076918(JP,A)
【文献】特開2016-144347(JP,A)
【文献】特開2009-033936(JP,A)
【文献】特表2013-524748(JP,A)
【文献】特開2017-175866(JP,A)
【文献】特開2010-045923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60R16/00-17/02
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄電装置及び第2蓄電装置が並列に配置された車両用電源システムであって、
車両の走行用のモータへの電力の供給前に、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の電圧をそれぞれ検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の電圧に電圧差があるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記電圧差があると判定された場合には、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうちの電圧が高い蓄電装置から
前記モータとは異なる電力消費装置に電力を供給
して消費させて、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置を同電圧にさせる制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置が同電圧になると、前記電力消費装置への電力供給を停止した後に、前記モータへ前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置から電力を供給させる、
車両用電源システム。
【請求項2】
前記電力消費装置は、複数設けられており、
前記制御部は、
前記判定部によって前記電圧差があると判定された場合には、
前記電圧差の大きさに応じて、電圧が高い蓄電装置から前記複数の電力消費装置から選択した少なくとも一つの電力消費装置に電力を供給させる、
請求項
1に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
前記電力消費装置は、ヒーターである、
請求項1
又は2に記載の車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータを動力源とする電気自動車が普及している。電気自動車の中には、並列に配置された複数の蓄電装置(バッテリー)から車両の機器(例えばモータ)に電力が供給されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電気自動車では、複数の蓄電装置の電圧差が大きくなる恐れがある。そして、複数の蓄電装置の電圧差が大きくなると、その後、複数の蓄電装置を並列接続できず、大きな容量の電源として供給できない。
【0005】
そこで、本開示はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電圧差がある複数の蓄電装置を早期に同電圧にさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様においては、第1蓄電装置及び第2蓄電装置が並列に配置された車両用電源システムであって、システム起動時に、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の電圧をそれぞれ検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の電圧に電圧差があるか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記電圧差があると判定された場合には、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうちの電圧が高い蓄電装置から電力消費装置に電力を供給させて、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置を同電圧にさせる制御部と、を備える、車両用電源システムを提供する。
【0007】
また、前記検出部は、車両に搭載された機器への電力の供給前に、前記第1蓄電装置及び前記蓄電装置の電圧をそれぞれ検出し、前記制御部は、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置を同電圧にさせた後に、前記機器へ前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置から電力を供給させることとしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記判定部によって前記電圧差があると判定された場合には、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうちの電圧が高い蓄電装置のみを接続して前記電力消費装置に電力を供給した後に、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置を接続して前記機器に電力を供給させることとしてもよい。
【0009】
また、前記電力消費装置は、複数設けられており、前記制御部は、前記判定部によって前記電圧差があると判定された場合には、前記電圧差の大きさに応じて、電圧が高い蓄電装置から前記複数の電力消費装置から選択した少なくとも一つの電力消費装置に電力を供給させることとしてもよい。
【0010】
また、前記電力消費装置は、ヒーターであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電圧差がある複数の蓄電装置を早期に同電圧にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る車両用電源システムSの構成を説明するための模式図である。
【
図2】システム起動時の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<車両用電源システムの構成>
本発明の一の実施形態に係る車両用電源システムの構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一の実施形態に係る車両用電源システムSの構成を説明するための模式図である。車両用電源システムSは、車両に搭載された高電圧のシステムである。車両は、ここでは、電気自動車である。車両用電源システムSは、
図1に示すように、第1バッテリーパック10と、第2バッテリーパック20と、インバータ30と、モータ35と、ヒーター40と、DCDCコンバータ50と、制御装置90とを有する。
【0015】
車両用電源システムSは、詳細は後述するが、システム起動時に第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20に電圧差がある場合には、電圧が高いバッテリーパックから電力消費装置(ヒーター40等)に電力を供給して、2つのバッテリーパックを同電圧にさせる。なお、システム起動時は、例えば、車両を走行させるためにモータ35に電力を供給する動作起動時や、バッテリーパックを充電させる動作起動時を意味する。また、バッテリーパックに電圧差が生じるのは、例えば、システム作動時以外の時の自己放電に差が生じるためである。
【0016】
第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20は、並列に配置された蓄電装置である。第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20は、例えば車両を走行させるために、モータ35に電力を供給する。また、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20は、外部から供給される電力を蓄電する。本実施形態では、第1バッテリーパック10が第1蓄電装置に該当し、第2バッテリーパック20が第2蓄電装置に該当する。
【0017】
第1バッテリーパック10は、蓄電部12と、第1リレー部14と、第2リレー部15と、検出部16とを有する。蓄電部12は、例えばリチウムイオン電池であり、複数のセルから成る。第1リレー部14は、蓄電部12と抵抗13に接続されており、蓄電部12及び抵抗13を電気的に接続させるか否かを切り替える。第2リレー部15は、第1リレー部14と並列に設けられており、回路を電気的に接続させるか否かを切り替える。検出部16は、蓄電部12の電圧を検出する。検出部16は、車両用電源システムSのシステム起動時(例えば、モータ35への電力の供給前)に、蓄電部12の電圧を検出する。
【0018】
第2バッテリーパック20は、蓄電部22と、第1リレー部24と、第2リレー部25と、検出部26とを有する。蓄電部22は、例えばリチウムイオン電池であり、複数のセルから成る。第1リレー部24は、蓄電部22と抵抗23に接続されており、蓄電部22及び抵抗23を電気的に接続させるか否かを切り替える。第2リレー部25は、第1リレー部24と並列に設けられており、回路を電気的に接続させるか否かを切り替える。検出部26は、蓄電部22の電圧を検出する。検出部26は、車両用電源システムSのシステム起動時(例えば、モータ35への電力の供給前)に、蓄電部22の電圧を検出する。
【0019】
インバータ30は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20からの直流電力を交流電力に変換する。
モータ35は、動力源であり、車両を走行させるための動力を発生させる。モータ35は、例えば3相モータである。モータ35は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20からインバータ30を介して電力が供給される機器に該当する。
【0020】
ヒーター40及びDCDCコンバータ50は、システム起動時に、第1バッテリーパック10や第2バッテリーパック20から供給された電力を消費可能な電力消費装置である。ヒーター40には、リレー部42がON状態の際に電力が供給され、DCDCコンバータ50には、リレー部52がON状態の際に電力が供給される。上記では、電力消費装置がヒーター40及びDCDCコンバータ50であることとしたが、これに限定されず、例えばエアコン用の電動コンプレッサーも電力消費装置であってもよい。
【0021】
制御装置90は、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、車両用電源システムSの動作を制御する。例えば、制御装置90は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20からモータ35や電力消費装置への電力供給を制御する。
【0022】
前述したように、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20は、システム作動時以外の時の自己放電等によって電圧差が生じうる。そこで、制御装置90は、システム起動時に、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20に電圧差があるか否かを判定する判定部として機能する。すなわち、制御装置90は、検出部16が検出した蓄電部12の電圧と、検出部26が検出した蓄電部22の電圧が異なるか否かを判定する。
【0023】
制御装置90は、システム起動時に第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20に電圧差があると判定された場合には、第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20を同電圧にさせる制御部として機能する。制御装置90は、電圧差があると判定された場合には、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20のうちの電圧が高いバッテリーパックから電力消費装置(ヒーター40、DCDCコンバータ50)に電力を供給させる。
【0024】
制御装置90は、電圧差があると判定された場合には、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20のうちの電圧が高いバッテリーパックのみを接続して電力消費装置に電力を供給させる。例えば、第1バッテリーパック10の電圧が第2バッテリーパック20の電圧よりも高い場合には、制御装置90は、第1バッテリーパック10のみを接続して第1バッテリーパック10から電力消費装置に電力を供給させる。この際、制御装置90は、第1バッテリーパック10の第1リレー部14及び第2リレー部15と、第2バッテリーパック20の第1リレー部24及び第2リレー部25の接続状態を切り替えることで、電力消費装置に電力を供給するバッテリーパックを設定する。また、制御装置90は、電力を供給する電力消費装置のリレー部(例えば、ヒーター40のリレー部42)をON状態にする。
【0025】
制御装置90は、電圧差があると判定された場合には、電圧差の大きさに応じて、電圧が高いバッテリーパックから複数の電力消費装置から選択した少なくとも一つの電力消費装置に電力を供給させてもよい。例えば、制御装置90は、電圧差が大きい場合には、ヒーター40及びDCDCコンバータ50の両方に電力を供給させ、電圧差が小さい場合には、ヒーター40のみに電力を供給させる。
【0026】
また、制御装置90は、第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20が同電圧になったか否かを判定する。例えば、制御装置90は、検出部16、26が検出した電圧によって、第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20が同電圧になったか否かを判定する。制御装置90は、同電圧になったと判定された場合には、電力消費装置への電力供給を停止させる。
【0027】
制御装置90は、第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20を同電圧にさせた後に、モータ35へ第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20から電力を供給させる。すなわち、制御装置90は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20を接続して、モータ35に電力を供給させる。これにより、並列接続された第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20を供給可能容量が大きい電源として利用できる。
【0028】
<システム起動時の処理>
車両用電源システムSのシステム起動時の処理の一例について、
図2を参照しながら説明する。
【0029】
図2は、システム起動時の処理を説明するためのフローチャートである。ここでは、運転者がイグニッションスイッチをONしたことにより、インバータ30を介してモータ35に電力を供給するためにシステムが起動されたものとする。システム起動時に、第1バッテリーパック10の第1リレー部14及び第2リレー部15と、第2バッテリーパック20の第1リレー部24及び第2リレー部25は、OFF状態である。
【0030】
まず、制御装置90は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20の電圧を検出させる(ステップS102)。すなわち、第1バッテリーパック10の検出部16が蓄電部12の電圧を検出し、第2バッテリーパック20の検出部26が蓄電部22の電圧を検出する。
【0031】
次に、制御装置90は、2つのバッテリーパックが電圧差であるか否かを判定する(ステップS104)。ここでは、第1バッテリーパック10の蓄電部12の電圧が、第2バッテリーパック20の蓄電部22の電圧よりも高いものとする(ステップS104:Yes)。
【0032】
次に、制御装置90は、電圧の高いバッテリーパックから電力消費装置(ここでは、ヒーター40)に電力を供給させる(ステップS106)。すなわち、制御装置90は、第1バッテリーパック10の第1リレー部14及び第2リレー部15と、リレー部42をONさせて、第1バッテリーパック10からヒーター40に電力を供給する。
【0033】
次に、制御装置90は、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20が同電圧になったか否かを判定する(ステップS108)。同電圧になった場合には(ステップS108:Yes)、制御装置90は、リレー部42をOFFにして電力消費装置への電力供給を停止する(ステップS110)。すなわち、制御装置90は、第1バッテリーパック10からヒーター40への電力供給を停止する。
【0034】
その後、制御装置90は、第2バッテリーパック20の第1リレー部24及び第2リレー部25をON状態にして、第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20からモータ35に電力を供給させる(ステップS112)。これにより、並列接続された第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20から、インバータ30を介してモータ35に供給される電力量が多くなる。
【0035】
なお、上記では、2つのバッテリーパック(第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20)が並列に配置されていることとしたが、これに限定されない。例えば、3つ以上のバッテリーパックが並列に配置されていてもよい。バッテリーパックが3つ以上並列に配置されている場合には、電圧差が大きくなりやすいので、上述した処理がより有効に奏される。
【0036】
また、上記では、車両が電気自動車であることとしたが、これに限定されない。例えば、車両は、複数の蓄電装置が並列に配置されたハイブリット車やプラグインハイブリット車であってもよい。
【0037】
<本実施形態における効果>
上述した車両用電源システムSは、システム起動時に、並列に配置された第1バッテリーパック10及び第2バッテリーパック20の電圧を検出する。そして、車両用電源システムSは、2つのバッテリーパックに電圧差があると判定した場合には、電圧が高いバッテリーパックから電力消費装置(ヒーター40等)に電力を供給して、同電圧にさせる。
これにより、システム起動時に第1バッテリーパック10と第2バッテリーパック20に電圧差がある場合には、電圧が高いバッテリーパックから電力消費装置に電力を供給させることで、2つのバッテリーパックを早期に同電圧にさせることができる。この結果、その後に、2つのバッテリーパックを並列接続して供給可能容量が大きい電源として利用することが可能となる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0039】
S 車両用電源システム
10 第1バッテリーパック
16 検出部
20 第2バッテリーパック
26 検出部
35 モータ
40 ヒーター
50 DCDCコンバータ
90 制御装置