(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20220419BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20220419BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220419BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220419BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20220419BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20220419BHJP
H01G 9/035 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0525
H01M10/058
H01M4/587
H01M6/16 A
H01G11/64
H01G9/035
(21)【出願番号】P 2018059430
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
(72)【発明者】
【氏名】大西 仁志
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡子
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010820(WO,A1)
【文献】特開2016-152140(JP,A)
【文献】特開2016-051600(JP,A)
【文献】特開2017-091687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01M 4/00- 4/62
H01M 6/00- 6/22
H01G 11/00- 11/86
H01G 9/02- 9/035
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極
であって前記負極活物質に占める前記天然黒鉛の割合が80質量%以上である負極を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、
下記式(1)で表される化合物を含有する電池用非水電解液。
【化1】
〔式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基を表す。〕
【請求項2】
電池用非水電解液の全量に対する前記式(1)で表される化合物の含有量が、0.001質量%~10質量%である請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
更に、1つのホウ素原子に対し3つの酸素原子が結合した構造を含むホウ素化合物(X)を含有する請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記ホウ素化合物(X)の分子量が、1000以下である請求項3に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記ホウ素化合物(X)が、下記式(X1)~下記式(X3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3又は請求項4に記載の電池用非水電解液。
【化2】
〔式(X1)中、R
X11~R
X13は、それぞれ独立に、無置換のアリール基又は炭素数1~12の脂肪族基を表す。
式(X2)中、nは、1~5の整数を表し、M
+は、Li
+イオン又はH
+イオンを表す。nが2~5の整数である場合、複数のM
+は、同一であっても異なっていてもよい。
式(X3)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は式(RX)で表される基を表す。式(RX)中、R
X31~R
X33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は、結合位置を表す。〕
【請求項6】
式(X1)中、R
X11~R
X13は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を表し、
式(X2)中、M
+は、Li
+イオンを表し、
式(X3)中、Rは、式(RX)で表される基を表す請求項5に記載の電池用非水電解液。
【請求項7】
正極と、
天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極
であって前記負極活物質に占める前記天然黒鉛の割合が80質量%以上である負極と、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
【請求項8】
請求項7に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く試用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
従来より、上記のリチウム二次電池を初めとする電池の非水電解液に、種々の添加剤を含有させることが行われている。
例えば、リチウム二次電池の非水電解液に種々の環状硫酸エステル化合物を含有させて電池性能を改善する試みがなされている(例えば、特許文献1~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-189042号公報
【文献】特開2003-151623号公報
【文献】特開2003-308875号公報
【文献】特開2004-22523号公報
【文献】特開2005-011762号公報
【文献】国際公開第2012/053644号
【文献】米国特許出願公開第2016/0359196号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池用非水電解液中の添加剤として、従来の環状硫酸エステル化合物とは異なる構造の環状硫酸エステル化合物を用いて電池抵抗を低減させることが求められる場合がある。
例えば、環状硫酸エステル化合物の種類と負極活物質の種類との組み合わせによっては、非水電解液に環状硫酸エステル化合物を添加した場合に、環状硫酸エステル化合物を添加しなかった場合と比較して、却って電池抵抗が上昇してしまう場合がある。
本開示の目的は、電池用非水電解液中の添加剤として、従来の環状硫酸エステル化合物とは異なる環状硫酸エステル化合物を含有し、かつ、電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、下記式(1)で表される化合物を含有する電池用非水電解液。
【0006】
【0007】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基を表す。〕
【0008】
<2> 電池用非水電解液の全量に対する前記式(1)で表される化合物の含有量が、0.001質量%~10質量%である<1>に記載の電池用非水電解液。
【0009】
<3> 更に、1つのホウ素原子に対し3つの酸素原子が結合した構造を含むホウ素化合物(X)を含有する<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
<4> 前記ホウ素化合物(X)の分子量が、1000以下である<3>に記載の電池用非水電解液。
<5> 前記ホウ素化合物(X)が、下記式(X1)~下記式(X3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<3>又は<4>に記載の電池用非水電解液。
【0010】
【0011】
式(X1)中、RX11~RX13は、それぞれ独立に、無置換のアリール基又は炭素数1~12の脂肪族基を表す。
式(X2)中、nは、1~5の整数を表し、M+は、Li+イオン又はH+イオンを表す。nが2~5の整数である場合、複数のM+は、同一であっても異なっていてもよい。
式(X3)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は式(RX)で表される基を表す。式(RX)中、RX31~RX33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は、結合位置を表す。
【0012】
<6> 式(X1)中、RX11~RX13は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を表し、
式(X2)中、M+は、Li+イオンを表し、
式(X3)中、Rは、式(RX)で表される基を表す<5>に記載の電池用非水電解液。
【0013】
<7> 正極と、
天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極と、
<1>~<6>のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<8> <7>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電池用非水電解液中の添加剤として、従来の環状硫酸エステル化合物とは異なる環状硫酸エステル化合物を含有し、かつ、電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、及び、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
【
図3】本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極を備える電池に用いられる電池用非水電解液であって、電池用非水電解液中の添加剤として、従来の環状硫酸エステル化合物とは異なる環状硫酸エステル化合物として、下記式(1)で表される化合物を含有する。
本開示の非水電解液によれば、電池抵抗を低減できる。
より詳細には、天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極を備える電池の非水電解液として、式(1)で表される化合物を含有する非水電解液を用いることにより、電池抵抗が低減される。
かかる効果が奏される理由は明らかではないが、人造黒鉛と比較して、結晶子サイズが小さく非晶質性が高い天然黒鉛と、環状硫酸エステル化合物に該当しかつ縮合環式化合物にも該当する式(1)で表される化合物と、の組み合わせにより、電池の負極上に、式(1)で表される化合物に由来する低抵抗な被膜が形成されるためと考えられる。
これに対し、人造黒鉛を含む負極活物質を含む負極を備える電池の非水電解液として、式(1)で表される化合物を含有する非水電解液を用いた場合には、電池抵抗(特に、低温での電池抵抗)が却って上昇してしまう場合がある(後述の表3中、比較例102及び103参照)。
【0018】
下記式(1)で表される化合物は、以下の構造に示すとおり、環状硫酸エステル化合物に該当し、かつ、縮合環式化合物にも該当する。
下記式(1)で表される化合物は、縮合環式化合物に該当しない従来の環状硫酸エステル化合物(例えば、後述の比較化合物(C1)及び(C2))と比較して、開放電圧低下率を改善(即ち、低減)する効果、及び、電池容量を向上させる効果に優れる。
【0019】
<式(1)で表される化合物>
【0020】
【0021】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基を表す。
【0022】
R1又はR2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0023】
R1又はR2で表される炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0024】
R1又はR2で表される炭素数1~3のハロゲン化アルキル基中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
R1又はR2で表される炭素数1~3のハロゲン化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はパーフルオロエチル基が好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0025】
R1及びR2としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、ルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はパーフルオロエチル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1-1)~下記式(1-11)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(1-1)~化合物(1-11)ともいう)が挙げられるが、式(1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
【0027】
【0028】
式(1)で表される化合物の合成方法については、例えば、米国特許出願公開第2016/0359196号明細書等の公知文献を適宜参照できる。
【0029】
本開示の非水電解液は、式(1)で表される化合物を、1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
本開示の非水電解液の全量に対する式(1)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0030】
本開示の非水電解液は、式(1)で表される化合物以外のその他の添加剤を含有していてもよい。
本開示の非水電解液がその他の添加剤を含有する場合、含有されるその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
<ホウ素化合物(X)>
本開示の非水電解液は、その他の添加剤として、1つのホウ素原子に対し3つの酸素原子が結合した構造を含むホウ素化合物(X)を含有していてもよい。
本開示の非水電解液が、ホウ素化合物(X)を含有する場合は、本開示の非水電解液がホウ素化合物(X)を含有せず、ホウ素化合物(X)以外のその他のホウ素化合物を含有する場合と比較して、電池抵抗(特に、電池を保存する前の初期の電池抵抗)を更に低減させることができる。
この理由は明らかではないが、ホウ素化合物(X)は、例えば、1つのホウ素原子に対し4つの酸素原子が結合した構造を含むホウ素化合物(例えば、後述のLiBOB)と比較して、Bに結合するOの数が少ないことから、グラファイトのエッジ面における反応性により優れ、その結果、負極上に、より均質な被膜が形成されるためと考えられる。より詳細には、非水電解液の添加剤として、式(1)で表される化合物とホウ素化合物とを併用することで、式(1)で表される化合物とホウ素化合物とが混成化され、負極上に低抵抗被膜が形成されると考えられる。この際、ホウ素化合物として、ホウ素化合物(X)を選択することにより、負極上に、より均質な低抵抗被膜が形成され、その結果、電池抵抗がより効果的に低減されると考えられる。
【0032】
ホウ素化合物(X)は、1つのホウ素原子に対し3つの酸素原子が結合した構造(言い換えれば、3つの酸素原子が結合しているホウ素原子)を、1つのみ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。
また、ホウ素化合物(X)は、3つの酸素原子が結合しているホウ素原子以外のホウ素原子を含んでいてもよい。
【0033】
ホウ素化合物(X)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、低分子化合物であることが好ましい。
ホウ素化合物(X)の分子量は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下であり、更に好ましくは400以下であり、更に好ましくは300以下である。
【0034】
本開示の非水電解液がホウ素化合物(X)を含有する場合、含有されるホウ素化合物(X)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本開示の非水電解液がホウ素化合物(X)を含有する場合、本開示の非水電解液の全量に対するホウ素化合物(X)の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0035】
本開示の非水電解液がホウ素化合物(X)を含有する場合における、式(1)で表される化合物の含有量の好ましい範囲は、前述した、本開示の非水電解液の全量に対する式(1)で表される化合物の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0036】
ホウ素化合物(X)は、下記式(X1)~下記式(X3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
【0038】
式(X1)中、RX11~RX13は、それぞれ独立に、無置換のアリール基又は炭素数1~12の脂肪族基を表す。
式(X2)中、nは、1~5の整数を表し、M+は、Li+イオン又はH+イオンを表す。nが2~5の整数である場合、複数のM+は、同一であっても異なっていてもよい。
式(X3)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は式(RX)で表される基を表す。式(RX)中、RX31~RX33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は、結合位置を表す。
【0039】
式(X1)中、RX11~RX13で表される無置換のアリール基としては、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基などが挙げられるが、フェニル基が好ましい。
【0040】
式(X1)中、RX11~RX13で表される炭素数1~12の脂肪族基は、それぞれ独立に、直鎖状の脂肪族基であってもよいし、分岐状の脂肪族基であってもよいし、環状構造を有する脂肪族基であってもよい。
式(X1)中、RX11~RX13で表される炭素数1~12の脂肪族基は、それぞれ独立に、飽和脂肪族基(即ち、アルキル基)であってもよいし、不飽和脂肪族基(即ち、アルケニル基又はアルキニル基)であってもよい。
【0041】
RX11~RX13で表される炭素数1~12の脂肪族基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族基(即ち、アルキル基);
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基(2-プロペニル基)、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ヘキセニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基と同義)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル基、1-ヘキシニル基などの、直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪族基(即ち、アルケニル基又はアルキニル基);
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基などの、環状構造を有する脂肪族基;
などが挙げられる。
【0042】
RX11~RX13で表される炭素数1~12の脂肪族基としては、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、又はシクロヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0043】
式(X1)中、RX11~RX13は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はフェニル基であることがより好ましく、メチル基又はフェニル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0044】
式(X2)中、nは、1~5の整数を表し、M+は、Li+イオン又はH+イオンを表す。nが2~5の整数である場合、複数のM+は、同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
式(X2)中、nとしては、1~3の整数が好ましく、2が特に好ましい。
式(X2)中、M+としては、Li+イオンが特に好ましい。
【0046】
式(X3)中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は式(RX)で表される基を表す。式(RX)中、RX31~RX33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、*は、結合位置を表す。
【0047】
式(X3)中、Rで表される炭素数1~12のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
Rで表される炭素数1~12のアルキル基は、非置換でもよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)等で置換されていてもよい。
【0048】
式(X3)中、Rで表される炭素数2~12のアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2~6のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2~4のアルケニル基が更に好ましい。
上記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
Rで表される炭素数2~12のアルケニル基は、非置換でもよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)等で置換されていてもよい。
【0049】
式(X3)中、Rとしては、式(RX)で表される基が好ましい。
式(RX)中、RX31~RX33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数6~12のアリール基を表す。
【0050】
RX31~RX33で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0051】
RX31~RX33で表される炭素数1~12のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
RX31~RX33で表される炭素数1~12のアルキル基は、非置換でもよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)等で置換されていてもよい。
【0052】
RX31~RX33で表される炭素数2~12のアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2~6のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2~4のアルケニル基が更に好ましい。
上記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
RX31~RX33で表される炭素数2~12のアルケニル基は、非置換でもよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)等で置換されていてもよい。
【0053】
RX31~RX33で表される炭素数6~12のアリール基としては、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルベンゼンから水素原子が1個外れた基(例えば、ベンジル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等)、ナフチル基、ナフタレンのアルキル基置換体から水素原子が1個外れた基等が挙げられる。
RX31~RX33で表される炭素数6~12のアリール基は、非置換でもよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)等で置換されていてもよい。
【0054】
式(X3)中、RX31~RX33の少なくとも1個は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であることが好ましく、RX31~RX33の少なくとも2個は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であることがより好ましい。この場合の、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基の好ましい態様は前述のとおりであり、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基の中でもアルキル基が好ましい。
【0055】
式(X3)で表されるホウ素化合物は、例えば、Chemische Berichte, Volume 68, Issue 6, Pages 1949-55, 1965に記載の方法で合成し得る。
【0056】
式(X1)~式(X3)の特に好ましい態様は、
式(X1)中、RX11~RX13は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を表し、
式(X2)中、M+は、Li+イオンを表し、
式(X3)中、Rは、式(RX)で表される基を表す態様である。
【0057】
以下、式(X1)で表される化合物の具体例を示すが、式(X1)で表される化合物は、以下の具体例には限定されない。
【0058】
【0059】
以下、式(X2)で表される化合物の具体例を示すが、式(X2)で表される化合物は、以下の具体例には限定されない。
式(X2)で表される化合物の具体例としては、
三ホウ酸リチウム(nが1であり、M+がLi+イオンである化合物)、
四ホウ酸リチウム(nが2であり、2つのM+がLi+イオンである化合物;後述する化合物(X2-1))、
五ホウ酸リチウム(nが3であり、3つのM+がLi+イオンである化合物)、
六ホウ酸リチウム(nが4であり、4つのM+がLi+イオンである化合物)、
七ホウ酸リチウム(nが5であり、5つのM+がLi+イオンである化合物)、
等が挙げられる。
【0060】
以下、式(X3)で表される化合物の具体例を示すが、式(X3)で表される化合物は、以下の具体例には限定されない。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
次に、非水電解液の他の成分について説明する。非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。
【0066】
(非水溶媒)
非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0067】
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0068】
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
【0069】
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0070】
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0071】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、あるいはメチルγ-ブチロラクトン、エチルγ-ブチロラクトン、エチルδ-バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。γ-ブチロラクトンが最も好ましい。
【0072】
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0073】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ-ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0074】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2-メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0075】
(鎖状の非プロトン性溶媒)
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
【0076】
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%~100質量%、さらに好ましくは20質量%~90質量%、特に好ましくは30質量%~80質量%である。
【0077】
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0078】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0079】
(溶媒の組み合わせ)
本開示の非水電解液に含有される非水溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類または複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類または複数種類用いても、または環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
【0080】
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0081】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0082】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95~80:20、さらに好ましくは10:90~70:30、特に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0083】
(その他の溶媒)
非水溶媒としては、上記以外のその他の溶媒も挙げられる。
その他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル-N,N-ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N-メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CH2CH2O)aH
HO[CH2CH(CH3)O]bH
CH3O(CH2CH2O)cH
CH3O[CH2CH(CH3)O]dH
CH3O(CH2CH2O)eCH3
CH3O[CH2CH(CH3)O]fCH3
C9H19PhO(CH2CH2O)g[CH(CH3)O]hCH3
(Phはフェニル基)
CH3O[CH2CH(CH3)O]iCO[OCH(CH3)CH2]jOCH3
前記式中、a~fは、5~250の整数、g~jは2~249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0084】
(電解質)
本開示の非水電解液は、種々公知の電解質を使用することができ、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
【0085】
電解質の具体例としては、(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0086】
LiC(SO2R7)(SO2R8)(SO2R9)、LiN(SO2OR10)(SO2OR11)、LiN(SO2R12)(SO2R13)(ここでR7~R13は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子又は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF6、LiBF4、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiClO4、LiAsF6、LiNSO2[CkF(2k+1)]2(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)が好ましい。
【0087】
電解質は、通常は、非水電解液中に0.1mol/L~3mol/L、好ましくは0.5mol/L~2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0088】
本開示の非水電解液において、非水溶媒として、γ-ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPF6を含有することが望ましい。LiPF6は、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPF6は単独で使用してもよいし、LiPF6とそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF6以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPF6とLiBF4、LiPF6とLiN[SO2CkF(2k+1)]2(k=1~8の整数)、LiPF6とLiBF4とLiN[SO2CkF(2k+1)](k=1~8の整数)などが例示される。
【0089】
リチウム塩中に占めるLiPF6の比率は、好ましくは1質量%~100質量%、より好ましくは10質量%~100質量%、さらに好ましくは50質量%~100質量%である。このような電解質は、0.1mol/L~3mol/L、好ましくは0.5mol/L~2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
【0090】
本開示の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0091】
〔リチウム二次電池〕
本開示のリチウム二次電池は、正極と、天然黒鉛を含む負極活物質を含む負極と、本開示の非水電解液と、を含む。
【0092】
<負極>
負極は、天然黒鉛を含む負極活物質を含む。
負極活物質の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状のいずれの形態であってもよい。
【0093】
前述のとおり、天然黒鉛は、人造黒鉛と比較して、結晶子サイズが小さく非晶質性が高い。本開示の非水電解液による電池抵抗低減の効果は、かかる性質を有する天然黒鉛と、前述の式(1)で表される化合物と、の組み合わせによって達成される。
【0094】
ここで、非晶質性は、ラマンスペクトルのR値〔I(1350)/I(1850)〕(以下、単に「R値〔I(1350)/I(1850)〕」ともいう)によって評価できる。
R値〔I(1350)/I(1850)〕は、ラマンシフト1850cm-1における強度(I(1850))に対するラマンシフト1350cm-1における強度(I(1350))の比である。
I(1850)は、グラファイト構造を反映したGピークの強度である。
I(1350)は、不規則性を反映したDピークの強度である。
R値〔I(1350)/I(1850)〕が高い程、非晶質性が高いこと意味する。
【0095】
天然黒鉛のR値〔I(1350)/I(1850)〕は、好ましくは0.090以上であり、より好ましくは0.100以上であり、更に好ましくは0.110以上であり、更に好ましくは0.120以上である。
天然黒鉛のR値〔I(1350)/I(1850)〕の上限は特に制限はない。上限は、例えば0.300であり、好ましくは0.200であり、より好ましくは0.150である。
【0096】
また、天然黒鉛の結晶子サイズは、X線解析によって測定できる。
天然黒鉛の結晶子サイズは、好ましくは120Å以下であり、より好ましくは100Å以下であり、更に好ましくは80Å以下である。
天然黒鉛の結晶子サイズの下限は、例えば30Åであり、好ましくは40Åである。
【0097】
天然黒鉛の(002)面の面間隔d(002)は、好ましくは0.340nm以下である。
天然黒鉛の(002)面の面間隔d(002)の下限は、例えば0.334nmである。
天然黒鉛の(002)面の面間隔d(002)は、X線解析によって測定できる。
【0098】
負極活物質に占める天然黒鉛の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0099】
負極活物質は、天然黒鉛以外の成分を含んでいてもよい。
天然黒鉛以外の成分としては、カーボンブラック、活性炭、人造黒鉛、非晶質炭素材料等の炭素材料;シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金等の金属又は合金;チタン酸リチウム;等が挙げられる。
非晶質炭素材料としては、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが挙げられる。
また、負極活物質としては、非晶質炭素材料で被覆された天然黒鉛;金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆された天然黒鉛;等を用いてもよい。
【0100】
負極は、負極集電体を含んでもよい。
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0101】
<正極>
正極は、正極活物質及び正極集電体を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNiXCo(1-X)O2〔0<X<1〕、α-NaFeO2型結晶構造を有するLi1+αMe1-αO2(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1-α)≦1.6)、LiNixCoyMnzO2〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2等)、LiFePO4、LiMnPO4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0102】
正極における正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0103】
<セパレータ>
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0104】
<電池の構成>
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0105】
本開示のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0106】
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0107】
なお、本開示のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0108】
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0109】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量を意味し、「wt%」は、質量%を意味する。
【0110】
〔実施例1〕
以下の手順にて、
図3に示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」とも称する)を作製した。
【0111】
<負極の作製>
アモルファスコート天然黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
ここで、アモルファスコート天然黒鉛は、天然黒鉛を含む負極活物質の一例であり、アモルファス(非晶質)カーボンによって被覆された天然黒鉛である。
アモルファスコート天然黒鉛に占める天然黒鉛の割合は99質量%である。
以下、上記のアモルファスコート天然黒鉛を、「天然黒鉛1」と称することがある。
【0112】
天然黒鉛1(アモルファスコート天然黒鉛)の、R値、面間隔d(002)、及び結晶子サイズは、以下のとおりであった。なお、天然黒鉛1(アモルファスコート天然黒鉛)に占める天然黒鉛の割合は99質量%であるため、これらの値は、実質的に、天然黒鉛1(アモルファスコート天然黒鉛)中の天然黒鉛の値である。
・ラマンスペクトルのR値〔I(1350)/I(1850)〕=0.123
・X線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)=0.33601nm
・X線解析で測定した結晶子サイズ=61.61Å
【0113】
<正極の作製>
LiCoO2(90質量部)、アセチレンブラック(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混練してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0114】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ34:33:33(質量比)の割合で混合した中に、電解質であるLiPF6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
得られた溶液に対して、添加剤として、式(1)で表される化合物の具体例である下記化合物(1-1)を、非水電解液全量に対する含有量が0.5質量%となるように添加して、非水電解液を得た。
【0115】
【0116】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に非水電解液20μlを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの
図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0117】
<評価>
得られたコイン型電池について、以下の評価を実施した。
以下、「コンディショニング」とは、コイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.2Vとの間で充放電を三回繰り返すことを指す。
以下、「高温保存」とは、コイン型電池を、恒温槽内で、60℃で120時間保存する操作を意味する。
【0118】
(電池抵抗;高温保存前のインピーダンス(25℃、-10℃))
上記で得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Chargeの略)を80%に調整し、次いで、コイン型電池についてインピーダンスの測定を行い、得られた結果を、高温保存前のインピーダンスとした。インピーダンスの測定は、25℃及び-10℃の2つの温度条件にて行った。
後述の比較例1のコイン型電池についても同様に、高温保存前のインピーダンスを測定した。
比較例1における高温保存前のインピーダンスを100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存前のインピーダンス(相対値)を求めた。
結果を表1に示す。
【0119】
(電池抵抗;高温保存後のインピーダンス(25℃、-10℃))
コンディショニング後であってSOCを80%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで高温保存を施す操作を追加したこと以外は前述の高温保存前のインピーダンスの測定と同様にして、高温保存後のインピーダンスを測定した。
後述の比較例1のコイン型電池についても同様に、高温保存後のインピーダンスを測定した。
比較例1における高温保存後のインピーダンスを100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存後のインピーダンス(相対値)を求めた。
結果を表1に示す。
【0120】
(電池抵抗;高温保存前のDCIR(25℃、-20℃))
上記で得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、コイン型電池の高温保存前のDCIR(Direct current internal resistance;直流抵抗)を測定した。DCIRの測定は、25℃及び-20℃の2つの温度条件にて行った。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート1CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート2CでのCC10s放電、300秒間の休止、及び、放電レート5CでのCC10s放電をこの順に行った。
なお、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
各放電レートと、各放電レートでの放電開始後10秒目の電圧と、の関係に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(Ω)とした。
結果を表1に示す。
後述の比較例1のコイン型電池についても同様に、高温保存前のDCIRを測定した。
比較例1における高温保存前のDCIRを100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存前のDCIR(相対値)を求めた。
結果を表1に示す。
【0121】
(電池抵抗;高温保存後のDCIR(25℃、-20℃))
コンディショニング後であってSOCを80%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで高温保存を施す操作を追加したこと以外は前述の高温保存前のDCIRの測定と同様にして、高温保存後のDCIRを測定した。
後述の比較例1のコイン型電池についても同様に、高温保存後のDCIRを測定した。
比較例1における高温保存後のDCIRを100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存後のDCIR(相対値)を求めた。
結果を表1に示す。
【0122】
(高温保存後の放電容量(残存容量;0.2C))
上記で得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池を恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電した後、高温保存した。
高温保存後のコイン型電池について、25℃で、放電レート0.2CにてCC放電させて高温保存後の放電容量(残存容量;0.2C)を測定した。
後述の比較例1のコイン型電池についても同様に、高温保存後の放電容量(0.2C)を測定した。
比較例1における高温保存後の放電容量(残存容量;0.2C)を100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存後の放電容量(残存容量;0.2C)(相対値)を求めた。
結果を表2に示す。
【0123】
(高温保存後の放電容量(回復容量;0.2C))
上記で得られたコイン型電池に上記のコンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池を恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電した後、コイン型電池を高温保存した。
高温保存後のコイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、SOCが0%となるまで放電レート0.2CでCC放電させ、次いで充電レート0.2Cで4.2VまでCC-CV充電し、次いで放電レート0.2CにてCC放電させて高温保存後の放電容量(回復容量;0.2C)を測定した。
後述する比較例1についても同様にして、コイン型電池の高温保存後の放電容量(回復容量;0.2C)を測定した。
比較例1における高温保存後の放電容量(回復容量;0.2C)を100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存後の放電容量(回復容量;0.2C)(相対値)を求めた。
結果を表2に示す。
【0124】
(高温保存後の開放電圧低下率)
上記で得られたコイン型電池に上記のコンディショニングを施した。
コンディショニング後のコイン型電池を恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電した後、コイン型電池を高温保存した。
高温保存後のコイン型電池について、25℃にて開放電圧(Open Circuit Voltage;OCV)[V]を測定し、得られた値を、高温保存後の開放電圧[V]とした。得られた高温保存後の開放電圧[V]に基づき、下式により開放電圧低下率を計算した。
開放電圧低下率[%]
=((4.25-高温保存後の開放電圧[V])/4.25)×100[%]
【0125】
後述する比較例1についても同様にして、高温保存後の開放電圧低下率を測定した。
比較例1における高温保存後の開放電圧低下率を100とした場合の相対値として、実施例1における高温保存後の開放電圧低下率(相対値)を求めた。
結果を表2に示す。
なお、電池の開放電圧低下率は、低いほど好ましい。
【0126】
〔比較例1〕
非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1及び表2に示す。
【0127】
〔比較例2、3〕
化合物(1-1)を、同質量の、下記比較化合物(C1)又は下記比較化合物(C2)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1及び表2に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
表1及び表2中、天然黒鉛1は、前述のアモルファスコート天然黒鉛を意味する。
【0132】
表1に示すように、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させた実施例1では、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかった比較例1と比較して、電池抵抗(詳細には、インピーダンス及びDCIR)が低減されていた。
表2に示すように、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させた実施例1では、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかった比較例1と比較して、開放電圧低下率が改善(即ち、低減)され、かつ、電池容量(放電容量)も向上されていた。
【0133】
また、表2における、実施例1と比較例2及び3との対比により、縮合環式化合物に該当する式(1)で表される化合物は、縮合環式化合物に該当しない従来の環状硫酸エステル化合物(即ち、比較化合物(C1)及び(C2))と比較して、開放電圧低下率を改善(即ち、低減)する効果、及び、電池容量(放電容量)を向上させる効果に優れることが確認された。
【0134】
〔実施例101〕
実施例1と同様にして、コイン型電池を作製した。
作製されたコイン型電池について、実施例1と同様にして、高温保存前のDCIR(-20℃)及び高温保存後のDCIR(-20℃)を測定した。
結果を表3に示す。
表3及び後述の表4において、DCIRの測定結果は、絶対値(Ω)で表した。
【0135】
〔比較例101〕
非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかったこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0136】
〔比較例102〕
天然黒鉛1を、同質量の、以下の性質を有する人造黒鉛1に変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0137】
人造黒鉛1の、R値、面間隔d(002)、及び結晶子サイズは、以下のとおりであった。
・ラマンスペクトルのR値〔I(1350)/I(1850)〕=0.076
・X線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)=0.33534nm
・X線解析で測定した結晶子サイズ=131.17Å
【0138】
〔比較例103〕
非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかったこと以外は比較例102と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0139】
【0140】
表3中、実施例101と比較例101との対比より、負極活物質が天然黒鉛1である条件の下では、非水電解液が式(1)で表される化合物を含有する場合(実施例101)には、非水電解液が式(1)で表される化合物を含有しない場合(比較例101)と比較して、DCIRが低減されることがわかる。
これに対し、表3中、比較例102と比較例103との対比より、負極活物質が人造黒鉛1である条件の下では、非水電解液が式(1)で表される化合物を含有する場合(比較例102)には、非水電解液が式(1)で表される化合物を含有しない場合(比較例103)と比較して、DCIRが、却って上昇してしまうことがわかる。
【0141】
〔実施例201~204〕
非水電解液に対し、更に、その他の添加剤を含有させたこと以外は実施例1と同様にして、コイン型電池を作製した。その他の添加剤の添加量は、いずれも0.5質量%とした。
作製されたコイン型電池について、実施例101における高温保存前のDCIRの測定と同様にして、高温保存前のDCIRの測定を行った。
結果を表4に示す。
【0142】
実施例201~204で用いたその他の添加剤は、以下に示す、LiBOB、化合物(X1-1)、化合物(X2-1)、及び化合物(X3-25)である。
これらの化合物は、いずれもホウ素化合物であり、これらのうち、化合物(X1-1)、化合物(X2-1)、及び化合物(X3-25)は、前述のホウ素化合物(X)(即ち、1つのB(ホウ素原子)に対し3つのO(酸素原子)が結合した構造を含むホウ素化合物(X))の具体例である。
LiBOBは、ホウ素化合物(X)以外のその他のホウ素化合物であり、1つのBに対し3つのOが結合した構造を含まず、その代わりに、1つのBに対し4つのOが結合した構造を含んでいる。
【0143】
【0144】
【0145】
表4に示すように、非水電解液の添加剤として、式(1)で表される化合物と、1つのBに対し3つのOが結合した構造を含むホウ素化合物(X)と、を併用した場合(実施例202~204)には、非水電解液の添加剤として、式(1)で表される化合物と、1つのBに対し4つのOが結合した構造を含むLiBOBと、を併用した場合(実施例201)と比較して、高温保存前の電池抵抗(即ち、初期の電池抵抗)がより低減されていた。
この理由は明らかではないが、ホウ素化合物(X)はLiBOBと比較して、Bに結合するOの数が少ないことから、グラファイトのエッジ面における反応性により優れ、その結果、負極上に、より均質な被膜が形成されるためと考えられる。より詳細には、非水電解液の添加剤として、式(1)で表される化合物とホウ素化合物とを併用することで、式(1)で表される化合物とホウ素化合物とが混成化され、負極上に低抵抗被膜が形成されると考えられる。この際、ホウ素化合物として、ホウ素化合物(X)を選択することにより、負極上に、より均質な低抵抗被膜が形成され、その結果、高温保存前の電池抵抗(即ち、初期の電池抵抗)がより効果的に低減されると考えられる。
【符号の説明】
【0146】
1 ラミネート外装体
2 正極端子
3 負極端子
4 絶縁シール
5 正極板
6 負極板
7、8 セパレータ
11 正極
12 負極
13 正極缶
14 封口板
15 セパレータ
16 ガスケット
17、18 スペーサー板