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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/44 20060101AFI20220419BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220419BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C08G18/44
C08G18/00 H
C08G101:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018175776
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020045441
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山元 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001847(JP,A)
【文献】特開2012-117039(JP,A)
【文献】特開2013-199514(JP,A)
【文献】特開2016-044238(JP,A)
【文献】特開2019-151727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールは、ポリエステル構造を有するポリカーボネートジオールと、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを用いて重合反応を行って得られたポリカーボネートジオールと、を含み、
密度が0.1~0.4g/cm3であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記ポリエステル構造を有する前記ポリカーボネートポリオールと、前記1,5-ペンタンジオール及び前記1,6-ヘキサンジオールを用いて重合反応を行って得られた前記ポリカーボネートポリオールとの配合比は、1:99~99:1である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS K7221-2に準拠した5%歪み時の曲げ強度が50N/cm2以上であり、曲げ強さが400N/cm2以上である、請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K7220に準拠した10%歪み時の圧縮強度が30N/cm2以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
JIS K6767に準拠した圧縮永久ひずみが10%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記配合物は、さらに水を含み、前記水を、前記ポリオール100質量部に対し1~5質量部を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記配合物は、さらに、充填剤、繊維、接着性付与剤、界面活性剤、及び老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのパンク時等に車両を走行させるための技術として、タイヤとリムの間の空洞領域にタイヤとは別体の中子(支持体)を配置しておき、パンク時に中子によってタイヤのトレッド部分を支持するランフラットタイヤシステムが知られている。支持体として、例えば、ポリウレタンフォームを材質とするものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-291725公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ランフラットタイヤシステムでは、支持体には、車両の荷重を支えるために、十分な機械的強度を有していることが求められる。一方で、支持体には、軽量であることも求められている。
【0005】
本発明は、軽量でありながら、機械的強度に優れたポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ポリオール及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールは、ポリエステル構造を有するポリカーボネートジオールと、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを用いて重合反応を行って得られたポリカーボネートジオールと、を含み、
密度が0.1~0.4g/cm3であることを特徴とする。
【0007】
前記ポリエステル構造を有する前記ポリカーボネートポリオールと、前記1,5-ペンタンジオール及び前記1,6-ヘキサンジオールを用いて重合反応を行って得られた前記ポリカーボネートポリオールとの配合比は、1:99~99:1であることが好ましい。
【0008】
JIS K7221-2に準拠した5%歪み時の曲げ強度が50N/cm2以上であり、曲げ強さが400N/cm2以上であることが好ましい。
【0009】
JIS K7220に準拠した10%歪み時の圧縮強度が30N/cm2以上であることが好ましい。
【0010】
JIS K6767に準拠した圧縮永久ひずみが10%以下であることが好ましい。
【0011】
前記配合物は、さらに水を含み、前記水を、前記ポリオール100質量部に対し1~5質量部を含むことが好ましい。
【0012】
前記配合物は、さらに、充填剤、繊維、接着性付与剤、界面活性剤、及び老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、軽量でありながら、機械的強度に優れたポリウレタンフォームが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態のポリウレタンフォームについて説明する。
【0015】
(ポリウレタンフォーム)
ポリオール及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡させて得られるポリウレタンフォームである。
【0016】
ポリオールは、一分子中に2個以上の水酸基を有する成分である。本実施形態において、ポリオールは、異なる2種類のポリカーボネートジオール、すなわち、(1)ポリエステル構造を有するポリカーボネートジオール(以降、ポリカーボネートジオール1ともいう)と、(2)1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを用いて重合反応を行って得られたポリカーボネートジオール(以降、ポリカーボネートジオール2ともいう)と、を含む。このようなポリオールを含んだ配合物を発泡させることにより、低密度で、優れた曲げ強度、曲げ強さ、圧縮強度、圧縮永久ひずみを備えたポリウレタンフォームが得られる。なお、本明細書において、曲げ強度は、JIS K7221-2に準拠して測定した5%歪み時の曲げ強さを意味し、曲げ強さは、5%を超えてさらに歪ませ、破断したときの曲げ強さ(最大曲げ強さ)を意味する。また、本明細書において、圧縮強度は、JIS K7220に準拠して測定した10%歪み時の圧縮強度(10%変形圧縮応力)を意味する。圧縮永久ひずみは、JIS K6767に準拠して測定される圧縮永久ひずみを意味する。
【0017】
上記2種類のポリカーボネートジオールのうち、ポリカーボネートジオール2が含まれていないと、ポリウレタンフォームの曲げ強度、曲げ強さ、圧縮強度、及び圧縮永久ひずみの少なくともいずれかが不十分となる。すなわち、ポリウレタンフォームの機械的強度(以降、単に強度ともいう)が不足する。また、上記2種類のポリカーボネートジオールのうち、ポリカーボネートジオール1が含まれていないと、ポリウレタンフォームは、所定の曲げ強度を満たすものの、曲げ強さは小さく、脆くなる。また、ポリウレタンフォームの圧縮強度が不十分となる。
【0018】
ポリカーボネートジオール1は、ポリエステル構造を有するポリカーボネートジオールである。ポリエステル構造は、一般的に、ジオールとジカルボン酸の脱水縮合反応により得られる構造をいう。ポリカーボネートジオール1は、下記一般式(1)で表される構造、及び末端ヒドロキシル基を有する。
-[-R-O(CO)O-]l- (1)
ポリカーボネートジオール1に含まれる一般式(1)の構造の間で、Rは各々独立しており、そのうちの一部はポリエステル構造を含む。lは1~20の整数である。
【0019】
ポリカーボネートジオール1の数平均分子量は、300~3000であることが好ましい。
【0020】
ポリカーボネートジオール1には、例えば、東ソー社製のニッポラン981、980R、982Rを、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。ニッポラン981は、一般式(1)において、数平均分子量1000である。ニッポラン980Rおよび982Rは、数平均分子量2000である。
【0021】
ポリカーボネートジオール2は、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールとカーボネート化合物とを原料として、重合反応を行うことで得られたポリカーボネートジオールである。すなわち、ポリカーボネートジオール2は、下記一般式(2)で表される構造、及び末端ヒドロキシル基を有する。
-[-R1-O(CO)O-]m-[-R2-O(CO)O-]n- (2)
一般式(2)において、R1及びR2は、互いに異なり、(CH及び(CHのいずれか一方である。mおよびnはそれぞれ2~12の整数である。
【0022】
ポリカーボネートジオール2の数平均分子量は、300~3000であることが好ましい。
【0023】
ポリカーボネートジオール2には、例えば、旭化成社のデュラノールT5650E、T5650J、T5651、T5652を、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。デュラノールT5650Eは、一般式(2)において、mおよびnがそれぞれ約2、数平均分子量500である。デュラノールT5650Jは、一般式(2)において、mおよびnがそれぞれ約3、数平均分子量800である。デュラノールT5651は、一般式(2)において、mおよびnがそれぞれ約4、数平均分子量1000である。デュラノールT5652は、一般式(2)において、mおよびnがそれぞれ約8、数平均分子量2000である。
【0024】
ポリカーボネートジオール1とポリカーボネートジオール2の配合比は、好ましくは99:1~1:99であり、より好ましくは90:10~10:90である。
また、ポリウレタンフォームの機械的強度を高める観点から、ポリカーボネートジオール2の配合量は、ポリカーボネートジオール1の配合量よりも多いことが好ましい。この場合、ポリカーボネートジオール1とポリカーボネートジオール2との配合比は、好ましくは1:1.5~1:5であり、より好ましくは1:2~1:4である。
【0025】
ポリオールは、上記ポリカーボネートジオール1,2のほか、さらに、他のポリオールを含んでいてもよい。他のポリオールには、例えば、ポリカーボネートジオール1,2以外のポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオールを、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
ポリカーボネートジオール1,2以外のポリカーボネートポリオールは、ポリオールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、ポリオールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、または、ポリオールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成される。これらの反応で使用されるポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4-シクロヘキサンジグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、4,4′-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′-ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド等が例示される。
【0028】
ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体等が例示される。
【0029】
その他のポリオールとしては、例えばポリマーポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの低分子ポリオール等が例示される。
【0030】
上記説明した、ポリカーボネートジオール1,2以外にポリオールに含まれていてもよい他のポリオールの配合量は、ポリカーボネートジオール1,2の合計量100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましい。
【0031】
ポリイソシアネートは、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されず、従来公知のものが用いられる。
従来公知のポリイソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートは、好ましくは、繰り返し単位中にイソシアネート基を含む重合体、具体的には、イソシアネート基を有する1個以上の繰り返し単位、及び、イソシアネート基を有する末端を有していること、すなわち、ポリメリックポリイソシアネートであることが好ましい。上記した従来公知のポリイソシアネートの中でも、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0032】
上記配合物において、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比は、好ましくは0.8~1.2である。当量比が0.8未満であると、ポリウレタンフォームの機械的強度が不十分となる場合がある。当量比が1.2を超えると、ポリウレタンフォームが脆くなる場合がある。
【0033】
上記配合物は、さらに水を含み、水を、ポリオール100質量部に対し1~5質量部含むことが好ましい。水を上記範囲で含むことで、水とポリイソシアネートとの発泡反応が適切な程度に促進され、ポリウレタンフォームの密度を0.1~0.4g/cm3に調整しやすくなる。水の配合量は、ポリオール100質量部に対し、好ましくは2~4質量部である。
【0034】
上記配合物は、ポリオール、ポリイソシアネート、及び水のほか、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、充填剤、繊維、接着性付与剤、界面活性剤、及び老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。また、上記配合物は、さらに、触媒、整泡剤等を含んでいてもよい。
【0035】
上記配合物は、例えば、ポリイソシアネートからなる主剤と、ポリイソシアネートを除く全ての成分を含む硬化剤として調製される。
【0036】
本実施形態のポリウレタンフォームの密度は0.1~0.4g/cm3である。この範囲の密度は、上記説明した配合物を発泡させてポリウレタンフォームを作製することにより得られる。上記範囲の密度は、従来のポリウレタンフォームと比べ低く、本実施形態のポリウレタンフォームは軽量である。
一方で、本実施形態のポリウレタンフォームは、上記配合物を用いて作製したことで、好ましくは、曲げ強度が50N/cm2以上であり、曲げ強さが400N/cm2以上である。また、本実施形態のポリウレタンフォームは、上記配合物を用いて作製したことで、好ましくは、圧縮強度が30N/cm2以上である。さらに、本実施形態のポリウレタンフォームは、上記配合物を用いて作製したことで、好ましくは、圧縮永久ひずみが10%以下である。すなわち、本実施形態のポリウレタンフォームは優れた機械的強度を有している。
このように、本実施形態のポリウレタンフォームは、軽量でありながら、機械的強度に優れており、種々の用途に用いることができる。例えば、ランフラットタイヤシステムの支持体に用いた場合に、ランフラット耐久性に優れた軽量な支持体を得ることができる。ランフラット耐久性とは、ランフラット走行可能な距離の長さによって評価される特性である。
【0037】
ポリウレタンフォームの密度は、好ましくは0.15~0.3g/cm3である。
ポリウレタンフォームの曲げ強度は、より好ましくは60N/cm2以上である。一方、曲げ強度の上限値は、例えば、90N/cm2である。
ポリウレタンフォームの曲げ強さは、より好ましくは500N/cm2以上である。一方、曲げ強さの上限値は、例えば、700N/cm2である。
ポリウレタンフォームの圧縮強度は、より好ましくは35N/cm2以上である。一方、圧縮強度の上限値は、例えば、60N/cm2である。
ポリウレタンフォームの圧縮永久ひずみは、より好ましくは8%以下である。一方、圧縮永久ひずみの下限値は、例えば、5%である。
【0038】
圧縮永久ひずみが10%以下であるポリウレタンフォームは、上記支持体として用いた場合に、ランフラット走行時に高速で繰り返し荷重を受けたときの変形量が小さく、ランフラット耐久性に優れる。
【0039】
本実施形態のポリウレタンフォームは、上述したように、ランフラットタイヤシステムの支持体として好適に用いることができる。支持体は、具体的に、タイヤとリムとの間の空洞領域に配置される環状又はタイヤ周方向に分割された複数の部材である。支持体は、例えば、タイヤのトレッド部のタイヤ径方向内側の面(空洞領域に接するタイヤのインナーライナの表面)に固定される。あるいは、支持体は、例えば、空洞領域に接するリムの径方向外側の表面に固定される。支持体は、タイヤあるいはリムに対し、接着剤、粘着剤、緩衝材、発泡成形体、その他機械的に固定する手段、等を用いて固定することができる。
【0040】
また、本実施形態のポリウレタンフォームは、上述したように、軽量でありながら優れた機械的強度を有しており、ランフラットタイヤシステムの支持体のほか、例えば、船舶、車両、プラント、断熱機器、建築物および構造物、家電製品、家具等の種々の分野で用いることができ、これらの分野で、補強材、断熱材、芯材、浮力材、保温部材、カバー、蓋、振動防止剤、梱包材、型材等として用いることができる。
【0041】
ポリウレタンフォームの形態は、特に制限されず、環状、ブロック状、板状、シート状等、種々の形態をとりうる。
【0042】
ポリウレタンフォームは、例えば、ゴム、プラスチック、金属等で構成された構造体とともに使用することができる。具体的には、ポリウレタンフォームは、中空状、筒状、箱状等の構造体の内部空間に配置され、あるいは、板状等の複数の構造体の間に挟持され、あるいは、構造体の表面に固定されて使用される。構造体の材質及び形状は、用途に応じて、軽量化及び機械的強度を両立させる観点から、選択される。
【0043】
(ポリウレタンフォームの製造方法)
本実施形態のポリウレタンフォームは、ポリオールおよびポリイソシアネートを含む配合物を用いて作製される。ここで説明する配合物は、上記説明した配合物と同様に構成される。
具体的には、配合物を構成する主剤、硬化剤、及び水を混ぜることで、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させ重合させるとともに、ポリイソシアネートと水とを反応させて炭酸ガスを重合体中で発生させ(発泡させ)、ポリウレタンフォームを作製する。
ポリウレタンフォームは、型を用いて予め所定の形状に成型した後、上記構造体の内部空間内に配置することができる。あるいは、ポリウレタンフォームは、上記構造体を型として、構造体の内部空間内で配合物を発泡させてことができる。
【0044】
(実験例)
本発明の効果を調べるために、ポリウレタンフォームを作製し、密度、曲げ強度、曲げ強さ、圧縮強度、及び圧縮永久ひずみを測定した。
【0045】
ポリウレタンフォームの作製に用いた配合物は、表1に示した配合量に従って原料を配合し、調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した原料には、下記に示すものを使用した。表中、原料の量は、質量部で示される。
・ポリカーボネートジオール1:ニッポラン982R、東ソー社製
・ポリカーボネートジオール2:デュラノールT5650J、旭化成社製
・ポリカーボネートジオール3:デュラノールT5651、旭化成社製
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール:PTMG1000、三菱ケミカル社製
・アミン化合物:1,4-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、東京化成工業社製
・整泡剤:FZ3703(シリコーンオイル)、東レダウコーニング社製
・ポリメリックイソシアネート化合物1:スミジュール44V20(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、住化バイエルウレタン社製、NCO基含有率31%
・ポリメリックイソシアネート化合物2:スミジュール44V10(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、住化バイエルウレタン社製、NCO基含有率31%
比較例5では、表中に示さないが、さらに、触媒としてオクチル酸スズ(ネオスタンU-28、日東化成社製)0.5質量部を添加した。
【0048】
調整した配合物を、室温(25℃)で1分間撹拌し、直ちに所定の形状の型内に注入し、発泡させた。発泡が始まってから約30秒で発泡は観察されなくなった。このあと、反応物を24時間静置し、発泡及び重合反応を完結させ、実施例1~4、及び比較例1~5の試験体を得た。作製した試験体の特性を、下記要領で測定した。結果を表1に示す。
【0049】
(密度)
JIS K7222に準拠して測定した。この結果、0.1~0.4g/cm3だった場合を軽量化できたと評価した。
【0050】
(曲げ強度、曲げ強さ)
JIS K7221-2に準拠し、温度23℃、湿度50%、加圧くさびの移動速度20mm/分の条件で曲げ試験を行い、試験体の歪みが5%のときの曲げ強さを測定した。続けて、試験体を5%を超えて歪ませ、試験体が破断したときの曲げ強さを測定した。
(圧縮強度)
JIS K7220に準拠し、温度23℃、湿度50%、可動板の移動速度20mm/分の条件で圧縮試験を行い、試験体の歪みが10%のときの圧縮強度を測定した。
【0051】
(圧縮永久ひずみ)
JIS K6767に準拠して圧縮永久ひずみを測定した。測定は、23℃、22時間の条件で行った。
以上の結果、曲げ強度が50N/cm2以上、曲げ強さが400N/cm2以上、圧縮強度が30N/cm2以上、圧縮永久ひずみが10%以下であった場合を、機械的強度が優れていると評価した。
【0052】
実施例1~4と比較例1~5の比較から、ポリオールとしてポリカーボネートジオール1,2の両方を含む配合物を用いて作製したポリウレタンフォームは、軽量でありながら、機械的強度に優れていることがわかる。
【0053】
以上、本発明のポリウレタンフォームについて説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。