(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】光イメージング装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 ZDM
(21)【出願番号】P 2020516026
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001921
(87)【国際公開番号】W WO2019207860
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2018083330
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 健士
(72)【発明者】
【氏名】白井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】土岐 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲
(72)【発明者】
【氏名】堀場 日明
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006468(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187150(WO,A1)
【文献】特開2018-029777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された信号に基づいて位相分布画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像に基づいて取得された複数の前記位相分布画像の画素領域の
複数の画像間における位相値の変化に基づいて、前記画素領域の位相値を補正するとともに、前記画素領域の位相値の補正を行った複数の前記位相分布画像に基づいて、1枚の前記位相分布画像を生成するように構成されている、光イメージング装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記画素領域の位相値の補正処理として、複数の前記位相分布画像の各画素の画像間における位相値が1周期分ずれることにより不連続となるラッピング領域の位相値を、連続的な変化となるように補正するアンラッピング処理を行うように構成されている、請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、複数の前記位相分布画像の撮像順または撮像と反対の順番に並べた複数の前記位相分布画像の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行うように構成されている、請求項1に記載の光イメージング装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、複数の前記位相分布画像において、位相値が不連続となる境界の近傍の画素に対して、アンラッピング処理を行うように構成されている、請求項2に記載の光イメージング装置。
【請求項5】
前記光源は、X線を照射するように構成されており、
前記検出器は、X線を検出するように構成されており、
前記光源と前記検出器との間に配置され、前記光源からX線が照射される第1格子と、前記第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子をさらに備え、
前記画像処理部は、複数の前記位相分布画像を取得するとともに、複数の前記位相分布画像の各画素の画像間における位相値の変化に基づいて、複数の前記位相分布画像の画像間における位相値のアンラッピング処理を行い、アンラッピング処理を行った複数の前記位相分布画像を積算または平均化することにより、1枚の前記位相分布画像を生成するように構成されている、請求項2に記載の光イメージング装置。
【請求項6】
複数の前記格子のいずれかを移動させる格子移動機構をさらに備え、
前記画像処理部は、複数の前記格子のいずれかを移動させながら撮像された複数の前記位相分布画像に基づいて、1枚の前記位相分布画像を生成するように構成されている、請求項5に記載の光イメージング装置。
【請求項7】
複数の前記格子は、前記光源と前記第1格子との間に配置された第3格子をさらに含んでいる、請求項5に記載の光イメージング装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像をフーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理を行うことにより、複数の前記位相分布画像を生成するように構成されている、請求項5に記載の光イメージング装置。
【請求項9】
それぞれ異なるタイミングで撮像された画像に基づいて取得された複数の位相分布画像を取得するステップと、
複数の前記位相分布画像の画素領域の
複数の画像間における位相値の変化に基づいて、前記画素領域の位相値を補正する処理を行うステップと、
前記画素領域の位相値の補正を行った複数の前記位相分布画像に基づいて、1枚の前記位相分布画像を生成するステップと、を含む、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光イメージング装置および画像処理方法に関し、特に、位相分布画像を生成する光イメージング装置および画像処理手法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相分布画像を生成する光イメージング装置および画像処理手法が知られている。このような光イメージング装置および画像処理方法は、たとえば、国際公開第2014/030115号に開示されている。
【0003】
国際公開第2014/030115号に開示されているX線位相差撮像システムは、タルボ・ロー干渉計によってX線撮像を行い、縞走査法によって位相分布画像を生成するように構成されている。
【0004】
ここで、タルボ・ロー干渉計では、マルチスリットと、位相格子と、吸収格子とを用いて撮像が行われる。具体的には、複数の格子のうちいずれか1つを、格子のパターンと直交する方向に並進させながら複数回撮像する。また、縞走査法とは、格子を並進移動させながら複数回撮像されたX線画像の各画素の画素値の強度変化に基づいて、位相コントラスト画像を生成する手法である。具体的には、縞走査法は、X線画像に写るモアレ縞の各画素の画素値の強度変化が、格子の周期の関数の各位相におけるデータであるとして、関数の波形を決定し、波形が決定された関数に基づいて、位相分布画像を生成する手法である。縞走査法で生成される位相分布画像は、位相微分像が含まれる。また、縞走査法では、吸収像および暗視野像を含む画像を生成することができる。位相微分像とは、X線が被写体を通過した際に発生するX線の位相のずれをもとに画像化した像である。また、吸収像とは、X線が被写体を通過した際に生じるX線の減衰に基づいて画像化した像である。また、暗視野像とは、物体の小角散乱に基づくVisibilityの変化によって得られる、Visibility像のことである。また、暗視野像は、小角散乱像とも呼ばれる。「Visibility」とは、鮮明度のことである。
【0005】
国際公開第2014/030115号には開示されていないが、縞走査法を用いて位相分布画像を生成する際、生成する位相分布画像のノイズを低減させるためには、X線を照射する時間を長くする必要がある。しかしながら、X線の照射時間を長くすると、X線源などから発せられる熱などに起因して格子が熱変動することにより、各格子の相対位置に位置ずれが生じる。各格子の相対位置に位置ずれが生じると、モアレ縞の位相が変化するため、得られる位相分布画像にアーチファクトが生じる。
【0006】
このようなアーチファクトの発生を抑制するためには、X線の照射時間を短時間にして撮像した複数の位相分布画像を合成することにより位相分布画像を生成する手法が考えられる。この手法では、X線の照射時間が短いため、各位相分布画像を生成する際の格子の熱変動の影響を極力抑制することが可能となる。したがって、格子の熱変動に起因してモアレ縞の位相が変化することを抑制することができる。また、複数の位相分布画像を積算または平均化するため、最終的に得られる位相分布画像のノイズを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなX線の照射時間を短時間にして撮像した複数の位相分布画像を合成して1枚の位相分布画像を取得する方法であっても、各位相分布画像間においては、格子の熱変動の影響を抑制することは難しい。すなわち、X線の照射時間を短時間にして撮像した複数の位相分布画像を合成して1枚の位相分布画像を取得する方法では、位相分布画像の個々の撮像時間を短縮することが可能であるので、個々の位相分布画像において、格子の熱変動に起因するアーチファクトが発生することを抑制することができる。しかしながら、複数の位相分布画像の撮像以外の時間においても、格子の熱変動は絶えず生じている。そのため、格子の熱変動に起因して、各位相分布画像間の同一画素領域における位相値が変化するという不都合が生じる。したがって、各位相分布画像間の同一画素領域における位相値が変化した状態の複数の位相分布画像に基づいて1枚の位相分布画像を生成すると、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に基づくアーチファクトが発生し、位相分布画像の画質が劣化するという問題点がある。なお、国際公開第2014/030115号に開示されているタルボ・ロー干渉計だけでなく、位相分布から複数の画像を生成し、複数の画像を合成して1枚の位相分布画像を生成する装置についても同様の問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数の位相分布画像に基づいて1枚の位相分布画像を生成する際に、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することが可能な光イメージング装置および画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における光イメージング装置は、被写体に光を照射する光源と、光源から照射された光を検出する検出器と、検出器によって検出された信号に基づいて位相分布画像を生成する画像処理部と、を備え、画像処理部は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像に基づいて取得された複数の位相分布画像の画素領域の複数の画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域の位相値を補正するとともに、画素領域の位相値の補正を行った複数の位相分布画像に基づいて、1枚の位相分布画像を生成するように構成されている。
【0011】
この発明の第1の局面における光イメージング装置では、上記のように、複数の位相分布画像の画素領域の複数の画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域の位相値を補正した複数の位相分布画像により、1枚の位相分布画像を生成する画像処理部を備える。これにより、各位相分布画像の画素領域間において、位相値の変化が生じている場合でも、位相値を補正することにより複数の位相分布画像の画素領域間における位相値の変化を抑制することができる。その結果、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面における光イメージング装置において、好ましくは、画像処理部は、画素領域の位相値の補正処理として、複数の位相分布画像の各画素の画像間における位相値が1周期分ずれることにより不連続となるラッピング領域の位相値を、連続的な変化となるように補正するアンラッピング処理を行うように構成されている。このように構成すれば、各画素の画像間における位相値をアンラッピング処理することにより、各画像間におけるラッピング領域の位置を揃えることができる。したがって、複数の位相分布画像に基づいて1枚の位相分布画像を生成する際に、ラッピング領域の位置がばらついた各位相分布画像を合成することにより、ラッピング領域近傍の位相値が平滑化されてしまうことを抑制することができる。その結果、ラッピング領域における位相値が平滑化されることに起因して、生成された位相分布画像にアーチファクトが生じることを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面における光イメージング装置において、好ましくは、画像処理部は、複数の位相分布画像の撮像順または撮像と反対の順番に並べた複数の位相分布画像の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行うように構成されている。ここで、格子の熱変動は、時間の経過とともに、特定の方向に生じる。したがって、上記のように構成すれば、各画素の画像間における位相値の変化を時系列に取得することができる。その結果、時系列の位相値の変化を取得することが可能となるので、各画像において時間経過に伴って特定の方向に生じる格子の熱変動の影響による位相値の変化を正確に把握することが可能となり、正確なアンラッピング処理を行うことができる。
【0014】
上記画像処理部が画素領域の位相値の補正処理としてアンラッピング処理を行う構成において、好ましくは、画像処理部は、複数の位相分布画像において、位相値が不連続となる境界の近傍の画素に対して、アンラッピング処理を行うように構成されている。このように構成すれば、複数の位相分布画像に含まれる画素のうち、アンラッピング処理が不必要な領域に対してアンラッピング処理を行うことを抑制することができる。その結果、アンラッピング処理を行う領域の数を低減することが可能となるので、画像処理部の負荷を軽減することができる。なお、位相値が不連続となる境界の近傍の画素とは、位相値が不連続となる境界の位置にある画素そのものと、位相値が不連続となる境界の位置に隣接する画素とを含む。
【0015】
上記画像処理部が画素領域の位相値の補正処理としてアンラッピング処理を行う構成において、好ましくは、光源は、X線を照射するように構成されており、検出器は、X線を検出するように構成されており、光源と検出器との間に配置され、光源からX線が照射される第1格子と、第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子をさらに備え、画像処理部は、複数の位相分布画像を取得するとともに、複数の位相分布画像の各画素の画像間における位相値の変化に基づいて、複数の位相分布画像の画像間における位相値のアンラッピング処理を行い、アンラッピング処理を行った複数の位相分布画像を積算または平均化することにより、1枚の位相分布画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、ラッピング領域の位置がばらついた複数の位相分布画像に対してアンラッピング処理を行うことにより、各位相分布画像におけるラッピング領域の位置を揃えることが可能となるので、複数の位相分布画像を積算または平均化する際に、複数の位相分布画像のラッピング領域近傍の各画素間において、位相値が平滑化されることを抑制することができる。その結果、位相分布画像においても、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、複数の格子のいずれかを移動させる格子移動機構をさらに備え、画像処理部は、複数の格子のいずれかを移動させながら撮像された複数の位相分布画像に基づいて、1枚の位相分布画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、複数の格子を移動させながら撮像を行う縞走査法においても、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0017】
上記画像処理部がアンラッピング処理を行った複数の位相分布画像を積算または平均化することにより1枚の位相分布画像を生成する構成において、好ましくは、複数の格子は、光源と第1格子との間に配置された第3格子をさらに含んでいる。このように構成すれば、第3格子によって光源から照射されるX線の可干渉性を高めることができる。その結果、光源の焦点径に依存することなく第1格子の自己像を形成させることが可能となるので、光源の選択の自由度を向上させることができる。
【0018】
上記画像処理部がアンラッピング処理を行った複数の位相分布画像を積算または平均化することにより1枚の位相分布画像を生成する構成において、好ましくは、画像処理部は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像をフーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理を行うことにより、複数の位相分布画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、フーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理によって位相分布画像を生成するフーリエ変換法においても、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0019】
この発明の第2の局面における画像処理方法は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像に基づいて取得された複数の位相分布画像を取得するステップと、複数の位相分布画像の画素領域の複数の画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域の位相値を補正する処理を行うステップと、画素領域の位相値の補正を行った複数の位相分布画像に基づいて、1枚の位相分布画像を生成するステップと、を含む。
【0020】
この発明の第2の局面における画像処理方法は、上記ように、複数の位相分布画像の画素領域の複数の画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域の位相値を補正する処理を行うステップと、画素領域の位相値の補正を行った複数の位相分布画像に基づいて、1枚の位相分布画像を生成するステップと、を含む。このように構成すれば、上記第1の局面における光イメージング装置と同様に、複数の位相分布画像に基づいて1枚の位相分布画像を生成する際に、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に基づくアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することが可能な画像処理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、複数の位相分布画像に基づいて1枚の位相分布画像を生成する際に、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に基づくアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することが可能な光イメージング装置および画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態による光イメージング装置の全体構成を示した模式図である。
【
図2】第1実施形態による格子位置調整機構の構成を説明するための模式図である。
【
図3】第1実施形態による画像処理部が位相分布像を含む位相コントラスト画像を生成する処理を説明するための模式図である。
【
図4】複数の位相分布像におけるラッピング領域の位置の変化を説明するための模式図である。
【
図5】アンラッピング処理を行う前のグラフの模式図およびアンラッピング処理を行った後のグラフの模式図である。
【
図6】第1実施形態による光イメージング装置が位相分布像を積算する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1比較例による各位相分布像のラッピング領域の位置の変化および複数の位相分布像を積算することによる位相値の平滑化を説明するための模式図である。
【
図8】第1実施形態および第1比較例による1枚の位相分布像における位相値の変化および積算された位相分布像における位相値の変化を説明するための模式図である。
【
図9】第1比較例による位相分布像の模式図である。
【
図10】第1実施形態による位相分布像の模式図である。
【
図11】第2比較例によるアンラッピング処理を説明するための模式図である。
【
図12】第2実施形態による画像処理部が位相分布像を含む位相コントラスト画像を生成する処理を説明するための模式図である。
【
図13】第2実施形態による光イメージング装置が位相分布像を積算する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図14】第3実施形態による光イメージング装置の全体構成を示した模式図である。
【
図15】第1実施形態の変形例による光イメージング装置の全体構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照して、本発明の第1実施形態による光イメージング装置100の構成、および光イメージング装置100が積算位相分布像14(
図3参照)を生成する方法について説明する。
【0025】
(光イメージング装置の構成)
まず、
図1を参照して、第1実施形態による光イメージング装置100の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、光イメージング装置100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体Qの内部を画像化する装置である。光イメージング装置100は、たとえば、非破壊検査用途では、被写体Qの内部の画像化に用いることが可能である。
【0027】
図1は、光イメージング装置100をX方向から見た図である。
図1に示すように、光イメージング装置100は、X線源1と、第1格子2と、第2格子3と、検出器4と、画像処理部5と、制御部6と、記憶部7と、格子移動機構8とを備えている。なお、X線源1は、請求の範囲の「光源」の一例である。また、本明細書において、X線源1から第1格子2に向かう方向をZ2方向、その逆方向の方向をZ1方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をY方向とし、上方向をY1方向、下方向をY2方向とする。また、Z方向と直交する面内の左右方向をX方向とし、
図1の紙面の奥に向かう方向をX2方向、
図1の紙面の手前側に向かう方向をX1方向とする。
【0028】
X線源1は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させる。X線源1は、発生させたX線をZ2方向に向けて照射するように構成されている。
【0029】
第1格子2は、一定方向に所定の周期(ピッチ)p1で配列される複数のスリット2aおよび、X線位相変化部2bを有している。各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。
図1に示す例では、各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、Y方向に所定の周期(ピッチ)p1で配列され、X方向に延びるように形成されている。第1格子2は、いわゆる位相格子である。
【0030】
第1格子2は、X線源1と、第2格子3との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。第1格子2は、タルボ効果により、第1格子2の自己像(図示せず)を形成するために設けられている。可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像)が形成される。これをタルボ効果という。
【0031】
第2格子3は、一定方向に所定の周期(ピッチ)p2で配列される複数のX線透過部3aおよびX線吸収部3bを有する。各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。
図1に示す例では、各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、Y方向に所定の周期(ピッチ)p2で配列され、X方向に延びるように形成されている。第2格子3は、いわゆる、吸収格子である。第1格子2は、X線位相変化部2bとスリット2aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる機能を有する。第2格子3は、X線吸収部3bによりX線の一部を遮蔽する機能を有する。
【0032】
第2格子3は、第1格子2と検出器4との間に配置されており、第1格子2を通過したX線が照射される。また、第2格子3は、第1格子2からタルボ距離離れた位置に配置される。第2格子3は、第1格子2の自己像と干渉して、検出器4の検出表面上にモアレ縞mf(
図3参照)を形成する。
【0033】
検出器4は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器4は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器4は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器4は、取得した画像信号を、画像処理部5に出力するように構成されている。
【0034】
画像処理部5は、検出器4から出力された画像信号に基づいて、積算位相分布像14(
図11参照)を生成するように構成されている。画像処理部5は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)または画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。また、画像処理部5は、検出器4から出力された画像信号に基づいて、平均値像11(
図3参照)およびビジビリティ像15(
図3参照)を生成するように構成されている。
【0035】
制御部6は、格子移動機構8を制御して、第1格子2を移動させるように構成されている。制御部6は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0036】
記憶部7は、画像処理部5が生成したX線画像10、平均値像11、積算位相分布像14、ビジビリティ像15などを保存するように構成されている。記憶部7は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性のメモリなどを含む。
【0037】
格子移動機構8は、制御部6の制御の下、第1格子2を移動可能に構成されている。また、格子移動機構8は、第1格子2を保持している。
【0038】
(格子移動機構)
図2に示すように、格子移動機構8は、X方向、Y方向、Z方向、Z方向の軸線周りの回転方向Rz、X方向の軸線周りの回転方向Rx、および、Y方向の軸線周りの回転方向Ryに第1格子2を移動可能に構成されている。具体的には、格子移動機構8は、X方向直動機構80と、Y方向直動機構81と、Z方向直動機構82と、直動機構接続部83と、ステージ支持部駆動部84と、ステージ支持部85と、ステージ駆動部86と、ステージ87とを含む。X方向直動機構80は、X方向に移動可能に構成されている。X方向直動機構80は、たとえば、モータなどを含む。Y方向直動機構81は、Y方向に移動可能に構成されている。Y方向直動機構81は、たとえば、モータなどを含む。Z方向直動機構82は、Z方向に移動可能に構成されている。Z方向直動機構82は、たとえば、モータなどを含む。
【0039】
格子移動機構8は、X方向直動機構80の動作により、第1格子2をX方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構8は、Y方向直動機構81の動作により、第1格子2をY方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構8は、Z方向直動機構82の動作により、第1格子2をZ方向に移動させるように構成されている。
【0040】
ステージ支持部85は、ステージ87を下方(Y1方向)から支持している。ステージ駆動部86は、ステージ87をX方向に往復移動させるように構成されている。ステージ87は、底部がステージ支持部85に向けて凸曲面状に形成されており、X方向に往復移動されることにより、Z方向の軸線周り(Rz方向)に回動するように構成されている。また、ステージ支持部駆動部84は、ステージ支持部85をZ方向に往復移動させるように構成されている。また、ステージ支持部85は底部が直動機構接続部83に向けて凸曲面状に形成されており、Z方向に往復移動されることにより、X方向の軸線周り(Rx方向)に回動するように構成されている。また、直動機構接続部83は、Y方向の軸線周り(Ry方向)に回動可能にX方向直動機構80に設けられている。したがって、格子移動機構8は、格子をY方向の中心軸線周りに回動させることができる。
【0041】
次に、
図3~
図5を参照して、第1実施形態による光イメージング装置100が積算平均値像12(
図3参照)、積算位相分布像14(
図3参照)、および積算ビジビリティ像16(
図3参照)を生成する構成について説明する。
【0042】
(複数の位相分布像の取得)
まず、
図3を参照して、第1実施形態による光イメージング装置100が取得する画像10および生成する複数の平均値像11、位相分布像13およびビジビリティ像15について説明する。なお、平均値像11、位相分布像13およびビジビリティ像15とは、それぞれ、縞走査法において第2格子3を並進移動させながら取得した複数の画像10における各画素の画素値の変化に対して、サイン関数でフィッティングを行った関数の平均値と、位相値と、ビジビリティ値とをそれぞれマッピングして得られる像である。
【0043】
図3に示す例は、格子移動機構8によって、第2格子3を4回並進させて撮像した4枚の画像10(画像10a、画像10b、画像10cおよび画像10dを含む画像セット)に基づいて、平均値像11、位相分布像13およびビジビリティ像15を生成する例である。第1実施形態では、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像10(画像10a~画像10d)の各セットに基づいて、複数の平均値像11、位相分布像13およびビジビリティ像15を取得する。また、画像処理部5は、複数の位相分布像13を積算することにより、積算位相分布像14を生成する。また、画像処理部5は、複数の平均値像11およびビジビリティ像15をそれぞれ積算することにより、積算平均値像12および積算ビジビリティ像16を生成する。なお、位相分布像13および積算位相分布像14は、モアレ縞mfの位相値の分布を示した画像である。位相分布像13および積算位相分布像14の位相値の取り得る範囲は-π~πであり、位相値は、その範囲を繰り返す周期的な値である。したがって、位相分布像13(積算位相分布像14)では、位相値が1周期分ずれることにより不連続となるラッピング領域が生じる。なお、
図3に示す例では、位相値の範囲が-π~πであるため、ラッピング領域では、位相値の符号が反転する。
【0044】
第2格子3に熱変動が生じた場合、各位相分布像13におけるラッピング領域の位置がずれる。ラッピング領域の位置がずれた複数の位相分布像13をそのまま積算すると、ラッピング領域における位相値が平滑化され、積算位相分布像14にアーチファクトが生じる。そのため、第1実施形態では、画像処理部5は、取得された複数の位相分布像13の画素領域Ra(
図4参照)の画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域Raの位相値を補正するとともに、画素領域Raの位相値の補正を行った複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。具体的には、画像処理部5は、複数の位相分布像13を取得するとともに、複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいて、複数の位相分布像13の画像間における位相値のアンラッピング処理を行い、アンラッピング処理を行った複数の位相分布像13を積算することにより、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。なお、位相分布像13および積算位相分布像14は、請求の範囲の「位相分布画像」の一例である。また、画像間における位相値の補正処理およびアンラッピング処理の詳しい説明は後述する。
【0045】
また、第1実施形態では、画像処理部5は、第2格子3を移動させながら撮像された複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。すなわち、画像処理部5は、いわゆる縞走査法によって複数の位相分布像13を生成する。
【0046】
ここで、縞走査法によって位相分布像13を取得する場合、X線源1などからの発熱などによる格子の熱変動が生じると、複数の画像10(画像10a~画像10d)の画像間において、モアレ縞mfの位相がずれる。複数の画像10の画像間におけるモアレ縞mfの位相値がずれた場合、位相分布像13にアーチファクトが生じるため、位相分布像13の画質が劣化する。位相分布像13の画質が劣化すると、積算位相分布像14の画質も劣化する。格子の熱変動は時間とともに蓄積するため、コントラストが高い画像を得るために撮像時間を長くすると、熱変動に起因するアーチファクトの影響が大きくなる。そこで、第1実施形態では、X線源1からの発熱などによる格子の熱変動の影響を極力抑制するために、各画像10の撮像時間(X線の露光時間)を短くして撮像している。各画像10の撮像時間が短いので、各画像10のコントラストは低下する。したがって、画像10に基づいて生成される各位相分布像13も、コントラストが低い画像となっている。
【0047】
第1実施形態では、
図3に示すように、コントラストが低い複数の位相分布像13を積算することにより、コントラストが高い1枚の積算位相分布像14を取得する。各位相分布像13の画質が劣化することを抑制することが可能となるので、積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することができる。しかしながら、格子に熱変動が生じると、各位相分布像13の画像間における位相値の分布が変化する。
【0048】
図4は、複数の位相分布像13の模式図および各位相分布像13の画素領域Raを拡大した画像17(位相分布像13の一部分)の模式図である。
図4に示す例は、第2格子3の熱変動に起因して、モアレ縞mfの位相が変化することにより、各位相分布像13における位相値の分布が変化する例である。また、
図4に示す例は、各位相分布像13の画素領域Raに含まれる画素のうち、画素Gに着目して位相値の分布の変化を示した例である。なお、
図4に示す例は、ハッチングの有無により、位相値の違いを表している。すなわち、ハッチングを付した領域は、ハッチングを付していない領域よりも位相値が低い領域である。また、ハッチングを付していない領域は、ハッチングを付した領域よりも位相値が高い領域である。また、ハッチングを付した領域とハッチングを付していない領域との境界pbでは、位相値の符号が反転し、不連続となる。このような領域を、ラッピング領域という。
【0049】
第1位相分布像13aでは、画素Gの位置よりもラッピング領域の位置が左側にあり、画素Gは、位相値が高い領域(ハッチングを付していない領域)に位置している。第2位相分布像13bでは、ラッピング領域の位置と画素Gの位置とがほぼ一致している。また、第N位相分布像13cでは、ラッピング領域の位置が画素Gの位置よりも右側にあり、画素Gは位相値が低い領域に位置している。すなわち、
図4に示す例は、時間の経過に伴って、第2格子3の熱変動によって、第1X線画像セットから第NX線画像セットまでの間に、モアレ縞mfの位相が変化することにより、位相分布像13におけるラッピング領域が徐々に画像の右側移動する例である。
【0050】
図4に示す複数の位相分布像13を積算した場合、画素領域Raにおける位相値が平滑化され、ラッピング領域における位相値の変化がなだらかになる。ラッピング領域における位相値の変化がなだらかになると、積算位相分布像14にアーチファクトが生じる。また、被写体Qと背景との境界部分や、被写体Qの内部構造の境界部分などにおいても、位相値が急激に変化するため、各画像間の位相値が変化すると、境界部分における位相値の変化がなだらかになるため、被写体Qのエッジが不鮮明になるなど、積算位相分布像14の画質が劣化する原因となる。そこで、第1実施形態では、各画素領域Raの位相値を補正するように構成されている。
【0051】
(位相分布像の補正処理)
第1実施形態では、画像処理部5は、各位相分布像13の画素Gの位相値の変化に基づいて画素領域Raにおける画素の位相値の補正を行うように構成されている。具体的には、画像処理部5は、画素領域Raの位相値の補正処理として、複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値が1周期分ずれることにより不連続となるラッピング領域の位相値を連続的な変化となるように補正するアンラッピング処理を行うように構成されている。なお、
図4に示す例では、便宜上、ラッピング領域の一部分を画素領域Raとして図示しているが、画素領域Raは、位相値の符号が反転する領域であり、位相分布像13において複数カ所存在する。また、画像処理部5は、画素領域Ra以外の領域においても、位相値の補正処理を行う。すなわち、画像処理部5は、位相分布像13の各画素において、画像間で位相値のラッピングが生じているか否かを判定し、画像間においてラッピングが生じている画素では、アンラッピング処理を行う。
【0052】
図5は、画像処理部5におけるアンラッピング処理を行う前のグラフ18およびアンラッピング処理を行った後のグラフ20の模式図である。グラフ18およびグラフ20は、横軸が画像No(N)であり、縦軸が位相値(rad)である。なお、横軸である画素Noの単位(N)は、位相分布像13の撮像順であり、0(ゼロ)を含む整数値である。本実施形態では、最初に撮像した画像の撮像順を0番目とする。また、グラフ18およびグラフ20に示すプロットpvは、各位相分布像13の画素Gの位相値を示している。
【0053】
図5のグラフ18に示すように、画像処理部5は、複数の位相分布像13の画素Gの位相値を、位相分布像13が撮像された順にプロットする。熱変動に起因するモアレ縞mfの位相が変化しているため、グラフ18に示す各画素Gの位相値は、楕円Rbで囲った部分において、ラッピング領域が生じている。
【0054】
グラフ18に示すように、各位相分布像13の画素領域Raにおける画素の位相値にラッピング領域が生じた状態で各位相値を積算すると、各画素領域Raの位相値は、線分19で示す位相値(各画素Gの位相値の平均値)となり、各画素領域Raの位相値の値がそれぞれ大幅に変動する。位相値の境界pbにおけるこのような大幅な変動は、積算位相分布像14の画質の劣化の原因となる。
【0055】
そこで、第1実施形態では、グラフ20に示すように、画像処理部5は、複数の位相分布像13の撮像順に並べた複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行うように構成されている。本実施形態において、アンラッピング処理とは、各画素Gの位相値を、ラッピング領域の前後において連続的になるように、ラッピング領域以降の各画素Gの位相値を補正する処理である。アンラッピング処理を行った後のグラフ20では、楕円Rcで囲った部分において、位相分布像13の画素Gの位相値が連続的になり、ラッピング領域がなくなっている。このように位相値を補正した後の各位相分布像13を積算した場合、各画素領域Raの位相値は、線分21で示す位相値(各画素Gの位相値の平均値)となり、各画素領域Raの位相値の値はそれほど変動しない。したがって、積算位相分布像14の画質の劣化を抑制することができる。
【0056】
また、画像処理部5は、複数の位相分布像13において、位相値が不連続となる境界pbの近傍の画素に対して、アンラッピング処理を行うように構成されている。具体的には、画像処理部5は、画素領域Raのうち、第1位相分布像13aから第N位相分布像13cにおいて、位相値の境界pbが移動する範囲mrに含まれる画素に対して、アンラッピング処理を行うように構成されている。
図5に示す例は、位相値が不連続となる境界pbの近傍の画素として、各位相分布像13の画素Gに対してアンラッピング処理を行う例である。すなわち、画像処理部5は、第1位相分布像13a~第N位相分布像13cまでの各画像の同一画素Gに対して、アンラッピング処理を行う。
【0057】
次に、
図6を参照して、第1実施形態による光イメージング装置100による積算位相分布像14を生成する処理の流れについて説明する。
【0058】
ステップS1において、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像10に基づいて、複数の位相分布像13を取得する。なお、ステップS1において、画像処理部5は、縞走査法によって複数の位相分布像13を取得する。その後、処理は、ステップS2へ進む。
【0059】
ステップS2において、画像処理部5は、複数の位相分布像13の画素領域Raの画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域Raの位相値を補正する処理を行う。その後、処理は、ステップS3へ進む。
【0060】
ステップS3において、画像処理部5は、画素領域Raの位相値の補正を行った複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成し、処理を終了する。
【0061】
(第1比較例)
ここで、
図7~
図10を参照して、複数の位相分布像13をそのまま積算することによって1枚の位相分布像13を生成する第1比較例による光イメージング装置と、本実施形態における光イメージング装置100とについて説明する。
【0062】
図7は、複数の位相分布像13の模式図および複数の位相分布像13を積算した積算位相分布像22の模式図および各画像の画素領域Raを拡大した拡大画像17の模式図である。
【0063】
積算位相分布像22は、複数の位相分布像13を積算した画像である。各位相分布像13においてラッピング領域の位置がそれぞれわずかにずれているので、ラッピング領域における位相値の変化がなだらかになる。したがって、
図7に示すように、積算位相分布像22のラッピング領域では、第1位相分布像13位相値がグラデーション状に変化する。
【0064】
図8は、積算位相分布像14のうち、ラッピング領域の位相値の変化を示すグラフ23の模式図、第2位相分布像13bの画素領域Raのうち、領域Rdにおける位相値の変化を示すグラフ24の模式図および積算位相分布像22の画素領域Raのうち、領域Reにおける位相値の変化を示すグラフ25の模式図である。
【0065】
グラフ24に示すように、第2位相分布像13bのラッピング領域では、位相値が反転する。一方、グラフ25に示すように、積算位相分布像22のラッピング領域では、位相値が段階的に変化し、グラフ24のラッピング領域と比較して、位相値の変化がなだらかになっている。このような積算位相分布像22では、
図9に示すように、ラッピング領域の位置において縦縞のアーチファクト26が生じる。
【0066】
本実施形態では、各画素領域Raの位相値に対してアンラッピング処理を行ってから各位相分布像13を積算するため、積算後の積算位相分布像14のラッピング領域における位相値は、グラフ23に示すように、反転する。したがって、
図10に示すように、積算位相分布像14では、アーチファクト26が生じることを抑制することができる。
【0067】
(第2比較例)
次に、
図11を参照して、各位相分布像13のそれぞれに対してアンラッピング処理を行った後に積算する第2比較例について説明する。モアレ縞mfの位相のずれに起因して生じるラッピング領域の位置の変化による積算位相分布像14の画質の劣化を抑制するためには、
図11に示すように、各位相分布像13について、各画像をそれぞれアンラッピング処理した複数の画像27を取得し、複数の画像27を積算する方法が考えられる。しかし、たとえば、検出器4の画素に欠損が生じている場合には、位相分布像13において、画素の欠損に起因するノイズが生じる。ノイズが生じた各位相分布像13をアンラッピング処理した場合、アンラッピング処理後の画像27において、同一画像内の画素の欠損に起因するノイズが他の画素にまで影響し、縞状(ストリーク状)のアーチファクト28が生じる。これらのアーチファクト28が生じた画像27を積算すると、積算後の画像29において、各画像27のアーチファクト28も積算されてしまう。積算後の画像29にアーチファクト28が生じていると、積算位相分布像14の画質が劣化する原因となる。
【0068】
本実施形態では、画素領域Raの位相値の補正(アンラッピング処理)を行った後の位相分布像13を積算するため、各画像における画素欠損の影響は、同一画素においてのみ生じるため、他の画素に影響がおよぶことを抑制することができる。すなわち、欠損画素の影響をその画素だけに留めることが可能となるので、位相分布像13に縞状のアーチファクト28が生じることを抑制することができる。
【0069】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、光イメージング装置100は、被写体Qに光を照射するX線源1と、X線源1から照射された光を検出する検出器4と、検出器4によって検出された信号に基づいて位相分布像13を生成する画像処理部5と、を備え、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像10に基づいて取得された複数の位相分布像13の画素領域Raの画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域Raの位相値を補正するとともに、画素領域Raの位相値の補正を行った複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。これにより、各位相分布像13の画素領域Ra間において、位相値の変化が生じている場合でも、位相値を補正することにより複数の位相分布像13の画素領域Ra間に位相値の変化を抑制することができる。その結果、生成された積算位相分布像14において、各位相分布像13間の画素領域Raにおける位相値の変化に基づくアーチファクト26が生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部5は、画素領域Raの位相値の補正処理として、複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値が1周期分ずれることにより不連続となるラッピング領域の位相値を、連続的な変化となるように補正するアンラッピング処理を行うように構成されている。これにより、各画素の画像間における位相値をアンラッピング処理することにより、各画像間におけるラッピング領域の位置を揃えることができる。したがって、複数の位相分布像13に基づいて1枚の積算位相分布像14を生成する際に、ラッピング領域がばらついた各位相分布像13を合成することにより、ラッピング領域近傍の位相値が平滑化されてしまうことを抑制することができる。その結果、ラッピング領域における位相値が平滑化されることに起因して、生成された積算位相分布像14にアーチファクトが生じることを抑制することができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部5は、複数の位相分布像13の撮像順に並べた複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行うように構成されている。ここで、第2格子3の熱変動は、時間の経過とともに、特定の方向に生じる。したがって、上記のように構成することにより、各画素の画像間における位相値の変化を時系列に取得することができる。その結果、時系列の位相値の変化を取得することが可能となるので、各画像において時間経過に伴って特定の方向に生じる第2格子3の熱変動の影響による位相値の変化を正確に把握することが可能となり、正確なアンラッピング処理を行うことができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部5は、複数の位相分布像13において、位相値が不連続となる境界pbの近傍の画素に対して、アンラッピング処理を行うように構成されている。これにより、複数の位相分布像13に含まれる画素のうち、アンラッピング処理が不必要な領域に対してアンラッピング処理を行うことを抑制することができる。その結果、アンラッピング処理を行う領域の数を低減することが可能となるので、画像処理部5の負荷を軽減することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、X線源1は、X線を照射するように構成されており、検出器4は、X線を検出するように構成されており、X線源1と検出器4との間に配置され、X線源1からX線が照射される第1格子2と、第1格子2からのX線が照射される第2格子3とを含む複数の格子をさらに備え、画像処理部5は、複数の位相分布像13を取得するとともに、複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいて、複数の位相分布像13の画像間における位相値のアンラッピング処理を行い、アンラッピング処理を行った複数の位相分布像13を積算することにより、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。これにより、ラッピング領域の位置がばらついた複数の位相分布像13に対してアンラッピング処理を行うことにより、各位相分布像13におけるラッピング領域の位置を揃えることが可能となるので、複数の位相分布像13を積算する際に、複数の位相分布像13のラッピング領域近傍の各画素間において、位相値が平滑化されることを抑制することができる。その結果、積算位相分布像14においても、生成された積算位相分布像14において、各位相分布像13間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することができる。
【0075】
また、第1実施形態では、上記のように、第2格子3を移動させる格子移動機構8をさらに備え、画像処理部5は、第2格子3を移動させながら撮像された複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成するように構成されている。これにより、第2格子3を移動させながら撮像を行う縞走査法においても、生成された積算位相分布像14において、各位相分布像13間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像10に基づいて取得された複数の位相分布像13を取得するステップS1と、複数の位相分布像13の画素領域Raの画像間における位相値の変化に基づいて、画素領域Raの位相値を補正する処理を行うステップS2と、画素領域Raの位相値の補正を行った複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成するステップS3と、を含む。これにより、生成された積算位相分布像14において、各位相分布像13間の画素領域Raにおける位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することが可能な画像処理方法を提供することができる。
【0077】
[第2実施形態]
次に、
図1および
図12を参照して、第2実施形態による光イメージング装置200(
図1参照)について説明する。第2格子3を移動させながら撮像した複数の画像10に基づいて複数の位相分布像13を取得する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、画像処理部5は、モアレ縞mfを生じさせた状態で被写体Qを撮像した画像30に基づいて、複数の位相分布像13を生成するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
(光イメージング装置の構成)
まず、
図1を参照して、第2実施形態による光イメージング装置200の構成について説明する。
【0079】
第2実施形態では、画像処理部5は、格子移動機構8によって第2格子3の位置をわずかにずらし、予めモアレ縞mfを生じさせた状態で撮像した画像30に基づいて、複数の位相分布像13を取得する。具体的には、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像30をフーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理を行うことにより、複数の位相分布像13を生成するように構成されている。
【0080】
次に、
図13を参照して、第2実施形態による光イメージング装置200による積算位相分布像14を生成する処理の流れについて説明する。なお、第1実施形態と同様のステップの説明については省略する。
【0081】
ステップS4において、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像10に基づいて、複数の位相分布像13を取得する。なお、ステップS4では、画像処理部5は、第2格子3を並進移動させながら撮像する縞走査法ではなく、予めモアレ縞mfを生じさせた状態で撮像した画像30に対してフーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理を行うフーリエ変換法によって複数の位相分布像13を取得する。その後、処理は、ステップS2およびS3へと進み、画素領域Raの位相値が補正された複数の位相分布像13に基づいて、1枚の積算位相分布像14を生成し、処理を終了する。
【0082】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
第2実施形態では、上記のように、画像処理部5は、それぞれ異なるタイミングで撮像された画像30をフーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理を行うことにより、複数の位相分布像13を生成するように構成されている。これにより、フーリエ変換処理および逆フーリエ変換処理によって位相分布像13を生成するフーリエ変換法においても、生成された積算位相分布像14において、各位相分布像13間の各画素における位相値の変化に起因するアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された積算位相分布像14の画質が劣化することを抑制することができる。
【0085】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0086】
[第3実施形態]
次に、
図14を参照して、第3実施形態による光イメージング装置300について説明する。被写体QにX線を照射して位相分布像13を取得する第1および第2実施形態とは異なり、第3実施形態では、光イメージング装置300は、参照面37および被写体Qによって反射された光の位相差に基づいて位相分布画像を生成するように構成されている。なお、上記第1および第2実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
(光イメージング装置の構成)
図14に示すように、光イメージング装置300は、光源31と、フィルタ32と、第1ビームスプリッタ33と、対物レンズ34と、第2ビームスプリッタ35と、被写体載置台36と、参照面37と、検出器38と、画像処理部39と、を備える。
【0088】
光源31は、第1ビームスプリッタ33に向けて白色光を照射するように構成されている。光源31は、たとえば、白色レーザーまたは白色LEDなどを含む。フィルタ32は、光源31と第1ビームスプリッタ33との間に設けられている。フィルタ32は、光源31から照射された光のうち、所定波長の光を透過するように構成されている。フィルタ32は、たとえば、バンドパスフィルタを含む。
【0089】
第1ビームスプリッタ33は、光源31から照射された白色光のうち、フィルタ32を透過した光を、対物レンズ34に向けて反射させるように構成されている。また、第1ビームスプリッタ33は、被写体Qおよび参照面37によって反射された光を透過するように構成されている。
【0090】
対物レンズ34は、第1ビームスプリッタ33と、第2ビームスプリッタ35との間に設けられている。
【0091】
第2ビームスプリッタ35は、対物レンズ34を透過した光を、被写体載置台36に向けて透過させる。また、第2ビームスプリッタ35は、対物レンズ34を透過した光を、参照面37に向けて反射させる。
【0092】
被写体載置台36は、被写体Qを載置させる。参照面37は、照射された光を反射させるように構成されている。参照面37は、たとえば、反射ミラーを含む。
【0093】
検出器38は、被写体載置台36に載置された被写体Qによって反射された光および参照面37によって反射された光を検出するように構成されている。また、検出器38は、検出された光を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器38は、たとえば、CCD(Charged Coupled Devices)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサを含む。
【0094】
画像処理部39は、検出器38が検出した信号に基づいて、位相分布画像を生成するように構成されている。画像処理部39は、たとえば、GPUまたは画像処理用に構成されたFPGAなどのプロセッサを含む。
【0095】
第3実施形態における光イメージング装置300は、いわゆる走査型白色干渉計である。
【0096】
(位相分布画像の生成)
第3実施形態では、画像処理部39は、被写体Qによって反射された光と、参照面37によって反射された光との位相差に基づいて、位相分布画像を生成するように構成されている。位相分布画像の画素値は、被写体Qによって反射された光と、参照面37によって反射された光との位相差に基づく位相値である。また、画像処理部39は、撮像時間をずらして撮像された複数の位相分布画像を合成することにより、1枚の位相分布画像を生成するように構成されている。
【0097】
ここで、第1ビームスプリッタ33、対物レンズ34および第2ビームスプリッタ35などの光学系が光源31などの熱によって熱変動した場合、各位相分布画像の位相値が変化する。したがって、第3実施形態においても、上記第1および第2実施形態と同様に、画像処理部39は、複数の位相分布画像の画素領域Raにおけるラッピング領域の位相値を、アンラッピング処理した後に積算することにより、1枚の位相分布画像を生成するように構成されている。
【0098】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0099】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0100】
第3実施形態では、上記のように、被写体Qによって反射された光と、参照面37によって反射された光との位相差に基づいて、位相分布画像を生成する画像処理部39を含む。これにより、上記第1および第2実施形態と同様に、複数の位相分布画像を積算する場合でも、第1ビームスプリッタ33、対物レンズ34および第2ビームスプリッタ35などの光学系が熱変動することにより、生成された位相分布画像において、各位相分布画像間の画素領域における位相値の変化に基づくアーチファクトが生じることを抑制することが可能であるとともに、生成された位相分布画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0101】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0102】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0103】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、格子移動機構8が、第2格子3を移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。格子移動機構8が移動させる格子は、いずれの格子であってもよい。
【0104】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の格子として、第1格子2および第2格子3を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図15に示す光イメージング装置400のように、X線源1と第1格子2との間に、第3格子40を設ける構成でもよい。第3格子40は、Y方向に所定の周期(ピッチ)p3で配列される複数のスリット40aおよびX線吸収部40bを有している。各スリット40aおよびX線吸収部40bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット40aおよびX線吸収部40bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。また、第3格子40は、X線源1と第1格子2との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。第3格子40は、各スリット40aを通過したX線を、各スリット40aの位置に対応する線光源とするように構成されている。これにより、第3格子40によってX線源1から照射されるX線の可干渉性を高めることができる。その結果、X線源1の焦点径に依存することなく第1格子2の自己像を形成させることが可能となるので、X線源1の選択の自由度を向上させることができる。
【0105】
また、上記第1および第2実施形態では、画像処理部5が複数の位相分布像13を積算することにより積算位相分布像14を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、複数の位相分布像13を平均化することにより、積算位相分布像14を生成するように構成されていてもよい。
【0106】
また、上記第1実施形態では、画像処理部5が、撮像順に並べた複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、撮像と反対の順番に並べた複数の位相分布像13の各画素の画像間における位相値の変化に基づいてアンラッピング処理を行うように構成されていてもよい。
【0107】
また、上記第1および第2実施形態では、画像処理部5が、各位相分布像13の画素領域Raに含まれる画素Gの位相値を補正する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、各位相分布像13の画素領域Raに含まれる画素Gの位相値と、画素領域Raの範囲mr内に含まれる画素のうち、画素G以外の画素の位相値との変化に基づいて、アンラッピング処理を行うように構成されていてもよい。
【0108】
また、上記第1および第2実施形態では、画像処理部5が、アンラッピング処理として、位相値が低い画素の位相値を高くする処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、位相値が高い画素の位相値を低くすることにより、アンラッピング処理を行うように構成されていてもよい。
【0109】
また、上記第1~第3実施形態では、X線源1(光源31)がX線(白色光)を照射し、画像処理部5(画像処理部39)がX線(白色光)の位相分布に基づいて位相分布像13(位相分布画像)を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、光イメージング装置100(200、300、400)は、X線および白色光(可視光)以外に、赤外線または紫外線などの可視領域以外の光を被写体Qに対して照射するように構成されていてもよい。画像処理部5(画像処理部39)が位相分布を用いて画像化することが可能であれば、光イメージング装置100(200、300、400)が被写体Qに対して照射する光はどのような光であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 X線源(光源)
2 第1格子
3 第2格子
4、38 検出器
5、39 画像処理部
6 制御部
8 格子移動機構
13 位相分布像(位相分布画像)
14 積算位相分布像(位相分布画像)
31 光源
40 第3格子
100、200、300、400 光イメージング装置
Ra 画素領域
Q 被写体