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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-18
(45)【発行日】2022-04-26
(54)【発明の名称】容量収着分析器のための極低温制御器
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/00 20060101AFI20220419BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G01N25/00 M
F25D3/10 D
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017125949
(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公開番号】P2018004637
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/355,449
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/624,042
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517001664
【氏名又は名称】アントン・パール・カンタテック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・ガデア・ラモス
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・シイ・ラコヴ
(72)【発明者】
【氏名】ブランデギー・シイ・ピアース
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・トメス
(72)【発明者】
【氏名】カール・エム・ウォルフリッド
(72)【発明者】
【氏名】アルバート・ジェイ・ウッドコック
(72)【発明者】
【氏名】アルマンド・エイチ・ソーラー-シュルツ
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-500918(JP,A)
【文献】特開昭48-015586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162652(US,A1)
【文献】米国特許第04306425(US,A)
【文献】特開平03-031744(JP,A)
【文献】特開2014-077652(JP,A)
【文献】特開2000-258520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
F25D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温制御器組立体であって、
制御器;
サンプル収容器を中に受ける室を有するサーモスタット・ブロックであって、極低温流体に露出させる露出表面を有する熱シンクとの熱接続を有し、前記熱シンクの前記露出表面は前記熱接続の反対側に設けられていサーモスタット・ブロック;
前記露出表面と前記室との中間に配置した加熱器であって、前記制御器に接続している加熱器;
前記サーモスタット・ブロック内に配置した温度プローブ
前記サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲む断熱スリーブ
を備え、
前記プローブは、前記制御器に接続し、前記制御器は、前記プローブからの実際の温度に基づき前記加熱器を調整し、前記サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持し、
前記断熱スリーブは、前記熱接続から前記露出表面に向かって、前記熱シンクに沿って延びている、
極低温制御器組立体。
【請求項2】
前記断熱スリーブは、前記熱シンクを囲む一部分を含む、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項3】
前記断熱スリーブと対合し、前記サーモスタット・ブロックの端部を覆う断熱キャップを更に備える、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項4】
前記熱シンクは、前記サーモスタット・ブロックに熱伝導接続し、前記サーモスタット・ブロックから延在する棒である、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項5】
前記加熱器は、前記棒と前記サーモスタット・ブロックとの間の接合部に配置する、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項6】
前記サーモスタット・ブロックと前記棒との間にねじ接続部を更に備える、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項7】
前記ねじ接続部は、基部を有する雌ねじ切り穴を含み、前記加熱器は、前記ねじ切り穴の前記基部内に配置する、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項8】
前記サーモスタット・ブロック及び前記熱シンク及び前記極低温流体を受ける鉢を有する容器を更に備える、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項9】
前記熱シンクは、前記サーモスタット・ブロックへの接続部で熱伝導接続した棒であり、前記棒は、前記鉢の低充填液位での前記露出表面と前記極低温流体との接触を維持可能にするように、前記鉢の基部に隣接する位置まで延在する、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項10】
前記棒は、前記接続部の反対側に自由端を有し、前記自由端は、前記棒が前記鉢を損傷しないようにする端キャップを有する、請求項に記載の極低温制御器組立体。
【請求項11】
前記室内に少なくとも部分的に配置したサンプル収容器を更に備える、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項12】
記断熱スリーブの一部分は、前記熱シンクを少なくとも部分的に囲む、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項13】
前記サーモスタット・ブロックの端部を覆う断熱キャップを更に備える、請求項12に記載の極低温制御器組立体。
【請求項14】
前記サーモスタット・ブロックは、2つの個別のサンプル分析を同時に実行する2つの室を有する、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項15】
請求項4に記載の極低温制御器組立体を使用する方法であって、試験期間の間に所定の設定点温度を維持するために、前記方法は、
前記試験期間の間、前記サーモスタット・ブロックを冷却するために前記熱シンクの前記露出表面を前記極低温流体と接触させること;
前記制御器によって前記プローブからの実際の温度に基づき前記加熱器を調整し、前記試験期間の間、前記サーモスタット・ブロック内の前記所定の設定点温度を維持すること
を含む方法。
【請求項16】
前記断熱スリーブは、前記熱接続部から前記露出表面に向かって、前記熱シンクに沿って延びている前記部分にわたって、前記熱シンクに周方向に直接接触している、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項17】
前記露出表面が前記熱シンクの遠位端にあり、前記断熱スリーブが前記露出表面まで延びている、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【請求項18】
前記断熱スリーブが前記サーモスタット・ブロックに周方向に直接接触していることを特徴とする、請求項1に記載の極低温制御器組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/355,449号、2016年6月28日出願、名称Cryogenic Temperature Controller And Its Use In Volumetric Sorption Analyzersの利益を主張するものであり、当該出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、科学者が物理的吸着実験を実施可能にするために、中間熱導体を加熱、調整するデバイスに関し、吸着媒体は、主要冷却剤として液体窒素を用いる。
【背景技術】
【0003】
材料の表面積及び多孔度の特性決定は、様々な十分に確立された既存の技法(主に重量法及び容量法)の使用により、液体窒素の沸点温度(77K)での窒素吸着によって広く実施されている。
【0004】
しかし、De Gruyterが公開した最近のIUPAC調査では、窒素を使用する技法が、サンプルの微小孔分布決定に対し何らかの弱点を有することが述べられている(この調査は、任意のウェブ検索エンジンを用い、句「PAC-2014-1117」を検索することによって検討のために容易に入手可能である)。こうした弱点は、分析ガスとして、窒素の代わりにアルゴンを使用することによって克服することができる。そのような例では、アルゴンの沸点温度(87K)で分析を実施しなければならない。
【0005】
したがって、分析ガスとしてアルゴンを使用するために、既存の分析器は、主に、アルゴンの沸点温度(液体窒素の沸点を超える)でサンプルを制御するために3つの異なる技法を使用しているが、こうした技法はそれぞれ、いくつかの欠点を有する。1)液体アルゴン中への浸漬:液体アルゴンの入手しやすさは、液体窒素ほど一般的ではなく、液体アルゴンの価格は、液体窒素よりもかなり高額である;2)極低温保持装置によるアルゴンの温度制御:極低温保持装置が標的温度を維持できる時間量は、分析を完了するには十分でないことが多く、極低温保持装置は高額である;及び3)圧縮極低温冷却器による温度制御:これらのシステムはかなり高額である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、分析ガスの温度を制御する方法及びデバイスを提供することが本発明の目的であり、これにより、これまで公知であったこの一般的な種類のデバイス及び方法の上述及び他の欠点を克服して従来技術に対し改善をもたらし、正確な温度制御の問題を解決する一方で、分析ガスとしてアルゴン(又は任意の他の費用のかかるガス)を使用する費用を著しく低減するものである。本発明は、容量収着分析器で使用する周囲温度未満の温度を制御するものであり、容量収着分析器は、液体窒素、同様の極低温流体(沸点が123.15K未満の任意の流体)、又は周囲温度未満の流体(220K未満の温度での液体)を冷却流体として使用し、サンプルの温度を局所的に制御することによって分析期間及び費用の柔軟性を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所与の極低温流体温度を超える又はこれに等しい温度で収着分析を可能にする装置を提供する。このことは、高い熱伝導率(35W/m×K超の熱伝導率)を有する材料で作製したサーモスタット・ブロックによって達成し、サーモスタット・ブロックは、断熱材(好ましくは、1.1W/m×K未満の熱伝導率を有する断熱フォーム又は真空室又は両方の組合せ)によって囲まれ、高い熱伝導率(35W/m×K超の熱伝導率)を有する材料で作製した熱シンクを有する。熱シンクは、冷却流体(好ましくは液体窒素)中に部分的に浸漬され、冷却流体と直接接触する一部分を除いて、断熱材(好ましくは1.1W/m×K未満の熱伝導率を有する断熱フォーム又は真空室又は両方の組合せ)によって囲まれている。加熱器は、装置内に設け、サーモスタット・ブロックと、冷却流体と接触する熱シンクの一部分との間に配置する。
【0008】
サンプル収容器の一部(サンプルを分析する場所)は、サーモスタット・ブロックの内側に置く一方で、その他の部分は、容量分析器に接続されている。
【0009】
サーモスタット・ブロックの温度は、熱シンクの冷却能力と、加熱器が導入する出力と、断熱による熱損失との間の均衡によって確立する。熱シンクの冷却能力は、(蒸発による)極低温流体の充填液位変化ではわずかしか変化しない。というのは、大部分の熱伝達は、極低温流体に直接露出させる熱シンクの部分によって行い、極低温流体に直接露出させる熱シンクの部分は、容器の充填液位よりもかなり下にあるためである。断熱材は、極低温流体を通すことができない。断熱材及びその寸法は、材料表面を通る総熱伝達が、熱シンクの総熱伝達よりも小さいように選択する。
【0010】
温度プローブは、サーモスタット・ブロック内に取り付け、温度プローブからの温度の度数は、加熱器出力を調整する温度制御器によって処理し、サーモスタット・ブロック内の事前に確立した標的温度を(温度プローブで)達成するようにする。
【0011】
本発明のシステムは、図4に示すように、サーモスタット・ブロック内の標的温度を(特定の構成に応じた)ある長さの時間期間で維持することができる。更に、極低温流体を手動又は自動で再充填した場合に、システムに用いる分析継続時間を無期限に延長することができる。このことは、再充填工程がサーモスタット・ブロックの温度安定性にほとんど影響を及ぼさないためである。
【0012】
上記及び他の目的を考慮して、極低温制御器組立体を提供し、極低温制御器組立体は、制御器及びサーモスタット・ブロックを含み、サーモスタット・ブロックは、サンプル収容器を中に受ける室を有する。サーモスタット・ブロックは、極低温流体に露出させる露出表面を有する熱シンクを有する。加熱器は、露出表面と室との中間に配置されている。加熱器は、制御器に接続されている。温度プローブは、サーモスタット・ブロック内に配置する。プローブは、制御器に接続されている。制御器は、プローブからの実際の温度に基づき加熱器を調整し、サーモスタット・ブロックの所定の設定点温度を維持する。
【0013】
本発明の別の特徴によれば、断熱スリーブは、サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲む。
【0014】
本発明の追加特徴によれば、断熱スリーブは、熱シンクを囲む一部分を含む。
【0015】
本発明の更なる特徴によれば、断熱キャップは、断熱スリーブと対合し、サーモスタット・ブロックの端部を覆う。
【0016】
本発明のまだ更なる特徴によれば、熱シンクは、サーモスタット・ブロックに熱伝導接続し、サーモスタット・ブロックから延在する棒である。
【0017】
本発明のまた別の追加特徴によれば、加熱器は、棒とサーモスタット・ブロックとの間の接合部に配置する。
【0018】
本発明の更に別の追加特徴によれば、ねじ接続部は、サーモスタット・ブロックと棒との間にある。
【0019】
本発明のまだ更に別の追加特徴によれば、ねじ接続部は、基部を有する雌ねじ切り穴を含み、加熱器は、ねじ切り穴内の基部に配置する。
【0020】
本発明のまだ更に別の更なる特徴によれば、容器は、サーモスタット・ブロック及び熱シンク及び極低温流体を受ける鉢を有する。
【0021】
本発明のまた更なる特徴によれば、熱シンクは、サーモスタット・ブロックへの接続部で熱伝導接続した棒であり、棒は、鉢の基部に隣接する位置まで延在し、鉢の低充填液位での露出表面と極低温流体との接触を維持可能にする。
【0022】
本発明の更に別の特徴によれば、棒は、接続部の反対側に自由端を有し、自由端は、棒が鉢を損傷しないようにする端キャップを有する。
【0023】
本発明のまた更なる特徴によれば、サンプル収容器は、室内に少なくとも部分的に配置する。
【0024】
本発明の更なる追加特徴によれば、断熱スリーブは、サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲み、断熱スリーブの一部分は、熱シンクを少なくとも部分的に囲む。
【0025】
本発明のまた更なる特徴によれば、断熱キャップは、サーモスタット・ブロックの端部を覆う。
【0026】
本発明のまた更なる特徴によれば、サーモスタット・ブロックは、2つの個別のサンプル分析を同時に実行する2つの室を有する。
【0027】
本発明の目的を考慮して、極低温制御器組立体も提供し、極低温制御器組立体は、サンプル収容器を中に受ける室を有するサーモスタット・ブロックを含む。サーモスタット・ブロックは、極低温流体に露出させる露出表面を有する熱シンクを有する。温度プローブは、サーモスタット・ブロック内に配置する。加熱器は、サーモスタット・ブロック内に配置し、温度プローブが観察した実際の温度に基づき熱エネルギーを導入することによってサーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持するように構成する。
【0028】
本発明のまた更なる特徴によれば、断熱スリーブは、前記サーモスタット・ブロックを部分的に囲む。
【0029】
本発明のまた別の特徴によれば、制御器は、前記加熱器及び前記温度プローブに接続されており、前記制御器は、前記プローブが観察した実際の温度に基づき前記加熱器を調整し、前記サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持する。
【0030】
上記及び他の目的を考慮して、試験期間の間に所定の設定点温度を維持する方法も提供する。方法は、露出表面を有する熱シンクを有するサーモスタット・ブロックを準備する。熱シンクの露出表面は、試験期間の間にサーモスタット・ブロックを冷却するために極低温流体と接触させる。方法は、温度プローブが観察した実際の温度に基づき熱エネルギーをサーモスタット・ブロックに導入することによってサーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持するように配置した加熱器を調整し、試験期間の間、サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持する。
【0031】
本発明は、容量収着分析器のための具体化した極低温制御器として本明細書で例示、説明するが、示す細部への限定を意図するものではない。というのは、本発明の趣旨から逸脱することなく、特許請求の範囲及び同等物の範囲内で様々な修正形態及び構造の変更を本発明において行い得るためである。
【0032】
しかし、本発明の構成及び操作方法は、添付の図面と合わせて読めば、以下の特定の実施形態の説明から本発明の更なる目的及び利点と共に最適に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】極低温制御デバイスを含む組立体の断面図である。
図2図1とは異なる切断平面に沿った拡大断面図である。
図3】極低温制御デバイスの別の実施形態の側面図である。
図3A図3の極低温制御デバイスの斜視図である。
図4】デバイスによって経時的に維持される温度及び経時的に必要な加熱器出力を時間で表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、同様の識別子が同様の要素を指す図面を参照すると、図1には、収着分析組立体20のための温度制御デバイスが示されている。組立体20は、真空フラスコとして設けることができる容器1を含み、容器1は、すぐに利用可能な液体窒素等の極低温流体2を充填する流体充填鉢1bを含む。
【0035】
サーモスタット・ブロック5は、サンプル収容器8を中に受ける室5cを含む。室5cは、サンプル収容器8の外径に対応するように寸法決定し、サンプル収容器8が室5cを画定する壁と熱伝導接触しているようにする。サンプル収容器8は、検査すべきサンプル、及びアルゴン等の分析ガスを収容する。サンプル収容器8は、図2に示す容量サンプル/吸着分析器13に接続されている。蓋9は、銅製とすることができ、室5cの軸方向端壁を画定する。蓋9は、室5cに嵌合する外径、及びサーモスタット・ブロック5の端表面上に載る肩部を有する。蓋9は、サンプル収容器8を通すための開口を有する。蓋9は、室5cを閉鎖する。断熱材キャップ6cは、雄特徴部を有し、雄特徴部は、サーモスタット・ブロック5を囲む断熱材スリーブ6s内の雌特徴部に挿入する。断熱材キャップ6cと断熱材スリーブ6sとの間の嵌合は、線間嵌合である。断熱材キャップ6cが適所にある場合、断熱材キャップ6cの肩部は、真空フラスコ1の縁に接して着座し、鉢1b中の窒素が蒸発しないようにすることができる。サーモスタット・ブロック5は、円筒形であってもよく、高熱伝導材料(35W/m×K超)製であり、好ましくは、約1.0インチOD、0.5インチID及び2インチ高さの銅ブロックである。
【0036】
サーモスタット・ブロック5は、サーモスタット・ブロック5と熱伝導接触している熱シンク部分3を有する。図1では、熱シンク部分3は、円筒棒3として示し、サーモスタット・ブロック5に強固に取り付けられ、サーモスタット・ブロック5から鉢1b内に同軸に延在する。棒3は、(雄ねじ部分と雌ねじ部分との)ねじ接続によってサーモスタット・ブロック5上に取り付けることができる。好ましい構成では、熱シンク棒3は、アルミニウムであり、長さが約8インチで断面直径が0.3~0.5インチの円筒棒である。
【0037】
棒3は、断熱材スリーブ6sによって部分的に囲まれ、断熱材スリーブ6sは、サーモスタット・ブロック5の長手方向範囲も囲む。棒3は、露出表面3eでは断熱材がなく、極低温流体2と熱接触している(露出表面3eは、サーモスタット・ブロック5の反対側で鉢1bの基部にある)。断熱スリーブ6s及び断熱キャップ6cの断熱材は、0.5~1.0インチの稠密独立気泡フォーム(好ましくはポリイソシアヌレート)障壁とすることができる。更に、断熱材スリーブ6sの円筒外表面は、組立体20を取り扱う間に断熱材スリーブ6sを摩耗から保護する外装6shを備えることができる。外装6shは鋼鉄製とすることができる。断熱キャップ6c及び断熱スリーブ6sのいずれか又は両方を裏張りに封入し、真空ポンプ・システムに接続することによって内側を真空にすることも可能であり、これにより、熱伝導を低減し、したがって良好な断熱をもたらす。代替的に、特定の断熱材構成要素を製造する間に裏張りを吸引、封止して真空を維持する。断熱材スリーブ6sによって覆われていない露出表面3eは、サーモスタット・ブロック5の位置の反対側である。断熱材キャップ6c及び断熱スリーブ6sは、サンプル収容器8を取り外す、及び又は極低温流体2を鉢1bに再充填するために、互いに対し解放可能に接続されている。棒3の遠位端(露出表面の端部)は、プラスチック等の軟材料先端部11を備え、デバイスを真空フラスコ1に挿入する際、鉢1bのガラスに対する損傷を防止することができる。
【0038】
装置20は、熱シンク3の露出表面3eと室5cとの中間にある位置に少なくとも1つの加熱器4を含む。一例として、加熱器4は、熱シンク3内で、極低温流体2と直接接触しない場所、即ち熱シンク3の一部分に沿った断熱材スリーブ6sの裏側に据え付けることができる。そのような位置により、熱シンク3を介して極低温流体2によってサーモスタット・ブロック5から除去されるエネルギーを加熱器4が制御することが可能になる。加熱器4の特に適した位置は、熱ブロック5と熱シンク棒3との間の接合部で陥没している。図1及び図2では、加熱器4は、サーモスタット・ブロック5に形成した止まり穴の基部内に設けられ、基部は、熱シンク棒3上の雄ねじ部に螺入される雌ねじ部を含む。加熱器4は、抵抗加熱器(カートリッジ、棒、リング若しくはバンド加熱器)であっても、又は加熱器4は、誘導コイルによって加熱するサセプタであってもよい。加熱器4は、導電性グリース又はペーストを備え、加熱器4から対応する熱伝導材料への伝導を最大にすることができる。加熱器は、サーモスタット・ブロック5と極低温流体2との間にエネルギーを供給し、極低温流体2によって除去される熱量を制限する。
【0039】
サーモスタット・ブロック5は、PT100(白金抵抗温度検出器)である温度プローブ/熱検出デバイス7を含み、温度プローブ/熱検出デバイス7は、PID(比例-積分-微分)制御器12又は同様の熱制御デバイス(図2に示す)と共に使用して加熱器4を調整し、サンプル収容器8及びその中に配置した内容物の熱を制御する目的でサーモスタット・ブロック5(したがって室5c)内の温度を制御、維持する。この点について、温度プローブ7からの温度は、加熱器出力を調整する温度制御器12によって処理され、予め確立した設定点温度を達成し、これを正確に維持するようにする。
【0040】
サーモスタット・ブロック5の温度は、熱シンク3の冷却能力と、加熱器4が導入する出力と、断熱材6を通る熱の損失との間の均衡によって確立する。熱シンク3の冷却能力は、(蒸発による)極低温流体2の液位変化ではわずかしか変化しない。というのは、大部分の熱伝達は、極低温流体2と接触している露出表面3eによって行うためである。断熱材6は、極低温流体2を透過させることができない。断熱材6は、断熱材6を通る総熱伝達が、熱シンク3の総熱伝達よりも小さいように寸法決定する。
【0041】
より局所的な温度制御のために、サーモスタット・ブロック5に複数の熱シンク3を備えることが可能であり、熱シンク3のそれぞれは、それぞれの加熱器及びそれぞれの熱検出デバイス7を備える。この場合、制御器12は、対応する温度に基づき、それぞれの加熱器4を個別に制御することになる。
【0042】
組立体20が作動中の場合、露出表面3eは、真空フラスコ1の鉢1b内で液体窒素又は同様の極低温流体2中に浸漬され、熱シンク3の露出表面3eが極低温流体2と直接接触するようにする。このことは、システムに物理的な安定性をもたらす一方で、熱シンク3の露出表面3eと極低温流体2との間を最適な継続時間で接触させるように行う。説明したシステムは、図4に示すように、サーモスタット・ブロック内の標的温度を(特定の構成に応じた)ある長さの期間で維持することができる。このことにより、極低温流体を手動又は自動で再充填した場合に、システムに用いる分析継続時間を無期限に延長可能にする。そのようなことは、再充填工程がサーモスタット・ブロックの温度の安定にほとんど影響を及ぼさないという事実によって可能になる。
【0043】
図3は、2つの室5cを、熱伝導材料(35W/m×K超)からなる共通のサーモスタット・ブロック5内に設けている一実施形態を示す。この図は、異なるサイズの2つの室5cを共通の加熱器4及び温度プローブ7によって制御する可能性を示す。室5cのそれぞれは、それぞれのサンプル収容器(図示せず)を有する。図に向かって見た方向において、左手の室5cは右手側の室5cよりも直径及び長さが大きいことがわかる。したがって、サーモスタット・ブロック5内で共通の温度を維持するために、サーモスタット・ブロック5は、左側の室5c及び右側の室5cのために実質的に同一の質量を有する。このことは、図示のように、右側の室5cが左側の室5cよりも大きい壁厚さを有すると共に、右側の室5cの基部の厚さが左側の室5cの基部よりも大きいことによって達成することができる。
【0044】
熱シンク3は、サーモスタット・ブロック5の基部において2つの室5cの間で中央に配置した棒3として設けられ、熱伝導材料(35W/m×K超)のものである。棒3は、図1及び図2に対して上記に示したように、鉢1b内に延在する。棒3は、ブロック5との一体構成であっても、棒3を個別の構成要素として設ける場合はブロック5に溶接してもよい。図3では、断熱キャップ6cは、2つの室5cの間に延在する中心部分を含む。断熱キャップ6cの中心部分は、通路を含み、通路は、棒3の上の凹部に配置した加熱器4への配線(図示せず)用経路として働く。凹部は、室5cと同様に蓋9を備える。この実施形態は、棒3の一部分及びサーモスタット・ブロック5を囲む断熱スリーブ6sも含む。棒3は、露出表面3eを含む。加熱器4は、熱シンク棒3とサーモスタット・ブロック5との接合部に設けられ、図1及び図2に対して説明したように、制御器12の指示下、サーモスタット・ブロック5にエネルギーを供給する。温度プローブ7は、2つの室5cのどちらかの中又はどちらかに設けることができる。このことは、上述のように、サーモスタット・ブロック5が室5cのそれぞれに対し同一の質量及び材料を有しているために可能である。上記と同様に、室5cにそれぞれの熱シンク3を設けることが可能であり、各熱シンク3はそれぞれ加熱器4を有する。室5cをそれぞれのサーモスタット・ブロック5内に配置することも可能である。更に、図1及び図2の他の特徴のいずれかを図3の実施形態に含めることができる。
本発明はさらに、以下の条項で示される極低温制御器組立体を提供する。
(条項1)
極低温制御器組立体であって、
制御器;
サンプル収容器を中に受ける室を有するサーモスタット・ブロックであって、極低温流体に露出させる露出表面を有する熱シンクを有するサーモスタット・ブロック;
前記露出表面と前記室との中間に配置した加熱器であって、前記制御器に接続している加熱器;
前記サーモスタット・ブロック内に配置した温度プローブ
を備え、前記プローブは、前記制御器に接続し、前記制御器は、前記プローブからの実際の温度に基づき前記加熱器を調整し、前記サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持する、極低温制御器組立体。
(条項2)
前記サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲む断熱スリーブを更に備える、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項3)
前記断熱スリーブは、前記熱シンクを囲む一部分を含む、請求項2に記載の極低温制御器組立体。
(条項4)
前記断熱スリーブと対合し、前記サーモスタット・ブロックの端部を覆う断熱キャップを更に備える、条項3に記載の極低温制御器組立体。
(条項5)
前記熱シンクは、前記サーモスタット・ブロックに熱伝導接続し、前記サーモスタット・ブロックから延在する棒である、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項6)
前記加熱器は、前記棒と前記サーモスタット・ブロックとの間の接合部に配置する、条項5に記載の極低温制御器組立体。
(条項7)
前記サーモスタット・ブロックと前記棒との間にねじ接続部を更に備える、条項6に記載の極低温制御器組立体。
(条項8)
前記ねじ接続部は、基部を有する雌ねじ切り穴を含み、前記加熱器は、前記ねじ切り穴の前記基部内に配置する、条項7に記載の極低温制御器組立体。
(条項9)
前記サーモスタット・ブロック及び前記熱シンク及び前記極低温流体を受ける鉢を有する容器を更に備える、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項10)
前記熱シンクは、前記サーモスタット・ブロックへの接続部で熱伝導接続した棒であり、前記棒は、前記鉢の低充填液位での前記露出表面と前記極低温流体との接触を維持可能にするように、前記鉢の基部に隣接する位置まで延在する、条項9に記載の極低温制御器組立体。
(条項11)
前記棒は、前記接続部の反対側に自由端を有し、前記自由端は、前記棒が前記鉢を損傷しないようにする端キャップを有する、条項10に記載の極低温制御器組立体。
(条項12)
前記室内に少なくとも部分的に配置したサンプル収容器を更に備える、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項13)
前記サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲む断熱スリーブを更に備え、前記断熱スリーブの一部分は、前記熱シンクを少なくとも部分的に囲む、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項14)
前記サーモスタット・ブロックの端部を覆う断熱キャップを更に備える、条項13に記載の極低温制御器組立体。
(条項15)
前記サーモスタット・ブロックは、2つの個別のサンプル分析を同時に実行する2つの室を有する、条項1に記載の極低温制御器組立体。
(条項16)
極低温制御器組立体であって、
サンプル収容器を中に受ける室を有するサーモスタット・ブロックであって、極低温流体に露出させる露出表面を有する熱シンクを有するサーモスタット・ブロック;
前記サーモスタット・ブロック内に配置した温度プローブ;
加熱器であって、前記サーモスタット・ブロック内に配置し、前記温度プローブが観察した実際の温度に基づき熱エネルギーを導入することによって前記サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持するように構成する加熱器
を備える極低温制御器組立体。
(条項17)
前記サーモスタット・ブロックを少なくとも部分的に囲む断熱スリーブを更に備える、条項16に記載の極低温制御器組立体。
(条項18)
前記加熱器及び前記温度プローブに接続した制御器を更に備え、前記制御器は、前記プローブが観察した実際の温度に基づき前記加熱器を調整し、前記サーモスタット・ブロック内の前記所定の設定点温度を維持する、条項16に記載の極低温制御器組立体。
(条項19)
試験期間の間に所定の設定点温度を維持する方法であって、
露出表面を有する熱シンクを有するサーモスタット・ブロックを準備すること;
前記試験期間の間、前記サーモスタット・ブロックを冷却するために前記熱シンクの前記露出表面を極低温流体と接触させること;
温度プローブが観察した実際の温度に基づき熱エネルギーを前記サーモスタット・ブロックに導入することによって前記サーモスタット・ブロック内の所定の設定点温度を維持するように配置した加熱器を調整し、前記試験期間の間、前記サーモスタット・ブロック内の前記所定の設定点温度を維持すること
を含む方法。
【符号の説明】
【0045】
1 容器
1b 鉢
2 極低温流体
3 熱シンク
3e 露出表面
4 加熱器
5 サーモスタット・ブロック
5c 室
6c 断熱材キャップ
6s 断熱材スリーブ
7 温度プローブ/熱検出デバイス
8 サンプル収容器
9 蓋
11 軟材料先端部
12 制御器
13 容量サンプル/吸着分析器
20 組立体
図1
図2
図3
図3A
図4