(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】映像信号圧縮処理装置、映像信号伸張処理装置、映像信号伝送システム、映像信号圧縮処理方法、及び映像信号伸張処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220419BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61B6/00 360Z
A61B5/00 D
(21)【出願番号】P 2018127262
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(72)【発明者】
【氏名】南 秀和
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-287927(JP,A)
【文献】特開2014-220629(JP,A)
【文献】特開平07-303613(JP,A)
【文献】大倉保彦,山本めぐみ,関心領域に異なる圧縮比を適用できるJPEG圧縮符号化法に関する研究,医療工学雑誌,2011年,No.5, 31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00ー6/14
H04N 1/41-1/419、1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する映像信号圧縮部と、
圧縮された前記映像信号を、通信ネットワークを介して送信する送信部と、を備え、
前記第2領域は、医用画像を含まず、
前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、
ことを特徴とする映像信号圧縮処理装置。
【請求項2】
前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域を可逆圧縮形式で圧縮し、前記第2領域を前記可逆圧縮形式よりも高い圧縮率の非可逆圧縮形式で圧縮する、
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項3】
前記映像信号の各フレームは、各画素が複数色を表示する所定ビット長のバイナリデータを有した信号であり、
前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域の各画素の前記バイナリデータを前記所定ビット長よりも少ないビット長のグレースケールに変換する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項4】
前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域を前記グレースケールに変換した後に、当該第1領域を圧縮する
ことを特徴とする請求項3に記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項5】
前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて画素が示す色に基づいて、前記表示画面の前記第1領域を識別する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項6】
前記映像信号の出力元が出力する音声信号を取得する信号取得部を備え、
前記送信部は、
圧縮された前記映像信号の送信先に前記音声信号を送信する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項7】
入力デバイスが出力する入力デバイス信号を、前記通信ネットワークを介して受信する受信部と、
受信された前記入力デバイス信号を前記映像信号の出力元に出力する信号出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像信号圧縮処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の映像信号圧縮処理装置が送信した前記映像信号を伸張する映像信号伸張部と、
伸張された前記映像信号を表示装置に出力する映像信号出力部と、
を備えることを特徴とする映像信号伸張処理装置。
【請求項9】
医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する映像信号圧縮部、及び、圧縮された前記映像信号を、通信ネットワークを介して送信する送信部を備えた映像信号圧縮処理装置と、
前記映像信号圧縮処理装置が送信した前記映像信号を伸張する映像信号伸張部、及び伸張された前記映像信号を表示装置に出力する映像信号出力部を備えた映像信号伸張処理装置と、を有し、
前記第2領域は、医用画像を含まず、
前記映像信号圧縮処理装置の前記映像信号圧縮部は、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、
ことを特徴とする映像信号伝送システム。
【請求項10】
医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する第1ステップと、
圧縮された前記映像信号を出力する第2ステップと、を備え、
前記第2領域は、医用画像を含まず、
前記第1ステップでは、
前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、
ことを特徴とする映像信号圧縮処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の映像信号圧縮処理方法によって圧縮された映像信号を伸張するステップと、
伸張された前記映像信号を表示装置に出力するステップと、
を備えることを特徴とする映像信号伸張処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号の信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、ITの普及に伴い、医用撮影装置(モダリティや医用画像器機とも呼ばれる)で撮影された医用画像を、例えばLAN(Local Area Network)などの通信ネットワークを介して送信し、医用画像の保存や管理などを行う医用画像システムが普及している。この種の医用画像システムでは、通信ネットワークの通信負荷を低減するために、医用画像が圧縮状態で送信されている。また従来、医用画像の圧縮率を高めるための各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、診療放射線技師等が医用撮影装置を操作する操作室には、一般に、医用撮影装置で撮影された医用画像が読影に利用できるものかを確認する、いわゆる検像のための検像端末が設置される。検像端末は、医用画像を含む表示画面を表示装置に表示し、この画面を診療放射線技師や医師などが目視して検像を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、操作室の表示装置に表示された表示画面と同じものを、例えば読影室などの他の部屋に設置された表示装置に表示することを考えた場合、操作室の表示装置に入力されている映像信号と同じ信号を、通信ネットワークを介して読影室などの表示装置に送信する必要がある。
しかしながら、特許文献1などの従来の技術は、医用画像を送受する際の当該医用画像のデータ量を低減するものであり、表示装置に入力する映像信号を通信ネットワークを介して送信する際の当該映像信号のデータ量を低減するものではない。このため、従来の技術では、医用画像を含む表示画面の映像信号を、通信ネットワークを介して適切に送信することは困難であった。
【0006】
本発明は、医用画像を含む表示画面の映像信号を、通信ネットワークを介して適切に送信できる映像信号圧縮処理装置、映像信号伸張処理装置、映像信号伝送システム、映像信号圧縮処理方法、及び映像信号伸張処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する映像信号圧縮部と、圧縮された前記映像信号を、通信ネットワークを介して送信する送信部と、を備え、前記第2領域は、医用画像を含まず、前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、ことを特徴とする映像信号圧縮処理装置を提供する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域を可逆圧縮形式で圧縮し、前記第2領域を前記可逆圧縮形式よりも高い圧縮率の非可逆圧縮形式で圧縮する、ことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記映像信号の各フレームは、各画素が複数色を表示する所定ビット長のバイナリデータを有した信号であり、前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域の各画素の前記バイナリデータを前記所定ビット長よりも少ないビット長のグレースケールに変換することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第1領域を前記グレースケールに変換した後に、当該第1領域を圧縮することを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかにおいて、前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて画素が示す色に基づいて、前記表示画面の前記第1領域を識別する、ことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれかにおいて、前記映像信号の出力元が出力する音声信号を取得する信号取得部を備え、前記送信部は、圧縮された前記映像信号の送信先に前記音声信号を送信することを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれかにおいて、入力デバイスが出力する入力デバイス信号を、前記通信ネットワークを介して受信する受信部と、受信された前記入力デバイス信号を前記映像信号の出力元に出力する信号出力部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第1の発明から第7の発明のいずれかの映像信号圧縮処理装置が送信した前記映像信号を伸張する映像信号伸張部と、伸張された前記映像信号を表示装置に出力する映像信号出力部と、を備えることを特徴とする映像信号伸張処理装置を提供する。
【0015】
第9の発明は、医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する映像信号圧縮部、及び、圧縮された前記映像信号を、通信ネットワークを介して送信する送信部を備えた映像信号圧縮処理装置と、前記映像信号圧縮処理装置が送信した前記映像信号を伸張する映像信号伸張部、及び伸張された前記映像信号を表示装置に出力する映像信号出力部を備えた映像信号伸張処理装置と、を有し、前記第2領域は、医用画像を含まず、前記映像信号圧縮処理装置の前記映像信号圧縮部は、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、ことを特徴とする映像信号伝送システムを提供する。
【0016】
第10の発明は、医用撮影装置によって撮影された医用画像を表示する第1領域と、前記医用画像以外の情報を表示する第2領域と、を含む表示画面を表示装置に表示する映像信号を圧縮する第1ステップと、圧縮された前記映像信号を出力する第2ステップと、を備え、前記第2領域は、医用画像を含まず、前記第1ステップでは、前記映像信号の各フレームにおいて前記表示画面の前記第2領域を、前記第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する、ことを特徴とする映像信号圧縮処理方法を提供する。
【0017】
第11の発明は、第10の発明の映像信号圧縮処理方法によって圧縮された映像信号を伸張するステップと、伸張された前記映像信号を表示装置に出力するステップと、を備えることを特徴とする映像信号伸張処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、映像信号の各フレームにおいて表示画面の第2領域が、第1領域に対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮される。この結果、医用画像を表示する第1領域での圧縮による情報の欠損や視認性低下を抑えつつ映像信号のフレームの圧縮率が高められ、送信部から送信される映像信号のデータ量が低減される。これにより、通信負荷を抑えて適切に映像信号を通信ネットワークを介して送信できる。
第2の発明によれば、第2領域を可逆圧縮形式よりも高い圧縮率の非可逆圧縮形式で圧縮するので、フレームを可逆圧縮方式だけで圧縮するよりも圧縮率が高められ、また、医用画像を表示する第1領域において圧縮による情報の欠損や視認性低下を生じさせることなくデータ量を低減できる。
第3の発明によれば、前記第1領域の各画素の前記バイナリデータを前記所定ビット長よりも少ないビット長のグレースケールに変換するので、フレームのデータ量をより削減できる。
第4の発明によれば、前記第1領域を前記グレースケールに変換した後に、当該第1領域を圧縮するので、フレームの中の第1領域を、グレースケールに変換された画素を抽出することで簡単に識別することができる。これにより、当該第1領域の範囲を規定した情報を別途に記録しておく必要がない。
第5の発明によれば、各フレームにおいて画素が示す色に基づいて、前記表示画面の前記第1領域が識別されるので、簡単ながらも確実に、グレースケールの医用画像の範囲を漏らすことなく識別できる。
第6の発明によれば、前記映像信号の送信先に前記音声信号を送信するので、医用画像を含む映像とともに音声も送信先に送信できる。
第7の発明によれば、前記通信ネットワークを介して受信された入力デバイス信号を前記映像信号の出力元に出力するので、この出力元に対して通信ネットワークを介してユーザ等が入力デバイスを用いて指示や情報を与えることができる。
第8の発明によれば、圧縮された前記映像信号が伸張され、伸張された前記映像信号が表示装置に出力される。これにより、医用画像を表示する第1領域に情報の欠損や視認性の低下を生じさせることなく、映像信号に基づく表示画面を表示装置に表示させることができる。
第9の発明は、第1の発明、及び第8の発明のそれぞれと同様な効果を奏する。
第10の発明は、第1の発明と同様な効果を奏する。
第11の発明は、第8の発明と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る映像信号伝送システムの構成を示す図である。
【
図3】延長送信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】延長受信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】映像信号におけるフレームの圧縮の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る映像信号伝送システム1の構成を示す図である。
映像信号伝送システム1は、X線透視撮影装置2、及び検像装置3が設置された医療施設に設けられ、検像装置3が出力する映像信号A1、A2を、LAN等の通信ネットワークNを介して伝送するシステムである。
【0021】
X線透視撮影装置2は、人体を映した医用画像13を撮影する医用撮影装置(医用画像器機とも呼ばれる)の一例であり、検査室R1に設置され、被検体MをX線透視撮影する。本実施形態のX線透視撮影装置2には、臥位姿勢の被検体Mを載置する寝台部4と、被検体MにX線を照射するX線管6と、X線管6を寝台部4の上方で支持する支柱8と、被検体Mを透過したX線を検出しX線検出信号を出力するX線検出器10と、が設けられる。X線検出器10には、フラットパネルディテクタ(FPD)やイメージインテンシファイア(I.I.)等が用いられる。X線管6、及びX線検出器10は、リニアガイドやモータ等を有する移動駆動機構によって、寝台部4に沿って往復移動可能に設けられている。操作室R3には、このX線透視撮影装置2を放射線技師が操作するための操作卓12が配置される。また機械室R2には、X線透視撮影装置2のX線検出信号に基づいて、所定フォーマットの医用画像13を順次に生成する画像処理部11が配置される。画像処理部11は、例えばCPUやMPU、GPUなどのプロセッサを備えたコンピュータを有し、医用画像13を順次に生成し、1つの医用画像13を1フレームとして時系列順に出力することで、医用画像13の動画像を出力する。
【0022】
本実施形態において医用画像13にはDICOM規格で規定されたフォーマット形式が用いられている。画像処理部11は、各画素のバイナリデータが所定ビット長(例えば10~12ビット)のグレースケール形式であり、なおかつ非圧縮の状態で医用画像13を生成する。
【0023】
検像装置3は、機械室R2に設置され、医用画像13が読影に利用できるものかを診療放射線技師や医師等が目視によって確認可能とし、必要に応じて診療放射線技師や医師等が医用画像13に対して画像処理を実行可能にする装置である。以下、検像装置3を利用する診療放射線技師や医師等を「ユーザ」と言う。
【0024】
本実施形態の検像装置3は、医用画像取得部16と、記憶部18と、出力I/F部20と、入力I/F部22と、医用画像処理部24と、を備える。
【0025】
本実施形態の検像装置3は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、各種の画像処理や表示画面であるGUI画面(GUI:Graphical User Interface)の生成を実行する画像処理プロセッサと、周辺機器を接続するためのインターフェース回路と、を備えたコンピュータによって構成されている。
ストレージ装置には、検像用のアプリケーションプログラムが格納されており、このアプリケーションプログラムをプロセッサが実行することで、検像のための各種の機能が実現される。またアプリケーションプログラムの実行時には、アプリケーションプログラムによって提供される表示画面(GUI画面)が画像処理プロセッサによって生成される。
【0026】
医用画像取得部16は、X線透視撮影装置2で撮影された医用画像13の動画像を当該X線透視撮影装置2の画像処理部11から取得する。
記憶部18は、医用画像13を記憶するものであり、検像前の医用画像13である検像前医用画像13Aと、検像後の医用画像13である検像後医用画像13Bと、を記憶する。なお、記憶部18には、マルチフレーム形式で医用画像13を格納することで医用画像13の動画像を格納してもよい。
【0027】
出力I/F部20は、ユーザが検像前医用画像13Aを検像するための表示画面である検像画面50(
図2参照)を検像用モニタ32に表示する映像信号A1を出力する。また出力I/F部20は、ユーザが検像後医用画像13Bや被検体Mの情報といった検像前医用画像13Aに紐付く参照情報を閲覧可能にする表示画面である参照情報用画面を参照情報用モニタ34に表示する映像信号A2を出力する。さらに出力I/F部20は、各種音声の音声信号A3を出力する。この音声には、例えば、検像装置3が生成する操作音や警告音といった各種音声のほかに、X線透視撮影装置2から入力される音声なども含まれる。
【0028】
入力I/F部22は、入力デバイス30が出力している入力デバイス信号A4を受け取る。入力デバイス30は、検像装置3に指示や情報を入力するデバイスであり、これらの指示や情報が入力デバイス信号A4を出力する。この入力デバイス30としては、例えばキーボードやマウス、記録媒体読取装置(DVDドライブなど)といった器機が挙げられる。
【0029】
医用画像処理部24は、入力I/F部22を介して入力されるユーザの画像処理指示にしたがって、検像画面50に表示している検像前医用画像13Aに対して画像処理を施す。この画像処理には、画像補正や、任意角度での回転、濃度変更や階調変更などのフィルタ処理、指定領域の拡大/縮小処理などが含まれる。入力I/F部22を介してユーザから検像確定指示が入力された場合、医用画像処理部24は、画像処理後の医用画像13を検像後医用画像13Bとして記憶部18に格納する。
【0030】
また検像後医用画像13Bは、PACS等の医用画像システム25に検像装置3から出力され、当該医用画像システム25が備える画像ストレージ25Bに格納され、当該医用画像システム25が備える管理コンピュータ25Aによって管理される。検像装置3から医用画像システム25への検像後医用画像13Bの伝送経路には、上記通信ネットワークNなどの適宜の経路が使用される。
【0031】
本実施形態の医療施設では、検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34が機械室R2とは別の部屋である操作室R3、及び読影室R4に配置されている。検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34には、検像や読影に適した高精細なCRTやフラットパネルディスプレイなどのモニタが用いられている。これらの検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に、検像装置3の映像信号A1、A2が、通信ネットワークNを介して映像信号伝送システム1によって伝送される。
かかる映像信号伝送システム1は、延長送信装置40と、複数の延長受信装置42と、スイッチングハブ44と、を備える。
【0032】
延長送信装置40は、検像装置3が出力する映像信号A1、A2、及び音声信号A3を通信ネットワークNを介して送信する送信装置であり、検像装置3と同じ機械室R2に設置される。
一方、延長受信装置42は、延長送信装置40から送信された映像信号A1、A2、及び音声信号A3を受信し、検像用モニタ32、参照情報用モニタ34、及びスピーカ36に出力する受信装置であり、操作室R3及び読影室R4のそれぞれに設置されている。
これにより、操作室R3や読影室R4のそれぞれで、同一の検像画面50、及び参照情報用画面を目視し、かつ、検像装置3やX線透視撮影装置2が出力する同一の音声を聞きながら、複数のユーザが検像前医用画像13Aに対して検像を行うことができる。
【0033】
また本実施形態の延長受信装置42は、入力デバイス30の入力デバイス信号A4を受け取り、通信ネットワークNを通じて延長送信装置40に伝送する機能を備え、延長送信装置40は、受信した入力デバイス信号A4を検像装置3に出力する機能を備える。これにより、操作室R3、及び読影室R4のそれぞれで、同一の検像画面50、及び参照情報用画面に対し複数のユーザが操作を行うことができる。
【0034】
スイッチングハブ44は、1台の延長送信装置40と、複数台の延長受信装置42とを通信ネットワークNを介して接続する、いわゆる集線装置である。なお、映像信号伝送システム1において、延長受信装置42が1台である場合、スイッチングハブ44は必ずしも設けられる必要はない。
【0035】
図2は、検像画面50の一例を模式的に示す図である。
検像画面50は、検像装置3において検像用のアプリケーションプログラムの実行によって生成される表示画面である。本実施形態の検像画面50には、医用画像表示領域51と、情報表示領域52と、操作パネル表示領域53と、を含んでいる。
医用画像表示領域51は、検像前医用画像13Aを表示する領域である。本実施形態では、検像前医用画像13Aの動画像が医用画像表示領域51に表示される。
情報表示領域52、及び操作パネル表示領域53は、医用画像表示領域51とは異なり、検像前医用画像13A等の医用画像13以外を表示する領域である。
具体的には、情報表示領域52は、医用画像13に付随する各種情報を表示する領域である。この情報としては、被検体Mの属性情報や、X線透視撮影情報などが挙げられる。被検体Mの属性情報は、例えば性別や、年齢、身長、体重、病歴などを含む情報であり、X線透視撮影情報は、撮影日や、使用された医用撮影装置名、X線透視撮影時の撮影条件、X線量(放射線量)などを含む情報である。
また操作パネル表示領域53は、検像画面50を操作するための各種のボタンや入力欄を表示する領域である。この操作パネル表示領域53には、例えば検像前医用画像13Aに対する各種の画像処理を指示するための複数の操作アイコンが表示される。
【0036】
この検像画面50を表示するための映像信号A1には、デジタル方式で画面のデータを伝送可能な信号規格が用いられる。この信号規格には、例えばDVI(Digital Visual Interface)やHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)等が挙げられ、本実施形態ではDVI形式が用いられている。また参照情報用画面を表示するための映像信号A2についても映像信号A1と同様にDVI形式が用いられている。
【0037】
DVI形式においては、1つのフレームは、RGBの色ごとに8ビットが割り当てられた24ビット長のバイナリデータを画素ごとに有した画像データによって構成され、多数のフレームが所定のフレームレートで順次に伝送される。伝送速度は、1つのフレームを構成する画像の画素数と、フレームレートとに基づいて求められ、DVI形式では、数Gbps(ギガビット/秒)を越える伝送速度が実現可能になっている。本実施形態では、検像装置3は映像信号A1、A2の各々を約1.8Gbpsの伝送速度で映像信号伝送システム1に出力する。
【0038】
映像信号伝送システム1は、映像信号A1、A2を、所定の映像伝送規格にしたがって通信ネットワークNを介して伝送しており、本実施形態では、この映像伝送規格にGigE Vision(登録商標)が用いられている。この映像伝送規格は、通信規格の1つであるイーサネット(登録商標)(IEEE802.3)を通じて広範囲に映像信号A1、A2を伝送可能にする規格であり、標準のイーサネットケーブルを用いて、1Gbpsの伝送速度で映像信号A1、A2の伝送を可能にしている。
本実施形態では、この映像伝送規格を用いるために、通信ネットワークNにはイーサネットにしたがったネットワークが用いられ、また通信ネットワークNの通信ケーブルには、少なくとも映像伝送規格の伝送速度(本実施形態では1Gbps)以上で信号を伝送可能なケーブルが用いられている。
【0039】
ここで、上記の通り、検像装置3が出力する映像信号A1、A2の伝送速度は合計で約3.6Gbpsであり、映像伝送規格の伝送速度(1Gbps)の数倍に達している。したがって、これらの映像信号A1、A2がそのまま通信ネットワークNに出力されると、受信側において映像信号A1、A2の欠損や遅延を顕著に生じさせる。
そこで、映像信号伝送システム1では、送信側である延長送信装置40が映像信号A1、A2を圧縮して伝送時のデータ量を削減する映像信号圧縮処理装置として機能し、映像伝送規格に収まる伝送速度で映像信号A1、A2を通信ネットワークNを介して伝送可能にしている。
また受信側である延長受信装置42は、映像信号A1、A2の圧縮を伸張することでDVI形式の映像信号A1、A2を復元する映像信号伸張処理装置として機能し、検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に検像画面50、及び参照情報用画面が表示されるようにしている。
【0040】
以下、延長送信装置40、及び延長受信装置42のそれぞれについて詳述する。
【0041】
図3は、延長送信装置40の機能的構成を示すブロック図である。
延長送信装置40は、信号取得部61と、映像信号圧縮部62と、通信部63と、信号出力部64と、を備える。
延長送信装置40は、各種の信号の入出力を行うインターフェース回路と、CPUやMPU等のプロセッサ回路と、上記通信規格にしたがって信号を送受するレシーバ、及びトランスミッタを含む通信回路と、が実装された基板を備え、この基板の各回路によって
図3の各機能部が実現されている。
【0042】
信号取得部61は、検像装置3が出力する映像信号A1、A2、及び音声信号A3を取得し、映像信号A1、A2を映像信号圧縮部62に出力し、音声信号A3を通信部63に出力する。具体的には、信号取得部61は、映像信号A1の入力を受け付け映像信号圧縮部62に出力する第1映像信号I/F部61Aと、映像信号A2の入力を受け付け映像信号圧縮部62に出力する第2映像信号I/F部61Bと、音声信号A3の入力を受け付け通信部63に出力する音声信号I/F部61Cと、を備える。
【0043】
映像信号圧縮部62は、映像信号A1、A2を圧縮しデータ量を削減した状態で通信部63に出力する。この圧縮については後述する。
通信部63は、上記所定の通信規格にしたがって通信ネットワークNを介して信号を送受するものであり、送信部63Tと、受信部63Rと、を備える。
送信部63Tは、圧縮後の映像信号A1、A2と、音声信号A3とを、上記所定の通信規格で規定されたフォーマットの送信信号に変換し、当該送信信号を通信ネットワークNに出力する。
受信部63Rは、上記所定の通信規格で規定されたフォーマットの受信信号を通信ネットワークNから受信し、当該受信信号を復号する。受信される信号としては、入力デバイス信号A4が挙げられる。
信号出力部64は、入力デバイスI/F部64Aを備え、入力デバイスI/F部64Aが受信部63Rで受信された入力デバイス信号A4を検像装置3に出力する。
【0044】
上述の映像信号圧縮部62は、
図4に示すように、個々のフレームDaが所定のフレームレートで並ぶ映像信号A1、A2に対し、フレームDaの各々を圧縮することでデータ量を削減する。本実施形態の映像信号圧縮部62は、フレームDaを圧縮するために、前掲
図3に示すように、グレースケール処理部67と、圧縮処理部68と、を備える。この映像信号圧縮部62は、基板に実装されたプロセッサ、及び、フレームバッファメモリとして機能するRAMによって実現される。
【0045】
上述の通り、DVI形式の映像信号A1、A2のフレームDaは、24ビットフルカラー形式の画像であり、本実施形態では、各フレームDaには、
図4に示すように、検像前医用画像13A又は検像後医用画像13B、すなわち医用画像13を表示する第1領域Xaと、医用画像13以外の情報を表示する(すなわち第1領域Xa以外の領域である)第2領域Xbとの両方が含まれている。検像画面50にあっては、医用画像表示領域51が第1領域Xaに該当し、情報表示領域52、及び操作パネル表示領域53を含め検像画面50における医用画像表示領域51以外の領域全てが第2領域Xbに該当する。
【0046】
グレースケール処理部67は、フレームDaにおいて、第1領域Xaの各画素のバイナリデータを、RGBの色ごとに8ビットが割り当てられた24ビット長のフルカラーから画素の階調(輝度)だけを示す8ビット長のグレースケールに変換する。これにより、フレームDaの第1領域Xaがグレースケール化される。
【0047】
圧縮処理部68は、圧縮率が異なる2つの圧縮方式の両方でフレームDaを圧縮することで、フレームDaのデータ量を削減する。本実施形態では、これらの圧縮方式として、可逆圧縮方式(Lossless圧縮方式とも呼ばれる)、及び非可逆圧縮方式(Lossy圧縮方式とも呼ばれる)が用いられる。
可逆圧縮方式は、圧縮後のフレームDaを圧縮前の状態に復元できる圧縮方式であり、この可逆圧縮方式には、例えばJPEG-LSが用いられる。
非可逆圧縮方式は、圧縮後のフレームDaを復元しても圧縮前の状態には戻らず画質の劣化が生じる圧縮方式であり、この非可逆圧縮方式には、JPEG、JPEG2000、Wavelet圧縮処理などが用いられる。本実施形態では、非可逆圧縮方式による圧縮は、圧縮率が少なくとも可逆圧縮方式よりも高くなるように設定されている。
【0048】
圧縮処理部68は、フレームDaにおいて、第1領域Xaを可逆圧縮方式で圧縮し、第1領域Xa以外の領域である第2領域Xbを、第1領域Xaに対して行われた圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率に設定された非可逆圧縮方式で圧縮するものである。本実施形態では、圧縮処理部68は、領域識別部68Aと、圧縮部68Bと、を備える。
領域識別部68Aは、フレームDaにおいて、第1領域Xaと、第2領域Xbとを識別する。
圧縮部68Bは、フレームDaにおいて、第1領域Xaとして識別された領域を可逆圧縮方式で圧縮し、第2領域Xbとして識別された領域を非可逆圧縮方式で圧縮する。
このように、医用画像13を表示する第1領域Xaが可逆圧縮方式で圧縮されることで、圧縮による情報の欠損や視認性低下を生じさせることがない。またフレームDaが可逆圧縮方式、及び非可逆圧縮方式の両方を使って圧縮されるので、可逆圧縮方式だけで圧縮するよりも、フレームDaの圧縮率が高められる。
【0049】
図5は、延長受信装置42の機能的構成を示すブロック図である。
延長受信装置42は、通信部71と、映像・音声分離部72と、映像信号伸張部73と、信号出力部74と、信号取得部75と、を備える。
延長受信装置42は、延長送信装置40と同じ通信規格にしたがって信号を送受するレシーバ、及びトランスミッタを含む通信回路と、信号セレクタ回路と、CPUやMPU等のプロセッサ回路と、各種の信号の入出力を担うインターフェース回路と、が実装された基板を備え、この基板の各回路によって
図5の各機能部が実現されている。
【0050】
通信部71は、上記所定の通信規格にしたがって通信ネットワークNを介して信号を送受するものであり、受信部71Rと、送信部71Tと、を備える。
受信部71Rは、上記所定の通信規格で規定されたフォーマットの受信信号を通信ネットワークNから受信し、当該受信信号を復号し、映像・音声分離部72に出力する。本実施形態において受信信号は、圧縮されている映像信号A1、A2と、音声信号A3とである。
送信部71Tは、入力デバイス30の入力デバイス信号A4を、上記所定の通信規格で規定されたフォーマットの送信信号に変換し、当該送信信号を通信ネットワークNに出力する。
映像・音声分離部72は、受信部71Rから入力されている信号のうち、圧縮されている映像信号A1、A2を映像信号伸張部73に出力し、音声信号A3を信号出力部74に出力する。
【0051】
映像信号伸張部73は、延長送信装置40によって施された映像信号A1、A2の圧縮を伸張してDVI形式の映像信号A1、A2に復元し、信号出力部74に出力する。この伸張については後述する。
信号出力部74は、復元された映像信号A1、A2と、音声信号A3とのそれぞれを検像用モニタ32と、参照情報用モニタ34と、スピーカ36とに出力するものである。すなわち、信号出力部74は、映像信号A1を検像用モニタ32に出力する第1映像信号I/F部74Aと、映像信号A2を参照情報用モニタ34に出力する第2映像信号I/F部74Bと、音声信号A3をスピーカ36に出力する音声信号I/F部74Cと、を備える。
信号取得部75は、入力デバイスI/F部75Aを備え、入力デバイスI/F部75Aは、入力デバイス30から出力される入力デバイス信号A4を受け取り、通信部71の送信部71Tに出力する。
【0052】
上述の映像信号伸張部73は、映像信号圧縮部62によって施された圧縮を伸張するために、伸張処理部76と、フルカラー処理部77と、を備える。この映像信号伸張部73は、基板に実装されたプロセッサ、及び、フレームバッファメモリとして機能するRAMによって実現される。
【0053】
伸張処理部76は、映像信号圧縮部62の圧縮処理部68によって施された圧縮を伸張するものであり、領域識別部76Aと、伸張部76Bと、を備える。
領域識別部76Aは、フレームDaにおいて、可逆圧縮方式が適用されている第1領域Xaと、非可逆圧縮方式が適用されている第2領域Xbとを識別する。
伸張部76Bは、フレームDaにおいて、可逆圧縮方式が適用されている第1領域Xaを当該可逆圧縮に用いられたアルゴリズムで伸張して圧縮前の状態に欠損なく復元する。また伸張部76Bは、非可逆圧縮方式が適用されている第2領域Xbを当該非可逆圧縮方式に用いられたアルゴリズムで伸張する。
【0054】
フルカラー処理部77は、フレームDaにおいて、映像信号圧縮部62のグレースケール処理部67によってグレースケール化されている第1領域Xaの各画素のバイナリデータを、RGBの各色に8ビットが割り当てられた24ビット長のフルカラーに戻す。これにより、フレームDaの全体が24ビットフルカラー形式の画像に復元され、DIV信号が復元される。
【0055】
次いで、映像信号伝送システム1の動作について説明する。
X線透視撮影装置2でのX線透視撮影の際には、放射線技師が操作室R3の操作卓12を操作して検査室R1のX線透視撮影装置2を動かし、被検体MのX線透視撮影を行う。これにより、画像処理部11から医用画像13の動画像が順次に検像装置3に入力される。
検像装置3では、検像用のアプケーションプログラムを実行されることで、検像画面50、及び参照情報用画面の各々の映像信号A1、A2が生成される。そして、これらの映像信号A1、A2が出力I/F部20から出力され、また音声信号A3も適宜に出力I/F部20から出力され、映像信号伝送システム1の延長送信装置40に入力される。
【0056】
延長送信装置40は、映像信号A1、A2に対しては後述する映像信号圧縮処理を映像信号A1、A2に施し、圧縮した映像信号A1、A2と、音声信号A3とを通信ネットワークNを介して、操作室R3、及び読影室R4のそれぞれの延長受信装置42に伝送する。
延長受信装置42は、圧縮した映像信号A1、A2と、音声信号A3とを通信ネットワークNを介して受信すると、音声信号A3をスピーカ36に出力し、映像信号A1、A2については後述する映像信号伸張処理を施して復元し、復元後の映像信号A1、A2を検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に出力する。
また、延長受信装置42は、入力デバイス30の入力デバイス信号A4が入力されると、通信ネットワークNを介して延長送信装置40に伝送し、延長送信装置40が当該入力デバイス信号A4を検像装置3に入力する。
【0057】
これにより、操作室R3、及び読影室R4のそれぞれに居るユーザ(放射線技師や医師など)のそれぞれが、検像装置3が出力している同じ検像画面50、及び参照情報用画面を検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34で視ることができる。また、それぞれのユーザが、操作室R3、及び読影室R4のそれぞれから検像画面50、及び参照情報用画面(すなわち検像装置3)に対して入力デバイス30を用いて操作を行うことができる。
【0058】
図6は、延長送信装置40による上述の映像信号圧縮処理のフローチャートである。
延長送信装置40は、信号取得部61への映像信号A1、A2の入力により、これらの映像信号A1、A2を取得すると(ステップSa1)、映像信号A1、A2からフレームDaを抽出し(ステップSa2)、それぞれのフレームDaに対して映像信号圧縮部62が次々に圧縮を施す。
【0059】
詳述すると、先ず、グレースケール処理部67がフレームDaにおいて、医用画像13を表示している第1領域Xaをグレースケール化する(ステップSa3)。具体的には、グレースケール処理部67は、フレームDaの各画素を走査し、RGBの色ごとに8ビットが割り当てられた24ビット長のバイナリデータが示す色がグレーとなっている画素、すなわち、バイナリデータにおいて、R値、G値、及びB値の全てが等しい画素を検出する。そしてグレースケール処理部67は、色がグレーである画素を検出するごとに、その画素のバイナリデータを24ビット長のフルカラーから8ビット長のグレースケールに変換する。
【0060】
このグレースケール化により、
図7に示すように、フレームDaにおいて、元々がグレースケール形式の画像である医用画像13を表示している第1領域Xaの全域がグレースケール化される。
換言すれば、フレームDaにおいて、第1領域Xaは、元々がグレースケール形式の医用画像13がDVI形式により24ビットフルカラー形式で表示されている領域であるため、この第1領域Xaをグレースケール化してもフレームDa(すなわち、検像画面50、及び参照情報用画面)の画質には実質的な影響を生じさせることがない。これに加え、このグレースケール化により、第1領域Xaについては、各画素のバイナリデータのビット長が24ビットから8ビットに減るので、第1領域Xaのデータ量が3分の1まで削減される。特に、検像画面50にあっては、第1領域Xaに相当する医用画像表示領域51(
図2)が比較的大きな面積を占めているので、このグレースケール化によりデータ量が効果的に削減される。
【0061】
前掲
図6に戻り、グレースケール化されたフレームDaを可逆圧縮方式、及び非可逆圧縮方式の両方で圧縮するために、先ず、圧縮処理部68の領域識別部68AがフレームDaにおいて第1領域Xaと、第1領域Xa以外の第2領域Xbとを識別する(ステップSa4)。第1領域Xaは、ステップSa3でグレースケール化されている領域(以下、「グレースケール化領域」と言う)に相当し、ステップSa4では、このグレースケール化領域が次のようにして識別される。すなわち、領域識別部68Aは、フレームDaにおいて、バイナリデータのビット長が8ビットになっている画素を全て抽出し、これらの画素に基づいて、フレームDaにおけるグレースケール化領域を識別する。
【0062】
そして、圧縮処理部68の圧縮部68Bは、フレームDaのうち、グレースケール化領域(すなわち第1領域Xa)を可逆圧縮方式で圧縮し、グレースケール化領域以外の領域(すなわち第2領域Xb)を、可逆圧縮方式よりも高い圧縮率に設定された非可逆圧縮方式で圧縮する(ステップSa5)。
【0063】
この圧縮により、
図7に示すように、フレームDaにおいて、医用画像13を表示している第1領域Xaについては可逆圧縮方式で圧縮され、第1領域Xa以外の残りの領域である第2領域Xbについては非可逆圧縮方式で圧縮される。
これにより、医用画像13を表示している第1領域Xaについては、圧縮による情報の欠損、及び、視認性の低下を生じさせることがない。さらに、第2領域Xbについては、可逆圧縮方式よりも高い圧縮率に設定された非可逆圧縮方式で圧縮するので、フレームDaの全体の圧縮率が高められる。これに加え、上述の通り、第1領域Xaについては、グレースケール化によってデータ量が既に3分の1まで削減されているので、圧縮率が比較的低い可逆圧縮方式を用いても、フレームDaの最終的なデータ量を十分に小さくできる。
【0064】
このようにフレームDaのデータ量が削減されることで、圧縮後の映像信号A1、A2の伝送速度が、通信ネットワークNの伝送に用いる映像伝送規格が許容する伝送速度以下に抑えられ、伝送時の遅延等を招くことなく受信側に伝送されることとなる。これにより、操作室R3、及び読影室R4のそれぞれで、同じタイミングで出力された映像信号A1、A2の検像画面50、及び参照情報用画面を、略同時に視ることができ、操作室R3と読影室R4の間の表示タイミングのズレも抑えることができる。
【0065】
延長送信装置40は、ステップSa1~Sa5の処理を、映像信号A1、A2が入力されている限り繰り返し実行する。そして例えば検像装置3において検像用のアプリケーションの実行が終了し、映像信号A1、A2の入力が途絶えたときに、この映像信号圧縮処理を終了する。
【0066】
図8は、延長受信装置42による上述の映像信号伸張処理のフローチャートである。
延長受信装置42は、送信側の延長送信装置40で圧縮された映像信号A1、A2を通信部71の受信によって取得すると(ステップSb1)、映像信号A1、A2からフレームDaを抽出し(ステップSb2)、それぞれのフレームDaに対して次々に伸張を施す。
【0067】
具体的には、先ず、伸張処理部76の領域識別部76AがフレームDaにおいて第1領域Xaと、第1領域Xa以外の領域である第2領域Xbとを識別する(ステップSb3)。上述の通り、第1領域Xaはグレースケール化領域に相当し、このステップSb3では、グレースケール化領域が識別される。具体的には、このステップSb3では、前掲
図6のステップSa4と同様に、領域識別部76Aが、フレームDaにおいてバイナリデータのビット長が8ビットの画素を全て抽出し、これらの画素に基づいてグレースケール化領域を識別する。
次いで伸張処理部76の伸張部76Bが、フレームDaのうち、グレースケール化領域(すなわち第1領域Xa)を可逆圧縮方式で使用されたアルゴリズムにしたがって伸張し、グレースケール化領域以外の領域(すなわち第2領域Xb)を非可逆圧縮方式で使用されたアルゴリズムにしたがって伸張する(ステップSb4)。
【0068】
これにより、フレームDaに対して施された可逆圧縮、及び非可逆圧縮が伸張される。このとき、可逆圧縮方式で圧縮されていたグレースケール化領域、すなわち第1領域Xaについては、圧縮前の状態まで欠損なく復元されるので、第1領域Xaにおいて、情報の欠落や視認性の低下が生じることがない。
【0069】
次に、映像信号伸張部73のフルカラー処理部77が、フレームDaにおけるグレースケール化領域を24ビットフルカラー化する(ステップSb5)。具体的には、フルカラー処理部77は、フレームDaの各画素を走査し、バイナリデータのビット長が8ビットの画素を検出するごとに、当該画素のバイナリデータを8ビットのグレースケールから、RGBの各色に8ビットずつ割り当てた24ビット長のフルカラーに変換する。
これにより、フレームDaの全体が24ビットフルカラー形式の画像に復元され、この結果、受信時に圧縮されていた映像信号A1、A2がDVI形式の映像信号A1、A2として復元される。
延長受信装置42は、ステップSb1~Sb5の処理を、映像信号A1、A2が受信されている限り繰り返し、復元された映像信号A1、A2を検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に順次に出力する。そして、復元された映像信号A1、A2が検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に出力されることで、検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34のそれぞれに検像画面50、及び参照情報用画面が表示される。
【0070】
検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に表示された検像画面50、及び参照情報用画面においては、医用画像13が表示される箇所(例えば医用画像表示領域51)について、情報の欠落や視認性の低下を生じさせることなく、検像装置3から出力された状態のまま表示される。したがって、この検像画面50、及び参照情報用画面に基づいて、診療放射線技師や医師などが正確に検像を行うことができる。
【0071】
上述した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0072】
上述した映像信号伝送システム1において、延長送信装置40は、映像信号A1、A2を圧縮する映像信号圧縮部62を備え、この映像信号圧縮部62は、映像信号A1、A2の各フレームDaにおいて、医用画像13以外の情報を表示する第2領域Xbを第1領域Xaに対して行う圧縮の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮する。
この結果、医用画像13を表示する第1領域Xaでの圧縮による情報の欠損や視認性低下を抑えつつ映像信号A1、A2の各フレームDaの圧縮率が高められ、映像信号A1、A2のデータ量が低減される。これにより、通信負荷を抑えて適切に映像信号A1、A2を通信ネットワークNを介して送信できる。
【0073】
上述した映像信号伝送システム1において、映像信号圧縮部62は、映像信号A1、A2の各フレームDaにおいて、医用画像13を表示する第1領域Xaを可逆圧縮形式で圧縮し、第1領域Xa以外の第2領域Xbを可逆圧縮形式よりも高い圧縮率の非可逆圧縮形式で圧縮する。
これにより、可逆圧縮方式だけで圧縮するよりもフレームDaの圧縮率が高められ、なおかつ、第1領域Xaにおいて圧縮による情報の欠損や視認性低下を生じさせることがない。
【0074】
上述した映像信号伝送システム1において、映像信号A1、A2の各フレームDaは、各画素がRGBの複数色を表示する24ビット長のバイナリデータを有した信号である。そして、延長送信装置40の映像信号圧縮部62は、各フレームDaにおいて第1領域Xaの各画素のバイナリデータを24ビット長よりも少ない8ビット長のグレースケールに変換する。
第1領域Xaは、元々がグレースケール形式の医用画像13が表示されている領域であるため、この第1領域Xaをグレースケール化してもフレームDaにおいて、画質に実質的な影響を生じさせることがない。これに加え、第1領域Xaの各画素のバイナリデータのビット長が24ビットから8ビットに減るので、第1領域Xaのデータ量が3分の1まで削減され、フレームDaのデータ量を、さらに削減することができる。
【0075】
上述した映像信号伝送システム1において、延長送信装置40の映像信号圧縮部62は、映像信号A1、A2の各フレームDaにおいて第1領域Xaをグレースケールに変換した後に、可逆圧縮形式で圧縮する。
これにより、映像信号圧縮部62は、フレームDaの中で可逆圧縮形式で圧縮する領域(すなわち第1領域Xa)を、グレースケールに変換された画素を抽出することで識別することができ、当該第1領域Xaの範囲を規定する情報を別途に記録しておくなどの必要がない。
【0076】
上述した映像信号伝送システム1において、延長送信装置40の映像信号圧縮部62は、映像信号A1、A2の各フレームDaにおいて画素のバイナリデータが示す色に基づいて第1領域Xaを識別する。
これにより、元々がグレースケール形式の医用画像13が表示されている第1領域Xaが、簡単ながらも確実に、医用画像13の範囲を漏らすことなく識別される。
【0077】
上述した映像信号伝送システム1において、延長送信装置40は、映像信号A1、A2の出力元である検像装置3が出力する音声信号A3を取得し、この音声信号A3を、圧縮された映像信号A1、A2の送信先に送信する。
これにより、映像信号A1、A2の送信先である延長受信装置42に、検像装置3が出力する音声信号A3も伝送できる。
【0078】
上述した映像信号伝送システム1において、延長送信装置40は、入力デバイス30が出力する入力デバイス信号A4を通信ネットワークNを介して受信し、この入力デバイス信号A4を映像信号A1、A2の出力元である検像装置3に出力する。
これにより、ユーザは、操作室R3や読影室R4などから通信ネットワークNを介して検像装置3に対して入力デバイス30を用いて指示や情報を与えることができる。
【0079】
上述した映像信号伝送システム1において、受信側の延長受信装置42は、送信側の延長送信装置40が送信した映像信号A1、A2を伸張する映像信号伸張部73と、伸張された映像信号A1、A2をそれぞれ検像用モニタ32、参照情報用モニタ34に出力する第1映像信号I/F部74A、及び第2映像信号I/F部74Bと、を備える。
これにより、延長送信装置40から送信された圧縮状態の映像信号A1、A2を、受信側で復元し、検像画面50、及び参照情報画面を、医用画像13が表示されている領域に情報の欠損や視認性の低下を生じさせることなく、検像用モニタ32、及び参照情報用モニタ34に表示させることができる。
【0080】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0081】
上述した実施形態では、医用画像13を撮影する医用撮影装置としてX線透視撮影装置2を例示したが、これに限らない。すなわち、医用撮影装置は、医用画像13を撮影する装置であれば、X線一般撮影装置や、RI(Radio Isotope)装置、CR(Computed Radiography)装置、超音波を利用した超音波撮影装置、磁気を利用したMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置といった任意の装置であってもよい。
【0082】
上述した実施形態において、検像画面50の医用画像表示領域51には、検像前医用画像13Aの動画像が表示される場合を例示したが、これに限らず、静止画像であってもよい。
【0083】
上述した実施形態において、それぞれの延長受信装置42がマイクの音声入力を受け付け、マイクの音声信号を、通信ネットワークNを介して他の延長受信装置42に送信し、当該他の延長受信装置42がスピーカ36からマイクの音声を出力することもできる。
これにより、操作室R3や読影室R4などの異なる部屋にユーザ同士で、互いに音声を交わすことができる。
なお、延長受信装置42が送信したマイクの音声信号を、延長送信装置40が受信し、入力デバイス信号A4と同様に検像装置3に出力してもよい。
【0084】
上述した実施形態では、検像装置3から出力される映像信号A1、A2を映像信号伝送システム1が伝送する場合を例示したが、これに限らない。
例えば、映像信号伝送システム1は、医用画像システム25(
図1)において、医用画像13を表示する各種の表示画面の映像信号の伝送にも用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 映像信号伝送システム
2 X線透視撮影装置(医用撮影装置)
13 医用画像
13A 検像前医用画像
13B 検像後医用画像
25 医用画像システム
30 入力デバイス
32 検像用モニタ(表示装置)
34 参照情報用モニタ(表示装置)
36 スピーカ
40 延長送信装置(映像信号圧縮処理装置)
42 延長受信装置(映像信号伸張処理装置)
50 検像画面(表示画面)
61、75 信号取得部
61A、74A 第1映像信号I/F部
61B、74B 第2映像信号I/F部
61C、74C 音声信号I/F部
62 映像信号圧縮部
63R、71R 受信部
63T、71T 送信部
64、74 信号出力部
64A、75A 入力デバイスI/F部
67 グレースケール処理部
68 圧縮処理部
68A、76A 領域識別部
68B 圧縮部
73 映像信号伸張部
76 伸張処理部
76B 伸張部
77 フルカラー処理部
A1、A2 映像信号
A3 音声信号
A4 入力デバイス信号
Da フレーム
N 通信ネットワーク
Xa 第1領域
Xb 第2領域