(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
A01C15/00 G
(21)【出願番号】P 2020114799
(22)【出願日】2020-07-02
(62)【分割の表示】P 2016232995の分割
【原出願日】2016-11-30
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110022(JP,A)
【文献】特開2002-204608(JP,A)
【文献】特開2016-034290(JP,A)
【文献】特開平05-284831(JP,A)
【文献】特開2011-177051(JP,A)
【文献】特開2016-154501(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102369804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を圃場に供給する施肥装置と、前記肥料の施肥量を設定可能な情報処理装置とを備え、前記施肥装置は、肥料タンクと、前記肥料タンクから前記肥料を繰り出す繰出機構と、前記繰出機構から前記肥料が繰り出される施肥ホースと、前記施肥ホースが脱着可能であり、前記施肥ホースを搬送される前記肥料を圃場に落とし込む肥料供給部とを備え、
前記情報処理装置は、前記繰出機構から前記施肥ホースに前記肥料が繰り出される前記施肥装置の試し繰り出しによって、前記施肥ホースに繰り出された前記肥料の重量の入力と、前記圃場に供給する肥料の施肥量を入力することができ
、
前記圃場へ実際に供給する肥料の施肥量は、前記肥料の重量の入力に基づいた比重を考慮し補正された施肥量を圃場に供給することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記
繰出機構は、回転自在に支持され、
機体の走行距離に対する、前記繰出機構から繰り出される前記施肥量を調節する施肥量調節部を設け、前記補正された施肥量に基づいて前記施肥量調節部により前記繰出機構の回転速度を調節することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記
肥料の重量の入力に基づいた比重が、使用される肥料の種類によって設定されている標準比重よりも大きい場合には、前記繰出機構の回転速度を標準比重時に用いられる回転速度よりも小さくし、前記算出した比重が、使用される肥料の種類によって設定されている標準比重よりも小さい場合には、前記繰出機構の回転速度を標準比重時に用いられる回転速度よりも大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、苗移植時に、圃場に肥料を供給しながら作業を行う作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような作業車両では、貯留部から繰り出される肥料の繰り出し量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような作業車両では、肥料の比重については考慮されていない。肥料は種類や、使用時の状態に応じて、比重が異なる。そのため、比重を考慮せずに、肥料を供給すると、圃場へ供給される肥料の施肥量が、設定された量とはならないおそれがある。これにより、例えば、施肥量が増加することによるコストの増加や、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設定された施肥量を圃場へ供給する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の作業車両は、肥料を圃場に供給する施肥装置と、前記肥料の施肥量を設定可能な情報処理装置とを備え、前記施肥装置は、肥料タンクと、前記肥料タンクから前記肥料を繰り出す繰出機構と、前記繰出機構から前記肥料が繰り出される施肥ホースと、前記施肥ホースが脱着可能であり、前記施肥ホースを搬送される前記肥料を圃場に落とし込む肥料供給部とを備え、前記情報処理装置は、前記繰出機構から前記施肥ホースに前記肥料が繰り出される前記施肥装置の試し繰り出しによって、前記施肥ホースに繰り出された前記肥料の重量の入力と、前記圃場に供給する肥料の施肥量を入力することができ、前記圃場へ実際に供給する肥料の施肥量は、前記肥料の重量の入力に基づいた比重を考慮し補正された施肥量を圃場に供給することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の作業車両は、請求項1に記載の作業車両において、前記繰出機構は、回転自在に支持され、機体の走行距離に対する、前記繰出機構から繰り出される前記施肥量を調節する施肥量調節部を設け、前記補正された施肥量に基づいて前記施肥量調節部により前記繰出機構の回転速度を調節することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の作業車両は、請求項1または2に記載の作業車両において、前記肥料の重量の入力に基づいた比重が、使用される肥料の種類によって設定されている標準比重よりも大きい場合には、前記繰出機構の回転速度を標準比重時に用いられる回転速度よりも小さくし、前記算出した比重が、使用される肥料の種類によって設定されている標準比重よりも小さい場合には、前記繰出機構の回転速度を標準比重時に用いられる回転速度よりも大きくすることを特徴とする。
【0009】
(削除)
【0010】
(削除)
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の作業車両によれば、施肥装置の試し繰り出しによって、施肥ホースに繰り出された肥料の重量と、圃場に供給する肥料の施肥量を情報処理装置に入力することで、肥料の比重を容易に算出することができる。また、比重に基づいて圃場に肥料を供給することで、設定された施肥量の肥料を圃場へ供給することができる。そのため、施肥量が増加することによるコストの増加や、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良を抑制することができる。
【0012】
(削除)
【0013】
請求項2に記載の作業車両によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、機体の走行距離に対する繰出機構から繰り出される肥料の繰り出し量を調整することができる。
【0014】
請求項3に記載の作業車両によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、設定された施肥量の肥料が圃場に供給することができる。
【0015】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2は、苗移植機の一部を省略した平面図である。
【
図3】
図3は、肥料タンクの下方側における左右方向の断面図である。
【
図4】
図4は、ジョイントを斜め後方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、苗移植機が備える制御装置を中心としたブロック図である。
【
図6】
図6は、情報処理端末における表示例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2施肥ホースを容器内に挿入した一例を示す図である。
【
図8】
図8は、繰り出し量設定制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、下記の実施形態における構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0018】
なお、以下では前後、左右の方向基準は、操縦席31からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を定めている。
図1は、苗移植機1の側面図であり、
図2は、苗移植機1の一部を省略した平面図である。苗移植機1は、走行車体2の後方に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着される。走行車体2の後部上側には、施肥装置5の本体部分が設けられる。
【0019】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10および左右一対の後輪11を備える四輪駆動車両である。苗移植機1の機体の前部には、ミッションケース12が配設され、ミッションケース12の左右側方には前輪ファイナルケース13が設けられる。前輪10は、前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な前輪10の支持部から機体の外向きへ突出する左右一対の前輪車軸にそれぞれ取り付けられる。
【0020】
ミッションケース12の背面部には、メインフレーム15の前端が固定される。メインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギアケース18がローリング自在に支持される。後輪ギアケース18から機体の外向きへ突出する後輪車軸には、後輪11が取り付けられる。
【0021】
メインフレーム15上には、エンジン20が搭載される。エンジン20の回転動力は、ベルト伝達装置21およびHST23を介してミッションケース12へ伝達される。なお、HST23は、HST(Hydro Static Transmission)と称する静油圧式の無段変速機である。ミッションケース12へ伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションによって変速された後、走行動力と外部取出動力とに分離して取り出される。走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13へ伝達されて前輪10を駆動し、残りが後輪ギアケース18へ伝達されて後輪11を駆動する。
【0022】
また、上記の外部取出動力は、植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0023】
内燃機関であるエンジン20は、エンジンカバー30に収容される。エンジンカバー30の上部には、操縦席31が配設される。操縦席31の前方には、各種操作機構を内蔵するフロントカバー32が配設される。フロントカバー32の左右には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38が配設される。フロントカバー32の上部には、前輪10を操向操作するハンドル34が配設される。
【0024】
エンジンカバー30、およびフロントカバー32の下端左右両側は、水平上のフロアステップ35が配設される。フロアステップ35は、一部が格子状になっており、たとえば作業者の靴に付着した泥などを圃場へ落下させることができる。フロアステップ35の左右両端には、フロアステップ35の上面よりも低く設けられた補助ステップ35aが配設される。補助ステップ35aによれば、作業者による苗移植機1への乗降を容易にすることができる。
【0025】
昇降リンク機構3は、平行リンク機構であり、上リンク40と、下リンク41とを有する。上リンク40、および下リンク41の先端側は、メインフレーム15の後端部に立設した背面視において門型のリンクベースフレーム42に上下方向へそれぞれ回動自在に支持される。また、上リンク40および下リンク41の後端側には、縦リンク43が連結される。縦リンク43の下端部には、苗植付部4に回転自在に支持されて走行車体2の前後方向へ延伸する連結軸44が連結される。苗植付部4は、連結軸44まわりにローリング自在に設けられる。
【0026】
メインフレーム15には、昇降油圧シリンダ46が取り付けられる。昇降油圧シリンダ46の先端は、上リンク40の先端部に連結される。昇降油圧シリンダ46の伸縮により、上リンク40が上下方向へ回動することによって、苗植付部4が略一定の姿勢を保ちつつ昇降する。
【0027】
本実施形態に係る苗移植機1が有する苗植付部4は、6条植の構成を例にとって示しており、苗載置部51と、苗植付装置52と、線引きマーカ19とを備える。苗載置部51は、マット苗を載置して左右方向へ往復して苗を一株分ずつ各条の苗取出口へ供給するとともに、横一列分の苗が苗取出口へ供給されると苗送りベルト51aによって苗を下方へ移送する。
【0028】
苗植付装置52では、ロータリーケース16の両端部に、植付回転軸が回動自在に設けられる。植付回転軸には苗植付具54が取り付けられる。
【0029】
苗植付部4の下部には、中央にセンターフロート55、左右両端にサイドフロート56が設けられる。センターフロート55やサイドフロート56を圃場の泥面に設置させた状態で機体を進行させると、センターフロート55やサイドフロート56は、泥面上を滑走しつつ整地する。苗は、かかる整地された圃場面に苗植付装置52によって植え付けられる。なお、センターフロート55、サイドフロート56は、圃場の表土面の凹凸に対応して上下動するように、たとえば左右方向の支軸まわりに回動自在に設けられている。
【0030】
ここで、施肥装置5について
図1~
図3を用いて詳しく説明する。
図3は、肥料タンク60の下方側における左右方向の断面図である。施肥装置5は、肥料タンク60と、繰出機構61と、施肥ホース62と、肥料供給部63と、ブロア64と、チャンバ65とを備える。
【0031】
肥料タンク60は、走行車体2の左右に一対配設され、圃場に供給する肥料を貯留する。肥料タンク60は、下側で前後方向に3つの室に分岐する。各室の底部には、開口部が形成される。肥料タンク60は、左右に一対配設されており、下側の開口部の数は6つである。下側の開口部は、苗移植機1の条数に応じて設けられる。本実施形態に係る苗移植機1は、6条植の構成であるため、6つの開口部が形成される。なお、肥料タンク60を3つの室に仕切って構成してもよい。下側の各開口部には、繰出機構61がそれぞれ接続される。
【0032】
繰出機構61は、肥料を施肥ホース62に繰り出す繰出部61aと、繰出部61aをバイパスして肥料を施肥ホース62に排出するバイパス部61bとを備える。繰出機構61は、肥料タンク60の下側の開口部と同様に、条数に応じて6つ設けられる。繰出機構61には、肥料タンク60の下側の開口部から肥料が流入する。繰出機構61には、繰出部61aの下側で第1施肥ホース70が接続される。
【0033】
繰出部61aは、略円柱状であり、繰出機構61のケース61cに回転自在に支持される。繰出部61aは、施肥量調節モータ101(
図5参照)により駆動されて回転する。繰出部61aには、回転方向に沿って複数の凹部61dが形成される。凹部61dは繰出部61aの径方向外側に向けて開口する。
【0034】
繰出部61aは、上側に位置する凹部61dに肥料を流入させ、肥料が入った凹部61dを回転により下側に移動させることで、肥料を凹部61dから落下させる。繰出機構61は、繰出部61aの下側で第1施肥ホース70が接続され、凹部61dから落下した肥料は、第1施肥ホース70に流入する。このように、繰出部61aが回転することで、肥料タンク60内の肥料は第1施肥ホース70に繰り出される。繰出部61aは、施肥量調節モータ101により回転速度を調整することで、苗移植機1の走行距離に対する肥料の繰り出し量(以下、繰り出し量という。)を調整することができる。
【0035】
バイパス部61bは、繰出部61aよりも外側に形成され、繰出部61aをバイパスして肥料を排出可能となるように形成される。バイパス部61bは、排出ブーツ67を介して、肥料タンク60と施肥ホース62とを接続する。バイパス部61bの上側の開口部には、開閉弁66が設けられる。
【0036】
開閉弁66は、例えば、レバー操作による回転式の弁である。なお、開閉弁66は、スライド式であってもよい。開閉弁66は、バイパス部61bを開閉し、バイパス部61bへの肥料の流入状態を切り替える。開閉弁66が開くと、肥料がバイパス部61bへ流入する。一方、開閉弁66が閉じている場合、肥料はバイパス部61bへ流入しない。
【0037】
施肥ホース62は、第1施肥ホース70と、ジョイント71と、第2施肥ホース72とを備える。施肥ホース62は、条数に応じて6本設けられる。
【0038】
第1施肥ホース70は、各繰出部61aの下方にそれぞれ設けられ、接続部70aによって繰出機構61に接続される。第1施肥ホース70は、左右方向に延設される。第1施肥ホース70の内側の端部は、チャンバ65の第1送風管65a、またはチャンバ65の第3送風管65cに接続される。第1施肥ホース70の外側の端部は、ジョイント71の第1枝部71aに接続される。第1施肥ホース70には、繰出部61aによって、肥料が繰出機構61から繰り出される。
【0039】
ジョイント71は、
図4に示すように、第1枝部71a、第2枝部71b、第3枝部71cからなる三つ又状のジョイントである。
図4は、ジョイント71を斜め後方から見た斜視図である。第1枝部71aには、第1施肥ホース70が接続される。第2枝部71bには、排出ブーツ67が接続される。第3枝部71cには、第2施肥ホース72が接続される。
【0040】
第2施肥ホース72は、可撓性のホースである。第2施肥ホース72の一方の端部は、ジョイント71に接続され、もう一方の端部は、連結部73を介して肥料供給部63に接続される。第2施肥ホース72は、連結部73を介して肥料供給部63に脱着可能に接続される。連結部73は、作業者が走行車体2の左右方向から脱着操作を容易に行うことができる箇所に設けられる。
【0041】
ブロア64は、走行車体2の左側に配設された肥料タンク60の前方に設けられる。ブロア64は、ブロアモータ102によって駆動され、空気を吸引し、吸引した空気をチャンバ65に吹き出す。
【0042】
チャンバ65は、ブロア64から後方に向けて延設する第1送風管65aと、第1送風管65aに接続し、左右方向に延設する第2送風管65bと、第2送風管65bに接続し、前方に向けて延設する第3送風管65cとを備える。
【0043】
第1送風管65aには、走行車体2の左側に設けられた各第1施肥ホース70が接続される。第3送風管65cには、走行車体2の右側に設けられた各第1施肥ホース70が接続される。チャンバ65は、ブロア64によって吹き出された空気を、各第1施肥ホース70に流入させる。
【0044】
肥料供給部63は、連結部73から、センターフロート55、またはサイドフロート56の前方まで延設される。肥料供給部63は、条数に応じて6本設けられる。肥料供給部63は、施肥ホース62を介して搬送された肥料を圃場に落とし込む。
【0045】
なお、ここでは、肥料供給部63などを、条数に応じて設ける場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2条に対し、1本の肥料供給部63などを設けてもよい。この場合、例えば、肥料供給部63を隣接する2条間の中間付近に肥料を供給するように設ける。
【0046】
次に、苗移植機1の制御系について説明する。
図5は、苗移植機1の制御装置150を中心としたブロック図である。本実施形態に係る苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、苗移植機1は、各部を制御する制御装置150を備える。この制御装置150は、走行車体2に設けられるコントローラ150aと、脱着自在な情報処理端末150bとを備える。
【0047】
コントローラ150a、および情報処理端末150bは、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ150a、および情報処理端末150bは、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0048】
例えば、コントローラ150aは、深度センサ111や回動センサ170により取得した情報に基づいて、苗植付部4などを昇降させる自動昇降処理を行う。
【0049】
例えば、コントローラ150aには、アクチュエータ類として、エンジン20の吸気量を調節するスロットル(図示省略)を作動させることにより、エンジン20の回転速度を増減させるスロットルモータ100、繰出部61aの回転速度を制御し、圃場への施肥量を調節する施肥量調節モータ101、ブロア64を駆動するブロアモータ102、深度センサ111を回動させる回動モータ103、昇降油圧シリンダ46の伸縮動作を制御する油圧制御弁104などが接続される。
【0050】
また、コントローラ150aには、センサ類としては、肥料濃度センサ110、深度センサ111、水温センサ112、傾斜センサ113、重量センサ114などが接続される。
【0051】
肥料濃度センサ110は、左右の前輪10それぞれに設けられ、左右の前輪10間の肥料濃度を検出する。例えば、肥料濃度センサ110は、環状の電極板で構成され、前輪10の機体内側または外側で、且つ土壌や水中に近い外周縁部付近に配置される。
【0052】
深度センサ111は、取付軸などを介して走行車体2に回動自在となるように複数取り付けられている。例えば、深度センサ111は、超音波やレーザー光の反射により水面、または土壌表面までの深さを測定する。
【0053】
水温センサ112は、肥料濃度センサ110を構成する電極板に取り付けられ、水温を検出する。
【0054】
肥料濃度センサ110、深度センサ111、および水温センサ112は、圃場の状態、つまり土壌肥沃度を検出するセンサである。
【0055】
傾斜センサ113は、走行車体2のピッチングすなわち上下方向への傾斜を検出する。コントローラ150aは、傾斜センサ113が検出する走行車体2の傾斜角度に合わせて深度センサ111が常時鉛直方向に向くように、回動モータ103を駆動して深度センサ111を取付軸まわりに回動させる。
【0056】
重量センサ114は、繰出機構61に設けられ、肥料タンク60内の肥料の重量を検出する。重量センサ114は、例えば、各繰出機構61の繰出部61a付近に配置される。
【0057】
情報処理端末150bは、タッチパネル式のディスプレイによって構成されたタブレット端末である。情報処理端末150bは、文字、数字、記号などの情報を読み取ることができるスキャナ機能を有している。情報処理端末150bは、例えば、肥料の袋などに印刷されたバーコードを読み取り、肥料の種類などを読み取ることができる。
【0058】
また、情報処理端末150bは、コントローラ150aと協働しながら苗植付部4、施肥装置5などの作動を制御することができる。なお、情報処理端末150bは、他の作業車両に接続された状態で記憶された情報などに基づいて苗植付部4、施肥装置5などの作動を制御することができる。
【0059】
情報処理端末150bには、操作画面に、例えば、
図6に示すような操作ボタンが表示され、操作ボタンをタッチすることで、施肥装置5などの作動を制御することができる。
図6は、情報処理端末150bにおける表示例を示す図である。
【0060】
情報処理端末150bには、操作ボタンとして、施肥量(圃場に供給する肥料の全重量)を入力するためのボタン200、試し繰り出し量を入力するためのボタン201、減肥率を選択するためのボタン202、田植を開始するためのボタン203、比重などが表示される。例えば、施肥量を入力するためのボタン200がタッチされると、施肥量を入力する画面が表示され、施肥量を入力することができる。また、田植を開始するためのボタン203がタッチされると、田植が開始される。
【0061】
なお、情報処理端末150bには、上記するボタン200~203の他にも、苗植付部4や、施肥装置5などの作動を制御するための操作ボタンなどが表示される。
【0062】
苗移植機1は、上記構成により、肥料を圃場に供給しながら苗を圃場に植え付けることができる。ここで、施肥装置5による肥料の供給動作ついて、詳しく説明する。
【0063】
肥料を圃場に供給する場合には、まず、圃場に供給する肥料の施肥量が情報処理端末150bに入力される。施肥量は、圃場の広さ、および使用する肥料の種類に応じて入力される。
【0064】
そして、第2施肥ホース72を肥料供給部63から取り外し、取り外した第2施肥ホース72の端部を、例えば、
図7に示すように、容器80内に挿入する。
図7は、第2施肥ホース72を容器80内に挿入した一例を示す図である。
【0065】
そして、繰出部61aが所定回数(例えば、30回)回転され、試し繰り出しが行われ、容器80内に繰り出された肥料の重量が計測される。試し繰り出しにより繰り出された試し繰り出し量(肥料の重量)が情報処理端末150bに入力される。
【0066】
試し繰り出し量が入力されると、情報処理端末150bは、以下の式に基づいて、比重を算出する。
【0067】
比重=(試し繰り出し量/条数)×補正係数
補正係数は、第1施肥ホース70、ジョイント71、第2施肥ホース72などの抵抗等に応じて設定される値であり、苗移植機1の種類に応じて予め実験などにより設定された値である。例えば、補正係数は、1.42121などである。
【0068】
情報処理端末150bは、算出した比重と施肥量とに基づいて、繰出部61aの回転速度を設定する。
【0069】
情報処理端末150bは、算出した比重と標準比重とを比較し、標準比重に対する比重のずれを算出する。標準比重は、使用する肥料の種類や、苗移植機1の種類に応じて設定される値である。使用する肥料の種類は、例えば、使用する肥料のケースに印刷されたバーコードを、情報処理端末150bで読み取ることで得ることができる。
【0070】
圃場に供給される肥料は、使用する時の天候(温度や、湿度)に応じて、繰出部61aの凹部61dに入る量が異なる場合がある。そのため、繰出部61aから繰り出される肥料の繰り出し量は、圃場に肥料を供給する時の天候に応じて変化する。
【0071】
例えば、比重が大きい場合には、繰出部61aの凹部61dに入る肥料が多く、繰出部61aによる繰り出し量が大きくなり、圃場に供給される施肥量が多くなる。一方、比重が小さい場合には、繰出部61aの凹部61dに入る肥料が少なく、繰出部61aによる繰り出し量が小さくなり、圃場に供給される施肥量が少なくなる。
【0072】
このように、比重が変わることで、設定された施肥量よりも多くの肥料が圃場に供給されたり、設定された施肥量よりも少ない肥料が圃場に供給されたりするおそれがある。
【0073】
そのため、情報処理端末150bは、算出した比重と標準比重とのずれを算出し、算出したずれに基づいて、繰出部61aの回転速度を設定する。
【0074】
算出した比重が、標準比重よりも大きい場合には、圃場への施肥量が設定された施肥量となるように、繰出部61aの回転速度を所定回転速度よりも小さくする。また、算出した比重が、標準比重よりも小さい場合には、圃場への施肥量が設定された施肥量となるように、繰出部61aの回転速度を所定回転速度よりも大きくする。所定回転速度は、予め設定された回転速度であり、施肥量に応じて設定される。
【0075】
情報処理端末150bは、比重と施肥量とに基づいて、繰出部61aの回転速度を設定することで、繰出部61aの繰り出し量を調整する。これにより、設定された施肥量の肥料が圃場に供給される。
【0076】
試し繰り出しを行った後は、第2施肥ホース72は肥料供給部63に取り付けられる。これにより、肥料を肥料タンク60から圃場へ搬送する肥料供給路が形成される。
【0077】
その後、情報処理端末150bに表示された田植を開始するためのボタン203がタッチされると、繰出部61aの回転速度が、設定された回転速度となるように施肥量調節モータ101が制御され、繰出部61aから肥料が繰り出され、肥料供給路を介して、肥料が圃場に供給される。
【0078】
なお、圃場の土壌肥沃度に応じて、圃場に供給する肥料の量を調整する可変施肥を実行する場合には、肥料濃度センサ110、深度センサ111、および水温センサ112からの信号に基づいて、施肥量調節モータ101が制御され、繰出部61aの回転速度が自動的に変更される。
【0079】
また、情報処理端末150bの減肥率を選択するためのボタン202がタッチされると、減肥率に応じて、施肥量調節モータ101が制御され、繰出部61aの回転速度が自動的に変更される。
【0080】
次に、繰り出し量設定制御について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
図8は繰り出し量設定制御を説明するフローチャートである。
【0081】
情報処理端末150bに施肥量が入力され(ステップS10)、試し繰り出し量が入力されると(ステップS11)、情報処理端末150bは、比重を算出する(ステップS12)。
【0082】
そして、情報処理端末150bは、算出した比重と施肥量とに基づいて繰出部61aの回転速度を設定する(ステップS13)。
【0083】
このような繰り出し量の設定は、作業開始時、例えば、植え付けを行う日時が変更された場合や、使用する肥料が変更された場合に行われる。
【0084】
次に本実施形態の効果について説明する。
【0085】
情報処理端末150bは、試し繰り出し量に基づいて肥料の比重を算出し、繰出部61aの回転速度を設定する。苗移植機1は、肥料の比重に基づいて圃場に肥料を供給することで、設定された施肥量の肥料を圃場へ供給することができる。そのため、施肥量が増加することによるコストの増加や、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良を抑制することができる。
【0086】
また、情報処理端末150bは、比重と施肥量とに基づいて繰出部61aの回転速度を設定する。これにより、圃場に供給される施肥量の誤差を小さくすることができ、施肥量が増加することによるコストの増加や、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良を抑制することができる。
【0087】
また、情報処理端末150bは、土壌肥沃度に基づいて、繰出部61aの回転速度を調整することで、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良を抑制することができる。
【0088】
また、圃場の広さ、および肥料の種類に応じて施肥量が設定されるので、圃場に適切な施肥量で肥料を供給することができ、施肥量が増加することによるコストの増加や、肥料過多、または肥料不足による作物の生育不良を抑制することができる。
【0089】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0090】
上記実施形態では、肥料タンク60を走行車体2の左右に一対配設したが、これに限られることはない。肥料タンクを左右方向の延設された1つのタンクとしてもよい。
【0091】
また、情報処理端末150bは、タブレット端末を一例として説明したが、これに限られることはない。情報処理端末150bは、走行パネルに設定されてもよい。
【0092】
また、試し繰り出し量を、作業者によって計測したが、例えば、情報処理端末150bが、重量センサ114を用いて、試し繰り出しを行った前後の重量を算出し、算出した値に基づいて比重を算出し、繰出部61aの回転速度を設定してもよい。これにより、例えば、作業者が、第2施肥ホース72の脱着や、試し繰り出し量の計測などを行わずに、繰出部61aの回転速度を設定することができ、作業効率を向上させることができる。
【0093】
また、田植を開始するためのボタン203がタッチされた場合には、情報処理端末150bは算出した比重を記憶してもよい。そして、圃場を移動し、再度、田植を開始するためのボタン203がタッチされた場合には、記憶した比重に基づいて繰出部61aの回転速度を設定してもよい。これにより、圃場を移動し、同じ肥料を圃場に供給する場合に、再度、試し繰り出しを行わずに、設定された施肥量の肥料を圃場に供給することができ、作業効率を向上させることができる。
【0094】
また、比重を情報処理端末150bに直接入力可能としてもよい。例えば、作業者が前年の作業内容などから比重を知っている場合には、試し繰り出しを行わずに、比重を直接入力することで、繰出部61aの回転速度が設定される。これにより、作業効率を向上させることができる。なお、比重を情報処理端末150bに直接入力した場合には、試し繰り出し量を入力する項目を空白としてもよい。これにより、情報処理端末150bを見ることで、現在の作業状況を容易に確認することができる。
【0095】
また、試し繰り出し量は、1本の第2施肥ホース72から得られる量に基づいて算出されてもよい。
【0096】
なお、コントローラ150aは、複数のコントローラによって構成されてもよい。
【0097】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細、および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲、およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 苗移植機
4 苗植付部
5 施肥装置
60 肥料タンク(貯留部)
61 繰出機構
61a 繰出部
101 施肥量調節モータ
110 肥料濃度センサ(センサ)
111 深度センサ(センサ)
112 水温センサ(センサ)
114 重量センサ
150 制御装置
150a コントローラ
150b 情報処理端末(情報処理装置)