(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】巾木のコーナー部材
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
E04F19/04 101D
(21)【出願番号】P 2017047814
(22)【出願日】2017-03-13
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3127147(JP,U)
【文献】特開2002-363359(JP,A)
【文献】特開2010-174196(JP,A)
【文献】特開2015-009425(JP,A)
【文献】特開2004-307565(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/037526(JP,A1)
【文献】特開2009-144146(JP,A)
【文献】特開2014-070360(JP,A)
【文献】実開平06-006588(JP,U)
【文献】特開2002-348417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出隅コーナー部または入隅コーナー部に設置される巾木のコーナー部材であって、
可撓性を有し、JIS K 6253デュロメータタイプAで測定したショアA硬度が30A~80Aであり、
ポリ塩化ビニル系熱可塑性
エラストマー、熱可塑性ポリウレタン樹脂、又は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのいずれかの樹脂で構成されており、
JIS K 6262に基づき測定される圧縮永久歪が20%~90%であることを特徴とする巾木のコーナー部材。
【請求項2】
前記出隅コーナー部に設置され、
平面視一方向の延びる第一側板部と、
該第一側板部と平面視において直交する方向の延びる第二側板部と、
前記第一側板部と前記第二側板部とを連結する面取り板部と、を備え、
前記第一側板部の裏側には、前記巾木に形成された溝部に挿入される第一挿入部が設けられ、
前記第二側板部の裏側には、前記巾木に形成された溝部に挿入される第二挿入部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のコーナー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巾木のコーナー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建築物の壁と床との取り合い部分には、壁に沿って長尺状の巾木が設置されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、出隅や入隅等のコーナー部分において、長尺状の巾木どうしを突き合わせて納めると、壁の施工精度等により、突き合わされる巾木間に隙間が生じたり、ずれが生じたりすることがある。このため、コーナー部分に、出隅または入隅の形状に対応したコーナー部材を設置することがある(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-26111号公報
【文献】特開2009-281052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コーナー部分では、一方の壁と他方の壁とが直角に立っていないと、壁と巾木のコーナー部材との間に隙間が生じる等の納まり上の不具合が生じるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁との隙間の発生を抑制することができる巾木のコーナー部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る巾木のコーナー部材は、出隅コーナー部または入隅コーナー部に設置される巾木のコーナー部材であって、可撓性を有し、JIS K 6253デュロメータタイプAで測定したショアA硬度が30A~80Aであることを特徴とする。
【0008】
このように構成されたコーナー部材では、可撓性を有し、JIS K 6253デュロメータタイプAで測定したショアA硬度が30A~80Aである。よって、壁に不陸があっても、巾木のコーナー部材は壁の形状、向き等に沿って変形して壁に追従するため、壁との隙間の発生が抑制させる。
【0009】
また、本発明に係る巾木のコーナー部材は、前記出隅コーナー部に設置され、平面視一方向の延びる第一側板部と、該第一側板部と平面視において直交する方向の延びる第二側板部と、前記第一側板部と前記第二側板部とを連結する面取り板部と、を備えてもよい。
【0010】
このように構成されたコーナー部材では、面取り板部が設けられているため、通行人が壁の出隅の下部に接触、衝突した際には、衝撃が緩和される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る巾木のコーナー部材によれば、壁との隙間の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材の設置例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材の上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る巾木のコーナー部材の設置例を示す斜視図である。
図1に示すように、壁W(以下、W1,W2と称することがある。)と床Fとの取り合い部分には、長尺状の巾木1(以下、1A,1Bと称することがある。)が設置されている。また、壁Wどうしが交わり凸をなす出隅部分(出隅コーナー部)には、巾木出隅役物(巾木のコーナー部材)2が設置されている。また、壁Wどうしが交わり凹んだ入隅部分(入隅コーナー部)には、巾木入隅役物(巾木のコーナー部材)4が設置されている。
【0014】
以下において、巾木出隅役物2について説明する。
図2は、巾木出隅役物2の斜視図である。
図3は、巾木出隅役物2の上面図である。
図4は、巾木出隅役物2の側面図である。
図2から
図4に示すように、巾木出隅役物2は、コーナー部本体20と、コーナー部本体20の下側に配置されたコーナー部下部30と、を有している。コーナー部本体20とコーナー部下部30とは、互いに連結されている。
【0015】
コーナー部本体20は、一方の壁W1(
図1参照。以下同じ。)に沿って配置される第一面部(第一側板部)21と、他方の壁W2(
図1参照。以下同じ。)に沿って配置される第二面部(第二側板部)22と、第一面部21と第二面部22とを連結する面取り部(面取り板部)23と、を有している。
【0016】
平面視において、第一面部21と第二面部22とは、各延長線が直交するように配置されている。平面視において、面取り部23は、第一面部21及び第二面部22と、それぞれ約135度傾斜して配置されている。
【0017】
第一面部21、第二面部22及び面取り部23の上端には、上方に向かうにしたがって次第に各第一面部21、第二面部22及び面取り部23の裏側(壁W側)に向かうように傾斜した第一傾斜部24が形成されている。
【0018】
第一傾斜部24の上端には、略水平に形成された上面部25が形成されている。上面部25の端部が壁Wに当接するようにして、巾木出隅役物2は設置されている。
【0019】
第一面部21、第二面部22及び面取り部23の各下端は、略水平面に沿って配置された取付壁部26で連結されている。取付壁部26には、上下方向に貫通する複数の取付孔27が形成されている。
【0020】
第一面部21の裏側には、第一面部21の延在方向(一方の壁W1)に沿って延びる第一挿入部28が設けられている。第二面部22の裏側には、第二面部22の延在方向(他方の壁W2)に沿って延びる第二挿入部29が設けられている。
【0021】
第一面部21の第一挿入部28は、一方の壁W1に沿って設置された長尺状の巾木1A(
図1参照。以下同じ。)に形成された溝部(不図示)に挿入されている。第二面部22の第二挿入部29は、他方の壁W2に沿って設置された長尺状の巾木1B(
図1参照。以下同じ。)に形成された溝部(不図示)に挿入されている。これにより、巾木出隅役物2の巾木1に対する位置ずれや、巾木出隅役物2が巾木1から脱落することが抑制される。
【0022】
コーナー部下部30は、第一面部21の下側に設置される第一下部(第一側板部)31と、第二面部22の下側に設置される第二下部(第二側板部)32と、面取り部23の下側に設置される面取り下部(面取り板部)33と、を有している。
【0023】
平面視において、第一下部31と第二下部32とは、各延長線が直交するように配置されている。平面視において、面取り下部33は、第一下部31及び第二下部32と、それぞれ約135度傾斜して配置されている。
【0024】
第一下部31、第二下部32及び面取り下部33の各上端は、略水平面に沿って配置された取付壁部36で連結されている。取付壁部36には、上方に延びる複数の突起35が形成されている。
【0025】
コーナー部下部30に設けられた突起35は、コーナー部本体20に形成された取付孔27に挿入されている。これにより、コーナー部本体20とコーナー部下部30とは、互いに連結されている。
【0026】
コーナー部本体20及びコーナー部下部30の材料の特性を以下に示す。
【0027】
【0028】
表1に示すように、JIS K 6253デュロメータタイプAで測定したショアA硬度が30A~80Aである。具体的には、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)では、硬度(ショア硬さ)40A~80Aが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)では、硬度(ショアA硬度)30A~80Aが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)では、硬度(ショアA硬度)60A~80Aが好ましい。熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)では、硬度(ショアA硬度)70A~80Aが好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)では、硬度(ショアA硬度)40A~80Aが好ましい。
【0029】
また、表1に示すように、JIS K 6262の「加硫ゴム及び可塑性ゴムの常温・高温及び低温における圧縮永久歪みの求め方」に基づき測定される圧縮永久歪が20%~90%である。具体的には、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)では、圧縮永久歪50%~90%が好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)では、圧縮永久歪40~80%が好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)では、圧縮永久歪75~90%が好ましい。熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)では、圧縮永久歪20~50%が好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)では、圧縮永久歪30~60%が好ましい。
【0030】
本実施形態では、コーナー部本体20及びコーナー部下部30は、それぞれ射出成形により成形されている。
【0031】
上記の巾木1A,1B及び巾木出隅役物2を施工する際には、一方の巾木1Aと巾木出隅役物2とを接着剤で固定する。この状態で、巾木1Aと巾木出隅役物2を壁W1にタッカー等で固定し、その後他方の巾木1Bを巾木出隅役物2に接着するとともに壁W2にタッカー等で固定する。
【0032】
なお、巾木出隅役物2は壁の出隅に対応した形状をなしているのに対して、巾木入隅役物4は壁の入隅に対応した形状をなしており、説明を省略する。
【0033】
このように構成された巾木出隅役物2及び巾木入隅役物4では、可撓性を有し、硬度が30A~80Aである。よって、壁Wに不陸があっても、巾木出隅役物2及び巾木入隅役物4は壁Wの形状、向き等に沿って変形して壁Wに追従するため、壁Wとの隙間の発生が抑制させる。
例えば、平面視における壁W1,W2のなす角度が90度よりも大きい場合には、巾木出隅役物2は、面取り部23及び面取り下部33に対して、第一面部21、第二面部22、第一下部31及び第二下部32がそれぞれ135度以上に開くように変形して、壁W1,W2に追従する。また、平面視における壁W1,W2のなす角度が90度よりも小さい場合には、巾木出隅役物2は、面取り部23及び面取り下部33に対して、第一面部21、第二面部22、第一下部31及び第二下部32がそれぞれ135度以下に開くように変形して、壁W1,W2に追従する。
【0034】
また、巾木出隅役物2には面取り部23及び面取り下部33が設けられているため、通行人が壁の出隅の下部に接触、衝突した際には、衝撃が緩和される。さらに、巾木出隅役物2は、上記のように可撓性を有するため、衝突した際の衝撃が吸収される。
【0035】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…巾木
2…巾木出隅役物(巾木のコーナー部材)
4…巾木入隅役物(巾木のコーナー部材)
20…コーナー部本体
21…第一面部(第一側板部)
22…第二面部(第二側板部)
23…面取り部(面取り板部)
24…第一傾斜部
25…上面部
26…取付壁部
27…取付孔
28…第一挿入部
29…第二挿入部
30…コーナー部下部
31…第一下部(第一側板部)
32…第二下部(第二側板部)
33…面取り下部(面取り板部)
36…取付壁部
35…突起
F…床
W…壁