(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】工具装置及び反力受け
(51)【国際特許分類】
B23B 45/14 20060101AFI20220419BHJP
B23B 45/00 20060101ALI20220419BHJP
B23B 47/18 20060101ALI20220419BHJP
B23B 51/04 20060101ALI20220419BHJP
B27C 3/08 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B23B45/14
B23B45/00 C
B23B47/18 Z
B23B51/04 A
B27C3/08
(21)【出願番号】P 2019514467
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016315
(87)【国際公開番号】W WO2018198977
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2017088295
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】香川 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0249564(US,A1)
【文献】特開2004-243486(JP,A)
【文献】特開2001-113470(JP,A)
【文献】特開平02-076611(JP,A)
【文献】米国特許第02547818(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0163214(US,A1)
【文献】特開2016-059997(JP,A)
【文献】実開平04-045608(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0161241(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0194954(US,A1)
【文献】米国特許第05919009(US,A)
【文献】米国特許第03146813(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 45/14
B23B 45/00
B23B 47/18
B23B 51/04
B27C 3/08
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたトルクを増加させる減速ユニットと、
前記減速ユニットからの動力を受けて回転する先端工具と、
前記減速ユニットに固定され、前記先端工具の回転時に発生する反力を作業者に受け止めさせるための反力受けと、
前記先端工具の基端部が装着され、前記減速ユニットからの回転力を受けて前記先端工具とともに回転するソケットと、を有し、
前記ソケットは、前記先端工具の回転によって穿孔される被加工材に巻き付けられるロープと係合する係合部を有することを特徴とする工具装置。
【請求項2】
前記反力受けは、前記先端工具の回転軸と直交する方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の工具装置。
【請求項3】
前記工具装置は、さらに
前記先端工具の基端部を前記ソケットに固定するためのストッパ部材を有し、
前記ストッパ部材は、前記先端工具の外面に形成された溝部と係合するとともに前記ソケットに当接することにより、前記ソケットからの前記先端工具の抜けを阻止することを特徴とする請求項
1または2に記載の工具装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材は、前記ソケットに対して回転可能に取り付けられており、前記先端工具の前記溝部と係合する位置と、前記先端工具の前記溝部から退避した位置との間で回転することを特徴とする請求項
3に記載の工具装置。
【請求項5】
前記反力受けは、
前記減速ユニットに固定される第1反力受けと、
前記第1反力受けに着脱可能に装着される、少なくとも1つの第2反力受けと、
を有することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1つに記載の工具装置。
【請求項6】
2つの前記第2反力受けは、前記第1反力受けにおける互いに異なる位置に装着されるとともに、前記先端工具の回転軸に対して直交する方向に沿って配置されることを特徴とする請求項
5に記載の工具装置。
【請求項7】
前記反力受けは、
前記減速ユニットに固定される第1反力受けと、
前記先端工具の回転軸に直交する方向に延びる第2反力受け回転軸を中心に基端部が前記第1反力受けに対して回転可能に連結された第2反力受けと、を有し、
前記先端工具の
前記回転軸
の方向に
おける一方側に向かって前記第1反力受けが移動したとき、前記第2反力受けは、
前記先端工具の前記回転軸の方向における他方側に向かって回転し、前記第1反力受けに対して
、前記他方側に傾斜することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1つに記載の工具装置。
【請求項8】
前記第2反力受けは、
前記第2反力受けの長手方向に沿って相対的に移動可能な複数の棒状部材と、
前記複数の棒状部材の相対的な移動を許容させる位置と、前記複数の棒状部材を固定させる位置とに、作業者によって操作される操作部材と、
を有することを特徴とする請求項
5から
7のいずれか1つに記載の工具装置。
【請求項9】
前記第1反力受けは、前記先端工具の基端部が挿入されることにより、前記先端工具の基端部と接続される接続孔を有することを特徴とする請求項
5から
8のいずれか1つに記載の工具装置。
【請求項10】
入力されたトルクを増加させる減速ユニットと、
前記減速ユニットからの動力を受けて回転する先端工具と、
前記減速ユニットに固定され、前記先端工具の回転時に発生する反力を作業者に受け止めさせるための反力受けと、を有し、
前記反力受けは、
前記減速ユニットに固定される第1反力受けと、
前記第1反力受けに着脱可能に装着される、少なくとも1つの第2反力受けと、を有し、
前記第1反力受けは、前記先端工具の基端部が挿入されることにより、前記先端工具の基端部と接続される接続孔を有することを特徴とする工具装置。
【請求項11】
前記先端工具は、成長錐に用いられる中空構造の錐であることを特徴とする請求項1から
10のいずれか一つに記載の工具装置。
【請求項12】
前記減速ユニットは、動力工具と連結され、前記動力工具から入力されたトルクを増加させることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1つに記載の工具装置。
【請求項13】
入力されたトルクを増加させる減速ユニットに固定され、前記減速ユニットからの動力を受けて先端工具が回転するときに発生する反力を作業者に受け止めさせる
反力受けであって、
前記減速ユニットに固定される第1反力受けと、
前記第1反力受けに着脱可能に装着される、少なくとも1つの第2反力受けと、を有し、
前記第1反力受けは、前記先端工具の基端部が挿入されることにより、前記先端工具の基端部と接続される接続孔を有することを特徴とする反力受け。
【請求項14】
前記第2反力受けは、
前記第2反力受けの長手方向に沿って相対的に移動可能な複数の棒状部材と、
前記複数の棒状部材の相対的な移動を許容させる位置と、前記複数の棒状部材を固定させる位置とに、作業者によって操作される操作部材と、
を有することを特徴とする請求項
13に記載の反力受け。
【請求項15】
前記反力受けは、前記先端工具の回転軸と直交する方向に延びた状態で前記減速ユニットに固定されることを特徴とする請求項
13又は14に記載の反力受け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を回転させて所定の作業を行う工具装置と、この工具装置に用いられる反力受けに関する。
【背景技術】
【0002】
樹木を研究する分野では、年輪幅や密度、安定および放射性同位体比、無機元素濃度などの測定や分析を行うために、樹木のコアサンプルの採取が行われている。樹木のコアサンプルを採取する手段は、複数あるものの、生育している樹木に大きなダメージを与えること無くコアサンプルを採取する手段は、限られており、一般的には、成長錐が用いられている。
【0003】
成長錐は、先端部にネジ部が形成された中空構造の錐と、錐の基端部に装着されるハンドルと、錐の内部に挿入可能な抽出棒とから構成される器具である。この成長錐を用いてコアサンプルを採取するときには、ハンドルを時計回りに回転させることにより、錐の先端部を樹木の内部にねじ込み、コアサンプルを錐の内部に取り込む。そして、錐の内部に抽出棒を挿入した後、ハンドルを反時計回りに1回転させることにより、錐の先端部付近で樹幹とつながっているコアを樹幹から切り離し、抽出棒を錐から引き抜くことにより、コアサンプルを採取することができる。また、ハンドルの内部は中空になっており、ハンドルの内部に錐を収納して成長錐を運搬することができる。成長錐を用いてコアサンプルを採取する作業は、通常、人力で行われるが、錐を樹木にねじ込むためには、大きなトルクを必要とし、多大な労力と時間がかかる。
【0004】
このような状況に鑑み、モータなどの回転力を利用して、樹木のコアサンプルを抜き取る抜取システム(Extracting System)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、錐の回転トルクを増加させることはできる。しかしながら、回転トルクを増加させると、この増加分だけ、錐が樹木から受ける反力も増加してしまう。この反力を受け止めることができなければ、錐を正常に回転させることができない。特に錐の直径が大きくなるほど、特許文献1のように、作業者が回転駆動部(rotating drive)のグリップを保持するだけでは、錐が樹木から受ける反力を受け止めることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、工具装置であって、減速ユニット、先端工具及び反力受けを有する。減速ユニットは、減速ユニットに入力されたトルクを増加させる。先端工具は、減速ユニットからの動力を受けて回転する。反力受けは、減速ユニットに固定される。反力受けは、先端工具の回転時に発生する反力を作業者または地面、樹木などの固定物に受け止めさせるために用いられる。なお、減速ユニットは、動力工具と連結することができ、動力工具から入力されたトルクを増加させることができる。
【0008】
反力受けは、先端工具の回転軸と直交する方向に延びた状態で減速ユニットに固定することができる。また、先端工具としては、成長錐に用いられる中空構造の錐を用いることができる。
【0009】
本発明の工具装置には、ソケットを設けることができる。ソケットには、先端工具の基端部が装着され、ソケットは、減速ユニットからの回転力を受けて先端工具とともに回転する。ソケットは、ロープと係合する係合部を有する。ロープは、先端工具の回転によって穿孔される被加工材に巻き付けられる。
【0010】
ここで、先端工具の回転とともにソケットが回転すると、先端工具の外周面にロープが巻きつけられる。このようにロープを先端工具の外周面に巻きつけることにより、ロープを被加工材(例えば、樹木)の表面に締め付けて、ソケットを被加工材に近づく方向に移動させることができるため、ソケットを介して、先端工具の先端部を被加工材に押し付けることができる。これにより、先端工具を用いた穿孔作業を容易に行うことができる。
【0011】
工具装置には、先端工具の基端部をソケットに固定するためのストッパ部材を設けることができる。ストッパ部材は、先端工具の外面に形成された溝部と係合するとともにソケットに当接することにより、ソケットからの先端工具の抜けを阻止する。これにより、ソケットを介して、先端工具を被加工材から離れる方向に作業者が引っ張ることにより、樹木などから引き抜くことができる。ストッパ部材は、ソケットに対して回転可能に取り付けることができる。そして、ストッパ部材は、先端工具の溝部と係合する位置と、先端工具の溝部から退避した位置との間で回転させることができる。
【0012】
ソケットは、第1サブソケット及び第2サブソケットによって構成することができる。第1サブソケット及び第2サブソケットは、先端工具の回転軸周りにおいて、先端工具の基端部を囲むように配置される。ここで、工具装置には、第1サブソケット及び第2サブソケットを固定するためのクランプを設けることができる。
【0013】
反力受けは、減速ユニットに固定される第1反力受けと、第1反力受けに着脱可能に装着される、少なくとも1つの第2反力受けとで構成することができる。ここで、2つの第2反力受けを用いる場合、これらの第2反力受けは、第1反力受けにおける互いに異なる位置に装着するとともに、先端工具の回転軸に対して直交する方向に沿って配置することができる。
【0014】
反力受けは、減速ユニットに固定される第1反力受けと、第1反力受けに対して回転可能に連結された第2反力受けとで構成することができる。ここで、先端工具の回転軸方向に第1反力受けが移動したとき、第2反力受けを、第1反力受けに対して傾斜させることができる。これにより、先端工具の回転時に、第1反力受けをスムーズに移動させることができる。
【0015】
反力受けは、減速ユニットに固定される第1反力受けと、第1反力受けに対して回転可能に連結された第2反力受けと、バネ機構とで構成することができる。バネ機構は、先端工具の回転時に第1反力受けに作用するトルクが所定トルクよりも低いとき、バネの付勢力によって第1反力受け及び第2反力受けを一体的に移動可能とさせる。一方、トルクが所定トルク以上であるとき、バネ機構は、バネの付勢力に抗して第1反力受け及び第2反力受けを相対的に回転させる。これにより、第1反力受け及び第2反力受けが相対的に回転したとき、工具装置の作業者は、所定トルク以上のトルクが作用したことを認識することができる。
【0016】
第2反力受けは、複数の棒状部材と、作業者によって操作される操作部材とによって構成することができる。複数の棒状部材は、第2反力受けの長手方向に沿って相対的に移動可能とすることができる。操作部材は、複数の棒状部材の相対的な移動を許容させる位置と、複数の棒状部材を固定させる位置とに、作業者によって操作される。これにより、先端工具を使用する位置に応じて、第2反力受けの長さを調整することができ、先端工具を用いた作業を効率良く行うことができる。また、工具装置を使用するときに、第2反力受けの下端が地面に接するように第2反力受けの長さを調節した場合、減速ユニットなどを第2反力受けで支えることができる。これにより、作業者が減速ユニットなどを地面から離れた所定位置に持ち上げ続ける必要が無いため、作業者の肉体的負担が軽減される。
【0017】
第1反力受けには接続孔を設けることができる。接続孔には先端工具の基端部が挿入され、先端工具の基端部と接続される。先端工具の基端部を接続孔に接続することにより、第1反力受けを用いて、先端工具を回転させることができる。
【0018】
本願第2の発明は、反力受けであって、入力されたトルクを増加させる減速ユニットに固定される。減速ユニットからの動力を受けて先端工具が回転するときには、反力が発生するため、この反力を作業者または地面、樹体などの固定物に受け止めさせるために、反力受けが用いられる。反力受けは、減速ユニットに固定される第1反力受けと、第1反力受けに着脱可能に装着される、少なくとも1つの第2反力受けとで構成することができる。また、反力受けは、先端工具の回転軸と直交する方向に延びた状態で減速ユニットに固定することができる。
【0019】
本願第1の発明と同様に、第2反力受けは、複数の棒状部材と、作業者によって操作される操作部材とによって構成することができる。複数の棒状部材は、第2反力受けの長手方向に沿って相対的に移動可能とすることができる。操作部材は、複数の棒状部材の相対的な移動を許容させる位置と、複数の棒状部材を固定させる位置とに、作業者によって操作される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、減速ユニットによって先端工具の回転トルクを増加させたとき、反力受けを用いることによって、先端工具の回転時に発生する反力を受け止めることができる。これにより、トルクを増加させたまま、先端工具を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】樹木のコアサンプルを採取するときの工具装置の使用状態を示す図である。
【
図7】樹木のコアサンプルを採取するときの工具装置の他の使用状態を示す図である。
【
図9】他の変形例である第2ソケットの側面図である。
【
図10】他の変形例である第2ソケットの正面図である。
【
図11】変形例である反力受けの構造を示す側面図である。
【
図12】他の変形例である反力受けの構造を示す正面図である。
【
図13】他の変形例である第2ソケットの断面図である。
【
図14】他の変形例である第2ソケットの正面図であり、ストッパ部材が固定位置にあるときの図である。
【
図15】他の変形例である第2ソケットの正面図であり、ストッパ部材が固定解除位置にあるときの図である。
【
図16】他の変形例である第2ソケットの一部の構造を示す斜視図である。
【
図17】他の変形例である第2ソケットに先端工具が取り付けられた状態を示す概略図である。
【
図18】他の変形例である第2ソケットを固定するためのクランプを示す図である。
【
図19】他の変形例である第2ソケットを固定するためのクランプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態である工具装置について説明する。
図1に示すように、工具装置1は、動力工具10、減速ユニット30、先端工具40及び反力受け50を有する。
【0023】
まず、動力工具10の構造(一例)について説明する。動力工具10は、後述する減速ユニット30に伝達される回転力を発生させるものであればよく、例えば、市販の動力工具10を用いることができる。
【0024】
動力工具10のグリップ部11は、作業者によって保持される。動力工具10は、角ドライブ12を有し、角ドライブ12には後述する第1ソケット21が装着される。動力工具10のスイッチ13は、角ドライブ12に装着された第1ソケット21を回転させるために、作業者によって操作される。
【0025】
角ドライブ12の回転方向(正転方向又は逆転方向)を切り換えるためのスイッチ(不図示)を動力工具10に設けることもできる。動力工具10の電源は、動力工具10に内蔵することもできるし、動力工具10に着脱可能に装着することもできる。また、動力工具10の外部に設置された電源(外部電源)から動力工具10に電力を供給することもできる。なお、電源を動力工具10に内蔵したり、電源を動力工具10に着脱可能に装着したりすることにより、外部電源が無い環境であっても、動力工具10を使用することができる。
【0026】
図2に示すように、第1ソケット21は、角ドライブ12の先端部が挿入される溝部21aを有する。角ドライブ12の先端部が溝部21aと係合することにより、第1ソケット21は、角ドライブ12とともに回転する。第1ソケット21の外周面にはギヤ部21bが形成されており、ギヤ部21bは、第1ソケット21の回転力を減速ユニット30に伝達するために用いられる。
【0027】
次に、減速ユニット30の構造について説明する。
【0028】
減速ユニット30は、動力工具10からの回転トルクが伝達されたとき、回転速度を減速して回転トルクを増加させる。減速ユニット30は、第1減速機構31及び第2減速機構32を有しており、第1減速機構31及び第2減速機構32は、ケース33に収容されている。ここで、第1減速機構31及び第2減速機構32は、角ドライブ12の回転軸方向において並んで配置されている。第1減速機構31や第2減速機構32としては、遊星ギヤ機構や多段ギヤ機構といった、公知の減速機構が用いられる。
【0029】
第1減速機構31の入力ギヤ(不図示)は、第1ソケット21のギヤ部21bと噛み合っており、第1減速機構31は、第1ソケット21からの回転トルクを増加させる。第1減速機構31及び第2減速機構32は、ソケット(不図示)を介して連結されており、第1減速機構31からの回転力が第2減速機構32に伝達される。第1減速機構31及び第2減速機構32を連結する構造としては、第1減速機構31から第2減速機構32に回転力を伝達することができる構造であればよく、この点を考慮して公知の構造を適宜採用することができる。第2減速機構32は、第1減速機構31からの回転トルクを増加させる。
【0030】
本実施形態によれば、2つの減速機構31,32を用いることにより、動力工具10からの回転トルクを増加させている。2つの減速機構31,32を含む減速ユニット30の減速比としては、例えば、20.25~484とすることができる。なお、本実施形態では、2つの減速機構31,32を用いているが、1つの減速機構を用いたり、3つ以上の減速機構を用いたりしてもよい。1つの減速機構を用いる場合には、減速比が異なる複数種類の減速機構のなかから、所望の減速比を有する減速機構を選択することができる。ここで、1つの減速機構では、減速比を4.5~22とすることができる。2つの減速機構31,32を組み合わせる場合には、減速比を20.25(すなわち、4.5×4.5)~484(すなわち、22×22)とすることができる。後述するように、工具装置1を用いて樹木のコアサンプルを採取するときには、動力工具10の回転トルクにもよるが、減速ユニット30の減速比が99以下であれば足りる。
【0031】
減速ユニット30の一端側(先端工具40の側)の外面にはスプライン部34が設けられている。スプライン部34は、第1減速機構31や第2減速機構32を構成するギヤとは異なるものである。スプライン部34には、後述する反力受け50が着脱可能に装着される。
【0032】
第2減速機構32の出力スプライン(不図示)には第2ソケット22が連結されており、第2ソケット22は、第2減速機構32からの回転力を受けて回転する。
図3に示すように、第2ソケット22は、第2減速機構32の出力ギヤと噛み合うスプライン部22aを有する。なお、第2ソケット22は、第2減速機構32と連結できる構造を有していればよく、いかなる構造であってもよい。例えば、第2ソケット22及び第2減速機構32を連結する構造としては、オス部と、オス部が挿入されるメス部とによって連結される構造がある。
【0033】
また、スプライン部22aを除く、第2ソケット22の外周面には、一対のリング部(本発明の係合部に相当する)22bが設けられている。一対のリング部22bは、第2ソケット22の回転軸Lを中心として対称に配置されている。各リング部22bの内側に形成された穴には、後述するようにロープが挿入される。なお、第2ソケット22には、少なくとも1つのリング部22bが設けられていればよい。また、第2ソケット22において、少なくとも1つのリング部22bを設ける位置は、適宜決めることができる。
【0034】
また、第2ソケット22は、連結溝22cを有しており、連結溝22cには、先端工具40の基端部が着脱可能に装着される。先端工具40を連結溝22cに装着することにより、先端工具40は、第2ソケット22とともに回転する。
【0035】
本実施形態では、先端工具40を回転させることによって、様々な作業を行うことができる。例えば、先端工具40の先端部を被加工材の内部に進入させることにより、被加工材に穴を空けることができる。被加工材の材質は、特に制限されるものではなく、例えば、木材、コンクリート、樹脂、金属が挙げられる。被加工材の材質に応じて、先端工具40の材質や強度を適宜決めることができる。一方、先端工具40の先端部をボルトに係合させることにより、ボルトの締め付け作業を行うことができる。この場合には、先端工具40の先端部を、ボルトと係合できる形状に形成しておけばよい。
【0036】
本実施形態によれば、動力工具10の出力トルクを減速ユニット30によって増加させてから先端工具40に伝達することにより、先端工具40の回転トルクを増加させることができる。これにより、先端工具40を用いた作業(穿孔作業や締結作業)を容易に行うことができる。
【0037】
例えば、穿孔作業を行うときには、先端工具40の先端部を被加工材の内部に容易に進入させることができる。ここで、被加工材の硬度が高くなるほど、また先端工具40の直径が大きくなるほど、先端工具40によって被加工材に穴を空けにくくなるが、先端工具40の回転トルクを増加させることにより、被加工材に穴を空けやすくなる。一方、締結作業を行うときには、ボルトを強力かつ正確なトルクで締結させることができる。
【0038】
本実施形態では、減速ユニット30に動力工具10を連結し、動力工具10の回転トルクを減速ユニット30に伝達しているが、これに限るものではない。具体的には、本実施形態では、減速ユニット30及び動力工具10が別体として構成されているが、減速ユニット30及び動力工具10を一体的に構成することができる。また、作業者によって回転操作されるハンドル(不図示)を減速ユニット30に連結し、作業者がハンドルを回転操作したときの回転トルクを減速ユニット30に伝達することができる。ここで、ハンドルを減速ユニット30に連結するときには、ハンドルを減速ユニット30に直接連結することもできるし、本実施形態で説明したソケット21などの連結部材を介して、ハンドルを減速ユニット30に間接的に連結することもできる。
【0039】
次に、反力受け50の構造について説明する。
【0040】
先端工具40を回転させたとき、先端工具40は、回転方向と逆方向の反力を被加工材から受ける。この反力を受け止めて、先端工具40を回転させるために、反力受け50が用いられる。反力受け50は、反力受け本体51(本発明の第1反力受けに相当する)及び支持バー52(本発明の第2反力受けに相当する)によって構成されている。
【0041】
図4に示すように、反力受け本体51は、連結穴51aを有しており、連結穴51aの壁面にはスプライン部が形成されている。上述した減速ユニット30のスプライン部34が、連結穴(スプライン部)51aに挿入されて係合することにより、反力受け本体51が減速ユニット30に連結される。連結穴(スプライン部)51aが減速ユニット30のスプライン部34に係合することにより、減速ユニット30及び反力受け本体51は、先端工具40の回転方向において固定される。
【0042】
反力受け本体51は、一対の連結バー51bを有する。一対の連結バー51bは、連結穴51aから相反する方向(
図4の上下方向)に延びており、同一直線上に配置されている。反力受け本体51を減速ユニット30に装着したとき、一対の連結バー51bは、先端工具40の回転軸と直交する方向に延びる。先端工具40を用いた作業を行うときには、一方の連結バー51bが上方に向かって延びるとともに、他方の連結バー51bが下方に向かって延びるように、反力受け本体51が減速ユニット30に装着される。
【0043】
各連結バー51bには、
図1に示す支持バー52を装着することができる。
図1に示す例では、支持バー52は、下方に向かって延びる連結バー51bに装着される。支持バー52は中空構造を有しており、支持バー52の内部に連結バー51bを挿入することができる。支持バー52として、中空構造を有する成長錐のハンドル(背景技術で説明したハンドル)を用いることができる。
【0044】
ここで、反力受け本体51は、2つのネジ部51cを有しており、各ネジ部51cは、各連結バー51bの基端部に形成されている。支持バー52の内周面には、ネジ部51cと係合するネジ部(不図示)が形成されており、支持バー52のネジ部をネジ部51cと係合させることにより、支持バー52を反力受け本体51に固定することができる。また、上述したように成長錐のハンドルを支持バー52として用いた場合にも、ハンドルの内周面に形成されたネジ部をネジ部51cと係合させることにより、ハンドルを反力受け本体51に固定することができる。
【0045】
本実施形態では、ネジ部51cを用いて、支持バー52を反力受け本体51に固定しているが、これに限るものではない。支持バー52を反力受け本体51に固定できれば、いかなる構造であってもよい。例えば、連結バー51b及び支持バー52のそれぞれに穴部を形成しておき、これらの穴部が重なるように、反力受け本体51の連結バー51bを支持バー52の内部に挿入し、これらの穴部にピンを挿入することができる。このような構造であっても、反力受け本体51に支持バー52を固定することができる。
【0046】
本実施形態では、支持バー52の内部に連結バー51bを挿入しているが、これに限るものではない。具体的には、連結バー51bの内部を中空構造としておき、連結バー51bの内部に支持バー52の一端部を挿入することができる。
【0047】
本実施形態では、上述したように、先端工具40の回転トルクを増加させているため、先端工具40を用いた作業を行うときに、先端工具40に作用する反力も大きくなりやすい。ここで、作業者は、動力工具10のグリップ部11を保持しているが、グリップ部11を保持するだけでは、先端工具40に作用する反力を受け止めることは困難である。そこで、本実施形態では、反力受け50を用いることにより、先端工具40に作用する反力を受け止めやすくしている。
【0048】
先端工具40を用いた作業を行うとき、減速ユニット30に装着された反力受け50は、先端工具40に作用する反力の方向と同一方向に回転しようとする。このとき、反力受け50が回転しないように、支持バー52を支持することにより、先端工具40に作用する反力を受け止めることができる。トルクは、先端工具40の回転軸からの距離と、支持バー52のうちの上記距離に対応する部分にかかる力を掛け合わせたものであるので、先端工具40の回転軸から最も離れた支持バー52の先端部を支持することにより、先端工具40に作用する反力を受け止めやすくなる。なお、
図1に示す構成において、減速ユニット30から上方に延びる連結バー51bに支持バー52を装着し、この支持バー52を支持することもできる。上述したように、作業者によるグリップ部11の保持と、支持バー52の支持とによって、先端工具40に作用する反力を受け止めやすくなり、先端工具40を回転させやすくなる。
【0049】
なお、本実施形態では、反力受け本体51及び支持バー52を別々の部品として構成したが、反力受け本体51及び支持バー52を一体的に構成してもよい。ただし、反力受け本体51及び支持バー52を別体で構成することにより、反力受け50を反力受け本体51及び支持バー52に分解してコンパクトにまとめることができ、反力受け50の持ち運び等が容易になる。
【0050】
本実施形態では、反力受け本体51に2つの連結バー51bを設けているが、1つの連結バー51bを設けるだけでもよい。この場合には、上述したように、連結バー51bが下方に延びるように、反力受け本体51を減速ユニット30に装着することができる。ここで、反力受け本体51を減速ユニット30に装着したとき、連結バー51bは、減速ユニット30の回転軸と直交する方向に延びる。なお、連結バー51bが延びる方向は、減速ユニット30の回転軸に対して傾斜していてもよい。
【0051】
本実施形態では、2つの連結バー51bのうち、下方に延びる連結バー51bだけに支持バー52を固定しているが、これに限るものではない。すなわち、上方に延びる連結バー51bにも支持バー52を固定することができる。この場合には、2つの連結バー51bにそれぞれ固定された2つの支持バー52を用いて、先端工具40に作用する反力を受け止めることができる。また、2つの支持バー52を支持することにより、1つの支持バー52を支持する場合に比べて、先端工具40の回転軸がぶれることを抑制しやすくなり、先端工具40が被加工材の目標位置(例えば、樹幹の中心に位置する随)に達するように、先端工具40の回転軸を所望の向きで保ち続けることができる。なお、上方に延びる連結バー51bに固定される支持バー52としては、中空構造を有する成長錐のハンドル(背景技術で説明したハンドル)を用いることができる。
【0052】
本実施形態の工具装置1を用いて、樹木のコアサンプルを採取するとき、先端工具40としては、成長錐の一部を構成する錐を用いることができる。成長錐は、上述したように、錐、抽出棒およびハンドルによって構成されている。錐は中空構造を有しており、錐の先端には開口部が形成されているとともに、錐の先端側の外周面にはネジ部が形成されている。動力工具10を作動させて先端工具(錐)40を時計回りに回転させると、先端工具(錐)40の先端部が樹木の内部に向かって進入する。これにより、先端工具(錐)40の内部に、樹木のコアサンプルを取り込むことができる。
【0053】
先端工具(錐)40の先端部を樹木内部の目標位置まで進入させた後では、樹木のコアサンプルを取り出すために、先端工具(錐)40の基端部を第2ソケット22から取り外す。そして、先端工具(錐)40の基端部にハンドル(不図示)を取り付け、基端部側から先端工具(錐)40の内部に抽出棒を挿入した後に、ハンドルを反時計回りに1回転させることにより、先端工具(錐)40の先端部付近で樹幹とつながっているコアを樹幹から切り離す。そして、先端工具(錐)40の内部から抽出棒を引き出せば、樹木のコアサンプルを抽出棒に載せた状態で取り出すことができる。
【0054】
先端工具(錐)40の先端部付近で樹幹とつながっているコアを樹幹から切り離すとき、先端工具(錐)40の基端部に取り付けられるハンドル(不図示)を用いる代わりに、
図5に示す反力受け本体51を用いることができる。
図5において、反力受け本体51は、先端工具(錐)40の基端部が挿入される接続孔51dを有する。接続孔51dは、先端工具(錐)40の基端部に沿った形状に形成されている。
【0055】
第2ソケット22が取り外された先端工具(錐)40の基端部を接続孔51dに挿入した後、先端工具(錐)40の回転軸の周りで反力受け本体51を回転させれば、先端工具(錐)40の先端部付近で樹幹とつながっているコアを樹幹から切り離すことができる。ここで、反力受け本体51を金属で形成すれば、反力受け本体51の強度を向上させることができ、反力受け本体51を回転させるときに、反力受け本体51が塑性変形することを防止できる。
【0056】
なお、
図5に示す例では、反力受け本体51に2つの接続孔51dが形成されているが、接続孔51dの数は適宜決めることができる。すなわち、接続孔51dの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の接続孔51dを形成する場合には、反力受け本体51の長手方向(
図5の上下方向)に沿って複数の接続孔51dを並べることができる。
【0057】
樹木のコアサンプルを取り出した後、先端工具(錐)40を樹木の内部に進入させたときの先端工具(錐)40の回転方向とは逆方向(例えば、反時計方向)に先端工具(錐)40を回転させると、先端工具(錐)40の先端に形成されたネジ部が樹木と係合することにより、先端工具(錐)40を樹木から引き抜くことができる。先端工具(錐)40を樹木から引き抜くときにも、本実施形態の工具装置1を用いることができる。ここで、減速ユニット30によって先端工具(錐)40の回転トルクを増幅させることにより、先端工具(錐)40を樹木から容易に引き抜くことができる。
【0058】
一方、樹木の内部が腐朽している場合等であって、先端工具(錐)40のネジ部が腐朽部分に位置している場合には、先端工具(錐)40のネジ部が樹木と係合できなくなるため、先端工具(錐)40が空転してしまい、先端工具(錐)40を樹木から引き抜けなくなってしまうことがある。この場合には、文献「An Extractor Device for Stuck or Broken Increment Borers,N. J. Loader and J. S. Waterhouse,Tree-Ring Research Jul 2014, Vol. 70, Issue 2, pg(s) 157-160」に記載の抜取装置(Extractor Device)を用いて、先端工具(錐)40を樹木から引き抜くことができる。この抜取装置では、樹木から突出している先端工具(錐)40の一部をチャックで掴み、樹木から離れる方向にチャックを移動させることにより、先端工具(錐)40を樹木から引き抜くことができる。ここで、樹木から離れる方向にチャックを移動させる構造は、上記文献に記載されている構造に限るものではなく、チャックを移動させるときの反力を樹木で受けるような構造であればよい。
【0059】
樹木のコアサンプルを採取するときには、ロープを使用することができる。具体的には、
図6に示すように、樹木Wの周囲に沿ってロープR1を配置し、ロープR1の一端を第2ソケット22の一対のリング部22bに順番に通した後、ロープR1の一端をロープR1の他端に結びつけて、ロープR1をループ状にする。なお、ロープR1は、第2ソケット22の一対のリング部22bに取り付けることができればよく、上述した方法に限るものではない。例えば、ロープR1の両端を一対のリング部22bにそれぞれ通して、ロープR1を一対のリング部22bに固定することができる。
【0060】
ロープR1を両方のリング部22bに通した状態において、先端工具(錐)40を回転させると、第2ソケット22の回転に応じて、先端工具(錐)40の外周面にロープR1が巻きつけられる。このようにロープR1を先端工具(錐)40の外周面に巻きつけることにより、ロープR1を樹木Wの表面に締め付けて、第2ソケット22を樹木Wに近づく方向に移動させることができるため、第2ソケット22を介して、先端工具(錐)40の先端部を樹木Wに押し付けることができる。先端工具(錐)40の先端部を樹木Wに押し付けることにより、樹木Wの内部に先端工具(錐)40の先端部を容易に挿入させることができる。
【0061】
先端工具(錐)40の先端部が樹木Wの内部に挿入するときには、上述したように、先端工具(錐)40が樹木Wからの反力を受けることにより、この反力が作用する方向に反力受け50が回転してしまう。そこで、作業者Oの脚によって、反力受け本体51の下方に位置する支持バー52を支持することにより、反力受け50の回転を防止して、樹木Wからの反力を受け止めることができる。なお、作業者Oは、
図7に示す姿勢において、反力受け本体51の下方に位置する支持バー52を作業者Oの脚で支持することにより、反力受け50の回転を防止して、樹木Wからの反力を受け止めることができる。
【0062】
支持バー52を支持する手段は、作業者Oの脚に限るものではなく、反力受け50の回転に伴う支持バー52の移動を阻止できるものであればよい。
【0063】
例えば、
図6に示すように、反力受け本体51の上方に位置する支持バー52(例えば、支持バー52の上端部)にロープR2の一端を結び付け、ロープR2を作業者Oの身体の背後に回した後に、ロープR2の他端を、反力受け本体51の下方に位置する支持バー52(例えば、支持バー52の下端部)に結び付ける。これにより、反力受け50が樹木Wからの反力を受けて回転しようとするときには、2つの支持バー52に結びつけられたロープR2を作業者Oの胴体により支持することによって、2つの支持バー52の移動を抑制して、より安定的に反力受け50の回転を抑制することができる。反力受け50の下方に位置する支持バー52を支持するとき、支持バー52の先端部は、地面Gに接触していてもよいし、地面Gから離れていてもよい。
【0064】
一方、樹木Wの周囲に配置されたロープ(不図示)の両端部を2つの支持バー52に固定しておき、作業者Oがロープの一端側を掴むことにより、反力受け50の回転に伴う支持バー52の移動を阻止することができる。ここで、各支持バー52には、ロープの端部を固定するための固定部を形成しておくことが好ましい。固定部としては、例えば、支持バー52の表面に設けられるフック又はリングや、ロープを通すための貫通孔が挙げられる。
【0065】
本実施形態では、
図3に示すように、第2ソケット22の外周面にリング部22bを設けているが、これに限るものではない。すなわち、
図6に示すロープR1を第2ソケット22に取り付けることができればよい。例えば、
図8に示すように、第2ソケット22に貫通孔22dを形成し、貫通孔22dにロープR1を通してロープR1を第2ソケット22に取り付けることができる。ここで、貫通孔22dは、連結溝22cと干渉しない位置に形成すればよい。一方、
図3に示すリング部22bの代わりに、ロープR1を引っ掛けるためのフックなどの突起部(本発明の係合部に相当する)を第2ソケット22の外周面に設けることもできる。
【0066】
一方、
図9及び
図10に示す第2ソケット22を用いることができる。
図10は、先端工具40の側から第2ソケット22を見たときの図である。第2ソケット22はフランジ部22eを有しており、フランジ部22eには、
図6に示すロープR1を通すための一対の貫通孔22fが形成されている。
図10に示すように、一対の貫通孔22fの間に連結溝22cが形成されている。
【0067】
本実施形態では、支持バー52の長さを一定としているが、支持バー52の長さを変更可能とすることもできる。具体的には、支持バー52を、複数のサブバーによって構成するとともに、一方のサブバーの内部に他方のサブバーを収容できる構成とし、これらのサブバーを支持バー52の長手方向に相対的に移動させるようにすれば、支持バー52の長さを変更することができる。支持バー52の長さを変更した後では、複数のサブバーが相対的に移動しないように複数のサブバーを互いに固定すればよい。
【0068】
具体的には、作業者Oによって操作される操作部材を支持バー52に設けておき、操作部材の操作によって、複数のサブバーの相対的な移動を許容させたり、複数のサブバーを互いに固定させたりすることができる。操作部材としては、例えば、ノブ付きのボルトを用いることができる。ここで、外側に配置されたサブバーをボルトが貫通し、内側に配置されたサブバーの外面にボルトの先端部を接触させる。ボルトを締め付ければ、複数のサブバーを互いに固定することができ、ボルトを緩めれば、複数のサブバーを相対的に移動させることができる。
【0069】
これにより、先端工具40を使用する位置(
図6又は
図7に示す地面Gからの高さ)に応じて、支持バー52の長さを調整することができ、先端工具40を用いた作業を効率良く行うことができる。工具装置1を使用するときに、支持バー52の下端が地面Gに接するように支持バー52の長さを調節した場合、動力工具10、第1ソケット21、減速ユニット30、反力受け本体51及び第2ソケット22の総重量を、支持バー52で支えることができる。これにより、作業者Oが動力工具10などを地面Gから離れた所定位置に持ち上げ続ける必要が無いため、作業者の肉体的負担が軽減される。
【0070】
本実施形態では、支持バー52が反力受け本体51に固定されているが、支持バー52を反力受け本体51に対して回動させることもできる。以下、支持バー52及び反力受け本体51を相対的に回転させる構造(2つの構造)について説明する。なお、支持バー52については、上述したように支持バー52の長さを一定としてもよいし、支持バー52の長さを変更可能としてもよい。
【0071】
第1の構造について、
図11を用いて説明する。
図11において、反力受け本体51及び支持バー52は、軸部材53を中心に回転可能に連結されている。軸部材53の回転軸は、先端工具40の移動方向(
図11の左右方向)及び反力受け本体51が延びる方向(
図11の上下方向)と直交する方向(言い換えれば、
図11の紙面と直交する方向)に延びている。
【0072】
図11に示す構造によれば、先端工具40が矢印D1の方向(被加工材に近づく方向)に移動したとき、支持バー52を矢印D2の方向に回転させることができる。ここで、先端工具40に作用する反力を受けるために、支持バー52の先端部(下端部)を支持すれば、支持バー52を支持する位置を変更することなく、先端工具40の移動方向D1に反力受け本体51を移動させることができる。これにより、先端工具40や反力受け本体51を矢印D1の方向にスムーズに移動させることができる。
【0073】
次に、第2の構造について、
図12を用いて説明する。
図12は、先端工具40の回転軸方向から反力受け50を見たときの図である。
【0074】
図12において、反力受け本体51及び支持バー52は、軸部材54を中心に回転可能に連結されている。軸部材54の回転軸は、先端工具40の回転軸と平行である。ここで、反力受け本体51の連結バー51b及び支持バー52の連結部分において、バネを用いたトグル機構55を設けることができる。トグル機構55は、トルクレンチで用いられている公知の機構であり、所定のトルクに到達したときに、反力受け本体51の連結バー51b及び支持バー52を相対的に回転させるものである。
【0075】
図12に示す構造によれば、反力受け本体51に作用するトルクが、トグル機構55によって設定された所定トルクに到達するまでは、反力受け本体51及び支持バー52は、トグル機構55のバネの付勢力を受けて一体的に移動可能である。一方、反力受け本体51に作用するトルクが所定トルクに到達したときには、反力受け本体51及び支持バー52が、トグル機構55のバネの付勢力に抗して、軸部材54を中心に相対的に回転する。具体的には、支持バー52は、反力受け本体51に対して矢印D3の方向に回転する。作業者は、反力受け本体51及び支持バー52の相対的な回転を認識することにより、反力受け本体51に作用するトルクが所定トルクに到達したことを把握することができる。
【0076】
次に、第2ソケット22の他の構造について、
図13~
図15を用いて説明する。
図13は、第2ソケット22の断面図である。
図14及び
図15では、後述するストッパ部材224の位置を主に示している。
【0077】
第2ソケット22は、第1サブソケット221及び第2サブソケット222を有する。第1サブソケット221は、減速ユニット30と連結されるスプライン部221a(
図3に示すスプライン部22aに相当する)と、先端工具40の基端部が挿入される凹部221bとを有する。第2サブソケット222は、先端工具40が貫通する貫通孔222aを有する。
【0078】
第1サブソケット221及び第2サブソケット222は、
図14及び
図15に示すボルト223によって固定されており、
図13に示すように、第1サブソケット221及び第2サブソケット222の間には、ストッパ部材224が配置されている。
図13に示すように、軸部材225は、第2サブソケット222、ストッパ部材224及び第1サブソケット221を貫通しており、ストッパ部材224は、軸部材225を中心に回転する。
【0079】
第2ソケット22には、ボールプランジャ226が組み込まれている。具体的には、ボールプランジャ226は、第1サブソケット221及び第2サブソケット222の間に配置されている。ストッパ部材224が
図14に示す位置(固定位置という)にあるとき、ボールプランジャ226の先端に設けられたボール又はピン(不図示)は、ストッパ部材224に形成された穴部224aと係合する。これにより、ストッパ部材224は、固定位置に保持される。ストッパ部材224は、先端工具40の外周面に沿って形成された係合部224bを有しており、ストッパ部材224が固定位置にあるとき、係合部224bは、先端工具40の基端部の外周面に形成された溝部40a(
図13参照)と係合する。
【0080】
ストッパ部材224は取手部224cを有しており、ストッパ部材224が固定位置にあるとき、取手部224cは第2ソケット22の外側に突出する。作業者が取手部224cを保持して
図14に示す矢印D4の方向にストッパ部材224を回転させると、ストッパ部材224の穴部224aがボールプランジャ226から外れることにより、ストッパ部材224を
図15に示す位置(固定解除位置という)まで回転させることができる。ここでいう固定解除位置とは、
図15に示すストッパ部材224の位置に限るものではなく、ストッパ部材224の係合部224bが先端工具40の溝部40aから退避した位置である。ストッパ部材224を固定解除位置まで移動させれば、先端工具40を第2ソケット22から取り外すことができる。
【0081】
ストッパ部材224が固定位置にあるとき、係合部224bが先端工具40の溝部40aに係合することにより、先端工具40が第2ソケット22から抜けることを防止できる。これにより、例えば、先端工具(錐)40の先端部を樹木の内部に進入させた後、先端工具40を第2ソケット22に固定したままの状態において、先端工具40を樹木から引き抜くことができる。例えば、第2ソケット22を樹木から離れる方向に移動させれば、先端工具40を樹木から引き抜くことができる。第2ソケット22を樹木から離れる方向に移動させる手段としては、例えば、第2ソケット22にロープを引っ掛け、このロープを引っ張ることにより、第2ソケット22を樹木から離れる方向に移動させることができる。
【0082】
上述したように、先端工具40を樹木から引き抜くときには、先端工具40を樹木の内部に進入させたときの先端工具40の回転方向とは逆方向に先端工具40を回転させることができる。しかし、樹木の内部が腐朽している場合には、先端工具40が空転することにより、先端工具40を樹木から引き抜けなくなる。ストッパ部材224を用いて先端工具40を第2ソケット22に固定しておけば、反力受け本体51および支持バー52を水平にして、2つの支持バー52をそれぞれ1人の作業者が掴んで樹木から離れる方向に引っ張ることにより、先端工具40のねじ部が樹木と係合する位置まで先端工具40を引き出すことができる。
【0083】
次に、第2ソケット22の他の構造について、
図16~
図19を用いて説明する。
図16は、第2ソケット22の一部の構造を示す斜視図であり、
図17は、第2ソケット22に先端工具40が取り付けられた状態を示す概略図である。
図18及び
図19は、第2ソケット22を固定するためのクランプを示す図である。
【0084】
図16に示すように、第2ソケット22は、第1サブソケット2201と、第2サブソケット2202と、ストッパ部材2241を有する。第1サブソケット2201は、先端工具40の基端部が収容される凹部2201aを有する。第2サブソケット2202は、溝部2201aの上方に配置され、第2サブソケット2202の下端面及び第1サブソケット2201の凹部2201aによって、先端工具40の基端部が囲まれる。
【0085】
ストッパ部材2241は、
図16に示す矢印D5の方向に移動させることにより、第1サブソケット2201の一端面2201b及び第2サブソケット2202の一端面2202aに沿って配置される。ストッパ部材2241は、先端工具40の外周面に沿って形成された係合部2241aを有しており、係合部2241aは、先端工具40の基端部に形成された溝部40a(
図17参照)に係合する。ここで、先端工具40の基端部を凹部2201aに収容するときには、先端工具40の溝部40aを、第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202の外部に位置させる。これにより、先端工具40の溝部40aに係合部2241aを係合させることができる。
【0086】
図17は、先端工具40の基端部に第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202を取り付けるとともに、先端工具40の溝部40aに係合部2241aを係合させた状態を示す。
図17は、
図16に示す矢印D6の方向から第1サブソケット2201を見た図である。
図17に示すように、第1サブソケット2201は、スプライン部22aを備えたケース22gに固定されている。ストッパ部材2241を先端工具40の溝部40aに係合させたとき、ストッパ部材2241は、第1サブソケット2201の一端面2201b及び第2サブソケット2202の一端面2202aに当接する。これにより、先端工具40が第2ソケット22から抜けることを防止することができる。
【0087】
次に、第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202を固定するための機構(クランプ)について説明する。
図18及び
図19に示すクランプ60を用いることにより、第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202を互いに固定することができる。クランプ60は、第1サブソケット2201が固定された第1アーム61と、第2サブソケット2202が固定された第2アーム62とを有する。第1アーム61の一部(中央部)は第1サブソケット2201の外周面に沿った形状に形成されており、第2アーム62の一部(中央部)は第2サブソケット2202の外周面に沿った形状に形成されている。
【0088】
第1アーム61の一端部及び第2アーム62の一端部は、リンク63を介して接続されている。ここで、第1アーム61の一端部及びリンク63が回転可能に接続されているとともに、第2アーム62の一端部及びリンク63が回転可能に接続されている。第1アーム61の他端部には、リンク64を介してレバー65が接続されている。ここで、第1アーム61の他端部及びリンク64が回転可能に接続されているとともに、リンク64及びレバー65の基端部が回転可能に接続されている。
【0089】
クランプ60を
図18に示す状態(固定状態という)とすることにより、第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202を固定することができる。また、クランプ60を
図19に示す状態(固定解除状態という)とすることにより、第1サブソケット2201及び第2サブソケット2202を離すことができる。クランプ60が固定解除状態にあるとき、第1サブソケット2201の凹部2201aに先端工具40の基端部を収容することができる。
【符号の説明】
【0090】
1:工具装置、10:動力工具、11:グリップ部、12:角ドライブ、
13:スイッチ、21:第1ソケット、22:第2ソケット、
30:減速ユニット、31:第1減速機構、32:第2減速機構、
33:ケース、
40:先端工具、50:反力受け、51:反力受け本体、52:支持バー