(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】電気機器システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/66 20200101AFI20220419BHJP
G01R 31/55 20200101ALI20220419BHJP
【FI】
G01R31/66
G01R31/55
(21)【出願番号】P 2016235503
(22)【出願日】2016-12-05
【審査請求日】2019-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 龍哉
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-204822(JP,A)
【文献】特開2002-005979(JP,A)
【文献】特開2009-122014(JP,A)
【文献】特開2012-117854(JP,A)
【文献】特開平11-023775(JP,A)
【文献】特開平10-334035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0277324(US,A1)
【文献】特開2003-66088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/66
G01R 31/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気機器と、
前記複数の電気機器のそれぞれがデジタル信号線を介して個別に接続される複数の接続端子を有し、前記デジタル信号線を介して前記複数の電気機器を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の電気機器の各々には、他の電気機器との識別に用いられる識別情報が設定されており、各電気機器は、自身に設定されている前記識別情報に対応する識別信号を含んだデータを送信することが可能であり、
前記制御装置は、
前記複数の接続端子と、当該接続端子のそれぞれに入力されるべき前記識別信号に関する情報と、が予め互いに対応付けられた対応テーブルと、
前記複数の電気機器の各々に前記データを送信させる送信指令部と、
各接続端子に入力された前記データから得られる前記識別信号が、前記対応テーブルにおいて当該接続端子に対応付けられている情報に一致するか否かを判断する判断部と、
前記複数の接続端子の何れかにおいて、その接続端子に入力された前記データから得られる前記識別信号が、前記対応テーブルにおいて当該接続端子に対応付けられている情報に一致しない、と前記判断部が判断した場合、一致しなかった識別信号に対応する情報と、その識別信号が入力された接続端子と、が互いに対応する様に、予め定められていた対応付けを変更する変更部と、
を含む、電気機器システム。
【請求項2】
前記識別信号は、前記電気機器ごとにパルス幅が異なる信号であり、当該パルス幅が前記情報として用いられる、請求項1に記載の電気機器システム。
【請求項3】
前記識別信号は、前記電気機器ごとにパルス数が異なる信号であり、当該パルス数が前記情報として用いられる、請求項1に記載の電気機器システム。
【請求項4】
前記識別信号は、前記電気機器ごとに、前記送信指令部が送信指令を行ってから当該電気機器が所定パルスの送信を開始するまでの遅延時間が異なる信号であり、当該遅延時間が前記情報として用いられる、請求項1に記載の電気機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気機器を備える電気機器システムに関し、特に同種の電気機器を複数備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電気機器(例えば、電源装置等)と、これらを制御する制御装置と、がユニット化された電気機器システム(例えば、特許文献1参照)では、当該電気機器のそれぞれを、デジタル信号線を介して制御装置に個別に接続することが一般的であった。そして、この様な電気機器システムでは、制御装置は、デジタル信号線が接続される複数の接続端子を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気機器システムにおいて、複数の電気機器を個別に制御することを可能にするべく、当該複数の電気機器の各々に、他の電気機器との識別に用いられる識別情報が設定されることが多くなってきている。そして、デジタル信号線を介して複数の電気機器を個別に制御する場合、制御装置が有する接続端子の各々には、それに対応する識別情報が設定されている電気機器を、デジタル信号線を用いて接続することが、ユーザに要求される。
【0005】
しかし、接続端子の何れかに、対応する電気機器とは別の電気機器が誤って接続されることがあり得る。この様な配線ミスが生じると、電気機器を正しく制御することができず、電気機器システムを正常に動作させることが困難になる虞がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、制御装置に対する電気機器の配線ミスを自動的に修復することが可能な電気機器システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気機器システムは、複数の電気機器と、デジタル信号線を介して当該複数の電気機器を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、複数の電気機器のそれぞれがデジタル信号線を介して個別に接続される複数の接続端子を有する。複数の電気機器の各々には、他の電気機器との識別に用いられる識別情報が設定されており、各電気機器は、自身に設定されている識別情報に対応する識別信号を含んだデータを送信することが可能である。制御装置は、対応テーブルと、送信指令部と、判断部と、変更部と、を含む。対応テーブルは、複数の接続端子と、当該接続端子のそれぞれに入力されるべき識別信号に関する情報と、が予め互いに対応付けられたものである。送信指令部は、複数の電気機器の各々に、識別信号を含んだデータを送信させる。判断部は、各接続端子に入力されたデータから得られる識別信号が、対応テーブルにおいて当該接続端子に対応付けられている情報に一致するか否かを判断する。変更部は、複数の接続端子の何れかにおいて、その接続端子に入力されたデータから得られる識別信号が、対応テーブルにおいて当該接続端子に対応付けられている情報に一致しない、と判断部が判断した場合、一致しなかった識別信号に対応する情報と、その識別信号が入力された接続端子と、が互いに対応する様に、予め定められていた対応付けを変更する。
【0008】
上記電気機器システムによれば、制御装置における次の様な判断が可能になる。即ち、接続端子に実際に入力されたデータから得られる識別信号が、対応テーブルにおいて当該接続端子に対応付けられている情報に一致した場合には、接続端子に、対応する識別情報が設定されている電気機器が正しく接続されている、と制御装置は判断することができる。一方、一致しなかった場合には、接続端子に、対応しない識別情報が設定されている別の電気機器が誤って接続されている、と制御装置は判断することができる。そして、電気機器が誤って接続されていた場合であっても、変更部が、対応テーブルにおける対応付けを変更することにより、接続端子と電気機器との接続関係を正しいものとして扱うことが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置に対する電気機器の配線ミスを自動的に修復することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電気機器システムを概念的に示したブロック図である。
【
図2】電気機器が有するロータリスイッチを示した概念図である。
【
図3】電気機器システムが備える制御装置の背面図である。
【
図4】実施形態において制御装置が行う一連の処理を示したフローチャートである。
【
図6】(A)~(C)識別情報に対応するデータについての3つの具体例を示した図である。
【
図7】(A)2つの接続端子に電気機器が誤って接続された場合を示したブロック図、及び(B)そのときの誤った接続組合せを示した図である。
【
図8】制御装置における変更処理後の対応テーブルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る電気機器システムを概念的に示したブロック図である。
図1に示される様に、電気機器システムは、複数の電気機器Aと、デジタル信号線Dを介して当該複数の電気機器Aを制御する制御装置3と、を備える。尚、
図1では、N個の電気機器A及びそれぞれに対応するN個のデジタル信号線Dが、符号A(n)及びD(n)(nは、1≦n≦Nを満たす整数)で区別して示されている。
【0012】
本実施形態では、電気機器Aの各々が、通信ネットワーク(不図示)を介して制御装置3と通信を行う一方で、他の電気機器Aとは通信を行うことがない様に、電気機器システムは構築される。又、電気機器Aは、何れも固有の機器アドレスを持たず、その一方で、後述する機器アドレスkの設定を個別に行うことが可能である。電気機器Aは何れも、自身に設定された機器アドレスkを認識することなく、通信ネットワークを介して制御装置3から送信される指令に応じて、自身が持つ固有の動作や制御装置3へのデータの送信等を実行する。但し、この構成は一例であって、電気機器A間の通信を排除するものではない。
【0013】
電気機器Aには、例えば電源装置等、同種のものが用いられる。具体的には、電気機器Aには、構成が同じ機器が用いられる。そして、電気機器Aの各々は、他の電気機器Aとの識別に用いられる識別情報として、機器アドレスkを設定することが可能な構成を有している。又、電気機器Aの各々は、自身に設定されている機器アドレスk(識別情報)に対応する識別信号を含んだデータSを送信することが可能である。データSの詳細については、後述する。尚、
図1では、N台の電気機器Aのうちのn台目の電気機器Aが符号A(n)で示され、電気機器A(n)の機器アドレスkに対応するデータSが、符号S(k)で示されている。又、各電気機器A(n)の機器アドレスkについて、後述する様にユーザの操作により選択可能アドレスmから任意に選択されて設定されることが、符号k(m)で示されている。
【0014】
本実施形態では、電気機器Aの各々はロータリスイッチ11を有し(
図2参照)、当該ロータリスイッチ11をユーザが操作することにより機器アドレスkが設定される。尚、ロータリスイッチ11は、例えば、ユーザが設定操作するために、電気機器Aの正面や、背面、側面等に設けられている。又、ロータリスイッチ11は、開閉又は着脱可能なカバー(不図示)で覆い隠されてもよい。
【0015】
図2は、ロータリスイッチ11を示した概念図である。
図2に示される様に、ロータリスイッチ11は、操作軸11aと、複数の接点(不図示)が設けられたスイッチ本体11bと、を有し、当該操作軸11aの回転に伴って通電(短絡)させる接点を切り替えることが可能である。そして、接点のそれぞれに、選択可能アドレスmが設定されている。本実施形態では、選択可能アドレスmとして1~MまでのM個の番号が採用されており、スイッチ本体11bの正面には、接点のそれぞれを通電させたときに、操作軸11aに記された矢印の先端と対向する箇所に、選択可能アドレスmの1~Mの番号が表記されている。尚、選択可能アドレスmには、番号に限らず、文字や記号等が用いられてもよいし、番号、文字、記号等を組み合わせたものが用いられてもよい。
【0016】
各電気機器A(n)において、ユーザは、ロータリスイッチ11を操作して接点を切り替えることにより、通電させる接点を選択する。これにより、選択された接点に設定されている選択可能アドレスmが、電気機器A(n)の機器アドレスk(識別情報)として設定される(k=m)。
図1では、各電気機器A(n)の機器アドレスkが、ユーザの操作により選択可能アドレスmから任意に選択されて設定されることが、符号k(m)で示されている。他の図においても同様である。尚、機器アドレスkの設定には、ロータリスイッチ11に限らず、機器アドレスkの個別設定が可能な他の設定手段が用いられてもよい。例えば、PC(Personal computer)等を電気機器Aに接続し、当該PCからの操作で機器アドレスkが設定されてもよい。
【0017】
一例として、制御装置3に接続可能な電気機器Aの上限台数をM台とし、電気機器Aのそれぞれにおいて、選択可能アドレスmから1~Mの番号の何れかを、機器アドレスkとして設定することができる。例えば、1台目の電気機器A(1)において、ロータリスイッチ11を操作して選択可能アドレスmから3番を選択することにより、電気機器A(1)の機器アドレスkが3に設定される(k=3)。又、2台目の電気機器A(2)において、ロータリスイッチ11を操作して選択可能アドレスmから1番を選択することにより、電気機器A(2)の機器アドレスkが1に設定される(k=1)。そして、制御装置3に接続されている電気機器Aの全てにおいて、機器アドレスkを、それぞれ任意に設定することができる。
【0018】
製造工場からの電気機器Aの出荷時には、機器アドレスkはデフォルト値(例えば、1)に設定されている。その後、電気機器システムの構築時に、ユーザにより、電気機器Aごとに機器アドレスkが設定される。
【0019】
尚、電気機器Aの各々には、機器アドレスkに限定されない種々の識別情報が設定されていてもよい。この場合、電気機器Aの各々は、自身に設定されている識別情報に対応する識別信号を含んだデータSを、送信指令部31からの送信指令に応じて送信してもよい。
【0020】
図3は、制御装置3の背面図である。
図3に示される様に、制御装置3は、複数の電気機器Aのそれぞれがデジタル信号線Dを介して個別に接続される複数の接続端子Tを有する。尚、
図3では、P個の接続端子Tが、符号T(p)(pは、1≦p≦Pを満たす整数)で区別して示されている。
【0021】
そして、デジタル信号線Dを介して複数の電気機器Aを個別に制御する場合、接続端子Tの各々には、それに対応する識別情報(本実施形態では、機器アドレスk)が設定されている電気機器Aを、デジタル信号線Dを用いて接続することが、ユーザに要求される。一例(
図1参照)として、接続端子T(p=1)には、機器アドレスkが1に設定されている電気機器A(1)を、デジタル信号線D(1)を介して接続し、接続端子T(p=r)(rは、1≦r≦Pを満たす整数)には、機器アドレスkがrに設定されている電気機器A(n)を、デジタル信号線D(n)を介して接続することが、予め定められている。そして、ユーザには、機器アドレスkがrに設定されている電気機器A(n)を、デジタル信号線D(n)を用いて接続端子T(p=r)に接続することが要求される。
【0022】
但し、必ずしも、1番目の電気機器A(1)の機器アドレスkを1に設定し、n番目の電気機器A(n)の機器アドレスkをnに設定することが要求されるものではない。接続端子T(p=r)に接続されたn台目の電気機器A(n)の機器アドレスkがrに設定されていればよく、nとrとの間に関連性が要求されるわけではない。即ち、ユーザは、電気機器A(n)のロータリスイッチ11を操作して、1~M番から任意に所望の選択可能アドレスm(即ち、r番)を選択し、機器アドレスk(m)を設定することができる。そして、設定された機器アドレスk(m)に応じて、電気機器A(n)が接続されるべき接続端子T(p)が定められている。よって、ユーザには、機器アドレスk(m)が示す番号順に、接続端子Tに電気機器Aを接続することが要求される。尚、接続端子Tと識別情報(本実施形態では機器アドレスk)との対応関係は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0023】
接続端子Tは、これらへのデジタル信号線Dの接続後、カバー(不図示)で覆い隠されてもよい。又、接続端子Tは、背面に限らず、正面や側面等に設けられてもよい。
【0024】
一例として、N台(N≦M且つN≦P)の電気機器A(1)~A(N)を積み重ねて電気機器システムを構築する場合、最上段の電気機器A(1)から積載順に、それぞれのロータリスイッチ11の操作により選択可能アドレスmから1~N番が選択される。これにより、電気機器A(1)~A(N)には、積載順に、機器アドレスkが1~Nに設定されると共に、それぞれがデジタル信号線D(1)~D(N)を介して接続端子T(p=1)~T(p=N)に接続される。この様に、電気機器Aをラック等に順に積載し、積載順に、機器アドレスkを設定すると共に、デジタル信号線Dを介して接続端子Tに接続することにより、機器アドレスk(m)の設定と接続端子T(p)への配線とについて間違いが生じ難くなる。しかし、その後、例えば棚卸やレイアウト変更等の何らかの理由により、ユーザが電気機器A(1)~A(N)の配列を変更した場合、ユーザには、デジタル信号線Dを配線し直す必要が生じる。このとき、ユーザによるデジタル信号線Dの配線ミスにより、接続端子T(p=1)~T(p=N)の幾つかにおいて、対応しない識別情報(本実施形態では機器アドレスk)を持つ電気機器Aが接続されることがある。
【0025】
電気機器Aの各々が固有の機器アドレスを持つ場合や、電気機器Aの各々に自動で機器アドレスkが付与される場合には、デジタル信号線Dによる接続端子Tと電気機器Aとの接続関係に拘らず、配線後に自動で電気機器Aに対して、接続されている接続端子Tと対応する様に所望の機器アドレスkを付与することが可能である。しかし、本実施形態では、複数の電気機器Aにおいて個別に機器アドレスkが設定され、各電気機器Aは、それに設定された機器アドレスkに対応する接続端子Tにデジタル信号線Dを介して接続されることが、前提とされている。このため、電気機器Aにおいて機器アドレスkが正しく設定されたとしても、ユーザによるデジタル信号線Dの配線ミスにより、接続端子Tの幾つかにおいて、対応しない識別情報(本実施形態では機器アドレスk)を持つ電気機器Aが接続されることがある。
【0026】
そこで、本実施形態の電気機器システムは、複数の接続端子Tに対して電気機器Aが正しく接続されているか否かを個別に検出することが可能な構成を有する。具体的には以下の通りである。
【0027】
図1に示される様に、制御装置3は、対応テーブル30と、送信指令部31と、判断部32と、変更部34と、を含む。尚、
図4は、以下で説明する一連の処理を示したフローチャートである。制御装置3が行う一連の処理は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータ等、制御処理装置により行うことができる。又、当該一連の処理は、対応するプログラムを制御装置3に実行させることにより、実現されてもよい。そして、その様なプログラムは、読取り可能な状態で記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に記憶されてもよいし、制御装置3が備える記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
【0028】
対応テーブル30は、複数の接続端子Tと、当該接続端子Tのそれぞれにデジタル信号線Dを介して電気機器Aが正しく接続されているときに接続端子Tのそれぞれに入力されるべき機器アドレスkに対応する情報Stと、が互いに対応付けられた参照データである。
図5は、対応テーブル30の一例を示した図である。
図5に示された対応テーブル30は、接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)を接続することが、予め定められている場合において、接続端子T(p=r)と、これに接続されるべき機器アドレスk(=r)に対応する情報Stと、が互いに対応付けられたものである。
図5では、対応テーブル30と共に、電気機器Aと接続端子Tとの正しい接続組合せが示されている。尚、機器アドレスkに対応する情報Stは、
図5に示される様に機器アドレスkそのものである場合に限らず、後述するパルス幅W、パルス数C、遅延時間td等の情報であってもよい。
【0029】
そして、電気機器Aは、制御装置3の指令(送信指令部31からの送信指令)に応じて、自身に設定されている機器アドレスkに対応する固有の識別信号を含んだデータS(k)を送信することができる。本実施形態では、電気機器Aに設定された機器アドレスk(識別信号)そのものが、データS(k)として採用されている(
図5参照)。
【0030】
送信指令部31は、電気機器Aに対する送信指令を実行する(
図4のステップS11)。具体的には、送信指令部31は、電気機器Aの各々に、機器アドレスk(識別情報)に対応する識別信号を含んだデータS(k)の送信を要求する。
【0031】
データS(k)は、電気機器A(n)に設定されている識別情報(本実施形態では、機器アドレスk=r)に対応したデジタル信号である。具体的には、データS(k)は、機器アドレスkに応じて異なる信号であり、送信指令部31が送信指令を行ってから制御装置3での当該データS(k)の受信が完了するまでの時間が、電気機器A(n)ごとに異なる信号である。より具体的な例を、以下に説明する。尚、データS(k)は、以下に説明する具体例に限らず、種々の変形が可能である。
【0032】
図6(A)~(C)は、データS(k)についての3つの具体例をそれぞれ示した図である。第1の具体例(
図6(A)参照)において、データS(k)は、機器アドレスk(識別情報)に応じてパルス幅Wが異なる信号である。ここで、パルス幅Wは、データS(k)を構成するデータ列において2進数の”1”が連続して並んだ部分のビット数に対応する。例えば、接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)を接続することが、予め定められている場合、データS(k)のパルス幅Wを、所定時間tsを用いてr×tsで表される時間に対応させることができる。
【0033】
本実施形態の場合、機器アドレスkが1に設定された電気機器A(1)から送信されるデータS(k=1)のパルス幅Wが最も短く、機器アドレスkがR(kが連続的な値でない場合、Rは必ずしもNに一致する必要はない)に設定された電気機器A(N)から送信されるデータS(k=R)のパルス幅Wが最も長くなる。即ち、接続端子T(p=r)に入力されるデータS(k)のパルス幅Wは、対応する機器アドレスkの値(k=r)が大きくなるのに従って長くなる。よって、制御装置3(具体的には、判断部32)は、接続端子T(p=r)を介して受信したデータS(k)のパルス幅Wの時間をカウント又は計測することにより、上述した対応テーブル30に基づき、当該接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)が正しく接続されているか否かを判断することができる。
【0034】
第2の具体例(
図6(B)参照)において、データS(k)は、機器アドレスkに応じてパルス数Cが異なる信号である。ここで、パルス数Cは、所定幅を持ったパルスの配列数に対応する。例えば、接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)を接続することが、予め定められている場合、データS(k)のパルス数Cを、C=rとすることができる。
【0035】
本実施形態の場合、機器アドレスkが1に設定された電気機器A(1)から送信されるデータS(k=1)のパルス数Cが最も少なく、機器アドレスkがRに設定された電気機器A(N)から送信されるデータS(k=R)のパルス数Cが最も多くなる。即ち、接続端子T(p=r)に入力されるデータS(k)のパルス数Cは、対応する機器アドレスkの値(k=r)が大きくなるのに従って多くなる。よって、制御装置3(具体的には、判断部32)は、接続端子T(p=r)を介して受信したデータS(k)のパルス数Cをカウント又は検出することにより、上述した対応テーブル30に基づき、当該接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)が正しく接続されているか否かを判断することができる。
【0036】
第3の具体例(
図6(C)参照)において、データS(k)は、機器アドレスk(識別情報)に応じて、送信指令部31が送信指令を行ってから電気機器A(n)が所定パルスの送信を開始するまでの遅延時間tdが異なる信号である。ここで、遅延時間tdは、電気機器Aの各々にタイマを設け、そのタイマで計測される時間に対応する。例えば、接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)を接続することが、予め定められている場合、データS(k)の遅延時間tdを、所定時間td0を用いてr×td0で表される時間に対応させることができる。
【0037】
本実施形態の場合、機器アドレスkが1に設定された電気機器A(1)から送信されるデータS(k=1)の遅延時間tdが最も短く、機器アドレスkがRに設定された電気機器A(N)から送信されるデータS(k=R)の遅延時間tdが最も長くなる。即ち、接続端子T(p=r)に入力されるデータS(k)の遅延時間tdは、対応する機器アドレスkの値(k=r)が大きくなるのに従って長くなる。よって、制御装置3(具体的には、判断部32)は、接続端子T(p=r)を介して受信したデータS(k)の遅延時間tdをカウント又は計測することにより、上述した対応テーブル30に基づき、当該接続端子T(p=r)に、機器アドレスkがrである電気機器A(n)が正しく接続されているか否かを判断することができる。
【0038】
判断部32は、接続端子Tの各々に入力されたデータSから得られる識別信号(例えば、機器アドレスk、パルス幅W、パルス数C、遅延時間td等)が、対応テーブル30において当該接続端子Tに対応付けられている情報Stに一致するか否かを判断する(
図4のステップS12)。
【0039】
これにより、制御装置3における次の様な判断が可能になる。即ち、接続端子Tの各々を判断の対象として、対象とされた接続端子Tに実際に入力されたデータSから得られる識別信号(例えば、機器アドレスk、パルス幅W、パルス数C、遅延時間td等)が、対応テーブル30において当該接続端子Tに予め対応付けられている情報St(当該接続端子Tに接続されるべき機器アドレスkに関連する情報)に一致した場合には、対象とされた接続端子Tに、対応する機器アドレスkが設定されている電気機器Aが正しく接続されている、と制御装置3は判断することができる。一方、一致しなかった場合には、対象とされた接続端子Tに、対応しない別の機器アドレスkが設定されている電気機器Aが誤って接続されている、と制御装置3は判断することができる。
【0040】
従って、上記電気機器システムによれば、複数の接続端子Tに対して電気機器Aが正しく接続されているか否かを個別に検出することができる。
【0041】
図7(A)は、2つの接続端子T(p=r1)及びT(p=r2)に電気機器A(n1)及びA(n2)が誤って接続された場合を示したブロック図であり、
図7(B)は、そのときの誤った接続組合せを示した図である。
図7(B)において、対応テーブル30は、接続端子T(p)と、これに接続されるべき機器アドレスkに対応する情報Stと、の組合せであって、予め定められたものを示している。そして、2つの接続端子T(p=r1)及びT(p=t2)には、これらに接続されるべき機器アドレスkとしてr1及びr2を対応付けるべく、情報Stが設定されている。又、
図7(B)に示される接続組合せは、接続端子T(p)に接続された電気機器Aの組合せを、当該電気機器Aに設定された機器アドレスkと、当該電気機器から送信されるデータS(k)と共に示したものである。
【0042】
そして、
図7(A)及び(B)では、接続端子T(p=r2)に、機器アドレスkがr1に設定された電気機器A(n1)が、デジタル信号線D(n1)を介してに接続され、接続端子T(p=r1)に、機器アドレスkがr2に設定された電気機器A(n2)が、デジタル信号線D(n2)を介して接続された場合、即ち、接続端子T(p=r1)及びT(p=r2)に対して電気機器A(n1)及びA(n2)が逆に接続された場合が示されている。
【0043】
本来、接続端子T(p=r1)に、機器アドレスkがr1である電気機器A(n1)を接続し、接続端子T(p=r2)に、機器アドレスkがr2である電気機器A(n2)を接続することが、予め定められている(
図7(B)参照)。よって、対応テーブル30では、接続端子T(p=r1)に、電気機器A(n1)の機器アドレスk(=r1)に対応する情報St(本実施形態では、St=r1)が対応付けられ、接続端子T(p=r2)に、電気機器A(n2)の機器アドレスk(=r2)に対応する情報St(本実施形態では、St=r2)が対応付けられている。
【0044】
ところが、
図7(A)及び(B)に示された例の場合、接続端子T(p=r1)には、電気機器A(n2)からのデータS(k=r2)が入力され、接続端子T(p=r2)には、電気機器A(n1)からのデータS(k=r1)が入力される。このため、制御装置3が接続端子T(p=r1)を介して受信したデータS(k=r2)から得られる識別信号(本実施形態では、機器アドレスk=r2)は、対応テーブル30において当該接続端子T(p=r1)に対応付けられている情報St(本実施形態では、機器アドレスk=r1)に一致せず、従って、判断部32は、接続端子T(p=r1)における識別信号と情報Stとの不一致を検出する。即ち、判断部32は、接続端子T(p=r1)に、機器アドレスkがr2である電気機器A(n2)が誤って接続されていることを検出する。
【0045】
又、制御装置3が接続端子T(p=r2)を介して受信したデータS(k=r1)から得らえる識別信号(本実施形態では、機器アドレスk=r1)は、対応テーブル30において当該接続端子T(p=r2)に対応付けられている情報St(本実施形態では、機器アドレスk=r2)に一致せず、従って、判断部32は、接続端子T(p=r2)における識別信号と情報Stとの不一致を検出する。即ち、判断部32は、接続端子T(p=r2)に、機器アドレスkがr1である電気機器A(n1)が誤って接続されていることを検出する。
【0046】
尚、本実施形態において、判断部32は、接続端子Tに接続されている機器アドレスk(識別信号)が対応テーブル30の情報Stと一致しないことを検出できればよく、その機器アドレスkが設定されている電気機器Aが、何台目の電気機器Aであるかということまでは特定できなくてもよい。
【0047】
そして、識別信号(本実施形態では、機器アドレスk)と情報Stとが一致していないと判断部32が判断したとき、変更部34が、一致しなかったデータSに含まれた識別信号に対応する情報と、そのデータSが入力された接続端子Tと、が互いに対応する様に、予め定められていた対応付けを変更する(
図4のステップS13)。尚、
図8は、変更処理後の対応テーブル30を示した図である。
【0048】
一例として、変更部34は、対応テーブル30における対応付けを変更することができる。
図7(A)及び(B)に示された例の場合、対応テーブル30において、接続端子T(p=r1)に、電気機器A(n1)の機器アドレスk(=r1)に対応する情報St(本実施形態では、St=r1)が予め対応付けられ、接続端子T(p=r2)に、電気機器A(n2)の機器アドレスk(=r2)に対応する情報St(本実施形態では、St=r2)が予め対応付けられている。そして、接続端子T(p=r1)に入力されたデータS(k)から得られる機器アドレスk(識別信号)が、k=r2であった場合、変更部34は、対応テーブル30において接続端子T(p=r1)に予め対応付けられている情報St=r1を、St=r2に変更する。同様に、接続端子T(p=r2)に入力されたデータS(k)から得られる機器アドレスk(識別信号)が、k=r1であった場合、変更部34は、対応テーブル30において接続端子T(p=r2)に予め対応付けられている情報St=r2を、St=r1に変更する。
【0049】
即ち、変更部34は、
図8に示される様に対応テーブル30の対応付けを変更することにより、接続端子T(p=r1)に、データS(k=r2)に含まれた識別信号に対応する情報(本実施形態では、機器アドレスk=r2)を対応付け、接続端子T(p=r2)に、データS(k=r1)に含まれた識別信号に対応する情報(本実施形態では、機器アドレスk=r1)を対応付けることができる。
【0050】
この構成によれば、電気機器Aが、対応する接続端子Tとは別の接続端子Tに誤って接続されていた場合であっても、上記変更部34による対応付けの変更により、接続端子Tと電気機器Aとの接続関係を正しいものとして扱うことが可能になり、その結果として、接続の誤りを自動的に解消することができる。即ち、制御装置3に対する電気機器Aの配線ミスを自動的に修復することが可能になる。よって、電気機器システムにおいて、制御装置3から電気機器Aへ指令を個々に送信することが可能な状態を回復させることができる。
【0051】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
A 電気機器
D デジタル信号線
3 制御装置
T 接続端子
11 ロータリスイッチ
11a 操作軸
11b スイッチ本体
30 対応テーブル
31 送信指令部
32 判断部
34 変更部
k 機器アドレス
m 選択可能アドレス
C パルス数
S データ
St 情報
td 遅延時間
ts、td0 所定時間
W パルス幅