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特許7060220喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20220419BHJP
   H05B 6/02 20060101ALI20220419BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20220419BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A24F40/465
H05B6/02 Z
H05B6/10 351
H05B6/10 381
H05B6/36 E
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010005
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020183062の分割
【原出願日】2016-10-26
(65)【公開番号】P2022058754
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】14/927,556
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブランディーノ, トーマス, ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルケ, アンドリュー, ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フレイター, ジェームス, ジェイ.
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/00-47/00
H05B6/02
H05B6/10
H05B6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
前記喫煙材を加熱するのに使用するための変動磁場を発生させるための磁場発生器であって、導電性材料のコイルを画定するフィルムを備える、磁場発生器と、
前記コイルに変動電流を流すためのデバイスと、
を備え、
前記磁場発生器が支持体を備え、前記コイルが前記支持体に接合されており、
前記支持体と前記コイルとを組み合わせたものが、剛性であり、
前記フィルムの厚さは、100ミクロンより厚く、
前記支持体は、前記喫煙材を含む物品を前記装置の開口を通して受け入れるように構成された凹部を前記装置に画定し、前記凹部は、前記物品と協働するための接合部を実現する、装置。
【請求項2】
前記装置は、断熱材を備え、前記断熱材は、加熱材と前記コイルとの間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記断熱材は、空隙を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記断熱材が、エアロゲル、真空断熱材、綿、フリース、不織布材料、不織布フリース、織物材料、編物材料、ナイロン、発泡体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエステルフィラメント、ポリプロピレン、ポリエステルとポリプロピレンとの混紡、酢酸セルロース、紙又は厚紙、及び波形の紙又は厚紙などの波形の材料からなる群から選択された1つ以上の材料を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記喫煙材が、タバコ含有材料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置と、前記装置とともに使用するための物品とを備えるシステム。
【請求項7】
前記物品が、前記喫煙材を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記物品が、前記喫煙材を加熱するために前記変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を備える、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁場発生器は、前記物品が前記接合部と協働しているときに前記変動磁場が前記物品の前記加熱材に侵入するように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含む、請求項8又は9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、このような装置とともに使用するための物品と、このような物品及び装置を備えたシステムと、このような装置で使用するための磁場発生器を製造する方法と、喫煙材を加熱するのに使用するためのヒーターを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコなどの喫煙品は、使用の間、タバコを燃焼させてタバコ煙を発生させる。燃焼させずに化合物を放出する製品を創出することによってこれらの喫煙品に代わるものを提供する試みがなされている。そのような製品の例としては、いわゆる「非燃焼・加熱式(heat-not-burn)」製品、又はタバコ加熱装置若しくはタバコ加熱製品がある。これらは、材料を燃焼するのではなく加熱することで化合物を放出する。その材料は、例えば、タバコでもよいし、他の非タバコ製品でもよい。非タバコ製品は、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを製造する方法を提供し、本方法は、
基板を用意するステップと、基板上に、変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材の閉回路を形成するステップであって、基板上に加熱材を堆積することを含む、ステップと
を含む。
【0004】
例示的な実施形態では、形成するステップは、基板上に加熱材の閉回路を堆積することを含む。
【0005】
例示的な実施形態では、堆積することは印刷することを含む。
【0006】
例示的な実施形態では、本方法は、基板上に加熱材の複数の閉回路を堆積することを含む。
【0007】
例示的な実施形態では、本方法は、基板上に加熱材の複数の閉回路を印刷することを含む。
【0008】
例示的な実施形態では、堆積することは、複数の閉回路が互いに接触しないように、基板上に加熱材の複数の閉回路を堆積することを含む。
【0009】
例示的な実施形態では、堆積することは、複数の閉回路が互いに対して同心円状に配置されるように、基板上に加熱材の複数の閉回路を堆積することを含む。
【0010】
例示的な実施形態では、本ヒーターは、本発明の第3の態様による物品で使用するためのものである。
【0011】
本発明の第2の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置で使用するための磁場発生器を製造する方法を提供し、本装置は、
支持体を用意するステップと、
支持体上に導電性コイルを形成するステップであって、支持体上に導電性材料を堆積することを含む、ステップと
を含む。
【0012】
例示的な実施形態では、形成するステップは、支持体上に導電性コイルを堆積することを含む。
【0013】
例示的な実施形態では、堆積することは印刷することを含む。
【0014】
例示的な実施形態では、形成するステップは、導電性材料が支持体に接合するように、支持体上に導電性コイルを形成することを含む。
【0015】
例示的な実施形態では、本方法は、導電性コイルに変動電流を流すためのデバイスに導電性コイルを電気的に接続することを含む。
【0016】
例示的な実施形態では、本方法は、
複数の導電性コイルを形成するステップと、
導電性コイルに変動電流を流すためのデバイスに複数の導電性コイルのそれぞれを接続するステップと
を含む。
【0017】
例示的な実施形態では、接続するステップは、複数の導電性コイルのすべてを同じデバイスに接続することを含む。
【0018】
本発明の第3の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品を提供し、本物品は、
喫煙材と、
喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材の閉回路を画定するフィルムと
を備える。
【0019】
例示的な実施形態では、加熱材の閉回路は、加熱材の印刷された閉回路である。
【0020】
例示的な実施形態では、加熱材の閉回路はインクの閉回路である。
【0021】
例示的な実施形態では、本物品は、加熱材の複数の閉回路を画定する1つ以上のフィルムを備える。
【0022】
例示的な実施形態では、加熱材の複数の閉回路は互いに対して同心円状に配置される。
【0023】
例示的な実施形態では、加熱材は喫煙材と接触している。
【0024】
例示的な実施形態では、本物品は基板を備え、加熱材の閉回路は基板上にある。
【0025】
例示的な実施形態では、基板は喫煙材を備える。
【0026】
例示的な実施形態では、加熱材は、導電性材料、磁性材料、及び磁性導電材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0027】
例示的な実施形態では、加熱材は、金属又は金属合金を含む。
【0028】
例示的な実施形態では、加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0029】
本発明の第4の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を提供し、本装置は、
喫煙材を加熱するのに使用するための変動磁場を発生させるための磁場発生器であって、
導電性材料のコイルを画定するフィルムと、コイルに変動電流を流すためのデバイスとを備える、磁場発生器を備える。
【0030】
例示的な実施形態では、コイルは印刷されたコイルである。
【0031】
例示的な実施形態では、コイルはインクのコイルである。
【0032】
例示的な実施形態では、磁場発生器は支持体を備え、コイルは支持体に接合される。
【0033】
例示的な実施形態では、コイルは2次元渦巻である。
【0034】
例示的な実施形態では、磁場発生器は、導電性材料の複数のコイルを画定する1つ以上のフィルムを備える。
【0035】
例示的な実施形態では、複数のコイルは、支持体上で互いに隣接する。
【0036】
例示的な実施形態では、複数のコイルのうちの第1のコイルは、支持体上に第1の領域を占め、複数のコイルのうちの第2のコイルは、支持体上に第2の領域を占め、第2の領域は第1の領域より小さい。
【0037】
例示的な実施形態では、複数のコイルのそれぞれは、デバイスに接続されたコイルに変動電流を流すためのそれぞれのデバイスに接続される。
【0038】
例示的な実施形態では、本装置は制御器を備え、それぞれのデバイスのそれぞれは制御器に接続される。
【0039】
例示的な実施形態では、制御器は、それぞれのデバイスのそれぞれを独立して制御して複数のそれぞれの変動磁場を発生させるように構成される。
【0040】
例示的な実施形態では、本装置は、喫煙材、及び喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を備えた物品と協働するための接合部を備え、磁場発生器は、物品が接合部と協働しているときに変動磁場が接合部に侵入するように構成される。
【0041】
例示的な実施形態では、本装置は、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を備え、磁場発生器は、変動磁場が本装置の加熱材に侵入するように構成される。
【0042】
本発明の第5の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を提供し、本装置は、
喫煙材を加熱するのに使用するための変動磁場を発生させるための磁場発生器であって、
導電性材料の2次元渦巻の形態のコイルと、コイルに変動電流を流すためのデバイスとを備える、磁場発生器を備える。
【0043】
第5の態様の装置は、本発明の第4の態様の装置の上記の例示的な実施形態の任意の1つ以上の特徴を有することができる。
【0044】
本発明の第6の態様はシステムを提供し、本システムは、
喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、
この装置とともに使用するための物品であって、喫煙材を備える、物品と
を備え、
この装置は、喫煙材を加熱するのに使用するための変動磁場を発生させるための磁場発生器を備え、磁場発生器は、導電性材料のコイルを画定するフィルムと、コイルに変動電流を流すためのデバイスとを備える。
【0045】
例示的な実施形態では、本物品は、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を備え、本装置は、物品と協働するための接合部を備え、本磁場発生器は、物品が接合部と協働しているときに変動磁場が物品の加熱材に侵入するように構成される。
【0046】
例示的な実施形態では、本システムの物品は、本発明の第3の態様の物品である。本システムの物品は、本発明の第3の態様の物品の上記の例示的な実施形態の任意の1つ以上の特徴を有することができる。
【0047】
例示的な実施形態では、本装置は、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を備え、磁場発生器は、変動磁場が装置の加熱材に侵入するように構成される。
【0048】
本発明の第7の態様はシステムを提供し、本システムは、
喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、
この装置とともに使用するための物品であって、喫煙材、及び加熱材の閉回路を画定するフィルムを備える物品であり、加熱材が、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能である、物品と
を備え、
この装置は、物品と協働するための接合部と、物品が接合部と協働しているときに加熱材を加熱するのに使用されるために変動磁場を発生させるための磁場発生器とを備える。
【0049】
例示的な実施形態では、本システムの装置は、本発明の第4の態様の装置である。本システムの装置は、本発明の第4の態様の装置の上記の例示的な実施形態の任意の1つ以上の特徴を有することができる。
【0050】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品の例の一部分の概略正面図である。
図2図1の物品の部分の概略断面図である。
図3】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための別の物品の例の一部分の概略断面図である。
図4】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の例の概略断面図である。
図5】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための別の装置の例の概略断面図である。
図6図4の装置の磁場発生器の一部分の概略正面図である。
図7図6の磁場発生器の部分の概略断面図である。
図8】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の別の磁場発生器の例の一部分の概略正面図である。
図9】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを製造する方法の例を示すフロー図である。
図10】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置で使用するための磁場発生器を製造する方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本書では、用語「喫煙材」は、加熱されると揮発成分を、典型的には蒸気又はエアロゾルの形態で供する材料を含む。「喫煙材」は非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「喫煙材」は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、又はタバコ代替品のうちの1つ以上を含んでいてもよい。喫煙材は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊などの形態とすることが可能である。「喫煙材」は、他に非タバコ製品を含んでいてもよい。この非タバコ製品は、製品によってニコチンを含んでもよいし、含まないでもよい。「喫煙材」は、1つ以上の保湿剤、例えばグリセロール又はプロピレングリコール、を含んでいてもよい。
【0053】
本書では、用語「加熱材」又は「ヒーター材」は、変動磁場の侵入によって加熱可能な材料を指す。
【0054】
本書では、用語「香料」及び「香味料」は、成人消費者用の製品において所望の味又は香りを生成するために(現地の規制によって許可される場合に)使用することができる材料を指す。これらの材料は、抽出物(例えば、カンゾウ、アジサイ、ホオノキの葉、カモミール、フェヌグリーク、クローブ、メンソール、ニホンハッカ、アニシード、シナモン、ハーブ、ウィンターグリーン、サクランボ、ベリー、モモ、リンゴ、ドランブイ、バーボン、スコッチ、ウイスキー、スペアミント、ペパーミント、ラベンダー、カルダモン、セロリ、カスカリラ、ナツメグ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、はちみつエッセンス、ローズ油、バニラ、レモン油、オレンジ油、カシア、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、イランイラン、セージ、ウイキョウ、ピーマン、ショウガ、アニス、コリアンダー、コーヒー、又はハッカ属の任意の種からのハッカ油など)、香味強化剤、苦味受容体部位遮断剤、感覚受容体部位活性化剤若しくは感覚受容体部位刺激剤、糖及び/又は代替糖(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、チクロ、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、又はマンニトール)、並びに他の添加物(例えば、チャコール、クロロフィル、ミネラル、植物性物質、又は息清涼剤)を含んでいてもよい。これらは、模造品、合成材料又は天然材料、或いはこれらの混合物であってもよい。これらは、油、液体、ゲル、粉末など、任意の適切な形態であってもよい。
【0055】
誘導加熱は、導電性物体に変動磁場を侵入させることによってその物体を加熱するプロセスである。このプロセスは、ファラデーの電磁誘導の法則及びオームの法則によって説明される。誘導ヒーターは、電磁石と、この電磁石に交流電流などの変動電流を流すための装置を備えることができる。加熱しようとする物体と電磁石が、電磁石によって生じた変動磁場がこの物体に侵入するような適切な相対位置に配置されると、この物体内に1つ以上の渦電流が発生する。この物体は電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、この物体内にこのような渦電流が発生すると、渦電流が物体の電気抵抗に抗して流れ、それによってこの物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と呼ばれる。誘導加熱することができる物体は、サセプタとして知られている。
【0056】
サセプタが閉回路の形態のときは、使用時におけるサセプタと電磁石との磁気結合が強くなり、その結果、ジュール加熱が増大し、又は改善されることが分かっている。
【0057】
磁気ヒステリシス加熱は、磁性材料からなる物体に変動磁場が侵入することによって物体を加熱するプロセスである。磁性材料は、原子スケールの磁石すなわち磁気双極子を多く含んでいると考えることができる。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子は磁場に沿って整列する。したがって、交流磁場(例えば、電磁石によって生じたもの)などの変動磁場が磁性材料に侵入すると、磁気双極子の向きは、印加された変動磁場に応じて変化する。このような磁気双極子の再配向によって、磁性材料内に熱が発生する。
【0058】
物体が導電性及び磁性の両方を有するときは、その物体に変動磁場を侵入させると、物体にジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方を生じさせることができる。さらに、磁性材料を使用すると、変動磁場を強めることができ、それによりジュール加熱を強めることができる。
【0059】
上記のプロセスのそれぞれにおいて、熱は、外部熱源によって熱伝導により発生するのではなく、物体自体の内部で発生するので、物体内の急速な温度上昇と、より均一な熱分布を達成することができる。これは、特に、物体の材料及び幾何形状を適切に選び、その物体に対して変動磁場の大きさ及び向きを適切に選ぶことによって達成することができる。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場の源と物体との間に物理的な接続部を設ける必要がないので、設計自由度及び加熱プロファイルの制御性を高めるとともに、コストを抑えることができる。
【0060】
図1及び2を参照すると、本発明の実施形態による物品1の一部分の概略正面図及び概略断面図がそれぞれ示されている。物品1は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するためのものである。この実施形態では、物品1は、基板20と、加熱材10の複数の閉回路10a~fを画定する1つ以上のフィルムとを備える。加熱材10は、変動磁場の侵入によって加熱可能である。
【0061】
加熱材10の閉回路10a~fを画定するフィルム又は各フィルムの厚さは、1ミクロンより厚くないことがある、例えば、1ミクロンより薄いことがある。他の実施形態では、フィルムの厚さは、1ミクロンより厚いことがあり、例えば、10ミクロンより厚い、又は100ミクロンより厚いことがある。
【0062】
この実施形態では、基板20は、タバコなどの喫煙材30を備える。いくつかの実施形態では、基板20は、全体又は実質的に全体が、例えばタバコ、再生タバコなどの再生喫煙材などの喫煙材30を含むことができる、又は喫煙材30から構成することができる。再生タバコはときどき、「タバコレコン(tobacco recon)」と呼ばれる。
【0063】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fは、喫煙材30を加熱して喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるために、使用時に加熱可能である。加熱材10の閉回路10a~fのそれぞれは、喫煙材を加熱するのに使用するためのヒーターと考えられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、物品1は、加熱材10の1つの閉回路10aだけを備えてもよい。このような実施形態では、加熱材10の閉回路10aは、喫煙材30を加熱して喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるために、使用時に加熱可能である。他の実施形態では、例えば、図示のように、物品1は、加熱材10の1つより多くの閉回路10a~10fを備えてもよい。
【0065】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fのそれぞれは、方形又は矩形である。他の実施形態では、複数の閉回路10a~fのそれぞれは、円又は楕円など、ループを生成するように出発点と到着点が同じ点の経路を画定する任意の形状のものである。
【0066】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fのそれぞれは、一様な幅及び一様な厚さを有する。他の実施形態では、加熱材の複数の閉回路10a~fのそれぞれは、閉回路10a~fのうちの他の少なくとも1つとは異なっていてもよい。例えば、閉回路10a~fは、異なる幅又は厚さを有することができる。他の実施形態では、単一の閉回路10aは、その経路に沿って厚さ又は幅が変化してもよい。加熱材10の閉回路10a~fの幅又は厚さをこのように変化させると、加熱材10の加熱を集中させることができ、その結果、加熱材10が喫煙材30を揮発させる速度を変化させることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、加熱材10の閉回路10a~fは、加熱材10の閉回路10a~fと装置の電磁石との間の磁気結合を使用時に強くすることができ、その結果、ジュール加熱を増大させる、又は改善することができる。
【0068】
この実施形態、及び、実際には、本書で説明するすべての実施形態では、加熱材10はアルミニウムである。しかしながら、他の実施形態では、加熱材10は、導電性材料、磁性材料、及び非磁性材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、加熱材10は金属又は金属合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、加熱材10は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。他の実施形態では、他の(1つ以上の)材料を使用することができる。また、加熱材10として磁性導電材料を用いると、使用時、磁性導電材料と装置の電磁石との間の磁気結合を強くすることができることも分かっている。これは、磁気ヒステリシス加熱を潜在的に可能にすることに加えて、加熱材10のジュール加熱を増大させる、又は改善することができ、したがって、喫煙材30の加熱を増大させる、又は改善することができる。
【0069】
この実施形態では、加熱材10a~fの複数の閉回路10a~fのそれぞれは、基板20と接触している。いくつの実施形態では、加熱材10は、インクの形態とすることができる。したがって、加熱材10の閉回路10a~fを、例えば印刷によって基板20上に直接堆積することができる。基板20上に加熱材10を含むインクで印刷すると、加熱材10を基板10と密接に一体化することができ、その結果、加熱材10と、基板20に備えられた喫煙材30との間で良好に熱伝達することができる。
【0070】
インク及びフィルムの厚さは薄くすることができる。したがって、変動磁場を受けたときのインク又はフィルム内の誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向は、構成部品が非常に厚い加熱材を備える場合のように、その「表皮」だけに限定されるのではなく、インク又はフィルムのほとんど又はすべてに侵入することができる。したがって、材料をより効率的に使用することとなって、コストが削減される。
【0071】
いくつかの実施形態では、堆積の結果、閉回路10a~fを形成することができる。他の実施形態ではその限りではない。例えば、加熱材10のフィルムを基板20上に堆積することができ、次いで、加熱材10の閉回路10a~fを、例えば、フィルムをエッチングすることによって、フィルムから形成することができる。
【0072】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fは互いに接触していない。すなわち、これらは互いに触れていない。他の実施形態では、複数の閉回路10a~fのうちの1つ以上は、複数の閉回路10a~fのうちの1つ以上の他の閉回路と接触していてもよい。
【0073】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fは、互いに対して同心円状に配置されている。他の実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fは、閉回路10a~fのそれぞれが、閉回路10a~fのそれぞれの他の閉回路の外側にあるように配置されてもよい、又は任意の他の配置でもよい。
【0074】
この実施形態では、加熱材10を、はじめは平坦な基板20上に堆積する。この実施形態では、基板20、及び加熱材10の複数の閉回路10a~fは共に可撓性又は展性がある。「展性がある」ことによって、物品1は、割れて壊れることなく、プレスする、折り曲げる、ロールにかける、折り返す、又は曲げて異なった全体形状、例えば円筒形にすることができることを意味する。可撓性の度合いは、基板20の材料及び厚さ、並びに加熱材10の閉回路10a~fの構造による。このような可撓性は、例えば、物品1に対する妥当な構成数を増やすことによって物品1の多様性を増大させることができる。このような構造は、様々な異なる形状の物品に使用するために好適となり得る。例えば、基板20は、物品の表面上の層としてもよく、物品の凹部を画定してもよく、又は、物品の凹部内に嵌るように曲げられてもよい。他の実施形態では、基板20、及び加熱材10の複数の閉回路10a~fは共に実質的に剛性が高くてもよい。
【0075】
この実施形態では、基板20は実質的に平面状である。いくつかの実施形態では、その代わりに、基板20は管状など、平面状でなくてもよい。そのとき、加熱材10の閉回路10a~fは、管状の基板20の表面上にある。他の実施形態では、基板20は、任意の他の形状、例えば、円錐形としてもよい。
【0076】
この実施形態では、加熱材10の複数の閉回路10a~fは基板20に接合されている。接合は、例えば、加熱材10で印刷するプロセスによって、又は、接着剤を使って加熱材10を基板20に接着することによって達成されてもよい。他の実施形態では、接合は、加熱材10と基板20との、又は加熱材10と喫煙材30との物理的な係止又は混合を含む堆積プロセスによって達成されてもよい。いくつかの実施形態では、堆積プロセスが印刷を含むとき、接合は、基板20によってインクを部分的に吸収させることによって達成されてもよい。基板20が喫煙材30を備える実施形態では、このように加熱材10を基板20に接合すると、加熱材10から基板20への熱伝導がより良くなり得、したがって、使用時に揮発する喫煙材30の割合が高くなり得る。
【0077】
図3を参照すると、本発明の実施形態による別の物品の例の概略断面図が示されている。図3の物品2の基板20が喫煙材30を含まないことを除けば、物品2は図1及び2の物品1と同一である。喫煙材30は、その代わりに、基板20とは分離している。
【0078】
この実施形態では、基板は紙又は厚紙を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、基板20は、これに加えて又はこれに代えて、断熱材を含んでもよい。このような断熱材は、加熱材10が変動磁場の侵入によって加熱されるとき、喫煙材30を加熱する熱の割合を増大させる助けになり得る。
【0079】
この実施形態では、喫煙材30は、加熱材10の複数の閉回路10a~f上に層となって備えられ、例えば、タバコレコンの層とすることができる。すなわち、加熱材10の閉回路10a~fは、基板20と喫煙材30との間に配置される。他の実施形態では、喫煙材30は基板20上に配置されて、加熱材10の複数の閉回路10a~fのそれぞれを、少なくとも部分的に取り囲んでもよい。加熱材10の閉回路10a~fのそれぞれ、及び、実際には、基板20と加熱材10の複数閉回路10a~fとを組み合わせたものは、喫煙材を加熱するのに使用するためのヒーターと考えられる。
【0080】
上記の実施形態に対するそれぞれの変形とすることができるいくつかの実施形態では、物品1、2は、喫煙材30と流体連通する通路を画定する吸い口を備えることができる。吸い口は、プラスチック材、厚紙、酢酸セルロース、紙、金属、ガラス、セラミック、又はゴムなどの任意の適切な材料で作ることができる。使用時、喫煙材30が加熱されると、喫煙材30の揮発した成分を、使用者は容易に吸引することができる。物品が消耗品である実施形態では、物品の喫煙材30の(1つ以上の)揮発成分のすべて又は実質的にすべてが消費されると、使用者は、吸い口を物品の残りとともに処分することができる。これは、複数の物品で同じ吸い口を使用するよりも衛生的となり得、吸い口が確実に喫煙材と正しく位置合わせされる助けとなり得、使用者が別の物品を使用することを望むたびに清潔で新しい吸い口を使用者に提供する。吸い口は、これを設ける場合、香味料を備える、又は含浸することができる。香味料は、使用時、蒸気が吸い口の通路を通過するときに加熱された蒸気によって受け取られるように配置することができる。
【0081】
上記の物品1、2及びそれらの上記の変形のそれぞれは、喫煙材30を加熱して喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用可能である。本装置とともに使用するための物品1、2を準備するとき、物品1、2は、まず、実質的に円筒形になるように使用者によって巻かれてもよい。いくつかの実施形態では、物品1、2は予め巻かれた状態で使用者に提供されてもよい。本装置は、喫煙材30を燃焼させることなく喫煙材30を加熱して喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものとすることができる。このような装置の例を下記で説明する。
【0082】
図4を参照すると、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の例が示されている。装置100は、喫煙材30及び加熱材10を備える物品、例えば、上記の物品1、2のうちの1つとともに使用するためのものである。
【0083】
この実施形態の装置100は、磁場発生器120を備える。磁場発生器120は、電源121と、支持体40上にコイル50を画定するフィルムと、コイル50に交流電流などの変動電流を流すためのデバイス123と、制御器124と、制御器124を使用者が操作するためのユーザインターフェース125と、温度センサ126と、物品と協働するための接合部101とを備える。
【0084】
導電性材料のコイル50を画定するフィルムの厚さは、1ミクロンより厚くないことがある、例えば、1ミクロンより薄いことがある。他の実施形態では、フィルムの厚さは、1ミクロンより厚いことがあり、例えば、10ミクロンより厚い、又は100ミクロンより厚いことがある。
【0085】
この実施形態では、接合部101は、開口102を通して物品を受け入れるように構成された凹部101を備える。凹部101は、装置100を使用した後、装置100の開口102を通して物品を外せるように構成される。装置100を繰り返し使用するために、物品は、使用者によって凹部101から外されて、別の物品に取り換えることができる。
【0086】
この実施形態では、電源121は充電式電池である。他の実施形態では、電源121は、例えば、非充電式電池、キャパシタ、電池-キャパシタハイブリッド、又は商用電源への接続部など、充電式電池以外とすることができる。
【0087】
図6及び7を参照すると、図4の装置100のコイル50及び支持体40の概略正面図及び概略断面図がそれぞれ示されている。
【0088】
この実施形態では、コイル50は、支持体40の表面上の2次元渦巻である。コイル50はフィルムによって画定される。この実施形態では、支持体40は非導電性支持体40である。すなわち、支持体40は電気絶縁体である。他の実施形態では、支持体40を省略することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、コイル50は、平坦な支持体40上に堆積される。この実施形態では、支持体40、及びコイル50を画定するフィルムは共に可撓性又は展性がある。「展性がある」ことによって、支持体40とコイル50を画定するフィルムとの組立体は、割れて壊れることなく、プレスする、折り曲げる、ロールにかける、折り返す、又は曲げて異なった全体形状、例えば円筒形にすることができることを意味する。可撓性の度合いは、支持体40の材料及び厚さ、並びにコイル50の導電性材料の構造による。支持体40とコイル50を画定するフィルムとの組立体の形状を、3次元形状になるように変えることによって、変動電流がコイル50を通るとき、3次元横断方向磁束設計となることができる。このような3次元横断方向磁束設計は、装置100の妥当な構成数を増やす。例えば、支持体40は、装置100の表面上の層であってもよく、装置100の凹部を画定してもよく、又は、装置100の凹部内に嵌るように曲がっていてもよい。他の実施形態では、支持体40、及びコイル50を画定するフィルムは共に実質的に剛性が高くてもよい。
【0090】
この実施形態では、コイル50は、変動電流を伝導するように構成された導電性コイルである。この実施形態では、コイル50の導電性材料は、インクの形態の導電性フィルムである。したがって、この実施形態のコイル50は導電性材料を含む。
【0091】
この実施形態では、コイル50は支持体40と接触している。コイル50を支持体40上に直接堆積することができる。支持体40上に直接堆積すると、導電性インクを支持体40と密接に一体化させることができ、それによって、コイル50を基板40により良く結び付けることができ、剥離を避ける助けになり得る。堆積することは、例えば、印刷することを含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、堆積の結果、コイル50を形成することができる。他の実施形態ではその限りではない。例えば、導電性材料のフィルムを支持体40上に堆積することができ、例えば、フィルムをエッチングすることによって、フィルムからコイル50を形成することができる。
【0093】
この実施形態では、コイル50は支持体40に接合される。接合は、例えば、コイル50を支持体40に印刷する、或いは、化学的又は機械的に接着することによって達成されてもよい。他の実施形態では、接合は、コイル50と支持体40とを物理的に係止する、又は織り交ぜることを含む堆積プロセスによって達成されてもよい。いくつかの実施形態では、堆積プロセスが印刷を含むとき、接合は、支持体40によってインクを部分的に吸収させることによって達成されてもよい。
【0094】
この実施形態では、コイル50は2次元渦巻である。この実施形態では、コイル50は概ね方形又は矩形のコイルである。他の実施形態では、コイル50は、概ね円又は楕円などの異なる形状であってもよい。いくつかの実施形態では、コイル50は3次元渦巻であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、コイル50は、3D印刷などの付加製造技法を使って製造することができる。
【0095】
この実施形態では、間隔を置いて配置された隣接のコイル50の部分は、規則正しい間隔で配置されている。他の実施形態では、このようなコイル50の部分は、規則正しい間隔で配置されなくてもよい。比較的密な間隔のコイル50の部分は、密でない間隔のコイル50の部分よりも、使用時に密な磁束を生じることができる。このような構造によって、喫煙材を漸進的に加熱することが可能となり、以て、蒸気を漸進的に発生させることが達成される。
【0096】
この実施形態では、支持体40とコイル50とを組み合わせたものは可撓性がある。可撓性の度合いは、支持体40及びコイル50のそれぞれの材料及び厚さによる。他の実施形態では、支持体40とコイル50とを組み合わせたものは比較的剛性が高くてもよい。支持体40とコイル50とを組み合わせたものに可撓性を与えることによって、支持体40とコイル50とを組み合わせたものは、装置100の不規則な形状の空間内に嵌めることができる。さらに、支持体40とコイル50とを組み合わせたものに可撓性を与えることによって、支持体40とコイル50とを組み合わせたものは、損傷しにくくすることができる。
【0097】
図4をもう一度参照すると、この実施形態では、支持体40とコイル50とを組み合わせたものは凹部101の部分を画定することが分かる。他の実施形態では、支持体40とコイル50とを組み合わせたものと凹部101との間に保護構造体を設けて、装置100の使用中に支持体40及びコイル50が損傷することから保護する助けとなることができる。
【0098】
この実施形態では、コイル50に変動電流を流すためのデバイス123は、電源121とコイル50との間に電気的に接続される。この実施形態では、制御器124はまた、電源121に電気的に接続され、デバイス123に通信可能に接続される。より詳細には、この実施形態では、制御器124はデバイス123を制御して、電源121からコイル50への電力の供給を制御するためのものである。この実施形態では、制御器124は、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)上の集積回路(IC:integrated circuit)などのICを備える。他の実施形態では、制御器124は異なる形態を採ることができる。いくつかの実施形態では、本装置は、デバイス123及び制御器124を備える単一の電気又は電子構成部品を有することができる。この実施形態では、制御器124は、ユーザインターフェース125を使用者が操作することによって動作する。この実施形態では、ユーザインターフェース125は、装置100の外側に配置される。ユーザインターフェース125は、押しボタン、トグルスイッチ、ダイヤル、タッチスクリーンなどを備えることができる。他の実施形態では、ユーザインターフェース125は遠隔にあって、ブルートゥース(Bluetooth)などによって装置の残りの部分に無線で接続することができる。
【0099】
この実施形態では、使用者がユーザインターフェース125を操作すると、制御器124は、デバイス123に、コイル50に変動電流を流してコイル50に変動磁場を発生させる。物品1、2が凹部101内に配置されると、装置100のコイル50と物品1、2の加熱材10とは、コイル50によって生成された交流磁場が物品1、2の加熱材10に侵入するように適切な相対位置に配置される。物品1、2の加熱材10が導電性材料のとき、これは、加熱材10に1つ以上の渦電流を生じさせることができる。渦電流が加熱材10の電気抵抗に抗して加熱材10内を流れると、加熱材10はジュール加熱によって加熱される。上記のように、加熱材10が磁性材料で作られているとき、加熱材10内の磁気双極子の向きは印加された磁場の変化に応じて変化し、それによって、加熱材10内に熱が生成される。
【0100】
この実施形態の装置100は、凹部101の温度を検知するための温度センサ126を備える。温度センサ126は、制御器124に通信可能に接続され、その結果、制御器124は凹部101の温度を監視することができる。いくつかの実施形態では、温度センサ126は、凹部101又は物品1、2を光学的に温度測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、凹部101に配置される物品は、物品の温度を検出するために抵抗温度検出器(RTD:resistance temperature detector)などの温度検出器を備えることができる。物品は、温度検出器に電気接続などで接続された1つ以上の端子をさらに備えることができる。(1つ以上の)端子は、物品が凹部101内にあるときに、装置100の温度モニタ(図示せず)との電気接続などの接続のためのものとすることができる。制御器124は温度モニタを備えることができる。したがって、装置100の温度モニタは、装置100とともに使用中の物品の温度を測定することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、加熱材10を備える物品1、2の構成部品の加熱材の抵抗を適切にすることによって、加熱材10の温度変化に対する応答は、物品1、2内の温度に関する情報を与えるには十分とすることができる。そのとき、装置100の温度センサ126は、加熱材を分析するためのプローブを備えることができる。
【0102】
制御器124は、凹部101、物品1、2、又は加熱材10の温度を所定の温度範囲内に確実に維持するために、温度センサ126又は温度検出器から受信された1つ以上の信号に基づいて、必要に応じてコイル50に流す変動電流の特性をデバイス123に調節させることができる。この特性は、例えば、振幅又は周波数とすることができる。使用時、凹部101内に配置された物品1、2内の喫煙材30は、所定の温度範囲で、喫煙材30を燃焼させることなく喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるのに十分な加熱がなされる。したがって、制御器124、及び装置100は全体として、喫煙材30を加熱して、喫煙材30を燃焼させることなく喫煙材30の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成される。いくつかの実施形態では、温度範囲は、約50℃~約250℃、例えば、約50℃と約150℃との間、約50℃と約120℃との間、約25℃から約50℃と約100℃との間、約50℃と約80℃との間、又は約60℃と約70℃との間である。いくつかの実施形態では、温度範囲は約170℃と約220℃との間である。他の実施形態では、温度範囲は、この範囲以外であってもよい。いくつかの実施形態では、温度センサ126を省略することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、装置100は、吸い口(図示せず)を備えることができる。吸い口は、装置100の残りの部分に吸い口を接続するように、装置100の残りの部分と取外し可能に係合可能にすることができる。他の実施形態では、吸い口は、蝶番又は可撓性部材などによって、装置100の残りの部分と永続的に接続することができる。吸い口は、凹部101内への開口102を覆うように配置可能にすることができる。吸い口をこのように配置すると、吸い口を貫通する通路は、喫煙材30と流体連通することができる。使用時、この通路は、揮発材が喫煙材30から装置100の外部に流れることを可能にする通路として働く。吸い口は、これを設ける場合、香味料を備えることができる、又は含浸することができる。香味料は、使用時、蒸気が吸い口の通路を通過するときに加熱された蒸気によって受け取られるように配置することができる。
【0104】
物品1、2の喫煙材30が加熱されると、使用者は、物品の吸い口を設ける場合には物品の吸い口、又は装置100の吸い口を設ける場合には装置100の吸い口を通して(1つ以上の)揮発成分を引き込むことによって喫煙材30の(1つ以上の)揮発成分を吸入することができる。空気は、物品と装置100との間の隙間を通って物品に入ることができ、又は、いくつかの実施形態では、装置100は、喫煙材30を装置100の外部と流体接続する空気入口を画定することができる。(1つ以上の)揮発成分が物品から出ると、空気は、装置100の空気入口を経て喫煙材30内に引き込まれることができる。
【0105】
装置100のいくつかの実施形態は、使用者に触覚フィードバックを与えるように構成することができる。このフィードバックは、加熱していることを示すことができる、又は、物品の喫煙材30の揮発可能な(1つ以上の)成分が、元の量の所定の割合より多く消費されたことなどを示すようにタイマによってフィードバックを生じさせることができる。この触覚フィードバックは、コイル50と加熱材10との相互作用によって、導電性素子とコイル50との相互作用によって、不平衡モータの回転によって、圧電素子に繰り返し電流を印加及び除去することによって、などで生じさせることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、装置はコイルを2つ以上備えることができる。装置の複数のコイルは、物品1、2の喫煙材を漸進的に加熱し、以て、蒸気を漸進的に生成するように動作可能とすることができる。例えば、1つのコイルは、加熱材10の第1の領域を比較的急速に加熱して、喫煙材の第1の領域で、喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及び蒸気の形成を開始させることができる。別のコイルは、加熱材10の第2の領域を比較的ゆっくり加熱して、喫煙材の第2の領域で、喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及び蒸気の形成を開始させることができる。したがって、蒸気は、使用者が吸入するために比較的迅速に形成することができ、喫煙材の第1の領域が蒸気の生成を終えた後でさえ、使用者が引き続き吸入するためにその後も蒸気を形成し続けることができる。最初のうちは加熱されていない喫煙材の第2の領域は、喫煙材の第1の領域が加熱されている間、生成された蒸気の温度を下げるように、又は生成された蒸気をまろやかにするようにヒートシンクとして働くことができる。
【0107】
図8を参照すると、支持体40と、支持体40上で互いに隣接ずる複数のコイル50、60、70を画定する1つ以上のフィルムとを備える構造体の概略正面図が示されている。図8の構造体は、図6及び7の構造体の代わりに図4の装置100で使用可能となる場合がある。
【0108】
この実施形態では、複数のコイル50、60、70のそれぞれは、導電性材料を含む。複数のコイル50、60、70のそれぞれは、コイル50を図6の支持体40上に設けるために本書で説明したプロセスのいずれかを使って、支持体40上に設けることができる。
【0109】
この実施形態では、構造体は第1から第3のコイル50、60、70を備えるが、他の実施形態では、構造体は、導電性材料の2つのコイル、又は3つより多いコイルを備えることができる。
【0110】
この実施形態では、コイル50、60、70のそれぞれは、支持体40上にそれぞれの領域を占める。この実施形態では、第1のコイル50は第1の領域を占め、第2のコイル60は、第1の領域より小さな第2の領域を占め、第3のコイル70は第3の領域を占める。この実施形態では、第2の領域と第3の領域とは実質的に等しい。他の実施形態では、第2の領域と第3の領域とはそれぞれ異なる大きさのものとすることができる。いくつかの実施形態では、コイル50、60、70は、それぞれ同じ大きさの領域を占めてもよい。
【0111】
使用時、コイル50、60、70のそれぞれは、凹部101に配置された物品の加熱材10のそれぞれの異なる領域を加熱するのに使用することができる。すなわち、コイル50、60、70によって生成されるそれぞれの変動磁場は加熱材10の異なるそれぞれの領域に侵入することができる。加熱材10の異なる領域は、例えば、異なる香味料を含み得る物品の喫煙材30のそれぞれ異なる領域を加熱し、以て、異なるそれぞれの香料の蒸気を放出するように構成することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、コイル50、60、70にそれぞれの変動電流を流すための同じ共通のデバイス123にコイル50、60、70のそれぞれを接続することができる。他の実施形態では、デバイス123に接続されたコイル50、60、70に変動電流を流すためのそれぞれ別個のデバイス123にコイル50、60、70を接続することができる。
【0113】
様々な実施形態では、デバイス123、又はデバイス123のそれぞれは、制御器124に接続される。制御器124は、1つのデバイス123、又はそれぞれのデバイス123を制御して、複数のそれぞれの変動磁場を発生させるように構成される。制御器124は、コイル50、60、70から出力される変動磁場を独立して制御できるように、(1つ以上の)デバイス123を制御するように構成することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、コイル50、60、70に変動電流を同時に流すことができる。これによって、いかなる時点でも加熱材10のより大きな領域を十分加熱することができる、又は短時間で加熱材10のより小さな領域を加熱することができる。他の実施形態では、変動電流をコイル50、60、70に所定の順序で流すことができる。コイル50、60、70は、加熱材10を漸進的に加熱し、したがって、凹部101に配置された物品内の喫煙材30を漸進的に加熱し、その結果、上記のように、蒸気を漸進的に発生させるように動作可能とすることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、制御器124は、コイル50、60、70に周期的又は蠕動的にそれぞれの変動磁場を出力させるように、(1つ以上の)デバイス123を制御するように構成することができる。いくつかの実施形態では、周期的又は蠕動的な出力変動磁場は、加熱材10のそれぞれの部分を周期的又は蠕動的に加熱し、その結果、喫煙材30から出力された蒸気を周期的又は蠕動的に加熱することができる。これによって、所定の方向、例えば、装置100の出口の方、したがって、出口での使用者の方への蒸気の動きを生じさせることができる。
【0116】
図4の実施形態では、装置100は、変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材10をそれ自体備える物品1、2とともに使用するためのものである。しかしながら、いくつかの実施形態では、装置は、これに加えて又はこれに代えて、このような加熱材を備えることができる。
【0117】
図5を参照すると、本発明の別の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の例の概略断面図が示されている。この実施形態の装置200は、喫煙材30を備える物品とともに使用するためのものである。装置200は、断熱材80及び加熱材90をさらに備えていることを除いて、装置100と実質的に同様である。
【0118】
この実施形態では、断熱材80は、コイル50と加熱材90との間に配置される。断熱材80は、例えば、エアロゲル、真空断熱材、綿、フリース、不織布材料、不織布フリース、織物材料、編物材料、ナイロン、発泡体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエステルフィラメント、ポリプロピレン、ポリエステルとポリプロピレンとの混紡、酢酸セルロース、紙又は厚紙、及び波形の紙又は厚紙などの波形の材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。断熱材80は、これに加えて又はこれに代えて、空隙を含むことができる。このような断熱材80は、加熱材90から装置200の構成部品への熱損失を防ぐ助けとなり得、凹部101内の物品1、2の喫煙材30の加熱効率を高める助けとなり得、及び/又は、加熱エネルギーが加熱材90から装置200の外面に伝達することを低減する助けとなり得る。これによって、使用者はより快適に装置200を持つことができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、コイル50は断熱材80に埋め込むことができる。断熱材80は、コイル50に当接する又はコイル50を包むことができる。上記の熱的利点に加えて、このような構成は、例えば、コイル50と凹部101との相対的位置を維持する助けとなることによって、装置200をより頑強にする助けとなり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、断熱材80を省略することができる。
【0121】
この実施形態では、凹部101は加熱材90によって部分的に画定される。
【0122】
いくつかの実施形態では、加熱材90は、堆積された加熱材10又はインクを含むことができる。加熱材90は、例えば印刷することによって断熱材80上に堆積することができる。加熱材90は、加熱材の少なくとも1つの閉回路を備えることができ、それは、本書の他の箇所で説明した利点を提供することができる。
【0123】
加熱材90を装置200に含めることは、装置200とともに使用するための物品の必要な複雑さを減らす。加熱材は、喫煙材30を加熱するために繰り返し使用することができ、したがって、加熱材90が、装置200とともに使用するための消耗品の物品内に含まれるよりむしろ、装置200内に含まれることは、加熱材の効率的な使用となり得る。
【0124】
この実施形態のコイル50のインピーダンスは、加熱材90のインピーダンスと等しい又は実質的に等しい。もしも、その代わりに加熱材90のインピーダンスがコイル50のインピーダンスよりも低い場合、使用時の加熱材90の両端に発生する電圧は、インピーダンスを一致させたときに加熱材90の両端に生成することができる電圧よりも低くなる可能性がある。或いは、その代わりに、加熱材90のインピーダンスがコイル50のインピーダンスよりも高い場合、使用時の加熱材90に発生する電流は、インピーダンスを一致させたときに加熱材90に生成することができる電流よりも低くなる可能性がある。インピーダンスを一致させると、使用中の加熱時に、加熱材90に生成される加熱電力を最大にするために電圧と電流とのバランスをとる助けとなり得る。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、インピーダンスを一致させないことがある。
【0125】
図9を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを製造する方法の例のフロー図が示されている。
【0126】
大まかに言うと、この実施形態の方法900は、基板を用意するステップ901と、基板上に加熱材の閉回路を形成するステップ902とを含む。形成するステップは加熱材を堆積することを含む。加熱材10は、変動磁場の侵入によって加熱可能である。
【0127】
加熱材の閉回路は、ループを生成するように出発点と到着点が同じ点の経路を画定する任意の形状のものとすることができる。
【0128】
この実施形態では、基板は喫煙材を備える。他の実施形態では、基板は喫煙材がなくてもよい。いくつかの実施形態では、方法900は、喫煙材を、基板上又は加熱材上などに設けるステップを含むことができる。
【0129】
この実施形態では、形成するステップ902は、基板上に加熱材の閉回路を堆積することを含む。しかしながら、他の実施形態では、形成するステップ902は、加熱材のフィルムを堆積すること、次いで、加熱材の閉回路10aを、例えば、フィルムをエッチングすることによって、フィルムから形成することを含むことができる。
【0130】
加熱材は、インクの形態とすることができる。加熱材は、3D印刷などの付加製造技法を使用するのに好適となり得る。インクの使用は、閉回路が所定の構造で基板上に均一な厚さのものとなることを確実にする助けとなり得る。インクの使用はまた、加熱材の効率的な使用をもたらし得る。インクを使用する他の利点は、本書の他の箇所で説明する。
【0131】
いくつかの実施形態では、形成するステップ902は、加熱材の複数の閉回路を形成することを含む。このような実施形態では、加熱材の複数の閉回路のそれぞれは、ループを生成するように出発点と到着点が同じ点の経路を画定する任意の形状のものとすることができる。
【0132】
加熱材の複数の閉回路は互いに接触しないように配置することができる。すなわち、これらは互いに触れていない。他の実施形態では、複数の閉回路のうちの1つ以上は、複数の閉回路のうちの他の1つ以上の他の閉回路と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、加熱材の複数の閉回路は互いに対して同心円状に配置される。他の実施形態では、加熱材の複数の閉回路は、閉回路のそれぞれが、閉回路の他のそれぞれの他の閉回路の外側にあるように形成されてもよい、又は任意の他の配置でもよい。
【0133】
図10を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置で使用するための磁場発生器を製造する方法の例を示すフロー図が示されている。
【0134】
大まかに言うと、この実施形態の方法1000は、支持体を用意するステップ1001と、支持体上に導電性コイルを形成するステップ1002であって、導電性材料が支持体に接合するように支持体上に導電性材料を堆積することを含む、導電性コイルを形成するステップと、コイルに変動電流を流すためのデバイスにコイルを電気的に接続するステップ1003とを含む。しかしながら、他の実施形態では、ステップ1001及び/又はステップ1003を省略することができる。
【0135】
支持体は、非導電性であることが好ましい。すなわち、支持体は電気絶縁体である。しかしながら、いくつかの実施形態では、導電性材料を支持体に接合することを省略することができる。
【0136】
上記のように、形成するステップは、導電性材料を堆積することを含む。いくつかの実施形態では、堆積することは、コイルを形成することになる。他の実施形態ではその限りではない。例えば、導電性材料のフィルムを堆積して、次いで、例えば、フィルムをエッチングすることによって、フィルムからコイルを形成することができる。いくつかの実施形態では、形成するステップ1002は、複数の導電性コイルを形成することを含むことができ、この形成することは、導電性材料を堆積することを含む。いくつかの実施形態では、形成するステップ1002は、2つのコイルを形成することを含むことができるが、他の実施形態では、形成されるコイルの数は3つ以上とすることができる。いくつかの実施形態では、複数のコイルは同一の幾何形状を有することができる。他の実施形態では、コイルは異なる幾何形状を有することができる。いくつかの実施形態では、コイルのいくつか又はすべては、基板上に異なる大きさの領域を占める。
【0137】
いくつかの実施形態では、接続するステップ1003は、導電性コイルに変動電流を流すためのデバイスに複数のコイルのそれぞれを接続することを含むことができる。いくつかの実施形態では、接続するステップ1003は、それぞれのデバイスに接続された導電性コイルに変動電流を流すためのそれぞれのデバイスにコイルのそれぞれを接続することを含むことができる。
【0138】
上記の実施形態のそれぞれでは、加熱材10を含むフィルムは、印刷することを含む方法で堆積される。しかしながら、他の実施形態では、フィルムは、スパッタリング、蒸着、化学蒸着、分子線エピタキシ、電気めっき、スクリーン印刷、レーザエッチング、乾燥、焼成、硬化などの異なる方法によって堆積することができる。
【0139】
上記の実施形態のそれぞれでは、導電性材料のコイル50を画定するフィルムは、印刷することを含む方法で堆積される。しかしながら、他の実施形態では、フィルムは、スパッタリング、蒸着、化学蒸着、分子線エピタキシ、電気めっき、スクリーン印刷、レーザエッチング、乾燥、焼成、硬化などの異なる方法によって堆積することができる。
【0140】
上記の実施形態のそれぞれでは、加熱材10は、誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向のほとんどが生じる外側の領域である表皮深さを有することができる。加熱材10を備える構成部品の厚さを比較的薄くすることによって、構成部品の他の寸法に比べて比較的長い奥行き又は厚さを有する構成部品の加熱材と比べると、所与の変動磁場によって加熱材10のより大きな割合を加熱可能にすることができる。したがって、材料をより効率的に使用することになる。それはコストを削減する。
【0141】
いくつかの実施形態では、加熱材10を備える構成部品は、その中に切れ目又は穴を備えていてもよい。このような切れ目又は穴は、使用時に喫煙材の異なる領域が加熱される度合いを制御するための熱断絶部として機能してもよい。加熱材10のうち切れ目又は穴を有する領域は、切れ目又は穴のない領域よりも加熱される程度を低くすることができる。これは、喫煙材を漸進的に加熱し、したがって、蒸気を漸進的に生成する助けとなり得る。一方、このような切れ目又は穴を使用して、使用時、複雑な渦電流の生成を最適化することができる。
【0142】
上記の実施形態の各々において、喫煙材はタバコを含んでいる。しかしながら、これらの実施形態の各々の変形例では、喫煙材は、タバコのみからなるものであってもよいし、ほぼ全体がタバコのみからなるものであってもよいし、タバコとタバコ以外の喫煙材とを含むものであってもよいし、タバコ以外の喫煙材を含むものであってもよいし、タバコを含まないものであってもよい。いくつかの実施形態では、喫煙材は、蒸気又はエアロゾルの形成剤や、湿潤剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、又はジエチレングリコール)を含んでいてもよい。
【0143】
本発明を使用する物品は、例えば、カートリッジとすることができる。
【0144】
上記の実施形態のそれぞれでは、物品1、2は消耗品である。物品が消耗品である実施形態では、物品1、2の喫煙材の(1つ以上の)揮発成分のすべて又は実質的にすべてが消費されると、使用者は物品1、2を処分することができる。使用者は、引き続き、別の物品1、2で装置を再使用することができる。しかしながら、他のそれぞれの実施形態では、物品1、2は消耗品でないものとすることができ、喫煙材の(1つ以上の)揮発可能な成分が消費されると、装置と物品1、2とを一緒に処分することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、上記の物品1、2は、この物品とともに使用可能な装置100とは別個に販売され、供給され、又はその他の方法により提供される。しかしながら、いくつかの実施形態では、装置100及び1つ以上の上記物品1、2を、キットや組立体などのシステムとして、場合によっては清掃器具などの追加の構成要素とともに一緒に提供してもよい。
【0146】
本発明は、本明細書で説明した物品のいずれか1つと、本明細書で説明した装置のいずれか1つとを備えるシステムとして実施することも可能である。ここで、磁場発生器によって生成される変動磁場の侵入による加熱のための加熱材(例えば、サセプタの形態のもの)は、装置自身が有する。物品の部分が凹部101内にあるとき、装置の加熱材で発生した熱が物品に伝達されて、物品内の喫煙材を加熱する、又はさらに加熱することができる。
【0147】
様々な課題に対処し、技術を進歩させるため、本開示はその全体にわたって様々な実施形態を例示している。これらの実施形態は、特許請求された発明を実施することが可能なものであり、また、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための優れた装置と、このような装置とともに使用するための優れた物品と、このような物品及びこのような装置を備えた優れたシステムと、このような装置で使用するための磁場発生器を製造する優れた方法と、喫煙材を加熱するのに使用するためのヒーターを製造する優れた方法とを提供するものである。本開示の利点及び特徴は、実施形態のうち代表的な例のものにすぎず、すべての利点や特徴を網羅したものでもなければ、他の利点や特徴を排除するものでもない。これらは、特許請求の範囲などに開示される特徴の理解と教示を助けるためだけに提示されている。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の側面は、特許請求の範囲によって規定されたとおりに本開示を限定するもの、或いは特許請求の範囲の均等物を制限するものと考えるべきではなく、本開示の範囲や趣旨から逸脱することなく他の実施形態を利用し、変形を施すことができることを理解されたい。様々な実施形態が、開示された要素、構成、特徴、部品、ステップ、手段などの様々な組合せを適切に備え、それらのみから構成され、或いは実質的にそれらから構成されてもよい。本開示は、特許請求の範囲に現在は記載されていないが将来記載される可能性のある他の発明を含む可能性がある。
【符号の説明】
【0148】
1、2…物品、10…加熱材、10a~10f…閉回路、30…喫煙材、50、60、70…導電性材料のコイル、100、200…装置、120…磁場発生器、123…デバイス。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10