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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ネオ抗原ワクチンによる併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20220419BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220419BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220419BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220419BHJP
   G16C 20/64 20190101ALN20220419BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K39/39
A61K39/395 U
A61K45/00
A61K45/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C07K16/18
C07K16/28
G16C20/64
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2016541368
(86)(22)【出願日】2014-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-01-19
(86)【国際出願番号】 US2014071707
(87)【国際公開番号】W WO2015095811
(87)【国際公開日】2015-06-25
【審査請求日】2017-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】61/976,274
(32)【優先日】2014-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/919,576
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515236259
【氏名又は名称】ザ・ブロード・インスティテュート・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ニア・ハコーヘン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ジェイ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・エフ・フリッチュ
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】森井 隆信
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530943(JP,A)
【文献】国際公開第2013/164754(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/014708(WO,A2)
【文献】J.Clin.Oncol.,2013年10月21日,Vol.31,pp.4311-4318
【文献】J.Clin.Oncol.,2013年5月20日,Vol.31,No.,15,Suppl.,p.9056
【文献】N.Engl.J.Med.,2010年,Vol.363,No.8,pp.711-723
【文献】Study NCT01386502 on Date: June 30, 2011 (v1),Archive History for NCT01386502,ClinicalTrials.gov archive,[online], June 20, 2011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
WPI
BIOSIS
EMBASE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノーマ、腎細胞癌、又は非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療又は予防を必要とする患者に対する、患者特異的な癌の個別化治療における使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬であって、前記新生物ワクチンは、
(i)コンピュータシステム上で実行されるプログラムを用いるHLAペプチド結合分析により該患者のHLAクラスI対立遺伝子でコードされるタンパク質への結合親和性が500nM未満のIC50であると算出された少なくとも2つのペプチド配列を含む、1つ以上のポリペプチドであって、該少なくとも2つのペプチド配列は5~50アミノ酸長である、ポリペプチド、又は
(ii)前記少なくとも2つのペプチド配列をコードする1つ以上のポリヌクレオチド
を含み;
前記少なくとも2つのペプチド配列は、該患者の癌細胞に特異的であるとして同定された複数の癌特異的核酸配列によりコードされ;
該患者の癌細胞に特異的であるとして同定された前記複数の癌特異的核酸配列は、該癌細胞が発現する2つ以上の異なるタンパク質の2つ以上の異なるペプチド配列をコードし;
前記2つ以上の異なるタンパク質の2つ以上の異なるペプチド配列は、該患者の非癌細胞には存在しない癌特異的アミノ酸突然変異を含み;及び
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害薬は、ニボルマブである、
新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項2】
前記少なくとも2つのペプチド配列が、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つのペプチド配列を含む、請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項3】
前記新生物ワクチンが、pH調整剤及び薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項4】
前記治療又は予防が免疫調節薬又はアジュバントの投与をさらに含み、前記免疫調節薬又はアジュバントが、ポリICLC、アルミニウム塩、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、PEPTEL、ベクター系、PLGAマイクロパーティクル、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、アクリル系又はメタクリル系ポリマー、無水マレイン酸の共重合体からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項5】
(i)前記患者が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎明細胞癌(ccRCC)、又はメラノーマに罹患しており;
(ii)前記患者が検出可能な新生物を有しないが、疾患再発のリスクが高い;または
(iii)前記患者が、過去に自家造血幹細胞移植(AHSCT)を受けたことがある、
請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項6】
(i)前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記新生物ワクチンの投与開始前に開始され、前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記新生物ワクチンの投与前1週間は保留される、あるいは前記新生物ワクチンの投与中は保留される;
(ii)前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記新生物ワクチンの投与開始後に開始される;または
(iii)前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記新生物ワクチンの投与開始と同時に開始される、
請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項7】
(i)前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記チェックポイント阻害薬の初回投与後2~8週間おき又はそれ以上の週数おきに継続される;または
(ii)前記チェックポイント阻害薬の投与が、腫瘍切除後に開始される、
請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項8】
前記新生物ワクチンの投与が、プライム/ブースト投薬レジメンであり、(i)前記新生物ワクチンの投与が、プライムとして1、2、3又は4週目である;又は(ii)前記新生物ワクチンの投与が、ブーストとして2、3、4又は5ヵ月目である、請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項9】
前記ワクチンがペプチド当たり10μg~1mgの用量で投与され、または前記ワクチンがペプチド当たり10μg~2000μgの平均週用量レベルで投与される、請求項2からのいずれか一項に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項10】
前記ワクチンがポリヌクレオチドを含み、該ポリヌクレオチドは単一用量当たり少なくとも1×10粒子単位の分量でウイルスベクターとして投与される、請求項2からのいずれか一項に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項11】
(i)前記チェックポイント阻害薬が0.1~10mg/kgの用量で投与される;及び/又は
(ii)前記チェックポイント阻害薬が静脈内投与又は皮下投与され、そして、前記チェックポイント阻害薬が皮下投与されるならば、前記チェックポイント阻害薬が、前記新生物ワクチンの投与部位の2cm以内に皮下投与される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項12】
前記チェックポイント阻害薬が、前記新生物ワクチンの投与部位当たり0.1~1mgの用量で投与される、請求項11に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項13】
前記ワクチンが静脈内投与又は皮下投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項14】
1つ以上の追加の薬剤の投与をさらに含み、前記追加の薬剤が、(i)化学療法剤、抗血管新生剤及び免疫抑制を低減する薬剤からなる群から選択される;または(ii)1つ以上の抗グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子ファミリー受容体(GITR)アゴニスト抗体である、請求項1に記載の使用のための新生物ワクチン及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬。
【請求項15】
(a)少なくとも1つのネオ抗原に対する免疫応答を誘発するように構成された、別個に包装されたフリーズドライ新生物ワクチン;
(b)フリーズドライワクチンの再構成用溶液;及び
(c)チェックポイント阻害薬
を含む、ワクチン接種又は免疫化キットであって、
前記新生物ワクチン及びチェックポイント阻害薬は、メラノーマ、腎細胞癌、又は非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療又は予防を必要とする患者に対する、患者特異的な癌の個別化治療において使用するためのものであり、
前記新生物ワクチンは、
(i)コンピュータシステム上で実行されるプログラムを用いるHLAペプチド結合分析により該患者のHLAクラスI対立遺伝子でコードされるタンパク質への結合親和性が500nM未満のIC 50 であると算出された少なくとも2つのペプチド配列を含む、1つ以上のポリペプチドであって、該少なくとも2つのペプチド配列は5~50アミノ酸長である、ポリペプチド、又は
(ii)前記少なくとも2つのペプチド配列をコードする1つ以上のポリヌクレオチド
を含み;
前記少なくとも2つのペプチド配列は、該患者の癌細胞に特異的であるとして同定された複数の癌特異的核酸配列によりコードされ;
該患者の癌細胞に特異的であるとして同定された前記複数の癌特異的核酸配列は、該癌細胞が発現する2つ以上の異なるタンパク質の2つ以上の異なるペプチド配列をコードし;
前記2つ以上の異なるタンパク質の2つ以上の異なるペプチド配列は、該患者の非癌細胞には存在しない癌特異的アミノ酸突然変異を含み、
前記チェックポイント阻害薬が、ニボルマブであり、及び
前記溶液がアジュバントを含有する、ワクチン接種又は免疫化キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び参照による援用
本願は、2013年12月20日に出願された米国仮特許出願第61/919,576号明細書、及び2014年4月7日に出願された同第61/976,274号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張する。
【0002】
前述の出願、及び当該出願の又はその審査手続における全ての引用文献(「出願引用文献」)及び出願引用文献で引用又は参照される全ての文献、及び本明細書で引用又は参照される全ての文献(「本明細書引用文献」)、及び本明細書引用文献で引用又は参照される全ての文献は、本明細書又は参照によって本明細書に援用される任意の文献で言及される任意の製品に関する任意の製造者の指示書、説明書、製品仕様書、及びプロダクトシートと共に、本明細書によって参照により本明細書に援用され、及び本発明の実施において用いられ得る。より具体的には、参照される文献は全て、個別の文献それぞれが参照によって援用されることが具体的且つ個別的に示されたものとみなすのと同程度に参照によって援用される。
【0003】
本発明は、複数の新生物/腫瘍特異的ネオ抗原を含む新生物ワクチンと少なくとも1つのチェックポイント阻害薬とを対象に投与することによる、新生物、より詳細には腫瘍の治療方法に関する。
【0004】
連邦政府補助金に関する記載
本発明は、NIH/NCIによって付与されたR01 CA155010-03号に基づく連邦政府の支援を受けて行われた。連邦政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
毎年約160万人の米国人が新生物と診断され、2013年には米国内で約58万人がこの疾患により死亡することが予想される。ここ数十年で新生物の検出、診断、及び治療は著しく向上しており、それにより多くの種類の新生物に関して生存率が著しく上昇している。しかしながら、新生物と診断された人のうち、治療開始後5年でなおも生存している者は約60%に過ぎず、そのため新生物は米国における主な死亡原因の第2位となっている。
【0006】
現在、種々の既存の癌療法が、アブレーション技法(例えば、外科手技、極低温/熱処置、超音波、高周波、及び放射線)及び化学的技法(例えば、医薬品、細胞傷害剤/化学療法剤、モノクローナル抗体、及びそれらの様々な組み合わせ)を含め、いくつも存在している。残念ながら、かかる治療法は多くの場合に深刻なリスク、毒性の副作用、及び極めて高いコストを伴うことに加え、有効性も不確かである。
【0007】
患者自身の免疫系によって癌性細胞を標的化しようとする癌療法(例えば、癌ワクチン)について、かかる療法は本明細書に記載する欠点のいくつかを軽減/解消し得ることから、関心が高まっている。癌ワクチンは、典型的には腫瘍抗原及び免疫刺激分子(例えば、サイトカイン又はTLRリガンド)で構成され、これらが一緒になって働き抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導することで、T細胞が腫瘍細胞を標的化して破壊する。現在の癌ワクチンは、典型的には共通腫瘍抗原を含有し、これは多くの個体に見られる腫瘍で選択的に発現又は過剰発現する天然タンパク質(即ち、-個体における全ての正常細胞のDNAによってコードされるタンパク質)である。かかる共通腫瘍抗原は特定の型の腫瘍を同定するには有用であるが、特定の腫瘍型に対するT細胞応答を標的化する免疫原としては、自己トレランスの免疫減弱効果を受けるため理想的でない。腫瘍特異的及び患者特異的ネオ抗原を含有するワクチンは、共通腫瘍抗原を含むワクチンの欠点の幾つかを解消し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第20110293637号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願には、望ましい治療結果を、詳細には癌の治療において実現するための併用療法を記載する。
本願における任意の文献の引用又は特定は、かかる文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象における新生物の治療又は予防のため1つ以上のチェックポイント遮断阻害薬などの1つ以上の他の薬剤と併用して投与される新生物ワクチン又は免疫原性組成物に関する。
【0011】
一態様において、本発明は、それを必要としている対象における新生物を治療又は予防する方法を特徴とし、この方法は、(a)新生物ワクチン又は免疫原性組成物;及び(b)少なくとも1つのチェックポイント阻害薬を、それを必要としている対象に投与するステップを含み得る。投与は、連続的又は逐次的又は実質的に同じ時点又は実質的に同時であってもよい。例えば、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与と少なくとも1つのチェックポイント阻害薬の投与とは、ほぼ同じ時点又は実質的に同時であってもよい。或いは、対象又は患者が並行して進行する2つの異なる治療スケジュールを有するように、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与がワンタイムスケジュール(one time schedule)、例えば、毎週、隔週、3週間毎、毎月、隔月、1年の4分の1毎(3ヵ月毎)、1年の3分の1毎(4ヵ月毎)、5ヵ月毎、年2回(6ヵ月毎)、7ヵ月毎、8ヵ月毎、9ヵ月毎、10ヵ月毎、11ヵ月毎、毎年などであってもよく、且つ少なくとも1つのチェックポイント遮断阻害薬の投与が、そのチェックポイント遮断阻害薬に典型的な、異なるスケジュールであってもよく、並びに新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬の投与は逐次的又は連続的であってもよい。新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、有利には少なくとも4つの異なるネオ抗原を含み(及び異なる抗原とは、各抗原が異なるネオエピトープを有することが意図される)、例えば、少なくとも4又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は11又は12又は13又は14又は15又は16又は17又は18又は19又は20又は21又は22又は23又は24又は25又は26又は27又は28又は29又は30又は31又は32又は33又は34又は35又は36又は37又は38又は39又は40又はそれ以上の異なるネオ抗原が新生物ワクチン又は免疫原性組成物中にあってもよい。新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、各々がネオ抗原の一部を含有するサブ組成物によって投与することができ、サブ組成物は対象又は患者の異なる場所に投与することができる;例えば、20の異なるネオ抗原を含む組成物は、各々が20の異なるネオ抗原のうちの5つを含有する4つのサブ組成物で投与することができ、この4つのサブ組成物は、患者又は対象の流入領域リンパ節又はその近傍に各サブ組成物の送達を試みて、患者の流入領域リンパ節又はその近傍、例えば上下肢の各々(例えば、患者の各体側の大腿又は大腿上部又は殿部近傍又は腰部)に各サブ組成物の送達を試みるように投与することができる。当然ながら、位置の数、ひいてはサブ組成物の数は様々であってよく、例えば、当業者は、脾臓又はその近傍に第5の投与点を有するように投与を考えてもよく、当業者は、1つのみ、2つ又は3つ(例えば、各上肢及び片方の下肢、下肢の各々及び片方の上肢、下肢の各々及び上肢なし、又は両上肢のみ)が使用されるように位置を変えることができる。前述の様々な間隔で投与されるワクチン又は免疫原性組成物は異なる製剤であってもよく、単回投与の間に対象又は患者の異なる場所に投与されるサブ組成物は異なる組成物であってもよい。例えば、初回投与が全抗原ワクチン又は免疫原性組成物であってもよく、及び次の又は以降の投与が、インビボで1つ又は複数の抗原の発現を有するベクター(例えば、ウイルスベクター又はプラスミド)であってもよい。同様に、異なるサブ組成物を患者又は対象の異なる場所に投与するに際しては、一部のサブ組成物が全抗原を含んでもよく、及び一部のサブ組成物が、インビボで1つ又は複数の抗原の発現を有するベクター(例えば、ウイルスベクター又はプラスミド)を含んでもよい。また、一部の組成物及びサブ組成物が、インビボで1つ又は複数の抗原の発現を有するベクター(例えば、ウイルスベクター又はプラスミド)と全抗原との両方を含んでもよい。インビボで1つ又は複数の抗原の発現を有する一部のベクター(例えばポックスウイルス)は免疫刺激効果又はアジュバント効果を有することができ、ひいてはかかるベクターを含有する組成物又はサブ組成物は自己アジュバント性であり得る。また、投与によって免疫系に対する抗原の提示のされ方の性質を切り替えることにより、免疫系を「プライミング」し、次に「ブースト」することができる。また本文書では、「ワクチン」と言うとき、それは、本発明が免疫原性組成物を包含することが意図され、及び患者又は対象と言うとき、それは、かかる個体が本明細書に開示される治療、投与、組成物、及び概して本発明を必要としている患者又は対象であることが意図される。
【0012】
一実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つのネオ抗原ペプチドを含む。別の実施形態において、ネオ抗原ペプチドは約5~約50アミノ酸長の範囲である。別の関連する実施形態において、ネオ抗原ペプチドは約15~約35アミノ酸長の範囲である。典型的には、長さは約15又は20アミノ酸より大きく、例えば、15~50又は約75アミノ酸である。
【0013】
一実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物はpH調整剤と薬学的に許容可能な担体とをさらに含む。
【0014】
一実施形態において、本方法は、免疫調節薬又はアジュバントの投与をさらに含む(従ってワクチン又は免疫原性組成物は免疫調節薬又はアジュバントを含み得る)。別の関連する実施形態において、免疫調節薬又はアジュバントは、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクター系、PLGAマイクロパーティクル、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、及びAquila社のQS21 stimulonからなる群から選択される。別のさらなる実施形態において、免疫調節薬又はアジュバントはポリICLCである。
【0015】
これらのポリマーを水に溶解させると酸性溶液が生じ、これを好ましくは生理的pHに中和することにより、ワクチン又は免疫原性組成物又はその抗原若しくはベクターを配合するためのアジュバント溶液が得られる。このときポリマーのカルボキシル基は部分的にCOOである。
【0016】
好ましくは、本発明に係るアジュバントの溶液、特にカルボマーの溶液は、蒸留水中に好ましくは塩化ナトリウムの存在下で調製され、得られる溶液は酸性pHである。このストック溶液は、NaClなどの塩を入れた水、好ましくは生理食塩水(NaCl 9g/l)の(所望の終濃度に達するための)所要分量、又はその実質的な一部にそれを一度に又は幾つかの部分量ずつ加え、同時に又は続いて好ましくはNaOHなどの塩基で中和(pH7.3~7.4)することにより希釈される。この生理的pHの溶液は、特にフリーズドライ又は凍結乾燥形態で保存されたワクチンの再構成時に用いられる。
【0017】
最終的なワクチン組成物のポリマー濃度は、0.01%~2%w/v、より詳細には0.06~1%w/v、好ましくは0.1~0.6%w/vである。
【0018】
さらに、本発明は、任意のタイプの発現ベクター、例えばウイルス発現ベクター、例えば、ポックスウイルス(例えば、オルトポックスウイルス又はアビポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス、例えば改変ワクシニアアンカラ又はMVA、MVA-BN、国際公開第A-92/15672号パンフレットに係るNYVAC、鶏痘、例えば、TROVAX、カナリア痘、例えば、ALVAC(国際公開第A-95/27780号パンフレット及び国際公開第A-92/15672号パンフレット)、鳩痘、豚痘など)、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルス;又はプラスミド又はDNA又は核酸分子ベクターの使用に適用される。ポックスウイルスベクターなどの、細胞質である一部のベクターが有利であり得る。しかしながらアデノウイルス、AAV及びレンチウイルスもまた、本発明の実施における使用に有利であり得る。
【0019】
即時使用可能な、特に再構成されるワクチン又は免疫原性組成物において、ベクター、例えばウイルスベクターは、本開示及び当該技術分野における知識(本明細書に引用される特許及び科学文献にあるものなど)からの当業者の範囲内にある分量で存在する。
【0020】
全抗原又はベクター、例えば組換え生ワクチンは、概してその保存を可能にするフリーズドライ形態で存在し、使用直前に、本明細書で考察するとおりのアジュバントを含み得る溶媒又は賦形剤中に再構成される。
【0021】
従って本発明の主題はまた、別個に包装されたフリーズドライワクチンと、有利には本明細書で考察するとおりのアジュバント化合物を含む、フリーズドライワクチンの再構成用溶液とを含むワクチン接種又は免疫化セット又はキットである。
【0022】
本発明の主題はまた、本発明におけるワクチン又は免疫原性組成物を、例えば非経口経路、好ましくは皮下、筋肉内又は皮内経路によるか又は粘膜経路によって1つ以上の投与速度で投与するステップを含むか又はそれから本質的になるか又はそれからなるワクチン接種又は免疫化方法である。任意選択で、この方法は、フリーズドライワクチン又は免疫原性組成物(例えば、凍結乾燥全抗原又はベクターの場合)を、有利にはアジュバントも含む溶液に再構成する予備ステップを含む。
【0023】
一実施形態において、チェックポイント阻害薬はプログラム死1(PD-1)経路の阻害薬である。別の実施形態において、PD-1経路の阻害薬は抗PD1抗体である。関連する実施形態において、PD-1経路の阻害薬はニボルマブである。
【0024】
一実施形態において、チェックポイント阻害薬は抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)抗体である。関連する実施形態において、抗CTLA4抗体はイピリムマブ(Ipilumumab)又はトレメリムマブである。
【0025】
一実施形態において、対象は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎明細胞癌(ccRCC)、メラノーマ、肉腫、白血病又は膀胱癌、結腸癌、脳癌、乳癌、頭頸部癌、子宮内膜癌、肺癌、卵巣癌、膵癌又は前立腺癌からなる群から選択される新生物に罹患している。別の実施形態において、新生物は転移性である。さらなる実施形態において、対象は検出可能な新生物を有しないが、疾患再発リスクが高い。さらなる関連する実施形態において、対象は過去に自家造血幹細胞移植(AHSCT)を受けたことがある。
【0026】
一実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始前に開始される。一実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始後に開始される。一実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始と同時に開始される。
【0027】
別の実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は、チェックポイント阻害薬の初回投与後2~8週間おき又はそれ以上の週数おきに継続される。さらなる実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は、チェックポイント阻害薬の初回投与後2、3週間又は4、6週間又は8週間おきに継続される。別のさらなる実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与前1週間は保留される。なおも別のさらなる実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与中は保留される。
【0028】
一実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は腫瘍切除後に開始される。別の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与は腫瘍切除から1~15週間後に開始される。別のさらなる実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与は腫瘍切除から4~12週間後に開始される。
【0029】
一実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はプライム/ブースト投薬レジメンである。別の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はプライミングとして1、2、3又は4週目である。別のさらなる実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はブーストとして2、3、4又は5ヵ月目である。
【0030】
一実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物は、各ネオ抗原ペプチドに関して70kgの個体当たり約10μg~1mgの用量で投与される。別の実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物は、各ネオ抗原ペプチドに関して70kgの個体当たり約10μg~2000μgの平均週用量レベルで投与される。別のさらなる実施形態において、チェックポイント阻害薬は、約0.1~10mg/kgの用量で投与される。別の関連する実施形態において、投与は静脈内である。
【0031】
一実施形態において、抗CTLA4抗体は約1mg/kg~3mg/kgの用量で投与される。
【0032】
一実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物は静脈内投与又は皮下投与される。
【0033】
別の実施形態において、チェックポイント阻害薬は静脈内投与又は皮下投与される。
【0034】
別の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位の約2cm以内に皮下投与される。
【0035】
一実施形態において、チェックポイント阻害薬は、70kgの個体につき新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位当たり約0.1~1mgの用量で投与される。
【0036】
一実施形態において、本方法は、1つ以上の追加の薬剤の投与をさらに含む。別の実施形態において、追加の薬剤は、化学療法剤、抗血管新生剤及び免疫抑制を低減する薬剤からなる群から選択される。さらなる実施形態において、1つ以上の追加の薬剤は、1つ以上の抗グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子ファミリー受容体(GITR)アゴニスト抗体である。
【0037】
一実施形態において、本方法は、特定の癌に関する標準治療の範囲内で併用療法を投与するステップを含み得る。別の実施形態において、併用療法は、併用療法の追加が標準治療のステップと相乗的である場合に標準治療の範囲内で投与される。
【0038】
本発明は、米国特許出願公開第20110293637号明細書(参照により本明細書に援用される)にあるとおりの方法、例えば、複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドを同定して、投与時に複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドを対象の免疫系に提示する対象特異的免疫原性組成物を調製する方法であって、対象が腫瘍を有し、及び対象特異的ペプチドが対象及び対象の腫瘍に特異的であり、前記方法が、
(i)非腫瘍試料には存在しない複数の少なくとも4つの腫瘍特異的非サイレント突然変異を、
対象の腫瘍の試料の核酸配列決定及び
対象の非腫瘍試料の核酸配列決定
によることを含め、同定するステップと;
(ii)同定された非サイレント突然変異から、対象の腫瘍に特異的なエピトープである異なる腫瘍ネオエピトープを各々が有する複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドを、同定された複数の腫瘍特異的突然変異から選択するステップであって
各ネオエピトープは非腫瘍試料に存在しない腫瘍特異的非サイレント突然変異の発現産物であり、各ネオエピトープは対象のHLAタンパク質に結合し、
対象特異的ペプチドとHLAタンパク質の結合を決定するステップ
を含む、選択するステップと
(iii)投与時に複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドが対象の免疫系に提示されるように対象特異的免疫原性組成物を対象への投与用に製剤化するステップと
を含み、
選択するステップ又は製剤化するステップは、
対象特異的免疫原性組成物に、同定されたネオORFの発現産物を含む対象特異的ペプチドを含めるステップであって、ネオORFが、新規オープンリーディングフレームを作り出す非腫瘍試料に存在しない腫瘍特異的非サイレント突然変異である、ステップ、及び
対象特異的免疫原性組成物に、同定された点突然変異の発現産物を含み且つ対象のHLAタンパク質との結合性が500nM未満のIC50と決定される対象特異的ペプチドを含めるステップ
の少なくとも1つを含み、
それにより、複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドが同定され、及び投与時に対象の免疫系に複数の少なくとも4つの対象特異的ペプチドを提示する対象特異的免疫原性組成物(対象特異的ペプチドは対象及び対象の腫瘍に特異的である)が調製される、方法;又はネオ抗原の同定方法であって、
a.癌を有する対象の発現遺伝子における腫瘍特異的突然変異を同定するステップ;
b.ステップ(a)で同定された前記突然変異が点突然変異である場合:
i.ステップ(a)で同定された突然変異を有する変異ペプチドを同定するステップであって、前記変異ペプチドは野生型ペプチドより高い親和性でクラスI HLAタンパク質に結合し;及び500nm未満のIC50を有する、ステップ;
c.ステップ(a)で同定された前記突然変異がスプライス部位、フレームシフト、リードスルー又は遺伝子融合突然変異である場合:
i.ステップ(a)で同定された突然変異によってコードされる変異ポリペプチドを同定するステップであって、前記変異ポリペプチドはクラスI HLAタンパク質に結合する、ステップを含む方法;又は対象において腫瘍特異的免疫応答を誘導する方法であって、同定された1つ以上のペプチド又はポリペプチドとアジュバントとを投与するステップを含む方法;又は癌に関して対象をワクチン接種するか又は治療する方法であって、
a.対象の発現遺伝子における複数の腫瘍特異的突然変異を同定するステップであって、前記同定された突然変異が:
i.点突然変異であるとき、その点突然変異を有する変異ペプチドをさらに同定するステップ;及び/又は
ii.スプライス部位、フレームシフト、リードスルー又は遺伝子融合突然変異であるとき、その突然変異によってコードされる変異ポリペプチドをさらに同定するステップ;
b.クラスI HLAタンパク質に結合するステップ(a)で同定された1つ以上の変異ペプチド又はポリペプチドを選択するステップ;
c.抗腫瘍CD8 T細胞を活性化させる能力を有するステップ(b)で同定された1つ以上の変異ペプチド又はポリペプチドを選択するステップ;及び
d.ステップ(c)で選択された1つ以上のペプチド又はポリペプチド、1つ以上のペプチド又はポリペプチドでパルスした自家樹状細胞又は抗原提示細胞を対象に投与するステップ;又はある1つ又は複数の同定されたペプチドを含む医薬組成物を調製するステップを含む方法を実施すること、及び本明細書で考察するとおりの1つ又は複数の方法を実施することを含む。従って、本明細書における新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、米国特許出願公開第20110293637号明細書にあるとおりであってもよい。
【0039】
従って、本発明の目的は、本出願人らが権利を留保し、且つ任意の以前に公知の製品、プロセス、又は方法のディスクレーマー(disclaimer)を本明細書によって開示するように、以前に公知のいかなる製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法も本発明の範囲内に包含しないことである。さらに、本発明は、本出願人らが権利を留保し、且つ任意の以前に記載された製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法のディスクレーマー(disclaimer)を本明細書によって開示するように、米国特許商標庁(USPTO)(米国特許法第112条第一段落)又は欧州特許庁(EPO)(EPC第83条)の明細書の記載及び実施可能要件を満たさないいかなる製品、製品の作製プロセス、又は製品の使用方法も本発明の範囲内に包含しないよう意図されることが注記される。
【0040】
本開示及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、「含む(comprises)」、「含まれた(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、米国特許法に帰する意味を有し得る;例えば、それらは、「包含する(includes)」、「包含された(included)」、「包含している(including)」などを意味し得ること;及び「~から本質的になっている(consisting essentially of)」及び「~から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法に帰する意味を有し、例えば、それらは明示的に記載されない要素を許容するが、先行技術に見られる要素又は本発明の基本的な若しくは新規の特徴に影響を与える要素は除外することが注記される。
【0041】
これら及び他の実施形態が開示され、又は以下の詳細な説明から明らかであり、及びそこに包含される。
【0042】
本特許又は出願書類には、少なくとも1つのカラーで作成された図面が含まれる。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公報の写しは、請求に応じて必要な手数料が支払われ次第当局によって提供される。
【0043】
以下の詳細な説明は、本発明を記載される具体的な実施形態のみに限定することは意図せず、例として提供されるものであり、参照により本明細書に援用される添付の図面と併せることで最良に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】個別化された癌ワクチン又は免疫原性組成物の作製のフロープロセスを示す。
図2】メラノーマ患者用の癌ワクチン又は免疫原性組成物を作成するための治療前ステップのフロープロセスを示す。
図3】本発明の例示的実施形態に係る、プライムブースト法に基づく免疫スケジュールを示す。
図4】本発明の例示的態様に係る、一次免疫学的エンドポイントを指示するタイムラインを示す。
図5】本発明の例示的実施形態に係る、局所免疫抑制の軽減を新規免疫の刺激と組み合わせた併用を評価するチェックポイント遮断抗体との共療法の投与に関するタイムラインを示す。このスキームに示すとおり、チェックポイント遮断療法、例えばここで示すとおりの抗PDL1の適切な候補として参加する患者は、参加して直ちに抗体で治療され、その間にワクチン又は免疫原性組成物が調製され得る。次に患者はワクチン接種を受け得る。ワクチン接種のプライミング相が行われる間、チェックポイント遮断抗体の投与は継続されてもよく、又は延期される可能性もあり得る。
図6】本発明の例示的実施形態に係る、個別のネオ抗原ペプチドを4つのサブグループのプールにする製剤処理を示す略図を示す。
図7】ネオ抗原製剤を使用してマウス樹状細胞を刺激した後の複数の主要免疫マーカーの誘導レベルを評価する定量的PCRの結果を示す。
図8】試験1:非ホジキンリンパ腫におけるAHSCT後のニボルマブ対ニボルマブ及びNeoVaxの図式的概略である。
図9】試験2:転移性メラノーマ及び転移性RCCにおけるニボルマブ及びNeoVaxの図式的概略である。
図10A図10Aは、4つの試験の概略を示す。(A)試験3aは、転移性メラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(B)試験3bは、転移性メラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。(C)試験3cは、高リスクメラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(D)試験3dは、高リスクメラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。
図10B図10Bは、4つの試験の概略を示す。(A)試験3aは、転移性メラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(B)試験3bは、転移性メラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。(C)試験3cは、高リスクメラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(D)試験3dは、高リスクメラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。
図10C図10Cは、4つの試験の概略を示す。(A)試験3aは、転移性メラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(B)試験3bは、転移性メラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。(C)試験3cは、高リスクメラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(D)試験3dは、高リスクメラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。
図10D図10Dは、4つの試験の概略を示す。(A)試験3aは、転移性メラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(B)試験3bは、転移性メラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。(C)試験3cは、高リスクメラノーマにおける強度軽減静脈内イピリムマブの用量漸増を示す。(D)試験3dは、高リスクメラノーマにおける皮下イピリムマブ(局所)の用量漸増を示す。
図11】NeoVaxとイピリムマブとを併用して高リスク腎細胞癌を治療する試験スキームを示す。
図12】NeoVaxとイピリムマブとを併用して高リスク腎細胞癌を治療する試験の治療スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本発明の理解を助けるため、本明細書にいくつかの用語及び語句を定義する。
【0046】
具体的に記載されるか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用されるとき、用語「約」は、当該技術分野における通常の許容差の範囲内、例えば平均値の2標準偏差以内であると理解される。約は、記載される値の50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。文脈から別段明らかでない限り、本明細書に提供される全ての数値が約の用語によって修飾されている。
【0047】
具体的に記載されるか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用されるとき、用語「又は」は、包含的であるものと理解される。具体的に記載されるか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用されるとき、用語「a」、「an」、及び「the」は、単数形又は複数形であるものと理解される。
【0048】
「薬剤」とは、任意の小分子化学的化合物、抗体、核酸分子、又はポリペプチド、又はそれらの断片が意味される。
【0049】
免疫チェックポイントは、免疫応答を失速又は停止させ、且つ免疫細胞の制御されない活性による過度の組織損傷を保護する阻害経路である。「チェックポイント阻害薬」とは、阻害経路を阻害して、より広範な免疫活性を可能にする任意の小分子化学的化合物、抗体、核酸分子、又はポリペプチド、又はその断片を指すことが意図される。特定の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、プログラム死1(PD-1)経路の阻害薬、例えば抗PD1抗体、例えば限定はされないが、ニボルマブである。他の実施形態では、チェックポイント阻害薬は抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)抗体である。さらなる実施形態において、チェックポイント阻害薬は、CD28CTLA4 Igスーパーファミリーの別のメンバー、例えば、BTLA、LAG3、ICOS、PDL1又はKIRに標的化される Page et al.,Annual Review of Medicine 65:27(2014))。さらなる別の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、CD40、OX40、CD137、GITR、CD27又はTIM-3などのTNFRスーパーファミリーのメンバーに標的化される。ある場合には、チェックポイント阻害薬の標的化は、阻害抗体又は同様の分子によって達成される。他の場合には、それは標的に対するアゴニストによって達成される;このクラスの例としては、刺激標的OX40及びGITRが挙げられる。
【0050】
用語「併用」は、療法剤の1つ以上の共作用から有益な(相加的又は相乗的な)効果をもたらすことを意図した治療レジメンの一環としての、新生物ワクチン又は免疫原性組成物(例えば新生物/腫瘍特異的ネオ抗原のプール試料)と1つ以上のチェックポイント阻害薬との投与を包含する。併用にはまた、1つ以上の追加の薬剤、例えば、限定はされないが、化学療法剤、抗血管新生剤及び免疫抑制を低減する薬剤も含まれ得る。併用の有益な効果には、限定はされないが、療法剤の併用によって生じる薬物動態学的又は薬力学的共作用が含まれる。これらの療法剤の併用投与は、典型的には、規定の期間(例えば、選択の併用に応じて数分間、数時間、数日間、又は数週間)にわたって行われる。
【0051】
「併用療法」は、これらの療法剤の逐次的な形での投与、即ち各療法剤が異なる時点で投与される投与、並びにこれらの療法剤、又は療法剤のうちの少なくとも2つの投与が実質的に同時に行われる形での投与を包含することが意図される。実質的に同時の投与は、例えば、一定比率の各療法剤を有する単一カプセルか、又は療法剤の各々の単一カプセル複数個を対象に投与することにより達成し得る。例えば、本発明の1つの併用は、同じ又は異なる時点で投与される腫瘍特異的ネオ抗原のプール試料とチェックポイント阻害薬とを含んでもよく、又はそれらは、2つの化合物を含む単一の共製剤化された医薬組成物として製剤化することができる。別の例として、本発明の併用(例えば、腫瘍特異的ネオ抗原のプール試料とチェックポイント阻害薬及び/又は抗CTLA4抗体)は、同じ又は異なる時点で投与することのできる別個の医薬組成物として製剤化されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語「同時に」とは、同じ時点における1つ以上の薬剤の投与を指すことが意図される。例えば、特定の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及びチェックポイント阻害薬は同時に投与される。同時に、というなかには、同時期的な、即ち同じ期間内における投与が含まれる。特定の実施形態において、1つ以上の薬剤は、同じ時間に同時に、又は同じ日に同時に投与される。各療法剤の逐次的な又は実質的に同時の投与は、限定はされないが、経口経路、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、粘膜組織(例えば、鼻、口、腟、及び直腸)からの直接吸収、及び眼内経路(例えば、硝子体内、眼球内等)を含めた任意の適切な経路によって達成することができる。療法剤の投与は同じ経路によっても、又は異なる経路によってもよい。例えば、特定の併用の1つの成分が静脈内注射によって投与されてもよく、一方、併用の他の1つ又は複数の成分が経口投与されてもよい。これらの成分は、任意の治療上有効な順序で投与され得る。語句「併用」は、併用療法の一環として有用な化合物群又は非薬物療法群を包含する。
【0052】
用語「ネオ抗原」又は「ネオ抗原性の」は、ゲノムがコードするタンパク質のアミノ酸配列を改変する1つ又は複数の腫瘍特異的突然変異によって生じる腫瘍抗原クラスを意味する。
【0053】
「新生物」とは、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、又はその両方によって引き起こされるか又はそれをもたらす任意の疾患が意味される。例えば癌は、新生物の例である。癌の例としては、限定なしに、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び固形腫瘍、例えば肉腫及び癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管(nile duct)癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫(oligodenroglioma)、シュワン腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)が挙げられる。リンパ増殖性障害もまた増殖性疾患と考えられる。
【0054】
用語「新生物ワクチン」は、新生物/腫瘍特異的ネオ抗原、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又はそれ以上のネオ抗原ペプチドのプール試料を指すことが意図される。「ワクチン」は、疾患(例えば、新生物/腫瘍)の予防及び/又は治療用の免疫を生じさせる組成物を意味するものと理解されるべきである。従って、ワクチンは、抗原を含む薬剤であって、ヒト又は動物においてワクチン接種により特定の防御及び保護物質を生じさせるために使用されることが意図される薬剤である。「新生物ワクチン組成物」は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤を含み得る。
【0055】
用語「薬学的に許容可能」は、ヒトを含めた動物における使用が連邦政府又は州政府の規制当局によって承認済み又は承認見込みであるか、或いは米国薬局方又は他の一般に認められている薬局方に収載されていることを指す。
【0056】
「薬学的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤」は、対象に薬剤と共に投与することのできる、且つ治療量の薬剤を送達するのに十分な用量で投与したときにも薬剤の薬理活性を損なわず非毒性である賦形剤、担体又は希釈剤を指す。
【0057】
本明細書に記載されるとおりのプールされた腫瘍特異的ネオ抗原の「薬学的に許容可能な塩」は、ヒト又は動物の組織と接触して使用しても過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症なしに好適であると当該技術分野で一般に考えられている酸性塩又は塩基性塩であってもよい。かかる塩としては、アミンなどの塩基性残基の無機塩類及び有機酸塩類、並びにカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩類又は有機塩類が挙げられる。具体的な薬学的塩としては、限定はされないが、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、アルカン酸、例えば、酢酸、HOOC-(CH-COOH(式中、nは0~4である)などの酸の塩が挙げられる。同様に、薬学的に許容可能なカチオンとしては、限定はされないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムが挙げられる。当業者は、本開示及び当該技術分野における知識から、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,p.1418(1985)に掲載されるものを含め、本明細書に提供されるプールされた腫瘍特異的ネオ抗原のさらなる薬学的に許容可能な塩を認識するであろう。一般に、薬学的に許容可能な酸性塩又は塩基性塩は、任意の従来の化学的方法により、塩基部分又は酸部分を含有する親化合物から合成することができる。簡潔に言えば、かかる塩は、遊離酸又は遊離塩基の形態のこれらの化合物を適切な溶媒中で化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製し得る。
【0058】
「ポリペプチド」又は「ペプチド」とは、天然でそれに付随する成分から分離されているポリペプチドが意味される。典型的には、ポリペプチドに天然でそれと結び付いているタンパク質及び天然に存在する有機分子の少なくとも60重量%が存在しないとき、そのポリペプチドは単離されている。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、及び最も好ましくは少なくとも99重量%がポリペプチドである。単離ポリペプチドは、例えば、天然の供給源から抽出することによるか、かかるポリペプチドをコードする組換え核酸を発現させることによるか;又はタンパク質を化学的に合成することによって入手し得る。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるか、又はHPLC分析によって計測することができる。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「予防する」、「予防している」、「予防」、「予防的治療」などは、疾患又は病態に罹っていないが、それを発症するリスクがある又はそれを発症し易い対象において疾患又は病態が発症する可能性を低減することを指す。
【0060】
用語「プライム/ブースト」又は「プライム/ブースト投薬レジメン」は、ワクチン又は免疫原性若しくは免疫学的組成物の逐次投与を指すことが意図される。プライミング投与(プライミング)は、最初のワクチン又は免疫原性若しくは免疫学的組成物タイプの投与であり、1回、2回以上の投与を含み得る。ブースト投与は、2番目のワクチン又は免疫原性若しくは免疫学的組成物タイプの投与であり、1回、2回以上の投与を含み得るとともに、例えば、年1回の投与を含み得るか、又はそれから本質的になり得る。特定の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はプライム/ブースト投薬レジメンである。
【0061】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内の全ての値の省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲、並びに前述の整数の間に介在する全ての小数値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9などを含むものと理解される。部分範囲に関して、その範囲のいずれかの端点から延びる「入れ子の部分範囲」が特に企図される。例えば、1~50の例示的範囲の入れ子の部分範囲は、一方の向きに1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方の向きに50~40、50~30、50~20、及び50~10を含み得る。
【0062】
「受容体」は、リガンド結合能を有する生体分子又は分子分類を意味すると理解されるべきである。受容体は、細胞、細胞形成又は生物において情報を伝達する働きをし得る。受容体は少なくとも1つの受容体単位を含み、2つ以上の受容体単位を含むことが多く、ここで各受容体単位は、タンパク質分子、詳細には糖タンパク質分子からなり得る。受容体はリガンドの構造を補完する構造を有し、リガンドを結合パートナーとして複合体を形成し得る。細胞の表面上でリガンドと結合した後、受容体の立体構造が変化することによってシグナル情報が伝達され得る。本発明によれば、受容体は、リガンド、詳細には好適な長さのペプチド又はペプチド断片と受容体/リガンド複合体を形成する能力を有するMHCクラスI及びIIの特定のタンパク質を指し得る。
【0063】
用語「対象」は、治療、観察、又は実験の対象となる動物を指す。単に例として、対象には、限定はされないが、哺乳動物、例えば限定はされないがヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコが含まれる。
【0064】
用語「治療する」、「治療された」、「治療すること」、「治療」などは、障害及び/又はそれに関連する症状(例えば、新生物又は腫瘍)の低減又は改善を指すことが意図される。「治療すること」とは、癌の発症後、又は発症が疑われた後の対象に対する併用療法の投与を指し得る。「治療すること」には、「軽減する」という概念が含まれ、軽減とは、癌に関連する任意の症状又は他の病的影響及び/又は癌療法に関連する副作用の発生若しくは再発頻度、又は重症度を低下させることを指す。用語「治療すること」にはまた、「管理する」という概念も包含され、管理とは、患者における特定の疾患又は障害の重症度を低減すること又はその再発を遅延させること、例えば疾患に罹患していたことのある患者の寛解期間を延長させることを指す。除外されるわけではないが、障害又は病態を治療するとは、障害、病態、又はそれに関連する症状の完全な消失を要するものではないことが理解される。
【0065】
用語「治療効果」は、障害(例えば、新生物又は腫瘍)の症状の1つ以上又はそれに関連する病理の何らかの軽減程度を指す。「治療有効量」は、本明細書で使用されるとき、かかる治療がない場合に予想される以上に、かかる障害を有する患者の生存を延ばし、障害の1つ以上の徴候又は症状を低減し、予防し又は遅延させるなどにおいて細胞又は対象への単回又は頻回用量投与時に有効となる薬剤の量を指す。「治療有効量」は、治療効果を実現するために必要な量の適格性を決めることが意図される。当該技術分野の通常の技術を有する医師又は獣医師は、必要な医薬組成物の「治療有効量」(例えば、ED50)を容易に決定し及び処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成物中に用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要な用量より低いレベルで開始し、所望の効果が実現するまで投薬量を徐々に増加させてもよい。
【0066】
本明細書の可変基の任意の定義における化学基のリストの記載には、列挙される基の任意の単一の基又は組み合わせとしての当該可変基の定義が含まれる。本明細書における可変基又は態様に関する実施形態の記載には、任意の単一の実施形態としての実施形態又は任意の他の実施形態若しくはその一部と組み合わせた実施形態が含まれる。
【0067】
本明細書に提供される任意の組成物又は方法は、本明細書に提供される他の組成物及び方法のいずれかの1つ以上と組み合わせることができる。
【0068】
本明細書に開示される併用療法は、各種の癌を治療するための新規方法をなす。本明細書に記載される併用療法はまた、許容できないレベルの副作用を伴うことなく臨床的有益性を実現するための治療方法も提供する。
【0069】
本発明は、複数の新生物/腫瘍特異的ネオ抗原を含む新生物ワクチン又は免疫原性組成物と少なくとも1つのチェックポイント阻害薬とを対象に投与することにより、新生物、より詳細には腫瘍を治療する方法に関する。
【0070】
本明細書にさらに詳細に記載するとおり、全ゲノム/エクソームシーケンシングを用いて個々の患者の新生物/腫瘍にユニークに存在する全ての又はほぼ全ての突然変異ネオ抗原を同定することができ、この一群の突然変異ネオ抗原を分析することにより、患者の新生物/腫瘍を治療するための個別化された癌ワクチン又は免疫原性組成物として使用される特異的な最適化されたネオ抗原サブセットを同定し得る。例えば、各患者の新生物/腫瘍及び正常DNAをシーケンシングして腫瘍特異的突然変異を同定することにより、新生物/腫瘍特異的ネオ抗原の集団を同定してもよく、及び患者のHLAアロタイプを同定することができる。次に新生物/腫瘍特異的ネオ抗原及びそれらのコグネイト天然抗原の集団を、バリデートされたアルゴリズムを使用してどの腫瘍特異的突然変異が患者のHLAアロタイプに結合し得るエピトープを作り出すかを予測するバイオインフォマティクス解析に供し得る。この解析に基づき、患者毎にそれらの突然変異のサブセットに対応する複数のペプチドが設計及び合成され、患者を免疫する際の癌ワクチン又は免疫原性組成物として使用するためまとめてプールされ得る。
【0071】
免疫系は、2つの機能的サブシステムに分類することができる:自然免疫系及び獲得免疫系。自然免疫系は感染に対する防御の最前線であり、最も潜在的能力のある病原体が、例えば認識し得る感染を引き起こし得る前にこの系によって速やかに中和される。獲得免疫系は、抗原と称される、侵入生物の分子構造に応答する。獲得免疫応答には、体液性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答を含む2種類がある。体液性免疫応答では、B細胞によって体液中に分泌される抗体が病原体由来抗原に結合し、種々の機序、例えば補体媒介性溶解を介した病原体の排除をもたらす。細胞媒介性免疫応答では、他の細胞を破壊する能力を有するT細胞が活性化される。例えば、疾患に関連するタンパク質が細胞中に存在する場合、それらのタンパク質が細胞内でタンパク質分解によってペプチドに断片化される。次にこのように形成された抗原又はペプチドに特定の細胞タンパク質が付着してそれらを細胞の表面に輸送し、そこでそれらの抗原又はペプチドが身体の分子防御機構、詳細にはT細胞に提示される。細胞傷害性T細胞はこれらの抗原を認識し、そうした抗原を有する細胞を死滅させる。
【0072】
ペプチドを細胞表面に輸送して提示する分子は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のタンパク質と称される。MHCタンパク質は、MHCクラスI及びMHCクラスIIと称される2種類に分類される。これらの2つのMHCクラスのタンパク質の構造は極めて類似している;しかしながら、これらは非常に異なる機能を有する。MHCクラスIのタンパク質は、多くの腫瘍細胞を含め、体のほぼ全ての細胞の表面上に存在する。MHCクラスIタンパク質には、通常、内因性タンパク質由来又は細胞内に存在する病原体由来の抗原が負荷され、次にそれがナイーブ又は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示される。MHCクラスIIタンパク質は、樹状細胞、Bリンパ球、マクロファージ及び他の抗原提示細胞上に存在する。MHCクラスIIタンパク質は主に、外部抗原供給源から、即ち細胞の外側でプロセシングされるペプチドをTヘルパー(Th)細胞に提示する。MHCクラスIタンパク質が結合するペプチドのほとんどは、生物自身の健常宿主細胞に生じる細胞質タンパク質に由来し、通常は免疫応答を刺激しない。従って、クラスIのかかる自己ペプチド提示MHC分子を認識する細胞傷害性Tリンパ球は胸腺(中枢性トレランス)で除去されるか、又は胸腺から放出された後に除去又は不活性化され、即ち寛容化される(末梢性トレランス)。MHC分子は、非寛容化Tリンパ球にペプチドを提示するとき、免疫応答を刺激する能力を有する。細胞傷害性Tリンパ球は、その表面にT細胞受容体(TCR)及びCD8分子の両方を有する。T細胞受容体は、MHCクラスIの分子と複合体化したペプチドを認識及び結合する能力を有する。各細胞傷害性Tリンパ球は、特異的なMHC/ペプチド複合体との結合能を有するユニークなT細胞受容体を発現する。
【0073】
ペプチド抗原は、細胞表面に提示される前に、小胞体内で競合的親和性結合によってMHCクラスIの分子に付着する。ここで、個々のペプチド抗原の親和性は、そのアミノ酸配列及びアミノ酸配列内の定義された位置における特異的結合モチーフの存在に直接関係する。かかるペプチドの配列が分かっている場合、罹患細胞に対する免疫系を、例えばペプチドワクチンを使用して操作することが可能である。
【0074】
治癒的且つ腫瘍特異的免疫療法の開発を妨げる重大な障害の一つは、自己免疫を回避するための高度に特異的且つ制限的な腫瘍抗原の同定及び選択である。悪性細胞内での遺伝子変化(例えば、逆位、転座、欠失、ミスセンス突然変異、スプライス部位突然変異等)の結果として生じる腫瘍ネオ抗原は、最も腫瘍特異的な抗原クラスに相当する。ネオ抗原は、その同定、最適化されたネオ抗原の選択、及びワクチン又は免疫原性組成物に使用されるネオ抗原の作製が技術的に困難であるため、癌ワクチン又は免疫原性組成物に使用されることはほとんどなかった。これらの問題は以下によって対処され得る:
・各患者の対応する生殖系列試料に対する腫瘍の全ゲノム、全エクソーム(例えば、捕捉されたエクソンのみ)、又はRNAシーケンシングを用いてDNAレベルで新生物/腫瘍における全ての又はほぼ全ての突然変異を同定すること;
・同定された突然変異を1つ以上のペプチド-MHC結合予測アルゴリズムで解析し、新生物/腫瘍内で発現する、且つ患者HLA対立遺伝子と結合し得る複数の候補ネオ抗原T細胞エピトープを作成すること;及び
・一組の全ネオORFペプチド及び予測結合ペプチドから選択された複数の候補ネオ抗原ペプチドを、癌ワクチン又は免疫原性組成物に使用するため合成すること。
【0075】
本明細書に記載されるとおり、動物及びヒトの両方において、免疫応答の誘導に突然変異エピトープが有効であること及び自然腫瘍退縮又は長期生存の症例が突然変異エピトープに対するCD8+ T細胞応答と相関すること(Buckwalter and Srivastava PK.「「それが抗原である、ばかげたことに」及びヒト癌のワクチン療法の10年にわたる他のレッスン(“It is the antigen(s),stupid” and other lessons from over a decade of vaccitherapy of human cancer)」.Seminars in immunology 20:296-300(2008);Karanikas et al,「長期生存肺癌患者の血中におけるHLA四量体で検出可能な腫瘍特異的突然変異抗原に対する細胞溶解性Tリンパ球の高頻度(High frequency of cytolytic T lymphocytes directed against a tumor-specific mutated antigen detectable with HLA tetramers in the blood of a lung carcinoma patient with long survival)」.Cancer Res.61:3718-3724(2001);Lennerz et al,「ヒトメラノーマに対する自己T細胞の応答は突然変異ネオ抗原によって支配される(The response of autologous T cells to a human melanoma is dominated by mutated neo-antigens)」.Proc Natl Acad Sci U S A.102:16013(2005))及びマウス及びヒトにおける優勢な突然変異抗原の発現の改変に対する「免疫編集」を追跡し得ること(Matsushita et al,「癌エクソーム解析は癌免疫編集のT細胞依存性機序を明らかにする(Cancer exome analysis reveals a T-cell-dependent mechanism of cancer immunoediting)」 Nature 482:400(2012);DuPage et al,「腫瘍特異的抗原の発現が癌免疫編集の根底にある(Expression of tumor-specific antigens underlies cancer immunoediting)」 Nature 482:405(2012);及びSampson et al,「新しく診断された膠芽腫患者の上皮成長因子受容体変異体IIIペプチドワクチン接種に伴う長期無進行生存後の免疫エスケープ(Immunologic escape after prolonged progression-free survival with epidermal growth factor receptor variant III peptide vaccination in patients with newly diagnosed glioblastoma)」 J Clin Oncol.28:4722-4729(2010))のエビデンスが多数ある。一実施形態において、癌患者の突然変異エピトープが決定される。
【0076】
一実施形態において、突然変異エピトープは、癌患者由来の腫瘍組織及び健常組織のゲノム及び/又はエクソームを次世代シーケンシング技術を用いてシーケンシングすることにより決定される。別の実施形態において、その突然変異頻度及びネオ抗原として働く能力に基づき選択される遺伝子が、次世代シーケンシング技術を用いてシーケンシングされる。次世代シーケンシングは、ゲノムシーケンシング、ゲノムリシーケンシング、トランスクリプトームプロファイリング(RNA-Seq)、DNA-タンパク質相互作用(ChIPシーケンシング)、及びエピゲノムキャラクタリゼーションに当てはまる(de Magalhaes JP,Finch CE,Janssens G(2010).「加齢研究における次世代シーケンシング:新たに現れつつある手法、問題、落とし穴及び可能な解決法(Next-generation sequencing in aging research:emerging applications,problems,pitfalls and possible solutions)」.Ageing Research Reviews 9(3):315-323;Hall N(May 2007).「最新シーケンシング技術及び微生物学におけるその広範な影響(Advanced sequencing technologies and their wider impact in microbiology)」.J.Exp.Biol.209(Pt 9):1518-1525;Church GM(January 2006).「皆のためのゲノム(Genomes for all)」.Sci.Am.294(1):46-54;ten Bosch JR,Grody WW(2008).「次世代の最新情報(Keeping Up with the Next Generation)」.The Journal of Molecular Diagnostics 10(6):484-492;Tucker T,Marra M,Friedman JM(2009).「超並列シーケンシング:ゲノムマシーンにおける次なる目玉(Massively Parallel Sequencing:The Next Big Thing in Genetic Medicine)」.The American Journal of Human Genetics 85(2):142-154)。次世代シーケンシングは、現在、個々の腫瘍におけるコード突然変異、最も一般的には単一アミノ酸変化(例えばミスセンス突然変異)及び頻度は低いが、フレームシフト挿入/欠失/遺伝子融合、終止コドンにおけるリードスルー突然変異、及び不適切にスプライスされたイントロンの翻訳(例えば、ネオORF)により生成されるアミノ酸の新規ストレッチなど、特徴的な突然変異の存在を迅速に明らかにすることができる。ネオORFは、その配列の全体が免疫系にとって完全に新規であり、従ってウイルス性又は細菌性外来抗原に類似しているため、免疫原として特に有益である。従って、ネオORFは:(1)腫瘍に対して高度に特異的である(即ちいかなる正常細胞においても発現がない);(2)中枢性トレランスを回避し、それによりネオ抗原特異的CTLの前駆体頻度を増加させることができる。例えば、最近、ヒトパピローマウイルス(HPV)から誘導されたペプチドで、治療的抗癌ワクチン又は免疫原性組成物において類似外来配列を利用する力が実証された。ウイルス性癌遺伝子E6及びE7に由来するHPVペプチド混合物のワクチン接種を3~4回受けた新生物発生前のウイルス誘導性疾患を有する19人の患者の約50%が、完全寛解を24ヶ月以上維持した(Kenter et a,「外陰上皮内新生物に関するHPV-16オンコプロテインに対するワクチン接種(Vaccination against HPV-16 Oncoproteins for Vulvar Intraepithelial Neoplasia)」 NEJM 361:1838(2009))。
【0077】
シーケンシング技術により、腫瘍は各々、遺伝子のタンパク質コード内容を改変する複数の患者特異的突然変異を含むことが明らかになっている。かかる突然変異は、単一アミノ酸変化(ミスセンス突然変異によって引き起こされる)から、フレームシフト、終止コドンのリードスルー又はイントロン領域の翻訳(新規オープンリーディングフレーム突然変異;ネオORF)に起因する新規アミノ酸配列の長い領域の付加にまで及ぶ改変タンパク質を作り出す。これらの突然変異タンパク質は、天然タンパク質と異なり自己トレランスの免疫減弱効果を受けないため、腫瘍に対する宿主の免疫応答にとって有用な標的である。従って、突然変異タンパク質は免疫原性である可能性が一層高く、また患者の正常細胞と比較して腫瘍細胞に対する特異性もより高い。
【0078】
腫瘍特異的ネオ抗原を同定する代替的方法は、タンパク質の直接シーケンシングである。タンデム質量分析法(MS/MS))を含めた多次元MS技法(MSn)を用いる酵素消化物のタンパク質シーケンシングもまた、本発明のネオ抗原の同定に用いることができる。かかるプロテオミクス手法は、迅速で高度に自動化された解析を可能にする(例えば、K.Gevaert and J.Vandekerckhove,Electrophoresis 21:1145-1154(2000)を参照)。さらに、本発明の範囲内で、未知のタンパク質のハイスループットデノボシーケンシング方法を用いて患者の腫瘍のプロテオームを解析し、発現したネオ抗原を同定し得ることが企図される。例えば、メタショットガンタンパク質シーケンシングを用いて発現したネオ抗原を同定し得る(例えば、Guthals et al.(2012)「メタコンティグアセンブリによるショットガンタンパク質シーケンシング(Shotgun Protein Sequencing with Meta-contig Assembly)」,Molecular and Cellular Proteomics 11(10):1084-96を参照)。
【0079】
腫瘍特異的ネオ抗原はまた、MHC多量体を使用してネオ抗原特異的T細胞応答を同定することにより同定してもよい。例えば、患者試料におけるネオ抗原特異的T細胞応答のハイスループット解析を、MHC四量体ベースのスクリーニング技法を用いて実施してもよい(例えば、Hombrink et al.(2011)「MHC四量体ベースのスクリーニングによる潜在的マイナー組織適合抗原のハイスループット同定:実現可能性と限界(High-Throughput Identification of Potential Minor Histocompatibility Antigens by MHC Tetramer-Based Screening:Feasibility and Limitations)」6(8):1-11;Hadrup et al.(2009)「MHC多量体の多次元コーディングによる抗原特異的T細胞応答の並列検出(Parallel detection of antigen-specific T-cell responses by multidimensional encoding of MHC multimers)」,Nature Methods,6(7):520-26;van Rooij et al.(2013)「腫瘍エクソーム解析がイピリムマブ応答性メラノーマにおけるネオ抗原特異的T細胞応答性を明らかにする(Tumor exome analysis reveals neoantigen-specific T-cell reactivity in an Ipilimumab-responsive melanoma)」,Journal of Clinical Oncology,31:1-4;及びHeemskerk et al.(2013)「癌アンチゲノム(The cancer antigenome)」,EMBO Journal,32(2):194-203を参照)。かかる四量体ベースのスクリーニング技法は腫瘍特異的ネオ抗原の初期同定に用いられるか、或いは患者がどのようなネオ抗原に既に曝露されたことがあるかを評価する二次スクリーニングプロトコルとして用いられ、それにより本発明の候補ネオ抗原の選択を促進し得る。
【0080】
一実施形態において、癌患者における突然変異の存在を決定することから得られるシーケンシングデータを分析して、個人のHLA分子に結合し得る個人的な突然変異ペプチドが予測される。一実施形態において、データはコンピュータを使用して分析される。別の実施形態において、配列データはネオ抗原の存在に関して分析される。一実施形態において、ネオ抗原は、MHC分子に対するその親和性によって決定される。どの特定の突然変異を免疫原として利用するべきかを効率的に選択するには、患者HLA型の同定と、どの突然変異ペプチドが患者のHLA対立遺伝子に効率的に結合し得るかを予測する能力とが必要である。近年、バリデートされた結合及び非結合ペプチドによるニューラルネットワークベースの学習手法によって、主要HLA-A及び-B対立遺伝子に関する予測アルゴリズムの精度が進歩している。どのミスセンス突然変異が患者のコグネイトMHC分子に対する強力な結合ペプチドを生じるかを予測する近年改良されたアルゴリズムを利用して、各患者に最適な突然変異エピトープ(ネオORF及びミスセンスの両方)を代表する一組のペプチドを同定し、優先順位を付けることができる(Zhang et al,「免疫学における機械学習競争-HLAクラスI結合ペプチドの予測(Machine learning competition in immunology-Prediction of HLA class I binding peptides)」 J Immunol Methods 374:1(2011);Lundegaard et al 「ニューラルネットワークベースの方法を用いたエピトープの予測(Prediction of epitopes using neural network based methods)」 J Immunol Methods 374:26(2011))。
【0081】
現実に可能な限り多くの突然変異エピトープを標的にすることにより、免疫系の多大な能力が活用され、特定の免疫標的化遺伝子産物の下方制御による免疫エスケープの機会が阻止され、及びエピトープ予測手法の既知の不正確さが補償される。合成ペプチドは、複数の免疫原を効率的に調製し且つ突然変異体エピトープの同定を有効なワクチン又は免疫原性組成物に迅速に変えるための特に有用な手段を提供する。ペプチドは夾雑細菌又は動物性物質を含有しない試薬を利用して容易に化学的に合成し、簡単に精製することができる。サイズが小さいため、タンパク質の突然変異領域に明確に焦点を合わせることが可能であり、また、他の成分(非突然変異タンパク質又はウイルスベクター抗原)からの無関係な抗原競合も低下する。
【0082】
一実施形態において、薬物製剤はロングペプチドのマルチエピトープワクチン又は免疫原性組成物である。かかる「ロング」ペプチドは樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞において効率的なインターナリゼーション、プロセシング及び交差提示を受け、ヒトにおいてCTLを誘導することが示されている(Melief and van der Burg,「合成ロングペプチドワクチンによる樹立された(前)悪性疾患の免疫療法(Immunotherapy of established (pre)malignant disease by synthetic long peptide vaccines)」 Nature Rev Cancer 8:351(2008))。一実施形態において、少なくとも1つのペプチドが免疫化用に調製される。好ましい実施形態において、20以上のペプチドが免疫化用に調製される。一実施形態において、ネオ抗原ペプチドは約5~約50アミノ酸長の範囲である。別の実施形態において、約15~約35アミノ酸長のペプチドが合成される。好ましい実施形態において、ネオ抗原ペプチドは約20~約35アミノ酸長の範囲である。
【0083】
腫瘍特異的ネオ抗原の作製
本発明は、少なくとも一部には、患者の免疫系に腫瘍特異的ネオ抗原のプールを提示する能力に基づく。当業者は、本開示及び当該技術分野における知識から、かかる腫瘍特異的ネオ抗原を作製する種々の方法があることを理解するであろう。一般に、かかる腫瘍特異的ネオ抗原はインビトロ又はインビボのいずれでも作製し得る。腫瘍特異的ネオ抗原はインビトロでペプチド又はポリペプチドとして作製されてもよく、次にそれが個別化された新生物ワクチン又は免疫原性組成物に製剤化され、対象に投与されてもよい。本明細書にさらに詳細に記載するとおり、かかるインビトロ作製は、例えば、ペプチド合成又は種々の細菌、真核生物、若しくはウイルス組換え発現系のいずれかにおけるDNA若しくはRNA分子からのペプチド/ポリペプチドの発現と、続く発現したペプチド/ポリペプチドの精製など、当業者に公知の種々の方法によって行われ得る。或いは、腫瘍特異的ネオ抗原は、腫瘍特異的ネオ抗原をコードする分子(例えば、DNA、RNA、ウイルス発現系など)を対象に導入し、導入後にコードされた腫瘍特異的ネオ抗原が発現することによりインビボで作製されてもよい。ネオ抗原のインビトロ及びインビボ作製方法はまた、本明細書において、それが医薬組成物及び併用療法の送達方法に関するときさらに記載される。
【0084】
インビトロペプチド/ポリペプチド合成
タンパク質又はペプチドは、標準的な分子生物学的技法によるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現、天然供給源からのタンパク質、インビトロ翻訳、又はペプチドの単離、又はタンパク質又はペプチドの化学合成を含め、当業者に公知の任意の技法によって作製することができる。様々な遺伝子に対応するヌクレオチド及びタンパク質、ポリペプチド及びペプチド配列は既に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースを参照することができる。一つのかかるデータベースは、国立衛生研究所(National Institutes of Health)ウェブサイトにある国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenbank及びGenPeptデータベースである。既知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示される技法を用いて、又は当業者に公知であろうとおりに増幅し及び/又は発現させることができる。或いは、様々な市販のタンパク質、ポリペプチド及びペプチド調製物が当業者に公知である。
【0085】
ペプチドは、夾雑細菌又は動物性物質を含有しない試薬を利用して容易に化学的に合成することができる(Merrifield RB:「固相ペプチド合成I.テトラペプチドの合成(Solid phase peptide synthesis.I.The synthesis of a tetrapeptide)」.J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963)。特定の実施形態において、ネオ抗原ペプチドの調製は、(1)均一合成及び開裂条件を用いたマルチチャネル機器でのパラレル固相合成;(2)RP-HPLCカラムでのカラムストリッピングによる精製;及びペプチド間での再洗浄、但し交換なし;続いて(3)最も情報価値の高い、限られた一組のアッセイによる分析によって行われる。個々の患者の一組のペプチドに関して、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)のフットプリントを定義付けることができ、従ってスイート切り替え手順が必要となるのは、異なる患者のペプチド合成間のみである。
【0086】
或いは、本発明のネオ抗原ペプチドをコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を使用して、ネオ抗原ペプチドをインビトロで作製してもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、一本鎖及び/又は二本鎖のいずれかの、又は天然の若しくは安定化した形態のポリヌクレオチド、例えばホスホロチオエート(phosphorothiate)骨格を有するポリヌクレオチドなど、又はそれらの組み合わせであってよく、それがペプチドをコードする限りはイントロンを含んでも、又は含まなくてもよい。一実施形態では、インビトロ翻訳を用いてペプチドが作製される。当業者が利用し得る多くの例示的システムが存在する(例えば、Retic Lysate IVTキット、Life Technologies、Waltham、MA)。
【0087】
ポリペプチドの発現能を有する発現ベクターもまた調製することができる。種々の細胞型に対する発現ベクターが当該技術分野において周知されており、過度の実験を行うことなく選択し得る。概して、DNAがプラスミドなどの発現ベクターに、発現に適切な向き及び正しいリーディングフレームで挿入される。必要であれば、DNAは、所望の宿主(例えば、細菌)によって認識される適切な転写及び翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結されてもよく、しかしかかる制御は概して発現ベクターにおいて利用可能である。次にベクターは、標準的な技法を用いてクローニング用の宿主細菌に導入される(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)。
【0088】
単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに発現ベクターを含む宿主細胞もまた企図される。ネオ抗原ペプチドは、所望のネオ抗原ペプチドをコードするRNA又はcDNA分子の形態で提供され得る。本発明の1つ以上のネオ抗原ペプチドが、単一の発現ベクターによって提供され得る。
【0089】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペプチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチド並びにさらなるコード配列及び/又は非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドはRNAの形態又はDNAの形態であってもよい。DNAにはcDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ;二本鎖又は一本鎖であってもよく、一本鎖の場合にはコード鎖又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
【0090】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞からのポリペプチドの発現及び/又は分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)と同じリーディングフレームで融合した腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドのコード配列を含み得る。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、成熟形態のポリペプチドを形成するため宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有し得る。
【0091】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にして、次にそれが個別化された新生物ワクチン又は免疫原性組成物に組み込まれ得るようにするマーカー配列に同じリーディングフレームで融合した腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドのコード配列を含み得る。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合には、マーカーと融合した成熟ポリペプチドの精製を提供するpQE-9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであってよく、又はマーカー配列は、哺乳類宿主(例えば、COS-7細胞)が使用されるとき、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグであってもよい。さらなるタグとしては、限定はされないが、カルモジュリンタグ、FLAGタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1、Softag 3、V5タグ、Xpressタグ、イソペプタグ(Isopeptag)、SpyTag、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)タグ、GSTタグ、蛍光タンパク質タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質タグ)、マルトース結合タンパク質タグ、Nusタグ、Strepタグ、チオレドキシンタグ、TCタグ、Tyタグなどが挙げられる。
【0092】
実施形態において、ポリヌクレオチドは、複数のネオ抗原ペプチドの産生能を有する単一のコンカテマー化したネオ抗原ペプチドコンストラクトを作成するため同じリーディングフレームで融合した腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドの1つ以上のコード配列を含み得る。
【0093】
特定の実施形態において、本発明の腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、又は少なくとも96%、97%、98%又は99%同一のヌクレオチド配列を有する単離核酸分子が提供され得る。
【0094】
参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列に対して、ポリヌクレオチド配列に参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドにつき最大5個の点突然変異が含まれ得ることを除き同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るには、参照配列中のヌクレオチドの最大5%が欠失しているか又は別のヌクレオチドに置換されていてもよく、又は参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入されていてもよい。参照配列のこれらの突然変異は参照ヌクレオチド配列のアミノ末端又はカルボキシ末端位置又はそれらの末端位置の間のどこかに、参照配列中のヌクレオチド間に個々に散在して、或いは参照配列内で1つ以上の隣接するまとまりとして存在し得る。
【0095】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が参照配列と少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、及び一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム(ウィスコンシン配列解析パッケージ(Wisconsin Sequence Analysis Package)、バージョン8 Unix版、Genetics Computer Group、University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)などの公知のコンピュータプログラムを使用して従来法で決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)の局所的相同性アルゴリズムを使用して2つの配列間における最良の相同性セグメントを見付け出す。Bestfit又は任意の他の配列アラインメントプログラムを使用して特定の配列が本発明に係る参照配列と例えば95%同一であるかどうかを決定するとき、パラメータの設定は、参照ヌクレオチド配列の全長にわたって同一性のパーセンテージが計算され、且つ参照配列中のヌクレオチド総数の最大5%の相同性のギャップが許容されるように行われる。
【0096】
本明細書に記載される単離された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドは、当該技術分野において公知の任意の好適な方法によりインビトロで(例えば実験室で)産生することができる。かかる方法は、直接のタンパク質合成方法から、単離ポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し且つそれらの配列を好適な形質転換宿主において発現させるにまでに及ぶ。一部の実施形態では、DNA配列は組換え技術を用いて、目的の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離又は合成することにより構築される。場合により、部位特異的突然変異誘発によって配列に突然変異を誘発し、その機能性類似体を提供し得る。例えば、Zoeller et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 81:5662-5066(1984)及び米国特許第4,588,585号明細書を参照のこと。
【0097】
実施形態において、目的のポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用した化学合成によって構築され得る。かかるオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づき、且つ目的の組換えポリペプチドを産生する宿主細胞に好ましいコドンを選択して設計することができる。目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列の合成には、標準方法を適用する。例えば、完全なアミノ酸配列を使用して逆翻訳された遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部分をコードするいくつかの小型オリゴヌクレオチドを合成し、次にライゲートすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には相補的アセンブリのための5’又は3’オーバーハングを含む。
【0098】
アセンブリ(例えば、合成、部位特異的突然変異誘発、又は別の方法による)の後、目的とする特定の単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、場合により所望の宿主でのタンパク質の発現に適切な発現制御配列に動作可能に連結する。アセンブリが適切であることは、ヌクレオチドシーケンシング、制限酵素マッピング、及び好適な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。当該技術分野において周知のとおり、宿主においてトランスフェクト遺伝子の高い発現レベルを達成するため、選択の発現宿主で機能する転写及び翻訳発現制御配列に動作可能を遺伝子に連結することができる。
【0099】
組換え発現ベクターを使用して、腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドをコードするDNAを増幅し及び発現させてもよい。組換え発現ベクターは複製可能なDNAコンストラクトであり、哺乳類、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来する好適な転写又は翻訳調節エレメントに動作可能に連結された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド又は生物学的に同等な類似体をコードする合成の又はcDNA由来のDNA断片を有する。転写単位は概して、本明細書においてさらに詳細に記載するとおり、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する1つ又は複数の遺伝子エレメント、例えば転写プロモーター又はエンハンサーと、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される構造配列又はコード配列と、(3)適切な転写及び翻訳開始及び終結配列とのアセンブリを含む。かかる調節エレメントは、転写を制御するオペレーター配列を含み得る。宿主での複製能(通常は複製起点によって付与される)、及び形質転換体の認識を促進するための選択遺伝子が、さらに組み込まれ得る。DNA領域は、それらが互いに機能的に関係しているとき、動作可能に連結されている。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現する場合には、ポリペプチドのDNAに動作可能に連結されている;プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合には、コード配列に動作可能に連結されている;又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にする位置にある場合には、コード配列に動作可能に連結されている。概して、動作可能に連結されているとは、隣接することを意味し、分泌リーダーの場合には、隣接すること及びリーディングフレームにあることを意味する。酵母発現系での使用が意図される構造エレメントは、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。或いは、組換えタンパク質がリーダー配列又は輸送配列なしに発現する場合、それはN末端メチオニン残基を含み得る。場合により、発現した組換えタンパク質からこの残基が続いて切断されることで、最終産物がもたらされ得る。
【0100】
真核生物宿主、特に哺乳動物又はヒトに有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、公知の細菌プラスミド、例えば、pCR 1、pBR322、pMB9を含む大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド及びそれらの誘導体、より広い宿主域のプラスミド、例えばM13及び繊維状一本鎖DNAファージが挙げられる。
【0101】
ポリペプチドの発現に好適な宿主細胞としては、適切なプロモーターの制御下にある原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は高等真核細胞が挙げられる。原核生物には、グラム陰性生物又はグラム陽性生物、例えば大腸菌(E.coli)又はバチルス属(Bacilli)が含まれる。高等真核細胞には、哺乳類起源の樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系もまた用いることができる。細菌、真菌、酵母、及び哺乳類細胞宿主での使用に適切なクローニング及び発現ベクターは、当該技術分野において周知されている(Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.,1985を参照)。
【0102】
様々な哺乳類又は昆虫細胞培養系もまた、有利には組換えタンパク質を発現させるために用いられる。哺乳類細胞における組換えタンパク質の発現は、かかるタンパク質が概して正しく折り畳まれ、適切に修飾され、且つ完全に機能性であるため、実施することができる。好適な哺乳類宿主細胞系の例としては、Gluzman(Cell 23:175,1981)によって記載されるサル腎細胞のCOS-7系、並びに適切なベクターの発現能を有する他の細胞系、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、293、HeLa及びBHK細胞系が挙げられる。哺乳類発現ベクターは非転写エレメント、例えば、複製起点、発現させる遺伝子に連結される好適なプロモーター及びエンハンサー、並びに他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列、例えば必須リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与・受容部位、及び転写終結配列を含み得る。昆虫細胞において異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルスシステムが、Luckow and Summers,Bio/Technology 6:47(1988)によってレビューされている。
【0103】
形質転換宿主により産生されたタンパク質は、任意の好適な方法により精製することができる。かかる標準方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーなど)、遠心、溶解度差、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法によることが含まれる。アフィニティータグ、例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどをタンパク質に結合させると、適切なアフィニティーカラムに通すことによる容易な精製が可能となり得る。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学などの技法を用いて物理的に特徴付けることができる。
【0104】
例えば、組換えタンパク質を培養培地中に分泌するシステムからの上清を、初めに、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮することができる。濃縮ステップの後、濃縮物を好適な精製マトリックスに加えることができる。或いは、陰イオン交換樹脂、例えばペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックス又は基質を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース又はタンパク質精製において一般的に用いられる他の種類であってもよい。或いは、陽イオン交換ステップを用いることができる。好適な陽イオン交換体としては、スルホプロピル基又はカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが挙げられる。最後に、疎水性RP-HPLC媒体、例えばペンダントメチル基又は他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)ステップを用いて癌幹細胞タンパク質-Fc組成物をさらに精製することができる。前述の精製ステップの一部又は全てを様々な組み合わせで用いて均一な組換えタンパク質を提供することもできる。
【0105】
細菌培養物において産生された組換えタンパク質は、例えば、初めに細胞ペレットから抽出し、続いて1回以上濃縮し、塩析し、水溶性イオン交換又はサイズ排除クロマトグラフィーステップを行うことにより単離し得る。最終的な精製ステップには高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられてもよい。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクリング、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含む任意の好都合な方法によって破壊することができる。
【0106】
インビボペプチド/ポリペプチド合成
本発明はまた、ネオ抗原ペプチド/ポリペプチドをそれを必要としている対象に例えばDNA/RNAワクチンの形態でインビボで送達するための媒体としての核酸分子の使用も企図する(例えば、本明細書によって全体として参照により援用される国際公開第2012/159643号パンフレット、及び国際公開第2012/159754号パンフレットを参照)。
【0107】
一実施形態において、ネオ抗原は、それを必要としている患者にプラスミドを使用して投与され得る。これらは、通常は強力なウイルスプロモーターからなって目的の遺伝子(又は相補DNA)のインビボ転写及び翻訳を駆動するプラスミドである(Mor,et al.,(1995).The Journal of Immunology 155(4):2039-2046)。時に、mRNA安定性を改善し、ひいてはタンパク質発現を増加させるため、イントロンAが含まれ得る(Leitner et al.(1997).The Journal of Immunology 159(12):6112-6119)。プラスミドはまた、ウシ成長ホルモン又はウサギβ-グロブリンポリアデニル化配列などの強力なポリアデニル化/転写終結シグナルも含む(Alarcon et al.,(1999).Adv.Parasitol.Advances in Parasitology 42:343-410;Robinson et al.,(2000).Adv.Virus Res.Advances in Virus Research 55:1-74;Boehmet al.,(1996).Journal of Immunological Methods 193(1):29-40)。時に、2つ以上の免疫原を発現させるため、又は免疫原と免疫刺激性タンパク質とを発現させるため、マルチシストロンベクターが構築される(Lewis et al.,(1999).Advances in Virus Research(Academic Press)54:129-88)。
【0108】
プラスミドは、免疫原がそこから発現する「媒体」であるため、タンパク質発現が最大となるようにベクター設計を最適化することが必須である(Lewis et al.,(1999).Advances in Virus Research(Academic Press)54:129-88)。タンパク質発現を増進させる一つの方法は、病原性mRNAのコドン使用頻度を真核細胞に対して最適化することによる。別の考慮すべき点は、プロモーターの選択である。かかるプロモーターはSV40プロモーター又はラウス肉腫ウイルス(RSV)であり得る。
【0109】
プラスミドは、幾つもの異なる方法によって動物組織に導入し得る。2つの最も一般的な手法は、標準的な皮下針を使用した生理食塩水中のDNAの注射、及び遺伝子銃送達である。DNAワクチンプラスミドの構築及び続くこれらの2つの方法による宿主へのその送達に関する概略が、Scientific American(Weiner et al.,(1999)Scientific American 281(1):34-41)に示される。生理食塩水中での注射は、通常、骨格筋において筋肉内に(IM)行われるか、又は皮内に(ID)行われ、DNAは細胞外間隙に送達される。これは電気穿孔によるか、ブピバカインなどのミオトキシンで筋繊維に一時的に損傷を与えることによるか;又は生理食塩水若しくはショ糖の高張液を使用することにより補助し得る(Alarcon et al.,(1999).Adv.Parasitol.Advances in Parasitology 42:343-410)。この送達方法に対する免疫応答は、針の種類、針の位置合わせ、注射速度、注射容積、筋肉型、並びに注射を受ける動物の年齢、性別及び生理的条件を含め、多くの要因の影響を受け得る(Alarcon et al.,(1999).Adv.Parasitol.Advances in Parasitology 42:343-410)。
【0110】
もう一つの一般的に用いられる送達方法である遺伝子銃送達は、金又はタングステンマイクロパーティクル上に吸着させたプラスミドDNA(pDNA)を、加速剤として圧縮ヘリウムを使用して弾道学的に加速させて標的細胞に入れ込む(Alarcon et al.,(1999).Adv.Parasitol.Advances in Parasitology 42:343-410;Lewis et al.,(1999).Advances in Virus Research(Academic Press)54:129-88)。
【0111】
代替的な送達方法としては、鼻粘膜及び肺粘膜などの粘膜表面に対するネイキッドDNAのエアロゾル滴下(Lewis et al.,(1999).Advances in Virus Research(Academic Press)54:129-88)、並びに眼及び腟粘膜に対するpDNAの局所投与(Lewis et al.,(1999)Advances in Virus Research(Academic Press)54:129-88)を挙げることができる。粘膜表面送達はまた、カチオン性リポソーム-DNA調製物、生分解性ミクロスフェア、腸粘膜に対する経口投与用の弱毒化赤痢菌属(Shigella)又はリステリア属(Listeria)ベクター、及び組換えアデノウイルスベクターを使用しても実現されている。
【0112】
有効な免疫応答を生じさせるために必要なDNAの用量は送達方法によって決まる。生理食塩水注射では10μg~1mgの様々な量のDNAが必要となるが、遺伝子銃送達では有効な免疫応答を生じさせるために筋肉内生理食塩水注射の100~1000分の1のDNAでよい。概して、0.2μg~20μgが必要であり、しかしながら16ng程の少ない分量も報告されている。これらの分量は種毎に異なり、例えばマウスで必要なDNAは霊長類の約10分の1である。生理食塩水注射では、DNAが標的組織の細胞外間隙(通常は筋肉)に送達され、そこで細胞によって取り込まれる前に物理的障壁(少し例を挙げるだけでも、基底膜及び大量の結合組織など)を乗り越えなければならないため、より多くのDNAが必要であるが、遺伝子銃送達ではDNAが細胞に直接撃ち込まれ、従って「無駄」は少なくなる(例えば、Sedegah et al.,(1994).Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 91(21):9866-9870;Daheshiaet al.,(1997).The Journal of Immunology 159(4):1945-1952;Chen et al.,(1998).The Journal of Immunology 160(5):2425-2432;Sizemore(1995)Science 270(5234):299-302;Fynan et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90(24):11478-82を参照)。
【0113】
一実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、例えば本発明において同定されるとおりの1つ以上のネオ抗原ペプチド/ポリペプチドをコードする別個のDNAプラスミドを含み得る。本明細書において考察するとおり、発現ベクターの正確な選択は、発現させるペプチド/ポリペプチドに依存することができ、十分に当業者の技術の範囲内である。DNAコンストラクト(例えば、筋細胞においてエピソーム性、非複製、非組込み形態のもの)の予想される持続性が、防御期間の増加をもたらすと予想される。
【0114】
本発明の1つ以上のネオ抗原ペプチドは、ウイルスベースのシステム(例えば、アデノウイルスシステム、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ポックスウイルス、又はレンチウイルス)を使用してコードされ及びインビボで発現し得る。一実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、例えばアデノウイルスなど、それを必要としているヒト患者で使用されるウイルスベースのベクターを含み得る(例えば、Baden et al.「組換えアデノウイルス血清型26型HIV-1 Envワクチン(IPCAVD 001)の安全性及び免疫原性のファースト・イン・ヒューマン評価(First-in-human evaluation of the safety and immunogenicity of a recombinant adenovirus serotype 26 HIV-1 Env vaccine(IPCAVD 001))」.J Infect Dis.2013 Jan 15;207(2):240-7(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照)。アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、及びレンチウイルス送達に使用することのできるプラスミドは、以前記載されている(例えば、米国特許第6,955,808号明細書及び同第6,943,019号明細書、及び米国特許出願公開第20080254008号明細書(本明細書によって参照により援用される)を参照)。
【0115】
本発明の実施において使用し得るベクターの中でも、レトロウイルス遺伝子導入方法では細胞の宿主ゲノムに組込みが可能であり、多くの場合に、挿入されたトランス遺伝子の長期発現をもたらす。好ましい実施形態において、レトロウイルスはレンチウイルスである。加えて、多くの異なる細胞型及び標的組織において高い形質導入効率が観察されている。レトロウイルスの向性は外来性エンベロープタンパク質を導入して変えることができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大し得る。レトロウイルスはまた、挿入されたトランス遺伝子の条件付き発現が可能となるように操作することもでき、従って特定の細胞型のみをレンチウイルスに感染させ得る。細胞型特異的プロモーターを使用して特定の細胞型における発現を標的化することができる。レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターである(ひいては本発明の実施においてはレンチウイルスベクター及びレトロウイルスベクターの両方を使用し得る)。さらに、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入し又は感染させることが可能であり、且つ典型的には高ウイルス価を生じるため好ましい。従ってレトロウイルス遺伝子導入システムの選択は、標的組織に依存し得る。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性長末端反復配列を含む。ベクターの複製及びパッケージングには最小限のシス作用性LTRが十分であり、次にはこれを使用して所望の核酸を標的細胞に組み込むと、永続的な発現がもたらされる。本発明の実施において使用し得る広く用いられているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)をベースとするもの、及びそれらの組み合わせが挙げられる(例えば、Buchscher et al.,(1992)J.Virol.66:2731-2739;Johann et al.,(1992)J.Virol.66:1635-1640;Sommnerfelt et al.,(1990)Virol.176:58-59;Wilson et al.,(1998)J.Virol.63:2374-2378;Miller et al.,(1991)J.Virol.65:2220-2224;PCT/US94/05700号明細書を参照)。Zou et al.は、くも膜下腔内カテーテルによって1×10形質導入単位(TU)/mlの力価を有する約10μlの組換えレンチウイルスを投与した。この種の投薬量は、本発明におけるレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターの使用向けに適合させ又は推定することができる。
【0116】
また、本発明の実施においては、最小非霊長類レンチウイルスベクター、例えばウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)をベースとするレンチウイルスベクターも有用である(例えば、Balagaan,(2006)J Gene Med;8:275-285,オンライン発行 21 November 2005 in Wiley InterScience(www.interscience.wiley.com).DOI:10.1002/jgm.845を参照)。このベクターは、標的遺伝子の発現を駆動するサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有し得る。従って、本発明は、本発明の実施において有用なベクターの中でも特に:レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを含むウイルスベクターを企図する。
【0117】
また、本発明の実施においてはアデノウイルスベクターも有用である。一つの利点は、組換えアデノウイルスがインビトロ及びインビボで種々の哺乳類細胞及び組織において組換え遺伝子を効率的に移入して発現させることが可能で、移入された核酸の高発現をもたらす点である。さらに、静止細胞を生産的に感染させる能力が、組換えアデノウイルスベクターの有用性を広げる。加えて、発現レベルが高く、免疫応答を生じさせるのに十分なレベルの核酸産物の発現が確実となる(例えば、米国特許第7,029,848号明細書(本明細書によって参照により援用される)を参照)。
【0118】
本明細書のある実施形態において、送達はアデノウイルスを介し、アデノウイルスは、少なくとも1×10粒子(粒子単位、puとも称される)のアデノウイルスベクターを含有する単一ブースター用量であり得る。本明細書のある実施形態において、用量は、好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10~1×1012粒子)、より好ましくは少なくとも約1×10粒子、より好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10~1×1011粒子又は約1×10~1×1012粒子)、及び最も好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10~1×1010粒子又は約1×10~1×1012粒子)、又はさらには少なくとも約1×1010粒子(例えば、約1×1010~1×1012粒子)のアデノウイルスベクターである。或いは、用量は、約1×1014粒子以下、好ましくは約1×1013粒子以下、さらにより好ましくは約1×1012粒子以下、さらにより好ましくは約1×1011粒子以下、及び最も好ましくは約1×1010粒子以下(例えば、約1×10粒子(articles)以下)を含む。従って、用量は、例えば、約1×10粒子単位(pu)、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×1010pu、約2×1010pu、約4×1010pu、約1×1011pu、約2×1011pu、約4×1011pu、約1×1012pu、約2×1012pu、又は約4×1012puのアデノウイルスベクターを有する単一用量のアデノウイルスベクターを含み得る。例えば、2013年6月4日に付与されたNabel,et.al.に対する米国特許第8,454,972 B2号明細書(参照によって本明細書に援用される)のアデノウイルスベクター、及びその第29欄36~58行にある投薬量を参照のこと。本明細書のある実施形態において、アデノウイルスは複数回用量で送達される。
【0119】
インビボ送達の観点では、AAVは毒性が低く、且つ宿主ゲノムに組み込まれないため挿入突然変異誘発を引き起こす可能性が低いことが理由で、他のウイルスベクターと比べて有利である。AAVはパッケージング限界が4.5又は4.75Kbである。コンストラクトが4.5又は4.75Kbより大きいと、ウイルス産生が大幅に低下する。核酸分子発現の駆動に使用することのできるプロモーターが多数ある。AAV ITRはプロモーターとして働くことができ、追加のプロモーターエレメントの必要性がないため有利である。遍在的な発現には、以下のプロモーターを使用することができる:CMV、CAG、CBh、PGK、SV40、フェリチン重鎖又は軽鎖等。脳での発現には、以下のプロモーターを使用することができる:あらゆるニューロンに対するシナプシンI、興奮性ニューロンに対するCaMKIIα、GABA作動性ニューロンに対するGAD67又はGAD65又はVGAT等。RNA合成の駆動に使用されるプロモーターとしては、U6又はH1などのPol IIIプロモーターを挙げることができる。ガイドRNA(gRNA)の発現に、Pol IIプロモーター及びイントロンカセットを使用することができる。
【0120】
AAVに関して、AAVはAAV1、AAV2、AAV5又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。AAVは、標的とする細胞に関連して選択することができる;例えば、脳又は神経細胞の標的化には、AAV血清型1、2、5又はハイブリッドカプシドAAV1、AAV2、AAV5又はそれらの任意の組み合わせを選択することができ;及び心臓組織の標的化には、AAV4を選択することができる。AAV8は肝臓への送達に有用である。上記のプロモーター及びベクターは、個々に好ましい。
【0121】
本明細書のある実施形態において、送達はAAVを介する。ヒトに対するAAVのインビボ送達の治療上有効な投薬量は、約1×1010~約1×1050個の機能性AAV/ml溶液を含有する約20~約50mlの範囲の生理食塩水であると考えられる。投薬量は、治療利益と任意の副作用との均衡をとるように調整され得る。本明細書のある実施形態において、AAV用量は、概して約1×10~1×1050ゲノムAAV、約1×10~1×1020ゲノムAAV、約1×1010~約1×1016ゲノム、又は約1×1011~約1×1016ゲノムAAVの濃度範囲にある。ヒト投薬量は約1×1013ゲノムAAVであり得る。かかる濃度は、約0.001ml~約100ml、約0.05~約50ml、又は約10~約25mlの担体溶液で送達され得る。好ましい実施形態において、約2×1013ウイルスゲノム/ミリリットルの力価のAAVが使用され、マウスの線条体半球の各々が1回の500ナノリットル注射を受ける。他の有効な投薬量は、当業者であれば用量反応曲線を作成する常法の試験によって容易に確立することができる。例えば、2013年3月26日に付与されたHajjar,et al.に対する米国特許第8,404,658 B2号明細書、第27欄45~60行を参照のこと。
【0122】
別の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物に対する細胞性免疫応答の有効な活性化は、非病原性微生物においてワクチン又は免疫原性組成物中の関連性のあるネオ抗原を発現させることによって実現し得る。かかる微生物の周知の例は、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)BCG、サルモネラ属(Salmonella)及びシュードモナス属(Pseudomona)である(米国特許第6,991,797号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照)。
【0123】
別の実施形態では、新生物ワクチン又は免疫原性組成物にポックスウイルスが使用される。ポックスウイルスには、オルトポックスウイルス、アビポックス、ワクシニア、MVA、NYVAC、カナリア痘、ALVAC、鶏痘、TROVAC等が含まれる(例えば、Verardiet al.,Hum Vaccin Immunother.2012 Jul;8(7):961-70;及びMoss,Vaccine.2013;31(39):4220-4222を参照)。ポックスウイルス発現ベクターは1982年に報告され、すぐにワクチン開発並びに数多くの分野の研究で広く使用されるようになった。このベクターの利点としては、簡単な構築、多量の外来DNAを収容する能力、及び高い発現レベルが挙げられる。
【0124】
別の実施形態では、新生物ワクチン又は免疫原性組成物にワクシニアウイルスを使用してネオ抗原を発現させる(Rolph et al.,「ワクチン及び免疫学的ツールとしての組換えウイルス(Recombinant viruses as vaccines and immunological tools)」.Curr Opin Immunol 9:517-524,1997)。組換えワクシニアウイルスは感染宿主細胞の細胞質内での複製能を有し、従って目的のポリペプチドが免疫応答を誘導し得る。さらに、ポックスウイルスが、免疫細胞、詳細には抗原提示細胞に直接感染することにより主要組織適合遺伝子複合体クラスI経路によって処理するためのコードされた抗原を標的化することが可能であるため、またその自己アジュバント能力のため、ワクチン又は免疫原性組成物ベクターとして広く用いられている。
【0125】
別の実施形態では、ALVACが新生物ワクチン又は免疫原性組成物におけるベクターとして使用される。ALVACは、外来性トランス遺伝子を発現するように修飾することのできるカナリア痘ウイルスであり、原核生物抗原及び真核生物抗原の両方に対するワクチン接種方法として用いられている(Horig H,Lee DS,Conkright W,et al.「ヒト癌胎児性抗原及びB7.1共刺激分子を発現する組換えカナリア痘ウイルス(ALVAC)ワクチンの第I相臨床試験(Phase I clinical trial of a recombinant canarypoxvirus (ALVAC) vaccine expressing human carcinoembryonic antigen and the B7.1 co-stimulatory molecule)」.Cancer Immunol Immunother 2000;49:504-14;von Mehren M,Arlen P,Tsang KY,et al.「再発性CEA発現腺癌患者における癌胎児性抗原(CEA)及びB7.1トランス遺伝子の両方を含むデュアル遺伝子組換えアビポックスワクチンのパイロット試験(Pilot study of a dual gene recombinant avipox vaccine containing both carcinoembryonic antigen (CEA) and B7.1 transgenes in patients with recurrent CEA-expressing adenocarcinomas)」.Clin Cancer Res 2000;6:2219-28;Musey L,Ding Y,Elizaga M,et al.「筋肉内投与したHIV-1ワクチン接種はHIV-1未感染個体において全身及び粘膜T細胞免疫の両方を誘発することができる(HIV-1 vaccination administered intramuscularly can induce both systemic and mucosal T cell immunity in HIV-1-uninfected individuals)」.J Immunol 2003;171:1094-101;Paoletti E.「ワクチン接種に対するポックスウイルスベクターの適用:最新情報(Applications of pox virus vectors to vaccination:an update)」.Proc Natl Acad Sci U S A 1996;93:11349-53;米国特許第7,255,862号明細書)。第I相臨床試験では、腫瘍抗原CEAを発現するALVACウイルスが、選択された患者において優れた安全性プロファイルを示し、CEA特異的T細胞応答の増加をもたらした;しかしながら、他覚的臨床反応は観察されなかった(Marshall JL,Hawkins MJ,Tsang KY,et al.「ヒト癌胎児性抗原を発現する複製欠損アビポックス組換えワクチンの癌患者における第I相試験(Phase I study in cancer patients of a replication-defective avipox recombinant vaccine that expresses human carcinoembryonic antigen)」.J Clin Oncol 1999;17:332-7)。
【0126】
別の実施形態では、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスが、ネオ抗原ワクチン又は免疫原性組成物のウイルスベクターとして用いられ得る。MVAはオルトポックスウイルスファミリーのメンバーであり、ニワトリ胚線維芽細胞でワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)を約570代にわたり連続継代することによって作成されている(レビューは、Mayr,A.,et al.,Infection 3,6-14,1975を参照)。このような継代の結果として、得られるMVAウイルスはCVAと比較して31キロベース少ないゲノム情報を含み、極めて宿主細胞制限的である(Meyer,H.et al.,J.Gen.Virol.72,1031-1038,1991)。MVAは、その極度の弱毒化、即ちビルレンス又は感染能が低下していることによって特徴付けられ、しかし優れた免疫原性はなおも保持している。種々の動物モデルで試験したとき、免疫抑制個体であってもMVAは無毒性であることが証明された。さらに、MVA-BN(登録商標)-HER2が、HER-2陽性乳癌の治療用に設計された免疫療法候補であり、現在、臨床試験中である(Mandl et al.,Cancer Immunol Immunother.Jan 2012;61(1):19-29)。組換えMVAを作製及び使用する方法は記載されている(例えば、米国特許第8,309,098号明細書及び同第5,185,146号明細書(本明細書によってその全体が援用される)を参照)。
【0127】
別の実施形態では、改変ワクシニアウイルスコペンハーゲン株、NYVAC及びNYVAC変種が、ベクターとして用いられる(米国特許第7,255,862号明細書;国際公開第95/30018号パンフレット;米国特許第5,364,773号明細書及び同第5,494,807号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照)。
【0128】
一実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物の組換えウイルス粒子が、それを必要としている患者に投与される。発現させるネオ抗原の投薬量は、数マイクログラム~数百マイクログラム、例えば5~500μgの範囲であり得る。ワクチン又は免疫原性組成物は、そのような投薬量レベルで発現を実現する任意の好適な量で投与することができる。ウイルス粒子は少なくとも約103.5pfuの量でそれを必要としている患者に投与され、又は細胞にトランスフェクトされ得る;従って、ウイルス粒子は、好ましくは少なくとも約10pfu~約10pfuでそれを必要としている患者に投与されるか、又は細胞を感染させ若しくは細胞にトランスフェクトされる;しかしながら、それを必要としている患者に少なくとも約10pfuを投与することができ、より好ましい投与量を少なくとも約10pfu~約10pfuとし得る。NYVACに関する用量は、ALVAC、MVA、MVA-BN、及びアビポックス、例えばカナリア痘及び鶏痘に関して適用可能である。
【0129】
ワクチン又は免疫原性組成物アジュバント
有効なワクチン又は免疫原性組成物は、有利には、免疫応答を惹起するため強力なアジュバントを含む。本明細書に記載されるとおり、TLR3並びにMDA5及びRIG3のRNAヘリカーゼドメインのアゴニストであるポリICLCが、ワクチン又は免疫原性組成物アジュバントに望ましい幾つかの特性を示している。それらの特性には、インビボでの免疫細胞の局所及び全身活性化の誘導、刺激ケモカイン及びサイトカインの産生、並びにDCによる抗原提示の刺激が含まれる。さらに、ポリICLCは、ヒトにおいて持続的なCD4+及びCD8+応答を誘導することができる。重要なことに、ポリICLCをワクチン接種した対象と、極めて有効性の高い複製コンピテント黄熱病ワクチンの投与を受けたことがあるボランティアとにおいて、転写経路及びシグナル伝達経路の上方制御の点で顕著な類似性が認められた。さらに、最近の第1相試験では、(Montanideに加えて)NY-ESO-1ペプチドワクチンと組み合わせてポリICLCで免疫した卵巣癌患者の90%超がCD4+及びCD8+ T細胞の誘導並びにペプチドに対する抗体応答を示した。同時に、ポリICLCは現在までに25件を上回る臨床試験で広範に試験されており、比較的安全な毒性プロファイルを呈している。強力且つ特異的な免疫原に加え、ネオ抗原ペプチドはアジュバント(例えばポリICLC)又は別の抗新生物剤と併用し得る。理論によって拘束されるものではないが、これらのネオ抗原は中枢性胸腺トレランスを回避し(従ってより強力な抗腫瘍T細胞応答が可能となる)、一方で自己免疫の可能性を(例えば、正常な自己抗原の標的化を回避することにより)低下させるものと予想される。有効な免疫応答は、有利には免疫系を活性化させるため強力なアジュバントを含む(Speiser and Romero,「癌免疫療法のための分子的に定義されたワクチン、及び防御T細胞免疫(Molecularly defined vaccines for cancer immunotherapy,and protective T cell immunity)」 Seminars in Immunol 22:144(2010))。例えば、Toll様受容体(TLR)が、自然免疫系、次には適応免疫系を有効に誘導する、微生物性及びウイルス性病原体「危険シグナル」の強力なセンサーとして登場している(Bhardwaj and Gnjatic,「TLRアゴニスト:それは優れたアジュバントか?(TLR AGONISTS:Are They Good Adjuvants?)」 Cancer J.16:382-391(2010))。TLRアゴニストの中でも、ポリICLC(合成二本鎖RNA模倣体)は、骨髄由来樹状細胞の最も強力なアクチベータの一つである。ヒトボランティア試験において、ポリICLCは安全で、且つ末梢血細胞において、最も強力な弱毒生ウイルスワクチンの一つである黄熱病ワクチンYF-17Dによって誘導されるものと同等の遺伝子発現プロファイルを誘導することが示されている(Caskey et al,「合成二本鎖RNAはヒトにおいて生菌ウイルスワクチンと同様の自然免疫応答を誘導する(Synthetic double-stranded RNA induces innate immune responses similar to a live viral vaccine in humans)」 J Exp Med 208:2357(2011))。好ましい実施形態において、Oncovir,Incにより調製されるポリICLCのGMP製剤であるHiltonol(登録商標)がアジュバントとして利用される。他の実施形態では、本明細書に記載される他のアジュバントが想定される。例えば、水中油、油中水又は多相W/O/W;例えば、米国特許第7,608,279号明細書及びAucouturier et al,Vaccine 19(2001),2666-2672、及びそれらの引用文献を参照のこと。
【0130】
チェックポイント阻害薬
本発明は、本明細書に記載されるとおりの新生物ワクチン又は免疫原性組成物と、少なくとも1つのチェックポイント阻害薬とを対象に投与するステップを含む、新生物の治療又は予防方法を特徴とする。従って、1、2、3、4、5つ、又はそれ以上のチェックポイント阻害薬が投与され得る。特定の例示的実施形態では、1つのチェックポイント阻害薬が投与される。他の例示的実施形態では、2つのチェックポイント阻害薬が投与される。
【0131】
Page et al.(Annu.Rev.Med.2014.65)は、固形腫瘍におけるチェックポイント調節因子を調べた既発表の試験をまとめている。Mullard,A.(Nature Reviews,Drug Discovery.Vol.12,July 2013)はチェックポイント阻害薬のレビューを提供している。例示的チェックポイント阻害薬に関する概要表を本明細書に提供する。
【0132】
【表1】
【0133】
抗CTLA4抗体
CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)は、T細胞活性化を調節する働きをする共阻害分子である。
【0134】
CTLA4は、当初、T細胞の表面上にある負の調節因子であって、デノボの免疫応答又は既存の応答の刺激が惹起された直後に、続く免疫T細胞応答を弱めて自己免疫又は制御されない炎症を防止するため上方制御されるものとして同定された。従って、免疫応答の発生の大きさは、CTLA4作用と密接に結び付いている。特定の実施形態において、抗CTLA4抗体はイピリムマブ(Ipilumumab)又はトレメリムマブである。
【0135】
チェックポイント阻害薬は、免疫系の内因性T細胞調節機構を調整することによって機能する。イピリムマブ(YERVOY,Bristol-Meyers Squibb,New York,NY)-モノクローナル抗体であり、且つ米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)によって承認された最初のかかるチェックポイント阻害薬である-は、転移性メラノーマの標準治療となっている(Hodi et al.,N.Engl.J.Med.363:711-23.2010;Robert et al.,N.Engl.J.Med.364:2517-26.2011)。イピリムマブは、T細胞表面共阻害分子細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)に結合して、それによって媒介される阻害シグナル伝達を遮断する。その作用機構は1つの腫瘍型に特異的というわけではないため、また豊富な前臨床データによって複数の悪性腫瘍にわたる腫瘍免疫監視機構の役割が裏付けられているため(Andre et al.,Clin.Cancer Res.19:28-33.2013;May et al.Clin.Cancer Res.17:5233-38.2011)、イピリムマブ(Ipilumumab)は、他の腫瘍型の中でも特に、前立腺癌、肺癌、腎癌、及び乳癌の患者の治療として研究されている。イピリムマブは、CTLA-4を標的化して免疫系を活性化することにより作用する。
【0136】
別のCTLA-4-遮断抗体、トレメリムマブは、臨床試験で調査が継続されており、メラノーマ患者において持続的応答も実証している(Kirkwood et al.,Clin.Cancer Res.16:1042-48.2010;Ribas et al.J.Clin.Oncol.31:616-22,2013)。
【0137】
従って、本発明は、例示的実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び1つ以上の抗CTLA4抗体の新規併用を特徴とする。本発明はまた、他の例示的実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物、イピリムマブ及び/又はニボルマブ及び1つ以上の抗CTLA4抗体の新規併用も特徴とする。
【0138】
プログラム細胞死-1経路の阻害薬
CTLA-4は初期T細胞活性化を調節する働きをするが、一方、プログラム死1(PD-1)シグナル伝達は、一部には、末梢組織におけるT細胞活性化を調節する機能を果たす。PD-1受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制受容体を指す。PD-1は、T reg、活性化B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含めた幾つもの細胞型で発現し、主にインビボで以前活性化したT細胞で発現し、及び2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2に結合する。PD1の内因性リガンド、PD-L1及びPD-L2は、活性化した免疫細胞並びに腫瘍細胞を含めた非造血細胞において発現する。PD-1は、本明細書で使用されるとき、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、及び種相同体、及びhPD-1との少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含むことが意図される。完全なhPD-1配列は、GENBANK受託番号U64863に基づき見出すことができる。プログラム死リガンド-1(PD-L1”は、PD-1との結合時にT細胞活性化及びサイトカイン分泌を下方制御するPD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドのうちの一方である(他方はPD-L2である)。PD-L1は、本明細書で使用されるとき、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォーム、及び種相同体、及びhPD-L1との少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-L1配列は、GENBANK受託番号Q9NZQ7に基づき見出すことができる。腫瘍は、PD-L1/L2を発現して、それによりPD-1/PD-L1、2相互作用を介して腫瘍浸潤リンパ球を抑制することによって免疫監視機構を逃れることが実証されている(Dong et al.Nat.Med.8:793-800.2002)。治療用抗体によるこれらの相互作用の阻害は、T細胞応答を増強し、且つ抗腫瘍活性を刺激することが示されている(Freeman et al.J.Exp.Med.192:1027-34.2000)。
【0139】
本発明のAbとしては、限定はされないが、それぞれ米国特許第8,008,449号明細書及び同第7,943,743号明細書に開示される抗PD-1及び抗PD-L1 Abの全てが挙げられる。他の抗PD-1 mAbが、例えば、米国特許第7,488,802号明細書及び同第8,168,757号明細書に記載されており、及び抗PD-L1 mAbは、例えば、米国特許第7,635,757号明細書及び同第8,217,149号明細書、及び米国特許出願公開第2009/0317368号明細書に記載されている。米国特許第8,008,449号明細書は、7つの抗PD-1 HuMAb:17D8、2D3、4H1、5C4(本明細書ではニボルマブ又はBMS-936558とも称される)、4A11、7D3及び5F4を例示する。
【0140】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブの別名には、MDX-1 106、MDX-1 106-04、ONO-4538、BMS-936558がある。一部の実施形態では、抗PD-1抗体はニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。
【0141】
ニボルマブは、PD-1に対する完全ヒトIgG4遮断モノクローナル抗体である(Topaliam et al.,N.Engl.J.Med.366:2443-54.2012)。ニボルマブはPD-1を特異的に遮断し、免疫抵抗性に打ち勝つことができる。PD-1に対するリガンドは、あらゆる造血細胞及び多くの非造血組織で発現するPD-L1(B7-H1)、及び発現が主に樹状細胞及びマクロファージに限定されているPD-L2(B7-DC)と同定されている(Dong,H.et al.1999.Nat.Med.5:1365;Freeman,G.J.et al.2000.J.Exp.Med.192:1027;Latchman,Y.et al.2001.Nat.Immunol.2:261;Tseng,S.Y.et al.2001.J.Exp.Med.193:839)。PD-L1は多くの癌で過剰発現し、多くの場合に予後不良に関連する(Okazaki T et al.,Intern.Immun.2007 19(7):813)(Thompson RH et al.,Cancer Res 2006,66(7):3381)。興味深いことに、腫瘍浸潤Tリンパ球の大部分は、正常組織のTリンパ球及び末梢血Tリンパ球とは対照的に、主にPD-1を発現し、腫瘍応答性T細胞におけるPD-1の上方制御が抗腫瘍免疫応答の低下に関与し得ることが示唆される(Blood 2009 1 14(8):1537)。具体的には、腫瘍細胞は免疫抑制性PD-1リガンドのPD-L1を発現するため、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害すると、インビトロでT細胞応答が増強され、前臨床抗腫瘍活性が媒介され得る。
【0142】
ニボルマブが関わる幾つもの臨床試験(第I相、II相及びIII相)が実施されており、又は進行中である(clinicaltrials.gov/ct2/results?term=nivolumab&pg=1(アクセスは2013年12月20日付け)を参照のこと)。例えば、第I相用量漸増試験では、ニボルマブは安全で、客観的反応は全腫瘍型にわたって16~31%であり、ほとんどの反応が1年超持続した(Topaliam et al.,Presented at Annu.Meet.Am.Soc.Clin.Oncol.,Chicago,May 31-June 4.2013)。別の試験では、進行メラノーマ患者におけるイピリムマブと併用したニボルマブ(抗PD-1、BMS-936558、ONO-4538)の安全性及び臨床活性が調査された(Wolchok,J Clin Oncol 31,2013(suppl;abstr 9012 2013 ASCO Annual Meeting)。
【0143】
2つの抗PD-L1阻害抗体、MPDL3280A(Genentech,South San Francisco,CA)及びBMS-936559(Bristol Meyers Squibb,New York,NY)について、臨床試験が行われている。ニボルマブ及びMK-3475と同様に、これらの抗体は、主としてPD-1/PD-L1シグナル伝達を遮断することによって機能すると考えられる。PD-1抗体とは異なり、PD-L1抗体はPD-L2とPD-1との間の潜在的な相互作用は許容し、しかしPD-L1とCD80との間の相互作用をさらに遮断する(Park et al.,2010.Blood 116:1291-98)。MPDL3280Aは複数の腫瘍型で評価されており、メラノーマ;腎細胞癌;非小細胞肺癌(NSCLC);及び結腸直腸、胃、及び頭頸部扁平上皮癌において安全性及び予備的有効性が特定されている(Herbst et al.resented at Annu.Meet.Am.Soc.Clin.Oncol.,Chicago,May 31-June 4.2013)。同様に、BMS-936559は、第I相試験で複数の腫瘍型にわたって安全且つ臨床的に活性であることが示された。MEDI-4736は、現在臨床開発中(NCT01693562)の別のPD-L1遮断抗体である。
【0144】
CTLA-4及びPD-1/PD-L1に加えて、多数の他の免疫調節標的が前臨床で同定されており、多くが対応する治療用抗体を有し、それらは臨床試験で調査されている。Page et al.(Annu.Rev.Med.2014.65)が、図1に抗体免疫調節薬の標的を詳説している(参照によって本明細書に援用される)。
【0145】
本発明は、例示的態様において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び1つ以上のPD-1経路阻害薬の新規併用を特徴とする。好ましい実施形態において、PD-1経路の阻害薬は、抗PD1抗体、例えばニボルマブである。
【0146】
本発明はまた、他の例示的態様において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物とニボルマブ及び/又は1つ以上の抗CTLA4抗体との新規併用も特徴とする。
【0147】
適応
本明細書の併用療法によって治療し得る癌及び癌病態の例としては、限定はされないが、癌である、又は癌の発症リスクがあると診断された、それを必要としている患者が挙げられる。対象は、固形腫瘍、例えば、乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頸部、膵臓、脳、メラノーマ、及び他の組織臓器腫瘍、並びに血液腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、及びB細胞リンパ腫を含めたリンパ腫及び白血病、脳及び中枢神経系の腫瘍(例えば、髄膜、脳、脊髄、脳神経及び他のCNS部位の腫瘍、例えば、膠芽腫又は髄芽細胞腫);頭部及び/又は頸部癌、乳房腫瘍、循環系の腫瘍(例えば、心臓、縦隔及び胸膜、及び他の胸腔内臓器、血管腫瘍、及び腫瘍関連血管組織);血液及びリンパ系の腫瘍(例えば、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫、及び悪性形質細胞新生物、リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性又は慢性リンパ性白血病、単球性白血病、特定の細胞型の他の白血病、不特定細胞型の白血病、リンパ組織、造血組織及び関連組織の不特定の悪性新生物、例えばびまん性大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫又は皮膚T細胞リンパ腫);排泄系(例えば、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、及び他の泌尿器)の腫瘍;胃腸管(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門、及び肛門管)の腫瘍;肝臓及び肝内胆管、胆嚢、及び他の胆道部位、膵臓、及び他の消化器に関わる腫瘍;口腔(例えば、口唇、舌、歯肉、口腔底、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃腺、中咽頭、鼻咽頭、梨状窩(puriform sinus)、下咽頭、及び他の口腔部位)の腫瘍;生殖器系(例えば、外陰部、腟、子宮頸、子宮、卵巣、及び他の女性生殖器関連部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、及び他の男性生殖器関連部位)の腫瘍;気道(例えば、鼻腔、中耳、副鼻腔、喉頭、気管、気管支及び肺、例えば小細胞肺癌及び非小細胞肺癌)の腫瘍;骨格系(例えば、体肢、骨関節軟骨及び他の部位の骨及び関節軟骨)の腫瘍;皮膚の腫瘍(例えば、皮膚悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌、皮膚基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、カポジ肉腫);及び末梢神経及び自律神経系を含む他の組織、結合組織及び軟部組織、後腹膜(retroperitoneoum)及び腹膜、眼、甲状腺、副腎、並びに他の内分泌腺及び関連構造が関わる腫瘍、リンパ節の二次性及び不特定悪性新生物、呼吸器系及び消化器系の二次性悪性新生物及び他の部位の二次性悪性新生物を有し得る。
【0148】
特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎明細胞癌(ccRCC)、転移性メラノーマ、肉腫、白血病又は膀胱癌、結腸癌、脳癌、乳癌、頭頸部癌、子宮内膜癌、肺癌、卵巣癌、膵癌又は前立腺癌の治療が興味深い。特定の実施形態において、メラノーマは高リスクメラノーマである。
【0149】
本併用療法を使用して治療することのできる癌には、とりわけ、他の化学療法による治療に難治性の症例が含まれ得る。用語「難治性」は、本明細書で使用されるとき、別の化学療法剤による治療後に抗増殖反応を全く又はごく弱くしか示さない(例えば、腫瘍成長の阻害を全く又はごく弱くしか示さない)癌(及び/又はその転移)を指す。これらは、他の化学療法では十分に治療できない癌である。難治性の癌には、(i)患者の治療において1つ以上の化学療法が既に不奏効となっている癌のみならず、(ii)他の手段、例えば生検及び化学療法の存在下における培養によって難治性であることが示され得る癌もまた包含される。
【0150】
本明細書に記載される併用療法はまた、それを必要としている患者であって、これまでに治療を受けたことのない患者の治療にも適用可能である。
【0151】
本明細書に記載される併用療法はまた、対象に新生物は検出されないものの疾患再発リスクが高い場合にも適用可能である。
【0152】
また、自家造血幹細胞移植(AHSCT)を受けたことのあるそれを必要としている患者、詳細には、AHSCTを受けた後に残存疾患を示す患者の治療も特に興味深い。AHSCT後のセッティングは、少量の残存疾患、恒常性増殖状態に対する免疫細胞の注入、及びいかなる再発を遅延させる標準治療もないことによって特徴付けられる。これらの特徴は、特許請求される新生物ワクチン又は免疫原性組成物及びチェックポイント阻害薬組成物を使用して疾患再発を遅延させるまたとない機会を提供する。
【0153】
医薬組成物/送達方法
本発明はまた、本発明に係る1つ以上の化合物(その薬学的に許容可能な塩を含む)の有効量を、場合により薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は添加剤との組み合わせで含む医薬組成物にも関する。
【0154】
併用として投与される場合、療法剤(即ち新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び1つ以上のチェックポイント阻害薬)は、同じ時点又は異なる時点で投与される別個の組成物として製剤化されてもよく、又は療法剤は単一の組成物として投与されてもよい。
【0155】
本組成物は、1日1回、1日2回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2ヵ月に1回、6ヵ月に1回、又は1年に1回投与され得る。投与間隔は、個々の患者の必要性に応じて調整することができる。長い投与間隔には、徐放製剤又はデポー製剤を使用することができる。
【0156】
本発明の組成物は急性の疾患及び疾患病態の治療に使用することができ、また慢性病態の治療にも使用し得る。詳細には、本発明の組成物は、新生物の治療又は予防方法において使用される。
【0157】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、又は5年、10年、又は15年を超える期間;又は例えば、範囲の下端が14日~15年の間の任意の期間であり、且つ範囲の上端が15日~20年の間である日単位、月単位又は年単位の任意の期間範囲(例えば、4週間~15年、6ヶ月~20年)にわたり投与される。ある場合には、患者の生涯にわたり本発明の化合物が投与されることが有利であり得る。好ましい実施形態において、患者は疾患又は障害の進行を確認するためモニタされ、それに従い用量が調整される。好ましい実施形態において、本発明に係る治療は、少なくとも2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、又は5年間、10年間、15年間、20年間、又は対象の生涯にわたり有効である。
【0158】
本明細書に記載されるとおり、特定の実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始前に開始される。他の実施形態では、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始後に開始される。さらに他の実施形態では、チェックポイント阻害薬の投与は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与開始と同時に開始される。
【0159】
チェックポイント阻害薬の投与は、チェックポイント阻害薬の初回投与後2、3、4、5、6、7、8週間おき又はそれ以上の週数おきに継続され得る。1週目には1~7日目が含まれることが意味され、2週目には8~14日目が含まれることが意味され、3週目には15~21日目が含まれることが意味され、及び4週目には22~28日目が含まれることが意味されると理解される。投与が週間隔であると記載されるとき、それは、約7日間あくことを意味するが、しかし任意の所与の週において当該の日は予定日の1日以上前又は1日以上後であり得る。
【0160】
特定の実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与前1週間は保留される。他の実施形態では、チェックポイント阻害薬の投与は、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与中は保留される。
【0161】
外科的切除は、手術を用いて縦隔腫瘍、神経原性腫瘍、又は胚細胞腫瘍、又は胸腺腫などの癌の異常組織を除去する。特定の実施形態において、チェックポイント阻害薬の投与は腫瘍切除後に開始される。他の実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与は腫瘍切除の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間後又はそれ以上後に開始される。好ましくは、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与は腫瘍切除の4、5、6、7、8、9、10、11又は12週間後に開始される。
【0162】
プライム/ブーストレジメンは、ワクチン又は免疫原性若しくは免疫学的組成物の逐次投与を指す。特定の実施形態では、新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はプライム/ブースト投薬レジメンであり、例えば新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はプライミングとして1、2、3又は4週目であり、及び新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与はブーストとして2、3又は4ヵ月目である。別の実施形態では、異種プライム-ブースト法を用いてより高い細胞傷害性T細胞応答が誘発される(Schneider et al.,「異種プライム-ブースト免疫化戦略を用いたCD8+ T細胞の誘導(Induction of CD8+ T cells using heterologous prime-boost immunisation strategies)」,Immunological Reviews Volume 170,Issue 1,pages 29-38,August 1999を参照)。別の実施形態では、ネオ抗原をコードするDNAを使用したプライミングの後に、タンパク質のブーストが続く。別の実施形態では、タンパク質を使用したプライミングの後に、ネオ抗原をコードするウイルスによるブーストが続く。別の実施形態では、ネオ抗原をコードするウイルスを使用してプライミングが行われ、別のウイルスを使用してブーストが行われる。別の実施形態では、タンパク質を使用してプライミングが行われ、DNAを使用してブーストが行われる。好ましい実施形態では、DNAワクチン又は免疫原性組成物を使用してT細胞応答がプライミングされ、組換えウイルスワクチン又は免疫原性組成物を使用してその応答がブーストされる。別の好ましい実施形態では、ウイルスワクチン又は免疫原性組成物はタンパク質又はDNAワクチン又は免疫原性組成物と共投与され、タンパク質又はDNAワクチン又は免疫原性組成物のアジュバントとして働く。次に患者は、ウイルスワクチン又は免疫原性組成物、タンパク質、又はDNAワクチン又は免疫原性組成物のいずれかでブーストされ得る(Hutchings et al.,「タンパク質とウイルスワクチンとの併用は強力な細胞性及び体液性免疫応答並びにマウスマラリア攻撃感染からの防御の増強を誘導する(Combination of protein and viral vaccines induces potent cellular and humoral immune responses and enhanced protection from murine malaria challenge)」.Infect Immun.2007 Dec;75(12):5819-26.Epub 2007 Oct 1を参照)。
【0163】
医薬組成物は、ヒト及び他の哺乳動物を含めた、それを必要としている患者への投与用医薬剤を作製するための従来の薬学方法に従い処理することができる。
【0164】
ネオ抗原ペプチドの改変はペプチドの溶解性、バイオアベイラビリティ及び代謝速度に影響を及ぼし、従って活性種の送達の制御をもたらし得る。溶解性は、ネオ抗原ペプチドを調製し、且つ十分に当業者の常法の技術の範囲内にある公知の方法によって試験することにより評価し得る。
【0165】
コハク酸又はその薬学的に許容可能な塩(コハク酸塩)を含む医薬組成物が、ネオ抗原ペプチドに関して溶解性の向上をもたらし得ることが分かっている。従って、一態様において、本発明は、少なくとも1つのネオ抗原ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と;pH調整剤(塩基、例えばジカルボン酸塩又はトリカルボン酸塩、例えばコハク酸又はクエン酸の薬学的に許容可能な塩など)と;薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、少なくとも1つのネオ抗原ペプチドを含む溶液を塩基、例えばジカルボン酸塩又はトリカルボン酸塩、例えばコハク酸又はクエン酸の薬学的に許容可能な塩(コハク酸ナトリウムなど)と組み合わせることによるか、又は少なくとも1つのネオ抗原ペプチドを含む溶液を、塩基、例えばジカルボン酸塩又はトリカルボン酸塩、例えばコハク酸又はクエン酸の薬学的に許容可能な塩を含む溶液(例えばコハク酸塩緩衝溶液を含む)と組み合わせることによって調製し得る。特定の実施形態において、本医薬組成物はコハク酸ナトリウムを含む。特定の実施形態において、pH調整剤(クエン酸塩又はコハク酸塩など)は組成物中に約1mM~約10mMの濃度で存在し、及び特定の実施形態において、約1.5mM~約7.5mM、又は約2.0~約6.0mM、又は約3.75~約5.0mMの濃度で存在する。
【0166】
本医薬組成物の特定の実施形態において、薬学的に許容可能な担体は水を含む。特定の実施形態において、薬学的に許容可能な担体はデキストロースをさらに含む。特定の実施形態において、薬学的に許容可能な担体はジメチルスルホキシドをさらに含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は免疫調節薬又はアジュバントをさらに含む。特定の実施形態において、免疫調節薬(immunodulator)又はアジュバントは、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクター系、PLGAマイクロパーティクル、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、及びAquila社のQS21 stimulonからなる群から選択される。特定の実施形態において、免疫調節薬又はアジュバントはポリICLCを含む。
【0167】
キサンテノン誘導体、例えば、バジメザン又はAsA404(別名5,6-ジメチルキサンテノン(dimethylaxanthenone)-4-酢酸(DMXAA))などもまた、本発明の実施形態に係るアジュバントとして使用し得る。或いは、かかる誘導体はまた、本発明のワクチン又は免疫原性組成物と並行して例えば全身性又は腫瘍内送達を介して投与することにより、腫瘍部位で免疫を刺激し得る。理論によって拘束されるものではないが、かかるキサンテノン誘導体は、IFN遺伝子刺激因子(STING)受容体を介してインターフェロン(IFN)産生を刺激することにより作用すると考えられる(例えば、Conlon et al.(2013)「マウスSTINGは血管破裂剤5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸に応答して結合し及びシグナル伝達するが、ヒトSTINGはこれを行わない(Mouse,but not Human STING,Binds and Signals in Response to the Vascular Disrupting Agent 5,6-Dimethylxanthenone-4-Acetic Acid)」,Journal of Immunology,190:5216-25及びKim et al.(2013)「抗癌フラボノイドはマウス選択的STINGアゴニストである(Anticancer Flavonoids are Mouse-Selective STING Agonists)」,8:1396-1401)を参照)。
【0168】
ワクチン又は免疫学的組成物はまた、アクリル系又はメタクリル系ポリマー及び無水マレイン酸・アルケニル誘導体共重合体から選択されるアジュバント化合物も含み得る。詳細には、それは、アクリル酸又はメタクリル酸が糖又は多価アルコールのポリアルケニルエーテルで架橋されたポリマー(カルボマー)、詳細にはアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されたポリマーである。それはまた、無水マレイン酸及びエチレンが例えばジビニルエーテルで架橋された共重合体であってもよい(米国特許第6,713,068号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照)。
【0169】
特定の実施形態において、pH調整剤は、本明細書に記載されるとおりのアジュバント又は免疫調節薬を安定化させることができる。
【0170】
特定の実施形態において、医薬組成物は、1つ~5つのペプチド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デキストロース、水、コハク酸塩、ポリI:ポリC、ポリ-L-リジン、カルボキシメチルセルロース、及び塩化物を含む。特定の実施形態において、1つ~5つのペプチドの各々は300μg/mlの濃度で存在する。特定の実施形態において、本医薬組成物は≦3体積%のDMSOを含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は水中3.6~3.7%のデキストロースを含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は3.6~3.7mMのコハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)を含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は0.5mg/mlのポリI:ポリCを含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は0.375mg/mlのポリ-L-リジンを含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は1.25mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。特定の実施形態において、本医薬組成物は0.225%の塩化ナトリウムを含む。
【0171】
医薬組成物は、本明細書に記載される腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドを、本明細書に記載されている疾患及び病態(例えば、新生物/腫瘍)の治療に治療上有効な量で、任意選択で薬学的に許容可能な添加剤、担体及び/又は賦形剤と組み合わせて含む。当業者は、本開示及び当該技術分野における知識から、本発明に係る1つ以上の化合物の治療有効量が、治療しようとする病態、その重症度、用いられる治療レジメン、使用する薬剤の薬物動態、並びに治療される患者(動物又はヒト)によって異なり得ることを認識するであろう。
【0172】
本発明に係る医薬組成物を調製するため、本発明に係る化合物の1つ以上の治療有効量は、好ましくは、用量が作製されるように従来の医薬配合技法に従い薬学的に許容可能な担体と徹底的に混合される。担体は、例えば、数ある中でもとりわけ、眼球、経口、局所又は非経口、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、ローション及び時限放出植込み型製剤など、投与に望ましい調製形態に応じて多種多様な形態をとり得る。経口剤形として医薬組成物を調製する際には、任意の通常の医薬媒体が用いられ得る。従って、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口製剤には、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを含めた好適な担体及び添加剤が用いられ得る。散剤、錠剤、カプセルなどの固形経口製剤には、及び坐薬などの固形製剤には、デンプン、糖担体、例えばデキストロース、マンニトール、ラクトース及び関連する担体、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含めた好適な担体及び添加剤が用いられ得る。必要であれば、錠剤又はカプセルは腸溶性コーティングされてもよく、又は標準的な技法によって徐放性であってもよい。
【0173】
活性化合物は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中に、治療される患者に重大な毒性作用を引き起こすことなしに所望の徴候に治療上有効な量を患者に送達するのに十分な量で含まれる。
【0174】
経口組成物は、概して不活性希釈剤又は食用担体を含む。経口組成物はゼラチンカプセルに封入されるか又は錠剤に圧縮され得る。経口治療薬投与の目的上、活性化合物又はそのプロドラッグ誘導体は賦形剤と添合され、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用され得る。薬剤適合性を有する結合剤、及び/又は補助剤材料が組成物の一部として含まれてもよい。
【0175】
錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分、又は類似した性質の化合物のいずれかを含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤、アルギン酸又はコーンスターチなどの分散剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料などの香味剤。投薬量単位剤形がカプセルである場合、それは、本明細書で考察される材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。加えて、投薬量単位剤形は、投薬量単位の物理的形態を修飾する様々な他の材料、例えば、糖、シェラック、又は腸溶剤のコーティングを含有し得る。
【0176】
経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤又は錠剤など、各々が所定量の活性成分を含有する個別的な単位として;散剤又は顆粒として;水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体エマルション又は油中水型エマルションとして及びボーラスとして等、提供されてもよい。
【0177】
錠剤は、圧縮又は成形によって、場合により1つ以上の補助成分を伴い作製されてもよい。圧縮錠剤は、散剤又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を、場合により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性剤又は分散剤と混合して、好適な機械で圧縮することにより調製し得る。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することにより作製し得る。錠剤は場合によりコーティングされるか又は割線が入れられてもよく、中の活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。
【0178】
薬学的に活性な成分のかかる持続放出又は制御放出組成物を製剤化する方法は当該技術分野において公知であり、いくつかの交付済み米国特許に記載されており、その一部としては、限定はされないが、米国特許第3,870,790号明細書;同第4,226,859号明細書;同第4,369,172号明細書;同第4,842,866号明細書及び同第5,705,190号明細書(これらの開示は全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。コーティングは、化合物を腸に送達するために使用することができる(例えば、米国特許第6,638,534号明細書、同第5,541,171号明細書、同第5,217,720号明細書、及び同第6,569,457号明細書、及びこれらに引用される文献を参照のこと)。
【0179】
活性化合物又はその薬学的に許容可能な塩はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムなどの構成成分として投与されてもよい。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース又はフルクトース及び特定の保存剤、色素並びに着色料及び香味料を含有し得る。
【0180】
眼球、非経口、皮内、皮下、又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液は以下の構成成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば注入用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性を調整する薬剤。
【0181】
特定の実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、任意選択で追加的な共溶媒を伴う水性溶媒、即ち水を含む溶媒である。例示的な薬学的に許容可能な担体としては、水、緩衝水溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など、及び5%デキストロース水溶液(D5W)が挙げられる。特定の実施形態において、水性溶媒には、例えば約1~4%、又は1~3%の量のジメチルスルホキシド(DMSO)がさらに含まれる。特定の実施形態において、薬学的に許容可能な担体は等張性である(即ち、血漿などの体液と実質的に同じ浸透圧を有する)。
【0182】
一実施形態において、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化されたデリバリーシステムを含め、制御放出製剤など、化合物を体内からの急速な排出から保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)などの生分解性生体適合性ポリマーが用いられてもよい。かかる製剤の調製方法は、本開示及び当該技術分野における知識を踏まえて当業者の範囲内にある。
【0183】
当業者は、この開示及び当該技術分野における知識から、錠剤に加えて、活性成分の持続放出又は制御放出を提供するため他の剤形を製剤化し得ることを認識する。かかる剤形としては、限定はされないが、カプセル、顆粒及びジェルキャップが挙げられる。
【0184】
リポソーム懸濁液もまた薬学的に許容可能な担体であり得る。これは当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、適切な1つ又は複数の脂質を無機溶媒中に溶解し、次に溶媒を蒸発させて、容器の表面に乾燥した脂質の薄膜を残すことにより調製し得る。次に容器に活性化合物の水溶液が導入される。次に容器を手で旋回させて容器の側面から脂質材料を遊離させ、脂質凝集物を分散させると、それによりリポソーム懸濁液が形成される。当業者に周知されている他の調製方法もまた、本発明のこの態様で用いることができる。
【0185】
製剤は、好都合には単位投薬量剤形で提供されてもよく、従来の製薬技法によって調製されてもよい。かかる技法は、活性成分と1つ又は複数の医薬担体又は1つ又は複数の賦形剤とを会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体と一様に且つ徹底的に会合させることによるか、又は固体担体を微粉化することによるか又は両方により、及び次に、必要であれば生成物を成形することにより調製される。
【0186】
口内における局所投与に好適な製剤及び組成物には、香味付けされた基剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント中に成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリンなどの不活性基剤、又はスクロース及びアカシア中に活性成分を含むトローチ;及び投与しようとする成分を好適な液体担体中に含む洗口剤が含まれる。
【0187】
皮膚への局所投与に好適な製剤は、投与しようとする成分を薬学的に許容可能な担体中に含む軟膏、クリーム、ゲル及びペーストとして提供され得る。好ましい局所デリバリーシステムは、投与しようとする成分を含有する経皮パッチである。
【0188】
直腸投与用の製剤は、例えばカカオ脂又はサリチル酸塩を含む好適な基剤を伴う坐薬として提供され得る。
【0189】
担体が固体である場合の経鼻投与に好適な製剤は、例えば20~500ミクロンの範囲の粒度を有する粗末を含み、これは、嗅薬の投与方法で、即ち鼻に当てるように保持された粉末の容器から鼻道を介して急速吸入することにより投与される。担体が液体である場合の好適な製剤は、例えば鼻腔内スプレーとして又は点鼻液としての投与用液体であり、活性成分の水性又は油性溶液を含む。
【0190】
腟内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて、当該技術分野において適切であることが知られているとおりの担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又はスプレー製剤として提供され得る。
【0191】
非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は頻回用量バイアルに封入され得る。静脈内投与される場合、好ましい担体としては、例えば生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
【0192】
非経口製剤については、担体は通常、滅菌水又は塩化ナトリウム水溶液を含むが、分散を助けるものを含めた他の成分が含まれてもよい。当然ながら、滅菌水が使用され、且つ無菌のまま維持される場合、組成物及び担体もまた滅菌される。また注射用懸濁液が調製されてもよく、この場合、適切な液体担体、懸濁剤などが用いられ得る。
【0193】
非経口投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。これらの製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば密閉されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時調合注射溶液及び懸濁液は、これまでに記載されている種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0194】
活性化合物の投与は連続投与(静脈内点滴)から1日数回の経口投与(例えば、Q.I.D.)にまで及び得るとともに、眼内又は眼球経路を含め、数ある投与経路の中でもとりわけ、経口、局所、眼内又は眼球、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮(浸透促進剤を含み得る)、頬側及び坐薬投与を含み得る。
【0195】
新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬、及び任意の追加の薬剤は、従来の薬学的に許容可能な担体、補助剤、及び媒体を含有する投薬量単位製剤で、注射により、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、直腸内に、腟内に、又は局所的に投与されてもよい。用語の非経口とは、本明細書で使用されるとき、1つ又は複数のリンパ節内、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、輸液法、腹腔内、眼又は眼球、硝子体内、頬内、経皮、鼻腔内、頭蓋内及び硬膜内を含む脳内、足首関節、膝関節、股関節、肩関節、肘関節、手首関節を含む関節内、腫瘍内に直接など、及び坐薬形態を含む。
【0196】
特定の実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物又は1つ以上のチェックポイント阻害薬は静脈内投与又は皮下投与される。
【0197】
主題の療法の適用は、目的の部位に投与されるように局所的であってもよい。特定の実施形態において、チェックポイント阻害薬は新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位の近傍、例えばワクチン又は免疫原性組成物の投与部位の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cm以内、及び好ましくは新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位の5cm以内に皮下投与される。組成物を投与する当業者は、対象に投与されるチェックポイント阻害薬の濃度が投与位置に基づき変化し得ることを理解するべきである。例えば、チェックポイント阻害薬が新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位の近傍に投与される場合、チェックポイント阻害薬の濃度は低下させてもよい。
【0198】
目的の部位に主題の組成物を提供するため、注入、カテーテルの使用、トロカール、プロジェクタイル、プルロニックゲル、ステント、持続性薬物放出ポリマー又は内部アクセスを提供する他の装置など、様々な技法を用いることができる。患者から摘出したため臓器又は組織にアクセス可能である場合、かかる臓器又は組織が主題の組成物を含有する媒体浴中に入れられてもよく、主題の組成物が臓器に塗布されてもよく、又は任意の好都合な方法で適用されてもよい。
【0199】
腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドは、所望の局所的又は全身性生理又は薬理効果の達成において有効な組成物の制御及び持続放出に好適な装置によって投与され得る。この方法は、薬剤の放出が所望される領域に持続放出型薬物送達システムを位置決めするステップと、薬剤を装置から所望の治療領域へと移動させるステップとを含む。
【0200】
腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドは、少なくとも1つの公知の他の治療剤、又は前記薬剤の薬学的に許容可能な塩と併用して利用されてもよい。併用療法に用いることのできる公知の治療剤の例としては、限定はされないが、コルチコステロイド(例えば、コルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、アスピリン、インドメタシン(indomethicin)、ナプロキセン)、アルキル化剤、例えば、ブスルファン、シスプラチン、マイトマイシンC、及びカルボプラチン;抗有糸分裂剤、例えば、コルヒチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、及びドセタキセル;トポI阻害薬、例えば、カンプトテシン及びトポテカン;トポII阻害薬、例えば、ドキソルビシン及びエトポシド;及び/又はRNA/DNA代謝拮抗薬、例えば、5-アザシチジン、5-フルオロウラシル及びメトトレキサート;DNA代謝拮抗薬、例えば、5-フルオロ-2’-デオキシ-ウリジン、ara-C、ヒドロキシウレア及びチオグアニン;抗体、例えば、HERCEPTIN及びRITUXANが挙げられる。
【0201】
本明細書に詳細に挙げた成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤タイプを考慮した当該技術分野における従来の他の薬剤を含み得ることが理解されなければならず、例えば、経口投与に好適なものが香味剤を含み得る。
【0202】
薬学的に許容可能な塩の形態は、本発明に係る医薬組成物に含めるのに好ましい化学的形態の本発明に係る化合物であり得る。
【0203】
本化合物又はその誘導体は、これらの薬剤のプロドラッグ形態を含め、薬学的に許容可能な塩の形態で提供されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語の薬学的に許容可能な塩又は複合体とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し且つ正常細胞に対して限られた毒性効果を呈する本発明に係る活性化合物の適切な塩又は複合体を指す。かかる塩の非限定的な例は、とりわけ、(a)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)と形成される酸付加塩、及び酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、及びポリグルタミン酸などの有機酸と形成される塩;(b)数ある中でもとりわけ、亜鉛、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどの金属カチオンと形成される塩基付加塩などである。
【0204】
本明細書における化合物は市販されており、又は合成することができる。当業者は理解し得るとおり、本明細書の式の化合物を合成するさらなる方法が当業者には明らかである。加えて、様々な合成のステップを別の順番又は順序で実施して所望の化合物を得てもよい。本明細書に記載される化合物の合成において有用な合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は当該技術分野において公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,2nd.Ed.,Wiley-VCH Publishers(1999);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd.Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1999);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、及びこれらの続版に記載されるものが含まれる。
【0205】
投薬量
本明細書に記載される薬剤を医薬品としてヒト又は動物に投与するとき、薬剤はそれ自体で投与することも、又は薬学的に許容可能な担体、賦形剤、若しくは希釈剤と組み合わせた活性成分を含有する医薬組成物として投与することもできる。
【0206】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベル及び時間的投与コースは、特定の患者、組成物、及び投与方法について、患者に毒性となることなく所望の治療応答を実現するのに有効な活性成分の量が達成されるように変えることができる。概して、本発明の薬剤又は医薬組成物は、ウイルス感染症及び/又は自己免疫疾患に関連する症状を軽減し又は消失させるのに十分な量で投与される。
【0207】
薬剤の好ましい用量は、患者が忍容し得る、且つ重篤な又は許容できない副作用を生じない最大量である。
【0208】
有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を踏まえれば、十分に当業者の能力の範囲内にある。概して、薬剤の効果のある量又は有効な量は、初めに低用量の薬剤を投与し、次に治療対象において所望の効果(例えば、ウイルス感染症又は自己免疫疾患に関連する症状の軽減又は消失)が最小の又は許容し得る毒性の副作用で観察されるまで投与用量又は投薬量を漸増させることにより決定される。本発明の医薬組成物の投与に適切な用量及び投薬スケジュールを決定するために適用可能な方法は、例えば、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman et al.,eds.,11th Edition,McGraw-Hill 2005、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th and 21st Editions,Gennaro and University of the Sciences in Philadelphia,Eds.,Lippencott Williams & Wilkins(2003及び2005)(これらの各々が本明細書によって参照により援用される)に記載されている。
【0209】
好ましい単位投薬量製剤は、投与される成分の1日用量又は単位、本明細書で考察するとおりの、1日サブ用量、又はそれらの適切な割合を含有するものである。
【0210】
本発明の腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド及び/又は本発明の組成物で障害又は疾患を治療するための投薬量レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、病態の重症度、投与経路、及び用いられる詳細な化合物を含めた種々の要因に基づく。従って、投薬量レジメンは幅広く異なり得るが、標準方法を用いて常法で決定することができる。
【0211】
対象に投与される量及び投薬レジメンは、投与方法、治療される病態の性質、治療される対象の体重及び処方医師の判断など、多くの要因に依存し得る;かかる要因は全て、この開示及び当該技術分野における知識から当業者の範囲内にある。
【0212】
本発明に係る治療活性を有する製剤中に含まれる化合物の量は、疾患又は病態の治療に有効な量である。
【0213】
一般に、剤形中における好ましい本化合物の治療有効量は、通常、使用される化合物、治療される病態又は感染及び投与経路に応じて、患者の約0.025mg/kg/日弱~約2.5g/kg/日、好ましくは約0.1mg/kg/日~約100mg/kg/日又はそれよりかなり多い範囲であるが、この投薬量範囲の例外が本発明により企図され得る。その最も好ましい形態では、本発明に係る化合物は約1mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲の量で投与される。化合物の投薬量は、治療される病態、詳細な化合物、及び他の臨床学的因子、例えば患者の体重及び状態並びに化合物の投与経路に依存する。本発明はヒト及び家畜の両方への使用に適用を有することが理解されるべきである。
【0214】
特定の例示的実施形態によれば、本ワクチン又は免疫原性組成物は、ネオ抗原ペプチド当たり約10μg~1mgの用量で投与される。特定の例示的実施形態によれば、本ワクチン又は免疫原性組成物は、ネオ抗原ペプチド当たり約10μg~2000μgの平均週用量レベルで投与される。特定の例示的実施形態によれば、チェックポイント阻害薬は約0.1~10mg/kgの用量で投与される。特定の例示的実施形態によれば、抗CTLA4抗体は約1mg/kg~3mg/kgの用量で投与される。例えば、特定の例示的実施形態において、ニボルマブは、3mg/kgの標準的な単剤投与レベルでの投薬である。1つ以上のチェックポイント阻害薬がワクチン又は免疫原性組成物の投与部位に投与される場合、阻害薬は、好ましくは新生物ワクチン又は免疫原性組成物の投与部位当たり約0.1~1mgの用量で投与される。
【0215】
好ましい実施形態では、単独で、又はネオ抗原ワクチン又は免疫原性組成物と併用して、チェックポイント阻害薬の臨床試験で使用される濃度及びタイミングが用いられる。Topalian,et al.N Engl J Med 2012;366:2443-2454は、選択の進行固形腫瘍を有するそれを必要としている患者における、PD-1に対する完全ヒトIgG4遮断モノクローナル抗体、BMS-936558の安全性、抗腫瘍活性、及び薬物動態を評価した第1相試験を記載している。この抗体は、各8週間の治療サイクルの2週間おきの静脈内注入として投与された。毎回の治療サイクル後に応答が評価された。患者は最長2年(12サイクル)にわたる治療を受けた。進行メラノーマ、非小細胞肺癌、腎細胞癌、去勢抵抗性前立腺癌、又は結腸直腸癌の患者が登録された。用量レベル当たり3~6人の患者のコホートが体重1キログラム当たり1.0、3.0、又は10.0mgの用量で順次登録された。最初は、各約16人の患者の5つの拡大コホートが、メラノーマ、非小細胞肺癌、腎細胞癌、去勢抵抗性前立腺癌、及び結腸直腸癌に関してキログラム当たり10.0mgの用量で登録された。初期の活性シグナルに基づき、メラノーマ(キログラム当たり1.0又は3.0mgの用量、続いてコホートをキログラム当たり0.1、0.3、又は1.0mgに無作為に割り当て)、肺癌(扁平上皮又は非扁平上皮サブタイプの患者、キログラム当たり1.0、3.0、又は10.0mgの用量に無作為に割り当て)、及び腎細胞癌(キログラム当たり1.0mgの用量で)に関して各約16人の患者の追加の拡大コホートが登録された。
【0216】
Wolchok,et al.N Engl J Med 2013;369:122-133は、進行メラノーマにおけるニボルマブ+イピリムマブを使用した臨床試験を記載している。この試験では、患者に静脈内用量のニボルマブ及びイピリムマブが4用量について3週間おきに投与され、続いてニボルマブ単独が4用量について3週間おきに投与された。続いて併用治療が最大8用量について12週間おきに投与された。逐次的レジメンでは、以前イピリムマブで治療された患者がニボルマブを最大48用量について2週間おきに受けた。許容レベルの有害事象に関連した最大用量は、体重1キログラム当たり1mgの用量のニボルマブ及びキログラム当たり3mgの用量のイピリムマブであった。
【0217】
Wolchok et al.,Clin.Cancer Res.15,7412;2009は、イピリムマブによる第II相臨床試験プログラムを記載している。患者は、導入療法(イピリムマブ10mg/kg、3週間おき×4)と、続く適格患者における維持療法(イピリムマブ10mg/kg、12週間おき、24週目に開始)による治療を受けた。
【0218】
Hamid et al.,N Engl J Med 2013;369:134-144は、メラノーマにおけるランブロリズマブ(抗PD-1)での安全性及び腫瘍応答について記載している。進行メラノーマ患者が、2又は3週間おきに体重1キログラム当たり10mg又は3週間おきにキログラム当たり2mgの用量でランブロリズマブの静脈内投与を受けた。患者には、免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブによる前治療を受けた患者と、それを受けなかった患者との両方が含まれた。
【0219】
Spigel et al.,J Clin Oncol 31,2013(suppl;abstr 8008)は、有効性及び安全性を最適化するように設計された、PD-L1を標的化する操作されたFc-ドメインを含むヒトモノクローナルAbであるMPDL3280Aの第I相試験について記載している。扁平上皮又は非扁平上皮NSCLC患者が、MPDL3280Aを最長1年にわたり1~20mg/kgの用量でIVによって受けた。
【0220】
薬物組成物中の活性化合物の濃度は、薬物の吸収、分布、不活性化、及び排泄率並びに当業者に公知の他の要因に依存し得る。投薬量の値はまた、軽減しようとする病態の重症度によっても変わり得ることに留意すべきである。さらに、任意の特定の対象について、具体的な投薬量レジメンは個別の必要性及び組成物投与の投与者又は監督者の専門的な判断に従い時間とともに調整されなければならないこと、及び本明細書に示す濃度範囲は例示に過ぎず、特許請求される組成物の範囲又は実施を限定する意図はないことが理解されるべきである。活性成分は一度に投与されてもよく、又は複数の少量の用量に分割して種々の時間間隔で投与されてもよい。
【0221】
本発明は、本明細書に記載される少なくとも1つの腫瘍特異的ネオ抗原を含有する医薬組成物を提供する。実施形態において、この医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤を含有し、これには、それ自体は組成物の投与を受ける対象に有害な免疫応答の発生を引き起こさない、且つ過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬品が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、哺乳動物、より詳細にはヒトでの使用について連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認済みであるか、又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。これらの組成物はウイルス感染症及び/又は自己免疫疾患の治療及び/又は予防に有用であり得る。
【0222】
薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び他の賦形剤に関する周到な考察が、Remington’s Pharmaceutical Sciences(17th ed.,Mack Publishing Company)及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy(21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins)(これらは本明細書によって参照により援用される)に提供されている。医薬組成物の配合は投与方法に適していなければならない。実施形態において、医薬組成物はヒトへの投与に好適であり、無菌、粒子状物質不含及び/又は非発熱性であり得る。
【0223】
薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、滅菌等張緩衝水溶液、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0224】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤もまた組成物中に存在し得る。
【0225】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0226】
実施形態において、医薬組成物は、再構成に好適な凍結乾燥粉末などの固体形態、液体溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤、又は散剤で提供される。
【0227】
実施形態において、医薬組成物は液体形態で、例えば、医薬組成物中の活性成分の分量及び濃度を指示する密閉容器内に提供される。関連する実施形態では、液体形態の医薬組成物がハーメチックシール容器に提供される。
【0228】
本発明の医薬組成物を製剤化する方法は従来どおりであり、当該技術分野において周知されている(Remington及びRemington’sを参照)。当業者は、所望の特性(例えば、投与経路、バイオセーフティ、及び放出プロファイル)を有する医薬組成物を容易に製剤化することができる。
【0229】
医薬組成物の調製方法は、活性成分と薬学的に許容可能な担体、及び場合により1つ以上の補助成分とを会合させるステップを含む。医薬組成物は、活性成分を液体担体と一様に且つ徹底的に会合させることによるか、又は固体担体を微粉化することによるか、又は両方により、及び次に、必要であれば生成物を成形することにより調製し得る。医薬組成物の調製に関するさらなる方法論が、多層剤形の調製を含め、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(9th ed.,Lippincott Williams & Wilkins)(本明細書によって参照により援用される)に記載されている。
【0230】
経口投与に好適な医薬組成物は、カプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ(香味付けされた基剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントを使用する)、散剤、顆粒の形態であっても、或いは水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として、或いは水中油型又は油中水型液体エマルションとして、又はエリキシル剤又はシロップとして、又はトローチとして(ゼラチン及びグリセリンなどの不活性基剤、又はスクロース及びアカシアを使用する)及び/又は洗口剤としての形態などであってもよく、各々が、1つ又は複数の活性成分として本明細書に記載される1つ又は複数の化合物、その誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの所定量を含有する。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与されてもよい。
【0231】
経口投与用の固形剤形(例えば、カプセル、錠剤、丸薬、糖衣剤、散剤、顆粒など)では、活性成分は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤、例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、及び/又は以下のいずれかと混合される:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解抑制剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物;及び(10)着色剤。カプセル、錠剤、及び丸薬の場合、医薬組成物は緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ソフト及びハード充填ゼラチンカプセル中における充填剤、及び賦形剤、例えばラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して調製することもできる。
【0232】
錠剤は、圧縮又は成形によって、場合により1つ以上の補助成分を伴い作製されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、及び/又は分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末状活性成分の混合物を好適な機械で成形することにより作製し得る。
【0233】
錠剤、並びに糖衣剤、カプセル、丸薬、及び顆粒などの他の固形剤形は、場合により割線が入れられてもよく、又は腸溶性コーティング及び当該技術分野において周知されている他のコーティングなどのコーティング及びシェルを伴い調製されてもよい。
【0234】
一部の実施形態では、活性成分の効果を延ばすため、皮下又は筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、難水溶性である結晶性又は非晶質物質の液体懸濁物を使用することにより達成し得る。このとき活性成分の吸収速度はその溶解速度に依存し、次に溶解速度は結晶の大きさ及び結晶形に依存し得る。或いは、非経口投与される活性成分の吸収遅延は、化合物を油媒体中に溶解又は懸濁することにより達成される。加えて、注射用医薬剤形の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を取り入れることによりもたらされ得る。
【0235】
制御放出非経口組成物は、水性懸濁液、マイクロスフェア、マイクロカプセル、磁性マイクロスフェア、油剤、油懸濁液、エマルションの形態であってもよく、又は活性成分が1つ又は複数の生体適合性担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラント又は輸液用器具に組み込まれてもよい。
【0236】
マイクロスフェア及び/又はマイクロカプセルの調製に使用される材料には、生分解性/生体内侵食性ポリマー、例えば、ポリグラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)及びポリ(乳酸)が含まれる。
【0237】
制御放出非経口製剤を製剤化する際に用い得る生体適合性担体には、デキストランなどの炭水化物、アルブミン、リポタンパク質又は抗体などのタンパク質が含まれる。
【0238】
インプラントに使用される材料は、非生分解性、例えば、ポリジメチルシロキサンであるか、又は生分解性、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)などであり得る。
【0239】
実施形態において、1つ又は複数の活性成分はエアロゾルによって投与される。これは、化合物を含有する水性エアロゾル、リポソーム製剤、又は固体粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液が用いられてもよい。医薬組成物はまた、化合物の分解をもたらし得る剪断に薬剤が曝露されることを最小限に抑え得る音波ネブライザーを使用して投与することもできる。
【0240】
通常、水性エアロゾルは、1つ又は複数の活性成分の水溶液又は水性懸濁液を従来の薬学的に許容可能な担体及び安定剤と共に配合することにより作製される。担体及び安定剤は特定の化合物の要件によって異なるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、又はポリエチレングリコール)、無害のタンパク質、例えば、血清アルブミン、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類又は糖アルコール類を含む。エアロゾルは概して等張液から調製される。
【0241】
1つ又は複数の活性成分の局所投与又は経皮投与用剤形には、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入薬が含まれる。1つ又は複数の活性成分は、無菌条件下で薬学的に許容可能な担体と、及び適宜、任意の保存剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合することができる。
【0242】
本発明での使用に好適な経皮パッチが、Transdermal Drug Delivery:Developmental Issues and Research Initiatives(Marcel Dekker Inc.,1989)及び米国特許第4,743,249号明細書、同第4,906,169号明細書、同第5,198,223号明細書、同第4,816,540号明細書、同第5,422,119号明細書、同第5,023,084号明細書(これらは本明細書によって参照により援用される)に開示されている。経皮パッチはまた、経陰嚢パッチを含め、当該技術分野において周知されている任意の経皮パッチであってよい。かかる経皮パッチ中の医薬組成物は、当該技術分野において周知の1つ以上の吸収促進剤又は皮膚透過促進剤を含有し得る(例えば、米国特許第4,379,454号明細書及び同第4,973,468号明細書(これらは本明細書によって参照により援用される)を参照)。本発明で使用される経皮的治療薬システムは、イオントフォレシス、拡散、又はこれらの2つの効果の併用に基づき得る。
【0243】
経皮パッチは、身体への1つ又は複数の活性成分の制御送達を提供するというさらなる利点を有する。かかる剤形は、1つ又は複数の活性成分を適切な媒体中に溶解又は分散させることにより作製し得る。吸収促進剤を使用して、皮膚を通じた活性成分のフラックスを増加させることもできる。かかるフラックスの速度は、律速膜を提供するか、或いは1つ又は複数の活性成分をポリマーマトリックス又はゲル中に分散させるかのいずれかによって制御し得る。
【0244】
かかる医薬組成物は、クリーム、軟膏、ローション、リニメント剤、ゲル、ハイドロゲル、溶液、懸濁液、スティック、スプレー、ペースト、硬膏及び他の種類の経皮薬物デリバリーシステムの形態であってもよい。この組成物はまた、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤、例えば、乳化剤、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、浸透促進剤、キレート剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、香料、及び皮膚保護剤も含み得る。
【0245】
乳化剤の例としては、限定はされないが、天然に存在するゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン及びモノオレイン酸ソルビタン誘導体が挙げられる。
【0246】
抗酸化剤の例としては、限定はされないが、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、及びシステインが挙げられる。
【0247】
保存剤の例としては、限定はされないが、パラベン、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0248】
保湿剤の例としては、限定はされないが、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール及び尿素が挙げられる。
【0249】
浸透促進剤の例としては、限定はされないが、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン及びその誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール又はラウリン酸メチルを含むジエチレングリコールモノエチル又はモノメチルエーテル、ユーカリプトール、レシチン、TRANSCUTOL、及びAZONEが挙げられる。
【0250】
キレート剤の例としては、限定はされないが、EDTAナトリウム、クエン酸及びリン酸が挙げられる。
【0251】
ゲル形成剤の例としては、限定はされないが、カルボポール、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギン酸塩、ゼラチン及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0252】
1つ又は複数の活性成分に加えて、本発明の軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有し得る。
【0253】
散剤及びスプレーは、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。スプレーは、従来の噴射剤、例えばクロロフルオロ炭化水素、及び揮発性非置換炭化水素、例えばブタン及びプロパンをさらに含有し得る。
【0254】
注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に本発明の1つ又は複数の化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製される。化合物とポリマーの比率、及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、生体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルション中に薬物を封入することによっても調製される。
【0255】
皮下インプラントは当該技術分野において周知されており、本発明での使用に好適である。皮下植え込み方法は、好ましくは非刺激性で、機械的に弾性がある。インプラントは、マトリックスタイプ、リザーバタイプ、又はそれらのハイブリッドであってもよい。マトリックスタイプの装置において、担体材料は多孔質又は非多孔質、固体又は半固体、及び1つ又は複数の活性化合物に対して透過性又は不透過性であってもよい。担体材料は生分解性であってもよく、又は投与後にゆっくりと侵食し得る。場合によっては、マトリックスは非分解性であって、しかし代わりに担体材料が分解するマトリックスを通じた活性化合物の拡散に頼る。代替的な皮下インプラント方法はリザーバ装置を利用し、ここでは1つ又は複数の活性化合物が律速膜、例えば、成分濃度と無関係な(ゼロ次動態を有する)膜に取り囲まれている。律速膜に取り囲まれたマトリックスからなる装置もまた使用に好適である。
【0256】
リザーバタイプ及びマトリックスタイプの両方の装置とも、ポリジメチルシロキサン、例えばSILASTIC、又は他のシリコーンゴムなどを含有し得る。マトリックス材料は、不溶性ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチルビニルアセテート、ポリスチレン及びポリメタクリレート、並びにパルミトステアリン酸グリセロール、ステアリン酸グリセロール、及びベヘン酸グリセロールタイプのグリセロールエステルであってもよい。材料は疎水性又は親水性ポリマーであってもよく、場合により可溶化剤を含有する。
【0257】
皮下インプラント装置は、例えば米国特許第5,035,891号明細書及び同第4,210,644号明細書(これらは本明細書によって参照により援用される)に記載されるとおりの、任意の好適なポリマーで作製された遅延放出カプセルであってもよい。
【0258】
一般には、放出の律速及び薬物化合物の皮膚透過を提供するために、少なくとも4つの異なる手法を適用することが可能である。これらの手法は以下である:膜による抑制システム、接着拡散制御システム、マトリックス分散型システム及びマイクロリザーバシステム。制御放出性の経皮及び/又は局所組成物は、これらの手法を好適に取り合わせることにより達成し得ることが理解される。
【0259】
膜による抑制システムでは、活性成分は、金属プラスチックラミネートなどの薬物不透過性ラミネートから成形された浅いコンパートメントと、微孔性又は非多孔質高分子膜、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体などの律速高分子膜とに完全にカプセル化されたリザーバ中に存在する。活性成分は律速高分子膜を通って放出される。薬物リザーバでは、活性成分は固体ポリマーマトリックス中に分散しているか、又はシリコーン液などの浸出不可能な粘稠液体媒体中に懸濁されているかのいずれかであり得る。高分子膜の外表面に接着性ポリマーの薄層が貼り付けられており、この経皮システムと皮膚表面との密着した接触を実現する。接着性ポリマーは、好ましくは、低アレルギー性で且つ活性薬物物質と適合性を有するポリマーである。
【0260】
接着拡散制御システムでは、活性成分のリザーバは、活性成分を接着性ポリマー中に直接分散させて、次に、例えば溶媒キャスティングにより、活性成分を含有する接着剤を実質的に薬物不透過性の金属プラスチック裏当てのフラットシート上に塗布して薄い薬物リザーバ層を形成することにより形成される。
【0261】
マトリックス分散型システムは、活性成分を親水性又は親油性ポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散させることにより活性成分のリザーバが形成されることを特徴とする。次に薬物含有ポリマーが、実質的に十分に定義された表面積及び制御された厚さを有する円板に成形される。接着性ポリマーが周囲に沿って塗布され、円板の周りに接着剤のストリップが形成される。
【0262】
マイクロリザーバシステムは、リザーバシステムとマトリックス分散型システムとの組み合わせと考えることができる。この場合、活性物質のリザーバは、初めに薬物固体を水溶性ポリマーの水溶液中に懸濁し、次にこの薬物懸濁液を親油性ポリマー中に分散させて、非常に多数の浸出不可能な微小球体の薬物リザーバを形成することにより形成される。
【0263】
本明細書の制御放出、長期放出、及び持続放出組成物のいずれも、約30分~約1週間、約30分~約72時間、約30分~24時間、約30分~12時間、約30分~6時間、約30分~4時間、及び約3時間~10時間で活性成分を放出するように製剤化することができる。実施形態において、1つ又は複数の活性成分の有効濃度は、医薬組成物を対象に投与した後、対象体内で4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、又はそれ以上持続する。
【0264】
ワクチン又は免疫原性組成物
本発明は、併用治療方法に関する。併用治療は、少なくとも免疫原性組成物、例えば、特異的T細胞応答を生じさせることが可能な新生物ワクチン又は免疫原性組成物を含む。新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、本明細書に記載される方法によって同定される腫瘍特異的ネオ抗原に対応するネオ抗原ペプチド及び/又はネオ抗原ポリペプチドを含む。併用治療はまた、少なくとも1つのチェックポイント阻害薬も含む。詳細には、本発明は、(a)新生物ワクチン又は免疫原性組成物、及び(b)少なくとも1つのチェックポイント阻害薬を対象に投与するステップを含む新生物の治療又は予防方法に関する。
【0265】
好適な新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、好ましくは複数の腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドを含み得る。ある実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物は、1~100組のペプチド、より好ましくは1~50のかかるペプチド、さらにより好ましくは10~30組のペプチド、さらにより好ましくは15~25のペプチドを含み得る。別の好ましい実施形態によれば、ワクチン又は免疫原性組成物は、少なくとも1つのペプチド、より好ましくは2つ、3つ、4つ、又は5つのペプチドを含むことができる。特定の実施形態において、ワクチン又は免疫原性組成物は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30の異なるペプチドを含むことができる。
【0266】
ワクチン又は免疫原性組成物に含める各ペプチドの最適量及び最適投与レジメンは、当業者が過度の実験を行うことなく決定することができる。例えば、ペプチド又はその変異体は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射用に調製され得る。好ましいペプチド注射方法には、s.c、i.d.、i.p.、i.m.、及びi.v.が含まれる。好ましいDNA注射方法には、i.d.、i.m.、s.c、i.p.及びi.v.が含まれる。例えば、1~500mg、50μg~1.5mg、好ましくは10μg~500μgのペプチド又はDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチド又はDNAに依存し得る。この範囲の用量は、過去の試験で成功裏に用いられたものである(Brunsvig P F,et al.,Cancer Immunol Immunother.2006;55(12):1553-1564;M.Staehler,et al.,ASCO meeting 2007;Abstract No 3017)。ワクチン又は免疫原性組成物の他の投与方法は当業者に公知である。
【0267】
本発明の一実施形態において、異なる腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド及び/又はポリペプチドは、患者の新生物/腫瘍に対する免疫攻撃が生じる可能性が最大となるように新生物ワクチン又は免疫原性組成物中に使用するために選択される。理論によって拘束されるものではないが、多様な腫瘍特異的ネオ抗原ペプチドを含めると、新生物/腫瘍に対して幅広いスケールの免疫攻撃が生じ得ると考えられる。一実施形態において、選択された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド/ポリペプチドはミスセンス突然変異によってコードされる。第2の実施形態において、選択された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド/ポリペプチドはミスセンス突然変異とネオORF突然変異との組み合わせによってコードされる。第3の実施形態において、選択された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド/ポリペプチドはネオORF突然変異によってコードされる。
【0268】
選択された腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド/ポリペプチドがミスセンス突然変異によりコードされる一実施形態において、ペプチド及び/又はポリペプチドは、患者の特定のMHC分子と会合するその能力に基づき選択される。ネオORF突然変異から誘導されるペプチド/ポリペプチドもまた、患者の特定のMHC分子と会合するその能力に基づき選択され得るが、また患者の特定のMHC分子と会合しないと予測される場合であっても選択することができる。
【0269】
ワクチン又は免疫原性組成物は、特異的な細胞傷害性T細胞応答及び/又は特異的なヘルパーT細胞応答を生じさせる能力を有する。
【0270】
ワクチン又は免疫原性組成物はアジュバント及び/又は担体をさらに含み得る。有用なアジュバント及び担体の例を本明細書で提供する。組成物中のペプチド及び/又はポリペプチドは、担体、例えば、ペプチドをT細胞に提示する能力を有するタンパク質又は例えば樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞と会合することができる。
【0271】
アジュバントは、ワクチン又は免疫原性組成物に混合すると突然変異体ペプチドに対する免疫応答が増加するか又は他の形で修飾される任意の物質である。担体は、ネオ抗原ペプチドを会合させることが可能な足場構造、例えばポリペプチド又は多糖である。場合により、アジュバントは本発明のペプチド又はポリペプチドと共有結合的又は非共有結合的にコンジュゲートする。
【0272】
抗原に対する免疫応答を増加させるアジュバントの能力は、典型的には免疫介在性応答の顕著な増加、又は疾患症状の低減に現れる。例えば、体液性免疫の増加は、典型的には抗原に対して生じる抗体の力価の顕著な増加に現れ、T細胞活性の増加は、典型的には細胞増殖、又は細胞傷害性、又はサイトカイン分泌の増加に現れる。アジュバントはまた、例えば、一次体液性応答又はTh2応答を一次細胞性応答又はTh1応答に変化させることにより免疫応答も変え得る。
【0273】
好適なアジュバントとしては、限定はされないが、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL.ベクター系、PLGマイクロパーティクル、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquila社のQS21 stimulon(Aquila Biotech、Worcester、Mass.,米国)、マイコバクテリア抽出物及び合成細菌細胞壁模倣体、及び他の専売アジュバント、例えば、RibiのDetox、Quil又はSuperfosが挙げられる。樹状細胞に特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)及びそれらの製剤が以前記載されている(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18-27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3-11)。また、サイトカインを使用してもよい。いくつかのサイトカインが、リンパ組織への樹状細胞遊走に影響を及ぼすこと(例えば、TNF-α)、Tリンパ球に効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速させること(例えば、GM-CSF、IL-1及びIL-4)(米国特許第5,849,589号明細書(具体的に全体として参照により本明細書に援用される))及び免疫アジュバントとして働くこと(例えば、IL-12)と直接関係付けられている(Gabrilovich D I,et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.1996(6):414-418)。
【0274】
トール様受容体(TLR)もまたアジュバントとして使用することができ、これは、「病原体関連分子パターン」(PAMPs)と称される多くの微生物が共有する保存モチーフを認識するパターン認識受容体(PRR)のファミリーの重要なメンバーである。これらの「危険シグナル」の認識により、自然及び適応免疫系の複数の要素が活性化する。TLRは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、T及びB細胞、マスト細胞、及び顆粒球などの自然及び適応免疫系の細胞により発現され、細胞膜、リソソーム、エンドソーム、及びエンドリソソームなどの種々の細胞内コンパートメントに局在する。異なるTLRは別のPAMPsを認識する。例えば、TLR4は、細菌細胞壁に含まれるLPSによって活性化され、TLR9は、非メチル化細菌又はウイルスCpG DNAによって活性化され、及びTLR3は、二本鎖RNAによって活性化される。TLRリガンド結合は1つ以上の細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こし、最終的に炎症及び免疫に関連する多くの主要分子(特に転写因子NF-κB及びI型インターフェロン)の産生をもたらす。TLR介在性DC活性化は、DC活性化の増進、食作用、活性化及び共刺激マーカー、例えばCD80、CD83、及びCD86の上方制御、流入領域リンパ節へのDCの遊走を可能にし且つT細胞に対する抗原提示を促進するCCR7の発現、並びにI型インターフェロン、IL-12、及びIL-6などのサイトカインの分泌増加を引き起こす。これらの下流イベントは全て、適応免疫応答の誘導に決定的に重要である。
【0275】
現在臨床開発中の最も有望な癌ワクチン又は免疫原性組成物のアジュバントの中には、TLR9アゴニストCpG及び合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドポリICLCがある。前臨床試験では、ポリICLCが、LPS及びCpGと比較したとき、炎症誘発性サイトカインのその誘導及びIL-10の刺激の欠如、並びにDC1における高レベルの共刺激分子の維持に起因して最も効力のあるTLRアジュバントであるものと見られる。さらに、ポリICLCは、最近、ヒトパピローマウイルス(HPV)16カプソマーからなるタンパク質ワクチン又は免疫原性組成物のアジュバントとして非ヒト霊長類(アカゲザル)においてCpGと直接比較された(Stahl-Hennig C,Eisenblatter M,Jasny E,et al.「合成二本鎖RNAはアカゲザルにおいてヒトパピローマウイルスに対するTヘルパー1及び体液性免疫応答を誘導するためのアジュバントである(Synthetic double-stranded RNAs are adjuvants for the induction of T helper 1 and humoral immune responses to human papillomavirus in rhesus macaques)」.PLoS pathogens.Apr 2009;5(4))。
【0276】
CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン又は免疫原性組成物セッティングでアジュバントの効果を増強することが報告されている。理論によって拘束されるものではないが、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主としてTLR9を介して自然(非適応)免疫系を活性化させることにより作用する。CpGにより惹起されたTLR9活性化は、ペプチド又はタンパク質抗原、生ウイルス又は死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、並びに予防ワクチン及び治療ワクチンの両方の中の多糖コンジュゲートを含めた多様な抗原に対する抗原特異的体液性及び細胞性応答を増強する。さらに重要なことには、これは樹状細胞成熟及び分化を増強し、CD4 T細胞ヘルプがない場合であっても、Thl細胞の活性化の増進及び強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるThlバイアスは、通常Th2バイアスを促進するミョウバン又は不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバントの存在下であっても維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、他のアジュバントと共に、又は抗原が比較的弱い場合に強力な応答を誘導するために特に必要な製剤、例えばマイクロパーティクル、ナノ粒子、脂質エマルション又は同様の製剤中にあって製剤化又は共投与されるとき、さらに高いアジュバント活性を示す。CpGオリゴヌクレオチドはまた、免疫応答を加速させ、いくつかの実験におけるCpGを含まない完全用量ワクチンに対する応答と同等の抗体応答で、抗原用量を約2桁低減することも可能にする(Arthur M.Krieg,Nature Reviews,Drug Discovery,5,Jun.2006,471-484)。米国特許第6,406,705 B1号明細書は、CpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント及び抗原の併用により抗原特異的免疫応答が誘導されることを記載している。市販のCpG TLR9アンタゴニストはMologen(Berlin、独国)によるdSLIM(double Stem Loop Immunomodulator:二重ステムループ免疫調節薬)であり、これは本発明の医薬組成物の好ましい成分である。他のTLR結合分子、例えば、RNA結合TLR7、TLR8及び/又はTLR9もまた用いられ得る。
【0277】
有用なアジュバントの他の例としては、限定はされないが、化学的に修飾されたCpG(例えばCpR、Idera)、ポリ(I:C)(例えばポリi:CI2U)、非CpG細菌DNA又はRNA並びに免疫活性小分子及び抗体、例えば、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ(sorafinib)、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びSC58175が挙げられ、これらは治療的に及び/又はアジュバントとして作用し得る。本発明との関連において有用なアジュバント及び添加剤の量及び濃度は、当業者により必要以上に実験を行うことなく容易に決定され得る。さらなるアジュバントとしては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)などのコロニー刺激因子が挙げられる。
【0278】
ポリICLCは、約5000ヌクレオチドの平均長さのポリI鎖とポリC鎖とからなる合成的に調製された二本鎖RNAであり、ポリリジン及びカルボキシメチルセルロースを添加することにより熱変性及び血清ヌクレアーゼによる加水分解に対して安定化されている。この化合物は、いずれもPAMPsファミリーのメンバーであるTLR3及びMDA5のRNAヘリカーゼドメインを活性化し、DC及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化並びにI型インターフェロン、サイトカイン、及びケモカインの「天然混合物」の産生を引き起こす。さらには、ポリICLCは、2つのIFN誘導性核酵素系2’5’-OAS及びP1/eIF2aキナーゼ(PKR(4-6)としても知られる)、並びにRIG-Iヘリカーゼ及びMDA5によって媒介されるより直接的な、広域宿主が標的化される抗感染効果、及び場合により抗腫瘍効果を及ぼす。
【0279】
げっ歯類及び非ヒト霊長類において、ポリICLCは、ウイルス抗原に対するT細胞応答、交差プライミング、並びに腫瘍特異的、ウイルス特異的、及び自己抗原特異的CD8T細胞の誘導を増強することが示された。非ヒト霊長類における最近の研究では、ポリICLCは、DC標的化又は非標的化HIV Gag p24タンパク質に対する抗体反応及びT細胞免疫の発生に必須であることが分かっており、ワクチンアジュバントとしてのその有効性が強調される。
【0280】
ヒト対象では、連続全血試料の転写解析により、ポリICLCの1回の単回皮下投与を受けた8人の健常ヒトボランティア間で遺伝子発現プロファイルが同様であり、プラセボを受ける4人の対象に対してこれらの8人の対象間に最大212個の遺伝子の発現差異があることが明らかになった。顕著なことに、ポリICLC遺伝子発現データを、極めて有効性の高い黄熱病ワクチンYF17Dで免疫されたボランティアからの先行データと比較すると、多数のカノニカルな転写及びシグナル伝達経路が、自然免疫系のものを含め、同じようにピーク時点で上方制御されたことが示された。
【0281】
つい最近、癌精巣抗原NY-ESO-1由来の合成オーバーラップロングペプチド(OLP)単独によるか又はMontanide-ISA-51との併用、又は1.4mgのポリICLC及びMontanideとの併用による皮下ワクチン接種の第1相研究で治療された2回目又は3回目の完全臨床寛解中の卵巣癌、卵管癌、及び原発性腹膜癌患者に関する免疫学的分析が報告された。ポリICLC及びMontanideを加えると、OLP単独又はOLP及びMontanideと比較してNY-ESO-1特異的CD4及びCD8T細胞の生成及び抗体反応が顕著に増強された。
【0282】
本発明に係るワクチン又は免疫原性組成物は2つ以上の異なるアジュバントを含み得る。さらに、本発明は、本明細書において考察されるもののいずれかを含めた任意のアジュバント物質を含む治療組成物を包含する。また、ペプチド又はポリペプチドとアジュバントとを任意の適切な順番で別々に投与し得ることも企図される。
【0283】
アジュバントと独立に担体が存在してもよい。担体は抗原に共有結合的に連結されてもよい。担体はまた、担体をコードするDNAを、抗原をコードするDNAとインフレームで挿入することにより、抗原に付加することもできる。担体の機能は、例えば、安定性を付与すること、生物学的活性を増加させること、又は血清中半減期を増加させることであり得る。半減期の延長は、適用回数を減らし、且つ用量を低減する助けとなり得るため、従って治療上の理由、また経済的理由からも有益である。さらに、担体は、T細胞に対するペプチドの提示を助け得る。担体は、当業者に公知の任意の好適な担体、例えばタンパク質又は抗原提示細胞であってもよい。担体タンパク質は、限定はされないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えば、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、チログロブリン又はオボアルブミン、免疫グロブリン、又はホルモン、例えば、インスリン又はパルミチン酸であってもよい。ヒトの免疫化には、担体は、ヒトにとって許容可能且つ安全な生理学的に許容可能な担体であってもよい。しかしながら、破傷風トキソイド及び/又はジフテリア(diptheria)トキソイドが、本発明の一実施形態において好適な担体である。或いは、担体はデキストラン、例えばセファロースであってもよい。
【0284】
細胞傷害性T細胞(CTL)は、インタクトな外来抗原それ自体というよりむしろ、MHC分子に結合したペプチドの形態の抗原を認識する。MHC分子それ自体は抗原提示細胞の細胞表面に位置する。従って、CTLの活性化は、ペプチド抗原、MHC分子、及びAPCの三量体複合体が存在する場合に限り可能である。それに対応して、CTLは、CTLの活性化にペプチドのみが用いられる場合でなく、さらにそれぞれのMHC分子を有するAPCが加わる場合に免疫応答が増強され得る。従って、一部の実施形態では、本発明に係るワクチン又は免疫原性組成物は少なくとも1つの抗原提示細胞をさらに含有する。
【0285】
抗原提示細胞(又は刺激細胞)は、典型的にはその表面上にMHCクラスI又はII分子を有し、一実施形態では、それ自体はMHCクラスI又はII分子に選択の抗原を負荷する能力を実質的に有しない。本明細書においてさらに詳細に記載するとおり、MHCクラスI又はII分子にインビトロで選択の抗原を容易に負荷し得る。
【0286】
CD8+細胞活性は、CD4+細胞を使用して増進させ得る。多くの免疫ベースの抗癌療法が、CD8+及びCD4+ Tリンパ球の両方を使用して患者の腫瘍を標的化する場合に有効性が高まり得るため、腫瘍抗原のCD4 T+細胞エピトープの同定が関心を集めている。CD4+細胞はCD8 T細胞応答を増強する能力を有する。動物モデルにおける多くの研究で、CD4+及びCD8+ T細胞の両方が抗腫瘍応答に関与するとき結果が良好になることが明確に実証されている(例えば、Nishimura et al.(1999)「生体内での腫瘍根絶における抗原特異的Tヘルパー1型(TH1)及びTh2細胞の特徴的な役割(Distinct role of antigen-specific T helper type 1(TH1) and Th2 cells in tumor eradication in vivo)」.J Ex Med 190:617-27を参照)。異なる種類の癌に対する療法の開発に適用可能な普遍的なCD4+ T細胞エピトープが同定されている(例えば、Kobayashi et al.(2008)Current Opinion in Immunology 20:221-27を参照)。例えば、破傷風トキソイド由来のHLA-DR制限ヘルパーペプチドをメラノーマワクチンに使用して、CD4+ T細胞が非特異的に活性化された(例えば、Slingluff et al.(2007)「アジュバントセッティングにおけるメラノーマに対する2つの多ペプチドワクチンの無作為化第II相試験の免疫学的及び臨床的結果(Immunologic and Clinical Outcomes of a Randomized Phase II Trial of Two Multipeptide Vaccines for Melanoma in the Adjuvant Setting)」,Clinical Cancer Research 13(21):6386-95を参照)。本発明の範囲内で、かかるCD4+細胞は、その腫瘍特異性が異なる3つのレベルで適用可能であり得ることが企図される:1)普遍的CD4+エピトープ(例えば、破傷風トキソイド)を使用してCD8+細胞を増進し得る広域レベル;2)天然の腫瘍関連CD4+エピトープを使用してCD8+細胞を増進し得る中間的レベル;及び3)ネオ抗原CD4+エピトープを使用してCD8+細胞を患者特異的な形で増進し得る患者特異的レベル。
【0287】
CD8+細胞免疫はまた、ネオ抗原を負荷した樹状細胞(DC)ワクチンによっても生じさせ得る。DCはT細胞免疫を惹起する強力な抗原提示細胞であり、目的とする1つ以上のペプチドを例えば直接的なペプチド注入によって負荷すると、癌ワクチンとして使用することができる。例えば、新しく転移性メラノーマと診断された患者が、3つのHLA-A*0201制限gp100メラノーマ抗原由来ペプチドに対し、IL-12p70産生患者DCワクチンを用いて、自己ペプチドでパルスしたCD40L/IFN-g活性化成熟DCにより免疫化されることが示された(例えば、Carreno et al(2013)「L-12p70産生患者DCワクチンはTc1分極免疫を誘発する(L-12p70-producing patient DC vaccine elicits Tc1-polarized immunity)」,Journal of Clinical Investigation,123(8):3383-94及びAli et al.(2009)「DCサブセット及びT細胞のインサイチュ調節がマウスにおいて腫瘍退縮を媒介する(In situ regulation of DC subsets and T cells mediates tumor regression in mice)」,Cancer Immunotherapy,1(8):1-10を参照)。本発明の範囲内で、ネオ抗原を負荷したDCは、合成TLR 3アゴニストのポリイノシン・ポリシチジン酸-ポリ-L-リジンカルボキシメチルセルロース(ポリICLC)を使用してDCを刺激することで調製し得ることが企図される。ポリICLCは、CD83及びCD86の上方制御、インターロイキン-12(IL-12)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP-10)、インターロイキン1(IL-1)、及びI型インターフェロン(IFN)の誘導、及び最小限のインターロイキン10(IL-10)産生によって評価するとき、ヒトDCに対する強力な個別的成熟刺激である。DCは、白血球アフェレーシスによって得られる凍結末梢血単核細胞(PBMC)から分化させることができ、一方PBMCはFicoll勾配遠心法によって単離し、アリコートで凍結し得る。
【0288】
例示として、以下の7日間活性化プロトコルを使用し得る。1日目-PBMCを解凍して組織培養フラスコにプレーティングし、組織培養インキュベーターにおいて37℃で1~2時間インキュベートした後、プラスチック表面に接着する単球を選択する。インキュベーション後、リンパ球を洗い流し、接着した単球をインターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の存在下で5日間培養して未熟DCに分化させる。6日目、未熟DCを、ワクチンの品質に関する対照として働き、且つワクチンの免疫原性をブーストし得るキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質でパルスする。DCを刺激して成熟させ、それにペプチド抗原を負荷して一晩インキュベートする。7日目、細胞を洗浄し、4~20×10(6)個の細胞を含む1mlアリコートで速度制御フリーザーを使用して凍結する。DCを患者に注射する前に、最小限の規格に適合するようにDCのバッチに対するロット出荷試験を実施し得る(例えば、Sabado et al.(2013)「免疫療法のための腫瘍抗原を負荷した成熟樹状細胞の調製(Preparation of tumor antigen-loaded mature dendritic cells for immunotherapy)」,J.Vis Exp.Aug 1;(78).doi:10.3791/50085を参照)。
【0289】
DCワクチンは、足場システムに組み込むことにより、患者への送達を促進し得る。DCワクチンによる患者の新生物の治療的処置では生体材料システムを利用することができ、この生体材料システムは装置内に宿主樹状細胞を動員する因子を放出し、抗原が放出される間にアジュバント(例えば、危険シグナル)を局所的に提示することにより常在性の未熟DCを分化させ、且つ活性化された抗原負荷DCのリンパ節(又は所望の作用部位)への放出を促進し、そこでDCがT細胞と相互作用して、癌ネオ抗原に対する強力な細胞傷害性Tリンパ球応答が生じ得る。植込み型生体材料を使用して、新生物に対する強力な細胞傷害性Tリンパ球応答を患者特異的な形で生じさせてもよい。次にこの生体材料常在性樹状細胞が、生体材料からの抗原の放出に合わせて、感染を模倣する危険シグナルへの曝露により活性化され得る。活性化された樹状細胞は、次に生体材料からリンパ節に遊走し、細胞傷害性Tエフェクター応答を誘導する。この手法は、以前、腫瘍生検から調製したライセートを使用した前臨床試験において樹立メラノーマの退縮を引き起こすことが実証されており(例えば、Ali et al.(2209)「DCサブセット及びT細胞のインサイチュ調節がマウスにおいて腫瘍退縮を媒介する(In situ regulation of DC subsets and T cells mediates tumor regression in mice)」,Cancer Immunotherapy 1(8):1-10;Ali et al.(2009)「インサイチュで樹状細胞をプログラムする感染模倣材料(Infection-mimicking materials to program dendritic cells in situ)」.Nat Mater 8:151-8を参照)、かかるワクチンは現在、ダナ・ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute)で最近開始された第I相臨床試験で試験されているところである。この手法はまた、現在の提案ではC6ラット神経膠腫モデルを使用して24、膠芽腫の退縮、並びに再燃を予防する強力な記憶応答の誘導をもたらすことも示されている。かかる植込み型のバイオマトリックスワクチンデリバリー足場が腫瘍特異的樹状細胞活性化を増幅し及び持続させる能力は、従来の皮下又は節内ワクチン投与により達成され得るものと比べてよりロバストな抗腫瘍免疫感作をもたらし得る。
【0290】
好ましくは、抗原提示細胞は樹状細胞である。好適には、樹状細胞は、ネオ抗原ペプチドでパルスした自己樹状細胞である。このペプチドは、適切なT細胞応答を生じさせる任意の好適なペプチドであってもよい。腫瘍関連抗原由来のペプチドでパルスした自己樹状細胞を使用するT細胞療法が、Murphy et al.(1996)The Prostate 29,371-380及びTjua et al.(1997)The Prostate 32,272-278に開示されている。
【0291】
従って、本発明の一実施形態では、少なくとも1つの抗原提示細胞を含有するワクチン又は免疫原性組成物が本発明の1つ以上のペプチドでパルスされるか又はそれを負荷される。或いは、患者から単離された末梢血単核細胞(PBMC)がエキソビボでペプチドを負荷され、患者に注入し戻されてもよい。代替例として、抗原提示細胞が、本発明のペプチドをコードする発現コンストラクトを含む。ポリヌクレオチドは任意の好適なポリヌクレオチドであってもよく、樹状細胞を形質導入する能力を有し、従ってペプチドの提示及び免疫の誘導をもたらすことが好ましい。
【0292】
本発明の医薬組成物は、組成物中に存在するペプチドの選択、数及び/又は量が組織、癌、及び/又は患者特異的となるように作ることができる。例えば、ペプチドの正確な選択は、副作用を回避するように所与の組織における親タンパク質の発現パターンを指針とし得る。選択は、癌の具体的なタイプ、疾患の状態、以前の治療レジメン、患者の免疫状態、及び当然ながら、患者のHLA-ハプロタイプに依存し得る。さらに、本発明に係るワクチン又は免疫原性組成物は、特定の患者の個人的な必要性に従い、個人に合わせた成分を含有し得る。例として、特定の患者における関連するネオ抗原の発現、個人的なアレルギー又は他の治療に起因する望ましくない副作用、及び初回治療ラウンド又はスキーム後の二次治療の調整に従いペプチドの量を変えることが挙げられる。
【0293】
本発明のペプチドを含む医薬組成物は、既に癌に罹患している個体に投与され得る。治療上の適用では、組成物は、腫瘍抗原に対する有効なCTL応答を誘発し且つ症状及び/又は合併症を治癒し又は少なくとも部分的に止めるのに十分な量で患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この用途に有効な量は、例えば、ペプチド組成物、投与方法、治療される疾患の病期及び重症度、患者の体重及び全般的な健康状態、並びに処方医師の判断に依存するが、概して(治療的又は予防的投与のための)初回免疫化について、70kgの患者に対し約1.0μg~約50,000μgのペプチドの範囲であり、ブースト投薬量が続き、又は約1.0μg~約10,000μgのペプチドの範囲であり、患者の反応及び状態に応じて、及び場合により患者の血中の特定のCTL活性を計測することにより、数週間乃至数ヶ月間にわたりブーストレジメンが続く。本発明のペプチド及び組成物は、概して重篤な病状、即ち生命を脅かす又は潜在的に生命を脅かす状況、特に癌が転移している場合に用いられ得ることに留意しなければならない。治療用途では、腫瘍の検出又は外科的切除後可能な限り早期に投与を開始しなければならない。この後、少なくとも症状が実質的に寛解するまで、及びその後の期間にわたり、ブースト用量が続く。
【0294】
治療処置用の医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)は、非経口、局所、経鼻、経口又は局所投与用であることが意図される。好ましくは、医薬組成物は非経口的に、例えば、静脈内、皮下、皮内、又は筋肉内に投与される。組成物は、腫瘍に対する局所的免疫応答を誘導するため外科的切除部位に投与されてもよい。本発明は、ペプチドの溶液を含む非経口投与用の組成物を提供し、ワクチン又は免疫原性組成物は、許容可能な担体、好ましくは水性担体中に溶解又は懸濁される。種々の水性担体、例えば、水、緩衝用水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などを使用し得る。これらの組成物は、従来の周知されている滅菌技法により滅菌され得るか、又は滅菌ろ過され得る。得られた水溶液はそのまま使用するために包装されるか、又は凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌溶液と組み合わされる。組成物は、生理学的条件を近似するため必要に応じて薬学的に許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン等を含有し得る。
【0295】
ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、とりわけ、投与方法、送達されるペプチド、及び治療される疾患ステージにより異なる用量で、静脈内投与、局所(locally)投与、局所(topically)投与等され得る。免疫細胞に標的化するため、リガンド、例えば所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体又はその断片などをリポソームに組み込むことができる。
【0296】
固体組成物には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む従来の又はナノ粒子の非毒性固体担体を使用することができる。経口投与に関して、薬学的に許容可能な非毒性組成物は、通常用いられる賦形剤、例えば既に列挙した担体のいずれか、及び略10~95%の活性成分、即ち本発明の1つ以上のペプチドを、より好ましくは25%~75%の濃度で添合することにより形成される。
【0297】
エアロゾル投与には、免疫原性ペプチドは好ましくは界面活性剤及び噴射剤と共に微粉化した形態で提供される。ペプチドの典型的な割合は重量単位で0.01%~20%、好ましくは1%~10%である。界面活性剤は当然ながら非毒性であり、好ましくは噴射剤に対して可溶性であり得る。かかる薬剤の代表例は、6~22個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えば、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリック酸(olesteric)及びオレイン酸などと脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステル又は部分エステルである。混合エステル、例えば混合又は天然グリセリドが用いられてもよい。界面活性剤は重量単位で組成物の0.1%~20%、好ましくは0.25~5%を占め得る。組成物の残りは通常の噴射剤である。例えば鼻腔内送達に対するレシチンのように、担体もまた必要に応じて含まれ得る。
【0298】
本発明のペプチド及びポリペプチドは、細菌又は動物性物質を含有しない試薬を利用して容易に化学的に合成することができる(Merrifield RB:「固相ペプチド合成I.テトラペプチドの合成(Solid phase peptide synthesis.I.The synthesis of a tetrapeptide)」.J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963)。
【0299】
本発明のペプチド及びポリペプチドはまた、ベクター、例えば、本明細書において考察するとおりの核酸分子、例えば、RNA又はDNAプラスミド、ウイルスベクター、例えばポックスウイルス、例えば、オルソポックスウイルス、アビポックスウイルス、又はアデノウイルス、AAV又はレンチウイルスによって発現させてもよい。この手法には、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターの使用が関わる。急性的若しくは慢性的に感染させた宿主又は非感染宿主に導入すると、ベクターが免疫原性ペプチドを発現し、従って宿主CTL応答を誘発する。
【0300】
治療又は免疫化のため、本発明のペプチド及び任意選択で本明細書に記載されるペプチドの1つ以上をコードする核酸を患者に投与することもできる。核酸を患者に送達するため、多くの方法が好都合に用いられている。例えば、核酸は「ネイキッドDNA」として直接送達することができる。この手法は、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-1468(1990)並びに米国特許第5,580,859号明細書及び同第5,589,466号明細書に記載されている。核酸はまた、例えば米国特許第5,204,253号明細書に記載されるとおりのバリスティックデリバリーを用いて投与されてもよい。DNA単独で構成される粒子が投与されてもよい。或いは、DNAは、金粒子などの粒子に接着させてもよい。概して、ワクチン又は免疫学的組成物のプラスミドは、宿主細胞、例えば哺乳類細胞からの抗原の発現又は発現及び分泌を制御する調節配列に作動可能に連結された抗原(例えば、1つ以上のネオ抗原)をコードするDNAを含み得る;例えば、上流から下流に、プロモーター、例えば哺乳類ウイルスプロモーター(例えば、hCMV又はmCMVプロモーターなどのCMVプロモーター、例えば初期中間プロモーター、又はSV40プロモーター-有用なプロモーターについては本明細書に引用又は援用される文書を参照のこと)のDNA、分泌のための真核生物リーダーペプチドのDNA(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子)、1つ又は複数のネオ抗原のDNA、及びターミネーターをコードするDNA(例えば、ウシ成長ホルモン即ちbGHポリAをコードする遺伝子由来の3’UTR転写ターミネーター)。組成物は2つ以上のプラスミド又はベクターを含むことができ、従って各ベクターが異なるネオ抗原を含み、及びそれを発現する。また、そのテキストが有用であり得るWasmoenの米国特許第5,849,303号明細書、及びDaleの米国特許第5,811,104号明細書も言及される。DNA又はDNAプラスミド製剤は、カチオン性脂質と共に、又はその中に製剤化することができ;及び、カチオン性脂質、並びにアジュバントに関しては、Loosmoreの米国特許出願公開第2003/0104008号明細書もまた言及される。また、インビボで含有及び発現するDNAプラスミドの構築及び使用において用いることのできるDNAプラスミドの教示に関して、Audonnetの米国特許第6,228,846号明細書及び同第6,159,477号明細書における教示も頼ることができる。
【0301】
また、カチオン性化合物、例えばカチオン性脂質に複合体化した核酸を送達することもできる。脂質媒介性遺伝子デリバリー方法が、例えば、国際公開第1996/18372号パンフレット;国際公開第1993/24640号パンフレット;Mannino & Gould-Fogerite,BioTechniques 6(7):682-691(1988);米国特許第5,279,833号明細書;国際公開第1991/06309号パンフレット;及びFeigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413-7414(1987)に記載されている。
【0302】
目的のペプチドをコードするRNA(例えば、mRNA)もまた送達に使用することができる(例えば、Kiken et al,2011;Su et al,2011を参照;また、米国特許第8278036号明細書;Halabi et al.J Clin Oncol(2003)21:1232-1237;Petsch et al,Nature Biotechnology 2012 Dec 7;30(12):1210-6も参照)。
【0303】
本発明の実施において使用し得るポックスウイルス、例えば、とりわけ、チョルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae)ポックスウイルス(脊椎動物のポックスウイルス)、例えば、オルソポックスウイルス及びアビポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス(例えば、ワイス株、WR株(例えば、ATCC(登録商標)VR-1354)、コペンハーゲン株、NYVAC、NYVAC.1、NYVAC.2、MVA、MVA-BN)、カナリア痘ウイルス(例えば、ホイートリーC93株、ALVAC)、鶏痘ウイルス(例えば、FP9株、ウェブスター株、TROVAC)、鳩痘(dovepox)、鳩痘(pigeonpox)、ウズラ痘、及びアライグマ痘、その合成の又は天然に存在しない組換え体、その使用、並びにかかる組換え体の作製及び使用方法に関する情報は、以下などの科学文献及び特許文献に見出され得る:
米国特許第4,603,112号明細書、同第4,769,330号明細書、同第5,110,587号明細書、同第5,174,993号明細書、同第5,364,773号明細書、同第5,762,938号明細書、同第5,494,807号明細書、同第5,766,597号明細書、同第7,767,449号明細書、同第6,780,407号明細書、同第6,537,594号明細書、同第6,265,189号明細書、同第6,214,353号明細書、同第6,130,066号明細書、同第6,004,777号明細書、同第5,990,091号明細書、同第5,942,235号明細書、同第5,833,975号明細書、同第5,766,597号明細書、同第5,756,101号明細書、同第7,045,313号明細書、同第6,780,417号明細書、同第8,470,598号明細書、同第8,372,622号明細書、同第8,268,329号明細書、同第8,268,325号明細書、同第8,236,560号明細書、同第8,163,293号明細書、同第7,964,398号明細書、同第7,964,396号明細書、同第7,964,395号明細書、同第7,939,086号明細書、同第7,923,017号明細書、同第7,897,156号明細書、同第7,892,533号明細書、同第7,628,980号明細書、同第7,459,270号明細書、同第7,445,924号明細書、同第7,384,644号明細書、同第7,335,364号明細書、同第7,189,536号明細書、同第7,097,842号明細書、同第6,913,752号明細書、同第6,761,893号明細書、同第6,682,743号明細書、同第5,770,212号明細書、同第5,766,882号明細書、及び同5,989,562号明細書、及び
Panicali,D.Proc.Natl.Acad.Sci.1982;79;4927-493,Panicali D.Proc.Natl.Acad.Sci.1983;80(17):5364-8,Mackett,M.Proc.Natl.Acad.Sci.1982;79:7415-7419,Smith GL.Proc.Natl.Acad.Sci.1983;80(23):7155-9,Smith GL.Nature 1983;302:490-5,Sullivan VJ.Gen.Vir.1987;68:2587-98,Perkus M Journal of Leukocyte Biology 1995;58:1-13,Yilma TD.Vaccine 1989;7:484-485,Brochier B.Nature 1991;354:520-22,Wiktor,TJ.Proc.Natl Acd.Sci.1984;81:7194-8,Rupprecht,CE.Proc.Natl Acd.Sci.1986;83:7947-50,Poulet,H Vaccine 2007;25(Jul):5606-12,Weyer J.Vaccine 2009;27(Nov):7198-201,Buller,RM Nature 1985;317(6040):813-5,Buller RM.J.Virol.1988;62(3):866-74,Flexner,C.Nature 1987;330(6145):259-62,Shida,H.J.Virol.1988;62(12):4474-80,Kotwal,GJ.J.Virol.1989;63(2):600-6,Child,SJ.Virology 1990;174(2):625-9,Mayr A.Zentralbl Bakteriol 1978;167(5,6):375-9,Antoine G.Virology.1998;244(2):365-96,Wyatt,LS.Virology 1998;251(2):334-42,Sancho,MC.J.Virol.2002;76(16);8313-34,Gallego-Gomez,JC.J.Virol.2003;77(19);10606-22),Goebel SJ.Virology 1990;(a,b)179:247-66,Tartaglia,J.Virol.1992;188(1):217-32,Najera JL.J.Virol.2006;80(12):6033-47,Najera,JL.J.Virol.2006;80:6033-6047,Gomez,CE.J.Gen.Virol.2007;88:2473-78,Mooij,P.Jour.Of Virol.2008;82:2975-2988,Gomez,CE.Curr.Gene Ther.2011;11:189-217,Cox,W.Virology 1993;195:845-50,Perkus,M.Jour.Of Leukocyte Biology 1995;58:1-13,Blanchard TJ.J Gen Virology 1998;79(5):1159-67,Amara R.Science 2001;292:69-74, Hel,Z.,J.Immunol.2001;167:7180-9,Gherardi MM.J.Virol.2003;77:7048-57,Didierlaurent,A.Vaccine 2004;22:3395-3403,Bissht H.Proc.Nat.Aca.Sci.2004;101:6641-46,McCurdy LH.Clin.Inf.Dis 2004;38:1749-53,Earl PL.Nature 2004;428:182-85,Chen Z.J.Virol.2005;79:2678-2688,Najera JL.J.Virol.2006;80(12):6033-47,Nam JH.Acta.Virol.2007;51:125-30,Antonis AF.Vaccine 2007;25:4818-4827,B Weyer J.Vaccine 2007;25:4213-22,Ferrier-Rembert A.Vaccine 2008;26(14):1794-804,Corbett M.Proc.Natl.Acad.Sci.2008;105(6):2046-51,Kaufman HL.,J.Clin.Oncol.2004;22:2122-32,Amato,RJ.Clin.Cancer Res.2008;14(22):7504-10,Dreicer R.Invest New Drugs 2009;27(4):379-86,Kantoff PW.J.Clin.Oncol.2010,28,1099-1105,Amato RJ.J.Clin.Can.Res.2010;16(22):5539-47,Kim,DW.Hum.Vaccine.2010;6:784-791,Oudard,S.Cancer Immunol.Immunother.2011;60:261-71,Wyatt,LS.Aids Res.Hum.Retroviruses.2004;20:645-53,Gomez,CE.Virus Research 2004;105:11-22,Webster,DP.Proc.Natl.Acad.Sci.2005;102:4836-4,Huang,X.Vaccine 2007;25:8874-84,Gomez,CE.Vaccine 2007a;25:2863-85,Esteban M.Hum.Vaccine 2009;5:867-871,Gomez,CE.Curr.Gene therapy 2008;8(2):97-120,Whelan,KT.Plos one 2009;4(6):5934,Scriba,TJ.Eur.Jour.Immuno.2010;40(1):279-90,Corbett,M.Proc.Natl.Acad.Sci.2008;105:2046-2051,Midgley,CM.J.Gen.Virol.2008;89:2992-97,Von Krempelhuber,A.Vaccine 2010;28:1209-16,Perreau,M.J.Of Virol.2011;Oct:9854-62,Pantaleo,G.Curr Opin HIV-AIDS.2010;5:391-396,
(この各々が参照により本明細書に援用される)。
【0304】
本発明の実施において有用なアデノウイルスベクターに関しては、米国特許第6,955,808号明細書が言及される。使用するアデノウイルスベクターは、Ad5、Ad35、Ad11、C6、及びC7ベクターからなる群から選択することができる。アデノウイルス5(「Ad5」)ゲノムの配列は公開されている(Chroboczek,J.,Bieber,F.,and Jacrot,B.(1992)「アデノウイルス5型のゲノムの配列及びアデノウイルス2型のゲノムとのその比較(The Sequence of the Genome of Adenovirus Type 5 and Its Comparison with the Genome of Adenovirus Type 2)」,Virology 186,280-285;その内容は本明細書によって参照により援用される)。Ad35ベクターは、米国特許第6,974,695号明細書、同第6,913,922号明細書、及び同第6,869,794号明細書に記載される。Ad11ベクターは、米国特許第6,913,922号明細書に記載される。C6アデノウイルスベクターは、米国特許第6,780,407号明細書;同第6,537,594号明細書;同第6,309,647号明細書;同第6,265,189号明細書;同第6,156,567号明細書;同第6,090,393号明細書;同第5,942,235号明細書及び同第5,833,975号明細書に記載される。C7ベクターは、米国特許第6,277,558号明細書に記載される。E1欠損又は欠失、E3欠損又は欠失、及び/又はE4欠損又は欠失のアデノウイルスベクターもまた用いられ得る。E1欠損アデノウイルス突然変異体は非許容細胞において複製欠損であるか、或いはごく最低限でも高度に弱毒化されているため、E1領域に突然変異を有する特定のアデノウイルスは安全性マージンが改善されている。E3領域に突然変異を有するアデノウイルスは、アデノウイルスがMHCクラスI分子を下方制御する機構の破壊によって免疫原性が増強されている。E4突然変異を有するアデノウイルスは、後期遺伝子発現の抑制に起因してアデノウイルスベクターの免疫原性が低下したものであり得る。かかるベクターは、同じベクターを利用した反復的な再ワクチン接種が所望される場合に特に有用であり得る。本発明においては、E1、E3、E4、E1及びE3、及びE1及びE4が欠失又は突然変異したアデノウイルスベクターを使用することができる。さらに、全てのウイルス遺伝子が欠失されている「ガットレス(gutless)」アデノウイルスベクターもまた、本発明において使用することができる。かかるベクターは、その複製にヘルパーウイルスを必要とし、且つ天然の環境には存在しない条件であるE1a及びCreの両方を発現する特定のヒト293細胞株を必要とする。かかる「ガットレス」ベクターは非免疫原性であり、従ってこのベクターは再ワクチン接種のため複数回接種し得る。「ガットレス」アデノウイルスベクターは、本発明のトランス遺伝子などの異種インサート/遺伝子の挿入に使用することができ、さらには、多数の異種インサート/遺伝子の共送達に使用することができる。
【0305】
本発明の実施において有用なレンチウイルスベクター系に関しては、米国特許第6428953号明細書、同第6165782号明細書、同第6013516号明細書、同第5994136号明細書、同第6312682号明細書、及び同第7,198,784号明細書、及びそれらの中の引用文献が言及される。
【0306】
本発明の実施において有用なAAVベクターに関しては、米国特許第5658785号明細書、同第7115391号明細書、同第7172893号明細書、同第6953690号明細書、同第6936466号明細書、同第6924128号明細書、同第6893865号明細書、同第6793926号明細書、同第6537540号明細書、同第6475769号明細書及び同第6258595号明細書、及びそれらの中の引用文献が言及される。
【0307】
別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.(Nature 351:456-460(1991))に記載される。本発明のペプチドの治療的投与又は免疫化に有用な多種多様な他のベクター、例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)ベクターなどが、本明細書の記載から当業者には明らかである。
【0308】
ベクターは、抗原投与による用量及び/又はそれによって誘発される応答と同様のインビボ発現及び応答を有するように共投与することができる。
【0309】
本発明のペプチドをコードする核酸を投与する好ましい手段では、複数のエピトープをコードするミニ遺伝子コンストラクトが用いられる。ヒト細胞での発現用に選択されたCTLエピトープをコードするDNA配列(ミニ遺伝子)を作成するため、エピトープのアミノ酸配列が逆翻訳される。各アミノ酸のコドン選択の指針とするためヒトコドン使用頻度表を使用する。エピトープをコードするこれらのDNA配列は直接隣接しており、連続的なポリペプチド配列を作り出す。発現及び/又は免疫原性を最適化するため、ミニ遺伝子設計にさらなるエレメントを組み込んでもよい。逆翻訳され、且つミニ遺伝子配列に含めることのできるアミノ酸配列の例としては、以下が挙げられる:ヘルパーTリンパ球、エピトープ、リーダー(シグナル)配列、及び小胞体保留シグナル。加えて、CTLエピトープに隣接する合成の(例えばポリアラニン)又は天然に存在するフランキング配列を含めることにより、CTLエピトープのMHC提示を向上させ得る。
【0310】
ミニ遺伝子配列は、ミニ遺伝子のプラス鎖及びマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドをアセンブルすることによりDNAに変換される。オーバーラップオリゴヌクレオチド(30~100塩基長)が、周知の技法を用いて適切な条件下で合成され、リン酸化され、精製され及びアニールされる。オリゴヌクレオチドの末端は、T4 DNAリガーゼを使用してつなぎ合わされる。CTLエピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子は、次に所望の発現ベクターにクローニングされ得る。
【0311】
標的細胞における発現を確実にするため、当業者に周知の標準的な調節配列がベクターに含められる。いくつかのベクターエレメントが必要である:ミニ遺伝子挿入のための下流クローニング部位を含むプロモーター;効率的な転写終結のためのポリアデニル化シグナル;大腸菌(E.coli)複製起点;及び大腸菌(E.coli)選択可能マーカー(例えばアンピシリン又はカナマイシン耐性)。この目的のため数多くのプロモーター、例えばヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターを使用することができる。他の好適なプロモーター配列に関しては、米国特許第5,580,859号明細書及び同第5,589,466号明細書を参照のこと。
【0312】
ミニ遺伝子発現及び免疫原性を最適化するため、さらなるベクター修飾が望ましいこともある。ある場合には、効率的な遺伝子発現のためイントロンが必要であり、1つ以上の合成の又は天然に存在するイントロンがミニ遺伝子の転写領域に組み込まれ得る。ミニ遺伝子発現を増加させるため、mRNA安定化配列を含めることもまた考えられ得る。最近、免疫刺激配列(ISS又はCpG)がDNAワクチンの免疫原性において役割を果たすことが提唱されている。これらの配列は、免疫原性を増強させることが見出された場合には、ベクター中、ミニ遺伝子コード配列の外側に含められ得る。
【0313】
一部の実施形態では、ミニ遺伝子によりコードされるエピトープと、免疫原性を増強又は低下させるために含められる第2のタンパク質との産生を可能にするバイシストロニック発現ベクターを使用することができる。有利には共発現した場合に免疫応答を増強し得るタンパク質又はポリペプチドの例には、サイトカイン(例えば、IL2、IL12、GM-CSF)、サイトカイン誘導分子(例えばLeIF)又は副刺激分子が含まれる。ヘルパー(HTL)エピトープを細胞内標的シグナルにつなぎ合わせ、CTLエピトープと別個に発現させてもよい。これは、CTLエピトープと異なる細胞コンパートメントへのHTLエピトープの誘導を可能にし得る。必要であれば、これはMHCクラスII経路へのHTLエピトープのより効率的な侵入、従ってCTL誘導の向上を促進し得る。CTL誘導と対照的に、免疫抑制分子(例えばTGF-β)の共発現により免疫応答を特に低下させることが、特定の疾患においては有益であり得る。
【0314】
発現ベクターが選択された後、ミニ遺伝子はプロモーターの下流のポリリンカー領域にクローニングされる。このプラスミドは適切な大腸菌(E.coli)株に形質転換され、標準的な技法を用いてDNAが調製される。ミニ遺伝子並びにベクター中に含まれる他の全てのエレメントの向き及びDNA配列は、制限酵素マッピング及びDNA配列解析を用いて確認される。正しいプラスミドを有する細菌細胞をマスターセルバンク及びワーキングセルバンクとして保存することができる。
【0315】
精製プラスミドDNAは、種々の製剤を使用して注射用に調製することができる。それらのうち最も単純なものは、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での凍結乾燥DNAの再構成である。種々方法が記載されており、新技術が利用可能になり得る。本明細書に記載のとおり、核酸は好都合にはカチオン性脂質と製剤化される。加えて、糖脂質、融合性リポソーム、ペプチド及び保護性相互作用性非縮合性(protective,interactive,non-condensing:PINC)と総称される化合物を複合体化してプラスミドDNAを精製し、安定性、筋内分散、又は特定の臓器若しくは細胞型への輸送などの変数に影響を与えることもできる。
【0316】
標的細胞感作を、ミニ遺伝子によりコードされるCTLエピトープの発現及びMHCクラスI提示に関する機能アッセイとして用いることができる。プラスミドDNAが、標準的なCTLクロム遊離アッセイの標的として好適な哺乳類細胞系に導入される。使用されるトランスフェクション方法は最終的な製剤に依存する。「ネイキッド」DNAには電気穿孔が使用されてもよく、一方、カチオン性脂質は直接的なインビトロトランスフェクションを可能にする。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドをコトランスフェクトして、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いたトランスフェクト細胞のエンリッチメントを可能にし得る。これらの細胞は、次にクロム-51標識され、エピトープ特異的CTL系の標的細胞として用いられる。51 Cr遊離によって検出される細胞溶解が、ミニ遺伝子によりコードされるCTLエピトープのMHC提示が生じたことを示す。
【0317】
生体内免疫原性は、ミニ遺伝子DNA製剤の機能を試験する第2の手法である。適切なヒトMHC分子を発現するトランスジェニックマウスをDNA製剤で免疫する。用量及び投与経路は製剤に依存する(例えばPBS中DNAにはIM、脂質複合体化DNAにはIP)。免疫化の21日後、脾細胞を回収し、各被験エピトープをコードするペプチドの存在下で1週間にわたり再刺激する。これらのエフェクター細胞(CTL)を、ペプチドが負荷されたクロム-51標識標的細胞の細胞溶解に関して標準的な技法を用いてアッセイする。ミニ遺伝子によりコードされるエピトープに対応するペプチドのMHC負荷により感作された標的細胞の溶解が、CTLの生体内誘導に関するDNAワクチン機能を実証する。
【0318】
ペプチドは、エキソビボでCTLを誘発するためにも用いられ得る。得られたCTLを使用して、他の従来型の治療法に応答しないか又はペプチドワクチン治療手法に応答しない、治療を必要とする患者の慢性腫瘍を治療することができる。特定の腫瘍抗原に対するエキソビボCTL応答は、組織培養で患者のCTL前駆細胞(CTLp)を抗原提示細胞(APC)供給源及び適切なペプチドと共にインキュベートすることにより誘導される。適切なインキュベーション時間(典型的には1~4週間)の間にCTLpが活性化され、エフェクターCTLに成熟して拡大した後、細胞が患者に注入し戻され、そこでそれらがその特異的標的細胞(即ち、腫瘍細胞)を破壊する。特定の細胞傷害性T細胞の生成にインビトロ条件を最適化するため、刺激細胞の培養物は適切な無血清培地中に維持される。
【0319】
活性させる細胞、例えば前駆CD8+細胞と刺激細胞をインキュベートする前、刺激細胞の表面上で発現するヒトクラスI分子に負荷された状態となるのに十分な分量の、ある量の抗原ペプチドが刺激細胞培養物に加えられる。本発明では、ペプチドの十分な量とは、ペプチドが負荷された約200個、及び好ましくは200個以上のヒトクラスI MHC分子を各刺激細胞の表面上で発現させることが可能な量である。好ましくは、刺激細胞は、>2μg/mlのペプチドとインキュベートされる。例えば、刺激細胞は、>3、4、5、10、15μg/ml、又はそれ以上のペプチドとインキュベートされる。
【0320】
次に静止細胞又は前駆CD8+細胞は、培養下で、CD8+細胞を活性化するのに十分な期間にわたり適切な刺激細胞と共にインキュベートされる。好ましくは、CD8+細胞は抗原特異的様式で活性化される。静止細胞又は前駆CD8+(エフェクター)細胞と刺激細胞との比は個体毎に異なり得るとともに、さらに、培養条件に対する個体のリンパ球の従順さ並びに疾患状態の性質及び重症度又は記載の範囲内の治療様式が用いられる他の条件などの変数に依存し得る。しかしながら、好ましくは、リンパ球:刺激細胞比は約30:1~300:1の範囲である。エフェクター/刺激培養物は、治療上使用可能な又は有効な数のCD8+細胞を刺激するのに必要な時間にわたり維持され得る。
【0321】
インビトロでのCTL誘導には、APC上の対立遺伝子特異的MHCクラスI分子に結合しているペプチドの特異的認識が必要である。CTLの、特に一次免疫応答における刺激には、APC当たりの特異的MHC/ペプチド複合体の数が決定的に重要である。細胞当たりのペプチド/MHC複合体は少量であっても、CTLによる溶解を受け易い細胞にしたり、又は二次CTL応答を刺激したりするには十分であるが、一次応答中のCTL前駆体(pCTL)の活性化を成功させるには、大幅に多い数のMHC/ペプチド複合体が必要である。細胞上の空の主要組織適合性複合体分子にペプチドを負荷することにより、一次細胞傷害性Tリンパ球応答の誘導が可能となる。
【0322】
ヒトMHC対立遺伝子毎に変異細胞系が存在するわけではないため、APCの表面から内因性MHC関連ペプチドを取り除き、次に得られた空のMHC分子に目的の免疫原性ペプチドを負荷する技法を用いることが有利である。形質転換されていない(非腫瘍形成性の)非感染細胞、好ましくは患者の自己細胞をAPCとして使用することが、エキソビボCTL療法の開発に向けたCTL誘導プロトコルの設計に望ましい。本願は、APCの表面から内因性MHC関連ペプチドをストリッピングし、続いて所望のペプチドを負荷する方法を開示する。
【0323】
安定したMHCクラスI分子は、以下のエレメントで形成される三量体複合体である:1)通常8~10残基のペプチド、2)そのal及びa2ドメインにペプチド結合部位を有する膜貫通重鎖多型タンパク質鎖、及び3)非共有結合的に会合した非多型軽鎖、p2ミクログロブリン(p2microglobuiin)。複合体から結合したペプチドを取り除き及び/又はp2ミクログロブリンを解離させるとMHCクラスI分子が非機能性になって不安定化し、急速な分解がもたらされる。PBMCから単離される全てのMHCクラスI分子が、それらに結合する内因性ペプチドを有する。従って、第1のステップは、APC上のMHCクラスI分子に結合する全ての内因性ペプチドを、その分解を引き起こすことなく取り除くことであり、その後それらに外来性ペプチドを加えることができる。
【0324】
MHCクラスI分子から結合したペプチドを取り除く2つの可能な方法として、培養温度を37℃から26℃に一晩下げてp2ミクログロブリンを不安定化させること、及び弱酸処理を用いて細胞から内因性ペプチドをストリッピングすることが挙げられる。これらの方法により、それまで結合していたペプチドが細胞外環境に遊離し、新しい外来性ペプチドが空のクラスI分子に結合することが可能になる。低温インキュベーション方法は、外来性ペプチドをMHC複合体に効率的に結合させることが可能であるが、26℃で一晩インキュベートする必要があり、これが細胞の代謝速度を減速させ得る。また、MHC分子を能動的に合成しない細胞(例えば、静止PBMC)は、低温手順によっては多量の空の表面MHC分子を生じない可能性もある。
【0325】
苛酷な酸ストリッピングには、トリフルオロ酢酸、pH2によるペプチドの抽出、又はイムノアフィニティー精製クラスI-ペプチド複合体の酸変性が関わる。APCのバイアビリティー及び抗原提示にとって決定的に重要な最適な代謝状態を維持しながら内因性ペプチドを取り除くことが重要であるため、これらの方法はCTL誘導には実現不可能である。グリシン又はクエン酸リン酸緩衝液などのpH3の弱酸性溶液が、内因性ペプチドの同定及び腫瘍関連T細胞エピトープの同定に用いられている。この処理は、MHCクラスI分子のみが不安定化する(及び関連ペプチドが遊離する)一方、MHCクラスII分子を含め、他の表面抗原はインタクトなままである点で特に有効である。最も重要なことに、弱酸性溶液による細胞の処理は細胞のバイアビリティー又は代謝状態に影響を及ぼさない。内因性ペプチドのストリッピングは4℃、2分間で行われ、且つAPCは適切なペプチドが負荷された後直ちにその機能を果たすことのできる状態にあるため、弱酸処理は迅速である。この技法は、本明細書では、一次抗原特異的CTLを生じさせるペプチド特異的APCの作製に利用される。得られるAPCは、ペプチド特異的CD8+ CTLの誘導において効率が良い。
【0326】
活性化CD8+細胞は、種々の公知の方法の一つを用いて刺激細胞と効果的に分離し得る。例えば、刺激細胞、刺激細胞に負荷されたペプチド、又はCD8+細胞(又はそのセグメント)に特異的なモノクローナル抗体を利用して、その適切な相補リガンドに結合させ得る。次に抗体タグ標識分子を適切な手段、例えば周知されている免疫沈降又はイムノアッセイ方法で刺激エフェクター細胞混合物から抽出し得る。
【0327】
活性化CD8+細胞の細胞傷害性の有効量は、インビトロ使用とインビボ使用との間で、並びにこれらのキラー細胞の最終的な標的である細胞の量及びタイプによって異なり得る。量はまた、患者の状態に応じても異なることがあり、専門家によりあらゆる適切な要因を考慮して決定されなければならない。しかしながら、好ましくは、マウスで使用される約5×10~5×10細胞と比較して、成人ヒトに対して約1×10~約1×1012、より好ましくは約1×10~約1×1011、さらにより好ましくは約1×10~約1×1010の活性化CD8+細胞が利用される。
【0328】
好ましくは、本明細書において考察したとおり、活性化CD8+細胞は、治療しようとする個体にCD8+細胞を投与する前に細胞培養物から回収される。しかしながら、他の現行の提案される治療様式とは異なり、本方法は、非腫瘍形成性の細胞培養系を使用する点に留意することが重要である。従って、刺激細胞及び活性化CD8+細胞の完全な分離が実現される場合、少数の刺激細胞の投与に関連することが知られる固有の危険性はなく、一方、哺乳類腫瘍促進細胞の投与は極めて危険であり得る。
【0329】
細胞成分を再導入する方法は当該技術分野において公知であり、Honsikらに対する米国特許第4,844,893号明細書及びRosenbergに対する米国特許第4,690,915号明細書に例示されるような手順が挙げられる。例えば、静脈内注入による活性化CD8+細胞の投与が適切である。
【0330】
本発明の実施には、特に指示されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技法を使用し、これらは十分に当業者の範囲内である。かかる技法は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology” “Handbook of Experimental Immunology”(Wei,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)などの文献中に詳しく説明されている。これらの技法は本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生に適用可能であり、従って、本発明の作製及び実施において考慮され得る。詳細な実施形態に特に有用な技法を次節で考察する。
【0331】
治療法
本発明は、本発明の新生物ワクチン又はネオ抗原ペプチド若しくは組成物及び少なくとも1つのチェックポイント阻害薬を対象に投与することによって、対象において新生物/腫瘍特異的免疫応答を誘導する方法、新生物/腫瘍に対するワクチンを接種する方法、対象における癌の症状を治療及び/又は軽減する方法を提供する。
【0332】
詳細には、本発明は、(a)新生物ワクチン又は免疫原性組成物、及び(b)少なくとも1つのチェックポイント阻害薬を対象に投与するステップを含む、新生物の治療又は予防方法に関する。
【0333】
本発明によれば、本明細書に記載される新生物ワクチン又は免疫原性組成物は、癌である、又は癌の発症リスクがあると診断された患者に用いられ得る。
【0334】
記載される本発明の併用は、CTL応答を誘導するのに十分な量で投与される。
【0335】
追加の治療法
本明細書に記載される腫瘍特異的ネオ抗原ペプチド及び医薬組成物はまた、別の薬剤、例えば療法剤とさらに併用して投与されてもよい。特定の実施形態において、追加の薬剤は、限定はされないが、化学療法剤、抗血管新生剤及び免疫抑制を低減する薬剤であり得る。
【0336】
新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び1つ以上のチェックポイント阻害薬は追加の薬剤の投与前、投与中、又は投与後に投与され得る。実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び/又は1つ以上のチェックポイント阻害薬は、追加の薬剤の初回投与前に投与される。他の実施形態では、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び/又は1つ以上のチェックポイント阻害薬は、追加の療法剤の初回投与後(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日又はそれ以上後)に投与される。実施形態において、新生物ワクチン又は免疫原性組成物及び1つ以上のチェックポイント阻害薬は、追加の療法剤の初回投与と同時に投与される。
【0337】
療法剤は、例えば、化学的療法剤又は生物学的療法剤、放射線、又は免疫療法である。特定の癌に対する任意の好適な治療的処置が投与され得る。化学的療法剤及び生物学的療法剤の例としては、限定はされないが、血管新生阻害薬、例えば、ヒドロキシアンジオスタチンK1-3(hydroxy angiostatin K1-3)、DL-α-ジフルオロメチル-オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、及びサリドマイド;DNAインターカレーター(intercaltor)/架橋剤、例えば、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、cis-ジアンミン白金(II)二塩化物(シスプラチン)、メルファラン、ミトキサントロン、及びオキサリプラチン;DNA合成阻害薬、例えば、(±)-アメトプテリン(メトトレキサート)、3-アミノ-1,2,4-ベンゾトリアジン1,4-ジオキシド、アミノプテリン、シトシンβ-D-アラビノフラノシド、5-フルオロ-5’-デオキシウリジン、5-フルオロウラシル、ガンシクロビル、ヒドロキシウレア、及びマイトマイシンC;DNA-RNA転写調節因子、例えば、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ホモハリングトニン、及びイダルビシン;酵素阻害薬、例えば、S(+)-カンプトテシン、クルクミン、(-)-デグエリン、5,6-ジクロロベンズイミダゾール1-β-D-リボフラノシド、エトポシド、ホルメスタン、フォストリエシン、ヒスピジン、2-イミノ-1-イミダゾリ-ジン酢酸(シクロクレアチン)、メビノリン、トリコスタチンA、チルホスチンAG 34、及びチルホスチンAG 879;遺伝子調節因子、例えば、5-アザ-2’-デオキシシチジン、5-アザシチジン、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、4-ヒドロキシタモキシフェン、メラトニン、ミフェプリストン、ラロキシフェン、オールトランスレチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチノイン酸オールトランス(ビタミンA酸)、9-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸、レチノール(ビタミンA)、タモキシフェン、及びトログリタゾン;微小管阻害薬、例えば、コルヒチン、ドセタキセル、ドラスタチン15、ノコダゾール、パクリタキセル、ポドフィロトキシン、リゾキシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン(ナベルビン(Navelbine));及び未分類の療法剤、例えば、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、アピゲニン、ブレフェルジンA、シメチジン、ジクロロメチレン-ジホスホン酸、ロイプロリド(リュープロレリン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ピフィスリン-α、ラパマイシン、性ホルモン結合グロブリン、タプシガルギン、及び尿トリプシンインヒビター断片(ビクニン)が挙げられる。療法剤は、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、カペシタビン、クラドリビン、シサプリド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドロナビノール、エポエチンアルファ、フィルグラスチム、フルダラビン、ゲムシタビン、グラニセトロン、イホスファミド、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトクロプラミド、ミトタン、オメプラゾール、オンダンセトロン、ピロカルピン、プロクロルペラジン(prochloroperazine)、又は塩酸トポテカンであってもよい。療法剤は、モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、アレムツズマブ(Campath登録)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、及びトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ベムラフェニブ(Zelboraf(登録商標))メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、ビスモデギブ(Erivedge(商標))、90Y-イブリツモマブチウキセタン、131I-トシツモマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(商標))、ado-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(商標))、レゴラフェニブ(Stivarga(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))、デノスマブ(Xgeva(登録商標))、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、パゾパニブ(Votrient(登録商標))、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))、ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、ニロチニブ(Tasigna(登録商標))、ボスチニブ(Bosulif(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(商標))、イブルチニブ(Imbruvica(商標))、イデラリシブ(Zydelig(登録商標))、クリゾチニブ(Xalkori(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、アファチニブジマレエート(Gilotrif(登録商標))、セリチニブ(LDK378/Zykadia)、トシツモマブ及び131I-トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、シルツキシマブ(Sylvant(商標))、トラメチニブ(Mekinist(登録商標))、ダブラフェニブ(Tafinlar(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、カルフィルゾミブ(Kyprolis(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(商標))、カボザンチニブ(Cometriq(商標))、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))であってもよく、任意選択で、療法剤はネオ抗原である。療法剤は、サイトカイン、例えば、インターフェロン類(INF)、インターロイキン類(IL)、又は造血成長因子であってもよい。療法剤は、INF-α、IL-2、アルデスロイキン、IL-2、エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又は顆粒球コロニー刺激因子であってもよい。療法剤は、標的療法、例えば、トレミフェン(Fareston(登録商標))、フルベストラント(Faslodex(登録商標))、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、エキセメスタン(Aromasin(登録商標))、レトロゾール(Femara(登録商標))、ziv-アフリベルセプト(Zaltrap(登録商標))、アリトレチノイン(Panretin(登録商標))、テムシロリムス(Torisel(登録商標))、トレチノイン(Vesanoid(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(Ontak(登録商標))、ボリノスタット(Zolinza(登録商標))、ロミデプシン(Istodax(登録商標))、ベキサロテン(Targretin(登録商標))、プララトレキセート(Folotyn(登録商標))、レナリドマイド(lenaliomide)(Revlimid(登録商標))、ベリノスタット(Beleodaq(商標))、レナリドマイド(lenaliomide)(Revlimid(登録商標))、ポマリドミド(Pomalyst(登録商標))、カバジタキセル(Jevtana(登録商標))、エンザルタミド(Xtandi(登録商標))、酢酸アビラテロン(Zytiga(登録商標))、ラジウム223塩化物(Xofigo(登録商標))、又はエベロリムス(Afinitor(登録商標))であってもよい。加えて、療法剤は、後成的標的薬物、例えば、HDAC阻害薬、キナーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ヒストンデメチラーゼ阻害薬、又はヒストンメチル化阻害薬であってもよい。後成的薬物は、アザシチジン(Vidaza)、デシタビン(Dacogen)、ボリノスタット(Zolinza)、ロミデプシン(Istodax)、又はルキソリチニブ(Jakafi)であってもよい。前立腺癌治療については、抗CTLA-4を併用し得る好ましい化学療法剤は、パクリタキセル(TAXOL)である。
【0338】
特定の実施形態において、1つ以上の追加の薬剤は、1つ以上の抗グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子ファミリー受容体(GITR)アゴニスト抗体である。GITRはTリンパ球の副刺激分子であり、自然及び適応免疫系を調節し、種々の免疫応答及び炎症過程に関与することが分かっている。GITRは当初、Nocentini et al.によって、デキサメタゾン処置マウスT細胞ハイブリドーマからクローニングした後に報告された(Nocentini et al.Proc Natl Acad Sci USA 94:6216-6221.1997)。CD28及びCTLA-4と異なり、GITRは天然CD4+及びCD8+ T細胞における基底発現が極めて低い(Ronchetti et al.Eur J Immunol 34:613-622.2004)。GITR刺激がインビトロで免疫刺激効果を有し、且つインビボで自己免疫を誘導したという観察結果が、この経路を惹起する抗腫瘍効力の研究を促進した。癌免疫療法に対するCtla 4及びGitr調節(Modulation Of Ctla 4 And Gitr For Cancer Immunotherapy)のレビューは、Cancer Immunology and Immunotherapy(Avogadri et al.Current Topics in Microbiology and Immunology 344.2011)で見ることができる。免疫抑制の軽減に寄与し得る他の薬剤としては、CD28/CTLA4 Igスーパーファミリーの別のメンバー、例えば、BTLA、LAG3、ICOS、PDL1又はKIRに標的化されるチェックポイント阻害薬が挙げられる(Page et a,Annual Review of Medicine 65:27(2014))。さらなる別の実施形態において、チェックポイント阻害薬は、TNFRスーパーファミリーのメンバー、例えば、CD40、OX40、CD137、GITR、CD27又はTIM-3に標的化される。ある場合には、チェックポイント阻害薬の標的化は、阻害抗体又は同様の分子によって達成される。他の場合には、それは、標的に対するアゴニストによって達成される;このクラスの例としては、刺激標的OX40及びGITRが挙げられる。
【0339】
特定の実施形態において、1つ以上の追加の薬剤は、それらが治療後に免疫原性を増加させる点で相乗的である。一実施形態において、追加の薬剤は、追加の療法剤又は本明細書に記載される併用療法の任意の成分の用量を低下させるため、毒性の低下及び/又は不快感の低下を可能にする。別の実施形態において、追加の薬剤は、本明細書に記載される併用療法の有効性を増加させるため、より長い寿命をもたらす。患者の免疫応答を増強する化学療法治療がレビューされている(Zitvogel et al.,「癌化学療法の免疫学的側面(Immunological aspects of cancer chemotherapy)」.Nat Rev Immunol.2008 Jan;8(1):59-73)。加えて、化学療法剤は、ワクチン特異的T細胞応答を阻害することなしに免疫療法と共に安全に投与することができる(Perez et al.,「抗癌ペプチドワクチンの新時代(A new era in anticancer peptide vaccines)」.Cancer May 2010)。一実施形態では、追加の薬剤の投与によって本明細書に記載される併用療法の有効性が増加する。一実施形態において、追加の薬剤は化学療法治療である。一実施形態において、低用量の化学療法は、遅延型過敏(DTH)反応を増強する。一実施形態において、化学療法剤は調節性T細胞を標的化する。一実施形態において、シクロホスファミドが療法剤である。一実施形態において、シクロホスファミドはワクチン接種の前に投与される。一実施形態において、シクロホスファミドはワクチン接種の前に単一用量として投与される(Walter et al.,「単一用量シクロホスファミド後の癌ワクチンIMA901に対するマルチペプチド免疫応答は、患者生存の長期化と関連付けられる(Multipeptide immune response to cancer vaccine IMA901 after single-dose cyclophosphamide associates with longer patient survival)」.Nature Medicine;18:8 2012)。別の実施形態において、シクロホスファミドはメトロノームプログラムに従い投与され、ここでは1日用量が1ヵ月間投与される(Ghiringhelli et al.,「メトロノームシクロホスファミドレジメンは末期癌患者においてCD4+CD25+調節性T細胞を選択的に枯渇させ、T及びNKエフェクター機能を回復させる(Metronomic cyclophosphamide regimen selectively depletes CD4+CD25+ regulatory T cells and restores T and NK effector functions in end stage cancer patients)」.Cancer Immunol Immunother 2007 56:641-648)。別の実施形態では、ワクチン接種の前にタキサン類が投与され、T細胞及びNK細胞機能が強化される(Zitvogel et al.,2008)。別の実施形態では、本明細書に記載される併用療法と共に低用量の化学療法剤が投与される。一実施形態において、化学療法剤はエストラムスチンである。一実施形態において、癌はホルモン抵抗性前立腺癌である。進行ホルモン不応性前立腺癌患者の8.7%において、個別化されたワクチン接種単独によって血清前立腺特異抗原(PSA)の≧50%の低下が見られた一方、個別化されたワクチン接種を低用量のエストラムスチンと併用したとき、患者の54%にかかる低下が見られた(Itoh et al.,「個別化されたペプチドワクチン:新しい癌治療モダリティ(Personalized peptide vaccines:A new therapeutic modality for cancer)」.Cancer Sci 2006;97:970-976)。別の実施形態では、本明細書に記載される併用療法と共に又はその前にグルココルチコイドは投与されない(Zitvogel et al.,2008)。別の実施形態では、グルココルチコイドは本明細書に記載される併用療法の後に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される併用療法の前、それと同時、又はその後にゲムシタビンが投与され、腫瘍特異的CTL前駆体の頻度が増強される(Zitvogel et al.,2008)。別の実施形態では、ペプチドベースのワクチンで相乗効果が見られたため、5-フルオロウラシルが、本明細書に記載される併用療法と共に投与される(Zitvogel et al.,2008)。別の実施形態では、Brafの阻害薬、例えばベムラフェニブが、追加の薬剤として使用される。Braf阻害は、治療患者の腫瘍におけるメラノーマ抗原発現及びT細胞浸潤の増加並びに免疫抑制サイトカインの減少に関連することが示されている(Frederick et al.,「BRAF阻害は転移性メラノーマ患者においてメラノーマ抗原発現の亢進及びより好ましい腫瘍内微小環境に関連する(BRAF inhibition is associated with enhanced melanoma antigen expression and a more favorable tumor microenvironment in patients with metastatic melanoma)」.Clin Cancer Res.2013;19:1225-1231)。別の実施形態では、チロシンキナーゼの阻害薬が追加の薬剤として使用される。一実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬は、本明細書に記載される併用療法によるワクチン接種の前に使用される。一実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬は、本明細書に記載される併用療法と同時に使用される。別の実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬は、より免疫許容的な環境を作り出すために使用される。別の実施形態において、チロシンキナーゼ阻害薬はスニチニブ又はメシル酸イマチニブである。以前、連日投薬のスニチニブと組換えワクチンとの逐次投与によって良好な転帰を実現し得ることが示されている(Farsaci et al.,「宿主免疫応答要素に対するスニチニブの用量計画の結果及びワクチン併用療法(Consequence of dose scheduling of sunitinib on host immune response elements and vaccine combination therapy)」.Int J Cancer;130:1948-1959)。スニチニブはまた、50mg/日の1日用量を使用して1型免疫抑制を逆転させることも示されている(Finke et al.,「スニチニブは腎細胞癌患者において1型免疫抑制を逆転させ、調節性T細胞を減少させる(Sunitinib Reverses Type-1 Immune Suppression and Decreases T-Regulatory Cells in Renal Cell Carcinoma Patients)」.Clin Cancer Res 2008;14(20))。別の実施形態において、本明細書に記載される併用療法と併用して標的療法が投与される。標的療法の用量は、以前記載されている(Alvarez,「進行乳癌療法の現在及び今後の進化(Present and future evolution of advanced breast cancer therapy)」.Breast Cancer Research 2010,12(Suppl 2):S1)。別の実施形態において、本明細書に記載される併用療法と共にテモゾロミドが投与される。一実施形態において、テモゾロミドは、本明細書に記載される併用療法による併用療法の4週目毎に200mg/日で5日間にわたり投与される。同様の戦略の結果は、低毒性であることが示されている(Kyte et al.,「テモゾロミドと併用したテロメラーゼペプチドワクチン接種:ステージIVメラノーマ患者における臨床試験(Telomerase Peptide Vaccination Combined with Temozolomide:A Clinical Trial in Stage IV Melanoma Patients)」.Clin Cancer Res;17(13)2011)。別の実施形態において、併用療法は、リンパ球減少をもたらす追加の療法剤と共に投与される。一実施形態において、追加の薬剤はテモゾロミドである。これらの条件下で、免疫応答はなおも誘導され得る(Sampson et al.,「より重度の化学療法誘発性リンパ球減少は、膠芽腫患者においてEGFRvIII発現腫瘍細胞を消失させる腫瘍特異的免疫応答を増強する(Greater chemotherapy-induced lymphopenia enhances tumor-specific immune responses that eliminate EGFRvIII-expressing tumor cells in patients with glioblastoma)」.Neuro-Oncology 13(3):324-333,2011)。
【0340】
本明細書に記載される組成物及び方法は、任意の癌を有するそれを必要としている患者に対し、図2に示す一般的なフロープロセスに従い使用し得る。それを必要としている患者は、個別化された腫瘍特異的ペプチドの混合物による一連のプライミングワクチン接種を受け得る。加えて、4週間の期間にわたるプライミングの後、維持期の間に2回のブーストが続き得る。ワクチン接種は全て皮下送達される。ワクチン又は免疫原性組成物は、患者における安全性、忍容性、免疫応答及び臨床効果に関して、並びにワクチン又は免疫原性組成物の作製及び適切な時間フレーム内におけるワクチン接種開始の成功の実現可能性に関して評価され得る。第1コホートは5人の患者からなってもよく、安全性が十分に実証された後、10人の患者のさらなるコホートが登録され得る。ペプチド特異的T細胞応答に関して末梢血が広範にモニタされ、疾患再発を評価するため患者は最長2年間にわたり追跡される。
【0341】
標準治療に合わせた併用療法の投与
別の態様において、本明細書に記載される併用療法は、それを必要としている患者に関する治療下の癌についての標準治療に対する、且つその範囲内での併用療法の投与に適切な時点を選択することを提供する。本明細書に記載される研究は、手術、放射線、又は化学療法を含めた標準治療の範囲内であっても本併用療法を有効に投与し得ることを示す。最も一般的な癌に対する標準治療については、国立癌研究所(National Cancer Institute)のウェブサイト(http://www.cancer.gov/cancertopics)で見ることができる。標準治療は、医療関係者によって特定の種類の疾患に適切な治療として認められており、且つ医療従事者によって広く用いられている現行の治療である。標準治療(standard or care)は、ベストプラクティス、標準医療ケア、及び標準療法とも称される。癌の標準治療には、概して、手術、リンパ節除去、放射線、化学療法、標的療法、腫瘍を標的化する抗体、及び免疫療法が含まれる。免疫療法には、チェックポイントブロッカー(CBP)、キメラ抗原受容体(CAR)、及び養子T細胞療法が含まれ得る。本明細書に記載される併用療法は、標準治療内に組み込むことができる。本明細書に記載される併用療法はまた、標準治療が医学の進歩によって変化した場合にも投与し得る。
【0342】
本明細書に記載される併用療法の組み込みは、免疫系の活性化をもたらし得る標準治療中の治療ステップに依存し得る。併用療法と相乗的に活性化及び機能し得る治療ステップは、本明細書に記載されている。この療法は、有利には免疫系を活性化させる治療と同時に、又はその後に投与することができる。
【0343】
本明細書に記載される併用療法の組み込みは、免疫系の抑制を生じさせる標準治療中の治療ステップに依存し得る。かかる治療ステップには、照射、高用量のアルキル化剤及び/又はメトトレキサート、ステロイド類、例えばグルコステロイド類、手術、例えばリンパ節の除去、メシル酸イマチニブ、高用量のTNF、及びタキサン類が含まれ得る(Zitvogel et al.,2008)。併用療法はかかるステップの前に投与されてもよく、又は後に投与されてもよい。
【0344】
一実施形態において、併用療法は骨髄移植及び末梢血幹細胞移植後に投与され得る。骨髄移植及び末梢血幹細胞移植は、高用量の化学療法及び/又は高線量の放射線療法によって破壊された幹細胞を回復させる手技である。高用量の抗癌薬及び/又は高線量の放射線による治療の後、患者には採取された幹細胞が移され、この幹細胞が骨髄に移動して新しい血球細胞を産生し始める。「ミニ移植」は、低毒性の低用量化学療法及び/又は低線量放射線を使用して患者の移植を準備する。「タンデム移植」には、高用量化学療法と幹細胞移植との2つの逐次的なコースが関わる。自家移植では、患者に自身の幹細胞が移される。同系移植では、患者にその一卵性双生児の幹細胞が移される。同種移植では、患者にその兄弟、姉妹、又は親の幹細胞が移される。患者と血縁でない人(非血縁ドナー)もまた用いられ得る。ある種の白血病では、同種BMT及びPBSCT後に起こる移植片対腫瘍(GVT)効果が治療の有効性に決定的に重要である。GVTは、ドナー由来の白血球細胞(移植片)が、化学療法及び/又は放射線療法後に患者の体内に残る癌細胞(腫瘍)を外来性と特定してそれらを攻撃するときに起こる。本明細書に記載される併用療法による免疫療法は、移植後にワクチン接種することによってこれを利用し得る。加えて、移植された細胞には、移植前の本明細書に記載される併用療法のネオ抗原が提示され得る。
【0345】
一実施形態において、併用療法は、手術が必要な癌を有するそれを必要としている患者に投与される。一実施形態において、本明細書に記載される併用療法は、標準治療が一次手術と、それに続き可能性のある微小転移を除去する治療である癌、例えば乳癌においてそれを必要としている患者に投与される。乳癌は、通常、癌のステージ及び悪性度に基づき手術、放射線療法、化学療法、及びホルモン療法の様々な併用によって治療される。乳癌に対するアジュバント療法は、長期生存の可能性を増加させるため一次療法後に行われる任意の治療である。ネオアジュバント療法は、一次療法前に行われる治療である。乳癌に対するアジュバント療法は、長期無病生存の可能性を増加させるため一次療法後に行われる任意の治療である。一次療法は、癌を低減し又は消失させるため用いられる主要な治療である。乳癌に対する一次療法には、通常、手術、乳房切除術(乳房の除去)又は腫瘍摘出術(腫瘍及びその周囲の少量の正常組織を除去する手術;乳房温存手術の一種)が含まれる。いずれの種類の手術の間においても、癌細胞がリンパ系に広がっているかどうかを確かめるため、1つ以上の隣接リンパ節も除去される。女性が乳房温存手術を受けるとき、一次療法にはほぼ必ず放射線療法が含まれる。早期乳癌であっても、細胞は原発腫瘍から抜け出て体の他の部分に広がり得る(転移し得る)。従って、医師は、イメージング又は臨床検査で検出できなかった場合であっても、広がっている可能性のあるあらゆる癌細胞を死滅させるためアジュバント療法を行う。
【0346】
一実施形態において、併用療法は、非浸潤性乳管癌(DCIS)に対する標準治療に合わせて投与される。この乳癌タイプに対する標準治療は以下である:
1.タモキシフェンを伴う又は伴わない乳房温存手術及び放射線療法。
2.タモキシフェンを伴う又は伴わない乳房全切除術。
3.放射線療法を伴わない乳房温存手術。
【0347】
併用療法は、手術前に腫瘍を縮小させるため、乳房温存手術又は乳房全切除術の前に投与され得る。別の実施形態において、併用療法は、残存癌細胞を除去するためのアジュバント療法として投与することができる。
【0348】
別の実施形態において、ステージI、II、IIIA、及び手術可能IIIC乳癌と診断された患者が、本明細書に記載されるとおりの併用療法で治療される。この乳癌タイプに対する標準治療は以下である:
1.局所的-局部的治療:
・乳房温存療法(乳腺腫瘍摘出術、乳房放射線照射、及び腋窩の外科的病期判定)。
・乳房再建術を伴う又は伴わない非定型的乳房切除術(レベルI~II腋窩切開を伴う乳房全体の除去)。
・センチネルリンパ節生検。
2.腋窩リンパ節陽性腫瘍における乳房切除術後アジュバント放射線療法:
・1~3個のリンパ節に対して:局部放射線照射(鎖骨下/鎖骨上リンパ節、内胸リンパ節、腋窩リンパ節、及び胸壁)の役割不明。
・4個以上のリンパ節又は節外性病変に対して:局部放射線照射が推奨される。
3.アジュバント全身療法
【0349】
一実施形態において、併用療法は、腫瘍を縮小させるためネオアジュバント療法として投与される。別の実施形態において、併用はアジュバント全身療法として投与される。
【0350】
別の実施形態において、手術不能ステージIIIB又はIIIC又は炎症性乳癌と診断された患者が、本明細書に記載されるとおりの併用療法で治療される。この乳癌タイプに対する標準治療は以下である:
1.治癒目的で施されるマルチモダリティ療法が、臨床的ステージIIIB疾患の患者に対する標準治療である。
2.初期手術は、概して、組織学、エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)レベル、及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2/neu)過剰発現の決定を可能にする生検に限られている。アントラサイクリン系化学療法及び/又はタキサン系療法による初期治療が標準である。ネオアジュバント化学療法に応答する患者については、局所療法は、腋窩リンパ節郭清を伴う乳房全切除術と、続く胸壁及び局所リンパ管に対する術後放射線療法からなり得る。ネオアジュバント化学療法に対して良好な部分寛解又は完全寛解が得られた患者においては、乳房温存療法を考えることができる。続く全身療法は、さらなる化学療法からなり得る。腫瘍がER陽性又は不明である患者には、ホルモン療法を投与するべきである。全ての患者を臨床試験候補と見なし、マルチモダリティレジメンの様々な構成要素を投与する最適な方式を評価しなければならない。
【0351】
一実施形態において、併用療法は、マルチモダリティレジメンの様々な構成要素の一部として投与される。別の実施形態において、併用療法は、マルチモダリティレジメンの前、それと同時、又はその後に投与される。別の実施形態において、併用療法は、モダリティ間の相乗作用に基づき投与される。別の実施形態において、併用療法は、アントラサイクリン系化学療法及び/又はタキサン系療法による治療後に投与される(Zitvogel et al.,2008)。併用療法投与後の治療は、エフェクターT細胞の分裂に負の影響を及ぼし得る。併用療法はまた、放射線照射後に投与されてもよい。
【0352】
別の実施形態において、本明細書に記載される併用療法は、標準治療が主に手術でなく、主に全身的治療に基づく癌、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において用いられる。
別の実施形態において、ステージI、II、III、及びIV慢性リンパ性白血病と診断された患者が、本明細書に記載されるとおりの併用療法で治療される。この癌タイプに対する標準治療は以下である:
1.無症候性又は罹患程度が最小限の患者における観察
2.リツキシマブ
3.オファツムマブ(ofatumomab)
4.コルチコステロイド類を伴う又は伴わない経口アルキル化剤
5.フルダラビン、2-クロロデオキシアデノシン、又はペントスタチン
6.ベンダムスチン
7.レナリドマイド
8.併用化学療法
併用化学療法レジメンには、以下が含まれる:
○フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ
○CLB-9712及びCLB-9011試験で見られるとおりのフルダラビン+リツキシマブ
○フルダラビン+シクロホスファミド対フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ
○例えばMAYO-MC0183試験に見られるとおりのペントスタチン+シクロホスファミド+リツキシマブ
○オファツムマブ+フルダラビン+シクロホスファミド
○CVP:シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン
○CHOP:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン
○例えばE2997試験[NCT00003764]及びLRF-CLL4試験に見られるとおりのフルダラビン+シクロホスファミド対フルダラビン
○例えばCLB-9011試験に見られるとおりのフルダラビン+クロラムブシル
9.浸潤領域放射線療法
10.アレムツズマブ
11.骨髄及び末梢血幹細胞移植は臨床評価段階にある
12.イブルチニブ
【0353】
一実施形態において、併用療法は、リツキシマブ又はオファツムマブ(ofatumomab)による治療の前、それと同時又はその後に投与される。これらはB細胞を標的化するモノクローナル抗体であるため、併用療法による治療は相乗的であり得る。別の実施形態において、併用療法は、コルチコステロイド類を伴う又は伴わない経口アルキル化剤、及びフルダラビン、2-クロロデオキシアデノシン、又はペントスタチンによる治療後に投与され、なぜなら前に投与されるとこれらの治療が免疫系に負の影響を及ぼし得るためである。一実施形態では、ベンダムスチンが、本明細書に記載される前立腺癌の結果に基づき低用量で併用療法と共に投与される。一実施形態において、併用療法は、ベンダムスチンによる治療後に投与される。
【0354】
ワクチン又は免疫原性組成物キット及び共包装
ある態様において、本発明は、併用療法の投与を可能にするため本明細書で考察される要素の任意の1つ以上を含むキットを提供する。要素は、個々に又は組み合わせで提供されてもよく、及び任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、又はチューブに提供されてもよい。一部の実施形態において、キットは、1つ以上の言語、例えば2つ以上の言語による説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載される要素の1つ以上を利用するプロセスで使用される1つ以上の試薬を含む。試薬は任意の好適な容器中に提供されてもよい。例えば、キットは1つ以上の送達又は保存緩衝液を提供し得る。試薬は、特定のプロセスで使用可能な形態で提供されてもよく、又は使用前に1つ以上の他の構成成分の添加が必要な形態(例えば濃縮形態又は凍結乾燥形態)で提供されてもよい。緩衝液は、限定はされないが、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、及びそれらの組み合わせを含めた任意の緩衝液であり得る。一部の実施形態において、緩衝液はアルカリ性である。一部の実施形態において、緩衝液はpHが約7~約10である。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載されるベクター、タンパク質の1つ以上及び/又はポリヌクレオチドの1つ以上を含む。キットは、有利には、本発明のシステムの全ての要素の提供を可能にし得る。キットは、動物、哺乳動物、霊長類、げっ歯類等に投与される1~50又はそれ以上のネオ抗原突然変異の1つ又は複数のRNAを含むか又はそれをコードする1つ又は複数のベクター及び/又は1つ又は複数の粒子及び/又は1つ又は複数のナノ粒子を含むことができ、かかるキットは、かかる真核生物に対する投与についての説明書を含み;及びかかるキットは、任意選択で、本明細書に記載される抗癌剤のいずれかを含むことができる。キットは、上記の構成要素(例えば1~50又はそれ以上のネオ抗原突然変異の1つ又は複数のRNAを含有するか又はそれをコードする1つ又は複数のベクター及び/又は1つ又は複数の粒子及び/又は1つ又は複数のナノ粒子、ネオ抗原タンパク質又はペプチド、チェックポイント阻害薬)のいずれか、並びに本発明の方法のいずれかでの使用に関する説明書を含み得る。
【0355】
一実施形態において、キットは、免疫原性組成物又はワクチンを有する少なくとも1つのバイアル及び抗癌剤を有する少なくとも1つのバイアルを含む。一実施形態において、キットは、混合されて即時投与可能となる即時使用可能成分を含み得る。一態様において、キットは、即時使用可能な免疫原性又はワクチン組成物及び即時使用可能な抗癌剤を含む。即時使用可能な免疫原性又はワクチン組成物は、免疫原性組成物の異なるプールが入った別個のバイアルを含み得る。免疫原性組成物は、ウイルスベクター又はDNAプラスミドが入った一つのバイアルを含むことができ、及びもう一つのバイアルが免疫原性タンパク質を含むことができる。即時使用可能な抗癌剤は、抗癌剤のカクテル又は単一の抗癌剤を含み得る。別個のバイアルに異なる抗癌剤が入っていてもよい。別の実施形態において、キットは、即時使用可能な抗癌剤及び即時再構成可能な形態の免疫原性組成物又はワクチンを含み得る。この免疫原性又はワクチン組成物はフリーズドライ又は凍結乾燥されていてもよい。キットは、凍結乾燥組成物を即時投与可能にするためそれに加えることのできる再構成緩衝液を有する別個のバイアルを含み得る。緩衝液は、有利には本発明に係るアジュバント又はエマルションを含み得る。別の実施形態において、キットは、即時再構成可能な抗癌剤及び即時再構成可能な免疫原性組成物又はワクチンを含み得る。この態様では、両方ともに凍結乾燥されていてもよい。この態様では、キットに各々に対する別個の再構成緩衝液が含まれ得る。緩衝液は、有利には本発明に係るアジュバント又はエマルションを含み得る。別の実施形態において、キットは、併せて投与されるある用量の免疫原性組成物及び抗癌剤が入った単一のバイアルを含み得る。別の態様では、治療タイムラインに従い1つのバイアルを投与するように複数のバイアルが含まれる。1つのバイアルに、ある治療用量の抗癌剤のみが含まれてもよく、もう1つに別の治療用量の抗癌剤及び免疫原性組成物の両方が含まれてもよく、及び1つのバイアルにさらに別の用量の免疫原性組成物のみが含まれてもよい。さらなる態様において、バイアルには、それを必要としている患者に対するその適切な投与に関する表示が付される。任意の実施形態の免疫原又は抗癌剤が、本明細書に記載されるとおりの凍結乾燥形態、乾燥形態又は水溶液であってもよい。免疫原は、本明細書に記載されるとおりの弱毒生ウイルス、タンパク質、又は核酸であってもよい。
【0356】
一実施形態において、抗癌剤は、免疫系を増強して免疫原性組成物又はワクチンの有効性を増強するものである。好ましい実施形態において、抗癌剤はチェックポイント阻害薬である。別の実施形態において、キットは、治療計画に沿って異なる時間間隔で投与される免疫原性組成物及び抗癌剤の複数のバイアルを含む。別の実施形態において、キットは、免疫応答のプライミングにおいて使用される免疫原性組成物とブースティングに使用される別の免疫原性組成物との別々のバイアルを含み得る。一態様において、プライミング免疫原性組成物はDNA又はウイルスベクターであってもよく、ブースティング免疫原性組成物はタンパク質であり得る。いずれの組成物も、凍結乾燥されていてもよく、又は即時投与可能であってもよい。別の実施形態において、治療計画における投与のため、少なくとも1つの抗癌剤を含有する異なる抗癌剤カクテルが異なるバイアルに含まれる。
【0357】
本発明及びその利点が詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲に定義されるとおりの本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本明細書において様々な変更、置換及び改変を行い得ることは理解されなければならない。
【0358】
本発明は以下の実施例にさらに例示され、実施例は例示を目的として提供されるに過ぎず、いかなる形であれ本発明を限定することは意図されない。
【実施例
【0359】
実施例1
癌ワクチン試験プロトコル
本明細書に記載される組成物及び方法は、図2に示す一般的なフロープロセスに従い高リスクメラノーマ(完全切除後のステージIIIB、IIIC及びIVM1a、b)の15人の患者で試験し得る。患者は、個別化された腫瘍特異的ペプチドの混合物及びポリICLCによる一連のプライミングワクチン接種を4週間の期間にわたり受け、続いて維持期の間に2回のブーストを受け得る。ワクチン接種は全て皮下送達する。ワクチン又は免疫原性組成物は、患者における安全性、忍容性、免疫応答及び臨床効果に関して、並びにワクチン又は免疫原性組成物の作製及び適切な時間フレーム内におけるワクチン接種開始の成功の実現可能性に関して評価し得る。第1コホートは5人の患者からなってもよく、安全性が十分に実証された後、10人の患者のさらなるコホートを登録し得る。ペプチド特異的T細胞応答に関して末梢血を広範にモニタし、疾患再発を評価するため患者は最長2年間にわたり追跡する。
【0360】
本明細書に記載したとおり、動物及びヒトの両方において、免疫応答の誘導において突然変異エピトープが有効であること及び自発的腫瘍退縮又は長期生存の症例が突然変異エピトープに対するCD8T細胞応答と相関することのエビデンスが多数ある(Buckwalter and Srivastava PK.「「それが抗原である、ばかげている」及びヒト癌のワクチン療法の10年にわたる他のレッスン(“It is the antigen(s),stupid” and other lessons from over a decade of vaccitherapy of human cancer)」.Seminars in immunology 20:296-300(2008);Karanikas et al,「長期生存肺癌患者の血中においてHLA四量体で検出可能な腫瘍特異的突然変異抗原に対する細胞溶解性Tリンパ球の高頻度」.Cancer Res.61:3718-3724(2001);Lennerz et al,「ヒトメラノーマに対する自己T細胞の応答は突然変異ネオ抗原によって支配される(The response of autologous T cells to a human melanoma is dominated by mutated neo-antigens)」.Proc Natl Acad Sci U S A.102:16013(2005))及びマウス及びヒトにおける優勢な突然変異抗原の発現の改変に対して「免疫編集」を追跡し得ること(Matsushita et al,「癌エクソーム解析は癌免疫編集のT細胞依存性機序を明らかにする(Cancer exome analysis reveals a T-cell-dependent mechanism of cancer immunoediting)」Nature 482:400(2012);DuPage et al,「腫瘍特異的抗原の発現が癌免疫編集の根底にある(Expression of tumor-specific antigens underlies cancer immunoediting)」Nature 482:405(2012);及びSampson et al,「新しく診断された膠芽腫患者の上皮成長因子受容体変異体IIIペプチドワクチン接種に伴う長期無進行生存後の免疫エスケープ(Immunologic escape after prolonged progression-free survival with epidermal growth factor receptor variant III peptide vaccination in patients with newly diagnosed glioblastoma)」J Clin Oncol.28:4722-4729(2010))。
【0361】
次世代シーケンシングは、現在、個々の腫瘍におけるコード突然変異、最も一般的には単一アミノ酸変化(例えばミスセンス突然変異)及び頻度は低いが、フレームシフト挿入/欠失/遺伝子融合、終止コドンにおけるリードスルー突然変異、及び不適切にスプライスされたイントロンの翻訳(例えば、ネオORF)により生成されるアミノ酸の新規ストレッチなど、個別的な突然変異の存在を迅速に明らかにすることができる。ネオORFは、その配列の全体が免疫系にとって完全に新規であり、従ってウイルス性又は細菌性の外来抗原に類似しているため、免疫原として特に有益である。従って、ネオORFは:(1)腫瘍に対して高度に特異的である(即ちいかなる正常細胞においても発現がない);(2)中枢性トレランスを迂回し、それによりネオ抗原特異的CTLの前駆体頻度を増加させることができる。例えば、最近、ヒトパピローマウイルス(HPV)に由来するペプチドで、治療的抗癌ワクチンにおいて類似の外来配列を利用する力が実証された。ウイルス性癌遺伝子E6及びE7に由来するHPVペプチド混合物のワクチン接種を3~4回受けた新生物発生前のウイルス誘導性疾患を有する19人の患者の約50%が、完全寛解を24ヶ月以上維持した(Kenter et al,「外陰上皮内新生物に関するHPV-16オンコプロテインに対するワクチン接種(Vaccination against HPV-16 Oncoproteins for Vulvar Intraepithelial Neoplasia)」NEJM 361:1838(2009))。
【0362】
シーケンシング技術により、各腫瘍が、遺伝子のタンパク質コード内容を改変する複数の患者特異的突然変異を含むことが明らかになっている。かかる突然変異は、単一アミノ酸変化(ミスセンス突然変異によって引き起こされる)から、フレームシフト、終止コドンのリードスルー又はイントロン領域の翻訳(新規オープンリーディングフレーム突然変異;ネオORF)に起因する新規アミノ酸配列の長い領域の付加にまで及ぶ改変タンパク質を作り出す。これらの突然変異タンパク質は、天然タンパク質と異なり自己トレランスの免疫抑制効果に供されないため、腫瘍に対する宿主の免疫応答にとって有用な標的である。従って、突然変異タンパク質は免疫原性である可能性が一層高く、また患者の正常細胞と比較して腫瘍細胞に対する特異性もより高い。
【0363】
どのミスセンス突然変異が患者のコグネイトMHC分子との強力な結合ペプチドを生じるかを予測する近年改良されたアルゴリズムを利用して、各患者に最適な突然変異エピトープ(ネオORF及びミスセンスの両方)を代表する一組のペプチドを同定し、優先順位を付け、及び最大20個又はそれ以上のペプチドを免疫化用に調製する(Zhang et al,「免疫学における機械学習競争-HLAクラスI結合ペプチドの予測(Machine learning competition in immunology-Prediction of HLA class I binding peptides)」J Immunol Methods 374:1(2011);Lundegaard et al 「ニューラルネットワークベースの方法を用いたエピトープの予測(Prediction of epitopes using neural network based methods)」J Immunol Methods 374:26(2011))。約20~35アミノ酸長のペプチドが合成され、なぜならこのような「長い」ペプチドは樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞において効率的なインターナリゼーション、プロセシング及び交差提示を受け、且つヒトにおいてCTLを誘導することが示されているためである(Melief and van der Burg,「合成ロングペプチドワクチンによる樹立された(前)悪性疾患の免疫療法(Immunotherapy of established(pre)malignant disease by synthetic long peptide vaccines)」Nature Rev Cancer 8:351(2008))。
【0364】
強力且つ特異的な免疫原に加え、有効な免疫応答は免疫系を活性化させるために強力なアジュバントを含むことが有利である(Speiser and Romero,「癌免疫療法のための分子的に定義されたワクチン、及び防御T細胞免疫(Molecularly defined vaccines for cancer immunotherapy,and protective T cell immunity)」Seminars in Immunol 22:144(2010))。例えば、Toll様受容体(TLR)が、自然免疫系、次には適応免疫系を有効に誘導する、微生物性及びウイルス性病原体「危険シグナル」の強力なセンサーとして登場している(Bhardwaj and Gnjatic,「TLRアゴニスト:それは良好なアジュバントか?(TLR AGONISTS:Are They Good Adjuvants?)」Cancer J.16:382-391(2010))。TLRアゴニストの中でも、ポリICLC(合成二本鎖RNA模倣体)は、骨髄由来樹状細胞の最も強力なアクチベータの一つである。ヒトボランティア試験において、ポリICLCは安全で、且つ末梢血細胞において、最も強力な弱毒生ウイルスワクチンの一つである黄熱病ワクチンYF-17Dにより誘導されるものと同等の遺伝子発現プロファイルを誘導することが示されている(Caskey et al,「合成二本鎖RNAはヒトにおいて生菌ウイルスワクチンと同様の自然免疫応答を誘導する(Synthetic double-stranded RNA induces innate immune responses similar to a live viral vaccine in humans)」J Exp Med 208:2357(2011))。Oncovir,Incにより調製されるポリICLCのGMP製剤であるHiltonol(登録商標)をアジュバントとして利用する。
【0365】
実施例2
標的患者集団
ステージIIIB、IIIC及びIVM1a,bのメラノーマを有する患者は、疾患を完全に外科的に切除したとしても、疾患再発及び死亡のリスクが著しく高い((Balch et al,「2009年AJCCメラノーマ病期診断及び分類の最終版(Final Version of 2009 AJCC Melanoma Staging and Classification)」J Clin Oncol 27:6199-6206(2009))。この患者集団に利用可能な全身アジュバント療法はインターフェロン-α(IFNα)であり、これは測定可能な、しかし最低限度の利益を提供し、顕著な、多くの場合に用量制限となる毒性を伴う(Kirkwood et al,「高リスク切除皮膚メラノーマのインターフェロンα-2bアジュバント療法:米国東海岸癌臨床試験グループ試験EST 1684(Interferon alfa-2b Adjuvant Therapy of High-Risk Resected Cutaneous Melanoma:The Eastern Cooperative Oncology Group Trial EST 1684)」J Clin Oncol 14:7-17(1996);Kirkwood et al,「高リスクメラノーマにおける高用量及び低用量インターフェロンα-2b:群間比較試験E1690/S9111/C9190の初回分析(High- and Low-dose Interferon Alpha-2b in High-Risk Melanoma:First Analysis of Intergroup Trial E1690/S9111/C9190)」J Clin Oncol 18:2444-2458(2000))。これらの患者は、過去の癌を標的化した治療法によるか又は活動中の癌により免疫無防備状態ではなく、従ってワクチンの安全性及び免疫学的影響を評価するための優れた患者集団に相当する。最後に、これらの患者に対する現行の標準治療は、手術後にいかなる治療も指示しないため、ワクチン製剤について8~10週間のウィンドウが可能となる。
【0366】
標的集団は、完全に切除されていて発病していない、臨床的に検出可能な組織学的に確認されたリンパ節(局所又は遠隔)又はイントランジット転移を有する皮膚メラノーマ患者であり得る(ステージIIIBの多く(シーケンシング及び細胞系発生に十分な腫瘍組織を有する必要があるため、潰瘍化した原発腫瘍であって但し微小転移リンパ節を有する患者(T1-4b、N1a又はN2a)は除外される)、ステージIIICの全て、及びステージIVM1a、b)。これらは、初期ステージのメラノーマの初回診断患者又は前回の診断後の疾患再発患者であり得る。
【0367】
腫瘍摘出:患者をメラノーマに罹患していない状態にする目的で、患者がその原発性メラノーマ(まだ取り除かれていない場合)及び全ての局所転移性疾患の完全切除を受けることができる。病理学的評価に十分な腫瘍が摘出された後、残りの腫瘍組織を滅菌容器内の滅菌媒体中に置き、脱凝集用に調製する。腫瘍組織の一部を使用して全エクソーム及びトランスクリプトームシーケンシング及び細胞株作成を行い、残った腫瘍は凍結する。
【0368】
正常組織摘出:全エクソームシーケンシング用に正常組織試料(血液又は喀痰試料)を採取する。
【0369】
臨床的に明らかな局所領域の転移性疾患又は完全に切除可能な遠隔リンパ節、皮膚又は肺転移性疾患を有する(しかし切除不能な遠隔又は内臓転移性疾患はない)患者を同定し、試験に組み入れる。メラノーマ細胞系樹立用の新鮮な腫瘍組織を得るため(それにより免疫モニタリング計画の一環としてのインビトロ細胞傷害性アッセイ用の標的細胞を作成するため)、手術前の患者の登録が必要である。
【0370】
実施例3
用量及びスケジュール
全ての治療前基準を満たした患者について、試験薬が到着し、受入規格に適合した後、可能な限り速やかにワクチン投与を開始し得る。各患者につき4つの別個の試験薬があり、各々が20個の患者特異的ペプチドのうちの5個を含有する。免疫化は、概して図3に示すスケジュールに従い進め得る。
【0371】
患者は外来患者診療部で治療される。各治療日の免疫化は4回の1ml皮下注射からなり、リンパ系の異なる領域を標的化して抗原競合を低減するため、各注射を別々の四肢に行い得る。患者が完全腋窩又は鼠径リンパ節郭清を受けたことがある場合、ワクチンは代替として右又は左横隔膜に投与される。各注射は、当該患者用の4つの試験薬のうちの1つからなり、各サイクルについて同じ試験薬を同じ四肢に注射する。各1ml注射の組成は以下である:
5個の患者特異的ペプチドを各300μgずつ含有する0.75ml試験薬
0.25ml(0.5mg)の2mg/mlポリICLC(Hiltonol(登録商標))
【0372】
誘導期/プライミング期の間、患者は1、4、8、15及び22日目に免疫される。維持期には、患者は12及び24週目にブースター用量を受ける。
【0373】
血液試料を複数の時点で採取し得る:前(ベースライン;異なる日の2つの試料);プライミングワクチン接種の間の15日目;誘導/プライミングワクチン接種後4週間(8週目);初回ブーストの前(12週目)及び後(16週目);2回目のブーストの前(24週目)及び後(28週目)に、各試料につき50~150mlの血液を採取する(16週目を除く)。一次免疫学的エンドポイントは16週目であり、従って患者は(患者及び医師の評価に基づき特に指示されない限り)白血球アフェレーシスを受ける。
【0374】
実施例4
免疫モニタリング
免疫戦略は、免疫応答を誘導するための初期の一連の密な間隔の免疫化と、続く記憶T細胞を樹立させるための休止期間とを含む「プライム-ブースト」手法である。これにブースター免疫化が続き、このブーストの4週間後のT細胞応答が最も強い応答を生じるものと予想され、一次免疫学的エンドポイントとなる。初めに大域的免疫応答が末梢血単核細胞を使用してこの時点から18時間エキソビボELISPOTアッセイにおいて、全ての免疫エピトープを含むオーバーラップ15merペプチド(11aaオーバーラップ)のプールで刺激してモニタされる。このペプチドプールに対するベースライン応答を確立するため、ワクチン接種前試料を評価する。必要に応じてさらなるPBMC試料を評価し、全ペプチド混合物に対する免疫応答の動態を調べる。ベースラインを有意に上回る応答を示す患者については、全15merのプールをデコンボリューションして、どの特定の免疫ペプチドが免疫原性であったかを決定する。加えて、適切な試料に関して個別の場合に応じていくつかのさらなるアッセイを行う:
・全15merプール又はサブプールを細胞内サイトカイン染色アッセイの刺激ペプチドとして使用して、抗原特異的CD4+、CD8+、中枢記憶及びエフェクター記憶集団を同定及び定量化する
・同様に、これらのプールを使用してこれらの細胞により分泌されるサイトカインのパターンを評価し、T1対T2表現型を決定する
・未刺激細胞の細胞外サイトカイン染色及びフローサイトメトリーを使用してTreg及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を定量化する。
・応答した患者からのメラノーマ細胞系の樹立に成功し、且つ活性化エピトープを同定することができた場合、突然変異ペプチド及び対応する野生型ペプチドを使用してT細胞の細胞傷害性アッセイを行う
・一次免疫学的エンドポイントのPBMCを、図4に示されるとおり、既知のメラノーマ腫瘍関連抗原を刺激剤として使用し、且つ免疫原の中には選択されなかったいくつかのさらなる同定済みの突然変異エピトープを使用することにより、「エピトープの広がり」に関して評価する。
【0375】
腫瘍試料の免疫組織化学を行い、CD4+、CD8+、MDSC、及びTreg浸潤集団を定量化する。
【0376】
実施例5
転移性疾患患者における臨床的有効性
転移性疾患患者のワクチン治療は、活動中の癌に有効な治療法が必要であること、及び結果としてワクチン調製のための治療休止時間ウィンドウがなくなることによって複雑化する。さらに、これらの癌治療は、患者の免疫系を損ない、場合により免疫応答の誘導を妨げ得る。これらの考慮点を念頭に置き、ワクチン調製のタイミングが時間的に特定の患者集団に対する他の標準治療手法と適合するセッティング及び/又はかかる標準治療が確実に免疫療法手法と両立し得るセッティングが選択され得る。探究され得るセッティングには2つのタイプがある:
1.チェックポイント遮断との併用:転移性メラノーマの有効な免疫療法としてチェックポイント遮断抗体が登場しており(Hodi et al,「転移性メラノーマ患者におけるイピリムマブによる生存率の改善(Improved Survival with Ipilimumab in Patients with Metastatic Melanoma)」NEJM 363:711-723(2010))、非小細胞肺癌(NSCLC)及び腎細胞癌(Topalian et al,「癌における抗PD-1抗体の安全性、活性、及び免疫関連要因(Safety,Activity,and Immune Correlates of Anti-PD-1 Antibody in Cancer)」NEJM 366:2443-2454(2012);Brahmer et al,「進行癌患者における抗PD-L1抗体の安全性及び活性(Safety and Activity of Anti-PD-L1 Antibody in Patients with Advanced Cancer)」NEJM 366:2455-2465(2012))を含めた他の疾患セッティングにおいて積極的に探究されている。作用機序は明らかになっていないが、局所免疫抑制の解除の逆転及び免疫応答の増強の両方ともに、可能な説明である。強力なワクチンを統合してチェックポイント遮断抗体による免疫応答を惹起すると、複数の動物試験で観察されているとおり、相乗作用がもたらされ得る(van Elsas et al 「抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)及び顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生ワクチンを使用したB16メラノーマの併用免疫療法は、自己免疫性色素脱失を伴う皮下腫瘍及び転移性腫瘍の拒絶を誘導する」J Exp Med 190:35-366(1999);Li et al,「抗プログラム死1は、樹立腫瘍を有するマウスに治療利益を提供する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌腫瘍細胞免疫療法と相乗作用を及ぼす(Anti-programmed death-1 synergizes with granulocyte macrophage colony-stimulating factor-secreting tumor cell immunotherapy providing therapeutic benefit to mice with established tumors)」Clin Cancer Res 15:1623-1634(2009);Pardoll,D.M.「癌免疫療法における免疫チェックポイントの遮断(The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy)」Nature Reviews Cancer 12:252-264(2012);Curran et al.「PD-1及びCTLA-4併用遮断はB16メラノーマ腫瘍内の浸潤性T細胞を拡大し、調節性T細胞及び骨髄性細胞を減少させる(PD-1 and CTLA-4 combination blockade expands infiltrating T cells and reduces regulatory T and myeloid cells within B16 melanoma tumors)」.Proc Natl Acad Sci U S A.2010 Mar 2;107(9):4275-80;Curran et al.「flt3リガンドを発現する腫瘍ワクチンはctla-4遮断と相乗作用を及ぼして予め移植された腫瘍を拒絶する(Tumor vaccines expressing flt3 ligand synergize with ctla-4 blockade to reject preimplanted tumors)」.Cancer Res.2009 Oct 1;69(19):7747-55)。図5に示すとおり、ワクチンが調製されている間に患者は直ちにチェックポイント遮断治療薬を開始することができ、調製後、ワクチン投与が抗体療法と統合される;及び
2.有益な免疫特性を呈する標準治療レジメンとの併用
a)転移性疾患を示す腎細胞癌(RCC)患者は、典型的には外科的な減量術を受け、続いて、一般的にはスニチニブ、パゾパニブ及びソラフェニブなどの承認済みのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の一つによる全身治療を受ける。承認済みTKIの中でスニチニブは、T1応答性を増加させ、Treg及び骨髄由来サプレッサー細胞を減少させることが示されている(Finke et al,「スニチニブは腎細胞癌患者において1型免疫抑制を逆転させ、T調節性細胞を減少させる(Sunitinib reverses Type-1 immune suppression and decreases T-regulatory cells in renal cell carcinoma patients)」Clin Can Res 14:6674-6682(2008);Terme et al,「VEGFA-VEGFR経路遮断は結腸直腸癌における腫瘍誘導性調節T細胞増殖を阻害する(VEGFA-VEGFR pathway blockade inhibits tumor-induced regulatory T cell proliferation in colorectal cancer)」(Cancer Research Author Manuscript published Online(2102))。免疫系を損なわない承認済み治療薬で患者を直ちに治療可能であることにより、ワクチンの調製に必要なウィンドウが提供され、ワクチン治療薬との相乗作用がもたらされ得る。加えて、複数の動物及びヒト試験においてシクロホスファミド(CTX)がTreg細胞に阻害効果を及ぼすことが示されており、且つ最近になってワクチン前の単回用量のCTXが、ワクチンに応答したRCC患者の生存を改善することが示されている(Walter et al,「単回用量シクロホスファミド後の癌ワクチンIMA901に対する多ペプチド免疫応答は、より長い患者生存に関連する」Nature Medicine 18:1254-1260(2012))。これらの免疫相乗作用手法は両方とも、RCC中の天然ペプチドワクチンの最近完了した第3相試験において利用されている(ClinicalTrials.gov,進行性/転移性腎細胞癌に対するスニチニブの投与を受けている患者におけるNCT01265901 IMA901(NCT01265901 IMA901 in Patients Receiving Sunitinib for Advanced/Metastatic Renal Cell Carcinoma));
b)或いは、膠芽腫(GBM)の標準治療には、手術、回復及びフォローアップ放射線及び低用量テモゾロミド(TMZ)、続いて4週間の休止期間の後、標準用量TMZの開始が関わる。この標準治療はワクチン調製のためのウィンドウを提供し、それにワクチン接種の開始と、その後に標準用量TMZの開始が続く。興味深いことに、転移性メラノーマにおける試験では、標準用量TMZ治療中のペプチドワクチン接種により、ワクチン接種単独と比較して計測される免疫応答性が増加したことから、さらなる相乗的利益が示唆される(Kyte et al,「テロメラーゼペプチドワクチン接種のテモゾロミドとの併用:ステージIVメラノーマ患者における臨床試験(Telomerase peptide vaccination combined with temozolomide:a clinical trial in stage IV melanoma patients)」Clin Cancer Res 17:4568(2011))。
【0377】
実施例6
ネオ抗原調製
腫瘍を外科的に切除した後、腫瘍組織の一部及び血液試料を直ちに施設に移し、そこで以降のトラッキング用に一意の識別コードを割り当てる。腫瘍組織はコラゲナーゼで脱凝集させ、別々の一部を核酸(DNA及びRNA)抽出用に凍結する。血液試料は核酸抽出のため直ちに施設に移す。腫瘍組織から抽出されるDNA及び/又はRNAは全エクソームシーケンシング(例えば、Illumina HiSeqプラットフォームを使用することによる)及びHLAタイピング情報の決定に使用する。本発明の範囲内では、ミスセンス又はネオORFネオ抗原ペプチドはタンパク質ベースの技術(例えば、質量分析法)によって直接同定し得ることが企図される。
【0378】
バイオインフォマティクス解析は以下のとおり行われる。エクソーム及びRNA-SEQ fast Qファイルの配列解析は、多くの患者試料に関するTCGAなどの大規模プロジェクトで広範に使用され及び検証されている既存のバイオインフォマティクスパイプラインを利用する(例えば、Chapman et al,2011,Stransky et al,2011,Berger et al,2012)。2つの連続的な解析カテゴリー:データ処理及び癌ゲノム解析がある。
【0379】
データ処理パイプライン:Picardデータ処理パイプライン(picard.sourceforge.net/)はシーケンシングプラットフォームにより開発された。各腫瘍及び正常試料について(例えば、Illumina)シーケンサーから抽出された生データがPicardパイプラインの様々なモジュールを使用して以下の処理に供される:
(i)データ変換:Illumina生データを標準BAMフォーマットに変換し、種々のクオリティ閾値を超える塩基の分布に関する基本QCメトリックを作成する。
(ii)アラインメント:バローズ・ホイーラーアラインメントツール(BWA)を用いてリードペアをヒトゲノム(hg19)にアラインメントする。
(iii)デュプリケートのマーキング:リードペアマッピング位置に基づきPCR及び光学的デュプリケートを同定し、最終BAMファイルにマーキングする。
(iv)インデルリアラインメント:ゲノムにおける既知の挿入及び欠失多型部位と整列するリードを調べ、リアラインメント時の改善の対数オッズ(LOD)スコアが少なくとも0.4である部位を修正する。
(v)クオリティリキャリブレーション:Illuminaパイプラインによって報告された元の塩基クオリティスコアを、リードサイクル、レーン、フローセルタイル、問題の塩基及び先行する塩基に基づきリキャリブレーションする。リキャリブレーションは、非dbSNP位置にあるミスマッチが全て、総観察数の中のミスマッチの割合として目的のカテゴリー毎のエラー確率のリキャリブレーションを可能にするエラーに起因すると仮定する。
(vi)クオリティコントロール:最終BAMファイルを処理することにより、サイクル毎のリードクオリティ、クオリティスコアの分布、アラインメントのサマリー及びインサートサイズ分布を含む広範なQCメトリックを作成する。クオリティQCに適合しないデータはブラックリストに載る。
(vii)同一性検証:約100個の既知のSNP位置における直交的に収集した試料遺伝子型データを配列データと照合し、試料の同一性を確認する。同一性確認用の閾値として≧10のLODスコアを使用する。同一性QCに適合しないデータはブラックリストに載る。
(viii)データ集約:同じ試料からの全てのデータをマージし、デュプリケートのマーキングステップを繰り返す。推定上の短い挿入及び欠失領域を含む新規標的領域を特定し、それらの遺伝子座でインデルリアラインメントステップを行う。
(ix)集約データにおける推定インデルの周りの局所的リアラインメント:推定上の短い挿入及び欠失を含む新規標的領域を特定し、それらの遺伝子座で局所的リアラインメントステップを(例えば、GATK RealignerTargetCreator及びIndelRealignerモジュールを用いて)行い、インデルコールの一貫性及び正しさを確保する。
(x)集約データに対するクオリティコントロール:アラインメントサマリー及びインサートサイズ分布などのQCメトリックを再計算する。加えて、抽出プロセスからの反応性夾雑物の存在下でのDNAの音響せん断によって引き起こされるライブラリ構築プロセスの初期段階における酸化損傷の割合を評価する一組のメトリックを作成する。
【0380】
Picardの出力はbamファイルであり(Li et al,2009)(例えば、http://samtools.sourceforge.net/SAM1.pdfを参照。)、これは所与の試料に関する全てのリードの塩基配列、クオリティスコア、及びアラインメントの詳細を保存する。
【0381】
癌突然変異検出パイプライン:Picardパイプラインからの腫瘍bamファイル及び対応する正常bamファイルは本明細書に記載するとおり解析される:
1.クオリティコントロール
(i).Capsegプログラムを腫瘍及び対応する正常エクソーム試料に適用してコピー数プロファイルを得る。次にCopyNumberQCツールを用いて作成されたプロファイルを手動で調べ、腫瘍/正常試料のミックスアップを評価することができる。ノイズのあるプロファイルを有する正常試料並びに腫瘍試料が対応する正常試料よりも低いコピー数変異を有するケースにはフラグを付し、データ生成及び分析パイプライン全体を通じて追跡してミックスアップを確認する。
(ii).ABSOLUTEツール15によって、Capsegで生成されたコピー数プロファイルに基づき腫瘍純度及び倍数性を推定する。極めてノイズが多いプロファイルは、高度に分解した試料のシーケンシングによって生じ得る。そのような場合には、腫瘍純度及び倍数性の推定は不可能であり、対応する試料にフラグを付す。
(iii).ContEst(Cibulskis et al,2011)を使用して試料における交差試料汚染レベルを決定する。汚染が4%を超える試料は破棄する。
2.体細胞性単一ヌクレオチド変異(SSNV)の同定
muTectと称されるベイズ統計のフレームワークを使用して患者の腫瘍及び対応する正常bamを分析することにより、体細胞性塩基対置換を同定する(Cibulskis et al,2013)。前処理ステップにおいて、低クオリティ塩基又はゲノムとのミスマッチが優勢なリードがフィルタリングで除かれる。次にMutectは2つの対数オッズ(LOD)スコアを計算し、これは、それぞれ腫瘍試料及び正常試料中における変異体の存在及び非存在の信頼度を要約する。処理後段階では、候補突然変異が、キャプチャー、シーケンシング及びアラインメントのアーチファクトを考慮するため6つのフィルタによってフィルタリングされる:
(i)近接ギャップ:イベントの近傍におけるミスアラインメントされたインデルの存在に起因して生じる偽陽性を除去する。候補突然変異の周りの11bpウィンドウに≧3の挿入又は欠失リードを有する試料を棄却する。
(ii)マッピング不良:ゲノムにおけるリードの不明瞭な配置のために生じる偽陽性を破棄する。腫瘍及び正常試料の≧50%のリードのマッピングクオリティがゼロである場合又はマッピングクオリティ≧20の突然変異対立遺伝子を有するリードがない場合、その候補は棄却する。
(iii)三対立遺伝子部位:正常におけるヘテロ接合部位は、多くの偽陽性を生じさせる傾向があるため破棄する。
(iv)ストランドバイアス:突然変異を有するリードの大部分が同じ向きを有するコンテクスト特異的シーケンシングエラーによって生じる偽陽性を除去する。ストランド特異的LODが<2である候補は棄却する(当該閾値に適合するための感度は≧90%である)。
(v)クラスター化位置:リードアラインメントの始点又は終点から一定の距離を置いて現れる代替的な対立遺伝子を特徴とするアラインメントエラーに起因する偽陽性を破棄する。リードの始点又は終点からの距離の中央値が≦10である場合(これは突然変異がアラインメントの始点又は終点にあることを意味する)、又は距離の絶対偏差中央値が≦3である場合(これは突然変異がクラスター化していることを意味する)、棄却する。
(vi)コントロールで観察される:シーケンシングの偶然誤差によって予想されるものを超えて正常試料中の代替的な対立遺伝子が現れているエビデンスがある腫瘍における偽陽性を破棄する。正常試料中の代替的な対立遺伝子を含むリードが≧2ある場合又はそれらがリードの≧3%である場合、及びそれらのクオリティスコアの合計が>20である場合、棄却する。
これらの6つのフィルタに加え、候補を正常試料のパネルと比較し、2つ以上の正常試料で生殖細胞系列変異体として存在することが見出されるものは棄却する。次に最終的な一組の突然変異を、Oncotatorツールを用いて、ゲノム領域、コドン、cDNA及びタンパク質変化を含めた幾つかのフィールドによってアノテートすることができる。
3.体細胞性の小さい挿入及び欠失の同定
本明細書に記載される局所的リアラインメントの出力(「集約データにおける推定インデルの周りの局所的リアラインメント」、上記を参照)を使用して、それぞれ腫瘍bam単独又は腫瘍及び正常の両方のbamにおいて変異体を裏付けるリードの評価に基づき候補体細胞及び生殖系列インデルを予測する。ミスマッチの数及び分布並びに塩基クオリティスコアに基づくさらなるフィルタリングを行う(McKenna et al,2010,DePristo et al,2011)。全てのインデルを、Integrated Genomics Viewer(Robinson et al,2011)(www.broadinstitute.org/igv)を使用して手動で調べ、高フィデリティのコールを確実にする。
4.遺伝子融合検出
遺伝子融合検出パイプラインの最初のステップは、既知の遺伝子配列のライブラリに対する腫瘍RNA-Seqリードのアラインメントと、続くゲノム座標へのこのアラインメントのマッピングである。ゲノムマッピングは、エクソンを共有する異なる転写変異体にマッピングされる複数のリードペアを共通のゲノム位置に縮める助けとなる。DNAをアラインメントしたbamファイルは、異なる染色体上にあるか、或いは同じ染色体上の場合少なくとも1MB離れている2つの異なるコード領域に2つのメイトがマッピングされるリードペアに関して問い合わせを受ける。また、そのそれぞれ遺伝子においてアラインメントされるペアエンドが(推定)融合mRNA転写物のコーディング-->コーディング5’->3’の向きと一致する向きであることも必要となり得る。少なくとも2つのかかる「キメラ」リードペアがある遺伝子ペアのリストを、さらなる精緻化に供する最初の推定イベントリストとして列挙する。次に、全てのアラインメントされていないリードを、そのメイトが当初アラインメントされたという制約を加えて元のbamファイルから抽出し、本明細書に記載したとおり得られた遺伝子ペアの遺伝子の1つにマッピングする。次に当初アラインメントされなかった全てのかかるリードを、発見された遺伝子ペア間の可能な全てのエクソン-エクソン接合部(完全長、境界から境界まで、コーディング5’->3’向き)で作られるカスタムの「参照」とアラインメントする試みが行われ得る。当初アラインメントされなかったかかるリードの一つが遺伝子Xのエクソンと遺伝子Yのエクソンとの間の接合部に(ユニークに)マッピングされ、且つそのメイトが実際に遺伝子X又はYの一方にマッピングされた場合、かかるリードは「融合」リードとしてマークされ得る。遺伝子融合イベントは、エクソン:エクソン接合部の周りに過剰な数のミスマッチがなく、及びいずれの遺伝子においても少なくとも10bpのカバレッジで、そのメイトに対して正しい相対的向きの少なくとも1つの融合リードがある場合にコールされる。高度に相同の遺伝子(例えばHLAファミリー)の間の遺伝子融合は誤りである可能性が高く、フィルタリングで除かれる。
5.クロナリティーの推定
バイオインフォマティクス解析を用いて突然変異のクロナリティーを推定し得る。例えば、ABSOLUTEアルゴリズム(Carter et al,2012、Landau et al,2013)を用いて、腫瘍純度、倍数性、絶対コピー数及び突然変異のクロナリティーを推定し得る。各突然変異の対立遺伝子率の確率密度分布を作成し、続いて突然変異の癌細胞率(CCF)に変換する。突然変異は、それらのCCFが0.95を超える事後確率がそれぞれ0.5より大きいか又は小さいかに基づきクローナル又はサブクローナルとして分類される。
6.発現の定量化
TopHatスイート(Langmead et al,2009)を使用して、hg19ゲノムに対して腫瘍bam及び対応する正常bamのRNA-Seqリードをアラインメントする。RNA-SeQC(DeLuca et al,2012)パッケージによりRNA-Seqデータのクオリティを評価する。次にRSEMツール(Li et al,2011)を使用して遺伝子及びアイソフォーム発現レベルを推定し得る。キロベース当たりの生成されたリードの百万分率及びτ推定値を使用して、他の部分に記載されるとおりの各患者において同定されたネオ抗原に優先順位を付ける。
7.RNA-Seqにおける突然変異の検証
8.本明細書に記載されるとおりの全エクソームデータの解析によって同定される体細胞突然変異(単一ヌクレオチド変異、小さい挿入及び欠失並びに遺伝子融合を含む)の確認を、患者の対応するRNA-Seq腫瘍BAMファイルを調べることによって評価する。各変異遺伝子座について、ベータ二項分布に基づく検出力計算を実施し、それをRNA-Seqデータ中に検出する少なくとも95%の検出力があることを確実にする。キャプチャーにより同定された突然変異は、適切な検出力の部位について突然変異を有するリードが少なくとも2つある場合に検証されたと見なす。
【0382】
腫瘍特異的突然変異含有エピトープの選択:Center for Biological Sequence Analysis、デンマーク工科大学(Technical University of Denmark)、オランダによって提供及び管理されるニューラルネットワークベースのアルゴリズムnetMHCを使用して、全てのミスセンス突然変異及びネオORFを突然変異含有エピトープの存在に関して解析する。この一群のアルゴリズムは、一連の関連手法の間で最近完了したコンペティションに基づき最高位のエピトープ予測アルゴリズムと評価された(参照)。これらのアルゴリズムを、地域の標的患者集団における主要な民族集団である白人集団に見られるHLA-A対立遺伝子の99%及びHLA-B対立遺伝子の87%を網羅する69個の異なるヒトHLA A及びB対立遺伝子に関して人工ニューラルネットワークベースの手法を用いて訓練した。最新バージョンを利用する(v2.4)。
【0383】
アルゴリズムの正確さは、HLAアロタイプが既知のCLL患者に見出される突然変異から予測を実施することにより評価した。含まれたアロタイプは、A0101、A0201、A0310、A1101、A2402、A6801、B0702、B0801、B1501であった。予測は各突然変異にわたる全ての9mer及び10merペプチドについて、mid-2011でnetMHCpanを使用して、行った。これらの予測に基づき、74個の9merペプチド及び63個の10merペプチド(ほとんどが500nM未満の予測親和性を有した)を合成し、競合的結合アッセイ(Sette)を用いて結合親和性を測定した。
【0384】
これらのペプチドの予測を、2013年3月に最新版のnetMHCサーバの各々(netMHCpan、netMHC及びnetMHCcons)を使用して繰り返した。これらの3つのアルゴリズムは、2012年のコンペティションで使用された20のグループの中で最高位のアルゴリズムであった(Zhang et al)。次に新しい予測の各々に関して、実測結合親和性を評価した。各一組の予測値及び実測値について、範囲毎の正しい予測の%、並びに試料の数が得られる。各範囲の定義は以下のとおりである:
0-150:150nM以下の親和性を有すると予測され、且つ150nM以下の親和性を有することが計測される。
0-150:150nM以下の親和性を有すると予測され、且つ500nM以下の親和性を有することが計測される。
0-150 150nM以下の親和性を有すると予測され、且つ150nM以下の親和性を有することが計測される。
0-150:150nM以下の親和性を有すると予測され、且つ500nM以下の親和性を有することが計測される。
151-500nM:150nMより高いが500nM以下の親和性を有すると予測され、且つ500nM以下の親和性を有することが計測される。
FN(>500nM):偽陰性-500nMより高い親和性を有すると予測されるが、500nM以下の親和性を有することが計測される。
【0385】
9merペプチド(表1)については、アルゴリズム間の差はほとんどなく、netMHC consの151~500nM範囲が僅かに高い値であったが、試料数が少ないため重大ではないと判断された。
【0386】
【表2】
【0387】
10merペプチド(表2)についても同様に、アルゴリズム間の差はほとんどなかったが、但しnetMHCはnetMHCpan又はnetMMHCconsと比べて大幅に多い偽陽性を生じた。しかしながら、9merと比較して10mer予測精度は0~150nM及び0~150nM範囲で僅かに低く、及び151~500nM範囲で大幅に低い。
【0388】
【表3】
【0389】
10merについては、151~500nM範囲では結合体に関して50%未満の精度であるため、0~150nM範囲の予測のみを利用する。
【0390】
任意の個々のHLA対立遺伝子の試料数が、種々の対立遺伝子についての予測アルゴリズムの正確さに関する任意の結論を引き出すには少な過ぎた。利用可能な最大のサブセット(0~150*nM;9mer)のデータを例として表3に示す。
【0391】
【表4】
【0392】
HLA C対立遺伝子に関しては予測の正確さを判断する利用可能なデータがほとんどないため、HLA A及びB対立遺伝子の予測のみを利用し得る(Zhang et al)。
【0393】
メラノーマ配列情報及びペプチド結合予測の評価は、TCGAデータベースからの情報を用いて実施した。種々の患者の220例のメラノーマの情報により、平均して患者当たり約450個のミスセンス及び5個のネオORFがあることが明らかになった。20人の患者を無作為に選択し、netMHCを使用して全てのミスセンス及びネオORF突然変異の予測結合親和性を計算した(Lundegaard et al 「ニューラルネットワークベースの方法を用いたエピトープの予測(Prediction of epitopes using neural network based methods)」J Immunol Methods 374:26(2011))。これらの患者はHLAアロタイプが未知であったため、当該のアロタイプの頻度に基づきアロタイプ毎の予測結合ペプチドの数を調整し(地理的範囲における予想される罹患優性集団[メラノーマについて白人]の骨髄登録データセット)、患者当たりの予測される作用可能な突然変異体エピトープ数を求めた。これらの突然変異体エピトープ(MUT)の各々について、対応する天然(NAT)エピトープ結合もまた予測した。本明細書に記載される優先順位付けを利用して:
・90%(20人中18人)の患者が、ワクチン接種に適切な少なくとも20のペプチドを有すると予測された;
・患者の約4分の1は、それらの20のペプチドの半分乃至全てをネオORFペプチドが占めた;
・半数を少し上回る患者には、カテゴリー1及び2のペプチドのみが用いられ得た;
・80%の患者には、カテゴリー1、2、及び3のペプチドのみが用いられ得た。
【0394】
従って、メラノーマには、患者の高い割合が十分な数の免疫原性ペプチドを生じると予想するのに十分な数の突然変異がある。
【0395】
実施例7
ペプチド作製及び製剤
免疫用のGMPネオ抗原ペプチドを、FDAの規定に従い化学合成、Merrifield RB:「固相ペプチド合成I.テトラペプチドの合成(Solid phase peptide synthesis.I.The synthesis of a tetrapeptide)」.J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963)によって調製する。20個の各約20~30merペプチドの3つの開発ランが実施されている。各ランは同じ施設で実施され、ドラフトGMPバッチ記録を利用して、GMPランに使用されたものと同じ機器が利用された。各ランで>50mgの各ペプチドを作製することに成功し、現在計画されている全てのリリース試験(例えば、外観、MSによるアイデンティティ、RP-HPLCによる純度、窒素元素による含量、及びRP-HPLCによるTFA含量)によってそれらを試験し、適宜目標規格に適合させた。生成物はまた、プロセスのこの部分に見込まれる時間フレーム(約4週間)の範囲内で作製した。凍結乾燥バルクペプチドを長期安定性試験にかけており、これは最長12ヶ月までの種々の時点で評価される。
【0396】
これらのランからの材料を使用して、計画された溶解及び混合手法が試験されている。簡潔に言えば、各ペプチドを100%DMSO中に高濃度(50mg/ml)で溶解し、水性溶媒中に2mg/mlに希釈する。当初、希釈剤としてPBSを使用し得ると見込まれたが、しかしながら少数のペプチドの塩析は目に見える混濁を生じた。D5W(水中5%デキストロース)は、はるかに有効性が高いことが示された;40個中37個のペプチドで、清澄な溶液に希釈することに成功した。唯一問題のあるペプチドは、極めて疎水性のペプチドである。
【0397】
表4は、疎水性アミノ酸の割合の計算値に基づきソートした60個の潜在的なネオ抗原ペプチドの溶解性評価の結果を示す。示されるとおり、疎水性割合が0.4より低いほぼ全てのペプチドがDMSO/D5Wに可溶性であり、しかし疎水性割合が0.4以上の複数のペプチドがDMSO/D5Wに不溶性であった(項目名「DMSO/D5W中溶解性」の列中に赤色のハイライトで示す)。これらのうち複数は、コハク酸塩を加えることによって可溶化し得る(「DMSO/D5W/コハク酸塩中溶解性」の列に緑色のハイライトで示す)。これらのペプチドの4個中3個は0.4~0.43の疎水性割合を有した。4個のペプチドは、コハク酸塩を加えると可溶性が低下した;これらのペプチドの4個中3個は0.45以上の疎水性割合を有した。
【0398】
【表5】
【0399】
【表6】
【0400】
【表7】
【0401】
【表8】
【0402】
【表9】
【0403】
【表10】
【0404】
【表11】
【0405】
【表12】
【0406】
計画された免疫ペプチドの予測される生化学的特性を評価し、それに従い合成計画を変更してもよく(より短いペプチドを使用するか、合成する領域を予測エピトープの周りでN末端又はC末端方向にシフトさせるか、又は潜在的に代替的ペプチドを利用する)、それにより疎水性割合が高いペプチドの数を制限し得る。
【0407】
DMSO/D5W中の10個の別個のペプチドを2回の凍結/融解サイクルに供し、完全な回復が示された。2つの個々のペプチドをDMSO/D5W中に溶解し、2つの温度(-20℃及び-80℃)で安定性を試みた。これらのペプチドは最長24週間にわたり評価した(RP-HPLC及び目視検査)。両方のペプチドとも24週間にわたり安定している;いずれのペプチドについても、RP-HPLCアッセイによって検出されたパーセント不純物は、-20℃又は-80℃のいずれで保存したときにも大幅には変化しなかった。評価するべき傾向は認められなかったため、小さい変化はいずれもアッセイのばらつきに起因するものと思われる。
【0408】
図6に示されるとおり、剤形プロセスの設計は、各5個のペプチドからなる患者特異的ペプチドの4つのプールを調製することである。RP-HPLCアッセイが調製されており、これらのペプチド混合物の評価に適格であるとされている。このアッセイは、単一混合物内の複数のペプチドの良好な分解能を達成し、また個々のペプチドの定量にも用いられ得る。
【0409】
膜ろ過(0.2μm細孔径)を使用してバイオバーデンを低下させ、最終ろ過滅菌を行う。初めに4つの異なる適切なサイズのフィルタタイプを評価し、Pall、PESフィルタ(4612番)を選択した。現在までに、5つの異なる各ペプチドの4つの異なる混合物が調製されており、個々に2つのPESフィルタで順次ろ過した。RP-HPLCアッセイを利用して各個々のペプチドの回収率を評価した。20個中18個のペプチドについては、2回のろ過後の回収率は90%超であった。2つの極めて疎水性のペプチドについては、小規模で評価したとき回収率は60%未満であったが、規模を拡大するとほぼ完全に回収された(87及び97%)。本明細書に記載のとおり、選択した配列の疎水性の性質を制限する手法が取られる。
【0410】
DMSO中に溶解し、2mg/mlとなるようにD5W/コハク酸塩(5mM)で希釈し、及び400μg/mlの最終ペプチド濃度及び4%の最終DMSO濃度にしてプールすることにより、5つのペプチドからなるペプチドプール(プール4)を調製した。調製後、ペプチドを25mm Pall PESフィルタ(カタログ番号4612)でろ過し、1mlアリコートでNuncクライオバイアル(#375418)に分注した。現在までに時点0並びに2週間及び4週間の時点で試料を分析した。さらに試料は、8週間及び24週間の時点で分析する。-80℃では、4週間の時点でペプチドプール4のHPLCプロファイル又は不純物プロファイルに大きい変化は認められなかった。4週間の時点まで、ペプチドプールの目視観察及びpHは変化しなかった。
【0411】
実施例8
ペプチド合成
GMPペプチドは標準的な固相合成ペプチド化学により(例えば、CS 536 XTペプチド合成を使用して)合成し、RP-HPLCにより精製し得る。各個々のペプチドは、種々の適格なアッセイにより分析して外観(目視)、純度(RP-HPLC)、アイデンティティ(質量分析法による)、量(窒素元素)、及びトリフルオロ酢酸対イオン(RP-HPLC)を評価し、リリースし得る。
【0412】
個別化されたネオ抗原ペプチドは、各患者にユニークな最大20個の別個のペプチドから構成され得る。各ペプチドが、標準的なペプチド結合によりつながった約20~約30個のL-アミノ酸の線状ポリマーであり得る。アミノ末端は第一級アミン(NH2-)であってもよく、カルボキシ末端はカルボニル基(-COOH)である。哺乳類細胞に一般に見出される標準20アミノ酸が利用される(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)。各ペプチドの分子量はその長さ及び配列に基づき異なり、各ペプチドについて計算される。
【0413】
全ての合成反応に、Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(fluorenylmethoyloxycarbnyl))でN末端が保護されたアミノ酸を利用する。アミノ酸の側鎖は、必要に応じて、2,2,4,6,7-ペンタメチル-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)基、トリフェニルメチル(Trt)基、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)基又はt-ブチルエーテル(tBu)基で保護される。全てのバルクアミノ酸をジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解する。縮合は、別個の反応において以下の2つの触媒の組み合わせを利用する:
ジイソプロピルカルボジイミド(diisopylcarbodiimide)/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(DIC/HOBT)
ジイソプロピルエチルアミン(diisoproplyethylamine)/2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(DIEA/HBTU)
【0414】
高い取込みレベルを確保するため、各アミノ酸は2回カップリングさせる。第1のカップリングではDIC/HOBTを2~6時間利用し、第2のカップリングではDIEA/HBTUを1~2時間利用する。これらの2つのカップリングの各々はUV吸光度によってモニタし、カップリングサイクルの合間に樹脂をDMFで十分に洗浄して効率を向上させる。2サイクルのカップリング後、次のサイクルに進めるには、カップリング効率計算値が少なくとも95%でなければならない。この最低カップリング効率を満たさないペプチドは、さらなる合成を中止する。
【0415】
全てのアミノ酸をカップリングし終えた後、樹脂をDMFで2回洗浄し、続いてメタノールで3回洗浄する。次になおも反応槽中にある間に樹脂を短時間真空乾燥し、次に新しい風袋計量済み容器に移し入れて、それが自由に流動するまで真空乾燥する(12時間超)。乾燥させた樹脂が入った容器を秤量し、風袋計量済み容器の質量を減じ、及び樹脂質量を調整することによって、合成された粗ペプチドの質量を決定する。予想質量収率は60%~90%の範囲である。少なくとも200mgの粗ペプチドを生成しなかった合成は終了させる。乾燥樹脂は切断開始まで4℃で最長28日間保存し得る。
【0416】
切断反応は単一の部屋で行う。一組の患者特異的乾燥樹脂を合成室から切断室に移す前に、切断室をQAによって新規GMP製品の合成に完全に適格と認められたものにする。適格性認定には、ラインクリアランス点検、GMPスイートクリーニングの確認、全ての必要材料及びガラス器具類のステージング、機器の適切さ及び表示の確認、及び全ての必要人員が適切な訓練を受けていて作業を行う適格性を有し、且つ適切に更衣がなされ、明白な疾患を有しないことの確認が含まれる。
【0417】
部屋の準備作業は、使用する機器(ロータリーエバポレータ、真空ポンプ、はかり)の確認及び機器が適切に清掃及び校正されていることを示す文書の点検(適宜)から開始する。全ての必要な原材料(TFA、トリイソプロピルシラン(TIS)及び1,2-エタンジチオール)の完全なリストがQAによって発行され、製造が、利用すべきロット番号、再試験日又は有効期限及びそれぞれの日の反応に使われる材料の分量を特定する。
【0418】
樹脂からのペプチド鎖の切断及び側鎖保護基の切断は、酸によって生成されるフリーラジカルのスカベンジャーとしての2%トリイソプロピルシラン(TIS)及び1%1,2-エタンジチオールの存在下の酸性条件下(95%TFA)において室温で3~4時間で達成される。
【0419】
遊離粗ペプチドからろ過によって樹脂を分離する。遊離し且つ脱保護されたペプチドの最終的な溶液にエーテルで沈殿を生じさせ、沈殿物を12時間フリーズドライする。フリーズドライ粉末を秤量して遊離粗ペプチド/樹脂結合ペプチドの比を計算することにより、遊離粗ペプチドの収量を決定する。粗ペプチドの予想収量は200mg~1000mgである。少なくとも200mgの粗ペプチドが得られない切断反応は終了とする。次に粗ペプチドを精製スイートに移す。
【0420】
精製は単一の部屋で行う。一組の乾燥粗ペプチドを切断室から精製室に移す前に、精製室を品質保証(Quality Assurance)によって新規GMP製品の合成に完全に適格と認められたものにする。適格性認定には、ラインクリアランス点検、GMPスイートクリーニングの確認、全ての必要材料及びガラス器具類のステージング、機器の適切さ及び表示の確認、及び全ての必要人員が適切な訓練を受けていて作業を行う適格性を有し、且つ適切に更衣がなされ、明白な疾患を有しないことの確認が含まれる。
【0421】
部屋の準備作業は、使用する機器(分取逆相高速液体クロマトグラフィー[RP-HPLC]、はかり、分析用液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC/MS)、凍結乾燥器、はかり)の確認及び機器が適切に清掃及び校正されていることを示す文書の点検(適宜)から開始する。全ての必要な原材料(トリフルオロ酢酸[TFA]、アセトニトリル[ACN]、水)の完全なリストがQAによって発行され、製造が、利用すべきロット番号、再試験日又は有効期限及びそれぞれの日の反応に使われる材料の分量を特定する。
【0422】
精製は、ACN中に200mg以下のフリーズドライ遊離ペプチドを溶解することによって開始する。次に試料を水で5%~10%ACNにさらに希釈する。TFAを加えて0.1%の終濃度にする。患者特異的ペプチドの各セットの開始前に1つのC-18 RP-HPLCカラム(10cm×250cm)を新鮮に充填する。カラムを0.1%TFA含有5%アセトニトリルで十分に洗浄した後、患者ペプチドをロードする。単一のカラムにロードされるペプチドの最大量は200mgである。カラムは220nmでのUV観測によってモニタする。単一ペプチドをロードした後、試料をカラムに流入させ、5%アセトニトリル/0.1%TFAでカラムを洗浄する。0.1%TFAを含むアセトニトリルの10%~50%勾配を使用してペプチドを溶出させる。UV観測がベースラインを20%上回る時点で始まる画分を収集する(各50ml)。カラムからそれ以上UV吸収材料が溶出しなくなるまで、又は勾配が完了するまで、画分を収集し続ける。典型的には、主溶出ピークは4~8画分に分かれる。
【0423】
個々の画分はそれぞれ、分析用LC/MSによって評価する。選択される分析条件は、ピーク溶出生成物に関連するパーセントアセトニトリルに基づく。予想質量及び95%以上の純度を有する画分を、ペプチド生成物としてプールする。典型的には2~4画分がこのプール要件を満たす。プールされたペプチドはフリーズドライ用の風袋計量済みジャーに入れ、24~72時間フリーズドライする。フリーズドライペプチドが入ったジャーの質量を決定し、風袋計量済みジャーの質量を減じることにより、凍結乾燥ペプチドの質量を決定する。
【0424】
フリーズドライペプチドの一部をクオリティコントロールに移して分析及び処分する。残りはさらなる処理まで-20℃で保存する。
【0425】
いずれの画分も95%純度の要件を満たさないペプチドは破棄する。RP-HPLC画分の再処理は行うことができない。十分な未精製フリーズドライ切断ペプチドが利用可能な場合、第2のペプチド試料を、溶出ペプチドの純度が改善されるように勾配条件を調整してカラムで精製してもよい。
【0426】
次にカラムは、4カラム容積の100%ACN/0.1%TFAで十分に洗浄することによって残りのペプチドを取り除き、次に5%ACN/0.1%TFAで再平衡化させた後、次のペプチドをロードすることができる。
【0427】
個々の患者のペプチドが同じカラムで順次処理される。単一のカラムで25以下のペプチドが処理される。
【0428】
従って薬物物質製造の単位作業は以下からなる:
合成:
各アミノ酸の縮合、洗浄及び再縮合
樹脂洗浄及び真空乾燥
切断スイートに移す
切断:
樹脂からの酸切断
樹脂からの遊離ペプチドの分離及びペプチド沈殿
精製スイートに移す
精製:
アセトニトリル中への溶解及びRP-HPLC精製
24~72時間にわたるピーク画分のフリーズドライ
QC試験のためアリコートの取り出し及び残りの凍結乾燥生成物の保存。
【0429】
個別化されたネオ抗原ペプチドは、色分けされたキャップを備える2ml Nuncクライオバイアルが入った箱として供給されてもよく、各バイアルに約400ug/mlの濃度の最大5つのペプチドを含有する1.5mlの凍結DMSO/D5W溶液が入っている。ペプチドの4つのグループの各々につき10~15本のバイアルがあり得る。バイアルは使用時まで-80℃で保存すべきである。進行中の安定性試験はこの保存温度及び期間を裏付けている。
【0430】
保存及び安定性:個別化されたネオ抗原ペプチドは-80℃で凍結保存される。個別化されたネオ抗原ペプチド及びポリICLCの解凍して滅菌ろ過したインプロセス中間体及び最終混合物は室温で保つことができるが、4時間以内に使用しなければならない。
【0431】
適合性:個別化されたネオ抗原ペプチドは、3分の1の容積のポリICLCと使用直前に混合する。
【0432】
実施例9
非ホジキンリンパ腫(NHL)における自家幹細胞移植後の再発防止における新生物ワクチンNeoVax、及びニボルマブ
本明細書には3つの例示的投薬レジメンを提供する。最初の2つは、活性化T細胞上のプログラム細胞死1(PCD1)受容体のリガンド活性化を遮断することによって作用する癌の治療用に開発された完全ヒトIgG4モノクローナル抗体であるニボルマブの活性の向上に重点を置き、これは、新規の個別化されたネオ抗原ワクチン(本明細書では「NeoVax」とも称され、米国仮特許出願第61/869,721号明細書、同第61/809,406号明細書及び同第61/913,127号明細書(本明細書において全体として参照により援用される)に開示される)と、ニボルマブとの併用を評価することにより行う。第3の投薬レジメンは、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA4)に対するモノクローナル抗体であるイピリムマブの、単独での、又はニボルマブとの併用での安全性及び活性プロファイルの向上に重点を置き、これは、NeoVaxに対する免疫応答が発生する時間フレームにイピリムマブ共療法を集中させることによってイピリムマブの全体的な曝露の低下を可能にすることにより行う。この曝露低下は有効なワクチンとの併用によって可能となり、イピリムマブの用量を低下させ又は用量間の期間を延ばすことによるか、或いはワクチン接種部位の近傍に及びワクチン接種と時間的に一致してイピリムマブを皮下送達することによって実現し得る。本明細書において各々をさらに詳細に説明する。
【0433】
自家造血幹細胞移植(AHSCT)は、初期導入療法後の再発に苦しむ患者にとって有効な選択肢であるが、長期寛解及び治癒はほとんど認められない。最近になって、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMLBCL)の表面で観察されたプログラム細胞死1リガンド(PDL1)の発現に基づき、AHSCT後の抗PD1抗体(ピジリズマブ)治療の試験が行われた(Armand et al.Journal of Clinical Oncology 31:4199(2013));本明細書において全体として参照により援用される)。この試験では、他の最近の臨床試験と比較した抗PD1治療患者における無進行生存の改善、PD-1媒介性抑制の有効な逆転と一致する免疫細胞集団の変化、及びCD4+、CD54RO+記憶細胞の生存の増加を含め、有益な活性の有望な指標が示された。それにも関わらず、改良された療法が、特にAHSCT後の残存疾患を示す患者について、必要とされている。
【0434】
抗PD1療法は局所免疫抑制を軽減し、T細胞の枯渇又はアネルギーを克服する助けとなり得るが、存在するT細胞集団の数及び特異性に限界があるため、この効果の影響が最大化されない可能性がある。従って、癌ワクチンなどの免疫刺激手法を伴う併用抗PD1療法は、抗PD1が最大限に臨床的有益性を発揮することを可能にし得る。
【0435】
NeoVax(新生物ワクチン)は、各患者の腫瘍に見られる個人的突然変異によって作り出される極めて腫瘍特異的なネオ抗原を利用する新規の個別化された癌ワクチンである(Hacohen et al Cancer Immunology Research 1:11(2013);Heemskerk et al.EMBO Journal 32:194(2013);双方とも参照によって本明細書に援用される)。これらの突然変異は、「自己」ペプチドとは異なるペプチドをもたらすため、中枢性トレランスの免疫減弱効果を逃れると思われるエピトープを作り出す。NeoVaxワクチン療法は、現在までに、単独で、又はチェックポイント遮断阻害との併用で無効であると臨床的に明らかにされた複数の天然抗原(「腫瘍関連抗原;TAA)に特徴的なものと比べてより強力でより持続的な応答を作り出すために開発されている。NeoVax製品は、米国仮特許出願第61/869,721号明細書、同第61/809,406号明細書及び同第61/913,127号明細書(本明細書において全体として参照により援用される)に開示され、各々が別個の標的エピトープに相当する複数(約20)のロングペプチドを免疫原として利用し、及びポリICLCをアジュバントとして利用する。ロングペプチド及びポリICLCは、それぞれ「クラス最高の」送達系及び免疫アジュバントに相当する。NeoVaxによるファースト・イン・ヒューマン臨床試験は、ClinicalTrials.gov(NCT 01970358)に記載される。
【0436】
有効な免疫刺激剤を免疫抑制の軽減と組み合わせることにより、臨床転帰の改善を予想し得る。AHSCT後のセッティングは、少量の残存疾患、恒常性増殖状態に対する免疫細胞の注入、及びいかなる再発を遅延させる標準治療もないことによって特徴付けられる。これらの特徴は、疾患再発の遅延に対するニボルマブなどのチェックポイント阻害薬をNeoVax療法と併せた影響を試験するまたとない機会を提供する。
【0437】
予備的2アーム試験を行い、少数の患者においてニボルマブ単独による治療とニボルマブ及びNeoVaxによる治療とを比較することにより安全性を評価し、無進行生存(PFS)に対する治療の影響をモニタし、及び確認スクリーニングの時点で測定可能な疾患を有する任意の患者について、客観的奏効率(ORR)をモニタする。移植前前処置開始前に、ワクチン調製用に腫瘍組織を採取してシーケンシングするための同意を患者から得て、確認CTスクリーニングの時点で(療法開始の約4週間前)患者を無作為化する。各薬剤アームに15人の患者を組み入れる。この施設で追加のAHSCT後処置を受けていない同等の患者と結果を比較する。この試験の概要は図8に示す。
【0438】
療法は、AHSCTから4週間後に開始し得る。個々のアームのスケジュールは以下のとおりである:
・ニボルマブlhi1
・ニボルマブ:1、4、8、15、22日目にワクチン接種(1、2、3及び4週目;「プライミング」)及び11及び19週目にブースト。ニボルマブ(3mg/kg)は5週目に開始して以降3週毎に継続し、23週目に最終用量。
【0439】
ワクチン単独アームの進行性疾患患者は、研究者及びPIの裁量により、約3週間の時点でレスキューを試みてニボルマブの投与を受け始めてもよい。
【0440】
療法開始後4ヵ月毎にCTスキャンを行い(治療を行う医師の裁量により確認PETスキャンで)、療法開始後16ヵ月の時点で最終CTスキャンを行う。NeoVaxの投与を受けている全ての患者を、免疫ペプチドに対する免疫応答に関して評価する。
【0441】
この試験は、このセッティング下における安全性に関するさらなる情報を提供し得るが、最も重要なことには、既にこのセッティング下でピジリズマブによって観察された有望な結果が、NeoVaxによって拡大し、向上する。
【0442】
実施例10
転移性腎明細胞癌及びメラノーマにおけるNeoVax及びニボルマブ
腎明細胞癌(ccRCC)及び転移性メラノーマは、両方ともに、サイトカイン、ワクチン及びチェックポイント遮断阻害を含めた免疫調節療法に応答することが示されている腫瘍型である。転移性メラノーマに対するイピリムマブを含め、両方の疾患に複数の免疫調節療法が承認されている。ニボルマブは非盲検非無作為化第I/II相試験において単剤として評価され、両方の疾患において有望な結果が得られており、及びニボルマブ単独又はニボルマブ及びイピリムマブの併用を利用した複数のピボタル試験が現在進行中である。
【0443】
このチェックポイント遮断の成功にも関わらず、応答しないか又は強くは応答しない患者がなおも多く、有効なワクチンによる同時に起こる標的化された免疫刺激がないため、かかる療法の影響が最大化されない可能性がある。チェックポイント遮断療法は、単独では、局所免疫抑制を軽減し、且つT細胞の枯渇又はアネルギーを克服する助けとなり得るが、存在するT細胞集団-宿主免疫系に対する進行腫瘍の正常な生理的提示によって生じるT細胞の数及び特異性によって制限され得る。実際、イピリムマブの初期開発を裏付ける試験を含めた多くの動物試験において、抗CTLA4治療は単独では有効性がごく弱かったが、ワクチンとの併用時には大幅に有効性が高まった。
【0444】
有効なワクチンを免疫抑制の軽減と組み合わせると、T細胞標的のレパートリーが定性的に広がり得るとともに、現存の及び新規に誘導されるT細胞の活性が強化され、従って臨床転帰が著しく改善され得る。
【0445】
未治療の転移性メラノーマ患者(配列解析のため外科的にアクセス可能な腫瘍を有する)及び所定の位置に切除可能な原発腫瘍を有する未治療の転移性腎明細胞癌患者において、NeoVaxをニボルマブと併用する別個の試験を行う。試験の概要は図9に示す。各試験は、ニボルマブ単独をニボルマブ+NeoVaxと比較する2アーム試験である。患者には手術前に同意を得る。患者は、客観的奏効率(ORR)、無進行生存(PFS)及び全生存(OS)について評価する。ニボルマブは、外科的腫瘍除去後に許容され次第、3mg/kgの標準的な単剤投薬レベルでの投薬であり、進行が記録されるか、毒性によって中断されるか、又は同意が取り消されるまで、2週毎に継続する。NeoVax療法は、腫瘍切除の約8週間後に開始することができ、1、4、8、15、及び22日目(1、2、3及び4週目;「プライミング期」)及び11及び19週目(「ブースト」)に投与される。ニボルマブは、プライミングワクチン接種の期間中は投与されない。各アームに15人の患者を組み入れる。
【0446】
進行性疾患の初期徴候があったとき、研究者の裁量により、疾患の進行又はそれがないことが確認されるまで(これは初期徴候の6週間以内に解消されなければならない)、患者は療法を継続し、又はそのプロトコルを継続し得る。
【0447】
療法開始後4ヵ月毎にCTスキャンを行い(治療を行う医師の裁量により確認PETスキャンで)、療法開始後24ヵ月の時点で最終CTスキャンを行う。NeoVaxの投与を受けている患者を全て、免疫ペプチドに対する免疫応答に関して評価する。
【0448】
有効なワクチンは、T細胞応答の幅を広げることによってニボルマブ療法の臨床転帰を大幅に改善する機会を与え、NeoVaxは、自己トレランスの免疫減弱効果に左右されない高度に個人的な腫瘍特異的エピトープのクラスであるネオ抗原に焦点が合わされたクラス最上位のワクチンである。相互的に、ワクチン接種の間のチェックポイント遮断阻害は幅を広げ、NeoVaxに対する免疫応答レベルを高め得る。これらの予備的試験は、これらのセッティング下におけるニボルマブ単独の安全性及び有効性データの収集を可能にする進行中のピボタル試験(メラノーマに対するイピリムマブによる不奏効の前及びRCCに対する全身抗VEGF標的療法の前)と異なる疾患セッティングで行われる。
【0449】
実施例11
高リスクメラノーマ(ニボルマブなし)及び転移性メラノーマ(全身性ニボルマブあり)におけるNeoVaxとの併用での低下した用量/スケジュールのイピリムマブ
CTLA4は、当初、T細胞の表面上にある負の調節因子であって、デノボの免疫応答又は既存の応答の刺激が惹起された直後に、続く免疫T細胞応答を弱めて自己免疫又は制御されない炎症を防止するため上方制御されるものとして同定された。従って、免疫応答の発生の大きさは、CTLA4作用と密接に結び付いている。イピリムマブなどの抗CTLA4抗体による療法は、負の調節因子シグナルを遮断し、且つより広範なT細胞拡大を可能にすることにより、抗癌応答を増加させるものと予想された。多くの動物及びヒト相関試験で他の可能性のある作用機構が示唆されているが、イピリムマブで観察された臨床応答はかかる仮説と一致し、最近になって、イピリムマブで治療された患者において個人的なネオ抗原に対する抗原特異的T細胞がイピリムマブ療法前に観察され、及び療法後に増加したことが示された(van Rooij et al,Journal of Clinical Oncology 31:e439(2013))。
【0450】
動物における多くの研究が、抗CTLA4治療をワクチンと併用することにより、抗癌効果が時に劇的に増強されることを示しており、及びヒトにおける逸話的情報も同じことを示唆している(Hodi et al,PNAS USA 105:3005-3010,2008;Hodi et al.,PNAS USA 100:4712-7;Le et al,J Immunother 36:382-9,2013)。動物における併用の最も劇的な効果及びヒトにおける効果は典型的には自己細胞ワクチンなどの複合ワクチンで観察され、且つ標準的な個別の腫瘍関連抗原(メラノーマに対するgp100など)では観察されなかったため、これは決定的には抗原に依存し得る。自家腫瘍細胞ワクチンは、ネオ抗原と腫瘍関連抗原との両方を含有する(Hodi et al,2008及び2003)。Le et al.(2013)の研究では、2つの膵同種腫瘍細胞株の混合物が免疫原として使用された。細胞株間及び患者間でほぼ全てのネオ抗原に重複があった可能性は低いが、膵癌は、複数のHLA型にとって免疫原性となり得る12位での高頻度のK-ras突然変異を特徴とする(Weden et al.,Int J Cancer 128:1120-8,2011)。
【0451】
抗プログラム死受容体1(PD1)抗体のニボルマブは異なる作用機構を有し得る。PD1のリガンドであるPDL1は、多くの場合に天然腫瘍微小環境において腫瘍細胞で過剰発現し、阻害性リガンドであり、腫瘍浸潤リンパ球のT細胞アネルギー/枯渇を引き起こす。従って、抗CTLA4と抗PD1抗体との併用は、それらが異なる作用機構を有するため、より好ましい結果をもたらし得る可能性があるように思われ、これは動物において(Duraiswamy et al,Cancer Res;73(12)、及び恐らくはヒトにおいても(Wolchok JD et al.,N Engl J Med,2013)観察されている。残念ながら、初期報告及び進行中の臨床評価(Wolchok,2013)の両方において、併用療法は毒性が高いように見える。
【0452】
併用療法の有効性を維持し又は増加させながらも明らかな毒性を低減するための一つの手法は、治療レジメンに有効なワクチンを加え(それにより追加の抗原に対する有効なデノボのT細胞応答を直接生じさせる)、同時にチェックポイント遮断抗体に対する全体的な曝露を低減することであり得る。2つのCPB Abの対照比較は行われていないが、一般に抗CTLA4は、ノックアウトマウスにおいて観察される効果と一致して、抗PD1より高い毒性プロファイルを生じるものと見られる。CTLA4がデノボの免疫応答において明らかな役割を有することを所与とすれば、このことから、抗CTLA4の曝露を抗原曝露の時間フレームに制限することにより、毒性の低減及び有効性の維持の両方を実現し得ることが示唆され得る。
【0453】
本明細書には、メラノーマ患者における4つの予備的試験を記載する。図10A及び図10Bに概略を示す試験3A及び3Bは、転移性疾患におけるもので、イピリムマブ及びニボルマブの両方を利用する。図10C及び図10Dに概略を示す試験3C及び3Dは、セッティングが高リスク疾患であって、且つニボルマブを利用しないことを除き、3A及び3Bと同じである。
【0454】
最初の試験(3A)は、転移性メラノーマ患者における3コホート用量漸増(イピリムマブのみ用量漸増)試験である。患者には手術前に同意を得る。最初に各コホートに5人の患者を組み入れることができる。各コホートにおいて、患者は、ニボルマブの投与を外科的切除(腫瘍シーケンシングのため)の直後に開始して3mg/kg(この用量は全てのニボルマブ単独第3相試験において評価される)で2週毎に、NeoVaxを調製し終えるまで受け得る。プライミングワクチン接種期の間及びブースト前又はその最中の週の間、イピリムマブが投与されているときは、ニボルマブは保留される。NeoVax療法は腫瘍切除の約8週間後に開始することができ、1、4、8、15、及び22日目(1、2、3及び4週目;「プライミング期」)及び11及び19週目(「ブースト」)に投与される。ニボルマブは最終プライミング用量の翌週及び各ブーストの翌週に再開される。第1のコホートでは、患者はイピリムマブの投与をプライミングサイクルの開始時、5回目のプライミング用量の1週間後及び各ブーストの前に、全て1mg/kgの用量で受け得る。次のコホートは、プライミングワクチン接種の開始に伴う用量を3mg/kg(治療上承認されたレベル)に増量することができ、プライミングの終了及びブーストに伴う用量は1mg/kgのままとし得る。第3のコホートについては、プライミング開始用量及び各ブーストに伴う用量が3mg/kgである(本明細書におけるスケジュールの図表示を参照のこと)。従ってイピリムマブに対する最大曝露は、承認されたレジメン(10週間に分散する4つの3mg/kg用量)より約2.5倍低い、19週間に分散する3つの3mg/kg用量及び1つの1mg/kg用量であり得る。ニボルマブ単独で観察されたものと同等の毒性プロファイルを有すると判断された最も高い用量レベル及び次に高い用量レベル(全体的な毒性プロファイルが許容される場合)において2つの拡大コホート(各5人の患者)を追加する。各コホートについて、ネオ抗原に対する免疫応答の定量的及び定性的特徴を評価する。客観的奏効率(ORR)、無進行生存(PFS)及び全生存(OS)に関して患者を追跡する。
【0455】
第2の試験(3B)は試験3Aと同様の設計であるが、但し、イピリムマブは各ワクチン接種と共に皮下注射によって各ワクチン接種部位の近傍(2cm以内)に送達し、抗CTLA4活性をワクチン流入領域リンパ節に集中させて全身作用を制限する。ニボルマブは本明細書に記載されるとおり送達する。3つの用量漸増コホートがある。第1のコホートは、0.2mlの5mg/mlイピリムマブを各ワクチン接種と共に各ワクチン接種部位に注射し得る。第2のコホートは容積を0.5mlに増量することができ、及び第3のコホートは1.0mlに増量することができる。イピリムマブに対する最大曝露は、19週間で140mgである(承認されたレジメンの10週間に分散する840mg[70kg患者について]の約11分の1である)。ニボルマブ単独で観察されたものと同等の毒性プロファイルを有すると判断された最も高い用量レベル及び次に高い用量レベル(1つの及び全体的な毒性プロファイルが許容される場合)において2つの拡大コホート(各5人の患者)を追加する。本明細書に記載されるとおり患者を評価する。
【0456】
本明細書に記載される第3及び第4の試験は、本質的に第1及び第2と同じであり、但し、各々が高リスク疾患におけるものであり、且つニボルマブは利用しない。
【0457】
第3の試験(3C)は、高リスク(ステージIIIB、IIIC及び完全切除後のIV)メラノーマ又は手術で摘出したccRCC患者における3コホート用量漸増(イピリムマブのみ)試験である。患者には手術前に同意を得る。最初に各コホートに5人の患者を組み入れることができる。NeoVax療法は腫瘍切除の約8週間後に開始することができ、1、4、8、15、及び22日目(1、2、3及び4週目;「プライミング期」)及び11及び19週目(「ブースト」)に投与される。第1のコホートでは、患者はイピリムマブの投与を、プライミングサイクルの開始時、5回目のプライミング用量の1週間後及び各ブースト前に、全て1mg/kgの用量で受け得る。次のコホートは、プライミングワクチン接種の開始に伴う用量を3mg/kg(治療上許容されるレベル)に増量することができ、プライミングの終了及びブーストに伴う用量は1mg/kgのままとすることができる。第3のコホートについては、プライミング開始用量及び各ブーストに伴う用量が3mg/kgである(本明細書におけるスケジュールの図表示を参照のこと)。従ってイピリムマブに対する最大曝露は、承認されたレジメン(10週間に分散する4つの3mg/kg用量)の約2.5分の1の、19週間に分散する3つの3mg/kg用量及び1つの1mg/kg用量であり得る。アジュバント療法と一致する許容される毒性プロファイル及び再発リスクプロファイルを有すると判断された最も高い用量レベルにおいて1つの拡大コホート(10人の患者)を追加する。各コホートについて、ネオ抗原に対する免疫応答の定量的及び定性的特徴を評価する。プロトコル13-240にあるとおり、患者を無再発生存(RFS)に関して最長2年にわたり追跡する。
【0458】
第4の試験(3D)は、試験3Bと同様の設計であるが、但し、イピリムマブは各ワクチン接種と共に皮下注射によって各ワクチン接種部位の近傍(1cm以内)に送達し、抗CTLA4活性をワクチン流入領域リンパ節に集中させて全身作用を制限する。3つの用量漸増コホートがある。第1のコホートは、各ワクチン接種と共に0.2mlの5mg/mlイピリムマブを各ワクチン接種部位に注射し得る。第2のコホートは容積を0.5mlに増量することができ、及び第3のコホートは1.0mlに増量することができる。イピリムマブに対する最大曝露は19週間で140mgである(承認されたレジメンの10週間に分散する840mg[70kg患者について]の約11分の1である)。アジュバント療法と一致する許容される毒性プロファイル及び再発リスクプロファイルを有すると判断された最も高い用量レベルにおいて1つの拡大コホート(10人の患者)を追加する。各コホートについて、ネオ抗原に対する免疫応答の定量的及び定性的特徴を評価する。プロトコル13-240にあるとおり、患者を無再発生存(RFS)に関して最長2年にわたり追跡する。
【0459】
イピリムマブとニボルマブとの併用の結果は刺激的であるが、毒性の増加が妨げとなる。適切なモニタリング及び反応によって潜在的に管理可能であるが(より大規模な試験で確認されるべき)、分子の根底にある生物学並びに動物試験及び一部のヒト試験で蓄積されている観察結果から、有効なワクチンをイピリムマブと組み合わせることにより、有効性を維持し又は増加させながらもイピリムマブの全体的な曝露を低減可能であり得ることが示唆され得る。NeoVaxは、大幅に強力で且つ特異性の高い免疫応答を生じさせ、且つイピリムマブと相乗作用をもたらす可能性を有する、パラダイムシフトを起こすワクチンである。これらの試験は、毒性を低減しながらも有効性を維持し又は増加させる機会を提供する。加えて、この強度軽減の構想を敷衍することにより、イピリムマブを高リスク疾患に有効に、且つセッティングに適切に拡大することが可能となり得る。
【0460】
実施例12
個別化されたネオ抗原癌ワクチンNeoVaxをイピリムマブと併用して高リスク腎細胞癌を治療する第I相試験設計
シーケンシング技術により、腫瘍が各々、遺伝子のタンパク質コード内容を改変する複数の患者特異的突然変異を含むことが明らかになっている。かかる突然変異は、単一アミノ酸変化(ミスセンス突然変異によって引き起こされる)から、フレームシフト、終止コドンのリードスルー又はイントロン領域の翻訳(新規オープンリーディングフレーム突然変異;ネオORF)に起因する新規アミノ酸配列の長い領域の付加にまで及ぶ改変タンパク質を作り出す。これらの突然変異タンパク質は、天然タンパク質と異なり自己トレランスの免疫抑制効果を受けないため、腫瘍に対する宿主の免疫応答にとって有用な標的である。従って、突然変異タンパク質は免疫原性である可能性が一層高く、また患者の正常細胞と比較して腫瘍細胞に対する特異性もより高い
【0461】
動物腫瘍におけるミスセンス突然変異又はネオORFが強力なCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導し、ある場合には疾患の予防又は根絶につながることを示す報告が複数ある3~6。最近になってMatsushita及び共同研究者らが、正常マウス構造タンパク質(スペクトリン-β2)における単一アミノ酸変化が、移植後に腫瘍が生存し得るか否かを特徴付ける、メチルコラントレン誘発移植可能腫瘍に対する免疫攻撃の優位な標的であることを実証した。さらに、スペクトリン-β2発現はまた、エスケープ変異体においても劇的に低下し、免疫編集仮説の明確な機構的実例を提供した。同時に、DuPage及び共同研究者らが、マウスにおいて小さい免疫原性ネオORFを使用して同様の観察を行った(オボアルブミンペプチド)。これらの研究はいずれも、従って免疫編集ネオ抗原が有効な抗腫瘍応答の標的として十分であることを示している。
【0462】
それに対応して、自然退縮及び長期生存に関する多くのヒト研究が、突然変異エピトープに対する強力なCD8+ T細胞応答が良好な臨床応答と相関することを示している。これらの研究は、最初にヒト免疫原性ネオ抗原の同定から始まり10,11、Lennerzによる画期的な研究が天然タンパク質応答と比較したネオ抗原応答の強度及び持続性を実証し12、現在は、抗CTLA-4療法に応答した患者におけるネオ抗原特異的CD8+ T細胞の増加13及びネオ抗原特異的CD4+ T細胞がエンリッチされた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団の注入後の腫瘍退縮14の観察を含んでいる。これらの観察は複数の癌型で複数のHLA対立遺伝子についてなされたとともに、腫瘍浸潤性T細胞集団において広範に観察されている15,16。CD8+ T細胞応答のほとんどが、天然エピトープと比較して突然変異ミスセンスエピトープに対して高度な特異性を示し、循環T細胞の高い割合を呈し、及び過剰発現した天然抗原に対する同じ患者におけるCD8+ T細胞応答と比べてより豊富で活性の高い細胞をもたらす。
【0463】
従って、動物及びヒトにおいて、個別的な突然変異抗原(ミスセンス突然変異など)及び広範な新規抗原(ネオORF)の両方に対する免疫応答が観察上退縮及び長期寛解と相関する。癌ゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas:TCGA)データベースに見られる患者の大規模な集合(n=468)の中での当該の相関を拡大して、6つの腫瘍型の最近のメタ分析により、少なくとも1つの予想免疫原性ネオエピトープを有する患者について、予想免疫原性エピトープを有しない患者と比較して有意な生存優位性(ハザード比=0.53;p=0.002)が明らかになった17
【0464】
ヒトにおける3つの試験において、免疫療法における突然変異抗原の潜在的能力が直接評価されている。第一に、濾胞性リンパ腫は、再構成された免疫グロブリンを発現するB細胞の制御されない成長によって特徴付けられる。この再構成された免疫グロブリンの精製及びワクチンとしての使用が、無病生存を改善し得る18。誘導されたCD8+ T細胞は、免疫グロブリン分子の再構成された突然変異部分(イディオタイプ)に対して応答性を示したが、生殖細胞系列フレームワークに対しては示さなかった19。第二に、HPVの発癌タンパク質に対応するペプチドの混合物(ヒトについてのネオORF)は、HPVによって誘導された前癌病変の有意な寛解をもたらすことが示されている20~22。最後に、2つの試験で上皮成長因子受容体(EGFRviii)の合成バージョンのインフレームジャンクション欠失変異体によって、この突然変異を含む頻度が高いことが知られる集団である膠芽腫患者において免疫化したところ、有望な第2相の結果が得られた23,24。重要なことには、両方の試験において、腫瘍再発を有する患者の腫瘍の評価は、再発性腫瘍がほぼ均一に(23個中20個)EGFRviiiの発現を失ったことを示した。これは、ヒトにおける免疫原性ネオ抗原に対する免疫圧力に起因する免疫編集の明確なエビデンスであると解釈された。
【0465】
ペプチドを免疫原として用いる多くの癌ワクチンは、「ショート」ペプチドを利用している。これらのペプチドは典型的には9~10アミノ酸長であり、HLA発現細胞の表面上のHLA分子に直接結合する能力を有する。約20~30アミノ酸長の「ロング」ペプチドは、最近になって、よりロバストで且つより持続的な免疫応答を生じさせることが示されている20,21。ロングペプチドがHLA分子と結合するためには、インターナリゼーション、プロセシング及び交差提示が必要である;これらの機能は、強力なT細胞応答を誘導することのできる樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞においてのみ起こる。
【0466】
ヒトにおける多くの試験でペプチドワクチンの安全性が実証されている。それらには、複数のショートペプチド25並びにネオORFを含めた複数のロングペプチドによる試験が含まれる。詳細には、p53に由来する10個のオーバーラッピングロングペプチドの混合物で4つの試験が行われており26~30、及びHPVの発癌タンパク質に由来する13個のロングペプチドの混合物で5つの別個の試験が行われている20~22,31,32。これらの試験では、グレード2より高い毒性は観察されず、ほとんどの有害事象は持続時間及び重症度が限られていた。加えて、ヒトにおいて多くの異種抗原製剤が試験されている。かかる製剤には、照射細胞ワクチン33,34、腫瘍細胞可溶化物35及びシェディングした腫瘍細胞株抗原36が含まれる。これらの異種ワクチンは、インタクトなタンパク質、部分的に分解した細胞内タンパク質、及びMHC Iに結合した表面上に見られるペプチドの形態の突然変異抗原を含む。さらに、これらは、過剰発現した分子及び選択的に発現した分子並びに多くの追加の天然タンパク質を含む。加えて、精製熱ショックタンパク質(HSP)96ペプチド複合体が抗原として用いられている;かかる複合体もまた多くの突然変異ペプチドを含む37。これらの試験のいずれにおいても、ワクチンの免疫原に直接原因を帰し得る重大な安全上の問題は報告されていない。
【0467】
トール様受容体(TLR)は、「病原体関連分子パターン」(PAMPs)と呼ばれる多くの微生物が共有する保存モチーフを認識するパターン認識受容体(PRR)ファミリーの重要なメンバーである。これらの「危険シグナル」の認識により、自然及び適応免疫系の複数の要素が活性化する。TLRは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、T細胞及びB細胞、肥満細胞、及び顆粒球などの自然及び適応免疫系の細胞によって発現され、細胞膜、リソソーム、エンドソーム、及びエンドリソソームなどの種々の細胞内コンパートメントに局在する38。異なるTLRが個別のPAMPsを認識する。例えば、TLR4は、細菌細胞壁に含まれるLPSによって活性化され、TLR9は非メチル化細菌性又はウイルス性CpG DNAによって活性化され、及びTLR3は二本鎖RNAによって活性化される39。TLRリガンド結合が1つ以上の細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こし、最終的に炎症及び免疫に関連する多くの主要分子(特に転写因子NF-κB及びI型インターフェロン)の産生をもたらす。
【0468】
TLRによって媒介されるDC活性化は、DC活性化の亢進、食作用、活性化及び共刺激マーカー、例えばCD80、CD83、及びCD86の上方制御、流入領域リンパ節へのDCの遊走を可能にし、且つT細胞に対する抗原提示を促進するCCR7の発現、並びにI型インターフェロン、IL-12、及びIL-6などのサイトカインの分泌の増加を生じさせる。これらの下流イベントはいずれも、適応免疫応答の誘導に決定的に重要である。
【0469】
現在臨床開発中の最も有望な癌ワクチンアジュバントの中に、TLR9アゴニストのCpG及び合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドのポリICLCがある。前臨床試験では、LPS及びCpGと比較したとき、ポリICLCが、その炎症誘発性サイトカインの誘導及びIL-10の刺激の欠如、並びにDCにおける高レベルの共刺激分子の維持に起因して最も強力なTLRアジュバントであるように思われる40。さらに、最近、ポリICLCが、ヒトパピローマウイルス(HPV)16カプソマーからなるタンパク質ワクチンのアジュバントとして非ヒト霊長類(アカゲザル)においてCpGと直接比較された。ポリICLCは、HPV特異的Th1免疫応答の誘導においてはるかに有効性が高いことが分かった41
【0470】
ポリICLCは、約5000ヌクレオチドの平均長さのポリI鎖とポリC鎖とからなる合成的に調製された二本鎖RNAであり、ポリリジン及びカルボキシメチルセルロースを加えることにより熱変性及び血清ヌクレアーゼによる加水分解に対して安定化されている。この化合物は、TLR3並びにいずれもPAMPファミリーのメンバーであるMDA5及びRIG3のRNAヘリカーゼドメインを活性化し、DC及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化並びにI型インターフェロン、サイトカイン、及びケモカインの「天然混合物」の産生を引き起こす。さらに、ポリICLCは、2つのIFN誘導性核酵素系2’5’-OAS及びP1/eIF2aキナーゼ(PKR(4-6)としても知られる)、並びにRIG-Iヘリカーゼ及びMDA5によって媒介されるより直接的な、広域宿主を標的化する抗感染、及び場合により抗腫瘍効果を及ぼす。
【0471】
げっ歯類及び非ヒト霊長類において、ポリICLCは、ウイルス抗原に対するT細胞応答42~45、交差プライミング、並びに腫瘍特異的、ウイルス特異的、及び自己抗原特異的CD8+ T細胞の誘導を増強することが示された46~48。非ヒト霊長類における最近の研究において、ポリICLCは、DC標的化又は非標的化HIV Gag p24タンパク質に対する抗体応答及びT細胞免疫の発生に必須であることが分かっており、ワクチンアジュバントとしてのその有効性が強調される。
【0472】
ヒト対象では、一連の全血試料の転写解析により、ポリICLCの1回の単回皮下投与を受けた8人の健常ヒトボランティア間における同様の遺伝子発現プロファイル、及びプラセボを受けた4人の対象に対してこれらの8人の対象間における最大212個の遺伝子の差次的発現が明らかになった49。顕著なことに、ポリICLC遺伝子発現データを、極めて有効性の高い黄熱病ワクチンYF17D50で免疫されたボランティアからの先行データと比較すると、多数のカノニカルな転写及びシグナル伝達経路が、自然免疫系のものを含め、ピーク時点で同じように上方制御されたことが示された。
【0473】
ロングペプチドと併せたポリICLCの2つの試験が発表されている。皮下ワクチン接種の第1相試験において、癌精巣抗原NY-ESO-1からの合成オーバーラッピングロングペプチド(OLP)単独又はMontanide-ISA-51を伴うか、又は1.4mgポリICLCとMontanideを伴い治療された第2又は第3完全臨床寛解期にある卵巣癌、ファロピウス管癌、及び原発性腹膜癌患者に関する免疫学的分析が報告された。ポリICLC及びMontanideを加えることで、OLP単独又はOLP及びMontanideと比較して、NY-ESO-1特異的CD4+及びCD8+ T細胞及び抗体応答の発生が著しく増強された51。第2のヒト試験では、前癌性腺腫患者においてポリICLCがMUC1合成ロングペプチドと併用された。患者のほぼ半数にロバストな抗体応答が認められ、これは先在する循環骨髄由来サプレッサー細胞レベルと逆相関した52
【0474】
ポリICLCはまた、最小限のエピトープを負荷した患者由来樹状細胞による免疫化のアジュバントとしても利用されている。患者の大多数で、複数のペプチドに対するCD4+及びCD8+ T細胞応答の両方が観察された53
【0475】
ポリICLCは、感染症患者及び種々の異なる腫瘍型を有する対象で最も広範に試験されているTLR3アゴニスト製剤である。組換えインターフェロンが利用可能になる前は、種々の固形腫瘍及び白血病患者において臨床では≧6mg/m2(約170μg/kg)の高用量でポリICLCが使用された53。多くの場合に40℃を超える発熱が、よく見られる有害事象で、一次的な用量規制因子であった。他のよく見られる有害事象は、インフルエンザ様症状(悪心、嘔吐、関節痛、筋肉痛及び疲労)及び低血圧症、血小板減少症及び白血球減少症であった。組換えインターフェロンが臨床的に利用可能になると、高用量ポリICLCを続ける必要はなくなり、宿主防御の刺激において、及び免疫アジュバントとして、より低用量(10~50μg/kg)が極めて有効であることが認識されるようになった。
【0476】
現在までに、400人を超える悪性神経膠腫患者が、単剤療法としての、或いは化学療法、放射線、又はワクチンと併せた低用量(1~2mg総用量)のポリICLCを使用した7件の臨床試験に参加している(表5)。さらに、様々な他の固形腫瘍(前立腺癌、結腸直腸癌、膵癌、肝細胞癌、乳癌、及び卵巣癌)の患者が、HIV/AIDS及び多発性硬化症の患者に加えて、10件を超えるさらなる臨床第I相及び第II相試験で治療されている。総じて、この薬物は全ての試験及びあらゆる疾患にわたり良好に忍容されている。
【0477】
【表13】
【0478】
【表14】
【0479】
腎明細胞癌(ccRCC)は、10種の最も一般的な癌の一つであり、発生率は上昇しつつある。患者の20~30%は最初に概して不治の転移性疾患を呈し、一方、治癒を意図した腎摘出術を受ける患者の30%は遠隔転移を伴う再発を経験する。血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害薬又は哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)などの標的化全身性薬剤は、転移性疾患患者に有意な臨床的有益性をもたらしているが、腫瘍応答は持続的でなく、ほとんどの患者が再発し、最終的にこの疾患で死亡する54。これらのセッティングにおける既存の治療モダリティの併用が調べられているが、著しい毒性を伴い、活性の増加は僅かである。例えあったとしても恐らく微小転移である疾患負荷を有する高リスク切除後患者の有効なアジュバント治療が欠けている。従って実質的な改良を実現するには、革新的な手法が必要である。
【0480】
恐らく他のどの治療手法よりも、免疫療法は、免疫系の多様性及び持続性のある記憶並びに悪性腫瘍細胞を破壊し及び再発を防止するその能力を捉えることにより、治癒転帰の可能性がある。7%の持続的完全寛解率に基づき転移性ccRCC患者においては高用量インターロイキン-2(HD-IL2)が使用されるが、この療法は、その高い毒性に起因して選択の中心で提供されるに過ぎず、応答を予想する確立されたバイオマーカーはない55。それにも関わらず、HD-IL2による結果は、ccRCCにおいて「第一世代」免疫療法の試みが効くことを証明している。
【0481】
2つの免疫療法手法がccRCC及び他の疾患において積極的に評価されており、即ち、抗原特異的免疫化(ワクチン接種)、及び最近では、チェックポイント遮断抗体(CPB)での治療による非特異的免疫刺激である56~58。現在までのccRCCにおけるワクチンは、有効性のヒントを提供しているが、腫瘍応答率及び腫瘍応答の持続性は低いままであり59,60、これは、これらの手法で誘導される有効な腫瘍特異的免疫応答の欠如に起因する可能性が最も高い。歴史的に、ほとんどの癌ワクチンは、天然タンパク質のクラスである腫瘍関連抗原(TAA)を利用しており、これは腫瘍細胞で優先的又は選択的に発現するが、一部の正常細胞にも見出され得る。天然タンパク質は、中枢性トレランス(免疫系による自己抗原の認識を妨げ、それにより自己免疫の発生を妨げる天然に存在する現象)に起因して比較的弱い免疫応答を生じる。現在までTAAワクチン接種で実現される結果は比較的弱いにも関わらず、幾つかのピボタル臨床試験がccRCCにおいてかかる天然抗原を利用して進行中であり、より有効な療法の必要性が指摘される。
【0482】
DNAシーケンシング、特に次世代シーケンシング技術は、個々の患者の腫瘍に独自に見られる多くのタンパク質コード突然変異を含む癌の遺伝的ランドスケープを明らかにしている。これらの突然変異には、単一アミノ酸ミスセンス突然変異(優勢なタイプ)及びアミノ酸1個から最大100個に至るまでの様々な長さのフレームシフト又はリードスルー突然変異によって作り出される新規オープンリーディングフレーム(ネオORF)の両方が含まれる。動物及びヒトの両方において、かかる突然変異エピトープが免疫応答の誘導に有効であることを実証するエビデンスがある。重要なことには、養子T細胞移入後に自然退縮又は劇的な応答のいずれかを有した複数の腫瘍型を有する患者において、突然変異エピトープに対する強力なCD8+ T細胞応答が見られており、CD8+ T細胞活性及び良好な臨床応答と関連があり得ることが示唆される。これらのCD8+ T細胞応答のほとんどが、天然エピトープと比較して突然変異エピトープに対して極めて良好な特異性を示し、循環T細胞の高い割合を呈し、及び過剰発現した天然抗原に対する同じ患者におけるCD8+ T細胞よりも豊富で活性の高い細胞を誘導した。
【0483】
ヒトにおける3つの試験において、免疫療法における突然変異抗原の潜在的能力が直接評価されている。濾胞性リンパ腫において悪性B細胞が発現する再構成免疫グロブリンを精製したものがワクチンとして用いられており、幾つかの第2相及び第3相試験で良好な臨床転帰をもたらしている(恐らくは残存疾患の量に依存する)61。最近になって、HPVの発癌タンパク質(ネオORF型の突然変異に直接類似している)に対応するペプチドの混合物が、HPVによって誘導された前癌病変の有意な寛解をもたらすことが示されている20~22。最後に、膠芽腫患者によく見られる突然変異型の上皮成長因子受容体(EGFR)が、複数の初期臨床試験で免疫原として用いられている62。興味深いことに、この変異遺伝子の下方制御のエビデンスが見出されており、ワクチンによって誘導された免疫圧力に起因する免疫編集が示唆される24。従って、動物及びヒトにおいて、個別的な突然変異抗原(ミスセンス突然変異など)及び広範な新規抗原(ネオORF)の両方に対する免疫応答が観察上退縮及び長期寛解と相関し、3つの臨床試験において、治療的ワクチン接種後に疾患を制御することが示されている。癌ゲノムに見られる多くの突然変異エピトープの直接的且つ網羅的な同定により、この免疫原クラスを用いて免疫応答及び癌ワクチンの有効性を改善する機会が作り出される。
【0484】
抗CTLA4特異的IgG1モノクローナル抗体、イピリムマブは、抗原活性化後にデノボ及び記憶T細胞応答の両方を弱める主要な調節経路を遮断するものであり、進行性メラノーマ患者において単剤療法として全生存を改善することが実証されている56。さらに、PD-1経路(別の免疫チェックポイント)を標的化する抗体が、複数の癌型で優れた抗腫瘍活性を実証しており57,58,63~65、CTLA-4及びPD-1経路遮断の併用は、進行性メラノーマにおいて63,64、及び最近ではccRCCにおいて明らかな相乗作用を示した(Hammers et al,ASCO 2014 Abstract #4504)。この成功にも関わらず、同時に起こる有効なワクチンによる免疫刺激がないため、かかる療法が最大限の影響を及ぼすことは制限され得る。
【0485】
動物における多くの試験が、抗CTLA4治療をワクチンと併用すると有効性が実質的に増大することを示しており66~68、逸話的情報からは、ヒトにおいても同様の効果が示唆される69,70。動物における併用のほとんどの劇的効果及びヒトにおける効果が典型的には自己細胞ワクチンなどの複合ワクチンで観察されており、個々の腫瘍関連抗原(メラノーマに対するgp100など)では観察されていないため、この潜在的相乗作用は決定的には抗原に依存し得る。自家腫瘍細胞ワクチン69は、ネオ抗原及び腫瘍関連抗原の両方を含む。NeoVaxは、免疫系をネオ抗原(恐らくは可能性のある抗原のなかで最も免疫原性の高いサブセット)に集中させることにより、免疫応答を強化して腫瘍に集中させ、それにより一層ロバストな臨床活性を生じさせるものと思われる。相互的に、ワクチン接種中のチェックポイント遮断はNeoVaxに対する応答の幅及び大きさを増加させ、記憶細胞形成を増加させ得る。最近、イピリムマブによる治療患者において治療開始前にネオ抗原特異的T細胞が観察され、療法後に増加した71
【0486】
本試験の革新的な面は、イピリムマブの送達経路である。転移性疾患に承認されている送達経路である静脈内送達イピリムマブの毒性プロファイルに関しては、現実的な懸念がある。このため、本試験設計は、各ワクチン投薬を行う間にイピリムマブをワクチン接種部位に近接して皮下注射で「局所的に」送達することを含む。イピリムマブのような大型タンパク質は、皮下注射後、リンパ管及び流入領域リンパ節を通過して循環に入る72。従って、この手法によってイピリムマブがワクチンと同じ流入領域リンパ節に標的化され、全身曝露が低下し、それによりイピリムマブの有効性が最大限になるとともに全身毒性が抑えられ得ることが予想される。複数の動物試験で、抗CTLA4の局所的投薬が有効であることが示されている。局所的投薬の方法としては、以下が挙げられている:(i)ワクチンとして使用される照射腫瘍細胞からの抗CTLA4の局所産生73、(ii)腫瘍(抗原供給源)と局所流入領域リンパ節との間の抗CTLA4の「イントランジット(in transit)」送達74、及び(iii)抗CTLA4の直接の腫瘍内注射75。照射された抗CTLA4発現腫瘍細胞からの局所的投与での抗腫瘍活性は全身投与と比較して低下したが、「イントランジット」送達及び直接の腫瘍内注射では同等か、又はそれより良好であった。注目すべきことに、アブスコパル効果が観察されており、ここでは動物の片側の側腹部における腫瘍近傍又はその中への抗CTLA4抗体の注射が、反対側の側腹部において腫瘍の消失をもたらしたことから74,75、全身的治療効果が示される。
【0487】
本明細書には、個別化されたネオ抗原癌ワクチンとイピリムマブとの併用によって高リスク腎細胞癌を治療する試験設計を記載する(図11を参照)。この試験は非盲検第I相試験であり、ここでは明らかなccRCCを有する患者(完全切除後だが高リスクの患者並びに低い又は中程度のリスクの転移性疾患患者の両方)が、参加者の腫瘍細胞に特異的(即ち-その正常細胞には見られない)であるとともに参加者にユニーク(即ち-「個人的」)である最大20のペプチドで免疫化され、同時にワクチン部位にごく近接してイピリムマブを受ける。これらのペプチドは、当該の参加者の腫瘍細胞内に起こっているミスセンス突然変異、インフレーム遺伝子融合及び新規オープンリーディングフレーム突然変異(まとめて「ネオ抗原」として知られる)によってコードされ、DNA及びRNAシーケンシングで同定される。各参加者につき少なくとも約20アミノ酸長の最大20のペプチドを調製し、免疫アジュバントの、ポリ-L-リジン及びカルボキシメチルセルロースで安定化させたポリイノシン・ポリシチジン(ポリIC)(ポリICLC)(Hiltonol(登録商標))と共に投与する。従って、個別化されたネオ抗原癌ワクチンはペプチド+ポリICLCからなり、「NeoVax」と呼ばれる。イピリムマブは、T細胞増殖を制限するT細胞の表面上の分子CTLA4に対する抗体であり、転移性メラノーマの治療に承認されている(Yervoy(登録商標))。イピリムマブは皮下注射によって各ワクチン接種部位の近傍に送達し、それによって1)抗CTLA4活性をワクチン流入領域リンパ節に向け、及び2)全身毒性作用を抑える。この手法は動物腫瘍モデルにおいて有効であり、進行性メラノーマにおいて承認されている用量/スケジュール(4用量について3mg/kg、q3wk)と比較して全身イピリムマブレベルの大幅な低減をもたらすと予想される。
【0488】
適格患者が試験に参加し、原発性腎腫瘍又は転移部位を切除することを目的とした手術を受ける。手術を受けた、適格性基準を満たし、且つシーケンシング用の核酸の調製に十分な組織が得られた患者が、試験の治療相を続行することができる。
【0489】
試験は2部構成で行う。第1部(10人の患者)では、3つの候補用量レベルから最大耐容量(MTD)を特定する。第2部では、MTDで10人のさらなる患者を登録し、局所投与されるイピリムマブとの併用で投与されるNeoVax癌ワクチンの安全性及び活性分析を拡張する。
【0490】
初期安全性評価には5人の患者が参加する(コホート1)。コホート1の治療の最初の7週間にDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、5人の患者はコホート2に参加する。治療の最初の7週間にコホート1の2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、5人の患者はコホート-1に参加する。
【0491】
コホート2においてDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、用量レベル2が最大耐容量(MTD)であり、当該用量レベルにさらに10人の患者が参加することにより、重大な毒性の検出可能性を高め、生物学的相関エンドポイントを完了させ、臨床的腫瘍活性を伴う予備経験を得る。コホート2において2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、用量レベル1がMTDであり、さらに10人の患者をこの用量で治療する。
【0492】
コホート-1においてDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、用量レベル-1が最大耐容量(MTD)であり、当該用量レベルにさらに10人の患者が参加する。コホート2において2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、試験を中止する。
【0493】
GMPペプチドは合成化学によって調製し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製し、小集団で混合し、及び安定化二本鎖RNAの免疫アジュバントポリICLCと組み合わせる。ペプチドとポリICLCとのこの混合物は、これらの患者/腫瘍特異的突然変異に向けられる細胞性免疫応答の誘導を目的としたワクチン接種に使用される。各参加者が各免疫化時に全てのペプチドを受け得る。
【0494】
NeoVaxによるワクチン接種後のネオ抗原特異的T細胞応答の誘導及び局所送達されるイピリムマブとの同時治療は、IFN-γ ELISPOT及び/又は四量体分析によって評価する。比較は、ワクチン投与前、及びワクチン接種後に、最終プライミング用量の4週間後から開始して採取した試料間で行う。アッセイは、拡張コホートにおいてのみ全10人の患者について行う。
【0495】
IFN-γ分泌は、CD4+及び/又はCD8+ T細胞によるコグネイトペプチドの認識又は細胞分裂刺激の結果として起こる。ワクチン接種に使用される20~30merペプチドは抗原提示細胞によるプロセシングを受けてより小さいペプチドにならなければならないため、インビボで多数の異なるCD4+及びCD8+決定基がT細胞に提示され得る。患者は、IFN-γ ELISPOTアッセイにおいて、刺激物質としてプロテアソームのプロセシングが必要な予測エピトープ短鎖ペプチド並びにより長鎖のペプチドを使用して評価する。必要であれば、フォローアップ分析において正確な免疫原性ペプチドを決定する。
【0496】
可能ならば、1つ以上のエピトープに対するHLA四量体を調製し、細胞染色及びフローサイトメトリーに使用して応答T細胞のレベルを独立に評価する。
【0497】
末梢血中のT細胞応答の大きさ及び決定基マッピングの分析に加えて、ワクチンによって誘導される免疫応答の他の側面が決定的に重要であり、評価する。これらの評価は、スクリーニングアッセイでエキソビボIFN-γ ELISPOT又は四量体応答を呈する患者において実施する。これらには、T細胞サブセットの評価(Th1対Th2、Tエフェクター対記憶細胞)、調節性T細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞などの調節性細胞の存在及び存在量の分析、並びに患者特異的腫瘍細胞認識が含まれる。最後に、ワクチン接種前及びその後に採取した末梢血試料又はTIL集団中のT細胞受容体のVβサブファミリーの標的ディープシーケンシングによって、TCRレパートリーの全般的な変化並びに個々のT細胞クローンの存在量の変化を決定する。
【0498】
病理学的評価に十分な腫瘍が回収された後、残りの腫瘍組織は滅菌容器内の滅菌媒体中に置き、即時凍結に移すか、又は脱凝集に使用する。腫瘍組織の一部は全エクソーム及びトランスクリプトームシーケンシングに使用する。単一細胞を調製する場合、細胞株は初期化され得る。加えて、単一細胞懸濁液から腫瘍浸潤リンパ球を調製する。配列解析からの結果が得られない又は最適以下である場合、腫瘍細胞株細胞を使用してシーケンシング用にさらなる核酸を調製してもよい。正常組織試料については、採血からの末梢血単核細胞を利用する。
【0499】
組織試料から核酸を抽出し、Broad InstituteのCLIA認定研究室でシーケンシングを行う。腫瘍及び正常DNA試料について、全エクソームキャプチャーを行った後、Illumina HiSeqでシーケンシングする。腫瘍RNAについては、ポリA選択RNAに関してcDNAライブラリを調製した後、Illumina HiSeqでシーケンシングする。組織試料から単離したDNA又はRNAの量又は質がエクソーム又はcDNAライブラリ調製及びシーケンシングに不十分である場合、患者特異的腫瘍細胞株(作成される場合)からDNA又はRNAを抽出してもよい。
【0500】
患者からの腫瘍及び正常組織試料の全エクソームDNA配列を使用して、当該の参加者の腫瘍に起こっている特異的コード配列突然変異を同定する。これらの突然変異には、単一アミノ酸ミスセンス突然変異(優勢なタイプの突然変異)及びアミノ酸1個から数百個に至るまでの様々な長さの新規オープンリーディングフレーム(ネオORF)の両方が含まれる。十分に確立されたアルゴリズム(netMHCpan)を使用して、各参加者のMHCクラスI分子に結合すると予想される突然変異含有エピトープを同定する76。この候補突然変異リストから、20~40個の突然変異を選択し、以下を含む予め定義された一組の基準に基づきペプチド調製の優先順位を付ける:
・突然変異のタイプ(ミスセンス対ネオORF)
・特定の個人のMHCクラスI対立遺伝子に対する、突然変異領域によってコードされるペプチドの予想される結合能
・対応する天然ペプチドの予想される結合能
・その突然変異が腫瘍形成表現型と直接又は間接的に関係する可能性(即ち「発癌ドライバー」突然変異又は関係する生化学的経路における突然変異)
・RNA発現
・完全ペプチドの生化学的特性(例えば疎水性アミノ酸の数又は分布及び/又はシステイン含量に伴う予想される低い溶解性)。
【0501】
各参加者の20~40個の突然変異を使用して、各々約20~30アミノ酸長のペプチドを設計する。突然変異の分析は、各参加者の正常及び腫瘍配列情報の比較に限られている。
【0502】
GMPペプチドは、標準的な固相合成ペプチド化学によって合成し、RP-HPLCによって精製する。個々のペプチドそれぞれを種々の認定されたアッセイによって分析し、外観(目視)、純度(RP-HPLC)、アイデンティティ(質量分析法による)、量(窒素元素)、及びトリフルオロ酢酸対イオン(RP-HPLC)を評価し、リリースする。この作業はCS Bio、Menlo Park、CAによって実施される。合成は、必要に応じて不溶性ペプチドの代わりの追加のペプチドが直ちに利用可能であるように、可能であれば最大25個のペプチドで開始する。
【0503】
患者は、最大20の、可能な限り多くのペプチドで免疫化することが意図される。ペプチドは併せて混合し、最大で各5つのペプチドの4つのプールにする。各プールの選択基準は、ペプチドが結合すると予想される詳細なMHC対立遺伝子に基づく。同じMHC対立遺伝子に結合すると予想されるペプチドは、抗原競合を抑えるため、可能な限り別個のプールに入れる。一部のネオORFペプチドは、患者のいずれのMHC対立遺伝子にも結合しないと予想され得る。しかしながらこれらのペプチドはなおも利用することができ、これは、主として、それらが完全に新規であり、従って中枢性トレランスの免疫減弱効果を受けず、ひいては高確率で免疫原性であることが理由である。ネオORFペプチドはまた、いずれの正常細胞にも等価な分子がないため、自己免疫の可能性が劇的に低下している。加えて、予測アルゴリズムから生じる偽陰性があり得るとともに、ペプチドがHLAクラスIIエピトープを含み得る可能性がある(現在のアルゴリズムに基づくとき、HLAクラスIIエピトープの予測は確実でない)。特定のHLA対立遺伝子で同定されないペプチドは全て、個々のプールに無作為に割り当てる。
【0504】
ペプチドプールを調製する。各ペプチドの量は、注射1回当たり300μgの各ペプチドの最終用量が前提となる。ペプチドプールは、適切な量の各ペプチドを個々に高濃度(約50mg/ml)でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、5%デキストロース水溶液(D5W)/5mMコハク酸塩で2mg/mlの最終濃度となるように希釈することによって調製する。希釈時に澄明な溶液を呈しないペプチドは全て廃棄し、利用可能であれば別のペプチドに交換する;それ以上利用可能なペプチドがない場合、D5W/コハク酸塩を使用することになる。次に5つのペプチドの各々を等量ずつ、各ペプチドを400μg/mlの濃度に有効に希釈して、混合することができる。0.2μm滅菌フィルタでろ過することにより、プールしたペプチドのバイオバーデンを低下させる。プールしてろ過したバルクを層流バイオセーフティキャビネット内で滅菌ろ過し、保存のためアリコートに分けて2ml Nuncクライオ個別投薬バイアルに入れる。各プールを、RP-HPLCによってアイデンティティ、残留溶媒(ガスクロマトグラフィーによる)、無菌性及びエンドトキシンに関して試験する。個別投薬バイアルは-80℃で凍結保存する。
【0505】
この臨床試験には、標準の承認済み10mlバイアル(5mgイピリムマブ/ml)を利用する。追加の調製は不要である。
【0506】
患者がワクチン投与を受ける医学的許可が下りることが確認され次第(来診確認、安定したバイタルサイン、ワクチン投与を妨げる可能性のある新たな急性の医学的問題又は検査所見の異常がないこと)、最終NeoVax製品及びイピリムマブが入ったシリンジの調製を開始する。
【0507】
NeoVaxの調製の最終ステップ(ポリICLCとの混合)は、予定したワクチン投与日に行う。各患者について、最大5つの合成ペプチドの4つの異なるプール(表示「A」、「B」、「C」及び「D」が付される)が各々GMPペプチド製造業者で調製され、詳述されるとおりろ過滅菌し、-80℃で保存し得る。
【0508】
免疫当日、1つ又は複数のペプチド成分及びポリICLCからなる完全なワクチンを層流バイオセーフティキャビネットで調製する。各々(A、B、C及びD)につき1つのバイアルを、バイオセーフティキャビネット内において室温で解凍する。各ペプチドプールの0.75mlをバイアルから別々のシリンジに抜き取る。別途、ポリICLCの4つの0.25ml(0.5mg)アリコートを別々のシリンジに抜き取る。次に、各ペプチドプールが入ったシリンジの内容物を、シリンジ間で移し替えることによってポリICLCの0.25mlアリコートと穏やかに混合し得る。1ml全ての混合物を注射に使用する。
【0509】
これらの4つの調製物に表示「NeoVax A」、「NeoVax B」、「NeoVax C」、「NeoVax D」を付す。NeoVaxの総用量は、各々1mlのペプチドプール+ポリICLC混合物が入った4つの1mlシリンジからなり得る。
【0510】
各投薬日に、5mg/mlイピリムマブが入った単一の10mlバイアルを使用して、各々0.25ml(コホート-1)、0.5ml(コホート1)又は1ml(コホート2)を含む4つのシリンジを調製する。
【0511】
ワクチンはプライム/ブーストスケジュールに従い投与する。ワクチンのプライミング用量は、本明細書及び(図12)に示すとおり1、4、8、15、及び22日目に投与する。ブースト相では、ワクチンは78日目(12週目)及び162日目(20週目)に投与する。
【0512】
【表15】
【0513】
4つのNeoVax及びイピリムマブシリンジの各々を四肢の一つに割り当てる。各免疫化時、各NeoVaxシリンジを割り当てられた体肢に皮下投与する(即ちNeoVax Aが1、4、8日目等に左腕に注射され、NeoVax Bが1、4、8日目等に右腕に注射される)。完全腋窩又は鼠径リンパ節郭清後又はその他の特定の体肢への注射を妨げる禁忌の状態にある患者の代替的な解剖学的位置は、それぞれ左及び右横隔膜である。
【0514】
それぞれの体肢(又は代替的な解剖学的位置)へのNeoVax投与の直後、各NeoVax投与の1cm以内にイピリムマブを注射する。
【0515】
NeoVax及びイピリムマブは、4日目及び8日目については予定された投与日の1日以内、15日目及び22日目については予定された投与日の3日以内(但し少なくとも5日間あけなければならない)及び78日目及び162日目については7日以内に投与し得る。
【0516】
初期安全性評価には5人の患者が参加する(コホート1)。コホート1の治療の最初の7週間にDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、5人の患者はコホート2に参加する。治療の最初の7週間にコホート1の2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、5人の患者はコホート-1に参加する。
【0517】
コホート2においてDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、用量レベル2が最大耐容量(MTD)であり、当該用量レベルにさらに10人の患者が参加することにより、重大な毒性の検出可能性を高め、生物学的相関エンドポイントを完了させ、臨床的腫瘍活性を伴う予備経験を得る。コホート2において2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、用量レベル1がMTDであり、さらに10人の患者をこの用量で治療する。
【0518】
コホート-1においてDLTが生じた患者がいないか又は1人のみであった場合、用量レベル-1が最大耐容量(MTD)であり、当該用量レベルにさらに10人の患者を登録する。
【0519】
コホート2において2人以上の患者に用量制限毒性(DLT)が生じた場合、試験を中止する。
【0520】
治療継続期間は免疫化の忍容性及び疾患再発のエビデンスに依存し得る。有害事象に起因する治療遅延がない場合、治療は134日目のワクチン接種(2回目のブースターワクチン接種)まで投与し、又は以下の基準の一つが該当するまで投与する:
・疾患再発、治療を行う研究者によって研究治療の中断が患者の利益の最優先であると見なされる場合
・治療のさらなる投与を妨げる併発疾患
・許容できない1つ又は複数の有害事象
・患者がプロトコル要件に従う能力がない又は従う気がない姿勢を示す
・患者が試験からの離脱を決意する、又は
・治療を行う研究者の意見によれば患者がさらなる治療に不適格となる患者の状態の一般的又は具体的な変化。
【0521】
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【0522】
このように本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、上記段落によって定義される本発明は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなくその多くの明らかな変形例が可能であるとおり、上記の説明に示した特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
【配列表】
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