(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのコポリマーを含む組成物及び同組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/16 20060101AFI20220419BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20220419BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20220419BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220419BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220419BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220419BHJP
C08F 214/22 20060101ALI20220419BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20220419BHJP
B29K 27/12 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C08L27/16
C08L27/18
C08L23/02
C08L77/00
C08L71/02
C08K5/09
C08F214/22
B29C48/00
B29K27:12
(21)【出願番号】P 2018560061
(86)(22)【出願日】2017-05-17
(86)【国際出願番号】 US2017033049
(87)【国際公開番号】W WO2017201135
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-15
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クロード ラバリー
(72)【発明者】
【氏名】デール イー.ハッチンズ
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト カスパル
(72)【発明者】
【氏名】カール デー.バイラント
(72)【発明者】
【氏名】シャーイーン エー.ママン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-060870(JP,A)
【文献】特開2001-026661(JP,A)
【文献】特開平06-248145(JP,A)
【文献】特開平07-140781(JP,A)
【文献】特開2011-089134(JP,A)
【文献】特開平08-245850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1196072(CN,A)
【文献】特開昭59-041348(JP,A)
【文献】特開昭59-127754(JP,A)
【文献】特開2005-042066(JP,A)
【文献】特表平11-513411(JP,A)
【文献】特開平05-295038(JP,A)
【文献】米国特許第05550193(US,A)
【文献】特表2002-544358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08C19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
B29C48/00- 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30モル%~95モル%の範囲の量のフッ化ビニリデン単位及び
5モル%~70モル%の範囲の量のテトラフルオロエチレン単位を含む熱可塑性フルオロポリマーであって、
前記フッ化ビニリデン単位及び前記テトラフルオロエチレン単位が、前記熱可塑性フルオロポリマー中に、前記熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも95モル%の合計量で存在し、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まないか、又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む、熱可塑性フルオロポリマーと、
組成物の主成分としての非フッ素化ポリマー、又はポリマー加工添加相乗剤のうちの少なくとも一方と、
を含み、
前記非フッ素化ポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリスチレン、又はポリ塩化ビニルのうちの少なくとも一方を含む、
非フッ素化ポリマーの押出成形中に溶融欠陥を低減するための組成物。
【請求項2】
前記フッ化ビニリデン単位及び前記テトラフルオロエチレン単位が、前記熱可塑性フルオロポリマー中に、前記熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも99モル%の合計量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性フルオロポリマーが、クロロトリフルオロエチレン単位、トリフルオロエチレン単位、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位、プロピレン単位、及びこれらの組み合わせから選択される単位を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性フルオロポリマーが、多峰性分子量分布を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が前記非フッ素化ポリマーを含み、前記非フッ素化ポリマーがポリオレフィン又はポリアミドのうちの少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ヒンダードアミン光安定剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
非フッ素化ポリマーの押出成形中に溶融欠陥を低減する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を押出成形することを含む、方法。
【請求項8】
前記組成物が前記ポリマー加工添加相乗剤を含み、前記ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル又はポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー加工添加相乗剤が、前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー加工添加相乗剤が、前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、前記組成物は、28%アンモニア溶液からの蒸気への18時間露光後に、組成が同一であるが前記熱可塑性フルオロポリマーの代わりにフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンコポリマーを含む匹敵する組成物よりも色が明るい、請求項8又は9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年5月17日に出願された米国特許仮出願第62/337,492号への優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
物品の形成及び成形におけるポリマー物質の押出成形は、プラスチック又はポリマー物品産業の主要部門である。押出成形された物品の質及び押出成形プロセスの総合的な成功は、通常、流体材料と押出成形用ダイとの相互作用によって影響を受ける。いかなる溶融加工可能な熱可塑性ポリマー組成物にも、臨界せん断速度が存在し、それより速いと押出成形物の表面は粗くなるか又は屈曲し、それより遅いと押出成形物は滑らかになる。例えば、R.F.Westover,Melt Extrusion,Encyclopedia of Polymer Science and Technology,vol.8,pp.573~81(John Wiley & Sons 1968)を参照されたい。押出成形物の滑らかな表面への要望は、ポリマー組成物を可能な最も速い速度(例えば、高せん断速度)で押出成形することの経済的利点と競合し、その視点から最適化されなければならない。
【0003】
低いせん断速度では、押出成形された熱可塑性物における欠陥が「シャークスキン」の形態をとる恐れがあり、これは表面光沢の喪失であり、より深刻な場合には、押出成形のおおよそ横方向に延びる隆起部として現れる。より速い速度では、押出成形物は、「連続的な溶融破壊」を受けて、かなり屈曲するようになる場合がある。連続的な溶融破壊が最初に観察されるよりも遅い速度では、ある種の熱可塑性物はまた、押出成形物の表面が滑らかなものから粗いものまで様々になる「循環溶融破壊」も受ける恐れがある。
【0004】
これらは、熱可塑性ポリマーの押出成形中に遭遇することが多い他の問題である。それらの問題としては、ダイのオリフィスにおけるポリマーのビルドアップ(ダイビルドアップ又はダイドルールとして公知である)、押出成形運転中の高い背圧、及び高い押出成形温度によるポリマーの過剰分解又は溶融強度の低さが挙げられる。これらの問題により、装置をきれいにするためにこのプロセスを停止しなければならないか、又はこのプロセスがより遅い速度で行われなければならないかのいずれかのために、押出成形プロセスが遅くなる。
【0005】
フルオロポリマーの添加は、押出成形可能な熱可塑性ポリマー中の溶融欠陥を、少なくとも部分的に緩和することができる。ポリマー加工添加剤として使用することができるフルオロポリマーとしては、例えば、米国特許第5,015,693号及び同第4,855,013号(Duchesneら)、同第6,277,919号(Dillonら)、同第6,734,252号(Woods)及び同第8,501,862号(Bonnetら)、並びに米国特許出願公開第2005/0101722号(Briersら)に記載されているものが挙げられる。ポリマー加工添加剤とダイ壁との間の相互作用を有利にするために、酸性末端基の組み込みが提案されている。例えば、米国特許出願公開第2011/0172338号(Murakamiら)及び米国特許第5,132,368号(Chapmanら)を参照されたい。一方、主鎖における酸性度が化学的安定性に支障があることが提示されている。例えば、米国特許第5,710,217号(Blong)を参照されたい。
【発明の概要】
【0006】
発明者らは、所望の溶融破壊排除性能と、良好な化学的安定性を有することとの組み合わせを提供するポリマー加工添加剤は、実現が困難であることを見出した。本開示は、最新技術の、同様の溶融粘度を有する非晶質フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマーに匹敵する溶融破壊排除性能を付与するフッ素化熱可塑性ポリマーを提供する。有利には、本明細書に開示されるフッ素化熱可塑性ポリマーは、これらの非晶質フルオロポリマーよりも化学的安定性が大きくなる傾向がある。加えて、本明細書に開示されるフッ素化ポリマーは熱可塑性であり、非晶質フルオロポリマーを上回る加工上の利点を付与する。本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーの溶融破壊排除性能は、通常、他の耐塩基性熱可塑性フルオロポリマーの溶融破壊排除性能よりも良好である。
【0007】
一態様において、本開示は、組成物の主成分としての非フッ素化熱可塑性ポリマー、又はポリマー加工添加相乗剤のうちの少なくとも1種を含む組成物を提供する。組成物は、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーを更に含む。熱可塑性フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、非フッ素化熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリマー加工添加相乗剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、非フッ素化熱可塑性ポリマーとポリマー加工添加相乗剤との双方を含む。
【0008】
別の態様において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマー中の溶融欠陥を低減する方法を提供する。この方法は、非フッ素化熱可塑性ポリマーと、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーとを合わせて本開示による組成物を提供することを含む。この方法は、組成物を押出成形することを含むことができる。
【0009】
別の態様において、本開示は、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーの、ポリマー加工添加剤としての使用を提供する。熱可塑性フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む。
【0010】
本願において:
「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示するために用いることができる一般的な種類を含む。用語「a」、「an」及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に使用される。
【0011】
リストに続く、「のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、リスト中の項目のうちのいずれか1つ、及びリスト中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを含むことを指す。リストに続く、「のうちの少なくとも1つ」という語句は、リスト中の項目のうちのいずれか1つ、又はリスト中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0012】
特に規定しない限り、「アルキル基」及び接頭語「アルキ-」は、直鎖と分岐鎖基との双方、及び最大30個の炭素(いくつかの実施形態において、最大20、15、12、10、8、7、6、又は5個の炭素)を有する環状基を含む。環状基は単環であっても多環であってもよく、いくつかの実施形態においては、3~10個の環炭素原子を有していてもよい。
【0013】
用語「ペルフルオロアルキル基」としては、直鎖状、分岐状及び/又は環状アルキル基が挙げられ、ここで、全てのC-H結合は、C-F結合によって置き換えられている。
【0014】
例えば、アルキル、アルキレン又はアリールアルキレンに関しての語句「1つ以上の-O-基が介在している」は、その1つ以上の-O-基の両側に、アルキル、アルキレン又はアリールアルキレンの一部を有することを指す。1つの-O-基が介在しているアルキレンの例は、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-である。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、例えば、1、2又は3環を有し、任意選択で少なくとも1個のへテロ原子(例えば、O、S又はN)を環内に有し、最大4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、最大4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロ基(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモ若しくはヨード)、ヒドロキシ基又はニトロ基などの、最大5つの置換基により任意選択で置換されている、炭素環式芳香族環又は環系を包含する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、並びにフリル、チエニル、オキサゾリル及びチアゾリルが挙げられる。「アリールアルキレン」は、アリール基が結合している「アルキレン」部分を指す。「アルキルアリーレン」は、アルキル基が結合している「アリーレン」部分を指す。
【0016】
「相乗剤」とは、ポリマー加工添加剤としてフルオロポリマーのより低量の使用を可能にすると同時に、より高量のフルオロポリマーポリマー加工添加剤が使用されているかのように、押出成形可能なポリマーの押出成形及び加工特性における本質的に同じ改善を達成する化合物を意味する。
【0017】
用語「ポリマー加工添加相乗剤」それ自体は、本明細書で使用される場合、フルオロポリマー又は非フッ素化熱可塑性ポリマーを含まないことを理解されたい。換言すれば、ポリマー加工添加相乗剤それ自体は、ポリマー加工添加剤又はホストポリマーを含まない。
【0018】
全ての数値範囲は、別途明言されない限り、それらの端点、及び端点と端点との間の非整数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0019】
以上が本開示の実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の概要は、本開示のそれぞれの例示された実施形態又はあらゆる実施を記載することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
フッ化ビニリデンが、ポリマー主鎖中、酸中の水素原子を生成してこれが化学的不安定性へ至らせることがあると示唆されている(米国特許第5,710,217号を参照されたい)にもかかわらず、発明者らは、少なくとも30モル%のフッ化ビニリデン単位を有してヘキサフルオロプロピレン単位を有していない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を有する、本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーの化学的安定性が、最新技術の非晶質フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene、VDF-HFP)コポリマー及び熱可塑性テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン(tetrafluoroethylene-hexafluoropropylene-vinylidene fluoride、TFE-HFP-VDF)コポリマーを上回る改良された化学的安定性を付与できることを見出した。
【0021】
例えば、いくつかの実施形態において、本開示による及び/又は本明細書に開示される方法を実施するために有用な組成物は、28%アンモニア溶液からの蒸気への18時間曝露後に、それが熱可塑性フルオロポリマーの代わりにVDF-HFP又はTFE-HFP-VDFコポリマーを含むことを除いてその組成が同一である匹敵する組成物よりも、色が明るい。匹敵する組成物は、ポリマー加工添加剤と同一の非フッ素化ポリマー及び同量の添加剤(例えば、酸化防止剤、相乗剤及び安定剤)を含むが、ポリマー加工添加剤とは異なるフルオロポリマーを含む。表7に示すように、ポリ(エチレングリコール)相乗剤を含む直鎖状低密度ポリエチレンマスターバッチ、及びVDF-TFEコポリマーの調製実施例3を含む実施例4は、デシケータジャー中28%アンモニア溶液からの蒸気への18時間曝露後に、3M Companyから商品名「3M Dynamar Polymer Processing Additive FX9613」で得られるポリマー加工添加剤及びポリ(エチレングリコール)相乗剤を含む比較例2よりも、変色が少ない。ポリマー加工添加剤「3M Dynamar Polymer Processing Additive FX9613」は、VDF-HFPコポリマーを含む。更に、表7に示すように、調製実施例3を含む実施例4は、28%アンモニア溶液からの蒸気への曝露後に、3M Companyから商品名「3M Dynamar Polymer Processing Additive FX5911」で得られるポリマー加工添加剤及びポリ(エチレングリコール)相乗剤を含む比較例4よりも、変色が少ない。ポリマー加工添加剤「3M Dynamar Polymer Processing Additive FX5911」は、TFE-HFP-VDFコポリマーを含む。
【0022】
ポリマー加工添加剤が、塩基性条件下で安定であることが望ましい。そうでなければ、塩基性成分は、中性の押出成形可能なポリマー中に存在することができる。例えば、ヒンダードアミン光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizers、HALS)を、ポリオレフィン配合物へ添加することができる。発明者らは、HALSが、いくつかの加工条件下で、いくつかの市販のポリマー加工添加剤の性能に影響を及ぼしていることを観察した。塩基性条件下で安定なポリマー加工添加剤はまた、本来塩基性である樹脂、例えば、ポリアミド中で有用であり得、かつ押出成形された材料がアルカリ製品を包装するために使用されるときに有用であり得る。塩基の不安定性は、ポリ(エチレングリコール)の存在によって悪化する恐れがある。
【0023】
本開示による組成物、方法及び使用は、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を含む熱可塑性フルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フッ化ビニリデン単位の量は、30モル%~95モル%の範囲であり、テトラフルオロエチレン単位の量は、5モル%~70モル%の範囲である。フルオロポリマー中のフッ化ビニリデン単位の量は、30モル%~95モル%、55モル%~90モル%又は70モル%~90モル%の範囲とすることができる。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、テトラフルオロエチレン単位の量は、5モル%~70モル%、10モル%~45モル%又は10モル%~30モル%の範囲である。
【0024】
本開示による及び/又は本開示を実施するために有用な組成物中の熱可塑性フルオロポリマーは、半結晶性である。それらは、通常、それ自体が溶融加工可能であり、室温を超える融点及び/又はガラス転移温度を呈する。熱可塑性フルオロポリマーは、40℃~300℃、100℃~200℃又は100℃~160℃の範囲の融点を有することができる。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーは、フッ素原子対炭素原子の比が少なくとも1:2、いくつかの実施形態においては少なくとも1:1.5であることができる。熱可塑性フルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマーを上回る加工上の利点を付与することができる。例えば、熱可塑性フルオロポリマーは、粉砕する必要がなく、仕切り剤の使用を必要としない場合がある。
【0025】
フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマーの融点は、モノマー単位の比で調整することができる。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーの融点は、最大130℃である。熱可塑性フルオロポリマーの融点は、100℃~130℃、110℃~130℃又は120℃~130℃の範囲とすることができる。これらの範囲のいずれかにある融点を有する熱可塑性フルオロポリマーが、例えば、ホストポリマーがポリオレフィンである組成物中で、有用であり得る。これらの範囲のいずれかにある融点は、例えば、テトラフルオロエチレン単位が熱可塑性フルオロポリマー中に10モル%~30モル%、15モル%~25モル%の範囲で、又は約20モル%で存在するときに達成することができる。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーの融点は、少なくとも130℃である。熱可塑性フルオロポリマーの融点は、130℃~170℃、135℃~165℃又は140℃~160℃の範囲とすることができる。これらの範囲のいずれかにある融点を有する熱可塑性フルオロポリマーが、例えば、ホストポリマーがポリアミドである組成物中で、有用であり得る。これらの範囲のいずれかにある融点は、例えば、テトラフルオロエチレン単位が熱可塑性フルオロポリマー中に5モル%~10モル%、30モル%~45モル%又は30モル%~40モル%の範囲で存在するときに達成することができる。
【0026】
本開示による及び/又は本開示を実施するために有用である組成物中の熱可塑性フルオロポリマーは、ランダムコポリマーである。一般に、ポリマー鎖のそれぞれは、フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位との双方を含む。以下に記載される重合方法は、一般に、ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかからテトラフルオロエチレンを排除する方法では実施されない。以下で、実施例で示すように、テトラフルオロエチレンは、重合プロセスの間、プリチャージ中及び供給物中に存在する。したがって、熱可塑性フルオロポリマーは、米国特許第8,501,862号(Bonnetら)における定義の下で「異種PVDF」と考えられることはない。
【0027】
本開示による組成物中の熱可塑性フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない、又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーは、最大4、3、2、1又は0.5モル%のヘキサフルオロプロピレン単位を含む。フッ化ビニリデン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含むポリマーは、式-CF2-CF(CF3)-CH*(H)-CF2-によって表される二酸を含む。理論に縛られることは望まないが、アステリスクを伴って示される二酸-CF2-CF(CF3)-CH*(H)-CF2-における酸中の水素原子は、押出成形中にダイ金属への密着を促進することができ、これは、溶融破壊の開始を遅らせる、又は溶融破壊を排除する時間を短縮することができると考えられる。しかしながら、これらの酸中の水素原子はまた、化学反応性であることも公知である。酸中の水素原子は、塩基が、押出成形される組成物中に存在するときに、又は押出成形される非フッ素化ポリマーが、それ自体、塩基性であるときに、反応することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位は、熱可塑性フルオロポリマー中に、熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも95モル%の合計量で存在する。いくつかの実施形態において、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位は、熱可塑性フルオロポリマー中に、熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも99モル%の合計量で存在する。いくつかの実施形態において、本開示による及び/又は本開示を実施するために有用な組成物中の熱可塑性フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位からなる。
【0029】
本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーは、式RaCF=CRa
2によって表される、少なくとも1つの、部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたエチレン性不飽和モノマーに由来するインターポリマー化単位を更に含むことができ、式中、各Raは、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、水素、フルオロアルキル基(例えば、任意選択で1個以上の酸素原子が介在している、1~8、1~4若しくは1~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル)、フルオロアルコキシ基(例えば、任意選択で1個以上の酸素原子が介在している、1~8、1~4若しくは1~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルコキシ)、1~8個の炭素原子のアルキル若しくはアルコキシ、1~8個の炭素原子のアリール、又は1~10個の炭素原子の環状飽和アルキルである。式RaCF=CRa
2によって表される有用なフッ素化モノマーの例としては、クロロトリフルオロエチレン、2-クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、1,1-ジクロロフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテル、ペルフルオロアルキルペルフルオロアリルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なペルフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテル、ペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルペルフルオロアリルエーテル及びペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルの例は、以下に記載される。本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーはまた、式Rb
2C=CRb
2によって表される、TFE及びVDFの、少なくとも1つの非フッ素化の共重合可能なコモノマーでのインターポリマー化に由来するインターポリマー化単位も含んでもよく、式中、各Rbは、独立に、水素、クロロ、1~8、1~4若しくは1~3個の炭素原子を有するアルキル、1~10、1~8若しくは1~4個の炭素原子を有する環状飽和アルキル基、又は1~8個の炭素原子を有するアリール基である。式Rb
2C=CRb
2によって表される有用なモノマーの例としては、エチレン及びプロピレンが挙げられる。ペルフルオロ-1,3-ジオキソールもまた、本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーを調製するために有用であり得る。ペルフルオロ-1,3-ジオキソールモノマー及びそれらのコポリマーは、米国特許第4,558,141号(Squires)に記載されている。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーは、クロロトリフルオロエチレン単位、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位及びプロピレン単位から選択される単位を更に含む。上記のもののうちのいずれかを含む、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位以外の単位が、熱可塑性フルオロポリマー中に、熱可塑性フルオロポリマーの総量に基づいて、最大20、15、10、5、4、3、2又は1モル%の量で存在してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーは、長鎖分岐を含む。このようなフルオロポリマーは、重合反応中に、ビスオレフィン又はハロゲン含有モノオレフィンなどの改質剤を用いて調製される。例えば、それぞれ、米国特許出願公開第2010/0311906号(Lavalleeら)及び米国特許第7,375,157号(Amosら)を参照されたい。長鎖分岐を有するフルオロポリマーは、押出成形中の溶融破壊を効果的に低減することができ、同様の溶融粘度及び直鎖トポグラフィを有するフルオロポリマーよりも、押出成形可能なポリマー中、より良好に分散される傾向にある。
【0031】
上記の熱可塑性フルオロポリマーは、従来の方法を用いて作製することができる。上の実施形態のいずれかに記載のものなどの、本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーは、通常、重合、凝固、洗浄及び乾燥を含み得る一連の工程によって調製される。いくつかの実施形態において、水性乳化重合を、定常状態下にて連続的に実施することができる。例えば、モノマー(例えば、上記のもののいずれかを含む)の水性エマルション、水、乳化剤、緩衝剤及び触媒を最適な圧力及び温度条件下にて撹拌反応器に連続的に供給して、その間に、生成したエマルション又は懸濁液を連続的に取り出すことができる。いくつかの実施形態において、前述の成分を撹拌反応器に供給し、規定された時間にわたり設定温度でそれらを反応させることによるか、又は成分を反応器に充填し、所望量のポリマーが形成されるまでモノマーを反応器に供給し一定の圧力を維持することにより、バッチ又は半バッチ重合が実施される。重合後に、反応器廃液ラテックスから、減圧での蒸発によって未反応モノマーを除去する。フルオロポリマーは、凝固によってラテックスから回収することができる。
【0032】
一般に、重合は、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、AIBN、又はビス(ペルフルオロアシル)ペルオキシドなどのフリーラジカル開始剤系の存在下で実施される。重合反応は、連鎖移動剤及び錯化剤などの他の成分を更に含んでもよい。重合は、一般に、10℃~100℃の範囲、又は30℃~80℃の範囲の温度にて実行される。重合圧力は、通常、0.3MPa~30MPaの範囲であり、いくつかの実施形態においては2MPa~20MPaの範囲である。
【0033】
乳化重合を実施するとき、過フッ素化された又は部分的にフッ素化された乳化剤が有用であり得る。一般に、これらのフッ素化乳化剤は、ポリマーに対して約0.02重量%~約3重量%の範囲で存在する。フッ素化乳化剤を用いて生成されたポリマー粒子は、通常、動的光散乱技術によって測定したとき、約10ナノメートル(nm)~約300nmの範囲の平均直径を有し、いくつかの実施形態においては約50nm~約200nmの範囲の平均直径を有する。所望であれば、米国特許第5,442,097号(Obermeierら)、同第6,613,941号(Felixら)、同第6,794,550号(Hintzerら)、同第6,706,193号(Burkardら)及び同第7,018,541号(Hintzerら)に記載の通り、フルオロポリマーラテックスから乳化剤を除去又は再利用してもよい。いくつかの実施形態において、重合プロセスは、乳化剤無しで(例えば、フッ素化乳化剤無しで)実施してもよい。乳化剤無しで製造されたポリマー粒子は、通常、動的光散乱法技術によって測定したとき、約40nm~約500nmの範囲、通常は約100nm~約400nmの範囲の平均直径を有するが、懸濁重合では、通常、最大数ミリメートルの粒径を生じる。
【0034】
いくつかの実施形態において、水溶性開始剤は、重合プロセスを開始するために有用であり得る。ペルオキシ硫酸の塩、例えば過硫酸アンモニウムは、通常、単独で適用されるか、又は還元剤、例えば、亜硫酸水素塩若しくはスルフィン酸塩(例えば、米国特許第5,285,002号及び同第5,378,782号(いずれもGrootaert)に開示されているフッ素化スルフィン酸塩)又はヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩(商品名「RONGALIT」として販売されている、BASF Chemical Company,New Jersey,USA)の存在下で適用されることもある。これらの開始剤及び乳化剤の大部分は、それらが最も効率的であると示す最適なpH範囲を有する。この理由から、時に緩衝剤が有用である。緩衝剤としては、ホスフェート、アセテート若しくはカーボネート緩衝剤、又は任意のその他の酸若しくは塩基、例えばアンモニア若しくはアルカリ金属水酸化物が挙げられる。開始剤及び緩衝剤の濃度範囲は、水性重合媒体に基づいて0.01重量%~5重量%で変化してもよい。
【0035】
上記の開始剤を用いた水性重合は、通常、極性末端基を有する熱可塑性フルオロポリマーをもたらす(例えば、Logothetis,Prog.Polym.Sci.,Vol.14,pp.257~258(1989)を参照されたい)。所望であれば、例えば、加工の改善又は化学的安定性の改良のために、SO3
(-)及びCOO(-)などの強極性末端基は、公知の後処理(例えば、脱カルボキシル化、後フッ素化)を通して、熱可塑性フルオロポリマー中、存在量を低減することができる。任意の種類の連鎖移動剤が、イオン性又は極性末端基の数を著しく減少させることができる。強極性末端基を、これらの方法によって、任意の所望のレベルにまで減少させることができる。いくつかの実施形態において、極性官能性末端基(例えば、-COF、-SO2F、-SO3M、-COO-アルキル及び-COOMであり、式中、アルキルはC1~C3アルキルであり、Mは水素又は金属若しくはアンモニウムカチオンである)の数は、106個の炭素原子当たり300、200、100又は50以下に減少される。いくつかの実施形態において、開始剤及び重合条件を選択して、熱可塑性フルオロポリマーについて、106個の炭素原子当たり少なくとも300個、106個の炭素原子当たり400個、又は106個の炭素原子当たり少なくとも500個の極性官能性末端基(例えば、-COF、-SO2F、-SO3M、-COO-アルキル、及び-COOMであり、式中、アルキルはC1~C3アルキルであり、Mは水素又は金属若しくはアンモニウムカチオンである)を達成することは有用であり得る。熱可塑性フルオロポリマーが、106個の炭素原子当たり少なくとも300、400又は500の極性官能性末端基を有するとき、熱可塑性フルオロポリマーは、米国特許第5,132,368号(Chapmanら)に記載されているように、金属ダイ表面との増加された相互作用を有することができるか、又は米国特許出願第2011/0172338号(Murakamiら)に記載されているように、改良された成形性を有する溶融加工可能な樹脂を提供することができる。極性末端基の数は、赤外分光法及び核磁気共鳴分光法などの公知の技術(例えば、Pianca et al.,Journal of Fluorine Chemistry,95(1999),pp.71~84を参照されたい)により決定することができる。
【0036】
フルオロポリマー中の極性末端基の数はまた、水酸化カリウムの滴定を用いて酸価を測定することにより評価することもできる。酸価を決定する方法は、以下の実施例において提供される。酸価は、フルオロポリマー1グラム当たりのmg KOHで報告することができる。いくつかの実施形態において、本開示を実施するために有用な熱可塑性ポリマーは、最大1mg KOH/g又はそれ未満、最大0.9mg KOH/g、最大0.8mg KOH/g、最大0.75mg KOH/g、最大0.7mg KOH/g、最大0.6mg KOH/g、又は最大0.5mg KOH/g又はそれ未満の酸価を有する。熱可塑性フルオロポリマーの混合物が本明細書で開示される組成物及び方法において使用される実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーのうちの少なくとも1種は、これらの量のいずれかにある酸価を有する。このような熱可塑性フルオロポリマーは、改良された化学安定性を有することができ、かつ1.0mg KOH/g超の酸の数を有する熱可塑性フルオロポリマーよりも短い、溶融破壊を排除する時間を付与することができる。他の実施形態において、本開示を実施するために有用な熱可塑性ポリマーは、少なくとも1mg KOH/g、少なくとも1.25mg KOH/g、少なくとも1.5mg KOH/g、又は少なくとも1.75mg KOH/gの酸価を有する。熱可塑性フルオロポリマーの混合物が本明細書で開示される組成物及び方法において使用される実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーのうちの少なくとも1種は、これらの量のいずれかにある酸価を有する。
【0037】
上記の連鎖移動剤及び任意の長鎖分岐改質剤は、バッチ充填又は連続供給によって反応器内へ供給することができる。連鎖移動剤及び/又は長鎖分岐改質剤の供給量がモノマー供給物に比べて比較的小さいので、少量の連鎖移動剤及び/又は長鎖分岐改質剤の反応器への連続供給は、長鎖分岐改質剤又は連鎖移動剤を1つ以上のモノマーにブレンドすることにより達成することができる。
【0038】
得られたフルオロポリマーラテックスを凝固させるためには、フルオロポリマーラテックスの凝固で一般に使用される任意の凝固剤を使用することができ、それは、例えば、水溶性塩(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム若しくは硝酸アルミニウム)、酸(例えば、硝酸、塩酸若しくは硫酸)、又は水溶性有機液体(例えば、アルコール若しくはアセトン)であってもよい。添加される凝固剤の量は、フルオロポリマーラテックス100質量部当たり0.001~20質量部の範囲、例えば、0.01~10質量部の範囲とすることができる。代替的に又は追加的に、フルオロポリマーラテックスは、凝固のために凍結されてもよい。凝固したフルオロポリマーは、ろ過によって回収し、水で洗浄することができる。洗浄水は、例えば、イオン交換水、純水又は超純水とすることができる。洗浄水の量は、フルオロポリマーに対して1~5倍の質量であってよく、これにより、1回の洗浄で、フルオロポリマーに結合している乳化剤の量を十分に減少させることができる。
【0039】
例えば、開始剤の濃度及び活性、反応性モノマーのそれぞれの濃度、連鎖移動剤の温度、濃度、及び溶媒を、当技術分野で公知の技術を用いて調整することで、熱可塑性フルオロポリマーの分子量を制御することができる。熱可塑性フルオロポリマーの分子量は、その溶融粘度に関連する。いくつかの実施形態において、以下の実施例で説明される手順に従って測定される、熱可塑性フルオロポリマーのlog[ゼロせん断粘度/1パスカル.秒(Pa.s)]は、少なくとも4で最大11であり、又は少なくとも5で最大10である。いくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーのlog[ゼロせん断粘度/1パスカル.秒(Pa.s)]は、少なくとも6で最大9である。本開示を実施するために有用なフルオロポリマーは、通常、分子量分布及び組成分布を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーは、多峰性分子量分布を有する。本明細書で使用される場合、「多峰性」は、フルオロポリマーが、離散的で異なる分子量の少なくとも2種の成分を有することを意味する。多峰性熱可塑性フルオロポリマーは、多くの方法で、例えば、好適な重合方法(例えば、段階重合)の手段によって達成することができる。段階重合は、上記のものなどの特定の開始剤及び連鎖移動剤の使用を採用する。重合の開始時に、比較的少量の開始剤及び比較的少量の連鎖移動剤が、所望の第1の分子量のために反応容器に充填される。重合が進むにつれて、追加の開始剤及び連鎖移動剤が反応容器に充填される。これらの充填の正確なタイミング及び量は、重合条件に影響し、操作者が所望の特性を有するポリマーを製造することを可能にする。例えば、出発モノマーのうちの50%が添加された後に、適切な量の開始剤及び連鎖移動剤の更なる添加を、重合条件を変化させて所望の低分子量を有するポリマーを製造するために使用することができる。所望の低分子量はまた、重合中に温度を上昇させることによっても達成することができる。このようにして、二峰性又は多峰性分子量分布を有する熱可塑性フルオロポリマーを作製することができる。
【0041】
多峰性熱可塑性フルオロポリマーはまた、ラテックス又は別個の成分の粉末生成物のいずれかを混合することによっても作製することができる。いくつかの実施形態において、2種の熱可塑性フルオロポリマーのブレンドが、フルオロポリマーのラテックスを混合し(いわゆるラテックスブレンディング)、続いて上記の方法のいずれかを用いる共凝固により混合物を仕上げ処理することによって調製される。異なる分子量を有する熱可塑フルオロポリマーは、以下で更に詳細に記載するように、非フッ素化熱可塑性ポリマー中で合わされてもよい。
【0042】
いくつかの事例において、2つの異なるlog[ゼロせん断粘度/1パスカル.秒(Pa.s)]値を有する熱可塑性フルオロポリマーのブレンドは、非フッ素化ホストポリマーの押出成形中に溶融欠陥を低減させるために、熱可塑性フルオロポリマーそれ自体のいずれか1つよりも、効果的である。例えば、異なる溶融粘度を有するVDF-TFEコポリマーの混合物を含む実施例13は、VDF-TFEコポリマーそれ自体のいずれかと比べて、溶融破壊を排除する時間を短縮する。
【0043】
本開示による組成物及び方法のいくつかの実施形態において、熱可塑性フルオロポリマーは、ポリマー加工添加相乗剤との組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態において、ポリマー加工添加相乗剤は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、シリコーン-ポリエーテルコポリマー;ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(乳酸)及びポリカプロラクトンポリエステルなどの脂肪族ポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン微粉末)、フタル酸ジイソブチルエステルなどの芳香族ポリエステル又はポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種を含む。これらの種類の相乗剤のいずれかのブレンドが有用であり得る。更に、これらの種類の相乗剤の2つ以上のブロックを含むブロックコポリマーも有用であり得る。例えば、ポリマー加工添加相乗剤は、シリコーン-ポリカプロラクトンブロックコポリマーであってもポリ(オキシアルキレン)-ポリカプロラクトンブロックコポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー加工添加相乗剤は、ポリカプロラクトン又はポリ(オキシアルキレン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0044】
ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び他の相乗剤は、ポリマー加工添加剤ブレンドにおけるそれらの性能で選択することができる。ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又は他の相乗剤は、(1)所望の押出成形温度で液体状態(又は溶融状態)であるように、並びに(2)ホストポリマーとポリマー加工添加剤との双方よりも低い溶融粘度を有するように選択することができる。いくつかの実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又は他の相乗剤は、押出成形可能な組成物中のポリマー加工添加剤粒子の表面と会合すると考えられる。例えば、理論に縛られることは望まないが、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又は他の相乗剤は、押出成形可能な組成物中のポリマー加工添加剤粒子の表面を濡らすことができる。
【0045】
ポリマー加工添加相乗剤として有用なポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、式A[(OR1)xOR2]yで表すことができ、式中、Aは、通常、1つ以上のエーテル結合が介在したアルキレンであり、yは、2又は3であり、(OR1)xは、複数(x)のオキシアルキレン基OR1を有するポリ(オキシアルキレン)鎖であり、各R1は、独立に、C2~C5アルキレンであり、いくつかの実施形態においてはC2~C3アルキレンであり、xは、約3~3000であり、R2は、水素、アルキル、アリール、アリールアルケニル、アルキルアリーレニル、-C(O)-アルキル、-C(O)-アリール、-C(O)-アリールアルケニル又は-C(O)-アルキルアリーレニルであり、式中、-C(O)-は、OR2のOに結合している。変数「x」は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの分子量が約200~約20,000グラム毎モル(g/モル)又はそれよりも高い範囲であるように、いくつかの実施形態においては約400~約15,000g/モルの範囲であるように選択される。いくつかの実施形態において、xは、5~1000、又は10~500の範囲である。ポリ(オキシアルキレン)ポリマー鎖は、各R1が-CH2CH2-であるポリ(オキシエチレン)、又は各R1が-C3H6-であるポリ(オキシプロピレン)などのホモポリマー鎖とすることができる。あるいは、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー鎖は、不規則に分布したオキシアルキレン基(例えば、コポリマー-OC2H4-及び-OC3H6-単位)の鎖であるか、又は繰り返しオキシアルキレン基の交互ブロック(例えば、(-OC2H4-)a及び(-OC3H6-)bブロック(式中、a+bは、5~5000又はそれ以上、いくつかの実施形態においては、10~500の範囲内にある)を有する鎖とすることができる。いくつかの実施形態において、Aは、エチレン、-CH2-CH(-)-CH2-(グリセロール由来)、CH3CH2C(CH2-)3(1,1,1-トリメチロールプロパン由来)、ポリ(オキシプロピレン)、-CH2CH2-O-CH2CH2-又は-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-である。いくつかの実施形態において、R2は、水素、メチル、ブチル、フェニル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル又はステアリルである。他の有用なポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、例えば、式A[(OR1)xOR2]yによって表される、ジカルボン酸及びポリ(オキシアルキレン)ポリマーから調製されたポリエステルであり、式中、A、R1及びxは、上に定義した通りであり、R2は水素であり、yは2である。通常、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量の大部分を占めるのは、繰返しオキシアルキレン基、(OR1)であろう。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリマー加工添加相乗剤として有用なポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体である。ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol、PEG)は、式H(OC2H4)x’OHで表すことができ、式中、x’は、約15~3000である。これらのポリエチレングリコール、それらのエーテル、及びそれらのエステルの多くは、様々な供給元から市販されている。ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロックコポリマーもまた有用であり得る。
【0047】
本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーはポリマー加工添加相乗剤との組み合わせで使用することができるが、以下の実施例は、本明細書に記載される熱可塑性フルオロポリマーが、相乗剤の不在下でポリマー加工添加剤として効果的であることを示している。したがって、本開示による組成物は、上記のもののいずれかを含むポリマー加工添加相乗剤を本質的に含まないものとすることができる。「ポリマー加工添加相乗剤を本質的に含まない」は、ポリマー加工添加剤組成物がホスト樹脂中に含まれるときにポリマー加工添加相乗剤を含むが、押出成形中の溶融破壊性能を改善するには有効となり得ない量で含む、組成物を指すことができる。いくつかの実施形態において、ポリマー加工添加剤組成物は、最大1、0.5、0.25、又は0.1重量%若しくはそれ未満のポリマー加工添加相乗剤を含むことができる。「ポリマー加工添加相乗剤を本質的に含まない」ことは、ポリマー加工添加相乗剤を含まないことを包含し得る。
【0048】
本開示による組成物がポリマー加工添加相乗剤を含む実施形態において、通常、組成物は、約5~95重量%の相乗剤と95~5重量%の熱可塑性フルオロポリマーとを含む。ポリマー加工添加剤中の、熱可塑性フルオロポリマーの、相乗剤成分に対する比は、2:1~1:10とすることができ、いくつかの実施形態においては、1:1~1:5とすることができる。
【0049】
本開示による又は本開示を実施するために有用な組成物がポリ(オキシアルキレン)相乗剤を含む実施形態において、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩を含む組成物が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを熱的に安定化するために有用であり得る。いくつかの実施形態において、金属塩は、カルボン酸又はスルホン酸の金属塩である。カルボン酸及びスルホン酸は、一官能性であっても多官能性(例えば、二官能性)であってもよく、脂肪族であっても芳香族であってもよい。換言すると、カルボニル炭素又はスルホニル硫黄は、脂肪族基又は芳香族環に結合することができる。脂肪族カルボン酸及びスルホン酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の-C(O)O-又は-S(O)2O-アニオン(すなわち、それぞれ、カルボン酸基又はスルホン酸基)に加え、脂肪族基又は芳香族基はまた、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、ヒドロキシル、並びにアルコキシ基を含む他の官能基により置換されていてもよく、芳香族環もまた、アルキル基により置換されていてもよい。いくつかの実施形態において、カルボン酸又はスルホン酸は、一官能性又は二官能性であり、脂肪族鎖上にいかなる更なる置換基も有していない脂肪族である。いくつかの実施形態において、カルボン酸は、例えば、約8~30個(いくつかの実施形態においては、8~26個又は8~22個)の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸である。8~26個の炭素原子を有する脂肪酸の一般名は、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)及びセロチン酸(C26)である。いくつかの実施形態において、これらの酸の脂肪酸金属塩は、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキジン酸塩、ベヘン酸塩、リグノセリン酸塩及びセロチン酸塩とすることができる。いくつかの実施形態において、カルボン酸は、ステアリン酸以外である。カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩中の有用な金属カチオンの例としては、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩である。いくつかの実施形態において、金属塩は、亜鉛塩又はカルシウム塩である。本開示による組成物及び方法においてポリ(オキシアルキレン)ポリマーを熱的に安定化するために有用なカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びフタル酸亜鉛が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛以外である。いくつかの実施形態において、金属塩は、ステアリン酸カルシウム以外である。このような金属塩及びポリ(オキシアルキレン)ポリマーを安定化するためのそれらの能力に関するより多くの情報については、国際特許出願公開第2015/042415号(Lavalleeら)を参照されたい。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーは、シリコーン含有ポリマー又は別のフルオロポリマーのポリマー加工添加剤(例えば、別の半結晶性フルオロポリマー又は非晶質フルオロポリマー)と組み合わせて使用することができる。押出成形可能な熱可塑性ポリマー中の溶融欠陥を少なくとも部分的に緩和するために有用であり、本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーと組み合わせて使用することができる半結晶性フルオロポリマーとしては、例えば、米国特許第5,527,858号(Blongら)及び同第6,277,919号(Dillonら)に記載されるものが挙げられる。いくつかの有用な半結晶性フルオロポリマーとしては、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーで、3M Companyから商品名「DYNAMAR FX 5911」及び「DYNAMAR FX 5912」で市販されているもの、並びにArkema,Colombes,Franceから様々なグレードで商品名「KYNAR」で入手可能なフルオロポリマーが挙げられる。押出成形可能な熱可塑性ポリマー中の溶融欠陥を少なくとも部分的に緩和するために有用な、かつ本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーと組み合わせて使用することができるシリコーンとしては、例えば、米国特許第4,535,113号(Fosterら)に記載されているポリシロキサン、ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー、及び例えば、米国特許出願公開第2011-0244159号(Pappら)に記載されているポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー、及び、例えば、国際公開出願第2015/042415号(Lavalleeら)に記載されているシリコーン-ポリウレタンコポリマーが挙げられる。いくつかのシリコーンポリマー加工添加剤は、例えば、Dow Corning,Midland,Mich.から商品名「DOW CORNING MB50-002」で、及びWacker Chemie AG,Munich,Germanyから商品名「GENIOPLAST」で市販されている。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示による及び/又は本開示による方法において有用な組成物は、非晶質フルオロポリマーを更に含む。非晶質フルオロポリマーは、通常、融点を呈さない。それらは、通常、室温より低いガラス転移温度を有し、室温において結晶性を殆ど又は全く示さない。ポリマー加工添加剤として有用な非晶質フルオロポリマーとしては、フッ素化オレフィンのホモポリマー及び/又はコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、ホモポリマー又はコポリマーは、少なくとも1:2、いくつかの実施形態においては、少なくとも1:1のフッ素原子対炭素原子比を有することができ、かつ/又は少なくとも1:1.5のフッ素原子対水素原子比を有することができる。
【0052】
本開示を実施するために有用な非晶質フルオロポリマーは、式RaCF=CRa
2によって表される、少なくとも部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたエチレン性不飽和モノマーに由来するインターポリマー化単位を含むことができ、式中、各Raは、独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、水素、フルオロアルキル基(例えば、1~8、1~4又は1~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル)、フルオロアルコキシ基(例えば、任意選択で1個以上の酸素原子が介在する、1~8、1~4又は1~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルコキシ)、1~8個の炭素原子のアルキル若しくはアルコキシ、1~8個の炭素原子のアリール、又は1~10個の炭素原子の環状飽和アルキルである。式RaCF=CRa
2によって表される有用なフッ素化モノマーの例としては、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、2-クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、1,1-ジクロロフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示を実施するために有用な非晶質フルオロポリマーは、独立に式CF2=CFORfによって表される1つ以上のモノマーからの単位を含み、式中、Rfは、1~8、1~4又は1~3個の炭素原子を有して1つ以上の-O-基が任意選択で介在するペルフルオロアルキルである。非晶質フルオロポリマーを作製するために好適なペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルとしては、式CF2=CF(OCnF2n)zORf2によって表されるものが挙げられ、式中、各nは、独立して、1~6であり、zは、1又は2であり、Rf2は、1~8個の炭素原子を有して1つ以上の-O-基が任意選択で介在する直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態において、nは、1~4又は1~3又は2~3又は2~4である。いくつかの実施形態において、nは、1又は3である。いくつかの実施形態において、nは、3である。CnF2nは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。いくつかの実施形態において、CnF2nは、(CF2)nと表記することもでき、これは直鎖状ペルフルオロアルキレン基を指す。いくつかの実施形態において、CnF2nは、-CF2-CF2-CF2-である。いくつかの実施形態において、CnF2nは、分岐状であり、例えば、-CF2-CF(CF3)-である。いくつかの実施形態において、(OCnF2n)zは、-O-(CF2)1~4-[O(CF2)1~4]0~1によって表される。いくつかの実施形態において、Rf2は、1~8個(又は1~6個)の炭素原子を有して最大4、3又は2つの-O-基が任意選択で介在する直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態において、Rf2は、1~4個の炭素原子を有して1つの-O-基が任意選択で介在するペルフルオロアルキル基である。式CF2=CFORf及びCF2=CF(OCnF2n)zORf2によって表される好適なモノマーには、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、CF2=CFOCF2OCF3、CF2=CFOCF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2(OCF2)3OCF3、CF2=CFOCF2CF2(OCF2)4OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2OCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF(CF3)-O-C3F7(PPVE-2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3))2-O-C3F7(PPVE-3)及びCF2=CF(OCF2CF(CF3))3-O-C3F7(PPVE-4)が挙げられる。これらのペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルの多くは、米国特許第6,255,536号(Wormら)及び同第6,294,627号(Wormら)に記載されている方法に従って調製することができる。
【0054】
ペルフルオロアルキルアルケンエーテル及びペルフルオロアルコキシアルキルアルケンエーテルもまた、本開示による組成物、方法及び使用のための非晶質ポリマーの作製に有用であり得る。加えて、非晶質フルオロポリマーは、米国特許第5,891,965号(Wormら)及び同第6,255,535号(Schulzら)に記載されているものを含めた、フルオロ(アルケンエーテル)モノマーのインターポリマー化単位を含んでよい。このようなモノマーとしては、式CF2=CF(CF2)m-O-Rfによって表されるものが挙げられ、式中、mは、1~4の整数であり、Rfは、酸素原子を含むことによって更なるエーテル結合を形成することができる直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、Rfは、1~20個、いくつかの実施形態においては、1~10個の炭素原子を主鎖中に含有し、Rfはまた、更なる末端不飽和部位を含有してもよい。いくつかの実施形態において、mは、1である。好適なフルオロ(アルケンエーテル)モノマーの例としては、ペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテル、例えばCF2=CFCF2-O-CF3、CF2=CFCF2-O-CF2-O-CF3、CF2=CFCF2-O-CF2CF2-O-CF3、CF2=CFCF2-O-CF2CF2-O-CF2-O-CF2CF3、CF2=CFCF2-O-CF2CF2-O-CF2CF2CF2-O-CF3、CF2=CFCF2-O-CF2CF2-O-CF2CF2-O-CF2-O-CF3、CF2=CFCF2CF2-O-CF2CF2CF3が挙げられる。好適なペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルとしては、式CF2=CFCF2(OCnF2n)zORf2によって表されるようなものが挙げられ、式中、n、z及びRf2は、ペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルの実施形態のいずれかにおいて上に定義されるものである。好適なペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルの例としては、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2OCF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF2)3OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF2)4OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2OCF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF(CF3)-O-C3F7、及びCF2=CFCF2(OCF2CF(CF3))2-O-C3F7が挙げられる。これらのペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルの多くは、例えば、米国特許第4,349,650号(Krespan)に記載されている方法に従って調製することができる。
【0055】
本開示を実施するために有用な非晶質フルオロポリマーはまた、少なくとも1つのモノマーRaCF=CRa
2と、式Rb
2C=CRb
2によって表される少なくとも1つの非フッ素化共重合可能コモノマーとのインターポリマー化に由来するインターポリマー化単位も含んでよく、式中、各Rbは、独立に、水素、クロロ、1~8、1~4若しくは1~3個の炭素原子を有するアルキル、1~10、1~8若しくは1~4個の炭素原子を有する環状飽和アルキル基、又は1~8個の炭素原子を有するアリール基である。式Rb
2C=CRb
2によって表される有用なモノマーの例としては、エチレン及びプロピレンが挙げられる。ペルフルオロ-1,3-ジオキソールもまた、非晶質フルオロポリマーを調製するために有用であり得る。ペルフルオロ-1,3-ジオキソールモノマー及びそれらのコポリマーは、米国特許第4,558,141号(Squires)に記載されている。
【0056】
フッ素化オレフィンの有用な非晶質コポリマーの例は、例えば、フッ化ビニリデンから、及びフッ素化されていてもフッ素化されていなくてもよい(例えば、式RaCF=CRa
2若しくはRb
2C=CRb
2によって表される)1つ以上の追加のオレフィンに由来するものである。いくつかの実施形態において、有用なフルオロポリマーとしては、フッ化ビニリデンと、各二重結合炭素原子上に少なくとも1個のフッ素原子を含有する式RaCF=CRa
2によって表される少なくとも1つの末端不飽和フルオロモノオレフィンとのコポリマーが挙げられる。フッ化ビニリデンと共に有用であり得るコモノマーの例としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンが挙げられる。本開示を実施するために有用な非晶質フルオロポリマーの他の例としては、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン又は1-若しくは2-ヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー、及びテトラフルオロエチレンとプロピレンと任意選択でフッ化ビニリデンとのコポリマーとが挙げられる。いくつかの実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマーである。このようなフルオロポリマーは、例えば、米国特許第3,051,677号(Rexford)及び同第3,318,854号(Honnら)に記載されている。いくつかの実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、ペルフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのコポリマーである。このようなフルオロポリマーは、例えば、米国特許第2,968,649号(Pailthorpら)に記載されている。
【0057】
VDF及びHFPのインターポリマー化単位を含む非晶質フルオロポリマーは、通常、30~90重量%のVDF単位及び70~10重量%のHFP単位を有する。TFE及びプロピレンのインターポリマー化単位を含む非晶質フルオロポリマーは、通常、約50~80重量%のTFE単位及び50~20重量%のプロピレン単位を有する。TFE、VDF、及びプロピレンのインターポリマー化単位を含む非晶質フルオロポリマーは、通常、約45~80重量%のTFE単位、5~40重量%のVDF単位、及び10~25重量%のプロピレン単位を有する。当業者であれば、特定のインターポリマー化単位を、非晶質フルオロポリマーを形成するために適切な量で選択することができる。いくつかの実施形態において、非フッ素化オレフィンモノマーに由来する重合単位は、非晶質フルオロポリマー中に、フルオロポリマーの最大25モル%で存在し、いくつかの実施形態においては、最大10モル%、又は最大3モル%で存在する。いくつかの実施形態において、ペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルモノマーのうちの少なくとも1つに由来する重合単位は、非晶質フルオロポリマー中に、フルオロポリマーの最大50モル%で存在し、いくつかの実施形態においては、最大30モル%、又は最大10モル%で存在する。
【0058】
いくつかの実施形態において、本開示を実施するために有用な非晶質フルオロポリマーは、TFE/プロピレンコポリマー、TFE/プロピレン/VDFコポリマー、VDF/HFPコポリマー、TFE/VDF/HFPコポリマー、TFE/ペルフルオロメチルビニルエーテル(perfluoromethyl vinyl ether、PMVE)コポリマー、TFE/CF2=CFOC3F7コポリマー、TFE/CF2=CFOCF3/CF2=CFOC3F7コポリマー、TFE/CF2=C(OC2F5)2コポリマー、TFE/エチルビニルエーテル(ethyl vinyl ether、EVE)コポリマー、TFE/ブチルビニルエーテル(butyl vinyl ether、BVE)コポリマー、TFE/EVE/BVEコポリマー、VDF/CF2=CFOC3F7コポリマー、エチレン/HFPコポリマー、TFE/HFPコポリマー、CTFE/VDFコポリマー、TFE/VDFコポリマー、TFE/VDF/PMVE/エチレンコポリマー、又はTFE/VDF/CF2=CFO(CF2)3OCF3コポリマーである。
【0059】
それらの実施形態のうちのいずれかにおける上記のいくつかの非晶質フルオロポリマーは、商業的供給源から入手可能である。例えば、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマーは、3M Company,St.Paul,Minn.から商品名「3M DYNAMAR FX 9613」及び「3M DYNAMAR FX 9614」で市販されている。他の有用なフルオロポリマーは、E.I.duPont de Nemours and Co.,Wilmington,Del.から商品名「VITON A」及び「VITON FREEFLOW」が様々なグレードで、及び日本、大阪のダイキン工業株式会社から商品名「DAI-EL」が様々なグレードで市販されている。
【0060】
本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーが別のポリマー加工添加剤と組み合わせて使用できる一方で、以下の実施例は、熱可塑性フルオロポリマーが、任意の他のポリマー加工添加剤の不在下でポリマー加工添加剤として効果的であることを示している。したがって、本開示による組成物は、他の異なるフルオロポリマー(つまり、要求された量のフッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を有していない)を本質的に含まないことがあり得る。「他の異なるフルオロポリマーを本質的に含まない」は、ポリマー加工添加剤組成物がホスト樹脂中に含まれるときに、他のフルオロポリマーを含むが、押出成形中の溶融破壊性能を改善するには有効となり得ない量で含む組成物を指すことができる。いくつかの実施形態において、ポリマー加工添加剤組成物は、最大1、0.5、0.25、又は0.1重量%若しくはそれ未満の他の異なるフルオロポリマーを含んでよい。「他の異なるフルオロポリマーを本質的に含まない」ことは、第2の異なるフルオロポリマーを含まないことを包含し得る。これらの実施形態のいずれかにおいて、他の異なるフルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマーとすることができる。
【0061】
ポリマー加工添加相乗剤を含んでもよい、本開示を実施するために有用な熱可塑性フルオロポリマーは、粉末、ペレット、所望の粒子サイズ若しくはサイズ分布の顆粒の形態で、又は任意の他の押出成形可能な形態で、使用することができる。ポリマー加工添加剤組成物として有用なこれらの組成物は、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV安定化剤、金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛)、粘着防止剤(例えば、コーティングの又は非コーティングの)、顔料、並びに充填剤(例えば、二酸化チタン、カーボンブラック及びシリカ)などの従来の補助剤を含有することができる。
【0062】
HALSは、通常、酸化分解から生じ得る、フリーラジカルを捕捉することができる化合物である。いくつかの好適なHALSは、ピぺリジンの窒素原子がアルキル又はアシルによって置換されていなくても置換されていてもよいテトラメチルピペリジン基を含む。好適なHALSの例としては、デカン二酸、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ(4,5)-デカン-2,5-ジオン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピぺリジンスクシネート)、及びビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートが挙げられる。好適なHALSとしては、例えば、BASF,Florham Park,NJから商品名「CHIMASSORB」で入手可能であるものが更に挙げられる。酸化防止剤の例としては、やはりBASFから入手可能な、商品名「IRGAFOS 168」、「IRGANOX 1010」及び「ULTRANOX 626」で得られるものが挙げられる。HALS、酸化防止剤のいずれか又は双方を含むこれらの安定剤は、存在する場合、任意の有効量で本開示による組成物中に含有させることができ、通常、組成物の総重量に基づいて、最大5、2~1重量%であり、通常は少なくとも0.1、0.2又は0.3重量%である。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示による組成物は、非フッ素化ホストポリマーを含む。一般的に、非フッ素化ポリマーは、熱可塑性の溶融加工可能なポリマーである。用語「非フッ素化」は、1:2未満の、いくつかの実施形態においては1:3、1:5、1:10、1:25、又は1:100未満の、フッ素原子対炭素原子の比を有するポリマーを指すことができる。非フッ素化熱可塑性ポリマーはまた、フッ素原子を有していなくてもよい。幅広い熱可塑性ポリマーが有用である。有用な熱可塑性ポリマーの例としては、炭化水素樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/10、ナイロン11及びナイロン12)、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート))及びポリ(乳酸)などの非フッ素化ポリマー、塩素化ポリエチレン、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート及びポリメチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン及びポリスチレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、本開示による及び/又は本明細書に開示される方法において有用な組成物は、ポリオレフィン又はポリアミドのうちの少なくとも1種を含む。
【0064】
有用な溶融加工可能なポリマーは、10分当たり5.0グラム未満、又は10分当たり2.0グラム未満のメルトフローインデックス(2160グラム重量を使用して、190℃でASTM D1238に準拠して測定)を有する。一般に、溶融加工可能なポリマーのメルトフローインデックスは、10分当たり少なくとも0.1又は0.2グラムである。
【0065】
本開示による組成物及び方法のいくつかの実施形態において、有用な熱可塑性ポリマーは、炭化水素ポリマー、例えば、ポリオレフィンである。有用なポリオレフィンの例としては、一般構造CH2=CHR3を有するものが挙げられ、式中、R3は、水素又はアルキルである。いくつかの実施形態において、アルキルラジカルは、最大10個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子を含む。溶融加工可能なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(3-メチルブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクタデセンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド、直鎖状又は分岐状低密度ポリエチレン(例えば、0.89~0.94g/cm3の密度を有するもの)、高密度ポリエチレン(例えば、例えば0.94~約0.98g/cm3の密度を有するもの)、並びに共重合可能なモノマーを含有するポリエチレンとオレフィンとのコポリマー(例えば、エチレンとアクリル酸とのコポリマー、エチレンとアクリル酸メチルとのコポリマー、エチレンとアクリル酸エチルとのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとアクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマー、並びにエチレンとアクリル酸と酢酸ビニルとのコポリマー)が挙げられる。溶解加工可能なポリマーとしては、遊離カルボン酸基を含有する、オレフィンコポリマーの金属塩又はそれらのブレンド(例えば、共重合したアクリル酸を含むポリマー)が挙げられる。カルボン酸ポリマーの塩を提供するために使用することができる金属の例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、ニッケル及びコバルトなどの、一価、二価及び三価の金属である。
【0066】
本開示を実施するために有用なポリオレフィンは、オレフィンの単独重合又は共重合によって得ることができる。有用なポリオレフィンは、1つ以上のオレフィンと、最大約30重量%又はそれ以上、いくつかの実施形態においては、20重量%以下の、1つ以上の、こうしたオレフィンと共重合可能なモノマーからなるコポリマーとすることができる。オレフィンと共重合可能である代表的なモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、クロロ酢酸ビニル及びクロロプロピオン酸ビニルなどのビニルエステルモノマー;アクリル及びα-アルキルアクリル酸モノマー、及びそれらのアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリロニトリルなどのアミド及びニトリル;スチレン、o-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン及びビニルナフタレンなどのビニルアリールモノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン及び臭化ビニリデンなどのビニル及びビニリデンハロゲン化物モノマー;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル及びマレイン酸無水物などのマレイン酸及びフマル酸及びそれらの無水物のアルキルエステルモノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル及び2-クロロエチルビニルエーテルなどのビニルアルキルエーテルモノマー;ビニルピリジンモノマー;N-ビニルカルバゾールモノマー;並びにN-ビニルピロリジンモノマーが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物及び方法において有用なポリオレフィンは、チーグラー-ナッタ触媒作用によって調製される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物及び方法において有用なポリオレフィンは、均一触媒作用によって調製される。いくつかの実施形態において、均一触媒作用は、触媒及び基質が、同一相にある(例えば、溶液中)触媒作用を指す。いくつかの実施形態において、均一触媒作用は、単一の活性部位を有する触媒により行われる触媒作用を指す。シングルサイト触媒は、通常、単一の金属中心を含有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、均一触媒によるポリオレフィンは、メタロセン触媒によるポリオレフィンである。メタロセン触媒は、通常、ジルコニウム、チタン又はハフニウムなどの正に帯電している金属に錯体形成している、1つ又は2つのシクロペンタジエニルアニオンを有する。シクロペンタジエニル基が、置換(例えば、アルキル、フェニル又はシリル基により)されていてもよいか、又はベンゼンなどの芳香族環に縮合していてもよく、2つのシクロペンタジエニル基又は1つのシクロペンタジエニル基と別の配位性基(例えば、N-アルキル、P-アルキル、O又はS)とが、架橋基(例えば、(CH3)2Si、(CH3)2C、又はCH2CH2)を介して一緒に結合していてもよいことが理解される。金属としては、ハロゲン、水素、アルキル、フェニル、又は追加のシクロペンタジエニル基などの他の配位子を挙げることができる。メタロセン触媒は、通常、均一反応条件下、メチルアルモキサン又はボレートと組み合わせて使用される。
【0069】
市販のメタロセン触媒によるポリオレフィンとしては、Exxon Chemical Company,Baytown,Tex.からの商品名「EXXPOL」、「EXACT」、「EXCEED」及び「VISTAMAXX」、並びにDow Chemical Company,Midland,Mich.からの商品名「AFFINITY」及び「ENGAGE」が挙げられる。
【0070】
メタロセン触媒以外の均一触媒又はシングルサイト触媒もまた、均一触媒によるポリオレフィンを得るのに有用である。こうした触媒は、通常、金属(例えば、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、パラジウム又はニッケル)に強く結合している少なくとも1つの第1の配位子、及び不安定であり得る少なくとも1つの他の配位子を含む。第1の配位子は、通常、活性化(例えば、メチルアルモキサン又はボレートにより)された後に金属に結合したままで存在し、触媒の単一形態を安定化し、重合を妨げず、活性部位に形状をもたらし、電子的にその金属を修飾する。いくつかの有用な第1の配位子としては、嵩高い、二座のジイミン配位子、サリチルイミン配位子、三座のピリジンジイミン配位子、ヘキサメチルジシラザン、嵩高いフェノール化合物、及びアセチルアセトネートが挙げられる。これらの配位子のうちの多くは、例えば、Ittel et al.,Chem.Rev.,2000,100,1169~1203に記載されている。商品名「ADVANCED SCLAIRTECH TECHNOLOGY」で、Nova Chemicals Corporation,Calgary,Canadaにより記載されているものなどの、他のシングルサイト触媒。
【0071】
均一触媒によるポリオレフィンは、チーグラー-ナッタ触媒作用などの他の方法によって作製されるポリオレフィンよりも、高い分子量、低い多分散性、より少ない抽出可能物及び異なる立体化学を有することができる。均一触媒作用はまた、チーグラー-ナッタ触媒作用よりも重合可能なモノマーを幅広く選択することを可能にする。有機金属化合物と混合したハロゲン化遷移金属錯体を使用する、チーグラー-ナッタ触媒作用は、得られたポリオレフィン樹脂中に酸性残基を残すことができる。こうした樹脂には、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛などの酸中和添加剤が加えられてきた。均一触媒によるポリオレフィンの場合、こうした酸性残基は、一般に存在せず、したがって、酸を中和する添加剤は必要ではない場合がある。
【0072】
有用な均一触媒によるポリオレフィンの例としては、一般構造CH2=CHR3を有するものが挙げられ、式中、R3は、水素又はアルキルである。いくつかの実施形態において、アルキルは、最大10個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子を含む。均一触媒によるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(3-メチルブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクタデセンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド、直鎖状又は分岐状低密度ポリエチレン(例えば、0.89~0.94g/cm3の密度を有するもの)、及び高密度ポリエチレン(例えば、例えば約0.94~約0.98g/cm3の密度を有するもの)を挙げることができる。いくつかの実施形態において、均一触媒によるポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらの実施形態のいずれかにおいて、均一触媒によるポリオレフィンは、メタロセン触媒によるポリオレフィンとすることができる。
【0073】
本開示の実施形態のいずれかを実施するために有用な非フッ素化熱可塑性ポリマーを含む組成物は、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、UV安定化剤、金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛)、粘着防止剤(例えば、コーティングの又は非コーティングの)、顔料、及び充填剤(例えば、二酸化チタン、カーボンブラック及びシリカ)などの、それらの実施形態のいずれかにおいて上に説明した従来の補助剤のうちのいずれかを含有することができる。
【0074】
非フッ素化熱可塑性ポリマーは、粉末、ペレット、顆粒の形態、又は他の任意の押出成形可能な形態で使用することができる。本開示による組成物は、様々な方法のうちのいずれかによって調製することができる。例えば、熱可塑性フルオロポリマーは、ポリマー物品に押出成形する間に、非フッ素化熱可塑性ポリマーと混合することができる。本開示による組成物はまた、いわゆるマスターバッチも含むことができ、これは、熱可塑性フルオロポリマー又はそれらのブレンド、更なる成分(例えば、上記の相乗剤又は補助剤)、及び/又は1種以上のホスト熱可塑性ポリマーを含有することができる。マスターバッチは、ポリマー加工添加剤の有用な希釈形態とすることができる。マスターバッチは、ホストポリマー中に分散されているか、又はそれとブレンドされている熱可塑性フルオロポリマー、及び任意選択で相乗剤を含有することができ、このホストポリマーは、ポリオレフィン、均一触媒によるポリオレフィン、メタロセン触媒によるポリオレフィン、ポリアミド、又は上記の非フッ素化熱可塑性物のいずれかとすることができる。マスターバッチの調製により、例えば、ポリマー加工添加剤を、一層正確な量で、押出成形可能な組成物に添加することが可能となり得る。マスターバッチは、ポリマー物品に押出成形するための熱可塑性ポリマーに添加する準備が整っている組成物とすることができる。下記のポリマー加工添加剤の濃縮物を含むマスターバッチは、好気条件下で、比較的高温にて調製されることが多い。マスターバッチがポリ(オキシアルキレン)ポリマー相乗剤を含むいくつかの実施形態において、その実施形態のいずれかにおいて上述されたカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩が、安定化剤として有用であり得る。
【0075】
マスターバッチはまた、熱可塑性フルオロポリマーを、配合物中に使用される他の添加剤及び任意選択のポリエチレン樹脂とブレンドすること、及び米国特許第8,501,862号(Bonnetら)に記載されている方法又はそれと同様の方法を用いてそれらを圧縮ペレットに成形するによって、調製することができる。
【0076】
押出成形される非フッ素化熱可塑性ポリマー(いくつかの実施形態においてはポリオレフィン)、及びポリマー加工添加剤組成物は、コンパウンディングミル、バンバリーミキサ、又は混合式押出成形機などの、プラスチック産業において通常使用されるブレンド手段のいずれかによって一緒に合わせることができ、この場合、ポリマー加工添加剤組成物は、ホスト熱可塑性ポリマー全体に均一に分布される。混合操作は、フルオロポリマー及び/又は相乗剤の軟化点より高い温度で最も都合良く実施されるが、微粒子としての成分を乾式ブレンドして、次いでこの乾燥ブレンドを二軸溶融押出成形機に供給することにより、成分の均一な分布を引き起こすことも可能である。
【0077】
得られた混合物は、ペレット化され得るか、ないしは別の方法で所望の粒子サイズ若しくはサイズ分布に粉砕されて、押出成形機に供給され、この押出成形機は、通常、ブレンドされた混合物を溶融加工する単軸押出成形機であろう。溶融加工は、通常、180℃~280℃の温度で行われるが、最適操作温度は、ブレンドの融点、溶融粘度、及び熱安定性に応じて選択される。本明細書に開示される組成物を押出成形するために使用することができる様々なタイプの押出成形機は、例えば、Rauwendaal,C.,「Polymer Extrusion」,Hansen Publishers,p.23~48,1986により記載されている。押出成形機のダイ設計は、作製される所望の押出成形物に応じて、様々であり得る。例えば、環状ダイは、米国特許第5,284,184号(Nooneら)に記載されているものなどの、フューエルラインホースの作製に有用なチューブを押出成形するために使用することができる。
【0078】
こうした組成物は、更なる非フッ素化熱可塑性ポリマー及び/又は更なる成分を混合して、ポリマー物品に加工する準備が整っている組成物を得ることができる。本組成物はまた、必要な全ての成分を含有することもでき、ポリマー物品へ押出成形される準備が整っている。これらの組成物中の熱可塑性フルオロポリマーの量は、通常、比較的少ない。したがって、非フッ素化熱可塑性ポリマーは、本開示による組成物のいくつかの実施形態においては大量に存在する。大量とは、組成物の50重量%超であると理解される。いくつかの実施形態において、大量とは、組成物の少なくとも60、70、75、80又は85重量%である。使用される正確な量は、押出成形可能な組成物が、その最終形態(例えば、フィルム)に押出成形されるか、又はその最終形態に押出成形される前に、追加のホストポリマーにより(更に)希釈されることになるマスターバッチ又は加工添加剤として使用されるかに応じて、様々であり得る。
【0079】
一般に、いくつかの実施形態において、ポリオレフィン(例えば、均一触媒による若しくはメタロセン触媒によるポリオレフィン)又はポリアミド組成物である、非フッ素化熱可塑性ポリマーを含有する本開示による組成物は、本明細書に開示される熱可塑性フルオロポリマーを、組成物の総重量に基づいて、約0.002~50重量%(いくつかの実施形態においては、0.002~10重量%)の範囲で含む。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、熱可塑性フルオロポリマーとポリマー加工添加相乗剤との合算重量は、組成物の総重量に基づいて、0.01%~50%(いくつかの実施形態においては、0.002~10重量%)の範囲である。マスターバッチ組成物では、熱可塑性フルオロポリマーと任意のポリマー加工添加相乗剤との合算重量は、組成物の総重量に基づいて、1%~50%の範囲、いくつかの実施形態においては、1%~10%、1%~5%、2%~10%、又は2%~5%の範囲とすることができる。組成物が最終形態に押出成形されることになる場合、及びホストポリマーの添加により更に希釈されない場合、組成物は、通常、より低い濃度の熱可塑性フルオロポリマーを含有している。これらの実施形態のいくつかにおいて、熱可塑性フルオロポリマーと任意のポリマー加工添加相乗剤との合算重量は、組成物の総重量に基づいて、約0.002~2重量%、いくつかの実施形態においては、約0.01~1重量%、又は0.01~0.2重量%の範囲である。使用されるポリマー加工添加剤の上限濃度は、ポリマー加工添加剤の濃度のいずれかの物理的な悪影響によるものよりもむしろ、経済的制限によって一般に決まる。
【0080】
本開示による組成物は、様々な方法で押出成形又は加工されてもよく、これらには、例えば、フィルムの押出成形、押出しブロー成形、射出成形、パイプ、ワイヤ及びケーブル押出成形、並びに繊維生成が挙げられる。
【0081】
以下の実施例は、本明細書に記載されるフッ素化熱可塑性ポリマーが、同様の溶融粘度を有する最新技術の非晶質フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマーに匹敵する溶融破壊排除性能を付与することを明示している。例えば、実施例2及び3における溶融破壊を排除する時間は、調製実施例2及び3におけるVDF-TFEコポリマーと同様の溶融粘度を有する「3M DYNAMAR FX9614」を含有する比較例3における溶融破壊を排除する時間に接近していた。更に、実施例1及び11における溶融破壊を排除する時間は、調製実施例1におけるVDF-TFEコポリマー、及び「KYNAR 7201」と同様の溶融粘度を有する「3M DYNAMAR FX9613」を含有する比較例1における溶融破壊を排除する時間よりも短かった。
【0082】
更に、以下の実施例に示すように、少なくとも30モル%のフッ化ビニリデン単位、少なくとも5モル%のテトラフルオロエチレン単位、及び5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーの溶融破壊排除性能は、通常、他の耐アンモニア性熱可塑性物質の溶融破壊排除性能よりも、著しく良好である。例えば、比較例5は、表7に示すように耐アンモニア性であるが、表10に示すように、120分以内に溶融破壊を排除しなかった。対照的に、少なくとも30モル%のフッ化ビニリデン単位、少なくとも5モル%のテトラフルオロエチレン単位、及び5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーはまた、表7に示すように耐アンモニア性であり、通常、表10に示すように120分以内での溶融破壊の著しい低減をもたらした。そのため、発明者らは、少なくとも30モル%のフッ化ビニリデン単位、少なくとも5モル%のテトラフルオロエチレン単位、及び5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を有する熱可塑性フルオロポリマーが、所望の溶融破壊排除性能と良好な化学的安定性との組み合わせをもたらすことができることを見出した。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態
第1の実施形態において、本開示は、
少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を含む熱可塑性フルオロポリマーであって、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む、熱可塑性フルオロポリマーと、
組成物の主成分としての非フッ素化熱可塑性ポリマー、又はポリマー加工添加相乗剤のうちの少なくとも1種と、
を含む、組成物を提供する。
【0084】
第2の実施形態において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマーを含む、第1の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0085】
第3の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、組成物の総重量に基づいて、0.002%~50%、又は10%の量で存在する、第2の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0086】
第4の実施形態において、本開示は、組成物がポリマー加工添加相乗剤を含み、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリエーテルポリオール、又はこれらの組み合わせである、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0087】
第5の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つを含む、第4の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0088】
第6の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩を更に含む、第5の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0089】
第7の実施形態において、本開示は、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、シリコーン-ポリカプロラクトンコポリマー、ポリシロキサン、ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー又はシリコーン-ポリウレタンコポリマーのうちの少なくとも1種を更に含む、第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0090】
第8の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、多峰性分子量分布を有する、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0091】
第9の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、組成物は、28%アンモニア溶液からの蒸気への18時間曝露後に、組成が同一であるが熱可塑性フルオロポリマーの代わりにフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンコポリマーを含む匹敵する組成物よりも色が明るい、第5の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0092】
第10の実施形態において、本開示は、非晶質フルオロポリマーを更に含む、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0093】
第11の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、長鎖分岐を有する、第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0094】
第12の実施形態において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマーの押出成形中に溶融欠陥を低減する方法であって、
非フッ素化熱可塑性ポリマーと熱可塑性フルオロポリマーとを合わせて押出成形可能な組成物を準備することであって、熱可塑性フルオロポリマーが、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を含み、熱可塑性フルオロポリマーが、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む、ことと、
押出成形可能な組成物を押出成形することと、
を含む、方法を提供する。
【0095】
第13の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、押出成形可能な組成物の総重量に基づいて、0.002%~50%、又は10%の量で存在する、第11の実施形態に記載の方法を提供する。
【0096】
第14の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤を、非フッ素化熱可塑性ポリマー及び熱可塑性フルオロポリマーと合わせて押出成形可能な組成物を作製することを更に含む、第12又は第13の実施形態に記載の方法を提供する。
【0097】
第15の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリエーテルポリオール、又はこれらの組み合わせである、第14の実施形態に記載の方法を提供する。
【0098】
第16の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリカプロラクトンのうちの少なくとも1種を含む、第15の実施形態に記載の方法を提供する。
【0099】
第17の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩を更に含む、第16の実施形態に記載の方法を提供する。
【0100】
第18の実施形態において、本開示は、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、シリコーン-ポリカプロラクトンコポリマー、ポリシロキサン、ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー又はシリコーン-ポリウレタンコポリマーのうちの少なくとも1種を、非フッ素化熱可塑性ポリマー及び熱可塑性フルオロポリマーと合わせて押出成形可能な組成物を作製することを更に含む、第12~第17の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0101】
第19の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、多峰性分子量分布を有する、第12~第18の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0102】
第20の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、組成物は、28%アンモニア溶液からの蒸気への18時間曝露後に、組成が同一であるが熱可塑性フルオロポリマーの代わりにフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンコポリマーを含む匹敵する組成物よりも色が明るい、第16の実施形態に記載の方法を提供する。
【0103】
第21の実施形態において、本開示は、非晶質フルオロポリマーを、非フッ素化熱可塑性ポリマー及び熱可塑性フルオロポリマーと合わせて押出成形可能な組成物を作製することを更に含む、第12~第20の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0104】
第22の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、長鎖分岐を有する、第12~第21の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0105】
第23の実施形態において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート又はポリメタクリレートのうちの少なくとも1つを含む、第1~第22の実施形態のいずれか1つに記載の組成物又は方法を提供する。
【0106】
第24の実施形態において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンである、第23の実施形態に記載の組成物又は方法を提供する。
【0107】
第25の実施形態において、本開示は、ポリオレフィンが、均一触媒によるポリオレフィンである、第24の実施形態に記載の組成物又は方法を提供する。
【0108】
第26の実施形態において、本開示は、ポリオレフィンが、メタロセン触媒によるポリオレフィンである、第24又は第25の実施形態に記載の組成物又は方法を提供する。
【0109】
第27の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーの融点が、最大130℃である、第24~第26の実施形態のいずれか1つに記載の組成物又は方法を提供する。
【0110】
第28の実施形態において、本開示は、非フッ素化熱可塑性ポリマーが、ポリアミドである、第23の実施形態に記載の組成物又は方法を提供する。
【0111】
第29の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーの融点が、少なくとも130℃である、第28の実施形態に記載の組成物又は方法を提供する。
【0112】
第30の実施形態において、本開示は、
少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を含む熱可塑性フルオロポリマーであって、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む、熱可塑性フルオロポリマーと、
ポリマー加工添加相乗剤と
を含む、
ポリマー加工添加剤組成物を提供する。
【0113】
第31の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリエーテルポリオール、又はこれらの組み合わせである、第30の実施形態に記載のポリマー加工添加剤組成物を提供する。
【0114】
第32の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つを含む、第30又は第31の実施形態に記載のポリマー加工添加剤組成物を提供する。
【0115】
第33の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加相乗剤が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含み、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸の金属塩を更に含む、第32の実施形態に記載のポリマー加工添加剤組成物を提供する。
【0116】
第34の実施形態において、本開示は、ポリマー加工添加剤として、少なくとも30モル%の量のフッ化ビニリデン単位及び少なくとも5モル%の量のテトラフルオロエチレン単位を有し、ヘキサフルオロプロピレン単位を含まない又は5モル%未満のヘキサフルオロプロピレン単位を含む、熱可塑性フルオロポリマーの使用を提供する。
【0117】
第35の実施形態において、本開示は、フッ化ビニリデン単位の量が、30モル%~95モル%の範囲であり、テトラフルオロエチレン単位の量が、5モル%~70モル%の範囲である、第1~第34の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0118】
第36の実施形態において、本開示は、フッ化ビニリデン単位の量が、55モル%~90モル%の範囲であり、テトラフルオロエチレン単位の量が、10モル%~45モル%の範囲である、第1~第35の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0119】
第37の実施形態において、本開示は、フッ化ビニリデン単位の量が、70モル%~90モル%の範囲であり、テトラフルオロエチレン単位の量が、10モル%~30モル%の範囲である、第1~第36の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0120】
第38の実施形態において、本開示は、フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位が、熱可塑性フルオロポリマー中に、熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも95モル%の合計量で存在する、第1~第37の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0121】
第39の実施形態において、本開示は、フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位が、熱可塑性フルオロポリマー中に、熱可塑性フルオロポリマーの総モルに基づいて少なくとも99モル%の合計量で存在する、第1~第38の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0122】
第40の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、クロロトリフルオロエチレン単位、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン単位及びプロピレン単位から選択される単位を更に含む、第1~第39の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0123】
第41の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、長鎖分岐を有する、第1~第40の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0124】
第42の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、1、0.9、0.8、0.75、0.6又は0.5mg KOH/g以下の酸価を有する、第1~第41の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0125】
第43の実施形態において、本開示は、組成物、ポリマー加工添加剤組成物又は押出成形可能な組成物が、少なくとも1、1.25、1.5又は1.75mg KOH/gの酸価を有する熱可塑性フルオロポリマーを更に含む、第1~第42の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0126】
第44の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、少なくとも1、1.25、1.5又は1.75mg KOH/gの酸価を有する、第1~第41の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0127】
第45の実施形態において、本開示は、熱可塑性フルオロポリマーが、190℃にて、4~11、又は5~10の範囲のlog[ゼロせん断粘度/1パスカル.秒(Pa.s)]を有する、第1~第44の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0128】
第46の実施形態において、本開示は、組成物、ポリマー加工添加剤組成物又は押出成形可能な組成物が、ヒンダードアミン光安定剤を更に含む、第1~第45の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0129】
第47の実施形態において、本開示は、組成物が、アルカリ製品のための包装材料である、第1~第29の実施形態のいずれか1つに記載の組成物又は方法を提供する。
【0130】
本開示がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は単に例示を目的とするものであり、いかなる方法でも本開示を限定すると解釈してはならないことを理解すべきである。
【実施例】
【0131】
全ての材料は、他に記述が無い又は明らかでない限り、例えば、Sigma-Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WIから市販されている又は当業者に公知のものである。
【0132】
以下の略語をこのセクションで使用する:h=時間、min=分、s=秒、mg=ミリグラム、g=グラム、kg=キログラム、lb=ポンド、L=リットル、ppm=百万分率、N=ノーマル、mm=ミリメートル、mil=インチの千分の一、rad=ラジアン、Pa=パスカル、psig=重量ポンド毎平方インチゲージ圧、η’=動的せん断粘度、η
*=複素粘度、τ=緩和時間、m
1=粘度曲線の曲率の測定値、多分散度に逆比例する、ΔHa=kJ/molでの流動の活性化エネルギー、J=ジュールス、RPM=毎分回転数。
【表1】
【0133】
フルオロポリマーの調製
調製実施例1~9(PE-1~PE-9)の重合方法
PE-1を調製するために、オートクレーブへ、水2.50L、CF3-O-CF2CF2CF2-O-CHFCF2-COONH4の重量に基づいて添加する1.5重量%のFC70を含むCF3-O-CF2CF2CF2-O-CHFCF2-COONH4の30%溶液33g、DEM2g、及びすすぎ剤として更なる水350gを添加した。反応器の温度を71.1℃(160°F)に維持した。一連の3回の窒素パージ及び排気の後、最終真空を、VDFプリチャージ106gのプリチャージ、続いてTFE23gのプリチャージで破って、1.52×106Pa(220psig)の反応圧力を得た。プリチャージモノマー比を、コポリマー中に目標モノマー組成物を得るために、モノマーの反応比に基づいて選択した。機器の制限により、VDFとTFEとの双方について、選択した目標プリチャージ量と添加した実量の間には差がある。添加した実量を下記表2で報告する。1.52×106Pa(220psig)の圧力に到達した後、APS3gを含有する溶液をケトルに注入した。モノマーがポリマーに変換したら、モノマーを、TFE:VDF供給比0.391で反応器に供給し、これは、選択したモノマーのVDF/TFEモル%比80:20に相当した。このようにして、VDF500gを反応器に添加するまで、一定の圧力及び組成を維持した。プリチャージにおける目標モノマー比からの開始にもかかわらず、重合中にポリマー組成全体が供給比組成に近づくようシフトすると期待された。重合の終わりに、残っているモノマーを抜き取り、反応器を冷却し、ラテックスを回収した。ラテックスを凍結解凍サイクルで凝固させ、脱イオン水ですすぎ、次いで127℃(260°F)で一晩乾燥させた。
【0134】
PE-2~PE-9は、同一の手順を用い、下記表2に示すように、VDFプリチャージ、TFEプリチャージ、重合中に添加するAPS、DEM及びVDFの量、並びに選択したVDF及びTFEのモル%を変化させて調製した。PE-2では、反応器内の凝集に起因して、VDF660gを添加した後、反応を停止した。PE-7では、TFE:VDF供給比0.786を用い、PE-8では、TFE:VDF供給比0.111を用いた。
【表2】
【0135】
市販の材料を、ポリマー加工添加剤として評価した。PPA-10~PPA-15について表3で報告しているのは、これらの市販材料のそれぞれの、商品名である。
【表3】
【0136】
フルオロポリマーの特性化
酸価の測定方法
選択したフルオロポリマーの酸価を、以下の手順を用いて、溶解したポリマーを滴定して測定した。各試料を計量し、次いで、アセトン(ARグレード)中、約14時間、被覆容器内で撹拌して溶解させた。溶媒ブランクを、全ての試料から減算した。溶解した試料を、Metrohm USA,Riverview,FLから商品名「808」で入手可能な自動滴定器、及びMetrohm USAから商品名「Solvotrode」で入手可能な、有機溶媒に認容性のあるpH電極で滴定した。滴定剤は、フタル酸水素カリウムに対して標準化したメタノール中0.1N水酸化テトラブチルアンモニウムとした。試料の均質性を確保し検証するために、複製物及び比較的大きいサイズの試料を滴定した。1つ以上のエンドポイントを有する試料について、試料の最終滴定容積に基づいて総酸価を報告した。試料の1g当たりのKOHのmg(略語は「mg KOH/g」)で報告する3重測定での酸価の結果の平均及び標準偏差を、下記表4に示す。
【表4】
【0137】
粘度の測定方法
PE-1~PE-8及びPPA-14の溶融粘度を、TA instrumentsから商品名「AR2000ex」で入手可能な平行平板式レオメータを用いて測定した。それには、電気加熱式プレートシステム(electrically heated plates system、EHP)に取り付けられた、Niメッキされた25mmの使い捨てプレートが取り付けられていた。試料を、気泡フリーの1.25mmシートに、およそ150℃にて圧入した。試験した試料毎に、直径30mmの円板を切り出して、レオメータ板同士の間に150℃にて置いた。ギャップを1.1mmに設定し、試料を、正常力が安定した後、トリミングした。次いで、このギャップを1.0mmに設定し、正常力が安定した後、測定を初期化した。
【0138】
手順は、時間及び周波数掃引とし、10の点当たり5つの点で、0.1~398.1rad/秒の範囲の周波数にて、かつ7種の温度、150℃、170℃、190℃、210℃、230℃、250℃及び270℃にて、並びに10%歪で行った。7種の温度のうちの6種をベストフィットをもたらすように選択し、それは、PE-1~PE-6では150℃~250℃、PE-7及びPE-8では170℃~270℃であった。
【0139】
Cole-Cole Plot及びVan Gurp-Palmen Plotを、データの整合性を検証するために用いた。これらのプロットにおける、データセット中の任意の飛散は、不適切な試験条件、複数の相/応答、又は試験中の構造の変化(長鎖分岐、結晶性、劣化、発泡など)を示している。かなり不整合な任意のデータは、解析から拒否した。
【0140】
η’及びη*データは、Microsoft ExcelのSolverアドオンを用いて、Carreau-YasudaモデルとArrhenius方程式(η*のみにフィッティングするよう米国特許第5,710,217号(Blongら)で用いられている方程式)との組み合わせに同時にフィッティングさせた。その目的のために、η0、τ、m1及びΔHaを、η’及びη*の双方について、同一に保った。「n」値は、曲線毎に調整した。フィッティングパラメータのうちの1つは、log[ゼロせん断粘度(Pa.s)/1Pa.s]であり、これは表5にlog(η0)で示している。曲線フィッティング手順から得た190℃でのlogゼロせん断粘度の結果を、下記表5に示す。
【0141】
熱特性の測定方法
PE-1~PE-8及びPPA-14の、溶融温度、結晶化温度、溶融熱(ΔHm)及び結晶化熱(ΔHc)を、ASTM D3418に従って測定した。試料を、およそ4mgの試料重量で、アルミニウムパン中で調製し、TA instrument Q2000 DSCを用いて試験した。試料を、加熱/冷却/加熱のサイクルに供し、低い温度は-80℃、高い温度は250℃とした。結晶化特性を冷却部門において、及び溶融特性を第2の加熱部門において報告した。溶融温度、結晶化温度、溶融熱(ΔHm)及び結晶化熱(ΔHc)の結果を表5に提示する。
【表5】
【0142】
マスターバッチ(MB)の調製
PE-1~PE-8、及びPPA-10~PPA-15を、3%のレベルにてMB中へ化合した。各MBを、1kgバッチ中、粒状樹脂(Exxon Mobilから入手可能な2MI LLDPE、EM 1002.09)970g、Irganox B900 1.0g、ステアリン酸亜鉛0.7g、及び表2に挙げたPE若しくはPPA30g、又は表2に挙げたPE若しくはPPA15gのいずれか、並びにPEG15gを、袋の中で勢いよく振とうして調製した。各混合物を、20mmの前方内径を有する、実験室スケールの、噛み合いの、異方向回転の、非通気の、空冷の、円錐形二軸(HaakeBuchler Rheomix TW-100)へ供給した。各混合物を、押出成形の喉部に重力送りし、50g/分の速度で空気に曝した。3つのバレルゾーン(供給、計量、混合)及びダイゾーンの押出成形機の特定の温度プロファイルは、それぞれ、170/190/200/200℃とした。押出成形機は、第1の「配合」パスの間、150RPMで運転した。第2のパスは、同じ温度プロファイルであるが、材料の大量供給の間は90RPMで運転した。材料の4分間の「パージ」を、各パスの開始時に廃棄した。表2に挙げたPE、及び表3に挙げたPPAで調製したMBを、下記表6に挙げる。
【表6】
【0143】
MBの評価
耐アンモニア性の測定方法
耐アンモニア性を試験する各MBについて、少量のMBを、28%アンモニア溶液において18時間デシケータ内に載置した。次いで、それらのMBの色を目視で検査した。この耐アンモニア性試験の結果を下記表7にまとめる。アンモニア蒸気への曝露前に、MBの色は白色であった。
【表7】
【0144】
溶融破壊排除の測定方法
溶融破壊性能を、0.9 MI ZN LLDPE(Chevron Philips Chemicalsから入手可能なMarflex 7109)を用いて試験した。40mmの24/1の溝付き供給押出機を備えたKiefel blown filmラインを用いて試験を実施した。ダイは、直径40mm及びダイギャップ0.9mm(36ミル)を有するスパイラルデザインのものとした。
【0145】
試験は、ホスト樹脂中、210℃(410°F)、0.9mm(36ミル)のギャップ、14L/D、10.5kg/時(23lb/時)及び220/秒にて、下記表8に示す6000又は7500ppmのいずれかの粘着防止剤、及び表8に示す1000又は1500ppmのいずれかのスリップ剤と組み合わせて、MBを350ppmの濃度へ希釈して、行った。MBの組み合わせを試験した実施例12~実施例14について、配合した樹脂中300ppmの目標濃度を達成するために1種のMB10gを、及び50ppmの目標濃度を達成するために他のMB1.667gを添加することによって、PPAの目標総濃度を達成した。実施例12~実施例14におけるMB及びそれらの濃度を下記表9に示す。
【0146】
試験中、10分毎にフィルムの試料を回収した。このフィルムを、溶融破壊の存在について調べ、MFで被われたフィルム面積の百分率で表した。テストを停止した時点での、MFの最後のバンドが消失するために相当する時間、又は溶融破壊を排除する時間(time to clear、TTC)を記録した。2つの時間の終了時に任意のMFが残っていた場合は、試験を中止してその最終MFレベルを記録した。結果を下記表10に付与する。
【表8】
【表9】
【表10】
【0147】
本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって本開示の様々な修正及び変更を行うことができ、本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態に不当に限定されるものではない点を理解するべきである。