(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】車載通信システム、車載中継装置、通信プログラム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 47/125 20220101AFI20220419BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20220419BHJP
H04L 47/41 20220101ALI20220419BHJP
【FI】
H04L47/125
H04L12/28 100A
H04L47/41
(21)【出願番号】P 2018102626
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 剛史
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001861(JP,A)
【文献】特開2016-086374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02-16/027
H04L 12/28
H04L 12/46
H04L 47/125
H04L 47/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部とを有する車載中継装置を複数備え、
2つの前記車載中継装置が2つ以上の通信線を介して接続されて
おり、
前記車載中継装置は、
前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶した記憶部と、
前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視する処理を行う監視処理部と、
前記監視処理部が監視する通信状況に応じて、前記対応関係を更新する処理を行う更新処理部と
を有し、
前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する、
車載通信システム。
【請求項2】
2つの前記車載中継装置を接続する2つ以上の通信線は、同じ通信規格に従う通信線である、請求項1に記載の車載通信システム。
【請求項3】
前記更新処理部は、所定時間が経過する毎に、前記対応関係を更新する処理を行う、請求項
1又は請求項2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
前記更新処理部は、前記第2接続部を介した通信の通信状況の不平衡度が閾値を超える場合に、前記対応関係を更新する処理を行う、請求項
1又は請求項2に記載の車載通信システム。
【請求項5】
車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、
他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、
前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部と
、
前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶した記憶部と、
前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視する処理を行う監視処理部と、
前記監視処理部が監視する通信状況に応じて、前記対応関係を更新する処理を行う更新処理部と
を備え
、
2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続され、
前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する、
車載中継装置。
【請求項6】
車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置に、
前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、
受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継
し、
前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視し、
前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶部に記憶しておき、監視した前記通信状況に応じて、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する
処理を行わせる、通信プログラム。
【請求項7】
車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置が、
前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、
受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継
し、
前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視し、
前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶部に記憶しておき、監視した前記通信状況に応じて、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された複数の車載通信装置が送受信するメッセージを中継する車載通信システム、車載中継装置、通信プログラム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)は増加する傾向にある。各ECUは、他のECUとの間で通信を行って情報を交換し、各々の処理を行っている。このため、車両内のECUの増加に伴って、ECUが通信を行うために設けられる車両内の通信線の量が増加し、車両の重量の増加及び車両内の通信線を配するスペースの減少等が懸念される。
【0003】
特許文献1においては、車両内を複数の領域に分け、領域毎に複数の機能ECUを第1ネットワークにて中継ECUに接続し、複数の中継ECUを第2ネットワークにて接続した構成の車両制御システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の車両制御システムにおいては、異なる領域に設けられた複数の機能ECU間での通信量が増大した場合に、これらの通信を中継する中継ECU間の通信帯域が逼迫し、通信遅延が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車両に設けられる通信線の量を削減すると共に、通信遅延の発生を防止することが期待できる車載通信システム、車載中継装置、通信プログラム及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る車載通信システムは、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部とを有する車載中継装置を複数備え、2つの前記車載中継装置が2つ以上の通信線を介して接続されており、前記車載中継装置は、前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶した記憶部と、前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視する処理を行う監視処理部と、前記監視処理部が監視する通信状況に応じて、前記対応関係を更新する処理を行う更新処理部とを有し、前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する。
【0008】
本態様に係る車載中継装置は、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部と、前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶した記憶部と、前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視する処理を行う監視処理部と、前記監視処理部が監視する通信状況に応じて、前記対応関係を更新する処理を行う更新処理部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続され、前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する。
【0009】
本態様に係る通信プログラムは、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置に、前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継し、前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視し、前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶部に記憶しておき、監視した前記通信状況に応じて、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する処理を行わせる。
【0010】
本態様に係る通信方法は、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置が、前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継し、前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視し、前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶部に記憶しておき、監視した前記通信状況に応じて、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新する。
【0011】
なお、本願は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システムとして実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする通信方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるための通信プログラムとして実現したりすることができる。また、車載通信システムの一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、車載通信システムを含むその他のシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記によれば、車両に設けられる通信線の量を削減すると共に、通信遅延の発生を防止することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係るGWの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係るGWが行う送信先マップの更新処理の一例を示す模式図である。
【
図5】実施の形態1に係るGWが行う送信先マップの更新処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】変形例に係る車載通信システムの構成を示す模式図である。
【
図7】実施の形態2に係るGWが行う送信先マップの更新処理の一例を示す模式図である。
【
図8】実施の形態3に係るGWが行う送信先マップの更新処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1)本態様に係る車載通信システムは、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部とを有する車載中継装置を複数備え、2つの前記車載中継装置が2つ以上の通信線を介して接続されている。
【0016】
本態様にあっては、車載通信装置が接続された複数の通信線が車載中継装置に接続され、通信線間のメッセージの送受信を車載中継装置が中継する。車両には複数の車載中継装置が搭載され、複数の車載中継装置が通信線を介して接続される。この構成により、全ての車載通信装置を1つの車載中継装置に接続する構成と比較して、車両に設けられる通信線の量が削減されることが期待できる。
また車両に搭載される複数の車載中継装置は、2つの車載中継装置が2つ以上の通信線を介して接続され、複数の通信線を介してメッセージの送受信を行うことができる。この構成により、ボトルネックとなりやすい車載中継装置の間の通信について、その通信容量を増すことができるため、通信遅延の発生を防止することができる。また車載中継装置の間の通信容量を増すことによって、各通信線における通信速度を低速化することが可能となり、これにより通信に伴うノイズの発生量を低減することができる。
【0017】
(2)前記2つの車載中継装置を接続する2つ以上の通信線は、同じ通信規格に従う通信線であることが好ましい。
【0018】
本態様にあっては、2つの車載中継装置を接続する2つ以上の通信線は、同じ通信規格に従う通信線である。これにより、例えば通信規格に従ってメッセージの形式を変換するなどの処理を車載中継装置が行う必要がなく、変換処理による通信遅延などが発生することがない。また車載中継装置の構成の複雑化を抑制でき、車載中継装置のコストの増加を抑制できる。
【0019】
(3)前記車載中継装置は、前記第1接続部を介して受信したメッセージに付された識別情報、及び、該メッセージの送信先とすべき前記第2接続部の対応関係を記憶した記憶部と、前記第2接続部を介した通信の通信状況を監視する処理を行う監視処理部と、前記監視処理部が監視する通信状況に応じて、前記対応関係を更新する処理を行う更新処理部とを有することが好ましい。
【0020】
本態様にあっては、メッセージに付される識別情報とこのメッセージの送信先とすべき通信線との対応関係を車載中継装置が記憶部に記憶している。車載中継装置は、他の車載中継装置へ送信すべきメッセージを受信した場合、記憶してある対応関係に基づいて通信線を選択し、選択した通信線にメッセージを出力して他の車載中継装置へ送信する。車載中継装置は、他の車載中継装置に接続される複数の通信線における通信状況を監視する。通信状況は、例えば通信線にて送受信されたメッセージのデータ量、又は、通信を行う通信IC(Integrated Circuit)の消費電力量等を採用し得る。車載中継装置は、通信状況の監視結果に基づいて、記憶部に記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、通信状況に応じてメッセージとこれを送信する通信線との対応を変化させることができ、通信線間の通信量の不平衡又は不均衡を解消することにより、通信帯域の有効利用が可能となる。
【0021】
(4)前記更新処理部は、所定時間が経過する毎に、前記対応関係を更新する処理を行うことが好ましい。
【0022】
本態様にあっては、所定時間が経過する毎に、車載中継装置が記憶部に記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、所定時間の経過毎に対応関係が見直され、その時点の通信状況に適した対応関係への更新が行われる。
【0023】
(5)前記更新処理部は、前記第2接続部を介した通信の通信状況の不平衡度が閾値を超える場合に、前記対応関係を更新する処理を行うことが好ましい。
【0024】
本態様にあっては、複数の通信線の通信状況の不平衡度が閾値を超える場合に、車載中継装置が記憶部に記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、通信状況が平衡な状態であれば更新処理が行われないため、更新処理の頻度を低減でき、車載中継装置の処理負荷及び消費電力の低減が期待できる。
【0025】
(6)前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられたメッセージを、通信量の少ない第2接続部に割り当てるよう、前記対応関係を更新することが好ましい。
【0026】
本態様にあっては、監視により通信量が多いとされた通信線に割り当てられたメッセージを、通信量が少ない通信線に割り当てるよう、車載中継装置は記憶部に記憶した対応関係を更新する。これにより、複数の車載中継装置の間に設けられた複数の通信線の間の通信量の不平衡又は不均衡を解消することにより、通信帯域を有効利用できる。
【0027】
(7)前記更新処理部は、通信量の多い第2接続部に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、複数の第2接続部を介して送信するよう、前記対応関係を更新することが好ましい。
【0028】
本態様にあっては、監視により通信量が多いとされた通信線に割り当てられた所定の識別情報のメッセージを、車載中継装置は複数の通信線に割り当てる。所定の識別情報のメッセージを送信する必要が生じた際、車載中継装置は、複数の通信線から適宜に通信線を選択してメッセージを送信する。通信線の選択は、例えば交互又はランダム等の方法を採用し得る。これにより、通信量が多い通信線から通信量が少ない通信線へ通信負荷を分散させることができ、複数の通信線間の通信量の不平衡又は不均衡を解消することにより、通信帯域を有効利用できる。
【0029】
(8)本態様に係る車載中継装置は、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部と、前記第1接続部に接続された前記車載通信装置及び前記第2接続部に接続された前記他の車載中継装置の間でメッセージを中継する処理を行う中継処理部とを備える。
【0030】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、車両中の通信線の量を削減すると共に、通信遅延の発生を防止することが期待できる。
【0031】
(9)本態様に係る通信プログラムは、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置に、前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継する処理を行わせる。
【0032】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、車両中の通信線の量を削減すると共に、通信遅延の発生を防止することが期待できる。
【0033】
(10)本態様に係る通信方法は、車載通信装置が接続される複数の第1接続部と、他の車載中継装置が接続される複数の第2接続部とを備え、2つ以上の前記第2接続部が1つの前記他の車載中継装置に接続された車載中継装置が、前記第1接続部を介して前記車載通信装置からのメッセージを受信し、受信したメッセージを一又は複数の前記第2接続部を介して前記他の車載中継装置へ中継する。
【0034】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、車両中の通信線の量を削減すると共に、通信遅延の発生を防止することが期待できる。
【0035】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車載通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
(実施の形態1)
<システム構成>
図1は、本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る車載通信システム1は、車両100に複数のECU3と、複数のGW(Gate Way)10とを備え、複数のECU3及びGW10が通信線5,6を介してメッセージの送受信を行うシステムである。一例として
図1には、車両100にGW10が2つ搭載され、2つのGW10が2つの通信線6を介して接続され、各GW10に3つの通信線5が接続され、各通信線
5に3つのECU3が接続された車載通信システム1の構成が示されている。以下の説明において2つのGW10を区別する必要がある場合には、
図1に示すように一方をGW10aとし、他方をGW10bとして、異なる符号を付して区別する。なお車載通信システム1に含まれるECU3の数、GCW10の数、通信線5,6の数、装置の接続態様及びネットワーク構成等は、図示のものに限らない。
【0037】
車両100に搭載されたECU3は、例えば車両100のエンジンの動作を制御するECU、ドアのロック/アンロックを制御するECU、ライトの点灯/消灯を制御するECU、エアバッグの動作を制御するECU、及び、ABS(Antilock Brake System)の動作を制御するECU等の種々のECUが含まれ得る。各ECU3は、車両100に配された通信線5のいずれかに接続され、通信線5及びGW10を介して他のECU3との間でメッセージの送受信を行うことができる。
【0038】
各GW10は、複数の通信線5が接続されており、通信線5を介して複数のECU3との間でメッセージの送受信を行うことができる。ECU3が送信したメッセージを受信したGW10は、受信したメッセージに付されたIDに基づいて中継の要否を判断し、中継が必要なメッセージを受信元とは異なる通信線5から送信する。このためGW10は、メッセージに付されるIDと、このメッセージの送信先となる通信線5との対応関係を記憶した送信先マップを有している。
【0039】
車載通信システム1では、一方のGW10aに接続されたECU3から他方のGW10bに接続されたECU3へメッセージを送信することが可能である。この場合、ECU3からのメッセージを受信したGW10aは、このメッセージに付されたIDに基づいて他方のGW10bへ中継すべきと判断し、このメッセージを通信線6から出力することでGW10bへ送信する。通信線6を介してGW10aからのメッセージを受信したGW10bは、受信したメッセージに付されたIDに基づいて中継先の通信線5がいずれであるかを判断し、このメッセージを中継先の通信線5から送信する。GW10bからGW10aへメッセージを送信する場合も同様である。
【0040】
また本実施の形態に係る車載通信システム1では、2つのGW10が2つの通信線6を介して接続されている。2つの通信線6は同じ通信規格に従うものであり、例えばCAN(Controller Area Network)又はイーサネット(登録商標)等の通信規格が採用され得る。また本実施の形態においては、いずれの通信線6を用いた場合であっても、通信速度は同じであるものとする。ただし、2つの通信線6が異なる通信規格に従うものであってもよく、通信速度が異なっていてもよい。
【0041】
GW10は、他のGW10へメッセージを送信する場合、2つの通信線6からいずれか1つを選択する。GW10は、選択した通信線6へメッセージを出力することにより、この通信線6を介して他のGW10へメッセージを送信する。このときにGW10は、メッセージに付されたIDに基づいて、このメッセージを送信すべき通信線6を選択する。このためGW10は、メッセージに付されるIDと、このメッセージを送信する通信線6との対応関係を送信先マップに記憶している。
【0042】
更に本実施の形態に係る車載通信システム1では、各GW10が通信線6の通信状況を監視している。GW10が監視する通信状況は、例えば通信線6毎の送信データ量若しくは受信データ量、又は、通信線6に対する通信処理を行うトランシーバなどの通信ICの消費電力量等を採用することができるが、これらに限るものではない。本実施の形態に係るGW10は、通信状況の監視結果に基づいて、送信先マップに記憶されたメッセージのID及び送信先の対応関係を更新する処理を行う。送信先マップの更新処理の詳細は後述する。
【0043】
図2は、本実施の形態に係るGW10の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る車載通信システム1が備える2つのGW10は、略同じ構成であるため、
図2には一方のGW10のみ詳細な構成を図示し、他方のGW10は詳細な構成の図示を省略している。本実施の形態に係るGW10は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12、通信部(トランシーバ)13,14、接続部(コネクタ)15,16及び通信バッファ17等を備えて構成されている。
【0044】
処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部11は、記憶部12に記憶された通信プログラム12aを読み出して実行することにより、メッセージを中継する処理、通信線6の通信状況を監視する処理、及び、記憶部12に記憶された送信先マップ12bを更新する処理等を行う。
【0045】
記憶部12は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行する通信プログラム12aと、処理部11がメッセージの中継を行う際に用いる送信先マップ12bとを記憶している。なお通信プログラム12aは、例えばGW10の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものをGW10が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムをGW10が読み出して記憶部12に記憶してもよい。
【0046】
接続部15,16は、通信線5,6を着脱可能に接続するためのものであり、いわゆるコネクタである。接続部15,16は、接続される通信線5,6の形状及び規格等に適した構成とされる。なお
図2においては、ECU3との通信を行う通信線5を接続するための3つの接続部15と、他のGW10との通信を行うための通信線6を接続するための2つの接続部16とを別符号を付して図示している。しかしGW10及びECU3の通信と、2つのGW10の間の通信とが同じ通信規格であり、通信線5,6が同じ規格のものである場合には、実質的に接続部15,16は同じものであってよい。
【0047】
通信部13,14は、接続部15,16に接続された通信線5,6を介したメッセージの送受信に関する処理を行う。通信部13,14は、CAN又はイーサネット等の通信規格に従ってメッセージの送受信を行う。通信部13,14は、例えばCANの通信規格であればCANトランシーバなどの通信ICを用いて構成され得る。通信部13,14は、接続部15,16に接続された通信線5,6の電位を周期的にサンプリングして取得することにより、通信線5,6上の電気信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータを受信メッセージとして処理部11へ与える。また通信部13,14は、処理部11からデジタルデータとして与えられたメッセージを電気信号に変換し、変換した電気信号を接続部15,16に接続された通信線5,6へ出力することによって、メッセージを送信する。なお
図2においては、ECU3との通信を行う3つの通信部13と、他のGW10との通信を行う2つの通信部14とを別符号を付して図示している。しかしGW10及びECU3の通信と、2つのGW10の間の通信とが同じ通信規格である場合には、実質的に通信部13,14は同じものであってよい。
【0048】
通信バッファ17は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のデータ書換可能なメモリ素子を用いて構成されている。通信バッファ17は、ECU3又は他のGW10から受信したメッセージを一時的に記憶する。
【0049】
また本実施の形態に係るGW10は、記憶部12に記憶された通信プログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、中継処理部21、監視処理部22及び更新処理部23等が処理部11にソフトウェア的な機能ブロックとして実現される。中継処理部21は、通信部13が受信したECU3からのメッセージを、他のECU3へ中継する処理を行う。中継処理部21は、通信部13にて受信されたメッセージに付されたIDを取得して記憶部12の送信先マップ12bを参照し、送信先マップ12bにてIDに対応付けられた送信先を調べる。中継処理部21は、送信先マップ12bにて指定された送信先の通信部13,14へメッセージを与え、通信部13,14に通信線5,6へのメッセージ送信を行わせる。
【0050】
監視処理部22は、接続部16に接続された通信線6の通信状況を監視する処理を行う。監視処理部22は、例えば単位時間当たりの各通信線6の送信データ量を算出する、又は、各通信部14の消費電力量を検出する等の種々の方法で、通信状況の監視を行うことができる。ただし本実施の形態において監視処理部22は、単位時間当たりの送信データ量を算出して通信状況を監視する。なお通信部14の消費電力量を検出することで各通信線6における通信負荷を測定することが可能である。ただし監視処理部22が通信部14の消費電力量を検出する場合には、例えば通信部14に加わる電圧値又は通信部14を流れる電流値等を測定するセンサなどのハードウェアとの協働が必要であり、これらのハードウェアは
図2において記載を省略してある。
【0051】
更新処理部23は、監視処理部22による各通信線6の通信状況の監視結果に基づいて、記憶部12に記憶された送信先マップ12bの内容を更新する処理を行う。更新処理部23は、各通信線6の単位時間当たりの送信データ量を取得し、送信データ量が多い通信線6に割り当てられたメッセージの一部を、送信データ量が少ない通信線6に割り当てるよう送信先マップ12bを更新することによって、通信線6間の通信量の不平衡又は不均衡を解消する。以下、更新処理部23による送信先マップ12bの更新処理の詳細を説明する。
【0052】
<マップ更新処理>
図3は、送信先マップ12bの一例を示す模式図である。本実施の形態に係るGW10の送信先マップ12bには、メッセージに付されるIDと、このメッセージの送信先との対応関係が記憶されている。メッセージに付されるIDは、例えばCANの通信規格に従うメッセージの場合、CAN-IDを採用し得る。
図3の送信先マップ12bには、IDの一例として1,2,3,4,5…の数値が示されている。
【0053】
また
図3に示す例では、送信先マップ12bの送信先としてチャンネルA1,A2,A3,B1,B2の5つが記載されている。これらのうち、チャンネルA1,A2,A3は、GW10の3つの通信部13に対応するものであり、送信先としてECU3が接続された通信線5のいずれかを示している。チャンネルB1,B2は、GW10の2つの通信部14に対応するものであり、送信先として他のGW10が接続された通信線6のいずれかを示している。
【0054】
また、送信先マップ12bに記憶されるメッセージの送信先は、更に第1送信先及び第2送信先の2つに分けられる。第1送信先は、通信部13に対応する3つのチャンネルA1,A2、A3のうちの1つ又は2つが設定され得る。第2送信先は、通信部14に対応する2つのチャンネルB1,B2のうちのいずれか1つが設定され得る。ただし、第1送信先及び第2送信先のいずれか一方が存在しない場合があり、
図3ではこれを”-”の記号で示している。
【0055】
図示の送信先マップ12bの例では、IDが”1”のメッセージは、第1送信先としてチャンネルA1及びA2が設定され、第2送信先としてチャンネルB1が設定されている。またIDが”2”のメッセージは、第1送信先としてチャンネルA2及びA3が設定され、第2送信先としてチャンネルB2が設定されている。IDが”3”のメッセージは、第1送信先はなく、第2送信先としてチャンネルB1が設定されている。IDが”4”のメッセージは、第1送信先としてチャンネルA2が設定され、第2送信先としてチャンネルB2が設定されている。IDが”5”のメッセージは、第1送信先としてチャンネルA1及びA3が設定され、第2送信先はない。
【0056】
ECU3からのメッセージを通信部13にて受信した場合、GW10の中継処理部21は、メッセージに付されたIDを取得し、取得したIDに基づいて記憶部12の送信先マップ12bを参照する。例えばIDが”1”である場合、中継処理部21は、送信先マップ12bからこのメッセージの第1送信先としてチャンネルA1及びA2を取得し、チャンネルA1及びA2に対応する通信部13にこのメッセージを与えて送信する。また中継処理部21は、IDが”1”のメッセージの第2送信先として送信先マップ12bからチャンネルB1を取得し、チャンネルB1に対応する通信部14にこのメッセージを与えて送信する。
【0057】
なお本例の送信先マップ12bは、第1送信先としてECU3が接続された通信線5に対応するチャンネルを記憶しているが、この第1送信先は必ずしも送信先マップ12bに記憶しておく必要はない。例えば、GW10がいずれかの通信線5にてメッセージを受信した場合に、この通信線5以外の全ての通信線5に対してメッセージを中継する構成である場合、送信先マップ12bに第1送信先を記憶しておく必要はない。
【0058】
本実施の形態に係るGW10の更新処理部23は、監視処理部22が監視する通信線6の通信状況に応じて、送信先マップ12bの第2送信先を更新する。
図4は、実施の形態1に係るGW10が行う送信先マップ12bの更新処理の一例を示す模式図である。監視処理部22は、例えば数100ミリ秒~数秒の単位時間における各通信線6の送信データ量を計量することによって、各通信線6の通信状況を監視する。
図4の上下に示す2つのグラフは、単位時間におけるチャンネルB1及びB2の送信データ量を棒グラフで示したものである。各棒グラフ中の1~5の数値はメッセージのIDを示し、ID毎の送信データ量が区分けして示されている。またチャンネルB1及びB2の送信データ量の平均値が破線で示されている。なお
図4に示す例は、
図3に示した送信先マップ12bの内容とは相違する例である。
【0059】
図4の上段に示す例では、IDが”1”,”3”,”4”のメッセージは第2送信先としてチャンネルB1が設定され、IDが”2”,”5”のメッセージは第2送信先としてチャンネルB2が設定されており、単位時間当たりの送信データ量はチャンネルB1の方が多い。更新処理部23は、単位時間が経過する毎に、監視処理部22が計量した各チャンネル(通信線6)の送信データ量を取得すると共に、2つのチャンネルの送信データ量の平均値を算出する。更新処理部23は、取得した各チャンネルの送信データ量が平均値に近付くように、送信データ量が多い通信線6に割り当てられたメッセージを送信データ量が少ない通信線6に割り当て、各チャンネルに対するメッセージの割り当てを変更する。
図4の下段に示す例では、更新処理部23は、IDが”3”のメッセージをチャンネルB1からチャンネルB2へ割り当てを変更しており、これにより2つのチャンネルの送信データ量が平滑化されている。更新処理部23は、記憶部12の送信先マップ12bに含まれるIDが”3”のメッセージの第2送信先をチャンネルB1からチャンネルB2へと更新する。
【0060】
なお
図4に示す更新処理は一例であって、これに限るものではない。更新処理部23は、送信データ量が多い通信線6に割り当てられたメッセージを送信データ量が少ない通信線6に割り当てると共に、送信データ量が少ない通信線6に割り当てられたメッセージを送信データ量が多い通信線6に割り当てて送信データ量を平滑化してもよい。例えば
図4の上段に示す監視結果が得られた場合に更新処理部23は、IDが”4”のメッセージをチャンネルB2に割り当てると共に、IDが”5”のメッセージをチャンネルB1に割り当てて送信先マップ12bを更新してもよい。また例えば更新処理部23は、IDが”4”のメッセージをチャンネルB2に割り当てると共に、IDが”2”のメッセージをチャンネルB1に割り当てて送信先マップ12bを更新してもよい。
【0061】
<フローチャート>
図5は、実施の形態1に係るGW10が行う送信先マップ12bの更新処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態1に係るGW10の処理部11の監視処理部22は、他のGW10との通信を行う2つのチャンネル(通信線6)について送信データ量を計量しており、まず計量結果である送信データ量を初期化する(ステップS1)。監視処理部22は、処理部11内のタイマ機能などを用いて、送信データ量の初期化から単位時間が経過したか否かを判定する(ステップS2)。単位時間が経過していない場合(S2:NO)、監視処理部22は、各チャンネルからのメッセージ送信に応じて、チャンネル毎の送信データ量を加算し(ステップS3)、ステップS2へ処理を戻す。
【0062】
単位時間が経過した場合(S2:YES)、処理部11の更新処理部23は、監視処理部22が計量したチャンネルの送信データ量の平均値を算出する(ステップS4)。更新処理部23は、各チャンネルの送信データ量が平均値に近付くように、各チャンネルに対するメッセージの対応関係を変更する(ステップS5)。更新処理部23は、変更した対応関係となるよう記憶部12の送信先マップ12bを更新し(ステップS6)、ステップS1へ処理を戻す。
【0063】
なお本フローチャートでは、更新処理部23がステップS4にて平均値を算出しているが、この処理は必ずしも必要ではない。更新処理部23が、平均値を用いることなく更新処理を行う構成である場合、平均値を算出しなくてよい。例えば更新処理部23は、2つのチャンネルの送信データ量の差異を低減する又は最小化するようにメッセージとチャンネルとの対応関係を変更する構成としてもよい。
【0064】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る車載通信システム1は、ECU3が接続された複数の通信線5がGW10に接続され、通信線5間のメッセージの送受信をGW10が中継する。車両100には複数(2つ)のGW10が搭載され、2つのGW10が通信線6を介して接続される。この構成により、全てのECU3を1つのGW10に接続する構成と比較して、車両100に設けられる通信線5の量が削減されることが期待できる。
【0065】
また車両100に搭載される2つのGW10は、2つ以上の通信線6を介して接続され、複数の通信線6を介してメッセージの送受信を行うことができる。この構成により、ボトルネックとなりやすいGW10の間の通信について、その通信容量を増すことができるため、通信遅延の発生を防止することができる。またGW10の間の通信容量を増すことによって、各通信線6における通信速度を低速化することが可能となり、これにより通信に伴うノイズの発生量を低減することもできる。
【0066】
また本実施の形態に係る車載通信システム1では、2つのGW10を接続する2つの通信線6が、同じ通信規格に従う通信線である。これにより、例えばGW10が異なる通信規格へのメッセージ形式の変換などの処理を行う必要がなく、変換処理に伴う通信遅延などが発生することを防止できる。またGW10の構成の複雑化を抑制でき、GW10のコストの増加を抑制できる。
【0067】
また本実施の形態に係る車載通信システム1では、メッセージに付されるIDとこのメッセージの送信先とすべき通信線6との対応関係を、GW10が記憶部12の送信先マップ12bに記憶している。GW10は、他のGW10へ送信すべきメッセージを受信した場合、送信先マップ12bに記憶された対応関係に基づいて送信先の通信線6を選択し、選択した通信線6にメッセージを出力して他のGW10へ送信する。またGW10は、他のGW10に接続される複数の通信線6における通信状況を監視する。監視する通信状況は、例えば通信線6にて送受信されたメッセージのデータ量、又は、通信部14の消費電力量等を採用し得る。GW10は、通信状況の監視結果に基づいて、記憶部12の送信先マップ12bに記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、GW10は通信状況に応じてメッセージとこれを送信する通信線6との対応関係を変化させることができ、通信線6間の通信量の不平衡又は不均衡を解消することにより、通信帯域の有効利用が可能となる。
【0068】
また実施の形態1に係るGW10は、所定の単位時間が経過する毎に、記憶部12の送信先マップ12bに記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、単位時間の経過毎に対応関係が見直され、その時点の通信状況に適した対応関係への更新が行われる。
【0069】
また実施の形態1に係るGW10は、送信データ量が多い通信線6に割り当てられたメッセージを、送信データ量が少ない通信線6に割り当てるよう、記憶部12の送信先マップ12bに記憶した対応関係を更新する。これにより、2つのGW10の間に設けられた2つの通信線間の送信データ量の不平衡又は不均衡を解消することにより、通信帯域の有効利用が可能となる。
【0070】
なお本実施の形態においては、車載通信システム1が2つのGW10を備え、2つのGW10が2つの通信線6にて接続される構成としたが、システム構成はこれに限らない。車載通信システム1は、3つ以上のGW10を備えてもよく、複数のGW10を3つ以上の通信線6にて接続してもよい。
図6は、変形例に係る車載通信システム1の構成を示す模式図である。変形例に係る車載通信システム1は、3つのGW10を備えている。
図6において図示は省略するが、各GW10には複数の通信線5が接続され、通信線5には一又は複数のECU3が接続される。また3つのGW10は、3つの通信線6を介して接続されている。3つの通信線6は例えばCANの通信規格に従うものであり、3つのGW10はバス型の接続方式で通信線6を介して接続される。なお複数のGW10の接続方式はバス型以外、例えばリング型又はスター型等であってもよい。
【0071】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る車載通信システム1は、更新処理部23による送信先マップ12bの更新方法が実施の形態1とは異なる。
図7は、実施の形態2に係るGW10が行う送信先マップ12bの更新処理の一例を示す模式図である。
図7の上段に示す例では、IDが”1”,”3”,”4”のメッセージは第2送信先としてチャンネルB1が設定され、IDが”2”,”5”のメッセージは第2送信先としてチャンネルB2が設定されており、単位時間当たりの送信データ量はチャンネルB1の方が多い。
【0072】
実施の形態2に係るGW10では、メッセージの第2送信先としてチャンネルB1及びB2の両方を設定することができる。第2送信先としてチャンネルB1及びB2の両方が設定されたメッセージを送信する場合、実施の形態2に係るGW10の中継処理部21は、このメッセージをチャンネルB1及びB2の両方から送信するのではなく、チャンネルB1及びB2のいずれか一方を選択してメッセージ送信を行う。中継処理部21は、例えばチャンネルB1及びB2を交互に送信先として選択することができ、また例えば乱数を発生させていずれか一方を選択することができる。
【0073】
実施の形態2に係るGW10の更新処理部23は、単位時間が経過する毎に、監視処理部22が計量した各チャンネルの送信データ量を取得すると共に、2つのチャンネルの送信データ量の平均値を算出する。更新処理部23は、送信データ量が多い方のチャンネルに割り当てられているメッセージの中から1つを選択し、選択したメッセージの第2送信先をチャンネルB1及びB2の両方とする。このときに更新処理部23は、送信データ量が多いチャンネルに割り当てられている複数のメッセージの中で、最も送信データ量が多いメッセージを選択することができる。
【0074】
図7の下段に示す例では、送信データ量が多いチャンネルB1に割り当てられているメッセージの中から、最も送信データ量が多いIDが”4”のメッセージが更新処理部23により選択され、このメッセージの第2送信先をチャンネルB1及びB2の両方としている。更新処理部23は、記憶部12の送信先マップ12bに含まれるIDが”4”のメッセージの第2送信先をチャンネルB1及びB2へと更新する。これによりIDが”4”のメッセージの送信データ量はチャンネルB1及びB2に分散され、2つのチャンネルの送信データ量が平滑化されている。
【0075】
以上の構成の実施の形態2に係るGW10は、送信データ量が多い通信線6に割り当てられた所定のIDのメッセージを、複数の通信線6に割り当てる。これにより、送信データ量が多い通信線6から送信データ量が少ない通信線6に通信負荷を分散させることができ、複数の通信線6の間の送信データ量の不平衡又は不均衡を解消することができる。なお第2送信先としてチャンネルB1及びB2の両方が割り当てられたメッセージを送信する場合、中継処理部21は、2つのチャンネルB1及びB2を等しく利用してメッセージを送信する必要はなく、例えば2対1などの比率で偏りを持たせてチャンネルを選択し、メッセージを送信してもよい。
【0076】
実施の形態2に係る車載通信システム1のその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システム1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る車載通信システム1は、GW10の更新処理部23が送信先マップ12bの更新処理を行うタイミングが、実施の形態1に係る車載通信システム1と相違している。実施の形態3に係る車載通信システム1は、単位時間の経過毎に更新処理を行うのではなく、2つのGW10を接続する2つの通信線6の送信データ量の不均衡度が閾値を超えた場合に更新処理を行う。実施の形態3に係るGW10は、不均衡度が閾値を超えない場合には更新処理を行わない。
【0078】
実施の形態3に係るGW10の監視処理部22は、例えば数100ミリ秒~数秒の単位時間における各通信線6の送信データ量を計量すると共に、通信線6の間の不平衡度を算出する。不平衡度は、例えば以下の(1)式に基づいて算出することができる。なお(1)式において、”UB”は不平衡度であり、”Da”は複数の通信線6における送信データ量の平均値であり、”D”は平均値Daとの差が最も大きい通信線6の送信データ量である。本例においては、2つのGW10が2つの通信線6にて接続されているため、”D”はいずれか一方の通信線6の送信データ量とすればよい。
【0079】
UB = |D-Da|/Da …(1)
【0080】
実施の形態3に係るGW10の更新処理部23は、監視処理部22が算出した不平衡度が予め設定された閾値αを超える場合に、記憶部12の送信先マップ12bに記憶した対応関係を更新する処理を行う。閾値αは、例えば車載通信システム1の設計段階などにおいて予め定められる。更新処理部23が行う更新処理は、上述の実施の形態1又は実施の形態2の更新処理と同様である。
【0081】
図8は、実施の形態3に係るGW10が行う送信先マップ12bの更新処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態3に係るGW10の処理部11の監視処理部22は、他のGW10との通信を行う2つのチャンネルについて送信データ量を計量しており、まず計量結果である送信データ量を初期化する(ステップS11)。次いで、監視処理部22は、各チャンネルからのメッセージ送信に応じて、チャンネル毎の送信データ量を加算する(ステップS12)。監視処理部22は、各チャンネルの送信データ量に基づき、上記の(1)式を用いて不平衡度を算出する(ステップS13)。監視処理部22は、算出した不平衡度が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS14)。不平衡度が閾値を超えない場合(S14:NO)、監視処理部22は、ステップS12へ処理を戻す。
【0082】
不平衡度が閾値を超えた場合(S14:YES)、処理部11の更新処理部23は、各チャンネルの送信データ量が平均値に近付くように、各チャンネルに対するメッセージの対応関係を変更する(ステップS15)。更新処理部23は、変更した対応関係となるよう記憶部12の送信先マップ12bを更新し(ステップS16)、ステップS11へ処理を戻す。
【0083】
以上の構成の実施の形態3に係る車載通信システム1は、複数のGW10を接続する複数の通信線6について通信状況の不平衡度を算出し、不平衡度が閾値を超える場合に更新処理部23が送信先マップ12bに記憶した対応関係を更新する処理を行う。これにより、通信状況が平衡な状態であれば更新処理が行われないため、更新処理の実行頻度を低減でき、GW10の処理負荷及び消費電力等を低減することが期待できる。
【0084】
なお実施の形態3において示した不平衡度を算出するための(1)式は一例であって、これ以外の算出方法により不平衡度を算出してもよい。また更新処理を実行するか否かの判断を不平衡度に基づいて行うのではなく、別の値を算出して行ってもよい。GW10は、例えば通信状況の平衡度が閾値以下となった場合に更新処理を行ってもよく、また例えば送信データ量の最大値及び最小値の差分が閾値を超えた場合に更新処理を行ってもよく、これら以外の値に基づいて更新処理を行ってもよい。
【0085】
実施の形態3に係る車載通信システム1のその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システム1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0086】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 車載通信システム
3 ECU
5 通信線
6 通信線
10,10a,10b GW(車載中継装置)
11 処理部
12 記憶部
12a 通信プログラム
12b 送信先マップ
13 通信部
14 通信部
15 接続部(第1接続部)
16 接続部(第2接続部)
17 通信バッファ
21 中継処理部
22 監視処理部
23 更新処理部