IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

特許7060213誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
<>
  • 特許-誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ 図1
  • 特許-誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ 図2
  • 特許-誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20220419BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20220419BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C04B35/468
H01B3/12 303
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020155386
(22)【出願日】2020-09-16
(62)【分割の表示】P 2016048466の分割
【原出願日】2016-03-11
(65)【公開番号】P2021004172
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2015-0095993
(32)【優先日】2015-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ウィ、スン クォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン デオク
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジュン ウーク
(72)【発明者】
【氏名】ナム、チャン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン フン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086104(JP,A)
【文献】特開2014-205585(JP,A)
【文献】特開2007-008768(JP,A)
【文献】特開平04-104951(JP,A)
【文献】特開昭61-232260(JP,A)
【文献】特開昭59-105210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01B 3/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される成分を含み、
前記xは0.075≦x≦0.30を満たし、
前記成分100モル%に対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である0.1~2.0モル%の第1の副成分をさらに含み、
前記成分100モル%に対して、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である0.2~2.0モル%の第2の副成分をさらに含み、
前記成分100モル%に対して、Liを含む炭酸塩又はフッ化物である0.4~12.0モル%の第3の副成分をさらに含む、
誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記第1の主成分と第2の主成分は固溶体の形態である、
請求項に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
誘電体層と第1及び第2の内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体の両端部に形成され、前記第1及び第2の内部電極と電気的に連結される第1及び第2の外部電極と、
を含み、
前記誘電体層は請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物を含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
複数の第1及び第2の内部電極が交互に積層され、積層された第1及び第2の内部電極の間に複数の誘電体層が配置され、
前記複数の誘電体層は請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物を含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記第1の内部電極と第2の内部電極は銅(Cu)を含む、
請求項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記第1の内部電極と第2の内部電極はパラジウム(Pd)を含む、
請求項4または5に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-bias特性に優れた新規の誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ、又はサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体、本体の内部に形成された内部電極、及び上記内部電極と接続されるようにセラミック本体の表面に設置された外部電極を備える。
【0003】
セラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層、一つの誘電体層を介して対向配置される内部電極、上記内部電極に電気的に接続された外部電極を含む。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、小型であり且つ高容量が保障され実装が容易であるという長所によってコンピュータ、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
【0005】
積層セラミックキャパシタは、通常、内部電極用ペーストと誘電体層用ペーストをシート法や印刷法などによって積層し同時焼成して製造される。
【0006】
最近、高容量の積層セラミックキャパシタの開発が行われるにつれて、誘電体層の厚さが薄くなり、信頼性、高温耐電圧及びショート不良の問題が台頭している。
【0007】
これを解決するために微粒のチタン酸バリウム粒子を用いてきたが、この場合は高容量を得ることが困難であることから、微粒の粒子を用い且つ結晶粒のサイズを大きくすることにより、信頼性に優れた高容量の積層セラミックキャパシタを具現する方法が試みられている。
【0008】
しかしながら、チタン酸バリウムの結晶粒サイズを大きくする場合は、誘電率は上昇するが、DC-bias特性が悪くなるという問題がある。即ち、DC電圧の印加時に容量の減少変化率が大きくなる。
【0009】
DC-bias特性は結晶粒のサイズが大きくなるほど悪くなるため、このような問題を解決するためには結晶粒のサイズが小さく且つ高い誘電率を具現することができる誘電体材料の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許1999-0075846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、DC-bias特性に優れた新規の誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を含み、上記xは0.0025≦x≦0.4を満たす誘電体磁器組成物が提供される。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、誘電体層と第1及び第2の内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、上記セラミック本体の両端部に形成され、上記第1及び第2の内部電極と電気的に連結される第1及び第2の外部電極と、を含み、上記誘電体層はBaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を含み、上記xは0.0025≦x≦0.4を満たす誘電体磁器組成物を含む積層セラミックキャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、誘電体の主材料であるBaTiOと自発分極の大きさの大きいPbTiOを適正含量で複合化することにより、高い誘電率を得ると共にDC-bias特性に優れた誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を用いた実施例と従来のBaTiOで表示される母材粉末を用いた比較例のDC電界に対する誘電率(ε)を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
図3図2のA-A'線に沿う積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0017】
本発明は、誘電体磁器組成物に関するものであり、誘電体磁器組成物を含む電子部品は、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどがあり、以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を含み、上記xは0.0025≦x≦0.4を満たす。
【0019】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、EIA(Electronic Industries Association)規格で明示したX5R(-55℃~85℃)、X7R(-55℃~125℃)、X8R(-55℃~150℃)、及びX9R(-55℃~200℃)特性を満たすことができる。
【0020】
また、これを用いた積層セラミックキャパシタを提供して上記温度特性を満たすと共に優れた信頼性を具現することができる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0022】
a)母材粉末
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を含む。
【0023】
上記式においてxは0.0025≦x≦0.4を満たすことができる。
【0024】
上記第1の主成分はBaTiOで表示されることができ、上記BaTiOは一般的な誘電体母材に用いられる材料であってキュリー温度が約125度程度の強誘電体材料である。
【0025】
また、上記第2の主成分はPbTiOで表示される。
【0026】
上記第2の主成分であるPbTiOは、第1の主成分であるBaTiOに比べて自発分極の大きさが大きい。
【0027】
但し、PbTiOは、分域壁(Domain wall)の移動度(Mobility)が低くて誘電率が低いという問題がある。
【0028】
一般に、強誘電体が高い誘電率を有するためには、自発分極の大きさが大きく且つ分域壁(Domain wall)の移動度(Mobility)が大きく、このような分極が外部電界方向によって容易にスイッチングすることができなければならない。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、BaTiOで表示される第1の主成分と第1の主成分に比べて自発分極の大きさが大きいPbTiOで表示される第2の主成分を含み、且つ第2の主成分を適正量含むことにより、自発分極の大きさを大きくすると共に分域壁(Domain wall)の移動度(Mobility)を向上させ、BaTiOで表示される母材に比べてより小さい結晶粒サイズでも高い誘電率を具現することができる。
【0030】
これにより、誘電率が高く且つDC-bias特性に優れた誘電体磁器組成物を具現することができる。
【0031】
即ち、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の母材粉末は、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示され、且つ第2の主成分であるPbTiOの含量が0.0025≦x≦0.4を満たすことにより、上記の効果が得られる。
【0032】
上記xが0.0025未満の場合はDC-bias特性が悪くなるという問題がある。
【0033】
xが0.4を超える場合は常温誘電率が3000未満と低くなるという問題がある。
【0034】
また、上記誘電体磁器組成物の母材粉末は第1の主成分と第2の主成分が固溶体の形態でもよい。
【0035】
上記母材粉末が互いに固溶された形態の場合には、上記母材粉末は単一相の形態であり、誘電率、温度特性、静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)、DC-bias特性及び損失率などが、二つの材料が混合された形態より優れることができる。
【0036】
上記母材粉末は、特に制限されないが、粉末の平均粒径が1000nm以下であればよい。
【0037】
b)第1の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、第1の副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩をさらに含むことができる。
【0038】
上記第1の副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩は、上記母材粉末100モル%に対して0.1~2.0モル%の含量で含まれることができる。
【0039】
上記第1の副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0040】
上記第1の副成分の含量及び後述の第2の副成分の含量は、母材粉末100モル%に対して含まれる量であり、特に、各副成分が含む金属イオンのモル%で定義されることができる。
【0041】
上記第1の副成分の含量が0.1モル%未満の場合は、焼成温度が高くなり高温耐電圧特性が多少低下する可能性がある。
【0042】
上記第1の副成分の含量が2.0モル%以上の場合は、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下する可能性がある。
【0043】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、母材粉末100モル%に対して0.1~2.0モル%の含量を有する第1の副成分をさらに含むことができ、これにより、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0044】
c)第2の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、第2の副成分として、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物を含むことができる。
【0045】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である0.2~5.0モル%の第2の副成分をさらに含むことができる。
【0046】
上記第2の副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0047】
上記第2の副成分の含量が上記母材粉末100モル%に対して0.2モル%未満の場合は、焼成温度が高くなる可能性がある。
【0048】
上記第2の副成分の含量が上記母材粉末100モル%に対して5.0モル%以上の場合は、高温耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0049】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して0.2~5.0モル%の含量を有する第2の副成分をさらに含むことができ、これにより、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0050】
d)第3の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、Liを含む酸化物、炭酸塩又はフッ化物である第3の副成分をさらに含むことができる。
【0051】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して、Liを含む酸化物、炭酸塩又はフッ化物である0.4~12.0モル%の第3の副成分をさらに含むことができる。
【0052】
上記第3の副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0053】
また、上記第3の副成分は、内部電極として銅(Cu)を用いた場合にも積層セラミックキャパシタの目標特性が得られるという効果がある。
【0054】
上記第3の副成分の含量が上記母材粉末100モル%に対して0.4モル%未満の場合は、焼成温度が高くなり、誘電率が低く、高温耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0055】
上記第3の副成分の含量が上記母材粉末100モル%に対して12.0モル%以上の場合は、二次相の生成などによって高温耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0056】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モル%に対して0.4~12.0モル%の含量を有する第3の副成分をさらに含むことができ、これにより、銅(Cu)を内部電極として用いることができ、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0057】
図1は、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を用いた実施例と従来のBaTiOで表示される母材粉末を用いた比較例のDC電界に対する誘電率(ε)を示すグラフである。
【0058】
図1を参照すると、キュリー温度が125℃のBaTiO常用X5R誘電体材料を適用した比較例に比べて、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を用いた本発明の実施例は、DC-bias特性に優れることが分かる。
【0059】
図2は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な斜視図であり、図3は、図2のA-A'線に沿う積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な断面図である。
【0060】
図2及び図3を参照すると、本発明の他の実施例による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と第1及び第2の内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2の内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2の外部電極131、132が形成されている。
【0061】
セラミック本体110の形状は、特に制限はないが、一般に六面体状であればよい。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適切に変更可能であり、例えば、(0.6~5.6mm)×(0.3~5.0mm)×(0.3~1.9mm)であればよい。
【0062】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更可能であり、本発明の一実施例において焼成後の誘電体層の厚さは1層当たり好ましくは0.2μm以上である。
【0063】
薄すぎる厚さの誘電体層は一層内に存在する結晶粒数が少なく、信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.2μm以上であればよい。
【0064】
第1及び第2の内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部の表面に交互に露出するように積層されている。
【0065】
上記第1及び第2の外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2の内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0066】
上記第1及び第2の内部電極121、122に含有される導電性材料は、特に限定されないが、本発明の一実施形態ではパラジウム(Pd)、銅(Cu)又はニッケル(Ni)であればよい。
【0067】
上記第1及び第2の内部電極121、122の厚さは、用途などに応じて適切に決定可能であり、特に制限されないが、例えば、0.1~5μm又は0.1~2.5μmであればよい。
【0068】
上記第1及び第2の外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金であればよい。
【0069】
上記第1及び第2の外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適切に決定可能であり、特に制限されないが、例えば、10~50μmであればよい。
【0070】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を含むことができる。
【0071】
上記誘電体磁器組成物は、BaTiOで表示される第1の主成分及びPbTiOで表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO-xPbTiOで表示される母材粉末を含み、上記xは0.0025≦x≦0.4を満たすことができる。
【0072】
上記誘電体磁器組成物は、上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の特徴と同一であるため、ここではその具体的な説明を省略する。
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0074】
原料粉末は(1-x)BaTiO-xPbTiOを主成分とし、平均粒子サイズが300nmの主成分粉末を用いた。
【0075】
下記表1及び3に記載された組成比に合わせてこれらをエタノールとトルエンを溶媒として分散剤と共に混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを製作した。
【0076】
下記表1に記載された組成によって成形されたセラミックシートにはパラジウム(Pd)内部電極を印刷し、表3に記載された組成によって成形されたセラミックシートには銅(Cu)内部電極を印刷した。
【0077】
10~13μmの厚さを有する成形シートを25層ずつ積層して上カバー層及び下カバー層を製作し、約2.0μmの厚さを有する内部電極が印刷されたシートを21層積層して活性層を製作してバーを製造した。
【0078】
圧着バーを切断機を用いて3216(長さ×幅×厚さ:3.2mm×1.6mm×1.6mm)サイズのチップに切断した。
【0079】
製作が完了したチップをか焼した後、下記表1に該当する試験片に対しては大気中(Air雰囲気)で1180~1250℃の温度範囲で焼成を施し、表3に該当する試験片に対しては還元雰囲気(0.1%H/99.9%N、HO/H/N雰囲気)で940~980℃の温度範囲で焼成を施した。
【0080】
焼成されたチップに対して銅(Cu)ペーストを用いてターミネーション工程及び電極焼成を施して外部電極を形成した。
【0081】
上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)の試験片に対して容量、DF、絶縁抵抗、TCC及び高温150℃での電圧step増加による抵抗劣化挙動などを評価した。
【0082】
積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR-meterを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。
【0083】
静電容量と積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数から積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの誘電率を計算した。
【0084】
常温絶縁抵抗(IR)は、10個ずつのサンプルを取ってDC10V/μmを印加した状態で60秒経過した後に測定した。
【0085】
温度による静電容量の変化は、-55℃から125℃の温度範囲で測定した。
【0086】
高温IR昇圧実験では、150℃で電圧を5V/μmずつ印加して電圧ステップを増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0087】
高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出した。これは、焼成後に厚さ7μmの20層の誘電体層を有する3216サイズのチップに対して150℃で5V/μmのDC電圧を10分間印加し電圧ステップ(Voltage step)を継続的に増加させながら測定したときにIRが10Ω以上になる電圧を意味する。
【0088】
RC値は、AC0.5V/μm、1kHzで測定した常温容量値とDC10V/μmで測定した絶縁抵抗値の積である。
【0089】
誘電体の微細構造はSEM(Scanning Electron Microscopy)イメージで観察し、ここから結晶粒のサイズを算出した。
【0090】
【表1】
【0091】
下記表2は、上記表1に明示された組成に該当するプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)チップの特性を示す。
【0092】
【表2】
【0093】
上記表1を参照すると、実験例1~11は、主成分(1-x)BaTiO+xPbTiO100molに対して第1の副成分MnOの含量が0.5mol、第2の副成分SiOの含量が0.5molのときの、第1の主成分含量(1-x)及び第2の主成分含量xによる実験例を示し、表2の実験例1~11は、これに該当するPd-内部電極を適用し大気中(Air雰囲気)で焼成したProto-typeの積層セラミックキャパシタのサンプルの特性を示す。
【0094】
PbTiOの含量xが増加するにつれて結晶粒のサイズは小さくなってから一定になり、常温誘電率は比較的一定の値を維持してから減少することが確認できる。
【0095】
PbTiOが添加されていない実験例1の場合は、常温誘電率は5624と比較的高いが、結晶粒のサイズが1.8μmと大きく、dc-bias変化率が-66.0%で問題があることが分かる。
【0096】
これに対し、PbTiOの含量xが0.05の実験例6の場合は、実験例1に比べて同等以上の常温誘電率5732を示し且つ結晶粒のサイズが0.3μmと小さく、dc-bias特性が-32.7%で非常に良好な特性が具現されることが確認できる。
【0097】
PbTiOの含量xが0.4以上と過量の実験例11の場合は、常温誘電率が3000未満と低くなるという問題がある。
【0098】
PbTiOの含量xが0.005(実験例3)~0.3(実験例10)の範囲で本発明の目標特性である常温誘電率:3000以上、RC値:1000Ohm-F以上、TCC(125℃):±15%未満、dc-bias変化率:±50%未満、高温(150℃)耐電圧:50V/μm以上を同時に具現することができることが分かる。
【0099】
表1の実験例12~17は、第1の主成分含量(1-x)が0.95であり、第2の主成分xが0.05であり、主成分(1-x)BaTiO+xPbTiO100molに対して第1の副成分MnOの含量が0.5mol、第2の副成分SiOの含量が0.5molのときの、第1の副成分Mnの含量による実験例を示し、表2の実験例12~17は、これに該当するPd-内部電極を適用し大気中(Air雰囲気)で焼成したProto-typeの積層セラミックキャパシタのサンプルの特性を示す。
【0100】
第1の副成分Mnの含量が0の場合(実験例12)は、RC値及び高温(150℃)耐電圧が非常に低いという問題があるのに対し、実験例17のようにMnの含量が3molと過量の場合は、常温誘電率が3000未満と低くなるという問題がある。
【0101】
Mnの含量が0.1(実験例12)~2.0(実験例16)の範囲で本発明の目標特性を具現することができることが確認できる。
【0102】
表1の実験例18~23は、第1の副成分においてMnOの一部をVに変更するか又はMnO全部をVに変更して添加したときの実験例を示し、表2の実験例18~23は、該当するProto-typeチップの特性を示す。
【0103】
第1の副成分においてMn又はVなどの種類にかかわらずatomic%を基準にその含量が同一の場合はほぼ同一の特性が具現されることが確認できる。
【0104】
第1の副成分の含量がatomic%を基準に0.5at%の実験例6、18、21の特性がほぼ同一であり、2.0at%の実験例16、19、22の特性もほぼ同一であることが確認できる。
【0105】
また、第1の副成分の含量がatomic%を基準に3.0at%と過量の実験例17、20、23の場合は、いずれも常温誘電率が3000未満であるという問題が発生する。
【0106】
したがって、第1の副成分の遷移金属元素の適正含量は元素比で0.1~2.0at%であると言える。
【0107】
表1の実験例24~29は、第1の主成分含量(1-x)が0.95であり、第2の主成分xが0.05であり、主成分(1-x)BaTiO+xPbTiO100molに対して第1の副成分MnOの含量が0.5molのときの第2の副成分SiOの含量の変化による実験例を示し、表2の実験例24~29は、これに該当するPd-内部電極を適用し大気中(Air雰囲気)で焼成したProto-typeの積層セラミックキャパシタのサンプルの特性を示す。
【0108】
第2の副成分SiOの含量が0molの場合(実験例24)は、焼結性が低下して誘電率及び高温耐電圧特性が非常に低いという問題がある。
【0109】
これに対し、SiOの含量が7molと過量の場合(実験例29)も、常温誘電率及び高温耐電圧特性が低いという問題が発生することが分かる。
【0110】
第2の副成分SiOの含量が0.2~5.0molの範囲に該当する実験例25~28の場合は、本発明の目標特性を具現することができることが確認できる。
【0111】
したがって、第2の副成分元素の適正含量はSi元素比で0.1~2.0at%であると言える。
【0112】
【表3】
【0113】
下記表4は、上記表3に明示された組成に該当するプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)チップの特性を示す。
【0114】
【表4】
【0115】
表3の実験例30~36は、第1の主成分含量(1-x)が0.95であり、第2の主成分xが0.05であり、主成分(1-x)BaTiO+xPbTiO100molに対して第1の副成分MnOの含量が0.5mol、第2の副成分SiOの含量が0.5molのときの、第3の副成分LiCOの含量の変化による実験例を示し、表4の実験例30~36は、Cu内部電極を適用しN雰囲気で950℃で焼成したProto-typeの積層セラミックキャパシタのサンプルの特性を示す。
【0116】
LiCOの含量が0.05molと少量の場合(実験例30)は、950℃で焼成時に焼結性が低下して誘電率が3000未満と低く、高温耐電圧が50V/μm未満と低くなるという問題がある。
【0117】
これに対し、LiCOの含量が8molと過量の場合は、二次相の生成などによって同様に高温耐電圧が50V/μm未満と低いという問題が発生する。
【0118】
LiCOの含量が0.2(実験例31)~6mol(実験例35)の範囲に該当する場合は、Cu内部電極を適用し且つ本発明の目標特性を具現することができることが確認できる。
【0119】
表3の実験例37~43は、第3の副成分LiFの含量の変化による実験例を示し、表4の実験例37~43は、Cu内部電極を適用しN雰囲気で950℃で焼成したProto-typeチップの特性を示す。
【0120】
Liの含量がat%を基準に同一の場合は、LiCOを適用した場合とLiFを適用した場合の特性がほぼ同一に具現されることが確認できる(実験例30と37、32と39、34と41、35と42、36と43がそれぞれこの場合に該当する)。
【0121】
したがって、Ni内部電極のみならずCu内部電極も適用し且つ本発明の目標特性を具現することができる第3の副成分の適正含量はLi元素比で0.4~12mol%であると言える。
【0122】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。ここで、本実施形態に係る発明の例を項目として記載する。
[項目1]
BaTiO で表示される第1の主成分及びPbTiO で表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO -xPbTiO で表示される母材粉末を含み、前記xは0.0025≦x≦0.4を満たす、誘電体磁器組成物。
[項目2]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である0.1~2.0モル%の第1の副成分をさらに含む、項目1に記載の誘電体磁器組成物。
[項目3]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である0.2~5.0モル%の第2の副成分をさらに含む、項目1又は2に記載の誘電体磁器組成物。
[項目4]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Liを含む酸化物、炭酸塩又はフッ化物である0.4~12.0モル%の第3の副成分をさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
[項目5]
前記第1の主成分と第2の主成分は固溶体の形態である、項目1から4のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
[項目6]
誘電体層と第1及び第2の内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体の両端部に形成され、前記第1及び第2の内部電極と電気的に連結される第1及び第2の外部電極と、
を含み、
前記誘電体層はBaTiO で表示される第1の主成分及びPbTiO で表示される第2の主成分を含む(1-x)BaTiO -xPbTiO で表示される母材粉末を含み、前記xは0.0025≦x≦0.4を満たす誘電体磁器組成物を含む、積層セラミックキャパシタ。
[項目7]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である0.1~2.0モル%の第1の副成分をさらに含む、項目6に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目8]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である0.2~5.0モル%の第2の副成分をさらに含む、項目6又は7に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目9]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Liを含む酸化物、炭酸塩又はフッ化物である0.4~12.0モル%の第3の副成分をさらに含む、項目6から8のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目10]
前記第1の主成分と第2の主成分は固溶体の形態である、項目6から9のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目11]
複数の第1及び第2の内部電極が交互に積層され、積層された第1及び第2の内部電極の間に複数の誘電体層が配置され、
前記複数の誘電体層はPbTiO を含む誘電体磁器組成物を含む、積層セラミックキャパシタ。
[項目12]
前記誘電体磁器組成物は第1の主成分及びPbTiO で表示される第2の主成分を含む母材粉末を含み、前記母材粉末は0.25~40mol%の含量のPbTiO で表示される第2の主成分を含む、項目11に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目13]
前記第1の主成分と第2の主成分は固溶体の形態である、項目12に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目14]
前記誘電体磁器組成物は第1の主成分及びPbTiO で表示される第2の主成分を含む母材粉末を含み、前記母材粉末は1000nm以下の平均粒径を有する、項目11から13のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目15]
前記誘電体磁器組成物はBaTiO 及びPbTiO を含む(1-x)BaTiO -xPbTiO で表示される母材粉末を含み、前記xは0.0025≦x≦0.4を満たす、項目11から14のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目16]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である0.1~2.0モル%の第1の副成分をさらに含む、項目11から15のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目17]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Siを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である0.2~5.0モル%の第2の副成分をさらに含む、項目11から16のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目18]
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モル%に対して、Liを含む酸化物、炭酸塩又はフッ化物である0.4~12.0モル%の第3の副成分をさらに含む、項目11から17のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目19]
前記第1の内部電極と第2の内部電極は銅(Cu)を含む、項目11から18のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
[項目20]
前記第1の内部電極と第2の内部電極はパラジウム(Pd)を含む、項目11から19のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【符号の説明】
【0123】
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2の内部電極
131、132 第1及び第2の外部電極
図1
図2
図3