(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ、当該薄膜トランジスタを有する表示基板及び表示パネル並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20220419BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220419BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220419BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01L29/78 616V
H01L29/78 616K
H01L29/78 618B
H01L29/78 619B
H01L21/28 301B
H01L21/28 301Z
H01L29/50 M
(21)【出願番号】P 2017550669
(86)(22)【出願日】2016-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2016099573
(87)【国際公開番号】W WO2018053707
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】王 珂
(72)【発明者】
【氏名】寧 策
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】河本 充雄
【審判官】小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-108882(JP,A)
【文献】特開2014-209601(JP,A)
【文献】特開2010-080952(JP,A)
【文献】特開2014-175504(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104779302(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336
H01L29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタであって、
ベース基板と、
前記ベース基板
上に位置し、チャネル領域と第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層と、
前記第1電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第1電極、及び、前記第2電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第2電極とを含み、前記第1電極、第2電極の厚さは、200nm~500nmの範囲内にあ
り、
前記第1電極は、ソース電極であり、前記第2電極は、ドレイン電極であり、前記薄膜トランジスタは、トップゲート型薄膜トランジスタである、薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル領域のベース基板から離れる側に位置するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層のチャネル領域から離れる側に位置するゲート電極層とを更に含む請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記活性層のベース基板に接近する側に位置するバッファ層と、
前記バッファ層のチャネル領域から離れる側のチャネル領域対応領域に位置し、前記チャネル領域を光から遮断するための遮光層とを更に含む請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記非晶質炭素材料は、水素化非晶質炭素材料を含む請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記活性層は、M1O
aN
b(M1:単一金属又は金属の組み合わせ、a>0、b≧0)を含む材料から作製される請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記活性層は、酸化インジウムガリウム亜鉛から作製される請求項5に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記ゲート電極層のベース基板から離れる側に位置するパッシベーション層と、
前記パッシベーション層のベース基板から離れる側に位置する画素電極層とを更に含む請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記活性層の厚さは、40nm~50nmの範囲内にある請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタを含む表示機器。
【請求項10】
薄膜トランジスタの製造方法であって、
チャネル領域、第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層をベース基板
上に形成する活性層形成段階と、
非晶質炭素材料から作製される第1電極を前記第1電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第1電極形成段階と、
非晶質炭素材料から作製される第2電極を前記第2電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第2電極形成段階とを含み、前記第1電極、第2電極の厚さは、200nm~500nmの範囲内にあ
り、
前記第1電極は、ソース電極であり、前記第2電極は、ドレイン電極であり、前記薄膜トランジスタは、トップゲート型薄膜トランジスタである、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
活性層形成段階、第1電極形成段階、第2電極形成段階は、
半導体材料層と非晶質炭素材料層をベース基板に順に形成し、
前記半導体材料層をパターニングして活性層を形成し、及び
前記非晶質炭素材料層をパターニングして第1電極と第2電極を形成することを含む請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
単一マスクで半導体材料層と非晶質炭素材料層をパターニングして活性層、第1電極と第2電極を形成する請求項11に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
半導体材料をベース基板に蒸着させて半導体材料層を形成する段階と、非晶質炭素材料を前記半導体材料層に蒸着させて非晶質炭素材料層を前記半導体材料層のベース基板から離れる側に形成する段階によって、半導体材料層と非晶質炭素材料層を形成する請求項11に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
マグネトロンスパッタリングプロセスによって非晶質材料を蒸着させる請求項11に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
単一マスクによる活性層、第1電極及び第2電極形成段階は、
半導体材料をベース基板に蒸着させて半導体材料層を形成する段階と、
非晶質炭素材料を前記半導体材料層に蒸着させて、前記半導体材料層のベース基板から離れる側に非晶質炭素材料層を形成する段階と、
前記非晶質炭素材料層の半導体材料層から離れる側にフォトレジスト層を形成する段階と、
ハーフトーンマスク又はグレイトーンマスクでフォトレジスト層を露光すると共に、露光後のフォトレジスト層を現像することによって、チャネル領域に対応し一部露光される第1部分と、第1電極接触領域と第2電極接触領域に対応し実質上露光されない第2部分と、完全に露光され、第1部分、第2部分以外の第3部分とを含むフォトレジストパターンを取得し、第3部分のフォトレジスト材料を除去する段階と、
第3部分の半導体材料層と非晶質炭素材料層を除去して活性層を形成する段階と、
第1部分のフォトレジスト層を除去すると共に、第2部分のフォトレジスト層を保留することによって、第1部分の非晶質炭素材料層を露出させる段階と、
第1部分の非晶質炭素材料層を除去して第1電極と第2電極を形成する段階とを含む請求項12に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記半導体材料は、酸化インジウムガリウムスズを含み、
15体積%~30体積%の範囲内の酸素を含む雰囲気で、前記半導体材料を気相蒸着処理によってベース基板に蒸着させる請求項13または15に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
酸素を用いたドライエッチングによって第1部分と第3部分の非晶質炭素材料層を除去する請求項15に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
灰化によって第1部分のフォトレジスト層を除去する請求項15に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項19】
活性層、第1電極及び第2電極形成段階の後に、
230度~400度の範囲内のアニール温度で前記活性層をアニールすることを更に含む請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項20】
前記活性層は、M1O
aN
b(M1:単一金属又は金属の組み合わせ、a>0、b≧0)を含む半導体材料から作製される請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術に関し、具体的に、薄膜トランジスタ、当該薄膜トランジスタを有する表示基板及び表示パネル、並びに当該薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)や有機発光ダイオード(OLED)のような表示装置が広く使用されている。LCD及びOLED表示装置は、薄膜トランジスタ(TFT)を使用して表示パネル内の画素を制御する。TFTの例としては、非晶質シリコンTFT、多結晶シリコンTFT、単結晶シリコンTFT及び金属酸化物TFTが含まれる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、1つの態様として、薄膜トランジスタを提供する。当該薄膜トランジスタは、ベース基板と、ベース基板に位置し、チャネル領域と第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層と、第1電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第1電極、及び、第2電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第2電極とを含む。
【0004】
任意選択的に、薄膜トランジスタは、チャネル領域のベース基板から離れる側に位置するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層のチャネル領域から離れる側に位置するゲート電極層とを更に含む。
【0005】
任意選択的に、薄膜トランジスタは、活性層のベース基板に接近する側に位置するバッファ層と、バッファ層のチャネル領域から離れる側のチャネル領域対応領域に位置し、チャネル領域を光から遮断するための遮光層とを更に含む。
【0006】
任意選択的に、非晶質炭素材料は、水素化非晶質炭素材料を含む。
【0007】
任意選択的に、活性層は、M1OaNb (M1:単一金属又は金属の組み合わせ、a>0、b≧0)を含む材料から作製される。
【0008】
任意選択的に、活性層は、酸化インジウムガリウム亜鉛から作製される。
【0009】
任意選択的に、薄膜トランジスタは、ゲート電極層のベース基板から離れる側に位置するパッシベーション層と、パッシベーション層のベース基板から離れる側に位置する画素電極層とを更に含む。
【0010】
任意選択的に、活性層の厚さは、約40nm~約50nmの範囲内にある。
【0011】
任意選択的に、第1電極、第2電極の厚さは、約20nm~約500nmの範囲内にある。
【0012】
本発明は、別態様として、薄膜トランジスタの製造方法を提供する。当該薄膜トランジスタの製造方法は、チャネル領域、第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層をベース基板に形成する活性層形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第1電極を第1電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第1電極形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第2電極を第2電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第2電極形成段階と含む。
【0013】
任意選択的に、活性層形成段階、第1電極形成段階及び第2電極形成段階は、半導体材料層と非晶質炭素材料層をベース基板に順に形成し、半導体材料をパターニングして活性層を形成し、非晶質炭素材料層をパターニングして第1電極と第2電極を形成することを含む。
【0014】
任意選択的に、単一マスクで半導体材料層と非晶質炭素材料層をパターニングして活性層、第1電極と第2電極を形成する。
【0015】
任意選択的に、半導体材料をベース基板に蒸着させて半導体材料層を形成する段階と、非晶質炭素材料を半導体材料層に蒸着させて非晶質炭素材料層を半導体材料層のベース基板から離れる側に形成する段階によって、半導体材料層と非晶質炭素材料層を形成する。
【0016】
任意選択的に、半導体材料は、酸化インジウムガリウムスズを含み、当該方法において、約15体積%~約30体積%の範囲内の酸素を含む雰囲気で、前記半導体材料を気相蒸着処理によってベース基板に蒸着させる。
【0017】
任意選択的に、マグネトロンスパッタリングプロセスによって非晶質材料を蒸着させる。
【0018】
任意選択的に、単一マスクによる活性層、第1電極、第2電極形成段階は、半導体材料をベース基板に蒸着させて半導体材料層を形成する段階と、非晶質炭素材料を半導体材料層に蒸着させて、半導体材料層のベース基板から離れる側に非晶質炭素材料層を形成する段階と、非晶質炭素材料層の半導体材料層から離れる側にフォトレジスト層を形成する段階と、ハーフトーンマスク又はグレイトーンマスクでフォトレジスト層を露光すると共に、露光後のフォトレジスト層を現像することによって、チャネル領域に対応し一部露光される第1部分と、第1電極接触領域と第2電極接触領域に対応し実質上露光されない第2部分と、完全に露光され、第1部分、第2部分以外の第3部分とを含むフォトレジストパターンを取得し、第3部分のフォトレジスト材料を除去する段階と、第3部分の半導体材料層と非晶質炭素材料層を除去して活性層を形成する段階と、第1部分のフォトレジスト層を除去すると共に、第2部分のフォトレジスト層を保留することによって、第1部分の非晶質炭素材料層を露出させる段階と、第1部分の非晶質炭素材料層を除去して第1電極と第2電極を形成する段階とを含む。
【0019】
任意選択的に、酸素を用いたドライエッチングによって第1部分と第3部分の非晶質炭素材料層を除去する。
【0020】
任意選択的に、灰化によって第1部分のフォトレジスト層を除去する。
【0021】
任意選択的に、前記方法は、活性層、第1電極及び第2電極形成段階の後に、約230度~約400度の範囲内のアニール温度で活性層をアニールすることを更に含む。
【0022】
任意選択的に、活性層は、M1OaNb (M1:単一金属又は金属の組み合わせ、a>0、b≧0)を含む半導体材料から作製される。
【0023】
本発明は、別態様として、本文に記載される薄膜トランジスタ、又は本文に記載される方法によって製造される薄膜トランジスタを含む表示機器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、開示された様々な実施形態による例示的な目的のための単なる例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0025】
【
図1】
図1は、一部の実施形態における薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図2】
図2は、一部の実施形態における薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3B】
図3Bは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3C】
図3Cは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3D】
図3Dは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3E】
図3Eは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3F】
図3Fは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3G】
図3Gは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3H】
図3Hは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3I】
図3Iは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【
図3J】
図3Jは、一部の実施形態における薄膜トランジスタ製造処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施形態を参照して本発明を更に具体的に記載する。一部の実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されない。網羅、又は開示された正確な形態に限定されることを意図するものではない。
【0027】
従来のTFTは、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などの各種電極を製造するための金属材料を用いるのが一般的である。金属材料が不透明であるため、従来のTFTの開口率は、相対的に低い。また、従来のTFTは、複数のパターニング段階を用いて製造される。例えば、酸化物TFTは、通常、少なくとも8~9回のパターニング段階で製造される。これらの理由により、従来のTFTを有する表示パネルの製造コストは、相対的高いままになる。
【0028】
従って、本発明は、関連技術の限界及び欠点に起因する問題の1つ以上を実質的に解消する新規な薄膜トランジスタ、それを備えた表示基板及び表示パネル、並びにその製造方法を提供する。本発明は、一態様として、薄膜トランジスタを提供する。一部の実施形態において、当該薄膜トランジスタは、ベース基板と、ベース基板に位置し、チャネル領域と第1電極接触領域と第2電極接触領域を有する活性層と、第1電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第1電極、及び第2電極接触領域のベース基板から離れる側に位置し、非晶質炭素材料から作製される第2電極とを含む。任意選択的に、活性層は、M1OaNbを含む材料から作製され、ここでM1は単一金属又は金属の組み合わせであり、a>0及びb≧0である。
【0029】
本発明は、別の態様として、薄膜トランジスタの製造方法を提供する。一部の実施形態において、前記方法は、チャネル領域と第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層をベース基板に形成する活性層形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第1電極を第1電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第1電極形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第2電極を第2電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第2電極形成段階と含む。任意選択的に、活性層は、M1OaNbを含む材料から作製され、ここでM1は単一金属又は金属の組み合わせであり、a>0及びb≧0である。
【0030】
図1は、一部の実施形態における薄膜トランジスタの構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタは、ベース基板BSと、ベース基板BS上の活性層ALと、第1電極S及び第2電極Dとを含む。活性層ALは、チャネル領域CRと、第1電極接触領域SCRと、第2電極接触領域DCRとを含む。任意選択的に、チャネル領域CRは、(
図1に示すように)第1電極接触領域SCRと第2電極接触領域DCRとの間に位置する。第1電極Sは、第1電極接触領域SCRのベース基板BSから離れる側に位置する。第2電極Dは、第2電極接触領域DCRのベース基板BSから離れる側に位置する。具体的に、第1電極Sと第2電極Dは、非晶質炭素材料から作製される。
【0031】
本明細書で使用する「非晶質炭素」という用語は、「sp2」結合炭素と「sp3」結合炭素の混合物からなる炭素含有材料を指す。「Sp2」結合炭素とは、一般に黒鉛に結合する二重結合炭素を指す。「Sp3」結合炭素とは、単結合炭素をいう。非晶質炭素は、高度に秩序化された結晶構造を有さないが、一般に、sp3結合炭素の非晶質マトリックス内に分散された黒鉛の小さなナノメートルサイズ(又はそれ以上)の島形式を取る。任意選択的に、非晶質炭素は、黒鉛状非晶質炭素微細構造、菱形非晶質炭素微細構造、ポリマー型非晶質炭素微細構造、又はそれらの任意の組み合わせを有する。また、「非晶質炭素」という用語は、特定の多結晶微細構造を有する材料のパーセンテージについて限定しない場合に使用することができる。任意選択的に、非晶質炭素は、水素化非晶質炭素である。任意選択的に、非晶質炭素は、本質的に100%の炭素を含むことができる。任意選択的、非晶質炭素は、約50%までのC-H結合水素を含むことができる。任意選択的に、非晶質炭素は、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%のような、約0.1%~約50%のC-H結合水素を含むことができる。任意選択的に、非晶質炭素は、菱形水素化非晶質炭素である。任意選択的に、非晶質炭素は、ポリマー型水素化非晶質炭素である。任意選択的に、非晶質炭素は、黒鉛状水素化非晶質炭素である。任意選択的に、非晶質炭素は、ドーパント(例えば、窒素又はホウ素)がドープされる。任意選択的に、非晶質炭素は、誘導体化された非晶質炭素である。任意選択的に、非晶質炭素材料は、例えば、物理気相蒸着、化学気相蒸着、プラズマ強化化学気相蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオンビーム支援蒸着、直接イオンビーム蒸着、イオンスパッタリング、陰極アーク蒸着、又はパルスレーザ蒸着によって製造することができる。
【0032】
非晶質炭素材料は、機械工学及び医療工学において幅広く応用される。例えば、非晶質炭素材料は、ベアリング、シール、切断工具(例えば、ジレットのMACH3カミソリ)に使用されている。それらの優れた生体適合性のために、非晶質炭素材料は、インプラントなどの医療機器に使用される。本発明では、非晶質炭素材料で半導体装置の電極を製造する可能性が初めて検討される。驚くべきことに、本発明では、薄膜トランジスタの半導体構成要素との優れたオーム接触のような、電極材料として優れた特性を示すことが発見された。従って、本発明は、良好な工業的加工性を有する半導体製造の費用対効果の高い解決策を提供する。
【0033】
第1電極S及び第2電極Dの製造には、任意の適切な製造方法を用いることができる。例えば、非晶質炭素材料をベース基板上に蒸着させ、第1電極S及び第2電極Dを形成するために(例えば、ウェットエッチングプロセスのようなリソグラフィによって)パターニングされる。適切な非晶質炭素蒸着方法の例には、物理気相蒸着、化学気相蒸着、プラズマ強化化学気相蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオンビーム支援蒸着、直接イオンビーム蒸着、イオンスパッタリング、陰極アーク蒸着、又はパルスレーザー蒸着を含むが、これらに限定されない。適切な非晶質材料の例としては、水素化非晶質材料、菱状非晶質炭素材料、ポリマー型非晶質炭素材料、黒鉛状非晶質炭素材料、ポリマー状水素化非晶質炭素、菱状水素化非晶質炭素、黒鉛状水素化非晶質炭素、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。任意選択的に、第1電極S及び第2電極Dの厚さは、例えば約200nmから約300nm、約300nmから約400nm、及び約400nmから約500nmのような、約200nmから約500nmの範囲にある。
【0034】
一部の実施形態において、活性層ALは、M1OaNbを含む材料から作製され、ここでM1は単一金属又は金属の組み合わせ(例えば、金属合金又は積層体)であり、Nは窒素を表し、Oは酸素を表し、a>0、b≧0である。例えば、活性層は、金属酸化物材料又は金属酸窒化物材料から作製される。例えば、活性層は、インジウムガリウム亜鉛酸化物、インジウムガリウムスズ酸化物、又はインジウムスズ亜鉛酸化物で作製される。適切な金属酸化物の活性層材料の例は、インジウムガリウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、インジウムガリウムスズ酸化物、インジウムスズ亜鉛酸化物、酸化ガリウム、酸化インジウム、HfInZnO(HIZO)、非晶質InGaZnO(非晶質IGZO)、InZnO、非晶質InZnO、ZnO:F、In2O3:Sn、In2O3:Mo、Cd2SnO4、ZnO:Al、TiO2:Nb、及びCd-Sn-Oを含むが、これらに限定されない。適切な金属酸窒化物の活性層材料の例は、酸窒化亜鉛、酸窒化インジウム、酸窒化ガリウム、酸窒化スズ、酸窒化カドミウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ゲルマニウム、酸窒化チタン又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。任意選択で、活性層は、1つ以上の金属元素がドープされたM1OaNbを含む材料で作製される。任意選択で、活性層は、1つ以上の非金属元素がドープされたM1OaNbを含む材料で作製される。任意選択的に、活性層は、1つ以上の金属元素と1つ以上の非金属元素とがドープされたM1OaNbを含む材料から作製される。
【0035】
一部の実施形態では、活性層ALは、多結晶シリコン材料で作製される。
【0036】
活性層ALを製造するために、任意の適切な製造方法を使用することができる。例えば、活性層材料をベース基板に(例えば、スパッタリング又は気相蒸着によって)蒸着させ、(例えば、ウェットエッチングプロセスのようなリソグラフィによって)パターンニングすることによって活性層ALを形成する。任意選択的に、活性層は、約40nmから約50nmの範囲の厚さを有する。
【0037】
任意選択的に、第1電極Sは、第1電極接触領域SCRのベース基板から離れる側に接触して当該側に位置する。任意選択的に、第2電極Dは、第2電極接触領域DCRのベース基板から離れる側に接触して当該側に位置する。任意選択的に、第1電極Sは、第1電極接触領域SCRの片側に位置し、薄膜トランジスタは、第1電極Sと第1電極接触領域SCRとの間にオーミック接触層を更に含む。任意選択的に、第2電極Dは、第2電極接触領域DCRの片側に位置し、薄膜トランジスタは、第2電極Dと第2電極接触領域DCRの間にオーミック接触層を更に含む。
【0038】
一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、ボトムゲート型薄膜トランジスタである。一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、トップゲート型薄膜トランジスタである。
図1に示すように、トップゲート型薄膜トランジスタは、活性層AL(例えば、活性層ALのチャネル領域CR)のベース基板BSから離れる側に位置するゲート絶縁層GIと、ゲート絶縁層GIの活性層AL(例えば、活性層ALのチャネル領域CR)から離れる側に位置するゲート電極層Gを更に含む。
【0039】
任意の適切なゲート電極材料及び任意の適切な製造方法を使用してゲート電極層Gを製造することができる。例えば、ゲート電極材料は、ベース基板に(例えば、スパッタリング又は気相蒸着によって)蒸着され、(例えば、ウェットエッチングプロセスのようなリソグラフィによって)パターニングされてゲート電極層Gに形成される。適切なゲート電極材料の例には、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、タングステン、チタン、タンタル、及びそれらを含む合金又は積層体が含まれるが、これらに限定されない。任意選択的に、ゲート電極層は、単層構造でもよいし、2層以上のサブレイヤを含む積層構造であってもよい。任意選択的に、ゲート電極層は、約150nm~約300nmの範囲、例えば約200nm~約300nmの範囲の厚さを有する。
【0040】
任意の適切なゲート絶縁材料及び任意の適切な製造方法を使用してゲート絶縁層GIを製造することができる。例えば、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスによってゲート絶縁材料をベース基板に蒸着させることができる。適切なゲート絶縁材料の例としては、酸化シリコン(SiOy)、窒化シリコン(SiNy、例えばSi3N4)、酸窒化シリコン(SiOxNy)が含まれるが、これらに限定されない。任意選択的に、ゲート絶縁層GIは、単層構造でもよいし、2層以上のサブレイヤを含む積層構造(例えば、酸化シリコンサブレイヤ、窒化シリコンサブレイヤ、及び酸窒化シリコンサブレイヤのうちの2層以上を含む積層構造)であってもよい。任意選択的に、ゲート絶縁層GIは、約80nm~約300nm、例えば約80nm~約150nm、約100nm~約200nm、及び約200nm~約300nmの範囲の厚さを有する。
【0041】
一部の実施例において、薄膜トランジスタは、活性層のチャネル領域を光から遮断するための遮光層を更に含む。
図1に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタは、活性層ALのベース基板BSに接近する側に位置するバッファ層BLと、バッファ層BLの活性層AL(例えば、活性層ALのチャネル領域CR)から離れる側のゲート電極層G対応領域に位置し、チャネル領域CRを光から遮断するための遮光層SLとを更に含む。遮光層SLは、例えばチャネル領域CRをバックライトからの光から遮断する。
【0042】
遮光層SLの製造には、任意の適切な遮光材料及び任意の適切な製造方法を使用することができる。例えば、遮光材料をベース基板に(例えば、スパッタリングや気相蒸着により)蒸着させ、(例えば、ウェットエッチングプロセスのようなリソグラフィーによって)パターニングして遮光層SLを形成することができる。適切な遮光材料の例としては、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、タングステン、チタン、タンタル、及びこれらを含む合金又は積層体を含むが、これらに限定されない。任意選択的に、遮光層は、約200nm~約300nmの範囲の厚さを有する。
【0043】
バッファ層BLの製造には、任意の適切なバッファ層材料及び任意の適切な製造方法を使用することができる。例えば、バッファ層材料を、プラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)プロセスによってベース基板に蒸着させる。適切なバッファ層材料の例としては、酸化シリコン(SiOy)、窒化シリコン(SiNy、例えば、Si3N4)、酸窒化シリコン(SiOxNy)などを含むが、それらに限定されない。任意選択的に、バッファ層BLは、単層構造であってもよいし、2層以上のサブレイヤを含む積層構造(例えば、酸化シリコンサブレイヤ、窒化シリコンサブレイヤ、及び酸化窒化シリコンサブレイヤのうちの2層以上を含む積層構造)であってもよい。任意選択的に、バッファ層BLは、約200nmから約300nmの範囲の厚さを有する。
【0044】
一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、ゲート絶縁層のベース基板から離れる側に位置する第1パッシベーション層を更に含む。
図1に示すように、第1パッシベーション層PVX1は、ゲート電極層Gのチャネル領域CRにおけるゲート絶縁層GIから離れる側に位置し、ゲート絶縁層GIの第1電極接触領域SCR及び第2電極接触部SCRにおける第1電極S及び第2電極Dから離れる側に位置する。
図2は、一部の実施形態の薄膜トランジスタの構造を示す図である。
図2に示すように、第1パッシベーション層PVX1は、ゲート電極層Gのチャネル領域CRにおけるゲート絶縁層GIから離れる側に位置し、第1電極Sの第1電極接触領域SCRにおける活性層ALから離れる側に位置し、第2電極Dの第2電極接触部SCRにおける活性層ALから離れる側に位置する。
【0045】
一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層のベース基板から離れる側に位置する画素電極層を更に含む。
図1に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層PVX1のゲート絶縁層GIから離れる側に位置する画素電極層Pを含む。薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層PVX1とゲート絶縁層GIを延伸して貫通するビアを更に含み、画素電極層Pが当該ビアを介して薄膜トランジスタの第2電極D(例えば、ドレイン電極)に電気的に接続されている。
図2に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層PVX1のバッファ層BLから離れる側に位置する画素電極層Pを含む。薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層PVX1を延伸して貫通するビアを更に含み、画素電極層Pが当該ビアを介して薄膜トランジスタの第2電極D(例えば、ドレイン電極)に電気的に接続されている。
【0046】
画素電極層の製造には、任意の適切な電極材料と任意の適切な製造方法を使用することができる。例えば、画素電極材料をベース基板に(例えば、スパッタリング又は気相蒸着によって)蒸着させ、(例えば、ウェットエッチングプロセスのようなリソグラフィーによって)パターニングして画素電極層Pを形成する。適切な画素電極材料の例としては、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、透明金属(例えば、ナノ銀)及びそれらの組み合わせの透明電極材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、第1パッシベーション層PVX1及び画素電極層Pの片側に位置する第2パッシベーション層PVX2を更に含む(
図1及び
図2を参照する)。一部の実施形態において、薄膜トランジスタは、第2パッシベーション層PVX2の第1パッシベーション層PVX1と画素電極層Pから離れる側に位置する共通電極層Cを更に含む。
【0048】
パッシベーション層PVX1又はPVX2の製造には、任意の適切なパッシベーション層材料と任意の適切な製造方法を使用することができる。例えば、パッシベーション層材料を、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)によってベース基板上に蒸着させる。適切なパッシベーション層材料の例としては、無機材料(例えば、酸化ケイ素又は窒化ケイ素)又は有機材料(例えば、ダウ・ケミカル・カンパニー製のアクリル)が含まれるが、これらに限定されない。通常、パターニングプロセスは、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング、フォトレジストの除去などが含まれる。一部のパターニングプロセスにおいて、ハーフトーンマスクやグレイトーンマスクを用いてもよい。
【0049】
非晶質炭素材料は、相対的高い光透過率を有する。そのため、非晶質炭素材料から作製される第1電極と第2電極とを有する薄膜トランジスタでは、第1電極領域と第2電極領域が透明である。第1電極と第2電極とを非晶質炭素材料から作製することによって、本薄膜トランジスタを有する表示パネルの開口率を大幅に向上させることができる。更に、非晶質炭素材料をエッチングするためのエッチング条件は、非晶質炭素材料に対する特異性が高い。即ち、非晶質炭素材料をエッチングするためのエッチャントは、活性層、ゲート電極層、ゲート絶縁層のような薄膜トランジスタの他の構成要素をエッチングしたり損傷させたりすることがない。パターニング段階数を削減して大幅に簡単化されたプロセスで薄膜トランジスタを製造することができ、製造コストを更に低減させる。また、エッチング条件の特異性が高いため、本薄膜トランジスタは、活性層のチャネル領域上部に位置するエッチストップ層を必要としない。非晶質炭素材料は、水素吸収能力を有するものである。第1電極と第2電極を非晶質炭素材料から作製することによって、第1電極及び第2電極に近接した遊離水素が、第1電極及び第2電極の非晶質炭素材料によって吸収され、薄膜トランジスタの信頼性が向上する。
【0050】
本発明は、別態様として、薄膜トランジスタの製造方法を提供する。一部の実施例において、前記方法は、チャネル領域と第1電極接触領域と第2電極接触領域を含む活性層をベース基板に形成する活性層形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第1電極を第1電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第1電極形成段階と、非晶質炭素材料から作製される第2電極を第2電極接触領域のベース基板から離れる側に形成する第2電極形成段階とを含む。任意選択的に、活性層、第1電極、前記第2電極は、単一プロセスで形成される。任意選択的に、活性層は、M1OaNbを含む半導体材料から作製され、ここでM1は単一金属又は金属の組み合わせであって、a>0、b≧0である。
【0051】
一部の実施形態において、活性層形成段階、第1電極形成段階、第2電極形成段階は、半導体材料層及び非晶質炭素材料層をベース基板上に順に形成し、半導体材料をパターニングして活性層を形成し、非晶質炭素材料層をパターニングして第1電極と第2電極を形成することを含む。任意選択的に、半導体材料をベース基板上に蒸着させることによって半導体材料層を形成し、非晶質炭素材料を半導体材料層に蒸着させることによって半導体材料層のベース基板から離れる側に非晶質炭素材料層を形成することによって、半導体材料層及び非晶質炭素材料層を形成する。任意選択的に、半導体材料は、M1OaNbを含む。M1は、単一金属又は金属の組み合わせ(例えば金属合金又は積層体)であって、Nは、窒素を表し、Oは、酸素を表し、a>0、b≧0である。任意選択的に、活性層は、インジウムガリウム亜鉛酸化物、インジウムガリウムスズ酸化物又はインジウムスズ亜鉛酸化物から作製される。
【0052】
一部の実施形態において、半導体材料は、気相蒸着処理(例えば、PECVD蒸着プロセス)を用いてベース基板に蒸着される。活性層が金属酸化物又は金属酸窒化物材料から作製される場合、酸素を含有する雰囲気で選択可能に蒸着処理を実行してもよい。任意選択的に、半導体材料は、約15体積%~約30体積%の範囲の酸素を含む雰囲気中、気相蒸着処理を用いてベース基板に蒸着される。
【0053】
任意選択的に、非晶質炭素材料は、マグネトロンスパッタリングプロセスによってベース基板に蒸着される。任意選択的に、非晶質炭素材料は、PECVD蒸着プロセスによってベース基板に蒸着される。
【0054】
一部の実施形態において、活性層、第1電極及び第2電極は、半導体材料層と非晶質炭素材料層を、例えば単一マスク板を用いて1回のプロセスでパターニングすることにより形成される。例えば、一部の実施形態における方法は、半導体材料をベース基板に蒸着させて半導体材料層を形成する段階と、非晶質材料を半導体材料層に蒸着させて、半導体材料層のベース基板から離れる側に非晶質炭素材料層を形成する段階と、非晶質炭素材料層の半導体材料層から離れる側にフォトレジスト層を形成する段階と、ハーフトーンマスク又はグレイトーンマスクでフォトレジスト層を露光し、露光後のフォトレジスト層を現像することによって、チャネル領域に対応し一部露光される第1部分と、第1電極接触領域と第2電極接触領域に対応し実質上露光されない第2部分と、完全に露光され、第1部分、第2部分以外の第3部分とを含むフォトレジストパターンを取得し、第3部分のフォトレジスト材料を除去する段階と、第3部分の半導体材料層と非晶質炭素材料層を除去して活性層を形成する段階と、第1部分のフォトレジスト層を除去すると共に、第2部分のフォトレジスト層を保留することによって、第1部分の非晶質炭素材料層を露出させる段階と、第1部分の非晶質炭素材料層を除去して第1電極と第2電極を形成する段階とを含む。任意選択的に、灰化によって第1部分のフォトレジスタ層を除去する。任意選択的に、半導体材料は、M1OaNbを含む。
【0055】
一部の実施形態において、ドライエッチングプロセスで非晶質炭素材料層をエッチングしてもよい。任意選択的に、酸素プラズマ又はUVオゾンを用いたドライエッチングによりドライエッチングを行う。酸素又はオゾンの流動を調整することによって非晶質炭素材料層のエッチングを実現することができる。酸素又はオゾンを用いたドライエッチング条件は、非晶質炭素材料層に対する特異性が高いため、非晶質炭素材料層のドライエッチングプロセスで、ゲート絶縁層やゲート電極層が傷ついたりエッチングされたりすることはない。従って、第1部分及び第3部分の非晶質炭素材料層を、酸素又はオゾンを用いたドライエッチングによって除去することができる。
【0056】
任意選択的に、ドライエッチングプロセスを用いてゲート絶縁層をエッチングする。任意選択的に、テトラフルオロメタンを用いたドライエッチングによりドライエッチングを行う。
【0057】
一部の実施形態において、前記方法は、活性層、第1電極及び第2電極形成段階の後に、活性層をアニールすることを更に含む。活性層をアニールすることによって、活性層材料(例えば、金属酸化物又は金属窒酸化物)は、安定になり、しかもその抵抗が低下し、薄膜トランジスタの電子特性が向上する。任意選択的に、活性層は、約230度~約400度の範囲のアニール温度でアニールされる。任意選択的に、活性層は、少なくとも10分間のアニール持続時間にわたってアニールされる。
【0058】
任意選択的に、前記方法は、チャネル領域のベース基板から離れる側にゲート絶縁層を形成する段階と、ゲート絶縁層のチャネル領域から離れる側にゲート電極層を形成する段階とを更に含む。
【0059】
任意選択的に、前記方法は、活性層、第1電極及び第2電極を形成する前に、活性層のベース基板に接近する側にバッファ層を形成する段階と、バッファ層の前記チャネル領域から離れる側のチャネル領域対応領域に、チャネル領域を光から遮断するための遮光層を形成する段階を更に含む。
【0060】
任意選択的に、前記方法は、ゲート絶縁層を形成する段階の次に、ゲート電極層のベース基板側から離れる側に第1パッシベーション層を形成することを更に含む。
【0061】
任意選択的に、前記方法は、第1パッシベーション層のベース基板から離れる側に画素電極層を形成することを更に含む。
【0062】
任意選択的に、前記方法は、画素電極層のベース基板から離れる側(例えば、第1パッシベーション層と画素電極層のベース基板から離れる側)に第2パッシベーション層を形成することを更に含む。
【0063】
任意選択的に、前記方法は、第2パッシベーション層のベース基板から離れる側(例えば、第2パッシベーション層の第1パッシベーション層と画素電極層から離れる側)に共通電極層を形成することを更に含む。
【0064】
図3A~
図3Jは、一部の実施形態における薄膜トランジスタの製造プロセスを示す。
図3Aに示すように、製造方法は、ベース基板BS上に遮光層SLを形成することと、遮光層SLのベース基板BSから離れる側にバッファ層BLを形成することとを含む。
【0065】
図3Bに示すように、実施形態における方法は、バッファ層BLのベース基板BSから離れる側に引き続き半導体材料層SCを形成し、それから半導体材料層SCのバッファ層BLから離れる側に非晶質炭素材料層GCを形成することを更に含む。
【0066】
図3Cに示すように、実施形態における方法は、非晶質炭素材料層GCの半導体材料層SCから離れる側にフォトレジスト層PRを形成することを更に含む。続いてハーフトーンマスク又はグレイトーンマスクを用いてフォトレジスト層PRを露光し、露光後のフォトレジスト層を現像してフォトレジストパターンを取得する。前記フォトレジストパターンは、チャネル領域に対応し一部露光される第1部分R1と、第1電極接触領域と第2電極接触領域に対応し基本的に露光されない第2部分R2と、完全に露光され、第1部分、第2部分以外の第3部分R3とを含む。それから、第3部分R3のフォトレジスト材料を除去する。
【0067】
図3Dに示すように、実施形態における方法は、第3部分R3の半導体材料層SC及び非晶質炭素材料GC層を除去して活性層ALを形成することを更に含む。
図3Eに示すように、実施形態における方法は、(フォトレジスト層PRを灰化することによって)第1部分R1のフォトレジスト層PRを除去すると共に、第2部分R2のフォトレジスト層PRを保留することによって、第1部分R1の非晶質炭素材料層GCを露出させることを更に含む。
【0068】
図3Fに示すように、実施形態における方法は、第1部分の非晶質炭素材料層GCを除去して第1電極S及び第2電極Dを形成することを更に含む。続いて、第2部分R2の残りのフォトレジスト層PRを除去してもよい。
【0069】
図3Gに示すように、実施形態における方法は、活性層AL、第1電極S及び第2電極Dのバッファ層BLから離れる側にゲート絶縁層GIを形成することと、ゲート絶縁層の活性層AL、第1電極S及び第2電極Dから離れる側にゲート電極層Gを形成することと、ゲート電極材料層Gをパターニングしてゲート絶縁層GIの活性層AL(例えば、活性層ALのチャネル領域)から離れる側にゲート電極層を形成することを更に含む。
【0070】
図3Hに示すように、実施形態における方法は、ゲート電極層Gのチャネル領域におけるゲート絶縁層GIから離れる側に、ゲート絶縁層GIの第1電極接触領域における第1電極Sから離れる側に、ゲート絶縁層GIの第2電極接触領域における第2電極Dから離れる側に第1パッシベーション層PVX1を形成することを更に含む。前記方法は、第1パッシベーション層PVX1とゲート絶縁層GIを延伸して貫通するビアVを形成して第2電極Dの一部を露出させること、及び第1パッシベーション層PVX1のゲート絶縁層GIから離れる側に画素電極層Pを形成することとを更に含む。画素電極層Pは、前記ビアVを介して第2電極D(例えば、ドレイン電極)に電気的に接続される。
【0071】
図3Iに示すように、実施形態における方法は、画素電極層Pの第1パッシベーション層PVX1から離れる側に第2パッシベーション層PVX2を形成することを更に含む。
図3Jに示すように、実施形態における方法は、第2パッシベーション層PVX2の第1パッシベーション層PVX1から離れる側に共通電極層Cを形成することを更に含む。
【0072】
第1電極と第2電極とを非晶質炭素材料から作製することによって、本薄膜トランジスタを有する表示パネルの開口率を大幅に向上させることができる。更に非晶質炭素材料をエッチングするエッチング条件は、非晶質炭素材料に対し高い特異性を有する。即ち、非晶質炭素材料をエッチングするためのエッチャントは、活性層、ゲート電極層、ゲート絶縁層のような薄膜トランジスタの他の構成要素をエッチングしたり損傷させたりすることがない。パターニング段階数を削減して大幅に簡単化されたプロセスで薄膜トランジスタを製造することができ、製造コストを更に低減させる。また、エッチング条件の特異性が高いため、本薄膜トランジスタは、活性層のチャネル領域上部に位置するエッチストップ層を必要としない。また、非晶質炭素材料は、水素吸収能力を有するものである。第1電極と第2電極を非晶質炭素材料から作製することによって、第1電極及び第2電極に近接した遊離水素が、第1電極及び第2電極の非晶質炭素材料によって吸収され、薄膜トランジスタの信頼性が向上する。
【0073】
本発明は、別態様として、本明細書に記載された薄膜トランジスタ又は本明細書に記載される方法によって製造された薄膜トランジスタを有する表示基板を提供する。本発明は、別態様として、本明細書に記載される表示基板を有する表示パネルを更に提供する。本発明は、別態様として、本明細書に記載される表示パネルを有する表示機器を更に提供する。適切な表示機器の例は、電子ペーパー、携帯電話、タブレットパソコン、テレビ、モニター、ノートパソコン、デジタルアルバム、GPSなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
例示及び記載の目的で本発明の実施例を以上のように記載した。全ての実施例を網羅し、又は本発明を、開示される精確な形態や例示的実施例に限定するという趣旨ではない。従って、以上の記載は、限定的なものではなく、例示的なものとして見なされるべきである。明らかに、様々な修正や変形は、当業者にとって自明である。これらの実施例を選択して記載することは、本発明の原理とその最適な形態の実際応用を解釈するためであり、よって、本発明が特定用途又は構想される実施形態の各種類の実施例及び各種類の変形に適用することを、当業者が理解できるようになる。本発明の範囲は、添付する特許請求の範囲及びその同等形式により限定されるが、特に断りがなければ、全ての用語が最も広くて合理的な意味で解釈される。従って、「発明」や「本発明」などの用語は、特許請求の範囲を具体的な実施例に限定するというわけではなく、本発明の例示的な実施例に対する参考も本発明に対する限定を暗に含まず、しかもこのような限定を導くべきではない。本発明は、添付する特許請求の範囲の精神と範囲のみによって限定される。また、これらの請求項では、名称や元素に付く「第1」、「第2」などの用語を使用することがある。このような用語は、一種の命名方式と理解するべきであり、具体的な数を与えることを除き、このような命名方式で修飾する元素の数を限定することを意図としない。記載されるあらゆる利点とメリットは、必ずしも本発明の全ての実施例に適用するとは限らない。当業者が添付する特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲を逸脱することなく、記載する実施例を変更することができることを認識するべきである。また、本発明では、添付する特許請求の範囲に明確に記載されるか否かにかかわらず、公衆に捧げることを意図とする素子や部品がない。