(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20220419BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2019039650
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064618(JP,A)
【文献】特開2003-173896(JP,A)
【文献】特開2013-179048(JP,A)
【文献】米国特許第09170295(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部から出力される出力電圧が印加される電圧印加電極を備え、前記電圧印加電極と前記電圧印加電極に対向する対向電極との間で発生するプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理装置であって、
前記電圧印加電極と前記被処理物とを相対的に移動させるアクチュエータと、
前記対向電極と前記アクチュエータとの間に配置される絶縁部と、
前記対向電極を介して流れる電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記対向電極は前記被処理物である、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは接地される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電源部は、前記電圧印加電極に前記出力電圧を印加させる第1出力端と、前記第1出力端とは他方の第2出力端と、を有し、
前記電流検出部は、前記対向電極と、前記第2出力端とを導通させる第1ラインに配置され、
前記第1ラインは、前記アクチュエータを接地させる第2ラインとは非接続である、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記被処理物が載置されるステージをさらに備え、
前記絶縁部は、前記ステージと前記アクチュエータとの間に配置され、
前記電流検出部と前記ステージとは第3ラインによって接続される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
大気圧でのプラズマ放電により前記被処理物を処理する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記電圧印加電極と前記対向電極の少なくとも一方の対向側電極面に誘電体部が配置される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電流検出部の検出結果に基づきプラズマ放電が正常状態であるかを判定する判定部をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記電流検出部による検出電流値に関する経時変化を検出する、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉容器の内部を減圧してプラズマを発生し、当該密閉容器内に配置されたワークをプラズマ処理する技術が多く利用された。このようなプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一例は、特許文献1に開示される。
【0003】
上記特許文献1のプラズマ処理装置は、処理対象物を処理室内に収容してプラズマ処理を行う装置であって、放電検出センサを有する。放電検出センサは、板状の誘電体部材と、プローブ電極と、を有する。
【0004】
誘電体部材の一方の面は、処理室内で発生するプラズマに対向して真空チャンバに装着される。プローブ電極は、誘電体部材の他方の面に配置される。プローブ電極は、検出導線を介して信号記録部に接続される。
【0005】
プローブ電極には、プラズマの状態に応じた電位が誘起される。プローブ電極の電位は、検出導線によって信号記録部に導かれ、プラズマの状態に応じた電位変化の信号は、信号記録部によって記録される。これにより、処理室の内部において異常放電などが発生すると、プラズマの状態が変動し、この変動はプローブ電極の電位変化として検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラズマ処理装置には処理対象物を搬送するアクチュエータなどが搭載されており、アクチュエータではプラズマ生成用の電源から受けた電磁波によりノイズが発生する虞があり、上記特許文献1では、上記ノイズの放電検出センサへの影響は考慮されていない。
【0008】
特に近年では、大気圧下で安定的にプラズマ放電させる技術が確立されてきており、開放空間でのプラズマ処理が実用化されている。このような大気圧プラズマ処理においては、より高い電圧を電極に印加させる必要があるため、上記ノイズによる影響がより大きくなる。
【0009】
上記状況に鑑み、本発明は、簡易な構成によりプラズマ放電状態を精度良く検出できるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例示的なプラズマ処理装置は、電源部から出力される出力電圧が印加される電圧印加電極を備え、前記電圧印加電極と前記電圧印加電極に対向する対向電極との間で発生するプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理装置であって、前記電圧印加電極と前記被処理物とを相対的に移動させるアクチュエータと、前記対向電極と前記アクチュエータとの間に配置される絶縁部と、前記対向電極を介して流れる電流を検出する電流検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の例示的なプラズマ処理装置によれば、簡易な構成によりプラズマ放電状態を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置における電圧印加電極に印加される出力電圧と、電流検出部により検出される検出電流信号の波形例を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例に係るプラズマ処理装置における出力電圧と検出電流信号の波形例を示す図である。
【
図4】
図4は、被処理物の処理工程の一例を示す上面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置10の全体構成を概略的に示す図である。
【0015】
図1に示すプラズマ処理装置10は、大気圧下でプラズマを発生させ、金属製の被処理物1に対してプラズマ処理を行う装置である。プラズマ処理装置10は、電圧印加電極2と、誘電体部3と、電源部4と、ステージ5と、絶縁部6と、アクチュエータ7と、を有する。
【0016】
電源部4は、第1出力端41と、第2出力端42と、を有する。電源部4は、第1出力端41から電圧印加電極2に高周波であって高電圧の出力電圧を印加する。上記出力電圧は、交流電圧である。すなわち、プラズマ処理装置10は、電源部4から出力される出力電圧が印加される電圧印加電極2を備える。また、電源部4は、電圧印加電極2に出力電圧を印加させる第1出力端41と、第1出力端41とは他方の第2出力端42と、を有する。
【0017】
電源部4が印加する電圧の周波数は、例えば、1kH~100kHzである。電源部4が印加する電圧の波形は、パルス波形が望ましいが、その他にも正弦波、矩形波等でもよく、大気圧プラズマ放電で用いられる公知の波形を用いればよい。また、電源部4が印加する電圧は、例えば5kVpp~20kVppであり、電圧印加電極2と被処理物1との間のギャップ等によって適宜設定される。
【0018】
被処理物1は、金属製であり、電圧印加電極2と上下方向に対向する。電圧印加電極2は、被処理物1と対向する側の端面として、対向側電極面21を有する。被処理物1は、電圧印加電極2と対向する側の端面として、対向側電極面11を有する。
【0019】
誘電体部3は、対向側電極面21に配置される。誘電体部3の材料としては、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック材料、または快削性セラミックなどが好適に使用される。誘電体部3と被処理物1との間に隙間S1が形成される。隙間S1において発生したプラズマPにより被処理物1の被処理面としての対向側電極面11がプラズマ処理される。被処理物1は、電圧印加電極2と対向する対向電極として機能し、誘電体部3と被処理物1との間に発生するプラズマPによってダイレクトに被処理物1は処理される。すなわち、プラズマ処理装置10は、電圧印加電極2と電圧印加電極2と対向する対向電極1との間で発生するプラズマにより被処理物1を処理する。
【0020】
ステージ5は、被処理物1が載置されて、被処理物1を保持する。すなわち、プラズマ処理装置10は、被処理物1が載置されるステージ5を備える。ステージ5は、金属製である。
【0021】
絶縁部6は、ステージ5とアクチュエータ7との間に配置される。すなわち、絶縁部6は、対向電極1とアクチュエータ7との間に配置される。絶縁部6は、例えばシート状の絶縁材により構成される。絶縁部6は、ステージ5とアクチュエータ7とを電気的に絶縁する。
【0022】
アクチュエータ7は、被処理物1をステージ5および絶縁部6ごと搬送方向に搬送する。すなわち、アクチュエータ7は、電圧印加電極2と被処理物1とを相対的に移動させる。
【0023】
ステージ5は、第1ラインL1を介して第2出力端42に接続される。信号処理ボックス8は、電流検出部81と、判定部82を収容する。電流検出部81は、第1ラインL1の途中に配置される。すなわち、電流検出部81は、対向電極1と第2出力端82とを導通させる第1ラインL1に配置される。
【0024】
アクチュエータ7は、第2ラインL2によって接地される。第1ラインL1は、アクチュエータ7を接地させる第2ラインL2とは非接続である。
【0025】
電流検出部81とステージ5とは、第3ラインL3によって接続される。すなわち、第3ラインL3は、第1ラインL1の一部である。
【0026】
電流検出部81は、例えば電流を電圧に変換する抵抗によって構成される。隙間S1において放電が発生した場合、放電電流は被処理物1およびステージ5を介して電流検出部81を流れる。これにより、電流検出部81は、放電電流を検出する。すなわち、電流検出部81は、対向電極1を介して流れる電流を検出する。
【0027】
判定部82は、電流検出部81の検出結果に基づき判定処理を行う。判定部82による判定の具体例については後述する。
【0028】
<2.プラズマ放電について>
大気圧下で被処理物1をプラズマ処理するプラズマ処理装置10においては、電圧印加電極2に誘電体部3を配置して、電源部4により電圧印加電極2に高電圧・高周波の出力電圧を印加することで、隙間S1において誘電体バリア放電が発生する。放電電流により運ばれる電荷が誘電体部3に蓄積することで隙間S1に加わる電圧が減少し、自動的に放電が停止される。これにより、誘電体バリア放電はパルス状の放電となり、安定した大気圧非熱平衡プラズマを得ることができる。
【0029】
なお、ガス供給手段により隙間S1に処理ガスを供給してもよい。処理ガスは、窒素、または窒素と空気との混合ガスなど、ガス種は限定されない。
【0030】
ここで、
図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置10における電圧印加電極2に印加される出力電圧Vと、電流検出部81により検出される検出電流信号Iの波形例を示す図である。なお、
図2では、一例として正弦波状の出力電圧Vを印加した場合を示す。
【0031】
図2に示すように、出力電圧Vの極性が切替わるタイミング付近でパルス状の放電電流が発生する。
図2の例えばA領域において、放電電流が発生している。
図2では、検出電流信号Iへのノイズの影響は小さく、放電電流はpeak to peak値が大きく明確となっている。これは、アクチュエータ7からのノイズの電流検出部81への流入を絶縁部6により抑制し、被処理物1を流れる放電電流のアクチュエータ7への流出を絶縁部6により抑制できるためと考えられる。これにより、電流検出部81により検出される放電電流のS/N比を向上させることができる。従って、簡易な構成によりプラズマ放電状態を精度良く検出できる。
【0032】
参考として
図3は、仮にアクチュエータ7とステージ5とを絶縁しなかった場合の出力電圧と検出電流信号の波形例を示す図である。この場合、検出電流信号Iへのノイズの影響が大きくなり、例えばB領域で示すように放電電流は、peak to peak値が小さくなっており不明確である。これにより、放電電流のS/N比が劣化している。
【0033】
なお、アクチュエータ7からのノイズは、アクチュエータ7が駆動する際に発生するノイズに加え、アクチュエータ7が電源部4から受ける電磁波に基づくノイズも含まれる。本実施形態のプラズマ処理装置10は、大気圧でのプラズマ放電により被処理物1を処理する。大気圧でのプラズマ放電では、電源部4により高電圧・高周波の出力電圧が電圧印加電極2に印加されるため、アクチュエータ7が電源部4から受ける電磁波によりノイズが発生しやすいが、絶縁部6によりノイズの電流検出部81への流入を抑制できる。
【0034】
また、本実施形態では、対向電極は、被処理物1である。これにより、ダイレクト方式によるプラズマ処理を行うプラズマ処理装置10において、簡易な構成によりプラズマ放電状態を精度良く検出できる。
【0035】
また、アクチュエータ7は、第2ラインL2によって接地されるので、アクチュエータ7で発生したノイズは接地により吸収され、ノイズの電流検出部81への流入をより抑制できる。
【0036】
また、第1ラインL1は、アクチュエータ7を接地させる第2ラインL2とは非接続であるので、グランドからのノイズが電流検出部81へ流入することを抑制できる。
【0037】
また、電流検出部81とステージ5とは第3ラインL3によって接続されるので、被処理物1に電流検出部81をラインによって接続させる必要がなくなり、処理工程を簡易化できる。
【0038】
<3.被処理物の処理工程>
次に、被処理物1の処理工程の一例について説明する。
図4は、被処理物1の処理工程の一例を示す上面図である。
図4において、Y軸方向はアクチュエータ7により被処理物1を搬送する方向を示し、Z軸方向は上下方向を示し、X軸方向はY軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。
【0039】
まず、工程ST1において、被処理物1はステージ5にセットされる。ここで、被処理物1は、一例として円筒形状を有する部材であり、上面である被処理面として円環面を有する。すなわち、当該円環面は、対向側電極面11である。
【0040】
ステージ5に載置された被処理物1は、アクチュエータ7によりY軸方向一方側へ搬送される。そして、工程ST2において、変位計15により被処理物1の被処理面の高さが計測される。このとき、被処理物1はアクチュエータ7によりY軸方向への移動を制御され、変位計15はX軸方向への移動を制御される。これにより、被処理面である円環面の高さを計測することができる。
【0041】
次に、被処理物1はアクチュエータ7によりY軸方向一方側へ搬送される。そして、工程ST3において、被処理物1の被処理面は、電圧が印加された電圧印加電極2によって発生するプラズマによりプラズマ処理される。具体的には、被処理物1はアクチュエータ7によりY軸方向の移動を制御され、電圧印加電極2はX軸方向の移動を制御される。このとき、電圧印加電極2は、工程ST2での計測結果に基づいてZ軸方向の移動を制御されるので、電圧印加電極2と被処理面との間のギャップが円環面の周方向において一定に制御される。
【0042】
そして、被処理物1はアクチュエータ7によりY軸方向一方側へ搬送され、工程ST4で被処理物1はステージ5から取り外されて搬出される。
【0043】
なお、アクチュエータ7と、変位計15および電圧印加電極2を移動させる機構による被処理物1と変位計15および電圧印加電極2との相対的な移動についての3軸方向の分担は任意でよい。例えば、変位計15および電圧印加電極2は固定とし、アクチュエータ7が被処理物1を3軸方向に移動させてもよい。または、被処理物1は固定とし、変位計15を2軸方向へ移動させ、電圧印加電極2を3軸方向へ移動させてもよい。この場合、アクチュエータは、電圧印加電極2を移動させる。すなわち、アクチュエータ7は、電圧印加電極2と被処理物1とを相対的に移動させる。
【0044】
<4.判定部による判定処理>
判定部82は、電流検出部81による検出結果に基づいて各種の判定処理を行うことができる。以下、判定処理の一例について説明する。
【0045】
例えば、判定部82は、電流検出部81により検出された検出電流値を第1閾値および第1閾値よりも高い第2閾値と比較してもよい。この場合、検出電流値が第1閾値以上かつ第2閾値以下であれば、正常放電状態であると判定し、検出電流値が第1閾値より低ければ、非放電状態であると判定し、検出電流値が第2閾値より高ければ、異常放電状態であると判定する。なお、検出電流値は、例えば検出電流信号のpeak to peak値を用いる。
【0046】
上記異常放電状態は、誘電体部3の絶縁破壊または隙間S1への異物の混入などによりアーク放電が生じた状態である。
【0047】
また、判定部82は、検出電流値のレベルが経時的に低下しているかを判定してもよい。この場合、判定部82は、例えば不図示の表示部などを用いて電圧印加電極2の交換を促す警告を行うこともできる。
【0048】
また、判定部82は、検出電流値が所定の閾値を上回る回数が経時的に増加しているかを判定してもよい。
【0049】
すなわち、プラズマ処理装置10は、電流検出部81の検出結果に基づきプラズマ放電が正常状態であるかを判定する判定部82を備える。これにより、プラズマ放電が正常状態であるかを精度良く判定できる。
【0050】
また、判定部82は、電流検出部81による検出電流値に関する経時変化を検出する。これにより、各種の警告を行うことができる。
【0051】
<5.第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置101の全体構成を概略的に示す図である。
【0052】
プラズマ処理装置101の第1実施形態に係るプラズマ処理装置10との相違点は、ステージ5に接続されて途中に電流検出部81が配置される第4ラインL4と、アクチュエータ7に接続される第5ラインL5と、第2出力端42に接続される第6ラインL6と、がともに接地されることである。
【0053】
<6.第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置102の全体構成を概略的に示す図である。
【0054】
プラズマ処理装置102の第1実施形態に係るプラズマ処理装置10との相違点は、アクチュエータ7が接地されず、フローティング状態であることである。アクチュエータ7から発生するノイズが少ない場合は、プラズマ処理装置102の構成であっても、電流検出部81へ流入するノイズを絶縁部6により十分に抑制できる。
【0055】
<7.第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係るプラズマ処理装置103の全体構成を概略的に示す図である。
【0056】
プラズマ処理装置103は、電圧印加電極20と、誘電体部30と、電源部40と、対向電極50と、絶縁部60と、アクチュエータ70と、信号処理ボックス80と、を備える。
【0057】
電圧印加電極20は、電源部40の第1出力端401から出力される出力電圧が印加される電極であり、例えば上下方向である軸方向に延びる円柱状に構成される。対向電極50は、電圧印加電極20と軸方向に対する径方向に対向する電極であり、例えば電圧印加電極20の径方向外側を囲む筒状体に構成される。
【0058】
誘電体部30は、電圧印加電極20の外周面である対向側電極面201に配置されて円筒状を有し、対向電極50と電圧印加電極20との間に配置される。これにより、誘電体部30と対向電極50との間に円筒状の隙間S2が形成される。
【0059】
対向電極50は、第7ラインL7により電源部40の第2出力端402に接続される。信号処理ボックス80は、電流検出部801と判定部802を収容する。電流検出部801は、第7ラインL7の途中に配置される。
【0060】
被処理物90は、電圧印加電極20の下方に配置される。処理ガスを上方から隙間S2に導き、電源部40により高電圧・高周波の出力電圧を電圧印加電極20に印加させることで、大気圧下で隙間S2において誘電体バリア放電が発生し、隙間S2にプラズマが発生する。発生したプラズマは、被処理物90の被処理面に導かれ、被処理面がプラズマ処理される。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置103は、リモート方式によるプラズマ処理を行う。
【0061】
絶縁部60は、対向電極50とアクチュエータ70とを電気的に絶縁する。アクチュエータ70は、電圧印加電極20、誘電体部30、および対向電極50を被処理物90に対して移動させる。なお、アクチュエータ70は、被処理物90を移動させてもよい。すなわち、アクチュエータ70は、電圧印加電極と被処理物とを相対的に移動させる。アクチュエータ70は、接地される。
【0062】
隙間S2において放電が発生すると、対向電極50を介して流れる放電電流は電流検出部801により検出される。このとき、放電電流は絶縁部60によりアクチュエータ70へ流出することが抑制される。また、アクチュエータからのノイズの電流検出部801への流入を絶縁部60により抑制できる。これにより、電流検出部801により検出される放電電流のS/N比を向上させることができる。
【0063】
なお、誘電体部30は、電圧印加電極20の対向側電極面201の代わりに対向電極50の対向側電極面501に設けてもよいし、対向側電極面201と対向側電極面501の両方に設けてもよい。すなわち、電圧印加電極20と対向電極50の少なくとも一方の対向側電極面に誘電体部30が配置される。これにより、誘電体バリア放電方式において、誘電体部30の絶縁破壊または放電空間への異物の混入などによりアーク放電が生じた場合でも、異常放電を精度良く検出できる。
【0064】
<8.その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、被処理物に対する各種のプラズマ処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・被処理物、11・・・対向側電極面、2・・・電圧印加電極、21・・・対向側電極面、3・・・誘電体部、4・・・電源部、41・・・第1出力端、42・・・第2出力端、5・・・ステージ、6・・・絶縁部、7・・・アクチュエータ、8・・・信号処理ボックス、81・・・電流検出部、82・・・判定部、10・・・プラズマ処理装置、15・・・変位計、101~103・・・プラズマ処理装置、20・・・電圧印加電極、201・・・対向側電極面、30・・・誘電体部、40・・・電源部、401・・・第1出力端、402・・・第2出力端、50・・・対向電極、501・・・対向側電極面、60・・・絶縁部、70・・・アクチュエータ、80・・・信号処理ボックス、801・・・電流検出部、802・・・判定部、90・・・被処理物、L1・・・第1ライン、L2・・・第2ライン、L3・・・第3ライン、L4・・・第4ライン、L5・・・第5ライン、L6・・・第6ライン、L7・・・第7ライン