(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】水晶振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20220419BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03B5/32 H
(21)【出願番号】P 2020180510
(22)【出願日】2020-10-28
(62)【分割の表示】P 2018551558の分割
【原出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2016223303
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-134058(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136283(WO,A1)
【文献】特開2012-199602(JP,A)
【文献】特開2013-207686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-H03B5/42
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子が、絶縁性材料により形成されたパッケージ内に気密封止された水晶振動デバイスであって、
前記水晶振動子は、
一主面に第1励振電極が形成され、他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された水晶振動板と、
前記水晶振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、
前記水晶振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材とを備え、
前記第1封止部材と前記水晶振動板とが接合され、前記第2封止部材と前記水晶振動板とが接合されて、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記水晶振動板の振動部が気密封止される構成になっており、
前記水晶振動子の前記水晶振動板は、前記振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する連結部とを有しており、
前記水晶振動子は、前記パッケージに、平面視で
前記水晶振動板の前記外枠部に重畳する位置
、かつ、平面視で前記水晶振動板の前記振動部に重畳しない位置で接合されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記第1封止部材と前記水晶振動板とがAu-Au接合により接合され、前記第2封止部材と前記水晶振動板とがAu-Au接合により接合されることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記水晶振動子には、センサ素子、または発振回路を構成する回路素子が一体的に設けられていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記水晶振動子と、センサ素子または発振回路を構成する回路素子とが、前記パッケージに設けられた同一の空間に収容され、気密封止されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項5】
請求項1または2に記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記パッケージの一主面側に形成された第1凹部に前記水晶振動子が収容され、気密封止されるとともに、
前記パッケージの他主面側に形成された第2凹部に、センサ素子または発振回路を構成する回路素子が収容されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化や低背化(薄型化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化や低背化にともなって、水晶振動デバイス(例えば、水晶振動子、水晶発振器等)も高周波化やパッケージの小型化や低背化への対応が求められている。
【0003】
この種の水晶振動デバイスでは、その筐体が略直方体形状のパッケージで構成されている。このパッケージは、ガラスや水晶からなる第1封止部材及び第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された水晶振動板とから構成されている。そして、第1封止部材と第2封止部材とが水晶振動板を介して積層して接合されて、パッケージの内部(内部空間)に配された水晶振動板の振動部が気密封止されている(例えば、特許文献1)。以下、このような水晶振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のサンドイッチ構造の水晶振動デバイスでは、水晶振動板の振動部が気密封止されており、水晶振動板の振動部が外部から遮断されている。しかし、パッケージの小型化や低背化にともなって、水晶振動板、第1封止部材、及び第2封止部材を薄く形成する必要がある。このため、例えば、温度や、気圧等のような外部環境の変化の影響を、水晶振動子の振動部が受けやすくなるといった問題点がある。そして、そのような外部環境の変化に起因して、水晶振動デバイスの特性(例えば、水晶振動子の圧電振動特性や、水晶発振器の発振特性)が変動したり、水晶振動デバイスの特性にノイズ成分が現れることなどが懸念される。
【0006】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、サンドイッチ構造の水晶振動子を備えた水晶振動デバイスにおいて、外部環境の変化に起因する特性変動等を抑制して信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、水晶振動子が、絶縁性材料により形成されたパッケージ内に気密封止された水晶振動デバイスであって、前記水晶振動子は、一主面に第1励振電極が形成され、他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された水晶振動板と、前記水晶振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記水晶振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材とを備え、前記第1封止部材と前記水晶振動板とが接合され、前記第2封止部材と前記水晶振動板とが接合されて、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記水晶振動板の振動部が気密封止される構成になっており、前記水晶振動子の前記水晶振動板は、前記振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する連結部とを有しており、前記水晶振動子は、前記パッケージに、平面視で前記水晶振動板の前記外枠部に重畳する位置、かつ、平面視で前記水晶振動板の前記振動部に重畳しない位置で接合されていることを特徴とする。なお、パッケージ内に気密封止される水晶振動子は、単体の水晶振動子であってもよいし、あるいは、水晶振動子にセンサ素子や、発振回路を構成する回路素子が一体的に設けられたものであってもよい。
【0008】
上記構成によれば、水晶振動子の振動部を2重に気密封止することによって、水晶振動子の振動部への外部環境(例えば、温度や、気圧等)の変化の影響を最小限に抑えることができる。これにより、外部環境が変化したとしても、水晶振動デバイスの特性変動を抑制することができ、また、水晶振動デバイスの特性にノイズ成分が発生することを抑制できる。したがって、水晶振動デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記構成の水晶振動デバイスにおいて、前記第1封止部材と前記水晶振動板とがAu-Au接合により接合され、前記第2封止部材と前記水晶振動板とがAu-Au接合により接合されることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、水晶振動子の低背化(薄型化)を図ることができ、そのような水晶振動子を備えた水晶振動デバイスの低背化を図ることができる。
【0011】
ここで、上記構成の水晶振動デバイスにおいて、前記水晶振動子と、センサ素子または発振回路を構成する回路素子とが、前記パッケージに設けられた同一の空間に収容され、気密封止されていてもよい。あるいは、前記パッケージの一主面側に形成された第1凹部に前記水晶振動子が収容され、気密封止されるとともに、前記パッケージの他主面側に形成された第2凹部に、センサ素子または発振回路を構成する回路素子が収容されていてもよい。この場合、パッケージの一主面側に形成された第1凹部に水晶振動子を収容し、パッケージの他主面側に形成された第2凹部に回路素子を収容する構成では、回路素子から放射される熱や電磁波等が、パッケージによって遮断または低減される。このため、回路素子の熱や電磁波等の、水晶振動子の振動部への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サンドイッチ構造の水晶振動子を備えた水晶振動デバイスにおいて、例えば、温度や、気圧等のような外部環境が変化したとしても、水晶振動デバイスの特性変動を抑制することができ、水晶振動デバイスの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる水晶発振器を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の水晶発振器に備えられる水晶振動子を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、
図2の水晶振動子の第1封止部材の概略平面図である。
【
図4】
図4は、
図2の水晶振動子の第1封止部材の概略裏面図である。
【
図5】
図5は、
図2の水晶振動子の水晶振動板の概略平面図である。
【
図6】
図6は、
図2の水晶振動子の水晶振動板の概略裏面図である。
【
図7】
図7は、
図2の水晶振動子の第2封止部材の概略平面図である。
【
図8】
図8は、
図2の水晶振動子の第2封止部材の概略裏面図である。
【
図9】
図9は、変形例1にかかる水晶発振器を示す概略構成図である。
【
図10】
図10は、変形例2にかかる水晶発振器を示す概略構成図である。
【
図11】
図11は、変形例3にかかる水晶振動子ユニットを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、水晶振動デバイスとして水晶発振器を例にしながら図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態にかかる水晶発振器100は、圧電振動を行う水晶振動板2を有する水晶振動子101と、この水晶振動子101とともに発振回路を構成するICチップ(集積回路素子)102と、これら水晶振動子101及びICチップ102を収容するパッケージ103とを備えている。
【0016】
パッケージ103は、水晶振動子101及びICチップ102を収容する凹部104dを有するパッケージ本体104と、このパッケージ本体104に収容された水晶振動子101及びICチップ102を気密封止するための蓋105とを備えている。
【0017】
パッケージ本体104は、例えばセラミック等の絶縁性材料からなり、底壁部104aと、この底壁部104aの周縁上に形成された第1側壁部104bと、この第1側壁部104bの周縁上に形成された第2側壁部104cとを備えている。底壁部104a、第1側壁部104b、及び第2側壁部104cは、一体的に形成されている。底壁部104a、第1側壁部104b、及び第2側壁部104cは、例えば、3層のセラミック基板を積層し、焼成することによって、一体的に形成されるようになっている。なお、パッケージ本体104を、単層のセラミック基板、あるいは4層以上のセラミック基板によって形成してもよい。
【0018】
パッケージ本体104では、底壁部104a、第1側壁部104b、及び第2側壁部104cによって、上面が開口された凹部104dが形成されている。また、第1側壁部104b及び第2側壁部104cによって、平面視で環状の段差部104eが形成されている。
【0019】
パッケージ本体104の凹部104dには、水晶振動子101及びICチップ102が収容されている。水晶振動子101は、パッケージ本体104の段差部104e(第1側壁部104bの上面)に片持ち支持の状態で搭載されている。ICチップ102は、パッケージ本体104の底面(底壁部104aの上面)に搭載されている。パッケージ本体104の底面には、複数の外部接続端子106が形成されている。パッケージ本体104の上面(第2側壁部104cの上面)には、図示しない封止部材としての金属製のシームリング、ろう材等を介して、平板状の蓋105が一体的に取り付けられている。これにより、パッケージ103が略直方体形状に形成されるとともに、凹部104dに収容された水晶振動子101及びICチップ102が気密封止される構造となっている。パッケージ103内は、例えば大気圧よりも減圧された真空状態(例えば、100Pa以下の圧力)とされている。なお、蓋105は、平板状の部材の周縁部に環状の壁部が設けられたキャップ状のものであってもよい。また、パッケージ103内を真空状態に減圧する代わりに、パッケージ103内に不活性ガスを封入してパッケージ103内を不活性雰囲気に保持するようにしてもよい。
【0020】
水晶振動子101は、後述するように、平面視で略矩形に形成されている(
図2~
図8参照)。水晶振動子101は、平面視での長辺方向の一端側においてのみ、パッケージ本体104の段差部104eに支持されている。水晶振動子101の長辺方向の他端側は、パッケージ本体104の段差部104eから離間して設けられている。水晶振動子101の底面に形成された一対の外部電極端子431,432(
図8参照)が、パッケージ本体104の段差部104eに設けられた一対の電極パッド(図示省略)に、それぞれ導電性接着剤107によって接続されている。一対の電極パッドは、
図1のW1方向に垂直な方向に沿って配列されている。この場合、一対の電極パッドは、
図1の紙面に垂直な方向の手前側と奥側とに所定の間隔を隔てて設けられている。また、一対の電極パッドは、
図1のW1方向の一端側の段差部104eにのみ設けられており、W1方向の他端側の段差部104eには設けられていない。
【0021】
ICチップ102は、例えば、フリップチップボンディングにより、パッケージ本体104の底面に形成された配線パターン(図示省略)に、複数のバンプ108を介して接続されている。ICチップ102は、図示しない配線を介して、パッケージ本体104の段差部104eに設けられた一対の電極パッド、及び、パッケージ本体104の底面に設けられた複数の外部接続端子106に接続されている。なお、ワイヤボンディングにより、ICチップ102をパッケージ本体104に搭載してもよい。
【0022】
次に、水晶発振器100に備えられる水晶振動子101について、
図2~
図8を参照して説明する。
【0023】
図2~
図8に示すように、水晶振動子101は、水晶振動板2と、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221を覆い、この第1励振電極221を気密封止する第1封止部材3と、水晶振動板2の他主面212に第1励振電極221と対になって形成された第2励振電極222を覆い、この第2励振電極222を気密封止する第2封止部材4とを備えている。この水晶振動子101では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されてサンドイッチ構造の振動子パッケージ12が構成される。
【0024】
そして、水晶振動板2を介して第1封止部材3と第2封止部材4とが接合されることで、振動子パッケージ12の内部空間13が形成され、この振動子パッケージ12の内部空間13に、水晶振動板2の両主面211,212に形成された第1励振電極221及び第2励振電極222を含む振動部22が気密封止されている。振動子パッケージ12内は、上述したパッケージ103内よりも真空度が高い高真空状態(例えば、0.1mPa程度の圧力)とされている。振動子パッケージ12は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、振動子パッケージ12では、キャスタレーションを形成せずに、貫通孔(第1~第3貫通孔)を用いて電極の導通を図っている。
【0025】
次に、水晶振動子101の各構成について説明する。なお、ここでは、水晶振動板2と第1封止部材3と第2封止部材4が接合されていない夫々単体として構成されている状態の各部材について説明を行う。
【0026】
水晶振動板2は、
図5、
図6に示すように、圧電材料である水晶からなり、その両主面(一主面211,他主面212)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。ここでは、水晶振動板2として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。
【0027】
図5、
図6に示す水晶振動板2では、水晶振動板2の両主面211,212が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板2の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板2の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、及び光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸及びZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸及びZ軸からそれぞれ35°15′傾いた軸に一致する。Y´軸方向及びZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。なお、水晶発振器100のパッケージ103に水晶振動子101が搭載された状態では、Z´軸方向は、
図1のW1方向に一致する。
【0028】
水晶振動板2の両主面211,212に一対の励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)が形成されている。水晶振動板2は、略矩形に形成された振動部22と、この振動部22の外周を取り囲む外枠部23と、振動部22と外枠部23とを連結する連結部(保持部)24とを有しており、振動部22と連結部24と外枠部23とが一体的に設けられた構成となっている。連結部24は、振動部22と外枠部23との間の1箇所のみに設けられており、連結部24が設けられていない箇所は空間(隙間)22bになっている。また、図示していないが、振動部22及び連結部24は、外枠部23よりも薄く形成されている。このような外枠部23と連結部24との厚みの違いにより、外枠部23と連結部24の圧電振動の固有振動数が異なることになり、連結部24の圧電振動に外枠部23が共鳴しにくくなる。
【0029】
連結部24は、振動部22の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部22aのみから、-Z´方向に向けて外枠部23まで延びている(突出している)。このように、振動部22の外周端部のうち、圧電振動の変位が比較的小さい角部22aに連結部24が設けられているので、連結部24を角部22a以外の部分(辺の中央部)に設けた場合に比べて、連結部24を介して圧電振動が外枠部23に漏れることを抑制することができ、より効率的に振動部22を圧電振動させることができる。また、連結部24を2つ以上設けた場合に比べて、振動部22に作用する応力を低減することができ、そのような応力に起因する圧電振動の周波数シフトを低減して圧電振動の安定性を向上させることができる。
【0030】
振動部22の一主面側に第1励振電極221が設けられ、振動部22の他主面側に第2励振電極222が設けられている。第1励振電極221,第2励振電極222には、外部電極端子431,432に接続するための第1引出電極223,第2引出電極224が接続されている。第1引出電極223は、第1励振電極221から引き出され、連結部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン27に繋がっている。第2引出電極224は、第2励振電極222から引き出され、連結部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン28に繋がっている。このように、連結部24の一主面側に第1引出電極223が形成され、連結部24の他主面側に第2引出電極224が形成されている。第1励振電極221及び第1引出電極223は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。第2励振電極222及び第2引出電極224は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0031】
水晶振動板2の両主面211,212には、水晶振動板2を第1封止部材3及び第2封止部材4に接合するための振動側封止部25が夫々設けられている。水晶振動板2の一主面211の振動側封止部25に、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成されている。また、水晶振動板2の他主面212の振動側封止部25に、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成されている。振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252は、上述した外枠部23に設けられており、平面視で環状に形成されており、外縁形状及び内縁形状が略矩形に形成されている。振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252は、水晶振動板2の両主面211,212の外周縁に近接するように設けられている。水晶振動板2の一対の第1励振電極221,第2励振電極222は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252とは電気的に接続されていない。
【0032】
振動側第1接合パターン251は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。振動側第2接合パターン252は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。つまり、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とは、同一構成からなり、複数の層が両主面211,212の振動側封止部25上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。このように、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とでは、下地PVD膜が単一の材料(Ti(もしくはCr))からなり、電極PVD膜が単一の材料(Au)からなり、下地PVD膜よりも電極PVD膜の方が厚い。また、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221と振動側第1接合パターン251とは同一厚みを有し、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との表面が同一金属からなり、水晶振動板2の他主面212に形成された第2励振電極222と振動側第2接合パターン252とは同一厚みを有し、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との表面が同一金属からなる。また、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252は、非Snパターンである。
【0033】
ここで、第1励振電極221、第1引出電極223及び振動側第1接合パターン251を同一の構成とすることができ、この場合、同一のプロセスで第1励振電極221、第1引出電極223及び振動側第1接合パターン251を一括して形成することができる。同様に、第2励振電極222、第2引出電極224及び振動側第2接合パターン252を同一の構成とすることができ、この場合、同一のプロセスで第2励振電極222、第2引出電極224及び振動側第2接合パターン252を一括して形成することができる。詳細には、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜や電極PVD膜を形成することで、一括して膜形成を行い、製造工数を減らすことができ、コスト低減に寄与することができる。
【0034】
また、水晶振動板2には、
図5、
図6に示すように、一主面211と他主面212との間を貫通する1つの貫通孔(第1貫通孔26)が形成されている。第1貫通孔26は、水晶振動板2の外枠部23に設けられている。第1貫通孔26は、第2封止部材4の接続用接合パターン453に繋がるものである。
【0035】
第1貫通孔26には、
図2、
図5、
図6に示すように、一主面211と他主面212とに形成された電極の導通を図るための貫通電極261が、第1貫通孔26の内壁面に沿って形成されている。そして、第1貫通孔26の中央部分は、一主面211と他主面212との間を貫通した中空状態の貫通部分262となる。第1貫通孔26の外周囲には、接続用接合パターン264,265が形成されている。接続用接合パターン264,265は、水晶振動板2の両主面211,212に設けられている。
【0036】
水晶振動板2の一主面211に形成された第1貫通孔26の接続用接合パターン264は、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。また、水晶振動板2の一主面211には、第1引出電極223に繋がる接続用接合パターン27が形成されており、この接続用接合パターン27も、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。接続用接合パターン27は、振動部22(第1励振電極221)を挟んで、接続用接合パターン264とはZ´軸方向の反対側に設けられている。つまり、振動部22のZ´軸方向の両側に、接続用接合パターン27,264が設けられている。
【0037】
同様に、水晶振動板2の他主面212に形成された第1貫通孔26の接続用接合パターン265は、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。また、水晶振動板2の他主面212には、第2引出電極224に繋がる接続用接合パターン28が形成されており、この接続用接合パターン28も、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。接続用接合パターン28は、振動部22(第2励振電極222)を挟んで、接続用接合パターン265とはZ´方向の反対側に設けられている。つまり、振動部22のZ´方向の両側に、接続用接合パターン28,265が設けられている。
【0038】
接続用接合パターン27,28,264,265は、振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252と同様の構成であり、振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン27,28,264,265は、水晶振動板2の両主面211,212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0039】
水晶振動子101では、第1貫通孔26及び接続用接合パターン27,28,264,265は、平面視で内部空間13の内方(接合材11の内周面の内側)に形成される。内部空間13は、平面視で振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252の内方(内側)に形成される。内部空間13の内方とは、後述する接合材11上を含まずに厳密に接合材11の内周面の内側のことをいう。第1貫通孔26及び接続用接合パターン27,28,264,265は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252とは電気的に接続されていない。
【0040】
第1封止部材3には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第1封止部材3は、
図3、
図4に示すように、水晶からなる略直方体の基板であり、この第1封止部材3の他主面312(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0041】
この第1封止部材3の他主面312には、水晶振動板2に接合するための封止側第1封止部32が設けられている。封止側第1封止部32には、水晶振動板2に接合するための封止側第1接合パターン321が形成されている。封止側第1接合パターン321は、平面視で環状に形成されており、外縁形状及び内縁形状が略矩形に形成されている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の他主面312の外周縁に近接するように設けられている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の封止側第1封止部32上の全ての位置において同一幅とされる。
【0042】
この封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。なお、下地PVD膜には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜にはAuが用いられている。また、封止側第1接合パターン321は、非Snパターンである。具体的には、封止側第1接合パターン321は、複数の層が他主面312の封止側第1封止部32上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。
【0043】
第1封止部材3の他主面312、つまり、水晶振動板2との対向面には、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27と接合される接続用接合パターン35,36が形成されている。接続用接合パターン35,36は、第1封止部材3の短辺方向(
図4のA1方向)に方向に沿って延びている。接続用接合パターン35,36は、第1封止部材3の長辺方向(
図4のA2方向)に所定の間隔を隔てて設けられており、接続用接合パターン35,36のA2方向の間隔は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27のZ´軸方向の間隔(
図5参照)と略同じになっている。接続用接合パターン35,36は、配線パターン33を介して互いに接続されている。配線パターン33は、接続用接合パターン35,36の間に設けられている。配線パターン33は、A2方向に沿って延びている。配線パターン33は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27とは接合されないようになっている。
【0044】
接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、封止側第1接合パターン321と同様の構成であり、封止側第1接合パターン321と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、第1封止部材3の他主面312上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0045】
水晶振動子101では、接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、平面視で内部空間13の内方(接合材11の内周面の内側)に形成される。接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、封止側第1接合パターン321とは電気的に接続されていない。なお、水晶振動子101では、
図4のA1方向は、
図5のX軸方向に一致し、
図4のA2方向は、
図5のZ´軸方向に一致する。
【0046】
第2封止部材4には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第2封止部材4は、
図7、
図8に示すように、水晶からなる略直方体の基板であり、この第2封止部材4の一主面411(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0047】
この第2封止部材4の一主面411には、水晶振動板2に接合するための封止側第2封止部42が設けられている。封止側第2封止部42には、水晶振動板2に接合するための封止側第2接合パターン421が形成されている。封止側第2接合パターン421は、平面視で環状に形成されており、外縁形状及び内縁形状が略矩形に形成されている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の一主面411の外周縁に近接するように設けられている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の封止側第2封止部42上の全ての位置において同一幅とされる。
【0048】
この封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。なお、下地PVD膜には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜にはAuが用いられている。また、封止側第2接合パターン421は、非Snパターンである。具体的には、封止側第2接合パターン421は、複数の層が他主面412の封止側第2封止部42上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。
【0049】
また、第2封止部材4の他主面412(水晶振動板2に面しない外方の主面)には、外部に電気的に接続する一対の外部電極端子431,432が設けられている。一対の外部電極端子431,432は、
図8に示すように、第2封止部材4の他主面412の平面視長辺方向に沿って延びるように形成されている。これら一対の外部電極端子431,432は、他主面412上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、これら下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0050】
第2封止部材4には、
図2、
図7、
図8に示すように、一主面411と他主面412との間を貫通する2つの貫通孔(第2貫通孔45,第3貫通孔46)が形成されている。第2貫通孔45は、外部電極端子431及び水晶振動板2の接続用接合パターン265に繋がるものである。第3貫通孔46は、外部電極端子432及び水晶振動板2の接続用接合パターン28に繋がるものである。
【0051】
第2貫通孔45,第3貫通孔46には、
図2、
図7、
図8に示すように、一主面411と他主面412とに形成された電極の導通を図るための貫通電極451,461が、第2貫通孔45,第3貫通孔46の内壁面夫々に沿って形成されている。そして、第2貫通孔45,第3貫通孔46の中央部分は、一主面411と他主面412との間を貫通した中空状態の貫通部分452,462となる。第2貫通孔45,第3貫通孔46夫々の外周囲には、接続用接合パターン453,463が形成されている。
【0052】
接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の一主面411に設けられており、水晶振動板2の接続用接合パターン265,28と接合される。接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の短辺方向(
図7のB1方向)に方向に沿って延びている。接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の長辺方向(
図7のB2方向)に所定の間隔を隔てて設けられており、接続用接合パターン453,463のB2方向の間隔は、水晶振動板2の接続用接合パターン265,28のZ´軸方向の間隔(
図6参照)と略同じになっている。
【0053】
接続用接合パターン453,463は、封止側第2接合パターン421と同様の構成であり、封止側第2接合パターン421と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の一主面411上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0054】
水晶振動子101では、第2貫通孔45,第3貫通孔46及び接続用接合パターン453,463は、平面視で内部空間13の内方に形成されている。第2貫通孔45,第3貫通孔46及び接続用接合パターン453,463は、封止側第2接合パターン421とは電気的に接続されていない。また、外部電極端子431,432も、封止側第2接合パターン421とは電気的に接続されていない。尚、水晶振動子101では、
図7のB1方向は、
図6のX軸方向に一致し、
図7のB2方向は、
図6のZ´軸方向に一致する。
【0055】
上記の水晶振動板2、第1封止部材3、及び第2封止部材4を含む水晶振動子101では、従来の技術のように別途接着剤等の接合専用材を用いずに、水晶振動板2と第1封止部材3とが振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421を重ね合わせた状態で拡散接合されて、
図2に示すサンドイッチ構造の振動子パッケージ12が製造される。これにより、振動子パッケージ12の内部空間13、つまり、振動部22の収容空間が気密封止される。
【0056】
そして、振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321自身が拡散接合後に生成される接合材11となり、この接合材11によって水晶振動板2と第1封止部材3とが接合される。振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421自身が拡散接合後に生成される接合材11となり、この接合材11によって水晶振動板2と第2封止部材4とが接合される。接合材11,11は、平面視で環状に形成されており、外縁形状及び内縁形状が略矩形に形成されている。接合材11,11は、平面視で略一致する位置に設けられている。つまり、接合材11,11の内周縁が略一致する位置に設けられ、接合材11,11の外周縁が略一致する位置に設けられている。なお、各接合パターンの接合を加圧した状態で行うことによって、接合材11,11の接合強度を向上させることが可能である。
【0057】
ここで、水晶振動板2の第1、第2励振電極221,222から外部電極端子431,432までの配線がいずれも、平面視で、封止部としての接合材11a,11bの内方に設けられている。接合材11,11は、平面視で、外縁形状及び内縁形状が略矩形に形成されており、振動子パッケージ12の外周縁に近接するように形成されている。これにより、水晶振動板2の振動部22のサイズを大きくすることが可能になっている。なお、接合材11,11の内周縁と、振動部22及び外枠部23の間の空間22bとの距離は、振動子パッケージ12の短辺側のほうが、長辺側よりも大きくなっている。
【0058】
また、この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。具体的には、水晶振動板2の接続用接合パターン264及び第1封止部材3の接続用接合パターン35が拡散接合される。水晶振動板2の接続用接合パターン27及び第1封止部材3の接続用接合パターン36が拡散接合される。また、水晶振動板2の接続用接合パターン265及び第2封止部材4の接続用接合パターン453が拡散接合される。水晶振動板2の接続用接合パターン28及び第2封止部材4の接続用接合パターン463が拡散接合される。
【0059】
そして、接続用接合パターン264及び接続用接合パターン35自身が拡散接合後に生成される接合材14となり、この接合材14によって水晶振動板2と第1封止部材3とが接合される。接続用接合パターン27及び接続用接合パターン36自身が拡散接合後に生成される接合材14となり、この接合材14によって水晶振動板2と第1封止部材3とが接合される。また、接続用接合パターン265及び接続用接合パターン453自身が拡散接合後に生成される接合材14となり、この接合材14によって水晶振動板2と第2封止部材4とが接合される。接続用接合パターン28及び接続用接合パターン463自身が拡散接合後に生成される接合材14となり、この接合材14によって水晶振動板2と第2封止部材4とが接合される。これらの接合材14は、貫通孔の貫通電極と接合材14とを導通させる役割、及び接合箇所を気密封止する役割を果たす。なお、接合材14は、平面視で封止部としての接合材11よりも内方に設けられるため、
図2では破線で示している。一方、配線パターン33は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27とは接合されないため、接合材14とはならず、第1封止部材3の他主面312上に配線として残る。
【0060】
そして、上述のようにして製造されたサンドイッチ構造の振動子パッケージ12では、第1封止部材3と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材4と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材3と水晶振動板2との間の接合材11aの厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材4と水晶振動板2との間の接合材11bの厚みが、1.00μm以下(具体的には、Au-Au接合では0.15μm~1.00μm)である。なお、比較として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm~20μmとなる。
【0061】
本実施の形態にかかる水晶発振器100は、上述のように構成されたサンドイッチ構造の水晶振動子101を備えている。サンドイッチ構造の水晶振動子101は、小型化や低背化(薄型化)に対応可能であることから、本実施の形態にかかる水晶発振器100も、小型化や低背化に対応可能になっている。
【0062】
そして、本実施の形態では、水晶発振器100において、サンドイッチ構造の水晶振動子101と、ICチップ102とが、パッケージ103内に気密封止されている。このように、水晶振動子101の振動部22を2重に気密封止することによって、水晶振動子101の振動部22への外部環境(例えば、温度や、気圧等)の変化の影響を最小限に抑えることができる。これにより、外部環境が変化したとしても、水晶発振器100の発振特性の変動を抑制することができ、また、水晶発振器100の発振特性にノイズ成分が発生することを抑制できる。したがって、水晶発振器100の小型化や低背化の要求を満たしつつ、水晶発振器100の信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、水晶振動子101は、平面視で略矩形に形成されており、この水晶振動子101が、平面視での長辺方向の一端側でのみ、パッケージ103の内壁(パッケージ本体104の段差部104e)に支持されている。一方、水晶振動子101の水晶振動板2は、振動部22が、水晶振動子101の平面視での長辺方向の他端側でのみ、外枠部23に連結される構成になっている。このように、パッケージ103における水晶振動子101の支持位置と、水晶振動板2における振動部22の連結位置とが、水晶振動子101の平面視での長辺方向の一端側と他端側とに分かれているので、パッケージ103から水晶振動板2の振動部22までの熱伝導経路を長く確保することができる。これにより、外部の温度が急激に変化したとしても、水晶振動板2の振動部22の急激な温度変化を抑制することができ、外部の温度変化に起因する水晶発振器100の発振特性の変動や、ノイズ成分の発生を抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、水晶振動子101及びICチップ102を収容するパッケージ103のパッケージ本体104が、セラミックによって形成されており、水晶振動子101の水晶振動板2、第1封止部材3、及び第2封止部材4が、水晶によって形成されている。このように、水晶振動子101の水晶振動板2等の熱伝導率が、パッケージ103のパッケージ本体104の熱伝導率よりも小さいので、水晶振動板2の振動部22の急激な温度変化を抑制することができ、外部の温度変化に起因する水晶発振器100の発振特性の変動を抑制することができる。
【0065】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0066】
上記実施形態では、水晶振動板2にATカット水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、ATカット水晶以外の水晶を用いてもよい。また、第1封止部材3及び第2封止部材4に水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばガラス等の絶縁性材料を用いてもよい。
【0067】
上記実施形態では、本発明を水晶発振器に適用した例について説明したが、これに限らず、本発明は、水晶振動子など他の振動デバイスにも適用可能である。本発明を水晶振動子に適用する場合、例えば、
図1において、ICチップ102等を省略し、パッケージ本体104の段差部104eに形成された一対の電極パッドと、パッケージ本体104の底面に形成された一対の外部接続端子106とを直接(ICチップ102を介さずに)接続する構成とすればよい。このような水晶振動子によれば、振動子パッケージ12及びパッケージ103によって、水晶振動板2の振動部22が2重に気密封止されるので、外部環境が変化したとしても、水晶振動子の圧電振動特性の変動を抑制することができ、また、水晶振動子の圧電振動特性にノイズ成分が発生することを抑制できる。
【0068】
上記実施形態では、水晶振動子101と、ICチップ102とが、パッケージ103の同一の空間に収容されている場合について説明した。これに限らず、水晶振動子101と、ICチップ102とを、パッケージ103の異なる空間に収容する構成としてもよい。例えば、
図9に示す水晶発振器100A(変形例1)のように、パッケージ本体104の一主面側に形成された凹部104dに水晶振動子101が収容され、パッケージ本体104の他主面側に形成された第2凹部104gにICチップ102が収容される構成としてもよい。
図9に示す水晶発振器100Aによれば、ICチップ102から放射(輻射)される熱や電磁波等が、パッケージ本体104によって遮断または低減される。このため、ICチップ102の熱や電磁波等の、水晶振動子101の振動部22への影響を抑制することができる。なお、
図9の例では、ICチップ102を第2凹部104gの底面に搭載しているが、ICチップ102を図示しない実装基板に搭載する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、水晶振動子101及びICチップ102を、パッケージ103内で上下に配置した場合について説明した。これに限らず、水晶振動子101及びICチップ102を、パッケージ103内で左右(あるいは前後)に配置する横置き配置の構成としてもよい。この場合、水晶振動子101及びICチップ102を、パッケージ103の同一の空間に配置してもよいし、あるいは、パッケージ103の異なる空間に配置してもよい。水晶振動子101及びICチップ102の配置を、上述した横置き配置にすることによって、実装基板から水晶振動子101の振動部22までの距離と、実装基板からICチップ102までの距離とを略同じ長さにすることが可能になる。言い換えれば、実装基板から水晶振動子101の振動部22までの熱伝導の経路長と、実装基板からICチップ102までの熱伝導の経路長とを略同じ長さにすることができ、これにより、水晶振動子101の振動部22と、ICチップ102との温度差に起因する周波数ドリフトを抑制することができる。
【0070】
また、例えば、
図10に示す水晶発振器100B(変形例2)のように、パッケージ本体104にシールド部材109を設ける構成としてもよい。
図10に示す水晶発振器100Bでは、シールド部材109は、パッケージ本体104の底壁部104aの内部に設けられている。この場合、底壁部104aを2層のセラミック基板からなる構成とし、セラミック基板の間にシールド部材109を挟み込む構成とすればよい。
図10に示す水晶発振器100Bによれば、シールド部材109によって、水晶発振器100Bの実装前後の特性変動を抑制することができる。また、シールド部材109によって、水晶発振器100Bの電磁シールド(EMC)の性能を向上させることができる。
【0071】
上記実施形態では、水晶振動子101及びICチップ102をパッケージ103に搭載されたが、これに限らず、ICチップ102の代わりに、センサ素子をパッケージ103に搭載してもよい。例えば、センサ素子としてサーミスタをパッケージ103に搭載した場合、温度センサ付きの水晶振動子として構成することが可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、平面視で略矩形に形成された水晶振動子101が、長辺方向の一端側でのみ、パッケージ103の内壁に支持されている場合について説明した。これに限らず、水晶振動子101を長辺方向の両端側においてそれぞれパッケージ103の内壁に支持する構成としてもよい。例えば、
図11~
図13に示す水晶振動子ユニット100C(変形例3)のように、水晶振動子101の4隅の領域(4箇所)において、水晶振動子101をパッケージ103の内壁に支持する構成としてもよい。このように、水晶振動子101を長辺方向の両端側で支持することによって、パッケージ103に対する水晶振動子101の支持の安定性を向上させることができる。これにより、水晶振動子ユニット100Cの耐衝撃性を向上させることができ、また、耐振動性(例えば、FCB接合時の超音波振動等に対する耐性)を向上させることができる。この場合、パッケージ103に対する水晶振動子101の支持形態として、4点支持の構成を採用することによって、水晶振動子ユニット100Cの耐衝撃性及び耐振動性をさらに向上させることができる。
【0073】
図11~
図13に示す水晶振動子ユニット100Cでは、導電性接着剤107によって、水晶振動子101が、パッケージ103の内壁としてのパッケージ本体104の底面104fに支持されている。導電性接着剤107としては、例えば、シリコーン系や、ポリイミド系、エポキシ系等の合成樹脂を用いることが可能であるが、これに限らず、例えば、ろう材や、半田等を用いてもよい。
【0074】
図11~
図13に示す水晶振動子ユニット100Cでは、上記実施形態の場合(
図1参照)とは異なり、パッケージ本体104の凹部104dに水晶振動子101のみが収容されており、ICチップは収容されていない。また、パッケージ本体104の凹部104dの底面104fに段差部が設けられておらず、底面104fが平坦に形成されている。パッケージ本体104の凹部104dの底面104fの4隅の領域には、電極パッド110a~110dがそれぞれ形成されている。4つの電極パッド110a~110dのうち、対角線上に配置された2つの(一対の)電極パッド110a,110bは、パッケージ本体104の内部に設けられた貫通孔(スルーホール)111a,111bを介して、パッケージ本体104の底面(裏面)に形成された外部接続端子106,106に電気的に接続されている。4つの電極パッド110a~110dのうち、残り2つの電極パッド110c,110dは、電気的な接続とは無関係のダミー端子(NC端子)として設けられている。なお、貫通孔の代わりに、パッケージ本体104の側面にキャスタレーションを設けることによって、電極パッド110a,110bと外部接続端子106,106とを電気的に接続してもよい。
【0075】
また、2つの電極パッド110a,110bは、導電性接着剤107,107を介して、第2封止部材4の他主面412に形成された外部電極端子431,432に電気的に接続されている。この場合、第2封止部材4の他主面412に形成された外部電極端子431,432は、上記実施形態の場合(
図8参照)とは異なり、
図13に示すように、第2封止部材4の他主面412の4隅の領域のうち、対角線上の2つの領域に設けられている。なお、第2封止部材4の他主面412の4隅の領域のうち、残り2つの領域にも、外部電極端子433,434が設けられているが、外部電極端子433,434は、電気的な接続とは無関係のダミー端子(NC端子)として設けられている。また、パッケージ本体104の外部接続端子106も同様に、パッケージ本体104の底面の4隅の領域に設けられており、対角線上の2つの外部接続端子106,106が電気的な接続に用いられ、残り2つの外部接続端子106,106は電気的な接続とは無関係のダミー端子(NC端子)になっている。ただし、ダミー端子を設けず、パッケージ本体104の外部接続端子106を2端子のみの構成としてもよい。
【0076】
これにより、水晶振動子101の振動部22の第1励振電極221と、パッケージ本体104の底面の外部接続端子106とが、第1引出電極223、配線パターン33、第1貫通孔26、第2貫通孔45、外部電極端子431、電極パッド110a、貫通孔111aを介して、電気的に接続されている。同様に、水晶振動子101の振動部22の第2励振電極222と、パッケージ本体104の底面の外部接続端子106とが、第2引出電極224、第3貫通孔46、外部電極端子432、電極パッド110b、貫通孔111bを介して、電気的に接続されている。
【0077】
また、水晶振動子ユニット100Cでは、
図11に示すように、導電性接着剤107が、水晶振動子101の底面(第2封止部材4の他主面412)から、水晶振動子101の側面を経由して、水晶振動子101の上面(第1封止部材3の一主面311)まで達するように配置されている。つまり、導電性接着剤107が、上塗りの状態で水晶振動子101に塗布されている。これにより、導電性接着剤107によって、パッケージ103に対する水晶振動子101の支持の安定性をさらに向上させることができ、水晶振動子ユニット100Cの耐衝撃性及び耐振動性をさらに向上させることができる。なお、導電性接着剤107を、水晶振動子101の上面に配置せずに、水晶振動子101の上面付近(例えば第1封止部材3の側面)まで達するように配置してもよく、この場合、水晶振動子ユニット100Cの低背化を図ることができる。
【0078】
なお、
図11~
図13に示す構成において、パッケージ本体104の凹部104dに水晶振動子101及びICチップを収容し、水晶発振器として構成してもよい。この場合、ダミー端子(NC端子)として設けられた上述したパッケージ本体104の外部接続端子106,106、電極パッド110c,110d、及び、第2封止部材4の外部電極端子433,434も利用して、水晶振動子101の第1、第2励振電極221,222や、ICチップへの電気的な接続を行えばよい。
【0079】
また、水晶振動子101の4隅の領域に導電性接着剤107が設けられていればよく、水晶振動子101の4つの角部(頂点)101aを避けて導電性接着剤107を配置してもよい。例えば、
図14に示す水晶振動子ユニット100D(変形例4)のように、導電性接着剤107を水晶振動子101の一対の長辺101b,101b上に設けてもよいし、あるいは、
図15に示す水晶振動子ユニット100E(変形例5)のように、導電性接着剤107を水晶振動子101の一対の短辺101c,101c上に設けてもよい。
【0080】
なお、
図11~
図15に示す変形例3~5では、水晶振動子101を4点支持によってパッケージ103の内壁に装着したが、これに限らず、水晶振動子101を長辺方向の両端側においてそれぞれパッケージ103の内壁に支持する構成として、水晶振動子101の4隅の領域のうち少なくとも2つの領域で、水晶振動子101をパッケージ103の内壁に支持する構成としてもよい。つまり、2点支持、3点支持、あるいは5点以上の支持によって、水晶振動子101をパッケージ103の内壁に装着してもよい。
【0081】
また、
図11~
図15に示す変形例3~5では、パッケージ本体104の凹部104dの略中央位置に水晶振動子101を配置したが、これに限らず、パッケージ本体104の凹部104dの略中央位置に対しオフセットするように、水晶振動子101を配置してもよい。
【0082】
以上では、パッケージ103内に気密封止される水晶振動子を、単体の水晶振動子としたが、これに限らず、水晶振動子にセンサ素子(例えばサーミスタ)が一体的に設けられたセンサ付き水晶振動子を、パッケージ103内に気密封止してもよいし、あるいは、水晶振動子に発振回路を構成するICチップが一体的に設けられた水晶発振器を、パッケージ103内に気密封止してもよい。
【0083】
この出願は、2016年11月16日に日本で出願された特願2016-223303号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、サンドイッチ構造の水晶振動子を備えた水晶振動デバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
100 水晶発振器
101 水晶振動子
12 振動子パッケージ
13 内部空間
2 水晶振動板
22 振動部
221 第1励振電極
222 第2励振電極
23 外枠部
24 連結部
3 第1封止部材
4 第2封止部材
102 ICチップ(回路素子)
103 パッケージ
104 パッケージ本体
105 蓋