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▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】リターダを含む再帰性反射物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/124 20060101AFI20220419BHJP
   G02B 5/128 20060101ALI20220419BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G02B5/124
G02B5/128
G02B5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019544859
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2017053657
(87)【国際公開番号】W WO2018151761
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/461,177
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】マコイ,マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィッティング,ティエン イ ティー.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,グワーンレイ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ニーラジュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン-ホ,クイ
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン,ケネス エー.
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0012153(US,A1)
【文献】特開2007-10893(JP,A)
【文献】特開平8-101304(JP,A)
【文献】特開2013-73021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/12 - 5/136
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面を有する再帰性反射物品であって、再帰性反射層と、前記再帰性反射層と比較して、前記光入射面のより近くに配置された遅延層とを含み、前記遅延層が、近赤外域内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダを含み、前記再帰性反射層が非偏光性であり、前記遅延層が少なくとも第1と第2の領域を含むパターン化された遅延層であり、前記パターン化された遅延層の前記第1の領域は、近赤外域内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダであるが、近赤外域内の前記少なくとも1つの波長にかかる前記パターン化された遅延層の前記第2の領域は、実質的にゼロ遅延特性を有するか、又は近赤外域内の前記少なくとも1つの波長を吸収する、再帰性反射物品。
【請求項2】
前記再帰性反射層が、金属裏地のプリズム形再帰性反射体である、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項3】
前記再帰性反射層が、金属裏地のビーズ形再帰性反射体である、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項4】
前記再帰性反射層が、結合材に部分的に埋められたビーズを含む、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項5】
前記再帰性反射層が、誘電体でコーティングされたビーズ形再帰性反射体である、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項6】
前記遅延層が液晶遅延層である、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項7】
入射角範囲で前記第1の領域に対応する前記光入射面に入射した前記少なくとも1つの波長の円偏光が、少なくとも80%は、反対側の回り方向を有する円偏光として再帰反射される、請求項に記載の再帰性反射物品。
【請求項8】
前記入射角範囲が、少なくとも30°の円錐形を含む、請求項に記載の再帰性反射物品。
【請求項9】
前記遅延層が、液晶遅延層及びポリカーボネート遅延層のうちの1つである、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再帰性反射物品は、少なくとも再帰性反射要素を含む構造体である。再帰性反射要素は、入射光を実質的に同じ方向に反射し返す。再帰性反射要素としては、コーナーキューブプリズム形再帰性反射体、ビーズ形再帰性反射体等が挙げられる。リターダは、入射伝搬電磁波の直交成分のうちの一方を他方よりも遅延させて、偏光入射光の偏光状態の変化をもたらす位相差を生じさせる。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、本明細書は、再帰性反射物品に関する。特に、本明細書は、光入射面を有し、再帰性反射層と、再帰性反射層に比べて光入射面のより近くに配置された遅延層とを含む再帰性反射物品に関する。遅延層は、近赤外域内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダを含み、再帰性反射層は、非偏光性であり、遅延層は、回転において不変である。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】再帰性反射層の側面概略図である。
図2】再帰性反射物品の側面概略図である。
図3図2の再帰性反射物品の一般的な動作原理を示す側面概略図である。
図4】別の再帰性反射物品の側面概略図である。
図5A】それぞれ、一方の回り方向と他方の回り方向の円偏光で照明された再帰性反射物品の正面概略図である。
図5B】それぞれ、一方の回り方向と他方の回り方向の円偏光で照明された再帰性反射物品の正面概略図である。
図6】再帰性反射物品の入射角範囲を示す側面概略図である。
図7】任意に整列配置されたフィルムを含む再帰性反射物品である。
図8】実施例1の水平走査である。
図9】実施例2の水平走査である。
図10】実施例3の垂直走査である。
図11】実施例4の垂直走査である。
図12】実施例5の垂直走査である。
図13】実施例6の垂直走査である。
図14】実施例7の垂直走査である。
図15】実施例8の水平走査である。
図16】実施例8の垂直走査である。
図17】実施例8の垂直走査である。
図18】実施例9の水平走査である。
図19】実施例9の垂直走査である。
図20】実施例9の垂直走査である。
図21】実施例10の垂直走査である。
図22】実施例11の垂直走査である。
図23】実施例12の垂直走査である。
図24】実施例12の垂直走査である。
図25】実施例12の垂直走査である。
図26】実施例13の垂直走査である。
図27】実施例13の垂直走査である。
図28】実施例13の垂直走査である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書に記載されるものと同様の再帰性反射物品は、特定のマシンビジョンの検出及び感知システムにおいて有用であり得る。一例として、輸送インフラストラクチャがより複雑になるにつれて、車両は、より多くの運転自律性を得つつある。安全かつ効果的な運行のために、駐車支援、自律的クルーズコントロール、及び車線逸脱警告から、衝突回避及び交通標識の解釈を含む、完全自立運行及び運転に至るまで、タスクを実行するために、感知モジュールの車両への組み込みが多くなっている。
【0005】
車両の周囲世界を感知するために、車両は、1つ又は2つ以上の光点を発するセンサーのセットを使用する。例えば、ライダー(光レーダー)システムは、潜在的な障害物又は情報物体を検出するために、周囲を通過移動する光の点のコンステレーションを使用してもよい。これらの問い合わせ用光ビームは、狭い波長範囲、例えば2~20nmを使用してもよく、又は広い波長範囲、例えば、100nm以上を使用してもよい。
【0006】
図1は、再帰性反射層の側面概略図である。再帰性反射層100は、入射光線110、及び、再帰性反射層によって再帰反射されている再帰反射光線120が図示されている。再帰性反射層100は、光が実質的にその光源に向かって反射されるような光学構造を有する。換言すれば、任意の入射光線は、その入射角から実質的に180°反射される。例えば、入射光線110は、再帰性反射層100と実質的に同じ角度を有する再帰反射光線120として再帰反射される。再帰性反射層の光学構造の幾何学的形状のため、再帰反射光線が入射光線からわずかに平行移動していてもよい。換言すれば、入射光線と再帰反射光線は実質的に平行であるが、一致する必要はない。
【0007】
図2は、再帰性反射物品の側面概略図である。再帰性反射物品200は、再帰性反射層210と、第1の領域222及び第2の領域224を有する及び遅延層220とを含む。
【0008】
再帰性反射層210は、任意の好適な再帰性反射層又は層の組み合わせであってもよい。本明細書においては、好適な再帰性反射体として、偏光を実質的には解消しない再帰性反射体などが挙げられる。例えば、好適な再帰性反射体としては、円偏光の偏光を維持するか、又は円偏光の偏光を反転させる再帰性反射体等が挙げられる。換言すれば、左回りの円偏光として、又は右回りの円偏光として反射される、左回りの入射円偏光は、両方とも偏光非解消再帰性反射体と見なされるべきである。適用に応じて、ある程度の偏光解消は、許容可能であり、また、現実世界の製造条件、その他の条件から、空間的不均一性に基づいて、ある程度は避けられない。偏光解消はまた、偏光の入射角にもある程度依存することがあり得る。しかしながら、多くの場合、また、本明細書においては、偏光解消再帰性反射体は、入射偏光の偏光を反転させることも、維持することもしない。例えば、左回りの入射円偏光は、より大きい全体にランダム化された偏光の一部として、左回りの円偏光の小部分を戻してもよい。偏光解消反射体を使用する他の実施例では、左回りの入射円偏光は、楕円偏光又は直線偏光として戻されてもよい。やはり、本明細書においては、これらの種類の再帰性反射体は、偏光非解消反射体と見なされるべきではない。
【0009】
(少なくとも、本明細書に潜在的に適用可能な程度まで)偏光非解消である好適な再帰性反射体としては、金属裏打ちのプリズム(コーナーキューブ)形再帰性反射体、金属裏打ちのビーズ形再帰性反射体、任意選択的に、例えば、真珠光沢又は他の反射性フレーク材料を含む結合材に部分的に浸漬された、ビーズ形再帰性反射体等を含む。本明細書に提示される比較例に記載されるように、全反射に依存して入射光を再帰反射する空気裏打ちプリズムは、入射光を偏光解消することが観察された。
【0010】
再帰性反射層は、任意の好適なサイズとすることができ、任意の好適なサイズの要素を有してもよい。例えば、再帰性反射層に使用される微細複製されたプリズム又はビーズは、サイズ(幅又は直径)が数マイクロメートル、サイズが数十マイクロメートル、サイズが数百マイクロメートル、又はサイズが数ミリメートル、更にはサイズが数センチメートルであってもよい。適用のために適切かつ好適な、複数の異なるサイズ及びサイズ分布のビーズを利用してもよい。対象とする再帰反射波長により、回折及びその他のサブ波長特徴の影響が、所望の光学性能に対して影響を及ぼすこと、更には支配的になることを防止するために、特定の実用的な最小特徴サイズがあるかもしれない。
【0011】
ビーズ形再帰性反射体については、ガラスビーズが一般的に使用されるが、任意の実質的に球状の材料を使用することができる。材料は、耐久性、耐環境堅牢性、製造可能性、屈折率、コーティング可能性、又は任意の他の物理的、光学的、又は材料的特性に基づいて選択されてもよい。ビーズは、例えば、真珠光沢又は金属フレークを含む、反射性結合材に部分的に覆われてもよく、又は、蒸着コーティング、スパッタコーティング、あるいは任意の他の好適なプロセスによって部分的に金属化されてもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、誘電性材料でコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、金属又は金属化フィルムが、ビーズ表面に積層されるか、又は別の方法で取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、コーティング又は層は、スペクトル選択的反射体であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、再帰性反射体の光入射面と、基材としての金属又は金属化ポリマーフィルムの間に、非反射性結合材を通過する光路を形成してもよい。結合材は、任意の物理的特性を有してもよく、再帰性反射層に特定の所望の特性を付与するものであってもよい。例えば、結合材は、再帰性反射物品に着色効果を与える顔料又は染料を含んでもよい。
【0012】
プリズム形再帰性反射体については、(少なくとも対象とする波長について透明な)透明媒質に、任意の好適なプリズム形状が、微細複製されるか、又は別の方法で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、注型及び硬化微細複製プロセスを使用してプリズム形表面を形成する。例えば、輝度向上フィルム(Brightness Enhancing Film,BEF)におけるプリズムのような、直角線形プリズムを使用することができるが、このようなプリズムは、非常に広い角度範囲にわたっては再帰反射しない。コーナーキューブは、再帰性反射プリズム形状として広く使用され、各入射光線は、入射方向に戻される前に3回反射される。その他、より多くのファセットを有する表面が、プリズム形の再帰性反射体として使用されてもよい。任意の好適な微細複製可能な樹脂を使用することができ、特に、液体又は流動性の形態で塗布され、その後硬化され、ツールから取り出される樹脂が使用されてもよい。ツールは、エッチング(化学的又は反応性イオンエッチング)、ダイヤモンド旋削、その他を含む、任意の好適なプロセスによって形成することができる。いくつかの実施形態では、ツールは、完全なプリズム形シート表面パターンを被覆する、融合、又はその他の方法で取り付けられた複数の部品の集合とすることができる。硬化は、熱又は電磁放射線を付加することによって行われてもよい。取り扱い又は硬化前処理中に、意図せずして、一部又は全部が硬化することのないように、紫外線硬化性樹脂、又は一般的ではない周囲条件によって硬化可能な樹脂を選択してもよい。いくつかの実施形態では、付加製造又は減法製造プロセスを用いて、微細複製のためのツール表面又はプリズム表面自体のいずれかを形成してもよい。
【0013】
遅延層220は、光の直交成分のうちの一方の偏光を変化させるために、その成分を選択的に遅延させる、任意の好適な遅延層とすることができる。いくつかの実施形態では、遅延層220は、1/4波長リターダとして構成されてもよい。1/4波長リターダは、対象とする特定波長λについては遅延特性λ/4を有する。所与の波長の光のための1/4波長リターダは、その光を円偏光から直線偏光に、又はその逆方向に、変換する。いくつかの適用では、1/4波長リターダは、完全なλ/4遅延特性を有せずに、許容可能な範囲で機能するものであってもよい。いくつかの適用では、アクロマティックリターダを使用することにより、例えば、2nm、10nm、20nm、40nm、50nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、又は、500nmにも及ぶ波長範囲にわたって実質的に1/4波長遅延特性を維持することが可能にされてもよい。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、近赤外波長範囲全体、例えば、700~1400nmにわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、可視波長範囲全体、例えば、400~700nmにわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、近赤外及び可視範囲の両方にわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、遅延層220は、広範囲の入射角にわたって実質的に同様の遅延特性値を提供することができる。いくつかの実施形態では、遅延特性は、30°半角円錐形において10%以下の変化でよく、45°半角円錐形において10%以下の変化でよく、又は、60°半角円錐形において10%以下の変化でよい。いくつかの適用では、30°、45°、又は60°半角円錐形に対して、20%以下の変化であれば、許容可能としてよい。
【0015】
遅延層220は、任意の好適な1つ又は複数の遅延材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、遅延層220は、液晶リターダを含むか、又は液晶リターダである。いくつかの実施形態では、遅延層220は、配向性複屈折ポリマーフィルムを含む。選択されたポリマーセットの複屈折に従って、所望の遅延特性値を得るために好適な厚さを選択してもよい。いくつかの実施形態において、遅延層220は、対象とする波長又は波長範囲について広範囲の角度にわたって円偏光を強化又は保存するために、低遅延特性(例えば、100nm未満の遅延特性)を有する補償フィルム又はその他の追加のフィルムを含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態においては、遅延層220は、パターン化されなくてもよく、又は、いくつかの実施形態では、図2に示すように、パターン化されてもよい。遅延層220は、任意の空間的パターン、勾配、又は任意のその他の配置に配置された、第1の領域222と第2の領域224とを、少なくとも、含んでもよい。第1の領域222と第2の領域224は、少なくとも入射光の遅延において異なる。例えば、一実施形態では、第1の領域222は、第1の波長の入射光について1/4波長遅延特性を有してもよい。同時に、第2の領域224は、その第1の波長の入射光について実質的にゼロ遅延特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、第2の領域224は、その第1の波長において実質的に光を吸収してもよい。いくつかの実施形態では、第2の領域224は、第1の波長において光を実質的に偏光解消してもよい。パターン化された場合、遅延層220は、情報を符号化又は表示してもよい。情報は、人間が読み取り可能、機械可読、又は人間及び機械可読の両方であってもよい。
【0017】
再帰性反射物品200は、特定のセンサーシステムが高度な忠実度で動作することを可能にしてもよい。例えば、円偏光を検出するセンサー(例えば、左回りの円偏光を通すフィルタと共に使用される電荷結合デバイス又はCMOS)は、有用なセンサー構成であり得る。例えば、左回りの円偏光で問い合わせを受けると、再帰性反射物品200は、(再帰性反射層210及び遅延層220の構成及び光学に依存して)左回り円偏光を再帰反射する特定の部分を提供してもよい。それらは、明るく見えるか、又は、別の態様で、そのようなセンサー構成により検出可能であってもよい。再帰性反射物品200の他の部分では、左回りの円偏光の問い合わせ光は、偏光解消されるか、吸収されるか、又は右回り円偏光に反転されてもよい。そのような領域は、暗く見えるか、又は、そのようなセンサー構成による検出が困難とされる。
【0018】
いくつかの実施形態では、円偏光を利用することによって、いくつかの潜在的利点が実現され得る。特に、円偏光は、自然界には稀である傾向があり、偽陽性信号又は他の干渉の確率を低減する。更に、それとは対照的に、それらの適用における直線偏光の使用は、入射角に対して非常に高い感受性をもたらし、垂直方向及び水平方向の平行移動又は観測角度に応じて再帰反射光の外観又は強度を急速に著しく変化させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、再帰性反射物品200は、近赤外波長範囲で動作するように構成され得る。特定のセンサーシステムは、ヒトにとって不可視である波長内で動作するために、近赤外光を用いる。いくつかの実施形態では、再帰性反射物品200は、近赤外光を再帰反射する再帰性反射層210と、近赤外波長範囲内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダとして構成される遅延層220とを含んでもよい。
【0020】
図3は、図2の再帰性反射物品の一般的な動作原理を示す側面概略図である。再帰反射性物品300は、再帰性反射層310と、遅延層320とを含む。第1の入射光線330と第1の再帰反射光線340、及び第2の入射光線350と第2の再帰反射光線360は、再帰性反射物品の一般的な機能性を図示する。
【0021】
一例として、第1の入射光線330及び第2の入射光線350は、それぞれ、左回りの円偏光であると見なすことができる。第1の入射光線330及び第2の入射光線350は、それぞれ、再帰性反射物品300の領域、特に、異なる遅延特性を有する遅延層320の領域に入射する。この例においては、再帰性反射層310は、(偏光解消ではないが)円偏光を反転する特性を有し、例えば、左回り円偏光は右回り円偏光に変換されるが、直線偏光は、直交偏光配向を有する光に変換されないと仮定される。更に、遅延層320は、少なくともいくつかの領域において、少なくとも、入射光線波長に対して、かつ、その入射角において、1/4波長リターダとして構成されると仮定される。
【0022】
第1の入射光線330は、1/4波長リターダとして構成された遅延層320の領域に入射し、左回りの円偏光から直線偏光に変換され、再帰反射の間、その直線偏光状態に保たれる。遅延層320を再度通過すると、それは、入射光と同じ回り方向を有する円偏光に戻り変換される。左回り円偏光を通過させる検出器は、第1の再帰反射光線340を検出する。
【0023】
第2の入射光線350は、その入射光線に対して実質的にゼロ遅延特性を有する遅延層320の領域に入射する。第2の入射光線は、再帰性反射層310によって再帰反射されると、直線偏光に変換されず、その回り方向が反転される。第2の再帰反射光線360は、右回り円偏光であり、したがって、前述のものと同じ左回り円偏光を通過させる検出器では、第2の再帰反射光線360は検出されない。
【0024】
図4は、別の再帰性反射物品の側面概略図である。再帰性反射物品400は、再帰性反射層410、遅延層420、及び減衰層430を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、減衰層を更に含むことを除いては再帰性反射物品300と同様である再帰性反射物品400が、有用であり得る。減衰層430は、特定の波長を吸収することによって光を減衰させる層など、任意の好適な減衰層であってもよい。いくつかの実施形態では、カーボンブラックなどの広帯域吸収材を使用することができる。いくつかの実施形態では、選択的に吸収する染料又は顔料を使用してもよい。いくつかの実施形態では、特定の波長スペクトルの光を通す(すなわち、特定の波長範囲において透明又は高度に透過性がある)が、別の波長スペクトルの光を吸収する染料又はインクを使用することができる。いくつかの実施形態では、可視スペクトルの光を吸収するが、近赤外スペクトルの光を実質的に透過する減衰層を使用することができる(すなわち、カモフラージュ層)。いくつかの適用では、注意を逸らしたり、混乱させたりすることなく、検出器に情報を提供するために、低視認性の再帰性反射体を有することが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、減衰層430は、再帰性反射物品400から再帰反射された光を低減して、極端なコントラストを有することから生じる、オーバーグロー、ブルーミング、又は他の検出アーチファクトを回避してもよい。
【0026】
減衰層430はまた、再帰反射角の予測された円錐形に沿って再帰反射された光を減衰させるために、任意の表面又はバルク散乱体であるか、又はそれを含んでもよい。換言すれば、減衰層430は、周知の再帰反射効率測定値Rを低減するために、任意の好適な材料又は材料の組み合わせであってもよい。再帰反射率(R)は、ASTM E810-03(2013)-観察角度0.2°と進入角度5°、すなわち、0.2/5°で、コプレーナ幾何学を用いた再帰反射シート(R)の再帰反射係数の標準試験法-に記載の試験基準を用いて測定することができる。
【0027】
図5A図5Bは、それぞれ、一方の回り方向の円偏光と他方の回り方向の円偏光で照明された再帰性反射物品の正面概略図である。図5Aは、一方の回り方向の円偏光で照明され、円偏光フィルタを通して見られた再帰性反射物品を示す。一実施例では、入射光の回り方向が保たれ、偏光フィルタの光透過回り方向が入射光と同じであるため、再帰性反射物品は明るく見える。当然、入射光偏光、再帰性反射タイプ(例えば、回り方向保存又は回り方向反転)、及び円偏光フィルタの通過-回り方向など、当業者にとって自明の構成要素のその他の組み合わせを用いて、再帰性反射物品の明るい外観をもたらしてもよい。
【0028】
図5Bは、円形偏光フィルタを通して見たときに再帰性反射物品が薄暗い又は不可視であることを除いては、図5Aと同様である。一実施例では、入射光の回り方向が保たれ、かつ、偏光フィルタの光通過回り方向が入射光の反対であるため、再帰性反射物品は暗く見える。同様に、同じように暗い外観を与えるために、入射光偏光、再帰性反射体タイプ、及び円偏光子の光通過回り方向などの構成要素のその他の組み合わせを選択してもよい。多くの場合、同じ再帰性反射物品が、照明及び感知条件の1つのセットの下で明るくなって、しかも、別の照明及び感知条件下では暗くなることができる。
【0029】
注目すべきことに、問い合わせ光(いくつかの実施例では、異なる回り方向を有する2つの光源の使用を含む、光源の回り方向)、又は、検出器又はセンサーを覆う偏光フィルタの回り方向は、急速に交替又は切り替えられてもよい。これにより、他の物体に比べて、高視認性を向上させるのに役立つ、再帰性反射物品の点滅外観が作り出される。あるいは、各回り方向の光のための2つの別個の検出器は、各検出器によって感知された画像間の差を検出することが可能であってもよい。これは、再帰性反射物品の表面上の空間的変化のコード又はパターンの読み取り精度又は可読性を向上させるのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、交替の効果が、センサーが情報パターン又はコードの縁部付近の情報を識別するのを助けることができる。いくつかのケースでは、観察される点滅効果が、読み取り可能な標識又はコードを、自然又は人工の読み取り不能物体から、更に区別することを助けることができる。いくつかの実施形態では、再帰性反射物品は、各状態で、異なる情報又は追加情報を提供することができる。
【0030】
図6は、再帰性反射物品の入射角範囲を示す側面概略図である。再帰性反射物品600は、再帰性反射層610及び入射角範囲620を含む。本明細書の別の所で述べたように、本明細書に記載した再帰性反射物品は、有用な広範囲の入射角を有し得る。入射角の範囲620は、極角(再帰性反射物品の表面に対する法線からの偏差)の変化及び方位角(再帰性反射物品の表面に対する法線の周りの回転)の変化の両方を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、入射角範囲は、特徴的な半角を有する円錐形によって説明され得る。いくつかの実施形態では、入射角範囲は、光の所与の円偏光について、再帰性反射効率がその最大値の70%以上である範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、入射角範囲は、光の所与の円偏光及び波長について、再帰性反射効率がその最大値の80%以上である範囲とすることができる。当然のことながら、入射角範囲を特徴付けるために使用される円偏光は、検出器によって測定可能又は検出可能なものとするべきである。本明細書に記載される再帰性反射物品の再帰性反射効率は、角度の関数としての再帰性反射層の固有の再帰反射効率の結果であるが、同じ角度範囲にわたって実質的に円形の偏光を維持するリターダ層の能力でもある。
【0031】
図7は、任意に位置合わせされたフィルムを含む再帰性反射物品である。再帰性反射物品700は、再帰性反射層710と、任意に位置合わせされたフィルム720とを含む。
【0032】
円偏光及び1/4波長リターダを利用することの別の利点は、方位角整列の関数としてのパターン視認性が大部分不変であることである。換言すれば、このようなリターダは、再帰性反射層に対して回転において不変とすることができる。いくつかの実施形態では、これは、リターダが方位角を中心に回転するとき、再帰性反射層は、最大値の80%以上の再帰反射効率を有することを意味する。図7に示すように、再帰性反射物品700は、本明細書において他の所に記載した、パターン化された遅延層を含む、任意に位置合わせされたフィルム720を含む。例示のために、再帰性反射物品700は、任意に位置合わせされたフィルムの上のパターンを可視とし得る条件下で照明され、検出される(すなわち、特定の実施形態では、このパターンは、円偏光で照明されていない場合には不可視であるか、又は、ヒトの目にはまったく不可視である)ものと仮定される。この利点に関連する適用としては、標識、衣類、車両、水平面、インフラストラクチャ、建造物等に配置可能な、一時的に取り付け可能なステッカー又はデカールなどが挙げられる。1/4波長リターダは、検出器の偏光子と注意深く整合される必要はないため、誤配向又は不整合を心配せずに、不良又は不完全な検出を引き起こすことなく、そのようなデカールを容易に取り付けることができる。そのようなデカール又はステッカーは、標識、衣類、又は任意の他の取り付け可能な表面に新しい機械可読の意味を与えるために、一時的に取り付けられてもよい。
【0033】
本明細書に記載される再帰性反射物品は、交通管理標識及び方向/ナビゲーションインフラストラクチャに有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される再帰性反射物品は、固定標識として有用であり得る。いくつかの実施形態では、これらの物品は、円錐形又はフラグ又は移動標識などの一時的な交通管理デバイスとするか、又はそれらに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、それらの物品は、高視認性のベスト、ヘルメット、又はその他の安全装備などの、衣類又は着用可能な物品に使用又は組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、再帰性反射物品は、コンフォーマブル、屈曲性、又は折り畳み可能性を有するものとすることができる。いくつかの実施形態では、それらの物品は、自動車、オートバイ、航空機、自転車、クワッドコプタ(ドローン)、船舶、又は任意のその他の乗物など、任意の種類の乗物に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、それらの物品は、倉庫、鉄道操車場、造船所、又は配送センターにおける在庫管理のために使用し、例えば、棚、箱、輸送容器などの内容物の自動識別を可能にし得る。
【0034】
本明細書に記載される再帰性反射物品は、感圧接着材を含む小さいデカール又はステッカーから、大きな、高度に視認性の高い交通標識までを含む、任意の好適なサイズとすることができる。再帰性反射物品の光学に影響を及ぼすことなく、剛性又は易接着性(例えば、感圧接着性)を与える基材を、再帰性反射層の裏に備えてもよい。
【実施例
【0035】
実施例
【表1】
【0036】
リターダフィルムの作製
1 (API)American Polarizer,Incから市販されている、配向ポリカーボネート1/4波長リターダ(APQW92-003-PC)
2 (LCPET)市販の2ミルのポリエステルフィルム(Dupont/Teijen)を、最初に、液晶アライメント層、次に、液晶ポリマーを含む液晶ポリマーリターダコーティングで被覆した。液晶アライメント層は、乾燥時に厚さが100~150nmであるようにスロットダイでコーティングされた線形フォトポリマー(LPP)タイプである。LPPを、Moxtek,Inc.から入手したワイヤーグリッド偏光子を通してFusion Systems UVランプで硬化させた。液晶ポリマーのための配向アライメント層を作製するために、偏光子は、PET基材の機械方向からワイヤーグリッドが15°になるような向きに配置された。第2のスロットダイコーティング通過で、乾燥厚さが約1μmになるように、液晶ポリマー(LCP)をLPPコーティングしたポリエステルフィルムに塗布した。液晶分子の配向にはめ込むために、Fusions Systems UVランプからのUVへの全面曝露を用いて、LCPを硬化させた。
3 (LCA1/LCA2)それぞれの場合に、成分を以下の表2(下)に示す量で混合することによって調製したベースシロップを用いて、アクリルフィルムをコーティングした。アクリルモノマー、架橋剤、紫外線吸収材(UVA)、及び光重合開始剤を、1ガロン(3.79L)のガラス瓶内で入れ、高剪断力電動モーターを用いて混合して均一な混合物を得た。次に、混合しながらB60Hを約3分間かけて添加した。これに続いて、均一な粘稠溶液が得られるまで更に高速混合を行った。次いで、これを9.9水銀柱インチ(252mm)の真空下で10分間脱気した。ベースシロップ(表2参照)を、ノッチバーコーターを使用して、0.002インチ(51マイクロメートル)厚さで、PETフィルムにコーティングした。ベースシロップを、窒素不活性環境において、その組成物の開放表面を、総UVAエネルギー約90mJ/cmに曝露することによって、部分的に硬化して、PET上にアクリル/PVBフィルムを得た。
【0037】
接着材シロップは、1ガロン(3.8L)瓶に、IOAを1784g、AAを16.2g、IBOAを360g、DPAを54g、651光重合開始剤を0.72g充填し、光重合開始剤が溶解して均一な混合物が得られるまで撹拌することによって調製した。瓶の蓋にある開口部を通じて挿入した管を通して、窒素ガスを導入して、少なくとも5分間激しく泡立てることによって、混合物を脱気した。撹拌しながら、混合物を、コーティングに適していると思われる粘度を有する前接着材シロップが形成されるまで、UVA光に曝露した。UV曝露後、空気を瓶内に導入した。次に、IBOAを360g、Irg 651を4.32g、Reg 6108を518.4g、及びIrg 1076を1.35g、前接着材シロップに添加し、一晩揺動させることにより混合した。
【0038】
感圧接着材の第1の層は、ノッチバーコーターを使用して、PET上に、0.002インチ(51マイクロメートル)の厚さに、接着材シロップをコーティングすることによって作製した。照射を受けたアクリル/PVBフィルム/PETの組み合わせを、全間隙設定が0.008インチ(203マイクロメートル)の2-ロールコーティングステーションを使用して、接着シロップがコーティングされたPETに密着させ、総UVAエネルギー958mJ/cmに曝露した。PET、PSA、アクリル/PVBフィルム、及びPETを、この順番で、有する構造体を得た。次に、アクリルフィルムと接触しているPETを除去した。感圧接着材の第2層は、ノッチバーコーターを使用して、PET上に、0.002インチ(51マイクロメートル)の厚さに、接着材シロップをコーティングすることによって作製し、0.010インチ(254マイクロメートル)の全間隙設定を有する2ロールコーティングステーションを使用して、アクリル/PVBフィルムの露出面と密接に接触させた。窒素不活性環境において第2の接着材の開放表面を、総UVAエネルギー958mJ/cmに曝露することによって硬化させた。
【表2】
【表3】
【0039】
複合接着材をコーティングされたアクリルフィルムを上述のようにして入手し、液晶ポリマーリターダコーティングをアライメント層及び液晶ポリマーとして付加した。液晶アライメント層は、乾燥時に100~150nmの厚さのアライメント層を生成するために、#0 K-barを使用してコーティングされた、線形フォトポリマー(LPP)タイプ、Rolic Technologies ROP-131 EXP 306である。LPPを、Moxtek,Inc.から入手したワイヤーグリッド偏光子UVT240Aを通じて、Fusion Systems UVランプを用いて硬化させた。偏光子は、液晶ポリマーのための配向アライメント層を作成するために、ワイヤーグリッドがアクリル基材の機械方向から45°になる向きに配置された。LPPを硬化した後、液晶ポリマー(LCP),Rolic ROF-5185 EXP410を塗布した。LCA1コーティングは、乾燥厚さが約1μmになるように、LPPコーティングされたアクリルフィルムに#1 K barを使用した。LCA2コーティングは、乾燥厚さが約8μmになるように、LPPコーティングされたアクリルフィルムに、#4 K barを使用した。両方の場合に、液晶分子の配向にはめ込むために、Fusions Systems UVランプからのUVへの全面曝露を用いて、LCPを硬化させた。
【0040】
リターダ試験方法及び結果
Axiometrics Muellerマトリクス旋光計を用いて、各フィルムタイプの遅延を測定した。それぞれの場合の軸上遅延測定が、550nmで行われる。
【表4】
【0041】
再帰反射撮像試験方法
これらの実施例に記載された再帰性反射性材料とリターダシート材の全ての組み合わせについて、性能を検証するために、同じ試験方法を使用した。各例において、試験は、(1)サンプルを照明することと、(2)再帰反射光パターンのカメラ画像をキャプチャすることと、(3)撮影画像から測定プロファイルを抽出し分析することと、を含む。ほとんどの場合、照明源は円偏光であった。この場合、同一の円形偏光子を光源とカメラレンズの両方の上に配置した。円形偏光子は、American Polarizer,Inc.から入手したアクロマティック1/4波長フィルム(QWF)(API QWF)と、それに重ねられた(リング照明器に固有の)直線偏光子とからなり、偏光子の偏光方向とAPI QWFの光軸の間の角度45°を有した。直線偏光源の場合、1/4波長フィルムは不要であった。
【0042】
以下の光学設定は、全ての再帰反射撮像試験に共通であった。再帰反射性照明光源は、直径3.25インチの白色LEDリング光であった。サンプルの可視の再帰反射写真は、距離5フィートにf/8の開口で、レンズ(Edmund Optics 8.5 mm/f1.3(ID 58-000))を使用し、距離5フィートにf/16の開口を有するBasler acA2000-165uc(ID 106540-21)カメラを用いて撮影した。カメラは、リング灯の中心に、サンプルの中心に平行に配置され、進入角度は、上述の垂直回転スタンドに接着されたサンプルに対して5°又は60°の範囲とした。観測角度は1.5°に近い。カメラ露光時間を10msに調整した。
【0043】
各画像を画像処理アプリケーションにロードし、対象とする矩形領域を画像上に定義したが、これは、測定された強度のライン走査プロファイルの生成に有用であった。水平断面について、赤色、緑色、及び青色のチャネルのそれぞれについて、対象とする領域内の画素グレースケール値を、各行位置について、列を平均し、画素位置にしたがってプロットした。垂直断面では、赤色、緑色、及び青色のチャネルのそれぞれについて、対象とする領域内の画素グレースケール値を、各列位置について、行を平均し、画素位置にしたがってプロットした。このようにして決定された赤色、緑色、及び青色値を、下の線図にプロットする。断面が導出された場所を示す写真を提示する。線は、対象とする矩形領域の中心及び方向を示す。なお、この線の両側の画素は、その画素位置の平均グレースケール値を決定するために使用されていることに留意されたい。
【0044】
実施例の構成概要
サンプルは、円偏光又は直線偏光のいずれかで照明された再帰性反射体とリターダ要素の有利な組み合わせを示すように構成された。コントラストの尺度を与えるために、各平坦プレート測定は、リターダフィルムが介在する場合と、その介在がない場合の、再帰性反射体の領域からの、記録されたカメラ値を含む。このコントラストを、リターダを用いた再帰反射光強度の測定値を、リターダ要素なしで測定された光強度で除した比として、定義する。
【表5】
【0045】
実施例1
サンプルは、Scotchlite 3M可撓性プリズム形高視認性マーキングテープ(PRXF2340)と、それに重なり合うAPI 1/4波長リターダにより構成された。この実施例では、この組み合わせを、4インチ直径の円筒体に巻き付けて、様々な進入角度に対する材料の感受性を実地検証した。円筒体周りに巻き付けることの目的は、進入角度の範囲を作り出し、角度均一性の差を実地検証することであった。
【0046】
APIリターダは、どの位置についても、縞を示さず、これは、APIリターダが、入射角にかかわらず、近似円偏光を返したことを示す。
【0047】
赤色、緑色、及び青色チャネルのライン走査手順を使用して、画像の断面を分析し、対応する図に示した。
【0048】
図8:実施例1、API QWFを通って水平方向。ここでの色の変化は、はるかに滑らかであり、色環も縞も知覚されない。(画素50と65との間のピークは、4インチロールの背後の物体によるものであり、無視されるべきであることに留意されたい。)
【0049】
実施例2
Scotchlite 3M可撓性プリズム形高視認性マーキングテープ(PRXF2340)と、それを覆うLCPETとから構成されたサンプルを、4インチ直径の円筒体に巻き付け、様々な進入角度に対する材料の感受性を実地検証した。
【0050】
曲面LCPETリターダ上の様々な位置で、多数の色縞が観察された。
【0051】
図9:実施例2、断面1。LCPETリターダを通って水平方向。赤色信号のリップルが、この特徴の中心付近で知覚される色縞をもたらすことに留意されたい。
【0052】
実施例3
Scotchlite PRXF2340金属化微細プリズム形再帰性反射シートと、その上のAPI QWFリターダから構成されるサンプル。
【0053】
この実施例では、再帰性反射体を平坦な表面上に取り付け、円偏光を照射した。次に、API QWFリターダを使用して、再帰性反射体並びに撮影及び分析された写真を部分的に覆った。
【0054】
図10:実施例3、PRXF2340金属化プリズムを部分的に覆うAPI 1/4波長リターダ。
【0055】
高グレースケール値は、リターダを含むサンプル領域に対応し、低グレースケール値は、リターダがないサンプル領域に対応する。2つの領域間で高いコントラストが観察された。
【0056】
実施例4
API QWFが6360高光沢TIRプリズムを覆う構成のサンプル。
【0057】
この実施例では、再帰性反射体を平坦な表面上に取り付け、円偏光を照射した。次に、API QWFリターダを使用して、再帰性反射体並びに撮影及び分析された写真を部分的に覆った。進入角度は5°、観測角度は約1°である。
【0058】
図11:実施例4、断面2。API QWFリターダの縁部は、6360高光沢TIRプリズムを部分的に覆っている。ほとんど差異が見られない。
【0059】
15未満の画素数は、リターダを含まないサンプルの領域に対応し、15を超える画素数は、リターダが上を覆っている。コントラスト比は、ほぼ1である。
【0060】
実施例5
API QWFガイドScotchlite 8830を覆う構成のサンプル。
【0061】
この実施例では、再帰性反射体を平坦な表面上に取り付け、円偏光を照射した。次に、APIリターダを使用して、再帰性反射体並びに撮影及び分析された写真を部分的に覆った。進入角度は5°、観測角度は約1°である。
【0062】
図12:実施例5、断面3。Scotchlite 8830を覆うAPIの縁部。
【0063】
高グレースケール値は、リターダを含むサンプル領域に対応し、低グレースケール値は、リターダを含まないサンプル領域に対応する。高いコントラスト比が観察される。
【0064】
実施例6
API QWFが8965 Scotchliteを覆う構成のサンプル。
【0065】
この実施例では、再帰性反射体を平坦な表面上に取り付け、円偏光を照射した。次いで、API QWFリターダを使用して、再帰性反射体並びに撮影及び分析された写真を部分的に覆った。進入角度は5°、観測角度は約1°である。
【0066】
図13:実施例6、断面4。8965 Scotchliteを覆うAPIの縁部。
【0067】
高グレースケール値は、リターダを含むサンプル領域に対応し、低グレースケール値は、リターダを含まないサンプル領域に対応する。
【0068】
実施例7
API QWFがScotchlite 8887を覆う構成のサンプル。
【0069】
この実施例では、再帰性反射体を平坦な表面上に取り付け、円偏光を照射した。次いで、API QWFリターダを使用して、再帰性反射体並びに撮影及び分析された写真を部分的に覆った。進入角度は5°、観測角度は約1°である。
【0070】
図14:実施例7。断面5。8887 Scotchliteを部分的に覆うAPI。
【0071】
高グレースケール値は、リターダを含むサンプル領域に対応し、低グレースケール値は、リターダを含まないサンプル領域に対応する。
【0072】
測定結果 実施例3~7
実施例3~7では、各サンプルについて、コントラストが最も高いチャネル(赤色、緑色、又は青色)を選択し、下の表に記載し、リターダの有無によるコントラスト比を推定した。
【0073】
金属裏地の再帰性反射体が最も高いコントラストを有していたことに留意されたい。
【表6】
【0074】
実施例8
サンプルは、API QWFリターダがScothchlite 8830再帰性反射体上にある構成である。これは、3つの条件についての角度感受性の観察である。
進入角度5°での水平リターダ
進入角度5°での垂直リターダ
進入角度41°での垂直リターダ
【0075】
APIは、いかなる面内回転でも縞発生の証拠を示さなかった。
【0076】
図15:実施例8 水平方向、断面。Scotchlite 8830を覆うAPI QWF。全ての信号の小さい変動が、良好な色均一性をもたらす。
【0077】
図16:実施例8、垂直断面2。Scotchlite 8830を覆うAPI。断面にわたる良好な相対的な色の均一性に留意されたい。
【0078】
図17:実施例8、垂直方向及び進入角度41°。Scotchlite 8830を覆うAPI。断面にわたる相対的な色の均一性に留意されたい。
【0079】
実施例9
LCPETリターダがScotchlite 8830を覆う構成のサンプル。
進入角度5°で水平方向
進入角度5°で垂直方向
進入角度41°で垂直方向
【0080】
PETは、全ての面内回転で、縞の発生を示した。
【0081】
図18:実施例9、水平方向。Scotchlite 8830を覆うLCPET。赤色信号の変化は、色の不均一性につながる。
【0082】
図19:実施例9、垂直方向。Scotchlite 8830を覆うLCPET。特に、より高い画素位置では、色の均一性が低いことに留意されたい。
【0083】
図20:実施例9、進入角度41°で垂直方向。Scotchlite 8830を覆うLCPET。断面にわたる色均一性が非常に低いことに留意されたい。
【0084】
実施例10
LCA1がScotchlite 8830を覆う構成のサンプル。進入角度は5°であり、観測角度は1°である。リターダなしでは、8830は暗かった。1/4波長リターダを備えると、再帰性反射体は明るく無色であった。
【0085】
図21:実施例10。Scotchlite 8830を覆うLCA1リターダ。画素1~90のサンプル上の相対的な色の均一性に留意されたい。90~105のコーティングは存在しない。
【0086】
実施例11
LCA2リターダが再帰性反射体Scotchlite 8830上にある構成のサンプル。進入角度は5°であり、観測角度は1°である。リターダなしでは、8830は暗かった。
【0087】
図22:実施例11。Scotchlite 8830を覆うLCA2リターダ。画素1~80のサンプル上の色の不均一性に留意されたい。80~105画素位置にコーティングは存在しない。
【0088】
実施例12
サンプルは、LCA1リターダがScotchlite 8830再帰性反射体を覆う構成である。
【0089】
リターダ/再帰性反射体の組み合わせを、進入角度範囲で見て、明るい白色の受信画像で色の縞発生がないという観察結果を得た。この例は、角度に対して不変である。
5°、30°、60°の面外回転
面内90°(垂直方向)
【0090】
図23:実施例12、垂直断面2。Scotchlite 8830を覆うアクリル上のQWLC。進入角度5°。
【0091】
図24:実施例12、垂直断面2。Scotchlite 8830を覆うLCA1。進入角度30°。
【0092】
図25:実施例12、垂直断面2。Scotchlite 8830を覆うアクリル上のQWLC。進入角度60°。
【0093】
実施例13
LCPETがScotchlite 8830再帰性反射体上にある構成のサンプル。
【0094】
本発明者らは、極度の縞発生及び高度の角度感受性について観察する。
【0095】
図26:実施例13、垂直断面1。Scotchlite 8830を覆うLCPET。進入角度5°。
【0096】
図27:実施例13。Scotchlite 8830を覆うLCPET。進入角度30°。この進入角度では、色は非常に敏感である。
【0097】
図28:実施例13。Scotchlite 8830を覆うLCPET。進入角度60°。色は、前の入射角と比較して、やはり変化し、色はリターダの面にわたり変化する。
【0098】
実施例14
3M Scotchlite 8830上にAPI QWFの構成のサンプルであって、直線偏光での標的の応答が測定された。(光源上の)線形偏光子と分析装置(カメラ上の線形偏光子)を整列させた。
【0099】
API QWFを、フィルムの平面内で、水平に対して約0°、45°、及び90°まで回転させた。また、標的を、垂直軸を中心として5°、30°、及び60°まで、平面外に傾斜させた。
【0100】
輝度に大きな変化があり、いくつかのケースでは、異なる観察条件で、明るい白色から深い紫色まで色が観察された。これは、角度に対する不変が観察された、円偏光で見たAPI QWF及び8830を用いた先の実施例とは、対照的である。観察結果を以下の表に記載する。
【表7】
【0101】
実施例15
3M Scotchlite 8830上のAPI QWFから構成され、直線偏光で分析される。この例では、(光源上の)線形偏光子と分析装置(カメラ上の線形偏光子)を交差させた。
【0102】
API QWFを、フィルムの平面内で、水平に対して約0°、45°、及び90°に回転させた。また、標的を、垂直軸を中心として5°、30°、及び60°まで、平面外に傾斜させた。
【0103】
大きな変化は明るさであり、場合によっては、異なる観察条件では明るい白色から深い紫色まで色が観察された。これは、角度に対する不変が観察された、円偏光で見たAPI及び8830を用いた先の実施例とは、対照的である。観察結果を以下の表に記載する。
【表8】
以下、本願の例示的実施形態について述べる。
[1]
光入射面を有する再帰性反射物品であって、再帰性反射層と、前記再帰性反射層と比較して、前記光入射面のより近くに配置された遅延層とを含み、前記遅延層が、近赤外域内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダを含み、前記再帰性反射層が非偏光性であり、前記遅延層が回転において不変である、再帰性反射物品。
[2]
前記再帰性反射層が、金属裏地のプリズム形再帰性反射体である、[1]に記載の再帰性反射物品。
[3]
前記再帰性反射層が、金属裏地のビーズ形再帰性反射体である、[1]に記載の再帰性反射物品。
[4]
前記再帰性反射層が、結合材に部分的に埋められたビーズを含む、[1]に記載の再帰性反射物品。
[5]
前記再帰性反射層が、誘電体でコーティングされたビーズ形再帰性反射体である、[1]に記載の再帰性反射物品。
[6]
前記遅延層が液晶遅延層である、[1]に記載の再帰性反射物品。
[7]
前記遅延層が、少なくとも第1と第2の領域を含むパターン化された遅延層であり、前記パターン化された遅延層の前記第1の領域は、近赤外域内の少なくとも1つの波長にかかる1/4波長リターダであるが、近赤外域内の前記少なくとも1つの波長にかかる前記パターン化された遅延層の前記第2の領域は、実質的にゼロ遅延特性を有するか、又は近赤外域内の前記少なくとも1つの波長を吸収する、[1]に記載の再帰性反射物品。
[8]
入射角範囲で前記第1の領域に対応する前記光入射面に入射した前記少なくとも1つの波長の円偏光が、少なくとも80%は、反対側の回り方向を有する円偏光として再帰反射される、[7]に記載の再帰性反射物品。
[9]
前記入射角範囲が、少なくとも30°の円錐形を含む、[8]に記載の再帰性反射物品。
[10]
前記入射角範囲が、少なくとも45°の円錐形を含む、[8]に記載の再帰性反射物品。
[11]
前記入射角範囲が、少なくとも60°の円錐形を含む、[8]に記載の再帰性反射物品。
[12]
前記遅延層が、液晶遅延層及びポリカーボネート遅延層のうちの1つである、[1]に記載の再帰性反射物品。
[13]
前記遅延層が、波長範囲にかかる1/4波長リターダを含み、前記波長範囲が少なくとも100nm幅である、[1]に記載の再帰性反射物品。
[14]
前記波長範囲が、少なくともいくつかの可視波長を含む、[13]に記載の再帰性反射物品。
[15]
前記波長範囲が、近赤外域全体を含む、[13]に記載の再帰性反射物品。
[16]
前記波長範囲が、全ての可視波長を含む、[13]に記載の再帰性反射物品。
[17]
前記光入射面と前記非偏光再帰性反射層の間に減衰層を更に備え、前記減衰層が、前記少なくとも1つの波長の光を部分的に吸収する、[1]に記載の再帰性反射物品。
[18]
カモフラージュ層を更に含み、前記カモフラージュ層は可視波長を実質的に吸収するが、近赤外波長を実質的に透過する、[1]に記載の再帰性反射物品。
[19]
前記遅延層の少なくとも一部が、近赤外域又は可視域内の第2の波長にかかる1/4波長リターダではない、[1]に記載の再帰性反射物品。
[20]
前記遅延層の少なくとも一部が、前記近赤外域又は可視域内の第2の波長の光を完全に吸収する、[1]に記載の再帰性反射物品。
[21]
前記再帰性反射物品が湾曲している、[1]に記載の再帰性反射物品。
[22]
前記再帰性反射物品がコンフォーマブルである、[1]に記載の再帰性反射物品。
[23]
前記再帰性反射物品が柔軟である、[1]に記載の再帰性反射物品。

図1
図2
図3
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図5A
図5B
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