(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20220419BHJP
H02K 15/16 20060101ALI20220419BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H02K1/22 B
H02K15/16 A
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2021013716
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝史
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-219616(JP,A)
【文献】特開平04-344153(JP,A)
【文献】実開平05-088164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
H02K 15/16
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って配置されるシャフトと、
前記シャフトに固定されるロータコアと、
前記回転軸を中心に前記ロータコアを回転させるステータと、
前記シャフトが回転することにより駆動する圧縮部と、を備え、
前記ロータコアは、複数の
第1コアシート
と複数の第2コアシートとが積層されることにより形成され、
前記複数の
第1コアシートの各々には、当該
第1コアシートの重心を前記回転軸周りの径方向に偏らせる
第1バランス孔が形成され、
前記複数の第2コアシートの各々には、当該第2コアシートの重心を前記回転軸周りの径方向に偏らせる第2バランス孔が形成され、
前記複数の第1コアシートと前記複数の第2コアシートとは、前記第1コアシートの各々の重心と前記第2コアシートの各々の重心とが前記回転軸周りの周方向において互いにずれるように、配置され、
前記ロータコアは、偏心部分と偏心緩和部分とを備え、
前記偏心部分は、
前記第1バランス孔または前記
第2バランス孔が前記回転軸に平行な軸方向に連続することで、前記偏心部分の重心が前記径方向に偏心しており、
前記偏心緩和部分は、
前記第1コアシートと前記第2コアシートとが1枚ずつまたは複数枚ずつ交互に積層されることにより形成され、前記
第1コアシートの前記
第1バランス孔による偏心
が前記
第2コアシートの前記
第2バランス孔による偏心によって相殺されている
圧縮機。
【請求項2】
前記第1コアシートの第1バランス孔と、前記第2コアシートの第2バランス孔とは、前記回転軸周りの周方向において互いに180度ずれて配置されている
請求項
1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ロータコアは、
複数の前記第1コアシートが積層されることにより前記軸方向における一端側に形成される第1偏心部分と、
複数の前記第2コアシートが積層されることにより前記軸方向における他端側に形成される第2偏心部分と、
前記軸方向における前記第1偏心部分と前記第2偏心部分との間に配置される前記偏心緩和部分とを有する
請求項
1または請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記複数の第1コアシートの各々には、
前記シャフトが貫通する第1シャフト孔が形成され、
前記複数の第2コアシートの各々には、
前記シャフトが貫通する第2シャフト孔が形成され、
前記第1シャフト孔および前記第2シャフト孔の
いずれか一方のシャフト孔の縁に切欠きが形成される
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1コアシートの形状と前記第2コアシートの形状とが共通である
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な位置に適切な深さのバランス穴が形成されたロータコアを備えるモータが搭載され、回転体の質量分布が偏っていることによる振動等の不具合を抑制する圧縮機が知られている(特許文献1~4)。このような圧縮機は、ロータコアと別個にバランスウェイトが設けられていないことにより、製造コストを低減することができるとともに、圧縮機の筐体内で冷媒が撹拌されることによる圧縮効率の悪化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-112652号公報
【文献】特開平09-84285号公報
【文献】特開2003-219616号公報
【文献】特開2018-17201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータコアは、磁性体である鋼板から形成される複数のコアシートが積層されることにより作製されている。バランス穴は、コアシートに形成される貫通孔が繋がるように複数のコアシートが適切に積層されることにより、形成されている。複数のコアシートは、形状が異なる複数種類のコアシートを含んでいる。複数のコアシートは、プレス加工機を用いた打ち抜き加工により作製される。プレス加工機は、複数種類の金型を切り替えることにより複数種類のコアシートを作製しており、作製するコアシートの種類が多いほど、金型を切り替える金型制御が複雑になるという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、バランス穴が形成されたロータコアの製造を容易化する圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による圧縮機は、回転軸に沿って配置されるシャフトと、前記シャフトに固定されるロータコアと、前記回転軸を中心に前記ロータコアを回転させるステータと、前記シャフトが回転することにより駆動する圧縮部とを備えている。前記ロータコアは、複数の第1コアシートと複数の第2コアシートとが積層されることにより形成されている。複数の第1コアシートの各々には、当該第1コアシートの重心を前記回転軸周りの径方向に偏らせる第1バランス孔が形成されている。複数の第2コアシートの各々には、当該第2コアシートの重心を前記回転軸周りの径方向に偏らせる第2バランス孔が形成されている。前記複数の第1コアシートと前記複数の第2コアシートとは、前記第1コアシートの各々の重心と前記第2コアシートの各々の重心とが前記回転軸周りの周方向において互いにずれるように、配置されている。前記ロータコアは、偏心部分と偏心緩和部分とを備える。前記偏心部分は、前記第1バランス孔または前記第2バランス孔が前記回転軸に平行な軸方向に連続することで前記偏心部分の重心が前記径方向に偏心している。前記偏心緩和部分は、前記第1コアシートと前記第2コアシートとが1枚ずつまたは複数枚ずつ交互に積層されることにより形成され、前記第1コアシートの前記第1バランス孔による偏心が前記第2コアシートの前記第2バランス孔による偏心によって相殺されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の圧縮機は、バランス穴が形成されたロータコアの製造を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の圧縮機のロータコアを示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の圧縮機のロータコアを示す上面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の圧縮機のロータコアを示す下面図である。
【
図5】
図5は、比較例の圧縮機のロータコアを示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例2の圧縮機のロータコアを示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、実施例3の圧縮機のロータコアを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる圧縮機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
実施例1の圧縮機1は、
図1に示されているように、容器2とシャフト3と圧縮部5とモータ部6とを備えている。
図1は、実施例1の圧縮機1を示す縦断面図である。容器2の内部には、密閉された内部空間21が形成されている。内部空間21は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面に縦置きされたときに、内部空間21の円柱の中心軸が鉛直方向に平行になるように、形成されている。容器2は、吸入管22と吐出管23とを備えている。吸入管22の内部には、流路221が形成されている。吸入管22は、流路221が内部空間21の下部に接続されるように、容器2に接合されている。吐出管23の内部には、流路231が形成されている。吐出管23は、流路231が内部空間21の上部に接続されるように、容器2に接合されている。
【0011】
シャフト3は、棒状に形成されている。シャフト3は、内部空間21が形成する円柱の中心軸に重なる回転軸31に沿うように、内部空間21に配置され、回転軸31を中心に回転可能に容器2に支持されている。シャフト3は、第1偏心部32と第2偏心部33とを備えている。第1偏心部32と第2偏心部33とは、内部空間21の下部に配置され、シャフト3に固定されている。すなわち、第1偏心部32と第2偏心部33とは、シャフト3を介して回転軸31を中心に回転可能に容器2に支持されている。
【0012】
圧縮部5は、シャフト3の第1偏心部32と第2偏心部33とを囲むように、内部空間21の下部に配置されている。圧縮部5は、いわゆるロータリー型の圧縮機構であり、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とを備えている。第1環状ピストン51は、第1偏心部32に嵌合し、シャフト3が回転することにより公転する。第2環状ピストン52は、第2偏心部33に嵌合し、シャフト3が回転することにより公転する。圧縮部5は、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とが公転することにより、吸入管22から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を内部空間21のうちの圧縮部5より上側の空間に供給する。なお、圧縮部5はロータリー型の圧縮機構に限定されず、例えばスクロール型の圧縮機構であってもよい。
【0013】
モータ部6は、内部空間21のうちの圧縮部5より上側の空間に配置されている。モータ部6は、ロータ61とステータ62とを備えている。ロータ61は、ロータコア611と上端板612と下端板613と複数のリベット614とを備えている。ロータコア611は、概ね円柱状に形成されている。ロータコア611は、円柱の中心軸が回転軸31に重なるように配置され、シャフト3に固定されている。すなわち、ロータコア611は、シャフト3を介して、回転軸31を中心に回転可能に容器2に支持されている。上端板612は、概ね円板状に形成され、ロータコア611の上端面615を覆うように配置されている。下端板613は、概ね円板状に形成され、ロータコア611の下端面616を覆うように配置されている。複数のリベット614は、磁性体から形成され、棒状に形成されている。複数のリベット614は、回転軸31と平行である上下方向にロータコア611を貫通し、上端板612と下端板613とをロータコア611に固定している。
【0014】
ステータ62は、概ね円筒状に形成されている。ステータ62は、円柱状のロータ61を囲むように、詳細には、ロータ61の中心軸とステータ62の中心軸とが一致するように、内部空間21に配置され、容器2に固定されている。ステータ62は、ステータコア63と上インシュレータ671と下インシュレータ672と複数の巻き線68とを備えている。
【0015】
図2は、実施例1の圧縮機1のロータコア611を示す断面図である。ロータコア611には、シャフト用孔71と複数の磁石用孔72とがさらに形成されている。シャフト用孔71は、回転軸31に沿うように、かつ、ロータコア611の上端面615と下端面616とを貫通するように、形成されている。
【0016】
複数の磁石用孔72は、回転軸31平行である複数の直線にそれぞれ沿うように、かつ、ロータコア611の上端面615と下端面616とを貫通するように、形成されている。ロータ61は、図示されていない複数の永久磁石をさらに備えている。複数の永久磁石は、複数の磁石用孔72にそれぞれ嵌合し、複数の磁石用孔72の内部にそれぞれ配置されている。複数の永久磁石は、上端板612と下端板613とがロータコア611に固定されることにより、複数の永久磁石が複数の磁石用孔72から抜け出ないように、ロータコア611に固定されている。
【0017】
ロータコア611は、第1偏心部分73と第2偏心部分74と偏心緩和部分75とを備えている。第1偏心部分73は、ロータコア611のうちの上端面615に近い側の部分である。すなわち、第1偏心部分73には、ロータコア611の上端面615が形成されている。回転軸31に平行である軸方向における第1偏心部分73の長さは、任意の長さでよいが、ここではロータコア611の軸方向における長さの4分の1である場合を例示する。第2偏心部分74は、ロータコア611のうちの下端面616に近い側の部分である。すなわち、第2偏心部分74には、ロータコア611の下端面616が形成されている。第2偏心部分74の軸方向における長さは、第1偏心部分73の軸方向における長さに等しく、すなわち、ロータコア611の軸方向における長さの4分の1である。偏心緩和部分75は、第1偏心部分73と第2偏心部分74との間に配置され、第1偏心部分73と第2偏心部分74とに挟まれている。偏心緩和部分75の軸方向における長さは、ロータコア611の軸方向における長さの2分の1である。
【0018】
ロータコア611には、複数の上端側バランス穴76と複数の下端側バランス穴77とがさらに形成されている。複数の上端側バランス穴76は、回転軸31に対して一方の側に形成されている。複数の上端側バランス穴76は、回転軸31と平行である直線に沿うように、かつ、ロータコア611のうちの第1偏心部分73を貫通するように、形成されている。すなわち、複数の上端側バランス穴76は、上端面615から窪んだ有底の穴に形成され、複数の上端側バランス穴76の開口部は、上端面615に形成され、複数の上端側バランス穴76の底は、偏心緩和部分75により形成されている。複数の上端側バランス穴76の深さは、軸方向における第1偏心部分73の長さに等しく、ここではロータコア611の軸方向における長さの4分の1である。
【0019】
複数の下端側バランス穴77は、回転軸31に対して他方の側に形成され、回転軸31に対して複数の上端側バランス穴76が形成される側の反対側に形成されている。複数の下端側バランス穴77は、回転軸31と平行である直線に沿うように、かつ、ロータコア611のうちの第2偏心部分74を貫通するように、形成されている。すなわち、複数の下端側バランス穴77は、下端面616から窪んだ有底の穴に形成され、複数の下端側バランス穴77の開口部は、下端面616に形成され、複数の下端側バランス穴77の底は、偏心緩和部分75により形成されている。複数の下端側バランス穴77の深さは、任意の深さでよいが、本実施形態では、複数の上端側バランス穴76の深さに等しく、ロータコア611の軸方向における長さの4分の1となるように形成されている。
【0020】
ロータコア611は、複数のコアシートを備えている。複数のコアシートは、軸方向に並ぶように、かつ、回転軸31に垂直な平面と平行に、積層されている。ロータコア611には、複数のかしめ部78が形成されている。複数のかしめ部78は、それぞれ、回転軸31と平行に、形成されている。複数のコアシートは、複数のコアシートのうちの隣接する2つのコアシートが離れないように、複数のかしめ部78により互いに固定されている。すなわち、ロータコア611は、複数のコアシートが積層された状態で、軸方向に並んだかしめ部78により複数のコアシートが互いに固定されることにより、形成されている。
【0021】
図3は、実施例1の圧縮機1のロータコア611を示す上面図である。シャフト用孔71は、概ね円柱状に形成されており、シャフト用孔71の側壁(内周面)がシャフト3の外周面に沿うように形成されている。シャフト用孔71は、シャフト用孔71の中心軸が回転軸31に重なるように、ロータコア611の中央に形成されている。シャフト3は、シャフト用孔71に挿入され、ロータコア611に固定されている。複数の磁石用孔72は、シャフト用孔71を取り囲むように、配置されている。すなわち、複数の永久磁石は、シャフト用孔71を取り囲むように、ロータコア611の内部に埋め込まれている。複数のかしめ部78は、シャフト用孔71を取り囲むように、配置されている。
【0022】
複数の上端側バランス穴76は、シャフト用孔71の上端側(回転軸31と平行な軸方向の一端側)に配置されている。また、複数の上端側バランス穴76は、回転軸31に垂直な断面において、回転軸31周りの周方向で一方の側に偏るように形成されている。複数の下端側バランス穴77は、回転軸31に平行な軸方向において、複数の上端側バランス穴76が形成される側の反対側である下端側(回転軸31と平行な軸方向の他端側)に配置されている。また、複数の下端側バランス穴77は、回転軸31に垂直な断面において、回転軸31周りの周方向で他方の側に形成されている。
【0023】
ロータコア611には、複数のリベット用孔79がさらに形成されている。複数のリベット用孔79は、回転軸31と平行に形成されている。複数のリベット用孔79は、シャフト用孔71を取り囲むように、複数の磁石用孔72よりシャフト用孔71に近い側に配置されている。複数のリベット用孔79には、複数のリベット614がそれぞれ挿入されている。複数のリベット614の両端は、複数のリベット614が複数のリベット用孔79から抜け出ないように、かしめられている。上端板612と下端板613とは、複数のリベット614の両端がかしめられることにより、ロータコア611に固定されている。
【0024】
ロータコア611を形成する複数のコアシートは、複数の第1コアシート83を含んでいる。複数の第1コアシート83は、磁性体である鋼板から形成され、概ね円板状に形成されている。第1コアシート83には、第1シャフト用孔84と複数の第1磁石用孔85と複数の第1リベット用孔86と複数の第1かしめ部87とが形成されている。第1シャフト用孔84と複数の第1磁石用孔85と複数の第1リベット用孔86とは、それぞれ、第1コアシート83の表裏を貫通する孔として形成されている。第1シャフト用孔84は、円形に形成され、第1コアシート83の中央に配置されている。複数の第1磁石用孔85は、第1シャフト用孔84を取り囲むように、配置されている。複数の第1リベット用孔86は、第1シャフト用孔84を取り囲むように、配置されている。複数の第1かしめ部87は、それぞれ、第1コアシート83のうちの上端面615に近い側の面が窪むように、かつ、第1コアシート83のうちの下端面616に近い側の面が突き出るように、形成されている。複数の第1かしめ部87は、第1シャフト用孔84を取り囲むように、配置されている。
【0025】
第1コアシート83には、第1バランス孔88と第1切欠き89とがさらに形成されている。第1バランス孔88は、第1コアシート83の表裏を貫通する孔として形成されている。第1バランス孔88は、第1コアシート83の重心を回転軸31周りの径方向に偏らせるよう、回転軸31を中心にして周方向に偏って配置されている。第1切欠き89は、第1シャフト用孔84の縁に形成されている。さらに、第1コアシート83は、ロータコア611の複数の下端側バランス穴77(後述する第2コアシート93の第2バランス孔98)と軸方向に重なる部分に貫通する孔が形成されないように、形成されている。
【0026】
第1偏心部分73は、複数の第1コアシート83が連続して積層されることで形成されている。複数の第1コアシート83にそれぞれ形成される第1バランス孔88が軸方向に連続して並び互いに繋がることで、第1偏心部分73の上端側バランス穴76が形成されている。すなわち、上端側バランス穴76は、複数の第1コアシート83にそれぞれ形成される第1バランス孔88から形成されている。
【0027】
図4は、実施例1の圧縮機1のロータコア611を示す下面図である。ロータコア611を形成する複数のコアシートは、複数の第2コアシート93をさらに含んでいる。第2コアシート93は、第1コアシート83と同様に、磁性体である鋼板から形成され、概ね円板状に形成されている。第2コアシート93には、第2シャフト用孔94と複数の第2磁石用孔95と複数の第2リベット用孔96と複数の第2かしめ部97とが形成されている。第2シャフト用孔94と複数の第2磁石用孔95と複数の第2リベット用孔96とは、それぞれ、第2コアシート93の表裏を貫通する孔として形成されている。第2シャフト用孔94は、円形に形成され、第2コアシート93の中央に配置されている。複数の第2磁石用孔95は、第2シャフト用孔94を取り囲むように、配置されている。複数の第2リベット用孔96は、第2シャフト用孔94を取り囲むように、配置されている。複数の第2かしめ部97は、複数の第1かしめ部87と同様に形成されている。すなわち、複数の第2かしめ部97は、それぞれ、第2コアシート93のうちの上端面615に近い側の面が窪むように、かつ、第2コアシート93のうちの下端面616に近い側の面が突き出るように、形成されている。複数の第2かしめ部97は、第2シャフト用孔94を取り囲むように、配置されている。
【0028】
第2コアシート93には、第2バランス孔98がさらに形成されている。第2バランス孔98は、第2コアシート93の表裏を貫通する孔として形成されている。第2バランス孔98は、第2コアシート93の重心を回転軸31周りの径方向に偏らせるよう、回転軸31を中心にして周方向に偏って配置されている。第1コアシート83と第2コアシート93とが積層されてロータコア611が形成された状態では、複数の第1コアシート83の各々の重心と、複数の第2コアシート93の各々の重心とが、回転軸31周りの周方向において互いにずれるように、第1コアシート83と第2コアシート93とが配置されている。本実施形態では、ロータコア611における第2コアシート93の第2バランス孔98は、第1コアシート83の第1バランス孔88とは回転軸31周りの周方向に180度ずれて配置されている。さらに、第2コアシート93は、上端側バランス穴76と軸方向に重なる部分に貫通する孔が形成されないように、形成されている。なお、本実施形態では、第2コアシート93の第2シャフト用孔94の縁には切欠きが形成されていないが、第2シャフト用孔94の縁に切欠きが形成されていてもよい。この場合、第2コアシート93が回転軸31を中心に180度回転したときに第1コアシート83に重なるように、第1コアシート83と第2コアシート93とが同じ形状に形成されていることで、第1コアシート83を形成する金型と、第2コアシート93を形成する金型とを共通化することができる。
【0029】
第2偏心部分74は、第2コアシート93が連続して積層されることで形成されている。第2偏心部分74を形成する複数の第2コアシート93にそれぞれ形成される第2バランス孔98が回転軸31に平行である軸方向に連続して並び、互いに繋がることで、下端側バランス穴77が形成されている。すなわち、下端側バランス穴77は、複数の第2コアシート93にそれぞれ形成される第2バランス孔98から形成されている。
【0030】
偏心緩和部分75は、複数の第1コアシート83と、複数の第2コアシート93とから形成されている。本実施形態では、偏心緩和部分75は、第1コアシート83と第2コアシート93とが、1枚ずつ交互に積層されている。言い換えれば、第1コアシート83の各々は、第2コアシート93に隣り合っている。第2コアシート93の各々は、第1コアシート83に隣り合っている。偏心緩和部分75は、回転軸31に平行な軸方向から見て第1コアシート83の第1バランス孔88と第2コアシート93の第2バランス孔98とが回転軸31に対して点対称に配置され、第1コアシート83と第2コアシート93とが1枚ずつ交互に積層されていることにより、回転軸31周りにおいて質量が概ね点対称に分布するように、形成されている。これにより、ロータコア611における第1偏心部分73と第2偏心部分74を除いた部分、すなわち偏心緩和部分75においては、第1コアシート83と第2コアシート93が交互に積層されることで、第1コアシート83の第1バランス孔88による回転軸31を傾ける向きへの偏心が、これと隣り合う第2コアシート93の第2バランス孔98による偏心によって相殺(緩和)されている。同様に、第2コアシート93の第2バランス孔98による回転軸31を傾ける向きへの偏心が、これと隣り合う第1コアシート83の第1バランス孔88による偏心によって相殺(緩和)されている。したがって、偏心緩和部分75は、回転軸31周りの径方向で殆ど偏心していない。そのため、ロータコア611は実質的に、第1偏心部分73を形成する第1コアシート83の第1バランス孔88と、第2偏心部分74を形成する第2コアシート93の第2バランス孔98のみが、ロータコア611を偏心させるバランス穴(上端側バランス穴76、下端側バランス穴77)として機能している。
【0031】
ロータコア611は、複数のコアシートが複数のかしめ部78により互いに固定され、第1偏心部分73と第2偏心部分74と偏心緩和部分75とが一体に固定されることにより、形成されている。複数の第1コアシート83に形成される第1シャフト用孔84と、複数の第2コアシート93に形成される第2シャフト用孔94とは、複数のコアシートが適切に積層されているときに、軸方向に並び、互いに繋がっている。すなわち、シャフト用孔71は、複数の第1コアシート83に形成される第1シャフト用孔84と、複数の第2コアシート93に形成される第2シャフト用孔94とが繋がることにより形成されている。
【0032】
複数の第1コアシート83に形成される複数の第1磁石用孔85と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2磁石用孔95とは、複数のコアシートが適切に積層されているときに、軸方向に並び、互いに繋がっている。すなわち、複数の磁石用孔72は、複数の第1コアシート83に形成される複数の第1磁石用孔85と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2磁石用孔95とが繋がることにより形成されている。
【0033】
複数の第1コアシート83に形成される複数の第1リベット用孔86と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2リベット用孔96とは、複数のコアシートが適切に積層されているときに、軸方向に並び、互いに繋がっている。すなわち、複数のリベット用孔79は、複数の第1コアシート83に形成される複数の第1リベット用孔86と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2リベット用孔96とが繋がることにより形成されている。
【0034】
複数の第1コアシート83に形成される複数の第1かしめ部87と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2かしめ部97とは、複数のコアシートが適切に積層されているときに、軸方向に並び、互いに嵌合している。すなわち、複数のかしめ部78は、複数の第1コアシート83に形成される複数の第1かしめ部87と、複数の第2コアシート93に形成される複数の第2かしめ部97とが嵌合することにより形成されている。
【0035】
[圧縮機1の動作]
圧縮機1は、図示しない冷凍サイクル装置に設けられ、冷媒を圧縮して、冷凍サイクル装置に冷媒を循環させることに利用される。モータ部6のステータ62は、複数の巻き線68に三相電圧が適切に印加されることにより、ステータ62の内側の空間に回転磁界を生成する。ロータ61は、回転磁界が生成されることにより、回転軸31を中心に回転し、回転軸31を中心にシャフト3を回転させる。第1偏心部32と第2偏心部33とは、シャフト3が回転することにより、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とを公転させる。
【0036】
圧縮部5は、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とが公転することにより、吸入管22を介して低圧ガス冷媒を吸入し、その吸入された低圧ガス冷媒を圧縮することにより高圧ガス冷媒を生成する。その生成された高圧ガス冷媒は、内部空間21のうちの圧縮部5とモータ部6との間の空間に供給される。内部空間21のうちの圧縮部5とモータ部6との間の空間に供給された高圧ガス冷媒は、モータ部6に形成されている隙間を通過することにより、内部空間21のうちのモータ部6より上の空間に供給される。内部空間21のうちのモータ部6より上の空間に供給された高圧ガス冷媒は、吐出管23を介して冷凍サイクル装置のうちの圧縮機1の後段の装置に吐出される。
【0037】
シャフト3と第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とロータ61とは、圧縮機1において、回転軸31を中心に回転する回転体を形成している。回転体は、回転体の質量が回転軸31周りの周方向に適切に分布されていない場合には、回転体が回転軸31を中心に回転するときに、圧縮機1を大きく振動させることがある。回転体は、ロータコア611の複数の上端側バランス穴76と複数の下端側バランス穴77とが適切なサイズに形成されることにより、質量が回転軸31周りの周方向に対称に適切に分布するように、形成されることができる。圧縮機1は、回転体を構成する各要素の質量が回転軸31周りの周方向に対称に適切に分布しているときに、振動を低減することができる。圧縮機1は、振動を低減するバランスウェイトがロータコア611に設けられていないことにより、内部空間21で冷媒がバランスウェイトによって撹拌されるのを抑制し、圧縮効率の悪化を防止することができる。
【0038】
[ロータコア611の製造方法]
ロータコア611は、プレス加工機を用いて作製される。プレス加工機は、第1金型と第2金型とを備えている。第1金型は、複数の第1コアシート83のうちの1枚を作製するときに利用されるものであり、プレス加工機は、第1金型を用いて鋼板を打ち抜くことにより複数の第1コアシート83のうちの1枚を作製する。第2金型は、複数の第2コアシート93のうちの1枚を作製するときに利用されるものであり、プレス加工機は、第2金型を用いて鋼板を打ち抜くことにより複数の第2コアシート93のうちの1枚を作製する。
【0039】
プレス加工機は、第1金型と第2金型とのうちの1つの金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、複数のコアシートを一枚ずつ作製する。たとえば、プレス加工機は、第2金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、第2偏心部分74を形成する複数の第2コアシート93を一枚ずつ作製する。プレス加工機は、第2偏心部分74を形成する複数の第2コアシート93が作製された後に、第1金型と第2金型とを交互に用いて鋼板を打ち抜き、偏心緩和部分75を形成する複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とを一枚ずつ交互に作製する。プレス加工機は、偏心緩和部分75を形成する第1コアシート83と第2コアシート93とが作製された後に、第1金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、第1偏心部分73を形成する複数の第1コアシート83を一枚ずつ作製する。
【0040】
プレス加工機は、その作製された複数のコアシートを、作製された順に軸方向に積層する。プレス加工機は、その積層された複数のコアシートを軸方向に圧縮する。複数のコアシートのうちの隣接する2つのコアシートにそれぞれ形成される複数の第1かしめ部87同士、複数の第2かしめ部97同士、または、複数の第1かしめ部87と複数の第2かしめ部97とは、複数のコアシートが圧縮されることにより、嵌合する。積層された複数のコアシートは、複数の第1かしめ部87同士、複数の第2かしめ部97同士、または、複数の第1かしめ部87と複数の第2かしめ部97とが嵌合することにより、互いに固定され、ロータコア611が形成される。すなわち、第1金型と第2金型とは、プレス加工機が金型制御されることにより、複数のコアシートが作製される順番が、ロータコア611に形成される複数のコアシートが並ぶ順番と同じになるように、切り替えられている。
【0041】
圧縮機1は、ロータコア611が複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93との2種類のコアシートから形成されていることにより、プレス加工に必要な金型の数を2つにすることができ、プレス加工機の金型制御を容易化することができる。なお、第1コアシート83および第2コアシート93の形状が共通の場合(例えば、第1コアシート83を周方向に180度回転させると第2コアシート93と形状が一致する場合)には、さらに第1コアシートを形成する金型と第2コアシートを形成する金型とを共通化してもよい。
【0042】
[比較例の圧縮機]
比較例の圧縮機は、
図5に示されているように、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611が他のロータコア101に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機1と同じである。
図5は、比較例の圧縮機のロータコア101を示す概略断面図である。ロータコア101は、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611の偏心緩和部分75が非偏心部分102に置換されている。非偏心部分102は、複数の非偏心コアシートから形成されている。複数の非偏心コアシートの各々は、既述の第1コアシート83から第1バランス孔88と第1切欠き89とが省略されたものであり、他の部分は、既述の第1コアシート83や第2コアシート93と同じである。すなわち、複数の非偏心コアシートの各々は、既述の第1コアシート83と同様に、磁性体である鋼板から形成され、概ね円板状に形成されている。各々の非偏心コアシートには、既述の第1コアシート83と同様に、第1シャフト用孔84と複数の第1磁石用孔85と複数の第1リベット用孔86と複数の第1かしめ部87とが形成されている。非偏心コアシートは、さらに、非偏心コアシートのうちの複数の上端側バランス穴76と複数の下端側バランス穴77とに軸方向に重なる領域に貫通孔が形成されないように、形成されている。言い換えれば、非偏心コアシートは、コアシートを偏心させるバランス孔を備えていない。
【0043】
非偏心部分102は、第1シャフト用孔84と複数の第1磁石用孔85と複数の第1リベット用孔86と複数の第1かしめ部87とが軸方向に並ぶように、複数の非偏心コアシートが軸方向に積層されることにより、形成されている。ロータコア101は、ロータコア611と同様に、複数のコアシートが複数のかしめ部78により互いに固定されるときに、第1偏心部分73と第2偏心部分74と非偏心部分102とが一体に固定されることにより、形成されている。
【0044】
プレス加工機は、ロータコア101を作製するときに、複数の非偏心コアシートを作製されるときに利用される第3金型をさらに備えている。プレス加工機は、第1金型と第2金型と第3金型とのうちの1つの金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、複数のコアシートを一枚ずつ作製する。たとえば、プレス加工機は、第2金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、第2偏心部分74を形成する複数の第2コアシートを一枚ずつ作製する。プレス加工機は、第2偏心部分74を形成する複数の第2コアシートが作製された後に、第3金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、非偏心部分102を形成する複数の非偏心コアシートを一枚ずつ作製する。プレス加工機は、複数の非偏心コアシートが作製された後に、第1金型を用いて鋼板を次々に打ち抜くことにより、第1偏心部分73を形成する複数の第1コアシートを一枚ずつ作製する。
【0045】
プレス加工機は、その作製された複数の第2コアシートと複数の非偏心コアシートと複数の第1コアシートとを、作製された順に軸方向に積層し、その積層された複数のコアシートを軸方向に圧縮する。複数のコアシートのうちの隣接する2つのコアシートにそれぞれ形成される複数の第1かしめ部87同士、複数の第2かしめ部97同士、または、複数の第1かしめ部87と複数の第2かしめ部97とは、複数のコアシートが圧縮されることにより、嵌合する。積層された複数のコアシートは、複数の第1かしめ部87同士、複数の第2かしめ部97同士、または、複数の第1かしめ部87と複数の第2かしめ部97とが嵌合することにより、互いに固定され、ロータコア101が形成される。
【0046】
すなわち、プレス加工機は、比較例の圧縮機のロータコア101を作製するときに、3種類の金型を切り替える必要がある。このため、実施例1の圧縮機1は、比較例の圧縮機に比較して、プレス加工機に設けられる金型の数を低減することができ、プレス加工機の金型制御を容易化することができる。
【0047】
[実施例1の圧縮機1の効果]
実施例1の圧縮機1は、シャフト3とロータコア611とステータ62と圧縮部5とを備えている。シャフト3は、回転軸31に沿って配置されている。ロータコア611は、シャフト3に固定されている。ステータ62は、回転軸31を中心にロータコア611を回転させる。圧縮部5は、シャフト3が回転することにより駆動する。ロータコア611は、複数のコアシート83、93が積層されることにより形成されている。複数のコアシート(第1コアシート83、第2コアシート93)の各々には、複数のコアシート83、93の各々の重心を回転軸31周りの径方向に偏らせるバランス孔88、98が形成されている。ロータコア611は、第1偏心部分73と、偏心緩和部分75とを備える。第1偏心部分73は、複数の第1コアシート83の複数の第1バランス孔88が回転軸31に平行な軸方向に連続することで径方向に偏心している。偏心緩和部分75は、第1コアシート83の第1バランス孔88による偏心が、他の第2コアシート93の第2バランス孔98による偏心により相殺されている。
【0048】
実施例1の圧縮機1は、複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とが適切に積層されることにより、ロータコア611に複数の上端側バランス穴76と複数の下端側バランス穴77とが形成される。圧縮機1は、ロータコア611にバランス穴(上端側バランス穴76、下端側バランス穴77)が形成されることにより、ロータコア611を含む回転体を構成する各要素の質量を回転軸31周りの周方向に適切に分布させることができ、回転体が回転することにより発生する振動を低減することができる。また、圧縮機1は、ロータコア611が偏心部分73、74と偏心緩和部分75とを備える。第1偏心部分73は、複数の第1コアシート83の第1バランス孔88が回転軸31に平行な軸方向に連続することで、第1偏心部分73の重心がロータコア611の径方向に偏心している。偏心緩和部分75は、第1コアシート83の第1バランス孔88による偏心が第2コアシート93の第2バランス孔98による偏心により相殺されている。言い換えれば、ロータコア611が備える全てのコアシートに、バランス孔が形成されるようにすることにより(特に実施例1では、ロータコア611を形成する複数のコアシートの種類を第1コアシート83と第2コアシート93の2種類とすることにより)、バランス孔が形成されないコアシートの製造に利用される分の専用の金型を無くすことができ、複数のコアシートの製造に利用される金型の種類を低減することができる。したがって、圧縮機1は、複数のコアシートの製造に利用される金型の種類が低減することにより、複数のコアシートを作製するプレス加工機の金型制御を容易化することができる。
【0049】
また、実施例1の圧縮機1のロータコア611は、第1偏心部分73と第2偏心部分74と偏心緩和部分75とを備えている。第1偏心部分73は、複数の第1コアシート83が積層されることにより形成されている。第2偏心部分74は、複数の第2コアシート93が積層されることにより形成されている。偏心緩和部分75は、第1偏心部分73と第2偏心部分74との間に配置されている。偏心緩和部分75は、複数の第1コアシート83と、複数の第2コアシート93とが、1枚ずつ交互に積層されることにより形成されている。
【0050】
実施例1の圧縮機1は、軸方向における第1偏心部分73の長さと第2偏心部分74の長さと偏心緩和部分75の長さとを調整することにより、複数の上端側バランス穴76の深さと複数の下端側バランス穴77の深さとを調整することができる。実施例1の圧縮機1は、シャフト3と第1環状ピストン51と第2環状ピストン52との質量分布の偏りに応じて複数の上端側バランス穴76の深さと複数の下端側バランス穴77の深さとが調整されることにより、振動等の不具合を適切に抑制することができる。また、例えば、ロータコア611の軸方向長さ(積み厚)が変更となった場合でも、コアシート83、93に形成されるバランス孔88、98の形状や大きさを変えずとも、偏心部分73、74や偏心緩和部分75の軸方向長さや位置を変更することで任意の偏心量とすることができる。
【0051】
また、実施例1の圧縮機1の複数の第1コアシート83の各々には、シャフト3が貫通する第1シャフト用孔84が形成されている。複数の第2コアシート93の各々には、シャフト3が貫通する第2シャフト用孔94が形成されている。第1コアシートの第1シャフト用孔84の縁には、第1切欠き89が形成されている。これにより、圧縮機1は、圧縮機1の組み立て時に、ロータコア611のシャフト用孔71の側壁に形成された第1切欠き89の並び方を組み立ての作業者や検査者が観察することにより、ロータコア611の上下が正しいか、また、偏心緩和部分75において各コアシート83、93が適切な順序で並んでいるかを、コアシートの積層によってロータコア611が形成された後からでも確認することができる。
【0052】
ところで、実施例1の圧縮機1の第2コアシート93は、回転軸31を中心に第2コアシート93を180度回転したときに第1コアシート83に重なるように、第1コアシート83の形状と同じ形状に形成されていてもよい。この場合、第2コアシート93の第2シャフト用孔94の縁にも切欠きが形成される。このため、第2コアシート93は、回転軸31を中心に第1コアシート83を180度回転したもの利用することができ、第1コアシート83が作製されるときに利用される金型を用いて作製されることができる。このとき、プレス加工機は、金型または作成されたコアシートを適宜回転させる必要があるものの、1種類の形状の金型を用いるだけで複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とを作製することができ、金型制御を容易化できる。また、偏心緩和部分75において各コアシート83、93が適切な順序で並んでいるかを、シャフト用孔71の側壁に形成された第1コアシートの切欠き89と第2コアシート93の切欠きの並びを観察することによって確認することができる。
【0053】
ところで、既述の実施例1の圧縮機1の偏心緩和部分75は、第1コアシート83と第2コアシート93とが1枚ずつ交互に積層されているが、後述する実施例2や実施例3のように、予め決められた枚数ずつ交互に積層されてもよい。
【実施例2】
【0054】
実施例2の圧縮機は、
図6に示されているように、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611が他のロータコア6111に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機1と同じである。
図6は、実施例2の圧縮機のロータコア6111を示す概略断面図である。ロータコア6111は、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611の偏心緩和部分75が他の偏心緩和部分751に置換されている。偏心緩和部分751は、軸方向に4分割され、第1偏心緩和部分751-1と第2偏心緩和部分751-2と第3偏心緩和部分751-3と第4偏心緩和部分751-4とから形成されている。
【0055】
第1偏心緩和部分751-1は、第1偏心部分73と第2偏心部分74との間に配置され、第1偏心部分73に隣接している。第1偏心緩和部分751-1の軸方向における長さは、任意の長さでよいが、ここでは偏心緩和部分751の軸方向における長さの4分の1に概ね等しい場合を例示する。第1偏心緩和部分751-1は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0056】
第2偏心緩和部分751-2は、第1偏心緩和部分751-1と第2偏心部分74との間に配置され、第1偏心緩和部分751-1に隣接している。第2偏心緩和部分751-2の軸方向における長さは、偏心緩和部分751の軸方向における長さの4分の1に概ね等しい。第2偏心緩和部分751-2は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0057】
第3偏心緩和部分751-3は、第2偏心緩和部分751-2と第2偏心部分74との間に配置され、第2偏心緩和部分751-2に隣接している。第3偏心緩和部分751-3の軸方向における長さは、偏心緩和部分751の軸方向における長さの4分の1に概ね等しい。第3偏心緩和部分751-3は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0058】
第4偏心緩和部分751-4は、第3偏心緩和部分751-3と第2偏心部分74との間に配置され、第3偏心緩和部分751-3と第2偏心部分74とに隣接している。第4偏心緩和部分751-4の軸方向における長さは、偏心緩和部分751の軸方向における長さの4分の1に概ね等しい。第4偏心緩和部分751-4は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0059】
偏心緩和部分751は、第1偏心緩和部分751-1と第2偏心緩和部分751-2と第3偏心緩和部分751-3と第4偏心緩和部分751-4とが互いに固定されることにより、形成されている。ロータコア6111は、既述のロータコア611と同様に、第1偏心部分73と第2偏心部分74と偏心緩和部分751が互いに固定されることにより、形成されている。
【0060】
偏心緩和部分751は、このように形成されていることにより、回転軸31周りに質量が点対称に分布している。すなわち、回転軸31に沿った軸方向から見たとき、回転軸31周りで、第1偏心緩和部分751-1の第2バランス孔98と第2偏心緩和部分751-2の第1バランス孔88とが点対称に配置されているとともに、第3偏心緩和部分751-3の第2バランス孔98と第4偏心緩和部分751-4の第1バランス孔88とが点対称に配置されている。これにより、ロータコア6111における第1偏心部分73と第2偏心部分74とを除いた部分、すなわち偏心緩和部分751は、回転軸31を傾ける向きへのバランス孔による偏心が隣り合うバランス孔による偏心により相殺(緩和)されている。このため、偏心緩和部分751は、既述の偏心緩和部分75と同様に、回転軸31周りにおいて殆ど偏心していない。そのため、実施例2の圧縮機のロータコア6111は、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611と同様に、第1偏心部分73を形成する第1コアシート83の第1バランス孔88と、第2偏心部分74を形成する第2コアシート93の第2バランス孔98のみが、実質的にロータコア6111を偏心させるバランス穴(上端側バランス穴76、下端側バランス穴77)として機能している。よって、実施例2の圧縮機は、ロータコア6111が既述のロータコア611と同様に、複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とから形成されていることにより、ロータコア6111の製造を容易化することができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3の圧縮機は、
図7に示されているように、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611が他のロータコア6112に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機1と同じである。
図7は、実施例3の圧縮機のロータコア6112を示す概略断面図である。ロータコア6112は、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611の偏心緩和部分75が他の偏心緩和部分752に置換されている。偏心緩和部分752は、軸方向に8分割され、第1偏心緩和部分752-1から第8偏心緩和部分752-8により形成されている。
【0062】
第1偏心緩和部分752-1は、第1偏心部分73と第2偏心部分74との間に配置され、第1偏心部分73に隣接している。第1偏心緩和部分752-1の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第1偏心緩和部分752-1は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0063】
第2偏心緩和部分752-2は、第1偏心緩和部分752-1と第2偏心部分74との間に配置され、第1偏心緩和部分752-1に隣接している。第2偏心緩和部分752-2の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第2偏心緩和部分752-2は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0064】
第3偏心緩和部分752-3は、第2偏心緩和部分752-2と第2偏心部分74との間に配置され、第2偏心緩和部分752-2に隣接している。第3偏心緩和部分752-3の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第3偏心緩和部分752-3は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0065】
第4偏心緩和部分752-4は、第3偏心緩和部分752-3と第2偏心部分74との間に配置され、第3偏心緩和部分752-3と第2偏心部分74とに隣接している。第4偏心緩和部分752-4の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第4偏心緩和部分752-4は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0066】
第5偏心緩和部分752-5は、第4偏心緩和部分752-4と第2偏心部分74との間に配置され、第4偏心緩和部分752-4に隣接している。第5偏心緩和部分752-5の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第5偏心緩和部分752-5は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0067】
第6偏心緩和部分752-6は、第5偏心緩和部分752-5と第2偏心部分74との間に配置され、第5偏心緩和部分752-5に隣接している。第6偏心緩和部分752-6の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第6偏心緩和部分752-6は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0068】
第7偏心緩和部分752-7は、第6偏心緩和部分752-6と第2偏心部分74との間に配置され、第6偏心緩和部分752-6に隣接している。第7偏心緩和部分752-7の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第7偏心緩和部分752-7は、複数枚の第2コアシート93が積層されることにより、形成されている。
【0069】
第8偏心緩和部分752-8は、第7偏心緩和部分752-7と第2偏心部分74との間に配置され、第7偏心緩和部分752-7と第2偏心部分74とに隣接している。第8偏心緩和部分752-8の軸方向における長さは、偏心緩和部分752の軸方向における長さの8分の1に概ね等しい。第8偏心緩和部分752-8は、複数枚の第1コアシート83が積層されることにより、形成されている。
【0070】
偏心緩和部分752は、第1偏心緩和部分752-1から第8偏心緩和部分752-8が互いに固定されることにより、形成されている。ロータコア6112は、既述のロータコア611と同様に、第1偏心部分73と第2偏心部分74と偏心緩和部分752が互いに固定されることにより、形成されている。
【0071】
偏心緩和部分752は、このように形成されていることにより、回転軸31に関して質量が点対称に分布している。すなわち、軸方向から見たときに、回転軸31周りにおいて、第1偏心緩和部分752-1と第2偏心緩和部分752-2とが点対称に配置され、第3偏心緩和部分752-3と第4偏心緩和部分751-4とが点対称に配置され、第5偏心緩和部分752-5と第6偏心緩和部分751-6とが点対称に配置され、第7偏心緩和部分752-7と第8偏心緩和部分751-8とが点対称に配置されている。これにより、ロータコア6112における第1偏心部分73と第2偏心部分74とを除いた部分、すなわち偏心緩和部分752は、回転軸31を傾ける向きへのバランス孔による偏心が隣り合うバランス孔による偏心により相殺(緩和)されている。このため、偏心緩和部分752は、既述の偏心緩和部分75、751と同様に、回転軸31周りにおいて殆ど偏心していない。そのため、実施例3の圧縮機のロータコア6112は、既述の実施例1の圧縮機1のロータコア611や実施例2の圧縮機のロータコア6111と同様に、第1偏心部分73を形成する第1コアシート83の第1バランス孔88と、第2偏心部分74を形成する第2コアシート93の第2バランス孔98のみが、実質的にロータコア6112を偏心させるバランス穴(上端側バランス穴76、下端側バランス穴77)として機能している。よって、実施例3の圧縮機は、ロータコア6112が既述のロータコア611、6111と同様に、複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とから形成されていることにより、ロータコア6112の製造を容易化することができる。
【0072】
ところで、既述の第1コアシート83の形状は、切欠きの有無を除いて第2コアシート93の形状と同じであるが、第2コアシート93の形状と異なっていてもよい。例えば、第1コアシート83の第1バランス孔88の形状と、第2コアシート93の第2バランス孔98の形状とが、異なる形状に形成されていてもよい。この場合でも、圧縮機は、ロータコアが複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93とから形成されることにより、ロータコア611の製造を容易化することができる。
【0073】
ところで、既述の第1コアシート83は、第1切欠き89が形成されているが、第1切欠き89が省略されていてもよい。また、既述の第2コアシート93は、第1コアシート83の第1切欠き89に対応する切欠きが形成されていないが、対応する切欠きが形成されていてもよい。この場合でも、圧縮機は、ロータコア611を形成する全てのコアシートがバランス孔を備えることにより、既述の実施例の圧縮機と同様に、複数のコアシートの作製を容易化することができる。
【0074】
ところで、既述の実施例の圧縮機では、ロータコアの複数の上端側バランス穴76の深さは、複数の下端側バランス穴77の深さに等しいが、複数の下端側バランス穴77の深さと異なっていてもよい。この場合でも、圧縮機は、ロータコアに形成される複数のコアシートが複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93との2種類から形成されることにより、既述の実施例の圧縮機と同様に、複数のコアシートの作製を容易化することができる。
【0075】
ところで、既述の実施例の圧縮機の複数の上端側バランス穴76は、上端面615から窪んだ有底の穴に形成されているが、ロータコアの内部に形成される空洞に形成されてもよい。たとえば、ロータコアは、偏心緩和部分75と同様に形成された上端側偏心緩和部をさらに備えている。上端側偏心緩和部は、第1偏心部分73が上端側偏心緩和部と偏心緩和部分75とに挟まれるように、配置され、第1偏心部分73に固定されている。また、複数の下端側バランス穴77は、下端面616から窪んだ穴に形成されているが、ロータコアの内部に形成される空洞に形成されてもよい。たとえば、ロータコアは、偏心緩和部分75と同様に形成された下端側偏心緩和部をさらに備えている。下端側偏心緩和部は、第2偏心部分74が下端側偏心緩和部と偏心緩和部分75とに挟まれるように、配置され、第2偏心部分74に固定されている。このような場合でも、圧縮機は、ロータコアが複数の第1コアシート83と第2コアシート93とから形成されることにより、既述の実施例の圧縮機と同様に、ロータコアの製造を容易化することができる。
【0076】
ところで、既述の実施例の圧縮機では、第1偏心部分73と第2偏心部分74とがロータコアの端部のみに形成されているが、偏心緩和部分75の一部に第1偏心部分73や第2偏心部分74が形成されていてもよい。この場合でも、圧縮機は、ロータコアに形成される複数のコアシートが複数の第1コアシート83と複数の第2コアシート93との2種類から形成されることにより、既述の実施例の圧縮機と同様に、複数のコアシートの作製を容易化することができる。
【0077】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :圧縮機
3 :シャフト
5 :圧縮部
6 :モータ部
31 :回転軸
61 :ロータ
62 :ステータ
71 :シャフト用孔
72 :磁石用孔
73 :第1偏心部分(偏心部分)
74 :第2偏心部分(偏心部分)
75 :偏心緩和部分
76 :上端側バランス穴
77 :下端側バランス穴
83 :第1コアシート
84 :第1シャフト用孔
88 :第1バランス孔
89 :第1切欠き
93 :第2コアシート
94 :第2シャフト用孔
98 :第2バランス孔
611:ロータコア
【要約】
【課題】バランス穴が形成されたロータコアの製造を容易化する。
【解決手段】圧縮機は、回転軸31に沿って配置されるシャフトと、シャフトに固定されるロータコア611と、回転軸31を中心にロータコア611を回転させるステータと、シャフトが回転することにより駆動する圧縮部とを備えている。ロータコア611は、複数のコアシートが積層されることにより形成されている。複数のコアシートの各々には、重心を回転軸31周りの径方向に偏らせるバランス孔が形成されている。ロータコア611は、第1偏心部分73と偏心緩和部分75とを備える。第1偏心部分73は、複数の第1コアシートの複数のバランス孔が回転軸31に平行な軸方向に連続することで第1偏心部分73の重心が径方向に偏心している。偏心緩和部分75は、第1コアシートの第1バランス孔による偏心が、第2コアシートの第2バランス孔による偏心によって相殺されている。
【選択図】
図2